説明

磁気共鳴イメージング装置

【課題】被検体に応じてRF磁場の分布を調整することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、送信部と、最適差記憶部と、電流測定部と、送信制御部とを有する。送信部は、複数の送信チャンネルに高周波パルスを送信する。電流測定部は、前記送信部によって高周波パルスが送信されることで前記複数の送信チャンネルに流れる電流の分布を測定する。送信制御部は、前記電流測定部によって測定された電流の分布から前記複数の送信チャンネル間の電流の振幅差及び位相差を算出し、算出した振幅差及び位相差と振幅差及び位相差の最適値との差異が小さくなるように、前記送信部によって送信される高周波パルスの振幅及び位相の少なくも一方を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置)は、磁気共鳴現象を利用して被検体内を画像化する装置である。具体的には、磁気共鳴イメージング装置は、送信コイルに高周波パルス(以下、RF(Radio Frequency)パルス)を送信することにより送信コイルに電流を流し、かかる送信コイルに高周波磁場(以下、RF磁場)を発生させる。そして、磁気共鳴イメージング装置は、送信コイルによって発生されたRF磁場(B1)内に位置する被検体から発せられる磁気共鳴(MR:Magnetic Resonance)信号を検出し、検出したMR信号に基づいて磁気共鳴画像(MRI画像)を再構成する。なお、RFパルスが送信される送信コイル、又は、RFパルスが送信される送信コイル内のエレメントは、「送信チャンネル」と呼ばれることがある。
【0003】
このようなMRI装置は、RF磁場をマルチチャンネルで発生する送信コイルを有する場合がある。送信コイルがマルチチャンネルである場合、MRI装置は、各々の送信チャンネルに送信するRFパルスの振幅や位相を送信チャンネル毎に調整する。例えば、MRI装置は、QD(Quadrature Detection)コイルと呼ばれる送信コイルを有する場合には、2つの送信チャンネルに振幅が略同一であり、かつ、位相差が90°であるRFパルスを送信する。このように、MRI装置は、マルチチャンネルの送信コイルを有することで、RF磁場の均一性を保ち、感度領域を広げることが可能になると考えられる。
【0004】
ただし、被検体がMRI装置内に位置すると、被検体内部における電気的な損失や誘電共振等が原因となって、マルチチャンネルの各送信チャンネルに流れる電流の振幅や位相にずれが生じる結果、RF磁場の分布が不均一になることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−526547号公報
【特許文献2】特表2008−514259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被検体に応じてRF磁場の分布を調整することができる磁気共鳴イメージング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、送信コイルと、送信部と、最適差記憶部と、電流測定部と、送信制御部とを有する。送信コイルは、複数の送信チャンネルにより高周波磁場を発生する。送信部は、前記複数の送信チャンネルに高周波パルスを送信する。最適差記憶部は、前記複数の送信チャンネルに流れる電流の振幅差及び位相差の最適値を記憶する。電流測定部は、前記送信部によって高周波パルスが送信されることで前記複数の送信チャンネルに流れる電流の分布を測定する。送信制御部は、前記電流測定部によって測定された電流の分布から前記複数の送信チャンネル間の電流の振幅差及び位相差を算出し、算出した振幅差及び位相差と前記最適差記憶部に記憶されている振幅差及び位相差の最適値との差異が小さくなるように、前記送信部によって送信される高周波パルスの振幅及び位相の少なくも一方を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態におけるRFコイルの構成例を示す図である。
【図3】図3は、RFコイルの各ラング部に流れる電流分布の一例を示す。
【図4】図4は、第1の実施形態におけるRFコイルに設けられる検出器の一例を示す。
【図5】図5は、第1の実施形態における制御部等の構成例を示すブロック図である。
【図6】図6は、最適差記憶部の一例を示す図である。
【図7】図7は、整形部による整形処理の一例を示す図である。
【図8】図8は、第1の実施形態における処理手順の一部を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第2の実施形態における制御部等の構成例を示すブロック図である。
【図10】図10は、補正係数記憶部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係るMRI装置を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置1の構成例を示すブロック図である。
【0011】
静磁場磁石110は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に一様な静磁場を発生する。例えば、静磁場磁石110は、永久磁石や超伝導磁石等である。傾斜磁場コイル120は、中空の円筒形状に形成され、内部の空間に傾斜磁場を発生する。具体的には、傾斜磁場コイル120は、静磁場磁石110の内側に配置され、後述する傾斜磁場電源11から電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。
【0012】
