磁気記録再生装置、磁気記録媒体及びその記録方法
【課題】微細なトラック要素及びトラック分離要素を有し記録密度が高い磁気記録媒体を備え記録再生特性が良好な磁気記録再生装置、これに用いられる磁気記録媒体及びその記録方法を提供する。
【解決手段】2つのトラック分離要素22の間に配置された一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの第1トラック要素26Aに磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象のトラック要素の中心に対して記録対象のトラック要素と対をなすトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行する。
【解決手段】2つのトラック分離要素22の間に配置された一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの第1トラック要素26Aに磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象のトラック要素の中心に対して記録対象のトラック要素と対をなすトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック要素及びトラック分離要素を備える磁気記録媒体を有する磁気記録再生装置、これに用いられる磁気記録媒体及びその記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクドライブ等の磁気記録再生装置は、磁気記録媒体の記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、磁気ヘッドの加工の微細化等の改良により著しい磁気記録媒体の面記録密度の向上が図られており、今後も一層の面記録密度の向上が期待されているが、磁気ヘッドの加工限界、磁気ヘッドの記録磁界の広がりに起因する記録対象のトラックに隣り合うトラックへの誤った情報の記録、再生時のクロストークなどの問題が顕在化し、従来の改良手法による磁気記録媒体の面記録密度の向上は限界にきている。
【0003】
これに対し、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、トラック要素及びトラック分離要素をデータ領域に備えるディスクリートトラックメディアやパターンドメディアが提案されている。尚、ディスクリートトラックメディアのトラック要素はトラックの形状で形成されるのに対し、パターンドメディアのトラック要素は記録ビットの形状で形成される。例えばトラック要素の材料である連続膜の磁性層の上に樹脂層を成膜し、樹脂層をインプリントやリソグラフィによりトラックや記録ビットに相当する凹凸パターンに加工し、凹凸パターンの樹脂層に基づいて磁性層をエッチングすることによりトラックや記録ビットの形状のトラック要素を形成することができる。尚、磁性層と樹脂層との間に1層又は2層以上のマスク層を成膜し、樹脂層に基づいてマスク層をエッチングし、マスク層に基づいて磁性層をエッチングすることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。又、トラック要素が形成された被加工体の上に非磁性材料等の充填材を成膜してトラック要素の間の溝を充填し、トラック要素の上の余剰の充填材をドライエッチングやCMPで除去して平坦化することによりトラック要素の間にトラック分離要素を形成できる。尚、良好な磁気ヘッドの浮上特性が得られれば、トラック要素の間の溝を充填せずに、トラック分離要素が溝(空隙)である構成としてもよい。又、連続膜の磁性層におけるトラック要素又はトラック分離要素に相当する部分にイオン注入処理や反応ガスによる処理を施して非強磁性体領域のトラック分離要素と強磁性体領域のトラック要素とを形成することも提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
このようにトラック要素の間にトラック分離要素を形成してトラック要素同士を磁気的に分離することにより面記録密度を向上させることが期待されている。
【0005】
しかしながら、面記録密度を向上させるためにはトラック要素の幅やその間のトラック分離要素の幅を小さくする必要があり、要求される面記録密度の向上に伴って幅の小さなトラック分離要素を形成して幅の小さなトラック要素同士を分離することが困難になっていくという問題があった。
【0006】
これに対し、記録層を構成する1つの磁性体の凸部に2列のトラック要素を備えるようにした磁気記録媒体が知られている(例えば、特許文献4参照)。このように1つの磁性体の凸部に2列のトラック要素を備えることによりトラックピッチを狭めて面記録密度の向上を図ることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−97419号公報
【特許文献2】特開2002−288813号公報
【特許文献3】特開2002−359138号公報
【特許文献4】特開2009−20929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置は1つの磁性体の凸部に配置された2列のトラック要素の間の誤った情報の記録や再生時のクロストークを抑制することが困難な場合があった。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、微細なトラック要素及びトラック分離要素を有し記録密度が高い磁気記録媒体を備え記録再生特性が良好な磁気記録再生装置、これに用いられる磁気記録媒体及びその記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板、トラックに対応するパターンで形成されトラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え基板の上に形成された記録層、及びトラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、トラックの幅方向に隣り合う2つのトラック分離要素の間に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が配置され、第1トラック要素は隣り合う2つのトラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体と、磁気記録媒体に対して磁気信号の記録を行うための記録ヘッド及び磁気記録媒体に記録された磁気信号を再生するための再生ヘッドを備える磁気ヘッドと、磁気ヘッドを制御するための制御装置と、を含み、制御装置は、第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び第1トラック要素と対をなす第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッドの幅方向の中心が記録対象のトラック要素の幅方向の中心に対して記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッドの幅方向の位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッドを制御する磁気記録再生装置により上記目的を達成したものである。
