説明

磁気検知タグの再生方法、及び磁気検知タグの再生装置

【課題】簡単な装置構成で確実に磁気検知タグの再生ができる磁気検知タグの再生方法、及び磁気検知タグの再生装置を提供する。
【解決手段】交流電源12と、前記交流電源と接続されて交流電源12の供給する交流電力で交流磁界を発生させるコイル110とからなる再生装置100で、軟磁性体層と着磁した硬磁性体層とを有する失効した磁気検知タグ18の表面に沿って矢印Q方向に掃引することにより、着磁された磁気検知タグ18を消磁させて再生する。交流電力の周波数は100〜10000Hzが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界を利用してその存在を検出する磁気検知タグの再生方法、及び磁気検知タグの再生装置に関する。更に詳述すれば、本発明は着磁した磁気検知タグを交流磁界により消磁させて磁気検知タグの再生を行う磁気検知タグの再生方法及び同再生方法に用いる磁気検知タグの再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品等に添付され、商品と共に移動し、所定のゲートを通過する際に検出されることにより商品の管理を行ったり、商品の盗難を防止したりする、磁界利用の磁気検知タグが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
図4に従来の磁気検知タグの一例を示す。図4中、40はコバルト元素等を含有する軟磁性体層である。前記軟磁性体層40の一面にはポリエステル系の接着剤層42を介して多数の貫通孔43を形成した硬磁性体層45が積層されている。硬磁性体層45は、例えばニッケル等の硬磁性体元素が含有されてなる。硬磁性体層45の上面には上質紙や、樹脂フィルムからなる保護層47が貼着されている。
【0004】
また、前記軟磁性体層40の他面には粘着剤層48を介して剥離紙49が貼着されている。この磁気検知タグの使用に際しては、上記剥離紙49が剥され、管理されるべき商品等に貼着される。
【0005】
図5は、磁気検知タグを検出するゲート50、52を示すもので、両ゲート50、52間に交流磁界Yが形成されている。また、両ゲート50、52には磁界強度を検出する検出器(不図示)が取りつけられており、前記両ゲート50、52間の磁界強度が検出されている。なお、54は磁気検知タグである。磁気検知タグ54が商品等(不図示)に取りつけられて矢印Xで示されるように両ゲート50、52間を通過すると、ゲート50、52間に形成されている交流磁界Yが歪められる。この交流磁界Yの歪みを検出することにより、磁気検知タグ54がゲート50、52間を通過したことが検出される。
【0006】
図6は、磁界の歪みを検出する具体的方法の一例を示すものである。図6中、(a1)は、ゲート50、52間に形成する一定周波数の交流磁界の波形を示す。簡単な数学的手法を用いて、時間軸を周波数軸に変換すると(a2)に示す波形に変換される。
【0007】
図6中、(b1)は、磁気検知タグ54がゲート50、52間を通過することにより歪んだ交流磁界の波形を示す。この歪んだ波形を上記と同様にして座標軸変換を行うと、(b2)に示す波形が得られる。(b2)の波形には、交流磁界の歪みに起因する高調波60、62が認められる。この高調波の有無を検出することにより、ゲート50、52間を磁気検知タグ54が通過したことの有無が検出される。
【0008】
例えば、商品等が正規に購入され、外部に搬出されても良い状態になった場合は、この商品等に貼着された磁気検知タグ54は予め失効される。この失効操作を施すことにより、商品に付着された磁気検知タグ54がゲート50、52内を通過しても磁界が歪められることが無くなる。この結果、商品に貼着された磁気検知タグ54がゲート通過時に検出されることなく、商品等は外部に持出される。
【0009】
一方、不正に外部に持出されようとする場合は、磁気検知タグ54は失効されていない状態にあるので、商品等がゲート50、52内を通過すると歪んだ磁界が発生され、これにより不正持出しが検出される。
【0010】
失効は、図4に示す磁気検知タグの硬磁性体層45を失効器を用いて着磁することにより達成される。
