説明

磁束発生装置及び物品管理収納装置

【課題】隣接配置された各基本アンテナに巻き回されたループコイルの一部を互いに交叉するようにして境界アンテナを構成し、且つ境界アンテナを挟んで隣接配置された各基本アンテナ端部の磁性材料を略直角に折り曲げた構成とすることにより、両端に配置されたRFタグの情報も正確に読み取ることができる磁束発生装置及びそれを使用した物品管理収納装置を提供する。
【解決手段】この磁束発生装置110は、板状の磁性材料にループコイルを巻き回した基本アンテナ33、35、37と、隣接配置された各基本アンテナ33、35及び35、37の境界に配置される境界アンテナ34、36と、各基本アンテナ33、37と直交するように配置された2つの側板31、39と、基本アンテナ33、35、37、境界アンテナ34、36及び側板31、39を固定する底板38と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束発生装置及び物品管理収納装置に関し、さらに詳しくは、積層型RFタグを取り付けた物品の管理情報を一括して読み書きする収納装置の構成技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から役所、会社等、大量の書類を管理、保管する機関、施設においては、書類を整理して収納するためのファイルを人為的なミスなく正確に自動的に管理、収納するために、各ファイル毎にRFタグを付し、そのRFタグに当該ファイルの管理情報を記録してファイル管理を自動化する試みがなされている。しかし、このようなシステムでは、書類の管理がファイル単位で行われており、ファイルに綴じられている書類1枚ごとに管理することができなかったため、ファイル自体の所在等を正確に管理したとしても、中身の書類が抜かれたり、或いは紛失したことをきめ細かく管理することはできなかった。
【0003】
そこで、ファイル棚の仕切り板にアンテナを埋め込み、各仕切り板に挟まれた書類に付されたRFタグの記録情報を一括して読み取るファイル棚が開発されている。しかし、このファイル棚は、電波法の規制により電波の強さが規制されているため、アンテナの間隔を所定の距離以上離すことができない。従って、一定の間隔で仕切り板が必ず必要となり、その分だけファイル棚の構成が複雑となるといった問題がある。
【0004】
また特許文献1には、物品に取り付けたICタグの向きに関わらず、ICタグの情報を読み取ることができるリーダライタ用アンテナと物品管理システムについて開示されている。これによると、リーダライタ用アンテナは、ループアンテナを連鎖状に配列して構成されるアンテナ部を複数備え、これら複数のアンテナ部を同一平面上で、且つ連鎖方向にずらして配置するように構成されている。
【特許文献1】特開2006−025363公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に開示されている従来技術は、管理棚に収納されたファイルのうち、ファイルの配列方向両端部に収納されたファイルは、リーダライタ用アンテナから放射される磁束が弱いためにデータを正しく読み取れないといった問題がある。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑み、隣接配置された各基本アンテナに巻き回されたループコイルの一部を互いに交叉するようにして境界アンテナを構成し、且つ境界アンテナを挟んで隣接配置された各基本アンテナ端部の磁性材料を略直角に折り曲げた構成とすることにより、ファイルの配列方向両端部に配置されたRFタグの情報も正確に読み取ることができる磁束発生装置及びそれを使用した物品管理収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1は、物品に取り付けた非接触情報記録媒体のループアンテナを貫通する磁束を発生する磁束発生装置であって、磁性材料にループコイルを巻き回した少なくとも2つの基本アンテナと、隣接配置された前記各基本アンテナの境界に配置される少なくとも1つの境界アンテナと、前記各基本アンテナと直交するように配置された2つの側板と、を備え、前記境界アンテナは、磁性材料にループコイルを巻き回した構成を備え、該ループコイルは隣接配置された前記各基本アンテナを構成するループコイルの終端からのリード線又は始端からのリード線が交叉するように接続されて構成され、前記側板は、前記基本アンテナの磁性材料と磁気的に接続された磁性材料により構成されていることを特徴とする。