【0011】
又、本発明は、基板、トラックに対応するパターンで形成されトラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え基板の上に形成された記録層、及びトラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、トラックの幅方向に隣り合う2つのトラック分離要素の間に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が配置され、第1トラック要素は隣り合う2つのトラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体における第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び第1トラック要素と対をなす第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッドの幅方向の中心が記録対象のトラック要素の幅方向の中心に対して記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッドの幅方向の位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行する磁気記録媒体への記録方法より上記目的を達成したものである。
【0012】
第1トラック要素及び第2トラック要素の間にはトラック分離要素が形成されないので、トラックの幅方向のトラック要素の設置密度を高めることができる。
【0013】
尚、第1トラック要素と第2トラック要素とが接していたり、或いはこれらの間のスペースの幅が小さく、例えば第2トラック要素記録工程が第1トラック要素記録工程の後に実行される場合、第1トラック要素記録工程において記録対象の第1トラック要素に記録されるべき磁気信号が記録対象ではない第2トラック要素の一部又は全部に記録されても、第2トラック要素記録工程において第2トラック要素の磁気信号は第2トラック要素に記録されるべき磁気信号に書き換えられる。同様に、第1トラック要素記録工程が第2トラック要素記録工程の後に実行される場合、第2トラック要素記録工程において記録対象の第2トラック要素に記録されるべき磁気信号が記録対象ではない第1トラック要素の一部又は全部に記録されても、第1トラック要素記録工程において第1トラック要素の磁気信号は第1トラック要素に記録されるべき磁気信号に書き換えられる。
【0014】
更に、第1トラック要素記録工程及び第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において記録ヘッドの幅方向の中心が記録対象のトラック要素の幅方向の中心に対して記録対象のトラック要素と対をなすトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッドの幅方向の位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することにより、記録対象のトラック要素に記録されるべき磁気信号が記録対象のトラック要素と対をなすトラック要素に記録されることを防止又は実質的に問題がないレベルに抑制できる。
【0015】
従って、トラック要素の幅方向の設置密度を高くして面記録密度を向上できると共に良好な記録再生特性が得られる。
【0016】
又、本発明は、基板と、トラックに対応するパターンで形成されトラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え基板の上に形成された記録層と、トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素と、を含み、トラックの幅方向に隣り合う2つのトラック分離要素の間に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が配置され、第1トラック要素は隣り合う2つのトラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されており、記録層には、対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素の間にトラック分離要素よりもトラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が周方向に沿って形成され対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素がトラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録媒体により上記目的を達成したものである。
【0017】
この磁気記録媒体は、対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素がトラック分離要素よりもトラックの幅方向の幅が小さいトラック分離微細溝で分離されているので、対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素がトラック分離要素で分離される場合よりも、幅方向のトラック要素の設置密度を向上できる。
【0018】
又、トラック分離微細溝はトラック分離要素よりもトラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいが、対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素の間の誤った磁気信号の記録の抑制に寄与する。
【0019】
又、トラック分離微細溝の幅はトラック分離要素の幅よりも小さいが、トラック分離微細溝の厚さ方向の寸法はトラック分離要素の厚さ方向の寸法よりも小さいのでトラック分離微細溝の形成は容易である。例えば、連続膜の磁性層をエッチングしてトラック分離要素に相当する溝及びトラック分離微細溝を形成する場合、エッチングの条件によっては幅が著しく小さい溝は他の溝よりも厚さ方向にエッチングされにくいので、これを利用してトラック分離要素に相当する溝とトラック分離要素よりもトラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝とを形成することができる。
【0020】
即ち、次のような本発明により、上記目的を達成することができる。
【0021】
