説明

磁気的に駆動される電気スイッチ

【課題】 磨耗耐性および腐食耐性に優れた、電気的接続を手動で切り替えるためのスイッチを提供する。
【解決手段】 このスイッチは、運動を通じて、手動で変位させることができるユーザ操作素子(10)と、ユーザ操作素子(10)に対する運動を通じて、第1のコンタクト路(40)に沿って変位させることができる少なくとも1つのコンタクト素子(20a、20b)とを備えている。ユーザ操作素子(10)とコンタクト素子(20a、20b)とは、非接触で、互いに直接的に相互作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的コンタクトを行うためのスイッチに関する。本発明は、より詳細には、電気的コンタクトを手動で切り替えるためのスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の機器においては、ユーザ操作素子の操作が、ますます重要になっている。この場合、触感と聴感とが、特に重要になる。特に自動車の操作において、電気的な機能を有する他の多くの機器の操作においても、同様に、スイッチとコントローラとの操作のし易さは、どちらも安全性に深く関わっており、また機器全体の品質、および品質感に対する重要な判定基準である。品質感は、自動車におけるのみならず、販売の決定的な要因になってきている。
【0003】
スイッチまたはコントローラのようなユーザ操作素子は、切り替えが容易でなければならないが、同時に、切り替えプロセス中、スイッチ、したがって電気的コンタクトが、所望の状態に移行しているという感覚を、ユーザに与えなければならない。その点に関して、スイッチが操作されているときの物理的な感触と、操作に伴う音との両方が、極めて重要である。またスイッチは、種々雑多な気候状態において、長期間にわたって、信頼性高く作動しなければならない。
【0004】
従来のスイッチは、この目的を達成するために、ユーザ操作素子に機械的に連結されている切り替え素子に、1つ以上の切り込みと噛み合うことができるラッチ機構が設けられる。この場合に、各切り込みは、1つのスイッチ状態に対応している。また切り替え素子は、それぞれの状態における切り替え動作に不可欠の電気的コンタクトを確立する接点を有している。
【0005】
この場合、コイルばねまたは板ばねによって、切り込みに向かう方向のばね力が、切り替え素子に印加される。そのために、切り替え素子は、切り込みの近傍に移動すると、その切り込み内に係合する。切り替え素子の移動は、切り替え素子に直接に、またはレバーと継ぎ手を介して、機械的に連結されているユーザ操作素子によって行なわれる。
【0006】
ユーザ操作素子は、ユーザが、それを容易に作動させることができるように、通常、機器のユーザ操作パネル、またはダッシュボードに取り付けられている。コンタクト素子、すなわち切り替え素子へのユーザ操作素子の機械的連結は、それらの素子を機械的に移動させるために、スイッチに開口を設けなければならないという欠点を有する。そのため、ごみまたは水分が、スイッチ内に入り込む可能性がある。スイッチの使用状態に応じて、入り込んだごみ、砂、または他の混入物が、機械的動作、特にスイッチの動かし易さに悪影響を及ぼすことがある。さらに、入り込んだ水分が、腐食、さらには接点の短絡をもたらすことがある。
【0007】
これらの欠点を克服するために、スイッチを密閉する方法は公知である。しかしながら、そのようなスイッチでは、ユーザ操作素子も密閉されるという欠点がある。それは、外観、したがって設計の自由度に対して、非常に大きな悪影響をおよぼす。ユーザ操作素子を、容器の外部に位置させなければならない場合には、特別なシールが必要になる。それは、通常、スイッチの耐用年数を短縮し、スイッチの動かし易さに影響し、また切り替え感触に悪影響をおよぼす。
【0008】
さらに、機械的連結は、時間の経過とともに、材料が摩擦により磨耗し、またそれによって、切り替え感触および品質感が低下するという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電気的接続を手動で切り替えるための、改善されたスイッチを利用可能にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、本発明によると、手動で変位させることができるユーザ操作素子と、ユーザ操作素子に対する運動を通じて、第1のコンタクト路に沿って変位させることができる少なくとも1つのコンタクト素子とを備えている電気的コンタクト、すなわち電気的接続を手動で切り替えるためのスイッチであって、ユーザ操作素子とコンタクト素子とは、非接触で、互いに直接的に相互作用し、その結果、コンタクト素子は、ユーザ操作素子の変位に追随するようにしたスイッチによって達成される。
