説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】画素値が異常な画素を除去することで、展開処理後のMR画像の画質を向上させる。
【解決手段】計算機システム10が、受信コイル8a〜8eが有する複数の要素コイルを用いてMR信号を収集するパラレルイメージングの撮像シーケンスを実行し、収集したMR信号からMR画像を再構成する。また、計算機システム10は、各要素コイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを用いて、MR画像に生じた折り返しを展開する展開処理を実行する。その後、計算機システム10は、展開処理により得られた展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する。そして、計算機システム10は、画素値が異常な画素が含まれていると判定した場合に、その画素の位置における各チャンネル間の感度差が大きくなるように感度分布データを修正し、修正後の感度分布データを用いて展開処理を再実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数のRF(Radio Frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号からMR画像を再構成する装置である。かかるMRIを用いた撮像法の1つに、パラレルイメージングと呼ばれる撮像法がある。
【0003】
パラレルイメージングは、要素コイルと呼ばれる複数のRFコイルを有するアレイコイルを用いるとともに、位相エンコードをスキップさせることで、位相エンコード数をMR画像の再構成に必要な所定位相エンコード数のRFコイル数分の1に減らしてMR信号を収集する。これにより、各RFコイルによってMR信号が同時に受信され、受信されたMR信号からRFコイルごとにMR画像が再構成される。かかるパラレルイメージングによれば、RFコイルごとに生成されるMR画像のFOVが小さくなり、スキャン時間が短縮されて撮像の高速化が図られる。
【0004】
なお、パラレルイメージングでは、各RFコイルにより収集されたMR信号から再構成されたMR画像には、画像端に折返しが生じる。そのため、パラレルイメージングでは、複数のRFコイルの感度が個々に異なることを利用して、RFコイルごとに得られた複数のMR画像それぞれに生じた折り返しを展開する展開処理が後処理として行われる。この展開処理では、RFコイルの空間的な感度分布を示す感度分布データが用いられる。そして、展開処理によって得られた複数の展開画像が最終的なFOV(Field Of View)の画像に合成される。このように、パラレルイメージングによれば、撮像の高速化が図られるとともに、例えば腹部全体のような広い視野の画像が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−329613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のパラレルイメージングでは、以下に説明するように、展開処理により得られる展開画像において画素値が異常な画素が生じ、この画素によって展開画像の画質が低下する場合があった。
【0007】
前述したように、従来のパラレルイメージングでは、アレイコイルが有する要素コイル間の感度分布の違いを利用し、受信チャンネルごとに生成される折り返しが生じたMR画像と各チャンネルの感度分布データに基づいて展開処理が行われる。この展開処理では、例えば、以下に示す式(1)により、展開処理後の画像における各点について画素値が求められ、求められた各点の画素値をまとめることで、折り返しが展開された展開画像が生成される。
【0008】
x=(SHS)-1Hy ・・・(1)
【0009】
ここで、xは、展開後の画像における各点のMR値(N[pt]個のベクトル)であり、yは、要素コイルにより測定された信号の強度(N[ch]個のベクトル:y={V(1),V(2),・・・,V(N[ch])}である。また、Sは、展開の対象となる点におけるコイル感度(N[CH]×N[pt]の行列)であり、SHは、転置共役行列である。
【0010】
かかる展開処理の中では、一般的に、LU分解により擬似逆行列が求められる。そして、このLU分解の中で行われる除算処理において、除数が非常に小さくなる場合があった。この事象は、例えば、展開処理で用いられる感度分布データにおいて空間的な各位置における各チャンネル間の感度差が少なかった場合や、感度分布データを作成するためのスキャンと本撮像のスキャンとの間で被検体が動いてしまった場合などに生じる。
【0011】
このように、LU分解において除数が非常に小さくなった場合には、逆行列の成分が非常に大きな値となってしまう。この結果、展開処理により得られる展開画像において、いくつかの画素の画素値の絶対値が非常に大きくなる場合があった。図8は、従来技術における課題を説明するための図である。図8に示すように、展開画像31において、例えば画像の端部に近い位置に画素値が極端に大きい画素32が生じる場合があった。そして、このような画素値が異常な画素によって、展開画像の画質が低下する場合があった。
【0012】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、展開処理により得られる展開画像から画素値が異常な画素を除去することで、パラレルイメージングにより得られる画像の画質を向上させることができるMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る磁気共鳴イメージング装置は、複数のRFコイルを用いてMR信号を収集するパラレルイメージングの撮像シーケンスを実行する実行部と、前記MR信号からMR画像を再構成する再構成部と、前記RFコイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを用いて、前記MR画像に生じた折り返しを展開する展開処理を実行する展開処理部と、前記展開処理により得られた展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する判定部と、前記展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると判定された場合に、当該画素の画素値が正常な値に近づくように前記感度分布データを修正する修正部とを備え、前記展開処理部は、前記感度分布データが修正された後に、修正後の感度分布データを用いて前記展開処理を再実行する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、展開処理により得られる展開画像から画素値が異常な画素を除去することで、パラレルイメージングにより得られる画像の画質を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施例1に係るMRI装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、本実施例1に係る計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、本実施例1に係るMRI装置によるパラレルイメージングの処理手順を示すフローチャートである。
【図4】図4は、本実施例2に係る計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図5】図5は、本実施例2に係るMRI装置によるパラレルイメージングの処理手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、第3の実施形態に係る計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図7】図7は、第3の実施形態に係るMRI装置によるパラレルイメージングの処理手順を示すフローチャートである。
【図8】図8は、従来技術における課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、実施形態に係るMRI装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
最初に、第1の実施形態に係るMRI装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイル6、送信部7、受信コイル8a〜8e、受信部9、及び計算機システム10を有する。
【0018】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成されており、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石や超伝導磁石などが用いられる。
【0019】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されており、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx,y,zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。そして、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、x,y,zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、例えば、z軸方向は、静磁場と同方向に設定される。
【0020】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、リードアウト用傾斜磁場Gr、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びスライス選択用傾斜磁場Gsにそれぞれ対応している。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてMR信号の位相を変化させるために利用される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。
【0021】
傾斜磁場電源3は、計算機システム10による制御のもと、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0022】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備えており、後述する寝台制御部5による制御のもと、天板4aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0023】
寝台制御部5は、寝台4を駆動することで、天板4aを長手方向又は上下方向へ移動する。
【0024】
送信コイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生させる。この送信コイル6は、例えば、概略円筒状に形成されたWB(Whole Body)コイルであり、高周波磁場の影響で被検体Pから発せられたMR信号を受信することもできる。送信コイル6は、MR信号を受信した場合には、受信したMR信号を受信部9へ送信する。
【0025】
送信部7は、計算機システム10による制御のもと、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル6に送信する。
【0026】
受信コイル8a〜8eは、傾斜磁場コイル2の内側に配置されており、高周波磁場の影響によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル8aは、被検体Pの頭部に装着される頭部用のコイルである。また、受信コイル8b及び8cは、それぞれ、被検体Pの背中と天板4aとの間に配置される脊椎用のコイルである。また、受信コイル8d及び8eは、それぞれ、被検体の腹側に装着される腹部用のコイルである。
【0027】
なお、受信コイル8a〜8eは、それぞれ、被検体Pから発せられた磁気共鳴信号を受信する複数の要素コイル(RFコイル)を有するアレイコイルである。そして、受信コイル8a〜8eは、それぞれ、自身が有する要素コイルによってMR信号が受信されると、受信されたMR信号を受信部9へ出力する。
【0028】
受信部9は、計算機システム10による制御のもと、受信コイル8a〜8eから出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成する。また、受信部9は、MR信号データを生成すると、そのMR信号データを計算機システム10に送信する。