RFコイル130は、静磁場磁石110の開口部内で被検体Pに対向するように配設された送受信兼用のコイルであり、後述する送信部13からRFパルスの供給を受けてRF磁場を発生する。また、RFコイル130は、励起によって被検体Pの水素原子核から放出される磁気共鳴信号を受信する。なお、第1の実施形態では、RFコイル130が、複数のエレメントによりRF磁場を発生するバードケージ(Bridcage)型のQDコイルであるものとする。かかるRFコイル130の構成については、後に詳細に説明する。
【0013】
寝台装置141は、被検体Pが載置される天板142を有し、被検体Pが載置された天板142をRFコイル130の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台装置141は、長手方向が静磁場磁石110の中心軸と平行になるように設置される。
【0014】
傾斜磁場電源11は、傾斜磁場コイル120に電流を供給する。寝台制御部12は、後述する制御部260による制御のもと、寝台装置141を制御する装置であり、寝台装置141を駆動して、天板142を長手方向及び上下方向に移動させる。
【0015】
送信部13は、ラーモア周波数に対応するRFパルスをRFコイル130に送信する。具体的には、送信部13は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部等を有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。
【0016】
受信部14は、RFコイル130によって受信されたMR信号を検出し、検出したMR信号のデータを生成する。具体的には、受信部14は、選択器、前段増幅器、位相検波器及びアナログデジタル変換器を有する。選択器は、RFコイル130から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力されるMR信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力されるMR信号の位相を検波する。アナログデジタル変換器は、位相検波器から出力される信号をデジタル変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データをシーケンス制御部15を介して計算機システム200に送信する。
【0017】
シーケンス制御部15は、計算機システム200から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源11、送信部13及び受信部14を駆動することで、被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御部15は、傾斜磁場電源11、送信部13及び受信部14を駆動して被検体Pをスキャンした結果、受信部14からMR信号データが送信された場合に、かかるMR信号データを計算機システム200へ転送する。
【0018】
なお、「シーケンス情報」とは、傾斜磁場電源11が傾斜磁場コイル120に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部13がRFコイル130に送信する高周波信号の強さや高周波信号を送信するタイミング、受信部14がMR信号を検出するタイミング等、スキャンを行うための手順を時系列に沿って定義した情報である。すなわち、送信部13によって送信されるRFパルスの振幅及び位相は、計算機システム200によって制御される。
【0019】
計算機システム200は、MRI装置1の全体制御や、MR信号データの収集、画像再構成等を行う。
【0020】
インタフェース部210は、シーケンス制御部15との間で送受される各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部210は、シーケンス制御部15に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部15からMR信号データを受信する。また、インタフェース部210は、MR信号データを受信した場合に、受信したMR信号データを記憶部250に格納する。
【0021】
入力部220は、操作者から各種操作や情報入力を受け付け、マウスやトラックボール等のポインティングデバイスやキーボード等を有し、表示部230と協働することによって、各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をMRI装置1の操作者に対して提供する。
【0022】
表示部230は、後述する制御部260による制御のもと、画像データ等の各種の情報を表示する。表示部230としては、液晶表示器等の表示デバイスが利用可能である。
【0023】
画像再構成部240は、記憶部250に記憶されたMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、MRI画像を再構成する。また、画像再構成部240は、記憶部250に記憶されたMR信号データの強度(MR信号強度)を測定したり、再構成したMRI画像の解析を行なったりする。
【0024】
記憶部250は、インタフェース部210により受信されたMR信号データや、画像再構成部240による処理結果(MRI画像、MR信号強度の測定結果、磁気共鳴画像の解析結果等)を記憶する。また、第1の実施形態における記憶部250は、RFコイル130に流れる電流値の最適値に関する情報を記憶する。かかる記憶部250が記憶する各種情報については、後に詳細に説明する。
【0025】
制御部260は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置1の全体制御を行う。具体的には、制御部260は、入力部220を介して操作者から入力される撮影条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部15に送信することでスキャンを制御する。また、制御部260は、スキャンの結果としてシーケンス制御部15から送られるMR信号データのデータ処理を制御する。
