磁気記憶装置
【課題】サーボパターンで確実に磁化を維持することができる磁気記憶媒体および磁気記憶装置を提供する。
【解決手段】サーボパターンではN極またはS極に着磁された磁性体が少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列される。読み出しヘッド素子56は磁性体から漏れ出る磁界に基づき再生信号を出力する。再生信号は0Vの基準電圧から磁極に応じて正負に振れる。整流回路71は、その再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する。磁気記憶媒体では隣接するN極およびS極の磁性体で磁化は安定化する。こうした磁性体では磁化反転は回避される。
【解決手段】サーボパターンではN極またはS極に着磁された磁性体が少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列される。読み出しヘッド素子56は磁性体から漏れ出る磁界に基づき再生信号を出力する。再生信号は0Vの基準電圧から磁極に応じて正負に振れる。整流回路71は、その再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する。磁気記憶媒体では隣接するN極およびS極の磁性体で磁化は安定化する。こうした磁性体では磁化反転は回避される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記憶装置に組み込まれて、N極またはS極に着磁された磁性体を少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列するサーボパターンを有する磁気記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビットパターンドメディアといった磁気記憶媒体は広く知られる。こういった磁気記憶媒体ではサーボパターンの確立にあたって非磁性中に任意のパターンで磁性体は配列される。磁性体は単一方向の磁化で着磁される。サーボパターン中では磁性体の磁極は一方の磁極に揃えられる。
【特許文献1】特開2008−77772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
隣接する磁性体同士で反対向きに磁化が確立されれば、磁界は循環する。磁化の反転は引き起こされにくい。その反対に、隣接する磁性体同士で同一の向きに磁化が確立されると、磁化の反転が容易く引き起こされる。こうしてサーボパターンで磁化が反転すると、サーボパターンは正確に読み取られることができない。トラッキングサーボ制御に支障が生じてしまう。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、サーボパターンで確実に磁化を維持することができる磁気記憶媒体を備え、安定したサーボ動作を実現することができる磁気記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、一形態に係る磁気記憶装置は、N極またはS極に着磁された磁性体を少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列するサーボパターンを有する磁気記憶媒体と、前記磁性体から漏れ出る磁界に基づき再生信号を出力する電磁変換素子と、磁極に応じて正負に振れる前記再生信号を受け取り、その再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する整流回路と、前記整流回路で生成される再生信号に基づき前記磁気記憶媒体上の1記録トラックに前記電磁変換素子を位置決めする制御回路とを備える。
【0006】
こういった磁気記憶装置では記録トラックの線方向に配列される磁性体でN極またはS極が確立される。隣接するN極およびS極の磁性体では磁化は安定化する。こうした磁性体では磁化反転は回避されることができる。従来の磁気記憶装置ではサーボパターン中で全ての磁性体は一方向に磁化される。サーボ制御にあたって片方向の再生信号が供給される。整流回路の働きで片方向の再生信号が生成されれば、制御回路は従来の信号処理をそのまま踏襲することができる。
【0007】
こういった磁気記憶装置の実現にあたって、一形態に係る磁気記憶媒体の製造方法は、磁気記憶媒体のサーボパターン内で、少なくとも記録トラックの線方向に非磁性体中に離散的に配列される磁性体を高周波の書き込み信号で着磁する。こういった製造方法によれば、前述の磁気記憶媒体は比較的に簡単に製造されることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、サーボパターンで確実に磁化を維持することができる磁気記憶媒体は提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
図1は磁気記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)を有する。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばアルミニウムといった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0011】
収容空間には磁気記憶媒体の一具体例すなわち1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモーター15のスピンドルハブに装着される。スピンドルモーター15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。後述されるように、個々の磁気ディスク14はいわゆるビットパターンドメディアとして認識される。
【0012】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はヘッドスタックアセンブリ17を備える。ヘッドスタックアセンブリ17は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸18に回転自在に連結される。ヘッドスタックアセンブリ17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。ヘッドスタックアセンブリ17は例えば押し出し成型に基づきアルミニウムから成型されればよい。
【0013】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダー22が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダー22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダー22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。
【0014】
電磁変換素子は書き込みヘッド素子と読み出しヘッド素子とを備える。書き込みヘッド素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。磁界は、主磁極の働きで、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向から磁気ディスク14に作用する。この磁界の働きで磁気ディスク14に情報は書き込まれる。その一方で、読み出しヘッド素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子が用いられる。GMR素子やTMR素子では、磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。
【0015】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダー22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力と負圧およびヘッドサスペンション21の押し付け力とは釣り合う。こうした釣り合いに基づき磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダー22は浮上し続けることができる。
【0016】
ヘッドスタックアセンブリ17にはボイスコイルモーター(VCM)23が連結される。ボイスコイルモーター23の働きでヘッドスタックアセンブリ17は支軸18回りで回転することができる。こうしたヘッドスタックアセンブリ17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダー22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間で同心円状の記録トラックを横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダー22の移動に基づき電磁変換素子は目標記録トラックに対して位置決めされる。
【0017】
ヘッドサスペンション21の先端には、ヘッドサスペンション21の先端から前方に延びるロードタブ24が区画される。ロードタブ24はキャリッジアーム19の揺動に基づき磁気ディスク14の半径方向に移動することができる。ロードタブ24の移動経路上には磁気ディスク14の外側でランプ部材25が配置される。ランプ部材25はベース13に固定される。ロードタブ24はランプ部材25に受け止められる。ランプ部材25は例えば硬質プラスチック材料から成型されればよい。
【0018】
ランプ部材25にはロードタブ24の移動経路に沿って延びるランプ25aが形成される。このランプ25aは磁気ディスク14の回転軸から遠ざかるにつれて磁気ディスク14の表面を含む仮想平面から遠ざかる。したがって、キャリッジアーム19が支軸18回りで磁気ディスク14の回転軸から遠ざかると、ロードタブ24はランプ25aを上っていく。こうして浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の表面から引き剥がされる。浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14から外側に待避する。反対に、キャリッジアーム19が支軸18回りに磁気ディスク14の回転軸に向かって揺動すると、ロードタブ24はランプ25aを下っていく。回転中の磁気ディスク14から浮上ヘッドスライダー22には浮力が作用する。ランプ部材25およびロードタブ24は協働でいわゆるロードアンロード機構を構成する。
【0019】
図2に示されるように、磁気ディスク14の表裏面には、磁気ディスク14の半径方向に沿って湾曲しつつ延びる複数筋(例えば200本)のサーボセクター領域28が規定される。サーボセクター領域28は円周方向に等間隔で配置される。サーボセクター領域28にはサーボパターンが確立される。サーボパターンに書き込まれる磁気情報は浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子で読み取られる。サーボパターンから読み出される情報に基づき浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。位置決めに応じて1本の円形の記録トラックが確立される。浮上ヘッドスライダー22の半径方向変位に基づき同心円状に記録トラックは確立される。サーボセクター領域28の湾曲は電磁変換素子の移動経路に基づき設定される。
