磁気ディスクの製造方法、磁気記録再生装置及び磁気記録再生装置の製造方法
【課題】 磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる磁気ディスクの製造方法、磁気記録再生装置及び磁気記録再生装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 情報信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記形状パターンに対応する情報信号を磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備え、前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなる複数のセグメント17a〜17dを形成する形状パターンであり、隣接する2つのセグメントについてみると、ディスク外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最もディスク内周側の最短磁化反転長は、ディスク内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最もディスク外周側の最短磁化反転長より小さくなっている。
【解決手段】 情報信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記形状パターンに対応する情報信号を磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備え、前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなる複数のセグメント17a〜17dを形成する形状パターンであり、隣接する2つのセグメントについてみると、ディスク外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最もディスク内周側の最短磁化反転長は、ディスク内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最もディスク外周側の最短磁化反転長より小さくなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスター情報担体を用いて予め所定の情報信号を記録した磁気ディスクの製造方法、及びその製造方法により製造された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録再生装置は、小型でかつ大容量を実現するために、高記録密度化の傾向にある。代表的な磁気記憶装置であるハードディスクドライブの分野においては、すでに面記録密度60Gbit/in2(93Mbit/mm2)を超える装置が商品化されており、まもなく、面記録密度が100Gbit/in2(155Mbit/mm2)の実用化が議論されるほどの急激な技術進歩が認められる。
【0003】
このような高記録密度化を可能とした技術的背景としては、媒体性能、ヘッド・ディスクインターフェース性能の向上やパーシャルレスポンス等の新規な信号処理方式の出現による線記録密度の向上も大きな要因である。しかしながら昨今では、トラック密度の増加傾向が線記録密度の増加傾向を大きく上回り、面記録密度向上のための主たる要因となっている。これは、従来の誘導型磁気ヘッドに比べてはるかに再生出力性能に優れた巨大磁気抵抗効果型ヘッド(GMRヘッド)の実用化による寄与に基づく。現在、GMRヘッドの実用化により、1μm以下のトラック幅信号をS/N良く再生することが可能となっている。今後さらなるヘッド性能の向上にともない、トラックピッチはさらに小さくなるものと予想されている。
【0004】
さて、ヘッドがこのような狭トラックを正確に走査し、信号をS/N良く再生するためには、ヘッドのサーボトラッキング技術が重要な役割を果たしている。サーボトラッキングを行うため、現在のハードディスクドライブでは、ディスクの1周、すなわち角度にして360度中において、一定の角度間隔でトラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等が記録された領域(以下、サーボトラック領域という。)を設けている。磁気ヘッドは、一定間隔でこれらサーボトラック領域の信号を再生することにより、ヘッドの位置を確認、修正しながら正確にトラック上を走査することができるのである。
【0005】
前記のトラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等は、ヘッドが正確にトラック上を走査するための基準信号となるものであるため、その記録時には、正確な位置決め精度が要求される。現在のハードディスクドライブでは、ディスクをドライブに組み込んだ後、専用のサーボ記録装置を用いて厳密に位置制御された磁気ヘッドにより上記トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等の信号記録が行われている。
【0006】
ここで、前記のような専用のサーボ記録装置を用いた磁気ヘッドによる記録方法においては、以下のような課題があった。すなわち、磁気ヘッドによる記録は、ヘッドと媒体との相対移動に基づく線記録であるので、専用のサーボ記録装置を用いて磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら磁気ディスクの全面にわたって信号記録を行う方法では、非常に多くの時間を要していた。
【0007】
したがって、ハードディスクドライブの生産台数に応じて、サーボ記録装置を必要台数準備することが求められるが、このような専用のサーボ記録装置は、非常に高価な設備である。さらにサーボ記録装置を用いるので、信号記録はドライブ筐体を開放してクリーンルーム内で行う必要があった。このため、多くのサーボ記録装置を設置するためには、クリーンルーム設置の設備投資も大きくなり、大幅なコスト高になる原因となっていた。
【0008】
このような背景の下、以下のような方法が提案されている。例えば、特許文献1には、マスター情報担体を用いた方法が提案されている。マスター情報担体は、基体の表面に、情報信号に対応するパターン形状で強磁性材料からなる磁性部を形成したものである。特許文献1に提案されている方法は、このマスター情報担体の表面を、強磁性薄膜、又は強磁性粉塗布層が形成されたシート状又はディスク状磁気記録媒体の表面に接触させる。そして、所定の外部磁界を印加することにより、マスター情報担体に形成した情報信号に対応するパターン形状の磁化パターンを磁気記録媒体に磁気転写記録するというものである。
【0009】
この方法においては、一方向に磁化されたマスター情報担体表面の強磁性薄膜から発生する記録磁界により、磁気記録媒体にはマスター情報担体の強磁性薄膜パターンに対応した磁化パターンが磁気転写記録されることになる。すなわち、マスター情報担体表面に、トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等に対応する強磁性薄膜パターンをフォトリソグラフィ技術などによって形成することにより、磁気記録媒体上にはこれらサーボトラック領域における信号を磁化情報として記録することができる。
【0010】
従来の磁気ヘッドによる記録が、ヘッドと媒体との相対移動に基づく動的線記録であるのに対し、特許文献1の記録はマスター情報担体と媒体との相対移動を伴わない静的な面記録である。このような特徴により、特許文献1の技術は、前記の従来方法における課題に対して、下記のような極めて有効な効果を発揮することができる。
【0011】
すなわち、一括面記録であるため、サーボトラック領域の信号記録に要する時間は、従来の磁気ヘッドによる記録方法に比べて、非常に短い。また、磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら記録を行うための高価なサーボ記録装置が不要であり、これを設置するための広大なクリーンルームも不要である。このため、信号記録における生産性を大幅に向上できるとともに、生産コストも低減することができる。
【0012】
また、特許文献1の方法は、形状情報を磁化情報として磁気転写記録する方法であるので、磁気ヘッドでは記録し得ない様々なパターンを記録することができる。すなわち磁気ヘッドを用いては、その磁気ヘッド固有の記録トラック幅とは異なるトラック幅を有する信号を記録することはできず、またその磁気ヘッドの記録ギャップや再生ギャップに対して傾斜した方向にアジマス角を有するような磁化パターンを記録することもできない。他方、特許文献1の方法では、強磁性材料からなる形状パターンを自由に設計できるので、磁気ヘッドでは記録し得ない磁化パターンであっても、容易に記録することができる。
【0013】
また、特許文献2の方法によれば、特許文献1の方法を用いることにより、磁気ディスクに記録される種々の信号の用途に応じて磁気ヘッドでは記録し得ない磁化パターンを記録し、各信号の目的性能を向上させることが可能である。例えば、磁気ヘッドの再生ギャップに対して傾斜した方向にアジマス角を有するトラッキング用サーボ信号パターンを用いることにより、磁気ディスクの半径方向変位に伴う信号の位相変化を検出してトラッキングを行うことが可能となる。このため、従来の振幅検出を用いた方法に比べてトラッキング精度を向上することが可能になる。
【0014】
ところで、特許文献1や特許文献2に記載の磁気転写記録方法を用いるためには、記録すべき情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンを、リソグラフィ技術を用いて精度良く形成することが必要である。しかしながら、記録すべき信号の密度が高くなるほど、すなわち記録磁化パターンにおける磁化反転長が小さいほど、これに対応する微細な強磁性材料の形状パターンを形成することが必要になる。このため、リソグラフィプロセスが技術的により困難になったり、高性能の装置を必要とするためにコスト高となるといった問題があった。
【0015】
トラッキング用サーボ信号の記録密度は、ユーザデータ信号に比べると低いが、それでも近年のハードハードディスクドライブにおいては、磁化反転長が0.1μm程度にまで小さくなっている。このような微細な形状パターンを磁気ディスク面に相当する広い面積領域に形成することは、半導体用の最先端のリソグラフィ技術を用いても容易なことではない。
【0016】
他方、サーボトラック領域における信号の密度を比較的小さく、すなわち磁化反転長を比較的大きく設計すれば、リソグラフィプロセスは容易になる。しかしながら、この場合には磁気ディスク面においてサーボトラック領域の占める割合が大きくなってユーザデータ領域を犠牲にしてしまうため、結果的に磁気記録再生装置の記憶容量を減少させてしまうことになる。
【0017】
このような問題を解決する方法が特許文献3に提案されている。特許文献3の方法は、まず特許文献1及び特許文献2の磁気転写記録方法を用いて第1のトラッキング用サーボ信号を含む第1のサーボトラック領域を磁気ディスクに記録した後、ハードディスクドライブに搭載する。続いて第1のトラッキング用サーボ信号を参照して、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドを位置決めしながら、この磁気ヘッドによって第2のトラッキング用サーボ信号を含む第2のサーボトラック領域を記録する。
【0018】
つまり、特許文献3の技術は、特許文献1や特許文献2の方法によって記録されたサーボトラック領域の信号を参照して、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドが、より高密度の信号に記録し直す(以下、「セルフサーボ記録」という。)という技術である。
【0019】
特許文献3の方法においても、特許文献1の方法と同様に高価なサーボ記録装置は不要である。一方、特許文献3の方法においては、セルフサーボ記録のプロセスに余分の時間を要するが、このプロセスはドライブ筐体を密閉した後、クリーンルーム外の比較的小さなスペースで行うことができるので、クリーンルームに関する設備投資を必要としない。また人手を要さずに、コンピュータ管理の下、ハードディスクドライブ自体が自動で記録を行うことができるので、特許文献1の方法と同様に、専用のサーボ記録装置を用いた従来方法に比べて、生産性及びコストメリットの向上が大きくなる。
【0020】
なお、特許文献3の方法によれば、磁気転写記録される第1のトラッキング用サーボ信号としては、特許文献2に開示されたような位相検出パターンを用いることが可能である。一方、第2のトラッキング用サーボ信号は、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドにより記録が行われる。磁気ヘッドを用いては、特許文献2に開示されたような位相検出パターンを記録することは困難であるので、第2のトラッキング用サーボ信号としては、従来通りの振幅検出パターンが用いられるのが一般的である。
【特許文献1】特開平10−40544号公報
【特許文献2】特開平11−144218号公報
【特許文献3】特開平2001−243733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献2又は特許文献3に提案された磁気転写記録方法により記録した位相検出によるトラッキング用サーボ信号の性能を検討した結果、磁気ディスクの位置によって磁気ヘッドの位置検出精度にばらつきがあり、特に磁気ディスクの外周側においては、内周側に比べてトラッキング精度が低下する傾向が認められる場合があることが分かった。
【0022】
すなわち、この現象はアクセス速度などハードディスクドライブのパフォーマンスが、信号の記録再生を行う磁気ディスク上の位置によって変化する可能性があることを示唆している。
【0023】
特許文献2の方法においては、磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号が最終のトラッキング用サーボ信号となるので、前記の現象はもちろん解決されることが好ましい問題である。
【0024】
一方、特許文献3の方法においては、磁気転写記録された位相検出による第1のトラッキング用サーボ信号は、磁気ヘッドを用いたセルフサーボ記録によって第2のトラッキング用サーボ信号に書き換えられる。この場合、セルフサーボ記録時に第1のトラッキング用サーボ信号を参照して磁気ヘッドを位置決めする際に位置決め誤差を生じる。
【0025】
この位置決め誤差は、最終のトラッキング用サーボ信号である第2のトラッキング用サーボ信号に書き込み位置の誤差として反映されてしまうので、同様に解決されることが好ましい。
【0026】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる磁気ディスクの製造方法、磁気記録再生装置及び磁気記録再生装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記目的を達成するために、本発明の磁気ディスクの製造方法は、基体表面に情報信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記マスター情報担体を磁気ディスクの表面に接触させて外部磁界を印加することにより、前記形状パターンに対応する情報信号を前記磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備えた磁気ディスクの製造方法であって、前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントを前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成する形状パターンであり、前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さいことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の磁気記録再生装置は、情報信号が予め記録された磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置であって、前記磁気ディスクに、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントが前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成されており、前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さいことを特徴とすることを特徴とする。