【0026】
次に、図1に示したRFコイル130について説明する。図2は、第1の実施形態におけるRFコイル130の構成例を示す図である。図2に例示するように、RFコイル130は、コイル支持部131上に、リング部132−1及び132−2と、ラング部133−1、133−2、133−3及び133−4が設けられる。なお、図2では、図示することを省略したが、RFコイル130には、8個のラング部が設けられる。
【0027】
コイル支持部131は、円筒状に形成された支持部材(ボビン)であり、リング部132−1及び132−2や、ラング部133−1、133−2、133−3及び133−4等をそれぞれ所定の位置で保たれるように支持する。
【0028】
リング部132−1及び132−2の各々は、銅箔等を用いてリング状に形成された導電部材である。リング部132−1とリング部132−2とは、リングの中心軸が略一致し、かつ、所定の距離だけ間が離れるように、互いに平行する位置に配置される。
【0029】
また、図2に例示するように、リング部132−1には、所定の間隔で複数のギャップが形成されており、各ギャップを架け渡すように、キャパシタ134−1a、134−2a、134−3a等が接続される。同様に、リング部132−2には、所定の間隔で形成された各ギャップを架け渡すように、キャパシタ134−1b、134−2b、134−3b等が接続される。
【0030】
8個のラング部(ラング部133−1等)の各々は、銅箔等を用いて矩形状に形成された導電部材である。かかるラング部の各々は、リング部132−1とリング部132−2の周縁同士を接続し、互いに所定の間隔で配置される。なお、ラング部は、「エレメント」と呼ばれることもある。
【0031】
また、図2に例示するように、8個のラング部(ラング部133−1等)の各々には、長手方向の略中心で分離するようにスリット状のギャップが形成される。そして、ラング部の各々には、各ギャップを架け渡すように、PIN(P-Intrinsic-N)ダイオード135−1、135−2、135−3、135−4等が接続される。かかるPINダイオード135−1等は、送受信兼用コイルであるRFコイル130の動作モードを送信/受信の両モード間で切替える。
【0032】
ここで、第1の実施形態におけるRFコイル130は、8個のラング部のうち、ラング部133−1及びラング部133−3が送信部13からRFパルスを受け付けることによりRF磁場を発生し、ラング部133−1及びラング部133−3がMR信号を受信するものとする。すなわち、第1の実施形態におけるRFコイル130においては、ラング部133−1及びラング部133−3が送信チャンネルとなるとともに受信チャンネルとなる。
【0033】
また、ラング部133−1に送信されるRFパルスと、ラング部133−3に送信されるRFパルスとは、基本的には、振幅が略同一であり、かつ、位相差が略90°であるものとする。ここで、RFコイル130は、8個のラング部が含まれるので、ラング部133−1は、ラング部133−3の配置位置からRFコイル130の円周上に90°ずれた位置に配置される。したがって、第1の実施形態におけるRFコイル130は、QDコイルとして動作する。なお、以下では、送信チャンネルであるラング部133−1を「送信チャンネルch1」と表記し、送信チャンネルであるラング部133−3を「送信チャンネルch2」と表記する場合がある。
【0034】
このようなRFコイル130の送信チャンネルch1又はch2のいずれか一方のみにRFパルスを送信すると、理想的な環境下においては、各ラング部に流れる電流の分布は、サイン波(sin波、正弦波)を描く定常波(「定在波」とも呼ばれる)となる。具体的には、送信チャンネルch1又はch2のいずれか一方のみにRFパルスを送信し、RFコイル130の円筒上を周回する方向に各ラング部に流れる電流値をプロットすると、サイン波を描く定常波となる。なお、理想的な環境下とは、各ラング部に流れる電流が外部からの影響を受けない環境を示し、例えば、RFコイル130の円筒内に被検体Pが存在しない場合等である。
【0035】
ここで、図3に、RFコイル130の各ラング部に流れる電流分布の一例を示す。なお、図3では、理想的な環境下における各ラング部の電流分布を示す。図3(a)は、図2に示したRFコイル130を周方向に展開した図を示す。ただし、図3(a)では、各キャパシタ(キャパシタ134−1a等)や各PINダイオード(PINダイオード135−1等)を図示することを省略する。
【0036】
また、図3(b)は、送信チャンネルch1であるラング部133−1のみにRFパルスが送信された場合における各ラング部の電流分布を示す。また、図3(c)は、送信チャンネルch2であるラング部133−3のみにRFパルスが送信された場合における各ラング部の電流分布を示す。なお、以下では、送信チャンネルch1のみにRFパルスが送信された場合における各ラング部の電流分布を「第1の電流分布」と表記し、送信チャンネルch2のみにRFパルスが送信された場合における各ラング部の電流分布を「第2の電流分布」と表記する場合がある。
【0037】
図3(b)に例示するように、理想的な環境下で送信チャンネルch1のみにRFパルスが送信された場合には、第1の電流分布は、電流分布D11と電流分布D12との間で変動する定常波となる。また、図3(c)に例示するように、理想的な環境下で送信チャンネルch2のみにRFパルスが送信された場合には、第2の電流分布は、電流分布D21と電流分布D22との間で変動する定常波となる。したがって、送信チャンネルch1及びch2の双方にRFパルスが送信された場合には、各ラング部の電流分布は、図3(b)及び(c)に示した電流分布を加算した電流分布となる。
【0038】
