説明

磁気共鳴イメージング装置用の受信装置

【課題】頭部固定具に固定された頭部に簡単に装着することができ、頭部全体に十分な信号感度を確保するとともに、頭部固定具に対して安定させることができる磁気共鳴イメージング装置用の受信装置を提供することを課題とする。
【解決手段】磁気共鳴イメージング装置の静磁場中に置かれた被験者からの信号を受信する受信装置1であって、頭部が固定される頭部固定具100に着脱自在な複数の分割部材10,20,30から構成され、各分割部材10,20,30には、信号を受信する受信コイルを分割した分割コイルが内設され、各分割部材10,20,30を連結することで、各分割コイルが電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)の静磁場中に置かれた被験者からの信号を受信する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置では、静磁場中に被験者の頭部を置いて高周波パルスを照射することで、被験者中の原子核の核スピンを励起し、このときに発生した信号(MR信号)をコンピュータで処理することにより、頭部の断層像を得ている。このように、MRI装置によって頭部を撮影するときには、被験者からの信号を受信する受信コイル(RFコイル)が内設された受信装置を被験者の頭部に装着している。
【0003】
脳外科手術は被験者の頭部を頭部固定具に固定して行われる。また、手術の成果を確認するために、手術中にMRI装置によって頭部を撮影している。このように、手術中に頭部を撮影するときには、オープン型のMRI装置を用いるのが主流となっている。そして、MRI装置で頭部を撮影するときには、撮影前後で頭部の位置が移動しないように、頭部を頭部固定具に固定した状態で撮影する。したがって、頭部固定具に固定された頭部に受信装置を装着する必要がある。
【0004】
従来の受信装置としては、頭部固定具に受信コイルの一部を内設し、上半円状に湾曲させた上部受信コイルを頭部固定具に連結することにより、ループ状の受信コイルによって頭部を囲むように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
他の受信装置としては、被験者の前頭部を覆う中央部分に対して、左後頭部を覆う左部分と右後頭部を覆う右部分とをヒンジ部によって連結し、各部分に受信コイルの分割コイルが内設されたものがある(例えば、特許文献2参照)。
この受信装置では、頭部固定具に固定された頭部の上方に中央部分を配置し、頭部の下方で左部分および右部分を閉じることで、頭部全体を覆うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−218537号公報
【特許文献2】特開2010−214000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
受信コイルをループ状に形成した受信装置では、頭部を覆う面積が小さいため、撮影する範囲が狭くなるという問題がある。また、MRI装置を使用しない手術においても、頭部固定具にカバーを被せて受信コイルの血液汚染を防ぐ必要がある。
【0008】
また、中央部分に対して左部分と右部分をヒンジ部によって連結した受信装置では、左部分と右部分を頭部の下方で連結する作業が煩雑であるとともに、頭部固定具に対して受信装置がずれ易いという問題がある。
【0009】
本発明は、前記した問題を解決し、頭部固定具に固定された頭部に簡単に装着することができ、頭部全体に十分な信号感度を確保するとともに、頭部固定具に対して安定させることができる磁気共鳴イメージング装置用の受信装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、磁気共鳴イメージング装置の静磁場中に置かれた被験者からの信号を受信する受信装置であって、前記被験者の頭部が固定される頭部固定具に着脱自在な複数の分割部材から構成され、前記各分割部材には、前記信号を受信する受信コイルを分割した分割コイルが内設され、前記各分割部材を連結することで、前記各分割コイルが電気的に接続されることを特徴としている。
なお、前記各分割部材は、前記被験者の頭部が固定される頭部固定具に着脱自在であり、前記被験者の後頭下部を覆う第一の分割部材と、前記第一の分割部材に着脱自在であり、前記被験者の後頭上部を覆う第二の分割部材と、前記第一の分割部材および前記第二の分割部材に着脱自在であり、前記被験者の前頭部を覆う第三の分割部材と、を備えているように構成することができる。
