説明

磁気マッピング装置

【課題】 磁気方式のHMTの使用する上で必要な磁気データの取得を短時間で行うことができる磁気マッピング装置を提供する。
【解決手段】 磁気ソース2と、支持体16と、支持体に取り付けられ磁界中の磁気データを測定する磁気センサ3と、支持体の外表面に取り付けられ磁気センサに対する位置が固定された少なくとも3つのマーカ群18と、3つのマーカを同時にステレオ視するための一対のカメラ12、14と、一対のカメラで撮影された各画像に同時に映る3つのマーカの画像上の位置に基づいてこれら3つのマーカの位置座標を求めるとともに求めた3つのマーカの位置座標に基づいて磁気センサの位置座標を算出する磁気センサ位置算出部21と、算出された磁気センサの位置座標とカメラ画像の撮影時に測定された磁気データとに基づいて位置座標と磁気データとを対応付けた磁気マッピングデータを蓄積する磁気マッピング部22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気方式のヘッドモーショントラッカ(以下HMTと呼ぶ)を使用する空間についての磁気分布を計測する磁気マッピング装置に関する。
本装置は、例えば、空間に交流磁界を発生させておき、頭部装着型表示装置(ヘッドマウントディスプレイ(HMD))に取り付けた磁気センサが検出する磁気データに基づいて、頭部装着型表示装置の向きや角度を測定する磁気方式のHMTに関連して用いられる。
【背景技術】
【0002】
HMTは、ゲーム機のヴァーチャルリアリティ(VR)や実際の航空機で、頭部装着型表示装置の使用者の頭部位置および角度を計測する装置として利用されている。
例えば、VR技術では、頭部装着型表示装置を装着する者の頭部の動きに応じて変化する画像を視認させることで、VR空間を体験させる。この場合、装着者の頭部の位置と向き(角度)とを測定し、測定結果に対応させて頭部装着型表示装置の表示画像を変化させるようにするために、HMTを用いている。
【0003】
また、救難飛行艇による救難活動において、発見した救難目標を見失うことがないようにするため、頭部装着型表示装置により表示される照準画像と救難目標とが対応した時にロックすることにより、その後は、頭部の位置と角度とを測定し、ロックされた救難目標との位置関係を演算して、上記表示装置装着者が救難目標を見失わないように表示することが行われている。この場合、救難目標との位置関係を演算する際に、航空機の緯度、経度、高度、飛行体の姿勢に加えて、頭部装着型表示装置を装着する者の頭部の位置と角度とを測定することが必要になり、HMTを用いている。
【0004】
頭部装着型表示装置に取り付けられるヘッドモーショントラッカ(HMT)としては、磁気ソースを用いて周囲の空間に磁界を発生させておき、頭部装着型表示装置に固定した磁気センサにより磁気を測定し、測定された磁気データから磁気センサの現在位置や現在角度、ひいては頭部装着装置の現在位置や現在角度を検出する磁気測定方式のものが開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
図8は磁気方式のHMTの構成を模式的に示した図である。HMT100は、3軸コイルにより交流磁界を発生する磁気ソース101と、座席102に座ったHMT使用者が頭部に取り付ける頭部装着型表示装置103と、頭部装着型表示装置103に固定された磁気センサ104と、磁気ソース101および磁気センサ104の制御を行うとともに、磁気センサ104が測定した磁気データに基づいて磁気センサ104の位置や角度を算出する機能を備えた制御部105とから構成される。このHMT100では、磁気ソース101が発生する交流磁界により、空間の各点には、それぞれの位置に固有の磁気変化(大きさおよび向きを有する磁気データ)が生じる。磁気センサ104を用いて、磁気センサ104の現在位置での磁気を測定し、空間各点が有する磁気データと比較することにより、磁気センサ104の位置関係、角度関係が算出される。
【0006】
交流磁気方式のHMTでは、予め、位置の基準となる原点および座標系と、方向の基準となる基準方向とを定めている。具体的には、磁気ソースの位置を原点としてXYZ座標系を定め、さらに、X軸方向を基準方向として定めている。
そして磁気センサの出力に基づいて、座標原点から磁気センサまでの位置移動量であるX、Y、Zの位置座標情報、および磁気センサの基準方向に対する角度移動量であるアジマス方向(X軸に対する回転)、エレベーション方向(Y軸に対する回転)、ロール方向(Z軸に対する回転)の角度情報を求めるようにして、これらから磁気センサを固定してある頭部装着型表示装置、さらには頭部の測定原点および基準方向に対する位置や角度を求めている。