【0029】
次に、本発明の磁気記録再生装置の製造方法は、情報信号が予め記録された磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置の製造方法であって、基体表面に第1のトラッキング用サーボ信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記マスター情報担体を前記磁気ディスクの表面に接触させて外部磁界を印加することにより、前記形状パターンに対応する前記第1のトラッキング用サーボ信号を前記磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備え、前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントを前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成する形状パターンであり、前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さくなっており、さらに、前記磁気ディスクを磁気記録再生装置に搭載した後、前記第1のトラッキング用サーボ信号を参照して前記磁気記録再生装置に搭載された磁気ヘッドを位置決めしながら前記磁気ヘッドによって前記第1のトラッキング用サーボ信号とは異なる第2のトラッキング用サーボ信号を記録する工程を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の磁気ディスクの製造方法及び磁気記録再生装置によれば、複数のセグメントを形成し、磁気ディスクの外周側に行くにつれて、磁化反転長がセグメント毎に一旦小さくなるようにしているので、磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる。
【0032】
また、本発明の磁気記録再生装置の製造方法によれば、先行して記録したトラッキング用サーボ信号を、磁気記録再生装置自体により自動で、より高密度の信号に記録し直すことができる。このため、クリーンルームや人手を省くことができ、生産性の向上を図ることができ、生産コストの低減にもなる。
【0033】
前記本発明の磁気ディスクの製造方法においては、前記情報信号は、トラッキング用サーボ信号を含むことが好ましい。
【0034】
また、前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの半径方向変位に伴う再生信号の位相変化を検出することにより、前記磁気ディスクの半径方向位置を特定できる位相検出信号パターンを含むことが好ましい。
【0035】
また、前記トラッキング用サーボ信号は、同芯円状に構成された信号パターンであって、前記信号パターン中心と前記磁気ディスクの中心とを偏心させて前記信号パターンを記録することが好ましい。この構成によれば、セグメント間の境界における信号の不連続領域における情報信号の再生をより確実できる。
【0036】
また、前記複数のセグメントのうち、前記磁気ディスクの半径方向における最内周側のセグメントは、前記磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に形成し、前記ユーザデータ領域におけるセグメントとは別に形成することが好ましい。この構成によれば、比較的トラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号をユーザデータ領域に多く用いることができるので、ユーザデータ領域におけるトラッキング精度を相対的に向上させることができる。
【0037】
また、前記磁気記録再生装置においては、前記情報信号は、トラッキング用サーボ信号を含むことが好ましい。
【0038】
また、前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの半径方向変位に伴う再生信号の位相変化を検出することにより、前記磁気ディスクの半径方向位置を特定できる位相検出信号パターンを含むことが好ましい。
【0039】
また、前記トラッキング用サーボ信号は、同芯円状に構成された信号パターンであって、前記信号パターン中心と前記磁気ディスクの中心とが偏心していることが好ましい。この構成によれば、セグメント間の境界における信号の不連続領域における情報信号の再生をより確実できる。
【0040】
また、前記複数のセグメントのうち、前記磁気ディスクの半径方向における最内周側のセグメントは、前記磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に形成し、前記ユーザデータ領域におけるセグメントとは別に形成していることが好ましい。この構成によれば、比較的トラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号をユーザデータ領域に多く用いることができるので、ユーザデータ領域におけるトラッキング精度を相対的に向上させることができる。
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る情報信号の磁気転写記録方法について説明する。図1に、本実施の形態に係る情報信号の磁気転写記録を実施するための記録装置の概略図を示している。図1において、磁気ディスクであるハードディスク1は、中心孔1aを有するドーナツ円盤状のディスクである。ハードディスク1は、非磁性基板の表面にCo等を主成分とする強磁性薄膜をスパッタリング法によって成膜することにより構成されている。
【0043】
ハードディスク1の強磁性薄膜表面に接触するように、円盤状のマスター情報担体2が重ね合わされて配置されている。マスター情報担体2は、一般的にはハードディスク1より径が大きく、ハードディスク1に接触する側の表面に信号領域2aが設けられている。信号領域2aは、ハードディスク1に磁気転写記録すべき情報信号に対応した微細な配列パターン形状の強磁性薄膜で形成されている。
【0044】
ハードディスク1は、ディスク保持体3で保持されている。ディスク保持体3の先端部にはハードディスク1を位置決め保持するチャック部3aが設けられている。また、ディスク保持体3の内部には吸引孔3bが設けられており、吸引孔3bはハードディスク1の中心孔1aに連通し、かつ一端が排気ダクト4に接続されている。
【0045】
排気ダクト4の端部には排気装置5が装着されており、この排気装置5を始動させることにより、排気ダクト4、ディスク保持体3の吸引孔3bを通して、ハードディスク1とマスター情報担体2との間の空間が負圧状態となる。このことにより、マスター情報担体2がハードディスク1側に吸引され、マスター情報担体2にハードディスク1が位置決めされた状態で重ね合わされることになる。
【0046】
なお、このとき、マスター情報担体2表面には信号領域2aを除く領域において若干の隙間溝を形成し、その隙間溝を通して、ハードディスク1とマスター情報担体2の間の空気を吸引することもできる。
【0047】
着磁用ヘッド6は、マスター情報担体2からハードディスク1に転写記録する際に必要な外部磁界を印加するためのものである。着磁用ヘッド6から印加される磁界により、マスター情報担体2に形成された情報信号に対応した強磁性薄膜パターンが磁化され、これらから発生する漏れ磁束によってハードディスク1に強磁性薄膜パターン形状に対応した情報信号が記録される。
【0048】
図2に着磁用ヘッド6の一例の斜視図を示している。図2に示した着磁用ヘッド6は、巻線6aを具備した強磁性材料で形成された磁気コア半体6bと、同じく強磁性材料で形成された磁気コア半体6cとを対向させて、ギャップ6dを備えた環状の磁気回路を形成したものである。
【0049】
巻線6aに励磁電流を印加することによって、ギャップ6dには、矢印Aで示すように磁気コア半体6bから磁気コア半体6cに向かう漏れ磁束が発生する。また、印加する電流の向きを変えることにより、ギャップ6dに発生する漏れ磁束の向きを変えることができる。矢印Bは、図2に示す向きの漏れ磁束が発生しているときに、磁気コア半体6b、6cに発生する内部磁束の向きを示している。
【0050】
図3は、図2に示した着磁用ヘッド6のギャップ6dの形状を示す平面図である。ギャップ6dは、マスター情報担体2に対向する面において、ハードディスクドライブに搭載される記録再生用磁気ヘッドが磁気ディスク表面をトラッキング走査する際の軌道と同じ円弧状になっている。
【0051】
したがって、ギャップ6dに発生する磁界の方向は、トラッキング走査軌道と常に垂直となり、マスター情報担体2の強磁性薄膜は、全てのトラックにおいて、記録再生用磁気ヘッドのトラッキング走査方向と垂直な方向に磁化される。すなわち、記録再生用磁気ヘッドのヘッドギャップ長方向と同じ方向に磁化されるのである。
【0052】
次に、マスター情報担体2の構成例について説明する。図4は、マスター情報担体2の一例を模式的に示した平面図である。図4に示すように、マスター情報担体2の一主面、すなわちハードディスク1の強磁性薄膜表面に接触する側の表面には、略放射状に信号領域2aが形成されている。
【0053】
図5(a)は、図4のC部を模式的に示した拡大図である。磁性部2bで構成された形状パターンの形状は、磁気ディスク1に記録される情報信号に対応しており、磁気ディスク1と重なり合った状態において、形状パターンの位置は、磁気ディスク1上の情報信号が記録される位置に対応している。図5(a)の例では、情報信号に対応する形状パターンは、再生同期信号7、サーボアドレスマーク8、アドレス情報信号9、トラッキング用サーボ信号10a、10b等の各信号領域を、ヘッド移動方向すなわちトラック長さ方向に順次配列したものである。
【0054】
これらの形状パターンのうち、トラッキング用サーボ信号10a、10bは、磁気ヘッドの再生ギャップに対して傾斜した方向にアジマス角を有するトラッキング用サーボ信号パターンである。この形状パターンは、磁気ディスクの半径方向変位に伴う信号の位相変化を検出してトラッキングを行うことが可能な位相検出パターンである。
【0055】
なお、図5(a)に示すマスター情報パターンは一例であり、磁気ディスクに記録される情報信号の構成、目的、用途に応じて、マスター形状情報パターンの構成や配置等を適宜決定することとなる。
【0056】
図5(b)は、図5(a)のD部を模式的に示した拡大図である。図5(b)において、斜線部分が強磁性薄膜によって構成された磁性部2bである。また図5(b)に示す矢印は、磁気転写記録が行われた後に、磁気ディスクの対応する部分が磁化される向きを示したものである。
【0057】
図5(b)において、ヘッド移動方向における磁性部2bの幅W1、及びヘッド移動方向における隣接する磁性部2b間の幅W2は、磁気ディスクに記録される磁化パターンの磁化反転長にほぼ対応している。そして、幅W1及び幅W2は、ディスク半径の増加とともに、すなわち磁気ディスク外周側ほど大きくなるよう構成されている。このことにより、磁気ディスクが一定回転数で回転する場合に、周速はディスク外周側の方が速くなるので、磁化反転長が半径に比例し、時間軸上において略同じ再生パルス間隔を得るよう構成されている。
【0058】
ここで、前記の磁化反転長とは、正確には「その半径位置における最短の磁化反転長」と言うべきものである。すなわち、最短磁化反転長をtとした場合、記録される情報信号は、一般的にはtの整数倍(t、2t、3t、4tなど)の磁化反転長を有する磁化反転の組み合わせで構成されている。
【0059】
したがって、ここで述べていることは、これら種々の磁化反転長を有する情報信号すべてを考慮しても磁化反転長がディスク半径の増加とともに大きくなるように構成されているということではなく、正確には、ある半径位置における最短磁化反転長tが、ディスク中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるように構成されているということである。すなわち、最短磁化反転長同士を比較すれば、その長さはディスク中心からの半径方向の距離が大きいほど大きくなっている。しかしながら、これらの内容は、本記載を参照すれば、当業者が容易に理解可能なことであるので、本願明細書では、前記に記載した磁化反転長の定義の内容を、単に「磁化反転長」又は「最短磁化反転長」ということにする。
【0060】
図6は、図4に示したマスター情報担体2の強磁性薄膜の形成領域のヘッド移動方向における一部断面図を示している。図6に示したように、マスター情報担体2は、基体11の主面11bに形成された複数の凹部11aに、磁性部2bを形成する強磁性薄膜12が埋め込まれている。基体11は、Si基板、ガラス基板、プラスチック基板などの非磁性材料で形成された円盤状の基体である。主面11bは、ハードディスク1の表面が接触する側の表面である。また、凹部11aは、情報信号に対応する微細な配列パターン形状で形成されている。
【0061】
ここで、図1に示した記録装置を用いてハードディスク1とマスター情報担体2とを均一に密着させ良好な記録特性を得るためには、強磁性薄膜12の表面12aができる限り平坦で、かつ基体11の主面11bに対して、少し突出した構成とすることが好ましい。例えば、強磁性薄膜12の基体11の主面11bに対する突出量は、マスター情報担体の耐久性の観点から、5nmから100nmの範囲とすることが好ましい。
【0062】
強磁性薄膜12としては、硬質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料のみならず、多くの種類の磁性材料を用いることができる。この場合、より良好な信号品質を得るには、比較的透磁率が大きい軟質磁性薄膜又は半硬質磁性薄膜を用い、磁気転写記録時には外部磁界によってこれを励磁して一様に磁化することが好ましい。例えば、Fe、Co、Ni−Fe合金、Fe−Co合金などを用いることができる。
【0063】
なお、マスター情報信号が記録される磁気ディスクの種類によらずに十分な記録磁界を発生させるためには、強磁性薄膜12を構成する磁性材料の飽和磁束密度が大きいほどよい。特に、2000エルステッド(159kA/m)を超える高保磁力の磁気ディスクや磁性層の厚みの大きいフレキシブルディスクに対しては、飽和磁束密度が0.8テスラ以下になると十分な記録を行うことができない場合がある。このため、一般的には、0.8テスラ以上、好ましくは1.0テスラ以上の飽和磁束密度を有する磁性材料が用いられる。
【0064】
また、強磁性薄膜12の厚さは、記録される情報信号の磁化反転長や磁気ディスク磁性層の飽和磁化、保磁力、膜厚によるが、例えば磁化反転長約1μm、磁気ディスク磁性層の飽和磁化約が500emu/cc(500kA/m)、保磁力が3000エルステッド(239kA/m)、厚さが20nm程度の場合では、50nm〜500nm程度であればよい。
【0065】
さらに、このような磁気転写記録方法において、良好な記録信号品質を得るためには、マスター情報担体を用いた磁気転写記録に先立って、ハードディスクなどの磁気ディスクを周方向に一様に直流消去しておくことが望ましい。
【0066】
次に、マスター情報担体に形成した形状パターンに対応した情報信号を、ハードディスクに記録する手順について説明する。図7は、ハードディスクの直流消去の工程を示す斜視図である。図8は、図7の工程で直流消去されたハードディスクの状態を模式的に示した斜視図である。図7に示した工程において、着磁用ヘッド6をハードディスク1に近づけた状態で、ハードディスク1の中心軸を回転軸としてハードディスク1と平行に回転させる。このことにより、図8の矢印で示したように、ハードディスク1は予め一方向に磁化(直流消去)されることになる。
【0067】
次に、図1に示したように、ハードディスク1にマスター情報担体2を位置決めして重ね合わせた状態で、排気装置5を始動させる。このことにより、ハードディスク1の中心孔1aを通してマスター情報担体2が吸引され、マスター情報担体2の強磁性薄膜12が形成されている面とハードディスク1とが均一に密着するように重ね合わされる。
【0068】