【0011】
非接触な相互作用を用いることによって、レバー、継ぎ手、およびその他の機械的に力を伝達する素子を排除することができる。その結果、機械的な摩耗が最小限になる。この非接触な相互作用は直接的である。すなわち、ユーザ操作素子の運動は、コンタクト素子すなわち切り替え素子の運動に直接的に変換される。その結果、コンタクト素子は、常に、ユーザ操作素子の運動に追随する。直接的な運動とは、具体的には、ユーザ操作素子と切り替え素子との間に、電気的接続部または接続線のような中間素子が設けられていないことを意味するものである。
【0012】
さらに、相互作用という概念は、双方が影響を及ぼしあうということである。すなわち、切り替え素子、すなわちコンタクト素子の運動は、逆に、ユーザ操作素子に伝達される。そのために、例えばコンタクト素子を、切り込み、またはくぼみ内に移動させる場合には、コンタクト素子を、切り込みまたはくぼみから移動させる場合より、より少ない力しか必要ではない。相互作用によって、必要な駆動力を通じて、ユーザ操作素子、したがってユーザにフィードバックが伝達される。
【0013】
手動切り替えは、本明細書においては、ユーザ操作素子が、例えばユーザの手によって機械的に作動させられることを意味する。ユーザは、ユーザ操作素子を直接に握ることができる。ユーザ操作素子には、公知のようなつまみ、およびケーシングを備えることができる。
【0014】
相互作用は、磁気的に行うことができる。これを行うために、ユーザ操作素子は、その少なくとも一部分において、磁性を帯びていてもよい。そのために、永久磁石または電磁石を、ユーザ操作素子に設けることができる。他方、切り替え素子、すなわちコンタクト素子は磁化可能であってもよく、例えば強磁性部分または常磁性部分を有しているもので、例えば鉄で作ることができる。これによって、コンタクト素子を、同時に、電気的コンタクトをもたらすために用いることができるという利点が得られる。
【0015】
しかしながら、本発明によれば、さらに、コンタクト素子は磁性を帯びた部分を有していてもよく、またユーザ操作素子は磁化可能であってもよい。さらに、ユーザ操作素子とコンタクト素子との両方とも、磁性を帯びていてもよい。この場合には、磁気的な相互作用は、引力にも斥力にもなり得る。さらに、電磁石が用いられている場合には、引力と斥力とを切り替えることさえできる。種々の磁化を通じて、種々の切り替え動作を行うことができる。さらに、互いに依存し合うか、または互いに独立な、複数のコンタクト素子を備えることも可能である。これによって、同一のユーザ操作素子を用いて、種々の切り替え動作を用意することが可能となる。
【0016】
当業者にとっては、多数の実施形態を可能にする、磁石の多くの組み合わせがあり得ることは明らかであると思う。
【0017】
相互作用、特に磁気的な相互作用は、コンタクト素子を、少なくとも第1のコンタクト路に押し付けることを可能にする。その結果、コンタクト素子は、第1のコンタクト路に押し付けられたまま保持される。したがって、コイルばねまたは板ばねのようなばね素子を、さらに必要とすることはない。
【0018】
スイッチは、例えば平行に配置された第2のコンタクト路、またはさらなる複数のコンタクト路を、さらに有していてもよい。特に、第1のコンタクト路と第2のコンタクト路とを、互いに平行に配置することができる。さらなるコンタクト路を、それらに平行に配置することもできるし、または第2のコンタクト路と一並びになるように配置することもできる。コンタクト素子は、コンタクト路上に配置することができ、この場合には、磁力によって、コンタクト路に押し付けられたまま保持される。
【0019】
コンタクト路は、コンタクト素子の運動を通じて、コンタクト素子との電気的コンタクトをもたらされる導電部分を有するコンタクト面を備えていてもよい。コンタクト面の各々は、電気接点、電気的接続部、または電気端子に接続されている。