【0011】
図7は、従来用いられている失効器の一例を示す。この失効器70は、基台72に、直径12mmの円盤状永久磁石が互いに10mm程度の間隔で並べられたもので、各磁石はN極74と、S極76とが交互に配列されている。
【0012】
この失効器70の上面に図4に記載された磁気検知タグ54が触れると、硬磁性体層45が着磁され、これにより磁気検知タグが失効される。
【0013】
上記磁気検知タグは、使用形態によって、失効させたままでその役割を全うさせる場合と、再生操作を施して再使用を図る場合とがある。例えば、テレビ等の電化製品は、通常購入後各家庭に持帰られ、家庭で使用される。このような製品に付されて使用され、磁気検知タグの回収を必要としない場合がある。このような場合は、磁気検知タグは再生される必要がない。
【0014】
一方、レンタルビデオに代表されるレンタル商品や、図書館の図書に添付される磁気検知タグのように、貸与された商品や図書がレンタル店や図書館に返却される度にそれらに付されている磁気検知タグが再生され、ゲートで検出され得る状態に戻して使用される必要のある場合がある。
【0015】
磁気検知タグの再生方法は、その硬磁性体層を着磁状態から消磁状態に磁性特性を変えることにより行う。
【0016】
従来、再生方法として、指数包絡線の内側で磁界反転毎に磁界を減少させるように磁石を多数配列した磁石アレイを形成し、このアレイに沿って磁気検知タグを移動させることにより消磁させる再生方法が提案されている(特許文献2)。しかしこの方法は、装置構成が煩雑になる。
【0017】
市販の再生装置としては、磁極を交互に反対にして平行に並べた永久磁石アレイを、電池で駆動するモーターで回転させて交流磁界を形成し、この交流磁界で磁気検知タグを掃引するハンディタイプの再生装置がある(リンテック株式会社製再生装置 商品名 EL−R01)。この再生装置は十分の再生機能を有するが、磁石を回転させる駆動部等を備えているので、機械的に複雑になると共に、駆動部の故障が起きる可能性がある。磁石を回転させる駆動部が故障し、磁石の回転が停止すると、再生装置内の永久磁石により磁気検知タグの硬磁性体層が着磁され、これにより磁気検知タグが失効されてしまう。
【特許文献1】特開平6−342065(請求項1)
【特許文献2】特表2002−527837(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者らは、上記問題を解決するために種々検討するうちに、コイルに交流電力を供給して発生する交流磁界を磁気検知タグの消磁に用いると、磁気検知タグを簡単に再生できること、この方法によれば再生装置は可動部を必要としないため故障も少なく、さらに再生に最適な交流磁界を任意に発生させることができること等を知得した。本発明は上記発見に基づき完成するに至ったものである。
【0019】
従って、本発明の目的とするところは、上記問題を解決し、簡単な装置構成で確実に磁気検知タグの再生ができる磁気検知タグの再生方法、及び磁気検知タグの再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0021】
〔1〕 コイルに交流電力を印加して発生する交流磁界を、軟磁性体層と硬磁性体層とを有する磁気検知タグに曝しながら、磁気検知タグと交流磁界とのうちの何れか又は両方を移動させることにより、交流磁界中で磁気検知タグを掃引し、着磁した磁気検知タグの硬磁性体層を消磁させる磁気検知タグの再生方法。
【0022】
〔2〕 交流電力の周波数が100〜10000Hzである〔1〕に記載の磁気検知タグの再生方法。
【0023】
〔3〕 交流磁界の交流磁界強度が0.01T以上である〔1〕に記載の磁気検知タグの再生方法。
【0024】
〔4〕 磁気検知タグの、交流磁界中で掃引される掃引速度が5m/秒以下である〔1〕に記載の磁気検知タグの再生方法。
【0025】
〔5〕 交流電源と、前記交流電源と接続されて交流電源の供給する交流電力で交流磁界を発生させるコイルとからなる、軟磁性体層と着磁した硬磁性体層とを有する磁気検知タグの再生装置。
【0026】