図9は、ハードディスク1に情報信号を磁気転写記録している状態を示す斜視図である。着磁用ヘッド6により印加される磁界は、初期磁化とは逆極性となるようにしている。この状態で着磁用ヘッド6を、ディスク保持体3に保持されているハードディスク1の中心を回転中心として、マスター情報担体2と平行に回転させる。この回転を続けながら、マスター情報担体2に直流励磁磁界を印加する。このことにより、マスター情報担体2の強磁性薄膜12が磁化され、マスター情報担体2に重ね合わせたハードディスク1の所定の情報信号記録領域1bに、強磁性薄膜12による磁性部のパターン形状に対応した情報信号が記録される。図10に、図9に示した工程で情報信号記録領域1bに情報信号が記録されたハードディスク1の模式図を示している。図10に示した矢印は、ハードディスク1の情報信号記録領域1bの外において残留する磁化の方向を示している。
【0069】
図11は、情報信号記録時の磁化の様子を詳細に示す断面図である。図11に示したように、マスター情報担体2をハードディスク1に密着させた状態で、マスター情報担体2に外部から磁界を印加して強磁性薄膜12を磁化する。このことにより、ハードディスク1の強磁性薄膜からなる磁気記録層1cに情報信号が記録されることになる。
【0070】
すなわち、非磁性の基体11に所定のパターン形状で強磁性薄膜12を形成して構成したマスター情報担体2を用いることにより、ディジタル情報信号を磁気記録媒体であるハードディスク1に磁気的に転写記録することができる。
【0071】
ここで、磁気転写記録方法について、より詳しく説明する。図12は、前記のような情報信号の磁気転写記録の一連の過程を模式的に示した断面図である。図12(a)はハードディスク1の直流消去過程を示し、図12(b)はマスター情報担体2を用いた情報信号の磁気転写記録過程を示し、図12(c)は情報信号の磁気転写記録後のハードディスク1の残留磁化状態を示している。各図はそれぞれ、ヘッド移動方向すなわち情報信号のトラック長さ方向における断面図である。磁気記録媒体がハードディスクである場合、情報信号のトラック長さ方向は、ディスク円周方向に一致する。
【0072】
図12(a)に示したように、ハードディスク上の磁気記録層1cはマスター情報担体を用いた情報信号の磁気転写記録に先立って直流消去磁界13により、一定方向の直流消去磁化14を有するよう一様に直流消去される。次に、図12(b)に示したように、情報信号に対応する配列パターン形状で強磁性薄膜が形成されたマスター情報担体2の表面をハードディスク上の磁気記録層1cの表面に密着させ、直流励磁磁界15によって強磁性薄膜12を励磁する。この際、直流励磁磁界15の極性は、直流消去磁界13とは逆極性とする。これにより、隣接する強磁性薄膜12間の部分においてのみ、漏れ磁束16によりハードディスク1上の磁化14が反転される。この結果、マスター情報担体2を取り除いた後、ハードディスク1上には、マスター情報担体2上に形成された強磁性薄膜の配列パターン形状に対応する磁化14のパターンを記録することができる。
【0073】
次に、図13は、本実施の形態におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係を示している。図13の例は、2.5インチ径のハードディスクに磁気転写記録されるパターンの例である。ディスク外径は、ハードディスク外周縁の半径、ディスク内径はハードディスク内孔縁の半径、ユーザデータ領域はユーザデータが記録される半径領域を示している。
【0074】
また、ハードディスクドライブ内においては、磁気ヘッドが必要以上に内周側に移動することによりスピンドルハブなどに接触してクラッシュすることを防止するため、機械的に磁気ヘッドアクチュエータの移動を制限するストッパ(内周側クラッシュストップ)を設けている。図示された内周側クラッシュストップは、このストッパに制限されるディスク最内周側の磁気ヘッドの位置を示している。
【0075】
さて、本実施の形態に係る磁気ディスクの情報信号は、複数のセグメントに記録されている。各セグメントにおいては、最短磁化反転長が磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるよう構成されている。例えば、図13に例示した構成では、情報信号記録領域1bは第1のセグメント17a、第2のセグメント17b、第3のセグメント17cの3つのセグメントから構成されている。各々のセグメントにおいては、磁化反転長が磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるよう構成されている。
【0076】
すなわち、磁気ディスクが一定回転数で回転する場合、周速はディスク外周側の方が速くなるので、各セグメント内においては磁化反転長が半径に比例し、時間軸上において略同じ再生パルス間隔を得るよう構成されている。その一方で、各セグメントのディスク最内周側の磁化反転長は、同じ値となるように構成されている。つまり、あるセグメントのディスク最外周側の磁化反転長に比べ、そのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメントのディスク最内周側の磁化反転長が小さくなるよう構成されている。例えば、第1のセグメント17aのディスク最外周側の磁化反転長に比べ、第2のセグメント17bディスク最内周側の磁化反転長が小さくなっている。第2のセグメント17bと第3のセグメント17cとの関係も同様である。
【0077】
この際、ハードディスクドライブにおけるクロック周波数の設定を簡素化するという観点から、あるセグメントのディスク最外周側の磁化反転長は、そのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメント(例えば、第1のセグメント17aに対しては第2のセグメント17b、第2のセグメント17bに対しては第3のセグメント17c)のディスク最内周側の磁化反転長の整数倍、又はそのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメントのディスク最内周側の磁化反転長の半分の整数倍とすることが好ましい。例えば、図13に示した構成では、各セグメントのディスク最外周側の磁化反転長は、そのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメントのディスク最内周側の磁化反転長の半分の3倍となるよう構成されている。
【0078】
これに対して、従来例におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係を図16に示している。従来例における情報信号記録領域1bは、本実施の形態のように複数のセグメントに分割されることなく一体に構成されている。そして、最短磁化反転長は磁気ディスクの半径に比例して単調に大きくなるよう構成されている。
【0079】
しかしながら、このような従来例の構成を有するトラッキング用サーボ信号の性能を検討した結果、磁気ディスクの位置によって磁気ヘッドの位置検出精度にばらつきがあり、特に磁気ディスクの外周側においては、内周側に比べてトラッキング精度が低下する傾向が認められる場合があるという問題点が見出された。
【0080】
本発明者らはこのような従来例の問題に対して、種々の実験と検討を繰り返し行った結果、前記のようなトラッキング精度劣化現象は、以下の作用によるものであることを見出した。図16に示した従来構成における磁化反転長は、ディスク最内周側で約0.35ミクロンであるが、外周側ほどディスク径の増加とともに増加し、ディスク最外周側では0.9ミクロン以上にも大きくなっている。ところが、本願発明者らの検討によれば、位相検出パターンを用いたトラッキング用サーボ信号における位置検出精度は、トラッキング用サーボ信号の密度が大きいほど、すなわち磁化反転長が小さいほど向上し、逆に磁化反転長が大きいほど劣化することが明らかとなった。
【0081】
その要因の一つは、トラッキング用サーボ信号から検出された位相差を距離に変換する際の係数によるものである。つまり磁化反転長が小さいほど、単位位相差に対応する距離が小さくなるので、より精密な精度の良いヘッド位置検出が可能となるのである。この要因による位置検出精度の向上効果は、トラッキング用サーボ信号の密度に比例、すなわち磁化反転長の逆数に比例するものと推定される。
【0082】
つまり磁化反転長が1/2になることにより、ヘッドの位置検出精度は2倍向上することになる。逆に、磁化反転長がディスク半径とともに単調に増加し、ディスク最外周では最内周の2.5倍以上にもなる図16の従来構成では、ディスク外周側のトラッキング精度が大幅に低下することになる。
【0083】
もう一つの考慮すべき要因は、トラッキング用サーボ信号の検出S/Nに関わるものである。図5(a)に示したように、位相検出パターンを用いたトラッキング用サーボ信号10a、10bは、一定の磁化反転長をもって周期的に繰り返される信号である。この周期信号に含まれる個々の再生パルスは、ジッタや外乱ノイズなどの影響によって位相検出精度を劣化させる要因を有しているが、これら各パルスの位相を平均化することによって前記の要因を低減し、位相検出精度を向上させることができる。
【0084】
ここで、トラッキング用サーボ信号の磁化反転長が小さければ、その分、同じ大きさのサーボトラック領域により多くの周期信号を記録することできるので、平均化されるパルスの数を多くすることにより信号S/Nを向上し、精度の高い位相検出を行うことが可能となる。この要因による位置検出精度の向上効果は、トラッキング用サーボ信号の密度の平方根に比例、つまり磁化反転長の逆数の平方根に比例するものと推定される。すなわち、磁化反転長が1/4になれば、ヘッドの位置検出精度を2倍向上することが可能となる。しかしながら、磁化反転長がディスク半径とともに単調に増加し、ディスク最外周では最内周の2.5倍以上にもなる図16の従来構成では、ディスク外周側のトラッキング用サーボ信号周期を増加させるような余地はなく、本要因を積極活用したトラッキング精度の向上は望めない。
【0085】
これに対して、図13に例示した本実施の形態に係る構成は、ディスク最内周側の磁化反転長は図16の従来構成と同等の0.35ミクロン程度であるが、ディスク最外周側を含めたユーザデータ領域全体における磁化反転長を、ディスク最外周側における磁化反転長を含めて、最大でも0.5ミクロン程度に抑えることができる。
【0086】
このため、従来構成に比べて、ディスク外周側におけるトラッキング精度の劣化を抑制し、ハードディスクの半径位置に依らず一様かつ均一にトラッキング精度に優れた構成を提供することができる。例えば、図16に示した従来構成と比較すると、従来構成では0.9ミクロン程度であったディスク最外周側の磁化反転長を0.5ミクロン程度とすることにより、ディスク最外周側のトラッキング精度を1.8倍に向上することが可能である。
【0087】
さらに、本実施の形態に係る構成では、外周側において、磁化反転長を小さくすることにより同じ大きさのサーボトラック領域により多くの周期信号を記録することできるので、平均化されるパルスの数を多くすることにより信号S/Nを向上し、より精度の高い位相検出を行うことも可能である。
【0088】
図16に示した従来構成と比較すると、従来構成では0.9ミクロン程度であったディスク最外周側の磁化反転長を0.5ミクロン程度とすることにより、1.8倍周期のトラッキング用サーボ信号を記録することが可能となり、ディスク最外周側のトラッキング精度をその平方根である1.3倍程度向上することが可能である。
【0089】
以上のように、図13に示した本実施の形態に係る構成では、ディスク半径位置に関わらず均一かつ一様に優れたトラッキング精度を実現することができる。図16に示した従来構成と比較すると、位相・距離換算係数に関わる要因と信号S/Nに関わる要因との相乗効果により、ディスク最外周側においては2.3倍以上ものトラッキング精度向上が可能である。
【0090】
なお、図13においては、情報信号記録領域1bが、3つのセグメントにより構成される場合を例示したが、これに限るものではなく、情報記録領域1bが2つ以上の複数のセグメントに分割されていれば、前記のような効果を得ることができる。
【0091】
以上の構成により、再生同期信号7、サーボアドレスマーク8、アドレス情報信号9、トラッキング用サーボ信号10a、10b等の情報信号が記録された磁気ディスクは、ハードディスクドライブに搭載される。ハードディスクドライブにおいては、前記の構成により磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号を、そのままユーザデータを記録再生する際のトラッキング用サーボ信号として使用してもよい。
【0092】
また、特許文献3に記載された構成と同様の方法により、磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号を、第1のトラッキング用サーボ信号として参照しながら、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドを用いて第2のトラッキング用サーボ信号をセルフサーボ記録し、これをユーザデータの記録再生の際におけるトラッキング用サーボ信号として用いてもよい。いずれの場合においても、ディスク半径位置にかかわらず、均一かつ一様な優れたトラッキング精度を実現できる。
【0093】
ところで、前記構成によって磁気転写記録された情報信号を磁気ヘッドにより再生する際において、磁気ディスクの半径方向に隣接するセグメント間の境界において、適切に情報信号を再生することができない場合が起こり得る。例えば、位相検出パターンを用いたトラッキング用サーボ信号に関して、磁気ディスクの径方向変位に伴って位相が連続的に変化する。しかしながら、隣接するセグメント間の境界となる半径位置では径方向変位に伴う連続的な位相変化は検出されず不連続点を生じることになり、トラッキング用サーボ信号を適切に再生できない場合が起こり得る。
【0094】
この場合、不連続点となるセグメント境界の両側の半径位置において検出される位相、すなわち磁気ディスクの半径方向に隣接するセグメントのうち磁気ディスク内周側のセグメントの最も外周側の半径位置において検出される位相と、磁気ディスク外周側のセグメントの最も内周側の半径位置において検出される位相とを用いて補間することにより、前記不連続点における位相を推定することが可能である。
【0095】
位相検出パターンを用いた場合に限らず、一般的に前記のような手法により、前記不連続点においてもトラッキング用サーボ信号による位置検出精度を許容範囲内に維持することが可能であるが、より好ましくは、ハードディスクドライブ内において、磁気転写記録された情報信号のパターン中心をスピンドルの回転中心、すなわち磁気ディスクの回転中心に対して許容量だけ偏芯させた構成を採用することができる。この構成によれば、前記のように信号が適切に再生されない不連続点を、セグメント境界近傍の半径位置においてディスク1周あたり2箇所に抑えることができる。
【0096】
すなわち、情報信号のパターン中心と磁気ディスクの回転中心とが完全に一致する場合には、セグメント間の境界となる半径位置ではディスク1周にわたってトラッキング用サーボ信号が適切に再生されないことになる。しかし、情報信号のパターン中心を磁気ディスクの回転中心に対して意図的に偏芯させることにより、セグメント境界近傍の半径位置において磁気ヘッドが実際にセグメント境界を横切って信号が適切に再生されないのは、ディスク1周あたり2箇所の限られた領域に抑えることができる。信号が適切に再生されない不連続点がディスク1周あたり2箇所のみであれば、その前後の部分において適切に再生されたトラッキング用サーボ信号をも用いて補間することが出来、より高い位置検出精度でトラッキングを継続することができる。
【0097】
このように磁気転写記録された情報信号のパターン中心が磁気ディスクの回転中心に対して偏芯した構成は、例えば磁気転写記録の過程において、同芯円状に構成された情報信号パターンの中心と磁気ディスクの幾何学的中心とを偏心させた状態で情報信号パターンを磁気転写記録することにより得られる。また、磁気転写記録された磁気ディスクをハードディスクドライブに搭載する過程において、磁気ディスクの幾何学的中心がスピンドルの回転中心すなわち磁気ディスクの回転中心と偏心するように磁気ディスクを取り付けることによっても実現できる。