ここで、送信チャンネルch1に送信されるRFパルスと、送信チャンネルch2に送信されるRFパルスとの位相差は略90°であるので、第1の電流分布がD11である場合には、第2の電流分布は、全てのラング部の電流値が0となる。つまり、このときの各ラング部の電流分布は、第1の電流分布と第2の電流分布との和であるD11となる。同様に、第1の電流分布がD12である場合には、第2の電流分布は、全てのラング部の電流値が0となるので、各ラング部の電流分布はD12となる。
【0039】
また、第1の電流分布がD21である場合には、第2の電流分布は、全てのラング部の電流値が0となる。つまり、このときの各ラング部の電流分布はD21となる。同様に、第1の電流分布がD22である場合には、第2の電流分布は、全てのラング部の電流値が0となるので、各ラング部の電流分布はD22となる。
【0040】
このように、バードケージ型のQDコイルであるRFコイル130は、理想的な環境下において、送信チャンネルch1と送信チャンネルch2に送信されるRFパルスの振幅が略同一かつ位相差が90°である場合には、図3(b)及び(c)に例示した電流が流れる。これにより、RFコイル130は、時間変動によりRF磁場の向きが変動し、かつ、均一なRF磁場を発生することができる。
【0041】
また、ここでは、RFパルスの振幅が略同一であり位相差が90°である場合を例に挙げて説明したが、理想的な環境下であれば、RFパルスの振幅や位相を変動させることで、RFコイル130に所望の電流を流すことができ、所望のRF磁場を発生させることができる。
【0042】
しかし、RFコイル130の空洞内に被検体Pが位置すると、被検体内部における電気的な損失や誘電共振等が原因となって、各ラング部に流れる電流の振幅や位相は、理想的な環境下において各ラング部に流れる電流の振幅や位相と異なる場合がある。例えば、送信チャンネルch1に送信されるRFパルスと送信チャンネルch2に送信されるRFパルスの振幅が略同一であり位相差が90°であっても、各ラング部に実際に流れる電流の振幅が略同一になるとは限らず、位相差も略90°になるとは限らない。
【0043】
特に、共振周波数は静磁場強度に比例するので、静磁場強度が大きくなると共振周波数も高くなる関係にあるが、静磁場強度が例えば1.5T(テスラ)を超えると、被検体内部における電気的な損失や誘電共振等が原因となって、各ラング部に流れる電流の振幅や位相は、理想的な環境下と異なる場合が多い。RF磁場の分布が不均一になると、MRI装置によって再構成されるMRI画像において、部分的な信号低下やコントラスト低下が発生し、画質が劣化する場合がある。
【0044】
また、所望のRF磁場を発生させるために、操作者等がRFパルスの振幅や位相を変動させたとしても、RFコイル130に所望の電流を流すことができず、この結果、所望のRF磁場を発生させることができない場合がある。
【0045】
近年では、本スキャンの前にプリスキャンをMRI装置に実行させ、プリスキャンにおいて得られたMRI画像の劣化が小さくなるように、RFコイルに送信するRFパルスの振幅や位相を調整する技術も提案されている。しかし、かかる技術は、操作者がMRI画像の劣化度合いを目視で判断するものであるので、必ずしもRF磁場が均一になるようにRFパルスの振幅や位相を調整できるものではない。例えば、撮像部位によっては、正しく被検体内が画像化されたMRI画像であっても劣化しているかのように見えたり、正しく被検体内が画像化されていないMRI画像であるにかかわらず劣化していないかのように見えたりする。このように、操作者の目視によってMRI画像の劣化度合いを判定するには限界があり、RFパルスの振幅や位相を正しく調整できず、RF磁場の不均一性を改善できるとは限らない。
【0046】
また、撮像部位毎にRFパルスの振幅や位相を所定の記憶部に記憶しておき、撮像部位に対応するRFパルスの振幅や位相を用いて、撮像処理を行う技術も提案されている。かかる技術では、特定の部位を撮像する場合には、RFコイルに流れる電流に誤差が生じることを想定して、かかる誤差を抑制可能であると考えられるRFパルスをRFコイルに送信するものである。しかし、被検体の体型や姿勢や個人差等によってRFコイルに流れる電流に生じる誤差は異なる。すなわち、このような技術を用いたとしても、RF磁場の不均一性を改善できるとは限らない。
【0047】
そこで、第1の実施形態に係るMRI装置1は、RFコイル130に流れる電流の実測値に基づいて、RFコイル130に送信するRFパルスの振幅及び位相を調整することにより、被検体Pに応じてRF磁場の分布を調整する。
【0048】
まず、第1の実施形態におけるRFコイル130について説明する。第1の実施形態におけるRFコイル130には、リング部132−1に接続されている各キャパシタ(134−1a等)に印加される電圧を検出する検出器がキャパシタ毎に設けられる。図4に、第1の実施形態におけるRFコイル130に設けられる検出器の一例を示す。
【0049】
図4に例示する検出器136は、非接触型の電圧検出器である。検出器136の検出部136aは、リング部132−1に接続されるキャパシタ134−1aの印加電圧を検出する。かかる検出部136aのインピーダンスは、電流が流れない程度に高い値に設定される。これにより、検出部136aは、キャパシタ134−1aの印加電圧を正確に検出することができる。
【0050】
また、検出器136の非接触部136b及び136cは、リング部132−1と接触しない位置に設けられる。具体的には、非接触部136bは、リング部132−1の部位132−1aと接触しない位置に設けられ、非接触部136cは、リング部132−1の部位132−1bと接触しない位置に設けられる。これにより、非接触部136b及び136cに電流が流れることを抑制できるので、検出部136aは、キャパシタ134−1aの印加電圧を正確に検出することができる。