【0020】
隣接するサーボセクター領域28の間にはデータ領域29が確保される。サーボパターンに基づく位置決めに応じてデータ領域29内で電磁変換素子は記録トラックを辿る。電磁変換素子の書き込みヘッド素子は記録トラックに沿って磁気情報を書き込む。電磁変換素子の読み出しヘッド素子は記録トラックに沿って磁気情報を読み出す。
【0021】
図3に示されるように、磁気ディスク14の表面には同心円状に複数列の磁性ドット31が確立される。個々の磁性ドット31は、磁気ディスク14の表面に直交する中心軸を有する円柱すなわち磁性ピラーで構成される。磁性ピラーの直径は例えば20nm程度に設定される。中心軸同士の間隔は例えば22nm〜23nm程度に設定される。磁性ピラー同士は非磁性体32で分離される。ここでは、例えば3列の磁性ピラーで1記録トラック33が形成される。したがって、記録トラック33同士は非磁性体32で磁気的に分離される。しかも、個々の列中では磁性ピラーは非磁性体32で個々に分離される。
【0022】
図4は磁気ディスク14の断面構造を示す。この磁気ディスク14は基体すなわち基板34を備える。基板34は、例えば、ディスク形のSi本体34aと、Si本体34aの表裏面に広がる非晶質のSiO2膜34bとで構成されればよい。ここでは、Si本体34aの表面のみが図示される。ただし、基板34にはガラス基板やアルミニウム基板が用いられてもよい。
【0023】
基板34の表面には裏打ち層35が広がる。裏打ち層35は例えば鉄コバルトタンタル(FeCoTa)膜やニッケル鉄(NiFe)膜といった軟磁性体から構成されればよい。裏打ち層35では、基板34の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。
【0024】
裏打ち層35の表面には非磁性中間層36が広がる。非磁性中間層36は、例えば、裏打ち層35の表面に積層されるタンタル(Ta)密着層と、タンタル密着層の表面に積層されるルテニウム(Ru)層とで構成されればよい。
【0025】
非磁性中間層36の表面には記録層37が形成される。記録層37は、非磁性中間層36の表面に配置される前述の磁性ドット31を備える。磁性ドット31は例えばコバルト鉄(CoFe)合金から形成される。磁性ドット31では、基板34の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸が確立される。個々の磁性ドット31には、基板34の表面に向かう下向き磁化と、基板34の表面から遠ざかる上向き磁化とで2値情報は記録される。磁性ドット31同士の間の空間は非磁性体32で埋められる。非磁性体32には例えば二酸化ケイ素(SiO2)から形成される。磁性ドット31および非磁性体32は平坦面を規定する。平坦面すなわち記録層37の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜37やパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜38で被覆される。なお、基板34の裏面には同様に裏打ち層35、非磁性中間層36、記録層36、保護膜37および潤滑膜38が順次積層される。
【0026】
図5は一具体例に係るサーボセクター領域28を示す。各サーボセクター領域28では、上流から順番にプリアンブル域41、サーボマークアドレス域42、振幅バースト域43および記録再生タイミングマーク44が区画される。これらプリアンブル域41、サーボマークアドレス域42、振幅バースト域43および記録再生タイミングマーク44でサーボパターンは構成される。プリアンブル域41では複数筋の磁性体45が非磁性体46中に配置される。個々の磁性体45は例えば磁気ディスク14の半径線上で延びる。個々の磁性体45はN極またはS極に着磁される。1つの記録トラック33上では、こうした磁性体45の配列に応じて特定の磁化パターンが確立される。磁性体45は例えば磁気ディスク14の周方向に等間隔で配置される。個々の磁性体45は電磁変換素子の書き込みヘッド素子から作用する磁界の大きさや磁性体45の材料特性に応じて大きさが決定される。1つの磁性体45では1方向に磁化は統一化される。こういったプリアンブル域41の働きで電磁変換素子の読み出しヘッド素子から読み出される信号の同期が確保される。同時に、電磁変換素子の読み出しヘッド素子から読み出される信号に基づきゲインが調整される。ここで、「上流」や「下流」は、磁気ディスク14の回転中に規定される浮上ヘッドスライダー22の走行方向に基づき定義される。
【0027】
同様に、サーボマークアドレス域42では複数筋の磁性体47が非磁性体46中に配置される。個々の磁性体47は磁気ディスク14の半径線上で延びる。個々の磁性体47はN極またはS極に着磁される。個々の磁性体47は電磁変換素子の書き込みヘッド素子から作用する磁界の大きさや磁性体47の材料特性に応じて大きさが決定される。1つの磁性体47では1方向に磁化は統一化される。1つの記録トラック33上では、こうした磁性体47の配列に応じて特定の磁化パターンが確立される。磁化パターンは個々の記録トラック33ごとに異なる。磁化パターンはトラック番号を反映する。同時に、複数の記録トラック33に共通に特定の磁化パターンが確立される。磁化パターンはセクター番号を反映する。
【0028】
同様に、振幅バースト域43では複数筋の磁性体48が非磁性体46中に配置される。個々の磁性体48は磁気ディスク14の半径線上で延びる。磁性体48は磁気ディスク14の半径方向に記録トラックのトラック幅すなわちトラックピッチTpの長さで仕切られる。規定数の磁性体48ごとにバースト群48aが構成される。ここでは、最も上流の第1領域49aではバースト群48a同士の間に磁気ディスク14の半径方向にトラックピッチTpの間隔が確保される。第1領域49aの下流で第1領域49aに隣接する第2領域49bでは、同様に、バースト群48a同士の間に磁気ディスク14の半径方向にトラックピッチTpの間隔が確保される。第2領域49bのバースト群48aは第1領域49aのバースト群48aに対して磁気ディスク14の半径方向に1トラックピッチTpのずれ量でずれて配置される。第2領域49bの下流で第2領域49bに隣接する第3領域49cでは、同様に、バースト群48a同士の間に磁気ディスク14の半径方向にトラックピッチTpの間隔が確保される。第3領域49cのバースト群48aは第2領域49bのバースト群48aに対して磁気ディスク14の半径方向に半トラックピッチTpのずれ量でずれて配置される。第3領域49cの下流で第3領域49cに隣接する第4領域49dでは、同様に、バースト群48a同士の間に磁気ディスク14の半径方向にトラックピッチTpの間隔が確保される。第4領域49dのバースト群48aは第3領域49cのバースト群48aに対して磁気ディスク14の半径方向に1トラックピッチTpのずれ量でずれて配置される。電磁変換素子が記録トラック33の中心線を辿ると、第1領域49aおよび第2領域49bで相次いで通過するバースト群48aから同一強度の磁界が検出される。同一レベルの再生信号が相前後して出力される。電磁変換素子が記録トラック33の中心線からずれると、第1領域49aおよび第2領域49bのうち一方で磁界の強度が増大する。第1領域49aおよび第2領域49bの他方で磁界の強度が減少する。相前後して出力される再生信号のレベルの間にずれ量に応じて差分が生じる。こういった差分に応じて電磁変換素子のトラッキング制御は実施されることができる。
【0029】
記録再生タイミングマーク44では複数筋の磁性体51が非磁性体46中に配置される。個々の磁性体51は例えば磁気ディスク14の半径線上で延びる。個々の磁性体51はN極またはS極に着磁される。1つの記録トラック33上では、こうした磁性体51の配列に応じて特定の磁化パターンが確立される。個々の磁性体51は電磁変換素子の書き込みヘッド素子から作用する磁界の大きさや磁性体51の材料特性に応じて大きさが決定される。1つの磁性体51では1方向に磁化は確立される。こういった記録再生タイミングマーク44の働きで電磁変換素子の書き込み動作や読み出し動作のタイミングが確保される。
【0030】
図6に示されるように、ボイスコイルモーター23にはモータードライバー回路54が接続される。モータードライバー回路54はボイスコイルモーター23に駆動電流を供給する。ボイスコイルモーター23は、供給される駆動電流に基づき指定の変位量で変位することができる。こうした変位量はヘッドスタックアセンブリ17の回転量(回転角)に従って設定される。
【0031】
電磁変換素子の書き込みヘッド素子55および読み出しヘッド素子56にはプリアンプ57が接続される。プリアンプ57にはリードライトチャネル回路58が接続される。リードライトチャネル回路58は決められた変復調方式に従って信号の変調や復調を実施する。電磁変換素子がサーボセクター領域28の範囲外すなわちデータ領域29を通過する際に変調後の信号すなわち書き込み信号はプリンアンプ57に供給される。プリアンプ57は書き込み信号を増幅する。増幅後の書き込み信号は書き込みヘッド素子55に供給される。同様に電磁変換素子がデータ領域29を通過する際に読み出しヘッド素子56から出力される読み出し信号はプリアンプ57で増幅された後にリードライトチャネル回路58に供給される。リードライトチャネル回路58は読み出し信号を復調する。
【0032】
モータードライバー回路54およびリードライトチャネル回路58にはハードディスクコントローラー(HDC)59が接続される。HDC59はモータードライバー回路54に制御信号を供給する。この制御信号に基づきモータードライバー回路54の出力すなわち駆動電流は制御される。HDC59は同様にリードライトチャネル回路58に変調前の書き込み信号を送り込むとともにリードライトチャネル回路58から復調後の読み出し信号を受け取る。変調前の書き込み信号は例えばホストコンピューターから送り込まれるデータに基づきHDC59で生成されればよい。そういったデータはコネクター61からHDC59に受け渡されればよい。コネクター61には、例えばホストコンピューターのメインボードから延びる制御信号用ケーブルや電源用ケーブル(ともに図示されず)が接続されればよい。同様に、HDC59は復調後の読み出し信号に基づきデータを再現する。再現されたデータはホストコンピューターに向けてコネクター61から出力されればよい。こうしたデータの送受信にあたってHDC59は例えばバッファメモリー62を利用することができる。バッファメモリー62は一時的にデータを保存する。バッファメモリー62には例えばSDRAM(シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリー)が用いられればよい。
