説明

磁気情報記録媒体及びその製造方法

【課題】 トナー画像の画質劣化がなくしかもコア基材にオーバーシートが確実に強固に接着された磁気情報記録媒体を提供すること、また、前記のごとき磁気情報記録媒体を容易に作製することが可能な磁気情報記録媒体の製造方法を提供すること。
【解決手段】 コア基材20の少なくとも片面に、磁気層40及び画像情報に応じた電子写真トナー画像30を有するオーバーシートが加熱圧着によりラミネートされており、コア基材及びオーバーシートのラミネート面のビカット軟化温度が、トナー材料の溶融温度より低い磁気情報記録媒体、およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置によって直接画像形成(記録)されたトナー画像と磁気層を有するオーバーシートがコア基材にラミネートされた磁気情報記録媒体に関し、より詳細には、顔写真入りキャッシュカードや社員証、学生証、個人会員証、居住証、各種運転免許証、各種資格取得証明等の非接触式又は接触式個人情報画像情報入り磁気情報記録媒体、RFIDタグさらに医療現場などで用いる本人照合用画像シートや画像表示板、表示ラベルなどに用いることができる磁気情報記録媒体、及び該磁気情報記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成技術の発達に伴って、凹版印刷、凸版印刷、平版印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷及びスクリーン印刷などの様々な印刷法により、同一品質の画像を、大量かつ安価に形成する手段が知られている。そして、このような印刷法は、ICカード、磁気カード、光カード、あるいはこれらが組み合わさったカードなど、所定の情報を納め、外部装置と接触又は非接触に交信可能な情報記録媒体の表面印刷にも多く用いられている。
【0003】
しかしながら、例えば前記オフセット印刷やスクリーン印刷は、印刷しようとする画像の数に応じた印刷版が多数必要であり、カラー印刷の場合には、さらにその色の数だけ印刷版が必要となる。そのため、これら印刷方法は、個人の識別情報(顔写真、氏名、住所、生年月日、各種免許証など)に個々に対応するには不向きである。
【0004】
前記問題点に対して、現在もっとも主流となっている画像形成手段は、インクリボン等を用いた昇華型や溶融型の熱転写方式を採用したプリンタ等による画像形成方法である。しかし、これらは個人の識別情報を容易に印字することはできるが、印刷速度を上げると解像度が低下し、解像度を上げると印刷速度が低下するという問題を依然抱えている。
【0005】
これに対して、電子写真方式による画像形成(印刷)は、潜像担持体表面を一様に帯電させ、画像信号に応じて露光し、露光部分と非露光部分との電位差による静電潜像を形成させ、その後、前記帯電と反対(あるいは同一)の極性を持つトナーと呼ばれる色粉(画像形成材料)を静電現像させることにより、前記潜像像担持体表面に可視画像(トナー画像)を形成させる方法で行われる。カラー画像の場合は、この工程を複数回繰り返すこと、あるいは画像形成器を複数並配置することによりカラーの可視画像を形成し、これらを画像記録体に、静電転写、定着(固定化:主に熱による色粉の溶融と冷却による固化)すること(乾式の電子写真法)により、又はオフセット転写、乾燥すること(湿式の電子写真法)によりカラー画像を得る方法で行われる。
【0006】
上述のように、電子写真方式では、潜像担持体表面の静電潜像を画像信号により電気的に形成するため、同じ画像を何度でも形成できるだけでなく、異なる画像に対しても容易に対応でき画像形成することが可能である。また潜像担持体表面のトナー画像は、ほぼ完全に画像記録体表面に転移させることができ、潜像担持体表面にわずかに残存するトナー画像も、樹脂ブレードやブラシ等により容易に除去することができるため、多品種少量生産に向けた印刷物を容易に作製することが可能である。
【0007】
また、前記トナーは、通常、熱溶融性樹脂及び顔料、並びに場合によっては帯電制御剤などの添加剤を溶融混合し、この混練物を粉砕、微粒子化して形成される。さらに、前記電子写真方式における静電潜像は、前記微粒子化されたトナーに比べてかなり高い解像度を持っており、前記オフセット印刷、スクリーン印刷やインクリボンの熱転写方式の解像度と比べても十分な解像度が期待できる。
【0008】
カラー画像についても、カラートナーとしてシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの四原色を用い、これらを混合することにより、理論的に印刷と同様の色を再現できる。また、前記カラートナーでは、トナー樹脂と顔料とを比較的自由に配合できるため、トナーによる画像隠蔽性を増加させることは容易である。
【0009】
屋外での使用を想定した耐熱性、及び耐光性については、これまでほとんど検討されていないが、特に運転免許証等を車中の直射日光に当たる場所に置いておくと、色材として染料を用いている熱転写型の画像は退色してしまう。しかし、電子写真方式によるカラー画像の出力では、前記カラートナー中に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各々の色に対応した耐光性に優れた顔料が使用されており、電子写真方式における画像記録体の耐光性は十分優れているものと考えられる。同様に、耐熱性のトナーを選択すれば、画像記録体の耐熱性も、屋外で使用できる程度になるものと考えられる。
【0010】
一方、現在もっとも多く使用されている各種カードのコア基材はポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride、以下「PVC」あるいは「塩ビ」という場合がある。)シートであり、その理由は印刷適性に優れ、エンボス加工適性(文字等の凹凸処理)にも優れ、他の代替樹脂に比べ低価格であるためである。
【0011】
近年、PVCについては焼却処理によってダイオキシンを発生するとして環境に対する負のイメージが付いてしまっているものの、現在では適切な焼却方法や焼却炉の進歩によって有毒ガスの発生は抑制できるとされている。原料となるPVC樹脂は約6割が塩から成っており、他の樹脂より石油含有率が低いという点では環境負荷が少ないとの考えもあり、またリサイクル性に優れており、クレジットカードにおけるマテリアルリサイクルも進んでいる。
【0012】
エンボス加工を行わないことを前提にした場合は、従来から有るような二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどが使用できる。しかし、従来からのカードの機能を継続させるため、エンボス加工は欠かせない場合が多く、現在は、PVCシートの他に、比較的低温で軟化するABS樹脂フィルムやポリオレフィン樹脂フィルム、PETGと呼ばれる変性PET樹脂フィルムや、変性PET樹脂フィルムとPETフィルム、アモルファスPET樹脂フィルムあるいはポリカーボネート樹脂フィルムとの一体成形フィルム等が用いられるようになってきた。
【0013】
従来の磁気カード及びその製造方法の例としては以下のものが挙げられる。
例えば、塩化ビニルからなる表裏2枚のオーバーシートのうち少なくとも1枚に磁気ストライプが設けられ、2枚ともに、シルクスクリーン印刷により隠蔽層が、オフセット印刷により絵柄層が形成され、塩化ビニルからなるセンターコアと熱プレス加工する磁気カードの製造方法(例えば、特許文献1参照)がある。
【0014】
しかしながら、前記塩化ビニルからなるオーバーシートにおいては、オフセット印刷により絵柄層が形成されるため、前述したように、個人の識別情報(顔写真、氏名、住所、生年月日、各種免許証など)に個々に対応するには不向きである。また、前記の塩化ビニルからなるオーバーシートを電子写真装置に適用しようとしても、シート間の摩擦係数が高いためにシート同士が密着してシートが搬送できなかったり、絶縁体であるため画像形成材料(トナー)の転写不良などが起きたり、搬送中に静電気で経路内に張り付いて搬送がストップしてしまったりする問題がある。また、シートの腰が弱い場合には、定着装置に巻き付いてしまう問題もある。
【0015】
また、他の例としては、絵柄層をカード基体ロールに、オフセット印刷やスクリーン印刷により形成しておくか、転写シートロールから絵柄層が転写形成されるようにしておくか、又はそれらの組み合わせにして絵柄層を形成し、PVC、PET、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ABSなどの何れかからなるカード基体ロールに、磁気テープ付きオーバーシートロール(PVCなど)を自動で見当位置合わせし、熱プレス加工する磁気カード製造システム(例えば、特許文献2参照)がある。
【0016】
しかしながら、前記カード基体ロールと、磁気層付きオーバーシートロールと、転写シートロールを使う磁気カード製造システムにおいては、生産性向上に重点をおいているため、使用される各種シートはロール状であるため、カード一人分から数人分の異なる印字を行うなどの、緊急又は多品種生産等に対応するためには、多くのロスや無駄を生じてしまう問題がある。
【0017】
前述の電子写真装置を使用して、各種カードの印字を行った例としては以下のものが挙げられるが、磁気カードを作製する具体的な例は記載されていない。
例えば、各種個人情報の他に、不可視バーコードを厚さ250μmの塩化ビニルシートや厚さ280μmのポリエステルシートにオフセット技法を用いた湿式の電子写真法で印字し、それぞれ印字面に厚さ25μmの塩化ビニルフィルムや厚さ10μmのポリエステルビニルフィルムからなるオーバーフィルムを重ね、熱プレス機でラミネートする方法(例えば、特許文献3参照)がある。
【0018】
しかしながら、前記塩化ビニルシートとオーバーフィルムにおいては接着剤を使わずに両者の熱融着性によりラミネートされ、また、ラミネート温度は、特に乾式の電子写真法における画像形成材料(トナー)の溶融温度より高い温度が要求されるため、トナー画像が流動してしまい画質が著しく劣化するという問題がある。
【0019】
更に、前記シートにおいてはシート間摩擦係数が大き過ぎ、シート間で密着するためシート搬送性が悪く、電子写真装置が止まってしまったりする。また、前記のような250μm以上の厚さの絶縁物(シート)を乾式の電子写真法で印字すると、画像形成材料(トナー)が十分に転写しにくく画像欠陥が増大してしまったりする。また、前記比較的低温で軟化する樹脂フィルムを乾式の電子写真装置に使用して画像を形成しようとすると、定着工程において、定着温度がフィルムの軟化温度より高いため粘着性が発現し、定着装置に巻き付きジャムが発生する問題がある。さらに、画像形成材料が定着装置にオフセットしたり、前記250μm厚のシートの定着を続けると、シートのエッジ(角)で定着装置を必要以上に痛めてしまったりする場合もある。
【0020】
また、他の例としては光透過性シートに個人識別情報を印字し、さらに、前記印字は鏡像で行う方法(特許文献4参照)がある。特許文献4には基材シート及び光透過性のラミネートシートに関しては少なくとも一部が2軸延伸ポリエステルフィルム、又はABS、又はポリエステルからなるフィルム/2軸延伸ポリエステルフィルムであることが好ましいが、塩化ビニルでもよいと記載され、前記基材側に接着層が設けられている。また、ラミネート手段としてはエクストリュージョンラミネーター、ドライラミネーター、ウエットラミネーター、熱ラミネーターなどが使用できると記載されているが、それぞれのラミネート方法に適した前記接着層の具体的な記述はなく、特に熱ラミネーターを使う場合においては温度条件の記述もないため、常に確実にラミネートできるとは限らず、前述のトナー画像の画質劣化を抑制制御することができないという問題がある。
【0021】
更に、この仕様ではラミネートシートが単なる絶縁体なので、ラミネートシート表面への画像形成材料の転写不良などが起こり、熱転写方式などと同等な解像度を得ることはできない。また、生産性向上に重点をおいたこの装置においては、使用されるラミネートシートはロール状であるため、カード一人分から数人分の異なる印字を行うなどの、緊急又は多品種生産等に対応するためには、多くのロスや無駄を生じてしまう問題がある。
【0022】
また、別の他の例としてはポリエチレンナフタレート又はポリエチレンテレフタレートを含有する透明シートにポリエステル系のホットシール性の接着剤層を設け、この面に認証識別用の画像情報を印字し、さらに、前記印字は鏡像で行う方法(特許文献5参照)がある。特許文献5にはホットシール剤としてはEVA、PE、CPP(延伸ポリプロピレン)等のオレフィン系や、ポリエステル系が好ましいという例が記載されているが、ポリエステル系ホットシール剤の材料の具体的な記述はなく、また、支持体(=コア基材)として、カード類としては一般的でないアクリル基材を使用した例は記述されているが、PVCを使用した例は記述されていない。
【0023】
前記ポリエステル系としては例えば一般的にPETGと呼ばれるエチレングリコール、テレフタル酸及び1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を共重合させたポリエステル樹脂があるが、ポリエステル系ホットシール剤としてPETGを用いた前記透明シートとPVCのコア基材においては両者の熱融着に必要な温度が画像形成材料(トナー)の溶融温度より高いため、この場合においてもトナー画像が流動してしまい画質が著しく劣化するという問題がある。
【0024】
更に、この仕様では前記透明シートや搬送シートが単なる絶縁体なので、ラミネートシート表面への画像形成材料の転写不良などが起こり、熱転写方式などと同等な解像度を得ることはできない。また、透明シートを搬送シートに静電密着させて搬送することで、薄くコシがなく、熱に弱い材料上にも所定位置にトナー像を正確に形成することができると記載されているが、透明シートの他にアクリル基材から構成される搬送シートを別途用意する必要があり、多くのロスや無駄が生じてしまう。また、定着工程前に搬送シートを剥離する場合、透明シートのコシがないと剥離できなかったり、次工程で定着装置に巻き付きジャムが発生する問題がある。
【特許文献1】特開平5−92684号公報
【特許文献2】特開平5−278381号公報
【特許文献3】特開2001−92255号公報
