説明

磁気共鳴イメージング装置、画像再構成方法およびプログラム

【課題】傾斜磁場分布が極値点を持つために歪み補正により発生する虚像を除去し、虚像のない歪み補正画像を得ることを目的とする。
【解決手段】画像の歪み分布量から、傾斜磁場の極値点に対応する再構成画像上の点を特定し、当該点の、磁場中心より外側の画像の画素値を所定の値にすることにより、歪み補正により傾斜磁場の極値点内の信号が作り出す虚像を除去し、虚像を除去した磁気共鳴画像を得る。極値点の特定には、例えば、ヤコビアンを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI)装置における取得画像の虚像除去技術に関する。特に、傾斜磁場強度の分布(傾斜磁場分布)の非線形性を要因とする虚像の除去技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置は、被検体、特に人体の組織を構成する原子核スピンが発生する核磁気共鳴(NMR)信号を計測し、その頭部、腹部、四肢等の形態や機能を2次元的に或いは3次元的に画像化する装置である。撮影においては、NMR信号には、傾斜磁場によって異なる位相エンコードが付与されるとともに周波数エンコードされて、時系列データとして計測される。計測されたNMR信号は、2次元又は3次元フーリエ変換され画像に再構成される。
【0003】
正しい再構成画像を得るためには、NMR信号に位相エンコードを付与する傾斜磁場分布が線形でなければならない。しかし、現在のMRI装置では、磁石のボアを短くしたり傾斜磁場の速度を改善したりするため、傾斜磁場分布の線形性は犠牲にされている。このような傾斜磁場分布の非線形性は、再構成画像に歪みを生じさせる。従って、正しい画像を得ることができない。このため、傾斜磁場分布の歪みから、傾斜磁場分布の非線形性による再構成画像の歪み量を推定し、画像の歪みを補正する手法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【非特許文献1】Andrew Janke, Huawei Zhao, Gary J. Cowin, Graham J. Galloway and David M. Doddrell “Use of Spherical Harmonic Deconvolution Methods to Compensate for Nonlinear Gradient Effects on MRI Images” Magnetic Resonance in Medicine 52:115−122(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示されている歪み補正手法では、傾斜磁場強度より歪んだ傾斜磁場の位置座標を算出し、歪みを補正した画像を得ている。ここで、撮影視野内の傾斜磁場強度分布に極値点が存在すると、極値点の両側に同じ傾斜磁場強度となる点が存在し、算出される位置座標も同じとなる。従って、非特許文献1に開示の歪み補正によれば、原画像上の1つの点が極値点の両側の2つの点に移動する。すなわち、傾斜磁場分布の非線形性による歪みを、非特許文献1に開示の歪み補正手法を用いて補正すると、傾斜磁場強度が極値点を有する場合、その外側に本来なら存在しない画像である虚像が発生する。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、傾斜磁場分布が極値点を持つために歪み補正により発生する虚像を除去し、虚像のない歪み補正画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、画像の歪み分布量から、傾斜磁場の極値点に対応する再構成画像上の点を特定し、当該点の、磁場中心より外側の画像の画素値を所定の値にすることにより、歪み補正により傾斜磁場の極値点内の信号が作り出す虚像を除去する。
【0008】
