説明

磁気記録メディア用αアルミナ粉末

【課題】 バインダー樹脂に容易に分散されうる磁気記録メディア用αアルミナ粉末を提供する。
【解決手段】 本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末は、アルミニウム塩が種晶の存在下に焼成されてなることを特徴とする。600℃以上で焼成する。アルミニウム塩はアルミニウム無機塩、具体的には硝酸アルミニウムである。種晶はαアルミナ、ダイアスポア、酸化鉄、酸化クロムまたは酸化チタンであり、そのBET比表面積は12m2/g以上であり、その使用量は金属成分の酸化物換算で、アルミニウム塩および種晶の金属成分の酸化物換算の合計使用量100質量部あたり1質量部以上である。このαアルミナ粉末をバインダー樹脂に分散させて磁気記録メディア用コーティング組成物を得る。磁気記録メディア用コーティング組成物を支持基材上に塗布して形成された磁気記録層を支持基材上に有する磁気記録メディアは、表面が平滑である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録メディア用αアルミナ粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープなどの磁気記録メディアは、信号を磁気記録するための磁気記録層が支持基材上に設けられた記録メディアであって、磁気テープなどとして広く用いられている。かかる磁気記録メディアの中でも高記録密度のものとして、磁気記録層を強磁性粉末を含まない非磁性層と、強磁性粉末を含む磁性層とを含む2層以上の多層構成とし、これら非磁性層と磁性層とがこの順で支持基材上に形成された重層磁気記録メディアも広く用いられており、これら非磁性層および磁性層にαアルミナ粉末を分散したものも知られている。
【0003】
かかる非磁性層および磁性層は、例えばバインダー樹脂にαアルミナ粉末および強磁性粉末を加え、攪拌して分散させることで、バインダー樹脂中にαアルミナ粉末が分散された磁気記録メディア用コーティング組成物を得、これを支持基材上に塗布する工程を経て形成されている〔特許文献1:特開2003−141714号公報〕。αアルミナ粉末は表面平滑性に優れた磁気記録層が容易に形成される点、より高密度で記録しうる磁性層を与える点などから、BET比表面積が例えば10m2/g以上であるような小粒子径であることが好ましく、また凝集が少なく、できるだけ小さい粒子径でバインダー樹脂中に分散されうることが好ましい。
【0004】
しかし、従来から知られている小粒子径で高BET比表面積のαアルミナ粉末は凝集し易いため、バインダー樹脂と攪拌しても凝集したままとなる傾向にあり、十分に分散させることが困難であるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−141714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明者は、バインダー樹脂に容易に分散されうる磁気記録メディア用αアルミナ粉末を開発するべく鋭意検討した結果、アルミニウム塩を種晶の存在下に焼成して得られるαアルミナ粉末は、凝集しにくく、バインダー樹脂中に容易に分散し得ることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、アルミニウム塩が種晶の存在下に焼成されてなることを特徴とする磁気記録メディア用αアルミナ粉末を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末は、容易にバインダー樹脂に分散されるので、このαアルミナ粉末がバインダー樹脂に分散された磁気記録メディア用コーティング組成物は、より高密度で記録し得る磁気記録層や、表面平滑性に優れた磁気記録層を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末は、主結晶相がαアルミナを示すアルミナの粉末であって、例えばα相以外の相、例えばθ相を実質的に含まないものである。アルミナ焼成物の結晶相は、焼成物のX線回折(XRD)スペクトルから求めることができる。
【0010】
本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末は、アルミニウム塩が種晶の存在下に焼成されてなるものである。アルミニウム塩は、アルミニウムと塩基との塩であって、アルミニウムと無機塩基とのアルミニウム無機塩であってもよいし、アルミニウムと有機塩基とのアルミニウム有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩としては、例えば硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウム、炭酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム等が挙げられる。また、アルミニウム有機塩としては、例えば蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、アンモニウム明礬、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0011】
アルミニウム塩は、アルミニウム以外の金属元素を実質的に含まないものであること、例えば珪素(Si)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)の元素含有量が各々50ppm以下であることが好ましく、さらにはこれらの合計量が100ppm以下であることが好ましい。
【0012】
種晶としては、例えばαアルミナ、ダイアスポア、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタンなどの金属酸化物が挙げられ、かかる種晶はそれぞれ単独で、または2種以上が同時に用いられる。かかる種晶の粒子径は小さいことが好ましく通常は0.01μm以上0.5μm以下程度のものが用いられ、そのBET比表面積は好ましくは12m2/g以上、150m2/g以下程度、さらに好ましくは15m2/g以上である。
