説明

磁気探傷用の磁気センサー保護シュー

【課題】 保護シューの表面に焼結ダイヤモンドをろう付けで接合することによってシューの耐摩耗性を飛躍的に向上させ、安定した磁気探傷を行うとともに、ランニングコストの低減を図る磁気探傷用の磁気センサー保護シューを提供する。
【解決手段】 磁気探傷用の磁気センサー保護シューにおいて、超硬合金板からなる保護シューの表面に焼結ダイヤモンドをろう付けで接合することを特徴とする磁気探傷装置の磁気センサー保護シュー。また、上記の焼結ダイヤモンドをろう付けで接合するに当たり、保護シューを分割した上でろう付けで接合すること磁気探傷装置の磁気センサー保護シュー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材等を磁気探傷する磁気センサー保護シューに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気探傷用の磁気センサー保護シューについては、例えば特開2005−140632号公報(特許文献1)に開示されているように、被検査材の漏洩磁束を検出する検出素子を保護する超硬材からなるシューを備え、このシューの検出素子位置における被検査材との摺接面部に検査素子を挿入する凹陥部を穿設した非磁性超硬金属板を冠着した磁気探傷用検出器用シューが提案されている。このように、磁気探傷用の磁気センサー保護シューについては、非磁性超硬金属板を用いているのが一般的である。
【0003】
上述した磁気探傷用検出器は、被検査材中に疵がある場合に発生する漏洩磁束を検出するものであるから、その検出素子は被検査材の表面に対して極めて接近して配置し、かつ移送される被検査材に対し常に間隔を一定に保つことが要求される。例えば検出素子は普通被検査材に対し、約0.3〜0.6mmの間隔に保たれる必要がある。そのため、従来技術では、検出素子と被検査材との間に非磁性金属板、例えば超硬金属板をはさみ、この金属板に被検査材を接触し摺動しながら移送させることにより、検出素子と被検査材との間隔を一定に保っている。
【0004】
一方、超硬金属は割れやすい性質を有するため、運転中の衝撃に耐えられず摩耗する前に割れるものが発生すると言う問題がある。また、超硬金属板を0.6mmを超える厚さにすると強度は増すが検出素子と被検査材間隔が長くなり探傷感度が低下すると言う問題がある。さらに、磁気探傷を行う際には被検材は磁気センサーを保護する非磁性の金属板である保護シューと摺動しながら移動されるため、シューが摩耗して厚さが変化する。摩耗によってシューの厚みが変化するとセンサーと被検材の間隔が変化してしまうため、安定した探傷ができない。また、シューを頻繁に交換する必要が生じ、高コストに繋がるという問題がある。
【特許文献1】特開2005−140632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、保護シューの表面に焼結ダイヤモンドをろう付けで接合することによってシューの耐摩耗性を飛躍的に向上させ、安定した磁気探傷を行うとともに、ランニングコストの低減を図る磁気探傷用の磁気センサー保護シューを提供するものである。その発明の要旨とするところは、
(1)磁気探傷用の磁気センサー保護シューにおいて、超硬合金板からなる保護シューの表面に焼結ダイヤモンドをろう付けで接合することを特徴とする磁気探傷装置の磁気センサー保護シュー。
(2)前記(1)に記載の焼結ダイヤモンドをろう付けで接合するに当たり、保護シューを分割した上でろう付け接合することを特徴とする磁気探傷用の磁気センサー保護シュー。
(3)前記(1)または(2)に記載の超硬合金板の表面に0.3〜0.9mm厚の焼結ダイヤモンドをろう付け接合することを特徴とする磁気探傷用の磁気センサー保護シューにある。
【発明の効果】
【0006】
以上述べたように、本発明によるシューの表面に焼結ダイヤモンドをろう付けで接合することによってシューの耐摩耗性を飛躍的に向上させ、安定した磁気探傷を行うとともにシューのランニングコストの低減を図ることが出来る極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は、磁気探傷機の原理を示す概略図である。この図1に示すように、磁力線装置4より発生する磁力線は下方の被検査材1の鋼材中を誘導され流させる。そこで被検査材1に、もし疵5が存在すると、その疵5の付近に漏洩磁束が発生し、この漏洩磁束はシュー3内に設けられている検出器である磁気センサー2により検出される。
【0008】
上記した検出器は、上述したように被検査材中に疵がある場合に発生する漏洩磁束を検出するものであるから、その検出素子は被検査材の表面に対して極めて接近して配置し、かつ移送される検査材に対し常に間隔を一定に保つことが要求される。そのために、シューの検出素子位置における被検査材との摺動面部を超硬金属板の強度を上げるとともに検出素子と被検査材との間隔を一定に保つシューが必要である。
【0009】
図2は、磁気探傷機のシュー、磁気センサーの配置を示す断面概略図である。この図2に示すように、シュー3がNo.1〜5から構成させ、各シュー3には磁気センサー2を装入する角型の磁気センサー用角孔6が穿孔されている。図3は、本発明に係るシューの断面拡大図である。図3(a)は上面断面図であり、図3(b)は正面断面図を示す。この図3に示すように、シュー3には磁気センサー2を装入する角型の磁気センサー用角孔6が穿孔され、シュー3は超硬合金7より構成され、その超硬合金板からなる保護シュー3の表面に焼結ダイヤモンド8がろう付けで接合するように構成されている。
【0010】
上述したように、超硬合金7より構成されたシュー3の表面に焼結ダイヤモンド8を銀ろう付けで接合することによって、シューの耐摩耗性に飛躍的に向上させ、安定した磁気探傷を行うことができる。すなわち、超硬合金より構成されたシューの表面にろう付け、いわゆる、1種の溶け易い合金である軟ろうないし硬ろうを使用してその化学的結合力と物理的粘結力によって接合するもので、例えば硬ろうである銀ろうを用いて接合させるものである。このろう付けについては、硬ろうである銀ろう、銅ろう、黄銅ろうなど特に限定するものではない。
【0011】
しかし、焼結ダイヤモンドは大きさに制限があるため、シューを分割し、面積を小さくすることによってダイヤモンドのろう付けを可能とするものである。また、運転時における被検査材突入の衝撃に十分耐えうる厚さである必要があることから、その厚さを0.3〜0.9mmとする。0.3mm未満では摩耗したり衝撃で破損したりし易く、そのため交換頻度が上がる。また、0.9mmを超えるとセンサーと被検体の距離が大きくなり感度が低下することから、その範囲を0.3〜0.9mmとする。特にセンサーと被検材との間隔との関係から0.2〜0.7mm厚の焼結ダイヤモンドをろう付け接合することが望ましい。
【実施例】
【0012】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
図4は、二つの検出器である磁気センサーを用いて被検査材を検出する磁気探傷機を示す図である。この磁気探傷機を用いて、図3に示す分割された焼結ダイヤモンドでろう付けしたシューを図2に示すように5個連結して構成したシューを用いて、本発明である焼結ダイヤモンドをろう付けしたシューと従来の超硬合金のシューを使用した場合の摩耗状況について調査した。その結果を表1に示す。
【0013】
【表1】