【0051】
なお、検出器136の検出部136aは、計算機システム200のインタフェース部210と光ファイバにより接続される。検出部136aにより検出されたキャパシタ134−1aの印加電圧値は、フォトカプラ等により光変換され、光ファイバを介して計算機システム200に伝達される。このように光ファイバを用いることにより、デジタル信号により生じるノイズを抑制することができる。
【0052】
次に、第1の実施形態における計算機システム200による処理について説明する。図5は、第1の実施形態における制御部260等の構成例を示すブロック図である。
【0053】
信号強度測定部241は、本スキャンの前に行われるプリスキャンにおいて、被検体からのMR信号の強度を測定し、予め決められているMR信号の強度となるRFパルスの条件を決定する。なお、第1の実施形態では、信号強度測定部241は、核スピンの磁化ベクトルを90°回転させるためのRFパルスの強度(振幅及び位相)を決定するものとする。なお、以下では、磁化ベクトルを90°回転させるためのRFパルスの条件を「90°条件」と表記する場合がある。
【0054】
画像再構成部242は、記憶部250からMR信号データを読み出して、読み出したMR信号データから磁気共鳴画像を再構成し、再構成した磁気共鳴画像を記憶部250に格納する。
【0055】
最適差記憶部251は、被検体Pの身体情報及び撮像部位毎に、送信チャンネルch1に流れる電流と送信チャンネルch2に流れる電流の振幅差及び位相差の最適値を記憶する。図6に、最適差記憶部251の一例を示す。図6に示した例では、最適差記憶部251は、「撮像部位」、「体重」、「振幅差」、「位相差」といった項目を有する。
【0056】
「撮像部位」は、撮像対象の部位を示す。図6では、最適差記憶部251の「撮像部位」に、「心臓」、「胃」、「腎臓」といった情報が記憶される例を示している。「体重」は、被検体Pの体重を示す。「振幅差」は、第1の電流分布と第2の電流分布との最適な振幅差を示す。「位相差」は、第1の電流分布と第2の電流分布との最適な位相差を示す。
【0057】
図6の例では、撮像部位が「心臓」であり、被検体Pの体重が「W11」である場合には、第1の電流分布と第2の電流分布との最適な振幅差が「0」であり、第1の電流分布と第2の電流分布との最適な位相差が「90°」であることを示している。この例では、RFコイル130の電流分布が図3に例示した状態になるので、RFコイル130は均一なRF磁場を発生する。すなわち、撮像部位「心臓」かつ被検体Pの体重「W11」である場合には、RF磁場が均一であることが望ましいことを示している。
【0058】
また、図6の例では、撮像部位が「胃」であり、被検体Pの体重が「W11」である場合には、第1の電流分布と第2の電流分布との最適な振幅差が「A11(0でない値)」であり、第1の電流分布と第2の電流分布との最適な位相差が「95°」であることを示している。この例では、RFコイル130の電流分布が図3に例示した状態にならないので、RFコイル130が均一なRF磁場を発生するとは限らない。
【0059】
この点について説明すると、一般的にはRF磁場が均一であることが望ましいことが多いが、撮像部位がRFコイル130の中心軸近傍に位置しない場合には、RF磁場が均一であることが望ましいとは限らない。このため、撮像部位によっては、第1の電流分布と第2の電流分布との振幅が同一でないことが望ましい場合や、第1の電流分布と第2の電流分布との位相差が90°でないことが望ましい場合がある。
【0060】
なお、図6では、最適差記憶部251が、身体情報である「体重」に対応付けて振幅差及び位相差を記憶する例を示したが、最適差記憶部251が記憶する身体情報は体重に限られない。例えば、最適差記憶部251は、被検体Pの身長、胸囲や腹囲等毎に振幅差及び位相差を記憶してもよい。
【0061】
電流測定部261、整形部262及び送信制御部263は、本スキャンの前に行われるプリスキャンにおいて動作する。
【0062】
電流測定部261は、RFコイル130の各ラング部に流れる電流の分布を測定する。第1の実施形態における電流測定部261は、送信部13に対して、送信チャンネルch1又はch2のいずれか一方のみRFパルスを送信させ、第1の電流分布及び第2の電流分布を測定する。
【0063】
具体的には、電流測定部261は、送信部13に対して、送信チャンネルch1のみにRFパルスを送信するように指示する。そして、電流測定部261は、送信部13によって送信チャンネルch1のみにRFパルスが送信された状態において、RFコイル130の検出器136から電圧値を受信し、かかる電圧値から電流値を算出する。これにより、電流測定部261は、図3に例示したようなRFコイル130の電流分布を測定する。
【0064】
同様に、電流測定部261は、送信部13に対して、送信チャンネルch2のみにRFパルスを送信するように指示する。そして、電流測定部261は、送信部13によって送信チャンネルch2のみにRFパルスが送信された状態において、RFコイル130の検出器136から電圧値を受信し、RFコイル130の電流分布を測定する。
【0065】
整形部262は、電流測定部261によって測定された第1の電流分布及び第2の電流分布の波形を略サイン波形に整形する。上記の通り、RFコイル130の空洞内に被検体Pが位置すると、実測値である第1の電流分布や第2の電流分布はサイン波形にならない場合がある。かかる場合には、後述する送信制御部263が、第1の電流分布や第2の電流分布の振幅差や位相差を算出することができないおそれがある。そこで、整形部262は、第1の電流分布や第2の電流分布をサイン波形に整形することにより、第1の電流分布や第2の電流分布の振幅差や位相差を算出することを可能にする。
【0066】
