説明

磁気共鳴スペクトロスコピー装置

【課題】マルチボクセルスペクトロスコピーにおける関心領域の設定を容易にすること。
【解決手段】表示制御部26aは、スペクトル画像の撮影時に用いられる撮影領域をボクセルサイズおよびボクセル数により設定し、複数のボクセルごとのスペクトル画像を生成するために用いられる関心領域を撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに基づくボクセル数により設定するための撮影条件設定用画面を表示部25に表示させる。設定情報格納部26bは、撮影条件設定用画面にて入力された撮影領域の設定情報および関心領域の設定情報を設定情報データ23aに格納する。設定制御部26cは、設定情報データ23aが記憶している設定情報に基づいて、関心領域の移動を撮影領域内に制限し、かつ、関心領域の移動量を撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに対応する移動量に制限するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気共鳴スペクトロスコピー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、磁気共鳴現象を利用して、被検体中の水素原子核(主に水分子に含まれる水素原子核)の濃度分布を反映したMRI画像を再構成することで、疾病の診断、治療、手術計画などを初めとする多くの医療行為において、重要な役割を果たしている。
【0003】
また、近年、磁気共鳴現象を利用することで、MRI画像では得られない代謝物質の濃度分布を複素スペクトルにより視覚的に捉えることができる磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS:Magnetic Resonance Spectroscopy)装置が開発されている。MRSとは、様々な分子の化学結合の違いによる磁気共鳴周波数の差異(ケミカルシフト)に基づいて、分子ごとの信号を分離する方法である。なお、ケミカルシフトは、ある分子中の原子核の磁場が付近に存在する原子核によって作られる磁場の影響を受け、それにより同じ原子核であっても周囲の環境により共鳴周波数の違いが生じることで発生する。
【0004】
ここで、一般的に、MRS装置の機能は、MRI装置に組み込まれており、例えば、脳虚血診断を行なう場合、MRI装置は、脳のアキシャル画像などを位置決め画像として撮影し、操作者が位置決め画像にて設定した関心領域における磁気共鳴スペクトルを収集する。図20は、スペクトル画像を説明するための図である。
【0005】
例えば、MRI装置は、脳に設定された関心領域において収集した磁気共鳴スペクトルから、図20の(A)に示すように、脳虚血を診断するうえで重要となるコリン、クレアチン、N―アセチルアスパラギン酸(NAA)、乳酸、脂肪などの各代謝物質の濃度分布強度を各代謝物質のケミカルシフト(単位:ppm)に対応付けたスペクトル画像を生成し、生成したスペクトル画像を表示する。なお、MRI装置は、磁気共鳴スペクトルの収集を行なう場合、位置決め画像上で設定されたMRI画像用撮影領域にてMRI画像の撮影も行ない、MRI画像とスペクトル画像とを同時に表示することも可能である。
【0006】
ここで、MRSには、一つの関心領域を対象として磁気共鳴スペクトルを収集するシングルボクセルスペクトロスコピー(Single-Voxel Spectroscopy)と、複数のボクセルごとに各代謝物質の磁気共鳴スペクトルを同時に収集するマルチボクセルスペクトロスコピー(Multi-Voxel Spectroscopy)とがある。さらに、マルチボクセルスペクトロスコピーには、2次元上の複数のボクセルにて磁気共鳴スペクトルを収集する場合の他に、3次元上の複数のボクセルにて磁気共鳴スペクトルを収集する3D―マルチボクセルスペクトロスコピーもある。
【0007】
マルチボクセルスペクトロスコピーでは、位置決め画像上で複数のボクセルからなる関心領域が設定され、これにより、ボクセルごとの磁気共鳴スペクトルが収集され、ボクセルごとのスペクトル画像が表示される。例えば、位置決め画像上で「4×4」のボクセルが関心領域として設定された場合、MRI装置は、16個のボクセルそれぞれの磁気共鳴スペクトルを収集し、その後、図20の(B)に示すように、16個のボクセルそれぞれのスペクトル画像を生成し、表示する。
【0008】
なお、マルチボクセルスペクトロスコピーでは、複数ボクセルの関心領域の設定を容易にするため、位置決め画像上にてMRI画像用撮影領域の設定に用いられるグリッド線を非表示とさせる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、マルチボクセルスペクトロスコピーでは、磁気共鳴スペクトルの収集とともに複数スライスのMRI画像が撮影された場合、関心領域と最も近いスライス画像を選択して、選択したスライス画像をスペクトル画像とともに表示させる方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
ここで、マルチボクセルスペクトロスコピーにおいて、従来行なわれていた関心領域の設定方法について、図21を用いて説明する。図21は、従来技術を説明するための図である。
【0010】
マルチボクセルスペクトロスコピーでは、例えば、図21に示すように、脳のアキシャル断面画像上に、磁気共鳴スペクトルを収集する候補領域である収集領域、すなわちスペクトル画像を撮影する候補領域である撮影領域が設定される。さらに、マルチボクセルスペクトロスコピーでは、図21に示すように、撮影領域とは独立に、実際に磁気共鳴スペクトルを複数ボクセルにて収集するための関心領域が設定される。
【0011】
例えば、撮影領域は、ボクセルサイズとボクセル数とが設定されることで、図21に示すように、撮影領域の外形および各ボクセルの境界線が点線で表された格子状の領域として設定される。また、関心領域は、縦横のボクセルサイズが設定されることで、図21の実線で示す矩形の領域として設定される。なお、撮影領域および関心領域それぞれは、お互い独立に自由に移動することが可能となっている。そして、マルチボクセルスペクトロスコピーでは、設定された関心領域に含まれている撮影領域の各ボクセル単位で磁気共鳴スペクトルが収集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−99820号公報
【特許文献2】特開2008−246193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、上記した従来の技術は、撮影領域および関心領域がそれぞれ独立して設定可能であるため、関心領域の設定が容易に行えないという課題があった。図22は、従来技術の課題を説明するための図である。
【0014】