【特許文献4】特開平11−334265号公報
【特許文献5】特開平10−86562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、トナー画像の画質劣化がなくしかもコア基材にオーバーシートが確実に強固に接着された磁気情報記録媒体を提供すること、また、前記のごとき磁気情報記録媒体を容易に作製することが可能な磁気情報記録媒体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記課題は、以下の本発明により達成される。
<1>
コア基材の少なくとも片面に、磁気層及び画像情報に応じた電子写真トナー画像を有するオーバーシートが加熱圧着によりラミネートされている磁気情報記録媒体であって、
前記コア基材及びオーバーシートのラミネート面のビカット軟化温度が、トナー材料の溶融温度より低いことを特徴とする磁気情報記録媒体である。
【0027】
<2>
磁気情報記録媒体表面を構成する最外層と、該最外層の前記コア基材側に設けられる層との界面に少なくとも前記磁気層が配置され、
前記最外層が、
基材と該基材の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有し、前記基材と前記熱融着層との界面が離型性を有するオーバーシートの前記熱融着層であることを特徴とする<1>に記載の磁気情報記録媒体である。
【0028】
<3>
前記最外層と、該最外層の前記コア基材側に設けられる層との界面に前記磁気層および前記電子写真トナー画像が配置されていることを特徴とする<2>に記載の磁気情報記録媒体である。
【0029】
<4>
前記熱融着層の厚みが10μm以下であり、前記熱融着層が熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする<2>または<3>に記載の磁気情報記録媒体である。
【0030】
<5>
前記オーバーシートの表裏面の表面抵抗率が、23℃、55%RHにおいて、1.0×108〜1.0×1013Ωの範囲である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の磁気情報記録媒体である。
【0031】
<6>
前記オーバーシート表面に設けられている前記電子写真トナー画像が、鏡像で形成されていることを特徴とする<1>〜<5>のいずれか1つに記載の磁気情報記録媒体である。
【0032】
<7>
磁気層及び電子写真トナー画像を有するオーバーシートであって、オーバーシートのラミネート面のビカット軟化温度がトナー材料の溶融温度より低いオーバーシート、及びそのラミネート面のビカット軟化温度がトナー材料の溶融温度より低いコア基材を準備する工程、
前記コア基材のラミネート面にオーバーシートのラミネート面を重ねる工程、
及びコア基材にオーバーシートを重ねたものを加熱圧着によりラミネートする工程
を有する磁気情報記録媒体の製造方法であって、
前記ラミネート工程においてオーバーシート及びコア基材のラミネート面の温度をトナーの溶融温度より低くかつビカット軟化温度以上の温度に加熱することを特徴とする<1>〜<6>のいずれか1つに記載の磁気情報記録媒体の製造方法である。
【0033】
<8>
前記コア基材のラミネート面に、最後にラミネートされるオーバーシートが、基材と該基材の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有し、前記基材と前記熱融着層との界面が離型性を有し、少なくとも前記磁気層が前記熱融着層表面に形成されたものであり、
前記コア基材に前記最後にラミネートされるオーバーシートを重ねたものを加熱圧着によりラミネートする工程を経た後に、
前記基材と前記熱融着層との界面を剥離する工程を有する<7>に記載の磁気情報記録媒体の製造方法である。
【0034】
<9>
前記熱融着層が、画像受像層の機能を有し、ラミネート前の前記熱融着層表面に前記磁気層および前記電子写真トナー画像が設けられていることを特徴とする<8>に記載の磁気情報記録媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の磁気情報記録媒体は、トナー画像が流動しない比較的低温、つまりトナーの軟化温度域で画質を保持したまま、電子写真用ラミネートフィルムとコア基材とを熱圧着によりラミネートすることが可能となるため、トナー画像の画質劣化がなくしかも確実に強固に接着することができる。また、磁気情報記録用の電子写真用ラミネートフィルムが、電子写真装置に、転写不良や紙詰まりがなく適用することができる。
この磁気情報記録媒体の作製方法によれば、トナー画像が流動せずに軟化する比較的低温域で画質を保持したまま、前記接合の界面が確実に強固に接着させることができるため、高品位で高強度な磁気情報記録媒体を容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の磁気情報記録媒体は、コア基材の少なくとも片面に、磁気層及び画像情報に応じた電子写真トナー画像(以下単に「トナー画像」という。)を有するオーバーシートが加熱圧着によりラミネートされる工程を少なくとも経て作製されるもので、前記コア基材及びオーバーシートのラミネート面のビカット軟化温度が、トナー材料の溶融温度より低いことを特徴とする。
前記オーバーシートは、磁気層とトナー画像を単一のフィルムに設けたものでも、磁気層とトナー画像をそれぞれ別のフィルムに形成し(以下において、磁気層を有するフィルムを「磁気記録用ラミネートフィルム」といい、トナー画像を有するフィルムを「電子写真用ラミネートフィルム」という。)これらを重ねたものでもよい。電子写真用ラミネートフィルムと磁気記録用ラミネートフィルムはあらかじめ積層してもよく、また、コア基材に両フィルムを同時に積層してもよい。両フィルムを積層するには熱融着を用いるのが好ましい。
【0037】
なお、本発明の磁気情報記録媒体は、コア基材の少なくとも片面に、オーバーシートをラミネートして得られた積層体そのものであってもよいが(以下、「第1の態様の磁気情報記録媒体」と称す場合がある)、この他にもコア基材の少なくとも片面に、オーバーシートをラミネートした積層体を剥離する工程を経て作製することができる。
このようなラミネートによって得られた積層体を剥離する工程を経て作製される磁気情報記録媒体(以下、「第2の態様の磁気情報記録媒体」と称す場合がある)は、具体的には、磁気情報記録媒体表面を構成する最外層と、この最外層のコア基材側に設けられる層との界面に少なくとも磁気層が配置された構成を有するものである。
なお、この最外層は、基材とこの基材の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有し、基材と熱融着層との界面が離型性を有するオーバーシートの熱融着層に相当するものである。すなわち、このオーバーシートをコア基材にラミネートした後に、基材と、熱融着層との界面が剥離されることによって第2の態様の磁気情報記録媒体が作製される。
また、最外層と、この最外層のコア基材側に設けられる層との界面には磁気層のみならず電子写真トナー画像が配置されていてもよい。この場合、最外層となる熱融着層は、画像受像層の機能も有するものである。
【0038】
以上に説明した第2の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いられるラミネート面に少なくとも磁気層が形成されたオーバーシートには、ラミネート面に熱融着層が必ず設けられる。一方、第1の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いられるオーバーシートのラミネート面にも熱融着層を設けることが好ましく、熱融着層を設ける代りにオーバーシートに用いる基体フィルムとして熱融着性のものを用いてもよい。
また、第1の態様および第2の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いられるコア基材のラミネート面にも熱融着層を設けることが好ましく、熱融着層を設ける代りにコア基材に用いる基体フィルムとして熱融着性のものを用いてもよい。
【0039】
また、オーバーシートとコア基材を加熱圧着によりラミネートする際、コア基材及びオーバーシートのラミネート面の温度をトナーの溶融温度より低い温度に加熱した場合でも確実に両者が熱融着するように、コア基材及びオーバーシートのラミネート面のそれぞれのビカット軟化温度が、トナーの溶融温度より低くなるように設定されている。これは、加熱圧着の際トナーが溶融しないようにするためである。前記コア基材及びオーバーシートのラミネート面のビカット軟化温度とは、コア基材及びオーバーシートのラミネート面がそれぞれ軟化しかつ粘着性を発現することにより、コア基材とオーバーシートが一体化するに必要なそれぞれの温度である(以下において同じである。)。前記コア基材のラミネート面は片面又は両面であり得る。
このことから、一般的に用いられているトナー材料を考慮すると、前記コア基材及びオーバーシートのラミネート面、好ましくは熱融着層(又は熱融着性基体フィルム)のビカット軟化温度を、70〜130℃の範囲(好ましくは80〜120℃)にすることが好ましい。
【0040】
最初にオーバーシートとして磁気記録用ラミネートフィルムと電子写真用ラミネートフィルムを重ねたものを用いる第1の態様の磁気情報記録媒体について説明する。
前記オーバーシートは、コア基材の上に、電子写真用ラミネートフィルムと磁気記録用ラミネートフィルムがこの順に重ねることが好ましく、以下ではこの態様のものを中心に説明するが、この態様に限定されるものではない。
【0041】
電子写真用ラミネートフィルムに形成するトナー画像は、コア基材とラミネートするラミネート面(以下において「ラミネート面」又は「うら面」という。)に形成しても、磁気記録用ラミネートフィルムに重ねる面(以下において「重ね面」又は「おもて面」という。)に形成してもよい。
磁気記録用ラミネートフィルムに形成する磁気層は、前記フィルムの電子写真用ラミネートフィルムに重ねる面(以下において「重ね面」又は「うら面」という。)に形成しても、重ね面とは反対側の面(以下において「おもて面」という。)に形成してもよいが、おもて面に形成することが好ましい。
【0042】
図1は、第1の態様の磁気情報記録媒体の例を示す概略斜視図である。図1(A)はコア基材の片側にオーバーシートを設けた例で、本発明の磁気情報記録媒体100は、オーバーシート50(電子写真用ラミネートフィルム30と磁気記録用ラミネートフィルム40から構成される。)がコア基材20にラミネートされた構造を有している。また、図1(B)に示すようにコア基材20の両側にオーバーシート50a(電子写真用ラミネートフィルム30aと磁気記録用ラミネートフィルム40a)、及びオーバーシート50b(電子写真用ラミネートフィルム30bと磁気記録用ラミネートフィルム40b)を積層した構造としてもよい。さらに、必要に応じて、前記以外のシート、フィルム、層などを設けてもよい。
【0043】
図2(A)は、図1(A)の磁気記録用ラミネートフィルム40を抜き出した概略斜視図であり、磁気層42がおもて面の所定の位置に貼付されている。
図2(B)は、図1(A)の電子写真用ラミネートフィルム30を抜き出した概略断面図であり、トナー画像32が画像情報に応じてそのおもて面に実像で形成されている。
図2(C)は、図1(A)の電子写真用ラミネートフィルム30を抜き出した概略断面図であり、トナー画像32が画像情報に応じてそのうら面に鏡像で形成されている例を示すものである。
【0044】
次に、オーバーシートが1つのフィルムから構成され、1つのフィルムに磁気層とトナー画像が設けられている第1の態様の磁気情報記録媒体について説明する。磁気層とトナー画像はオーバーシートに用いる基体フィルムの同じ面に設けてもまた各異なる面に設けてもよい。同一面に設ける場合、その面はコア基材にラミネートするラミネート面(うら面)とは反対側の面(おもて面)とすることが好ましく、別々に設ける場合はトナー画像をラミネート面に、磁気層をおもて面に設けることが好ましい。また、トナー画像をラミネート面に設ける場合、オーバーシートは透明性を有することが好ましい。
オーバーシートをコア基材に加熱圧着させるために、オーバーシートとコア基材のラミネート面に熱融着層を設けたり、基体フィルム自体が熱融着性を有するものを用いることが好ましい。また、オーバーシート及びコア基材のラミネート面のビカット軟化温度が、トナーの溶融温度より低くなるように設定される。
図3は、第1の態様の磁気情報記録媒体の他の例を示す概略斜視図である。図3(A)はコア基材の片側だけにオーバーシートを設けた例を示し、本発明の磁気情報記録媒体100は、オーバーシート50がコア基材20にラミネートされた構造を有している。また、図3(B)はコア基材20の両側にオーバーシート50a、50bを設けた例を示す。さらに、必要に応じて、前記以外のシート、フィルム、層などを設けてもよい。
【0045】
図4は、図3(A)のオーバーシート50を抜き出した概略斜視図であり、磁気層42がおもて面の所定の位置に貼付され、トナー画像32が画像情報に応じて、うら面に鏡像で形成されている。
【0046】
次に、第2の態様の磁気情報記録媒体について、その構成および作製過程を図面を用いてより具体的に説明する。
図5は、第2の態様の磁気情報記録媒体の作製過程の例を示す概略図であり、図5中、101はオーバーシート、102は基体、104は画像受像層(画像受像層の機能を有する熱融着層)、106はトナー画像、108は磁気層、110はコア基材、120は積層体、130は磁気情報記録媒体を表す。
【0047】
ここで、図5(C)に示す磁気情報記録媒体130は次のように作製される。まず、オーバーシート101と、コア基材110とを準備する(図5(A))。なお、図5中に示すオーバーシート101は、基体102と、この基体102の片面に設けられた画像受像層104と、画像受像層104の所望の位置に配置されたトナー画像106および磁気層108とを有するものであり、基体102と画像受像層104との界面は離型性を有する。
次に、オーバーシート101の画像受像層104が設けられた面(ラミネート面)と、コア基材110の片面(ラミネート面)に重ね合わせて、図5(B)に示すような積層体120を形成した後、不図示の加熱圧着手段によって積層体120の両面から加圧しながら加熱して、オーバーシート101とコア基材110とを加熱圧着する。