図7を用いて、整形部262による整形処理の一例を説明する。図7に実線で例示した電流分布D31は、電流測定部261によって測定された実測値を示す。整形部262は、電流測定部261によって測定された電流分布D31をサイン波形に整形することで、図7に点線で例示した電流分布D32を得る。整形手法としては、例えば、電流分布D31の波形に最も近いサイン波形を選択する手法であってもよいし、各ラング部の電流値を回帰分析してカーブフィッティングを行う手法であってもよい。
【0067】
送信制御部263は、整形部262によって整形された第1の電流分布と第2の電流分布との振幅差及び位相差を算出し、算出した振幅差及び位相差と、最適差記憶部251に記憶されている振幅差及び位相差との差異が小さくなるように、RFパルスの振幅や位相を変動させるように送信部13を制御する。
【0068】
具体的には、MRI装置1は、スキャン開始時に、操作者から入力部220を介して撮像部位及び被検体Pの体重等が入力される。送信制御部263は、かかる撮像部位及び被検体Pの体重に対応する振幅差及び位相差の最適値を最適差記憶部251から取得する。また、送信制御部263は、整形部262によって略サイン波形に整形された第1の電流分布と第2の電流分布との振幅差及び位相差を算出する。すなわち、送信制御部263は、実測値である第1の電流分布と第2の電流分布との振幅差及び位相差を算出する。
【0069】
そして、送信制御部263は、実測値から得られた振幅差と最適差記憶部251から取得した振幅差の最適値との差異が小さくなるとともに、実測値から得られた位相差と最適差記憶部251から取得した位相差の最適値との差異が小さくなるように、送信チャンネルch1に送信するRFパルスの振幅及び位相と、送信チャンネルch2に送信するRFパルスの振幅及び位相とを算出する。そして、送信制御部263は、算出したRFパルスの振幅及び位相を記憶部250に格納する。
【0070】
このとき、送信制御部263は、信号強度測定部241によって決定された90°条件を満たす範囲で、送信チャンネルch1及びch2に送信するRFパルスの振幅及び位相を算出する。例えば、送信チャンネルch1に送信するRFパルスの振幅を「A1」とし、送信チャンネルch2に送信するRFパルスの振幅を「A2」とし、双方のRFパルスの位相差が「θ」をとする。かかる場合に、送信制御部263は、大きさが「A1」であるベクトルA1と、大きさが「A2」であるベクトルA2とのなす角をθとし、かかるベクトルA1とベクトルA2との和の絶対値が、信号強度測定部241によって決定されたRFパルスの強度の絶対値と略一致するように、A1、A2及びθを算出する。
【0071】
なお、記憶部250に格納されたRFパルスの振幅及び位相は、本スキャン時に送信部13によって用いられる。具体的には、計算機システム200は、送信制御部263によって特定されたRFパルスの振幅及び位相を用いてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部15に送信する。
【0072】
また、送信制御部263は、RFパルスの振幅及び位相を算出する際には、送信チャンネルch1及びch2にRFパルスを送信させることで、実際に第1の電流分布と第2の電流分布との振幅差及び位相差を算出し、算出した振幅差及び位相差と、最適差記憶部251に記憶されている振幅差及び位相差とを比較してもよい。具体的には、送信制御部263は、送信部13に対して、RFパルスの振幅及び位相を少しずつ変動させながら、RFパルスを送信チャンネルch1のみに送信させた後に、RFパルスを送信チャンネルch2のみに送信させる。続いて、送信制御部263は、送信部13によってRFパルスが送信されるたびに、整形部262から第1の電流分布及び第2の電流分布を受け付け、かかる第1の電流分布と第2の電流分布との振幅差及び位相差と、最適差記憶部251から取得した振幅差及び位相差とを比較する。そして、送信制御部263は、第1の電流分布と第2の電流分布との振幅差及び位相差と、最適差記憶部251から取得した振幅差及び位相差との差異が最小となるRFパルスの振幅及び位相を特定する。
【0073】
このように、送信制御部263は、RFコイル130に流れる電流の実測値に基づいて、RFパルスの振幅及び位相を調整するので、RF磁場の不均一性を改善することができる。また、図6を用いて説明したように、必ずしもRF磁場の均一性が必要とされない場合もあるが、送信制御部263は、RFコイル130に流れる電流の実測値と、最適差記憶部251に記憶されている最適値に基づいて、振幅差及び位相差を調整するので、操作者等が所望するRF磁場を発生させることができる。
【0074】
図8は、第1の実施形態における処理手順の一部を示すフローチャートである。
【0075】
MRI装置1は、操作者から撮影要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、撮影要求を受け付けない場合には(ステップS101で「No」)、MRI装置1は、待機状態となる。
【0076】
一方、撮影要求を受け付けた場合には(ステップS101で「Yes」)、制御部260が以下の処理を行う。なお、このとき、MRI装置1は、操作者から入力部220を介して撮像部位及び被検体Pの体重等が入力される。
【0077】
まず、電流測定部261は、送信部13を制御することにより、送信チャンネルch1のみにRFパルスを送信する(ステップS102)。そして、電流測定部261は、RFコイル130の検出器136から電圧値を受信することで、RFコイル130の各ラング部に流れる電流の分布である第1の電流分布を測定する(ステップS103)。そして、整形部262は、電流測定部261によって測定された第1の電流分布の波形を略サイン波形に整形する(ステップS104)。
【0078】