【0020】
例えば第2のコンタクト路は、その全長にわたって、1つのコンタクト面を備えていてもよい。その結果、コンタクト素子が、第2のコンタクト路上に配置されたときに、第2のコンタクト路は、コンタクト素子と電気的にコンタクトする。第2のコンタクト路は、例えば電源に接続されているから、第2のコンタクト路の電位すなわち電源電位が、コンタクト素子に伝達される。
【0021】
第1のコンタクト路は、1つ以上のコンタクト面を有していてもよい。各コンタクト面は、1つのスイッチ状態に対応しており、それぞれ1つの電気的接続部、例えば負荷に対する電気的接続部を有していてもよい。コンタクト面は、第1のコンタクト路に沿って順番に配置することができる。また、当業者であれば、それぞれの要件に適合するように配置を変えることができる。したがって、コンタクト素子を、第1のコンタクト路に沿って移動させることによって、コンタクト素子は、コンタクト面に対して変位し、コンタクト素子の位置に応じて、コンタクト面のいずれにも電気的にコンタクトしない、または1つのコンタクト面にコンタクトする、さらには複数のコンタクト面にコンタクトするようになる。その結果、コンタクト素子と電気的にコンタクトしたコンタクト面は、コンタクト素子の電位まで上昇し、スイッチ状態に合った電気的コンタクト、すなわち電気的接続が、確立される。
【0022】
コンタクト路、特に第1および/または第2のコンタクト路は、少なくとも1つのノッチを有していてもよい。この少なくとも1つのノッチの各々は、1つのスイッチ状態に対応している。それらのスイッチ状態においては、コンタクト素子は、その少なくとも1つのノッチのいずれかに位置し、ノッチに応じて、対応する電気的コンタクトをもたらすことができる。コンタクト素子を、コンタクト路に沿って移動させる(移動するとして)ときに、コンタクト素子をノッチから移動させるためには、相当に大きな力を印加しなければならない。他方、ユーザ操作素子によって、外力の印加なしに、コンタクト素子を、ノッチ内に移動させるか、またはノッチ内に保持することができる。これによって、コンタクト路、すなわち切り替え路の走査が可能になる。
【0023】
したがって、コンタクト素子を、ノッチから移動させるためには、比較的大きな力が必要であり、そのことが、相互作用を通じて、ユーザ操作素子およびユーザに伝達される。そのために、ユーザは、スイッチ状態に関するフィードバックを受ける。
【0024】
ノッチも、コンタクト面を備えているのがよい。このようにすると、コンタクト素子は、それぞれのノッチ内にあるときしか、電気的コンタクトは確立されない。この場合には、ノッチは、電気的な各スイッチ状態が割り当てられる切り替え位置に相当する。
【0025】
この場合に、ノッチは、磁力線の方向に向くように配置されるのが有利である。このようにすると、ユーザ操作素子が動いていないときには、コンタクト素子は、磁力によってノッチ内に引き込まれている。
【0026】
1つ以上のノッチが、第1および第2のコンタクト路、および/またはさらなるコンタクト路、またはコンタクト路のうちのただ1つに設けられていてもよい。当業者であれば、スイッチに対するそれぞれの要件に適応するように、ノッチの数および配置を変えることができる。
【0027】
コンタクト素子、および少なくとも第1のコンタクト路を、閉じたハウジング内に配置してもよい。ユーザ操作素子は、ハウジングの外部に配置される。コンタクト素子および第1のコンタクト路、ならびにこの場合には第2のコンタクト路、およびさらなるコンタクト路(あれば)をハウジングの内部に配置することによって、電気的な切り替えに重要な素子の全てを、ハウジング内に収容して、保護することができる。
【0028】
ハウジングは、完全に閉じられており、気密および/または水密であってもよい。したがって、電気部品は、完全に密閉される。コンタクト素子は、ハウジングの外部から、非接触の相互作用によって変位させられるから、切り替えの目的で、ハウジングの外部から内部に、いかなる機械的運動も伝達する必要がない。したがって、ハウジングに開口を設けたり、可動なハウジング部分を設けたりする必要はない。それによって、ハウジングのシーリングが容易になる。例えば電気ケーブルのような電気的接続手段だけを、ハウジング壁から引き出せばよく、当業者であれば、その目的に適したシーリング方法を熟知している。
【0029】