具体的には、被検体が置かれる空間に静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記被検体に高周波磁場パルスを照射する照射手段と、高周波磁場パルスの照射により前記被検体から生じる核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、前記核磁気共鳴信号に位置情報を付加するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、前記照射手段、前記傾斜磁場発生手段及び前記受信手段を所定のパルスシーケンスに従って動作させる制御手段と、前記核磁気共鳴信号から画像を再構成する信号処理手段とを備える磁気共鳴イメージング装置であって、前記傾斜磁場の強度分布の歪みによる画像の歪みを補正する歪み補正手段と、前記歪み補正手段による補正後の画像から、当該補正により発生する虚像を除去する虚像除去手段と、を備え、前記虚像除去手段は、前記補正後の画像の、前記傾斜磁場の強度分布が極値を取る領域に対応する画素より外側の画素の画素値を所定の値に置き換えることにより、前記虚像を除去することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、傾斜磁場分布が極値点を持つために歪み補正により発生する虚像を除去することができ、虚像のない歪み補正画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用した第一の実施形態を図面を用いて説明する。なお、発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
まず、本実施形態のMRI装置の全体構成について説明する。図1は、本実施形態のMRI装置100の全体構成を示すブロック図である。本実施形態のMRI装置100は、NMR現象を利用して被検体の断層画像を得るもので、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、シーケンサ4と、送信系5と、受信系6と、信号処理系7とを備える。
【0012】
静磁場発生系2は、垂直磁場方式であれば、被検体1の周りの空間にその体軸と直交する方向に、水平磁場方式であれば、被検体1の体軸方向に均一な静磁場を発生させる。被検体1の周りに配置される永久磁石方式、常電導方式あるいは超電導方式の静磁場発生源により実現される。
【0013】
傾斜磁場発生系3は、MRI装置100の座標系(静止座標系)であるX、Y、Zの3軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル9と、それぞれの傾斜磁場コイルを駆動する傾斜磁場電源10とを備える。後述のシ−ケンサ4からの命令に従ってそれぞれの傾斜磁場コイルの傾斜磁場電源10を駆動することにより、X、Y、Zの3軸方向に傾斜磁場Gx,Gy,Gzを印加する。撮影時には、スライス面(撮影断面)に直交する方向にスライス方向傾斜磁場パルス(Gs)を印加して被検体1に対するスライス面を設定し、そのスライス面に直交して且つ互いに直交する残りの2つの方向に位相エンコード方向傾斜磁場パルス(Gp)と周波数エンコード方向傾斜磁場パルス(Gr)とを印加して、エコー信号にそれぞれの方向の位置情報をエンコードする。
【0014】
送信系5は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンに核磁気共鳴を起こさせるために、被検体1に高周波磁場(RF)パルスを照射するもので、高周波発振器11と変調器12と高周波増幅器13と送信側の高周波コイル(送信コイル)14aとを備える。高周波発振器11から出力されたRFパルスは後述するシーケンサ4からの指令によるタイミングで変調器12により振幅変調され、高周波増幅器13で増幅され、被検体1に近接して配置された送信コイル14aから被検体1に照射される。
【0015】
受信系6は、被検体1の生体組織を構成する原子の原子核スピンの核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル(受信コイル)14bと信号増幅器15と直交位相検波器16と、A/D変換器17とを備える。送信コイル14aから照射されたRFパルスによって誘起された応答のNMR信号は、被検体1に近接して配置された受信コイル14bで検出され、信号増幅器15で増幅され、後述するシーケンサ4からの指令によるタイミングで直交位相検波器16により直交する二系統の信号に分割され、それぞれがA/D変換器17でディジタル量に変換されて、計測データとして信号処理系7に送られる。
【0016】
シーケンサ4は、所定のパルスシーケンスに従って、RFパルスと傾斜磁場パルスとを繰り返し印加するよう制御するもので、後述する信号処理系7のディジタル信号処理装置8の制御で動作し、被検体1の断層画像を再構成するためのデータ収集に必要な種々の命令を送信系5、傾斜磁場発生系3、および受信系6に送る。
【0017】