また、電流測定部261は、送信部13を制御することにより、送信チャンネルch2のみにRFパルスを送信する(ステップS105)。そして、電流測定部261は、RFコイル130の検出器136から電圧値を受信することで、各ラング部に流れる電流の分布である第2の電流分布を測定する(ステップS106)。そして、整形部262は、電流測定部261によって測定された第2の電流分布の波形を略サイン波形に整形する(ステップS107)。
【0079】
そして、送信制御部263は、整形部262によって整形された第1の電流分布と第2の電流分布との振幅差及び位相差と、撮像部位及び被検体Pの体重に対応付けて最適差記憶部251に記憶されている振幅差及び位相差との差異が小さくなるように、RFパルスの振幅及び位相を算出する(ステップS108)。
【0080】
MRI装置1は、ステップS102〜S108に示したプリスキャンを行った後に、ステップS108において算出された振幅及び位相のRFパルスを用いて、本スキャンを行う(ステップS109)。
【0081】
そして、MRI装置1は、撮影終了要求を操作者から受け付けたか否かを判定し(ステップS110)、撮影終了要求を受け付けなかった場合(ステップS110で「No」)、ステップS109に戻る。一方、MRI装置1は、撮影終了要求を受け付けた場合(ステップS110で「Yes」)、処理を終了する。
【0082】
上述したように、第1の実施形態によれば、被検体に応じてRF磁場の分布を調整することができる。
【0083】
(第2の実施形態)
図9及び図10を用いて、第2の実施形態に係るMRI装置1を説明する。第2の実施形態に係るMRI装置1は、RFコイル130に設けられた検出器136の個体差による検出誤差を補正する。具体的には、第2の実施形態に係るMRI装置1は、ファントム撮像時にRFコイル130の各ラング部に流れる電流値を測定し、測定結果と期待値とに基づいて、各検出器の検出誤差を補正するための補正係数を算出する。
【0084】
より詳細に説明すると、ファントムは、MRI装置1の特定を調べるために用いられる人工物であり、形状や性質が既知である。すなわち、被検体Pがファントムである場合には、RFコイル130にRFパルスを送信することで各ラング部に流れる電流の値も既知の期待値となるはずである。しかし、ラング部毎に設けられた検出器136による検出結果には個体差があるので、各ラング部に実際に流れる電流値が期待値であったとしても、検出器136によっては異なる結果を検出する場合がある。そこで、第2の実施形態に係るMRI装置1は、電流の実測値と期待値とを比較することで、検出器136の検出誤差を補正するための補正係数を算出する。
【0085】
なお、第2の実施形態に係るMRI装置1は、被検体Pを撮像する撮像モード、又は、ファントムを用いて補正係数を算出する補正係数算出モードのいずれかの動作モードにより動作する。そして、MRI装置1は、撮像モードで動作する場合には、上記第1の実施形態において説明した各種処理を行う。また、MRI装置1は、補正係数算出モードで動作する場合には、被検体Pがファントムであるものとして、以下に説明する補正係数算出処理を行う。このようなMRI装置1の動作モードは、操作者が入力部220を操作することにより切り替えることができる。
【0086】
図9は、第2の実施形態における制御部360等の構成例を示すブロック図である。なお、以下では、既に示した構成部位と同様の機能を有する部位には同一符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。
【0087】
電流測定部361は、第1の実施形態における電流測定部261と同様に、RFコイル130の各ラング部に流れる電流値を測定する。具体的には、電流測定部361は、送信部13に対して、送信チャンネルch1又はch2のいずれか一方のみRFパルスを送信させ、各ラング部に流れる電流値を測定する。
【0088】
なお、電流測定部361は、MRI装置1が撮像モードで動作する場合には、測定結果を整形部262に出力し、MRI装置1が補正係数算出モードで動作する場合には、測定結果を補正係数算出部364に出力してもよい。
【0089】
補正係数算出部364は、MRI装置1の動作モードが補正係数算出モードである場合に動作する。具体的には、補正係数算出部364は、電流測定部361によって測定された電流値と期待値とをラング部毎に比較する。そして、補正係数算出部364は、ラング部毎に、期待値を電流の実測値で除算することで、かかるラング部の印加電圧を検出する検出器136の検出誤差を補正するための補正係数を算出する。そして、補正係数算出部364は、算出した補正係数を補正係数記憶部352に格納する。
【0090】
図10に、補正係数記憶部352の一例を示す。図10に示した例では、補正係数記憶部352は、検出器を識別するための情報と、補正係数とを対応付けて記憶している。なお、RFコイル130のラング部133−1、133−2、・・・、133−8の印加電圧を検出する検出器が、検出器136−1、136−2、・・・、136−8であるものとする。そして、図10に例示した「検出器」には、かかる検出器136−1に付した符号が記憶されるものとする。
【0091】
すなわち、図10の例では、検出器136−1による検出結果には、誤差がないことを示している。また、図10の例では、検出器136−2による検出結果には誤差があり、かかる検出結果に補正係数「0.95」を乗算することで、誤差を補正できることを示している。
【0092】
このような補正係数記憶部352に記憶されている補正係数は、電流測定部361によって用いられる。例えば、電流測定部361は、撮像モードである場合に、RFコイル130の検出器から受信した電圧値から電流値を算出する際に、補正係数記憶部352に記憶されている補正係数を用いる。
【0093】
上述したように、第2の実施形態によれば、検出器の検出誤差を補正することができる。この結果、被検体に応じてRF磁場の分布をより正確に調整することができる。
