説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】他の電波による干渉の影響を低減して高精度にクロック信号を伝送することによって、劣化のないエコー信号に基づく高精度な画像再構成を可能とする。
【解決手段】クロック送信回路113および送信アンテナ114は、クロック信号で搬送波信号を変調して得られるクロック伝送信号を無線送信する。受信アンテナ90およびクロック受信回路91は、無線送信されたクロック伝送信号に基づいてクロック信号を再生する。キャリアセンス回路111は、クロック伝送信号の干渉波に成り得る電波の周波数を検出する。搬送波制御回路112は、検出された周波数に対する干渉が比較的小さい周波数を搬送波信号の可変範囲内から選定し、その周波数の搬送波信号信号を使用するようにクロック送信回路113を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置の受信コイルで得られたエコー信号をデジタル化して得たデジタル信号を無線伝送することによって、受信コイルを無線化する方式が特許文献1により知られている。
【0003】
このようにエコー信号をデジタル化する場合には、デジタル信号の送信処理および受信処理に同一周波数のクロック信号を使用する必要がある。そしてこれらのクロック信号に周波数ずれが生じていると、エコー信号が劣化し、このエコー信号から再構成される画像の精度が低下してしまう恐れがある。
【0004】
そこで特許文献1では、受信処理のために使用する第1のクロック信号をリファレンス信号として無線伝送し、このリファレンス信号を基準として送信処理に使用する第2のクロック信号を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,384,536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方式を用いた場合、リファレンス信号が劣化なく伝送されれば、第2のクロック信号と第1のクロック信号とを高精度に同期させることが可能となる。しかしながら一般に無線伝送においては、周囲の電波が干渉波となって劣化する。例えば2.4GHz帯(2400〜2483.5MHz)は、欧州では最大10mW、米国では3mの距離で50mV/mの電界強度を満たしていれば帯域幅および変調方式の制限無く利用できる可能性がある。そして当該周波数帯は、エコー信号の周波数(約64MHz)から十分離れていることと、ダイオード検波がし易い周波数であること等からクロック信号の搬送波周波数として適していると言える。しかしながら当該周波数帯は、無線LANやBluetooth(登録商標)といった無線通信システムの他、ISMバンドとして様々な用途に使用されているため、それらの用途で使用されている電波が干渉波となる恐れがある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、他の電波による干渉の影響を低減して高精度にクロック信号を伝送することによって、劣化のないエコー信号に基づく高精度な画像再構成を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様による磁気共鳴イメージング装置は、被検体から放射された磁気共鳴エコーを受けてエコー信号を出力する受信コイルと、クロック信号を生成するクロック生成部と、前記エコー信号を無線伝送するためのエコー伝送信号を生成して送信するものであり、前記エコー伝送信号を生成するための処理の少なくとも一部を前記クロック信号に同期して行うエコー送信部と、搬送波信号を生成するもので、前記搬送波信号の周波数を可変範囲内で変更可能な搬送波生成部と、前記クロック信号で前記搬送波信号を変調して得られるクロック伝送信号を無線送信するクロック送信部と、前記送信部により送信された前記クロック伝送信号に基づいて前記クロック信号を再生する再生部と、前記送信部により送信された前記エコー伝送信号から前記エコー信号を抽出するものであり、前記エコー信号を抽出するための処理の一部を前記再生部により再生された前記クロック信号に同期して行うエコー受信部と、前記受信部により抽出された前記エコー信号に基づいて前記被検体に関する画像を再構成する再構成部と、前記クロック伝送信号の干渉波に成り得る電波の周波数を検出する検出部と、前記検出部により検出された周波数に対する干渉が比較的小さい周波数を前記可変範囲内から選定し、その周波数の前記搬送波信号を生成するように前記搬送波生成部を制御する制御部とを備える。
【0009】
本発明の第2の態様による磁気共鳴イメージング装置は、被検体から放射された磁気共鳴エコーを受けてエコー信号を出力する受信コイルと、基準クロック信号を生成するクロック生成部と、前記エコー信号を無線伝送するためのエコー伝送信号を生成して送信するものであり、前記エコー伝送信号を生成するための処理の少なくとも一部を前記クロック信号に同期して行うエコー送信部と、前記クロック生成部で生成された前記クロック信号の周波数を変換して少なくとも1つの伝送用クロック信号を得る変換部と、搬送波信号を生成するもので、前記搬送波信号の周波数を可変範囲内で変更可能な搬送波生成部と、前記可変範囲内の周波数のうちでその周波数よりも前記基準クロック信号の1/2だけ高い周波数および低い周波数をそれぞれ中心とする規定幅の2つの周波数帯域のそれぞれに関する電波の電力の和の最小値を算出するとともに、前記可変範囲内の周波数のうちでその周波数よりも前記伝送用クロック信号の1/2だけ高い周波数および低い周波数をそれぞれ中心とする規定幅の2つの周波数帯域のそれぞれに関する電波の電力の和の最小値を前記少なくとも1つの伝送用クロック信号のそれぞれに関して算出する算出部と、前記算出部で算出される複数の最小値のうちの最小値を判定し、その最小値が得られる周波数の前記搬送波信号を生成するように前記搬送波生成部を制御する制御部と、前記算出部で算出される複数の最小値のうちの最小値を判定し、前記基準クロック信号および前記伝送用クロック信号のうちでその最小値が得られるクロック信号を選定し、当該クロック信号で前記搬送波信号を変調して得られるクロック伝送信号を無線送信するクロック送信部と、前記送信部により送信された前記クロック伝送信号に基づいて前記基準クロック信号を再生する再生部と、前記送信部により送信された前記エコー伝送信号から前記エコー信号を抽出するものであり、前記エコー信号を抽出するための処理の一部を前記再生部により再生された前記基準クロック信号に同期して行うエコー受信部と、前記受信部により抽出された前記エコー信号に基づいて前記被検体に関する画像を再構成する再構成部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、他の電波による干渉の影響を低減して高精度にクロック信号を伝送することによって、劣化のないエコー信号に基づく高精度な画像再構成を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)の構成を示す図。
