説明

磁気センサパッケージ

【課題】磁気センサに対する磁気的影響をより低減させることができる磁気センサパッケージを提供すること。
【解決手段】本発明の磁気センサパッケージ1は、磁気センサ12を内蔵したパッケージ本体2と、前記パッケージ本体2の一つの主面に形成された電極15と、前記主面11b上に前記電極15以外の領域に延在して設けられた下シールド部材16と、前記パッケージ本体2の他の主面を覆うように設けられた上シールド部材17と、を有し、前記下シールド部材16は、前記磁気センサ12の感度軸方向に相対的に長く設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサに対する外部磁界による影響を防止できる磁気センサパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力や加速度などの物理量を測定するセンサとして、例えば磁気式圧力センサや磁気式加速度センサのような磁気センサがある。このような磁気センサにおいては、例えば、磁気抵抗効果素子とハード磁性層とを間隔をおいて配設し、物理量が加わる際の磁気抵抗効果素子とハード磁性層との間の間隔の変化に起因する磁界変化に基づく磁気抵抗効果素子の磁気抵抗の変化を利用して物理量を測定する。
【0003】
このような磁気センサは、例えば、携帯電話のような電子機器に搭載される。携帯電話のような電子機器においては、種々の外部磁界による磁気的影響があり、これらの外部磁界から磁気センサをシールドする必要がある。磁気センサをシールドする技術としては、特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2005−221418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、携帯電話の電子機器は小型化、薄型化が進んできており、機器内で電子部品同士が近接して配設されるため、特許文献1に開示されたシールド技術では十分ではなく、磁気センサに対する磁気的影響をより低減させるためのシールド技術が望まれている。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、磁気センサに対する磁気的影響をより低減させることができる磁気センサパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の磁気センサパッケージは、磁気センサを内蔵したパッケージと、前記パッケージの一つの主面に形成された電極と、前記主面上に前記電極以外の領域に延在して設けられた第1シールド部材と、前記パッケージの他の主面を覆うように設けられた第2シールド部材と、を有し、前記第1シールド部材は、前記磁気センサの感度軸方向に相対的に長く設けられていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、電極領域が設けられていても、第1シールド部材を感度軸方向に沿って長く設けることにより、磁気センサに対する磁気的影響をより低減させることができる。
【0008】
本発明の磁気センサパッケージにおいては、前記第1シールド部材と前記第2シールド部材とが連結されていることが好ましい。
【0009】
本発明の磁気センサパッケージにおいては、前記磁気センサは、前記感度軸方向に沿って延在するシールド層を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁気センサパッケージによれば、磁気センサを内蔵したパッケージと、前記パッケージの一つの主面に形成された電極と、前記主面上に前記電極以外の領域に延在して設けられた第1シールド部材と、前記パッケージの他の主面を覆うように設けられた第2シールド部材と、を有し、前記第1シールド部材は、前記磁気センサの感度軸方向に相対的に長く設けられているので、磁気センサに対する磁気的影響をより低減させることができる磁気センサパッケージを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの透視側面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す磁気センサパッケージの側面図であり、図1(c)は、図1(a)に示す磁気センサパッケージの底面図である。
【0012】
図1に示す磁気センサパッケージ1は、ベース基板11を有する。ベース基板11としては、シリコン基板、アルミナ基板、LTCC基板(低温焼成セラミック基板)、HTCC基板(高温焼成セラミック基板)、ガラス基板などを挙げることができる。
【0013】
ベース基板11の一方の主面11a上には、磁気センサ12が実装されている。磁気センサ12としては、GMR(Giant MagnetoResistance)素子のような磁気抵抗効果素子を用い、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により作製されたMEMSセンサを用いることができる。ベース基板11の他方の主面11b上には、電極15が形成されている。この電極15は、図1(c)に示すように、磁気センサパッケージ1の四隅にそれぞれ設けられており、図1(a)に示すように、ベース基板11を貫通して磁気センサ12の近傍に突出している。この電極15と磁気センサ12とはワイヤを用いたワイヤボンディングにより電気的に接続されている。
【0014】
磁気センサ12を実装したベース基板11の主面11a側には、ケース部材14が被せられており、ベース基板11とケース部材14とが接合されている。ケース部材14を構成する材料としては、ベース基板11と接合することを考慮して、ベース基板11と同じ材料であることが好ましい。このようにして磁気センサ12がパッケージングされてパッケージ本体2が構成される。
【0015】