【0033】
HDC59にはマイクロプロセッサーユニット(MPU)63が接続される。MPU63は、例えばROM(リードオンリーメモリー)64に記憶されるプログラムに基づき動作するCPU(中央演算処理装置)65を備える。プログラムには一実施形態に係るトラッキングサーボ制御プログラムが含まれる。トラッキングサーボ制御プログラムはいわゆるファームウェアとして提供されればよい。CPU65はその動作の実現にあたって例えばフラッシュROM66からデータを取得することができる。そういったプログラムやデータは一時的にRAM(ランダムアクセスメモリー)67に格納されることができる。ROM64やフラッシュROM66、RAM67はCPU65に直接に接続されればよい。
【0034】
データの書き込みにあたって電磁変換素子の書き込みヘッド素子55は磁気ディスク14のデータ領域29に向き合わせられる。このとき、電磁変換素子はトラッキングサーボ制御に基づき磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。トラッキングサーボ制御の詳細は後述される。同時に、記録再生タイミングマーク44に基づき書き込み動作のタイミングは磁気ディスク14の回転に合わせ込まれる。HDC59は例えばホストコンピューターから供給されるデータに基づき書き込み信号を生成する。書き込み信号はリードライトチャネル回路58に送り込まれる。リードライトチャネル回路58は予め決められた変調方式に従って書き込み信号に変調を加える。変調後の書き込み信号はプリアンプ57で増幅される。増幅後の書き込み信号は書き込みヘッド素子55に供給される。書き込みヘッド素子55は書き込み動作を実施する。磁気ディスク14の回転速度は例えばサーボ制御に基づき一定に維持される。
【0035】
同様に、データの読み出しにあたって電磁変換素子の読み出しヘッド素子56は磁気ディスク14のデータ領域29に向き合わせられる。電磁変換素子はトラッキングサーボ制御に基づき磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。記録再生タイミングマーク44に基づき読み出し動作のタイミングは磁気ディスク14の回転に合わせ込まれる。リードライトチャネル回路58は読み出しヘッド素子56にセンス電流を供給する。データ領域29の磁化の向きに応じてセンス電流で電圧変化は観察される。電圧変化はプリアンプ57で増幅される。プリアンプ57では結合キャパシタンスの働きで直流バイアスが印加される。その結果、N極およびS極のいずれか一方に基づき正電圧がプリアンプ57から出力される。同様に、N極およびS極の他方に基づき負電圧がプリアンプ57から出力される。すなわちプリアンプ57は正負に振れる電圧変化の再生信号を出力する。リードライトチャネル回路58は再生信号を復調する。HDC59は復調後の再生信号からデータを再現する。再現されたデータはコネクター61からホストコンピューターに向けて出力される。
【0036】
プリアンプ57およびリードライトチャネル回路58の間には整流回路71が接続される。整流回路71は、正負に振れる再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する。すなわち、正負の再生信号は例えば正の再生信号に絶対値化される。整流回路71はリードライトチャネル回路58に整流後の再生信号を供給する。
【0037】
整流回路71の前段にはオフセット補正回路72が接続される。オフセット補正回路72は整流回路71およびプリアンプ57の間に接続される増幅器73を備える。増幅器73にはプリアンプ57から再生信号が供給される。増幅器73には積分回路74が接続される。積分回路74は増幅器73にバイアス電圧を印加する。こうしたバイアス電圧の生成にあたって積分回路74の入力端子にはプリアンプ57から再生信号が供給される。積分回路74は再生信号から直流オフセットおよび低周波数のうねり成分を抽出する。増幅器73では、正負に振れる再生信号から直流オフセットが解消される。その結果、0(ゼロ)Vの基準電圧に対して対称性が高められる。整流回路71では、こうして修正された再生信号が絶対値化される。振幅のぶれは解消される。整流回路71の出力では良好な振幅が得られる。
【0038】
図7は整流回路71の一具体例を示す。この整流回路71は第1トランジスター回路75および第2トランジスター回路76を備える。第1および第2トランジスター回路75、76のコレクターには共通に電圧Vccが印加される。第1および第2トランジスター回路75、76のエミッターには共通に抵抗77が接続される。エミッターから出力電圧Voutが取り出される。第1トランジスター回路75のベースにはプリアンプ58から正極性出力信号Vin1が供給される。第2トランジスター回路76のベースにはプリアンプ58から逆極性出力信号Vin2が供給される。
【0039】
図7から明らかなように、正極性出力信号Vin1に正の電圧が供給されると、第1トランジスター回路75に信号が流通する。この場合には、逆極性出力信号Vin2に負の電圧が供給される。第2トランジスター回路76では電圧の流通は生じない。正極性出力信号Vin1の出力が出力電圧Voutに反映される。図8に示されるように、正極性出力信号Vin1に負の電圧が供給されると、第1トランジスター回路75では電圧の流通は生じない。逆極性出力信号Vin2に正の電圧が供給される。第2トランジスター回路76に信号が流通する。逆極性出力信号Vin2の出力が出力電圧Voutに反映される。前述のリードライトチャネル回路58は正極性信号および逆極性信号の供給を要求する。したがって、ここでは2系統の整流回路71が接続される。一方の整流回路71に対して他方の整流回路71の入力は入れ替えられる。
【0040】
いま、トラッキングサーボ制御が実施される場面を想定する。電磁変換素子の読み出しヘッド素子56は磁気ディスク14のサーボセクター領域28に向き合わせられる。磁気ディスク14の回転に応じて読み出しヘッド素子56は順番にプリアンブル域41、サーボマークアドレス域42、振幅バースト域43および記録再生タイミングマークを通過する。磁性体の磁化の向きに応じてセンス電流で電圧変化が観察される。電圧変化はプリアンプ57で増幅される。図9に示されるように、結合キャパシタンスの働きで0(ゼロ)Vの基準電圧から正負に振れる再生波形が出力される。この再生波形は増幅器に入力される。
【0041】
正負に振れる再生波形は同時に積分回路74に供給される。図10に示されるように、積分回路74は再生信号から直流オフセットおよび低周波数のうねり成分を抽出する。積分回路74は増幅器73にバイアス電圧を印加する。プリアンプ57から出力された再生波形からバイアス電圧は差し引かれる。その結果、正負に振れる再生波形から直流オフセットが差し引かれる。図11に示されるように、増幅器73は整流回路71に補正後の再生波形を供給する。補正後の再生波形では0Vの基準電圧に対して対称性が高められる。
【0042】
整流回路71は、図12に示されるように、正負に振れる再生波形を絶対値化する。再生波形は0Vの基準電圧に対して正の方向にのみ振れる。すなわち、片方向の再生波形が得られる。前述のように、補正後の再生波形では0Vの基準電圧に対して対称性が高められることから、片方向の再生波形では振幅のぶれは最大限に解消される。その後、片方向の再生波形はリードライトチャネル回路58に供給される。リードライトチャネル回路58は片方向の再生波形に基づき位置誤差信号を生成する。位置誤差信号に基づきHDC59はボイスコイルモーター23の駆動量を特定する。特定された駆動量に基づきHDC59はモータードライバー回路54に制御信号を出力する。モータードライバー回路54はボイスコイルモーター23に指定の駆動電流を供給する。こうして電磁変換素子は指定の記録トラック上に位置決めされる。
【0043】
図13に示されるように、整流回路71はプリアンプ57内に組み込まれてもよい。プリアンプ57は初段増幅回路81と後段のゲイン増幅回路82とを備える。初段増幅回路81およびゲイン増幅回路82の間にはハイパスフィルター83が挿入される。再生信号すなわち初段増幅回路81の出力に直流成分が含まれる場合に、ハイパスフィルター83はその直流成分を除去する。整流回路71は初段増幅回路81の出力およびハイパスフィルター83の間に並列に挿入される。初段増幅回路81およびハイパスフィルター83の間では、初段増幅回路81の出力から直接にハイパスフィルター83に接続される第1経路84と、整流回路71を経て初段増幅回路81の出力からハイパスフィルター83に流通する第2経路85とがスイッチング素子86で切り替えられる。データ領域29の再生信号は第1経路84を辿る。サーボセクター領域28の再生信号は第2経路85を辿る。整流回路71は、前述と同様に、正負に振れる再生信号に基づき、0Vの基準電圧に対して正の方向にのみ振れる片方向の再生信号を生成する。スイッチングはサーボゲート信号に連動する。正負に振れる再生信号がハイパスフィルター83を通過すると、直流成分の除去にあたって再生信号に傾き(sag)が生じる。こういった傾きは再生信号の対称性を悪化させる。ハイパスフィルター83の通過に先立って再生信号が絶対値化されると、再生波形の歪みは低減される。エラーレートは低下する。こういったプリアンプ57は例えば1半導体素子にワンチップ化されることができる。
【0044】
その他、図14に示されるように、プリアンプ57内で整流回路71の前段に初段のハイパスフィルター87が挿入されてもよい。このとき、初段のハイパスフィルター87では遮断周波数は低く設定される。遮断周波数は例えば100[kHz]程度に設定される。減衰率は例えば−10[dB]程度に設定される。後段のハイパスフィルター83では遮断周波数はハイパスフィルター87よりも高く設定される。ここでは、例えば後段のハイパスフィルター83の遮断周波数は例えば1[MHz]程度に設定される。減衰率は−20[dB]程度に設定される。初段のハイパスフィルター87は初段増幅回路81の出力から低周波数のうねり成分を除去する。その結果、整流回路71では良好に再生信号の絶対値化が実現されることができる。
【0045】
次に磁気ディスク14の製造方法を簡単に説明する。まず、基板34が用意される。基板34はスパッタリング装置に装着される。スパッタリング装置のチャンバー内には真空環境が確立される。チャンバー内には例えばFeCoTaターゲットがセットされる。チャンバー内で基板34の表面には裏打ち層35が形成される。裏打ち層35の表面には非磁性中間層36が形成される。形成にあたってスパッタリング装置が用いられる。スパッタリング装置には、同様に、タンタルターゲットやルテニウムターゲットがセットされる。
【0046】
その後、図15に示されるように、非磁性中間層36の表面には磁性膜91のべた膜が形成される。磁性膜91は例えばコバルト鉄合金から形成される。積層にあたって例えばスパッタリング装置が利用される。磁性膜91の表面にはレジストが塗布される。レジスト膜92が一面に形成される。