【0011】
この構成では、頭部固定具に固定された頭部をMRI装置(磁気共鳴イメージング装置)によって撮影するときに、各分割部材を頭部の周囲に配置して連結することで、頭部全体に受信装置を簡単に被せることができるため、受信装置は頭部全体に十分な信号感度を確保することができる。
また、分割部材は頭部固定具に固定されるため、頭部固定具に対して受信装置を安定させることができる。
【0012】
前記した受信装置において、前記第二の分割部材および前記第三の分割部材は、前記頭部固定具に固定された前記第一の分割部材に対して、前記頭部固定具に前記被験者の頭部が固定された状態で連結可能であることが好ましい。
【0013】
この構成では、手術前に頭部固定具に第一の分割部材を固定しておき、手術中にMRI装置によって頭部を撮影するときに、第一の分割部材に他の分割部材を連結することで、頭部全体に受信装置を簡単に装着することができるため、手術中にMRI装置の撮影に係る時間を短縮することができる。
なお、MRI装置を使用しない手術においては、第一の分割部材を頭部固定具から取り外しておくことで、受信コイルを血液汚染から防ぐことができる。
【0014】
前記した受信装置において、前記第一の分割部材を複数に分割し、前記頭部固定具に前記被験者の頭部が固定された状態で、前記第一の分割部材を前記頭部固定具に取り付け可能なように構成した場合には、MRI装置によって撮影するときに、頭部固定具に第一の分割部材を取り付けることができ、第一の分割部材を血液汚染から防ぐことができる。
【0015】
前記した受信装置において、前記第三の分割部材の前記被験者の鼻部に対応する位置に切り欠き部を形成した場合には、頭部への装着性を向上させることができる。
【0016】
前記した受信装置において、前記各分割部材の少なくとも一つに、前記分割コイルに電気的に接続された電気回路を内設した場合には、MRI装置で撮影するとき以外は、電気回路が内設された分割部材を頭部から取り外すができるため、電気回路を血液汚染から防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の磁気共鳴イメージング装置用の受信装置によれば、MRI装置で撮影するときに、頭部に受信装置を簡単に装着することができるため、撮影時以外は受信装置が医師の視野や手技の妨げになるのを防ぐことができる。
また、頭部固定具に頭部が固定され、被験者の口に挿管チューブが装着された状態でも、頭部全体に受信装置を簡単に被せることができる。
また、分割部材は頭部固定具に固定されるため、頭部固定具に対して受信装置を安定させることができる。
そして、受信装置は頭部全体に十分な信号感度を確保することができるため、MRI装置によって頭部の広範囲を撮影することができるとともに、頭部の断層像の解像度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の受信装置を頭部固定具に取り付けた状態を示した斜視図である。
【図2】本実施形態の受信装置および頭部固定具を示した分解斜視図である。
【図3】本実施形態の受信装置を示した図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】本実施形態の受信装置を示した図で、(a)は底面図、(b)は背面図、(c)は正面図である。
【図5】本実施形態の第一の分割部材を頭部固定具に固定した状態を示した斜視図である。
【図6】本実施形態の各分割部材を連結する態様を示した斜視図である。
【図7】他の実施形態の受信装置を示した図で、第一の分割部材が分割可能な構成の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示す本実施形態の受信装置1は、被験者の頭部をMRI装置によって撮影するときに、頭部に装着するものである。
受信装置1には、MRI装置の静磁場中に置かれた頭部からの信号(MR信号)を受信する受信コイル(図示せず)および信号を増幅する電気回路(図示せず)が内設されており、電気回路に接続されたケーブル(図示せず)を介して、外部のコンピュータに信号が伝達される。
【0020】
頭部固定具100は、図2に示すように、手術用ベッドに取り付けられる平板状のテーブル110と、テーブル110の先端縁部110aに設けられた可傾式のホルダアーム120と、ホルダアーム120の先端部に設けられたホルダ130と、ホルダ130に取り付けられた頭部支持部140と、を備えている。
【0021】