続いて、加熱圧着された積層体120の基体102と画像受像層104との界面を剥離することによって、コア基材110の少なくとも片面に画像受像層104が設けられ、コア基材110および画像受像層104の界面に磁気層108およびトナー画像106を有する磁気情報記録媒体130を得ることができる。
【0048】
以下において、本発明の磁気情報記録媒体の作製に用いられるオーバーシートが磁気記録用ラミネートフィルムと電子写真用ラミネートフィルムの2つのフィルムからなり、電子写真用ラミネートフィルムがコア基材にラミネートされる磁気情報記録媒体を例にとって更に詳細に説明する。
(なお、第2の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いられるオーバーシートが磁気記録用ラミネートフィルムと電子写真用ラミネートフィルムの2つのフィルムからなる場合、磁気記録用ラミネートフィルムは、基体と該基体の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを含み、基体と熱融着層との界面が離型性を有すること以外の構成や特性などは、第1の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いられる磁気記録用ラミネートフィルムと同様である。
一方、オーバーシートが単一のフィルムからなる第1の態様の磁気情報記録媒体の場合、該オーバーシートのラミネート面が電子写真用ラミネートフィルムのラミネート面(うら面)に相当し、電子写真用ラミネートフィルムのラミネート面に関する事項、表面抵抗率に関する事項、熱融着層、画像受像層、帯電制御層、機能性制御手段、トナー画像の形成、ラミネート方法等はすべて共通に適用可能である。また、オーバーシートに用いる基体フィルムも以下の電子写真用ラミネートフィルムに用いる基体フィルムが同様に用いられ、好ましい基体フィルムも同様である。
また、第2の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いられるオーバーシートが、単一のフィルムからなる場合、ラミネート面には画像受像層の機能も有する熱融着層が設けられること、および、この画像受像層の機能を有する熱融着層と基体との界面が離型性を有すること以外は、第1の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いられる単一のフィルムからなるオーバーシートと同様である。)
【0049】
[電子写真用ラミネートフィルム]
電子写真用ラミネートフィルムには、その基体フィルムのラミネート面(うら面)に熱融着層を設けることが好ましく、更に磁気記録用ラミネートフィルムを重ねるおもて面にも熱融着層を設けることが好ましい。また熱融着層を設ける代りに電子写真用ラミネートフィルムに用いる基体フィルムとして熱融着性のものを用いてもよい。
また、トナー画像をおもて面及びうら面のいずれに設ける場合でも、電子写真用ラミネートフィルムと磁気記録用ラミネートフィルム及びコア基材とをラミネートする際、ラミネート面及び重ね面の温度をトナーの溶融温度より低い温度に加熱しても、確実に両フィルム及びコア基材が熱融着するように、熱融着層(又は熱融着性基体フィルム)のビカット軟化温度が、トナーの溶融温度より低くなるように設定されている。このことから、熱融着層等のビカット軟化温度が、70〜130℃の範囲(好ましくは80〜120℃)にあることが好ましい。
また、電子写真用ラミネートフィルムのトナー画像形成面には画像受像層を設けることが好ましく、更に画像受像層が熱融着性を有していることが好ましく、特に画像受像層のビカット軟化温度が、70〜130℃の範囲(好ましくは80〜120℃)にあることが好ましい。
更に、電子写真用ラミネートフィルムのトナー画像形成側には、熱融着層及びその上に画像受像層を設けることが好ましい。
【0050】
本発明に用いられる電子写真用ラミネートフィルムに用いる基体フィルム(基体)は、透明性を有することが望ましく、トナー画像をおもて面に設ける場合には白色等の不透明性を有していても良い。
ここで、透明性とは、例えば、可視光領域の光をある程度、透過する性質をいい、本発明においては、少なくとも、電子写真用ラミネートフィルムに形成されたトナー画像が、電子写真用ラミネートフィルムを通して目視できる程度に透明であればよい。本発明における透明性の意味は以下同様である。
また、不透明性とは、例えば、可視光領域の光をある程度、遮断する性質をいい、本発明においては、少なくとも、形成されたトナー画像が、画像が形成された面と反対側の面からラミネートフィルムを通して目視できない程度に不透明であればよい。本発明における不透明性の意味は以下同様である。
【0051】
前記透明性を有する基体フィルムとしては、プラスチックフィルムが代表的に使用される。この中でも、OHPフィルムとして使用できるような光透過性のあるフィルムである、ポリアセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルムなどを好ましく用いることができる。
【0052】
また、前記各種プラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルム、中でも線状飽和ポリエステルフィルムが好ましく、特に、PET(ポリエチレンテレフタレート)のエチレングリコール成分の半分前後を、1,4−シクロへキサンメタノール成分に置き換えたPETGと呼ばれるものや、前記PETにポリカーボネートを混ぜアロイ化させたもの、さらに二軸延伸しないPETで、A−PETと呼ばれる非晶質系ポリエステル等からなるフィルムをより好ましく用いることができる。
【0053】
前記白色の基体フィルムとしては、プラスチックフィルムが代表的に使用される。この中でも、ポリアセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂に、白色顔料又は白色染料が加えられ、不透明化されたフィルムなどを好ましく用いることができる。
【0054】
また、前記白色の各種プラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルム、中でも線状飽和ポリエステルフィルムが好ましく、特に、PET(ポリエチレンテレフタレート)のエチレングリコール成分の半分前後を、1,4−シクロへキサンメタノール成分に置き換えたPETGと呼ばれるものや、前記PETにポリカーボネートを混ぜアロイ化させたもの、さらに二軸延伸しないPETで、A−PETと呼ばれる非晶質系ポリエステル等からなるフィルムをより好ましく用いることができる。
【0055】
前記電子写真用ラミネートフィルムの厚さは、50〜500μmの範囲が好ましく、75〜150μmの範囲がより好ましい。厚さが50μmに満たないと、画像形成時に搬送不良となる場合があり、500μmを超えると、転写不良による画像劣化となる場合がある。
【0056】
(表面抵抗率)
一般に電子写真用に用いられるフィルムは、少なくとも片面の表面抵抗率が108〜1013Ωの範囲であることが必要である。また、表面抵抗率は109〜1011Ωの範囲であることが好ましい。本発明に用いられる電子写真用ラミネートフィルムにおいても、表面抵抗率が前記範囲となるように、後述する方法により調節した。
電子写真用ラミネートフィルムの少なくともトナー画像形成面が前記のごとき表面抵抗率を有することが好ましく、更に両面とも同様な表面抵抗率に制御することが好ましい。
【0057】
前記表面抵抗率が108Ωに満たないと、後述する画像形成後の電子写真用ラミネートフィルムどうし、又は該電子写真用ラミネートフィルムのコア基材への静電吸着力は小さくなるが、高温高湿時に画像記録体としての電子写真用ラミネートフィルムの抵抗値が低くなりすぎ、例えば転写部材からの転写トナーが乱れる場合がある。また、表面抵抗率が1013Ωを超えると、前述した静電吸着力が大きくなりすぎて、ゴミが付着しやすくなったり、取り扱いが極めて困難になるだけでなく、画像記録体として使用される電子写真用ラミネートフィルムの抵抗値が高くなりすぎ、例えば転写部材からのトナーをフィルム表面に移行できず、転写不良による画像欠陥が発生する場合がある。
【0058】
なお、前記表面抵抗率は、23℃、55%RHの環境下で、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6991に従って測定することができる。
【0059】
電子写真用ラミネートフィルムの少なくとも片面の表面抵抗率を前記のような範囲とするには、前述の電子写真用ラミネートフィルムに帯電制御層を設けたり、熱融着層の上に帯電制御層を設けたりする他、電子写真用ラミネートフィルムが熱融着層や画像受像層を有する場合には、熱融着層及び/又は画像受像層の表面抵抗率を制御することにより、熱融着層及び/又は画像受像層を帯電制御層に兼ねさせてもよい。また、基体フィルム自体に導電剤を添加することにより表面抵抗率をコントロールしてもよい。
電子写真用ラミネートフィルムの一面に熱融着層や画像受像層が設けられ、反対側の面に帯電制御層が設けられる場合には、熱融着層や画像受像層の表面抵抗率は必ずしも前記範囲内でなくてもよい。前述のように、熱融着層は電子写真用ラミネートフィルムの両面に好ましく形成されるが、この場合、片面の熱融着層の表面抵抗率が前記範囲内にあればよく、両面の熱融着層の表面抵抗率が前記範囲内にあることが好ましい。
【0060】
前記帯電制御層、熱融着層及び画像受像層の表面抵抗率は、帯電制御剤として高分子導電剤や界面活性剤、さらに導電性金属酸化物粒子等を前記の各層中に添加することにより、前記範囲内とすることができる。また、前記各層の表面に界面活性剤溶液(バインダーを添加してもよい)を塗工処理したり、金属薄膜を蒸着したりすることで調整することができる。更に、基体フィルム製造時に直接前記のごとき表面抵抗率制御のための添加剤を添加してもよく、また、基体フィルム表面に前記のごとき塗工処理をしてもよい。
【0061】
用いることのできる界面活性剤としては、例えば、ポリアミン類、アンモニウム塩類、スルホニウム塩類、ホスホニウム塩類、ベタイン系両性塩類などのカチオン系界面活性剤、アルキルホスフェートなどのアニオン系界面活性剤、脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤の中でも、昨今の電子写真用の負帯電型トナーと相互作用の大きいカチオン系界面活性剤が、転写性の向上に有効となる。
【0062】
前記カチオン系界面活性剤の中でも、4級アンモニウム塩類が好ましい。4級アンモニウム塩類としては下記の一般式(I)で代表される化合物が好ましい。
【0063】
【化1】

【0064】
式中、R1は炭素数6〜22までのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、R2は炭素数1〜6までのアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基を表す。R3、R4、R5は同一でも異なってもよく、脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基を表す。脂肪族基とは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基をいう。前記芳香族基とは、ベンゼン単環、縮合多環のアリール基を表す。これらの基は、水酸基のような置換基を有してもよい。Aはアミド結合、エーテル結合、エステル結合、フェニレン基、又は単結合を表す。X-は陰イオンを表し、例えば、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の無機陰イオンや有機陰イオンが挙げられる。
【0065】
また、前記導電性金属酸化物粒子としては、ZnO、TiO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO、SiO2、MgO、BaO及びMoO3等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、これらを複合して使用してもよい。また、金属酸化物としては、異種元素をさらに含有するものが好ましく、例えば、ZnOに対してAl、In等、TiOに対してNb、Ta等、SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等を含有(ドーピング)させたものが好ましい。これらの中で、SbをドーピングしたSnO2が、経時的にも導電性の変化が少なく安定性が高いので特に好ましい。
【0066】
前記のように電子写真用ラミネートフィルムの少なくとも片面の表面抵抗率を制御することにより、トナー画像の転写性が良好で、かつ、画像形成後の前記フィルムどうしや、コア基材との静電吸着力が小さく、前記フィルムどうしの捌き等の取り扱いや、該コア基材との積層位置決めを、容易に確実に行うことができ、紙詰まりもない。
特に、電子写真用ラミネートフィルムの両面の表面抵抗率を制御した場合には、画像形成後の該ラミネートフィルムどうしの捌き等の取り扱いや、該コア基材との積層位置決めを、さらに容易により確実に行うことができる。さらに、電子写真用ラミネートフィルムにおいて、前記画像受像層が両面に設けられている場合には、画像を形成させる面を指定する必要がなくなるため、ミスプリントしてフィルムを無駄にすることがなくなり、電子写真用ラミネートフィルムの取り扱いが容易となる。
【0067】
(熱融着層)
前記熱融着層のビカット軟化温度は、70〜130℃の範囲であることが好ましく、80〜120℃の範囲であることがより好ましい。少なくともラミネート面に設ける熱融着層は前記のビカット軟化温度を有することが好ましい。
前記ビカット軟化温度が130℃を超えると、後述するラミネート工程において、コア基材に電子写真用ラミネートフィルムを十分密着・接着させることができない場合がある。また、ビカット軟化温度が70℃に満たないと、前記密着・接着は十分であってもトナー(画像形成材料)又はポリエステル系樹脂を含む層が軟化しすぎてしまい、画像に欠陥(画像流れ)が発生したりしてしまう場合がある。
【0068】
