説明

磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴画像生成方法

【課題】静磁場の不均一性の影響によらずに、画像品質を向上可能にする。
【解決手段】プリパレーションパルスシーケンスPSを実施する際には、第1の化学飽和パルスCS1と、T2プリパレーションパルスPRと、反転パルスである第2の化学飽和パルスCS2とを順次送信することによって被検体SUのスピンを励起する。そして、これと共に、第1の化学飽和パルスCS1を送信後であってT2プリパレーションパルスPRを送信する前には、第1のキラー勾配パルスGk1を送信し、T2プリパレーションパルスPRを送信後であって第2の化学飽和パルスCS2を送信する前には、第2のキラー勾配パルスGk2を送信し、第2の化学飽和パルスCS2を送信後であってイメージングパルスシーケンスISを実施する前には、第3のキラー勾配パルスGk3を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置および磁気共鳴画像生成方法に関する。特に、被検体を収容した静磁場空間において、プリパレーションパルス(preparation pulse)を送信するプリパレーションパルスシーケンス(preparation pulse sequence)を実施後に、その被検体から磁気共鳴信号を収集するイメージングシーケンス(imaging sequence)を実施することによって、その被検体についてスキャン(scan)を実施する磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)現象を用いて、被検体についてイメージングする装置であり、特に、医療用途において多く利用されている。
【0003】
磁気共鳴イメージング装置においては、静磁場が形成された撮像空間内に被検体を収容することによって、その被検体におけるプロトン(proton)のスピン(spin)を、その静磁場の方向へ整列させて、磁化ベクトルを発生させる。そして、共鳴周波数のRF(Radio Frequency)パルスを送信して高周波磁場を形成することによって核磁気共鳴現象を生じさせる。これにより、スピンの向きをフリップ(flip)し、そのプロトンの磁化ベクトルを変化させる。その後、そのスピンが静磁場方向に沿って、プロトンが元の磁化ベクトルの状態に戻る際に生ずる磁気共鳴(MR)信号を受信する。このようにして、被検体をイメージングする際にローデータ(raw data)とする磁気共鳴信号を収集するイメージングパルスシーケンスを実施する。そして、そのイメージングパルスシーケンスの実施にて得られた磁気共鳴信号をローデータとして、その被検体について、スライス画像などの磁気共鳴画像を生成する。
【0004】
上記のような磁気共鳴画像においてコントラストを向上させるために、磁気共鳴信号を収集するイメージングパルスシーケンスの実施前に、プリパレーションパルスを送信するプリパレーションパルスシーケンスを実施する方法が提案されている。
【0005】
たとえば、T2強調画像を磁気共鳴画像として生成するために、T2プリパレーションパルスを事前に送信することが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このT2プリパレーションパルスは、「T2 prep」や「DE(Driven equilibrium)パルス」とも称されており、たとえば、MLEV−4法に対応するように送信する。具体的には、たとえば、90°RFパルス、180°RFパルス、180°RFパルス、−180°RFパルス、−180°RFパルス、−90°RFパルスの順にて、RFパルスを送信する。そして、このT2プリパレーションパルスを、その送信時間間隔が1:2:2:2:1になるように送信することによって、横緩和時間(T2)が異なる複数の組織の間において、T2が長い組織の磁化モーメントを、T2が短い組織の磁化モーメントよりも大きな状態にし、T2強調を実施している。
【0006】
また、たとえば、脂肪抑制画像を磁気共鳴画像として生成するために、化学飽和パルス(Chemical Saturation Pulse)をプリパレーションパルスシーケンスにおいて事前に送信することが知られている(たとえば、特許文献2参照)。この化学飽和パルスは、「Chem Sat」や、「スペクトラル(Spectral)飽和パルス」、「CHESS(CHEmical Shift Selective)パルス」とも称されており、事前に周波数選択性のRFパルスを送信することによって、特定の組織のスピンを飽和させる。ここでは、たとえば、水と脂肪などの複数の組織の間において化学シフトが生じて、共鳴周波数が異なる現象を利用している。
【0007】
【特許文献1】特許3341914号
【特許文献2】特開2004−254884号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
T2プリパレーションパルスと、化学飽和パルスとの両者を、プリパレーションパルスとして、事前にプリパレーションパルスシーケンスを実行することがなされている。たとえば、SSFP(Steady State Free Precession)にて被検体の腹部についてイメージングする際には、筋肉や肝臓などの組織からの磁気共鳴信号を抑制するために、T2プリパレーションパルスを用いると共に、脂肪からの磁気共鳴信号を抑制するために、化学飽和パルスを用いており、これによって、血流からの磁気共鳴信号を強調させている。
【0009】
図8は、T2プリパレーションパルスPRと、脂肪を抑制するための化学飽和パルスCSとの両者を、プリパレーションパルスとして用いたプリパレーションパルスシーケンスPSと、その後に実施するイメージングパルスシーケンスISとを示す図である。
【0010】
図8において、(a)は、パルスシーケンス図であり、横軸が時間であって、縦軸が、パルス強度である。そして、「RF」は、RFパルスを送信する時間軸を示し、「GKill」は、キラー勾配パルスを送信する時間軸を示している。
【0011】
また、図8において、(b)と(c)とのそれぞれは、(a)に示したパルスシーケンスを実施した際における、脂肪の磁化モーメントの挙動を示す図であり、横軸が時間であって、縦軸が磁化モーメントである。ここで、(b)は、静磁場が均一な理想状態である場合を示しており、一方、(c)は、静磁場が不均一な非理想状態である場合を示している。
【0012】
まず、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施する際には、図8(a)に示すように、T2プリパレーションパルスPRを送信する。
【0013】
ここでは、図8(b)に示すように、脂肪の磁化モーメントが減衰する。
【0014】
つぎに、図8(a)に示すように、キラー勾配パルスGkpを送信する。
【0015】
ここでは、特に図示していないが、T2プリパレーションパルスPRの送信にて生じたスピンの横磁化が消失される。そして、これと共に、図8(b)に示すように、時間の経過に応じて、脂肪の磁化モーメントが回復される。
【0016】
つぎに、図8(a)に示すように、化学飽和パルスCSを送信する。
【0017】
ここでは、たとえば、フリップアングルが120°である化学飽和パルスCSを送信する。そして、図8(b)に示すように、静磁場が均一な理想状態である場合においては、脂肪の磁化モーメントが反転される。
【0018】
つぎに、図8(a)に示すように、キラー勾配パルスGkcを送信する。
【0019】
ここでは、特に図示していないが、化学飽和パルスRCの送信にて生じたスピンの横磁化が消失される。そして、これと共に、図8(b)に示すように、時間の経過に応じて、脂肪の磁化モーメントが回復される。
【0020】
つぎに、図8(a)に示すように、イメージングパルスシーケンスISを実施する。
【0021】
ここでは、図8(b)に示すように、脂肪の磁化モーメントが回復し、その磁化モーメントが0になる時点まで待機した後に、イメージングパルスシーケンスISの実施を開始する。
【0022】
そして、このようにすることによって、イメージングパルスシーケンスISの実施にて収集した磁気共鳴信号を用いて、脂肪抑制がなされ、かつ、T2強調がなされた磁気共鳴画像を生成することができる。
【0023】
しかしながら、上述したように磁化モーメントが0になった時点において、イメージングパルスシーケンスISの実施を開始するためには、化学飽和パルスCSのフリップアングルと、化学飽和パルスCSを送信後にイメージングパルスシーケンスISを実施するまで待機するプリパレーション時間を調整する必要がある。脂肪からの磁気共鳴信号が、T2プリパレーションパルスPRによる影響を受けないようにするためである。
【0024】
このため、上記の場合には、調整が必要であるために、スキャンを効率的に実施することが困難な場合があり、診断効率を向上させることが容易ではなかった。
【0025】
また、この他に、図8(c)に示すように、静磁場が不均一な非理想状態である場合においては、静磁場が均一な理想状態である場合と異なり、静磁場が不均一なことに起因して、化学飽和パルスCSを送信した際に脂肪の磁化モーメントの正負が反転されない場合がある。たとえば、上記のように、フリップアングルが120°である化学飽和パルスCSを送信したとしても、静磁場が不均一なことに起因して、120°ではなく、たとえば、90°程度しか、フリップされない場合には、図8(c)に示すように、化学飽和パルスCSを送信後において、脂肪の磁化モーメントが、理想状態の場合と異なる値(たとえば、0)になってしまう。
【0026】
このため、図8(c)に示すように、その後、キラー勾配パルスGkcを送信し、プリパレーション時間を経過させ、脂肪の磁化モーメントが回復された際には、磁化モーメントが0でなく、所定の値を有する場合がある。
【0027】