上記した従来の技術では、撮影領域および関心領域がそれぞれ独立して設定可能であるため、例えば、図22に示すように、関心領域が撮影領域のボクセル境界線の外に設定されたり、関心領域が撮影領域外にも設定されたりする場合があり、かかる場合、操作者が参照したいスペクトル画像を生成するための磁気共鳴スペクトルが収集されないことになる。
【0015】
このため、操作者は、関心領域の外形が撮影領域のボクセル境界線と一致するように、撮影領域のボクセルサイズに基づいて、関心領域のボクセルサイズを計算する必要があった。
【0016】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、マルチボクセルスペクトロスコピーにおける関心領域の設定を容易にすることが可能となる磁気共鳴スペクトロスコピー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、磁気共鳴スペクトロスコピー装置が、磁気共鳴スペクトルから生成されるスペクトル画像の撮影時に用いられる撮影領域をボクセルサイズおよびボクセル数により設定し、複数のボクセルごとのスペクトル画像を生成するために用いられる関心領域を前記撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに基づくボクセル数により設定するための設定用画面を所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、前記設定用画面にて入力された前記撮影領域および前記関心領域の設定情報に基づいて、前記関心領域の移動を前記撮影領域内に制限し、かつ、前記関心領域の移動量を前記撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに対応する移動量に制限するよう制御する設定制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、マルチボクセルスペクトロスコピーにおける関心領域の設定を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、制御部の構成を説明するための図である。
【図3】図3は、制御部が実行する処理の概要を説明するための図である。
【図4】図4は、撮影条件設定用画面の初期画面を説明するための図である。
【図5】図5は、撮影領域の設定に用いられるパラメータを説明するための図である。
【図6】図6は、撮像領域のボクセルサイズ設定用画面を説明するための図である。
【図7】図7は、撮像領域のボクセル数設定用画面を説明するための図である。
【図8】図8は、関心領域の設定に用いられるパラメータを説明するための図である。
【図9】図9は、関心領域のボクセル数設定用画面を説明するための図である。
【図10】図10は、設定情報データを説明するための図である。
【図11】図11は、設定制御部を説明するための図(1)である。
【図12】図12は、設定制御部を説明するための図(2)である。
【図13】図13は、設定制御部を説明するための図(3)である。
【図14】図14は、設定制御部を説明するための図(4)である。
【図15】図15は、本実施例に係るMRI装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】図16は、変形例1を説明するための図である。
【図17】図17は、変形例2を説明するための図である。
【図18】図18は、変形例3を説明するための図である。
【図19】図19は、変形例4を説明するための図である。
【図20】図20は、MRSを説明するための図である。
【図21】図21は、従来技術を説明するための図である。
【図22】図22は、従来技術の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS:Magnetic Resonance Spectroscopy)装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、本発明に係る磁気共鳴スペクトロスコピー装置の機能を搭載した磁気共鳴イメージング装置を実施例として説明し、磁気共鳴イメージング装置を「MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置」と呼ぶ。
【実施例】
【0021】
まず、本実施例に係るMRI装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置の構成を説明するための図である。なお、本実施例に係るMRI装置は、MRI画像を撮影するとともに、関心領域における磁気共鳴スペクトルを収集して、複数の代謝物質の濃度分布強度を示すスペクトル画像を生成する装置である。
【0022】
図1に示すように、本実施例に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信コイル6、送信部7、受信コイル8、受信部9、シーケンス制御部10および計算機システム20を有する。
【0023】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石1としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石などが使用される。
【0024】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0025】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する装置である。
【0026】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場およびリードアウト用傾斜磁場にそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮影断面(スライス面)を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0027】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮影口)内へ挿入する。通常、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、後述する制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向および上下方向へ移動する。
【0028】
送信コイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生する。
【0029】
送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル6に送信する。具体的には、送信部7は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変換部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。