前記ビカット軟化温度とは、熱可塑性樹脂の軟化温度評価の一方法から測定されたものであって、その測定方法は、成形されたプラスチック材料の耐熱性を試験する方法として、熱可塑性樹脂に対しては、JIS K7206やASTM D1525、ISO306にその方法が規定されている。
本発明においては、厚さ2.5mmの試験片を用い、その表面に断面積が1mm2の針状圧子をセットし、この圧子に1kgの荷重を載せ、試験片を加熱する油槽の温度を徐々に上昇させていき、前記圧子が、試験片中に1mm進入したときの油温をビカット軟化温度とした。
なお、熱融着層は後述する機能性制御手段であってもよい。
【0069】
熱融着層を形成する樹脂は特に限定されないが公知の熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、熱溶融性のポリエステル樹脂がより好ましく、特に熱溶融性の線状飽和ポリエステル樹脂がさらに好ましい。熱溶融性の線状飽和ポリエステル樹脂は、多価ヒドロキシ化合物と多塩基性カルボン酸又はその反応性酸誘導体との反応によって製造することができる。ポリエステルを構成する多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール類があるが、本発明に用いられるポリエステルとしては、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとを用いることが特に好ましい。
【0070】
また、前記多塩基性カルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アルキルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、その他の2価カルボン酸などがあるが、本発明では、イソフタル酸とテレフタル酸とが製造上、また材料入手性、コストなどで特に好ましく利用できる。なお、通常フタル酸は、イソフタル酸とテレフタル酸という構造異性体をもち、そのため、ポリエステルを製造するにあたり、前記両者がほぼ半分の割合で必然的に混入する。
【0071】
特に好ましい配合は、多価ヒドロキシ化合物におけるエチレングリコールとネオペンチルグリコールとの比率(エチレングリコール:ネオペンチルグリコール)がモル比で3:7〜1:9の範囲であることが望ましい。
また、前記ポリエステルの数平均分子量としては、12000〜45000の範囲であることが好ましく、20000〜30000の範囲であることがより好ましい。数平均分子量が12000未満であると、エチレングリコールとネオペンチルグリコールとのモル比が所望の範囲であっても、樹脂の軟化点が低すぎ常温でも粘性が発現したりする場合がある。数平均分子量が45000を超えると、軟化温度が高くなりすぎ、画像(トナー)の定着性が悪化する。
【0072】
また最近、トナーが定着部材に巻付くのを防止するため、従来から利用されていたシリコーンオイル塗布に代えて、トナー中にワックスを添加したもの(オイルレストナー)が利用され始めているが、このようなオイルレストナーを用いる場合に、定着においてワックスの浮き出しを防止するため、前記ポリエステル樹脂にポリビニルアセタール樹脂を含有させることが好ましい。
【0073】
なお、層形成用樹脂としてポリビニルアセタール樹脂を用いるのは、基体であるプラスチックフィルムとの接着性、及び画像形成材料(オイルレストナー)との接着性(相溶性)がよいからである。
【0074】
前記ポリエステル系樹脂を含む層にポリエステル樹脂とポリビニルアセタール樹脂とが含有される場合、本発明においては、前記層中のポリエステル樹脂の質量Aとポリビニルアセタール樹脂の質量Bとの質量比(A/B)が、90/10〜20/80の範囲であることが好ましく、80/20〜30/70の範囲であることがより好ましい。
【0075】
前記質量比(A/B)が90/10を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が少なすぎ、画像受像層としてトナー中のワックスと相溶することができない場合がある。また、前記質量比(A/B)が20/80より小さくなるとポリエステル樹脂の含有量が少なすぎ、画像受像層の透明性が低下する場合がある。
【0076】
(画像受像層)
前記電子写真用ラミネートフィルムには、画像が良好に形成されるように、画像形成面に少なくとも1層以上の画像受像層を設けてもよい。画像受像層用樹脂としては、種々の樹脂が使用可能であるが、画像受像層用樹脂として前記の熱融着層に用いられるポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂が同様に用いられ、好ましい樹脂も同様である。そしてこの場合には、画像受像層が熱融着層を兼ねる。画像受像層のビカット軟化温度は、70〜130℃の範囲(好ましくは80〜120℃)にあることが好ましい。
【0077】
前記画像受像層は、画像の定着時、定着部材への付着、巻き付きを防止するためには、定着部材への低付着性材料である天然ワックスや合成ワックス、あるいは離型性樹脂、反応性シリコーン化合物、変性シリコーンオイルなどの離型性材料を含有することが好ましい。
【0078】
具体的には、カルナバワックス、密ロウ、モンタンワックス、パラフィンワックス、ミクロクリスタリンワックスなどの天然ワックスや低分子量ポリエチレンワックス、低分子量酸化型ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、低分子量酸化型ポリプロピレンワックス、高級脂肪酸ワックス、高級脂肪酸エステルワックス、サゾールワックスなどの合成ワックスなどが挙げられ、これらは単独使用に限らず混合して複数使用することができる。
【0079】
また、離型性樹脂としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、あるいはシリコーン樹脂と各種樹脂との変性体である変性シリコーン樹脂、たとえばポリエステル変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、ポリイミド変性シリコーン樹脂、オレフィン変性シリコーン樹脂、エーテル変性シリコーン樹脂、アルコール変性シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン樹脂、メルカプト変性シリコーン樹脂、カルボキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂、熱硬化性シリコーン樹脂、光硬化性シリコーン樹脂を添加することができる。
【0080】
前記変性シリコーン樹脂は、画像形成材料としてのトナー樹脂や本発明の熱溶融性樹脂からなる樹脂粒子との親和性が高く、適度に混和、相溶し、溶融混和するため、トナー中に含まれる顔料の発色性に優れ、また同時に、シリコーン樹脂による離型性のため定着部材と電子写真用ラミネートフィルムとが熱溶融時に付着するのを防止することができるものと考えられる。
【0081】
さらに、本発明においては、画像受像層をより低付着性とするため、反応性シラン化合物と変性シリコーンオイルとを混入させてもよい。反応性シラン化合物は、画像受像層樹脂と反応すると同時に変性シリコーンオイルと反応することにより、これらがシリコーンオイルの持つ液体潤滑剤以上の離型剤として働き、しかも硬化反応することにより離型剤として画像受像層中に強固に固定化され、機械的摩耗や溶媒抽出などによっても離型剤が脱落しないことが見出された。
【0082】
これらのワックスや離型性樹脂は、前記熱溶融性樹脂からなる樹脂粒子と同様に、粒子状態などで共存させてもよいが、好ましくは熱溶融性樹脂中に添加し、樹脂中に分散、相溶した状態で、熱溶融性樹脂中に取り込んだ状態で利用することが好ましい。
【0083】
更に、画像受像層には、必要に応じて、熱安定剤、酸化安定剤、光安定剤、滑剤、顔料、可塑剤、架橋剤、耐衝撃性向上剤、抗菌性、難燃剤、難燃助剤、及び帯電防止剤などの各種プラスチック添加剤を併用することができる。
【0084】
(帯電制御層)
前記熱融着層及び画像受像層とは別の層として帯電制御層を形成する場合、層形成用樹脂は、熱融着層に用いるポリエステル樹脂を同様に用いることが好ましい。表面抵抗率を制御するための添加剤は、前述のような界面活性剤や導電剤が同様に用いられる。
また、帯電制御層のビカット軟化温度は、70〜130℃の範囲(好ましくは80〜120℃)にあることが好ましい。
【0085】
前記熱融着層、画像受像層及び帯電制御層には、搬送性を向上させるためマット剤が添加されることが好ましい。
【0086】
前記マット剤に使用される潤滑性を有する樹脂としては、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等のフッ素樹脂を挙げることができる。具体的には、低分子量ポリオレフィン系ワックス(例えばポリエチレン系ワックス、分子量1000〜5000)、高密度ポリエチレン系ワックス、パラフィン系又はマイクロクリスタリン系のワックスを挙げることができる。
また、フッ素樹脂の例としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)分散液を挙げることができる。
【0087】
前記樹脂のマット剤の体積平均粒子径は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、1〜5μmの範囲であることがより好ましい。前記体積平均粒子径は大きい方が好ましいが、大き過ぎるとマット剤が層から脱離して粉落ち現象が発生し、表面が摩耗損傷し易くなり、さらに曇り(ヘイズ度)が増大することとなる。
さらに、前記マット剤の含有量は、前記層形成樹脂に対して0.1〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0088】
前記マット剤は扁平状であることが好ましく、予め扁平状のマット剤を用いてもよいし、軟化温度の比較的低いマット剤を用いて層の塗布、乾燥時の加熱下に扁平状にしてもよい。さらに加熱下に押圧しながら扁平状にしてもよい。但し、層の表面からマット剤が凸状に突き出ていることが好ましい。
【0089】
マット剤としては、前記以外に無機微粒子(例えば、SiO2、Al23、タルク又はカオリン)及びビーズ状プラスチックパウダー(例えば、架橋型PMMA、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン)を併用してもよい。
【0090】
前記のように、ラミネートフィルムの搬送性を良好とするため、マット剤等によりラミネートフィルム表面の摩擦を低減する必要があるが、実際の使用上、ラミネートフィルム表面の静止摩擦係数は、2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。またラミネートフィルム表面の動摩擦係数は、0.2〜1の範囲であることが好ましく、0.3〜0.65の範囲であることがより好ましい。
【0091】
また、表面に熱融着層、画像受像層及び帯電制御層等の層を有する電子写真用ラミネートフィルムにおいては、少なくとも最表面の層に、目的に応じて抗菌性を有する物質を含むことが望ましい。添加する材料は、組成物中での分散安定性が良好で、かつ、光の照射で変性しないものより選ばれる。例えば、有機系の材料では、チオシアナト化合物、ロードプロパギル誘導体、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ベンズイミダゾール誘導体、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル等の材料が挙げられる。
また、無機系の材料としては、ゼオライト系、シリカゲル系、ガラス系、リン酸カルシウム系、リン酸ジルコニウム系、ケイ酸塩系、酸化チタン、酸化亜鉛、等が挙げられる。
【0092】
前記無機系の抗菌剤としての体積平均粒子径は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、0.3〜5μmの範囲であることが好ましい。抗菌剤は基本的に電子写真用ラミネートフィルム表面に露出していることが望ましい。よって前記層の膜厚に応じて前記体積平均粒子径を選出する。体積平均粒径が大き過ぎると抗菌剤が前記層から脱離して粉落ち現象が発生し、フィルム表面が損傷し易くなったり、さらに曇り(ヘイズ度)が増大することとなる。
【0093】
さらに、前記抗菌剤の前記層中の含有量は、前記層形成樹脂に対して0.05〜5質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜3質量%の範囲であることがより好ましい。
【0094】
前記の熱融着層、画像受像層及び帯電制御層等の層は塗工層として設けることが好ましい。
前記塗工層は、少なくとも層形成用樹脂と各層に応じて添加する添加剤とを有機溶媒、もしくは水などを用いて混合し、超音波、ウエーブローター、アトライターやサンドミルなどの装置により均一に分散させて塗工液を作製し、該塗工液をそのままの状態で、該ラミネートフィルムの表面へ塗布あるいは含浸させることによって形成することができる。
【0095】
塗布あるいは含浸させる方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法等の通常使用される方法が採用される。
塗工層を両面に有する場合には、どちらを先に塗工してもよいし、同時に塗工してもよい。
【0096】
但し、前記塗工液の作製においては、溶媒として電子写真用ラミネートフィルムの基体表面を溶解させる良溶媒を使用することが好ましい。このような良溶媒を使用すると、該ラミネートフィルムの基体表面と塗工層との結びつきが非常に高くなる。その原因は、貧溶媒を使用した場合、塗工層とフィルムとの間に明確な界面が存在することで、ラミネート後、電子写真用ラミネートフィルムとコア基材との接着性が不十分なのに対し、良溶媒を使用した場合は、前記明確な界面が存在せず、電子写真用ラミネートフィルムの基体表面と塗工層とが融合したものとなって、前記接着性が十分高くなるものである。
しかしながら、第2の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いる単一のフィルム(電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム)や、後述する磁気記録用ラミネートフィルムの塗工層(熱融着層、あるいは、画像受像層の機能を有する熱融着層)の形成に用いる塗工液は、塗工層と、基体との離型性を確保するために良溶媒を用いないことが好ましい。