【0047】
その後、図16に示されるように、ナノインプリントに基づきレジスト膜92にパターンが刻まれる。レジスト膜92には型93が押し付けられる。レジスト膜92は前述の磁性ドット31および磁性体45、47、48、51に相当する領域を覆い隠す。こういったレジスト膜92の形成にあたって例えば前述の型押し後にレジスト膜92は露光される。図17に示されるように、露光後にエッチング処理が施される。磁性膜91から磁性ドット31および磁性体45、47、48、51は削り出される。すなわち、非磁性中間層36上に残存する磁性膜91で磁性ドット31および磁性体45、47、48、51は形成される。
【0048】
磁性ドット31および磁性体45、47、48、51の確立後、充填材が塗布される。充填材には二酸化ケイ素が含まれる。塗布にあたって例えばスピンコート法が用いられる。充填材の硬化後、平坦化研磨処理が施される。その結果、図18に示されるように、磁性ドット31および磁性体45、47、48、51の間の空間は充填材で埋められる。充填材は非磁性体32、46を構成する。こうして記録層37の表面は平坦化される。その後、記録層37の表面には保護膜37が形成される。形成にあたって例えばCVD法(化学的気相蒸着法)が用いられる。保護膜37の表面には潤滑膜38が塗布される。塗布にあたっていわゆるディップ法が用いられる。ディップ法では基板34は例えばパーフルオロポリエーテルを含む溶液に浸される。
【0049】
その他、磁性ドット31および磁性体45、47、48、51の形成にあたって例えばイオン注入が利用されてもよい。前述の磁性膜91にイオンが注入されると、磁性膜91は軟磁性体に変質する。イオンは磁性膜91の保磁力を無効化する。その結果、イオン注入に基づき非磁性体32は形成されることができる。こういったイオン注入によれば、記録層37の表面の平坦度は高められることができる。
【0050】
磁気ディスク14には前述のサーボセクター領域28が構築される。構築にあたって磁気ディスク14の記録層37は高周波の書き込み信号に曝される。磁気ディスク14は、いわゆるサーボトラックライター(STW)に搭載されてもよくHDD11に組み込まれてもよい。磁気ディスク14には電磁変換素子の書き込みヘッド素子55が向き合わせられる。磁気ディスク14の回転に同期して書き込みヘッド素子55には高周波信号が供給される。高周波の書き込み信号に基づき所定の周期で書き込みヘッド素子は交互にN極およびS極の書き込み磁界を作用させる。その結果、図19に示されるように、1つの記録トラックにN極およびS極がランダムに配列される。ビットパターンドメディアに用いられる磁性膜では磁区同士の間で強い交換結合力が確立されることから、1つの磁性体45、47、48、51では全体で必ず単一方向の磁化が確立される。たとえ磁性体45、47、48、51の一部に書き込み磁界が作用しても、磁性体45、47、48、51全体で磁化の反転が引き起こされる。
【0051】
ここでは、サーボセクター領域28の磁化にあたって高周波の書き込み信号が利用される。ランダムにN極およびS極が確立される。隣接するN極およびS極の磁性体45、47、48、51では磁化は安定化する。こうした磁性体45、47、48、51では磁化反転は回避されることができる。特に、磁性体45、47、48、51同士の間隔と高周波の書き込み信号の半周期とが一致すると、隣接するN極およびS極の組み合わせは確実に増えることができる。磁化反転の確率は著しく減少する。
【0052】
従来のビットパターンドメディアでは全ての磁性体45、47、48、51は一方向に磁化される。サーボセクター領域28では一方の磁極のみが非磁性体46中に存在する。したがって、トラッキングサーボ制御にあたってHDC59には片方向の再生信号のみが供給される。前述のように整流回路71の働きで片方向の再生信号が生成されれば、HDC71の信号処理は従来のそれを踏襲することができる。トラッキングサーボ制御にあたってHDC71には従来のHDCの処理がそのまま組み込まれることができる。しかも、前述のトラッキングサーボ制御は従来のビットパターンドメディアに利用されることができる。たとえ熱揺らぎや経時変化で磁化反転が引き起こされても、HDC59には片方向の再生信号のみが供給される。
【0053】
(付記1) N極またはS極に着磁された磁性体を少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列するサーボパターンを有する磁気記憶媒体と、前記磁性体から漏れ出る磁界に基づき再生信号を出力する電磁変換素子と、磁極に応じて正負に振れる前記再生信号を受け取り、その再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する整流回路と、前記整流回路で生成される再生信号に基づき前記磁気記憶媒体上の1記録トラックに前記電磁変換素子を位置決めする制御回路とを備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【0054】
(付記2) 付記1に記載の磁気記憶装置において、前記整流回路および電磁変換素子の間に接続されて、正負に振れる前記再生信号と基準電圧との直流オフセットを補正するオフセット補正回路をさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【0055】
(付記3) 付記1に記載の磁気記憶装置において、前記再生信号の復調に先立って前記再生信号を受信し、前記整流回路の後段に接続されるハイパスフィルターをさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【0056】
(付記4) 付記3に記載の磁気記憶装置において、前記整流回路の前段に接続されて、前記ハイパスフィルターの遮断周波数よりも低い遮断周波数を有する初段のハイパスフィルターをさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【0057】
(付記5) 磁気記憶媒体のサーボパターン内で、少なくとも記録トラックの線方向に非磁性体中に離散的に配列される磁性体を高周波の書き込み信号で着磁することを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【0058】
(付記6) 付記5に記載の磁気記憶媒体の製造方法において、前記磁性体同士の間隔は前記高周波の書き込み信号の半周期に合わせられることを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】磁気記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】磁気ディスクの表面の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図3】磁気ディスクの表面を概略的に示す拡大斜視図である。
【図4】図3の4−4線に沿った垂直断面図である。
【図5】一具体例に係るサーボセクター領域の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図6】トラッキングサーボの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図7】整流回路の一具体例を示す回路図である。
【図8】整流回路の回路図である。
【図9】0(ゼロ)Vの基準電圧から正負に振れる再生波形を概略的に示す波形図である。
【図10】再生波形から抽出される直流オフセットおよび低周波数のうねり成分を概略的に示す波形図である。
【図11】直流オフセットおよびうねり成分の補正後であって0Vの基準電圧から正負に振れる再生波形を概略的に示す波形図である。
【図12】絶対化処理後の片方向の再生波形を概略的に示す波形図である。
【図13】整流回路を含むプリアンプの一具体例を示す回路図である。
【図14】整流回路を含むプリアンプの他の具体例を示す回路図である。
【図15】磁気ディスクの製造過程で、非磁性中間層の表面に積層される磁性膜を概略的に示す磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図16】磁気ディスクの製造過程で、磁性膜の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図17】磁気ディスクの製造過程で、パターン化された磁性膜を概略的に示す磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図18】磁気ディスクの製造過程で、平坦化された記録層を概略的に示す磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図19】高周波信号の書き込み後にサーボセクター領域から読み出される再生信号の一具体例を示す波形図である。
【符号の説明】
【0060】
11 磁気記憶装置、33 記録トラック、41 サーボパターンを構成するプリアンブル域、42 サーボパターンを構成するサーボマークアドレス域、43 サーボパターンを構成する振幅バースト域、44 サーボパターンを構成する記録再生タイミングマーク、45 磁性体、46 非磁性体、47 磁性体、48 磁性体、51 磁性体、56 電磁変換素子の読み出しヘッド素子、59 制御回路としてのハードディスクコントローラー(HDC)、71 整流回路、72 オフセット補正回路、83 後段のハイパスフィルター、87 初段のハイパスフィルター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記憶装置に組み込まれて、N極またはS極に着磁された磁性体を少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列するサーボパターンを有する磁気記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビットパターンドメディアといった磁気記憶媒体は広く知られる。こういった磁気記憶媒体ではサーボパターンの確立にあたって非磁性中に任意のパターンで磁性体は配列される。磁性体は単一方向の磁化で着磁される。サーボパターン中では磁性体の磁極は一方の磁極に揃えられる。
【特許文献1】特開2008−77772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