【図2】図1中のコイル側装置および無線ユニットの第1の実施形態におけるブロック図。
【図3】図2中のキャリアセンス回路で測定された周波数スペクトルの一例と第1の実施形態における搬送波周波数の設定例とを示す図。
【図4】図2中のキャリアセンス回路で測定された周波数スペクトルの一例と第2の実施形態における搬送波周波数の設定例とを示す図。
【図5】図2中のキャリアセンス回路で測定された周波数スペクトルの一例と第3の実施形態における搬送波周波数の設定例とを示す図。
【図6】クロック信号(2MHz)、干渉波(1.99MHz)およびクロック信号と干渉波との和信号のそれぞれの波形を比較して示す図。
【図7】クロック信号(2MHz)、干渉波(3MHz)およびクロック信号と干渉波との和信号のそれぞれの波形を比較して示す図。
【図8】クロック信号(2MHz)、干渉波(1MHz)およびクロック信号と干渉波との和信号のそれぞれの波形を比較して示す図。
【図9】クロック周波数を2MHz、搬送波周波数を2.45GHzとした場合の干渉波周波数に対するクロック精度の測定結果を示す図。
【図10】図1中のコイル側装置および無線ユニットの第4の実施形態におけるブロック図。
【図11】図10中のキャリアセンス回路で測定された周波数スペクトルの一例と第4の実施形態における搬送波周波数の設定例とを示す図。
【図12】図1中のコイル側装置および無線ユニットの第5の実施形態におけるブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)101の構成を示す図である。
【0014】
MRI装置101は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイルユニット6、RFパルス生成部7、RFパルス・傾斜磁場制御部8、コイル側装置9、クロック生成部10、無線ユニット11、データ解析部12、記憶部13、表示部14、入力部15および主制御部16を具備する。なお、これらの各部のうち、コイル側装置9以外の各部は、コイル側装置9とは別体のシステム側装置に備えられる。なおシステム側装置は、ガントリと処理ユニットとに分けられることもある。この場合は例えば、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイルユニット6、RFパルス生成部7、RFパルス・傾斜磁場制御部8および無線ユニット11がガントリに備えられ、クロック生成部10、データ解析部12、記憶部13、表示部14、入力部15および主制御部16が処理ユニットに備えられる。
【0015】
静磁場磁石1は、中空の円筒形をなし、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0016】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形をなし、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3種のコイルが組み合わされている。傾斜磁場コイル2は、上記の3種のコイルが傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX,Y,Zの各軸に沿って傾斜する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、例えば静磁場方向と同方向とする。X,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮影断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0017】
寝台4は、寝台制御部5の制御の下に、天板4aをその長手方向(図1中における左右方向)および上下方向に移動させる。通常、この長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように寝台4が設置される。天板4aには、被検体200が載置される。寝台4は、天板4aの移動によって、被検体200を傾斜磁場コイル2の内部の空間(撮像空間)内に挿入する。
【0018】
送信コイルユニット6は、1つまたは複数のコイルを円筒状のケースに収容して構成される。送信コイルユニット6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。送信コイルユニット6は、RFパルス生成部7からRFパルス信号の供給を受けてRFパルスを放射する。
【0019】
RFパルス生成部7は、RFパルス信号を生成する。
【0020】
RFパルス・傾斜磁場制御部8は、主制御部16の制御の下に、所要のパルスシーケンスに従って各傾斜磁場を変化させるように傾斜磁場電源3を制御するとともに、主制御部16から設定されるパラメタ(以下、RFパラメタと称する)に従ったRFパルスを生成するようにRFパルス生成部7を制御する。なお、RFパラメタは、RFパルスについての放射タイミング、位相、電力、ならびに信号波形などを表す。
【0021】
コイル側装置9は、天板4a上に載置されたり、天板4aに内蔵されたり、あるいは被検体200に装着される。そして撮影時には、被検体200とともに撮像空間内に挿入され、被検体200から放射された磁気共鳴エコーを受けて電気的なエコー信号を得る。コイル側装置9は、エコー信号をデジタル化して得られるエコーデータを含んだ伝送用信号を無線送信する。
【0022】
クロック生成部10は、所定周波数の第1のクロック信号を発生する。この第1のクロック信号は、無線ユニット11に与えられる。なお、第1のクロック信号は、MRI装置101の全体の動作タイミングの基準となるシステムクロックとしても使用されても良い。
【0023】
無線ユニット11は、コイル側装置9から放射された電磁波を受けて伝送用信号を得る。そして無線ユニット11は、伝送用信号からエコーデータを抽出するための受信処理を行う。無線ユニット11は、受信処理を第1のクロック信号に同期して行う。