【0029】
なお、受信部9は、受信コイル8a〜8eが有する複数の要素コイルから出力されるMR信号を受信するための複数の受信チャンネルを有している。そして、受信部9は、撮像に用いる要素コイルが計算機システム10から通知された場合には、通知された要素コイルから出力されたMR信号が受信されるように、通知された要素コイルに対して受信チャンネルを割り当てる。
【0030】
計算機システム10は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム10は、操作者により設定された撮像条件に基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することで、各種の撮像シーケンスを実行する。また、計算機システム10は、撮像シーケンスを実行することで収集されたMR信号からMR画像を再構成する。かかる計算機システム10は、インタフェース部11、データ収集部12、データ処理部13、記憶部14、表示部15、入力部16、及び制御部17を有する。
【0031】
インタフェース部11は、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7、及び受信部9に接続されており、これらの各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を制御する。
【0032】
データ収集部12は、インタフェース部11を介して、受信部9から送信されるMR信号データを収集し、収集したMR信号データを記憶部14に格納する。
【0033】
データ処理部13は、各種のデータ処理を行う。例えば、データ処理部13は、記憶部14により記憶されているMR信号データに対してフーリエ変換などの後処理を施すことで、被検体P内を表すMR画像を再構成する。また、データ処理部13は、記憶部14により記憶されているMR信号データに対して断面変換などの所定の処理を施すことで、受信コイル8a〜8eが有する要素コイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを生成する。そして、データ処理部13は、生成したMR画像及び感度分布データを記憶部14に格納する。
【0034】
記憶部14は、計算機システム10により処理される各種データを記憶する。また、データ収集部12により収集されたMR信号データや、データ処理部13により生成されたMR画像及び感度分布データなどを記憶する。この記憶部14は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やRAM(Random Access Memory)などにより実現される。
【0035】
表示部15は、データ処理部13により生成されたMR画像などの各種情報を表示する。この表示部15は、例えば、液晶表示器などの表示デバイスにより実現される。
【0036】
入力部16は、操作者から各種操作や情報入力を受け付ける。この入力部16は、例えば、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチなどの選択デバイス、キーボードなどの入力デバイスなどにより実現される。
【0037】
制御部17は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリなどを有し、各種プログラムを実行することでMRI装置100を総括的に制御する。例えば、制御部17は、入力部16を介して操作者から受け付けた撮像条件基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することで、各種の撮像シーケンスを実行する。また、制御部17は、撮像シーケンスを実行した後に、収集されたMR信号からMR画像又は感度分布データを生成するようデータ処理部13を制御する。
【0038】
以上、第1の実施形態に係るMRI装置100の構成について説明した。このような構成のもと、第1の実施形態では、計算機システム10が、受信コイル8a〜8eが有する複数の要素コイルを用いてMR信号を収集するパラレルイメージングの撮像シーケンスを実行し、収集したMR信号からMR画像を再構成する。また、計算機システム10は、各要素コイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを用いて、MR画像に生じた折り返しを展開する展開処理を実行する。その後、計算機システム10は、展開処理により得られた展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する。そして、計算機システムは、画素値が異常な画素が含まれていると判定した場合に、その画素の位置における各チャンネル間の感度差が大きくなるように感度分布データを修正し、修正後の感度分布データを用いて展開処理を再実行する。
【0039】
すなわち、第1の実施形態では、展開処理により得られた展開画像に画素値が異常な画素が含まれていた場合に、その画素の画素値が正常な値に近づくように感度分布データが修正され、修正後の感度分布データを用いて展開処理が再実行される。したがって、第1の実施形態によれば、展開処理により得られる展開画像から画素値が異常な画素を除去することで、パラレルイメージングにより得られる画像の画質を向上させることができる。
【0040】
以下では、第1の実施形態に係るMRI装置100について具体的に説明する。図2は、第1の実施形態に係る計算機システム10の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図2では、図1に示した計算機システム10が有する各部のうち、データ処理部13、記憶部14及びデータ収集部12を示している。
【0041】
図2に示すように、計算機システム10は、データ処理部13、記憶部14及びデータ収集部12を有する。
【0042】
記憶部14は、MR信号データ記憶部14a、画像データ記憶部14b、及び感度分布データ記憶部14cを有する。MR信号データ記憶部14aは、データ収集部12により収集されたMR信号データを記憶する。画像データ記憶部14bは、データ処理部13により生成されたMR画像を記憶する。感度分布データ記憶部14cは、受信コイル8a〜8eが有する各要素コイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを要素コイルごとに記憶する。