よって、静磁場が不均一な非理想状態である場合においては、脂肪などの飽和対象の組織からの磁気共鳴信号を効果的に抑制できない場合があり、磁気共鳴画像にアーチファクトが発生する場合があった。すなわち、理想的な状態を想定し、理論的に最適なフリップアングルやプリパレーション時間を設定した場合であっても、化学飽和パルスCSが静磁場の不均一性に影響を受け易いために、脂肪を適正に飽和させることができない場合があった。
【0028】
また、静磁場の不均一性に化学飽和パルスが影響を受けにくくするために、フリップアングルを180°に設定した場合には、プリパレーション時間を延長する必要があり、これに起因してT1回復が生ずるために、T2プリパレーションパルスを送信する効果が十分で無くなる場合があった。
【0029】
また、たとえば、心拍同期にてスキャンを実施する場合には、脂肪が完全にT1回復していない状態にてT2プリパレーションパルスを送信する必要がある場合があり、このような場合には、最適なフリップアングルやプリパレーション時間を理論式に基づいて設定することが困難な場合があった。
【0030】
このため、これらに起因して、診断効率を向上させることが容易でなく、また、画像品質を向上させることが困難な場合があった。
【0031】
したがって、本発明は、静磁場の不均一性に影響を受けにくく、診断効率を向上可能であって、画像品質を向上可能な磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴画像生成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、静磁場空間において被検体から磁気共鳴信号を収集するように、前記被検体についてスキャンを実施する磁気共鳴イメージング装置であって、前記静磁場空間においてプリパレーションパルスを送信するプリパレーションパルスシーケンスを実施後に、前記被検体から磁気共鳴信号を収集するイメージングパルスシーケンスを実施することによって前記スキャンを実施するスキャン部を含み、前記スキャン部は、前記プリパレーションパルスシーケンスを実施する際には、第1の化学飽和パルスと、T2プリパレーションパルスと、反転パルスである第2の化学飽和パルスとを順次送信することによって前記被検体のスピンを励起すると共に、前記第1の化学飽和パルスを送信後であって前記T2プリパレーションパルスを送信する前には、第1のキラー勾配パルスを送信し、前記T2プリパレーションパルスを送信後であって前記第2の化学飽和パルスを送信する前には、第2のキラー勾配パルスを送信し、前記第2の化学飽和パルスを送信後であって前記イメージングパルスシーケンスを実施する前には、第3のキラー勾配パルスを送信する。
【0033】
好適には、前記スキャン部は、フリップアングルが90°の絶対値になるように、前記第1の化学飽和パルスを送信し、フリップアングルが180°の絶対値になるように、前記第2の化学飽和パルスを送信する。
【0034】
好適には、前記スキャン部は、前記第1のキラー勾配パルスと前記第2のキラー勾配パルスと前記第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、互いに異なる大きさになるように、送信する。
【0035】
好適には、前記スキャン部は、前記第1のキラー勾配パルスと前記第2のキラー勾配パルスと前記第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、互いが異なる軸方向になるように送信する。
【0036】
好適には、前記スキャン部は、前記被検体に含まれる水と脂肪とにおいて当該脂肪にて生ずる磁気共鳴信号が当該水にて生ずる磁気共鳴信号よりも抑制されるように、前記第1の化学飽和パルスと前記第2の化学飽和パルスを送信する。
【0037】
好適には、前記スキャン部は、前記T2プリパレーションパルスとして、90°RFパルスと、第1の180°RFパルスと、第2の180°RFパルスと、第1の−180°RFパルスと、第2の−180°RFパルスと、−90°RFパルスとのそれぞれを、順次、送信する。
【0038】
好適には、前記スキャン部は、第1の180°RFパルスと第2の180°RFパルスと第1の−180°RFパルスと第2の−180°RFパルスとのそれぞれの位相が、前記90°RFパルスと前記−90°RFパルスの位相に対して直交するように前記T2プリパレーションパルスを送信する。
【0039】
好適には、前記スキャン部は、前記90°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第1の180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第1の時間間隔に対して、前記第1の180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第2の180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第2の時間間隔が2倍であり、前記第2の180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第1の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第3の時間間隔が2倍であり、前記第1の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第2の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第4の時間間隔が2倍であり、前記第2の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記−90°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第5の時間間隔が同じになるように、前記T2プリパレーションパルスを送信する。
【0040】
好適には、前記スキャン部は、前記90°RFパルスと、前記第1の180°RFパルスと、前記第2の180°RFパルスと、前記第1の−180°RFパルスと、前記第2の−180°RFパルスと、前記−90°RFパルスとのそれぞれを、矩形パルスとして送信する。
【0041】
好適には、前記スキャン部は、前記イメージングパルスシーケンスとして、前記被検体におけるスピンの縦磁化と横磁化とが定常状態になるような繰り返し時間にてRFパルスを繰り返し送信すると共に、当該RFパルスにより励起された前記被検体のスライスを選択するスライス選択勾配パルスと、当該RFパルスにより励起された前記スライスにおいて発生する磁気共鳴信号を位相エンコードする位相エンコード勾配パルスと、前記RFパルスにより励起された前記スライスにおいて発生する磁気共鳴信号を周波数エンコードする周波数エンコード勾配パルスとを、前記繰り返し時間内において時間積分値がゼロになるように送信する。
【0042】
好適には、前記第1のキラー勾配パルスと前記第2のキラー勾配パルスと前記第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、互いに異なる大きさになるように送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施されている。
【0043】
好適には、前記第1のキラー勾配パルスと前記第2のキラー勾配パルスと前記第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、互いが異なる軸方向になるように送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施されている。
【0044】
また、本発明は、静磁場空間において被検体について実施されたスキャンによって前記被検体から収集された磁気共鳴信号に基づいて、前記被検体の磁気共鳴画像を生成する磁気共鳴画像生成方法であって、前記スキャンは、前記静磁場空間においてプリパレーションパルスを送信するプリパレーションパルスシーケンスを実施後に、前記被検体から磁気共鳴信号を収集するイメージングパルスシーケンスを実施することによって実施されており、前記プリパレーションパルスシーケンスは、第1の化学飽和パルスと、T2プリパレーションパルスと、反転パルスである第2の化学飽和パルスとを順次送信することによって前記被検体のスピンを励起すると共に、前記第1の化学飽和パルスを送信後であって前記T2プリパレーションパルスを送信する前には、第1のキラー勾配パルスを送信し、前記T2プリパレーションパルスを送信後であって前記第2の化学飽和パルスを送信する前には、第2のキラー勾配パルスを送信し、前記第2の化学飽和パルスを送信後であって前記イメージングパルスシーケンスを実施する前には、第3のキラー勾配パルスを送信することによって、実施される。
【0045】
好適には、フリップアングルが90°の絶対値になるように、前記第1の化学飽和パルスを送信し、フリップアングルが180°の絶対値になるように、前記第2の化学飽和パルスを送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される。
【0046】
好適には、前記被検体に含まれる水と脂肪とにおいて当該脂肪にて生ずる磁気共鳴信号が当該水にて生ずる磁気共鳴信号よりも抑制されるように、前記第1の化学飽和パルスと前記第2の化学飽和パルスを送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される。
【0047】
好適には、前記T2プリパレーションパルスとして、90°RFパルスと、第1の180°RFパルスと、第2の180°RFパルスと、第1の−180°RFパルスと、第2の−180°RFパルスと、−90°RFパルスとのそれぞれを、順次、送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される。
【0048】