【0030】
受信コイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記の高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。そして、受信コイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、受信した磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0031】
受信部9は、受信コイル8から出力される磁気共鳴信号を入力して磁気共鳴信号のデータを生成する。具体的には、受信部9は、選択器、前段増幅器、位相検波器およびアナログデジタル変換器を有する。選択器は、受信コイル8から出力される磁気共鳴信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力される磁気共鳴信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力される磁気共鳴信号の位相を検波する。アナログデジタル変換器は、位相検波器から出力される信号をデジタル変換することで磁気共鳴信号のデータを生成する。
【0032】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動することで、被検体Pのスキャンを行う。そして、シーケンス制御部10は、傾斜磁場電源3、送信部7および受信部9を駆動して被検体Pをスキャンした結果、受信部9から磁気共鳴信号データが送信されると、その磁気共鳴信号データを計算機システム20へ転送する。
【0033】
なお、「シーケンス情報」とは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信コイル6に送信する高周波信号の強さや高周波信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を時系列に沿って定義した情報である。
【0034】
また、本実施例では、「MRI画像を撮影するためのシーケンス情報」および「スペクトル画像を撮影するためのシーケンス情報」それぞれに基づいて、被検体Pのスキャンが行なわれる。すなわち、受信部9は、MRI画像を再構成するために収集された磁気共鳴信号データや、スペクトル画像を生成するために収集された磁気共鳴信号データ(磁気共鳴スペクトルデータ)をそれぞれ生成して、シーケンス制御部10に送信する。そして、シーケンス制御部10は、これらの磁気共鳴信号データを計算機システム20へ転送する。
【0035】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行ない、インタフェース部21、データ処理部22、記憶部23、入力部24、表示部25および制御部26を有する。
【0036】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部10から磁気共鳴信号データを受信する。磁気共鳴信号データを受信すると、インタフェース部21は、受信した磁気共鳴信号データを記憶部23に格納する。
【0037】
なお、本実施例に係るインタフェース部21は、MRI画像を再構成するための磁気共鳴信号データや、スペクトル画像を生成するために収集された磁気共鳴スペクトルデータを記憶部23に格納する。
【0038】
データ処理部22は、記憶部23に記憶されたMRI画像再構成用磁気共鳴信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、画像データ(磁気共鳴画像)を再構成する。また、データ処理部22は、さらに、記憶部23に記憶されたスペクトル画像生成用磁気共鳴信号データ(磁気共鳴スペクトルデータ)に対して、後処理を施すことによって、画像データ(スペクトル画像)を生成する。
【0039】
記憶部23は、インタフェース部21により受信された磁気共鳴信号データや、データ処理部22により再構成された磁気共鳴画像、データ処理部22により生成されたスペクトル画像、操作者から設定された各種情報などを記憶する。
【0040】
入力部24は、操作者から各種操作や情報入力を受け付け、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイスやキーボードなどを有し、表示部25と協働することによって、各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をMRI装置100の操作者に対して提供する。
【0041】
表示部25は、後述する制御部26による制御のもと、画像データ等の各種の情報を表示する。表示部25としては、液晶表示器などの表示デバイスが利用可能である。
【0042】
制御部26は、図示していないCPUやメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、制御部26は、入力部24を介して操作者から入力される撮影条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部10に送信することでスキャンを制御する。より具体的には、制御部26は、「MRI画像を撮影するためのシーケンス情報」および「スペクトル画像を撮影するためのシーケンス情報」を生成する。また、制御部26は、スキャンの結果としてシーケンス制御部10から送られるMRI画像再構成用磁気共鳴信号データに基づく磁気共鳴画像の再構成およびスペクトル画像生成用磁気共鳴信号データ(磁気共鳴スペクトルデータ)に基づくスペクトル画像の生成を制御する。
【0043】
このように、本実施例に係るMRI装置100は、MRI画像の再構成およびスペクトル画像の生成を行なう装置である。そして、本実施例に係るMRI装置100は、特に、複数のボクセルを含む関心領域において、ボクセルごとに磁気共鳴スペクトルを同時に収集するマルチボクセルスペクトロスコピーが行なわれる場合に、以下に説明する制御部26の制御により、関心領域の設定を容易にすることが可能となるように構成された装置である。
【0044】
以下、本実施例に係る制御部26の処理について、図2などを用いて説明する。図2は、制御部の構成を説明するための図である。
【0045】
図2に示すように、本実施例に係る制御部26は、表示制御部26aと、設定情報格納部26bと、設定制御部26cとを有する。そして、本実施例に係る記憶部23は、設定情報データ23aを記憶する。
【0046】
ここで、設定情報データ23aを用いて実行される制御部26(表示制御部26a、設定情報格納部26bおよび設定制御部26c)の処理内容の概要について、図3を用いて説明する。図3は、制御部が実行する処理の概要を説明するための図である。
