説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】傾斜磁場コイルの振動による騒音を防ぎつつ、傾斜磁場コイルに対する保守性を高める。
【解決手段】実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、静磁場磁石と、傾斜磁場コイルと、ボアチューブと、密閉空間形成部とを備える。静磁場磁石は、概略円筒状に形成され、円筒内の空間に静磁場を発生させる。傾斜磁場コイルは、概略円筒状に形成され、前記静磁場磁石の円筒内に配置されて前記静磁場に傾斜磁場を付加する。ボアチューブは、概略円筒状に形成され、前記傾斜磁場コイルの円筒内に配置される。密閉空間形成部は、前記静磁場磁石の内周側と前記ボアチューブの外周側との間に前記傾斜磁場コイルを包囲する密閉空間を形成する。そして、前記傾斜磁場コイルの少なくとも一方の側端の少なくとも一部が、前記密閉空間に接触していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置において、真空空間に傾斜磁場コイル全体を配置することで、傾斜磁場コイルの振動による騒音を低減させる静音化技術が知られている。かかる静音化技術では、例えば、円筒状に形成された静磁場磁石及びボアチューブそれぞれの側端に密閉カバーを固定することで、静磁場磁石とボアチューブとの間に配置された傾斜磁場コイルの周囲に密閉容器が形成される。そして、この密閉空間の空気を真空ポンプで排出することで、傾斜磁場コイルの周囲に真空空間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−118043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、傾斜磁場コイルには、例えば、傾斜磁場コイルに電流を供給するケーブルが接続される電極部や、静磁場の不均一性を補正する鉄シムを格納するシムトレイなどが設けられる場合がある。これらの部品を保守する場合には、密閉容器内を大気状態に戻した後に、密閉カバーを取り外したうえで作業を行うことになり、非常に手間がかかっていた。このようなことから、従来技術では、傾斜磁場コイルに対する保守性が低下する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、静磁場磁石と、傾斜磁場コイルと、ボアチューブと、密閉空間形成部とを備える。静磁場磁石は、概略円筒状に形成され、円筒内の空間に静磁場を発生させる。傾斜磁場コイルは、概略円筒状に形成され、前記静磁場磁石の円筒内に配置されて前記静磁場に傾斜磁場を付加する。ボアチューブは、概略円筒状に形成され、前記傾斜磁場コイルの円筒内に配置される。密閉空間形成部は、前記静磁場磁石の内周側と前記ボアチューブの外周側との間に前記傾斜磁場コイルを包囲する密閉空間を形成する。そして、前記傾斜磁場コイルの少なくとも一方の側端の少なくとも一部が、前記密閉空間に接触していない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイルの構造を示す斜視図である。
【図3A】図3Aは、第1の実施形態に係る静磁場磁石及び傾斜磁場コイルの側端近傍の構造を示す断面図(1)である。
【図3B】図3Bは、第1の実施形態に係る静磁場磁石及び傾斜磁場コイルの側端近傍の構造を示す断面図(2)である。
【図4】図4は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイルの側端近傍の形状を示す断面図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係るボアチューブの側端近傍及びボアチューブ支持部のボアチューブ側の端部の構造を示す図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る静磁場磁石及び傾斜磁場コイルの側端近傍の構造を示す断面図である。
【図7】図7は、第3の実施形態に係る静磁場磁石及び傾斜磁場コイルの側端近傍の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の全体構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置100の全体構成を示す図である。なお、以下では、磁気共鳴イメージング装置をMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ。