【0097】
なお、前記電子写真用ラミネートフィルム等の基体表面に対して良溶媒であるとは、溶媒が該ラミネートフィルムの表面に接触した場合、該ラミネートフィルムに何らかの作用を及ぼし、該ラミネートフィルムの表面が少し侵される(溶媒除去後、わずかに表面に曇り等が観察される)程度以上の溶解性を有することをいう。
【0098】
電子写真用ラミネートフィルム等の基体表面に塗工層を形成する際の乾燥は、風乾でもよいが、熱乾燥を行えば容易に乾燥できる。乾燥方法としては、オーブンに入れる方法、オーブンに通す方法、あるいは加熱ローラに接触させる方法など通常使用される方法が採用される。
【0099】
このようにして電子写真用ラミネートフィルムの基体表面に形成される前熱融着層、画像受像層、帯電制御層等の層の層厚、及び前記機能性制御手段の層の層厚は、0.1〜20μmの範囲であることが好ましく、1.0〜10μmの範囲であることがより好ましい。
【0100】
(磁気記録用ラミネートフィルム)
本発明の磁気情報記録媒体を構成する磁気記録用ラミネートフィルムに用いる基体フィルムは特に透明性を有する必要はないが、画像の状況が把握しやすいので透明性を有するものが好ましく、具体的には電子写真用ラミネートフィルムの説明において挙げた基体フィルムが同様に用いられ、また好ましい樹脂も同様である。
また、磁気記録用ラミネートフィルムの電子写真用ラミネートフィルムとの重ね面は熱融着性を有していることが好ましく、例えば、PETG単体のフィルムを用いることができる。更に、磁気記録用ラミネートフィルムにも電子写真用ラミネートフィルムと同様な熱融着層を設けることもできる。熱融着層(又は熱融着性基体フィルム)のビカット軟化温度は、トナーの溶融温度より低いことが好ましく、このことから、熱融着層等のビカット軟化温度が、70〜130℃の範囲(好ましくは80〜120℃)にあることが好ましい。
磁気記録用ラミネートフィルムの膜厚は50〜300μmが好ましく、75〜125μmがより好ましい。
【0101】
前記の電子写真用ラミネートフィルム及び磁気記録用ラミネートフィルムの表面には、以下に述べるような機能性制御手段が設けられてもよい。この機能性制御手段は、前記各フィルムのおもて面に設けることが好ましい。また、機能性制御手段は、オーバーシートが1枚のフィルムからなる場合、該オーバーシートのラミネート面とは反対側の面に設けることが好ましい。
上記機能性制御手段は、光沢性、耐光性、抗菌性、難燃性、離型性、及び帯電性を制御する機能から選択される少なくとも1つ以上の機能を有するものであることが好ましく、具体的には、前記各フィルム又はオーバーシートの表面に対し、光沢性、耐光性、抗菌性、難燃性、離型性、導電性、さらに好ましくは耐湿性、耐熱性、撥水性、耐磨耗性及び耐傷性などの様々な機能を付加及び/又は向上させるために設けられる。これにより、本発明における電子写真用ラミネートフィルム、磁気記録用ラミネートフィルム及びオーバーシートは、様々な使用条件に対して耐性を有することができる。
【0102】
以下、特に、光沢性の制御に対しての機能性制御手段を例示して説明するが、これに限定されるものではない。
光沢性の制御は、電子写真用ラミネートフィルム及び磁気記録用ラミネートフィルムの表面に形成された画像の「ギラツキ」を抑制し、どの角度から見ても視認性が向上するように行われる。光沢性を制御する機能性制御手段としては、例えば、前記各フィルムの表面に設けられた光沢制御層から構成されてもよいし、前記各フィルムの表面に、直接光沢性を制御する機械的処理を施すことで前記各フィルムが光沢制御機能を有するように設けられてもよい。
【0103】
上記電子写真用ラミネートフィルム及び磁気記録用ラミネートフィルムの表面に、直接光沢性を制御する機械的処理を施す方法としては、機械的手段を用いて、前記各フィルムの表面に凹凸を形成する方法がある。前記各フィルムの表面に深さ3〜30μm程度の凹凸が形成されると、その基体の表面に光散乱が生じることになり、凹凸のサイズ、粗さ、深さ等を変化させることで、所望の光沢性処理を行うことができる。前記機械的手段としては、サンドブラスト法、エンボス法、プラズマエッチング法や、その他の公知の機械的表面処理方法を使用することができる。
【0104】
サンドブラスト法は、有機樹脂、セラミック及び金属などの不定形、又は定形粒子を砥粒として、材料表面に連続して叩き付けることにより、表面を粗面化する方法である。エンボス法は、予め、凹凸を形成した型を作製し、これと材料とを接触させることにより、型の凹凸を材料表面に転写する方法である。プラズマエッチング法は、プラズマ放電による分子解離の結果、発生する励起分子、ラジカル、イオンなどを利用してエッチングする方法である。エッチングは、生成する励起種と材料との反応によって生成される揮発性化合物の蒸発によって進行する。
【0105】
光沢性を制御する機能制御手段が光沢制御層として構成される場合、当該光沢制御層は、ポリマーの相分離を利用することで形成することができる。これは、光沢制御層を形成する樹脂の中に、これと相溶性のない樹脂を添加し、層形成後、乾燥中に相分離を発生させ、それによって表面に凹凸を発生させる方法である。相溶性のない樹脂の種類、添加量、乾燥条件などを制御することにより、相分離の状態を変化させることができ、これにより表面の凹凸が制御され、結果として、表面の光沢性を制御することができる。
【0106】
また、光沢性を制御する機能制御手段が光沢制御層として構成される場合、当該光沢制御層は、少なくとも、結着剤とフィラーとから構成されてもよい。光沢制御層に含有する結着剤としては樹脂を使用することができる。この樹脂としては、電子写真用ラミネートフィルム及び磁気記録用ラミネートフィルムとの親和性、材料選択の多様性、安定性、コスト、作製工程の容易さなどから画像形成材料(トナー)で用いられている熱溶融性樹脂で構成されていることが好ましい。光沢制御層の膜厚は、皮膜形成の安定性のために0.01〜20μmの範囲であることが好ましく、フィラーを安定的に内包し、前記各フィルムとの接着性を確保するために、0.1〜5μmの範囲であることがより好ましい。
【0107】
なお、第2の態様の磁気情報記録媒体の作製に用いられる磁気記録用ラミネートフィルムや、磁気記録用ラミネートフィルムおよび電子写真用ラミネートフィルムの双方の機能を備えた単一のフィルムにおいては、基体と、熱融着層(あるいは、画像受像層として機能する熱融着層)との界面が離型性を有する。
この界面に離型性を付与するためには、基体の少なくとも熱融着層側表面、および/または、熱融着層の少なくとも基体側表面に、上述したような離型性樹脂が含まれていてもよいし、基体表面を反応性シラン化合物で表面処理してもよい。また、基体と、熱融着層との界面に、上述したような離型性を有する材料を用いた離型層を設けてもよい。なお、この離型層は、基体と熱融着層との界面の剥離において、基体側に確実に残留するように、基体表面に対しては接着性を有することが好ましい。
【0108】
(コア基材)
本発明に用いられるコア基材の基体フィルムとしては、厚さ50〜5000μmの範囲のプラスチックからなるPETGフィルムや、PVC(ポリ塩化ビニル)フィルムを用いることが好ましく、厚さ100〜1000μmの範囲のPETGフィルムや、PVCフィルムを用いることがより好ましい。
【0109】
また、本発明の磁気情報記録媒体に用いるコア基材は、磁気情報記録媒体としたときの電子写真用ラミネートフィルムに形成されたトナー画像が見えやすいよう不透明であることが好ましく、白色化したプラスチックフィルムが代表的に使用されるが、使用目的によっては透明なプラスチックフィルムであっても構わない。
【0110】
コア基材を白色化する方法としては、白色顔料、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化カルシウム等の金属酸化物微粒子、有機の白色顔料、ポリマー粒子等をPETGや、PVCのフィルム中に混入させる方法が使用できる。また、PETGやPVCフィルム表面にサンドブラスタ処理やエンボス加工等を施すことにより、PETGやPVCフィルムの表面を凹凸にし、その凹凸による光の散乱によりコア基材であるPETGやPVCフィルムを白色化することもできる。
【0111】
コア基材のラミネート面(片面又は両面)のビカット軟化温度は、トナーの溶融温度より低くなるように設定される。前記基体フィルムがこの条件を満たさない場合には、基体フィルム表面に熱融着層が形成される。熱融着層は、オーバーシートに設けられるものが同様に適用しうる。例えば、PETからなる基体フィルムにPETGの層を設けたものを用いることもできる。
【0112】
本発明におけるコア基材のラミネート面を形成する基体フィルム又は熱融着層のビカット軟化温度は、70〜130℃の範囲であることが好ましく、80〜120℃の範囲であることがより好ましい。
前記ビカット軟化温度が130℃を超えると、ラミネート工程において、電子写真用ラミネートフィルムにコア基材を十分に密着・接着させることができない場合がある。また、ビカット軟化温度が70℃に満たないと、前記密着・接着は十分であってもコア基材が軟化しすぎてしまい、情報記録媒体とした場合に、カール・波打ち・軟化樹脂の流れによる変形や、画像歪みが発生してしまう場合がある。
【0113】
また本発明においては、前記コア基材の内部又は表面に、少なくとも電気的手段、磁気的手段、及び光学的手段から選択される1以上の手段を利用することにより情報の読み出しや書き込みが可能な情報チップが配置されていることが好ましい。
【0114】
前記情報チップとしては、何らかの識別機能を有する情報を有しており、電気的手段、磁気的手段、光学的手段から選択される少なくとも1つの手段を利用することにより読み出し可能であれば特に限定されない。この情報チップは、情報の読み出し専用であってもよいが、必要に応じて情報の読み出しと書き込み(「書き換え」も含む)との両方が可能なものを用いてもよい。また、このような情報チップの具体例としては、例えば情報記録媒体がICカードとして用いられるときのICチップ(半導体回路)が挙げられる。
【0115】
なお、磁気情報記録媒体の情報源として前記の情報チップを用いる場合に形成されるトナー画像は、その一部あるいは全体が何らかの識別機能を有する情報を有するか否かは特に限定されない。
【0116】
一方、情報チップが有する情報は、識別可能なものであれば特に限定されないが、前記同様可変情報を含むものであってもよい。また、該可変情報は、前記同様個人情報を含むものであってもよい。
【0117】
コア基材中に半導体回路を内蔵させる方法としては、前記半導体回路が固定されたインレットと呼ばれるシートを、コア基材を構成するシート材料間に挟み、熱プレスによって熱融着一体化させる方法が一般的に好ましく用いられる。また、前記インレットシートなしに直接、半導体回路を配置し、同様に熱融着一体化させる方法も可能である。
【0118】
その他、前記熱融着によらず、ホットメルト等の接着剤を用いて、前記コア基材を構成するシートどうしを貼り合わせ、同様に、半導体回路を内蔵させることも可能であるが、これらに限られるものではなく、例えば、ICカードに半導体回路を内蔵させる方法であれば、いずれも前記コア基材の製造方法として適用することができる。
さらに、磁気情報記録媒体として使用上問題がなければ、半導体回路をコア基材の内部ではなく、表面に露出した状態で配置することも可能である。
【0119】
なお、本発明のプラスチックシートが磁気カードだけでなく、ICカード等として用いられる場合には、必要に応じてコアシートにアンテナ、外部端子などが埋め込まれる。また、ホログラム等が印刷されたり、必要文字情報がエンボスされる場合がある。
【0120】
(電子写真用ラミネートフィルムへのトナー画像の形成)
次に、以上の方法で形成した本発明に用いられる電子写真用ラミネートフィルム(未印刷)に、電子写真方式によって画像を形成する方法を以下に述べる。
電子写真方式による未印刷ラミネートフィルムへの画像形成(画像形成工程)では、まず電子写真用感光体(潜像担持体)の表面に均一に電荷を与え帯電させた後、その表面に、得られた画像情報を露光し、露光に対応した静電潜像を形成する(潜像形成工程)。次に、前記感光体表面の静電潜像に現像器から画像形成材料であるトナーを供給することで、静電潜像がトナーによって可視化現像される(トナー画像が形成される:現像工程)。さらに、形成されたトナー画像を、未印刷ラミネートフィルム表面の画像受像層が形成された面に転写し(転写工程)、最後に熱や圧力などによりトナーが画像受像層表面に定着されて(定着工程)、画像記録体ができあがる。ここでいう画像記録体とは、本発明における電子写真用ラミネートフィルム(印刷済)である。
【0121】
本発明においては、トナー画像が形成された電子写真用ラミネートフィルムは前記潜像形成工程、現像工程、及び転写工程を必須の工程として作製され、必要に応じて、前記定着工程を用いて作製される。そして、トナー画像が形成された電子写真用ラミネートフィルムの作製に定着工程を含まない場合には、後述するラミネート工程において、ラミネートと定着とを同時に行う方式を採ることができ工程の簡略化、省エネルギー化を図ることができる。
【0122】
前記のように、ラミネートフィルムの画像受像層に転写されるトナー画像は、電子写真用感光体に露光される画像情報に応じて形成されるものである。そしてこの情報は、画像情報であってもよく、文字情報等であってもよい。なお、本発明における前記「画像情報に応じて形成」とは、特に断らない限り、「そのまま実像で形成、又は鏡像で形成」を意味する。
【0123】
また、前記画像情報は可変情報を含むものであってもよい。すなわち、前記画像形成において、未印刷ラミネートフィルム表面に形成されるトナー画像は、例えば、複数枚の画像形成においてすべて同一ではなく、1枚ごとに可変情報である情報に応じて異なるトナー画像であってもよい。
【0124】
さらに、前記可変情報は個人情報を含むものであってもよい。本発明の磁気情報記録媒体は、既述の如く、キャッシュカードや社員証、学生証、個人会員証、居住証、各種運転免許証、各種資格取得証明などに適用可能なものであり、このような用途に使用される場合、前記情報としては、顔写真、本人照合用画像情報、氏名、住所、生年月日等の個人情報が主体となる。