ハウジングは、電気部品を、環境の影響、特にゴミと水分から、有効かつ永続的に保護することができる。したがって、用いられているハウジングに応じて、ほこりっぽい、または湿気の多い、またはぬれた環境において、恒久的で、かつ信頼性の高い使用が可能になる。
【0030】
第1のコンタクト路および/または第2のコンタクト路を、プリント回路板上に配置してもよい。この場合には、これらのコンタクト路は、コンタクト素子が移動する摺動接点の形態をしていてもよい。これらのコンタクト路を、プリント回路板(PCB)内に集積するか、または公知の技術を用いてPCB上に取り付けてもよい。
【0031】
しかしながら、電線またはケーブルを用いて、直接にコンタクト素子との電気的コンタクトをなすことによって、本発明によるスイッチを、プリント回路板なしに具現することもできる。
【0032】
本発明の一実施形態において、ユーザ操作素子は、回転シャフトを中心にして回転できるように取り付けられており、例えばロータリースイッチの形態をしている。この場合には、磁石も、回転シャフト上に、または回転シャフトに対して半径方向に配置することができる。したがって、ユーザ操作素子が回転運動を行うと、磁石は、円弧に沿って移動する。
【0033】
それに加えて、同様に、1つ以上のコンタクト路を、回転シャフトのまわりに円弧状に配置することができる。このようにすると、ユーザ操作素子が回転すると、したがって、この場合には、磁石が円弧状に移動すると、コンタクト素子は、実質的に1つの円弧に沿っている、同様に円弧状のコンタクト路に沿って移動することができる。
【0034】
磁石とコンタクト素子とは、回転シャフトに沿って位置合わせされていてもよく、このようにすると、回転シャフトを中心として、実質的に同一の半径上に重なりながら移動する。
【0035】
好適な一実施形態においては、コンタクト素子は、ユーザ操作素子の回転シャフトに関して半径方向に配置されている。この実施形態が、磁石を含んでいる場合には、コンタクト素子は、さらに、磁石に関して半径方向に配置されており、磁石のまわりを、実質的に円弧状に移動する。
【0036】
コンタクト素子は、回転運動の回転軸に平行になるように配置されている、すなわち位置合わせされていることが有利である。
【0037】
ユーザ操作素子とコンタクト素子とは、実質的に互いに平行に、直線的に変位することができてもよい。ユーザ操作素子の直線運動は、本質的に、ユーザ操作素子上に配置されている磁石または磁化可能な部分に関わる運動である。したがって、本発明によって、スライド式コントローラおよびスライド式スイッチを具現化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1a】本発明によるスイッチの斜視図である。
【図1b】本発明によるスイッチの別の斜視図である。
【図1c】本発明によるスイッチのさらに別の斜視図である。
【図2a】本発明によるスイッチの第0スイッチ状態における斜視図および断面図である。
【図2b】図2aのスイッチの第1スイッチ状態における斜視図および断面図である。
【図2c】図2aのスイッチの第2スイッチ状態における斜視図および断面図である。
【図2d】図2aのスイッチの第3スイッチ状態における斜視図および断面図である。
【図2e】図2aのスイッチの第4スイッチ状態における斜視図および断面図である。
【図3a】ユーザ操作素子および三角形断面を有するコンタクト素子の斜視図である。
【図3b】ユーザ操作素子および円形断面を有するコンタクト素子の斜視図である。
【図4】コンタクト路を有する、図3bのユーザ操作素子およびコンタクト素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付図面を参照して、好適な実施形態に関する、単に例示的で、かつ非限定的な以下の説明を読むことによって、本発明のさらなる特徴および利点が明白になると思う。
【0040】
図面および説明において、同一または同様の部分には、同一の符号を付してある。
【0041】
図1a〜図1cは、本発明によるスイッチの種々の斜視図を示している。このスイッチは、円筒状の外側ハウジング2および円筒状の内側ハウジング4を備えている。内側ハウジング4は、同一の中心軸を有する外側ハウジング2の内側に配置されている。内側ハウジング4は、図1cに示すように、前端壁がなく、円筒状の側面壁だけから成っている場合もある。外側ハウジング2および内側ハウジング4は、ともにプラスチック材料、またはその他の材料(好ましくは絶縁材料)で作られている。