頭部支持部140は、手術用ベッドに寝かせられた被験者の頭部を固定する部位であり、頭部が載置される支持アーム141と、支持アーム141に設けられた複数の頭部固定用ピン142と、を備えている。
支持アーム141は、下半円状に湾曲した部材であり、両端部が左右に配置され、下端部がホルダ130に連結されている。支持アーム141には、半径方向に貫通した複数のねじ穴141aが周方向に等間隔に形成されている。
【0022】
頭部固定用ピン142は、支持アーム141の外側からねじ穴141aに螺合されており、先端部は支持アーム141の内側に突出している。
各頭部固定用ピン142の先端部を、支持アーム141に載置した頭部に当接させることで、頭部支持部140に頭部を固定することができる。
【0023】
受信装置1は、図1に示すように、頭部固定具100に固定された頭部全体に被せられるヘルメット形状の部材である。この受信装置1は、頭部固定具100に着脱自在な第一の分割部材10と、第一の分割部材10に着脱自在な第二の分割部材20と、第一の分割部材10および第二の分割部材20に着脱自在な第三の分割部材30と、を連結することで構成されている(図2参照)。
【0024】
受信装置1の各分割部材10,20,30は、プラスチックなどの絶縁体によって形成されている。また、受信装置1の内部には、線状の受信コイル(図示せず)が張り巡らされている。
【0025】
第一の分割部材10は、図5に示すように、頭部支持部140に着脱自在であり、ホルダ130および支持アーム141に嵌合される嵌合部11と、嵌合部11に形成された基端下壁部12と、を備えている。嵌合部11および基端下壁部12には、受信コイルを分割した分割コイル(図示せず)が内設されている。
【0026】
嵌合部11は、板状の部位であり、その上面にはホルダ130および支持アーム141に嵌合される凹溝11aが形成されている。また、嵌合部11には、先端面11bから凹溝11aの内面に貫通した左右の固定用ねじ穴(図示せず)が形成されており、各固定用ねじ穴には先端面11b側から固定用ボルト11cが螺合されている。
嵌合部11の凹溝11aをホルダ130に嵌合させ、各固定用ボルト11cを締め込んでホルダ130に押し付けることで、第一の分割部材10が頭部支持部140に固定される。
【0027】
嵌合部11の先端面11bには、分割コイル(図示せず)に電気的に接続された接続端子11dが設けられている。また、先端面11bには、後記する連結用ボルト24が螺合される左右の連結用ねじ穴11eが形成されている。
【0028】
基端下壁部12は、被験者の後頭下部を覆う部位であり、図2に示すように、嵌合部11において凹溝11aよりも基端側の部位から左右上方に向けて板状に形成され、下半円状に湾曲した内面が形成されている(図4(c)参照)。
基端下壁部12の左右両端面には、分割コイル(図示せず)に電気的に接続された接続端子12aが設けられている。
なお、嵌合部11を頭部支持部140に取り付けた状態では(図5参照)、基端下壁部12の内面は支持アーム141の内面よりも半径方向の外側に配置される。
【0029】
第二の分割部材20は、第一の分割部材10に着脱自在であり、図3(b)および図4(a)に示すように、連結部21と、連結部21に形成された中間下壁部22と、連結部21の先端縁部に形成された先端下壁部23と、を備えている。連結部21、中間下壁部22および先端下壁部23には、受信コイルを分割した分割コイル(図示せず)が内設されている。
【0030】
連結部21は、板状の部位であり、図2に示すように、先端面21aから基端面21bに貫通した左右の連結用貫通穴21cが形成されている。
各連結用貫通穴21cは、連結部21の基端面21bを第一の分割部材10の嵌合部11の先端面11bに接合させたときに、各連結用ねじ穴11e(図5参照)に連通するように形成されている。
連結部21の基端面21bには、分割コイル(図示せず)に電気的に接続された接続端子(図示せず)が設けられている。
【0031】
図6に示すように、各連結用貫通穴21cに連結用ボルト24を挿入し、連結用ボルト24の先端部を、嵌合部11の連結用ねじ穴11eに螺合させることで、連結部21を嵌合部11に取り付けることができる。また、連結部21の接続端子は、嵌合部11の接続端子11dに電気的に接続される。
【0032】
また、連結部21には、受信コイルで受信した信号を増幅する電気回路(図示せず)が内設されている。電気回路には、外部のコンピュータに接続されたケーブルの一端が接続されており、電気回路からケーブルを介してコンピュータに信号が伝達されるように構成されている。