【0024】
データ解析部12は、無線ユニット11で抽出されたエコーデータを解析する。そしてデータ解析部12は、被検体200に関する画像を再構成する。
【0025】
記憶部13は、データ解析部12で再構成された画像を示す画像データなどの各種のデータを記憶する。
【0026】
表示部14は、データ解析部12で再構成された画像や、MRI装置101をユーザが操作するための各種の操作画面などの各種の情報を主制御部16の制御の下に表示する。表示部14としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0027】
入力部15は、オペレータからの各種指令や情報入力を受け付ける。入力部15としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0028】
主制御部16は、図示していないCPUやメモリ等を有しており、MRI装置101を総括的に制御する。
【0029】
図2はコイル側装置9および無線ユニット11のブロック図である。なお、図2において図1と同一部分には同一の符号を付している。
【0030】
コイル側装置9は、受信アンテナ90、クロック受信回路91、受信コイル92、RF受信回路93、信号送信回路94および送信アンテナ95を具備する。また無線ユニット11は、受信アンテナ110、キャリアセンス回路111、搬送波制御回路112、クロック送信回路113、送信アンテナ114、受信アンテナ115および信号受信回路116を含む。
【0031】
受信アンテナ110は、到来する周囲電波を受けて電気的な信号(以下、周囲信号と称する)を出力する。
【0032】
キャリアセンス回路111は、受信アンテナ110から出力された周囲信号に基づいて周囲電波の周波数スペクトルを測定する。このキャリアセンス回路111は、ローカル生成回路111a、ミキサ111b、バンドパスフィルタ111cおよび電力測定回路111dを含む。ローカル生成回路111aは、ローカル信号を生成する。ローカル生成回路111aは、キャリアセンス期間中において、ローカル信号の周波数を予め定められた周波数範囲内で順次に変化させる。ミキサ111bは、受信アンテナ110から出力された周囲信号にローカル生成回路111aで生成されたローカル信号を合成することによって、周囲信号の周波数を変換する。バンドパスフィルタ111cは、後述するキャリアセンス範囲に対して十分に狭い通過帯域を持つ。バンドパスフィルタ111cは、ミキサ111bから出力される信号のうちの上記通過帯域内の周波数成分のみを通過させる。電力測定回路111dは、バンドパスフィルタ111cを通過した信号の電力を測定する。
【0033】
搬送波制御回路112は、キャリアセンス回路111で測定された周波数スペクトルに基づいて搬送波周波数を設定し、その周波数の搬送波信号をクロック信号の無線伝送に用いるようにクロック送信回路113を制御する。
【0034】
クロック送信回路113は、クロック生成部10により生成されたクロック信号を無線伝送するためのクロック伝送信号を生成する。このクロック送信回路113は、搬送波生成回路113aおよび変調回路113bを含む。搬送波生成回路113aは、搬送波制御回路112による制御の下に、搬送波制御回路112により選定された周波数の搬送波信号を生成する。変調回路113bは、搬送波生成回路113aにより生成された搬送波信号をクロック生成部10により生成されたクロック信号で振幅変調する。この変調回路113bで得られた信号がクロック伝送信号としてクロック送信回路113の出力とされる。
【0035】
送信アンテナ114は、クロック送信回路113から出力されたクロック伝送信号を電波として放射する。
【0036】
受信アンテナ90は、送信アンテナ114から放射された電波を受けてクロック伝送信号を得る。
【0037】
クロック受信回路91は、受信アンテナ90で得られたクロック伝送信号からクロック信号を抽出する。このクロック受信回路91は、増幅器91a、ダイオード検波器91bおよびPLL(phase locked loop)91cを含む。増幅器91aは、クロック伝送信号を増幅する。ダイオード検波器91bは、クロック伝送信号の包絡線を検波する。PLL91cは、ダイオード検波器91bにより検波された信号に位相同期したクロック信号を生成する。このPLL91cが生成したクロック信号が、クロック伝送信号から抽出されたクロック信号としてクロック受信回路91の出力とされる。
【0038】
受信コイル92は、被検体200から放射された磁気共鳴エコーを受けて、電気的なエコー信号を得る。
【0039】
RF受信回路93は、受信コイル92で得られたエコー信号に対する各種の受信処理を行う。RF受信回路93は、この受信処理の一部をクロック受信回路91から出力されるクロック信号に同期して行う。
【0040】
信号送信回路94は、RF受信回路93から出力されたエコー信号をデジタル化してエコーデータを得るとともに、このエコーデータを無線伝送するためのエコー伝送信号を生成する。信号送信回路94は、エコー伝送信号を生成するための処理の一部をクロック受信回路91から出力されるクロック信号に同期して行う。
【0041】
送信アンテナ95は、エコー伝送信号を電波として放射する。
【0042】
受信アンテナ115は、送信アンテナ95から放射された電波を受けてエコーデータを得る。
【0043】
信号受信回路116は、エコー伝送信号からエコー信号を抽出する。信号受信回路116で抽出されたエコーデータが無線ユニット11の出力としてデータ解析部12に与えられる。
【0044】
次に以上のように構成されたMRI装置101の動作について説明する。ただし、エコー信号を被検体200で生じさせ、エコー信号を収集し、この収集したエコー信号に基づいて被検体200に関する画像を再構成する動作などのような既存のMRI装置と同様な動作については説明を省略し、MRI装置101の特徴的な動作を中心に説明することとする。
【0045】
MRI装置101の特徴的な動作は、クロック信号を無線ユニット11からコイル側装置9へと伝送するための動作である。
【0046】
さて、MRI装置101の周囲には様々な医療機器が存在する可能性があり、そのような医療機器から放射される電波がMRI装置101の周囲電波となる。またMRI装置101が設置される部屋の外から到来する電波がMRI装置101の周囲電波となる可能性もある。