【0047】
表示制御部26aは、表示部25のモニタに画像データおよび設定情報を操作者が入力するためのGUIなどを表示するように制御する。具体的には、マルチボクセルスペクトロスコピーが行なわれる場合、表示制御部26aは、まず、位置決め画像を表示するように制御する。なお、位置決め画像は、複数のボクセルごとのスペクトル画像を生成するための関心領域を操作者が設定するために撮影されたMRI画像である。
【0048】
例えば、表示制御部26aは、脳虚血診断を行なうために位置決め画像として撮影された脳のアキシャル断面画像がデータ処理部22により再構成されると、表示制御部26aは、記憶部23に格納された位置決め画像を読み出して、表示部25のモニタに表示させる。
【0049】
そして、操作者から入力部24を介してスペクトル画像の撮影条件設定用画面の表示要求を受け付けると、表示制御部26aは、後に詳述する撮影条件設定用画面を表示部25のモニタに表示させる。
【0050】
そして、撮影条件設定用画面を参照した操作者が、スペクトル画像の撮影時に用いられる撮影領域をボクセルサイズおよびボクセル数により設定した場合、設定情報格納部26bは、撮影領域の設定情報(ボクセルサイズおよびボクセル数や、位置決め画像上での撮影領域の位置情報)を設定情報データ23aに格納する。なお、撮影条件設定用画面により設定される撮影領域は、ボクセル単位で分割された格子状の領域となり、スペクトル画像撮影に用いられるものである。また、撮影条件設定用画面により設定される撮影領域は、MRI画像の撮影に用いられるMRI画像用撮影領域とは異なるものである。
【0051】
そして、表示制御部26aは、図3の(A)に示すように、位置決め画像上に、撮影領域の外形および各ボクセルの境界線が、例えば、点線で表された格子状の領域を表示させる。
【0052】
さらに、撮影領域を設定した後、撮影条件設定用画面を参照した操作者が、撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに基づくボクセル数により関心領域を設定した場合、設定情報格納部26bは、撮影条件設定用画面にて設定された関心領域の設定情報(ボクセル数や、位置決め画像上での関心領域の位置情報)を設定情報データ23aに格納する。
【0053】
そして、設定制御部26cは、撮影条件設定用画面にて入力された撮影領域および関心領域の設定情報、すなわち、設定情報データ23aが記憶している設定情報に基づいて、関心領域の移動を撮影領域内に制限する。具体的には、設定制御部26cは、撮影条件設定用画面にて入力された撮影領域のボクセル数に基づいて、撮影条件設定用画面にて設定される関心領域のボクセル数に最大値を設定することで、関心領域が撮影領域内に必ず設定されるように制御する。さらに、設定制御部26cは、設定情報に基づいて、操作者が指定した関心領域の移動量により、関心領域が撮影領域からはみ出さない場合のみ関心領域の移動を可能とするように制御する。
【0054】
また、設定制御部26cは、設定情報データ23aが記憶している設定情報に基づいて、関心領域の移動量を撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに対応する移動量に制限するよう制御する。具体的には、設定制御部26cは、操作者が指定した関心領域の移動量が撮影領域のボクセルサイズに対応する移動量である場合のみ、関心領域の移動を可能とするように制御する。これにより、図3の(B)に示すように、実線で示す関心領域の外形は、必ず、撮影領域の外形やボクセル境界線と一致することとなる。
【0055】
かかる処理により、マルチボクセルスペクトロスコピーにて関心領域の設定を行なう際に、操作者は、撮影領域からはみ出すことなく、かつ、外形が撮影領域の外形やボクセル境界線に一致する関心領域を容易に設定することができる。
【0056】
以下、撮影条件設定用画面の具体的な一例を用いて、上述した処理内容をさらに具体的に説明する。図4は、撮影条件設定用画面の初期画面を説明するための図である。
【0057】
例えば、表示制御部26aは、位置決め画像を参照する操作者から入力部24を介してスペクトル画像の撮影条件設定用画面の表示要求を受け付けると、図4に示すように、撮影条件設定用画面の初期画面を表示させる。図4に示す一例では、撮影条件設定用画面の初期画面は、撮影領域のボクセルサイズを設定するための領域a、撮影領域のボクセル数を設定するための領域bおよび関心領域のボクセル数を設定するための領域cを有する。
【0058】
最初に、操作者は、領域aおよび領域bを用いて撮影領域の設定を行なう。ここで、改めて、撮影領域の設定に用いられるパラメータであるボクセルサイズおよびボクセル数について説明する。図5は、撮影領域の設定に用いられるパラメータを説明するための図である。
【0059】
操作者は、「幅(Width)、高さ(Height)、深さ(depth)」の3つの値を設定することで、ボクセルサイズを決定する(図5の(1)を参照)。そして、操作者は、撮影領域の幅(Width)を設定するために、幅方向(図中の左右方向)のボクセル数を決定する(図5の(2)を参照)。さらに、操作者は、撮影領域の高さ(Height)を設定するために、高さ方向(図中の上下方向)のボクセル数を決定する(図5の(3)を参照)。
【0060】
図6は、撮影領域のボクセルサイズ設定用画面を説明するための図である。上記の撮影領域設定用パラメータのうち、ボクセルサイズを設定する際、操作者は、図6に示すように、領域aに設けられている「P」ボタンをマウス操作によりクリックする。かかる操作により、撮影領域のボクセルサイズ設定用画面である領域a1(MRS Voxel)が表示制御部26aにより表示される。そして、操作者は、「高さ(Height)、幅(Width)、深さ(depth)」それぞれの値を、該当する数値入力フィールドにキーボード操作により入力する。あるいは、操作者は、図6に示すように、各ボクセルサイズの設定用領域ごとに設けられているスピンボタンを押下したり、スライドバーをスライドしたりすることにより、各ボクセルサイズの値を設定する。
【0061】
例えば、図6に示す一例では、ボクセルサイズの「幅(Width)、高さ(Height)、深さ(depth)」の値は、操作者により、すべて「1.7cm」と設定されている。なお、図6に示す一例では、ボクセルサイズの「幅(Width)、高さ(Height)、深さ(depth)」の値は、「0.5cmから8.0cm」の範囲内に制限された状態となっている。
【0062】
図7は、撮影領域のボクセル数設定用画面を説明するための図である。ボクセルサイズを設定した後、撮影領域のボクセルサイズ数を設定する際、操作者は、図7に示すように、領域bに設けられている「P」ボタンをマウス操作によりクリックする。かかる操作により、撮影領域のボクセル数設定用画面である領域b1(MRS Marix)が表示制御部26aにより表示される。そして、操作者は、「幅方向のボクセル数」および「高さ方向のボクセル数」を、該当する数値入力フィールドにキーボード操作により入力する。あるいは、操作者は、図7に示すように、各方向のボクセル数の設定用領域ごとに設けられているスピンボタンを押下したり、スライドバーをスライドしたりすることにより、各方向のボクセル数を設定する。