【0043】
制御部17は、シーケンス実行部17aを有する。シーケンス実行部17aは、入力部16を介して操作者から受け付けた撮像条件基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することで、各種の撮像シーケンスを実行する。例えば、シーケンス実行部17aは、パラレルイメージングの撮像シーケンスや、受信コイル8a〜8eが有する各要素コイルの空間的な感度分布を測定する感度測定シーケンスを実行する。
【0044】
データ処理部13は、感度分布作成部13a、画像再構成部13b、画像展開処理部13c、異常信号判定部13d、及び感度分布修正部13eを有する。
【0045】
感度分布作成部13aは、感度測定シーケンスが実行されることにより収集されたMR信号データをMR信号データ記憶部14aから読み出し、読み出したMR信号データに対して断面変換などの所定の処理を施すことで、受信コイル8a〜8eが有する要素コイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを生成する。そして、感度分布作成部13aは、生成した感度分布データを感度分布データ記憶部14cに格納する。
【0046】
画像再構成部13bは、各種撮像シーケンスが実行されることにより収集されたMR信号データをMR信号データ記憶部14aから読み出し、読み出したMR信号データに対してフーリエ変換等の後処理を施すことで、被検体P内を表すMR画像を再構成する。そして、画像再構成部13bは、再構成したMR画像を画像データ記憶部14bに格納する。
【0047】
画像展開処理部13cは、受信コイル8a〜8eが有する各要素コイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを用いて、MR画像に生じた折り返しを展開する展開処理を実行する。また、画像展開処理部13cは、後述する感度分布修正部13eからの指示に応じて、修正後の感度分布データを用いて展開処理を再実行する。
【0048】
異常信号判定部13dは、画像展開処理部13cによる展開処理により得られた展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する。例えば、異常信号判定部13dは、展開画像に含まれる画素の画素値の分布状況から画素値の代表値を算出し、算出した代表値に基づいて、展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する。
【0049】
具体的な例としては、異常信号判定部13dは、展開画像に含まれる画素の画素値のヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムから画素値の代表値として中央値を算出する。そして、例えば、異常信号判定部13dは、算出した中央値に所定の倍率を乗じた値を閾値として設定し、その閾値以上の画素値を異常であると判定する。なお、異常信号判定部13dは、展開処理に含まれる計算処理で画素値がNaNとなった画素についても異常であると判定する。異常信号判定部13dは、この判定方法に基づいて、展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する。
【0050】
そして、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていないと判定した場合には、異常信号判定部13dは、画像展開処理部13cにより生成された展開画像を画像データ記憶部14bに登録する。一方、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると判定した場合には、異常信号判定部13dは、後述する感度分布修正部13eに対して、画素値が異常な画素があったことを通知する。
【0051】
感度分布修正部13eは、異常信号判定部13dにより展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると判定された場合に、その画素の画素値が正常な値に近づくように感度分布データの修正を行う。第1の実施形態では、感度分布修正部13eは、画素値が異常であると判定された画素の位置における各チャンネル間の感度差が大きくなるように感度分布データを修正する。
【0052】
具体的な例としては、感度分布修正部13eは、画素値が異常な画素があったことが異常信号判定部13dから通知されると、感度分布データ記憶部14cにより記憶されている各要素コイルの感度分布データを修正する。このとき、例えば、感度分布修正部13eは、画素値が異常であると判定された画素の位置における感度分布の値をべき乗(例えば、1.005乗)することで、その位置における各チャンネル間の感度差が大きくなるように感度分布データを修正する。また、例えば、感度分布修正部13eは、画素値が異常であると判定された画素の近傍に位置する16点での感度分布から平均値を算出し、算出した平均値を画素値が異常であると判定された画素の位置における感度分布として設定するよう感度分布データを修正する。
【0053】
そして、感度分布修正部13eは、各要素コイルの感度分布データを修正した後に、画像展開処理部13cに対して、修正後の感度分布データを用いて展開処理を再実行するよう指示する。
【0054】
次に、第1の実施形態に係るMRI装置100によるパラレルイメージングの処理手順について説明する。図3は、第1の実施形態に係るMRI装置100によるパラレルイメージングの処理手順を示すフローチャートである。なお、ここでは、感度測定シーケンスを実行することにより得られた感度分布データが、すでに感度分布データ記憶部14cに格納されていることとする。
【0055】
図3に示すように、MRI装置100では、シーケンス実行部17aが、入力部16を介して操作者から撮像開始の指示を受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、受信コイル8a〜8eの中から撮像用に選択された受信コイルを用いてMR信号を収集するパラレルイメージングの撮像シーケンスを実行する(ステップS102)。
【0056】