隣接する磁性体同士で反対向きに磁化が確立されれば、磁界は循環する。磁化の反転は引き起こされにくい。その反対に、隣接する磁性体同士で同一の向きに磁化が確立されると、磁化の反転が容易く引き起こされる。こうしてサーボパターンで磁化が反転すると、サーボパターンは正確に読み取られることができない。トラッキングサーボ制御に支障が生じてしまう。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、サーボパターンで確実に磁化を維持することができる磁気記憶媒体を備え、安定したサーボ動作を実現することができる磁気記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、一形態に係る磁気記憶装置は、N極またはS極に着磁された磁性体を少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列するサーボパターンを有する磁気記憶媒体と、前記磁性体から漏れ出る磁界に基づき再生信号を出力する電磁変換素子と、磁極に応じて正負に振れる前記再生信号を受け取り、その再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する整流回路と、前記整流回路で生成される再生信号に基づき前記磁気記憶媒体上の1記録トラックに前記電磁変換素子を位置決めする制御回路とを備える。
【0006】
こういった磁気記憶装置では記録トラックの線方向に配列される磁性体でN極またはS極が確立される。隣接するN極およびS極の磁性体では磁化は安定化する。こうした磁性体では磁化反転は回避されることができる。従来の磁気記憶装置ではサーボパターン中で全ての磁性体は一方向に磁化される。サーボ制御にあたって片方向の再生信号が供給される。整流回路の働きで片方向の再生信号が生成されれば、制御回路は従来の信号処理をそのまま踏襲することができる。
【0007】
こういった磁気記憶装置の実現にあたって、一形態に係る磁気記憶媒体の製造方法は、磁気記憶媒体のサーボパターン内で、少なくとも記録トラックの線方向に非磁性体中に離散的に配列される磁性体を高周波の書き込み信号で着磁する。こういった製造方法によれば、前述の磁気記憶媒体は比較的に簡単に製造されることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上のように本発明によれば、サーボパターンで確実に磁化を維持することができる磁気記憶媒体は提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
図1は磁気記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)を有する。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばアルミニウムといった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0011】
収容空間には磁気記憶媒体の一具体例すなわち1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモーター15のスピンドルハブに装着される。スピンドルモーター15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。後述されるように、個々の磁気ディスク14はいわゆるビットパターンドメディアとして認識される。
【0012】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はヘッドスタックアセンブリ17を備える。ヘッドスタックアセンブリ17は、ベース13の底板から垂直方向に立ち上がる支軸18に回転自在に連結される。ヘッドスタックアセンブリ17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。ヘッドスタックアセンブリ17は例えば押し出し成型に基づきアルミニウムから成型されればよい。
【0013】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャ上には浮上ヘッドスライダー22が支持される。フレキシャに基づき浮上ヘッドスライダー22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。浮上ヘッドスライダー22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。
【0014】
電磁変換素子は書き込みヘッド素子と読み出しヘッド素子とを備える。書き込みヘッド素子にはいわゆる単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで磁界を生成する。磁界は、主磁極の働きで、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向から磁気ディスク14に作用する。この磁界の働きで磁気ディスク14に情報は書き込まれる。その一方で、読み出しヘッド素子には巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子が用いられる。GMR素子やTMR素子では、磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてスピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から情報は読み出される。
【0015】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダー22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力と負圧およびヘッドサスペンション21の押し付け力とは釣り合う。こうした釣り合いに基づき磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダー22は浮上し続けることができる。
【0016】
ヘッドスタックアセンブリ17にはボイスコイルモーター(VCM)23が連結される。ボイスコイルモーター23の働きでヘッドスタックアセンブリ17は支軸18回りで回転することができる。こうしたヘッドスタックアセンブリ17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダー22の浮上中に支軸18回りでキャリッジアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間で同心円状の記録トラックを横切ることができる。こうした浮上ヘッドスライダー22の移動に基づき電磁変換素子は目標記録トラックに対して位置決めされる。
【0017】
ヘッドサスペンション21の先端には、ヘッドサスペンション21の先端から前方に延びるロードタブ24が区画される。ロードタブ24はキャリッジアーム19の揺動に基づき磁気ディスク14の半径方向に移動することができる。ロードタブ24の移動経路上には磁気ディスク14の外側でランプ部材25が配置される。ランプ部材25はベース13に固定される。ロードタブ24はランプ部材25に受け止められる。ランプ部材25は例えば硬質プラスチック材料から成型されればよい。
【0018】
ランプ部材25にはロードタブ24の移動経路に沿って延びるランプ25aが形成される。このランプ25aは磁気ディスク14の回転軸から遠ざかるにつれて磁気ディスク14の表面を含む仮想平面から遠ざかる。したがって、キャリッジアーム19が支軸18回りで磁気ディスク14の回転軸から遠ざかると、ロードタブ24はランプ25aを上っていく。こうして浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の表面から引き剥がされる。浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14から外側に待避する。反対に、キャリッジアーム19が支軸18回りに磁気ディスク14の回転軸に向かって揺動すると、ロードタブ24はランプ25aを下っていく。回転中の磁気ディスク14から浮上ヘッドスライダー22には浮力が作用する。ランプ部材25およびロードタブ24は協働でいわゆるロードアンロード機構を構成する。
【0019】
図2に示されるように、磁気ディスク14の表裏面には、磁気ディスク14の半径方向に沿って湾曲しつつ延びる複数筋(例えば200本)のサーボセクター領域28が規定される。サーボセクター領域28は円周方向に等間隔で配置される。サーボセクター領域28にはサーボパターンが確立される。サーボパターンに書き込まれる磁気情報は浮上ヘッドスライダー22上の電磁変換素子で読み取られる。サーボパターンから読み出される情報に基づき浮上ヘッドスライダー22は磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。位置決めに応じて1本の円形の記録トラックが確立される。浮上ヘッドスライダー22の半径方向変位に基づき同心円状に記録トラックは確立される。サーボセクター領域28の湾曲は電磁変換素子の移動経路に基づき設定される。
【0020】
隣接するサーボセクター領域28の間にはデータ領域29が確保される。サーボパターンに基づく位置決めに応じてデータ領域29内で電磁変換素子は記録トラックを辿る。電磁変換素子の書き込みヘッド素子は記録トラックに沿って磁気情報を書き込む。電磁変換素子の読み出しヘッド素子は記録トラックに沿って磁気情報を読み出す。
【0021】
図3に示されるように、磁気ディスク14の表面には同心円状に複数列の磁性ドット31が確立される。個々の磁性ドット31は、磁気ディスク14の表面に直交する中心軸を有する円柱すなわち磁性ピラーで構成される。磁性ピラーの直径は例えば20nm程度に設定される。中心軸同士の間隔は例えば22nm〜23nm程度に設定される。磁性ピラー同士は非磁性体32で分離される。ここでは、例えば3列の磁性ピラーで1記録トラック33が形成される。したがって、記録トラック33同士は非磁性体32で磁気的に分離される。しかも、個々の列中では磁性ピラーは非磁性体32で個々に分離される。
【0022】
図4は磁気ディスク14の断面構造を示す。この磁気ディスク14は基体すなわち基板34を備える。基板34は、例えば、ディスク形のSi本体34aと、Si本体34aの表裏面に広がる非晶質のSiO2膜34bとで構成されればよい。ここでは、Si本体34aの表面のみが図示される。ただし、基板34にはガラス基板やアルミニウム基板が用いられてもよい。
【0023】
基板34の表面には裏打ち層35が広がる。裏打ち層35は例えば鉄コバルトタンタル(FeCoTa)膜やニッケル鉄(NiFe)膜といった軟磁性体から構成されればよい。裏打ち層35では、基板34の表面に平行に規定される面内方向に磁化容易軸は確立される。
【0024】
裏打ち層35の表面には非磁性中間層36が広がる。非磁性中間層36は、例えば、裏打ち層35の表面に積層されるタンタル(Ta)密着層と、タンタル密着層の表面に積層されるルテニウム(Ru)層とで構成されればよい。
【0025】
