磁気シールドパネルの連結構造及び方法
【課題】パネル間の端縁の接続容易性を向上させた開放型磁気シールドパネル構造を提供する。
【解決手段】矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板13がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、短冊形電磁鋼板13の長手方向における両端部がパネル芯材12の側端部からそれぞれ突出されている電磁シールドパネル1を、その短冊形電磁鋼板13の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態となるように隣接配置し、隣接配置した互いの短冊形電磁鋼板13の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板17を架設し、さらに短冊形電磁鋼板13と連結用の電磁鋼板17とを止着する。
【解決手段】矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板13がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、短冊形電磁鋼板13の長手方向における両端部がパネル芯材12の側端部からそれぞれ突出されている電磁シールドパネル1を、その短冊形電磁鋼板13の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態となるように隣接配置し、隣接配置した互いの短冊形電磁鋼板13の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板17を架設し、さらに短冊形電磁鋼板13と連結用の電磁鋼板17とを止着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を使用する閉空間から外部への磁気の影響を遮蔽し、或いは磁気を使用する閉空間への外部からの磁気の影響を遮蔽する際に好適な磁気シールドパネルの連結構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳磁計測や心磁計測などのように微弱な磁場を測定し検出する生体磁気測定システムや、半導体製造プロセスに際し微細な回路パターンを電子線で描画する電子線描画装置等のいわゆる磁気利用装置では、測定磁場や電子線が外部からの磁気的な影響を受けるのを防止することにより、正常な動作を保証する必要がある。また、このような磁気利用装置の磁気的影響から他の機器を保護するため、磁気シールド対象空間を壁面で覆う磁気シールド壁体に対する要求が高まっている。
【0003】
従来における磁気シールド壁体としては、例えば、透磁率の高い方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板、パーマロイ、軟磁性鋼板、アモルファス、液体急冷薄帯を結晶化させた微結晶磁性材料等からなる磁性板により、シールド対象空間の壁面を構成する、いわゆる密閉型磁気シールド構造が提案されている。しかしながら、この密閉型磁気シールド構造は、磁性体の材料特性から期待されるようなシールド特性を得ることが困難な場合もあり、また空気や光の透過性を得ることができないという問題点があった。
【0004】
このため、磁性材料板の群を簾状又はルーバ状に並べて構成した、いわゆる開放型磁気シールド構造が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。この開放型磁気シールド構造では、短冊状又は長尺状の磁性材料板を板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り積層させることにより列状簾体を形成させる。このような列状簾体を構成することにより、密閉型磁気シールド構造と比較して高いシールド性能を示すことが実験的に確認されている。またこの開放型磁気シールド構造では、空気や光の透過性も良好となる。
【特許文献1】特開2002−164686号公報
【特許文献2】特開2006−351598号公報
【特許文献3】PCT/JP2004/003457
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の如き開放型磁気シールドパネル構造では、例えば図9(a)に示すように複数枚に亘る磁性材料薄板78を板厚方向に積層することにより、一枚の磁性材料板74を構成する場合もある。このとき、磁性材料薄板78の端縁を不揃いとすることにより長手方向の積層断面に当該磁性材料薄板78の突出による凹凸構造を形成し、図9(b)に示すように、2つの磁性材料体74をこの端縁の凹凸の嵌合により、列状又は環状に結合することが可能となる。特に、端縁の凹凸数を増加させるほど、またこの1つの凹凸を構成する磁性材料薄板78の枚数を減らすほど磁束漏洩をより小さく抑えることが可能となる。
【0006】
しかしながら、この端縁の凹凸のピッチが小さいことから、実際にこの2つの磁性材料体74を結合する際において、僅かな位置ずれや寸法のずれ等が発生した場合に、この端縁の凹凸を嵌合させることができないという問題点があった。また、特許文献3の開示技術では、図9(c)に示すように、端縁の凹凸数を2段で構成し、1つの凹凸を構成する磁性材料薄板78の枚数を増加させた磁性材料体79例も開示されている。
【0007】
しかしながら、このような磁性材料体79を左右、上下逆に取り付けてしまう場合が少なからず存在し、このような僅かな施工ミス、加工ミスにより端縁の嵌合ができなくなるという問題点があった。また、僅かな位置ずれや寸法のずれ等の具体的な量が、実際に現場での施工時に判明する場合もあるが、上述の如き磁性材料体79においても、このようなずれを即座に修正することができないという問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、パネル間の端縁の接続容易性を向上させた開放型磁気シールドパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る磁気シールドパネルの連結構造は、上述した課題を解決するために、矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、上記短冊形電磁鋼板の長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている磁気シールドパネルを、その上記短冊形電磁鋼板の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態で隣接配置して構成され、上記隣接配置された磁気シールドパネルにおける互いの短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板が架設され、さらに上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とは、止着手段により止着されていることを特徴とする。