【0125】
本発明における電子写真用ラミネートフィルムは、画像形成面をラミネート面とする場合には、未印刷ラミネートフィルムの表面の画像受像層に形成される画像は反転画像(鏡像画像)とすることがあり、前記感光体表面に静電潜像を形成する際には、感光体表面に露光される画像情報としては鏡像の情報が提供されることが好ましい。
【0126】
さらに、ラミネートフィルム表面の単位面積当りのトナー質量TMAは、文字情報に応じた黒画像の場合は0〜0.7mg/cm2の範囲であることが好ましく、フルカラー画像の場合には0〜2.1mg/cm2の範囲であることが好ましい。
【0127】
本発明に用いられるトナーは、特に製造方法により限定されるものではなく、例えば結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等を混練、粉砕、分級する混練粉砕法、混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法、結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法、結着樹脂と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法等により得られるものが使用できる。また前記方法で得られたトナーをコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法など、公知の方法を使用することができるが、形状制御、粒度分布制御の観点から水系溶媒にて製造する懸濁重合法、乳化重合凝集法、溶解懸濁法が好ましく、乳化重合凝集法が特に好ましい。
【0128】
トナーは結着樹脂と着色剤、離型剤等とからなり、必要であれば、シリカや帯電制御剤を用いてもよい。体積平均粒径は2〜12μmの範囲が好ましく、3〜9μmの範囲がより好ましい。また、トナーの平均形状指数((ML2×100π)/4A:MLはトナー粒子の絶対最大長、Aはトナー粒子の投影面積を各々示す)が115〜140の範囲のものを用いることにより、高い現像、転写性、及び高画質の画像を得ることができる。
また、前記トナーの溶融温度は、80〜150℃の範囲が好ましく、90〜125℃の範囲がより好ましい。
本発明における溶融温度は、フローテスターCFT−500F型(島津製作所製)を用いて、温度−見かけ粘度曲線を求め、該粘度曲線上で、溶融粘度が1×104 Pa・sのときの温度を溶融温度とした。溶融粘度の測定条件は以下の通りである。
溶融粘度の測定条件:昇温速度 3.0 ℃/分、開始温度 80.0 ℃、到達温度 150.0 ℃、測定間隔 3.0 秒、予熱時間 300.0 秒、シリンダ圧力 10.0 kgf/cm2(0.98MPa)、ダイ穴径 1.0 mm、ダイ長さ 1.0 mm
【0129】
定着時にトナーは、熱や圧力が同時に印加されるため画像受像層表面に定着される訳であるが、同時にトナーは定着部材と接触するため、トナーが低粘性であったり、定着部材との親和性が高い場合などでは、定着部材に一部移行し、オフセットとして定着部材に残留するため、定着部材の劣化を招き、結果として定着器の寿命を短縮させてしまうことになる。したがって、電子写真用ラミネートフィルムが画像記録体として使用される場合には、トナー画像の充分な定着性と定着部材との離型性とを得ることが必要となる。
【0130】
しかしながら、本発明に用いる画像受像層表面や電子写真用ラミネートフィルム表面は、トナーとの接着性がよいため、トナーが溶融し、粘性が生じる温度以下で十分にラミネートフィルム表面に定着する。この溶融温度を超えて必要以上に定着温度を上げると、該ラミネートフィルムのビカット軟化温度を大きく超える領域になり、該ラミネートフィルムが収縮してシワになったり、変形が大きくなって使用不可能になったり、また、定着部材に巻付いて結果として定着器の寿命を短縮してしまう場合がある。
【0131】
このため、本発明においては、電子写真用ラミネートフィルム表面に形成されたトナー画像の定着を、該電子写真用ラミネートフィルム表面の温度が、トナーの溶融温度以下となるようにして行うことが好ましい。通常のトナーの溶融温度を考慮すると、前記電子写真用ラミネートフィルムの表面温度が130℃以下となるようにして行うことが好ましく、110℃以下となるようにして行うことがより好ましい。
【0132】
前記のようにラミネートフィルム表面の温度を130℃以下としてトナーの定着を行う場合であっても、前記のような理由から、定着時のラミネートフィルム表面の温度は、前記基体のビカット軟化温度以下であることが好ましく、さらには、定着時のラミネートフィルム表面の温度は、トナーの軟化温度と同等程度とすることも可能である。
【0133】
ここで、前記定着工程がない場合や、定着工程があってもラミネートフィルム表面の温度がトナーの軟化温度より低い場合、トナー樹脂がラミネートフィルムの表面で未定着状態となり、コア基材と重ね合わせてラミネート接着するまでの工程によっては、ラミネートフィルムどうしや、ラミネートフィルムとコア基材が擦れたり、手でトナー画像を触ってしまったりして、トナー画像がずれたり欠落してしまう場合がある。前記のように、定着工程を省いて、ラミネート工程で定着も兼ねるという方法もあるが、前記の理由から、定着工程はあった方が好ましく、定着時のラミネートフィルム表面の温度は、トナーの軟化温度と同等程度以上であることがより好ましい。
【0134】
また、前記条件で定着を行う場合であっても、基体によっては、熱変形を起こす温度領域に入ってしまう場合がある。その場合、特にラミネートフィルムのコシが弱くなり、定着装置の加熱ロールに巻付きやすくなってくる。このような場合は、紙などと重ね合わせて搬送し、定着装置でのラミネートフィルムのコシを補ったり、フィルムエッジ部分にガイドが当たるように定着装置内を改造/調整することが望ましい。
【0135】
一方、本発明に用いられる電子写真用ラミネートフィルムでは、定着時に非画像部でも定着部材と接触することになり、トナーと同様の離型性などの性能が要求されている。
そこで、既述の如く、本発明では、少なくとも前記のごときポリエステル系樹脂を含む画像受像層を該ラミネートフィルムのうら面又はおもて面に形成することが好ましく、また、ポリエステル系樹脂以外に熱溶融性樹脂、もしくは熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化樹脂などが好ましく含まれ、添加剤として離型剤などを好ましくは含有させることにより、定着工程における定着部材への付着防止を図ることができ、加えて、帯電制御剤の添加により電子写真方式における転写性能維持はもとより、排紙トレイ収容性及び堆積フィルムの捌き性能、さらには次工程でのコア基材との積層位置決め精度を向上させることができる。
【0136】
[磁気情報記録媒体の作製]
−第1の態様の磁気情報記録媒体の作製方法−
次に、前記トナー画像が設けられた電子写真用ラミネートフィルムと、コア基材と、磁気記録用ラミネートフィルムとを重ね合わせ加熱圧着して、第1の態様の磁気情報記録媒体を作製する方法について説明する。
【0137】
第1の態様の磁気情報記録媒体は、磁気層及び電子写真トナー画像を有し、オーバーシートのラミネート面のビカット軟化温度が、トナー材料の溶融温度より低いオーバーシートを準備した後、前記コア基材の少なくとも片面に前記オーバーシートのラミネート面を重ね、次いで加熱圧着によりコア基材とオーバーシートをラミネートすることにより作製され、前記ラミネート工程においてコア基材およびオーバーシートのラミネート面の温度がトナー材料の溶融温度以下で、且つ、ラミネート面のビカット軟化温度以上になるように加熱することを特徴とする。このラミネート方法により、トナー画像を流動させずに軟化させて画質を保持したまま、電子写真用ラミネートフィルムをコア基材に確実に強固に接着することができる。
前記オーバーシートが電子写真用ラミネートフィルムと磁気記録用ラミネートフィルムの2枚のフィルムからなる場合には、コア基材にトナー画像が設けられた電子写真用ラミネートフィルムのラミネート面を重ね合わせ、更に電子写真用ラミネートフィルムの重ね面に磁気記録用ラミネートフィルムの重ね面を重ね合わせ、全体を熱圧着して、コア基材、電子写真用ラミネートフィルム、磁気記録用ラミネートフィルムどうしを熱融着で接合することにより作製され、その際、電子写真用ラミネートフィルムのうら面及びおもて面のいずれの温度も、トナー材料の溶融温度より低い温度とする。
電子写真用ラミネートフィルムと磁気記録用ラミネートフィルムはあらかじめ熱融着等により積層しておいてもよいが、工程の簡素化の点から、コア基材、電子写真用ラミネートフィルム及び磁気記録用ラミネートフィルムを同時にラミネートする方法が好ましい。
【0138】
前記コア基材、電子写真用ラミネートフィルム、磁気記録用ラミネートフィルムの重ね合わせは、前記各フィルムとコア基材とを手で保持して揃えることにより行ってもよいし、前記画像形成後に設けられた丁合いトレイなどに前記各フィルム及びコア基材を順次排出し、自動的に揃えることにより行ってもよい。
【0139】
前記ラミネート工程における加熱圧着方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の各種ラミネート技法、並びにラミネート装置をいずれも好適に採用することができる。本発明においては、ヒートプレス法を用いることが好ましく、例えば、前記コア基材、電子写真用ラミネートフィルム、磁気記録用ラミネートフィルムを重ね合わせたものを、熱ロール対などによるニップ部に挿通させることにより、両者をある程度熱溶融させ熱融着させる、通常のラミネート技法、並びにラミネート装置を用いて、加熱圧着させることができる。
【0140】
本発明においては、前記ラミネート工程における加熱圧着による接合を、少なくともオーバーシートのラミネート面の温度がトナーの溶融温度以下になるようにして行うことが好ましい。この条件によりラミネートを行うことにより、トナー画像が流動せずに軟化する比較的低温域で画質を保持したまま、前記ラミネート界面を確実に強固に接着させることができる。
【0141】
具体的には、通常のトナーの溶融温度を考慮すると、前記オーバーシートのラミネート面の温度を130℃以下となるようにして行うことが好ましく、110℃以下となるようにして行うことがより好ましい。
【0142】
なお、電子写真用ラミネートフィルム表面にトナー画像を形成したままで、前述の定着工程を行わずにラミネート工程を行う場合には、前記ラミネート温度を、定着工程を経た電子写真用ラミネートフィルムを用いる場合に比べ、若干高めにすることにより、トナーの発色性等を確保することができる。
【0143】
また本発明では、前記ラミネート工程における加熱圧着による接合を、減圧状態で行うことが好ましい。この条件で接合を行うことにより、前記接合の界面に留まり易い気泡を確実に追い出せるため、より高品位な磁気情報記録媒体を作製することができる。具体的な減圧条件としては、好ましくは4000Pa以下、より好ましくは1333Pa以下程度として加熱圧着を行うことが好ましい。
【0144】
ラミネートされた前記積層体は、そのまま本発明の磁気情報記録媒体となり得るが、ここで、電子写真用ラミネートフィルムに個別の画像が複数形成されている場合、この各画像毎に裁断し、所定サイズの複数の磁気情報記録媒体を得る。
【0145】
−第2の態様の磁気情報記録媒体の作製方法−
次に、第2の態様の磁気情報記録媒体を作製する方法について説明する。
第2の態様の磁気情報記録媒体は、第1の態様の磁気情報記録媒体と同様の層構成を有する積層体を作製した後、剥離工程を経て得られるものである。具体的には、積層体の作製に際して、コア基材のラミネート面に、最後にラミネートされるオーバーシートとして、基材とこの基材の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有し、基材と熱融着層との界面が離型性を有し、少なくとも磁気層が熱融着層表面に形成されたものを用いる。そして、このコア基材に最後にラミネートされるオーバーシートを重ねたものを加熱圧着によりラミネートする。続いて、積層体を構成する基材と熱融着層との界面を剥離する。
なお、「コア基材のラミネート面に、最後にラミネートされる」とは、コア基材の一方の面における場合を意味し、もう一方の面については、必要に応じて任意のタイミングでオーバーシートをラミネートすることができる。また、電子写真用ラミネートフィルムと磁気記録用ラミネートフィルムとを予め積層したものをコア基材に対して一括してラミネートする場合は、コア基材に対して最も外側に位置するオーバーシートを意味する。
ここで、最後にラミネートされるオーバーシートを構成する熱融着層は、画像受像層の機能を有し、ラミネート前の熱融着層表面に磁気層および電子写真トナー画像が設けられていてもよい。
また、剥離工程は、特に限定されず、例えば、手作業で剥離してもよく、剥離爪などを用いて機械的に実施してもよい。なお、剥離工程を経て得られた媒体中に個別の画像が複数形成されている場合、この各画像毎に裁断し、所定サイズの複数の磁気情報記録媒体を得る。
【0146】
一方、ラミネート工程において、積層体を1対の板材で挟持して加熱加圧を行う場合、特に生産性を向上させるために大気圧近傍下にて積層体を加熱加圧する際の時間を短縮しすると、板材と積層体との界面に残留した空気が窪み痕(ゴルフボール表面のようなディンプル模様)として積層体の表面に残留してしまうことがある。
しかしながら、第2の態様の磁気情報記録媒体は、熱融着層と基体との界面を剥離して作製されるため、積層体の表面を構成する部材である基体の表面に窪み跡が発生していたとしても、得られた磁気情報記録媒体の熱融着層(あるいは、画像受像層として機能する熱融着層)側の面には、このような窪み跡が残ることがない。
【0147】
また、第2の態様の磁気情報記録媒体においては、媒体表面から磁気層までの媒体厚み方向の距離が、厚みが最大でも20μm程度の熱融着層(あるいは、画像受像層として機能する熱融着層)の厚みに相当する。このため、媒体表面から磁気層までの媒体厚み方向の距離が非常に薄く、媒体表面からの磁気情報読み取り手段による磁気情報の読み取り出力をより高くでき、読み取りエラー等の発生が抑制できるというメリットがある。