非磁性中間層36の表面には記録層37が形成される。記録層37は、非磁性中間層36の表面に配置される前述の磁性ドット31を備える。磁性ドット31は例えばコバルト鉄(CoFe)合金から形成される。磁性ドット31では、基板34の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸が確立される。個々の磁性ドット31には、基板34の表面に向かう下向き磁化と、基板34の表面から遠ざかる上向き磁化とで2値情報は記録される。磁性ドット31同士の間の空間は非磁性体32で埋められる。非磁性体32には例えば二酸化ケイ素(SiO2)から形成される。磁性ドット31および非磁性体32は平坦面を規定する。平坦面すなわち記録層37の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜37やパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜38で被覆される。なお、基板34の裏面には同様に裏打ち層35、非磁性中間層36、記録層36、保護膜37および潤滑膜38が順次積層される。
【0026】
図5は一具体例に係るサーボセクター領域28を示す。各サーボセクター領域28では、上流から順番にプリアンブル域41、サーボマークアドレス域42、振幅バースト域43および記録再生タイミングマーク44が区画される。これらプリアンブル域41、サーボマークアドレス域42、振幅バースト域43および記録再生タイミングマーク44でサーボパターンは構成される。プリアンブル域41では複数筋の磁性体45が非磁性体46中に配置される。個々の磁性体45は例えば磁気ディスク14の半径線上で延びる。個々の磁性体45はN極またはS極に着磁される。1つの記録トラック33上では、こうした磁性体45の配列に応じて特定の磁化パターンが確立される。磁性体45は例えば磁気ディスク14の周方向に等間隔で配置される。個々の磁性体45は電磁変換素子の書き込みヘッド素子から作用する磁界の大きさや磁性体45の材料特性に応じて大きさが決定される。1つの磁性体45では1方向に磁化は統一化される。こういったプリアンブル域41の働きで電磁変換素子の読み出しヘッド素子から読み出される信号の同期が確保される。同時に、電磁変換素子の読み出しヘッド素子から読み出される信号に基づきゲインが調整される。ここで、「上流」や「下流」は、磁気ディスク14の回転中に規定される浮上ヘッドスライダー22の走行方向に基づき定義される。
【0027】
同様に、サーボマークアドレス域42では複数筋の磁性体47が非磁性体46中に配置される。個々の磁性体47は磁気ディスク14の半径線上で延びる。個々の磁性体47はN極またはS極に着磁される。個々の磁性体47は電磁変換素子の書き込みヘッド素子から作用する磁界の大きさや磁性体47の材料特性に応じて大きさが決定される。1つの磁性体47では1方向に磁化は統一化される。1つの記録トラック33上では、こうした磁性体47の配列に応じて特定の磁化パターンが確立される。磁化パターンは個々の記録トラック33ごとに異なる。磁化パターンはトラック番号を反映する。同時に、複数の記録トラック33に共通に特定の磁化パターンが確立される。磁化パターンはセクター番号を反映する。
【0028】
同様に、振幅バースト域43では複数筋の磁性体48が非磁性体46中に配置される。個々の磁性体48は磁気ディスク14の半径線上で延びる。磁性体48は磁気ディスク14の半径方向に記録トラックのトラック幅すなわちトラックピッチTpの長さで仕切られる。規定数の磁性体48ごとにバースト群48aが構成される。ここでは、最も上流の第1領域49aではバースト群48a同士の間に磁気ディスク14の半径方向にトラックピッチTpの間隔が確保される。第1領域49aの下流で第1領域49aに隣接する第2領域49bでは、同様に、バースト群48a同士の間に磁気ディスク14の半径方向にトラックピッチTpの間隔が確保される。第2領域49bのバースト群48aは第1領域49aのバースト群48aに対して磁気ディスク14の半径方向に1トラックピッチTpのずれ量でずれて配置される。第2領域49bの下流で第2領域49bに隣接する第3領域49cでは、同様に、バースト群48a同士の間に磁気ディスク14の半径方向にトラックピッチTpの間隔が確保される。第3領域49cのバースト群48aは第2領域49bのバースト群48aに対して磁気ディスク14の半径方向に半トラックピッチTpのずれ量でずれて配置される。第3領域49cの下流で第3領域49cに隣接する第4領域49dでは、同様に、バースト群48a同士の間に磁気ディスク14の半径方向にトラックピッチTpの間隔が確保される。第4領域49dのバースト群48aは第3領域49cのバースト群48aに対して磁気ディスク14の半径方向に1トラックピッチTpのずれ量でずれて配置される。電磁変換素子が記録トラック33の中心線を辿ると、第1領域49aおよび第2領域49bで相次いで通過するバースト群48aから同一強度の磁界が検出される。同一レベルの再生信号が相前後して出力される。電磁変換素子が記録トラック33の中心線からずれると、第1領域49aおよび第2領域49bのうち一方で磁界の強度が増大する。第1領域49aおよび第2領域49bの他方で磁界の強度が減少する。相前後して出力される再生信号のレベルの間にずれ量に応じて差分が生じる。こういった差分に応じて電磁変換素子のトラッキング制御は実施されることができる。
【0029】
記録再生タイミングマーク44では複数筋の磁性体51が非磁性体46中に配置される。個々の磁性体51は例えば磁気ディスク14の半径線上で延びる。個々の磁性体51はN極またはS極に着磁される。1つの記録トラック33上では、こうした磁性体51の配列に応じて特定の磁化パターンが確立される。個々の磁性体51は電磁変換素子の書き込みヘッド素子から作用する磁界の大きさや磁性体51の材料特性に応じて大きさが決定される。1つの磁性体51では1方向に磁化は確立される。こういった記録再生タイミングマーク44の働きで電磁変換素子の書き込み動作や読み出し動作のタイミングが確保される。
【0030】
図6に示されるように、ボイスコイルモーター23にはモータードライバー回路54が接続される。モータードライバー回路54はボイスコイルモーター23に駆動電流を供給する。ボイスコイルモーター23は、供給される駆動電流に基づき指定の変位量で変位することができる。こうした変位量はヘッドスタックアセンブリ17の回転量(回転角)に従って設定される。
【0031】
電磁変換素子の書き込みヘッド素子55および読み出しヘッド素子56にはプリアンプ57が接続される。プリアンプ57にはリードライトチャネル回路58が接続される。リードライトチャネル回路58は決められた変復調方式に従って信号の変調や復調を実施する。電磁変換素子がサーボセクター領域28の範囲外すなわちデータ領域29を通過する際に変調後の信号すなわち書き込み信号はプリンアンプ57に供給される。プリアンプ57は書き込み信号を増幅する。増幅後の書き込み信号は書き込みヘッド素子55に供給される。同様に電磁変換素子がデータ領域29を通過する際に読み出しヘッド素子56から出力される読み出し信号はプリアンプ57で増幅された後にリードライトチャネル回路58に供給される。リードライトチャネル回路58は読み出し信号を復調する。
【0032】
モータードライバー回路54およびリードライトチャネル回路58にはハードディスクコントローラー(HDC)59が接続される。HDC59はモータードライバー回路54に制御信号を供給する。この制御信号に基づきモータードライバー回路54の出力すなわち駆動電流は制御される。HDC59は同様にリードライトチャネル回路58に変調前の書き込み信号を送り込むとともにリードライトチャネル回路58から復調後の読み出し信号を受け取る。変調前の書き込み信号は例えばホストコンピューターから送り込まれるデータに基づきHDC59で生成されればよい。そういったデータはコネクター61からHDC59に受け渡されればよい。コネクター61には、例えばホストコンピューターのメインボードから延びる制御信号用ケーブルや電源用ケーブル(ともに図示されず)が接続されればよい。同様に、HDC59は復調後の読み出し信号に基づきデータを再現する。再現されたデータはホストコンピューターに向けてコネクター61から出力されればよい。こうしたデータの送受信にあたってHDC59は例えばバッファメモリー62を利用することができる。バッファメモリー62は一時的にデータを保存する。バッファメモリー62には例えばSDRAM(シンクロナスダイナミックランダムアクセスメモリー)が用いられればよい。
【0033】
HDC59にはマイクロプロセッサーユニット(MPU)63が接続される。MPU63は、例えばROM(リードオンリーメモリー)64に記憶されるプログラムに基づき動作するCPU(中央演算処理装置)65を備える。プログラムには一実施形態に係るトラッキングサーボ制御プログラムが含まれる。トラッキングサーボ制御プログラムはいわゆるファームウェアとして提供されればよい。CPU65はその動作の実現にあたって例えばフラッシュROM66からデータを取得することができる。そういったプログラムやデータは一時的にRAM(ランダムアクセスメモリー)67に格納されることができる。ROM64やフラッシュROM66、RAM67はCPU65に直接に接続されればよい。
【0034】
データの書き込みにあたって電磁変換素子の書き込みヘッド素子55は磁気ディスク14のデータ領域29に向き合わせられる。このとき、電磁変換素子はトラッキングサーボ制御に基づき磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。トラッキングサーボ制御の詳細は後述される。同時に、記録再生タイミングマーク44に基づき書き込み動作のタイミングは磁気ディスク14の回転に合わせ込まれる。HDC59は例えばホストコンピューターから供給されるデータに基づき書き込み信号を生成する。書き込み信号はリードライトチャネル回路58に送り込まれる。リードライトチャネル回路58は予め決められた変調方式に従って書き込み信号に変調を加える。変調後の書き込み信号はプリアンプ57で増幅される。増幅後の書き込み信号は書き込みヘッド素子55に供給される。書き込みヘッド素子55は書き込み動作を実施する。磁気ディスク14の回転速度は例えばサーボ制御に基づき一定に維持される。
【0035】
同様に、データの読み出しにあたって電磁変換素子の読み出しヘッド素子56は磁気ディスク14のデータ領域29に向き合わせられる。電磁変換素子はトラッキングサーボ制御に基づき磁気ディスク14の半径方向に位置決めされる。記録再生タイミングマーク44に基づき読み出し動作のタイミングは磁気ディスク14の回転に合わせ込まれる。リードライトチャネル回路58は読み出しヘッド素子56にセンス電流を供給する。データ領域29の磁化の向きに応じてセンス電流で電圧変化は観察される。電圧変化はプリアンプ57で増幅される。プリアンプ57では結合キャパシタンスの働きで直流バイアスが印加される。その結果、N極およびS極のいずれか一方に基づき正電圧がプリアンプ57から出力される。同様に、N極およびS極の他方に基づき負電圧がプリアンプ57から出力される。すなわちプリアンプ57は正負に振れる電圧変化の再生信号を出力する。リードライトチャネル回路58は再生信号を復調する。HDC59は復調後の再生信号からデータを再現する。再現されたデータはコネクター61からホストコンピューターに向けて出力される。
【0036】