続いて、画像再構成部13bが、データ収集部12により収集されたMR信号からMR画像を再構成する(ステップS103)。そして、画像展開処理部13cが、感度分布データ記憶部14cにより記憶されている感度分布データを用いて、画像再構成部13bにより再構成されたMR画像に対して展開処理を実行する(ステップS104)。
【0057】
続いて、異常信号判定部13dが、画像展開処理部13cによる展開処理により得られた展開画像に含まれる画素値のヒストグラムを作成する(ステップS105)。さらに、異常信号判定部13dは、作成したヒストグラムから画素値の中央値を算出する(ステップS106)。そして、異常信号判定部13dは、算出した中央値に基づいて、展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する(ステップS107)。
【0058】
ここで、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると判定された場合には(ステップS108,Yes)、感度分布修正部13eが、画素値が異常であると判定された画素の位置における各チャンネル間の感度差が大きくなるように、感度分布データ記憶部14cにより記憶されている感度分布データを修正する(ステップS109)。
【0059】
その後、ステップS104に戻り、画像展開処理部13cが、修正された感度分布データを用いて展開処理を再実行する。これにより、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていないと判定されるまでの間は、感度分布データの修正及び展開処理が繰り返し実行される。そして、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていないと判定された場合には(ステップS108,No)、異常信号判定部13dが、画像展開処理部13cにより生成された展開画像を画像データ記憶部14bに登録する(ステップS110)。
【0060】
上述したように、第1の実施形態では、シーケンス実行部17aが、複数の要素コイルを用いてMR信号を収集するパラレルイメージングの撮像シーケンスを実行する。また、画像再構成部13bが、パラレルイメージングにより収集されたMR信号からMR画像を再構成する。また、画像展開処理部13cが、各要素コイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを用いて、MR画像に生じた折り返しを展開する展開処理を実行する。また、異常信号判定部13dが、展開処理により得られた展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する。そして、画素値が異常な画素が含まれていると判定された場合に、感度分布修正部13eが、その画素の位置における各チャンネル間の感度差が大きくなるように感度分布データを修正する。その後、画像展開処理部13cが、修正後の感度分布データを用いて展開処理を再実行する。したがって、第1の実施形態によれば、展開処理により得られる展開画像から画素値が異常な画素を除去することで、パラレルイメージングにより得られる画像の画質を向上させることができる。
【0061】
また、第1の実施形態では、異常信号判定部13dが、展開画像に含まれる画素の画素値の分布状況から画素値の代表値を算出し、算出した代表値に基づいて、展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する。すなわち、第1の実施形態では、展開画像における画素値の分布状況に応じて、異常な画素を判別するための基準値が変化する。したがって、第1の実施形態によれば、展開画像における画素値の分布状況に応じて、画素値が異常な画素を展開画像から適切に除去することができるようになる。
【0062】
また、第1の実施形態では、異常信号判定部13dが、代表値として中央値を算出する。すなわち、第1の実施形態では、展開画像に含まれる画素のうち一部の画素の画素値が局所的に大きくなった場合でも、その一部の画素による影響を受けることなく画素値の判定が行われる。したがって、第1の実施形態によれば、画素値が異常な画素を展開画像から精度よく除去することができるようになる。
【0063】
(第2の実施形態)
なお、上記第1の実施形態では、画素値が異常な画素が展開画像に含まれていた場合に、各チャンネル間の感度差が大きくなるように感度分布データを修正することで、その画素の画素値が正常な値に近づくように修正することとした。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、感度分布データを再作成するようにしてもよい。以下では第2の実施形態として、感度分布データを再作成する場合について説明する。
【0064】
第2の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、計算機システムの機能のみが異なる。そこで、以下では、第2の実施形態における計算機システムの機能を中心に説明する。
【0065】
まず、第2の実施形態に係る計算機システムの詳細な構成について説明する。図4は、第2の実施形態に係る計算機システム20の詳細な構成を示す機能ブロック図である。なお、ここでは説明の便宜上、図2に示した各部と同様の役割を果たす機能部については、同一の符号を付すこととしてその詳細な説明を省略する。
【0066】
図4に示すように、計算機システム20は、データ処理部23、記憶部14、及び制御部17を有する。記憶部14は、MR信号データ記憶部14a、画像データ記憶部14b、及び感度分布データ記憶部14cを有する。制御部17は、シーケンス実行部17aを有する。データ処理部23は、感度分布作成部13a、画像再構成部13b、画像展開処理部13c、異常信号判定部13d、及び感度分布再作成部23eを有する。第2の実施形態では、データ処理部23が有する感度分布再作成部23eの機能が第1の実施形態とは異なる。
【0067】
感度分布再作成部23eは、異常信号判定部13dにより展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると判定された場合に、その画素の画素値が正常な値に近づくように感度分布データの再作成を行う。第2の実施形態では、感度分布再作成部23eは、受信コイル8a〜8eが有する要素コイルの空間的な感度分布を測定する感度測定シーケンスをシーケンス実行部17aに実行させることで、感度分布データを再作成する。