【0010】
本願請求項2に係る磁気シールドパネルの連結構造は、請求項1記載の発明において、上記止着手段は、クリップ及び/又は接着剤であることを特徴とする。
【0011】
本願請求項3に係る磁気シールドパネルの連結構造は、請求項1又は2記載の発明において、上記連結用の電磁鋼板が架設される上記短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に磁性材料で構成される薄肉スペーサを積層させることにより、上記連結用の電磁鋼板の当接面が水平となるように調整されていることを特徴とする。
【0012】
本願請求項4に係る磁気シールドパネルの連結構造は、請求項1〜3のうち何れか1項記載の発明において、上記連結用の電磁鋼板の断面積の総和Bは、上記短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きいことを特徴とする。
【0013】
本願請求項5に係る磁気シールドパネルの連結方法は、矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、上記短冊形電磁鋼板の長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている上記電磁シールドパネルを、その上記短冊形電磁鋼板の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態となるように隣接配置し、上記隣接配置した互いの短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板を架設し、さらに上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とを止着することを特徴とする。
【0014】
本願請求項6に係る磁気シールドパネルの連結方法は、請求項5記載の発明において、クリップ及び/又は接着剤により、上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とを止着することを特徴とする。
【0015】
本願請求項7に係る磁気シールドパネルの連結方法は、請求項5又は6記載の発明において、上記連結用の電磁鋼板が架設される上記短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に磁性材料で構成される薄肉スペーサを積層することにより、上記連結用の電磁鋼板の当接面が水平となるように調整することを特徴とする。
【0016】
本願請求項8に係る磁気シールドパネルの連結方法は、請求項5〜7のうち何れか1項記載の発明において、上記短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きい断面積の総和Bからなる連結用の電磁鋼板を架設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述の如き構成からなる本発明を適用した磁気シールドパネルの連結構造では、短冊形電磁鋼板の上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板を架設している。即ち、磁気シールドパネルの連結部分においても電磁鋼板を連続させることができるため、簾状又はルーバ状に並べた電磁鋼板が、かかる連結部分において途切れることが無くなり、互いに連結された磁気シールドパネル全面に亘って磁気シールド性能を発揮させることが可能となる。
【0018】
また、本発明を適用した磁気シードルパネルの連結構造では、短冊形電磁鋼板の端縁に凹凸や段差を設けることなく、面一で構成している。このため、端縁の凹凸同士を嵌合させる工程を無くすことができることから、僅かな位置ずれや寸法のずれにより互いの嵌合が不可能になることが無くなる。また、仮に短冊形電磁鋼板において、端縁に凹凸や段差が存在しないことから、左右、上下逆に取り付けた場合においても、互いの連結を実現することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明を適用した磁気シードルパネルの連結構造では、連結用の電磁鋼板における、短冊用電磁鋼板への固定を、クリップや接着剤等を始めとした極めて簡単な止着手段により止着することが可能となることから、施工労力の負担を解消することができ、工期の短縮化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、磁気を遮蔽する壁体の一部を構成する磁気シールドパネルの連結構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1、2は、本発明を適用した磁気シールドパネル1の連結構造2、3が適用される磁気シールド壁体5の構成を示している。ちなみに図1は、磁気シールド壁体5の斜視図であり、図2(a)は、その平面図、図2(b)は、その正面図を示している。
【0022】
磁気シールド壁体5は、例えば、生体磁気測定システムや電子線描画装置等のいわゆる磁気利用装置が配置された磁気シールド対象空間を壁面で覆うものである。磁気シールド壁体5は、磁気シールドパネル1を互いに組み合わせることにより構成される。この磁気シールドパネル1は、互いに隣接する他の磁気シールドパネル1と連結されて、それぞれ連結構造2、3を構成している。連結構造2は、互いに水平方向に隣接する磁気シールドパネル1における電磁鋼板13を互いに連結するための構造であり、連結構造3は、壁体が互いに垂直方向に交差する交差部を電磁鋼板13を介して連結するための構造である。
【0023】
図3は、磁気シールドパネル1の斜視図を示している。磁気シールドパネル1は、導電性を有する一対の金属板11が互いに対向して設けられ、この一対の金属板11間にパネル芯材12が充填されて構成されている。また、この磁気シールドパネル1には、短冊形状をした電磁鋼板13(以下、短冊形電磁鋼板13という。)が埋設されている。
【0024】
また、この磁気シールドパネル1の上部の構造は、一対の金属板11の双方の上端を内側及び上側に折り曲げて構成され、少なくとも第1の当接面14を形成させている。また、この磁気シールドパネル1の下部の構造は、一対の金属板11の双方の下端を内側に折り曲げて構成され、少なくとも第2の当接面15を形成させている。このようにして磁気シールドパネル1の上部並びに下部を構成することにより、当該磁気シールドパネル1を上下方向に積み上げて嵌合させる際に第1の当接面14と第2の当接面15とを当接させることができ、ひいては、当該当接面14、15から電波が漏洩するのを防止することが可能となる。
【0025】
金属板11は、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板としてのガルバリウム鋼板、或いは亜鉛めっき鋼板等が適用される。ガルバリウム鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレスメッキ鋼板等の塗膜は、通常そのまま用いるが、剥離するようにしてもよい。ちなみに、この金属板11としては、ステンレス鋼板、アルミめっき鋼板等を適用するようにしてもよい。即ち、このような材質からなる金属板11は、安価であり、しかも高い電磁遮蔽能を発揮させることが可能となる。また、この金属板11は、パネル芯材12の両面に設けられる場合に限定されるものではなく、何れか一の面に設けられていてもよい。なお、磁気シールドパネル1において、磁気遮蔽性能のみを持たせ、電磁遮蔽性能を持たせない場合には、この金属板11を省略するようにしてもよい。
【0026】
パネル芯材12は、断熱性の材料で構成されていることが望ましいが、いかなる材料で構成されていてもよい。以下の例では、このパネル芯材12につきロックウールで構成される場合を例にとり説明をする。即ち、ロックウールは、玄武岩、鉄鋼スラグ等に石灰等を混合し、高温中で溶解することにより形成する人造鉱物繊維である。なお、このパネル芯材12の例としては、この他にグラスウール、炭化コルクといった繊維系の断熱材を用いるようにしてもよいし、けい酸カルシウムや撥水性パーライト、或いはポリエチレンフォーム等の発泡系断熱材を用いるようにしてもよい。さらにはグラスフォーム等のような発泡無機質系断熱材を適用するようにしてもよい。
【0027】
即ち、この磁気シールドパネル1では、一対の金属板11間にパネル芯材12を充填する構成を基本としている。このため、外部から入射されてきた電磁波は金属板11において反射させることができる。
【0028】
短冊形電磁鋼板13は、短冊形状の磁性体で構成され、例えば長手方向の透磁率が横断面方向の透磁率よりも大きい電磁鋼板からなる。この短冊形電磁鋼板13は、矩形断面の短辺を板厚としたとき、当該板厚方向Cへ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設されている。また、この短冊形電磁鋼板13は、その長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている。この短冊形電磁鋼板13は、複数枚に亘る磁性材料薄板を板厚方向に積層することにより、一枚の電磁鋼板を構成するようにしてもよい。
【0029】
このような構成からなる磁気シールドパネル1は、磁性材料からなる電磁鋼板13を群を簾状又はルーバ状に並べて構成した、いわゆる開放型磁気シールド構造としていることから、密閉型磁気シールド構造と比較して高い磁気シールド性能を発揮させることが可能となる。また、この磁気シールドパネル1は、電磁鋼板13を群を簾状又はルーバ状に並べることにより、空気や光の透過性も良好となる。
【0030】
このような構成からなる磁気シールドパネル1を連結する際には、図1、2に示すように互いに隣接配置する。このとき短冊形電磁鋼板13の配置間隔を隣接するパネル間では全て統一しておくことにより、磁気シールドパネル1を隣接配置した際に、互いの短冊形電磁鋼板13の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態で配置されることになる。
【0031】
図4は、この磁気シールドパネル1の連結構造2の構成を拡大したものであり、図4(a)は、その平面図を、また図4(b)は、その正面図を示している。それぞれの端部が略同一高さで互いに離間された状態にある短冊形電磁鋼板13の上下面には、さらに連結用の電磁鋼板17が架設されている。この電磁鋼板17は、短冊形電磁鋼板13に対して止着手段により止着されている。
【0032】
図5は、この止着手段の一例として、クリップ20により電磁鋼板17と、短冊形電磁鋼板13とを止着する例を示している。ちなみに、このクリップ20は、比較的容易に電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13とを止着させることができる点において有効である。なお、このクリップ20を止着手段として用いる代わりに接着剤を用いるようにしてもよい。かかる場合には、電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13との間に接着剤を塗布し、これらを互いに貼着することになる。
【0033】
なお、この磁気シールドパネル1の連結順序としては、磁気シールドパネル1の隣接配置、連結用の電磁鋼板17の架設、短冊形電磁鋼板13と連結用の電磁鋼板17との止着、の順となる。
【0034】
図6は、壁体が互いに垂直方向に交差する交差部を構成する磁気シールドパネル1の連結構造3の構成を拡大したものであり、図6(a)は、その平面図を、また図6(b)は、その正面図を示している。
【0035】
パネル芯材12から突出された短冊形電磁鋼板13の端部は、図6(a)に示すように略三角形状で構成されている。その結果、このような形状からなる短冊形電磁鋼板13を互いに垂直方向から交差させることにより、短冊形電磁鋼板13の端面を斜め方向に対向させて配置することが可能となる。さらに短冊形電磁鋼板13の上下面には、連結用の電磁鋼板17が架設されている。この電磁鋼板17も同様に、短冊形電磁鋼板13に対してクリップ20や接着剤等の止着手段により止着されている。なお、この連結構造3において、パネル芯材12から突出された短冊形電磁鋼板13の端部の形状は、略三角形状である場合に限定されるものではなく、互いに交差する短冊形電磁鋼板13の端部が離間された状態であればいかなる形状で構成されていてもよい。この連結構造3においても同様に短冊形電磁鋼板13と電磁鋼板17とがクリップ20や接着剤を始めとした止着手段により止着されることになる。
【0036】
上述の如き構成からなる、本発明を適用した磁気シールドパネル1の連結構造2、3では、短冊形電磁鋼板13の上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板17を架設している。即ち、磁気シールドパネル1の連結部分においても電磁鋼板を連続させることができるため、簾状又はルーバ状に並べた電磁鋼板が、かかる連結部分において途切れることが無くなり、互いに連結された磁気シールドパネル1全面に亘って磁気シールド性能を発揮させることが可能となる。
【0037】