好適には、第1の180°RFパルスと第2の180°RFパルスと第1の−180°RFパルスと第2の−180°RFパルスとのそれぞれの位相が、前記90°RFパルスと前記−90°RFパルスの位相に対して直交するように前記T2プリパレーションパルスを送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される。
【0049】
好適には、前記90°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第1の180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第1の時間間隔に対して、前記第1の180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第2の180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第2の時間間隔が2倍であり、前記第2の180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第1の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第3の時間間隔が2倍であり、前記第1の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第2の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第4の時間間隔が2倍であり、前記第2の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記−90°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第5の時間間隔が同じになるように、前記T2プリパレーションパルスを送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される。
【0050】
好適には、前記90°RFパルスと、前記第1の180°RFパルスと、前記第2の180°RFパルスと、前記第1の−180°RFパルスと、前記第2の−180°RFパルスと、前記−90°RFパルスとのそれぞれを、矩形パルスとして送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される。
【0051】
好適には、前記被検体におけるスピンの縦磁化と横磁化とが定常状態になるような繰り返し時間にてRFパルスを繰り返し送信すると共に、当該RFパルスにより励起された前記被検体のスライスを選択するスライス選択勾配パルスと、当該RFパルスにより励起された前記スライスにおいて発生する磁気共鳴信号を位相エンコードする位相エンコード勾配パルスと、前記RFパルスにより励起された前記スライスにおいて発生する磁気共鳴信号を周波数エンコードする周波数エンコード勾配パルスとを、前記繰り返し時間内において時間積分値がゼロになるように送信することによって、前記イメージングパルスシーケンスが実施される。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、診断効率を向上可能であって、画像品質を向上可能な磁気共鳴イメージング装置および磁気共鳴画像生成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
(装置構成)
図1は、本発明にかかる実施形態において、磁気共鳴イメージング装置1の構成を示す構成図である。
【0054】
図1に示すように、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、スキャン部2と、操作コンソール部3とを有しており、被検体SUについてスキャンを実施した後に、そのスキャンの実施によって得られた磁気共鳴信号をローデータとして、被検体SUについて磁気共鳴画像を生成する。
【0055】
ここで、スキャン部2は、図1に示すように、静磁場マグネット部12と、勾配コイル部13と、RFコイル部14と、被検体移動部15と、RF駆動部22と、勾配駆動部23と、データ収集部24とを有している。そして、操作コンソール部3は、図1に示すように、制御部30と、画像再構成部31と、操作部32と、表示部33と、記憶部34とを有する。なお、図1において、静磁場マグネット部12および勾配コイル部13に対応する部分については、y方向に沿った面にて切断した面を示している。
【0056】
スキャン部2について説明する。
【0057】
スキャン部2は、図1に示すように、静磁場が形成される撮像空間Bを含み、その撮像空間Bにおいて被検体SUを収容する。スキャン部2は、たとえば、円筒形状になるように形成されており、その中心部分の円柱状の空間を撮像空間Bとして、被検体SUを収容する。そして、スキャン部2は、その被検体SUを収容した撮像空間Bにおいて、被検体SUのスピンを励起するように、RFパルスを送信すると共に、勾配パルスを送信することによってイメージングパルスシーケンスISを実施し、その被検体SUにおいて発生する磁気共鳴信号を収集する。
【0058】
本実施形態においては、スキャン部2は、このイメージングパルスシーケンスISの実施前に、撮像空間Bにおいてプリパレーションパルスを送信するプリパレーションパルスシーケンスPSを実施する。
【0059】
詳細については後述するが、スキャン部2は、このプリパレーションパルスシーケンスPSを実施する際には、第1の化学飽和パルスと、T2プリパレーションパルスと、反転パルスである第2の化学飽和パルスとを順次送信することによって、被検体SUのスピンを励起する。そして、これと共に、第1の化学飽和パルスを送信後であってT2プリパレーションパルスを送信する前には、第1のキラー勾配パルスを送信する。また、T2プリパレーションパルスを送信後であって第2の化学飽和パルスを送信する前には、第2のキラー勾配パルスを送信する。そして、第2の化学飽和パルスを送信後であってイメージングパルスシーケンスISを実施する前には、第3のキラー勾配パルスを送信する。ここでは、スキャン部2は、第1のキラー勾配パルスと第2のキラー勾配パルスと第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、大きさと軸方向との少なくとも一方が互いに異なるになるように送信する。
【0060】
その後、スキャン部2は、たとえば、FIESTA,True FISP,Balanced TFEなどと称されるSSFP(Steady State Free Precession)型のイメージング方法で、イメージングパルスシーケンスISを実行する。
【0061】
スキャン部2を構成する各部について、順次、説明する。
【0062】
静磁場マグネット部12は、たとえば、水平磁場型であって、被検体SUが収容される撮像空間Bにおいて載置される被検体SUの体軸方向に沿うように、超伝導磁石(図示なし)が静磁場を形成する。なお、静磁場マグネット部12は、水平磁場型の他に、垂直磁場型であって、一対の永久磁石が対面する方向に沿って静磁場を形成する場合であってもよい。
【0063】
勾配コイル部13は、静磁場が形成された撮像空間Bに勾配パルスを送信し勾配磁場を形成することによって、RFコイル部14が受信する磁気共鳴信号に、空間的な位置情報を付加する。ここでは、勾配コイル部13は、x方向とy方向とz方向との互いに直交する3軸方向に対応して勾配磁場を形成するように、3系統からなる。これらは、制御部30からの制御信号に基づいて、周波数エンコード方向と位相エンコード方向とスライス選択方向とのそれぞれに勾配パルスを送信することによって、勾配磁場を形成する。具体的には、勾配コイル部13は、被検体SUのスライス選択方向に勾配パルスを送信することによって、RFコイル部14がRFパルスを送信し励起させる被検体SUのスライスを選択する。また、勾配コイル部13は、被検体SUの位相エンコード方向に勾配パルスを送信することによって、RFパルスにより励起されたスライスからの磁気共鳴信号を位相エンコードする。そして、勾配コイル部13は、被検体SUの周波数エンコード方向に勾配パルスを送信することによって、RFパルスにより励起されたスライスからの磁気共鳴信号を周波数エンコードする。
【0064】
RFコイル部14は、図1に示すように、被検体SUを囲むように配置される。RFコイル部14は、制御部30からの制御信号に基づいて、電磁波であるRFパルスを、静磁場マグネット部12が静磁場を形成した撮像空間Bに送信し、高周波磁場を形成する。これにより、被検体SUにおけるプロトンのスピンを励起する。そして、RFコイル部14は、その励起されたプロトンのスピンが元の磁化ベクトルへ戻る際に生ずる電磁波を、磁気共鳴信号として受信する。
【0065】
被検体移動部15は、クレードル15aとクレードル移動部15bとを有しており、制御部30からの制御信号に基づいて、撮像空間Bの内部と外部との間において、クレードル15aをクレードル移動部15bが移動させる。ここで、クレードル15aは、被検体SUが載置される載置面を備えたテーブルであり、図1に示すように、クレードル移動部15bによって、水平方向xzと上下方向yとのそれぞれの方向に移動され、静磁場が形成される撮像空間Bに搬出入される。クレードル移動部15bは、クレードル15aを移動させ、外部から撮像空間Bの内部へ収容させる。クレードル移動部15bは、たとえば、ローラー式駆動機構を備えており、アクチュエータによりローラーを駆動させてクレードル15aを水平方向xzに移動する。また、クレードル移動部15bは、たとえば、アーム式駆動機構を備えており、交差した2本のアーム間の角度を可変することにより、クレードル15aを上下方向yに移動する。
【0066】