【0068】
具体的な例としては、感度分布再作成部23eは、画素値が異常な画素があったことが異常信号判定部13dから通知されると、シーケンス実行部17aに対して感度測定シーケンスを再実行するよう指示する。そして、感度分布再作成部23eは、感度測定シーケンスによりMR信号データが収集された後に、感度分布作成部13aに対して、再収集されたMR信号データを用いて感度分布データを再作成するよう指示する。さらに、感度分布再作成部23eは、感度分布作成部13aによって感度分布データが再作成された後に、画像展開処理部13cに対して、再作成された感度分布データを用いて展開処理を再実行するよう指示する。
【0069】
なお、一般的に、感度測定シーケンスでは、アレイコイルを用いたデータ収集の他に、WBコイルを用いたデータ収集が行われる。WBコイルを用いて収集されたデータは、展開処理により得られた展開画像の輝度を補正するために用いられる。しかし、第2の実施形態では、シーケンス実行部17aは、感度測定シーケンスを再実行する際に、撮像用に選択された受信コイルを用いたデータ収集のみを行うように感度測定シーケンスを実行すればよい。これにより、感度測定シーケンスの再実行にかかる時間が短縮されるので、より高速に撮像を行うことができるようになる。
【0070】
また、第2の実施形態では、感度分布作成部13aは、感度分布データを再作成する際に、再収集されたMR信号データと再収集前にすでに収集されていたMR信号データとを加算し、加算したMR信号データを用いて感度分布データを再作成するようにしてもよい。これにより、感度分布データのSNR(Signal-Noise Ratio)を改善することができる。
【0071】
次に、第2の実施形態に係るMRI装置によるパラレルイメージングの処理手順について説明する。図5は、第2の実施形態に係るMRI装置によるパラレルイメージングの処理手順を示すフローチャートである。なお、ここでは、第1の実施形態と同様に、感度測定シーケンスを実行することにより得られた感度分布データが、すでに感度分布データ記憶部14cに格納されていることとする。
【0072】
まず、図5に示すステップS201〜S207の処理は、図3に示したステップS101〜S107の処理と同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0073】
そして、第2の実施形態では、異常信号判定部13dによって展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると判定された場合には(ステップS208,Yes)、シーケンス実行部17aが、感度分布再作成部23eからの指示に応じて、感度測定シーケンスを再実行する(ステップS209)。続いて、画像展開処理部13cが、感度分布再作成部23eからの指示に応じて、再作成された感度分布データを用いて展開処理を再実行する(ステップS210)。
【0074】
その後、ステップS204に戻り、画像展開処理部13cが、再作成された感度分布データを用いて展開処理を再実行する。これにより、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていないと判定されるまでの間は、感度分布データの修正及び展開処理が繰り返し実行される。そして、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていないと判定された場合には(ステップS208,No)、異常信号判定部13dが、画像展開処理部13cにより生成された展開画像を画像データ記憶部14bに登録する(ステップS211)。
【0075】
上述したように、第2の実施形態では、感度分布再作成部23eが、各要素コイルの空間的な感度分布を測定する感度測定シーケンスを実行手段に実行させることで感度分布データを再作成する。例えば、パラレルイメージングでは、感度分布データを作成するためのスキャンと本撮像のスキャンとの間で被検体が動いてしまった場合に、展開処理後のMR画像において画素値が異常な画素が生じることがある。第2の実施形態によれば、このような場合でも、感度分布データを再作成することで、展開画像に含まれる画素の画素値が正常な値に近づくように感度分布データを置き換えることができる。したがって、第2の実施形態では、感度分布データを作成するためのスキャンと本撮像のスキャンとの間で被検体が動いてしまった場合でも、画素値が異常な画素を展開画像から除去することで、パラレルイメージングにより得られる画像の画質を向上させることができる。
【0076】
なお、例えば、展開処理後の画像に異常に大きな画素値があった場合には、ウィンドウレベルの調整が困難になったり、傾斜磁場の線形性補正が適切に行われなくなったりすることもある。しかし、上記第1の実施形態又は2によれば、展開処理後のMR画像から画素値が異常な画素が除去されるので、これらの事態を回避することができる。
【0077】
また、第1の実施形態で説明した感度分布データの修正による方法と、第2の実施形態で説明した感度分布データの再作成による方法とは、それぞれ組み合わせて用いられてもよい。その場合には、例えば、異常信号判定部13dが、展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する際に、画素値が異常な画素の数を計数する。そして、異常信号判定部13dは、計数した数が所定の閾値以下であった場合に、感度分布データの修正による方法を実行し、画素値が異常な画素の数が所定の閾値を越えていた場合に、第2の実施形態で説明した感度分布の再作成による方法を実行する。これにより、画素値が異常な画素の数が少ない場合には感度分布データが修正され、画素値が異常な画素の数が多い場合には感度分布データが再作成されるので、画素値が異常な画素を展開画像から効率よく除去することができるようになる。
【0078】
(第3の実施形態)