【0098】
(実施の形態2)
実施の形態2は、磁気ディスクへの情報信号の磁気転写記録方法の基本的な構成は、実施の形態1と同様である。このため、図4〜図6に示したようなマスター情報担体の構成についても、実施の形態1と同様である。
【0099】
図14に、実施の形態2におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係を示している。図14の構成も、実施の形態1における図13と同様に、2.5インチ径のハードディスクに磁気転写記録されるパターンである。本実施の形態における情報信号も、実施の形態1の構成と同様に複数のセグメントにより構成されており、各セグメントにおいては、最短磁化反転長が磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるよう構成されている。
【0100】
図14の構成では、情報信号記録領域1bは、第1のセグメント17a、第2のセグメント17b、第3のセグメント17c、及び第4のセグメント17dの4つのセグメントから構成されており、各セグメントにおいては、磁化反転長が磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるよう構成されている。
【0101】
すなわち、磁気ディスクが一定回転数で回転する場合、周速はディスク外周側の方が速くなるので、各セグメント内においては磁化反転長が半径に比例し、時間軸上において略同じ再生パルス間隔を得るよう構成されている。また、第2のセグメント17bから第4のセグメント17dにおいては、各セグメントのディスク最内周側の磁化反転長は、同じ値となるように構成されている。つまり、あるセグメントのディスク最外周側の磁化反転長に比べ、そのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメントのディスク最内周側の磁化反転長は小さくなるよう構成されている。
【0102】
図14の構成が、図13の構成と異なっているのは、図14の構成では、第1のセグメント17aがユーザデータ領域最内周位置までの範囲に止まっている点である。すなわち、図14の構成は、内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に、ユーザデータ領域におけるセグメントとは別個に専用のセグメントを備えていることになる。
【0103】
ハードディスクドライブにおいては、磁気ヘッドが内周側クラッシュストップからユーザデータ領域に向かう間においても、磁気ヘッドにサーボをかけて位置制御することが必要である。したがって、内周側クラッシュストップからユーザデータ領域最内周位置までの半径領域においても、トラッキング用サーボ信号が記録されている必要がある。
【0104】
その一方で、内周側クラッシュストップからユーザデータ領域最内周位置までの半径領域においては、ユーザデータの記録再生は行われないので、ユーザデータ領域ほどの厳密な位置制御を行う必要はない。すなわち、隣接トラックのユーザデータを、僅かも消去しないほどの厳密な精度でトラッキング制御する必要はない。このため、厳密なトラッキング制御が行われるユーザデータ領域に向かうまでの間の位置制御の精度は、磁気ヘッドが暴走しない程度に粗くサーボがかかる程度にまで落とし得ることになる。
【0105】
このような観点から、実施の形態1における図13や従来例の図16に示したように、内周側クラッシュストップからユーザデータ領域最内周位置までの半径領域に、トラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号を用いるということは、必ずしも必要なことではないといえる。
【0106】
図14に示した構成は、磁化反転長が小さくトラッキング精度に優れた信号は、可能な限りユーザデータ領域において用いることが好ましいという観点から見出した構成である。すなわち、図14の構成では、内周側クラッシュストップからユーザデータ領域最内周位置までの半径領域は、比較的トラッキング精度に劣る磁化反転長が大きい信号で構成された第1のセグメント17aでカバーされている。このことにより、比較的トラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号をユーザデータ領域に多く用いることができるので、ユーザデータ領域におけるトラッキング精度を相対的に向上させることができる。
【0107】
図15は、本実施の形態2におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の別の構成例を示している。図15の構成は、磁気ディスクの最内周側の第1のセグメント17aが、磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの半径領域をほぼカバーするように記録されているという点では図14の構成と同様である。しかしながら、この領域においてもトラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号を用いているという点で、図14の構成と異なっている。
【0108】
図15の構成においても、ユーザデータ領域におけるトラッキング精度を相対的に向上させることができるという本実施の形態の効果を得ることは可能である。しかしながら、図15の構成では、図13や図14の構成のように、第1のセグメント17aのディスク最外周側の磁化反転長を、第2のセグメント17bのディスク最内周側の磁化反転長の整数倍、もしくは、第2のセグメント17bのディスク最内周側の磁化反転長の半分の整数倍とすることが困難である。
【0109】
このため、ハードディスクドライブにおけるクロック周波数の設定を簡素化するという点では、図14の構成の方が有利である。一方、図15の構成は、図14の構成に比べ、内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの半径領域におけるトラッキング精度に十分な余裕を持たせることができる。したがって、図14の構成を選択するか図15の構成を選択するかは、求める性能、品質等に応じて適宜決定すれがよい。
【0110】
なお、図14、図15においては、情報信号記録領域1bが、4つのセグメントにより構成される場合を例示したが、これに限るものではなく、情報記録領域1bが2つ以上の複数のセグメントに分割されていれば、本実施の形態の効果を得ることができる。
【0111】
すなわち、最も単純な構成の例として、2つのセグメントを備え、第1のセグメントが磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの半径領域をほぼカバーし、第2のセグメントがユーザデータ領域を含む残りの情報記録領域1bをカバーする構成が挙げられるが、このような構成であっても、本実施の形態における効果を得ることができる。
【0112】
以上の構成により、再生同期信号7、サーボアドレスマーク8、アドレス情報信号9、トラッキング用サーボ信号10a、10b等の情報信号が記録された磁気ディスクは、ハードディスクドライブに搭載される。
【0113】
実施の形態1の構成と同様に、磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号を、そのままユーザデータを記録再生する際のトラッキング用サーボ信号として使用してもよい。また、特許文献3に記載された構成と同様の方法により、磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号を、第1のトラッキング用サーボ信号として参照しながら、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドを用いて第2のトラッキング用サーボ信号をセルフサーボ記録し、これをユーザデータの記録再生の際におけるトラッキング用サーボ信号として用いてもよい。
【0114】
また、実施の形態1と同様に、セグメント間の境界における信号の不連続領域における情報信号の再生をより確実にするために、ハードディスクドライブ内においては、磁気転写記録された情報信号のパターン中心をスピンドルの回転中心、すなわち磁気ディスクの回転中心に対して許容量だけ偏芯させるようにしてもよい。この構成の実現方法は、実施の形態1で説明した通りである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によれば、磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができるので、ハードディスクドライブの高密度化、小型大容量化に有用である。また、ハードディスクドライブに限らず、大容量フレキシブルディスクドライブ等、他の磁気ディスクドライブ用途にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態1における情報信号の磁気転写記録を実施するための記録装置の概要を示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態1における着磁用ヘッドの構成例を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態1における着磁用ヘッドのマスター情報担体に対向する一主面の構成例を示す平面図。
【図4】本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体の構成例を示す平面図。
【図5】本発明の実施の形態1においてマスター情報担体に形成される情報信号の配列パターンの構成例を模式的に示した平面図。
【図6】本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体の構成例を示す断面図。
【図7】本発明の実施の形態1においてハードディスクを直流消去している状態を示す斜視図。
【図8】図7に示した工程により直流消去されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図。
【図9】本発明の実施の形態1においてハードディスクに情報信号を磁気転写記録している状態を示す斜視図。
【図10】図9に示す工程により情報信号が記録されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図。
【図11】図9に示す工程によりハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化状態を模式的に説明するための断面図。
【図12】本発明の実施の形態1によりハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化状態の変化を模式的に説明するための断面図。
【図13】本発明の実施の形態1におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の一例を示す図。
【図14】本発明の実施の形態2におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の一例を示す図。
【図15】本発明の実施の形態2におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の別の一例を示す図。
【図16】従来におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の一例を示す図。
【符号の説明】
【0117】
1 ハードディスク
1a 中心孔
1b 情報信号記録領域
1c 磁気記録層
2 マスター情報担体
2a 信号領域
2b 磁性部
7 再生同期信号
8 サーボアドレスマーク
9 アドレス情報信号
10a、10b トラッキング用サーボ信号
11 基体
11a 基体の凹部
11b 基体の主面
12 強磁性薄膜
17a 第1のセグメント
17b 第2のセグメント
17c 第3のセグメント
17d 第4のセグメント
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスター情報担体を用いて予め所定の情報信号を記録した磁気ディスクの製造方法、及びその製造方法により製造された磁気ディスクを搭載する磁気記録再生装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気記録再生装置は、小型でかつ大容量を実現するために、高記録密度化の傾向にある。代表的な磁気記憶装置であるハードディスクドライブの分野においては、すでに面記録密度60Gbit/in2(93Mbit/mm2)を超える装置が商品化されており、まもなく、面記録密度が100Gbit/in2(155Mbit/mm2)の実用化が議論されるほどの急激な技術進歩が認められる。
【0003】
このような高記録密度化を可能とした技術的背景としては、媒体性能、ヘッド・ディスクインターフェース性能の向上やパーシャルレスポンス等の新規な信号処理方式の出現による線記録密度の向上も大きな要因である。しかしながら昨今では、トラック密度の増加傾向が線記録密度の増加傾向を大きく上回り、面記録密度向上のための主たる要因となっている。これは、従来の誘導型磁気ヘッドに比べてはるかに再生出力性能に優れた巨大磁気抵抗効果型ヘッド(GMRヘッド)の実用化による寄与に基づく。現在、GMRヘッドの実用化により、1μm以下のトラック幅信号をS/N良く再生することが可能となっている。今後さらなるヘッド性能の向上にともない、トラックピッチはさらに小さくなるものと予想されている。
【0004】
さて、ヘッドがこのような狭トラックを正確に走査し、信号をS/N良く再生するためには、ヘッドのサーボトラッキング技術が重要な役割を果たしている。サーボトラッキングを行うため、現在のハードディスクドライブでは、ディスクの1周、すなわち角度にして360度中において、一定の角度間隔でトラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等が記録された領域(以下、サーボトラック領域という。)を設けている。磁気ヘッドは、一定間隔でこれらサーボトラック領域の信号を再生することにより、ヘッドの位置を確認、修正しながら正確にトラック上を走査することができるのである。
【0005】
前記のトラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等は、ヘッドが正確にトラック上を走査するための基準信号となるものであるため、その記録時には、正確な位置決め精度が要求される。現在のハードディスクドライブでは、ディスクをドライブに組み込んだ後、専用のサーボ記録装置を用いて厳密に位置制御された磁気ヘッドにより上記トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等の信号記録が行われている。
【0006】
ここで、前記のような専用のサーボ記録装置を用いた磁気ヘッドによる記録方法においては、以下のような課題があった。すなわち、磁気ヘッドによる記録は、ヘッドと媒体との相対移動に基づく線記録であるので、専用のサーボ記録装置を用いて磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら磁気ディスクの全面にわたって信号記録を行う方法では、非常に多くの時間を要していた。
【0007】
したがって、ハードディスクドライブの生産台数に応じて、サーボ記録装置を必要台数準備することが求められるが、このような専用のサーボ記録装置は、非常に高価な設備である。さらにサーボ記録装置を用いるので、信号記録はドライブ筐体を開放してクリーンルーム内で行う必要があった。このため、多くのサーボ記録装置を設置するためには、クリーンルーム設置の設備投資も大きくなり、大幅なコスト高になる原因となっていた。
【0008】
このような背景の下、以下のような方法が提案されている。例えば、特許文献1には、マスター情報担体を用いた方法が提案されている。マスター情報担体は、基体の表面に、情報信号に対応するパターン形状で強磁性材料からなる磁性部を形成したものである。特許文献1に提案されている方法は、このマスター情報担体の表面を、強磁性薄膜、又は強磁性粉塗布層が形成されたシート状又はディスク状磁気記録媒体の表面に接触させる。そして、所定の外部磁界を印加することにより、マスター情報担体に形成した情報信号に対応するパターン形状の磁化パターンを磁気記録媒体に磁気転写記録するというものである。