RF駆動部22は、RFコイル部14を駆動させることによって、撮像空間B内にRFパルスを送信させて高周波磁場を形成する。RF駆動部22は、制御部30からの制御信号に基づいて、ゲート変調器を用いてRF発振器からの信号を所定のタイミングおよび所定の包絡線の信号に変調した後に、そのゲート変調器により変調された信号を、RF電力増幅器によって増幅してRFコイル部14に出力し、RFパルスを送信させる。
【0067】
勾配駆動部23は、制御部30からの制御信号に基づいて、勾配コイル部13を駆動させることによって、静磁場が形成されている撮像空間B内に勾配磁場を発生させる。勾配駆動部23は、3系統の勾配コイル部13に対応して3系統の駆動回路(図示なし)を有する。
【0068】
データ収集部24は、制御部30からの制御信号に基づいて、RFコイル部14が受信する磁気共鳴信号を収集する。ここでは、データ収集部24は、RFコイル部14が受信する磁気共鳴信号をRF駆動部22のRF発振器の出力を参照信号として位相検波器が位相検波する。その後、A/D変換器を用いて、このアナログ信号である磁気共鳴信号をデジタル信号に変換して出力する。
【0069】
操作コンソール部3について説明する。
【0070】
操作コンソール部3は、スキャン部2が被検体についてスキャンを実施するように制御し、そのスキャン部2が実施したスキャンによって得られた磁気共鳴信号に基づいて、被検体の画像を生成すると共に、その生成した画像を表示する。
【0071】
操作コンソール部3を構成する各部について、順次、説明する。
【0072】
制御部30は、コンピュータと、そのコンピュータに所定のデータ処理を実行させるプログラムを記憶するメモリとを有しており、各部を制御する。ここでは、制御部30は、操作部32から操作データが入力され、その操作部32から入力される操作データに基づいて、制御信号を生成する。たとえば、制御部30は、操作データに基づいて、スキャン部2を制御する制御信号を生成する。その後、その生成した制御信号をスキャン部2に出力して、スキャン部2を制御する。すなわち、図1に示すように、RF駆動部22と勾配駆動部23とデータ収集部24とのそれぞれに制御信号を出力し、設定したスキャン条件に対応するように、各部の動作を制御する。そして、これと共に、画像再構成部31と表示部33と記憶部34とへ、制御信号を出力し、制御を行う。
【0073】
画像再構成部31は、コンピュータと、そのコンピュータを用いて所定のデータ処理を実行するプログラムを記憶するメモリとを有しており、制御部30からの制御信号に基づいて、画像再構成処理を実行し、被検体についての画像を再構成する。ここでは、スキャン部2が撮影領域についてスキャンを実施することにより、k空間に対応するように収集した磁気共鳴信号について、フーリエ変換処理を実施することによって、画像再構成処理を実施し、この被検体のスライス画像を再構成する。すなわち、画像再構成部31は、スキャン部2によって収集された磁気共鳴信号を、ローデータとして、スライス画像を生成する。そして、画像再構成部31は、その再構成した画像のデータを、表示部33に出力する。
【0074】
操作部32は、キーボードやポインティングデバイスなどの操作デバイスを含み、オペレータが操作デバイスを用いて複数の入力項目に操作データを入力することにより、各部の動作を操作する。ここでは、操作部32は、いわゆるグラフィカル・ユーザー・インターフェイスであり、表示部33に入力項目を示す画像を表示し、その表示された画像を観察したオペレータによって操作データが入力される。そして、その操作データを、制御部30に出力することによって動作を操作する。具体的には、操作部32は、スキャン部2によって実施されるスキャンのスキャンパラメータを、この入力項目としており、当該スキャンパラメータに対応するように、操作データが入力される。また、操作部32は、スキャン部2によってスキャンが実施される被検体の被検体情報を、入力項目としており、当該被検体情報に対応するように、操作データが入力される。
【0075】
表示部33は、LCD(Liquid Crystal Display)などのモニタを含む表示デバイスによって構成されており、制御部30からの制御信号に基づいて、表示画面に画像を表示する。たとえば、表示部33は、オペレータによって操作部32に操作データが入力される入力項目を示す画像と、その操作データが入力されるダイアログボックス(Dialog box)を示す画像とを、表示画面に複数並べて表示する。具体的には、表示部33は、エコー数,エコー時間,繰り返し時間,バンド幅などのスキャンパラメータと、被検体の氏名や体重などの被検体情報とが入力されるダイアログボックスや、クレードルを移動させる指示やスキャンの開始の指示を入力するボタンなどを表示しており、これらに対応するように各入力項目を文字情報として表示画面に表示する。また、表示部33は、画像再構成部31によって再構成された撮影領域の画像データを受け、表示画面に、その画像を表示する。すなわち、表示部33は、医用画像として再構成された磁気共鳴画像を表示画面に表示する。
【0076】
記憶部34は、メモリなどの記憶デバイスによって構成されており、各種データを記憶している。記憶部34は、その記憶されたデータが必要に応じて制御部30によってアクセスされる。
【0077】
(動作)
以下より、上記の本発明にかかる実施形態の磁気共鳴イメージング装置1を用いて、被検体SUを撮像する際の動作について説明する。
【0078】
図2は、本発明にかかる実施形態1において、被検体SUを撮像する際の動作を示すフロー図である。
【0079】
まず、図2に示すように、プリパレーションパルスシーケンスPSの実施を行う(S11)。
【0080】
ここでは、プリパレーションパルスシーケンスPSをスキャン部2が実施する。
【0081】
図3は、本発明にかかる実施形態1において、プリパレーションパルスシーケンスPSを示すパルスシーケンス図である。
【0082】
図3において、(a)は、RFパルスRFを送信する時間軸であり、(b)は、勾配パルスとして、キラー勾配パルスGkillを送信する時間軸を示しており、それぞれは、横軸が時間tであって、縦軸がパルス強度を示している。ここでは、Gkillは、スライス選択方向,位相エンコード方向,周波数エンコード方向の少なくとも1つの軸方向である。また、下記において、時間積分値とは、パルス強度と、時間tとによって規定される積分値である。
【0083】
図3(a),(b)に示すように、プリパレーションパルスシーケンスPSを実行する際においては、第1の化学飽和パルスCS1と、T2プリパレーションパルスPRと、反転パルスである第2の化学飽和パルスCS2とを順次送信することによって被検体SUのスピンを励起する。そして、これと共に、第1の化学飽和パルスCS1を送信後であってT2プリパレーションパルスPRを送信する前には、第1のキラー勾配パルスGk1を送信し、T2プリパレーションパルスPRを送信後であって第2の化学飽和パルスCS2を送信する前には、第2のキラー勾配パルスGk2を送信し、第2の化学飽和パルスCS2を送信後であって、後述するイメージングパルスシーケンスISを実施する前には、第3のキラー勾配パルスGk3を送信する。
【0084】
具体的には、図3に示すように、まず、第1の化学飽和パルスCS1を送信する。
【0085】
ここでは、この第1の化学飽和パルスCS1を第1の時点t1と第2の時点t2との間に送信する。たとえば、フリップアングルが90°の絶対値であって、第1の時点t1と第2の時点t2との間の時間が、8msecになるように送信する。本実施形態においては、被検体SUに含まれる水と脂肪とにおいて当該脂肪にて生ずる磁気共鳴信号が当該水にて生ずる磁気共鳴信号よりも抑制されるように、第1の化学飽和パルスCS1を送信する。すなわち、周波数選択性のRFパルスを送信し、脂肪を飽和させる。
【0086】
つぎに、図3に示すように、第1のキラー勾配パルスGk1を送信する。
【0087】
ここでは、スピンの横磁化を消失させる勾配磁場を発生するように、この第1のキラー勾配パルスGk1を、第2の時点t2と第3の時点t3との間に送信する。たとえば、第2の時点t2と第3の時点t3との間の時間が、5msecになるように送信する。
【0088】
つぎに、図3に示すように、T2プリパレーションパルスPRを送信する。
【0089】
ここでは、MLEV−4法に対応するように、T2プリパレーションパルスPRを送信する。具体的には、T2プリパレーションパルスPRとして、90°RFパルスPR11と、第1の180°RFパルスPR21と、第2の180°RFパルスPR22と、第1の−180°RFパルスPR31と、第2の−180°RFパルスPR32と、−90°RFパルスPR41とのそれぞれを、順次、50msecの印加時間(TE:エコー時間とも呼ばれる)の間に送信する。本実施形態においては、90°RFパルスPR11と、第1の180°RFパルスPR21と、第2の180°RFパルスPR22と、第1の−180°RFパルスPR31と、第2の−180°RFパルスPR32と、−90°RFパルスPR41とのそれぞれを、矩形パルスとして送信する。
【0090】
また、ここでは、第1の180°RFパルスPR21と第2の180°RFパルスPR22と第1の−180°RFパルスPR31と第2の−180°RFパルスPR32とのそれぞれの位相が、90°RFパルスPR11と−90°RFパルスPR41の位相に対して直交するように、このT2プリパレーションパルスPRを送信する。
【0091】
そして、90°RFパルスPR11と、第1の180°RFパルスPR21と、第2の180°RFパルスPR22と、第1の−180°RFパルスPR31と、第2の−180°RFパルスPR32と、−90°RFパルスPR41とのそれぞれを、順次、送信する時間間隔が、1:2:2:2:1になるように、T2プリパレーションパルスPRを送信する。
【0092】
すなわち、T2プリパレーションパルスPRを送信する際には、図3に示すように、まず、位相がx方向であって、90°のフリップアングルにてスピンをフリップするように、90°RFパルスPR11を送信する。
【0093】