【0042】
さらに、スイッチは、永久磁石14が配置されているシャフト12、より詳細には、回転シャフトを有するユーザ操作素子10を備えている。
【0043】
第1のコンタクト路40および第2のコンタクト路30が、内側ハウジング4の側面壁の、ある長さにわたる円弧に沿って配置されている。第1のコンタクト路40は、第1〜第5のコンタクト面40a〜40eを備えており、各コンタクト面はノッチ部分を有している。第2のコンタクト路30は、導電性材料で一体的に作られているか、または導電性の表面を有しており、また第1のコンタクト路40と同じ数のノッチを備えている。これらのノッチは、コンタクト素子20bが、各ノッチとのコンタクトにおいて、第1のコンタクト路40のノッチと、第2のコンタクト路30のノッチとの両方に係合することができるように揃えられている。
【0044】
各ノッチ、および第1のコンタクト路40のコンタクト面40a〜40eは、それぞれのスイッチ状態に対応している。各スイッチ状態が、図2a〜2eに示されている。
【0045】
図2aは、スイッチが第0スイッチ状態にあることを示している。この第0スイッチ状態は、図1aおよび図1bのスイッチ状態と一致している。この場合には、コンタクト素子20aまたは20bは、第1のコンタクト路40の第1のコンタクト面40aのノッチ内、および第2のコンタクト路30の対応するノッチ内に位置している。この状態は、接続されている負荷(例えば送風機)のスイッチが切られている状態であってもよい(速度0)。この場合には、第1のコンタクト面40aに電気的接続部を設ける必要はない。
【0046】
図2bは、スイッチが第1スイッチ状態にあることを示している。コンタクト素子は、第1のコンタクト路40の第2のコンタクト面40bのノッチ内、および第2のコンタクト路30の対応するノッチ内に位置している。この状態は、例えば送風機の第1の速度(速度1)に対応している。その場合には、コンタクト面40bを、抵抗素子を介して送風機に接続させることができる。接続を実現する他の手段が、当業者には公知である。
【0047】
図2c〜図2eは、それぞれ、コンタクト素子20aまたは20bが、第1のコンタクト路40の第3〜第5のコンタクト面40c〜40eのノッチ内、および第2のコンタクト路30の対応するノッチ内に位置している、第2〜第4スイッチ状態を示している。送風機の場合には、これらのスイッチ状態は、さらなる送風段階(速度2〜速度4)に対応しており、その最高段階においては、場合に応じて、コンタクト面を、抵抗素子を介することなく、送風機に接続させることができる。
【0048】
図2a〜図2eは、さらに、ユーザ操作素子10が変位すると、そのシャフト12および永久磁石14も変位すること、およびコンタクト素子20aまたは20bも、この変位にしたがって変位することを示している。それにもかかわらず、コンタクト素子20aまたは20bと、ユーザ操作素子10とを機械的に連結するものはない。そうではなくて、ユーザ操作素子10とコンタクト素子20aまたは20bとは、内側ハウジング4によって、互いに機械的に分離されている。
【0049】
ユーザ操作素子10から、コンタクト素子20aまたは20bへの、およびその反対の力の伝達は、本明細書においては、磁気的相互作用によって、すなわち図3aおよび図3bに示されているように、磁力によって行なわれる。
【0050】
図3aおよび図3bは、シャフト12および永久磁石14を有するユーザ操作素子10、およびコンタクト素子20aおよび20bを、より詳細に示しており、本発明によるスイッチのその他の素子は、説明を明瞭にするために省略されている。
【0051】
図3aと図3bとは、コンタクト素子の実施形態において、互いに異なっている。すなわち、図3aにおいては、三角形断面を有するコンタクト素子20aが示されており、図3bにおいては、円形断面を有するコンタクト素子20bが示されている。形状が異なるため、ノッチ内へのコンタクト素子20aおよび20bの係合の仕方を、各要件に適合するように変えることができる。
【0052】