信号処理系7は、各種データ処理と処理結果の表示及び保存等を行うもので、ディジタル信号処理装置8と、ROM、RAM等の記憶装置18と、光ディスク、磁気ディスク等の外部記憶装置19と、表示装置20とを備える。受信系6からの計測データがディジタル信号処理装置(CPU)8に入力されると、ディジタル信号処理装置8が信号処理、画像再構成等の処理を実行し、その結果である被検体1の断層画像を表示装置20に表示すると共に、記憶装置18または外部記憶装置19に記録する。
【0018】
操作部25は、MRI装置100自体の各種制御情報および信号処理系7で行う処理の各種制御情報の入力を受け付けるもので、トラックボール又はマウス23、および、キーボード24を備える。操作部25は表示装置20に近接して配置され、オペレータは、表示装置20を見ながら操作部25を介してインタラクティブにMRI装置100の各種処理に必要な情報を入力する。
【0019】
なお、図1において、送信側の高周波コイル14aと傾斜磁場コイル9は、被検体1が挿入される静磁場発生系2の静磁場空間内に、垂直磁場方式であれば被検体1に対向して、水平磁場方式であれば被検体1を取り囲むようにして設置されている。また、受信側の高周波コイル14bは、被検体1に対向して、或いは取り囲むように設置されている。
【0020】
現在MRI装置の撮像対象核種は、臨床で普及しているものとしては、被検体の主たる構成物質である水素原子核(プロトン)である。プロトン密度の空間分布や、励起状態の緩和時間の空間分布に関する情報を画像化することで、人体頭部、腹部、四肢等の形態または、機能を2次元もしくは3次元的に撮像する。
【0021】
なお、上記のMRI装置100で得られた画像は、傾斜磁場コイル9に生じる非線形性の影響を受け、歪みが生じる。本実施形態では、非特許文献1に記載の手法を用い、再構成後の画像の座標から、傾斜磁場分布の歪みを推定し、歪み補正を行う。さらに、本実施形態では、歪み補正後の画像から、傾斜磁場分布の極値点に対応する領域から得られた画像上の座標(画像上の極値点と呼ぶ。)を特定し、傾斜磁場の傾きが極値を有するために発生する虚像を除去する。これを実現するため、本実施形態のディジタル信号処理装置8は、画像再構成部に加え、歪み補正部と、虚像除去部とを備える。
【0022】
本実施形態のディジタル信号処理装置8は、CPUとメモリとを備え、CPU8が、予め記憶装置18等に格納されたプログラムをメモリにロードし、実行することにより、上記各機能を実現する。
【0023】
本実施形態の歪み補正部は、上記非特許文献1に開示の歪み補正処理を行う。具体的には、以下の処理を行う。半径Rの球面の内部で、X軸、Y軸、Z軸の傾斜磁場コイルが発生させる、
【数1】

はそれぞれ、X軸の傾斜磁場、Y軸の傾斜磁場、Z軸の傾斜磁場をルジャンドル関数で展開したときの、展開係数である。
【0024】
各軸に印加した傾斜磁場強度(G、G、G)で、傾斜磁場を割ると、各軸の位置座標が得られる。それぞれの傾斜磁場が、線形成分GX、GY、GZを含んでいることに注意すると、傾斜磁場の非線形性による画像歪みδX、δY、δZは、次の式(2)で得られる。
【数2】

従って、画像上の各点を、(−δX、−δY、−δZ)だけ移動することで、傾斜磁場の非線形による画像歪みを補正することができる。
【0025】
次に、本実施形態の虚像除去部による処理の詳細を説明する。虚像除去部は、上述のように、傾斜磁場分布が極値を持つために、非特許文献1に開示の手法による歪み補正(以後、単に歪み補正と呼ぶ。)後の画像に発生する虚像を除去する。ここで、本実施形態では、傾斜磁場は、上述のように、スライス方向傾斜磁場パルスGs、位相エンコード方向傾斜磁場パルスGp、周波数エンコード方向傾斜磁場パルスGrの3方向に与えられる。ここでは、これらの傾斜磁場パルスによる傾斜磁場強度の分布を合成したものを傾斜磁場分布と呼ぶ。
【0026】
歪み補正では、傾斜磁場強度により傾斜磁場の位置座標を算出している。従って、上述のように傾斜磁場分布に極値点があると、その両側で傾斜磁場強度が同じになる点が存在し、歪み補正時に原画像上の1つの点が2箇所に配置される。一般に、傾斜磁場分布の非線形性は、磁場中心から遠ざかるにつれて高くなる。このため、極値を持つほど傾斜磁場分布の非線形性が高くなるのは、撮影範囲の端部に近い領域である可能性が高い。すなわち、歪み補正により、極値点の内側の信号を基に、極値点の外側の、傾斜磁場強度が同じ領域に画像が作り出される。これが、歪み補正による虚像である。
【0027】
本実施形態では、歪み補正後の再構成画像上の極値点を探し出し、その外側の領域の画素値を所定の値(例えば、0等)にし、虚像を除去する。すなわち、本実施形態の虚像除去部は、画像上の極値点を探索し、外側の領域を外側領域として特定し、外側領域の画素値を所定の値とする虚像除去処理を行う。以下、本実施形態の虚像除去処理の具体的な実現手法について説明する。