本発明の磁束発生装置は、仕切り板のない本棚形状を有し、背面に基本形状を有する基本アンテナを複数備えると共に、各基本アンテナの境界に磁束の弱まる領域を補正するための境界アンテナを備える。そして両側の磁束を補強するために両側板を磁性材料により構成するものである。また、この磁束発生装置は基本アンテナを底面に配置するようにしても良い。
【0008】
請求項2は、前記境界アンテナを構成する磁性材料の両端部に前記各基本アンテナを構成する磁性材料から放射される磁束を遮断するための導体を配置したことを特徴とする。
境界アンテナには、隣接する基本アンテナの終端又は始端のリード線が交叉して巻きまわされている。従って、基本アンテナのループコイルに電流が流れると、必然的に基本アンテナと境界アンテナの磁性材料に磁束が発生する。その磁束は電流が流れていない隣接する基本アンテナの磁性材料に流れ込み、本来の磁束のルートを乱してしまう。そこで本発明では、境界アンテナを構成する磁性材料の両端部に導体を配置してこの不要な磁束の磁路を遮断するものである。
【0009】
請求項3は、前記基本アンテナ及び境界アンテナと前記非接触情報記録媒体との位置関係が、前記基本アンテナ及び境界アンテナから放射される磁束が前記非接触情報記録媒体
本発明の基本アンテナと境界アンテナから放射される磁束は、磁性材料の端部から放射されて端部に戻る磁路を形成する。従って、非接触情報記録媒体を構成するループアンテナと磁束が直交するように交差するのが最適である。
【0010】
請求項4は、前記側板の磁性材料の外側に隣接した空間への磁束の漏洩を防止する導体を設けたことを特徴とする。
側板が磁性体で構成されている場合、磁性体から磁束が外部に漏洩する可能性がある。そして、他の磁束発生装置が隣接して配置された場合、その漏洩した磁束が隣接した磁束発生装置に通過してデータを乱したり、逆に、隣接した磁束発生装置からの磁束によりデータが乱される虞がある。そこで、本発明では、磁束が磁性材料から漏洩するのを防止するために、側板の外側に導体を設けて磁束を遮断するものである。
【0011】
請求項5は、非接触情報記録媒体を取り付けた物品を管理収納する物品管理収納装置であって、請求項1、2又は3に記載の磁束発生装置と、前記基本アンテナの何れか1つを選択するアンテナ選択手段と、前記非接触情報記録媒体との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダライタと、前記アンテナ選択手段及び前記リーダライタを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明の物品管理収納装置は、本発明の磁束発生装置を構成する基本アンテナを順次選択して切り替え、そのとき読み取られた情報を制御手段により管理するものである。本装置は、磁束発生装置に収納された物品は、残らず正確に管理することができる。
【0012】
請求項6は、前記非接触情報記録媒体は、RFタグ又はICカードであることを特徴とする。
磁界の変化或いは電波を受信して情報の授受を行い、且つそれを非接触で行う記録媒体としてはRFタグ又はICカードが最適である。特に、RFタグ又はICカードに効率よく磁束を通すことができるので、最小動作磁界強度の大きい共振特性を持たない積層型RFタグ又は積層ICカードに有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、仕切り板のない本棚形状を有し、背面に基本形状を有する基本アンテナを複数備えると共に、各基本アンテナの境界に磁束の弱まる領域を補正するための境界アンテナを備え、両側の磁束を補強するために両側板を磁性材料により構成するので、磁束発生装置全域に亘って磁界強度を略一定とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。このリーダライタ100は、リーダライタ100との間でデータの授受を行ってシステム全体を制御するPC50によって制御される。リーダライタ100は、外部のPC50とのデータの通信プロトコルを司る送受信装置1と、リーダライタ100全体の動作を制御する制御装置2と、制御装置2を動作させる手順を記録したファームウェアと読み取ったデータを格納するメモリ装置3と、制御装置2からのデータを搬送波に乗せて変調する変調器4と、操作コマンドを入力する入力装置5と、制御装置2により制御された情報を表示する表示装置6と、制御装置2からの交流信号である電力供給用信号と変調器4からの書き込みコマンドを電力増幅する電力増幅器7と、ループアンテナ9から受信した搬送波から2値化データに変換する検波復調器8と、図示しないICカード(RFタグ)との電力用搬送波とデータの授受をするループアンテナ9とを備えて構成されている。