【0063】
例えば、図7に示す一例では、「幅方向のボクセル数」は、「12」と設定され、「高さ方向のボクセル数」は、「16」として設定されている。すなわち、図6および7に示す一例では、撮影領域の幅方向は、「20.4cm」となり、撮影領域の高さ方向は、「27.2cm」となる。さらに、図6および7に示す一例では、撮影領域は、辺の長さが「1.7cm」の正方形が幅方向に「12個」、高さ方向に「16個」に配列された格子状の領域となる(図3の(A)を参照)。
【0064】
なお、上記の操作により設定された撮影領域は、表示制御部26aの制御により、例えば、位置決め画像の中心位置と撮影領域の中心位置とが一致された状態で位置決め画像上において重畳表示される。さらに、位置決め画像上に表示された撮影領域は、例えば、表示画面上にて、操作者がマウス操作で撮影領域をドラッグすることで、上下左右方向に移動したり、時計周りや反時計周りに回転移動させたりすることが可能である。かかる操作により、操作者は、撮影領域の設定を行なう。
【0065】
また、上記の操作により設定された撮影領域の設定情報(ボクセルサイズ、ボクセル数および位置決め画像上での撮影領域の位置情報)は、設定情報格納部26bにより設定情報データ23aに格納される。
【0066】
次に、操作者は、領域cを用いて関心領域の設定を行なう。ここで、改めて、関心領域の設定に用いられるパラメータであるボクセル数について説明する。図8は、関心領域の設定に用いられるパラメータを説明するための図である。
【0067】
操作者は、関心領域の幅(Width)を設定するために、幅方向(図中の左右方向)のボクセル数を決定する(図8の(1)を参照)。さらに、操作者は、撮影領域の高さ(Height)を設定するために、高さ方向(図中の上下方向)のボクセル数を決定する(図8の(2)を参照)。かかる操作により、関心領域の幅方向の長さは、撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズの幅方向の長さの整数倍となり、関心領域の高さ方向の長さは、撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズの高さ方向の長さの整数倍となる。
【0068】
図9は、関心領域のボクセル数設定用画面を説明するための図である。撮影領域を設定した後、関心領域のボクセルサイズ数を設定する際、操作者は、図9に示すように、例えば、領域cに設けられている「P」ボタンをマウス操作によりクリックする。かかる操作により、関心領域のボクセル数設定用画面である領域c1(MRS ROI Voxel)が表示制御部26aにより表示される。そして、操作者は、「幅方向のボクセル数」および「高さ方向のボクセル数」を、該当する数値入力フィールドにキーボード操作により入力する。あるいは、操作者は、図9に示すように、各方向のボクセル数の設定用領域ごとに設けられているスピンボタンを押下したり、スライドバーをスライドしたりすることにより、各方向のボクセル数を設定する。
【0069】
例えば、図9に示す一例では、「幅方向のボクセル数」は、「5」と設定され、「高さ方向のボクセル数」は、「4」として設定されている。すなわち、図6、図7および図9に示す一例では、関心領域の幅方向は、「8.5cm」となり、撮影領域の高さ方向は、「6.8cm」となる。
【0070】
ここで、図9に示す一例では、設定制御部26cの表示制御部26aを介した制御により、幅方向のボクセル数「MRS ROI(W)」の設定可能な最大値が「12」に設定されており、高さ方向のボクセル数「MRS ROI(H)」の最大値が「16」に設定されている。かかる設定は、撮影領域の幅方向のボクセル数が「12」に設定され、撮影領域の高さ方向のボクセル数が「12」に設定されていることを取得することに基づいて、表示制御部26aを介した設定制御部26cの制御により実行される。
【0071】
なお、上記の操作により設定された関心領域は、表示制御部26aの制御により、例えば、図8に示すように、撮影領域の左上頂点の位置と関心領域の左上頂点の位置とが一致された状態で位置決め画像上において重畳表示される。
【0072】
また、上記の操作により設定された関心領域の設定情報(ボクセル数および位置決め画像上での関心領域の位置情報)は、設定情報格納部26bにより設定情報データ23aに格納される。
【0073】
図10は、設定情報データを説明するための図である。すなわち、設定情報格納部26bの処理により、設定情報データ23aは、撮影条件設定用画面にて順次入力された情報として、図10に示すように、ボクセルサイズ、撮影領域ボクセル数、撮影領域位置情報、関心領域ボクセル数および関心領域位置情報を記憶する。
【0074】
そして、設定制御部26cは、関心領域の移動を制御する。以下、図11〜14を用いて、上述した設定制御部26cの処理を詳細に説明する。図11〜14は、設定制御部を説明するための図である。
【0075】
ここで、表示制御部26aは、位置決め画像上に撮影領域とともに重畳表示された関心領域において、図11に示すように、関心領域を上下左右にスライド移動させるための「スライド用ハンドル」と、時計周りまたは反時計周りに関心領域を回転移動させるための「回転用ハンドル」とを表示させる。
【0076】
操作者は、「スライド用ハンドル」をマウス操作で移動させることで、関心領域を上下左右にスライド移動させるが、設定制御部26cは、図11に示すように、ボクセルサイズの移動のみ可能とするように制御する。すなわち、設定制御部26cは、関心領域を下方向にスライド移動させる場合、高さ方向のボクセルサイズに対応する移動量分「スライド用ハンドル」が下方向に移動された場合のみ、移動を許可する(図11の(1)および(2)を参照)。
【0077】
また、設定制御部26cは、関心領域を右方向にスライド移動させる場合、幅方向のボクセルサイズに対応する移動量分「スライド用ハンドル」が右方向に移動された場合のみ、移動を許可する(図11の(2)および(3)を参照)。
【0078】
また、設定制御部26cは、さらに、関心領域を下方向にスライド移動させる場合、幅方向のボクセルサイズに相当する移動量分「スライド用ハンドル」が右方向に移動された場合のみ、移動を許可する(図11の(2)および(3)を参照)。
【0079】
なお、設定制御部26cは、関心領域のスライド移動量が幅方向のボクセルサイズに相当する移動量分である場合であっても、関心領域が撮影領域外となるならば、移動を不許可とする。かかる制御は、設定情報データ23aが記憶する設定情報に基づき実行される。
【0080】