【0007】
空間の磁気データ分布は、磁界発生源である磁気ソースと磁気センサだけが存在するような理想状態では、電磁気学理論に基づく理論計算(ビオサバールの法則などによる計算)により、ほぼ正確に求めることができる。
しかし、磁気ソースや磁気センサの周辺に、金属等の導電性物質が存在する場合は、磁気データの分布は単純ではなく、導電性物質内に発生する渦電流により誘起される磁界によって、交流磁界内に磁気歪を生じることとなる。特に、ゲーム機や航空機の場合は、構造上、金属製の座席などを設ける必要があり、HMTの周囲から導電性物質をなくすことは困難なため、どうしても導電性物質の影響による磁気歪が生じてしまう。
【0008】
そのため、導電性物質の影響を除去するために、磁気マッピング装置を用いて各測定位置における磁気データ分布(さらには位置誤差データ、角度誤差データ)を予め収集している。磁気マッピング装置は、磁気センサを移動するための移動装置(移動ステージ)により一定間隔ごと離れた測定位置(例えば格子状に配置された測定位置)に磁気センサを移動させ、各測定位置における磁気データを実測し、その出力に基づいて、各測定点の位置や角度の誤差データを取得する。
【0009】
このように、磁気方式は、磁気センサが移動する空間に磁界が発生している限り特に制限なく使用することができるものの、磁気センサを移動させる空間の磁気データ(位置誤差データ、角度誤差データ)を予め磁気マッピング装置により測定しておく必要がある。
【0010】
これに対し、光学的に頭部装着型表示装置の位置や角度を測定するものが開示されている。すなわち、頭部装着型表示装置に位置特定用の発光体や反射体からなるマーカを取り付け、カメラを用いたステレオ視を行うことにより光学的にマーカ位置を読み取ることで頭部装着型表示装置の位置や角度を測定するものが開示されている。例えば、頭部装着型表示装置に反射板を取り付けて、光源から光を照射して反射光をカメラで撮影し、その画像データを利用してマーカの位置や角度を測定するような光学測定によるものが開示されている(特許文献2参照)。
【0011】
光学測定方式は、磁気マッピングの必要がなく、また、金属等による影響を受けることはない点で優れているが、外乱光の多い空間等では外乱光とマーカとを見誤り、誤動作するおそれがある。
また、マーカがカメラに映らない死角が発生しないようにする必要があり、例えば、個々のマーカどうし識別可能にした相当数のマーカを(例えば発光波長を異ならせた複数マーカを用いて識別する方法、あるいは同一出願人の先行出願である特願2005−106458号に記載するようなマーカ間の位置情報から個々のマーカを識別する方法)、頭部装着型表示装置の外表面の全方向にちりばめて配置しておき、カメラに映っているマーカが必ず存在するようにする等の工夫が必要となる。そのため、マーカ数が増えると頭部装着型表示装置の電気配線が複雑になり、また、重量が磁気方式に比べて重くなる。
【0012】
さらに、光学測定方式では、マーカが移動する空間全体を映すことができるようにするため、使用者から少し離れた位置に、マーカを光学的に読み取るカメラを設置する必要があるが、航空機の操縦席等で使用する場合等では、地上でのメンテナンス時以外にカメラ設置用の空間を確保することが困難な場合もある。
そのため、磁気測定方式HMTと光学測定方式HMTとは、それぞれ使用場所や使用目的に応じて使い分けられている。
【特許文献1】特開2002−81904号公報
【特許文献2】特表平9−506194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、磁気方式と光学方式とはそれぞれ他方に比べて長所、短所があるため使い分けられており、光学方式が使えない用途においては、磁気マッピング装置による周囲空間の磁気データの計測作業を行った上で磁気方式のHMTが使用されている。
【0014】
ところで、磁気方式HMTを採用する場合において、従来の磁気マッピング装置による磁気データの収集は、モータ駆動の移動装置(移動ステージ)によって磁気センサを一定間隔ずつ移動することにより、各点での磁気データを実測している。この測定は、磁気センサ(頭部)が移動する空間全体にわたって行う必要があり、通常は5000点以上の測定点を設けて、それぞれの位置で計測するようにしている。測定点のひとつひとつの点に磁気センサを移動して正確に位置が定まれば停止し、各位置でのデータを取得する動作を繰り返すことになるため、この作業は多大な時間が必要となる。例えば、2秒ごとに測定点を移動して測定するようにすれば、5000点以上の測定を行うには少なくとも10000秒(2時間47分)もの時間が必要となる。また、せっかく磁気マッピングを行ったとしても、測定対象領域の金属分布が変化すれば、再度磁気マッピングを行わなければならず、その度に、同程度の時間が必要となる。