(1)基板、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層、及び前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対して磁気信号の記録を行うための記録ヘッド及び前記磁気記録媒体に記録された磁気信号を再生するための再生ヘッドを備える磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを制御するための制御装置と、を含み、前記制御装置は、前記第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び前記第1トラック要素と対をなす前記第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、前記記録ヘッドの前記幅方向の中心が記録対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記記録ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【0022】
(2) (1)において、前記磁気記録媒体は、複数の対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離要素のみを挟んで前記幅方向に連続して配置されている単位データ領域を1つ以上備え、前記制御装置は、1つの前記単位データ領域に前記幅方向に連続して配置されている複数の前記第1トラック要素及び複数の前記第2トラック要素への磁気信号の記録順序が、これら第1トラック要素及び第2トラック要素が前記幅方向に並ぶ順序と一致し、これら第1トラック要素及び第2トラック要素のうちの前記単位データ領域の前記幅方向のいずれか一方の端に配置されたトラック要素に最初に磁気信号が記録されるように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【0023】
(3) (1)又は(2)において、前記制御装置は、前記第1トラック要素記録工程及び前記第2トラック要素記録工程の両方の工程において前記オフセット記録を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【0024】
(4) (1)乃至(3)のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記第1トラック要素に記録された磁気信号を再生する第1トラック要素再生工程及び前記第2トラック要素に記録された磁気信号を再生する第2トラック要素再生工程の両方の工程において、前記再生ヘッドの前記幅方向の中心が再生対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記再生対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記再生ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記再生対象のトラック要素に記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【0025】
(5) (1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記記録層には、前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の間に前記トラック分離要素よりも前記トラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が前記周方向に沿って形成され前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0026】
(6) (5)において、前記記録層における前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の部分の上面がほぼ平坦であることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0027】
(7)基板、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層、及び前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体における前記第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び前記第1トラック要素と対をなす前記第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッドの前記幅方向の中心が記録対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記記録ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することを特徴とする磁気記録媒体への記録方法。
【0028】
(8)基板と、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層と、前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素と、を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されており、前記記録層には、前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の間に前記トラック分離要素よりも前記トラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が前記周方向に沿って形成され前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【0029】
(9) (8)において、前記記録層における前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の部分の上面がほぼ平坦であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0030】
尚、本出願において「トラックの幅方向に隣り合う2つのトラック分離要素の間に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が配置された記録層」とは一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とこれに隣り合う他の一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とがトラック分離要素によって完全に分離された記録層の他、データ領域ではトラック分離要素によって分離された一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とこれに隣り合う他の一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とがデータ領域とサーボ領域との境界付近等では連続している記録層、又、例えば螺旋状の渦巻き形状の記録層のように基板の上の一部に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が連続して形成される記録層、トラック分離要素が記録層の厚さ方向の途中の位置まで形成されてトラック分離要素の底部において一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とこれに隣り合う他の一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とが連続した記録層も含む意義で用いることとする。