【0028】
まず、画像上の極値点の探索手法について説明する。本実施形態では、歪み補正時の変換処理の特性を利用し、画像上の極値点を特定する。非線形な傾斜磁場分布環境で得られた計測データから再構成された画像は、歪んだ格子状でない座標系(x,y,z)に配置される。以後、この座標系を第一の座標系と呼ぶ。また、理想的な傾斜磁場分布環境で得られる計測データが再構成されて配置される座標系(X,Y,Z)を、第二の座標系と呼ぶ。歪み補正では、第一の座標系を第二の座標系に変換する。このとき、歪み補正の性質上、画像上の極値点では、座標変換に伴う面積素(3次元画像の場合、体積素、以下、面積素で代表して記載する。)が0となる。すなわち、非特許文献1に記載されている歪み補正による座標変換では、画像上の極値点Aを含む四角形(A、B、C、D)のB、C、Dが、補正時に極値点Aに移動する。従って、A(x、y)、D(x、y)とすると、式(3)で表される四角形の面積Sは0となる。
【数3】

よって、傾斜磁場強度の極値点に対応する画素の変換後の面積は0となる。本実施形態は、これを利用して、画像上の極値点を特定する。
【0029】
座標変換に伴う面積素の変化率は、ヤコビアンで表される。本実施形態の第一の座標系から第二の座標系への変換におけるヤコビアンは、以下の式(4)で求められる。
【数4】

【0030】
従って、本実施形態では、上記式(4)で計算されるヤコビアンJが0になる座標を計算し、それを画像上の極値点とする。なお、実際の処理においては、ヤコビアンJが0となる座標を画像上の極値点とするのではなく、所定の閾値を設定し、ヤコビアンJが当該閾値以下となる座標を、画像上の極値点とする。
【0031】
次に、求めた画像上の極値点から、画素値を所定の値にする領域、すなわち、外側の領域を決定する手法について説明する。ここでは、求めた画像上の極値点から上下方向および左右方向の画像端までの距離を算出し、短い側を外側とする。具体的には、算出された画像上の極値点を中心として、極値点と補正画像の領域の端までの距離を、上下方向および左右方向について求める。このとき、算出する画像は、歪み補正後の画像を用い、領域の端とは、歪み補正処理前の画像の端のことである。
【0032】
以下、本実施形態の虚像除去部による虚像除去処理全体について、その流れを説明する。図2は、本実施形態の虚像除去部による虚像除去処理の処理フローである。ここでは、n×m(n、mは共に自然数)の画素からなる2次元画像について処理を行うものとする。また、各画素の座標を、(xi、yj)(i=1、2、・・・n、j=1、2、・・・・m)とする。また、画像上の極値点の外側と判定された領域の画素値を0とする場合を例にあげて説明する。
【0033】
i、jをそれぞれ初期化する。ここでは、1とする(ステップS201)。次に、座標(xi、yj)のヤコビアンJを計算する(ステップS202)。計算したヤコビアンJの値が予め定めた閾値(例えば、0.02)未満であるか否か、判別する(ステップS203)。ヤコビアンJが閾値以上であれば、ステップS213へ移行する。
【0034】
ヤコビアンJが閾値未満であれば、その座標(xi、yi)は、傾斜磁場分布の極値点に対応する座標と判断し、当該座標から、画像の左端までの距離Ll(=|x1−xi|)および右端までの距離Lr(=|xn−xi|)を計算する(ステップS204)。次に、当該座標から画像の上端までの距離Lu(=|y1−yj|)および下端までの距離Ld(=|ym−yj|)を計算する(ステップS205)。
【0035】
そして、LlとLrとの大きさ、および、LuとLdとの大きさを比較し(ステップS206、S207,S208)、LlがLr以上、かつ、LuがLd以上の場合、座標(xi、yi)より右下の領域の画素値を0とする(ステップS209)。また、LlがLr以上、かつ、LuがLd未満の場合、座標(xi、yi)より右上の領域の画素値を0とする(ステップS210)。LlがLr未満、かつ、LuがLd以上の場合、座標(xi、yi)より左下の領域の画素値を0とする(ステップS211)。LlがLr未満、かつ、LuがLd未満の場合、座標(xi、yi)より左上の領域の画素値を0とする(ステップS212)。
【0036】
次に、画像上の全座標の処理が終了したか否かを判別する(ステップS213)。ここでは、i=nであるか否かを判別し(ステップS214)、i<nであれば、iを1インクリメントし(ステップS215)、ステップS202に戻る。一方、i=nであれば、j=mであるか否かを判別する(ステップS216)。j<mであれば、jを1インクリメントし(ステップS217)、ステップS202に戻る。j=mであれば、全座標の処理が終了しているとし、虚像除去処理を終了する。