〔6〕 コイルが、円筒状誘電体で形成されたコアであってその軸方向に平行に少なくとも1個の分割溝を有するコアと、前記コアの軸方向に平行な断面に沿ってコア表面に巻回してなる導線とからなる〔5〕に記載の磁気検知タグの再生装置。
【0027】
〔7〕 コイルが、誘電体を長手方向の中間部で折返して両端側を互いに対向させると共に前記両端側にそれぞれ前記中間部と反対方向に互いに所定間隔離れて突出した突出し部を形成することにより分割溝を構成するコアと、前記コアの幅方向の周りに沿ってコア表面に巻回した導線とからなる〔5〕に記載の磁気検知タグの再生装置。
【0028】
〔8〕 分割溝の幅が0.1〜20mmである〔6〕又は〔7〕に記載の磁気検知タグの再生装置。
【0029】
〔9〕 交流電力の周波数が100〜10000Hzである〔6〕又は〔7〕に記載の磁気検知タグの再生装置。
【発明の効果】
【0030】
本発明の磁気検知タグの再生方法に於いては、交流電力を用いて交流磁界を発生させているので、磁界強度、周波数を任意に変更でき、磁気検知タグを再生するのに最適の条件を簡単に設定できる。特に、交流電力の周波数を高くする場合には、磁気検出タグの再生がより確実になるが、このような周波数の高い交流磁界の形成は従来の永久磁石のアレイを用いて実現することには限界がある。また、本再生装置は、可動部を持たないので、故障が少なく、更に装置的にも構成が簡単になる。更に、コイルを構成するコアの分割溝近傍をコアの外方に突出す構成とすることにより、タグの再生時に、確実にタグを交流磁界中で掃引出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態につき、詳細に説明する。
【0032】
図1中、100は本発明の磁気検知タグの再生装置の一例を示す。2は、略円筒状のコアで、その軸方向に沿って分割溝4がコア2の外周面6から内周面8にかけて形成されている。コア2の材質は、フェライト、パーマロイ、センダスト、アモルファス金属等の透磁率の高い材料が制限無く使用できる。またこれらの材料を複数組合わせても良い。分割溝4の幅Pは、後述するように、この分割溝4近傍に形成される漏れ磁界により磁気検知タグが消磁される幅であれば特に制限が無いが、通常0.1〜20mm程度が好ましく、0.5〜15mmがより好ましい。
【0033】
前記コア2には、その軸方向に平行なコアの断面方向に沿ってコア表面に導線10が巻回され、前記コア2と導線10によりコイル110が形成されている。
【0034】
前記導線10の両端は、交流電源12に接続されている。交流電源12から供給される交流電力の波形は特に制限が無く、正弦波、矩形波、三角波等任意の形状の交流波形が採用され得る。
【0035】
交流電力の周波数は、100Hz以上が好ましく、300Hz以上がより好ましく、500〜10000Hzが更に好ましい。
【0036】
図2は、前記図1で示される再生装置100を用いて、被着物16に貼着された磁気検知タグ18を再生する場合の一例を示している。管理されるべき商品や図書館の図書等の被着物16には、軟磁性体層(不図示)と硬磁性体層(不図示)とが積層された公知の磁気検知タグ18が貼着されている。この磁気検知タグ18は、その硬磁性体層が失効器を用いて既に着磁された状態(失効状態)になっている。
【0037】
この状態で、再生装置100の分割溝4を磁気検知タグ18と対向させ、再生装置100を磁気検知タグ18の表面方向に沿って掃引する(本図に於いては矢印Q方向に掃引している)。
【0038】
この操作により、磁気検知タグ18は、その掃引方向に沿って順次再生装置100の分割溝4から漏れ出る交流磁界20に曝される。その結果、不図示の着磁された硬磁性体層が消磁され、磁気検知タグ18が再生される。
【0039】
磁気検知タグ18と分割溝4との間隔Rは、漏れ出る交流磁界20の強度に関係するが、本例の場合は0.5〜3mmとすることが、操作の便宣上好ましい。
【0040】
磁気検知タグ18が曝される交流磁界強度は、掃引速度にも関連するが、通常0.01T以上が好ましく、0.05〜1.0Tがより好ましい。0.01T未満の場合は、再生が不確実になる場合がある。
【0041】
