説明

磁気カップリング装置

【課題】一定速運転と一定加減速度運転可能な磁気カップリング装置を目的とする。
【解決手段】 所定の回転速度の駆動入力軸3aと従動出力軸4間を磁気的に連繋する駆動磁石5と従動磁石6とをギャップを介して同軸上に対向配置させるとともに、駆動磁石5と従動磁石6のいずれかを軸線方向にねじ送り自在として磁気伝達トルク値を可変とし、前記従動出力軸4が磁気伝達トルク値に従う定加減速運転と、駆動入力軸3aの回転速度に従って定速運転とを行う磁気カップリング装置であって、前記駆動磁石5と従動磁石6間の磁気伝達トルク値を駆動入力軸3aの回転トルクより小さくするとともに、従動出力軸4と駆動入力軸3aのいずれかに固定される雄ねじ部9にスライド自在に係合され、前記雄ねじ部9に螺挿される雌ねじ部8に対して回り止め係合されるねじ送りスライダ10を駆動磁石5と従動磁石6のいずれかに設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気カップリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石を移動させることにより磁束の量を変化させてトルクを可変とするトルク伝達装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、出力軸の立ち上がり時や停止時の加速度や減速度を調整自在とする加減速度調整自在な磁気カップリング装置は実用化されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−52950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は定速運転と所定の磁気伝達トルク値に基づいて定加減速運転を行うことができる磁気カップリング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の回転速度の駆動入力軸と従動出力軸間を磁気的に連繋する駆動磁石と従動磁石とをギャップを介して同軸上に対向配置させるとともに、駆動磁石と従動磁石のいずれかを軸線方向にねじ送り自在として磁気伝達トルク値を可変とし、前記従動出力軸が磁気伝達トルク値に従う定加減速運転と、駆動入力軸の回転速度に従って定速運転とを行う磁気カップリング装置であって、前記駆動磁石と従動磁石間の磁気伝達トルク値を駆動入力軸の回転トルクより小さくするとともに、従動出力軸と駆動入力軸のいずれかに固定される雄ねじ部にスライド自在に係合され、前記雄ねじ部に螺挿される雌ねじ部に対して回り止め係合されるねじ送りスライダを駆動磁石と従動磁石のいずれかに設けたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、ねじ送りスライダが雌ねじ部に形成された環状溝に係合されるピンと、雄ねじ部に形成されたスリットに係合される角形部よりなるものとしたり、駆動磁石と従動磁石が交互に異極を配置させた多数の磁石片よりなるものとしたりすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、所定の回転速度の駆動入力軸と従動出力軸間を磁気的に連繋する駆動磁石と従動磁石とをギャップを介して同軸上に対向配置させるとともに、駆動磁石と従動磁石のいずれかを軸線方向にねじ送り自在として磁気伝達トルク値を可変とし、前記従動出力軸が磁気伝達トルク値に従う定加減速運転と、駆動入力軸の回転速度に従って定速運転とを行う磁気カップリング装置であって、前記駆動磁石と従動磁石間の磁気伝達トルク値を駆動入力軸の回転トルクより小さくするとともに、従動出力軸と駆動入力軸のいずれかに固定される雄ねじ部にスライド自在に係合され、前記雄ねじ部に螺挿される雌ねじ部に対して回り止め係合されるねじ送りスライダを駆動磁石と従動磁石のいずれかに設けたことにより、駆動磁石と従動磁石との重なり合う面積を増減させて従動出力軸の加減速度特性の変更ができるので、種々の使用条件に適用できる極めた汎用性の高いものとなる。また、インバータによるモータ制御を行わなくても加減速度特性の変更ができるので装置を安価なものとすることができる。しかも、急制動をかけた場合、駆動磁石と従動磁石とがスリップするのでモータへの過負荷を防止できる。さらに、従動出力軸に連結されるモータは使用条件に合わせたものを特注せず大容量の規格品を組み付ければよいので、製造コストを安価なものとすることができるうえに、大トルクを必要とするものから小トルクのものまで対応できる。