また、本発明を適用した磁気シードルパネル1の連結構造2、3では、短冊形電磁鋼板13の端縁に凹凸や段差を設けることなく、面一で構成している。このため、端縁の凹凸同士を嵌合させる工程を無くすことができることから、僅かな位置ずれや寸法のずれにより互いの嵌合が不可能になることが無くなる。また、仮に短冊形電磁鋼板13において、端縁に凹凸や段差が存在しないことから、仮に左右、上下逆に取り付けた場合においても、互いの連結を実現することが可能となる。
【0038】
さらに、本発明を適用した磁気シードルパネル1の連結構造2、3では、連結用の電磁鋼板17における、短冊用電磁鋼板13への固定を、クリップ20や接着剤等を始めとした極めて簡単な止着手段により止着することが可能となることから、施工労力の負担を解消することができ、工期の短縮化を図ることが可能となる。
【0039】
本発明を適用した磁気シードルパネル1の連結構造2、3では、連結用の電磁鋼板17が、短冊形電磁鋼板13の上下面双方に設けられている場合に限定されるものではなく、いずれか一方に面に設けられていればよい。互いに連結すべき短冊形電磁鋼板13の上下面の何れかにおいて少なくとも電磁鋼板17が架設されていれば、磁気経路は形成されることになり、本発明所期の効果を得ることは可能となるためである。
【0040】
また、本発明においては、クリップ20により電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13とを止着するとともに、電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13との間に接着剤を塗布し、これらを互いに貼着するようにしてもよい。これにより、クリップ20による押圧と、接着剤による接着力により、電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13との間で密着性を特に向上させることが可能となる。
【0041】
また、連結用の電磁鋼板17の断面積の総和Bは、短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きいことが望ましい。図7の例では、電磁鋼板17aの断面積B1と、電磁鋼板17bの断面積B2の総和Bが断面積Aよりも厚く構成した例を示している。これにより、電磁鋼板17を架設することにより磁気経路が不当に狭くなることが無くなり、この連結構造2、3において磁気シールド性能が低下してしまうのを防止することが可能となる。
【0042】
なお、本発明において、仮に位置ずれや寸法のずれが生じ、図8に示すように、互いに連結すべき短冊形電磁鋼板13の間で上下面が上下方向にずれた場合には、磁性材料で構成される薄肉スペーサ24を積層させるようにしてもよい。これにより、連結用の電磁鋼板17の当接面が水平になるように調整することが可能となり、本発明所期の効果を得ることが可能となる。ちなみに、この図8の例においては、あくまで短冊形電磁鋼板13の上面のみに薄肉スペーサ24を積層させる場合について示しているが、これに限定されるものではなく、他方の短冊形電磁鋼板13の下面に薄肉スペーサ24を積層させて連結用の電磁鋼板17を上下両側から固定するようにしてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用した電磁波シールドパネルが適用される電磁波シールド壁体の斜視図である。
【図2】本発明を適用した電磁波シールドパネルが適用される電磁波シールド壁体の平面図、正面図である。
【図3】電磁波シールドパネルの斜視図である。
【図4】電磁波シールドパネルの連結構造の構成図である。
【図5】クリップにより電磁鋼板と、短冊形電磁鋼板とを止着する例について説明するための図である。
【図6】壁体が互いに垂直方向に交差する交差部を構成する磁気シールドパネルの連結構造の構成図である。
【図7】電磁鋼板の板厚の構成例について説明するための図である。
【図8】薄肉スペーサを積層させる例を示す図である。
【図9】従来技術の問題点について説明するための図である。
【符号の説明】
【0044】
1 磁気シールドパネル
2、3 連結構造
5 磁気シールド壁体
11 金属板
12 パネル芯材
13、17 電磁鋼板
14 第1の当接面
15 第2の当接面
20 クリップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を使用する閉空間から外部への磁気の影響を遮蔽し、或いは磁気を使用する閉空間への外部からの磁気の影響を遮蔽する際に好適な磁気シールドパネルの連結構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脳磁計測や心磁計測などのように微弱な磁場を測定し検出する生体磁気測定システムや、半導体製造プロセスに際し微細な回路パターンを電子線で描画する電子線描画装置等のいわゆる磁気利用装置では、測定磁場や電子線が外部からの磁気的な影響を受けるのを防止することにより、正常な動作を保証する必要がある。また、このような磁気利用装置の磁気的影響から他の機器を保護するため、磁気シールド対象空間を壁面で覆う磁気シールド壁体に対する要求が高まっている。
【0003】
従来における磁気シールド壁体としては、例えば、透磁率の高い方向性電磁鋼板、無方向性電磁鋼板、パーマロイ、軟磁性鋼板、アモルファス、液体急冷薄帯を結晶化させた微結晶磁性材料等からなる磁性板により、シールド対象空間の壁面を構成する、いわゆる密閉型磁気シールド構造が提案されている。しかしながら、この密閉型磁気シールド構造は、磁性体の材料特性から期待されるようなシールド特性を得ることが困難な場合もあり、また空気や光の透過性を得ることができないという問題点があった。
【0004】
このため、磁性材料板の群を簾状又はルーバ状に並べて構成した、いわゆる開放型磁気シールド構造が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。この開放型磁気シールド構造では、短冊状又は長尺状の磁性材料板を板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り積層させることにより列状簾体を形成させる。このような列状簾体を構成することにより、密閉型磁気シールド構造と比較して高いシールド性能を示すことが実験的に確認されている。またこの開放型磁気シールド構造では、空気や光の透過性も良好となる。
【特許文献1】特開2002−164686号公報
【特許文献2】特開2006−351598号公報
【特許文献3】PCT/JP2004/003457
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の如き開放型磁気シールドパネル構造では、例えば図9(a)に示すように複数枚に亘る磁性材料薄板78を板厚方向に積層することにより、一枚の磁性材料板74を構成する場合もある。このとき、磁性材料薄板78の端縁を不揃いとすることにより長手方向の積層断面に当該磁性材料薄板78の突出による凹凸構造を形成し、図9(b)に示すように、2つの磁性材料体74をこの端縁の凹凸の嵌合により、列状又は環状に結合することが可能となる。特に、端縁の凹凸数を増加させるほど、またこの1つの凹凸を構成する磁性材料薄板78の枚数を減らすほど磁束漏洩をより小さく抑えることが可能となる。