【0009】
この方法においては、一方向に磁化されたマスター情報担体表面の強磁性薄膜から発生する記録磁界により、磁気記録媒体にはマスター情報担体の強磁性薄膜パターンに対応した磁化パターンが磁気転写記録されることになる。すなわち、マスター情報担体表面に、トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生同期信号等に対応する強磁性薄膜パターンをフォトリソグラフィ技術などによって形成することにより、磁気記録媒体上にはこれらサーボトラック領域における信号を磁化情報として記録することができる。
【0010】
従来の磁気ヘッドによる記録が、ヘッドと媒体との相対移動に基づく動的線記録であるのに対し、特許文献1の記録はマスター情報担体と媒体との相対移動を伴わない静的な面記録である。このような特徴により、特許文献1の技術は、前記の従来方法における課題に対して、下記のような極めて有効な効果を発揮することができる。
【0011】
すなわち、一括面記録であるため、サーボトラック領域の信号記録に要する時間は、従来の磁気ヘッドによる記録方法に比べて、非常に短い。また、磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら記録を行うための高価なサーボ記録装置が不要であり、これを設置するための広大なクリーンルームも不要である。このため、信号記録における生産性を大幅に向上できるとともに、生産コストも低減することができる。
【0012】
また、特許文献1の方法は、形状情報を磁化情報として磁気転写記録する方法であるので、磁気ヘッドでは記録し得ない様々なパターンを記録することができる。すなわち磁気ヘッドを用いては、その磁気ヘッド固有の記録トラック幅とは異なるトラック幅を有する信号を記録することはできず、またその磁気ヘッドの記録ギャップや再生ギャップに対して傾斜した方向にアジマス角を有するような磁化パターンを記録することもできない。他方、特許文献1の方法では、強磁性材料からなる形状パターンを自由に設計できるので、磁気ヘッドでは記録し得ない磁化パターンであっても、容易に記録することができる。
【0013】
また、特許文献2の方法によれば、特許文献1の方法を用いることにより、磁気ディスクに記録される種々の信号の用途に応じて磁気ヘッドでは記録し得ない磁化パターンを記録し、各信号の目的性能を向上させることが可能である。例えば、磁気ヘッドの再生ギャップに対して傾斜した方向にアジマス角を有するトラッキング用サーボ信号パターンを用いることにより、磁気ディスクの半径方向変位に伴う信号の位相変化を検出してトラッキングを行うことが可能となる。このため、従来の振幅検出を用いた方法に比べてトラッキング精度を向上することが可能になる。
【0014】
ところで、特許文献1や特許文献2に記載の磁気転写記録方法を用いるためには、記録すべき情報信号に対応する強磁性材料の形状パターンを、リソグラフィ技術を用いて精度良く形成することが必要である。しかしながら、記録すべき信号の密度が高くなるほど、すなわち記録磁化パターンにおける磁化反転長が小さいほど、これに対応する微細な強磁性材料の形状パターンを形成することが必要になる。このため、リソグラフィプロセスが技術的により困難になったり、高性能の装置を必要とするためにコスト高となるといった問題があった。
【0015】
トラッキング用サーボ信号の記録密度は、ユーザデータ信号に比べると低いが、それでも近年のハードハードディスクドライブにおいては、磁化反転長が0.1μm程度にまで小さくなっている。このような微細な形状パターンを磁気ディスク面に相当する広い面積領域に形成することは、半導体用の最先端のリソグラフィ技術を用いても容易なことではない。
【0016】
他方、サーボトラック領域における信号の密度を比較的小さく、すなわち磁化反転長を比較的大きく設計すれば、リソグラフィプロセスは容易になる。しかしながら、この場合には磁気ディスク面においてサーボトラック領域の占める割合が大きくなってユーザデータ領域を犠牲にしてしまうため、結果的に磁気記録再生装置の記憶容量を減少させてしまうことになる。
【0017】
このような問題を解決する方法が特許文献3に提案されている。特許文献3の方法は、まず特許文献1及び特許文献2の磁気転写記録方法を用いて第1のトラッキング用サーボ信号を含む第1のサーボトラック領域を磁気ディスクに記録した後、ハードディスクドライブに搭載する。続いて第1のトラッキング用サーボ信号を参照して、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドを位置決めしながら、この磁気ヘッドによって第2のトラッキング用サーボ信号を含む第2のサーボトラック領域を記録する。
【0018】
つまり、特許文献3の技術は、特許文献1や特許文献2の方法によって記録されたサーボトラック領域の信号を参照して、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドが、より高密度の信号に記録し直す(以下、「セルフサーボ記録」という。)という技術である。
【0019】
特許文献3の方法においても、特許文献1の方法と同様に高価なサーボ記録装置は不要である。一方、特許文献3の方法においては、セルフサーボ記録のプロセスに余分の時間を要するが、このプロセスはドライブ筐体を密閉した後、クリーンルーム外の比較的小さなスペースで行うことができるので、クリーンルームに関する設備投資を必要としない。また人手を要さずに、コンピュータ管理の下、ハードディスクドライブ自体が自動で記録を行うことができるので、特許文献1の方法と同様に、専用のサーボ記録装置を用いた従来方法に比べて、生産性及びコストメリットの向上が大きくなる。
【0020】
なお、特許文献3の方法によれば、磁気転写記録される第1のトラッキング用サーボ信号としては、特許文献2に開示されたような位相検出パターンを用いることが可能である。一方、第2のトラッキング用サーボ信号は、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドにより記録が行われる。磁気ヘッドを用いては、特許文献2に開示されたような位相検出パターンを記録することは困難であるので、第2のトラッキング用サーボ信号としては、従来通りの振幅検出パターンが用いられるのが一般的である。
【特許文献1】特開平10−40544号公報
【特許文献2】特開平11−144218号公報
【特許文献3】特開平2001−243733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献2又は特許文献3に提案された磁気転写記録方法により記録した位相検出によるトラッキング用サーボ信号の性能を検討した結果、磁気ディスクの位置によって磁気ヘッドの位置検出精度にばらつきがあり、特に磁気ディスクの外周側においては、内周側に比べてトラッキング精度が低下する傾向が認められる場合があることが分かった。
【0022】
すなわち、この現象はアクセス速度などハードディスクドライブのパフォーマンスが、信号の記録再生を行う磁気ディスク上の位置によって変化する可能性があることを示唆している。
【0023】
特許文献2の方法においては、磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号が最終のトラッキング用サーボ信号となるので、前記の現象はもちろん解決されることが好ましい問題である。
【0024】
一方、特許文献3の方法においては、磁気転写記録された位相検出による第1のトラッキング用サーボ信号は、磁気ヘッドを用いたセルフサーボ記録によって第2のトラッキング用サーボ信号に書き換えられる。この場合、セルフサーボ記録時に第1のトラッキング用サーボ信号を参照して磁気ヘッドを位置決めする際に位置決め誤差を生じる。
【0025】
この位置決め誤差は、最終のトラッキング用サーボ信号である第2のトラッキング用サーボ信号に書き込み位置の誤差として反映されてしまうので、同様に解決されることが好ましい。
【0026】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる磁気ディスクの製造方法、磁気記録再生装置及び磁気記録再生装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記目的を達成するために、本発明の磁気ディスクの製造方法は、基体表面に情報信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記マスター情報担体を磁気ディスクの表面に接触させて外部磁界を印加することにより、前記形状パターンに対応する情報信号を前記磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備えた磁気ディスクの製造方法であって、前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントを前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成する形状パターンであり、前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さいことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の磁気記録再生装置は、情報信号が予め記録された磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置であって、前記磁気ディスクに、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントが前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成されており、前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さいことを特徴とすることを特徴とする。
【0029】
次に、本発明の磁気記録再生装置の製造方法は、情報信号が予め記録された磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置の製造方法であって、基体表面に第1のトラッキング用サーボ信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記マスター情報担体を前記磁気ディスクの表面に接触させて外部磁界を印加することにより、前記形状パターンに対応する前記第1のトラッキング用サーボ信号を前記磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備え、前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントを前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成する形状パターンであり、前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さくなっており、さらに、前記磁気ディスクを磁気記録再生装置に搭載した後、前記第1のトラッキング用サーボ信号を参照して前記磁気記録再生装置に搭載された磁気ヘッドを位置決めしながら前記磁気ヘッドによって前記第1のトラッキング用サーボ信号とは異なる第2のトラッキング用サーボ信号を記録する工程を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の磁気ディスクの製造方法及び磁気記録再生装置によれば、複数のセグメントを形成し、磁気ディスクの外周側に行くにつれて、磁化反転長がセグメント毎に一旦小さくなるようにしているので、磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができ、トラッキング精度の向上を図ることができる。
【0032】
また、本発明の磁気記録再生装置の製造方法によれば、先行して記録したトラッキング用サーボ信号を、磁気記録再生装置自体により自動で、より高密度の信号に記録し直すことができる。このため、クリーンルームや人手を省くことができ、生産性の向上を図ることができ、生産コストの低減にもなる。
【0033】
前記本発明の磁気ディスクの製造方法においては、前記情報信号は、トラッキング用サーボ信号を含むことが好ましい。
【0034】
また、前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの半径方向変位に伴う再生信号の位相変化を検出することにより、前記磁気ディスクの半径方向位置を特定できる位相検出信号パターンを含むことが好ましい。
【0035】
また、前記トラッキング用サーボ信号は、同芯円状に構成された信号パターンであって、前記信号パターン中心と前記磁気ディスクの中心とを偏心させて前記信号パターンを記録することが好ましい。この構成によれば、セグメント間の境界における信号の不連続領域における情報信号の再生をより確実できる。
【0036】
また、前記複数のセグメントのうち、前記磁気ディスクの半径方向における最内周側のセグメントは、前記磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に形成し、前記ユーザデータ領域におけるセグメントとは別に形成することが好ましい。この構成によれば、比較的トラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号をユーザデータ領域に多く用いることができるので、ユーザデータ領域におけるトラッキング精度を相対的に向上させることができる。
【0037】
また、前記磁気記録再生装置においては、前記情報信号は、トラッキング用サーボ信号を含むことが好ましい。
【0038】
また、前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの半径方向変位に伴う再生信号の位相変化を検出することにより、前記磁気ディスクの半径方向位置を特定できる位相検出信号パターンを含むことが好ましい。
【0039】
また、前記トラッキング用サーボ信号は、同芯円状に構成された信号パターンであって、前記信号パターン中心と前記磁気ディスクの中心とが偏心していることが好ましい。この構成によれば、セグメント間の境界における信号の不連続領域における情報信号の再生をより確実できる。
【0040】
また、前記複数のセグメントのうち、前記磁気ディスクの半径方向における最内周側のセグメントは、前記磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に形成し、前記ユーザデータ領域におけるセグメントとは別に形成していることが好ましい。この構成によれば、比較的トラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号をユーザデータ領域に多く用いることができるので、ユーザデータ領域におけるトラッキング精度を相対的に向上させることができる。
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る情報信号の磁気転写記録方法について説明する。図1に、本実施の形態に係る情報信号の磁気転写記録を実施するための記録装置の概略図を示している。図1において、磁気ディスクであるハードディスク1は、中心孔1aを有するドーナツ円盤状のディスクである。ハードディスク1は、非磁性基板の表面にCo等を主成分とする強磁性薄膜をスパッタリング法によって成膜することにより構成されている。
【0043】
ハードディスク1の強磁性薄膜表面に接触するように、円盤状のマスター情報担体2が重ね合わされて配置されている。マスター情報担体2は、一般的にはハードディスク1より径が大きく、ハードディスク1に接触する側の表面に信号領域2aが設けられている。信号領域2aは、ハードディスク1に磁気転写記録すべき情報信号に対応した微細な配列パターン形状の強磁性薄膜で形成されている。
【0044】
ハードディスク1は、ディスク保持体3で保持されている。ディスク保持体3の先端部にはハードディスク1を位置決め保持するチャック部3aが設けられている。また、ディスク保持体3の内部には吸引孔3bが設けられており、吸引孔3bはハードディスク1の中心孔1aに連通し、かつ一端が排気ダクト4に接続されている。