【0047】
キャリアセンス回路111は、被検体200の撮像を開始するのに先立ってキャリアセンスを行う。このキャリアセンスとは、予め定められた周波数帯域内(以下、キャリアセンス範囲と称する)に関する周囲電波の周波数スペクトルを測定する処理である。なお、キャリアセンス範囲は、クロック伝送信号の搬送波周波数の可変範囲として定めた周波数範囲をほとんど含むように設定される。
【0048】
具体的には、上記のような周囲電波が受信アンテナ110に到達すると、受信アンテナ110からはその周囲電波と同じ周波数を持った周囲信号が出力される。この周囲信号は、ミキサ111bでローカル信号が合成されることで周波数変換される。
【0049】
ところで、バンドパスフィルタ111cの通過帯域幅は、キャリアセンス範囲の幅に対して十分に小さく設定されている。一方、ローカル生成回路111aは様々な周波数のローカル信号を順次に生成するが、それらの周波数はキャリアセンス範囲内のそれぞれ異なる周波数をバンドパスフィルタ111cの通過帯域内の周波数にミキサ111bにて変換することができる値に定められている。このため、周囲信号のうちの様々な周波数成分が順次にバンドパスフィルタ111cを通過して電力測定回路111dへと入力される。そして電力測定回路111dは、バンドパスフィルタ111cを通過して入力される信号の電力を測定する。かくして、周囲信号に含まれるキャリアセンス範囲内の各周波数成分についての電力がそれぞれ測定されることとなり、周囲信号についてのキャリアセンス範囲内の周波数スペクトルが測定されることになる。なお、周囲信号の候補である無線LANやBluetooth(登録商標)の伝送信号は、周波数ホッピングにより周波数が動的に変更されることがある。そこでローカル生成回路111aは、そのよう周波数ホッピングにより全周波数が選択され得るのに要する期間は少なくともローカル信号の周波数を固定しておく。
【0050】
以上のようなキャリアセンスによって、クロック伝送信号の干渉波となり得る電波が存在する周波数帯域(以下、干渉帯域と称する)を探索可能である。そこで搬送波制御回路112は、干渉帯域外の周波数として搬送波周波数を設定する。
【0051】
図3はキャリアセンス回路111で測定された周波数スペクトルの一例と第1の実施形態における搬送波周波数の設定例とを示す図である。
【0052】
さて、少なくともエコーデータを収集する期間には、搬送波制御回路112は、上記のように設定した搬送波周波数を持った搬送波信号を生成するように搬送波生成回路113aを制御する。具体的には、搬送波生成回路113aがPLLを用いて搬送波信号の周波数を調整するものであるならば、搬送波制御回路112における逓倍比または分周比を変更する。
【0053】
なお、キャリアセンス回路111はキャリアセンスを予め定められた実施タイミング毎に行う。搬送波制御回路112は、キャリアセンスが行われる毎に上記のような搬送波周波数の設定を行い、次にキャリアセンスが行われるまでの間には搬送波周波数を固定する。実施タイミングは、任意に定められて良い。すなわち例えば、1検査毎や、画像1枚分のデータ収集毎などのような撮像動作の区切りに応じて実施タイミングを定めることができる。あるいは、一定の時間間隔で実施タイミングを定めることができる。実施タイミングは、固定的に定められていても良いし、ユーザの要求に応じて変更可能としても良い。
【0054】
搬送波生成回路113aにより生成された搬送波信号は、クロック生成部10が生成したクロック信号によって変調回路113bにて振幅変調される。これにより、上記のように設定された搬送波周波数を中心周波数としたクロック伝送信号が変調回路113bにて生成される。そしてこのクロック伝送信号は、送信アンテナ114および受信アンテナ90によって電波により空間を伝送される。
【0055】
受信アンテナ90から出力されたクロック伝送信号は、増幅器91aで増幅される。さらにクロック伝送信号から、ダイオード検波器91bによってクロック信号成分が包絡線検波によって抽出される。ここで抽出されるクロック信号成分は、無線伝送のために波形が歪んだものとなっている。そこで当該クロック信号成分に同期した波形の整ったクロック信号をPLL91cによって生成する。このようにして、クロック受信回路91ではクロック送信回路113によって送信されたクロック信号を再生する。
【0056】
このようにクロック受信回路91では振幅変調信号の包絡線検波が行われ、かつそれによって搬送波成分が除去されるので、搬送波信号の周波数に依存したクロック受信回路91の動作の変更は必要なく、かつ搬送波周波数が変更されてもクロック受信回路91で再生されるクロック信号の特性には影響しない。
【0057】
クロック受信回路91で再生されたクロック信号は、RF受信回路93および信号送信回路94に入力される。一方、受信コイル92により得られたエコー信号に対しては、RF受信回路93でフィルタリングおよび増幅等のアナログ信号処理が行われる。さらにエコー信号に対しては、信号送信回路94で無線伝送するための信号処理が行われる。信号送信回路94は具体的には、エコー信号をデジタル化してエコーデータに変換した上で、このエコーデータのデータ形式を無線伝送のための無線規格に準じた形式のエコー伝送信号に変換する。この際のRF受信回路93および信号送信回路94における処理は、クロック受信回路91から与えられたクロック信号に同期して実施される。
【0058】
信号送信回路94で得られたエコー伝送信号は、送信アンテナ95および受信アンテナ115によって電波により空間を伝送される。信号受信回路116は、受信アンテナ115によって得られたエコー伝送信号からエコーデータを表す信号成分を抽出するとともに、当該信号成分からエコーデータを識別する。この際の信号受信回路116における処理は、クロック生成部10により生成されたクロック信号に同期して実行される。
【0059】
以上のように第1の実施形態によれば、クロック信号を無線ユニット11からコイル側装置9に無線伝送するために使用する搬送波信号の周波数は、周囲電波の周波数とは異ならせられる。従って、クロック伝送信号と周囲電波との干渉を確実に低減でき、このような干渉によるクロック伝送信号の劣化を低減することができる。このため、クロック生成部10で生成されたクロック信号に高精度で同期したクロック信号をクロック受信回路91で再生することができる。そして、RF受信回路93および信号送信回路94と、信号受信回路116とで、上記のように高精度で同期したクロック信号を利用していることにより、コイル側装置9から送信されたエコーデータを信号受信回路116で高精度に識別することが可能である。この結果、データ解析部12では誤りの少ないエコーデータに基づいての再構成を行うことで高精度な画像を得ることが可能である。