【0009】
また、請求項2のように、ねじ送りスライダが雌ねじ部に形成された環状溝に係合されるピンと、雄ねじ部に形成されたスリットに係合される角形部よりなるものとすることにより、ねじ送りされる駆動磁石あるいは従動磁石を円滑、且つ簡単に軸線方向にスライドさせることができる。さらに、請求項3のように、駆動磁石と従動磁石が交互に異極を配置させた多数の磁石片よりなるものとすることにより、加減速度特性や受け止める最大トルクをきめ細かく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を示す断面図である。
【図2】同じく図1のA−A断面図である。
【図3】同じく図1のB−B断面図である。
【図4】駆動磁石と従動磁石の配置パターンを示す概略図である。
【図5】ローラコンベア装置に組み込んだ状態を示す側面図である。
【図6】磁気伝達トルク値を変えた際の加減速度特性の変化を示す速度線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明装置の実施例を図に基づいて詳細に説明する。
図1中、1は磁気カップリング装置であって、該磁気カップリング1は筒状本体2に取付けられる減速機付モータ3と、前記筒状本体2より突出される従動出力軸4とからなり、前記筒状本体2には減速機付モータ3の駆動入力軸3aに連繋される駆動磁石5と、従動出力軸4に取付けられる従動磁石6とが設けられている。該駆動磁石5と従動磁石6とは同軸上に対向配置され、駆動磁石5は従動磁石6に対して軸線方向にねじ送り自在とされている。
【0012】
前記駆動磁石5は図3、4に示されるように、交互に異極を配置させた多数の磁石片5aを環状リング50に取付けたものである。また、従動磁石6は図3、4に示されるように、交互に異極を配置させた多数の磁石片6aを環状リング60に取付けたものである。そして、駆動磁石5の磁石片5aと従動磁石6の磁石片6aは異極を向き合わせて磁気吸引されて磁気的に連繋されるとともに、磁気伝達トルク値を可変としている。
【0013】
また、駆動磁石5と従動磁石6とが同位置に配置される最大磁力のときの磁気伝達トルク値は減速機付モータ3(駆動入力軸3a)の回転トルクよりも小さくしているので、減速機付モータ3の起動時や停止時に大きなトルクが加わった際、駆動磁石5と従動磁石6とはスリップして過大なトルクを逃がすことができる。なお、駆動入力軸3aの回転数は減速機付モータ3の回転数に基づくもので、自由に変更できるようになっている。
【0014】
前記減速機付モータ3の入力軸3aは雄ねじ部9に固定され、雄ねじ部9は雌ねじ部8に螺挿される。駆動磁石5は図1、3に示されるように、4個のねじ送りスライダ10を介して雌ねじ部8と雄ねじ部9に取付けられる。前記ねじ送りスライダ10は側面を雄ねじ部9のスリット9aに係合させた角形部10aと、雌ねじ部8の先端内周面に形成される環状溝8aにスライド自在に嵌合されるピン10bとからなる。
【0015】
また、雄ねじ部9は先端を開口させたコップ形状であり、図1、3に示されるように、先端開口から中間部付近まで前記スリット9aが90°間隔に形成されて4個のねじ送りスライダ10を軸線方向にスライドガイドできるようになっている。
【0016】
このため、図2に示されるように、雌ねじ部8の外周に45°間隔で穿設されるレバー挿込孔12に図示しない操作レバーを挿し込んで、操作レバーにより雌ねじ部8を雄ねじ部9に対して左回転させれば、雌ねじ部8は雄ねじ部9に対して緩む方向、即ち、雄ねじ部9より抜け出ることとなる。このため駆動磁石5と従動磁石6との重なり合い面積は減少して両者間に作用する磁気伝達トルク値は低下することとなる。
【0017】
また、雄ねじ部9より抜け出た雌ねじ部8を操作レバーにより右回転させれば、雌ねじ部8は雄ねじ部9に螺合されて駆動磁石5と従動磁石6との重なり合い量は増加していき、雌ねじ部8が後記ベアリング17に当接したとき駆動磁石5と従動磁石6との重なり合い面積は最大となり、磁気伝達トルク値は最大となる。
【0018】
13は図2に示されるように、雄ねじ部9と雌ねじ部8とを回り止めする止めねじであり、該止めねじ13は雌ねじ部8に螺着されて先端を雄ねじ部9に圧着している。
【0019】
15は出力軸4に取付けられるチェンスプロケット、16は従動出力軸4の両端部を張架軸支する左右のベアリングであり、該ベアリング16により従動磁石6は軸芯に配置される。17は雄ねじ部9の両端部を張架軸支する左右のベアリングであり、該ベアリング17により駆動磁石5は軸芯に配置される。