【0006】
しかしながら、この端縁の凹凸のピッチが小さいことから、実際にこの2つの磁性材料体74を結合する際において、僅かな位置ずれや寸法のずれ等が発生した場合に、この端縁の凹凸を嵌合させることができないという問題点があった。また、特許文献3の開示技術では、図9(c)に示すように、端縁の凹凸数を2段で構成し、1つの凹凸を構成する磁性材料薄板78の枚数を増加させた磁性材料体79例も開示されている。
【0007】
しかしながら、このような磁性材料体79を左右、上下逆に取り付けてしまう場合が少なからず存在し、このような僅かな施工ミス、加工ミスにより端縁の嵌合ができなくなるという問題点があった。また、僅かな位置ずれや寸法のずれ等の具体的な量が、実際に現場での施工時に判明する場合もあるが、上述の如き磁性材料体79においても、このようなずれを即座に修正することができないという問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、パネル間の端縁の接続容易性を向上させた開放型磁気シールドパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る磁気シールドパネルの連結構造は、上述した課題を解決するために、矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、上記短冊形電磁鋼板の長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている磁気シールドパネルを、その上記短冊形電磁鋼板の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態で隣接配置して構成され、上記隣接配置された磁気シールドパネルにおける互いの短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板が架設され、さらに上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とは、止着手段により止着されていることを特徴とする。
【0010】
本願請求項2に係る磁気シールドパネルの連結構造は、請求項1記載の発明において、上記止着手段は、クリップ及び/又は接着剤であることを特徴とする。
【0011】
本願請求項3に係る磁気シールドパネルの連結構造は、請求項1又は2記載の発明において、上記連結用の電磁鋼板が架設される上記短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に磁性材料で構成される薄肉スペーサを積層させることにより、上記連結用の電磁鋼板の当接面が水平となるように調整されていることを特徴とする。
【0012】
本願請求項4に係る磁気シールドパネルの連結構造は、請求項1〜3のうち何れか1項記載の発明において、上記連結用の電磁鋼板の断面積の総和Bは、上記短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きいことを特徴とする。
【0013】
本願請求項5に係る磁気シールドパネルの連結方法は、矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、上記短冊形電磁鋼板の長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている上記電磁シールドパネルを、その上記短冊形電磁鋼板の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態となるように隣接配置し、上記隣接配置した互いの短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板を架設し、さらに上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とを止着することを特徴とする。
【0014】
本願請求項6に係る磁気シールドパネルの連結方法は、請求項5記載の発明において、クリップ及び/又は接着剤により、上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とを止着することを特徴とする。
【0015】
本願請求項7に係る磁気シールドパネルの連結方法は、請求項5又は6記載の発明において、上記連結用の電磁鋼板が架設される上記短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に磁性材料で構成される薄肉スペーサを積層することにより、上記連結用の電磁鋼板の当接面が水平となるように調整することを特徴とする。
【0016】
本願請求項8に係る磁気シールドパネルの連結方法は、請求項5〜7のうち何れか1項記載の発明において、上記短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きい断面積の総和Bからなる連結用の電磁鋼板を架設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述の如き構成からなる本発明を適用した磁気シールドパネルの連結構造では、短冊形電磁鋼板の上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板を架設している。即ち、磁気シールドパネルの連結部分においても電磁鋼板を連続させることができるため、簾状又はルーバ状に並べた電磁鋼板が、かかる連結部分において途切れることが無くなり、互いに連結された磁気シールドパネル全面に亘って磁気シールド性能を発揮させることが可能となる。
【0018】
また、本発明を適用した磁気シードルパネルの連結構造では、短冊形電磁鋼板の端縁に凹凸や段差を設けることなく、面一で構成している。このため、端縁の凹凸同士を嵌合させる工程を無くすことができることから、僅かな位置ずれや寸法のずれにより互いの嵌合が不可能になることが無くなる。また、仮に短冊形電磁鋼板において、端縁に凹凸や段差が存在しないことから、左右、上下逆に取り付けた場合においても、互いの連結を実現することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明を適用した磁気シードルパネルの連結構造では、連結用の電磁鋼板における、短冊用電磁鋼板への固定を、クリップや接着剤等を始めとした極めて簡単な止着手段により止着することが可能となることから、施工労力の負担を解消することができ、工期の短縮化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、磁気を遮蔽する壁体の一部を構成する磁気シールドパネルの連結構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1、2は、本発明を適用した磁気シールドパネル1の連結構造2、3が適用される磁気シールド壁体5の構成を示している。ちなみに図1は、磁気シールド壁体5の斜視図であり、図2(a)は、その平面図、図2(b)は、その正面図を示している。