【0015】
次に、本構成によるリーダライタ100の動作を説明する前に、ICカード(RFタグ)の構成を先に説明しておく。図2は、本発明のICカード(RFタグ)の構成を示すブロック図である。本実施形態のICカード(RFタグ)200は、リーダライタ100からの電力用搬送波によりデータの授受をするアンテナ20と、書き込みコマンド読み出しコマンドを生成する送受信回路21と、アンテナ20からの電力用搬送波を受け、それを整流して直流電力に変換する電力生成回路22と、制御用ファームウェアとデータの記憶を司るメモリ装置23と、制御回路26からの送信コマンドに搬送波を乗せて変調する変調器24と、送受信回路21からの搬送波データから2値化データに変換する検波器25と、ICカード(RFタグ)200の全体の動作を制御する制御回路26から構成されている。
【0016】
次に、図1と図2を併せて参照してそれぞれ単独の動作について説明する。リーダライタ100は、図示しない電源が入れられると制御装置2のイニシャル動作後、メモリ装置3に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。まず、初期化が行われる。次に、制御装置2は、ICカード(RFタグ)200に供給する電力供給用信号と、ポーリング信号を交互に電力増幅器7から送信する。その信号は、ループアンテナ9から電磁波として外部に放射される。次に、ICカード(RFタグ)200がリーダライタ100に近接すると、アンテナ20が電力供給用信号を受信し、電力生成回路22によりその搬送波を整流して直流電力に変換して、RFタグ内の全ての回路に供給する。電力を供給されて制御回路26が駆動すると、メモリ装置23に格納されたプログラムに従って、制御を開始する。
【0017】
次に、制御回路26は、まず送受信回路21からコマンドを検波器25で復調して2値化信号に変換し、そのコマンドを解析する。その結果自分が呼び出されていることを認識すると、レスポンスを変調器24により変調して送受信回路21を介してアンテナ20から送信する。このレスポンスをリーダライタ100がループアンテナ9で受信して、検波復調器8で2値化コードに変換し、制御回路2により解析してICカード(RFタグ)200が規格に合致したICカード(RFタグ)であると認識する。それにより、以後リーダライタ100とICカード(RFタグ)200の間でポーリングが行われる。
【0018】
図3は本発明の磁束発生装置の外観構成図である。この磁束発生装置110は、板状の磁性材料にループコイルを巻き回した基本アンテナ33、35、37と、隣接配置された各基本アンテナ33、35及び35、37の境界に配置される境界アンテナ34、36と、各基本アンテナ33、37と直交するように配置された2つの側板31、39と、基本アンテナ33、35、37、境界アンテナ34、36及び側板31、39を固定する底板38と、を備えて構成される。そして、境界アンテナ34、36は、隣接配置された各基本アンテナ33、35及び35、37に巻き回されたループコイルの終端又は始端の一部が互いに交叉するようにループコイルを磁性材料に巻き回して構成される(詳細は後述する)。また側板31、39は、基本アンテナ33、35、37の磁性材料と磁気的に接続された磁性材料により構成されている。従って、各アンテナから放射される磁束は、例えば図の矢印40のように、側板39から側板31に向かって放射され、その間に例えばファイル32に取り付けられたRFタグ200があると、RFタグ200に記録されている情報を基本アンテナの何れかから読み取ることができる。即ち、ファイル32が磁束発生装置110内にあれば、どこでも情報を読み取ることが可能である。また、本実施形態ではファイル32を1つとしたが、磁束発生装置110内に収納可能であれば、いくつでも構わない。その場合、RFタグ又はICカードに効率よく磁束を通すことができるので、最小動作磁界強度の大きい共振特性を持たない積層型RFタグ又は積層ICカードに有効である。
【0019】
尚、本実施形態では側板31、39の磁性材料と基本アンテナ33、37の磁性材料が個別に構成されているが一体でも構わない。また、この磁束発生装置110は基本アンテナを底面(底板38内)に配置するようにしても良い。また、側板31のB面、側板39のA面に、隣接した空間への磁束の漏洩を防止する導体を密着するように設けるようにしても良い。
【0020】
図4は本発明の磁束発生装置の動作を説明するための磁束の流れを表す模式図である。(a)は従来例との比較をするための磁束を表す図、(b)は(a)の磁束によって形成される磁界強度の分布図、(c)は本発明の磁束を表す図、(d)は(c)の磁束によって形成される磁界強度の分布図である。