ここでは、第1のキラー勾配パルスGk1の送信を終了した第3の時点t3から、所定間隔を隔てた第4の時点t4の間に、この90°RFパルスPR11を送信する。
【0094】
これにより、静磁場が形成されたz方向と、そのz方向に直交するy方向とを含むyz面に沿って、被検体のスピンが90°のフリップアングルでフリップされる。つまり、x方向を中心軸として被検体のスピンを90°回転させる。
【0095】
つぎに、図3に示すように、位相がx方向に直交するy方向であって、180°のフリップアングルにてスピンをフリップするように、第1の180°RFパルスPR21を送信する。
【0096】
ここでは、90°RFパルスPR11の送信を終了した第4の時点t4から所定の間隔を隔てた第5の時点t5から、この第1の180°RFパルスPR21の送信を開始し、その第5の時点t5から所定の間隔を隔てた第6の時点t6までの間において、この第1の180°RFパルスPR21を送信する。
【0097】
つぎに、図3に示すように、位相がy方向であって、180°のフリップアングルにてスピンをフリップするように、第2の180°RFパルスPR22を送信する。
【0098】
ここでは、第1の180°RFパルスPR21の送信を終了した第6の時点t6から所定の間隔を隔てた第7の時点t7から、この第2の180°RFパルスPR22の送信を開始し、その第7の時点t7から所定の間隔を隔てた第8の時点t8までの間において、この第2の180°RFパルスPR22を送信する。
【0099】
具体的には、図3に示すように、90°RFパルスPR11を送信する時間(t3〜t4)の中心時点tr11と、第1の180°RFパルスPR21を送信する時間(t5〜t6)の中心時点tr21との間の第1の時間間隔τ1に対して、第1の180°RFパルスPR21を送信する時間(t5〜t6)の中心時点tr21と第2の180°RFパルスPR22を送信する時間(t7〜t8)の中心時点tr22との間の第2の時間間隔τ2が2倍になるように、第2の180°RFパルスPR22を送信する。
【0100】
つぎに、図3に示すように、位相がy方向であって、−180°のフリップアングルにてスピンをフリップするように、第1の−180°RFパルスPR31を送信する。
【0101】
ここでは、第2の180°RFパルスPR22の送信を終了した第8の時点t8から所定の間隔を隔てた第9の時点t9から、この第1の−180°RFパルスPR31の送信を開始し、その第9の時点t9から所定の間隔を隔てた第10の時点t10までの間において、この第1の−180°RFパルスPR31を送信する。
【0102】
具体的には、図3に示すように、90°RFパルスPR11を送信する時間(t3〜t4)の中心時点tr11と、第1の180°RFパルスPR21を送信する時間(t5〜t6)の中心時点tr21との間の第1の時間間隔τ1に対して、第2の180°RFパルスPR22を送信する時間(t7〜t8)の中心時点tr22と第1の−180°RFパルスPR31を送信する時間(t9〜t10)の中心時点tr31との間の第3の時間間隔τ3が2倍になるように、第1の−180°RFパルスPR31を送信する。
【0103】
つぎに、図3に示すように、位相がy方向であって、−180°のフリップアングルにてスピンをフリップするように、第2の−180°RFパルスPR32を送信する。
【0104】
ここでは、第1の−180°RFパルスPR31の送信を終了した第10の時点t10から所定の間隔を隔てた第11の時点t11から、この第2の−180°RFパルスPR32の送信を開始し、その第11の時点t11から所定の間隔を隔てた第12の時点t12までの間において、この第2の−180°RFパルスPR32を送信する。
【0105】
具体的には、図3に示すように、90°RFパルスPR11を送信する時間(t3〜t4)の中心時点tr11と、第1の180°RFパルスPR21を送信する時間(t5〜t6)の中心時点tr21との間の第1の時間間隔τ1に対して、第1の−180°RFパルスPR31を送信する時間(t9〜t10)の中心時点tr31と、第2の−180°RFパルスPR32を送信する時間(t11〜t12)の中心時点tr32との間の第4の時間間隔τ4が2倍になるように、第2の−180°RFパルスPR32を送信する。
【0106】
つぎに、図3に示すように、位相がx方向であって、−90°のフリップアングルにてスピンをフリップするように、−90°RFパルスPR41を送信する。
【0107】
ここでは、第2の−180°RFパルスPR32の送信を終了した第12の時点t12から所定の間隔を隔てた第13の時点t13から、この−90°RFパルスPR41の送信を開始し、その第13の時点t13から所定の間隔を隔てた第14の時点t14までの間において、この−90°RFパルスPR41を送信する。
【0108】
具体的には、図3に示すように、90°RFパルスPR11を送信する時間(t3〜t4)の中心時点tr11と、第1の180°RFパルスPR21を送信する時間(t5〜t6)の中心時点tr21との間の第1の時間間隔τ1に対して、第2の−180°RFパルスPR32を送信する時間(t11〜t12)の中心時点tr32と、−90°RFパルスPR41を送信する時間(t13〜t14)の中心時点tr41との間の第5の時間間隔τ5が同じになるように、−90°RFパルスPR41を送信する。
【0109】
このように、T2プリパレーションパルスPRを送信することによって、被検体においてT2が異なる複数の組織の間にて、T2が長い組織の磁化モーメントを、T2が短い組織の磁化モーメントよりも大きな状態にする。
【0110】
つぎに、図3に示すように、第2のキラー勾配パルスGk2を送信する。
【0111】
ここでは、スピンの横磁化を消失させる勾配磁場を発生するように、この第2のキラー勾配パルスGk2を、T2プリパレーションパルスPRの送信を完了した第14の時点t14から、所定間隔を隔てた第15の時点t15までの間に送信する。たとえば、第14の時点t14と第15の時点t15との間の時間が、5msecになるように送信する。本実施形態においては、第1のキラー勾配パルスGk1と同じ軸方向であって、第1のキラー勾配パルスGk1の大きさに対して、第2のキラー勾配パルスGk2の大きさが異なるように、送信する。つまり、第1のキラー勾配パルスGk1を送信する際に、そのパルス幅とパルス強度によって算出される時間積分値に対して、第2のキラー勾配パルスGk2を送信する時間積分値が異なるように送信する。なお、第1のキラー勾配パルスGk1と異なる軸方向に、第2のキラー勾配パルスGk2を送信してもよい。
【0112】
つぎに、図3に示すように、第2の化学飽和パルスCS2を送信する。
【0113】
ここでは、この第2の化学飽和パルスCS2を、第2のキラー勾配パルスGk2の送信を完了した第15の時点t15から、所定の間隔を隔てた第16の時点t16までの間に、反転パルスとして送信する。具体的には、フリップアングルが180°の絶対値であって、第15の時点t15と第16の時点t16との間の時間が、8msecになるように送信し、磁化モーメントの正負を反転させる。また、本実施形態においては、被検体SUに含まれる水と脂肪とにおいて、その脂肪にて生ずる磁気共鳴信号がその水にて生ずる磁気共鳴信号よりも抑制されるように、第2の化学飽和パルスCS2を送信する。すなわち、周波数選択性のRFパルスを送信し、脂肪を飽和させる。
【0114】
つぎに、図3に示すように、第3のキラー勾配パルスGk3を送信する。
【0115】
ここでは、スピンの横磁化を消失させる勾配磁場を発生するように、この第3のキラー勾配パルスGk3を、第2の化学飽和パルスCS2の送信を完了した第16の時点t16から、所定間隔を隔てた第17の時点t17までの間に送信する。本実施形態においては、第2のキラー勾配パルスGk2と第3のキラー勾配パルスGk3とのそれぞれを、互いのパルス幅が同じになるように送信する。たとえば、第16の時点t16と第17の時点t17との間の時間が、5msecになるように送信する。また、本実施形態においては、第1のキラー勾配パルスGk1と第2のキラー勾配パルスGk2と第3のキラー勾配パルスGk3とのそれぞれが互いに異なる大きさになるように送信する。すなわち、第1のキラー勾配パルスGk1および第2のキラー勾配パルスGk2を送信する時間積分値に対して、第3のキラー勾配パルスGk3を送信する時間積分値が異なるように送信する。具体的には、図3に示すように、第1のキラー勾配パルスGk1および第2のキラー勾配パルスGk2のパルス幅と同じパルス幅になるように、第3のキラー勾配パルスGk3を送信する際には、第3のキラー勾配パルスGk3のパルス強度が、第1のキラー勾配パルスGk1および第2のキラー勾配パルスGk2のパルス強度と異なるように、送信する。このように、第1のキラー勾配パルスGk1と、第2のキラー勾配パルスGk2と、第3のキラー勾配パルスGk3とのそれぞれを送信する際の時間積分値が互いに異なるように送信することにより、スピンエコーやスティミュレッドエコーが想定外に発生することを防止することができる。なお、第1のキラー勾配パルスGk1と第2のキラー勾配パルスGk2と第3のキラー勾配パルスGk3とのそれぞれを、互いが同じ大きさになるように送信する場合であっても、その第1のキラー勾配パルスGk1と第2のキラー勾配パルスGk2と第3のキラー勾配パルスGk3とのそれぞれを、互いが異なる軸方向になるように送信することによって、上記と同様な効果を得ることができる。
【0116】
上記のようにして、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施した後においては、図2に示すように、イメージングパルスシーケンスISの実施を行う(S21)。
【0117】
ここでは、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施し、所定のプリパレーション時間を待機した後に、スキャン部2がイメージングパルスシーケンスISを実行する。本実施形態においては、SSFP型のイメージング方法によって、イメージングパルスシーケンスISを実施し、被検体から磁気共鳴信号を収集する。