【0033】
中間下壁部22は、被験者の後頭上部の側部を覆う部位であり、図4(b)に示すように、連結部21から左右上方に向けて板状に形成され、下半円状に湾曲した内面が形成されている。
中間下壁部22の左右両端面には、分割コイル(図示せず)に電気的に接続された接続端子22aが設けられている。
【0034】
図1に示すように、連結部21を嵌合部11に取り付けた状態では、中間下壁部22と基端下壁部12との間に支持アーム141が配置される。また、中間下壁部22の内面は、支持アーム141の内面よりも半径方向の外側に配置される。
【0035】
先端下壁部23は、被験者の後頭部の頂部を覆う部位であり、図3(b)および図4(b)に示すように、連結部21の先端縁部から上方に向けて板状に形成されている。
先端下壁部23の上端面には、分割コイル(図示せず)に電気的に接続された接続端子23aが設けられている。
【0036】
第三の分割部材30は、図1および図3(b)に示すように、第一の分割部材10および第二の分割部材20に着脱自在であり、中央壁部31と、中央壁部31の基端部に形成された基端上壁部32と、中央壁部31の先端部に形成された中間上壁部33と、中央壁部31の先端縁部に形成された先端上壁部34と、を備えている。
中央壁部31、基端上壁部32、中間上壁部33および先端上壁部34には、受信コイル(図示せず)を分割した分割コイル(図示せず)が内設されている。
【0037】
中央壁部31は、被験者の顔部中央を覆う板状の部位である。図3(a)に示すように、中央壁部31の基端縁部には、被験者の鼻部に対応する位置に切り欠き部31aが形成されている。
【0038】
基端上壁部32は、被験者の前頭下部を覆う部位であり、図4(c)に示すように、中央壁部31の基端部から左右下方に向けて板状に形成され、上半円状に湾曲した内面が形成されている。
基端上壁部32の左右両端面には、分割コイル(図示せず)に電気的に接続された接続端子(図示せず)が設けられている。
基端上壁部32の左右両端部は、第一の分割部材10の基端下壁部12の左右両端部に嵌合される部位であり、基端上壁部32の接続端子は、基端下壁部12の接続端子12a(図2参照)に電気的に接続される。
【0039】
中間上壁部33は、被験者の前頭上部の側部を覆う部位であり、図4(b)に示すように、中央壁部31の先端部から左右下方に向けて板状に形成され、上半円状に湾曲した内面が形成されている。
中間上壁部33の左右両端面には、分割コイル(図示せず)に電気的に接続された接続端子(図示せず)が設けられている。
中間上壁部33の左右両端部は、第二の分割部材10の中間下壁部22の左右両端部に嵌合される部位であり、中間上壁部33の接続端子は、中間下壁部22の接続端子22a(図2参照)に電気的に接続される。
【0040】
図1に示すように、第三の分割部材30を、第一の分割部材10および第二の分割部材20に連結したときには、基端上壁部32と中間上壁部33との間に形成された左右の隙間35,35に支持アーム141の左右両端部がそれぞれ配置される。
【0041】
先端上壁部34は、被験者の前頭上部の頂部を覆う部位であり、図3(b)および図4(b)に示すように、中央壁部31の先端縁部から下方に向けて板状に形成された部位である。
先端上壁部34の下端面には、分割コイル(図示せず)に電気的に接続された接続端子(図示せず)が設けられている。
先端上壁部34の下端部は、第二の分割部材20の先端下壁部23の上端部に嵌合される部位であり、先端上壁部34の接続端子は、先端下壁部23の接続端子23a(図2参照)に電気的に接続される。
【0042】
以上のような受信装置1を用いて脳外科手術を行う場合には、図5に示すように、手術前に第一の分割部材10を頭部固定具100の頭部支持部140に取り付ける。そして、頭部支持部140に被験者の頭部を固定して手術を行う。このとき、第一の分割部材10に内設された分割コイル(図示せず)の血液汚染を防ぐため、第一の分割部材10にカバーを被せて保護する。
【0043】
手術の成果を確認するために、手術中にMRI装置によって頭部を撮影する場合には、頭部を頭部支持部140に固定した状態で、第一の分割部材10からカバーを取り外し、図6に示すように、各連結用ボルト24によって、第二の分割部材20を第一の分割部材10に連結する。さらに、第三の分割部材30を第一の分割部材10および第二の分割部材20に連結して、頭部全体に受信装置1を被せる。
各分割部材10,20,30を連結することで、各分割部材10,20,30に内設された各分割コイルが電気的に接続され、頭部全体が受信コイルに囲まれた状態となる。