【0008】
図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1と、傾斜磁場コイル2と、RFコイル3と、天板4と、傾斜磁場電源5と、送信部6と、受信部7と、シーケンス制御装置8と、計算機システム9とを有する。
【0009】
静磁場磁石1は、概略円筒状に形成され、円筒内の空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、概略円筒形状の真空容器1aと、真空容器1aの中で冷却液に浸漬された超伝導コイル1bとを有し、撮像領域であるボア(静磁場磁石1の円筒内の空間)内に静磁場を発生させる。
【0010】
傾斜磁場コイル2は、概略円筒状に形成され、静磁場磁石1の円筒内に配置されて静磁場に傾斜磁場を付加する。例えば、傾斜磁場コイル2は、メインコイル2aとシールドコイル2bとを有するASGC(Active Shield Gradient Coil)である。メインコイル2aは、傾斜磁場電源5から供給される電流によりX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を印加する。シールドコイル2bは、メインコイル2aの漏洩磁場をキャンセルする磁場を発生させる。
【0011】
ここで、メインコイル2aとシールドコイル2bとの間には、シムトレイ挿入ガイド2cが形成されている。このシムトレイ挿入ガイド2cには、ボア内の磁場不均一を補正するための鉄シム2eを収納したシムトレイ2dが挿入される。かかる傾斜磁場コイル2の全体構造については、後に詳細に説明する。
【0012】
RFコイル3は、傾斜磁場コイル2の内側に、被検体Pを挟んで対向するように固定されている。このRFコイル3は、送信部6から送信されるRFパルスを被検体Pに照射し、また、水素原子核の励起によって被検体Pから放出される磁気共鳴信号を受信する。
【0013】
天板4は、図示していない寝台に水平方向へ移動可能に設けられており、撮影時には被検体Pが載置されてボア内へ移動される。傾斜磁場電源5は、シーケンス制御装置8からの指示に基づいて、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0014】
送信部6は、シーケンス制御装置8からの指示に基づいて、RFコイル3にRFパルスを送信する。受信部7は、RFコイル3によって受信された磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号をデジタル化して得られる生データをシーケンス制御装置8に対して送信する。
【0015】
シーケンス制御装置8は、計算機システム9による制御のもと、傾斜磁場電源5、送信部6及び受信部7をそれぞれ駆動することによって被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御装置8は、スキャンを行った結果、受信部7から生データが送信されると、その生データを計算機システム9に送信する。
【0016】
計算機システム9は、MRI装置100全体を制御する。具体的には、この計算機システム9は、操作者から各種入力を受け付ける入力部や、操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス制御装置8にスキャンを実行させるシーケンス制御部、シーケンス制御装置8から送信された生データに基づいて画像を再構成する画像再構成部、再構成された画像などを記憶する記憶部、再構成された画像など各種情報を表示する表示部、操作者からの指示に基づいて各機能部の動作を制御する主制御部などを有する。
【0017】
次に、傾斜磁場コイル2の全体構造について説明する。図2は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイル2の構造を示す斜視図である。図2に示すように、傾斜磁場コイル2は、概略円筒形状をなすメインコイル2aと、シールドコイル2bとを有する。メインコイル2aは、傾斜磁場電源5から供給される電流によりX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を発生させる。シールドコイル2bは、メインコイル2aの漏洩磁場をキャンセルする磁場を発生させる。
【0018】