【0045】
排気ダクト4の端部には排気装置5が装着されており、この排気装置5を始動させることにより、排気ダクト4、ディスク保持体3の吸引孔3bを通して、ハードディスク1とマスター情報担体2との間の空間が負圧状態となる。このことにより、マスター情報担体2がハードディスク1側に吸引され、マスター情報担体2にハードディスク1が位置決めされた状態で重ね合わされることになる。
【0046】
なお、このとき、マスター情報担体2表面には信号領域2aを除く領域において若干の隙間溝を形成し、その隙間溝を通して、ハードディスク1とマスター情報担体2の間の空気を吸引することもできる。
【0047】
着磁用ヘッド6は、マスター情報担体2からハードディスク1に転写記録する際に必要な外部磁界を印加するためのものである。着磁用ヘッド6から印加される磁界により、マスター情報担体2に形成された情報信号に対応した強磁性薄膜パターンが磁化され、これらから発生する漏れ磁束によってハードディスク1に強磁性薄膜パターン形状に対応した情報信号が記録される。
【0048】
図2に着磁用ヘッド6の一例の斜視図を示している。図2に示した着磁用ヘッド6は、巻線6aを具備した強磁性材料で形成された磁気コア半体6bと、同じく強磁性材料で形成された磁気コア半体6cとを対向させて、ギャップ6dを備えた環状の磁気回路を形成したものである。
【0049】
巻線6aに励磁電流を印加することによって、ギャップ6dには、矢印Aで示すように磁気コア半体6bから磁気コア半体6cに向かう漏れ磁束が発生する。また、印加する電流の向きを変えることにより、ギャップ6dに発生する漏れ磁束の向きを変えることができる。矢印Bは、図2に示す向きの漏れ磁束が発生しているときに、磁気コア半体6b、6cに発生する内部磁束の向きを示している。
【0050】
図3は、図2に示した着磁用ヘッド6のギャップ6dの形状を示す平面図である。ギャップ6dは、マスター情報担体2に対向する面において、ハードディスクドライブに搭載される記録再生用磁気ヘッドが磁気ディスク表面をトラッキング走査する際の軌道と同じ円弧状になっている。
【0051】
したがって、ギャップ6dに発生する磁界の方向は、トラッキング走査軌道と常に垂直となり、マスター情報担体2の強磁性薄膜は、全てのトラックにおいて、記録再生用磁気ヘッドのトラッキング走査方向と垂直な方向に磁化される。すなわち、記録再生用磁気ヘッドのヘッドギャップ長方向と同じ方向に磁化されるのである。
【0052】
次に、マスター情報担体2の構成例について説明する。図4は、マスター情報担体2の一例を模式的に示した平面図である。図4に示すように、マスター情報担体2の一主面、すなわちハードディスク1の強磁性薄膜表面に接触する側の表面には、略放射状に信号領域2aが形成されている。
【0053】
図5(a)は、図4のC部を模式的に示した拡大図である。磁性部2bで構成された形状パターンの形状は、磁気ディスク1に記録される情報信号に対応しており、磁気ディスク1と重なり合った状態において、形状パターンの位置は、磁気ディスク1上の情報信号が記録される位置に対応している。図5(a)の例では、情報信号に対応する形状パターンは、再生同期信号7、サーボアドレスマーク8、アドレス情報信号9、トラッキング用サーボ信号10a、10b等の各信号領域を、ヘッド移動方向すなわちトラック長さ方向に順次配列したものである。
【0054】
これらの形状パターンのうち、トラッキング用サーボ信号10a、10bは、磁気ヘッドの再生ギャップに対して傾斜した方向にアジマス角を有するトラッキング用サーボ信号パターンである。この形状パターンは、磁気ディスクの半径方向変位に伴う信号の位相変化を検出してトラッキングを行うことが可能な位相検出パターンである。
【0055】
なお、図5(a)に示すマスター情報パターンは一例であり、磁気ディスクに記録される情報信号の構成、目的、用途に応じて、マスター形状情報パターンの構成や配置等を適宜決定することとなる。
【0056】
図5(b)は、図5(a)のD部を模式的に示した拡大図である。図5(b)において、斜線部分が強磁性薄膜によって構成された磁性部2bである。また図5(b)に示す矢印は、磁気転写記録が行われた後に、磁気ディスクの対応する部分が磁化される向きを示したものである。
【0057】
図5(b)において、ヘッド移動方向における磁性部2bの幅W1、及びヘッド移動方向における隣接する磁性部2b間の幅W2は、磁気ディスクに記録される磁化パターンの磁化反転長にほぼ対応している。そして、幅W1及び幅W2は、ディスク半径の増加とともに、すなわち磁気ディスク外周側ほど大きくなるよう構成されている。このことにより、磁気ディスクが一定回転数で回転する場合に、周速はディスク外周側の方が速くなるので、磁化反転長が半径に比例し、時間軸上において略同じ再生パルス間隔を得るよう構成されている。
【0058】
ここで、前記の磁化反転長とは、正確には「その半径位置における最短の磁化反転長」と言うべきものである。すなわち、最短磁化反転長をtとした場合、記録される情報信号は、一般的にはtの整数倍(t、2t、3t、4tなど)の磁化反転長を有する磁化反転の組み合わせで構成されている。
【0059】
したがって、ここで述べていることは、これら種々の磁化反転長を有する情報信号すべてを考慮しても磁化反転長がディスク半径の増加とともに大きくなるように構成されているということではなく、正確には、ある半径位置における最短磁化反転長tが、ディスク中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるように構成されているということである。すなわち、最短磁化反転長同士を比較すれば、その長さはディスク中心からの半径方向の距離が大きいほど大きくなっている。しかしながら、これらの内容は、本記載を参照すれば、当業者が容易に理解可能なことであるので、本願明細書では、前記に記載した磁化反転長の定義の内容を、単に「磁化反転長」又は「最短磁化反転長」ということにする。
【0060】
図6は、図4に示したマスター情報担体2の強磁性薄膜の形成領域のヘッド移動方向における一部断面図を示している。図6に示したように、マスター情報担体2は、基体11の主面11bに形成された複数の凹部11aに、磁性部2bを形成する強磁性薄膜12が埋め込まれている。基体11は、Si基板、ガラス基板、プラスチック基板などの非磁性材料で形成された円盤状の基体である。主面11bは、ハードディスク1の表面が接触する側の表面である。また、凹部11aは、情報信号に対応する微細な配列パターン形状で形成されている。
【0061】
ここで、図1に示した記録装置を用いてハードディスク1とマスター情報担体2とを均一に密着させ良好な記録特性を得るためには、強磁性薄膜12の表面12aができる限り平坦で、かつ基体11の主面11bに対して、少し突出した構成とすることが好ましい。例えば、強磁性薄膜12の基体11の主面11bに対する突出量は、マスター情報担体の耐久性の観点から、5nmから100nmの範囲とすることが好ましい。
【0062】
強磁性薄膜12としては、硬質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料のみならず、多くの種類の磁性材料を用いることができる。この場合、より良好な信号品質を得るには、比較的透磁率が大きい軟質磁性薄膜又は半硬質磁性薄膜を用い、磁気転写記録時には外部磁界によってこれを励磁して一様に磁化することが好ましい。例えば、Fe、Co、Ni−Fe合金、Fe−Co合金などを用いることができる。
【0063】
なお、マスター情報信号が記録される磁気ディスクの種類によらずに十分な記録磁界を発生させるためには、強磁性薄膜12を構成する磁性材料の飽和磁束密度が大きいほどよい。特に、2000エルステッド(159kA/m)を超える高保磁力の磁気ディスクや磁性層の厚みの大きいフレキシブルディスクに対しては、飽和磁束密度が0.8テスラ以下になると十分な記録を行うことができない場合がある。このため、一般的には、0.8テスラ以上、好ましくは1.0テスラ以上の飽和磁束密度を有する磁性材料が用いられる。
【0064】
また、強磁性薄膜12の厚さは、記録される情報信号の磁化反転長や磁気ディスク磁性層の飽和磁化、保磁力、膜厚によるが、例えば磁化反転長約1μm、磁気ディスク磁性層の飽和磁化約が500emu/cc(500kA/m)、保磁力が3000エルステッド(239kA/m)、厚さが20nm程度の場合では、50nm〜500nm程度であればよい。
【0065】
さらに、このような磁気転写記録方法において、良好な記録信号品質を得るためには、マスター情報担体を用いた磁気転写記録に先立って、ハードディスクなどの磁気ディスクを周方向に一様に直流消去しておくことが望ましい。
【0066】
次に、マスター情報担体に形成した形状パターンに対応した情報信号を、ハードディスクに記録する手順について説明する。図7は、ハードディスクの直流消去の工程を示す斜視図である。図8は、図7の工程で直流消去されたハードディスクの状態を模式的に示した斜視図である。図7に示した工程において、着磁用ヘッド6をハードディスク1に近づけた状態で、ハードディスク1の中心軸を回転軸としてハードディスク1と平行に回転させる。このことにより、図8の矢印で示したように、ハードディスク1は予め一方向に磁化(直流消去)されることになる。
【0067】
次に、図1に示したように、ハードディスク1にマスター情報担体2を位置決めして重ね合わせた状態で、排気装置5を始動させる。このことにより、ハードディスク1の中心孔1aを通してマスター情報担体2が吸引され、マスター情報担体2の強磁性薄膜12が形成されている面とハードディスク1とが均一に密着するように重ね合わされる。
【0068】
図9は、ハードディスク1に情報信号を磁気転写記録している状態を示す斜視図である。着磁用ヘッド6により印加される磁界は、初期磁化とは逆極性となるようにしている。この状態で着磁用ヘッド6を、ディスク保持体3に保持されているハードディスク1の中心を回転中心として、マスター情報担体2と平行に回転させる。この回転を続けながら、マスター情報担体2に直流励磁磁界を印加する。このことにより、マスター情報担体2の強磁性薄膜12が磁化され、マスター情報担体2に重ね合わせたハードディスク1の所定の情報信号記録領域1bに、強磁性薄膜12による磁性部のパターン形状に対応した情報信号が記録される。図10に、図9に示した工程で情報信号記録領域1bに情報信号が記録されたハードディスク1の模式図を示している。図10に示した矢印は、ハードディスク1の情報信号記録領域1bの外において残留する磁化の方向を示している。
【0069】
図11は、情報信号記録時の磁化の様子を詳細に示す断面図である。図11に示したように、マスター情報担体2をハードディスク1に密着させた状態で、マスター情報担体2に外部から磁界を印加して強磁性薄膜12を磁化する。このことにより、ハードディスク1の強磁性薄膜からなる磁気記録層1cに情報信号が記録されることになる。
【0070】
すなわち、非磁性の基体11に所定のパターン形状で強磁性薄膜12を形成して構成したマスター情報担体2を用いることにより、ディジタル情報信号を磁気記録媒体であるハードディスク1に磁気的に転写記録することができる。
【0071】
ここで、磁気転写記録方法について、より詳しく説明する。図12は、前記のような情報信号の磁気転写記録の一連の過程を模式的に示した断面図である。図12(a)はハードディスク1の直流消去過程を示し、図12(b)はマスター情報担体2を用いた情報信号の磁気転写記録過程を示し、図12(c)は情報信号の磁気転写記録後のハードディスク1の残留磁化状態を示している。各図はそれぞれ、ヘッド移動方向すなわち情報信号のトラック長さ方向における断面図である。磁気記録媒体がハードディスクである場合、情報信号のトラック長さ方向は、ディスク円周方向に一致する。
【0072】
図12(a)に示したように、ハードディスク上の磁気記録層1cはマスター情報担体を用いた情報信号の磁気転写記録に先立って直流消去磁界13により、一定方向の直流消去磁化14を有するよう一様に直流消去される。次に、図12(b)に示したように、情報信号に対応する配列パターン形状で強磁性薄膜が形成されたマスター情報担体2の表面をハードディスク上の磁気記録層1cの表面に密着させ、直流励磁磁界15によって強磁性薄膜12を励磁する。この際、直流励磁磁界15の極性は、直流消去磁界13とは逆極性とする。これにより、隣接する強磁性薄膜12間の部分においてのみ、漏れ磁束16によりハードディスク1上の磁化14が反転される。この結果、マスター情報担体2を取り除いた後、ハードディスク1上には、マスター情報担体2上に形成された強磁性薄膜の配列パターン形状に対応する磁化14のパターンを記録することができる。
【0073】
次に、図13は、本実施の形態におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係を示している。図13の例は、2.5インチ径のハードディスクに磁気転写記録されるパターンの例である。ディスク外径は、ハードディスク外周縁の半径、ディスク内径はハードディスク内孔縁の半径、ユーザデータ領域はユーザデータが記録される半径領域を示している。
【0074】
また、ハードディスクドライブ内においては、磁気ヘッドが必要以上に内周側に移動することによりスピンドルハブなどに接触してクラッシュすることを防止するため、機械的に磁気ヘッドアクチュエータの移動を制限するストッパ(内周側クラッシュストップ)を設けている。図示された内周側クラッシュストップは、このストッパに制限されるディスク最内周側の磁気ヘッドの位置を示している。
【0075】
さて、本実施の形態に係る磁気ディスクの情報信号は、複数のセグメントに記録されている。各セグメントにおいては、最短磁化反転長が磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるよう構成されている。例えば、図13に例示した構成では、情報信号記録領域1bは第1のセグメント17a、第2のセグメント17b、第3のセグメント17cの3つのセグメントから構成されている。各々のセグメントにおいては、磁化反転長が磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるよう構成されている。
【0076】
すなわち、磁気ディスクが一定回転数で回転する場合、周速はディスク外周側の方が速くなるので、各セグメント内においては磁化反転長が半径に比例し、時間軸上において略同じ再生パルス間隔を得るよう構成されている。その一方で、各セグメントのディスク最内周側の磁化反転長は、同じ値となるように構成されている。つまり、あるセグメントのディスク最外周側の磁化反転長に比べ、そのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメントのディスク最内周側の磁化反転長が小さくなるよう構成されている。例えば、第1のセグメント17aのディスク最外周側の磁化反転長に比べ、第2のセグメント17bディスク最内周側の磁化反転長が小さくなっている。第2のセグメント17bと第3のセグメント17cとの関係も同様である。
【0077】
この際、ハードディスクドライブにおけるクロック周波数の設定を簡素化するという観点から、あるセグメントのディスク最外周側の磁化反転長は、そのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメント(例えば、第1のセグメント17aに対しては第2のセグメント17b、第2のセグメント17bに対しては第3のセグメント17c)のディスク最内周側の磁化反転長の整数倍、又はそのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメントのディスク最内周側の磁化反転長の半分の整数倍とすることが好ましい。例えば、図13に示した構成では、各セグメントのディスク最外周側の磁化反転長は、そのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメントのディスク最内周側の磁化反転長の半分の3倍となるよう構成されている。
【0078】