なお、このような観点からは熱融着層(あるいは、画像受像層として機能する熱融着層)の厚みは10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましいが、磁気層を保護するという観点からは、7μm以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0148】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における「部」は質量部を意味する。
−第1の態様の磁気情報記録媒体−
(実施例A1)
本発明における電子写真用ラミネートフィルム(ラミネートフィルム1)を製造した。以下、その製造方法を工程ごとに説明する。
<磁気記録用ラミネートフィルムの作製>
PETG単体構造のA4サイズの透明シート(三菱樹脂社製:ディアフィクスPG−BGオーバーフィルム、厚み:100μm、PETG樹脂層のビカット軟化温度:85℃)に、黒磁気テープ(ダイニック製:TSP407NR)を熱転写し、磁気テープが貼付された磁気記録用ラミネートフィルム1を作製した。
【0149】
<電子写真用ラミネートフィルムの作製>
(熱融着層兼画像受像層用塗工液の調製)
ポリエステル樹脂(東洋紡績社製:バイロン−200、固形分30質量%、ビカット軟化温度:67℃)10部、マット剤として架橋型メタクリル酸エステル共重合物微粒子(綜研化学社製:MP−1000、体積平均粒子径:10μm)0.05部、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(住友化学社製:Sumisob200)0.5部、酸化防止剤として(堺化学工業(株)社製:Chelex−500)0.1部、更に界面活性剤(日本油脂社製:エレガン264WAX)0.2部、更に難燃剤としてパークロロペンタシクロデカンを0.6部とを、トルエン10部とメチルエチルケトン30部との混合溶媒中に添加して十分撹拌し、線状飽和ポリエステル樹脂からなる、熱融着層塗工液を調製した。
【0150】
(基体フィルムへの熱融着層兼画像受像層の形成)
表裏がPETG層でコアがPETである透明フィルム(DuPont社製:メリネックス342、表面PETGのビカット軟化温度:85℃、厚さ:100μm)を基体フィルム1とした。基体フィルム1に、前記熱融着層塗工液を、その表裏にワイヤーバーを用いて塗工し、90℃で1分間乾燥させ、膜厚2.0μmの熱融着層兼画像受像層を形成した。熱融着層兼画像受像層を形成したフィルムの表面抵抗率は1.0×1010Ωであった。これをA4サイズにカットして使用した。
【0151】
(前記フィルムへのトナー画像の形成)
前記の熱融着層兼画像受像層を形成したフィルムの表面に、富士ゼロックス(株)社製カラー複写機DocuColor1250改造機(定着時の前記フィルムの表面温度が、95〜100℃の範囲になるように改造したもの)でベタ画像を含むカラーの鏡像画像を印字し、該鏡像画像が形成された電子写真用ラミネートフィルム1を作製した。ここで用いたトナー(M、C、Y、K)の溶融温度はいずれも130℃であった。
【0152】
<コア基材の準備と、カード(磁気情報記録媒体)の作製>
両面がPETG樹脂層で内部がA−PETである3層構造のA4サイズの白色シート(三菱樹脂社製:ディアクレールW2012、総厚み:500μm、PETG樹脂層のビカット軟化温度:85℃)をコア基材1とし、このコア基材1の表裏に、前記電子写真用ラミネートフィルム1を各フィルムの四隅の位置が合うようにして画像形成面(ラミネート面)で重ね合わせ、更に、前記磁気記録用ラミネートフィルム1と、磁気テープを貼付しなかった磁気記録用ラミネートフィルム1の四隅の位置が合うようにして磁気テープのない面(ラミネート面)で重ね合わせた。
【0153】
前記位置決め、重ね合わせを行った積層体(磁気記録用ラミネートフィルム1/電子写真用ラミネートフィルム1/コア基材1/電子写真用ラミネートフィルム1/磁気記録用ラミネートフィルム1)を、真空ヒートプレス機(ミカドテクノス(株)社製:SMKP−1000V−WH−ST)を用い、上下のプレス板の温度をそれぞれ上/下=110℃/110℃(プレス温度)とし、1333Paの減圧状態での真空引き5sec後、プレス時間45sec、圧力10kgf/cm2(0.98MPa)の条件でラミネートし、図1(B)のカード(磁気情報記録媒体)1を得た。
【0154】
<電子写真用ラミネートフィルム、カードの性能評価>
前記カード1作製のラミネート工程において、電子写真用ラミネートフィルム1と、磁気記録用ラミネートフィルム1と、コア基材1とのラミネート性(剥離強度)、ラミネート画質(トナー流動)、ラミネート品質(気泡混入)を、各々下記基準にて評価し、カード(磁気情報記録媒体)としての性能を確認した。その結果を表1に示す。
【0155】
−ラミネート性(剥離強度)評価−
ラミネート性に関しては、前記ラミネート後のカード1について、基材1と電子写真用ラミネートフィルム1と、磁気記録用ラミネートフィルム1とのそれぞれの界面をカッターナイフで引き剥がし、その部分を持って手でひき剥したときの状況により、以下の基準により評価した。
◎:まったく剥れない。
○:剥れるがすぐに電子写真用ラミネートフィルム1、磁気記録用ライネートフィルム1がちぎれてしまう。
△:電子写真用ラミネートフィルム1は剥れるが剥れた面の画像が乱れ、偽造が困難だと思われる。
×:前記以外で明らかに電子写真用ラミネートフィルム1、磁気記録用ラミネートフィルム1が容易に剥がれる。
【0156】
−ラミネート画質(トナー流動)評価−
ラミネート画質に関しては、前記ラミネート後のカード1について、電子写真用ラミネートフィルム2の画質と、カード1の画質とを比較して、目視により以下の基準で評価した。
評価基準は、以下の通りとした。
○:電子写真用ラミネートフィルム1の画質と、カード1の画質がほぼ同等で、トナーが流動することなく画質の劣化が見られない。
×:電子写真用ラミネートフィルム1の画質に比べて、カード1の画質はトナーが流動していて画質が著しく劣っている。
【0157】
−ラミネート品質(気泡混入)評価−
ラミネート品質に関しては、前記ラミネート後のカード1について、目視により気泡混入の有無を確認し、以下の基準で評価した。
評価基準は、以下の通りとした。
◎:気泡の混入がまったくない。
○:気泡の混入がほとんど目立たない。
×:気泡の混入が目視で容易に分かり、ラミネート品質が著しく悪い。
【0158】
(実施例A2)
実施例A1の鏡像画像を、反転しない通常の画像とし、非画像面をラミネート面とした以外は実施例A1と同様にして、図1(B)の構造を有するカード(磁気情報記録媒体)2を得た。
このカード(磁気情報記録媒体)2について実施例A1と同様にしてラミネート性(剥離強度)、ラミネート画質(トナー流動)、ラミネート品質(気泡混入)について評価した。
【0159】
(実施例A3)
実施例A1と同様にして電子写真用ラミネートフィルム1を作製し、その後のラミネートで前記真空引きをしないでプレス時間300sec、圧力20kgf/cm2(1.96MPa)の条件にしたこと以外は実施例A1と同様にして、図1(B)に相当する構造のカード(磁気情報記録媒体)3を得た。
このカード(磁気情報記録媒体)3について実施例A1と同様にしてラミネート性(剥離強度)、ラミネート画質(トナー流動)、ラミネート品質(気泡混入)について評価した。
【0160】
(実施例A4)
実施例A1と同様にして電子写真用ラミネートフィルム1を作製し、その後のラミネートで前記真空引きをしないでプレス時間300sec、圧力20kgf/cm2(1.96MPa)の条件にしたこと以外は実施例A2と同様にして、図1(B)に相当する構造のカード(磁気情報記録媒体)4を得た。
このカード(磁気情報記録媒体)4について実施例A1と同様にしてラミネート性(剥離強度)、ラミネート画質(トナー流動)、ラミネート品質(気泡混入)について評価した。
【0161】
(実施例A5)
以下のようにして、図3(A)で示す構造のカード(磁気情報記録媒体)を作製した。
<オーバーシートの作製>
表裏がPETG層でコアがPETである透明フィルム(DuPont社製:メリネックス342、表面PETGのビカット軟化温度:85℃、厚さ:100μm)を基体フィルムとした。基体フィルムに、実施例A1で作製した熱融着層塗工液を、その表裏にワイヤーバーを用いて塗工し、90℃で1分間乾燥させ、膜厚2.0μmの熱融着層兼画像受像層を形成した。熱融着層兼画像受像層を形成したフィルムの表面抵抗率は1.0×1010であった。これをA4サイズにカットして使用した。
さらに、一方の面に黒磁気テープ(ダイニック製:TSP407NR)を熱転写し、磁気テープが貼付されたオーバーシートを作製した。
このオーバーシートの前記磁気テープの無い面側に、実施例A1と同様にして鏡像画像のトナー像を形成し電子写真用ラミネートフィルム2とした。
<コア基材の準備と、カード(磁気情報記録媒体)の作製>
両面がPETG樹脂層で内部がPCである3層構造のA4サイズの白色シート(三菱樹脂社製:ディアフレックスPG−WHI、総厚み:550μm、PETG樹脂層のビカット軟化温度:85℃)をコア基材2とし、このコア基材の表に、前記電子写真用ラミネートフィルム2の四隅の位置が合うようにしてトナー画像形成面(ラミネート面)で重ね合わせた。そして実施例A1と同じ条件でラミネートし、図3(A)で示す構造のカード(磁気情報記録媒体)を得た。
このカード(磁気情報記録媒体)5について実施例A1と同様にしてラミネート性(剥離強度)、ラミネート画質(トナー流動)、ラミネート品質(気泡混入)について評価した。
【0162】
(比較例A1)
<オーバーシートの作製>
表裏がPETG層でコアがPETである透明フィルム(DuPont社製:メリネックス342、表裏面PETGのビカット軟化温度:85℃、厚さ:100μm)を基体フィルムとした。基体フィルムの表面抵抗率は1.0×1016Ωであった。これをA4サイズにカットして使用した。
さらに、一方の面に黒磁気テープ(ダイニック製:TSP407NR)を熱転写し、磁気テープが貼付されたオーバーシートを作製した。
このオーバーシートの前記磁気テープの無い面側に、実施例A1と同様にして鏡像画像のトナー像を形成し電子写真用ラミネートフィルム3とした。
<コア基材の準備と、カード(磁気情報記録媒体)の作製>
A4サイズの白色塩化ビニルシート(太平化学製品社製:エビロンHS727、総厚み:500μm、ビカット軟化温度150℃)をカード用コア基材シート3とし、前記電子写真用ラミネートフィルムの四隅の位置が合うようにしてトナー画像形成面(ラミネート面)で重ね合わせた。
そして前記ヒートプレス機を大気圧下で用いて、上下のプレス板の温度をそれぞれ上/下=160/160℃(プレス温度)とし、プレス時間45sec、圧力10kgf/cm2(0.98MPa)の条件でラミネートし、図3(A)で示す構造のカード(磁気情報記録媒体)6を得た。このカード(磁気情報記録媒体)6について実施例A1と同様にしてラミネート性(剥離強度)、ラミネート画質(トナー流動)、ラミネート品質(気泡混入)について評価した。
実施例A1〜実施例A5、比較例A1の評価結果を表1にまとめて記載した。
【0163】
【表1】

【0164】
−第2の態様の磁気情報記録媒体−
(実施例B1)
電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルムを以下のように製造した。以下、これを用いた磁気情報記録媒体の製造方法を工程ごとに説明する。
【0165】
<電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1>
(非ラミネート層塗工液A−1の調製)
ポリエステル樹脂(綜研化学社製、フォレット4M、固形分30質量%)20部と架橋型アクリル微粒子(綜研化学社製、MX300、体積平均粒径R8:3μm)0.6部と帯電制御剤(日本油脂社製、エレガン264WAX)0.3部とを、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液80部に添加して十分撹拌し非ラミネート層塗工液A−1を調製した。
【0166】
(離型層塗工液1の調製)
有機シラン縮合物、メラミン樹脂、アルキド樹脂を含むシリコーンハードコート剤(GE東芝シリコーン社製、SHC900、固形分30質量%)20部を、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液30部に添加して十分撹拌し離型層塗工液1を調製した。
【0167】
(画像受像層塗工液B−1の調製)
ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン200、ビカット軟化温度:67℃)20部と架橋型アクリル微粒子(綜研化学社製、MX−1500、体積平均粒径15μm)1部と帯電制御剤(日本油脂社製、エレガン264WAX)0.6部とを、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液80部に添加して十分撹拌し画像受像層塗工液B−1を調製した。
【0168】
<電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1の作製>
基体としてPETフィルム(東レ社製、ルミラー100T60、厚み:100μm)を用い、この基体の片面に前記非ラミネート層塗工液A−1をワイヤーバーを用いて塗布し、110℃で30秒乾燥させ、膜厚0.15μmの基体裏面側に非ラミネート層を形成した。表面抵抗率は8.2×109Ωであった。この基体のもう一方の面(未処理面)に、前記離型層塗工液1をワイヤーバーを用いて同様に塗布し、120℃で30秒乾燥させ、膜厚0.5μmの離型層を形成した。この離型層上に、さらに画像受像層塗工液B−1をワイヤーバーを用いて塗布し、120℃で60秒乾燥させ、膜厚10μmの画像受像層(画像受像層の機能を有する熱融着層)を形成し、電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1を作製した。この面の表面抵抗率は1.7×1010Ωであった。
【0169】
<磁気層およびトナー画像の形成>
−磁気層の形成−