【0044】
そして、受信装置1を装着した頭部を、MRI装置の静磁場中に配置して、高周波パルスを照射することで、被験者中の原子核の核スピンを励起し、このときに発生した信号を受信装置1の受信コイルで受信する。この信号が受信装置1からコンピュータに送信されて処理されることで、頭部の断層像を得ることができる。
【0045】
本実施形態の受信装置1では、図5に示すように、手術前に頭部固定具100に第一の分割部材10を固定しておき、手術中にMRI装置によって頭部を撮影するときに、図1に示すように、第一の分割部材10に他の分割部材20,30を連結することで、頭部全体に受信装置1を簡単に装着することができる。したがって、手術中にMRI装置の撮影に係る時間を短縮することができるとともに、撮影時以外は受信装置1が医師の視野や手技の妨げになるのを防ぐことができる。
【0046】
また、受信装置1は、図2に示すように、各分割部材10,20,30を頭部の周囲で連結する構成であるため、頭部固定具100に頭部が固定され、被験者の口に挿管チューブが装着された状態でも、頭部に全体に受信装置1を簡単に被せることができる。
また、図3(a)に示すように、被験者の鼻部に対応する位置に切り欠き部31aが形成されているため、受信装置1の頭部への装着性が向上している。
【0047】
また、図1に示すように、第一の分割部材10は頭部固定具100に固定されるため、頭部固定具100に対して受信装置1を安定させることができる。
【0048】
そして、本実施形態の受信装置1では、頭部全体が受信コイルに囲まれた状態となり、頭部全体に十分な信号感度を確保することができるため、頭部の広範囲を撮影するとともに、頭部の断層像の解像度を高めることができる。
【0049】
なお、MRI装置を使用しない手術においては、第一の分割部材10を頭部固定具100から取り外しておくことで、受信コイルを血液汚染から防ぐことができる。
また、電気回路およびケーブルは、第二の分割部材20に内設されており、MRI装置によって頭部を撮影するとき以外は、第二の分割部材20は頭部から取り外されるため、電気回路およびケーブルを血液汚染から防ぐことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、図1に示す受信装置1の形状、大きさ、各分割部材10,20,30を分割する個数および連結手段は限定されるものではない。
【0051】
図7に示す受信装置1Aの第一の分割部材10´は、左右の分割部材10A,10Bに分割されている。この構成では、頭部固定具100に頭部を固定した状態で、左右の分割部材10A,10Bを頭部の後頭部側で連結して、第一の分割部材10´を頭部固定具100に取り付けることができる。したがって、受信装置1Aでは、手術中に医師が頭部を切開して処置するときには、左右の分割部材10A,10Bを頭部固定具100から取り外しておき、MRI装置によって頭部を撮影するときに、第一の分割部材10´を頭部固定具100に取り付けることができるため、第一の分割部材10´を血液汚染から防ぐことができる。
【0052】
なお、図7に示す受信装置1Aでは、左右の分割部材10A,10Bの先端面に連結用ボルト25が設けられており、この連結用ボルト25を第二の分割部材20の連結用貫通穴21cに挿通させ、連結用ボルト25の先端部に連結用ナット26を螺合させることで、第二の分割部材20を第一の分割部材10´に取り付けるように構成されている。
【0053】
また、図7に示す受信装置1Aのように、各分割部材10,20,30を機械的に結合させるロック機構を設けてもよい。具体的には、第三の分割部材30の基端上壁部32および中間上壁部33の両端部にフック36を形成するとともに、第一の分割部材10´の基端下壁部12および第二の分割部材20の中間下壁部22の両端部に爪部12b,22bを形成している。そして、フック36を爪部12b,22bに引っ掛けて重ね合わせ、さらに、フック36を爪部12b,22b側に押し込むことで、フック36の突起部が爪部12b,22bの穴部に嵌め込まれる。このように、フック36と爪部12b,22bとを嵌め合わせることで、各分割部材10,20,30を簡単かつ確実に連結することができる。
【0054】
また、本実施形態の受信装置1では、図5に示すように、嵌合部11に設けられた固定用ボルト11cによって、第一の分割部材10を頭部支持部140に取り付けているが、第一の分割部材10を頭部固定具100に取り付ける手段は限定されるものではなく、各種の頭部固定具に対応させて適宜に構成することができる。