これに対して、従来例におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係を図16に示している。従来例における情報信号記録領域1bは、本実施の形態のように複数のセグメントに分割されることなく一体に構成されている。そして、最短磁化反転長は磁気ディスクの半径に比例して単調に大きくなるよう構成されている。
【0079】
しかしながら、このような従来例の構成を有するトラッキング用サーボ信号の性能を検討した結果、磁気ディスクの位置によって磁気ヘッドの位置検出精度にばらつきがあり、特に磁気ディスクの外周側においては、内周側に比べてトラッキング精度が低下する傾向が認められる場合があるという問題点が見出された。
【0080】
本発明者らはこのような従来例の問題に対して、種々の実験と検討を繰り返し行った結果、前記のようなトラッキング精度劣化現象は、以下の作用によるものであることを見出した。図16に示した従来構成における磁化反転長は、ディスク最内周側で約0.35ミクロンであるが、外周側ほどディスク径の増加とともに増加し、ディスク最外周側では0.9ミクロン以上にも大きくなっている。ところが、本願発明者らの検討によれば、位相検出パターンを用いたトラッキング用サーボ信号における位置検出精度は、トラッキング用サーボ信号の密度が大きいほど、すなわち磁化反転長が小さいほど向上し、逆に磁化反転長が大きいほど劣化することが明らかとなった。
【0081】
その要因の一つは、トラッキング用サーボ信号から検出された位相差を距離に変換する際の係数によるものである。つまり磁化反転長が小さいほど、単位位相差に対応する距離が小さくなるので、より精密な精度の良いヘッド位置検出が可能となるのである。この要因による位置検出精度の向上効果は、トラッキング用サーボ信号の密度に比例、すなわち磁化反転長の逆数に比例するものと推定される。
【0082】
つまり磁化反転長が1/2になることにより、ヘッドの位置検出精度は2倍向上することになる。逆に、磁化反転長がディスク半径とともに単調に増加し、ディスク最外周では最内周の2.5倍以上にもなる図16の従来構成では、ディスク外周側のトラッキング精度が大幅に低下することになる。
【0083】
もう一つの考慮すべき要因は、トラッキング用サーボ信号の検出S/Nに関わるものである。図5(a)に示したように、位相検出パターンを用いたトラッキング用サーボ信号10a、10bは、一定の磁化反転長をもって周期的に繰り返される信号である。この周期信号に含まれる個々の再生パルスは、ジッタや外乱ノイズなどの影響によって位相検出精度を劣化させる要因を有しているが、これら各パルスの位相を平均化することによって前記の要因を低減し、位相検出精度を向上させることができる。
【0084】
ここで、トラッキング用サーボ信号の磁化反転長が小さければ、その分、同じ大きさのサーボトラック領域により多くの周期信号を記録することできるので、平均化されるパルスの数を多くすることにより信号S/Nを向上し、精度の高い位相検出を行うことが可能となる。この要因による位置検出精度の向上効果は、トラッキング用サーボ信号の密度の平方根に比例、つまり磁化反転長の逆数の平方根に比例するものと推定される。すなわち、磁化反転長が1/4になれば、ヘッドの位置検出精度を2倍向上することが可能となる。しかしながら、磁化反転長がディスク半径とともに単調に増加し、ディスク最外周では最内周の2.5倍以上にもなる図16の従来構成では、ディスク外周側のトラッキング用サーボ信号周期を増加させるような余地はなく、本要因を積極活用したトラッキング精度の向上は望めない。
【0085】
これに対して、図13に例示した本実施の形態に係る構成は、ディスク最内周側の磁化反転長は図16の従来構成と同等の0.35ミクロン程度であるが、ディスク最外周側を含めたユーザデータ領域全体における磁化反転長を、ディスク最外周側における磁化反転長を含めて、最大でも0.5ミクロン程度に抑えることができる。
【0086】
このため、従来構成に比べて、ディスク外周側におけるトラッキング精度の劣化を抑制し、ハードディスクの半径位置に依らず一様かつ均一にトラッキング精度に優れた構成を提供することができる。例えば、図16に示した従来構成と比較すると、従来構成では0.9ミクロン程度であったディスク最外周側の磁化反転長を0.5ミクロン程度とすることにより、ディスク最外周側のトラッキング精度を1.8倍に向上することが可能である。
【0087】
さらに、本実施の形態に係る構成では、外周側において、磁化反転長を小さくすることにより同じ大きさのサーボトラック領域により多くの周期信号を記録することできるので、平均化されるパルスの数を多くすることにより信号S/Nを向上し、より精度の高い位相検出を行うことも可能である。
【0088】
図16に示した従来構成と比較すると、従来構成では0.9ミクロン程度であったディスク最外周側の磁化反転長を0.5ミクロン程度とすることにより、1.8倍周期のトラッキング用サーボ信号を記録することが可能となり、ディスク最外周側のトラッキング精度をその平方根である1.3倍程度向上することが可能である。
【0089】
以上のように、図13に示した本実施の形態に係る構成では、ディスク半径位置に関わらず均一かつ一様に優れたトラッキング精度を実現することができる。図16に示した従来構成と比較すると、位相・距離換算係数に関わる要因と信号S/Nに関わる要因との相乗効果により、ディスク最外周側においては2.3倍以上ものトラッキング精度向上が可能である。
【0090】
なお、図13においては、情報信号記録領域1bが、3つのセグメントにより構成される場合を例示したが、これに限るものではなく、情報記録領域1bが2つ以上の複数のセグメントに分割されていれば、前記のような効果を得ることができる。
【0091】
以上の構成により、再生同期信号7、サーボアドレスマーク8、アドレス情報信号9、トラッキング用サーボ信号10a、10b等の情報信号が記録された磁気ディスクは、ハードディスクドライブに搭載される。ハードディスクドライブにおいては、前記の構成により磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号を、そのままユーザデータを記録再生する際のトラッキング用サーボ信号として使用してもよい。
【0092】
また、特許文献3に記載された構成と同様の方法により、磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号を、第1のトラッキング用サーボ信号として参照しながら、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドを用いて第2のトラッキング用サーボ信号をセルフサーボ記録し、これをユーザデータの記録再生の際におけるトラッキング用サーボ信号として用いてもよい。いずれの場合においても、ディスク半径位置にかかわらず、均一かつ一様な優れたトラッキング精度を実現できる。
【0093】
ところで、前記構成によって磁気転写記録された情報信号を磁気ヘッドにより再生する際において、磁気ディスクの半径方向に隣接するセグメント間の境界において、適切に情報信号を再生することができない場合が起こり得る。例えば、位相検出パターンを用いたトラッキング用サーボ信号に関して、磁気ディスクの径方向変位に伴って位相が連続的に変化する。しかしながら、隣接するセグメント間の境界となる半径位置では径方向変位に伴う連続的な位相変化は検出されず不連続点を生じることになり、トラッキング用サーボ信号を適切に再生できない場合が起こり得る。
【0094】
この場合、不連続点となるセグメント境界の両側の半径位置において検出される位相、すなわち磁気ディスクの半径方向に隣接するセグメントのうち磁気ディスク内周側のセグメントの最も外周側の半径位置において検出される位相と、磁気ディスク外周側のセグメントの最も内周側の半径位置において検出される位相とを用いて補間することにより、前記不連続点における位相を推定することが可能である。
【0095】
位相検出パターンを用いた場合に限らず、一般的に前記のような手法により、前記不連続点においてもトラッキング用サーボ信号による位置検出精度を許容範囲内に維持することが可能であるが、より好ましくは、ハードディスクドライブ内において、磁気転写記録された情報信号のパターン中心をスピンドルの回転中心、すなわち磁気ディスクの回転中心に対して許容量だけ偏芯させた構成を採用することができる。この構成によれば、前記のように信号が適切に再生されない不連続点を、セグメント境界近傍の半径位置においてディスク1周あたり2箇所に抑えることができる。
【0096】
すなわち、情報信号のパターン中心と磁気ディスクの回転中心とが完全に一致する場合には、セグメント間の境界となる半径位置ではディスク1周にわたってトラッキング用サーボ信号が適切に再生されないことになる。しかし、情報信号のパターン中心を磁気ディスクの回転中心に対して意図的に偏芯させることにより、セグメント境界近傍の半径位置において磁気ヘッドが実際にセグメント境界を横切って信号が適切に再生されないのは、ディスク1周あたり2箇所の限られた領域に抑えることができる。信号が適切に再生されない不連続点がディスク1周あたり2箇所のみであれば、その前後の部分において適切に再生されたトラッキング用サーボ信号をも用いて補間することが出来、より高い位置検出精度でトラッキングを継続することができる。
【0097】
このように磁気転写記録された情報信号のパターン中心が磁気ディスクの回転中心に対して偏芯した構成は、例えば磁気転写記録の過程において、同芯円状に構成された情報信号パターンの中心と磁気ディスクの幾何学的中心とを偏心させた状態で情報信号パターンを磁気転写記録することにより得られる。また、磁気転写記録された磁気ディスクをハードディスクドライブに搭載する過程において、磁気ディスクの幾何学的中心がスピンドルの回転中心すなわち磁気ディスクの回転中心と偏心するように磁気ディスクを取り付けることによっても実現できる。
【0098】
(実施の形態2)
実施の形態2は、磁気ディスクへの情報信号の磁気転写記録方法の基本的な構成は、実施の形態1と同様である。このため、図4〜図6に示したようなマスター情報担体の構成についても、実施の形態1と同様である。
【0099】
図14に、実施の形態2におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係を示している。図14の構成も、実施の形態1における図13と同様に、2.5インチ径のハードディスクに磁気転写記録されるパターンである。本実施の形態における情報信号も、実施の形態1の構成と同様に複数のセグメントにより構成されており、各セグメントにおいては、最短磁化反転長が磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるよう構成されている。
【0100】
図14の構成では、情報信号記録領域1bは、第1のセグメント17a、第2のセグメント17b、第3のセグメント17c、及び第4のセグメント17dの4つのセグメントから構成されており、各セグメントにおいては、磁化反転長が磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるよう構成されている。
【0101】
すなわち、磁気ディスクが一定回転数で回転する場合、周速はディスク外周側の方が速くなるので、各セグメント内においては磁化反転長が半径に比例し、時間軸上において略同じ再生パルス間隔を得るよう構成されている。また、第2のセグメント17bから第4のセグメント17dにおいては、各セグメントのディスク最内周側の磁化反転長は、同じ値となるように構成されている。つまり、あるセグメントのディスク最外周側の磁化反転長に比べ、そのセグメントのディスク外周側に隣接するセグメントのディスク最内周側の磁化反転長は小さくなるよう構成されている。
【0102】
図14の構成が、図13の構成と異なっているのは、図14の構成では、第1のセグメント17aがユーザデータ領域最内周位置までの範囲に止まっている点である。すなわち、図14の構成は、内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に、ユーザデータ領域におけるセグメントとは別個に専用のセグメントを備えていることになる。
【0103】
ハードディスクドライブにおいては、磁気ヘッドが内周側クラッシュストップからユーザデータ領域に向かう間においても、磁気ヘッドにサーボをかけて位置制御することが必要である。したがって、内周側クラッシュストップからユーザデータ領域最内周位置までの半径領域においても、トラッキング用サーボ信号が記録されている必要がある。
【0104】
その一方で、内周側クラッシュストップからユーザデータ領域最内周位置までの半径領域においては、ユーザデータの記録再生は行われないので、ユーザデータ領域ほどの厳密な位置制御を行う必要はない。すなわち、隣接トラックのユーザデータを、僅かも消去しないほどの厳密な精度でトラッキング制御する必要はない。このため、厳密なトラッキング制御が行われるユーザデータ領域に向かうまでの間の位置制御の精度は、磁気ヘッドが暴走しない程度に粗くサーボがかかる程度にまで落とし得ることになる。
【0105】
このような観点から、実施の形態1における図13や従来例の図16に示したように、内周側クラッシュストップからユーザデータ領域最内周位置までの半径領域に、トラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号を用いるということは、必ずしも必要なことではないといえる。
【0106】
図14に示した構成は、磁化反転長が小さくトラッキング精度に優れた信号は、可能な限りユーザデータ領域において用いることが好ましいという観点から見出した構成である。すなわち、図14の構成では、内周側クラッシュストップからユーザデータ領域最内周位置までの半径領域は、比較的トラッキング精度に劣る磁化反転長が大きい信号で構成された第1のセグメント17aでカバーされている。このことにより、比較的トラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号をユーザデータ領域に多く用いることができるので、ユーザデータ領域におけるトラッキング精度を相対的に向上させることができる。
【0107】
図15は、本実施の形態2におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の別の構成例を示している。図15の構成は、磁気ディスクの最内周側の第1のセグメント17aが、磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの半径領域をほぼカバーするように記録されているという点では図14の構成と同様である。しかしながら、この領域においてもトラッキング精度に優れた磁化反転長が小さい信号を用いているという点で、図14の構成と異なっている。
【0108】
図15の構成においても、ユーザデータ領域におけるトラッキング精度を相対的に向上させることができるという本実施の形態の効果を得ることは可能である。しかしながら、図15の構成では、図13や図14の構成のように、第1のセグメント17aのディスク最外周側の磁化反転長を、第2のセグメント17bのディスク最内周側の磁化反転長の整数倍、もしくは、第2のセグメント17bのディスク最内周側の磁化反転長の半分の整数倍とすることが困難である。
【0109】
このため、ハードディスクドライブにおけるクロック周波数の設定を簡素化するという点では、図14の構成の方が有利である。一方、図15の構成は、図14の構成に比べ、内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの半径領域におけるトラッキング精度に十分な余裕を持たせることができる。したがって、図14の構成を選択するか図15の構成を選択するかは、求める性能、品質等に応じて適宜決定すれがよい。
【0110】
なお、図14、図15においては、情報信号記録領域1bが、4つのセグメントにより構成される場合を例示したが、これに限るものではなく、情報記録領域1bが2つ以上の複数のセグメントに分割されていれば、本実施の形態の効果を得ることができる。
【0111】
すなわち、最も単純な構成の例として、2つのセグメントを備え、第1のセグメントが磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの半径領域をほぼカバーし、第2のセグメントがユーザデータ領域を含む残りの情報記録領域1bをカバーする構成が挙げられるが、このような構成であっても、本実施の形態における効果を得ることができる。