プリアンプ57およびリードライトチャネル回路58の間には整流回路71が接続される。整流回路71は、正負に振れる再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する。すなわち、正負の再生信号は例えば正の再生信号に絶対値化される。整流回路71はリードライトチャネル回路58に整流後の再生信号を供給する。
【0037】
整流回路71の前段にはオフセット補正回路72が接続される。オフセット補正回路72は整流回路71およびプリアンプ57の間に接続される増幅器73を備える。増幅器73にはプリアンプ57から再生信号が供給される。増幅器73には積分回路74が接続される。積分回路74は増幅器73にバイアス電圧を印加する。こうしたバイアス電圧の生成にあたって積分回路74の入力端子にはプリアンプ57から再生信号が供給される。積分回路74は再生信号から直流オフセットおよび低周波数のうねり成分を抽出する。増幅器73では、正負に振れる再生信号から直流オフセットが解消される。その結果、0(ゼロ)Vの基準電圧に対して対称性が高められる。整流回路71では、こうして修正された再生信号が絶対値化される。振幅のぶれは解消される。整流回路71の出力では良好な振幅が得られる。
【0038】
図7は整流回路71の一具体例を示す。この整流回路71は第1トランジスター回路75および第2トランジスター回路76を備える。第1および第2トランジスター回路75、76のコレクターには共通に電圧Vccが印加される。第1および第2トランジスター回路75、76のエミッターには共通に抵抗77が接続される。エミッターから出力電圧Voutが取り出される。第1トランジスター回路75のベースにはプリアンプ58から正極性出力信号Vin1が供給される。第2トランジスター回路76のベースにはプリアンプ58から逆極性出力信号Vin2が供給される。
【0039】
図7から明らかなように、正極性出力信号Vin1に正の電圧が供給されると、第1トランジスター回路75に信号が流通する。この場合には、逆極性出力信号Vin2に負の電圧が供給される。第2トランジスター回路76では電圧の流通は生じない。正極性出力信号Vin1の出力が出力電圧Voutに反映される。図8に示されるように、正極性出力信号Vin1に負の電圧が供給されると、第1トランジスター回路75では電圧の流通は生じない。逆極性出力信号Vin2に正の電圧が供給される。第2トランジスター回路76に信号が流通する。逆極性出力信号Vin2の出力が出力電圧Voutに反映される。前述のリードライトチャネル回路58は正極性信号および逆極性信号の供給を要求する。したがって、ここでは2系統の整流回路71が接続される。一方の整流回路71に対して他方の整流回路71の入力は入れ替えられる。
【0040】
いま、トラッキングサーボ制御が実施される場面を想定する。電磁変換素子の読み出しヘッド素子56は磁気ディスク14のサーボセクター領域28に向き合わせられる。磁気ディスク14の回転に応じて読み出しヘッド素子56は順番にプリアンブル域41、サーボマークアドレス域42、振幅バースト域43および記録再生タイミングマークを通過する。磁性体の磁化の向きに応じてセンス電流で電圧変化が観察される。電圧変化はプリアンプ57で増幅される。図9に示されるように、結合キャパシタンスの働きで0(ゼロ)Vの基準電圧から正負に振れる再生波形が出力される。この再生波形は増幅器に入力される。
【0041】
正負に振れる再生波形は同時に積分回路74に供給される。図10に示されるように、積分回路74は再生信号から直流オフセットおよび低周波数のうねり成分を抽出する。積分回路74は増幅器73にバイアス電圧を印加する。プリアンプ57から出力された再生波形からバイアス電圧は差し引かれる。その結果、正負に振れる再生波形から直流オフセットが差し引かれる。図11に示されるように、増幅器73は整流回路71に補正後の再生波形を供給する。補正後の再生波形では0Vの基準電圧に対して対称性が高められる。
【0042】
整流回路71は、図12に示されるように、正負に振れる再生波形を絶対値化する。再生波形は0Vの基準電圧に対して正の方向にのみ振れる。すなわち、片方向の再生波形が得られる。前述のように、補正後の再生波形では0Vの基準電圧に対して対称性が高められることから、片方向の再生波形では振幅のぶれは最大限に解消される。その後、片方向の再生波形はリードライトチャネル回路58に供給される。リードライトチャネル回路58は片方向の再生波形に基づき位置誤差信号を生成する。位置誤差信号に基づきHDC59はボイスコイルモーター23の駆動量を特定する。特定された駆動量に基づきHDC59はモータードライバー回路54に制御信号を出力する。モータードライバー回路54はボイスコイルモーター23に指定の駆動電流を供給する。こうして電磁変換素子は指定の記録トラック上に位置決めされる。
【0043】
図13に示されるように、整流回路71はプリアンプ57内に組み込まれてもよい。プリアンプ57は初段増幅回路81と後段のゲイン増幅回路82とを備える。初段増幅回路81およびゲイン増幅回路82の間にはハイパスフィルター83が挿入される。再生信号すなわち初段増幅回路81の出力に直流成分が含まれる場合に、ハイパスフィルター83はその直流成分を除去する。整流回路71は初段増幅回路81の出力およびハイパスフィルター83の間に並列に挿入される。初段増幅回路81およびハイパスフィルター83の間では、初段増幅回路81の出力から直接にハイパスフィルター83に接続される第1経路84と、整流回路71を経て初段増幅回路81の出力からハイパスフィルター83に流通する第2経路85とがスイッチング素子86で切り替えられる。データ領域29の再生信号は第1経路84を辿る。サーボセクター領域28の再生信号は第2経路85を辿る。整流回路71は、前述と同様に、正負に振れる再生信号に基づき、0Vの基準電圧に対して正の方向にのみ振れる片方向の再生信号を生成する。スイッチングはサーボゲート信号に連動する。正負に振れる再生信号がハイパスフィルター83を通過すると、直流成分の除去にあたって再生信号に傾き(sag)が生じる。こういった傾きは再生信号の対称性を悪化させる。ハイパスフィルター83の通過に先立って再生信号が絶対値化されると、再生波形の歪みは低減される。エラーレートは低下する。こういったプリアンプ57は例えば1半導体素子にワンチップ化されることができる。
【0044】
その他、図14に示されるように、プリアンプ57内で整流回路71の前段に初段のハイパスフィルター87が挿入されてもよい。このとき、初段のハイパスフィルター87では遮断周波数は低く設定される。遮断周波数は例えば100[kHz]程度に設定される。減衰率は例えば−10[dB]程度に設定される。後段のハイパスフィルター83では遮断周波数はハイパスフィルター87よりも高く設定される。ここでは、例えば後段のハイパスフィルター83の遮断周波数は例えば1[MHz]程度に設定される。減衰率は−20[dB]程度に設定される。初段のハイパスフィルター87は初段増幅回路81の出力から低周波数のうねり成分を除去する。その結果、整流回路71では良好に再生信号の絶対値化が実現されることができる。
【0045】
次に磁気ディスク14の製造方法を簡単に説明する。まず、基板34が用意される。基板34はスパッタリング装置に装着される。スパッタリング装置のチャンバー内には真空環境が確立される。チャンバー内には例えばFeCoTaターゲットがセットされる。チャンバー内で基板34の表面には裏打ち層35が形成される。裏打ち層35の表面には非磁性中間層36が形成される。形成にあたってスパッタリング装置が用いられる。スパッタリング装置には、同様に、タンタルターゲットやルテニウムターゲットがセットされる。
【0046】
その後、図15に示されるように、非磁性中間層36の表面には磁性膜91のべた膜が形成される。磁性膜91は例えばコバルト鉄合金から形成される。積層にあたって例えばスパッタリング装置が利用される。磁性膜91の表面にはレジストが塗布される。レジスト膜92が一面に形成される。
【0047】
その後、図16に示されるように、ナノインプリントに基づきレジスト膜92にパターンが刻まれる。レジスト膜92には型93が押し付けられる。レジスト膜92は前述の磁性ドット31および磁性体45、47、48、51に相当する領域を覆い隠す。こういったレジスト膜92の形成にあたって例えば前述の型押し後にレジスト膜92は露光される。図17に示されるように、露光後にエッチング処理が施される。磁性膜91から磁性ドット31および磁性体45、47、48、51は削り出される。すなわち、非磁性中間層36上に残存する磁性膜91で磁性ドット31および磁性体45、47、48、51は形成される。
【0048】
磁性ドット31および磁性体45、47、48、51の確立後、充填材が塗布される。充填材には二酸化ケイ素が含まれる。塗布にあたって例えばスピンコート法が用いられる。充填材の硬化後、平坦化研磨処理が施される。その結果、図18に示されるように、磁性ドット31および磁性体45、47、48、51の間の空間は充填材で埋められる。充填材は非磁性体32、46を構成する。こうして記録層37の表面は平坦化される。その後、記録層37の表面には保護膜37が形成される。形成にあたって例えばCVD法(化学的気相蒸着法)が用いられる。保護膜37の表面には潤滑膜38が塗布される。塗布にあたっていわゆるディップ法が用いられる。ディップ法では基板34は例えばパーフルオロポリエーテルを含む溶液に浸される。
【0049】
その他、磁性ドット31および磁性体45、47、48、51の形成にあたって例えばイオン注入が利用されてもよい。前述の磁性膜91にイオンが注入されると、磁性膜91は軟磁性体に変質する。イオンは磁性膜91の保磁力を無効化する。その結果、イオン注入に基づき非磁性体32は形成されることができる。こういったイオン注入によれば、記録層37の表面の平坦度は高められることができる。
【0050】
磁気ディスク14には前述のサーボセクター領域28が構築される。構築にあたって磁気ディスク14の記録層37は高周波の書き込み信号に曝される。磁気ディスク14は、いわゆるサーボトラックライター(STW)に搭載されてもよくHDD11に組み込まれてもよい。磁気ディスク14には電磁変換素子の書き込みヘッド素子55が向き合わせられる。磁気ディスク14の回転に同期して書き込みヘッド素子55には高周波信号が供給される。高周波の書き込み信号に基づき所定の周期で書き込みヘッド素子は交互にN極およびS極の書き込み磁界を作用させる。その結果、図19に示されるように、1つの記録トラックにN極およびS極がランダムに配列される。ビットパターンドメディアに用いられる磁性膜では磁区同士の間で強い交換結合力が確立されることから、1つの磁性体45、47、48、51では全体で必ず単一方向の磁化が確立される。たとえ磁性体45、47、48、51の一部に書き込み磁界が作用しても、磁性体45、47、48、51全体で磁化の反転が引き起こされる。
【0051】