【0022】
磁気シールド壁体5は、例えば、生体磁気測定システムや電子線描画装置等のいわゆる磁気利用装置が配置された磁気シールド対象空間を壁面で覆うものである。磁気シールド壁体5は、磁気シールドパネル1を互いに組み合わせることにより構成される。この磁気シールドパネル1は、互いに隣接する他の磁気シールドパネル1と連結されて、それぞれ連結構造2、3を構成している。連結構造2は、互いに水平方向に隣接する磁気シールドパネル1における電磁鋼板13を互いに連結するための構造であり、連結構造3は、壁体が互いに垂直方向に交差する交差部を電磁鋼板13を介して連結するための構造である。
【0023】
図3は、磁気シールドパネル1の斜視図を示している。磁気シールドパネル1は、導電性を有する一対の金属板11が互いに対向して設けられ、この一対の金属板11間にパネル芯材12が充填されて構成されている。また、この磁気シールドパネル1には、短冊形状をした電磁鋼板13(以下、短冊形電磁鋼板13という。)が埋設されている。
【0024】
また、この磁気シールドパネル1の上部の構造は、一対の金属板11の双方の上端を内側及び上側に折り曲げて構成され、少なくとも第1の当接面14を形成させている。また、この磁気シールドパネル1の下部の構造は、一対の金属板11の双方の下端を内側に折り曲げて構成され、少なくとも第2の当接面15を形成させている。このようにして磁気シールドパネル1の上部並びに下部を構成することにより、当該磁気シールドパネル1を上下方向に積み上げて嵌合させる際に第1の当接面14と第2の当接面15とを当接させることができ、ひいては、当該当接面14、15から電波が漏洩するのを防止することが可能となる。
【0025】
金属板11は、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板としてのガルバリウム鋼板、或いは亜鉛めっき鋼板等が適用される。ガルバリウム鋼板、亜鉛メッキ鋼板、ステンレスメッキ鋼板等の塗膜は、通常そのまま用いるが、剥離するようにしてもよい。ちなみに、この金属板11としては、ステンレス鋼板、アルミめっき鋼板等を適用するようにしてもよい。即ち、このような材質からなる金属板11は、安価であり、しかも高い電磁遮蔽能を発揮させることが可能となる。また、この金属板11は、パネル芯材12の両面に設けられる場合に限定されるものではなく、何れか一の面に設けられていてもよい。なお、磁気シールドパネル1において、磁気遮蔽性能のみを持たせ、電磁遮蔽性能を持たせない場合には、この金属板11を省略するようにしてもよい。
【0026】
パネル芯材12は、断熱性の材料で構成されていることが望ましいが、いかなる材料で構成されていてもよい。以下の例では、このパネル芯材12につきロックウールで構成される場合を例にとり説明をする。即ち、ロックウールは、玄武岩、鉄鋼スラグ等に石灰等を混合し、高温中で溶解することにより形成する人造鉱物繊維である。なお、このパネル芯材12の例としては、この他にグラスウール、炭化コルクといった繊維系の断熱材を用いるようにしてもよいし、けい酸カルシウムや撥水性パーライト、或いはポリエチレンフォーム等の発泡系断熱材を用いるようにしてもよい。さらにはグラスフォーム等のような発泡無機質系断熱材を適用するようにしてもよい。
【0027】
即ち、この磁気シールドパネル1では、一対の金属板11間にパネル芯材12を充填する構成を基本としている。このため、外部から入射されてきた電磁波は金属板11において反射させることができる。
【0028】
短冊形電磁鋼板13は、短冊形状の磁性体で構成され、例えば長手方向の透磁率が横断面方向の透磁率よりも大きい電磁鋼板からなる。この短冊形電磁鋼板13は、矩形断面の短辺を板厚としたとき、当該板厚方向Cへ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設されている。また、この短冊形電磁鋼板13は、その長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている。この短冊形電磁鋼板13は、複数枚に亘る磁性材料薄板を板厚方向に積層することにより、一枚の電磁鋼板を構成するようにしてもよい。
【0029】
このような構成からなる磁気シールドパネル1は、磁性材料からなる電磁鋼板13を群を簾状又はルーバ状に並べて構成した、いわゆる開放型磁気シールド構造としていることから、密閉型磁気シールド構造と比較して高い磁気シールド性能を発揮させることが可能となる。また、この磁気シールドパネル1は、電磁鋼板13を群を簾状又はルーバ状に並べることにより、空気や光の透過性も良好となる。
【0030】
このような構成からなる磁気シールドパネル1を連結する際には、図1、2に示すように互いに隣接配置する。このとき短冊形電磁鋼板13の配置間隔を隣接するパネル間では全て統一しておくことにより、磁気シールドパネル1を隣接配置した際に、互いの短冊形電磁鋼板13の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態で配置されることになる。
【0031】
図4は、この磁気シールドパネル1の連結構造2の構成を拡大したものであり、図4(a)は、その平面図を、また図4(b)は、その正面図を示している。それぞれの端部が略同一高さで互いに離間された状態にある短冊形電磁鋼板13の上下面には、さらに連結用の電磁鋼板17が架設されている。この電磁鋼板17は、短冊形電磁鋼板13に対して止着手段により止着されている。
【0032】
図5は、この止着手段の一例として、クリップ20により電磁鋼板17と、短冊形電磁鋼板13とを止着する例を示している。ちなみに、このクリップ20は、比較的容易に電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13とを止着させることができる点において有効である。なお、このクリップ20を止着手段として用いる代わりに接着剤を用いるようにしてもよい。かかる場合には、電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13との間に接着剤を塗布し、これらを互いに貼着することになる。
【0033】