【0031】
又、本出願において「トラック分離要素の幅」、「トラック分離微細溝の幅」とは、記録層の上面のレベルにおける幅という意味で用いることとする。
【0032】
又、本出願において「記録層の上面」とは、記録層における基板と反対側の面であって、磁気ヘッドに対向する側の面という意義で用いることとする。
【0033】
又、本出願において「トラック分離要素の厚さ方向の寸法」、「トラック分離微細溝の厚さ方向の寸法」とは、記録層の上面のレベルからの厚さ方向の寸法という意味で用いることとする。
【0034】
又、本出願において「磁気記録媒体」という用語は、情報の記録、読み取りに磁気のみを用いるハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ等に限定されず、磁気と光を併用するMO(Magneto Optical)等の光磁気記録媒体、磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体、磁気とマイクロ波を併用するマイクロ波アシスト型の記録媒体も含む意義で用いることとする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、微細なトラック要素及びトラック分離要素を有し記録密度が高い磁気記録媒体を備え記録再生特性が良好な磁気記録再生装置、これに用いられる磁気記録媒体及びその記録方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置の要部の構成を模式的に示すブロック図
【図2】同磁気記録再生装置の磁気記録媒体の構造を模式的に示す平面図
【図3】図2におけるIII部を拡大して示すグラフを含む平面図
【図4】同磁気記録媒体のトラック要素及びその周辺の構造を示す径方向及び厚さ方向に平行な断面図
【図5】同磁気記録媒体の単位データ領域及びスペース領域を模式的に示す平面図
【図6】同磁気記録再生装置の記録ヘッドの磁気的書込み幅の測定方法を示す平面図
【図7】同磁気的書込み幅の測定における再生ヘッドの被記録部位の幅方向の位置と再生信号の出力との関係を示すグラフ
【図8】同磁気記録再生装置の再生ヘッドの磁気的読出し幅の測定方法を示す平面図
【図9】同磁気的読出し幅の測定における再生ヘッドのマイクロトラックの幅方向の位置と再生信号の出力との関係を示すグラフ
【図10】同第1実施形態における磁気信号の記録方法の概要を示すフローチャート
【図11】同記録方法における第1トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図12】同記録方法における第2トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図13】同第1実施形態における磁気信号の再生方法の概要を示すフローチャート
【図14】同再生方法における第1トラック要素再生工程を模式的に示す平面図
【図15】同再生方法における第2トラック要素再生工程を模式的に示す平面図
【図16】同磁気記録媒体の製造方法の一例の概要を示すフローチャート
【図17】同製造工程における被加工体の出発体の構造を模式的に示す径方向及び厚さ方向に平行な断面図
【図18】凹凸パターンの樹脂層が形成された同被加工体の形状を模式的に示す径方向及び厚さ方向に平行な断面図
【図19】トラック要素が形成された同被加工体の形状を模式的に示す径方向及び厚さ方向に平行な断面図
【図20】本発明の第2実施形態に係る磁気記録再生装置の第1トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図21】同第2実施形態における第2トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図22】本発明の第3実施形態における第1トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図23】本発明の第4実施形態に係る磁気記録再生装置の磁気記録媒体の構造を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置10は、磁気記録媒体12と、磁気ヘッド14と、磁気ヘッド14等を制御するための制御装置16と、を備えている。
【0039】
図2に示されるように磁気記録媒体12は、周方向に適宜な間隔で放射状に設定される複数のサーボ領域SAと、これらサーボ領域の間に設定されるデータ領域DAと、に区分けされ、図3に示されるようにサーボ領域SAに所定のサーボパターンのサーボ信号が記録されて使用される。尚、サーボ信号のパターンは機能に応じて例えばプリアンブルパターン、サーボアドレスマークパターン、アドレスパターン、バーストパターン等で構成される。
【0040】
磁気記録媒体12は垂直記録型であり、図3及び4に示されるように、基板18と、トラックに対応するパターンで形成されトラックの幅方向Dw(磁気記録媒体12の径方向)に交互に並んで配置された第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bを備え基板18の上に形成された記録層20と、トラック分離要素22と、を含み、トラックの幅方向Dwに隣りあう2つのトラック分離要素22の間に一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが配置されている。第1トラック要素26Aは隣りあう2つのトラック分離要素22の一方のトラック分離要素22に接して配置され第2トラック要素26Bは他方のトラック分離要素22に接して配置されている。
【0041】
又、記録層20には、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの間にトラック分離要素22よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝24がトラックの周方向Dcに沿って形成され、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bがトラック分離微細溝24で分離されている。尚、トラック分離微細溝24は充填要素24Aで充填されている。
【0042】