【0118】
図4は、本発明にかかる実施形態において実施するイメージングパルスシーケンスISを示すパルスシーケンス図である。
【0119】
図4において、RFは、RFパルスを送信する時間軸であり、Gsliceは、スライス選択エンコード方向に勾配パルスを送信する時間軸であり、Greadは、リードアウト方向に勾配パルスを送信する時間軸を示しており、Gwarpは、位相エンコード方向に勾配パルスを送信する時間軸を示しており、それぞれは、横軸が時間tであり、縦軸がパルス強度を示している。
【0120】
図4に示すように、イメージングパルスシーケンスISを実施する際においては、RFパルスRFを被検体SUに繰返し送信する。ここでは、被検体SUにおいてスピンの縦磁化と横磁化とが定常状態になるような繰り返し時間TRで、スキャン部2が各RFパルスRFを送信する。
【0121】
そして、これと共に、そのRFパルスRFにより励起された被検体SUのスライスをイメージング領域として選択するスライス選択勾配パルスGsと、そのRFパルスにより励起されたスライスにおいて発生する磁気共鳴信号を位相エンコードする位相エンコード勾配パルスGpと、そのRFパルスにより励起されたスライスにおいて発生する磁気共鳴信号を周波数エンコードする周波数エンコード勾配パルスGrとを、繰り返し時間TR内に送信する。ここでは、繰り返し時間TR内における時間積分値がゼロになるように、スライス選択勾配パルスと位相エンコード勾配パルスと周波数エンコード勾配パルスとを、被検体SUに送信する。つまり、図4に示すように、磁気共鳴信号をイメージングデータとして収集後に、繰返し時間TR内において横磁化をリワインドし、勾配磁場によりエンコードされた位相をリセットする。
【0122】
つぎに、図2に示すように、k空間に対応する全てのイメージングデータを収集したか否かを判断する(S22)。
【0123】
ここでは、k空間に対応する全てのイメージングデータを収集したか否かを、制御部30が判断する。
【0124】
そして、k空間に対応する全てのイメージングデータを収集していない場合(No)には、図2に示すように、プリパレーションパルスシーケンスPSの実施(S11)と、イメージングパルスシーケンスISの実施(S21)とを、再度、順次実施する。つまり、プリパレーションパルスシーケンスPSの実施(S11)と、イメージングパルスシーケンスISの実施(S21)とを繰返し実施することにより、k空間の全てを埋めるまでイメージングデータを収集する。
【0125】
一方、k空間に対応するように全てのイメージングデータを収集した場合(Yes)には、図2に示すように、画像の生成を行う(S31)。
【0126】
ここでは、スキャン部2がイメージングパルスシーケンスISを実行することによって得られたイメージングデータをローデータとし、画像再構成部31が被検体SUについての画像を再構成する。
【0127】
つぎに、図2に示すように、画像の表示を行う(S41)。
【0128】
ここでは、被検体SUの画像についてのデータを表示部33が画像再構成部31から受け、その画像を表示画面に表示する。
【0129】
以上のように、本実施形態において、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施する際には、第1の化学飽和パルスCS1と、T2プリパレーションパルスPRと、反転パルスである第2の化学飽和パルスCS2とを順次送信することによって被検体SUのスピンを励起する。そして、これと共に、第1の化学飽和パルスCS1を送信後であってT2プリパレーションパルスPRを送信する前には、第1のキラー勾配パルスGk1を送信し、T2プリパレーションパルスPRを送信後であって第2の化学飽和パルスCS2を送信する前には、第2のキラー勾配パルスGk2を送信し、第2の化学飽和パルスCS2を送信後であってイメージングパルスシーケンスISを実施する前には、第3のキラー勾配パルスGk3を送信する。ここでは、被検体SUに含まれる水と脂肪とにおいて当該脂肪にて生ずる磁気共鳴信号が当該水にて生ずる磁気共鳴信号よりも選択的に抑制されるように、第1の化学飽和パルスCS1と第2の化学飽和パルスCS2を送信する。また、フリップアングルが90°の絶対値になるように、第1の化学飽和パルスCS1を送信し、フリップアングルが180°の絶対値になるように、第2の化学飽和パルスCS2を送信する。さらに、第2のキラー勾配パルスGk2と第3のキラー勾配パルスGk3とのそれぞれを、互いのパルス幅が同じになるように送信し、クラッシャー勾配パルスとして機能させる。このようにすることによって、静磁場の不均一性に影響を受けずに、脂肪抑制がなされ、かつ、T2強調がなされた磁気共鳴画像を生成することができる。
【0130】
上記のようにして、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施した際の脂肪の磁化モーメントの挙動について説明する。
【0131】
図5は、本発明にかかる実施形態において、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施した際の脂肪の磁化モーメントの挙動を示す図である。
【0132】
図5において、(a)は、パルスシーケンス図であり、横軸が時間であって、縦軸が、パルス強度である。そして、「RF」は、RFパルスを送信する時間軸を示し、「GKill」は、キラー勾配パルスを送信する時間軸を示している。この(a)は、上記の図3および図4に示したパルスシーケンスを模式的に示している。
【0133】
また、図5において、(b)と(c)とのそれぞれは、(a)に示したパルスシーケンスを実施した際における、脂肪の磁化モーメントの挙動を示す図であり、横軸が時間であって、縦軸が磁化モーメントである。ここで、(b)は、静磁場が均一な理想状態である場合を示しており、一方、(c)は、静磁場が不均一な非理想状態である場合を示している。
【0134】
まず、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施する際においては、図5(a)に示すように、フリップアングルが90°である第1の化学飽和パルスCS1を送信するが、ここで、静磁場が均一な理想状態である場合には、図5(b)に示すように、脂肪の磁化モーメントが0になる。一方で、静磁場が不均一な非理想状態である場合には、図5(c)に示すように、脂肪の磁化モーメントは、90°のフリップアングルでフリップされずに、たとえば、60°のフリップアングルでフリップされるため、所定の値を有する。
【0135】
つぎに、図5(a)に示すように、第1のキラー勾配パルスGk1を送信したときには、前述したように、スピンの横磁化が消失されるが、これと共に、図5(b),(c)に示すように、時間の経過に応じて、脂肪の磁化モーメントが回復される。
【0136】
つぎに、図5(a)に示すように、T2プリパレーションパルスPRを送信したときには、図5(b),(c)に示すように、脂肪の磁化モーメントが減衰する。
【0137】
つぎに、図5(a)に示すように、第2のキラー勾配パルスGk2を送信したときには、前述したように、スピンの横磁化が消失されるが、これと共に、図5(b),(c)に示すように、時間の経過に応じて、脂肪の磁化モーメントが回復される。
【0138】
つぎに、図5(a)に示すように、フリップアングルが180°である第2の化学飽和パルスCS2を送信した際において、静磁場が均一な理想状態である場合には、図5(b)に示すように、脂肪の縦磁化が180°のフリップアングルでフリップされるため、脂肪の磁化モーメントが所定値になる。一方で、静磁場が不均一な非理想状態である場合には、図5(c)に示すように、脂肪の縦磁化が、180°ではなく、たとえば、120°のフリップアングルでフリップされるため、脂肪の磁化モーメントが、理想状態である場合と同様な所定値になる。
【0139】
つぎに、図5(a)に示すように、第2のキラー勾配パルスGk2を送信したときには、前述したように、化学飽和パルスRCの送信にて生じたスピンの横磁化が消失されるが、これと共に、図5(b),(c)に示すように、時間の経過に応じて、脂肪の磁化モーメントが回復される。
【0140】
上記に示したことから判るように、本実施形態においては、静磁場が均一な理想状態な場合と、静磁場が不均一な非理想状態である場合との両者にて、同様な挙動で磁化モーメントが回復される。このため、図5(a)に示すように、その後に、イメージングパルスシーケンスISを実施した際には、静磁場が均一な理想状態な場合と、静磁場が不均一な非理想状態である場合との両者において、適正に、脂肪抑制が施され、かつ、T2強調が施された磁気共鳴画像を生成することができる。
【0141】
図6は、本発明にかかる実施形態において、脂肪抑制の帯域幅を示す図である。
【0142】
図6において、(a)は、従来例の場合についてシミュレーションを実施した結果を示しており、(b)は、本実施形態の場合についてシミュレーションを実施した結果を示している。具体的には、本実施形態のプリパレーションパルスシーケンスPSにおいて、第1の化学飽和パルスCS1を送信せず、第2の化学飽和パルスCS2のフリップアングルを90°にした点を除き、同様なプリパレーションパルスシーケンスを実施した場合を、従来例とした。また、ここでは、(c)に示すように、化学飽和パルスの形状を、フェルミ(fermi)関数形状とし、オフセット周波数を−220Hz,フェルミ半径を110Hz、フェルミ幅を20Hz、フリップアングルを90°として、シミュレーションを実施して、本結果を得た。
【0143】
図6に示すように、(a)に示す従来例の場合の半値幅に対して、(b)に示す本実施形態の場合の半値幅は、広い。このため、本実施形態は、静磁場の不均一性に影響を受け難いことがわかる。