【0015】
そこで、本発明は、磁気方式のHMTの使用する上で必要な磁気データ(誤差データ)の取得を短時間で行うことができる磁気マッピング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の磁気マッピング装置は、ヘッドモーショントラッカ(HMT)の使用時と同様の磁界を発生する磁気ソースと、支持体と、支持体に取り付けられ前記磁界中の磁気データを測定する磁気センサと、支持体の外表面に取り付けられ磁気センサに対する位置が固定された少なくとも3つのマーカ群と、3つのマーカを同時にステレオ視するための一対のカメラと、前記一対のカメラで撮影された各画像に同時に映る3つのマーカの画像上の位置に基づいてこれら3つのマーカの位置座標を求めるとともに求めた3つのマーカの位置座標に基づいて磁気センサの位置座標を算出する磁気センサ位置算出部と、算出された磁気センサの位置座標とカメラ画像の撮影時に測定された磁気データとに基づいて磁気マッピングデータを蓄積する磁気マッピング部とを備えるようにしている。
【0017】
ここで支持体は、磁気センサとマーカ群とを固定できて、これらの間の位置関係を一定にすることができるものであれば特に形状等は限定されない。
この発明によれば、磁気ソースは、実際に磁気方式HMTを使用するときと同様の磁界を、周囲の空間に発生する。この状態で、磁気センサとマーカ群とが取り付けられている支持体を磁界が生じている空間内で移動する。支持体の移動は、使用者が手動で移動させてもよいし、自動で移動装置を用いてもよい。移動はランダムに任意の方向に行えばよく、予め測定点の座標を定めてその座標位置に停止させる必要がないので継続して迅速に移動すればよい。移動範囲は、HMT使用時に磁気センサが移動する可能性のある空間全体を移動させる。
【0018】
対をなす2つのカメラにより、移動中の支持体を次々と撮影し、支持体表面に取り付けてあるマーカ群のなかから3つの共通のマーカを2つのカメラで同時に撮影するようにして、各時点で同時に撮影された2つのカメラ画像に3つの共通のマーカが映し出されるようにする。すなわち、3つのマーカはステレオ視がなされるようにする。
物体は、物体上の3点の位置を定めることにより、その時点での物体の位置および角度を一義的に決定することができることから、磁気センサ位置角度算出部は、3つのマーカそれぞれの画像上に映し出された位置に基づいて、各カメラとマーカとの間の角度情報を求め、さらにカメラ間の距離情報を用いて、三角測量により各時点での3つのマーカの位置座標を求める。3つのマーカそれぞれの位置座標を求めることにより、支持体の位置および角度を一義的に定めることができ、支持体の位置・角度が定まることにより、支持体に固定されている磁気センサのその時点の位置座標についても一義的に定めることができる。
【0019】
このようにして、ある時点での磁気センサの位置座標を光学的測定によって求めるとともに、同時にその時点での磁気センサによる磁気データを採取する。この動作を繰り返すことで、多数の点についての磁気センサの位置座標と磁気データとを対応付けた磁気マッピングデータが得られる。光学測定による位置座標の計測は、1秒間に60回くらいの回数で行うことができることから、5000点の測定を行う場合であっても、数分程度で計測することができる。そして磁気マッピング部は採取した磁気マッピングデータを蓄積する。蓄積した磁気マッピングデータは測定誤差データの作成などに利用される。
【発明の効果】
【0020】
上記発明によれば、予め測定点を定めて、磁気マッピング装置に記憶させておく必要がなく、測定準備作業が簡素化できる。また、光学測定により磁気センサの位置座標を求めることにより、測定点数が多い場合でも、測定点ごと停止して測定する必要がないことから磁気マッピングに要する測定時間を大幅に短縮することができる。
【0021】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
上記発明において、支持体として頭部装着型支持体を用いるようにしてもよい。頭部装着型支持体としては、具体的には磁気マッピング専用のヘルメットを用いることができるが、例えば実際にHMTとして使用する頭部装着型表示装置(HMD)にマーカを取り付けたものでもよい。