なお、第1の実施形態では、MRI装置100が、自動的に、展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定し、その判定結果に基づいて感度分布データを修正する場合について説明した。しかしながら、撮像部位や診断の種類によっては、展開画像に異常な画素値の画素が生じていても問題にならない場合もある。そこで、例えば、展開画像の異常判定を行うか否か、及び、感度分布データを修正するか否かを操作者に選択させるようにしてもよい。以下では、このような場合の例を第3の実施形態として説明する。
【0079】
なお、第3の実施形態では、展開処理により生成された展開画像に後処理が施される場合について説明する。ここで、後処理とは、例えば、ボリュームレンダリング(Volume Rendering)やMPR(Multi Planar Reconstruction)、ウィンドウレベル調整などである。これらの後処理の中には、展開画像に異常な画素値の画素が生じていても大きな影響を受けないものもある。そこで、第3の実施形態に係るMRI装置は、展開画像の異常判定を行う前に展開画像に後処理を施し、後処理後の画像を操作者に提示したうえで、異常判定を行うか否かの指示を操作者から受け付けるようにしている。
【0080】
第3の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には図1に示したものと同様であり、計算機システムの機能のみが異なる。そこで、以下では、第3の実施形態における計算機システムの機能を中心に説明する。
【0081】
まず、第3の実施形態に係る計算機システムの詳細な構成について説明する。図6は、第3の実施形態に係る計算機システム30の詳細な構成を示す機能ブロック図である。なお、ここでは説明の便宜上、図2に示した各部と同様の役割を果たす機能部については、同一の符号を付すこととしてその詳細な説明を省略する。
【0082】
図6に示すように、計算機システム30は、データ処理部33、記憶部14、及び制御部17を有する。記憶部14は、MR信号データ記憶部14a、画像データ記憶部14b、及び感度分布データ記憶部14cを有する。制御部17は、シーケンス実行部37aを有する。データ処理部23は、感度分布作成部13a、画像再構成部13b、画像展開処理部13c、異常信号判定部13d、感度分布修正部13e、及び後処理部33fを有する。
【0083】
後処理部33fは、画像展開処理部13による展開処理によって得られた展開画像に後処理を実施する。ここで、後処理部33fによって行われる後処理の種類は、例えば、撮像部位や診断の種類に応じてあらかじめ決められる。
【0084】
制御部37は、入力部16を介して操作者から各種指示を受け付ける。第3の実施形態では、制御部37は、異常判定を行うか否かの指示、及び、感度分布データを修正するか否かの指示を操作者から受け付ける。そして、制御部37は、操作者から受け付けた指示に応じて、後処理部33f、異常信号半底部13d、感度分布修正部13eを制御する。
【0085】
次に、第3の実施形態に係るMRI装置によるパラレルイメージングの処理手順について説明する。図7は、第3の実施形態に係るMRI装置によるパラレルイメージングの処理手順を示すフローチャートである。なお、ここでは、第1の実施形態と同様に、感度測定シーケンスを実行することにより得られた感度分布データが、すでに感度分布データ記憶部14cに格納されていることとする。
【0086】
まず、図7に示すステップS301〜S304の処理は、図3に示したステップS101〜S104の処理と同じであるので、ここでは説明を省略する。
そして、第3の実施形態では、後処理部33fが、画像展開処理部13cによって展開処理が実行された後に、展開処理により得られた展開画像に後処理を実施する(ステップS305)。さらに、後処理部33fは、後処理実施後の画像を表示部15に表示させる(ステップS306)。
【0087】
その後、制御部37が、入力部16を介して、異常判定を行うか否かの指示を操作者から受け付ける(ステップS307)。そして、異常判定を行わない旨の指示を制御部37が受け付けた場合には(ステップS307,No)、後処理部33fが、後処理実施後の画像を画像データ記憶部14bに登録する(ステップS316)。
【0088】
一方、異常判定を行う旨の指示を制御部37が受け付けた場合には(ステップS307,Yes)、異常信号判定部13dが、画像展開処理部13cによる展開処理により得られた展開画像に含まれる画素値のヒストグラムを作成する(ステップS308)。さらに、異常信号判定部13dは、作成したヒストグラムから画素値の中央値を算出する(ステップS309)。そして、異常信号判定部13dは、算出した中央値に基づいて、展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する(ステップS310)。
【0089】
そして、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていないと異常信号判定部13dが判定した場合には(ステップS311,No)、後処理部33fが、画像展開処理部13cにより生成された展開画像に後処理を実施する(ステップS315)。そして、後処理部33fは、後処理実施後の画像を画像データ記憶部14bに登録する(ステップS316)。
【0090】
一方、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると異常信号判定部13dが判定した場合には(ステップS311,Yes)、制御部37が、異常な画素があったことを報知するためのメッセージを表示部15に表示させる(ステップS312)。その後、制御部37は、入力部16を介して、感度分布データを修正するか否かの指示を操作者から受け付ける(ステップS313)。
【0091】
そして、感度分布データを修正しない旨の指示を制御部37が受け付けた場合には(ステップS313,No)、後処理部33fが、画像展開処理部13cにより生成された展開画像に後処理を実施する(ステップS315)。そして、後処理部33fは、後処理実施後の画像を画像データ記憶部14bに登録する(ステップS316)。
【0092】
一方、感度分布データを修正する旨の指示を制御部37が受け付けた場合には(ステップS313,Yes)、感度分布修正部13eが、画素値が異常であると判定された画素の位置における各チャンネル間の感度差が大きくなるように、感度分布データ記憶部14cにより記憶されている感度分布データを修正する(ステップS314)。