なお、この磁気シールドパネル1の連結順序としては、磁気シールドパネル1の隣接配置、連結用の電磁鋼板17の架設、短冊形電磁鋼板13と連結用の電磁鋼板17との止着、の順となる。
【0034】
図6は、壁体が互いに垂直方向に交差する交差部を構成する磁気シールドパネル1の連結構造3の構成を拡大したものであり、図6(a)は、その平面図を、また図6(b)は、その正面図を示している。
【0035】
パネル芯材12から突出された短冊形電磁鋼板13の端部は、図6(a)に示すように略三角形状で構成されている。その結果、このような形状からなる短冊形電磁鋼板13を互いに垂直方向から交差させることにより、短冊形電磁鋼板13の端面を斜め方向に対向させて配置することが可能となる。さらに短冊形電磁鋼板13の上下面には、連結用の電磁鋼板17が架設されている。この電磁鋼板17も同様に、短冊形電磁鋼板13に対してクリップ20や接着剤等の止着手段により止着されている。なお、この連結構造3において、パネル芯材12から突出された短冊形電磁鋼板13の端部の形状は、略三角形状である場合に限定されるものではなく、互いに交差する短冊形電磁鋼板13の端部が離間された状態であればいかなる形状で構成されていてもよい。この連結構造3においても同様に短冊形電磁鋼板13と電磁鋼板17とがクリップ20や接着剤を始めとした止着手段により止着されることになる。
【0036】
上述の如き構成からなる、本発明を適用した磁気シールドパネル1の連結構造2、3では、短冊形電磁鋼板13の上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板17を架設している。即ち、磁気シールドパネル1の連結部分においても電磁鋼板を連続させることができるため、簾状又はルーバ状に並べた電磁鋼板が、かかる連結部分において途切れることが無くなり、互いに連結された磁気シールドパネル1全面に亘って磁気シールド性能を発揮させることが可能となる。
【0037】
また、本発明を適用した磁気シードルパネル1の連結構造2、3では、短冊形電磁鋼板13の端縁に凹凸や段差を設けることなく、面一で構成している。このため、端縁の凹凸同士を嵌合させる工程を無くすことができることから、僅かな位置ずれや寸法のずれにより互いの嵌合が不可能になることが無くなる。また、仮に短冊形電磁鋼板13において、端縁に凹凸や段差が存在しないことから、仮に左右、上下逆に取り付けた場合においても、互いの連結を実現することが可能となる。
【0038】
さらに、本発明を適用した磁気シードルパネル1の連結構造2、3では、連結用の電磁鋼板17における、短冊用電磁鋼板13への固定を、クリップ20や接着剤等を始めとした極めて簡単な止着手段により止着することが可能となることから、施工労力の負担を解消することができ、工期の短縮化を図ることが可能となる。
【0039】
本発明を適用した磁気シードルパネル1の連結構造2、3では、連結用の電磁鋼板17が、短冊形電磁鋼板13の上下面双方に設けられている場合に限定されるものではなく、いずれか一方に面に設けられていればよい。互いに連結すべき短冊形電磁鋼板13の上下面の何れかにおいて少なくとも電磁鋼板17が架設されていれば、磁気経路は形成されることになり、本発明所期の効果を得ることは可能となるためである。
【0040】
また、本発明においては、クリップ20により電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13とを止着するとともに、電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13との間に接着剤を塗布し、これらを互いに貼着するようにしてもよい。これにより、クリップ20による押圧と、接着剤による接着力により、電磁鋼板17と短冊形電磁鋼板13との間で密着性を特に向上させることが可能となる。
【0041】
また、連結用の電磁鋼板17の断面積の総和Bは、短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きいことが望ましい。図7の例では、電磁鋼板17aの断面積B1と、電磁鋼板17bの断面積B2の総和Bが断面積Aよりも厚く構成した例を示している。これにより、電磁鋼板17を架設することにより磁気経路が不当に狭くなることが無くなり、この連結構造2、3において磁気シールド性能が低下してしまうのを防止することが可能となる。
【0042】
なお、本発明において、仮に位置ずれや寸法のずれが生じ、図8に示すように、互いに連結すべき短冊形電磁鋼板13の間で上下面が上下方向にずれた場合には、磁性材料で構成される薄肉スペーサ24を積層させるようにしてもよい。これにより、連結用の電磁鋼板17の当接面が水平になるように調整することが可能となり、本発明所期の効果を得ることが可能となる。ちなみに、この図8の例においては、あくまで短冊形電磁鋼板13の上面のみに薄肉スペーサ24を積層させる場合について示しているが、これに限定されるものではなく、他方の短冊形電磁鋼板13の下面に薄肉スペーサ24を積層させて連結用の電磁鋼板17を上下両側から固定するようにしてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を適用した電磁波シールドパネルが適用される電磁波シールド壁体の斜視図である。
【図2】本発明を適用した電磁波シールドパネルが適用される電磁波シールド壁体の平面図、正面図である。
【図3】電磁波シールドパネルの斜視図である。
【図4】電磁波シールドパネルの連結構造の構成図である。
【図5】クリップにより電磁鋼板と、短冊形電磁鋼板とを止着する例について説明するための図である。
【図6】壁体が互いに垂直方向に交差する交差部を構成する磁気シールドパネルの連結構造の構成図である。
【図7】電磁鋼板の板厚の構成例について説明するための図である。
【図8】薄肉スペーサを積層させる例を示す図である。
【図9】従来技術の問題点について説明するための図である。
【符号の説明】
【0044】
1 磁気シールドパネル
2、3 連結構造
5 磁気シールド壁体
11 金属板
12 パネル芯材
13、17 電磁鋼板
14 第1の当接面
15 第2の当接面
20 クリップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、上記短冊形電磁鋼板の長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている磁気シールドパネルを、その上記短冊形電磁鋼板の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態で隣接配置して構成され、
上記隣接配置された磁気シールドパネルにおける互いの短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板が架設され、