【0144】
図7は、本発明にかかる実施形態において、画像再構成された画像を示す図である。図7において(a)は、従来例の場合であり、(b)は、本実施形態の場合である。
【0145】
図7(a)に示すように、従来例の場合においては、静磁場が不均一な端部において、体表における脂肪からの磁気共鳴信号が抑制されていない部分を含み(矢印部分)、アーチファクトが発生している。これに対して、図7(b)に示すように、本実施形態の場合においては、静磁場が不均一な端部において、体表における脂肪からの磁気共鳴信号が抑制されており(実線の矢印部分)、かつ、骨における脂肪信号についても抑制されており(破線の矢印部分)、アーチファクトの発生が防止されている。
【0146】
また、本実施形態においては、上述したように、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施した後においては、静磁場が均一な理想状態な場合と、静磁場が不均一な非理想状態である場合との両者の間にて磁化モーメントが同様な値になる。このため、第1の化学飽和パルスCS1と第2の化学飽和パルスCS2とのフリップアングルと、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施した後にイメージングパルスシーケンスISを実施するまで待機するプリパレーション時間とを、静磁場が理想状態であることを前提にして算出し設定を行うことによって、フリップアングルとプリパレーション時間とを厳密に調整しなくとも、脂肪からの磁気共鳴信号を効果的に抑制できる。つまり、一連のRFパルスを印加する前の脂肪の縦磁化の大きさに依存せずに、脂肪信号を抑制することができる。特に、腹部についてT2プリパレーションパルスPRを用いてSSFP法にて脂肪信号を抑制し、イメージングを実施する際においては、脂肪信号を効果的に抑制できるため、画像診断上、有用である。
【0147】
したがって、本実施形態は、静磁場の不均一性に影響を受けにくいために、脂肪信号を効果的に抑制でき、アーチファクトの発生を抑制できる。このため、診断効率を向上させることができ、また、画像品質を向上させることができる。
【0148】
なお、上記の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、本発明の磁気共鳴イメージング装置に相当する。また、上記の実施形態のスキャン部2は、本発明のスキャン部に相当する。また、上記の実施形態の画像再構成部31は、本発明の画像再構成部に相当する。また、上記の実施形態の表示部33は、本発明の表示部に相当する。
【0149】
また、本発明の実施に際しては、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例を採用することができる。
【0150】
たとえば、プリパレーションパルスとしてRFパルスを送信する際においては、上述したフリップアングルの数値に限定されない。具体的には、本実施形態においては、T2プリパレーションパルスPRとして、90°RFパルスPR11と、第1の180°RFパルスPR21と、第2の180°RFパルスPR22と、第1の−180°RFパルスPR31と、第2の−180°RFパルスPR32と、−90°RFパルスPR41とのそれぞれを、順次、送信したが、これに限定されない。
【0151】
また、上記の実施形態においてT2プリパレーションパルスPRを実施する際には、周波数帯域が広く、静磁場不均一に対して効果的な矩形パルスを、RFパルスとして送信する場合について説明しているが、これに限定されない。
【0152】
また、各パルスの時間積分値,位相,送信タイミングについては、任意に設定可能である。たとえば、本実施形態においては、前述したように、第1のキラー勾配パルスGk1を送信する時間積分値と、第2のキラー勾配パルスGk2を送信する時間積分値と、第3のキラー勾配パルスGk3を送信する時間積分値とが異なるように送信することによって、スピンエコーやスティミュレッドエコーによる磁気共鳴信号が想定外に発生することを防止したが、これに限定されない。たとえば、上記と同様な効果を得るために、第1のキラー勾配パルスGk1と、第2のキラー勾配パルスGk2と、第3のキラー勾配パルスGk3とのそれぞれを、x軸,y軸、z軸のそれぞれにおいて、互いに異なる軸になるように、送信してもよい。
【0153】
また、たとえば、イメージングシーケンスについては、SSFP法の他、FSE(Fあst Spin Echo),SE(Spin Echo),GRE(Gradient Recalled Echo),SPGR(Spoiled GRASS)など様々な手法で実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、本発明にかかる実施形態において、磁気共鳴イメージング装置1の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明にかかる実施形態1において、被検体SUを撮像する際の動作を示すフロー図である。
【図3】図3は、本発明にかかる実施形態1において、プリパレーションパルスシーケンスPSを示すパルスシーケンス図である。
【図4】図4は、本発明にかかる実施形態において実施するイメージングパルスシーケンスISを示すパルスシーケンス図である。
【図5】図5は、本発明にかかる実施形態において、プリパレーションパルスシーケンスPSを実施した際の脂肪の磁化モーメントの挙動を示す図である。
【図6】図6は、本発明にかかる実施形態において、脂肪抑制の帯域幅を示す図である。
【図7】図7は、本発明にかかる実施形態において、画像再構成された画像を示す図である。図7において(a)は、従来例の場合であり、(b)は、本実施形態の場合である。
【図8】図8は、T2プリパレーションパルスPRと、脂肪を抑制するための化学飽和パルスCSとの両者を、プリパレーションパルスとして用いたプリパレーションパルスシーケンスPSと、その後に実施するイメージングパルスシーケンスISとを示す図である。
【符号の説明】
【0155】
1:磁気共鳴イメージング装置(磁気共鳴イメージング装置)、
2:スキャン部(スキャン部)、
3:操作コンソール部、
12:静磁場マグネット部、
13:勾配コイル部、
14:RFコイル部、
15:被検体移動部、
22:RF駆動部、
23:勾配駆動部、
24:データ収集部、
30:制御部、
31:画像再構成部(画像再構成部)、
32:操作部、
33:表示部(表示部)、
34:記憶部、
B:撮像空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場空間において被検体から磁気共鳴信号を収集するように、前記被検体についてスキャンを実施する磁気共鳴イメージング装置であって、
前記静磁場空間においてプリパレーションパルスを送信するプリパレーションパルスシーケンスを実施後に、前記被検体から磁気共鳴信号を収集するイメージングパルスシーケンスを実施することによって前記スキャンを実施するスキャン部
を含み、
前記スキャン部は、
前記プリパレーションパルスシーケンスを実施する際には、
第1の化学飽和パルスと、T2プリパレーションパルスと、反転パルスである第2の化学飽和パルスとを順次送信することによって前記被検体のスピンを励起すると共に、
前記第1の化学飽和パルスを送信後であって前記T2プリパレーションパルスを送信する前には、第1のキラー勾配パルスを送信し、
前記T2プリパレーションパルスを送信後であって前記第2の化学飽和パルスを送信する前には、第2のキラー勾配パルスを送信し、
前記第2の化学飽和パルスを送信後であって前記イメージングパルスシーケンスを実施する前には、第3のキラー勾配パルスを送信する
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記スキャン部は、
フリップアングルが90°の絶対値になるように、前記第1の化学飽和パルスを送信し、
フリップアングルが180°の絶対値になるように、前記第2の化学飽和パルスを送信する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記スキャン部は、前記第1のキラー勾配パルスと前記第2のキラー勾配パルスと前記第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、互いに異なる大きさになるように、送信する、
請求項1または2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記スキャン部は、前記第1のキラー勾配パルスと前記第2のキラー勾配パルスと前記第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、互いが異なる軸方向になるように送信する、
請求項1から3のいずれかに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記スキャン部は、前記被検体に含まれる水と脂肪とにおいて当該脂肪にて生ずる磁気共鳴信号が当該水にて生ずる磁気共鳴信号よりも抑制されるように、前記第1の化学飽和パルスと前記第2の化学飽和パルスを送信する、
請求項1から4のいずれかに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記スキャン部は、前記T2プリパレーションパルスとして、90°RFパルスと、第1の180°RFパルスと、第2の180°RFパルスと、第1の−180°RFパルスと、第2の−180°RFパルスと、−90°RFパルスとのそれぞれを、順次、送信する、
請求項1から5のいずれかに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記スキャン部は、第1の180°RFパルスと第2の180°RFパルスと第1の−180°RFパルスと第2の−180°RFパルスとのそれぞれの位相が、前記90°RFパルスと前記−90°RFパルスの位相に対して直交するように前記T2プリパレーションパルスを送信する、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記スキャン部は、