又、磁気記録媒体12は、図5に示されるように複数の対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bがトラック分離要素22のみを挟んで幅方向Dwに連続して配置されている複数の単位データ領域UDAを備えている。単位データ領域UDAと隣り合う他の単位データ領域UDAとの間には、スペース領域SPAが設けられている。尚、スペース領域SPAは、単位データ領域UDA内の径方向の端に配置されている第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに磁気信号記録をする際に、スペース領域SPAを介して幅方向Dwに隣接する他の単位データ領域UDA内の第1トラック要素26A及び/又は第2トラック要素26Bには磁気信号の記録がされないようにする役割を果たす。従って、スペース領域SPAのトラックの幅方向Dwの幅は、トラック分離要素22のトラックの幅方向Dwの幅よりも大きい。
【0043】
基板18は、中心孔を有する略円板形状である。基板18の材料としてはガラス、Al、Al2O3等を用いることができる。
【0044】
記録層20は、厚さが5〜30nmである。記録層20の材料(第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの材料)は、例えばCoCrPt合金等のCoPt系合金、FePt系合金、これらの積層体、CoCrPt等の強磁性粒子の間にSiO2、TiO2等の酸化物系材料を存在させた材料等である。
【0045】
トラック分離要素22の幅は例えば20〜50nmである。トラック分離要素22は記録層20の下面(基板18側の面)まで形成されている。トラック分離要素22の材料は、例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、ZrO2、フェライト等の酸化物、AlN等の窒化物、SiC等の炭化物、Si、C(炭素)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、Cu、Cr、Tiのような非磁性の金属、樹脂材料等である。又、トラック分離要素22の材料は、記録層20の材料にイオン注入処理や反応ガスによる処理が施されて磁気特性が変質した材料(例えば、飽和磁化量を第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの材料よりも小さくした材料、又は飽和磁化量が実質的に消失した材料)でもよい。
【0046】
トラック分離微細溝24は記録層20の厚さ方向の途中の位置まで形成されている。トラック分離微細溝24の幅は例えば3〜20nmである。トラック分離微細溝24の幅は、第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの幅の半分以下であることが好ましい。尚、トラック分離要素22の幅、トラック分離微細溝24の幅、第1トラック要素26Aの幅、第2トラック要素26Bの幅は、いずれも、記録層20の上面における幅である。トラック分離微細溝24の厚さ方向の寸法は例えば3〜10nmである。トラック分離微細溝24の厚さ方向の寸法は、第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの厚さ方向の寸法の半分以下であることが好ましい。尚、トラック分離微細溝24を充填する充填要素24Aの材料は、トラック分離要素22の材料と同じである。又、記録層20におけるトラック分離微細溝24の下の部分の材料は、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの材料と同じである。
【0047】
第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bは、図3に示されるように、データ領域DAに形成されている。第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bは、実際にはトラックの形状に相当する円弧形状であり、多数の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向Dwに交互に並んで同心状に形成されている。第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bの上面の径方向の幅Twは10〜100nmである。記録層20における第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの部分の上面はほぼ平坦であることが好ましい。
【0048】
尚、スペース領域SPAの部分は、単位データ領域UDAと同様に第1トラック要素26A、第2トラック要素26B、トラック分離微細溝24及びトラック分離要素22が形成された構成でもよい。又、スペース領域SPAの部分は、トラック分離要素22や充填要素24Aと同じ材料だけで形成されていてもよい。又、スペース領域SPAの部分は、記録層20と同じ材料だけで形成されていてもよい。
【0049】
又、記録層20は、サーボ領域SAにおいて、上記のサーボパターンに相当するサーボ要素を備えている。サーボ要素は、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bと同じ強磁性材料で形成されている。尚、サーボ要素の周囲には、トラック分離要素22、充填要素24Aの材料と同じ材料の分離要素が備えられている。図3は、サーボパターンにおける磁気ヘッドの位置決めのために使用されるバーストパターンを模式的に示しており、各バースト信号要素28A、28B、28C、28Dはサーボ要素の一部である。尚、好ましくは各バースト信号要素28A、28B、28C、28Dは周方向Dcに並んで複数設置される。又、図3におけるグラフは、磁気ヘッド14の磁気記録媒体12における幅方向Dwの位置とバースト信号要素の出力電圧等との関係を模式的に示す。Va、Vb、Vc、Vdは、それぞれバースト信号要素28A、28B、28C、28Dから得られる出力電圧に相当する。
【0050】
尚、第1トラック要素26A、第2トラック要素26B、トラック分離要素22、充填要素24Aの上には実際には、保護層、潤滑層がこの順で形成されるが、これらの層は本第1実施形態の理解のために必要とは思われないためここでは図示及び説明を省略する。
【0051】
又、基板18と記録層20との間には、軟磁性層32、配向層34が形成されているが、これらの層も本第1実施形態の理解のために必要とは思われないためここでは説明を省略する。
【0052】
磁気ヘッド14は、磁気記録媒体12に対して磁気信号の記録を行うための記録ヘッド14A及び磁気記録媒体12に記録された磁気信号を再生するための再生ヘッド14B(図14参照)を備えている。図3に示されるように、本第1実施形態では、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwは以下の範囲である。
2*Tw+Sw≦MWw<2*Tw+Sw+2*Lw
ここでLwはトラック分離要素22の幅であり、Swはトラック分離微細溝24の幅である。
【0053】