【0093】
その後、ステップS304に戻り、画像展開処理部13cが、修正された感度分布データを用いて展開処理を再実行する。これにより、操作者からの指示に応じて、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていないと判定されるまでの間は、感度分布データの修正及び展開処理が繰り返し実行される。そして、展開画像に画素値が異常な画素が含まれていないと判定された場合、又は、操作者によって異常判定処理が不要と判断された場合に、展開画像に後処理が実施された画像が画像データ記憶部14bに登録される。
【0094】
上述したように、第3の実施形態では、制御部37が、異常判定を行うか否か、及び、感度分布データを修正するか否かを操作者から受け付ける。そして、異常判定を行う旨の指示が受け付けられた場合に、異常信号判定部13dが、展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する。また、感度分布データを修正する旨の指示が受け付けられた場合に、感度分布修正部13eが、感度分布データを修正する。したがって、第3の実施形態によれば、操作者が、撮像部位や診断の種類に応じて、展開画像の異常判定の要否や展開画像の再作成の要否を選択することができる。これにより、操作者が、診断に必要な場合のみ展開画像の異常判定や再作成を行うようにMRI装置を制御することができるので、検査時間の短縮やスループットの向上を実現することができる。
【0095】
なお、第3の実施形態では、MRI装置が、第1の実施形態における展開画像の異常判定及び感度分布データの修正を、操作者からの指示に応じて実行する場合について説明した。これと同様に、MRI装置が、第2の実施形態における展開画像の異常判定及び感度分布データの再作成を、操作者からの指示に応じて実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
100 MRI装置
10 計算機システム
13 データ処理部
13b 画像再構成部
13c 画像展開処理部
13d 異常信号判定部
13e 感度分布修正部
17 制御部
17a シーケンス実行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のRFコイルを用いてMR信号を収集するパラレルイメージングの撮像シーケンスを実行する実行部と、
前記MR信号からMR画像を再構成する再構成部と、
前記RFコイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを用いて、前記MR画像に生じた折り返しを展開する展開処理を実行する展開処理部と、
前記展開処理により得られた展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する判定部と、
前記展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると判定された場合に、当該画素の画素値が正常な値に近づくように前記感度分布データを修正する修正部とを備え、
前記展開処理部は、前記感度分布データが修正された後に、修正後の感度分布データを用いて前記展開処理を再実行する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記修正部は、画素値が異常であると判定された画素の位置における各チャンネル間の感度差が大きくなるように前記感度分布データを修正する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記展開画像に含まれる画素の画素値の分布状況から画素値の代表値を算出し、算出した代表値に基づいて、前記展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記展開画像に含まれる画素の画素値の分布状況から画素値の代表値を算出し、算出した代表値に基づいて、前記展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する、請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記代表値として中央値を算出する、請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記代表値として中央値を算出する、請求項4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
複数のRFコイルを用いてMR信号を収集するパラレルイメージングの撮像シーケンスを実行する実行部と、
前記MR信号からMR画像を再構成する再構成部と、
前記RFコイルの空間的な感度分布を示す感度分布データを用いて、前記MR画像に生じた折り返しを展開する展開処理を実行する展開処理部と、
前記展開処理により得られた展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する判定部と、
前記展開画像に画素値が異常な画素が含まれていると判定された場合に、前記RFコイルの空間的な感度分布を測定する感度測定シーケンスを前記実行部に実行させることで前記感度分布データを再作成する再作成部とを備え、
前記展開処理部は、前記感度分布データが再作成された後に、再作成された感度分布データを用いて前記展開処理を再実行する、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記展開画像に含まれる画素の画素値の分布状況から画素値の代表値を算出し、算出した代表値に基づいて、前記展開画像に画素値が異常な画素が含まれているか否かを判定する、請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記代表値として中央値を算出する、請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−200637(P2011−200637A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31342(P2011−31342)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】