【0013】
種晶の使用量は、高いα化率の微粒αアルミナが容易に得られる点で、金属成分の酸化物換算で、アルミニウム塩および種晶の合計量100質量部あたり、1質量部以上、さらには2質量部以上、特には4質量部以上であることが好ましい。また種晶の使用量が50質量部を超えてもよいが、その使用量に見合ってα化率が高くならないので、通常は50質量部以下、好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下程度である。
【0014】
アルミニウム塩を種晶の存在下に焼成するには、例えばアルミニウム塩を種晶と混合し、次いで焼成すればよい。アルミニウム塩を種晶と混合するには、例えばアルミニウム塩を溶媒と混合して溶液またはスラリーとし、種晶を加えた後、溶媒を留去すればよい。溶媒を留去することで、種晶が均一に分散された状態で、溶媒中のアルミニウム塩が析出する。種晶が均一に分散した状態で析出したアルミニウム塩を焼成することで、目的の微粒αアルミナを得ることができる。種晶は、粉末状のまま加えてもよいし、溶媒に分散させた状態で加えてもよい。
【0015】
また、アルミニウム塩に種晶を加え撹拌して混合してもよい。混合後の混合物を焼成することで、目的の微粒αアルミナを得ることができる。混合には、例えばバーティカルグラニュエーター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いることができる。種晶は粉末状態のまま加えてもよいし、溶媒に分散させた状態で加えてもよい。
【0016】
焼成は通常600℃以上、好ましくは700℃以上、通常は1000℃以下、好ましくは950℃以下、更に好ましくは890℃以下で行なわれる。1000℃を超えると、BET比表面積が大きなものとならない傾向にある。また600℃未満では、α化率が低くなる傾向にある。
【0017】
焼成は、大気中で行なわれてもよいし、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で行なわれてもよい。また雰囲気中の水蒸気分圧を低く維持しながら焼成してもよい。
【0018】
焼成は、例えば管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行なうことができる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また静置式で行なってもよいし、流動式で行ってもよい。
【0019】
焼成時間はアルミニウム塩がα化して高α化率の微粒αアルミナが得られるに十分な時間であればよく、用いるアルミニウム塩の種類、量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気によって異なるが、例えば10分以上24時間以下程度である。
【0020】
かくして得られる微粒αアルミナは、粒子径が0.05μm以上1μm以下程度であり、高いα化率であると共に大きなBET比表面積を示し、例えばα化率90%以上、好ましくは95%以上で、BET比表面積は8m2/g以上、好ましくは13m2/g以上、更に好ましくは15m2/g以上であり、通常は30m2/g以下程度である。
【0021】
得られた微粒αアルミナは、粉砕されてもよい。微粒αアルミナを粉砕するには、例えば振動ミル、ボールミル、ジェットミルなどをの媒体粉砕機を用いることができる。また、得られた微粒αアルミナは分級してもよい。
【0022】
本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末をバインダー樹脂に分散させることで、バインダー樹脂中にαアルミナ粉末が分散された磁気記録メディア用コーティング組成物を得ることができる。本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末は、バインダー樹脂中に容易に分散させることができるので、比較的短時間の攪拌で磁気記録メディア用コーティング組成物を得ることができる。
【0023】
バインダー樹脂としては、通常の磁気記録メディア用コーティング組成物と同様に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂などを用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテルなどを単量体単位とする重合体や、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂および反応型樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂などが挙げられ、好ましくは塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0024】
磁気記録メディア用αアルミナ粉末の使用量は、バインダー樹脂に対して通常は5質量倍〜20質量倍程度である。
【0025】
磁気記録メディアコーティング用組成物は通常、溶剤で希釈された状態で用いられる。溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などの有機溶剤が挙げられる。かかる溶剤の使用量は、バインダー樹脂に対して通常10質量倍〜50質量倍程度である。
【0026】
磁気記録メディア用コーティング組成物は、磁性粉末を含有していなくてもよいし、含有していてもよい。磁性粉末を含有していない磁気記録メディア用コーティング組成物を支持体上に塗布することで、磁性粉末を含有しない非磁性層を形成することができる。また、磁性粉末を含有する磁気記録メディア用コーティング組成物を支持体または非磁性層の上に塗布することで、磁性層を形成することができる。磁性粉末は、金属酸化物の粉末であってもよいが、強磁性金属の粉末、例えばαFe(α相の金属鉄)の粉末であることが好ましい。