記録ヘッド14Aは磁気記録媒体12の表面に対して垂直な方向の記録磁界を第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bに印加するように構成されている。尚、記録ヘッド14Aは実際には主磁極、リターン磁極、電磁コイル等により構成されるが本願では便宜上主磁極のみを模式的に図示している。
【0054】
本出願において「記録ヘッドの磁気的書込み幅MWw」とは、以下のような手法で測定される値という意義で用いることとする。まず、磁気記録媒体12のサーボ領域における記録層20が径方向に連続して形成されている部分に、図6に示されるように記録ヘッド14Aで記録磁界を印加して磁気記録媒体の周方向に沿ってトラック状の被記録部位104を磁気的に形成する。又、磁気記録媒体12の記録層20と同じ材料で構成され厚さが記録層20と等しく一定である連続膜の記録層を有し、且つ、記録層以外の構成が磁気記録媒体12と等しい測定用の磁気記録媒体を用意し、同様に記録ヘッド14Aで記録磁界を印加してトラック状の被記録部位104を磁気的に形成してもよい。尚、いずれの場合も被記録部位104の周囲は交流消去状態としておく。次に、この被記録部位104から充分離れた位置から被記録部位104の幅方向に沿って再生ヘッド106を被記録部位104に接近させ、更に、被記録部位104の上を通過させて、被記録部位104から充分離れた反対側の位置まで再生ヘッド106を移動させる。この際、被記録部位104に対する再生ヘッド106の幅方向の位置と再生ヘッド106の再生出力との関係は図7に示されるように、被記録部位104の幅方向の中心位置に対して対称的な形状となる。図7において、再生出力の値が再生出力の最大値の半分となる、被記録部位104の両側における再生ヘッド106の幅方向の2点の位置の間隔(半値幅)を「記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWw」と定義する。尚、磁気的書込み幅MWwの測定で用いる再生ヘッド106は、測定しようとする磁気的書込み幅MWwよりも磁気的読出し幅MRwが小さいものを用いる。この条件を満たしていれば、再生ヘッド106は、記録ヘッド14Aと共に磁気ヘッド14に備えられる再生ヘッド14Bでも測定用の他の再生ヘッドでもよい。
【0055】
再生ヘッド14Bは、GMR素子、TMR素子等のMR素子を備えている。図14に示されるように、本第1実施形態では、再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwは以下の範囲である。
Tw≦MRw<Tw+Sw+Lw
【0056】
再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwは以下の範囲であることが好ましい。
MRw<Tw+Lw
【0057】
本出願において「再生ヘッドの磁気的読出し幅MRw」とは、以下のような手法で測定される値という意義で用いることとする。まず、上記の磁気的書込み幅MWwの測定と同様に、磁気記録媒体12のサーボ領域における記録層20が径方向に連続して形成されている部分、又は測定用の磁気記録媒体に記録ヘッド14Aで磁界を印加して幅がWのトラックを周方向に沿って磁気的に形成し、更にこのトラックの幅方向の両端部を交流消去することで、測定しようとする磁気的読出し幅MRwよりも幅が小さい図8に示されるようなマイクロトラック108を(磁気的に)形成する。例えば記録ヘッド14Aで形成したトラックの幅方向の両端の約W/3の部分を交流消去し、幅がW/3であるマイクロトラック108を(磁気的に)形成する。このようにして、測定しようとする磁気的読出し幅MRwよりも幅が充分に小さいマイクロトラック108を(磁気的に)形成する。次に、このマイクロトラック108から充分離れた位置からマイクロトラック108の幅方向に沿って再生ヘッド14Bをマイクロトラック108に接近させ、更に、マイクロトラック108の上を通過させて、マイクロトラック108から充分離れた反対側の位置まで再生ヘッド14Bを移動させる。この際、マイクロトラック108に対する再生ヘッド106の幅方向の位置と再生ヘッド14Bの再生出力との関係は図9のようになる。再生出力の値が再生出力の最大値の半分の値となる、マイクロトラック108の両側における、再生ヘッド14Bの幅方向の2点の位置の間隔(半値幅)を「再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRw」と定義する。
【0058】
又、図1に示されるように磁気ヘッド14は、スイングアーム36と、スイングアーム36の先端近傍に取付けられたスライダ38と、を備えている。スイングアーム36は、一定の範囲で回転可能であるように基端において軸支されている。スライダ38は、スイングアーム36により磁気記録媒体12の表面の方向に付勢されている。一方、磁気記録媒体12が回転することで磁気記録媒体12の表面とスライダ38における磁気記録媒体12の表面に対向する浮上面(Air Bearing Surface)との間に空気流が発生する。この空気の圧力によりスライダ38は、スイングアーム36の付勢力に抗して自身と磁気記録媒体12の表面との間にギャップを有して磁気記録媒体12の表面に対して浮上するように構成されている。記録ヘッド14A及び再生ヘッド14Bはスライダ38にスイングアーム36の長手方向(磁気記録媒体12の周方向Dc)に並んで設置されている。又、記録ヘッド14A及び再生ヘッド14Bは、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心と再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心とがほぼ一致するようにスライダ38に設置されている。
【0059】
制御装置16はICチップ等である。制御装置16のプログラムは、例えばファームウェアであり、ROMやフラッシュメモリに保存されている。
【0060】
又、図1に示されるように、磁気記録再生装置10は、磁気ヘッド14のスイングアーム36を駆動するためのボイスコイルモータ40を備えている。磁気ヘッド14のスライダ38はボイスコイルモータ40により磁気記録媒体12の径方向に沿う円弧軌道の任意の点に位置決め可能とされている。更に、磁気記録再生装置10は、磁気記録媒体12を回転させるためのスピンドルモータ42と、モータドライバ44と、プリアンプ46と、リードライトチャネル48と、を備えている。
【0061】
次に、制御装置16による磁気記録再生装置10の制御について説明する。
【0062】
まず磁気信号の記録時における制御について図10のフローチャートに沿って説明する。
【0063】