【0094】
なお、上記実施形態では、8個のラング部を有するRFコイル130を例に挙げて説明したが、RFコイル130が有するラング部の数は8個に限られない。例えば、RFコイル130は、16個のラング部を有してもよい。また、上記実施形態では、2個の送信チャンネルを有するRFコイル130を例に挙げて説明したが、RFコイル130が有する送信チャンネルの数は2個に限られない。例えば、RFコイル130は、4個の送信チャンネルを有してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、バードケージ型のQDコイルであるRFコイル130を例に挙げて説明したが、RFコイル130は、マルチチャンネルでRF磁場を発生する送信コイルであればよい。
【0096】
以上説明したとおり、第1及び第2の実施形態によれば、被検体に応じてRF磁場の分布を調整することができる。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
1 MRI装置
13 送信部
100 MRI装置
130 RFコイル
136 検出器
241 信号強度測定部
251 最適差記憶部
261 電流測定部
262 整形部
263 送信制御部
352 補正係数記憶部
364 補正係数算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信チャンネルにより高周波磁場を発生する送信コイルと、
前記複数の送信チャンネルに高周波パルスを送信する送信部と、
前記複数の送信チャンネルに流れる電流の振幅差及び位相差の最適値を記憶する最適差記憶部と、
前記送信部によって高周波パルスが送信されることで前記複数の送信チャンネルに流れる電流の分布を測定する電流測定部と、
前記電流測定部によって測定された電流の分布から前記複数の送信チャンネル間の電流の振幅差及び位相差を算出し、算出した振幅差及び位相差と前記最適差記憶部に記憶されている振幅差及び位相差の最適値との差異が小さくなるように、前記送信部によって送信される高周波パルスの振幅及び位相の少なくも一方を制御する送信制御部と
を有することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記送信コイルは、
互いに平行する位置に配置された略円形の2個のリング部と、前記2個のリング部の周縁同士を接続する複数のエレメントとを有し、前記複数のエレメントに流れる電流によって高周波磁場を発生し、
前記送信部は、
前記複数のエレメントのうち、第1のエレメントと第2のエレメントとに異なる時相で高周波パルスを送信し、
前記最適差記憶部は、
前記第1のエレメントと前記第2のエレメントに流れる電流の振幅差及び位相差の最適値を記憶し、
前記電流測定部は、
前記送信部によって前記第1のエレメントのみに高周波パルスが送信されることで前記複数のエレメントに流れる電流の分布である第1の電流分布と、前記送信部によって前記第2のエレメントのみに高周波パルスが送信されることで前記複数のエレメントに流れる電流の分布である第2の電流分布とを測定し、
前記送信制御部は、
前記電流測定部によって測定された第1の電流分布及び第2の電流分布の振幅差及び位相差と、前記最適差記憶部に記憶されている振幅差及び位相差の最適値との差異が小さくなるように、前記高周波パルスの振幅及び/又は位相を変動させるように前記送信部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記電流測定部によって測定された第1の電流分布及び第2の電流分布の波形を略サイン波形に整形する整形部をさらに有し、
前記送信制御部は、
前記整形部によって整形された第1の電流分布及び第2の電流分布の振幅差及び位相差と、前記最適差記憶部に記憶されている振幅差及び位相差の最適値との差異が小さくなるように、前記高周波パルスの振幅及び位相の少なくとも一方を変動させるように前記送信部を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記最適差記憶部は、
被検体の身体情報及び前記被検体の撮像対象部位の少なくとも一方毎に、前記電流の振幅及び位相の最適値を記憶し、
前記送信制御部は、
前記最適差記憶部から、撮像対象の被検体及び撮像対象部位の少なくとも一方に対応する振幅差及び位相差の最適値を取得し、取得した振幅差及び位相差の最適値を用いて、前記送信部によって送信される高周波パルスの振幅及び位相の少なくも一方を制御する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記送信チャンネル又は前記エレメント毎に、前記複数の送信チャンネル又は前記複数のエレメントに印加される電圧値を検出する検出器と、
撮像対象がファントムである状態において前記検出器によって検出された電圧値から求められる電流値を、撮像対象がファントムである場合における前記複数の送信チャンネル又は前記複数のエレメントに流れる電流値の期待値と一致させるための補正係数を算出する補正係数算出部と、
前記補正係数算出部によって算出された補正係数を前記検出器毎に記憶する補正係数記憶部と
をさらに有し、
前記電流測定部は、
撮像対象が被検体である場合に、前記補正係数記憶部に記憶されている補正係数を用いて、前記検出器によって検出された電圧から求められる電流値を補正する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−239737(P2012−239737A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114624(P2011−114624)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】