掃引速度は、漏れ出る交流磁界20の周波数に関連する。通常の用手法による再生装置100の掃引の場合は、交流磁界の周波数を300Hz以上にすれば、確実に再生できる。なお、用手法による掃引速度は通常3m/秒以下である。
【0042】
上記再生装置100に於いては、コア2は一体に形成した略円筒状のものを使用したがこれに限られず、円筒軸方向に平行に2分割、或はそれ以上の数に分割できるものであっても良い。この場合は、複数の分割したコアにそれぞれ導線を巻回したコイルを複数製造し、最後に複数のコイルを略円筒状に組合わせることにより、能率良く再生装置が製造できる。
【0043】
更に、再生操作に置いては、再生装置100を掃引したがこれに限られず、磁気検知タグ18、又は磁気検知タグ18を貼着した被着物16を掃引しても良い。或は、互いに異なる方向に磁気検知タグ18と再生装置100との両者を移動させることにより、掃引しても良い。
【0044】
また更に、磁気検知タグ18を被着物16に貼着したが、紐等を用いて被着物16に取付けたり、ぶら下げても良い。
【0045】
図8は、本発明に於いて使用するコイルの他の例を示すものである。図8(A)は側面図、図8(B)は平面図である。
【0046】
この例において、120はコイルである。コア主体82は、透磁率の高い材料(以下、透磁性材料という。)からなり、コア主体82の長手方向の中間部82aにおいて折曲げられて略U字状に形成されている。コア主体82の両端には、それぞれ透磁性材料で形成されたコア板84a、84bが互いに所定間隔離れて接着剤等で接着され、これにより分割溝85が形成されている。なお、Pは、分割溝の幅を表す。前記コア板84a、84bの形状は略長方形で、折曲げ部86a、86bにおいて長方形の一辺に平行に所定角度で折曲げられている。その結果、コア板84a、84bの先端88a、88bはそれぞれコア主体82の中間部82aと反対方向(外側)に突出されている。
【0047】
前記U字状のコア主体82の両端側には、コア主体82の幅方向に平行にコア主体82の表面に沿って電気の良導体である導線90がそれぞれ所定回数巻回されてコイル92a、92bを形成している。なお、これらのコイル92a、92bは直列に接続されている。
【0048】
このコイル120のコア板84a、84bの先端88a、88bはコイル120の外側に突出ている。従って、このコイルを採用する再生装置を用いてタグを再生する場合、コア板84a、84bの先端88a、88bをタグに近接させて掃引しやすい。その結果、より確実にタグを再生できる。
【0049】
コア板84a、84bと、コア主体82とは個別に製造され、両者は接着されている。構造的には両者は異なる部品の組合わせでであるが、電磁気的には、両者は何れも透磁性材料で構成され、等価的には透磁性材料で一体に製造されたコアと同等の作用を示す。従って、上記図8に示すコア構造を、図9に示すように、コア板84a、84bをコア主体82に接着する代りに、コア94の両先端を互いに対向させると共に、その両先端側に外方に突出す突出し部94a、94bをコア94と一体に形成しても良いことになる。
【0050】
本発明に於いては、上記以外にも、その他本発明の要旨を変更しない範囲で、種々変形しても良い。
【0051】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0052】
実施例1
図1に示すように、外径25mm、内径12mm、高さ30mmの円筒状フェライトコアをその軸線に沿って2分割した2個の半円筒状フェライトコアに直径0.35mmの被覆導線をそれぞれ100回巻回し、2個のコイルを作製した。この2個のコイルを円筒状に重ね合わせると共に、一方の重ね合せ部はフェライトコアの分割端面同士を互いに1mm離間(幅P)させて、分割溝4とした。他方の重ね合せ部は、フェライトコア同士を密着させた。更に、2つのコイルの被覆導線を直列に接続すると共に、被覆導線の両端を交流電源に接続して、本発明の再生装置を製造した。
【0053】
交流電源として、菊水社製RC Oscillator 4188を使用し、その信号を増幅するためにAccuphase社製ステレオパワーアンプ P370を接続したものを用いた。