さらに、操作者は、「回転用ハンドル」をマウス操作で移動させることで、関心領域を時計周りまたは反時計周りに回転移動させる。ここで、設定制御部26cは、図12に示すように、関心領域および撮影領域の相対関係が維持された状態にて、関心領域の回転移動が行なわれるように制御する。なお、関心領域が設定された状態で撮影領域が回転移動された場合も、設定制御部26cは、関心領域および撮影領域の相対関係が維持された状態にて、撮影領域の回転移動が行なわれるように制御する。
【0081】
また、関心領域が設定された状態で撮影領域がスライド移動された場合も、設定制御部26cは、関心領域および撮影領域の相対関係が維持された状態にて、撮影領域のスライド移動が行なわれるように制御する。例えば、関心領域が設定された状態で撮影領域が位置決め画像上で右上方向にスライド移動された場合、設定制御部26cは、図13に示すように、関心領域および撮影領域の相対関係が維持された状態にて、撮影領域の右上方向のスライド移動が行なわれるように制御する。
【0082】
また、設定された関心領域のサイズは、再度、変更することが可能である。かかるサイズ変更処理は、図9に例示した関心領域のボクセル数設定用画面を用いて、ボクセル数を変更することで可能となる。さらに、設定された関心領域のサイズは、位置決め画像上に撮影領域とともに重畳表示された関心領域の各辺をマウス操作で移動させることで変更することも可能である。ただし、設定制御部26cは、図14に示すように、ボクセルサイズのサイズ変更のみ可能とする。
【0083】
すなわち、設定制御部26cは、例えば、関心領域の横辺の移動量が、高さ方向に1ボクセルサイズに対応する移動量分となった場合のみ、サイズ変更を許可する(図14の(1)および(2)を参照)。また、設定制御部26cは、例えば、関心領域の縦辺の移動量が、幅方向に1ボクセルサイズに対応する移動量分となった場合のみ、サイズ変更を許可する(図14の(1)および(3)を参照)。
【0084】
なお、設定された関心領域のサイズは、重畳表示された関心領域の各頂点をマウス操作で移動させることで、幅方向および高さ方向を同時に変更することも可能である。ただし、かかる場合においても、設定制御部26cは、ボクセルサイズのサイズ変更のみ可能とする。
【0085】
また、関心領域のスライド移動、関心領域および撮影領域の回転移動、関心領域のサイズ変更が行なわれた場合、設定情報格納部26bは、設定情報データ23aの内容を更新する。
【0086】
かかる処理により関心領域が設定されたのち、例えば、図示しない設定終了ボタンが押下されると、スペクトル画像の撮影領域および関心領域が確定され、制御部26は、「スペクトル画像を撮影するためのシーケンス情報」を生成してインタフェース部21に送信する。これにより、MRI装置100は、スペクトル画像の撮影を実行する。
【0087】
次に、図15を用いて、実施例1に係るMRI装置100の処理について説明する。図15は、本実施例に係るMRI装置の処理を説明するためのフローチャートである。なお、図15に示すフローチャートは、位置決め画像が表示された後の処理を説明するものである。
【0088】
図15に示すように、本実施例に係るMRI装置100は、操作者から入力部24を介してスペクトル画像の撮影条件設定用画面の表示要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、撮影条件設定用画面の表示要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、MRI装置100は、待機状態となる。
【0089】
一方、撮影条件設定用画面の表示要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、表示制御部26aは、表示部25のモニタに撮影条件設定用画面を表示するように制御する(ステップS102)。
【0090】
そして、設定情報格納部26bは、撮影条件設定用画面を参照した操作者から撮影領域および関心領域の各種設定情報を受け付けたか否かを判定する(ステップS103)。ここで、各種設定情報を受け付けない場合(ステップS103否定)、設定情報格納部26bは、待機状態となる。
【0091】
一方、各種設定情報を受け付けた場合(ステップS103肯定)、設定情報格納部26bは、受け付けた設定情報を設定情報データ23aに格納する(ステップS104)。
【0092】
そして、設定制御部26cは、撮影領域および関心領域の設定終了指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS105)。ここで、設定終了指示を受け付けた場合(ステップS105肯定)、設定制御部26cは、処理を終了する。
【0093】
一方、設定終了指示を受け付けない場合(ステップS105否定)、設定制御部26cは、関心領域の移動要求またはサイズ変更要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS106)。ここで、関心領域の移動要求またはサイズ変更要求を受け付けない場合(ステップS106否定)、設定制御部26cは、ステップS105の判定処理を行なう。
【0094】
一方、関心領域の移動要求またはサイズ変更要求を受け付けた場合(ステップS106肯定)、設定制御部26cは、要求が関心領域の回転移動要求であるか否かを判定する(ステップS107)。ここで、要求が関心領域の回転移動要求である場合(ステップS107肯定)、設定制御部26cは、関心領域および撮影領域の相対関係が維持された状態にて、撮影領域とともに関心領域を回転させ(ステップS111)、ステップS105の判定処理を行なう。
【0095】
一方、要求が関心領域の回転移動要求でない場合(ステップS107否定)、要求が関心領域のスライド移動要求またはサイズ変更要求であることから、設定制御部26cは、要求された移動量がボクセルサイズ単位の移動またはサイズ変更であるか否かを判定する(ステップS108)。
【0096】
ここで、要求された移動量がボクセルサイズ単位の移動またはサイズ変更でない場合(ステップS108否定)、設定制御部26cは、要求を不許可とし(ステップS110)、ステップS108の判定処理を行なう。
【0097】
一方、要求された移動量がボクセルサイズの移動またはサイズ変更である場合(ステップS108肯定)、設定制御部26cは、要求を許可とし(ステップS109)、ステップS105の判定処理を行なう。
【0098】
なお、図15には示さなかったが、撮影領域の移動要求を受け付けた場合、設定制御部26cは、関心領域および撮影領域の相対関係が維持された状態にて、関心領域とともに撮影領域を移動させる。また、図15には示さなかったが、要求された移動量がボクセルサイズ単位の移動である場合であっても、関心領域が撮影領域外にはみ出すならば、設定制御部26cは、要求を不許可とする。
【0099】