初めに図11に示されるように、第1トラック要素26Aに磁気信号を記録する(S102:第1トラック要素記録工程)。この工程では、記録対象の第1トラック要素26Aが平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの両端の間に確実に存在するように磁気ヘッド14の位置を制御する。又、記録対象の第1トラック要素26Aとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bには記録対象の第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が記録されないように磁気ヘッド14の位置を制御する。例えば、バースト信号要素28A、28Bの出力信号に基づいて、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心とトラック分離微細溝24の幅方向Dwの中心とが一致するように磁気ヘッド14の位置を制御する。尚、この場合、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwは、第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心Ct1に対して第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bの方向にオフセットする。これにより、第1トラック要素26Aに所望の磁気信号が記録される。又、記録対象の第1トラック要素と対をなす第2トラック要素26Bにも、第1トラック要素26Aと同じ磁気信号が記録される。尚、実際には磁気信号は記録ヘッド14Aの(磁気記録媒体10に対する相対的な走行方向の)後側に形成され、記録ヘッド14Aは記録済みの磁気信号の前側に位置するが、図11では便宜上、磁気信号のパターンの真上に記録ヘッド14Aを図示している。後述する図12及び図20〜23でも同様である。
【0064】
次に、制御装置16は、更なる磁気信号の記録が必要かどうか判断する(S104:記録継続/終了判定工程)。更なる磁気信号の記録は必要ではないと判断した場合、磁気信号の記録を終了する。
【0065】
一方、更なる磁気信号の記録が必要と判断した場合は、図12及び図4に示されるように、第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する(S106:第2トラック要素記録工程)。この工程では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御する。オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されないような値に設定する。例えば、バースト信号要素28C、28Dの出力信号に基づいて、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwとトラック分離要素22の幅方向Dwの中心とが所定量オフセットするように磁気ヘッド14の位置を制御する。又、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwによっては記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwとトラック分離要素22の幅方向Dwの中心とが一致するように磁気ヘッド14の位置を制御してもよい。
【0066】
尚、本出願において「第2トラック要素に記録されるべき磁気信号が第1トラック要素に記録されない」とは、第2トラック要素に記録されるべき磁気信号の記録磁界により第1トラック要素が全く磁化されない場合、及び第2トラック要素に記録されるべき磁気信号の記録磁界により第1トラック要素の一部が磁化されても、再生時において意味を成す信号とは認識されない場合を含む意義で用いることとする。「第1トラック要素に記録されるべき磁気信号が第2トラック要素に記録されない」についても同様である。
【0067】
これにより、第2トラック要素26Bの磁気信号は、第1トラック要素記録工程(S102)で記録された磁気信号(第1トラック要素26Aと同じ磁気信号)から第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号に書き換えられる。尚、この工程では、図12に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致しているまたはその近傍に位置していることが好ましい。これにより第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bの幅方向全体に記録されると共に、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されることを確実に防止できる。
【0068】
次に、制御装置16は、更なる磁気信号の記録が必要かどうか判断する(S108:記録継続/終了判定工程)。更なる磁気信号の記録は必要ではないと判断した場合、磁気信号の記録を終了する。
【0069】
一方、更なる磁気信号の記録が必要と判断した場合、記録済みの一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの隣の他の一対の1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに対し、上記の第1トラック要素記録工程(S102)、第2トラック要素記録工程(S106)を実行する。
【0070】
第2トラック要素記録工程(S106)では、記録対象の第2トラック要素26Bを含む一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの隣の他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの両方又は第1トラック要素26Aの少なくとも一部(本第1実施形態では第1トラック要素26Aのみ)にも、記録対象の第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が記録されるが、隣の他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに対して上記の第1トラック要素記録工程(S102)、第2トラック要素記録工程(S106)を実行することにより、これら隣の他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bにも所望の磁気信号が順次記録される。
【0071】
制御装置16は、1つの単位データ領域UDAに幅方向Dwに連続して配置されている複数の第1トラック要素26A及び複数の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録順序が、これら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向Dwに並ぶ順序と一致し、単位データ領域UDAの幅方向Dwのいずれか一方の端に配置されたトラック要素(第1トラック要素26A又は第2トラック要素26B)に最初に磁気信号が記録されるように磁気ヘッド14を制御する。これにより、各第1トラック要素26A及び各第2トラック要素26Bに所望の磁気信号を記録することができる。
【0072】