【0060】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るMRI装置101は、第1の実施形態におけるMRI装置101と同様に図1および図2に示すような構成をなす。
【0061】
MRI装置101が第2の実施形態において第1の実施形態と異なるのは、搬送波制御回路112における処理である。そこで以下においては、第2の実施形態における特徴的な部分のみについて説明する。
【0062】
さて、第1の実施形態におけるクロック伝送信号は、搬送波信号をクロック信号で振幅変調して得られる。このため、搬送波信号の周波数をFca、クロック信号の周波数をFckと表す場合に、クロック伝送信号には周波数Fca,Fca+Fck,Fca−Fckの各成分が含まれる。しかしながら、周波数Fcaを干渉帯域外に定めているだけであるので、周波数Fca+Fck,Fca−Fckの各成分が干渉帯域内となってしまう恐れがある。もちろん、この場合でも周波数Fcaが干渉帯域内である場合に比べれば周囲電波による干渉波大幅に軽減されるから、前述した第1の実施形態の効果は十分に達成される。しかしながら、Fca+Fck,Fca−Fckの各成分が周囲電波と干渉してしまうと、第1の実施形態の効果が部分的に損なわれる恐れがある。
【0063】
そこでMRI装置において搬送波制御回路112は、干渉帯域に対してクロック周波数Fck以上離れるように搬送波周波数Fcaを設定する。具体的には搬送波制御回路112は、干渉帯域の下限の周波数からクロック周波数Fck以上の規定値を減じて求まる周波数、または干渉帯域の上限の周波数にクロック周波数Fckを加えて求まる周波数として搬送波周波数Fcaを設定する。
【0064】
図4はキャリアセンス回路111で測定された周波数スペクトルの一例と第2の実施形態における搬送波周波数の設定例とを示す図である。
【0065】
かくしてこの第2の実施形態によれば、クロック伝送信号に含まれた周波数Fca,Fca+Fck,Fca−Fckの各成分がいずれも干渉帯域外となるので、第1の実施形態と同様な効果を、第1の実施形態よりも効率的に達成することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るMRI装置101は、第1の実施形態におけるMRI装置101と同様に図1および図2に示すような構成をなす。
【0067】
MRI装置101が第3の実施形態において第1の実施形態と異なるのは、キャリアセンス回路111および搬送波制御回路112における処理である。そこで以下においては、第3の実施形態の特徴的な部分のみについて説明する。
【0068】
さて、周囲電波としては互いに異なる複数の周波数帯の電波が混在している場合がある。そしてこのような場合には、第1の実施形態または第2の実施形態では適切な搬送波周波数を設定できない恐れがある。つまり、ある干渉帯域の周囲電波との干渉は十分に低減できても、他の干渉帯域の周囲電波との干渉が十分に低減できないような搬送波周波数が設定されてしまう恐れがある。
【0069】
そこでMRI装置101においては、キャリアセンス回路111で電力を測定する複数の周波数(以下、測定対象周波数と称する)をそれぞれ、クロック信号のクロック周波数Fckだけ離れた別の測定対象周波数が必ず存在するように定めておく。さらにバンドパスフィルタ111cは、IF(intermediate frequency)帯にて急峻な周波数通過特性を呈するものとする。この場合にバンドパスフィルタ111cとしては、SAWフィルタなどの適用が考えられる。
【0070】
一方、搬送波制御回路112は、クロック周波数Fckだけ離れた2つの測定対象周波数よりなる複数の周波数ペアのそれぞれについて、その周波数ペアの2つの周波数のそれぞれについて測定された電力の和(以下、電力和と称する)を計算する。そして搬送波制御回路112は、求まった複数の電力和のうちから最小値を選び出し、その値に対応する周波数ペアの2つの周波数の中間値を搬送波周波数として設定する。つまり搬送波制御回路112は、±1/2×Fckをそれぞれ中心周波数とする2つの周波数帯域についての電力和が最小となる周波数を搬送波周波数として設定する。
【0071】
図5はキャリアセンス回路111で測定された周波数スペクトルの一例と第3の実施形態における搬送波周波数の設定例とを示す図である。
【0072】
図5において、周波数Ft1,Ft2が、それについて測定される電力の和が最小となる周波数ペアである。そして搬送波周波数は、周波数Ft1,Ft2の中間値となっている。
【0073】
さてここで、例えばクロック周波数Fckを2MHzとするときに、1.99MHz、3MHzおよび1MHzの干渉波が存在するそれぞれの場合に着目する。図6、図7および図8は、クロック信号、干渉波およびクロック信号と干渉波との和信号のそれぞれの波形を比較して示す図であり、干渉波周波数が1.99MHz、3MHzおよび1MHzである場合をそれぞれ示している。
【0074】
干渉波周波数が1.99MHzや3MHzである場合の図6や図7に示す和信号からは、ACカップル後にコンパレートすると2MHzの信号を復調可能である。これに対し、干渉波周波数が1MHzである場合の図8に示す和信号からは、ACカップル後にコンパレートしても2MHzの信号を復調できない。
【0075】
図9はクロック周波数を2MHz、搬送波周波数を2.45GHzとした場合の干渉波周波数に対するクロック精度の測定結果を示す図である。
【0076】
この図9に示す測定結果からも、搬送波周波数±1/2×クロック周波数に干渉波が存在する場合に最もクロック精度が劣化することが分かる。
【0077】
第3の実施形態では、このような振幅変調に特有の性質を利用し、周囲電波による干渉を低減している。すなわち、上記のように搬送波周波数を設定していることにより、搬送波周波数±1/2×クロック周波数に存在する干渉波が最も小さくなり、周囲電波による干渉の影響を最小限に抑えることが可能である。
【0078】