上述したように、本実施例では、表示制御部26aは、位置決め画像を参照する操作者からスペクトル画像の撮影条件設定用画面の表示要求を受け付けると、スペクトル画像の撮影時に用いられる撮影領域をボクセルサイズおよびボクセル数により設定し、複数のボクセルごとのスペクトル画像を生成するために用いられる関心領域を撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに基づくボクセル数により設定するための撮影条件設定用画面を表示部25のモニタに表示させる。
【0100】
そして、設定情報格納部26bは、撮影領域の設定情報(ボクセルサイズおよびボクセル数と、位置決め画像上での撮影領域の位置情報)を設定情報データ23aに格納する。また、設定情報格納部26bは、撮影条件設定用画面にて設定された関心領域の設定情報(ボクセル数と、位置決め画像上での関心領域の位置情報)を設定情報データ23aに格納する。そして、設定制御部26cは、設定情報データ23aが記憶している設定情報に基づいて、関心領域の移動を撮影領域内に制限し、かつ、関心領域の移動量を撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに対応する移動量に制限するよう制御する。
【0101】
したがって、本実施例によれば、初期設定される関心領域および移動後の関心領域は、撮影領域からはみ出すことなく、かつ、外形が撮影領域の外形やボクセル境界線に必ず一致することとなり、マルチボクセルスペクトロスコピーにおける関心領域の設定を容易にすることが可能となる。
【0102】
また、本実施例では、設定制御部26cは、関心領域および撮影領域の相対関係が維持された状態にて、関心領域の回転移動が行なわれるように制御する。したがって、本実施例によれば、関心領域を撮影領域上に固定したまま回転移動を行なうことができるので、マルチボクセルスペクトロスコピーにおける関心領域の回転移動を容易にすることが可能となる。
【0103】
なお、上述した実施例は、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで以下では、本実施例の変形例1〜4について、図16〜19を用いて説明する。なお、図16は、変形例1を説明するための図であり、図17は、変形例2を説明するための図であり、図18は、変形例3を説明するための図であり、図19は、変形例4を説明するための図である。
【0104】
(変形例1)
上述した実施例では、位置決め画像上において、撮影領域を示す外形およびボクセル境界線(グリッド線)が表示されている。しかし、グリッド線が表示されると、操作者は、関心領域を設定するに際し、位置決め画像を観察して関心領域を設定することが困難である場合がある。
【0105】
そこで、変形例1において、表示制御部26aは、入力部24を介して受け付けた操作者からの要求に応じて、撮影領域にて設定されたボクセル境界線を非表示とするように制御する。例えば、変形例1においては、図16に示すように、撮影領域グリッド表示切替ボタンが撮影条件設定用画面に配置される。そして、操作者が撮影領域グリッド表示切替ボタンをマウス操作によりクリックすると、表示制御部26aは、撮影領域の外形の線以外のグリッド線(ボクセル境界線)を非表示とさせる。
【0106】
したがって、変形例1では、操作者は、撮影領域グリッド表示切替ボタンをクリックすることで、グリッド線を非表示とさせて位置決め画像を詳細に観察することができ、マルチボクセルスペクトロスコピーにおける関心領域の設定をさらに容易にすることが可能となる。
【0107】
(変形例2)
上述した実施例では、関心領域のスライド移動をマウス操作により実行する場合について説明した。しかし、上述した実施例では、マウス操作による関心領域のスライド移動をボクセルサイズ単位に制限しているため、操作者によっては、マウス操作による移動を煩雑な操作であるとする場合もある。
【0108】
そこで、変形例2において、表示制御部26aは、さらに、関心領域のスライド移動をボクセル数にて設定するための移動用画面を表示させる。そして、設定制御部26cは、移動用画面にて入力されたボクセル数に基づいて、関心領域をスライド移動するように制御する。
【0109】
例えば、変形例2においては、図17に示すように、関心領域シフトボタンが撮影条件設定用画面に配置される。そして、操作者が関心領域シフトボタンをマウス操作によりクリックすると、表示制御部26aは、図17に示すように、移動用画面を表示させる。ここで、操作者は、移動用画面にて「Direction」に配置されたプルダウンメニュー表示用ボタンをマウス操作によりクリックすることで、スライド移動したい方向を選択することができる。例えば、図17に示す一例では、スライス(Slice)方向、位相エンコード(Phase encode)方向およびリードアウト(Readout)方向が選択可能な方向として表示される。
【0110】
そこで、操作者が位相エンコード(Phase encode)方向をスライド移動したい方向として選択すると、表示制御部26aは、図17に示すように、位相エンコード方向の移動量を指定するための画面を表示させる。そして、操作者は、図17に示すように、「Distance」に配置された数値入力フィールドに、位相エンコード方向の移動量としてボクセル数を入力する。図17に示す一例では、移動量は、「2ボクセル分」に設定されている。
【0111】
そして、操作者は、図17に示すように、「Move」に配置された左右の白抜き矢頭のいずれかをクリックすることで、関心領域を「2ボクセル分」移動させる向きを決定する。これにより、関心領域は、設定制御部26cの制御により、位相エンコード方向のいずれかの向きに「2ボクセル分」移動される。
【0112】
なお、移動用画面においても、上述した実施例と同様に、移動量として入力可能なボクセル数の最大値が、表示制御部26aを介した設定制御部26cの制御により表示される。図17に示す一例では、「12」が入力可能なボクセル数の最大値として示されている。すなわち、設定制御部26cは、撮影領域の位相エンコード方向(例えば、位置決め画像上における幅方向)に設定されたボクセル数が「12」であるとする設定情報に基づき、表示制御部26aに指示を送信して、関心領域位相エンコード方向における移動量として入力可能なボクセル数の最大値として「12」を表示させる。
【0113】
したがって、変形例2では、操作者は、マウス操作ではなくボクセル数を入力することで関心領域のスライド移動を行なうことができ、関心領域の移動を容易に実行することが可能となる。
【0114】
(変形例3)
上述した実施例では、関心領域の外形が撮影領域の外形またはボクセル境界線に一致するように設定され、関心領域内にあるボクセルごとに磁気共鳴スペクトルが収集され、ボクセルごとのスペクトル画像が生成される。しかし、関心領域の輪郭部分では、関心領域外からの折り返しが入ってくる。このため、操作者は、生成されるスペクトル画像に、折り返しによる影響が発生しないように、関心領域を大きめに設定する場合がある。