表1に示すように、本発明例では170000本の処理に対し、摩耗量の平均は0.196mmと1本当たり、1.15×10-6mm、比較例である超硬合金のシューでは穴開きが発生する前の21000本処理の段階で摩耗量の平均は0.290mmと1本当たり13.74×10-6mmとなった。
【0014】
上述したように、本発明に係る漏洩磁束探傷機を実装した結果は、従来の超硬合金のシューを使用した場合の摩耗状況と焼結ダイヤモンドをろう付けしたシューとで摩耗量を比較したところ約12倍の耐摩耗性が確認された。これによって、探傷感度の安定性およびシューのランニングコストの低減を図ることができた効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】磁気探傷機の原理を示す概略図である。
【図2】磁気探傷機のシュー、磁気センサーの配置を示す断面概略図である。
【図3】本発明に係るシューの断面拡大図である。
【図4】二つの検出器である磁気センサーを用いて被検査材を検出する磁気探傷機を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1 被検査材
2 磁気センサー
3 漏洩磁束はシュー
4 磁力線装置
5 疵
6 磁気センサー用角孔
7 超硬合金
8 焼結ダイヤモンド


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気探傷用の磁気センサー保護シューにおいて、超硬合金板からなる保護シューの表面に焼結ダイヤモンドをろう付けで接合することを特徴とする磁気探傷装置の磁気センサー保護シュー。
【請求項2】
請求項1に記載の焼結ダイヤモンドをろう付けで接合するに当たり、保護シューを分割した上でろう付け接合することを特徴とする磁気探傷用の磁気センサー保護シュー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超硬合金板の表面に0.3〜0.9mm厚の焼結ダイヤモンドをろう付け接合することを特徴とする磁気探傷用の磁気センサー保護シュー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−128924(P2008−128924A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316558(P2006−316558)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】