支持体として頭部装着型支持体を用いることにより、実際にHMTを使用する際の頭部の動きを真似ることができるので、実際のHMT使用時における磁気センサ移動領域を重点的に測定した磁気マッピングデータを採取することができるので、実情に即したデータを得ることができる。
【0022】
支持体として頭部装着型支持体を用いる場合に、マーカ群は、いずれの方向からも少なくとも3つのマーカが一対のカメラで撮影されるように頭部装着型支持体の外表面全体に散りばめて配置するようにしてもよい。
これにより、頭部装着型支持体を極端に傾けた場合等でも確実に3つのマーカをステレオ視することができる。また、一対のカメラの配置場所についての自由度を増すことができる。
【0023】
上記発明において、マーカ群は、支持体に取り付けた各マーカ間の位置関係に基づいて個々のマーカが識別されるようにしてもよい。
これによれば、マーカ自体に他のマーカと識別するための識別情報を持たせておく必要がないので、識別情報とマーカ配置との対応について管理をする必要がなくなり、また、識別情報を含まないことから安価なマーカを利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0025】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態である磁気マッピング装置の構成を示す図であり、図2はその磁気マッピング装置の一部であるヘルメットを上から見た図である。この磁気マッピング装置1は、交流磁界を発生する磁気ソース2と、磁気データを検出する磁気センサ3と、ステレオ視を行う一対のカメラ12、14と、ヘルメット16と、マーカとして用いられる3つのLED18(18a〜18c)と、磁気ソース2、磁気センサ3、カメラ12、カメラ14、LED18の制御および演算を行う制御演算部20とからなる。制御演算部20の実行する機能を便宜上機能ブロックとして説明すると、磁気センサ3の位置を算出する磁気センサ位置算出部21および磁気マッピングデータを蓄積する磁気マッピング部22が含まれている。
【0026】
この磁気マッピング装置1では、図8で説明したHMT100と同じ磁界を形成するようにセットされる。例えば、磁気ソース2は、図8における磁気ソース101をそのまま用い、また、座席4は、図8の座席102をそのまま用いる。これにより、HMT100と磁気マッピング装置1とは、磁気的な環境が同一になるようにしてある。
磁気センサ3は、ピックアップコイルを有しており、現在位置での磁気の大きさと向きとを磁気データとして測定する。
【0027】
一対のカメラ12とカメラ14は、ヘルメット16の上方からヘルメット16のステレオ視が可能となるように互いに距離d(dは測定により既知とする)を隔てて設置され、それぞれのカメラの位置座標が求めてあるものとする。
ヘルメット16には、磁気センサ3とともに、3つのLED18a〜18cが固定してあり、ヘルメット16自体がこれらの間の位置関係を一定に保つ支持体となる。予め、ヘルメット16上での磁気センサ3とLED18a〜18cとの位置関係(距離情報)を求めておくことにより、3つのLEDの位置座標が求まれば、磁気センサ3の位置座標を求めることができる。3つのLED18a〜18cは、ヘルメット使用者が通常の動きを行う際に、上方に設置されたカメラ12、14に、常に同時に映るようにするため、ヘルメット上部の位置に取り付けられる。
【0028】
3つのLED18a〜18cには、それぞれが他の隣接するLEDと識別できるように異なる発光波長(発光色)のものを用いる。なお、LED18a,18b間の距離、LED18b,18c間の距離、LED18c,18a間の距離のうち少なくとも2つを互いに異なるようにしてLEDを取り付けておくことにより(すなわち3つのLEDが正三角形を形成しないように取り付けておくことにより)、後述する演算によって各LEDの位置座標を求めれば、LED間の距離についても求めることができ、それぞれのLEDを特定することができるので、その場合は,LED自体には発光波長のような識別情報を与えておかなくてもよい。
【0029】
制御部20は、CPUやメモリを含むコンピュータにより構成され、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより、磁気マッピング装置の制御動作や演算動作を行う。
【0030】