かくして第3の実施形態によれば、図5に示すように干渉帯域が多く存在する状況においても、最も周囲電波による干渉を低減し得るように搬送波周波数を設定できる。そしてこのように搬送波周波数を設定することにより、第1の実施形態と同様な効果を達成することが可能である。
【0079】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係るMRI装置102の概略構成は第1の実施形態におけるMRI装置101と同様である。そしてMRI装置102がMRI装置101と異なるのは、コイル側装置9および無線ユニット11の構成にある。
【0080】
図10はMRI装置102の要部の構成を示すブロック図である。なお、図10において図1および図2と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0081】
MRI装置102におけるコイル側装置9は、受信アンテナ90、クロック受信回路91、受信コイル92、RF受信回路93、信号送信回路94、送信アンテナ95、受信アンテナ96、情報受信回路97および再生制御回路98を具備する。すなわちコイル側装置9はMRI装置102においては、MRI装置101における構成にさらに、受信アンテナ96、情報受信回路97および再生制御回路98を追加したものとなっている。
【0082】
また無線ユニット11は、受信アンテナ110、キャリアセンス回路111、クロック送信回路113、送信アンテナ114、受信アンテナ115、信号受信回路116、搬送波制御回路117、周波数変換回路118、情報送信回路119および送信アンテナ120を含む。すなわち無線ユニット11はMRI装置102においては、MRI装置101における搬送波制御回路112に代えて搬送波制御回路117を備えるとともに、さらに周波数変換回路118、情報送信回路119および送信アンテナ120を追加したものとなっている。
【0083】
搬送波制御回路117は、キャリアセンス回路111で得られた周波数スペクトルに基づいてクロック信号の変換率(逓倍比または分周比)を設定し、その変換率でクロック信号の周波数を変換するように周波数変換回路118を制御する。また搬送波制御回路117は、キャリアセンス回路111で得られた周波数スペクトルに基づいて搬送波周波数を設定し、その周波数の搬送波信号をクロック信号の無線伝送に用いるようにクロック送信回路113を制御する。さらに搬送波制御回路117は、無線伝送するクロック信号の周波数を表す周波数情報を情報送信回路119に与える。
【0084】
周波数変換回路118は、クロック生成部10により生成されたクロック信号を、搬送波制御回路117の制御の下に周波数変換する。周波数変換回路118は、周波数変換後のクロック信号をクロック送信回路113へ与える。なお周波数変換回路118は、周波数の変換率を1とすることもできる。すなわち周波数変換回路118は、クロック生成部10により生成されたクロック信号をそのままの周波数で出力することもできる。
【0085】
情報送信回路119は、周波数情報を無線送信するための情報伝送信号を生成する。
【0086】
送信アンテナ120は、情報伝送信号を電波として放射する。
【0087】
受信アンテナ96は、送信アンテナ120から放射された電波を受けて情報伝送信号を得る。
【0088】
情報受信回路97は、情報伝送信号から周波数情報を抽出する。
【0089】
再生制御回路98は、クロック受信回路91におけるクロック信号の再生処理を周波数情報に基づいて制御する。
【0090】
次に以上のように構成されたMRI装置102の動作について説明する。なお、MRI装置102の動作の多くは第3の実施形態におけるMRI装置101の動作と同様であるので、そのような動作についての説明は省略し、MRI装置102の特徴的な動作を中心に説明することとする。
【0091】
MRI装置101では、クロック生成部10で生成されたクロック信号をそのままクロック伝送信号にて伝送している。これに対してMRI装置102では、周波数変換回路118を備えていることにより、クロック生成部10で生成されたクロック信号をそのままクロック伝送信号で伝送することもできるが、周波数を変換した上でクロック伝送信号で伝送することもできる。そしてクロック伝送信号で伝送するクロック信号の周波数を変更することにより、周波数ペアを構成する2つの測定対象周波数の組み合わせが変化することになる。
【0092】
そこで、複数のクロック周波数のそれぞれについて複数の周波数ペアが存在するように複数の測定対象周波数を定めておく。そして搬送波制御回路117は、キャリアセンス回路111にて測定された周波数スペクトルに基づいて、複数の周波数ペアのそれぞれに関する電力和を第3の実施形態と同様に計算する処理を、複数のクロック周波数のそれぞれを対象として行う。搬送波制御回路117は、計算した全ての電力和のうちから最小値を選び出し、その値に対応する周波数ペアの2つの周波数の中間値を搬送波周波数として設定するとともに、当該周波数ペアが関係するクロック周波数を伝送するクロック信号の周波数として設定する。
【0093】
具体的には、周波数変換回路118がクロック生成部10が生成したクロック信号を2倍に逓倍することによって2・Fckの周波数を持ったクロック信号を生成可能であるとする。この場合には、図5に示す測定対象周波数Ft1,Ft2のような関係の2つの測定対象周波数からなる複数の周波数ペアのそれぞれについての電力和の他に、図11に示す測定対象周波数Ft11,Ft12のような関係の2つの測定対象周波数からなる複数の周波数ペアのそれぞれについての電力和が計算される。そして、例えば測定対象周波数Ft1,Ft2からなる周波数ペアについての電力和が最小値であるならば、周波数Ft1,Ft2の中間値として図5のような搬送波周波数が設定されるとともに、伝送するクロック信号の周波数がFckに設定される。これに対して、測定対象周波数Ft11,Ft12からなる周波数ペアについての電力和が最小値であるならば、周波数Ft11,Ft12の中間値として図11のような搬送波周波数が設定されるとともに、伝送するクロック信号の周波数が2・Fckに設定される。
【0094】
搬送波制御回路117は、第1の実施形態の場合と同様にして搬送波生成回路113aの動作を制御する。また搬送波制御回路117は、設定した周波数のクロック信号が周波数変換回路118から変調回路113bへと与えられるように周波数変換回路118における変換率を制御する。具体的には搬送波制御回路117は、上記のように伝送するクロック信号の周波数をFckに設定した場合には逓倍比を1とし、また伝送するクロック信号の周波数を2・Fckに設定した場合には逓倍比を2とするように周波数変換回路118を制御する。