【0112】
以上の構成により、再生同期信号7、サーボアドレスマーク8、アドレス情報信号9、トラッキング用サーボ信号10a、10b等の情報信号が記録された磁気ディスクは、ハードディスクドライブに搭載される。
【0113】
実施の形態1の構成と同様に、磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号を、そのままユーザデータを記録再生する際のトラッキング用サーボ信号として使用してもよい。また、特許文献3に記載された構成と同様の方法により、磁気転写記録されたトラッキング用サーボ信号を、第1のトラッキング用サーボ信号として参照しながら、ハードディスクドライブに搭載された磁気ヘッドを用いて第2のトラッキング用サーボ信号をセルフサーボ記録し、これをユーザデータの記録再生の際におけるトラッキング用サーボ信号として用いてもよい。
【0114】
また、実施の形態1と同様に、セグメント間の境界における信号の不連続領域における情報信号の再生をより確実にするために、ハードディスクドライブ内においては、磁気転写記録された情報信号のパターン中心をスピンドルの回転中心、すなわち磁気ディスクの回転中心に対して許容量だけ偏芯させるようにしてもよい。この構成の実現方法は、実施の形態1で説明した通りである。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によれば、磁気ディスク全面において信号の磁化反転長の均一性を高めることができるので、ハードディスクドライブの高密度化、小型大容量化に有用である。また、ハードディスクドライブに限らず、大容量フレキシブルディスクドライブ等、他の磁気ディスクドライブ用途にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施の形態1における情報信号の磁気転写記録を実施するための記録装置の概要を示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態1における着磁用ヘッドの構成例を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態1における着磁用ヘッドのマスター情報担体に対向する一主面の構成例を示す平面図。
【図4】本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体の構成例を示す平面図。
【図5】本発明の実施の形態1においてマスター情報担体に形成される情報信号の配列パターンの構成例を模式的に示した平面図。
【図6】本発明の実施の形態1におけるマスター情報担体の構成例を示す断面図。
【図7】本発明の実施の形態1においてハードディスクを直流消去している状態を示す斜視図。
【図8】図7に示した工程により直流消去されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図。
【図9】本発明の実施の形態1においてハードディスクに情報信号を磁気転写記録している状態を示す斜視図。
【図10】図9に示す工程により情報信号が記録されたハードディスクの状態を模式的に示す斜視図。
【図11】図9に示す工程によりハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化状態を模式的に説明するための断面図。
【図12】本発明の実施の形態1によりハードディスクに情報信号を磁気転写記録する際の磁化状態の変化を模式的に説明するための断面図。
【図13】本発明の実施の形態1におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の一例を示す図。
【図14】本発明の実施の形態2におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の一例を示す図。
【図15】本発明の実施の形態2におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の別の一例を示す図。
【図16】従来におけるディスク半径と情報信号の最短磁化反転長との関係の一例を示す図。
【符号の説明】
【0117】
1 ハードディスク
1a 中心孔
1b 情報信号記録領域
1c 磁気記録層
2 マスター情報担体
2a 信号領域
2b 磁性部
7 再生同期信号
8 サーボアドレスマーク
9 アドレス情報信号
10a、10b トラッキング用サーボ信号
11 基体
11a 基体の凹部
11b 基体の主面
12 強磁性薄膜
17a 第1のセグメント
17b 第2のセグメント
17c 第3のセグメント
17d 第4のセグメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体表面に情報信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記マスター情報担体を磁気ディスクの表面に接触させて外部磁界を印加することにより、前記形状パターンに対応する情報信号を前記磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備えた磁気ディスクの製造方法であって、
前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントを前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成する形状パターンであり、
前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さいことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【請求項2】
前記情報信号は、トラッキング用サーボ信号を含む請求項1に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項3】
前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの半径方向変位に伴う再生信号の位相変化を検出することにより、前記磁気ディスクの半径方向位置を特定できる位相検出信号パターンを含む請求項2に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項4】
前記トラッキング用サーボ信号は、同芯円状に構成された信号パターンであって、前記信号パターン中心と前記磁気ディスクの中心とを偏心させて前記信号パターンを記録する請求項2又は3に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項5】
前記複数のセグメントのうち、前記磁気ディスクの半径方向における最内周側のセグメントは、前記磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に形成し、前記ユーザデータ領域におけるセグメントとは別に形成する請求項1に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項6】
情報信号が予め記録された磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置であって、
前記磁気ディスクに、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントが前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成されており、
前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さいことを特徴とすることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項7】
前記情報信号は、トラッキング用サーボ信号を含む請求項6に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの半径方向変位に伴う再生信号の位相変化を検出することにより、前記磁気ディスクの半径方向位置を特定できる位相検出信号パターンを含む請求項7に記載の磁気記録再生装置。
【請求項9】
前記トラッキング用サーボ信号は、同芯円状に構成された信号パターンであって、前記信号パターン中心と前記磁気ディスクの中心とが偏心している請求項7又は8に記載の磁気記録再生装置。
【請求項10】
前記複数のセグメントのうち、前記磁気ディスクの半径方向における最内周側のセグメントは、前記磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に形成し、前記ユーザデータ領域におけるセグメントとは別に形成している請求項9に記載の磁気記録再生装置。
【請求項11】
情報信号が予め記録された磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置の製造方法であって、
基体表面に第1のトラッキング用サーボ信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記マスター情報担体を前記磁気ディスクの表面に接触させて外部磁界を印加することにより、前記形状パターンに対応する前記第1のトラッキング用サーボ信号を前記磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備え、
前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントを前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成する形状パターンであり、前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さくなっており、
さらに、前記磁気ディスクを磁気記録再生装置に搭載した後、前記第1のトラッキング用サーボ信号を参照して前記磁気記録再生装置に搭載された磁気ヘッドを位置決めしながら前記磁気ヘッドによって前記第1のトラッキング用サーボ信号とは異なる第2のトラッキング用サーボ信号を記録する工程を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置の製造方法。
【請求項1】
基体表面に情報信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記マスター情報担体を磁気ディスクの表面に接触させて外部磁界を印加することにより、前記形状パターンに対応する情報信号を前記磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備えた磁気ディスクの製造方法であって、
前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントを前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成する形状パターンであり、
前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さいことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
【請求項2】
前記情報信号は、トラッキング用サーボ信号を含む請求項1に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項3】
前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの半径方向変位に伴う再生信号の位相変化を検出することにより、前記磁気ディスクの半径方向位置を特定できる位相検出信号パターンを含む請求項2に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項4】
前記トラッキング用サーボ信号は、同芯円状に構成された信号パターンであって、前記信号パターン中心と前記磁気ディスクの中心とを偏心させて前記信号パターンを記録する請求項2又は3に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項5】
前記複数のセグメントのうち、前記磁気ディスクの半径方向における最内周側のセグメントは、前記磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に形成し、前記ユーザデータ領域におけるセグメントとは別に形成する請求項1に記載の磁気ディスクの製造方法。
【請求項6】
情報信号が予め記録された磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置であって、
前記磁気ディスクに、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントが前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成されており、
前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さいことを特徴とすることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項7】
前記情報信号は、トラッキング用サーボ信号を含む請求項6に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
前記トラッキング用サーボ信号は、前記磁気ディスクの半径方向変位に伴う再生信号の位相変化を検出することにより、前記磁気ディスクの半径方向位置を特定できる位相検出信号パターンを含む請求項7に記載の磁気記録再生装置。
【請求項9】
前記トラッキング用サーボ信号は、同芯円状に構成された信号パターンであって、前記信号パターン中心と前記磁気ディスクの中心とが偏心している請求項7又は8に記載の磁気記録再生装置。
【請求項10】
前記複数のセグメントのうち、前記磁気ディスクの半径方向における最内周側のセグメントは、前記磁気ディスクの内周側クラッシュストップ位置からユーザデータ領域最内周位置までの間に形成し、前記ユーザデータ領域におけるセグメントとは別に形成している請求項9に記載の磁気記録再生装置。
【請求項11】
情報信号が予め記録された磁気ディスクを搭載した磁気記録再生装置の製造方法であって、
基体表面に第1のトラッキング用サーボ信号に対応した強磁性材料の形状パターンを形成してマスター情報担体とし、前記マスター情報担体を前記磁気ディスクの表面に接触させて外部磁界を印加することにより、前記形状パターンに対応する前記第1のトラッキング用サーボ信号を前記磁気ディスクに磁化情報として記録する工程を備え、
前記形状パターンは、前記磁化情報の記録により、最短磁化反転長が前記磁気ディスクの中心からの半径方向の距離が大きくなるにつれて大きくなるセグメントを前記磁気ディスクの半径方向に隣接させて複数形成する形状パターンであり、前記複数のセグメントは、前記磁気ディスクの半径方向に隣接する2つのセグメントについてみると、前記磁気ディスクの外周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの内周側の最短磁化反転長は、前記磁気ディスクの内周側のセグメントの磁化反転長のうち、最も前記磁気ディスクの外周側の最短磁化反転長より小さくなっており、
さらに、前記磁気ディスクを磁気記録再生装置に搭載した後、前記第1のトラッキング用サーボ信号を参照して前記磁気記録再生装置に搭載された磁気ヘッドを位置決めしながら前記磁気ヘッドによって前記第1のトラッキング用サーボ信号とは異なる第2のトラッキング用サーボ信号を記録する工程を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−24255(P2006−24255A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199622(P2004−199622)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]