制御部20に含まれる機能ブロックのひとつである磁気センサ位置算出部21は、一対のカメラ12、14によりそれぞれ撮影された一対の画像に同時に映る3つのLEDの画像上の位置に基づいて、これら3つのLEDの位置座標を三角測量により求め、求めた3つのLEDの位置座標に基づいて、磁気センサ3の位置座標を算出する演算を行う。図3は、三角測量による位置座標の算出について説明する図である。
LED18x(18xは18a,18b,18c)の座標は、カメラ12からLED18xへの方向角αxと、カメラ14からLED18xへの方向角βxと、カメラ間距離dとがわかれば一意的に算出できる。方向角αxは、カメラ12の撮影方向と、カメラ12により映された画像上におけるLED18xの位置とにより定めることができ、同様に方向角βxは、カメラ14の撮影方向と、カメラ14により映された画像上におけるLED18xの位置とにより定めることができる。また、カメラ間距離dは既知であることから、αx、βx、dからLED18xの位置座標を算出することができる。
【0031】
上記演算により、3つのLED18a,18b,18cについて、それぞれの位置座標が求まることにより、これらLED間の距離も簡単な計算により求めることができるので、3つのLEDに識別情報(例えば発光波長の違い)が付されていない場合は、LED間の位置関係情報(距離の違い)からLED18a、18b、18cを特定する。
【0032】
3つのLED18a〜18cについて位置が特定され、座標が定まることにより、ヘルメット16のその時点での位置および向きが一義的に決定される。磁気センサ3のヘルメット16上での位置は固定してあるので、磁気センサ位置算出部21は、磁気センサ3の位置座標についても、LED18a,18b,18cの位置座標に基づいて一義的に特定する。
【0033】
磁気マッピング部22は、算出された磁気センサ3の位置座標とカメラ画像の撮影時に同時に測定された磁気データとに基づいて位置座標と磁気データとを対応付けて、図示しないメモリに蓄積する制御を行う。
【0034】
次に、上記磁気マッピング装置による測定動作について説明する。
磁気ソース11により、ヘッドモーショントラッカ(HMT)を使用する際と同様の磁界を発生しておく(S101)。
続いて、ヘルメット16を磁界内で移動させ、ある時点での磁気データを採取すると同時に、その時点の3つのLED18a〜18cの位置座標を算出する(S102)。
続いて、算出された3つのLED18a〜18cの位置座標、および、既知である磁気センサ3とLED18a〜18cとのヘルメット16上の位置関係とに基づいて、磁気センサの位置座標を算出する(S103)。
【0035】
続いて、磁気データを採取した時点における磁気センサ3の位置座標(算出された位置座標)とその磁気データとを対応付けた磁気マッピングデータを作成し、図示しないメモリに蓄積していく(S104)。
続いて、ヘルメット16の移動により、磁気センサ3の位置座標を変更する(S105)。
そして、新しい位置座標で磁気測定を続行するか否かを判断し、測定を続行するときはS102に戻って同様の処理を繰り返す。既に必要な領域の測定を終えたときは処理を終了する(S106)。
【0036】
以上の測定動作により、磁気センサによる磁気データの測定を行いつつ、光学的手法で磁気データを採取したときの磁気センサ3の位置座標を求めるようにして、これらから磁気マッピングデータを作成することにより、測定時間を大幅に短縮するようにする。
【0037】
(実施形態2)
実施形態1においては、ヘルメット16の上部に3つのLED18a〜18cをマーカとして取り付け、その上方に設けた一対のカメラ12、14によりステレオ視を行うようにした。この場合、通常の動作での頭部の移動範囲では問題ないが、ヘルメット16を極端に傾けたときには、いずれかのLEDがいずれかのカメラの視野から外れてしまうことがありうる。また、磁気マッピングを行う際に、何らかの事情で、カメラ12、14をヘルメット16の上方に取り付けることができない場合もある。
それゆえ、ヘルメットをどのように傾けても、どのように回転させても、確実に3つのマーカを一対のカメラに同時に映し出すことができ、また、カメラをヘルメットの上方以外に取り付けても常にステレオ視することができるようにすることが望ましい。
【0038】
そのため、本実施形態では、図5に示すように、ヘルメット16aに、マーカ群として少なくとも4つ以上のLED18を取り付けるようにする。取り付けるLEDの適切な数は、ヘルメット16aの大きさや形状、一対のカメラ12、14の設置位置によって異なるが、要するに一対のカメラ12、14で撮影される一対の画像上に、それぞれ3つの共通のLED18が確実に含まれる程度にちりばめるようにする。例えば、図5では3つのLED18a〜18cがそれぞれのカメラ画像に同時に含まれている。