【0115】
そこで、変形例3において、設定制御部26cは、操作者からの要求に応じて、撮影条件設定用画面を用いて設定された関心領域を所定の拡大率にて拡大するように制御する。例えば、変形例3においては、図18に示すように、拡大設定ボタンが撮影条件設定用画面に配置される。そして、操作者が拡大設定ボタンをマウス操作によりクリックすると、設定制御部26cは、設定された実線枠の関心領域を、当該関心領域の中心点を基準として、例えば、「1%」均等に拡大させる。そして、表示制御部26aは、図18に示すように、拡大した関心領域を、例えば、点線枠にて表示させる。
【0116】
なお、変形例3においては、上記のように拡大率を各方向にて均等とする場合であってもよいし、拡大率を各方向にて異なった値とする場合であってもよい。ただし、変形例3において、拡大処理の基準となる点は、撮影条件設定用画面を用いて設定された関心領域の中心点とすることが望ましい。
【0117】
したがって、変形例3では、拡大された関心領域において磁気共鳴スペクトルが収集されるので、撮影条件設定用画面を用いて設定された関心領域のすべてのボクセルにおいて精度の高いスペクトル画像を生成することが可能となる。
【0118】
(変形例4)
上述した実施例では、2次元上の複数のボクセルにて磁気共鳴スペクトルを収集するマルチボクセルスペクトロスコピーにおいて関心領域を設定する場合について説明した。しかし、本発明は、3次元上の複数のボクセルにて磁気共鳴スペクトルを収集する3D―マルチボクセルスペクトロスコピー(3D MRS)に適用することも可能である。
【0119】
変形例4では、位置決め画像として、例えば、図19に示すように、アキシャル断面およびサジタル断面が撮影され、表示される。そして、操作者は、上述した実施例と同様に、各位置決め画像において、ボクセルサイズおよびボクセル数により撮影領域を設定し、その後、ボクセル数により関心領域を設定する。そして、変形例4においては、アキシャル断面上に設定された関心領域と同様に、サジタル断面上に設定した関心領域は、図19に示すように、スライス方向にてボクセルサイズ単位のみ移動可能とされる。
【0120】
したがって、変形例4では、3D―マルチボクセルスペクトロスコピーにおける関心領域の設定も容易にすることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上のように、本発明に係る磁気共鳴スペクトロスコピー装置は、マルチボクセルスペクトロスコピーを行なう場合に有用であり、特に、マルチボクセルスペクトロスコピーにおける関心領域の設定を容易にすることに適する。
【符号の説明】
【0122】
100 MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)
1 静磁場磁石
2 傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場電源
4 寝台
4a 天板
5 寝台制御部
6 送信コイル
7 送信部
8 受信コイル
9 受信部
10 シーケンス制御部
20 計算機システム
21 インタフェース部
22 データ処理部
23 記憶部
23a 設定情報データ
24 入力部
25 表示部
26 制御部
26a 表示制御部
26b 設定情報格納部
26c 設定制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴スペクトルから生成されるスペクトル画像の撮影時に用いられる撮影領域をボクセルサイズおよびボクセル数により設定し、複数のボクセルごとのスペクトル画像を生成するために用いられる関心領域を前記撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに基づくボクセル数により設定するための設定用画面を所定の表示部に表示するように制御する表示制御手段と、
前記設定用画面にて入力された前記撮影領域および前記関心領域の設定情報に基づいて、前記関心領域の移動を前記撮影領域内に制限し、かつ、前記関心領域の移動量を前記撮影領域の設定に用いられたボクセルサイズに対応する移動量に制限するよう制御する設定制御手段と、
を備えたことを特徴とする磁気共鳴スペクトロスコピー装置。
【請求項2】
前記設定用画面にて前記撮影領域を設定するために入力されたボクセルサイズおよびボクセル数と、当該設定用画面にて前記関心領域を設定するために入力されたボクセル数と、前記撮影領域および前記関心領域それぞれの位置情報とを設定情報データとして記憶する記憶手段をさらに備え、
前記設定制御手段は、前記記憶手段が記憶する前記設定情報データに基づいて、前記関心領域の移動を制御することを特徴とする請求項1に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー装置。
【請求項3】
前記設定制御手段は、前記関心領域および前記撮影領域の相対関係が維持された状態にて、前記関心領域の回転移動が行なわれるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の磁気共鳴スペクトロスコピー装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、所定の入力部を介して受け付けた操作者からの要求に応じて、前記撮影領域にて設定されたボクセルの境界線を非表示とするように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の磁気共鳴スペクトロスコピー装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、さらに、前記関心領域の移動をボクセル数にて設定するための移動用画面を前記所定の表示部に表示するように制御し、
前記設定制御手段は、前記移動用画面にて入力されたボクセル数に基づいて、前記関心領域を移動するように制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の磁気共鳴スペクトロスコピー装置。
【請求項6】
前記設定制御手段は、前記所定の入力部を介して受け付けた操作者からの要求に応じて、前記設定用画面を用いて設定された前記関心領域を所定の拡大率にて拡大するように制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の磁気共鳴スペクトロスコピー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−156108(P2011−156108A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19526(P2010−19526)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】