パッケージ本体2の底面、すなわち電極15が形成されている主面には、下シールド部材16が配設されている。この下シールド部材16は、図1(c)に示すように、電極15以外の領域に延在して設けられている。図1(a)に示すように、パッケージ本体2の下面(主面11b側)においては、電極15が突出して形成されているが、下シールド部材16は電極15以外の領域に延在して設けられているので、電極15の厚さとほぼ同じ厚さで下シールド部材16を作製することにより、パッケージ本体2の下面を面一にすることができる。これにより、磁気センサパッケージ1の底面を段差なく形成することができる。このように、パッケージ本体2の底面には、電極15が露出されるので、磁気センサパッケージを直接プリント配線板などの接続部に実装することが可能となる。したがって、プリント配線板などの接続部との間の接続を良好にするために、電極15の厚さを下シールド部材16の厚さよりも僅かに厚くすることが好ましい。
【0016】
パッケージ本体2の他の主面には、パッケージ本体2を覆うような形状の上シールド部材17が設けられている。この上シールド部材17と下シールド部材16とは、接合されており、両者により、電極15領域を除いてパッケージ本体2をほぼ覆うようになっている。下シールド部材16及び上シールド部材17を構成する材料としては、パーマロイなどの材料を挙げることができる。
【0017】
下シールド部材16は、磁気センサ12の感度軸方向に相対的に長く設けられている。すなわち、下シールド部材16は、電極15以外の領域であって、感度軸方向に相対的に長く設けられている。図1(c)においては、下シールド部材16は、感度軸方向に沿って長く設けられている。このように、下シールド部材16を感度軸方向に沿って長く設けることにより、磁気センサ12に対する磁気的影響をより低減させることができる。
【0018】
電極15は、図2に示すように、電気メッキにより形成してもよい。また、LTCC基板やHTCC基板などを用いてセラミックパッケージを用いる場合には、電極15となる形状通りにタングステンをスクリーン印刷し焼結した後に、Niをメッキ又は成膜し、その上に例えばAuメッキを施すことにより形成することができる。図2に示すように、電極部の厚みをそのまま使ってもよい。また、図3に示すように、ダイシングにより十字溝31を加工した後、電極15となる形状通りにタングステンをスクリーン印刷し焼結した後に、Niをメッキ又は成膜し、その上に例えばAuメッキを施すことにより形成することができる。また、図4に示すように、一面にタングステンをスクリーン印刷し焼結したた後に、ダイシングにより十字溝31を加工し、電極15となる形状にNiを成膜してその上に例えばAuメッキを施すことにより形成することができる。
【0019】
図5に示すようなパーマロイからなるシールド板32を打ち抜き加工し、溝部へ収まる形状に加工する。このシールド板32に図2から図4に示すパッケージを装着する。すなわち、図5(b)に示す一点鎖線を曲げ、図5(a)に示すように、接点をかしめ加工することによりパッケージを覆い、第1シールド部材と第2シールド部材とを連結する。パッケージとしては、セラミックパッケージだけではなく、射出成形によるモールド品33とベース基板を用いた図6に示すような樹脂パッケージでもよい。射出成形材料としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やLCP(リキッドクリスタルプラスチック)などが挙げられる。また、図6においては、円筒状のパッケージについて示しているが、本発明はこの形状に限られない。
【0020】
シールドをメッキ加工で行う場合には、例えば、図2から図4に示すパッケージの十字溝31にタングステンをスクリーン印刷し焼結した後に、電極15とシールドを交互にマスクし、シールド形成時にNiFe合金からなるパーマロイメッキすることにより行う。側面のシールドは、例えば、パッケージ同士を所定間隔離して配置し、MoMnペーストを充填し焼結することで、パッケージ側面をメタライズ可能とする。側面についたメタライズ部分はメッキ可能であるので、NiFe合金からなるパーマロイメッキを施す。
【0021】
次に、下シールド部材16における感度軸方向の長さについて説明する。
図7(a),(b)に示すように、電極用空隙部21を有する下シールド部材16と、キャップ状の上シールド部材17とによりパッケージ本体2を覆ったものについてシミュレーションを行った。ここでは、下シールド部材16及び上シールド部材17をパーマロイで構成し、透磁率3000、飽和磁束密度1.62Tとし、また、上シールド部材17のサイズを、厚さ150μm、外形2500μm□、高さ0.85μmとし、下シールド部材16の感度軸方向の長さXを700μm、1000μm□、1500μm□、2000μm□、2200μm□、2500μm□とし、下シールド部材16における電極用空隙部21の外形を750μm□とし、測定地点を下シールド部材16から500μmとした状態で、それぞれの感度軸方向の磁場強度をシミュレーションした。このとき、印加磁場としては、磁場強度を50Oe(×103/4π A/m)とし、印加角度を感度軸方向0°(シールド部材の表面に沿う方向)とした。その結果を図8に示す。
【0022】
図8から分かるように、感度軸方向の長さXが短くなるにつれて、シールド部材表面に沿う方向(感度軸方向)の外部磁界に対して磁場強度が高くなっている。特に電極用空隙21に近い領域で磁場強度が高くなっている。図8に示す結果より、シールド効果の目標値である3Oe(×103/4π A/m)(破線)を満足するために、電極用空隙部21の外形を750μm□とした場合、下シールド部材16の感度軸方向の長さXが2000μm以上であることが好ましい。
【0023】
また、外形寸法(下シールド部材16の感度軸方向の長さX)に対する磁場強度の変化率との関係を図9に示す。変化率は、センサ中心付近の磁場強度E1に対するセンサ中心から±0.5mm付近の磁場強度E2の割合(E2/E1)とした。図9から分かるように、下シールド部材16の感度軸方向の長さXが2000μm以上で変化率が小さく、外部磁場に影響されていない、すなわちシールド効果が発揮されていた。
【0024】
次に、下シールド部材16における電極用空隙部の大きさについて説明する。