【0027】
磁気記録メディア用コーティング組成物は、潤滑剤、帯電防止剤、界面活性剤などの添加剤を含有していてもよい。潤滑剤としては、例えばカプリン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸などの脂肪酸や、これらのブチルエステル、オクチルエステル、イソオクチルエステル、アミルエステルなどのような脂肪酸エステルなどが挙げられる。帯電防止剤としては、例えばカーボンブラックが挙げられる。また界面活性剤としては、アルキレンオキサイド系界面活性剤、グリセリン系界面活性剤、グリシドール系界面活性剤、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加体などのノニオン系界面活性剤、環状アミン、エステルアミン、四級アンモニウム塩、ヒダントイン誘導体、ホスホニウム塩、スルホニウム塩などのアニオン系界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類などの両性界面活性剤などが挙げられ、これらの界面活性剤は、帯電防止剤としても機能する。
【0028】
磁気記録メディア用コーティング組成物は、例えば有機溶剤にバインダー樹脂および本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末を混合し、攪拌する方法で製造することができる。攪拌するには、例えば有機溶剤、バインダー樹脂およびαアルミナ粉末の混合物に、分散媒体として不活性の球状物を入れ、攪拌する方法で攪拌すればよい。分散媒体は、攪拌完了後には取り除かれるものであり、例えば粒子径0.05〜5mm程度のガラスビーズなどが用いられる。
【0029】
本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末は、凝集させることなく容易にバインダー樹脂中に分散させることができる。磁性粉末や添加剤は、αアルミナ粉末やバインダー樹脂と共に有機溶剤に加えてもよいし、有機溶剤中でαアルミナ粉末およびバインダー樹脂を攪拌した後に加えてもよい。
【0030】
かくして本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末がバインダー樹脂に分散された磁気記録メディア用コーティング組成物が得られるが、かかる組成物を支持基材上に塗布することで、この組成物から形成された磁気記録層を支持基材上に有する磁気記録メディアを製造することができる。
【0031】
支持基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホンなどからなるフィルムが用いられる。
【0032】
支持基材上に磁性粉末を含むコーティング組成物を直接塗布して磁性層を形成してもよいし、支持基材上に先ず磁性粉末を含まないコーティング組成物を塗布して非磁性層を形成した後に、磁性粉末を含むコーティング組成物を塗布して磁性層を形成してもよい。
【0033】
組成物を塗布するには、例えばグラビア塗布法、ブレード塗布法などの通常の方法で塗布すればよい。塗布後、溶剤を揮発させることで、磁気記録層を形成することができる。
【0034】
本発明の磁気記録メディア用αアルミナ粉末は、バインダー樹脂に短時間で分散させることができるので、高い密度で情報を記録するための磁気記録メディアに好適に使用される。かかる高記録密度の磁気記録メディアとしては、例えばDVCPRO、HDCAM、βカム、デジタルβカムなどの放送局用磁気テープ、DDS−2、DDS−3、DDS−4、D8、DLT、S−DLT、LTO、DTF、SD1、IBM3590などのコンピューターのデータバックアップに用いられるデータストレージ用磁気テープなどのような重層磁気記録メディアなどが挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0036】
なお、各実施例で得た微粒αアルミナおよび磁気記録メディアは以下の方法で評価した。
(1)BET比表面積(m2/g)
窒素吸着法により求めた。
(2)結晶相
試料をX線回折装置(商品名「Rint−2100」、理学電機製)により分析し、得られたXRDスペクトルのピークデータから結晶相を同定し、そのうち相対ピーク強度の最も高いものを主結晶相とした。BET比表面積は窒素吸着法により求めた。
(3)α化率(%)
粉末X線回折装置を用いて得た微粒αアルミナの回折スペクトルから、2θ=25.6°の位置に現れるアルミナα相(012面)のピーク高さ(I25.6)と、2θ=46°の位置に現れるγ相、η相、χ相、κ相、
θ相およびδ相のピーク高さ(I46)とから、式(1)
α化率= I25.6 / (I25.6 + I46 )×100(%)・・・(1)
により算出した。
(4)中心粒子径
レーザー回折散乱式流度分布測定装置〔日機装(株)製、「マイクロトラックHR
A」〕にて測定した。
(5)平滑度
JIS Z8741に従って入射角45°、反射角45°で光沢値として求めた
。光沢値が大きいほど、αアルミナ粉末が凝集することなく分散していて、表面が平滑であることを示す。
【0037】
実施例1
〔種晶スラリーの調製〕
BET比表面積19.1m2/gのαアルミナ粒子(粒子径は約0.1μm)37.5gを硝酸アルミニウム水溶液(pH=2)150gに添加し、1Lのポリ容器にφ2mmのアルミナビーズ700gとともに充填し、24時間分散処理をしたのち、濾過操作によりアルミナビーズを除去して、種晶スラリーを得た。
【0038】
〔種晶粒子とアルミニウム塩の混合物の製造〕