コンタクト素子20aの三角形形状または多角形形状は、第2のコンタクト路30および第1のコンタクト路40のノッチ内への、より正確な係合を可能にする。その結果、作動精度が増し、また調整に要する力が増す。さらに、コンタクト路に対する、コンタクト素子20aの支持面積、したがって接触面積が改善される。
【0053】
他方において、円形断面を有するコンタクト素子20bの丸い形状は、より小さな力での、上述の複数のスイッチ状態間の切り替えを可能にし、さらに、第2のコンタクト路30および第1のコンタクト路40上での、コンタクト素子20bの回転を可能にする。これは、第2のコンタクト路30および第1のコンタクト路40にノッチが設けられていない場合に、特に有利である。さらに、例えばポテンショメータのような連続的なコントローラを、公知のやり方で実装してもよい。
【0054】
さらに、コンタクト素子およびノッチのこの形状は、スイッチを切り替えるとき、例えばコンタクト素子をラッチするときの音を、要求に適合するように変化させるか、または最小化させることができる。
【0055】
本発明の実施形態において示されているコンタクト素子の形状、およびコンタクト路の配置および形状は、単に例示的なものであるにすぎず、本発明を限定するものではない。さらなる複数の形状および配置において、本発明を適用することができることは、当業者には理解されることと思う。
【0056】
コンタクト素子20a、20bは、本明細書においては、例えば鉄などの磁化可能な材料で作られているか、または永久磁石を備えている。コンタクト素子20a、20bは、ユーザ操作素子10の永久磁石14によって引きつけられる。したがって、図4に示すように、コンタクト素子20bは、第2のコンタクト路30および第1のコンタクト路40に押し付けられ、この場合には、それらのコンタクト路のノッチ内に引き付けられる。
【0057】
コンタクト素子は、ノッチ内またはノッチ外に移動させられるときに力を受け、その力は、磁気的な相互作用を通じて、ユーザ操作素子にフィードバックされ、したがって、ユーザによって知覚される。
【0058】
ユーザ操作素子10、したがって永久磁石14が回転すると、コンタクト素子20a、20bは、永久磁石14に追随して、第2のコンタクト路30および第1のコンタクト路40によって定められる円弧上を移動する。このプロセスにおいて、コンタクト素子20a、20bは、さらに、ノッチ内に引き込まれる。したがって、コンタクト素子20a、20bをさらに移動させるためには、ユーザのより強い力が必要になる。その結果、ユーザに、コンタクト素子がラッチされている感触が生じる。
【0059】
さらに、コンタクト素子20a、20bは、導電性材料で作られているか、または導電性の部分を備えている。導電性材料または導電性の部分は、第2のコンタクト路30と、第1のコンタクト路40のそれぞれのコンタクト面40a〜40eとの間の電気的接続をもたらす。例えば第2のコンタクト路30は、導電性材料で一体的に作られており、かつ電源に接続されていてもよい。その場合には、第2のコンタクト路30、およびその上に載置されるコンタクト素子20a、20bは、電源電位になる。図4に示されている状態においては、コンタクト素子は、第1のコンタクト面40aのノッチ内に位置している。コンタクト面40aは、1つのスイッチ状態、例えば図2aを参照して前記した第0スイッチ状態に対応している。また、コンタクト面40aを、負荷またはその他のものに電気的に接続することもできる。したがって、図2aに示されているスイッチ状態においては、コンタクト面40aはスイッチオンされており、一方、第1のコンタクト路40の他のコンタクト面40b〜40eに対する電気的コンタクトはなされていない。したがって、コンタクト面40b〜40eは、スイッチオフされている。
【0060】
もちろん、切り替えに関連する機能を全く有しないようになっている第0スイッチ状態においては、対応するコンタクト面40aを省略してもよいし、またコンタクト面40aに電気的接続部を設けなくともよい。
【0061】
さらに、第2のコンタクト路30および第1のコンタクト路40、ノッチ、およびコンタクト面の配置の種々の形態が、当業者の知識の範囲内で可能である。当業者であれば、それらの配置および形状を、スイッチに対するときどきの要件に適応させることができる。
【0062】
言うまでもないことであるが、上述の実施形態は、単に例示のためのものであるにすぎず、本発明の多数の変形例が、当業者には明白である。