【0054】
再生試験例1
軟磁性体層と硬磁性体層とを積層してなるリンテック株式会社製磁気検知タグ(商品名 EP−D01)4個を予め失効器(リンテック株式会社製 商品名 EL−D01)を用いて失効(着磁)させた。実施例1で製造した再生装置を用いて、この失効させた磁気検知タグの表面を掃引した。交流磁界の周波数は、500Hz、1kHzとした。電流は0.5Aに固定した。掃引速度は、3m/秒であった。掃引中は、磁気検知タグ表面と再生装置の分割溝4との距離Rを1mmに保った。
【0055】
図3に示す磁気特性値測定器を用いて検知タグの磁気特性を測定し、得られる磁気検知タグの磁気特性値により再生装置の性能を評価した。
【0056】
図3中、30は直径0.5mmの被覆導線が直径60mmの円筒状に180回巻回された測定コイルで、導線の両端は交流電源32と接続されている。交流電源32から測定コイル30に5kHzの正弦波電力(電流値0.5A固定)が供給される。測定コイル30内に挿入された磁気検知タグ34からの応答信号は測定コイル30で検出されて電圧測定器36に送られる。
【0057】
この測定原理は、図6の磁界歪を検出する方法と同様に説明できる。測定コイル30内に磁気検知タグ34を挿入すると、図6(b)のb1に相当する、波形の歪んだ交流磁界が発生する。この歪んだ交流磁界に起因する応答信号を測定コイル30で検出し、これを電圧測定器36においてフーリエ変換して、時間軸を周波数軸に変換すると、交流磁界の歪に起因する高調波(図6(b)の60または62に相当)が認められる。本測定器では10kHzの高調波の信号強度を測定し、これを磁気特性値とした。磁気特性値の値が大きいほど、消磁されていることになる。各磁気検知タグにつき、上記失効(着磁)、再生(消磁)、磁気特性値の測定 を5回繰返し、得られた磁気特性値の平均値を算出した。表1に、失効後の磁気特性値、及び再生度を示した。再生度は、再生後の磁気特性値を失効前の磁気特性値で除した値である。
【0058】
次に、これら再生された4個の磁気検知タグを、順次ゲート(リンテック株式会社製ゲート 商品名 EG−C45)内を通過させた。この場合、4個の磁気検知タグは全てゲートで検出された。
【0059】
再生比較試験例1
市販の再生装置を用いる以外は上記再生試験例1と同様に操作して、磁気検知タグを再生し、その磁気特性値を測定した。その結果を表1に示した。用いた再生装置は、磁極を交互に反対にして平行に並べた永久磁石アレイを、電池で駆動するモーターで回転させて交流磁界を形成し、この交流磁界で磁気検知タグを掃引するハンディタイプ(リンテック株式会社製再生装置 商品名 EL−R01)のものであった。
【0060】
次に、再生試験例1と同じゲートを使用して、4個の磁気検知タグを順次ゲート内を通過させた。ゲートを通過した再生比較試験例1の磁気検知タグは、4個すべてがゲートで検出されなかった。
【0061】
【表1】

【0062】
表1から明らかなように、500Hzの周波数の交流磁界を用いて磁気検知タグを再生すると、再生度は0.6以上になり、且つゲートを通過した磁気検知タグ4個のすべてが検出され、磁気検知タグが十分再生されていることが分る。即ち、再生度が0.6以上であると磁気検知タグは十分に再生された状態にあり、且つ周波数が高くなるに従って、より完全に再生されることも表1から分る。
【0063】
再生試験例2
再生試験例1と同様に操作した。但し、交流磁界発生のためにコイルに供給する電流値を0.3〜0.7Aに変化させた。周波数は1kHzに固定した。結果を表2に示した。
【0064】
次に、再生試験例1と同じゲートを使用して、4個の磁気検知タグを順次ゲート内を通過させた。ゲートを通過した4個の磁気検知タグのすべてが検出された。
【0065】
【表2】

【0066】
表2から明らかなように、コイルに供給する電流値を0.3〜0.7Aに変化させた場合、再生度は全て0.6以上になった。
【0067】
なお、上記各例に於ける、分割溝Pに発生する交流磁界強度と電流値との間には、表3の関係がある。
【0068】
【表3】

【0069】
再生試験例3、再生比較試験例2