また、メインコイル2aとシールドコイル2bとの間には、複数のシムトレイ挿入ガイド2cが形成される。シムトレイ挿入ガイド2cは、傾斜磁場コイル2の一端面もしくは両端面に開口部を形成する穴であり、傾斜磁場コイル2の長手方向に全長にわたって形成される。このシムトレイ挿入ガイド2cは、メインコイル2a及びシールドコイル2bに挟まれた領域に、互いに平行となるように円周方向に等間隔に形成される。なお、シムトレイ挿入ガイド2cは、シムトレイ2dの大きさに合わせて作製された角パイプ状の部材を傾斜磁場コイル2に埋め込むことで形成される。
【0019】
また、シムトレイ挿入ガイド2cには、シムトレイ2dが挿入される。シムトレイ2dは、非磁性かつ非電導性材料である樹脂にて作製され、概略棒状をなしている。このシムトレイ2dには、所定の数の鉄シム2eが収納される。かかるシムトレイ2dは、シムトレイ挿入ガイド2cに挿入されて、それぞれ傾斜磁場コイル2の中央に位置するように固定される。
【0020】
次に、静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の側端近傍の構造について説明する。図3A及び3Bは、第1の実施形態に係る静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の側端近傍の構造を示す断面図である。ここで、図3Aは、静磁場中心よりも下側の部分に関する断面を示しており、傾斜磁場コイル2についてはシムトレイガイド2cがある位置の断面を示し、静磁場磁石1については、外側の枠体のみを示している。さらに、図3Aは、静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2における両方の側端のうち一方の側端のみを示しており、他方の側端は、図3Aに示す構造と対照的な構造となっている。また、傾斜磁場コイル2は、例えば、静磁場磁石1の内周面に設けられた支持構造(図示せず)により、静磁場磁石1の内周面から所定の高さだけ離れた位置に保持されるように支持される。
【0021】
図3Aに示すように、傾斜磁場コイル2の円筒内には、図1では図示を省略したボアチューブ10が配置される。ボアチューブ10は、概略円筒状に形成され、円筒内に被検体が置かれる空間を形成する。また、ボアチューブ10は、円筒内に置かれた被検体が傾斜磁場コイル2に接触することを防ぐ。
【0022】
また、静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の側端近傍には、静磁場磁石1の内周側とボアチューブ10の外周側との間に傾斜磁場コイル2を包囲する密閉空間を形成し、かつ、傾斜磁場コイル2の少なくとも一方の側端の少なくとも一部を密閉空間の外側に位置させる密閉空間形成部が配置される。これにより、傾斜磁場コイル2の少なくとも一方の側端の少なくとも一部が、密閉空間形成部により形成された密閉空間に接触していない状態となる。そして、密閉空間形成部によって形成された密閉空間は、図示していない真空ポンプを用いて真空状態に保たれる。なお、ここでいう真空状態には、真空に近い低圧状態も含まれる。
【0023】
例えば、密閉空間形成部は、図3Aに示すように、第1の密閉部材11と、第2の密閉部材12とを有する。第1の密閉部材11は、ボアチューブ10の外周面と傾斜磁場コイル2の内周面との間隙に配置されて、この間隙を密閉する。また、第2の密閉部材12は、静磁場磁石1の内周面と傾斜磁場コイル2の外周面との間隙に配置されて、この間隙を密閉する。これら第1の密閉部材11及び第2の密閉部材12は、例えば、リング状に形成されたゴム製のシール(パッキンとも呼ばれる)である。
【0024】
このように、傾斜磁場コイル2の側端近傍においてボアチューブ10の外周面と傾斜磁場コイル2の内周面との間隙を密閉する第1の密閉部材11を配置することによって、ボアチューブ10の外周面と傾斜磁場コイル2の内周面との間に密閉空間13が形成される。また、傾斜磁場コイル2の側端近傍において静磁場磁石1の内周面と傾斜磁場コイル2の外周面との間隙を密閉する第2の密閉部材12を配置することによって、静磁場磁石1の内周面と傾斜磁場コイル2の外周面との間に密閉空間14が形成される。
【0025】
また、第1の密閉部材11及び第2の密閉部材12を境界にして、傾斜磁場コイル2の側端が密閉空間13及び14の外側に位置するようになる。これにより、傾斜磁場コイル2の側端が大気中に露出することになる。ここで、傾斜磁場コイル2の側端部は外周部及び内周部に比べて面積が小さいため、側端部から発せられる音響放射は小さい。したがって、傾斜磁場コイル2の側端部を大気中に露出することによる騒音の増加は小さい。