【0037】
以上の手順で虚像除去処理を行うことにより、本実施形態の虚像除去部は、歪み補正により発生した虚像を除去することができる。
【0038】
なお、上記実施形態では、画像上の各座標のヤコビアンを計算して画像上の極値点を特定している。しかし、極値点を特定する処理は、これに限られない。例えば、実際に座標変換後の微小領域の面積(3次元画像の場合体積)を計算するよう構成してもよい。
【0039】
座標(x、y)における微小領域(単位面積)A’の座標変換後の面積Aは、以下の式(5)により求められる。
【数5】

なお、計算する点の座標(x、y)、各点の歪みを(δxi、δyi)とすると、式(5)の座標は以下の通りとなる。
=x−δx、 y=y-δy
=x+1−δx、 y=y−δy
=x+1−δx、 y=y+1−δy
=x−δx、 y=y+1−δy
=x、 y=y
【0040】
すなわち、再構成画像上の各座標について式(5)に従ってAを計算し、結果が0(または、所定の閾値以下)になる座標を画像上の極値点とする。
【0041】
なお、3次元画像の場合、座標(X、Y、Z)における微小領域(単位体積)V’の座標変換後の体積Vは、以下の式(6)により求められる。
【数6】

なお、A1は、計算する座標(X、Y、Z)のボクセルの上面の面積、A2は、下面の面積である。それぞれ、式(2)を用いて求める。また、tは、上面の座標を(x、y、z)、下面の座標を(x’、y’、z’)とすると、以下の式(7)で算出される。
【数7】

このように、3次元画像の場合、各座標について、式(6)に従ってVを計算し、結果が0(または、所定の閾値以下)になる座標を、画像上の極値点とする。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、傾斜磁場分布が極値点を有するために歪み補正により発生する虚像を、効果的に除去することができる。従って、傾斜磁場分布が非線形であり、撮影領域内に極値点を持つ場合であっても、虚像が除去されたひずみ補正画像を得ることができる。
【0043】
例えば、特許文献1に開示されているような、被検体の配置スペースを大きくとるとともにオープン性を高めるために傾斜磁場コイル9を静磁場発生系2内の磁石の窪み内に配置するMRI装置の場合、傾斜磁場分布の線形性を保つことができる範囲が狭くなっている。このような構成のMRI装置には、特に有効である。
【0044】
【特許文献1】国際公開2006/057395号パンフレット
【0045】
また、本実施形態では、歪み補正、画像再構成、虚像除去の各処理を、MRI装置100内のデジタル信号処理装置8で行うよう構成しているが、本構成に限られない。例えば、MRI装置100とデータ送受信可能な独立した情報処理装置を備え、当該情報処理装置でこれらの処理を行うよう構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態のMRI装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の虚像除去処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1:被検体、2:静磁場発生系、3:傾斜磁場発生系、4:シーケンサ、5:送信系、6:受信系、7:信号処理系、8:ディジタル信号処理装置(CPU)、9:傾斜磁場コイル、10:傾斜磁場電源、11:高周波発信器、12:変調器、13:高周波増幅器、14a:高周波コイル(送信コイル)、14b:高周波コイル(受信コイル)、15:信号増幅器、16:直交位相検波器、17:A/D変換器、18:記憶装置、19:外部記憶装置、20:表示装置、23:トラックボール又はマウス、24:キーボード、25:操作部、100:MRI装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体が置かれる空間に静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記被検体に高周波磁場パルスを照射する照射手段と、高周波磁場パルスの照射により前記被検体から生じる核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、前記核磁気共鳴信号に位置情報を付加するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、前記照射手段、前記傾斜磁場発生手段及び前記受信手段を所定のパルスシーケンスに従って動作させる制御手段と、前記核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成手段と、前記傾斜磁場の強度分布の歪みによる画像の歪みを補正する歪み補正手段とを備える磁気共鳴イメージング装置であって、