前記90°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第1の180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第1の時間間隔に対して、
前記第1の180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第2の180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第2の時間間隔が2倍であり、
前記第2の180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第1の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第3の時間間隔が2倍であり、
前記第1の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第2の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第4の時間間隔が2倍であり、
前記第2の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記−90°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第5の時間間隔が同じになるように、前記T2プリパレーションパルスを送信する、
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記スキャン部は、前記90°RFパルスと、前記第1の180°RFパルスと、前記第2の180°RFパルスと、前記第1の−180°RFパルスと、前記第2の−180°RFパルスと、前記−90°RFパルスとのそれぞれを、矩形パルスとして送信する、
請求項5から7のいずれかに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記スキャン部は、前記イメージングパルスシーケンスとして、前記被検体におけるスピンの縦磁化と横磁化とが定常状態になるような繰り返し時間にてRFパルスを繰り返し送信すると共に、当該RFパルスにより励起された前記被検体のスライスを選択するスライス選択勾配パルスと、当該RFパルスにより励起された前記スライスにおいて発生する磁気共鳴信号を位相エンコードする位相エンコード勾配パルスと、前記RFパルスにより励起された前記スライスにおいて発生する磁気共鳴信号を周波数エンコードする周波数エンコード勾配パルスとを、前記繰り返し時間内において時間積分値がゼロになるように送信する、
請求項1から9のいずれかに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
静磁場空間において被検体について実施されたスキャンによって前記被検体から収集された磁気共鳴信号に基づいて、前記被検体の磁気共鳴画像を生成する磁気共鳴画像生成方法であって、
前記スキャンは、前記静磁場空間においてプリパレーションパルスを送信するプリパレーションパルスシーケンスを実施後に、前記被検体から磁気共鳴信号を収集するイメージングパルスシーケンスを実施することによって実施されており、
前記プリパレーションパルスシーケンスは、
第1の化学飽和パルスと、T2プリパレーションパルスと、反転パルスである第2の化学飽和パルスとを順次送信することによって前記被検体のスピンを励起すると共に、
前記第1の化学飽和パルスを送信後であって前記T2プリパレーションパルスを送信する前には、第1のキラー勾配パルスを送信し、
前記T2プリパレーションパルスを送信後であって前記第2の化学飽和パルスを送信する前には、第2のキラー勾配パルスを送信し、
前記第2の化学飽和パルスを送信後であって前記イメージングパルスシーケンスを実施する前には、第3のキラー勾配パルスを送信することによって、実施される
磁気共鳴画像生成方法。
【請求項12】
フリップアングルが90°の絶対値になるように、前記第1の化学飽和パルスを送信し、
フリップアングルが180°の絶対値になるように、前記第2の化学飽和パルスを送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される、
請求項11に記載の磁気共鳴画像生成方法。
【請求項13】
前記第1のキラー勾配パルスと前記第2のキラー勾配パルスと前記第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、互いに異なる大きさになるように送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施されている
請求項11または12に記載の磁気共鳴画像生成方法。
【請求項14】
前記第1のキラー勾配パルスと前記第2のキラー勾配パルスと前記第3のキラー勾配パルスとのそれぞれを、互いが異なる軸方向になるように送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施されている、
請求項11から13のいずれかに記載の磁気共鳴画像生成方法。
【請求項15】
前記被検体に含まれる水と脂肪とにおいて当該脂肪にて生ずる磁気共鳴信号が当該水にて生ずる磁気共鳴信号よりも抑制されるように、前記第1の化学飽和パルスと前記第2の化学飽和パルスを送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される、
請求項11から14のいずれかに記載の磁気共鳴画像生成方法。
【請求項16】
前記T2プリパレーションパルスとして、90°RFパルスと、第1の180°RFパルスと、第2の180°RFパルスと、第1の−180°RFパルスと、第2の−180°RFパルスと、−90°RFパルスとのそれぞれを、順次、送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される、
請求項11から15のいずれかに記載の磁気共鳴画像生成方法。
【請求項17】
第1の180°RFパルスと第2の180°RFパルスと第1の−180°RFパルスと第2の−180°RFパルスとのそれぞれの位相が、前記90°RFパルスと前記−90°RFパルスの位相に対して直交するように前記T2プリパレーションパルスを送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される、
請求項16に記載の磁気共鳴画像生成方法。
【請求項18】
前記90°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第1の180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第1の時間間隔に対して、
前記第1の180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第2の180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第2の時間間隔が2倍であり、
前記第2の180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第1の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第3の時間間隔が2倍であり、
前記第1の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記第2の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第4の時間間隔が2倍であり、
前記第2の−180°RFパルスを送信する時間の中心時点と前記−90°RFパルスを送信する時間の中心時点との間の第5の時間間隔が同じになるように、前記T2プリパレーションパルスを送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される、
請求項17に記載の磁気共鳴画像生成方法。
【請求項19】
前記90°RFパルスと、前記第1の180°RFパルスと、前記第2の180°RFパルスと、前記第1の−180°RFパルスと、前記第2の−180°RFパルスと、前記−90°RFパルスとのそれぞれを、矩形パルスとして送信することによって、前記プリパレーションパルスシーケンスが実施される、
請求項16から18のいずれかに記載の磁気共鳴画像生成方法。
【請求項20】
前記被検体におけるスピンの縦磁化と横磁化とが定常状態になるような繰り返し時間にてRFパルスを繰り返し送信すると共に、当該RFパルスにより励起された前記被検体のスライスを選択するスライス選択勾配パルスと、当該RFパルスにより励起された前記スライスにおいて発生する磁気共鳴信号を位相エンコードする位相エンコード勾配パルスと、前記RFパルスにより励起された前記スライスにおいて発生する磁気共鳴信号を周波数エンコードする周波数エンコード勾配パルスとを、前記繰り返し時間内において時間積分値がゼロになるように送信することによって、前記イメージングパルスシーケンスが実施される、
請求項11から19のいずれかに記載の磁気共鳴画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−208(P2009−208A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162649(P2007−162649)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】