【0020】
18はオイルシール、19は筒状本体2に形成される切欠20に被套される遮蔽蓋であり、該遮蔽蓋19を開放して露呈される雌ねじ部8のレバー挿込孔12に操作レバーを挿し込み操作レバーを揺動させることにより、雌ねじ部8を雄ねじ部9に対して締め付けたり緩めたりして、従動磁石6に対する駆動磁石5の重なり合い量を増減して、磁気吸着力を強めたり弱めたりして、図5に示されるように、出力を行う従動出力軸4のトルクや加減速度を調整する。21はフッシュである。50は駆動磁石5を取付ける環状リング50、60は従動磁石6を取り付ける環状リングである。
【0021】
このような磁気カップリング装置1を図5に示されるようにローラコンベア装置に組み付けたうえ、ローラコンベアのチェンスプロケットと従動出力軸4のチェンスプロケット15にチェンを巻き掛ける。次に、搬送品の重量や搬送速度に応じて磁気伝達トルク値の調整を行う。
【0022】
この調整は、遮蔽蓋19を取り外して切欠20を開放させたうえ、作業者は図示しない操作レバーを雌ねじ部8の外周面上に露呈されている雌ねじ部8のレバー挿込孔12に挿し込んで雌ねじ部8を回動させる。
【0023】
この操作により、雌ねじ部8は図1上において、左方に移動し、雄ねじ部9とぴったり重なり合った状態からずれてゆき重なり合い長は減少するので、駆動磁石5と従動磁石6との磁気吸着力は低下して磁気伝達トルク値は減少することとなり、減速機付モータ3(入力軸3a)の回転トルクとの差は大きくなるので、加減速度は抑えられ、従動出力軸4に伝達されるトルクも減少する。また、逆の操作を行えば、駆動入力軸3aの回転トルクと駆動磁石5と従動磁石6とによる磁気伝達トルク値との差は小さくなるので、加減速度を大きくすることができる。さらに、ローラコンベアの搬送速度は減速機付モータ3の回転速度により決まり一定速運転を行う。
【0024】
なお、実施例においては、雌ねじ部8を手動で操作するものとしているが、雌ねじ部8を正逆回動自在なモータで回転させて操作するものとすれば、加速度と減速度、あるいはローラコンベアにかかる最大トルクを稼働中に制御することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 磁気カップリング装置
2 筒状本体
3 減速機付モータ
3a 駆動入力軸
4 従動出力軸
5 駆動磁石
5a 磁石片
6 従動磁石
6a 磁石片
8 雌ねじ部
8a 環状溝
9 雄ねじ部
9a スリット
10 ねじ送りスライダ
10a 角形部
10b ピン
12 レバー挿込孔
13 止めねじ
15 チェンスプロケット
16 ベアリング
17 ベアリング
18 オイルシール
19 遮蔽蓋
20 切欠
21 ブッシュ
50 環状リング
60 環状リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転速度の駆動入力軸と従動出力軸間を磁気的に連繋する駆動磁石と従動磁石とをギャップを介して同軸上に対向配置させるとともに、駆動磁石と従動磁石のいずれかを軸線方向にねじ送り自在として磁気伝達トルク値を可変とし、前記従動出力軸が磁気伝達トルク値に従う定加減速運転と、駆動入力軸の回転速度に従って定速運転とを行う磁気カップリング装置であって、前記駆動磁石と従動磁石間の磁気伝達トルク値を駆動入力軸の回転トルクより小さくするとともに、従動出力軸と駆動入力軸のいずれかに固定される雄ねじ部にスライド自在に係合され、前記雄ねじ部に螺挿される雌ねじ部に対して回り止め係合されるねじ送りスライダを駆動磁石と従動磁石のいずれかに設けたことを特徴とする磁気カップリング装置。
【請求項2】
ねじ送りスライダが雌ねじ部に形成された環状溝に係合されるピンと、雄ねじ部に形成されたスリットに係合される角形部よりなることを特徴とする請求項1に記載の磁気カップリング装置。
【請求項3】
駆動磁石と従動磁石が交互に異極を配置させた多数の磁石片よりなるものとしたことを特徴とする請求項1または2に記載の磁気カップリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−43194(P2011−43194A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190767(P2009−190767)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】