実施例1で製造した再生装置を用いて、再生試験例1と同様に操作して磁気検知タグを再生した。但し、再生装置の掃引速度は、1m/秒、交流磁界周波数は300Hz、500Hz、1kHzとし、また用いた磁気検知タグは、再生試験例1で用いた磁気検知タグをそのまま用いた。なお、交流磁界強度は表3中の、0.5Aの磁界強度と同じである。
【0070】
再生比較試験例1と同様にして市販のハンディタイプの再生装置を用いて再生比較試験を行った。再生装置の掃引速度は1m/秒であった。これらの結果を表4に示した。
【0071】
次に、再生試験例1と同じゲートの中を、上記再生した各磁気検知タグを通過させた。上記再生試験例3及び再生比較試験例2で使用した各4個の磁気検知タグのすべてがゲートで検出された。
【0072】
【表4】

【0073】
表4から明らかなように、再生試験例3及び再生比較試験例2の何れにおいても磁気検知タグの再生度は0.6以上になった。
【0074】
実施例2
分割溝の幅Pを0.5mm、及び2.0mmに変更した以外は実施例1に示す再生装置と同様の再生装置を製造した。
【0075】
再生試験例4
実施例2で製造した再生装置を用いて、再生試験例1と同様に操作して再生試験を行った。但し、再生装置の掃引速度は1m/秒であった。使用した磁気検知タグは表1中の磁気検知タグ番号3のものを使用した。結果を表5に示した。
【0076】
次に、再生試験例1と同じゲートを使用して、磁気検知タグを順次ゲート内を通過させた。ゲートを通過させた磁気検知タグのすべてがゲートで検出された。
【0077】
【表5】

【0078】
表5から明らかなように、分割溝の幅Pを0.5mm、及び2.0mmに変化させても、再生度は0.6以上であった。
【0079】
実施例3
図8に示すコイルを製造した。板状(26mmx12mm、厚さ1mm)の透磁性材料(株式会社オータマ製の78%パーマロイPC)を、12mmの辺の中央で、26mmの辺に平行に折曲げて、コア板84a、84bを製造した。折曲げ部の外角は40度であった。
【0080】
図10に示すU字状のフェライトコア(トミタ電機株式会社製フェライトコア UI−25−35、コアの端部の幅s=6mm、厚さr=6mm、U字状コアの端部間距離t=13mm)からなるコア主体82に、図8に示すように、直径0.27mmの被覆銅線をそれぞれコアの両端側に各357回巻上げ、これらを直列に接続した。
【0081】
その後、U字状フェライトコア主体82の両端に、前記コア板84a、84bを接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製 瞬間接着剤 商品名LOCTITE 401)で接着した。コア板84aと84bとで構成する分割溝の幅P=4mmであった。
【0082】
その他の構成は、実施例1の構成と同様にして、再生装置を製造した。
【0083】
再生試験例5
再生試験例1と同様にして再生試験を行った。但し、電流は0.6A(コア板84a、84b間に発生する交流磁界強度=0.075T)であり、掃引速度は1m/秒、掃引中は磁気検知タグの表面と再生装置の分割溝85との距離を1mmに保った。結果を表6に示した。
【0084】
次に、再生試験例1と同じゲートを使用して、磁気検知タグを順次ゲート内を通過させた。ゲートを通過させた磁気検知タグの全てがゲートで検出された。
【0085】
実施例4
実施例3と同様の再生装置を製造した。但し、U字状フェライトコア主体82は、3枚積層して、厚さを3rにした。また、コア主体82に、直径0.32mmの被覆導線をそれぞれの両端側に各200回巻上げ、これらを直列に接続した。
【0086】
再生試験例6
再生試験例5と同様にして再生試験を行った。結果を表6に示した。
【0087】
次に、再生試験例1と同じゲートを使用して、磁気検知タグを順次ゲート内を通過させた。ゲートを通過させた磁気検知タグの全てがゲートで検出された。
【0088】
【表6】

【0089】
表6から明らかなように、再生試験例5及び再生試験例6の何れにおいても磁気検知タグの再生度は0.6以上になった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の磁気検知タグの再生装置の構成例を示す説明図である。