前記歪み補正手段による補正後の画像から、当該補正により発生する虚像を除去する虚像除去手段を備え、
前記虚像除去手段は、前記補正後の画像の、前記傾斜磁場の強度分布が極値を取る領域に対応する画素より外側の画素の画素値を所定の値に置き換えることにより、前記虚像を除去すること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記虚像除去手段は、前記補正後の画像の、ヤコビアンが所定の閾値以下となる画素を、前記極値を取る領域に対応する画素とすること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記虚像除去手段は、前記歪み補正による各画素の微小領域の大きさの変化が所定の閾値以下の画素を、前記極値を取る領域に対応する画素とすること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記静磁場発生手段は、前記被検体が置かれる空間側に窪み部を備え、
前記傾斜磁場発生手段は、前記窪み部に少なくとも一部が収納されていること
を特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
被検体が置かれる空間に静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記被検体に高周波磁場パルスを照射する照射手段と、高周波磁場パルスの照射により前記被検体から生じる核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、前記核磁気共鳴信号に位置情報を付加するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、前記照射手段、前記傾斜磁場発生手段及び前記受信手段を所定のパルスシーケンスに従って動作させる制御手段とを備える磁気共鳴イメージング装置における画像再構成方法であって、
前記核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成ステップと、
前記再構成された画像について、前記傾斜磁場の強度分布の歪みによる画像の歪みを補正する歪み補正ステップと、
前記歪み補正手段による補正後の画像から、当該補正により発生する虚像を除去する虚像除去ステップと、を備え、
前記虚像除去ステップは、前記補正後の画像の、前記傾斜磁場の強度分布が極値を取る領域に対応する画素より外側の画素の画素値を所定の値に置き換えることにより、前記虚像を除去すること
を特徴とする画像再構成方法。
【請求項6】
被検体が置かれる空間に静磁場を発生する静磁場発生手段と、前記被検体に高周波磁場パルスを照射する照射手段と、高周波磁場パルスの照射により前記被検体から生じる核磁気共鳴信号を受信する受信手段と、前記核磁気共鳴信号に位置情報を付加するための傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生手段と、前記照射手段、前記傾斜磁場発生手段及び前記受信手段を所定のパルスシーケンスに従って動作させる制御手段とを有する磁気共鳴イメージング装置が備えるコンピュータを、
前記核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成手段と、
前記傾斜磁場の強度分布の歪みによる画像の歪みを補正する歪み補正手段と、
前記歪み補正手段による補正後の画像から、当該補正により発生する虚像を、前記補正後の画像の、前記傾斜磁場の強度分布が極値を取る領域に対応する画素より外側の画素の画素値を所定の値に置き換えることにより除去する虚像除去手段、として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−273501(P2009−273501A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124886(P2008−124886)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】