硝酸アルミニウム水和物〔Al(NO3)3・9H2O〕(関西触媒化学製、特級、粉末状)300g(0.8モル)を上記で得た種晶スラリー87.5g(αアルミナ粒子17.5gを含む)を添加し、80℃で乾燥させることで固形物を得た。この固形物には、金属成分の酸化物換算で100質量部当たり30質量部の種晶粒子が含まれている。
【0039】
〔磁気記録メディア用αアルミナ粉末の製造〕
塩分解後の混合物をアルミナ製るつぼに入れ、箱型電気炉を用いて840℃で3時間焼成を行い、BET比表面積23.2m2/gの微粒αアルミナを得た。
【0040】
〔磁気記録メディア用コーティング組成物の製造〕
上記で得たαアルミナ粉末30質量部、塩化ビニル樹脂〔日本ゼオン(株)製、「MR110」〕2.4質量部、メチルエチルケトン40.6質量部およびシクロヘキサノン27質量部をバッチ式サンドグラインダーに投入し、直径2mmのガラスビーズを分散媒体として、回転数2000rpmで攪拌して分散させた。攪拌開始から2時間経過後、ガラスビーズが含まれないように内容物を取り出して、磁気記録メディア用コーティング組成物とした。この組成物に含まれる粒状物〔αアルミナ粉末の凝集物〕の中心粒子径は0.26μmであった。
【0041】
〔コーティング〕
上記で得た磁気記録メディア用コーティング組成物を厚さ14μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にドクターブレード(厚さ45μm)を用いて塗布し、乾燥して塗膜を形成した。この塗膜の光沢値は92%であった。
【0042】
実施例2
〔磁気記録メディア用コーティング組成物の製造〕
攪拌時間を4時間とする以外は実施例1と同様に操作して、磁気記録メディア用コーティング組成物を得た。この組成物に含まれる粒状物の中心粒子径は0.23μmであった。
【0043】
〔コーティング〕
実施例1で得た組成物に代えて上記で得た組成物を用いる以外は実施例1と同様に操作して塗膜を形成したところ、この塗膜の光沢値は101%であった。
【0044】
比較例1
〔磁気記録メディア用コーティング組成物の製造〕
実施例1で得たαアルミナ粉末に代えて、市販のαアルミナ粉末〔住友化学工業(株)製、「HIT−80」、BET比表面積20m2/g、焼結体の相対密度は56%〕30質量部を用いる以外は実施例1と同様に操作して4時間攪拌して、磁気記録メディア用コーティング組成物を得た。この組成物に含まれる粒状物の中心粒子径は0.6μmであった。
【0045】
〔コーティング〕
実施例1で得た磁気記録メディア用コーティング組成物に代えて上記で得た組成物を用いる以外は、実施例1と同様に操作して形成された塗膜の光沢値は13%であった。
【0046】
比較例2
〔磁気記録メディア用コーティング組成物の製造〕
実施例1で得た微細アルミナ粉末に代えて、市販のαアルミナ粉末〔住友化学工業社製、「HIT−50」、BET比表面積8.5m2/g、焼結体の相対密度は61%〕30質量部を用いる以外は実施例1と同様に操作して4時間攪拌して、磁気記録メディア用コーティング組成物を得た。この組成物に含まれる粒状物の中心粒子径は0.36μmであった。
【0047】
〔コーティング〕
実施例1で得た磁気記録メディア用コーティング組成物に代えて上記で得た組成物を用いる以外は、実施例1と同様に操作して形成された塗膜の光沢値は33%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム塩が種晶の存在下に焼成されてなることを特徴とする磁気記録メディア用αアルミナ粉末。
【請求項2】
アルミニウム塩を種晶の存在下に焼成することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録メディア用αアルミナ粉末の製造方法。
【請求項3】
アルミニウム塩がアルミニウム無機塩である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
アルミニウム無機塩が硝酸アルミニウムである請求項4に記載の製造方法。
【請求項5】
600℃以上で焼成する請求項2〜請求項4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
種晶がαアルミナ、ダイアスポア、酸化鉄、酸化クロムまたは酸化チタンである請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
種晶のBET比表面積が12m2/g以上である請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
種晶の使用量が、金属成分の酸化物換算で、アルミニウム塩および種晶の合計使用量100質量部あたり1質量部以上である請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の磁気記録メディア用αアルミナ粉末をバインダー樹脂に分散させることを特徴とする磁気記録メディア用コーティング組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の磁気記録メディア用αアルミナ粉末がバインダー樹脂に分散されてなる磁気記録メディア用コーティング組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気記録メディア用コーティング組成物を支持基材上に塗布して磁気記録層を形成することを特徴とする磁気記録メディアの製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の磁気記録メディア用コーティング組成物から形成された磁気記録層を支持基材上に有する磁気記録メディア。

【公開番号】特開2006−65917(P2006−65917A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244757(P2004−244757)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】