上記図7(a),(b)に示すように、電極用空隙部21を有する下シールド部材16と、キャップ状の上シールド部材17とによりパッケージ本体2を覆ったものについてシミュレーションを行った。ここでは、下シールド部材16及び上シールド部材17をパーマロイで構成し、透磁率3000、飽和磁束密度1.62Tとし、また、上シールド部材17のサイズを、厚さ150μm、外形2500μm□、高さ0.85μmとし、下シールド部材16における電極用空隙部21の外形(4つの合計)を250μm□、500μm□、750μm□、1000μm□とし、測定地点を下シールド部材16から500μmとした状態で、それぞれの感度軸方向の磁場強度をシミュレーションした。このとき、印加磁場としては、磁場強度を50Oe(×103/4π A/m)とし、印加角度を0°(シールド部材の表面に沿う方向)、45°、90°(シールド部材の表面に直交する方向)とした。その結果を図10に示す。
【0025】
図10から分かるように、電極用空隙部21の外形が大きくなるにつれて、シールド部材表面に沿う方向の外部磁界に対して磁場強度が高くなっている。一方、シールド部材の表面に直交する方向の外部磁界に対しては十分なシールド効果を発揮した。図10に示す結果より、シールド効果の目標値である3Oe(×103/4π A/m)を満足するために、電極用空隙部21が750μm□以下(全体の外形に対する電極用空隙部の割合(750/2500μm□)×100=30%以下)であることが好ましい。
【0026】
また、印加磁場における印加角度と磁場強度との関係を図11に示す。図11においては、電極用空隙部21の大きさ毎に印加角度の変化に伴う磁場強度の変化を示している。図11から分かるように、電極用空隙部21が750μm□以下で、いずれの方向(0°、45°、90°)からの外部磁界に対してシールド効果の目標値である3Oe(×103/4π A/m)を満足することができる。
【0027】
このように、本発明に係る磁気センサパッケージは、電極15が設けられていても、下シールド部材16を感度軸方向に沿って長く設けているので、磁気センサ12に対する磁気的影響をより低減させることができる。
【0028】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、図12に示すように、パッケージ本体2に内蔵された磁気センサ12の少なくともいずれか一方の主面(図12においては両主面)にシールド層41,42を設けても良い。これにより、磁気シールド効果をより高くすることができる。また、上記実施の形態で説明した数値、寸法、部材の位置関係、材質については特に制限はない。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの透視側面図であり、(b)は、(a)に示す磁気センサパッケージの側面図であり、(c)は、(a)に示す磁気センサパッケージの底面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの他の例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの他の例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの他の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの他の例を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は展開図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの他の例を示す図である。
【図7】(a),(b)は、本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの評価方法を説明するための図である。
【図8】センサの中心からの距離と磁場強度との間の関係を示す図である。
【図9】下シールド部材の外形と磁場強度変化率との間の関係を示す図である。
【図10】下シールド部材の電極用空隙部の外形と磁場強度との間の関係を示す図である。
【図11】印加磁場の印加角度と磁場強度との間の関係を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る磁気センサパッケージの他の例の透視側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 磁気センサパッケージ
2 パッケージ本体
11 ベース基板
12 磁気センサ
13 ワイヤ
14 ケース部材
15 電極
16 下シールド部材
17 上シールド部材
21 電極用空隙部
41,42 シールド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサを内蔵したパッケージと、前記パッケージの一つの主面に形成された電極と、前記主面上に前記電極以外の領域に延在して設けられた第1シールド部材と、前記パッケージの他の主面を覆うように設けられた第2シールド部材と、を有し、前記第1シールド部材は、前記磁気センサの感度軸方向に相対的に長く設けられていることを特徴とする磁気センサパッケージ。
【請求項2】
前記第1シールド部材と前記第2シールド部材とが連結されていることを特徴とする請求項1記載の磁気センサパッケージ。
【請求項3】
前記磁気センサは、前記感度軸方向に沿って延在するシールド層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の磁気センサパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−36579(P2009−36579A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199750(P2007−199750)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】