【0026】
また、図3Aに示すように、傾斜磁場コイル2における密閉空間13及び14の外側に位置する側端には、シムトレイガイド2cにより、シムトレイ2dが挿入される開口部が形成される。一般的に、静磁場均一性の調整を行う際には、傾斜磁場コイルからシムトレイを取り出してシムトレイ内にある鉄シムの枚数を増減させる。本実施形態では、シムトレイ2dが挿入される開口部が密閉空間の外に露出しているので、シムトレイ2dの抜き差しを容易に行うことができる。これにより、静磁場均一性の調整にかかる作業工数を低減することができる。
【0027】
また、図3Aに示すように、傾斜磁場コイル2における密閉空間13及び14の外側に位置する側端には、電極部15が設けられる。この電極部15には、傾斜磁場電源5から傾斜磁場コイル2に電流を供給するケーブル16が接続される。一般的に、傾斜磁場コイルの電極部が真空中に配置されると、傾斜磁場コイルに大きな電流が供給された場合に電極部で放電が発生する可能性があることが知られている。この放電を防ぐため、例えば、電極部がシリコンなどの絶縁体で覆われる。そのため、例えば電極部の接続状態を確認する場合には、絶縁体を取り除いてから確認を行う必要があった。しかし、本実施形態では、電極部15が密閉空間の外に露出しているので、電極部15に発生する放電を防ぐことができる。このことから、電極部15を絶縁材で覆う必要がないので、電極部15の接続状態を容易に確認することができる。したがって、電極部15の保守に係る作業工数を低減することができる。
【0028】
また、図3Aに示すように、一方の端部が静磁場磁石1に固定され、他方の端部が防振材18を介してボアチューブ10を支持するボアチューブ支持部17が設けられる。ここで、防振材18は、例えばゴムなどの弾性体で形成された部材である。
【0029】
かかるボアチューブ支持部17によれば、ボアチューブ10の重さ(被検体の重さも含む)で密閉部材11が潰れるのを防ぐことができる。傾斜磁場コイル2から静磁場磁石1やボアチューブ10に伝わる振動を小さくするには、第1の密閉部材11及び第2の密閉部材12は軟らかいものを用いるのが望ましい。本実施形態では、ボアチューブ支持部17によってボアチューブ10が支持されるので、より軟らかい密閉部材を用いることができ、傾斜磁場コイル2の振動の伝播をより確実に防ぐことができる。また、ボアチューブ10は防振材18を介して支持されるので、傾斜磁場コイル2から静磁場磁石1に伝わった振動がボアチューブ支持部17を介してボアチューブ10に伝わるのを防ぐことができる。
【0030】
なお、ここでは静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2における両方の側端が図3Aに示す構造である場合について説明したが、例えば、一方の側端のみが図3Aに示す構造であってもよい。この場合には、他方の端部は、例えば、他方の側端は従来のMRI装置と同様に静磁場磁石1及びボアチューブ10それぞれの側端に密閉カバーが固定される構造とする。
【0031】
また、図3Aでは、傾斜磁場コイル2の側端全てを密閉空間の外側に位置させるように、第1の密閉部材11及び第2の密閉部材12が設けられる例を示した。しかし、例えば、図3Bに示すように、傾斜磁場コイル2の側端の一部を密閉空間の外側に位置させるように、第1の密閉部材111及び第2の密閉部材112が設けられてもよい。
【0032】
次に、傾斜磁場コイル2の側端近傍の形状について説明する。図4は、第1の実施形態に係る傾斜磁場コイル2の側端近傍の形状を示す断面図である。図4に示すように、例えば、傾斜磁場コイル2において、第1の密閉部材11が当接する位置には溝部2fが形成され、第2の密閉部材12が当接する位置には溝部2gが形成される。この結果、第1の密閉部材11の傾斜磁場コイル2側の端部が溝部2fに係合し、第2の密閉部材12の傾斜磁場コイル2側の端部が溝部2gに係合する。これにより、例えば、密閉空間13を真空状態にするために真空ポンプによって密閉空間13の空気が吸引された場合でも、第1の密閉部材11が密閉空間13内の圧力低下によって密閉空間13の中央へ向かって引き寄せられるのを防ぐことができる。同様に、密閉部材12が密閉空間14内の圧力低下によって密閉空間14の中央へ向かって引き寄せられるのを防ぐことができる。
【0033】