【0039】
各LED18は、何らかの方法でそれぞれが他の隣接するLED18と識別できるようにする必要がある。本実施形態では、実施形態1の場合と同様に、識別情報としてLEDごとに異なる発光波長(発光色)で発光するようにする。
これにより、各時点で一対のカメラ画像に共通に映し出されている3つのLED18a〜18cを用いて、実施形態1と同様の位置座標を求める演算を行うことにより、3つのLED18a〜18cの座標、さらには磁気センサ3の位置座標を求めることができ、磁気センサ3で計測した磁気データと対応付けることにより、磁気マッピングデータを得ることができる。
【0040】
(実施形態3)
実施形態2では、使用する各LEDに、識別情報(例えば発光波長の違い)が含まれるようにしていた。しかしながら、ヘルメット16aに各LED18を取り付けるときに、隣接するLED間の距離を互いに異ならせることにより(3つのLEDが正三角形を形成しないように取り付けることにより)、LED自体に識別情報(例えば発光波長の違い)を含んでいない場合でも、以下に説明する方法でカメラ画像上に映し出されたLEDを識別し、さらに実施形態1で用いた演算を利用することによって、各LEDの位置座標を求めることができる。
【0041】
LED自体に識別情報を含んでいない場合は、まず、図5に示すように、2つのカメラ12、14の視野内に入る3つのLED(ただし3つの位置関係が正三角形とならないもの)を探索用マーカとして点灯し、それ以外のLED群18を消灯する。便宜上、これら3つのLEDは、LED18a、18b、18cの組であるとする。
【0042】
2つのカメラ12、14のそれぞれの画像A、B内に、点灯中の3つのLEDが映っていることを確認する。図6はこのときの画像例を示している。多数のLEDが存在するなかで、LEDは3つだけが点灯している。この段階では、画像A、B内に映る3つのLED像は、それぞれがLED18a、18b、18cのいずれかであることは判明しているが、それぞれのLED像が、3つのうちのどれであるかは特定されていない。
【0043】
そこで、エピポーラ幾何学に基づく予測により、画像A、B間での共通のLEDの組(探索用マーカの組)を認識するための対応付けを行う。図7は、エピポーラ幾何学に基づく予測を説明する図である。
カメラ12の撮影方向とカメラ14の撮影方向とが定まった状態で、カメラ12の画像Aには、点灯中のLED18a、18b、18cのいずれかであるLED18x(LED18y、LED18zは図示を省略する)が映し出されているとする。このときカメラ12とLED18xとを結ぶ仮想直線Lが存在するとして、これをカメラ14で映したとすると、カメラ14の画像B上に仮想直線LBが映し出されることになる。画像B上の仮想直線LBの位置は、画像A内でのLED18xが映る位置、および、カメラ12の撮影方向とカメラ14の撮影方向との関係に基づいて一意的に定まる。そして、LED18xの像は、この仮想直線LB上のいずれかの位置に存在することになる。したがって、画像B上に映し出される点灯中のLED像のうちで、仮想直線LB上に存在するものがあれば、それがLED18xの像であると特定することができる。同様に、他の2つのLED18yの像、LED18zの像についても特定することにより、画像Aと画像Bとに映し出される3つのLED18x、LED18y、LED18zの組の対応付けを行うことができる。
【0044】
続いて、3つの探索用マーカであるLED18x、LED18y、LED18zの位置座標を算出し、これら3つのLEDの3次元位置を特定する。このとき、図3により先に説明した三角測量による位置座標特定方法を利用する。
すなわち、LED18xの位置座標を求める場合は、方向角αxはカメラ12の撮影方向と、画像AにおけるLED18xの位置とにより定めることができ、方向角βxはカメラ14の撮影方向と、画像BにおけるLED18xの位置とにより定めることができる。また、カメラ間距離dは既知であることから、αx、βx、dからLED18xの位置座標が算出される。同様に、LED18y、LED18zについても位置座標が算出される。
【0045】
続いて、3つの探索用マーカであるLED18x、LED18y、LED18z間の距離を算出する。これら3つのLEDそれぞれの位置座標が算出されているので、LED18xとLED18yとの距離dx、LED18yとLED18zとの距離dy、LED18zとLED18xとの距離dzは、簡単な計算で求められる。