ここでは、サーボセクター領域28の磁化にあたって高周波の書き込み信号が利用される。ランダムにN極およびS極が確立される。隣接するN極およびS極の磁性体45、47、48、51では磁化は安定化する。こうした磁性体45、47、48、51では磁化反転は回避されることができる。特に、磁性体45、47、48、51同士の間隔と高周波の書き込み信号の半周期とが一致すると、隣接するN極およびS極の組み合わせは確実に増えることができる。磁化反転の確率は著しく減少する。
【0052】
従来のビットパターンドメディアでは全ての磁性体45、47、48、51は一方向に磁化される。サーボセクター領域28では一方の磁極のみが非磁性体46中に存在する。したがって、トラッキングサーボ制御にあたってHDC59には片方向の再生信号のみが供給される。前述のように整流回路71の働きで片方向の再生信号が生成されれば、HDC71の信号処理は従来のそれを踏襲することができる。トラッキングサーボ制御にあたってHDC71には従来のHDCの処理がそのまま組み込まれることができる。しかも、前述のトラッキングサーボ制御は従来のビットパターンドメディアに利用されることができる。たとえ熱揺らぎや経時変化で磁化反転が引き起こされても、HDC59には片方向の再生信号のみが供給される。
【0053】
(付記1) N極またはS極に着磁された磁性体を少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列するサーボパターンを有する磁気記憶媒体と、前記磁性体から漏れ出る磁界に基づき再生信号を出力する電磁変換素子と、磁極に応じて正負に振れる前記再生信号を受け取り、その再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する整流回路と、前記整流回路で生成される再生信号に基づき前記磁気記憶媒体上の1記録トラックに前記電磁変換素子を位置決めする制御回路とを備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【0054】
(付記2) 付記1に記載の磁気記憶装置において、前記整流回路および電磁変換素子の間に接続されて、正負に振れる前記再生信号と基準電圧との直流オフセットを補正するオフセット補正回路をさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【0055】
(付記3) 付記1に記載の磁気記憶装置において、前記再生信号の復調に先立って前記再生信号を受信し、前記整流回路の後段に接続されるハイパスフィルターをさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【0056】
(付記4) 付記3に記載の磁気記憶装置において、前記整流回路の前段に接続されて、前記ハイパスフィルターの遮断周波数よりも低い遮断周波数を有する初段のハイパスフィルターをさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【0057】
(付記5) 磁気記憶媒体のサーボパターン内で、少なくとも記録トラックの線方向に非磁性体中に離散的に配列される磁性体を高周波の書き込み信号で着磁することを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【0058】
(付記6) 付記5に記載の磁気記憶媒体の製造方法において、前記磁性体同士の間隔は前記高周波の書き込み信号の半周期に合わせられることを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】磁気記憶媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】磁気ディスクの表面の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図3】磁気ディスクの表面を概略的に示す拡大斜視図である。
【図4】図3の4−4線に沿った垂直断面図である。
【図5】一具体例に係るサーボセクター領域の構造を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図6】トラッキングサーボの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図7】整流回路の一具体例を示す回路図である。
【図8】整流回路の回路図である。
【図9】0(ゼロ)Vの基準電圧から正負に振れる再生波形を概略的に示す波形図である。
【図10】再生波形から抽出される直流オフセットおよび低周波数のうねり成分を概略的に示す波形図である。
【図11】直流オフセットおよびうねり成分の補正後であって0Vの基準電圧から正負に振れる再生波形を概略的に示す波形図である。
【図12】絶対化処理後の片方向の再生波形を概略的に示す波形図である。
【図13】整流回路を含むプリアンプの一具体例を示す回路図である。
【図14】整流回路を含むプリアンプの他の具体例を示す回路図である。
【図15】磁気ディスクの製造過程で、非磁性中間層の表面に積層される磁性膜を概略的に示す磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図16】磁気ディスクの製造過程で、磁性膜の表面に形成されるレジスト膜を概略的に示す磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図17】磁気ディスクの製造過程で、パターン化された磁性膜を概略的に示す磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図18】磁気ディスクの製造過程で、平坦化された記録層を概略的に示す磁気ディスクの拡大部分断面図である。
【図19】高周波信号の書き込み後にサーボセクター領域から読み出される再生信号の一具体例を示す波形図である。
【符号の説明】
【0060】
11 磁気記憶装置、33 記録トラック、41 サーボパターンを構成するプリアンブル域、42 サーボパターンを構成するサーボマークアドレス域、43 サーボパターンを構成する振幅バースト域、44 サーボパターンを構成する記録再生タイミングマーク、45 磁性体、46 非磁性体、47 磁性体、48 磁性体、51 磁性体、56 電磁変換素子の読み出しヘッド素子、59 制御回路としてのハードディスクコントローラー(HDC)、71 整流回路、72 オフセット補正回路、83 後段のハイパスフィルター、87 初段のハイパスフィルター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N極またはS極に着磁された磁性体を少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列するサーボパターンを有する磁気記憶媒体と、
前記磁性体から漏れ出る磁界に基づき再生信号を出力する電磁変換素子と、
磁極に応じて正負に振れる前記再生信号を受け取り、その再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する整流回路と、
前記整流回路で生成される再生信号に基づき前記磁気記憶媒体上の1記録トラックに前記電磁変換素子を位置決めする制御回路と
を備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記憶装置において、前記整流回路および電磁変換素子の間に接続されて、正負に振れる前記再生信号と基準電圧との直流オフセットを補正するオフセット補正回路をさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気記憶装置において、前記再生信号の復調に先立って前記再生信号を受信し、前記整流回路の後段に接続されるハイパスフィルターをさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項4】
請求項3に記載の磁気記憶装置において、前記整流回路の前段に接続されて、前記ハイパスフィルターの遮断周波数よりも低い遮断周波数を有する初段のハイパスフィルターをさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項5】
磁気記憶媒体のサーボパターン内で、少なくとも記録トラックの線方向に非磁性体中に離散的に配列される磁性体を高周波の書き込み信号で着磁することを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気記憶媒体の製造方法において、前記磁性体同士の間隔は前記高周波の書き込み信号の半周期に合わせられることを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【請求項1】
N極またはS極に着磁された磁性体を少なくとも記録トラックの線方向に離散的に非磁性体中に配列するサーボパターンを有する磁気記憶媒体と、
前記磁性体から漏れ出る磁界に基づき再生信号を出力する電磁変換素子と、
磁極に応じて正負に振れる前記再生信号を受け取り、その再生信号に基づき、正負の一方に振れる再生信号を生成する整流回路と、
前記整流回路で生成される再生信号に基づき前記磁気記憶媒体上の1記録トラックに前記電磁変換素子を位置決めする制御回路と
を備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記憶装置において、前記整流回路および電磁変換素子の間に接続されて、正負に振れる前記再生信号と基準電圧との直流オフセットを補正するオフセット補正回路をさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気記憶装置において、前記再生信号の復調に先立って前記再生信号を受信し、前記整流回路の後段に接続されるハイパスフィルターをさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項4】
請求項3に記載の磁気記憶装置において、前記整流回路の前段に接続されて、前記ハイパスフィルターの遮断周波数よりも低い遮断周波数を有する初段のハイパスフィルターをさらに備えることを特徴とする磁気記憶装置。
【請求項5】
磁気記憶媒体のサーボパターン内で、少なくとも記録トラックの線方向に非磁性体中に離散的に配列される磁性体を高周波の書き込み信号で着磁することを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気記憶媒体の製造方法において、前記磁性体同士の間隔は前記高周波の書き込み信号の半周期に合わせられることを特徴とする磁気記憶媒体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−118111(P2010−118111A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290353(P2008−290353)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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