【0055】
また、本実施形態の受信装置1では、図2に示す第二の分割部材20に電気回路およびケーブルが設けられているが、第一の分割部材10または第三の分割部材30に設けてもよい。
【0056】
さらに、本実施形態の受信装置1は、MRI装置の静磁場中に置かれた頭部からの信号を受信する装置であるが、頭部に高周波パルスを照射するための送信コイルを受信装置1に内設し、送受信兼用の装置としてもよい。この構成では、MRI装置内に送信コイルを別途配置する必要がなくなるため、MRI装置内の撮影空間を広く使用することができる。また、送信コイルが小型化され、送信効率が向上するため、送信出力を抑えることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 受信装置
10 第一の分割部材
11 嵌合部
11a 凹溝
11c 固定用ボルト
12 基端下壁部
20 第二の分割部材
21 連結部
22 中間下壁部
23 先端下壁部
24 連結用ボルト
30 第三の分割部材
31 中央壁部
31a 切り欠き部
32 基端上壁部
33 中間上壁部
34 先端上壁部
100 頭部固定具
110 テーブル
130 ホルダ
140 頭部支持部
141 支持アーム
142 頭部固定用ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置の静磁場中に置かれた被験者からの信号を受信する受信装置であって、
前記被験者の頭部が固定される頭部固定具に着脱自在な複数の分割部材から構成され、
前記各分割部材には、前記信号を受信する受信コイルを分割した分割コイルが内設され、前記各分割部材を連結することで、前記各分割コイルが電気的に接続されることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置用の受信装置。
【請求項2】
前記各分割部材は、
前記被験者の頭部が固定される前記頭部固定具に着脱自在であり、前記被験者の後頭下部を覆う第一の分割部材と、
前記第一の分割部材に着脱自在であり、前記被験者の後頭上部を覆う第二の分割部材と、
前記第一の分割部材および前記第二の分割部材に着脱自在であり、前記被験者の前頭部を覆う第三の分割部材と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置用の受信装置。
【請求項3】
前記第二の分割部材および前記第三の分割部材は、
前記頭部固定具に取り付けられた前記第一の分割部材に対して、前記頭部固定具に前記被験者の頭部が固定された状態で連結可能であることを特徴とする請求項2に記載の磁気イメージング装置用の受信装置。
【請求項4】
前記第一の分割部材は、複数に分割されており、
前記頭部固定具に前記被験者の頭部が固定された状態で、前記第一の分割部材を前記頭部固定具に取り付け可能であることを特徴とする請求項2および請求項3に記載の磁気イメージング装置用の受信装置。
【請求項5】
前記第三の分割部材には、前記被験者の鼻部に対応する位置に切り欠き部が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置用の受信装置。
【請求項6】
前記各分割部材の少なくとも一つには、前記分割コイルに電気的に接続された電気回路が内設されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置用の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−313(P2013−313A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133890(P2011−133890)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000141598)株式会社吉田製作所 (117)
【出願人】(509077989)ベイジン フェロー テクノロジー カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Beijing Ferro Technology Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.13 Beiertiao Street Zhongguancun Haidian District, Beijing 100085 P.R.China
【Fターム(参考)】