説明

磁性超微粒子の表面における無機酸化膜のコーティング処理及び分散方法

【課題】磁性超微粒子の表面に無機酸化膜を作製する方法及び分散方法を提案するともに、広い範囲で使用できる複合磁性超微粒子を作製する。その磁性超微粒子では磁気光学及び薬物輸送磁性材料への応用が可能である。複合磁性超微粒子を媒体に分散することによって磁性流体を作製、高周波電磁波の吸収特性や磁気光学特性などの特性を向上させる。また、医療DDSへの応用が可能になる。
【解決手段】無機化学反応を用いて磁性超微粒子の表面に無機酸化膜をコーティングすることによって複合磁性超微粒子を作製する。超音波により合成された磁性超微粒子をバインダ中に分散させ磁性超微粒子の分散媒体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性超微粒子の製造、表面コーティング処理方法及び分散媒体に関し、特に表面コーティング処理することによって耐高温性、磁気光学効果や高周波マイクロ波の吸収を向上させた磁性微粒子の製造方法および磁性微粒子分散媒体に関する技術分野である。
【背景技術】
【0002】
近年,ナノテクノロジーの発展に伴い, 様々な分野でナノ材料が応用されている。特に磁性ナノ微粒子は磁気研磨,磁気記録材料,磁性流体,触媒,生物医学材料など多くの応用が期待されている。磁性微粒子の合成方法には,ゾルーゲル法や超臨界水熱法,共沈法などが知られている。共沈法は制御が容易であり,製造コストが安く, 簡単に大量生産ができる。しかし,合成された磁性超微粒子では酸化し易い、分散性と耐磨耗性が弱いなど欠点がある。
【0003】
分散媒体の使用においては、磁性超微粒子はそのままの形で樹脂などに分散して用いられるもののほかに、磁性超微粒子の表面に表面処理剤を用いて粒子分散方法があるが、その場合、表面に絶縁になる酸化膜の薄い層を設けることなどがある。
【0004】
磁性超微粒子には、表面構造は粒子の分散性と微粒子の機能性に及ぼす影響が大きい。しかし、単層の微粒子は磁性粒子間の磁気的あるいは電気的な結合を弱める役割を果しているが、多目的に対応することができない。
【0005】
最近に公開したマグネタイト被覆金属磁性微粒子の製造方法の関連出願は特許出願平10−542901に示す。その特許は、常温の撹拌法によるマグネタイトめっき反応においてマグネタイト被覆金属磁性微粒子の合成方法である。
【0006】
磁性多層微粒子とその製造及び磁性多層分散媒体の関連出願は特許出願平12−281010に示す。その特許は、中心核を形成する微粒子とこれを被覆する1層または複数層の被覆層とを有し、被覆層にはマグネタイトめっきによって形成された強磁性層を有する磁性多層微粒子を製造し、この磁性微粒子をバインダ中に分散させ成形して磁性多層微粒子分散媒体を形成する。
【0007】
そこで、本発明者らは特許出願2006-130844にサイズが8nm程度までの磁性超微粒子の創製法を提案し、界面活性剤のコーティングより油及び水に分散する方法についての研究を行った。
【0008】
なお、本発明者らは自分らが作製した磁性超粒子と磁性流体の光学効果を発見し、新しい磁気記録法とその装置の原理を提案した。
【0009】
また、本発明者らは自分らが作製した磁性超粒子と磁性流体を用いて、Spring−8において各種生物媒体に使用することがあるが、現段階では医療DDS(ドラッグデリバリーシステム)への基礎研究が行われているに過ぎない。
【特許文献1】特出2004−285640公報
【特許文献2】特出平12−281010公報
【特許文献3】特出2006−130844公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような背景技術に対して、微粒子の表面にマグネタイト被覆ではなく、磁性超微粒子の表面複合化によって酸化しにくく、耐高温・耐磨耗性があるナノ複合微粒子の創製法および分散法を開発するために、マグネタイト超微粒子表面に無機酸化膜コーティング方法を提案する。
【0011】
なお、本発明は磁性超粒子に無機酸化膜コーティング層構造を持たせることによって、高周波マイクロ波複素透磁率特性や磁気光学効果を向上させるなど、電磁界応答について新たな可能性に着目する。
【0012】
また、複合磁性超粒子の親水性、耐酸化性と薬物の親和性を用いて、医療DDSの実用研究に応用することが可能になる。
【0013】
このような複合磁性超微粒子の表面層における物性および機能性を制御することより、一層に巨大磁気抵抗効果(GMR)に有効利用することが期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従来では磁性微粒子の合成方法には,ゾルーゲル法や超臨界水熱法,共沈法などが知られている。共沈法は制御が容易であり,製造コストが安く, 簡単に大量生産ができる。しかし,合成された磁性超微粒子では酸化し易い、分散性と耐磨耗性が弱いなど欠点があった。その欠点に対して、無機酸化物を生成する反応を利用して磁性超微粒子の表面に無機酸化膜をコーティングする方法を提案した。磁性超微粒子の表面に無機酸化膜の作製原理については、最初にアルカリ性溶液の中にマグネタイト微粒子の表面に吸収したOH-イオンと金属塩化物によりマグネタイト微粒子の表面に部分的活性点で化学反応を起こって、表面被覆膜の結合点となる。次に金属塩化物との化学反応を続けて被覆膜がどんどん厚くなる。そしてマグネタイト微粒子の表面における無機酸化膜のコーティング層が得られる。そして、複合超微粒子を直接にイオン交換水中に入れての超音波(45Hz,100W)処理によって磁性超微粒子が分散させる。
【発明の効果】
【0015】
本考案は複合磁性微粒子の無機酸化膜により粒子が分散し易い、また複合磁性微粒子が耐高温性良くなり、使用寿命が長くなる。そして表面に酸化膜などの薄い層を設けることにより、粒子間の絶縁を得ているものなどがある。また、複合磁性超粒子が医療DDSへの応用が可能になる。
【0016】
本発明者らは磁性超粒子と磁性流体の光学効果を発見し、特許出願2006-130844中に新しい磁気記録法とその装置の原理を提案した。外部磁場の変化により磁性超微粒子の整列結晶構造を変わり、磁性流体の内部における超微粒子の磁区配向の変化より偏光現象が起こられて,レーザ光の反射率が高くなる。それを利用して新しい磁気記憶ディバイスへの応用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本考案によって合成された複合磁性超微粒子の表面にアモルファス状態の無機酸化膜をコーティングすることができる。その複合磁性超微粒子の使用条件および使用範囲が広くなる。また、複合磁性超微粒子では超音波を用いてバインダ中に分散され成形することが可能になる。
【実施例1】
【0018】
特許出願2006-130844による合成した磁性超微粒子の分散溶液中にケイ酸塩を入れ、塩酸を適量添加し、ケイ酸ナトリウムと塩酸の反応(式1)によってケイ酸を生成する。アルカリ性の条件下でケイ酸の活性が高いため、ケイ酸はすぐ溶液中のマグネタイト微粒子の表面に吸着する。最初にマグネタイト微粒子の表面に吸収したケイ酸がマグネタイト微粒子の表面における部分的活性点との化学反応(式2)を起こって、表面被覆膜の結合点となる。次にケイ酸が続けて被覆膜と式(3)のように反応して,その反応を続けていくより被覆膜がどんどん厚くなる。そしてマグネタイト微粒子の表面におけるSiO2のコーティング層が得られる。コーティングされた超微粒子を直接にイオン交換水中に入れての超音波(45Hz,100W)処理によって磁性超微粒子(複合微粒子)を分散させる。また、ほかの反応よりケイ酸を生成すれば、反応式(2)と(3)と同様にマグネタイト微粒子の表面にSiO2膜を被覆することが可能である。
【化1】