【図2】本発明の磁気検知タグの再生装置の使用例を示す説明図である。
【図3】磁気検知タグの再生状態の評価に用いる磁気特性値測定器の構成を示す説明図である。
【図4】磁気検知タグの構成の一例を示す断面図である。
【図5】磁気検知タグの検出方法を示す説明図である。
【図6】磁気検知タグの検出原理を示す説明図で、(a)はゲート間に形成する交流磁界の波形を示し、(b)は磁気検知タグを検出したときの交流磁界の波形を示す。
【図7】従来の失効器の構成の一例を示す平面図である。
【図8】本発明の磁気検知タグの再生装置に用いるコイルの他の構成例を示す、(A)は側面図、(B)は平面図である。
【図9】本発明の磁気検知タグの再生装置に用いるコアの他の例を示す側面図である。
【図10】実施例3において用いたコアの形状を示す(A)は側面図、(B)は平面図である。
【符号の説明】
【0091】
100 再生装置
2、94 コア
4、85 分割溝
6 外周面
8 内周面
P 幅
10、90 導線
110、120、92a、92b コイル
12 交流電源
16 被着物
18 磁気検知タグ
Q、X 矢印
20 交流磁界
R 間隔
30 測定コイル
32 交流電源
34 磁気検知タグ
36 電圧測定器
40 軟磁性体層
42 接着剤層
43 貫通孔
45 硬磁性体層
47 保護層
48 粘着剤層
49 剥離紙
50、52 ゲート
54 磁気検知タグ
Y 交流磁界
60、62 高調波
70 失効器
72 基台
74 N極
76 S極
82 コア主体
82a 中間部
84a、84b コア板
86a、86b 折曲げ部
88a、88b 先端
94a、94b 突出し部
r コアの厚さ
s コアの端部の幅
t U字状コアの端部間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに交流電力を印加して発生する交流磁界を、軟磁性体層と硬磁性体層とを有する磁気検知タグに曝しながら、磁気検知タグと交流磁界とのうちの何れか又は両方を移動させることにより、交流磁界中で磁気検知タグを掃引し、着磁した磁気検知タグの硬磁性体層を消磁させる磁気検知タグの再生方法。
【請求項2】
交流電力の周波数が100〜10000Hzである請求項1に記載の磁気検知タグの再生方法。
【請求項3】
交流磁界の交流磁界強度が0.01T以上である請求項1に記載の磁気検知タグの再生方法。
【請求項4】
磁気検知タグの、交流磁界中で掃引される掃引速度が5m/秒以下である請求項1に記載の磁気検知タグの再生方法。
【請求項5】
交流電源と、前記交流電源と接続されて交流電源の供給する交流電力で交流磁界を発生させるコイルとからなる、軟磁性体層と着磁した硬磁性体層とを有する磁気検知タグの再生装置。
【請求項6】
コイルが、円筒状誘電体で形成されたコアであってその軸方向に平行に少なくとも1個の分割溝を有するコアと、前記コアの軸方向に平行な断面に沿ってコア表面に巻回してなる導線とからなる請求項5に記載の磁気検知タグの再生装置。
【請求項7】
コイルが、誘電体を長手方向の中間部で折返して両端側を互いに対向させると共に前記両端側にそれぞれ前記中間部と反対方向に互いに所定間隔離れて突出した突出し部を形成することにより分割溝を構成するコアと、前記コアの幅方向の周りに沿ってコア表面に巻回した導線とからなる請求項5に記載の磁気検知タグの再生装置。
【請求項8】
分割溝の幅が0.1〜20mmである請求項6又は7に記載の磁気検知タグの再生装置。
【請求項9】
交流電力の周波数が100〜10000Hzである請求項6又は7に記載の磁気検知タグの再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−195955(P2006−195955A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−292839(P2005−292839)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(597019609)株式会社 シーディエヌ (22)
【Fターム(参考)】