【0046】
続いて、3つの探索用マーカであるLED18x、LED18y、LED18zが、それぞれLED18a、18b、18cのいずれであるかを特定するための探索用マーカの識別を行う。探索用マーカの識別は、LED18x、LED18y、LED18z間の距離dx、dy、dzと、予め既知であるLED18a、18b、18c間の距離a、b、cとを比較することによりなされる。なお、LED18a、18b、18c間の距離a、b、cがすべて等しければ(すなわちLED18a、18b、18cが正三角形の位置関係)、距離による探索用マーカ識別はできないことになるが、点灯させる3つのLEDとして正三角形の位置関係とならないものを選択してあるので、識別が可能である。
【0047】
続いて、3つのLEDが識別され、LED18a、18b、18cが特定されると、これら3つのLEDについての位置座標から、ヘルメット16aの位置および向きを特定することができる。ヘルメットの位置および向きが特定されることにより、そのヘルメット16aに固定されている磁気センサ3の位置座標についても特定できる。
【0048】
以上の手順により、LED自体に識別情報を含んでいない場合であっても磁気センサ3の位置座標を求めることができるので、以下、実施形態1、2と同様の処理を実行することで、磁気マッピングを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、磁気方式のHMTを使用する空間について磁気マッピングを行う場合に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態である磁気マッピング装置の構成を示すブロック構成図。
【図2】図1の磁気マッピング装置におけるヘルメットを上方から見た図。
【図3】三角測量によるLED(マーカ)の位置座標の算出について説明する図。
【図4】本発明の一実施形態である磁気マッピング装置による処理手順を説明するフローチャート。
【図5】本発明の他の実施形態において用いるヘルメットおよびカメラ位置を説明する図。
【図6】カメラに映し出される画像例を説明する図。
【図7】エピポーラ幾何学に基づく予測を説明する図。
【図8】磁気方式のHMTの構成を示す図。
【符号の説明】
【0051】
1: 磁気マッピング装置
2: 磁気ソース
3: 磁気センサ
12、14: カメラ
16: ヘルメット
18: LED(マーカ)
20: 制御演算部
21: 磁気センサ位置算出部
22: 磁気マッピング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドモーショントラッカの使用時と同様の磁界を発生する磁気ソースと、支持体と、支持体に取り付けられ前記磁界中の磁気データを測定する磁気センサと、支持体の外表面に取り付けられ磁気センサに対する位置が固定された少なくとも3つのマーカ群と、3つのマーカを同時にステレオ視するための一対のカメラと、前記一対のカメラで撮影された各画像に同時に映る3つのマーカの画像上の位置に基づいてこれら3つのマーカの位置座標を求めるとともに求めた3つのマーカの位置座標に基づいて磁気センサの位置座標を算出する磁気センサ位置算出部と、算出された磁気センサの位置座標とカメラ画像の撮影時に測定された磁気データとに基づいて位置座標と磁気データとを対応付けた磁気マッピングデータを蓄積する磁気マッピング部とを備えたことを特徴とする磁気マッピング装置。
【請求項2】
支持体として頭部装着型支持体を用いることを特徴とする請求項1に記載の磁気マッピング装置。
【請求項3】
前記マーカ群は、いずれの方向からも少なくとも3つのマーカが一対のカメラで撮影されるように頭部装着型支持体の外表面全体に散りばめて配置することを特徴とする請求項2に記載の磁気マッピング装置。
【請求項4】
前記マーカ群は、支持体に取り付けた各マーカ間の位置関係に基づいて個々のマーカが識別されることを特徴とする請求項1に記載の磁気マッピング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−187524(P2007−187524A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5173(P2006−5173)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】