さらに上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とは、止着手段により止着されていること
を特徴とする磁気シールドパネルの連結構造。
【請求項2】
上記止着手段は、クリップ及び/又は接着剤であること
を特徴とする請求項1記載の磁気シールドパネルの連結構造。
【請求項3】
上記連結用の電磁鋼板が架設される上記短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に磁性材料で構成される薄肉スペーサを積層させることにより、上記連結用の電磁鋼板の当接面が水平となるように調整されていること
を特徴とする請求項1又は2記載の磁気シールドパネルの連結構造。
【請求項4】
上記連結用の電磁鋼板の断面積の総和Bは、上記短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きいこと
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の磁気シールドパネルの連結構造。
【請求項5】
矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、上記短冊形電磁鋼板の長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている上記電磁シールドパネルを、その上記短冊形電磁鋼板の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態となるように隣接配置し、
上記隣接配置した互いの短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板を架設し、
さらに上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とを止着すること
を特徴とする磁気シールドパネルの連結方法。
【請求項6】
クリップ及び/又は接着剤により、上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とを止着すること
を特徴とする請求項5記載の磁気シールドパネルの連結方法。
【請求項7】
上記連結用の電磁鋼板が架設される上記短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に磁性材料で構成される薄肉スペーサを積層することにより、上記連結用の電磁鋼板の当接面が水平となるように調整すること
を特徴とする請求項5又は6記載の磁気シールドパネルの連結方法。
【請求項8】
上記短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きい断面積の総和Bからなる連結用の電磁鋼板を架設すること
を特徴とする請求項5〜7のうち何れか1項記載の磁気シールドパネルの連結方法。
【請求項1】
矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、上記短冊形電磁鋼板の長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている磁気シールドパネルを、その上記短冊形電磁鋼板の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態で隣接配置して構成され、
上記隣接配置された磁気シールドパネルにおける互いの短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板が架設され、
さらに上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とは、止着手段により止着されていること
を特徴とする磁気シールドパネルの連結構造。
【請求項2】
上記止着手段は、クリップ及び/又は接着剤であること
を特徴とする請求項1記載の磁気シールドパネルの連結構造。
【請求項3】
上記連結用の電磁鋼板が架設される上記短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に磁性材料で構成される薄肉スペーサを積層させることにより、上記連結用の電磁鋼板の当接面が水平となるように調整されていること
を特徴とする請求項1又は2記載の磁気シールドパネルの連結構造。
【請求項4】
上記連結用の電磁鋼板の断面積の総和Bは、上記短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きいこと
を特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項記載の磁気シールドパネルの連結構造。
【請求項5】
矩形断面の短辺を板厚とする短冊形電磁鋼板がパネル芯材内部に当該板厚方向へ所定間隔をおいて複数段に亘り埋設され、上記短冊形電磁鋼板の長手方向における両端部が上記パネル芯材の側端部からそれぞれ突出されている上記電磁シールドパネルを、その上記短冊形電磁鋼板の端部が各段につき略同一高さで互いに離間された状態となるように隣接配置し、
上記隣接配置した互いの短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に連結用の電磁鋼板を架設し、
さらに上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とを止着すること
を特徴とする磁気シールドパネルの連結方法。
【請求項6】
クリップ及び/又は接着剤により、上記短冊形電磁鋼板と上記連結用の電磁鋼板とを止着すること
を特徴とする請求項5記載の磁気シールドパネルの連結方法。
【請求項7】
上記連結用の電磁鋼板が架設される上記短冊形電磁鋼板の端部上下面の何れか一面以上に磁性材料で構成される薄肉スペーサを積層することにより、上記連結用の電磁鋼板の当接面が水平となるように調整すること
を特徴とする請求項5又は6記載の磁気シールドパネルの連結方法。
【請求項8】
上記短冊形電磁鋼板の断面積Aよりも大きい断面積の総和Bからなる連結用の電磁鋼板を架設すること
を特徴とする請求項5〜7のうち何れか1項記載の磁気シールドパネルの連結方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2009−117596(P2009−117596A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288610(P2007−288610)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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