【化2】

【化3】

【0019】
透過型電子顕微鏡を用いて観察した複合超微粒子の微細構造は図1に示す。この結果からSiO2膜はアモルファスの状態で存在する。膜の厚さは約2nmである。また、フーリエ変換赤外分光装置FTIR及びX線光電子分光分析XPSの測定結果からSiO2存在することが確認できった。
【0020】
複合磁性超微粒子の耐熱実験の結果は図2に示す。それは各温度下、10min保持して、磁性微粒子のXRD回折パターンです。図2に示す。SiO2添加量1.0wt%の場合は微粒子が700℃まで完全に酸化した。無SiO2コーティングの場合は400℃で完全に酸化する。図3に示した。以上の結果から,超微粒子の表面にSiO2層をコーティングできることが証明された。この方法で合成された磁性超微粒子の高温使用範囲が広くなることが分かった。
【実施例2】
【0021】
複合磁性超微粒子の分散溶液中に塩化チタン、またチタン酸エチル塩を入れ、水を適量で添加し、塩化チタン、またチタン酸エチル塩と水の反応によって酸化チタンを生成する。溶液中のマグネタイト微粒子の表面に吸着すると酸化チタンの覆膜をコーティングすることが可能である。複合超微粒子を直接にイオン交換水中に入れての超音波(45Hz,100W)処理によって磁性超微粒子(複合微粒子)が分散されることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本提案は磁性超微粒子の表面における無機酸化膜のコーティング処理および分散方面に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】複合磁性超微粒子の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】複合磁性超微粒子の耐熱実験の測定結果。
【図3】無SiO2コーティング磁性超微粒子耐え熱実験の測定結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
この請求項目は特許出願2006-130844による合成した磁性超微粒子の表面に無機酸化膜をコーティングする方法と分散方法となる。該方法は,金属の塩類(ケイ酸塩、チタンのエチル塩類など)を用いて塩酸あるいは水と反応して無機酸化物を生成する。それをマグネタイト微粒子の表面に吸着すると無機酸化膜のコーティング層が得られる。その後,超音波処理によって磁性超微粒子(複合微粒子)が分散させる。また、この磁性超微粒子を界面活性剤に入れることより、有機バインダ溶液中に分散することができる。
【請求項2】
前記磁性超微粒子の表面に無機酸化膜をコーティングする方法請求項1記載の表面処理方法。
【請求項3】
前記磁性超微粒子をバインダ中に分散される請求項1記載の分散処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の磁性超微粒子がバインダ中に分散され成形されている耐高温磁性材料。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の磁性超微粒子がバインダ中に分散され成形されている電波吸収材。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の磁性超微粒子がバインダ中に分散され成形されている磁気光学効果材料。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の磁性超微粒子がバインダ中に分散され成形されている薬物輸送材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−260648(P2008−260648A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103375(P2007−103375)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(306018284)有限会社スプルート・ネット・ワーキング (3)
【Fターム(参考)】