図4(a)より、従来の磁束発生装置は、フェライト等の磁性材料46にそれぞれループコイルA、B、Cが個別に巻き回され、それぞれのループコイルに図示しないリーダライタにより電流を流すと、磁束a、b、cが発生する。このときの磁束発生装置内の磁界の強度を模式的に表すと、図4(b)のようになる。即ち、縦軸を磁界の強度、横軸を磁性材料46の各位置に対応させると、磁界強度Pは各磁性材料46の境界で41〜44のように変動し、もし、この部分にRFタグが存在した場合、磁界強度が弱いため、読み取りエラーを発生する虞がある。尚、各ループコイルの境界に補正用のループコイルを備えることにより、破線Qのようにある程度磁界強度を強めることができるが、両端41、44では依然として磁界強度を補正することはできない。
【0021】
そこで本発明では、図4(c)のように、フェライト等の磁性材料33、35、37にそれぞれループコイルA、B、Cが個別に巻き回され、その境界に磁性材料34、36を備え、この磁性材料34、36に隣接配置されたループコイルAの終端からのリード線とループコイルBの始端からのリード線が交叉するように接続し、ループコイルBの終端からのリード線とループコイルCの始端からのリード線が交叉するように接続する(詳細は後述する)。また、磁性材料33と37の端部に直角に磁性材料31、39を磁気的に接続する。
この状態から、それぞれのループコイルに図示しないリーダライタにより電流を流すと、磁束a、b、cが発生する。このときの磁束発生装置内の磁界の強度を模式的に表すと、図4(d)にようになる。即ち、縦軸を磁界の強度、横軸を磁性材料の各位置に対応させると、磁界強度Pは各磁性材料の全域に亘って略フラットな磁界強度となる。これは、両端においては、磁性材料31、39により磁路が形成され、その端部から磁性材料33、37に戻る磁束が形成されるため、磁界の強さはむしろ強められるようになる。また、それ以外の領域においては、境界の磁性材料34、36の効果により変動を補正することができる。
【0022】
図5は本発明の磁束発生装置を構成する各アンテナの構成を説明する図である。(a−1)は基本アンテナの外観構成図、(a−2)はその模式図、(b−1)は境界アンテナの外観構成図、(b−2)はその模式図、(c−1)は基本アンテナと境界アンテナを組み合わせた場合の外観構成図、(c−2)はその模式図、(d)は(c−1)の基本アンテナと境界アンテナを組み合わせた場合の平面図、(e)はその模式図である。
本発明の基本アンテナ60は、磁性材料62にループコイル61を巻き回して構成される。図ではループコイル61を3回巻き回した場合を表している。そして、一般的にはループコイル61はプリントパターンとして基板上に形成され、フェライトコア等の磁性材料62を挟むようにしてコネクタにより接続して構成される。また境界アンテナ63は、磁性材料65にループコイル61a、61bを巻き回した構成を備え、ループコイル61a、61bは(c−1)で説明するように隣接配置された各基本アンテナ60を構成するループコイル61aの終端からのリード線66又は始端からのリード線67が交叉するように接続されて構成される。また、(b−1)では、境界アンテナ63を構成する磁性材料65の両端部に各基本アンテナ60を構成する磁性材料62から放射される磁束を遮断するための導体64を配置したが、特に導体64を配置しなくともよい。
【0023】
次に図5(c−1)、(c−2)を参照して本発明の磁束発生装置の特に境界アンテナの動作について説明する。一例として隣接する2つの基本アンテナ60a、60bと、その境界に配置された境界アンテナ63aの基本構成について説明する。
本発明の磁束発生装置の基本構成は、隣接する2つの基本アンテナ60a、60bと、その境界に配置された1つの境界アンテナ63aにより構成される。そして左側の磁性材料62aに巻き回されたループコイル61aは、その終端から伸びたリード線66により境界アンテナ63aの磁性材料65の右側に巻き回される。また、右側の磁性材料62bに巻き回されたループコイル61bは、その始端から伸びたリード線67により境界アンテナ63aの磁性材料65の左側に巻き回される。これにより、隣接配置された各基本アンテナ60a、60bを構成するループコイル61aの終端からのリード線66又はループコイル61bの始端からのリード線67が交叉するように接続されて構成される。
【0024】