【0095】
一方、搬送波制御回路117は、伝送するクロック信号の周波数を表した周波数情報を情報送信回路119へと与える。周波数情報は、伝送するクロック信号の周波数値を表す情報であっても良いし、周波数変換回路118における変換率を表す情報であっても良い。この周波数情報は、情報送信回路119、送信アンテナ120、受信アンテナ96および情報受信回路97を介して再生制御回路98へと与えられる。再生制御回路98は、周波数情報に基づいて、PLL91cから周波数Fckのクロック信号が出力されるように、PLL91cの分周比または逓倍比を調整する。具体的には再生制御回路98は、例えば周波数情報が周波数Fckを表す場合にはPLL91cの分周比を1とし、周波数情報が周波数2・Fckを表す場合にはPLL91cの分周比を2とする。かくして、周波数変換回路118により周波数変換がなされたクロック信号が伝送された場合には、そのクロック信号に基づいてクロック生成部10が生成したクロック信号が再生されることになる。
【0096】
以上のように第4の実施形態によれば、伝送するクロック信号の周波数を変更可能としたことによって、同じ搬送波周波数を用いる場合の周囲電波との干渉の度合いを変更することができる。そして、周囲電波との干渉が最小となるように、伝送するクロック信号の周波数と搬送波周波数との組み合わせを選ぶので、第3の実施形態の場合よりも多くの条件のうちから周囲電波との干渉が最小となる条件を選ぶことができ、周囲電波との干渉をさらに効率的に低減できる可能性がある。
【0097】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係るMRI装置103の概略構成は第1の実施形態におけるMRI装置101と同様である。そしてMRI装置103がMRI装置101と異なるのは、コイル側装置9および無線ユニット11の構成にある。
【0098】
図12はMRI装置103の要部の構成を示すブロック図である。なお、図12において図1、図2および図10と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0099】
MRI装置103におけるコイル側装置9は、受信アンテナ90、クロック受信回路91、受信コイル92、RF受信回路93、信号送信回路94、送信アンテナ95およびクロック判別回路99を具備する。すなわちコイル側装置9はMRI装置103においては、MRI装置101における構成にさらに、クロック判別回路99を追加したものとなっている。
【0100】
また無線ユニット11は、受信アンテナ110、キャリアセンス回路111、クロック送信回路113、送信アンテナ114、受信アンテナ115、信号受信回路116、搬送波制御回路117および周波数変換回路118を含む。すなわち無線ユニット11はMRI装置103においては、MRI装置101における搬送波制御回路112に代えて搬送波制御回路117を備えるとともに、さらに周波数変換回路118を追加したものとなっている。つまり無線ユニット11はMRI装置103においてはMRI装置102における情報送信回路119および送信アンテナ120を省略したものとなっている。
【0101】
クロック判別回路99は、クロック生成回路99aおよび周波数比較回路99bを含む。クロック生成回路99aは、クロック生成部10で生成されるクロック信号や伝送されたクロック信号とは非同期で、すなわち自走によってクロック信号(以下、自走クロック信号と称する)を生成する。周波数比較回路99bは、ダイオード検波器91bにより検波された信号と自走クロック信号との周波数比を測定する。そして周波数比較回路99bは、測定した周波数比に応じた逓倍比または分周比をPLL91cに設定する。
【0102】
次に以上のように構成されたMRI装置103の動作について説明する。なお、MRI装置103の動作の多くはMRI装置102の動作と同様であるので、そのような動作についての説明は省略し、MRI装置103の特徴的な動作を中心に説明することとする。
【0103】
ここでMRI装置103の動作においてMRI装置102の動作と異なる点は、伝送するクロック信号の周波数を無線ユニット11からコイル側装置9へと通知するのではなく、コイル側装置9において判別することにある。
【0104】
クロック生成回路99aは、クロック生成部10が生成するクロック信号の周波数に対する比率が既知である周波数を持った自走クロック信号を生成する。このため、クロック生成部10が生成したクロック信号がそのまま伝送されてきているならば、ダイオード検波器91bにより検波された信号と自走クロック信号との周波数比は上記の既知の比率になる。これに対して周波数変換回路118にて周波数変換がなされたのちのクロック信号が伝送されてきているならば、ダイオード検波器91bにより検波された信号と自走クロック信号との周波数比は上記の既知の比率から大きくずれる。そしてそのずれ率は、周波数変換回路118における変換率に応じた大きさになる。そこで周波数比較回路99bは、ダイオード検波器91bにより検波された信号と自走クロック信号との周波数比に基づいて、例えば閾値処理およびテーブル参照などによってPLL91cの逓倍比または分周比を決定することができる。
【0105】
かくして第5の実施形態によれば、第4の実施形態と同様な効果を達成できる。さらに第5の実施形態によれば、周波数情報を伝送する必要が無いことから、そのための構成要素を省略することが可能であり、第4の実施形態に比べてコイル側装置9および無線ユニット11の構成を簡略化できる。
【0106】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0107】
搬送波生成回路113aがPLLを内蔵する場合、このローカル生成回路111aを省略し、上記のPLLによりローカル信号を生成しても良い。