得られた電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1の画像受像層側の表面の所定の位置に、210×7.3mmサイズの黒磁気テープ(ダイニック製:TSP407NR)を熱転写し、その後A4サイズ(210mm×297mm)にカットした。
【0170】
−トナー画像の形成−
続いて、黒磁気テープが熱転写された画像受像層の表面に、富士ゼロックス(株)社製カラー複写機DocuColor1256改造機(定着時の前記フィルムの表面温度が、95〜100℃の範囲になるように改造したもの)でベタ画像を含むカラーの鏡像画像を、黒磁気テープが形成された部分と重複しないように印字し、該鏡像画像が形成した作製した。ここで用いたトナー(M、C、Y、K)の溶融温度はいずれも130℃であった。
【0171】
−電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム上の画質評価−
出力された電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム上の画質を、目視にて以下のように評価した。
○:問題ない場合
△:画質欠陥が僅かに認められるが問題とならない場合。
×:画質欠陥が認められ問題となる場合
【0172】
<コア基材の準備と、カード(磁気情報記録媒体)の作製>
両面がPETG樹脂層で内部がA−PETである3層構造のA4サイズの白色シート(三菱樹脂社製:ディアクレールW2012、総厚み:500μm、PETG樹脂層のビカット軟化温度:85℃)をコア基材1とし、このコア基材1の片面に、磁気層およびトナー画像が形成された電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1を四隅の位置が合うようにして画像形成面で重ね合わせた。
【0173】
位置決め、重ね合わせを行った積層体(コア基材1/電子写真用ラミネートフィルム1)を、真空ヒートプレス機(ミカドテクノス(株)社製:SMKP−1000V−WH−ST)を用い、上下のプレス板の温度をそれぞれ上/下=110℃/110℃(プレス温度)とし、1333Paの減圧状態での真空引き5sec後、プレス時間45sec、圧力10kgf/cm2(0.98MPa)の条件でラミネートし、冷却後した。続いて、このラミネートされた積層体の基材と、画像受像層との界面を引き剥がして、コア基材と、画像受像層とを有し、両者の界面にトナー画像と磁気層とが形成された図5(C)に示す態様のカード(磁気情報記録媒体)1を得た。
【0174】
<電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1、カード1の性能評価>
前記カード1作製のラミネート工程において、電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1と、コア基材1との画像定着強度(剥離強度)、画像品質(トナー流動、気泡混入)を、各々下記基準にて評価し、カード(磁気情報記録媒体)としての性能を確認した。その結果を表2に示す。
【0175】
−画像定着(剥離強度)評価−
画像定着(剥離強度)に関しては、カード1の表面に転写された画像部に、市販の18mm幅セロハン粘着テープ(ニチバン社製、セロハンテープ)を700g/cmの線圧で貼り付け、10mm/secの速度で剥離した時の、画像の剥がれを以下の基準により評価した。
◎:まったく剥れない。
×:少しでも剥がれが認識された場合。
【0176】
−ラミネート画質(トナー流動)評価−
ラミネート画質に関しては、前記ラミネートおよび剥離処理によって得られたカード1について、電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1の画質と、カード1の画質とを比較して、目視により以下の基準で評価した。
評価基準は、以下の通りとした。
○:電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1の画質と、カード1の画質がほぼ同等で、トナーが流動することなく画質の劣化が見られない。
×:電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム1の画質に比べて、カード1の画質はトナーが流動していて画質が著しく劣っている。
【0177】
−ラミネート品質(気泡混入)評価−
ラミネート品質に関しては、前記ラミネートおよび剥離処理によって得られたカード1について、目視により気泡混入の有無を確認し、以下の基準で評価した。
評価基準は、以下の通りとした。
◎:気泡の混入がまったくない。
○:気泡の混入がほとんど目立たない。
×:気泡の混入が目視で容易に分かり、ラミネート品質が著しく悪い。
【0178】
−磁気出力評価−
磁気出力(情報読み取り)の評価は、磁気記録したカード1を磁気記録リーダー装置(NECトーキン社製、MCT−6500/MCZ−300)を用い、読み取りセンサーを、カード1の磁気層が形成された面(画像受像層側の面で、磁気層が設けられた部分)上に接触させて記録の出力状況を確認することにより行った。評価基準は以下の通りである。
◎:繰り返し何度行っても、まったく問題なく信号情報を読み取れた。
○:95%以上信号の読み取りができた。
△:80%以上の信号の読み取りができた。
×:上記以外。
【0179】
(実施例B2)
(画像受像層塗工液B−2の調製)
ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン885、ビカット軟化温度:79℃)20部と架橋型アクリル微粒子(綜研化学社製、MX−500、体積平均粒径5μm)1部と帯電制御剤(日本油脂社製、エレガン264WAX)0.4部とを、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液80部に添加して十分撹拌し画像受像層塗工液B−2を調製した。
【0180】
<電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム2およびカード2の作製>
画像受像層塗工液B−2を用いて、膜厚2μmの画像受像層(画像受像層の機能を有する熱融着層)を形成した以外は、実施例B1と同様にして電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム2を作製した。画像受像層が形成された面の表面抵抗率は4.0×1011Ωであった。
また、電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム2を用いた以外は実施例B1と同じにして、カード(磁気情報記録媒体)2を作製した。
このカード(磁気情報記録媒体)2について実施例B1と同様にして画像定着性(剥離強度)、画質(トナー流動、気泡混入)、磁気出力評価について評価した。結果を表2に記した。
【0181】
(実施例B3)
(画像受像層塗工液B−3の調製)
ポリエステル樹脂(東洋紡績社製、バイロン290、ビカット軟化温度:72℃)20部と架橋型アクリル微粒子(綜研化学社製、MX−1000、体積平均粒径10μm)1部と帯電制御剤(日本油脂社製、エレガン264WAX)0.3部とを、シクロヘキサノンとメチルエチルケトンとを質量比で10:90で混合した液80部に添加して十分撹拌し画像受像層塗工液B−3を調製した。
【0182】
<電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム3およびカード3の作製>
画像受像層塗工液B−3を用いて、膜厚5μmの画像受像層(画像受像層の機能を有する熱融着層)を形成した以外は、実施例B1と同様にして電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム3を作製した。画像受像層が形成された面の表面抵抗率は1.0×1013Ωであった。
また、電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルム3を用いた以外は実施例B1と同じにして、カード(磁気情報記録媒体)3を作製した。
このカード(磁気情報記録媒体)3について実施例B1と同様にして画像定着性(剥離強度)、画質(トナー流動、気泡混入)、磁気出力評価について評価した。結果を表2に記した。
【0183】
(実施例B4)
実施例B1で用いた画像受像層塗工液B−1液において、帯電制御剤を添加せずに画像受像層を作製した以外は同様にして、電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルムを作製した。このフィルム表面の表面抵抗率は7.8×1016Ωであった。
続いて、この電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルムを用いた以外は実施例B1と同じにしてカード(磁気情報記録媒体)4を作製したが、フィルム上に作製した画像の品質が悪く、カードの画質が(流動、気泡では無く)悪かった。
【0184】
(実施例B5)
実施例B1において、画像受像層の厚みを13μmとして作製した以外は同様にして、電子写真用兼磁気記録用ラミネートフィルムを作製した。このフィルム表面の表面抵抗率は3.8×1011Ωであった。
続いて、この電子写真用ラミネートフィルムを用いた以外は実施例B1と同じにしてカード(磁気情報記録媒体)5を作製したが、磁気記録の情報読み出しが50%ほどエラーとなり、NGとなった。
【0185】
実施例B1〜実施例B5の評価結果を表2にまとめて記載した。
【0186】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】2のフィルムを重ねたオーバーシートを用いる本発明の磁気情報記録媒体の例を示す概略斜視図で、図1(A)はコア基材の片面にオーバーシートを、図1(B)は両面にオーバーシートを設けた例を示す。
【図2】図1の磁気情報記録媒体を構成する電子写真用ラミネートフィルム及び磁気記録用ラミネートフィルムを示す図で、図2(A)は磁気記録用ラミネートフィルムを、図2(B)はおもて面に、図2(C)はうら面にトナー画像を設けた電子写真用ラミネートフィルムを示す。
【図3】1つのフィルムからなるオーバーシートを用いる本発明の磁気情報記録媒体の例を示す概略斜視図で、図1(A)はコア基材の片面にオーバーシートを、図1(B)は両面にオーバーシートを設けた例を示す。
【図4】図3の磁気情報記録媒体を構成するオーバーシートを示す図である。
【図5】第2の態様の磁気情報記録媒体の作製過程の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0188】
20 コア基材
30、30a、30b 電子写真用ラミネートフィルム
32 トナー画像
40、40a、40b 磁気記録用ラミネートフィルム
42 磁気層
50、50a、50b オーバーシート
100 磁気情報記録媒体
101 オーバーシート
102 基体
104 画像受像層
106 トナー画像
108 磁気層
110 コア基材
120 積層体
130 磁気情報記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア基材の少なくとも片面に、磁気層及び画像情報に応じた電子写真トナー画像を有するオーバーシートが加熱圧着によりラミネートされている磁気情報記録媒体であって、
前記コア基材及びオーバーシートのラミネート面のビカット軟化温度が、トナー材料の溶融温度より低いことを特徴とする磁気情報記録媒体。
【請求項2】
磁気情報記録媒体表面を構成する最外層と、該最外層の前記コア基材側に設けられる層との界面に少なくとも前記磁気層が配置され、
前記最外層が、
基材と該基材の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有し、前記基材と前記熱融着層との界面が離型性を有するオーバーシートの前記熱融着層であることを特徴とする請求項1に記載の磁気情報記録媒体。
【請求項3】
前記最外層と、該最外層の前記コア基材側に設けられる層との界面に前記磁気層および前記電子写真トナー画像が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気情報記録媒体。
【請求項4】
磁気層及び電子写真トナー画像を有するオーバーシートであって、オーバーシートのラミネート面のビカット軟化温度がトナー材料の溶融温度より低いオーバーシート、及びそのラミネート面のビカット軟化温度がトナー材料の溶融温度より低いコア基材を準備する工程、
前記コア基材のラミネート面にオーバーシートのラミネート面を重ねる工程、
及びコア基材にオーバーシートを重ねたものを加熱圧着によりラミネートする工程
を有する磁気情報記録媒体の製造方法であって、
前記ラミネート工程においてオーバーシート及びコア基材のラミネート面の温度をトナーの溶融温度より低くかつビカット軟化温度以上の温度に加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の磁気情報記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記コア基材のラミネート面に、最後にラミネートされるオーバーシートが、基材と該基材の少なくとも片面に設けられた熱融着層とを有し、前記基材と前記熱融着層との界面が離型性を有し、少なくとも前記磁気層が前記熱融着層表面に形成されたものであり、
前記コア基材に前記最後にラミネートされるオーバーシートを重ねたものを加熱圧着によりラミネートする工程を経た後に、
前記基材と前記熱融着層との界面を剥離する工程を有する請求項4に記載の磁気情報記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記熱融着層が、画像受像層の機能を有し、ラミネート前の前記熱融着層表面に前記磁気層および前記電子写真トナー画像が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の磁気情報記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−120302(P2006−120302A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215123(P2005−215123)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】