そして、ループコイル61aに電流が流れると、左側の磁性材料62aに磁束が発生すると共に、リード線66を介して境界アンテナ63aのループコイル61aにも電流が流れるので、その磁性材料65にも磁束が発生する。その結果、図4(c)で説明したような磁束aが発生する。また、ループコイル61bに電流が流れると、右側の磁性材料62bに磁束が発生すると共に、リード線67を介して境界アンテナ63aのループコイル61bにも電流が流れるので、その磁性材料65にも磁束が発生する。その結果、図4(c)で説明したような磁束bが発生する。このように、基本構成のアンテナを縦列することにより、所定の幅の磁束発生装置を構成することができる。尚、各基本アンテナと境界アンテナは所定の間隔を置いて配列し、且つ磁束の方向が同一となるように配列される。また、境界アンテナ63の端部に図5(b−1)のように導体64を備えることにより、基本アンテナと境界アンテナの境界の磁束の方向を急峻に立ち上げる効果がある。
【0025】
次に図5(d)を参照して各基本アンテナと境界アンテナとの関係について説明する。本発明の磁束発生装置の1つのアンテナの構成は、基本アンテナと境界アンテナからなる。即ち、ループコイル61aにより構成される基本アンテナ60aと右側に隣接する境界アンテナ63aを構成するループコイル61aまでがアンテナAとなり、ループコイル61bにより構成される基本アンテナ60bと左側に隣接する境界アンテナ63aを構成するループコイル61bまでがアンテナBとなり、以下同様にしてアンテナC、Dが構成される。
【0026】
ループコイルと各磁性材料との関係を更に判りやすく表すと図5(e)のようになる。即ち、端部の磁束の方向を変更するための直角に突き出た磁性材料80を備えたアンテナAのループコイル61aは、端子Aから磁性材料62aを巻き回り、且つ磁性材料65aに交叉するように巻き回って端子B間に形成される。またアンテナBのループコイル61bは、端子Cから磁性材料65aに交叉するように巻き回って磁性材料62bを巻き回り端子D間に形成される。同様にして、アンテナCのループコイル61cは、端子Eから磁性材料65bに交叉するように巻き回って磁性材料62cを巻き回り端子F間に形成される。
このように、順次ループコイルを形成することにより、理論的には無限の間隔を備えた磁束発生装置を構成することができる。
【0027】
図6は本発明の物品管理収納装置のブロック図である。この物品管理収納装置120は、図3の磁束発生装置110と、基本アンテナ33、35、37の何れか1つを選択するアンテナ選択器(アンテナ選択手段)70と、物品に付されたRFタグ(非接触情報記録媒体)200との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うR/W(リーダライタ)100と、アンテナ選択器70及びR/W100を制御線71を介して制御するPC(制御手段)50と、を備えて構成される。
【0028】
次に物品管理収納装置120の動作について説明する。本説明では磁束発生装置110にRFタグが付された書類が収納され、その書類の管理を行う場合について説明する。まず、PC50はアンテナ選択器70を駆動して磁束発生装置110を構成する基本アンテナ33を選択する。これにより基本アンテナ33とR/W100が電気的に接続されたことになる。次にR/W100を駆動して図1、図2で説明した動作に従ってポーリング動作を行い、磁束発生装置110内に磁束を発生する。これにより書類に付されたRFタグ200の情報がPC50に取り込まれる。次にPC50は基本アンテナを35に切り替えて前記と同様な動作を行う。以下、順次基本アンテナを切り替えながら磁束発生装置110内に収納されている書類に付されたRFタグ200の情報を読み取る。尚、アンテナ選択器70を基本アンテナの配列順に切り替えたが、ランダムに切り替えても構わない。また書類に付されたタグは、積層型RFタグ又は積層型ICカードである。
【0029】
以上の通り本発明によれば、仕切り板のない本棚形状を有し、背面に基本形状を有する基本アンテナ33、35、37を複数備えると共に、各基本アンテナ33、35、37の境界に磁束の弱まる領域を補正するための境界アンテナ34、36を備え、両側の磁束を補強するために両側板31、39を磁性材料により構成するので、磁束発生装置全域に亘って磁界強度を略一定とすることができる。
【0030】
また、境界アンテナ63を構成する磁性材料65の両端部に各基本アンテナを構成する磁性材料から放射される磁束を遮断するための導体64を配置したので、境界アンテナ63から隣接する基本アンテナへの不要な磁束を遮断することができる。
【0031】