【0108】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…静磁場磁石、2…傾斜磁場コイル、3…傾斜磁場電源、4…寝台、5…寝台制御部、6…送信コイルユニット、7…パルス生成部、8…パルス・傾斜磁場制御部、9…コイル側装置、10…クロック生成部、11…無線ユニット、12…データ解析部、13…記憶部、14…表示部、15…入力部、16…主制御部、90…受信アンテナ、91…クロック受信回路、91a…増幅器、91b…ダイオード検波器、92…受信コイル、93…RF受信回路、94…信号送信回路、95…送信アンテナ、96…受信アンテナ、97…情報受信回路、98…再生制御回路、99…クロック判別回路、99a…クロック生成回路、99b…周波数比較回路、101,102,103…磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)、110…受信アンテナ、111…キャリアセンス回路、111a…ローカル生成回路、111b…ミキサ、111c…バンドパスフィルタ、111d…電力測定回路、112…搬送波制御回路、113…クロック送信回路、113a…搬送波生成回路、113b…変調回路、114…送信アンテナ、115…受信アンテナ、116…信号受信回路、117…搬送波制御回路、118…周波数変換回路、119…情報送信回路、120…送信アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体から放射された磁気共鳴エコーを受けてエコー信号を出力する受信コイルと、
クロック信号を生成するクロック生成部と、
前記エコー信号を無線伝送するためのエコー伝送信号を生成して送信するものであり、前記エコー伝送信号を生成するための処理の少なくとも一部を前記クロック信号に同期して行うエコー送信部と、
搬送波信号を生成するもので、前記搬送波信号の周波数を可変範囲内で変更可能な搬送波生成部と、
前記クロック信号で前記搬送波信号を変調して得られるクロック伝送信号を無線送信するクロック送信部と、
前記送信部により送信された前記クロック伝送信号に基づいて前記クロック信号を再生する再生部と、
前記送信部により送信された前記エコー伝送信号から前記エコー信号を抽出するものであり、前記エコー信号を抽出するための処理の一部を前記再生部により再生された前記クロック信号に同期して行うエコー受信部と、
前記受信部により抽出された前記エコー信号に基づいて前記被検体に関する画像を再構成する再構成部と、
前記クロック伝送信号の干渉波に成り得る電波の周波数を検出する検出部と、
前記検出部により検出された周波数に対する干渉が比較的小さい周波数を前記可変範囲内から選定し、その周波数の前記搬送波信号を生成するように前記搬送波生成部を制御する制御部とを具備したこととを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出部により検出された周波数に対して前記クロック信号の周波数以上離れた周波数を選定することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記可変範囲内の周波数のうちで、その周波数よりも前記クロック信号の1/2だけ高い周波数および低い周波数をそれぞれ中心とする規定幅の2つの周波数帯域のそれぞれに関する電波の電力の和が最小となる周波数を選定することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
被検体から放射された磁気共鳴エコーを受けてエコー信号を出力する受信コイルと、
基準クロック信号を生成するクロック生成部と、
前記エコー信号を無線伝送するためのエコー伝送信号を生成して送信するものであり、前記エコー伝送信号を生成するための処理の少なくとも一部を前記クロック信号に同期して行うエコー送信部と、
前記クロック生成部で生成された前記クロック信号の周波数を変換して少なくとも1つの伝送用クロック信号を得る変換部と、
搬送波信号を生成するもので、前記搬送波信号の周波数を可変範囲内で変更可能な搬送波生成部と、
前記可変範囲内の周波数のうちでその周波数よりも前記基準クロック信号の1/2だけ高い周波数および低い周波数をそれぞれ中心とする規定幅の2つの周波数帯域のそれぞれに関する電波の電力の和の最小値を算出するとともに、前記可変範囲内の周波数のうちでその周波数よりも前記伝送用クロック信号の1/2だけ高い周波数および低い周波数をそれぞれ中心とする規定幅の2つの周波数帯域のそれぞれに関する電波の電力の和の最小値を前記少なくとも1つの伝送用クロック信号のそれぞれに関して算出する算出部と、
前記算出部で算出される複数の最小値のうちの最小値を判定し、その最小値が得られる周波数の前記搬送波信号を生成するように前記搬送波生成部を制御する制御部と、
前記算出部で算出される複数の最小値のうちの最小値を判定し、前記基準クロック信号および前記伝送用クロック信号のうちでその最小値が得られるクロック信号を選定し、当該クロック信号で前記搬送波信号を変調して得られるクロック伝送信号を無線送信するクロック送信部と、
前記送信部により送信された前記クロック伝送信号に基づいて前記基準クロック信号を再生する再生部と、
前記送信部により送信された前記エコー伝送信号から前記エコー信号を抽出するものであり、前記エコー信号を抽出するための処理の一部を前記再生部により再生された前記基準クロック信号に同期して行うエコー受信部と、
前記受信部により抽出された前記エコー信号に基づいて前記被検体に関する画像を再構成する再構成部とを具備したこととを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記クロック送信部が選定したクロック信号の周波数を表す周波数情報を前記再生部へと供給する供給部をさらに備え、
前記再生部は前記クロック伝送信号に含まれたクロック信号を前記周波数情報が表す周波数と前記基準クロック信号の周波数との比率に基づいて周波数変換することにより前記基準クロック信号を再生することを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記クロック伝送信号に含まれたクロック信号の周波数を判定する判定部をさらに備え、
前記再生部は前記クロック伝送信号に含まれたクロック信号を前記判定部により判定された周波数と前記基準クロック信号の周波数との比率に基づいて周波数変換することにより前記基準クロック信号を再生することを特徴とする請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−189079(P2011−189079A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59803(P2010−59803)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】