次に、ボアチューブ10の側端近傍及びボアチューブ支持部17のボアチューブ10側の端部の構造について説明する。図5は、第1の実施形態に係るボアチューブ10の側端近傍及びボアチューブ支持部17のボアチューブ10側の端部の構造を示す図である。ボアチューブ10の側端近傍には、ボアチューブ支持部17におけるボアチューブ10側の端部とボアチューブ10との間隔を調整する間隔調整部が設けられる。
【0034】
例えば、図5に示すように、ボアチューブ10の側端近傍には、ボルト19が取り付けられる。このボルト19は、ボアチューブ10の側端近傍に形成された貫通孔に螺合するとともに、先端がボアチューブ支持部17の端部に置かれた防振材18に当接する。かかるボルト19を回転させることで、ボアチューブ10の位置を上下方向に移動させる。したがって、ボアチューブ10の中心軸が磁場中心を通るように、ボアチューブ10の位置を容易に調整することができる。
【0035】
上述したように、本実施形態では、磁気共鳴イメージング装置100は、静磁場磁石1の内周側とボアチューブ10の外周側との間に傾斜磁場コイル2を包囲する密閉空間を形成する密閉空間形成部を有する。また、傾斜磁場コイル2の少なくとも一方の側端の少なくとも一部が、密閉空間形成部により形成された密閉空間に接触していない。すなわち、本実施形態によれば、傾斜磁場コイル2の外周及び内周を密閉空間に配置しつつ、傾斜磁場コイル2の側端に設けられる電極部15やシムトレイ2dに対する保守を容易に行うことができる。したがって、本実施形態によれば、傾斜磁場コイル2の振動による騒音を防ぎつつ、傾斜磁場コイル2に対する保守性を高めることが可能になる。
【0036】
また、本実施形態によれば、ボアチューブ10の外周面と静磁場磁石1の内周面とを利用して傾斜磁場コイル2を密閉することができる。したがって、傾斜磁場コイル2を密閉するための密閉容器を設ける場合と比べて、ボアチューブ10の内径を大きくすることができるので、被検体が置かれる空間を広げることが可能になる。
【0037】
また、本実施形態によれば、静磁場磁石1及びボアチューブ10それぞれの側端に密閉カバーを取り付けることなく密閉空間を形成することができるので、静磁場磁石1の形状に依存せずに、傾斜磁場コイル2を密閉することが可能になる。
【0038】
また、傾斜磁場コイル2全体を密閉容器内に配置する場合には、密閉容器の軸長が長くなってしまう。そのため、被検体の挿入口となるボアの開口部を広くしようとすると、ボアの軸長がさらに長くなり、MRI装置100が大きくなってしまう。これに対し、本実施形態では、傾斜磁場コイル2の側端が密閉空間の外に配置されるので、ボアの軸長を短くすることができ、ボアの開口部を広くした場合でも、より小型のMRI装置100を実現することが可能になる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態で示した傾斜磁場コイル2の側端に、密閉空間の空気を排出する排出口が設けられる場合について説明する。図6は、第2の実施形態に係る静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の側端近傍の構造を示す断面図である。なお、図6は、静磁場中心よりも下側の部分に関する断面を示しており、傾斜磁場コイル2についてはシムトレイガイド2cがない位置の断面を示し、静磁場磁石1については、外側の枠体のみを示している。また、本実施形態では、これまでに図示した要素と同じ要素については、同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0040】
例えば、図6に示すように、傾斜磁場コイル2におけるシムトレイガイド2cがない位置では、密閉空間13及び14の外側に位置する側端に密閉空間13の空気を排出する排出口20が設けられる。この排出口20には、図示していない真空ポンプに通じる耐真空ホース21が接続される。また、傾斜磁場コイル2のコイル内部には、排出口20から傾斜磁場コイル2の外周側に形成された密閉空間14へ通じる流路22が形成される。この結果、真空ポンプを駆動することで、流路22、排出口20及び耐真空ホース21を介して密閉空間14の空気が排出され、密閉空間14が真空状態になる。
【0041】