また、基本アンテナ60及び境界アンテナ63とRFタグ200との位置関係が、基本アンテナ60及び境界アンテナ63から放射される磁束がRFタグ200を構成するループアンテナと交叉するように配置されるので、最も効率よく基本アンテナ60からの磁束を受信することができる。
【0032】
また、本発明の磁束発生装置110を構成する基本アンテナをアンテナ選択器70により順次選択して切り替え、そのとき読み取られた情報をPC50により管理するので、磁束発生装置110に収納された物品を正確に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一般的なリーダライタの構成を示すブロック図である。
【図2】ICカード(RFタグ)の構成を示すブロック図である。
【図3】磁束発生装置の外観構成図である。
【図4】(a)は従来例との比較をするための磁束を表す図、(b)は(a)の磁束によって形成される磁界強度の分布図、(c)は本発明の磁束を表す図、(d)は(c)の磁束によって形成される磁界強度の分布図である。
【図5】(a−1)は基本アンテナの外観構成図、(a−2)はその模式図、(b−1)は境界アンテナの外観構成図、(b−2)はその模式図、(c−1)は基本アンテナと境界アンテナを組み合わせた場合の外観構成図、(c−2)はその模式図、(d)は(c−1)の基本アンテナと境界アンテナを組み合わせた場合の平面図、(e)はその模式図である。
【図6】本発明の物品管理収納装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
33、35、37 基本アンテナ、34、36 境界アンテナ、31、39 側板、38 底板、50 PC、70 アンテナ選択器、100 リーダライタ、110 磁束発生装置、120 物品管理収納装置、200 RFタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に取り付けた非接触情報記録媒体のループアンテナを貫通する磁束を発生する磁束発生装置であって、
磁性材料にループコイルを巻き回した少なくとも2つの基本アンテナと、
隣接配置された前記各基本アンテナの境界に配置される少なくとも1つの境界アンテナと、
前記各基本アンテナと直交するように配置された2つの側板と、を備え、
前記境界アンテナは、磁性材料にループコイルを巻き回した構成を備え、該ループコイルは隣接配置された前記各基本アンテナを構成するループコイルの終端からのリード線又は始端からのリード線が交叉するように接続されて構成され、
前記側板は、前記基本アンテナの磁性材料と磁気的に接続された磁性材料により構成されていることを特徴とする磁束発生装置。
【請求項2】
前記境界アンテナを構成する磁性材料の両端部に前記各基本アンテナを構成する磁性材料から放射される磁束を遮断するための導体を配置したことを特徴とする請求項1に記載の磁束発生装置。
【請求項3】
前記基本アンテナ及び境界アンテナと前記非接触情報記録媒体との位置関係が、前記基本アンテナ及び境界アンテナから放射される磁束が前記非接触情報記録媒体を構成するループアンテナと交叉するように配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁束発生装置。
【請求項4】
前記側板の磁性材料の外側に隣接した空間への磁束の漏洩を防止する導体を設けたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の磁束発生装置。
【請求項5】
非接触情報記録媒体を取り付けた物品を管理収納する物品管理収納装置であって、
請求項1、2、3又は4に記載の磁束発生装置と、
前記基本アンテナの何れか1つを選択するアンテナ選択手段と、
前記非接触情報記録媒体との間で所定の変復調方式に基づく搬送電力の送信とデータの授受を行うリーダライタと、
前記アンテナ選択手段及び前記リーダライタを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする物品管理収納装置。
【請求項6】
前記非接触情報記録媒体は、RFタグ又はICカードであることを特徴とする請求項5に記載の物品管理収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−310740(P2007−310740A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140730(P2006−140730)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】