【符号の説明】
【0063】
2 外側ハウジング
4 内側ハウジング
10 ユーザ操作素子
12 シャフト
14 永久磁石
20a、20b コンタクト素子
30 第2のコンタクト路
40 第1のコンタクト路
40a〜40e コンタクト面
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 運動を通じて、手動で変位させることができるユーザ操作素子(10)と、
− 前記ユーザ操作素子(10)に対する運動を通じて、第1のコンタクト路(40)に沿って変位させることができる少なくとも1つのコンタクト素子(20a、20b)とを備えている、電気的コンタクトを手動で切り替えるためのスイッチであって、
前記ユーザ操作素子(10)と前記コンタクト素子(20a、20b)とは、非接触で、互いに直接的に相互作用するスイッチ。
【請求項2】
前記ユーザ操作素子(10)および/または前記コンタクト素子(20a、20b)は、少なくともそれぞれの一部分において、磁性を帯びているか、または磁化可能である、請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記磁性を帯びている部分は、永久磁石(14)を含んでいる、請求項2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記磁性を帯びている部分は、電磁石を含んでいる、請求項2または3に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記磁化可能な部分は、強磁性または常磁性である、請求項2〜4のいずれか1つに記載のスイッチ。
【請求項6】
前記相互作用によって、前記コンタクト素子(20a、20b)は、前記第1のコンタクト路(40)に押し付けられている、請求項1〜5のいずれか1つに記載のスイッチ。
【請求項7】
第2のコンタクト路(30)をさらに備えている、請求項1〜6のいずれか1つに記載のスイッチ。
【請求項8】
前記第1のコンタクト路(40)と前記第2のコンタクト路(30)とは、実質的に互いに平行に配置されている、請求項7に記載のスイッチ。
【請求項9】
前記第1のコンタクト路(40)および/または前記第2のコンタクト路(30)は、前記運動を通じて、前記コンタクト素子(20a、20b)との電気的コンタクトをもたらされる導電部分を有する、少なくとも1つのコンタクト面(40a〜40e)を備えている、請求項1〜8のいずれか1つに記載のスイッチ。
【請求項10】
前記第1のコンタクト路(40)および/または前記第2のコンタクト路(30)は、少なくとも1つのノッチを有しており、少なくとも1つのノッチの各々は、1つのスイッチ状態に対応している、請求項1〜9のいずれか1つに記載のスイッチ。
【請求項11】
前記ユーザ操作素子(10)は、回転軸のまわりに回転可能であるように取り付けられている、請求項1〜10のいずれか1つに記載のスイッチ。
【請求項12】
前記コンタクト素子(20a、20b)は、前記ユーザ操作素子(10)の回転軸に関して半径方向に配置されている、請求項11に記載のスイッチ。
【請求項13】
前記コンタクト素子(20a、20b)は、前記回転軸に実質的に平行に配置されている、請求項11または12に記載のスイッチ。
【請求項14】
前記ユーザ操作素子と前記コンタクト素子とは、実質的に互いに平行に、直線的に変位することができる、請求項1〜10のいずれか1つに記載のスイッチ。

【図4】
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【公表番号】特表2010−528436(P2010−528436A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509750(P2010−509750)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004384
【国際公開番号】WO2008/145404
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(599120831)ヴァレオ クリマシステメ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】