なお、ここでは、排出口20から傾斜磁場コイル2の外周側に形成された密閉空間14へ通じる流路22が形成される場合について説明したが、例えば、傾斜磁場コイル2の内周側に形成された密閉空間13へ通じる流路が形成されてもよい。または、排出口20から2つに分岐して、密閉空間13及び14それぞれへ通じる流路が形成されてもよい。または、密閉空間13へ通じる複数の流路と密閉空間14へ通じる複数の流路とが、それぞれ傾斜磁場コイル2の異なる位置に形成されてもよい。
【0042】
さらに、傾斜磁場コイル2には、傾斜磁場コイル2の外周側に形成された密閉空間14と傾斜磁場コイル2の内周側に形成された密閉空間13との間で空気を流通させる流路が設けられる。例えば、図6に示すように、傾斜磁場コイル2の内周側から外周側へ貫通する貫通孔23が形成される。これにより、貫通孔23を介して、密閉空間13と密閉空間14との間で空気を自由に流通させることができる。または、例えば、図6に示すように、排出口20が設けられた側端とは反対の側端に第1の密閉部材24及び第2の密閉部材25が配置される場合に、各密閉部材に密閉空間の内側から外側へ通じる小さな貫通孔を形成する。そして、第1の密閉部材24に形成された貫通孔26と第2の密閉部材25に形成された貫通孔27とをつなぐ細いチューブ28を設ける。これにより、チューブ28を介して、密閉空間13と密閉空間14との間で空気を自由に流通させることができる。このように、密閉空間13と密閉空間14との間で空気を流通させる流路を設けることで、密閉空間13及び14全体を容易に真空状態にすることができる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。これまでに説明したように、傾斜磁場コイル2の側端には、電極部15やシムトレイガイド2cの開口部などが設けられる。ここで、傾斜磁場コイル2の側端で大気中に露出している面積が小さいほど、傾斜磁場コイル2から発せられる音響放射も小さくなる。そこで、傾斜磁場コイル2の側端に設けられる部品の位置に応じて、密閉部材の位置を変えてもよい。
【0044】
第3の実施形態では、電極部の位置に応じて第2の密閉部材12の位置を変えた例について説明する。図7は、第3の実施形態に係る静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2の側端近傍の構造を示す断面図である。なお、図7は、静磁場中心よりも下側の部分に関する断面を示しており、傾斜磁場コイル2についてはシムトレイガイド2cがある位置の断面を示し、静磁場磁石1については、外側の枠体のみを示している。さらに、図7は、静磁場磁石1及び傾斜磁場コイル2における両方の側端のうち一方の側端のみを示しており、他方の側端は、図3Aに示す構造と対照的な構造となっている。また、傾斜磁場コイル2は、例えば、静磁場磁石1の内周面に設けられた支持構造(図示せず)により、静磁場磁石1の内周面から所定の高さだけ離れた位置に保持されるように支持される。また、本実施形態では、これまでに図示した要素と同じ要素については、同じ符号を付すこととして詳細な説明を省略する。
【0045】
図7に示す例では、傾斜磁場コイル2において、シムトレイガイド2cよりも外周側における側端面には電極などの部品が設けられていない。そこで、例えば、図7に示すように、傾斜磁場コイル2における外周側の側端面に密閉部材30を配置する。この場合には、例えば、図7に示すように、傾斜磁場コイル2の側端面との間に密閉部材30を挟みこむ固定部材29が設けられる。この固定部材29は、例えば、一方の端部が静磁場磁石1の側端面に密閉部材31を介して固定される。このとき、傾斜磁場コイル2の側端面及び固定部材29において密閉部材30が当接する位置には、密閉空間14に吸い込まれないように密閉部材30の位置を固定するための溝部が形成される。
【0046】
このように、例えば、傾斜磁場コイル2の側端面において部品が設けられていない箇所に密閉部材30を配置することによって、傾斜磁場コイル2の側端において大気中に露出している面積を小さくすることができる。これにより、傾斜磁場コイル2から発せられる音響放射を小さくすることができ、傾斜磁場コイル2の振動による騒音をより小さく抑えることが可能になる。
【0047】
(他の実施形態)
以上、第1、第2及び第3の実施形態について説明したが、本願が開示する技術の実施形態はこれらに限られるものではない。
【0048】
例えば、上記実施形態では、MRI装置が、傾斜磁場コイルとしてASGCを有する場合について説明した。しかしながら、シールドコイルを含まない傾斜磁場コイルを有するMRI装置であっても、本願が開示する技術を同様に実施することができる。
【0049】
また、例えば、上記実施形態では、MRI装置が、シムトレイを含んだ傾斜磁場コイルを有する場合について説明した。しかしながら、シムトレイを含まない傾斜磁場コイルを有するMRI装置であっても本願が開示する技術を同様に実施することができる。
【0050】
また、例えば、上記実施形態では、密閉空間形成部によって形成された密閉空間を真空状態にする場合について説明した。しかしながら、必ずしも密閉空間は真空にしなくてもよい。密閉空間を真空にしない場合でも、密閉された空間内に傾斜磁場コイルが配置されることで、傾斜磁場コイルが発する騒音は低減できる。
【0051】
以上説明した各実施形態によれば、傾斜磁場コイルの振動による騒音を防ぎつつ、傾斜磁場コイルに対する保守性を高めることができる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
10 ボアチューブ
11,12 密閉部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
概略円筒状に形成され、円筒内の空間に静磁場を発生させる静磁場磁石と、
概略円筒状に形成され、前記静磁場磁石の円筒内に配置されて前記静磁場に傾斜磁場を付加する傾斜磁場コイルと、
概略円筒状に形成され、前記傾斜磁場コイルの円筒内に配置されたボアチューブと、
前記静磁場磁石の内周側と前記ボアチューブの外周側との間に前記傾斜磁場コイルを包囲する密閉空間を形成する密閉空間形成部とを備え、
前記傾斜磁場コイルの少なくとも一方の側端の少なくとも一部が、前記密閉空間に接触していない、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記傾斜磁場コイルにおける前記密閉空間の外側に位置する前記側端には、前記静磁場の不均一性を補正する鉄シムを格納するシムトレイが挿入される開口部が形成される、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記傾斜磁場コイルにおける前記密閉空間の外側に位置する前記側端には、前記傾斜磁場コイルに電流を供給するケーブルが接続される電極部が設けられる、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記密閉空間形成部は、
前記傾斜磁場コイルの側端近傍において前記ボアチューブの外周面と前記傾斜磁場コイルの内周面との間隙に配置されて当該間隙を密閉する第1の密閉部材と、
前記傾斜磁場コイルの側端近傍において前記静磁場磁石の内周面と前記傾斜磁場コイルの外周面との間隙に配置されて当該間隙を密閉する第2の密閉部材と
を有する、請求項1、2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記傾斜磁場コイルには、前記第1の密閉部材及び前記第2の密閉部材が当接する位置に溝部が形成される、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
一方の端部が前記静磁場磁石に固定され、他方の端部が防振材を介して前記ボアチューブを支持するボアチューブ支持部をさらに備える、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記ボアチューブ支持部における前記ボアチューブ側の端部と前記ボアチューブとの間隔を調整する間隔調整部をさらに備える、
請求項6に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記傾斜磁場コイルにおける前記密閉空間の外側に位置する前記側端には、前記密閉空間の空気を排出する排出口が設けられる、
請求項1〜7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記傾斜磁場コイルには、前記傾斜磁場コイルの外周側に形成された密閉空間と前記傾斜磁場コイルの内周側に形成された密閉空間との間で空気を流通させる流路が設けられる、
請求項1〜8のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−157693(P2012−157693A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5446(P2012−5446)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】