尚、2つ以上の単位データ領域UDAに対して磁気信号の記録を行う場合、例えば、第1の単位データ領域UDAの一部の第1トラック要素26A及び/又は第2トラック要素26Bに磁気信号を記録した後、第2の単位データ領域UDAの一部又は全部の第1トラック要素26A及び/又は第2トラック要素26Bに磁気信号を記録し、次に第1の単位データ領域UDAの残りの第1トラック要素26A及び/又は第2トラック要素26Bに磁気信号を記録するようにしてもよい。このような場合も、各単位データ領域UDAに幅方向Dwに連続して配置されている複数の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録順序が、これら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向Dwに並ぶ順序と一致し、単位データ領域UDAの幅方向Dwのいずれか一方の端に配置された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに最初に磁気信号が記録されるように磁気ヘッド14を制御することで、各第1トラック要素26A及び各第2トラック要素26Bに所望の磁気信号を記録することができる。
【0073】
尚、上記の例では磁気記録媒体12は複数の単位データ領域UDAを備えているが、磁気記録媒体12は単位データ領域UDAを1つだけ備えていてもよい。この場合、1つの単位データ領域UDAの一部又は全部の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに、これら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向に並ぶ順序で磁気信号を連続して記録すればよい。
【0074】
又、必ずしも各単位データ領域UDA内の総ての第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する必要はなく、必要な磁気信号の記録を完了したと判断したら(S104、S108)、その単位データ領域UDAに対する磁気信号の記録は終了してもよい。この場合、最後に磁気信号が記録された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの隣の第2トラック要素26B又は第1トラック要素26Aにも最後に磁気信号が記録された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が記録されるが、この磁気信号は意味の無い磁気信号として扱えばよい。
【0075】
次に磁気信号の再生時における制御について図13のフローチャートに沿って説明する。
【0076】
まず再生すべき磁気信号が記録された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bを選択する(S202:再生対象トラック要素選択工程)。
【0077】
次に、選択された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を再生する(S204:トラック要素再生工程)。
【0078】
第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する場合、図14に示されるように、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心Chrを再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心Ct1に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bから離れる方向にオフセットするように再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行する。
【0079】
この際、再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bに記録された磁気信号や、トラック分離要素22を介して再生対象の第1トラック要素26Aと隣り合う第2トラック要素26Bに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されないようにオフセット量を設定する。尚、本出願において「第2トラック要素26Bに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されない」とは、第2トラック要素に記録されている磁気信号による磁界が再生ヘッド14Bで全く検知されない場合、及び第2トラック要素に記録されている磁気信号による磁界が再生ヘッド14Bで検知されても、意味を成す信号とは認識されない場合を含む意義で用いることとする。
【0080】
この場合、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が少なくとも再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離要素22側の端部の上に存在するように磁気ヘッド14の位置を制御することが好ましい。又、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部よりも再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bから離れる側に位置するか、図14に示されるように再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致していることが好ましい。又、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が再生対象の第1トラック要素26Aとトラック分離要素22を介して隣り合う第2トラック要素26Bの上に存在しないように磁気ヘッド14の位置を制御することが好ましい。これにより、再生対象の第1トラック要素26Aの両側の第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の影響が抑制され、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号が高品質に再生される。
【0081】
一方、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を再生する場合、図15に示されるように、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心Chrが再生対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して再生対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象の第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行する。
【0082】
この際、再生対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aに記録された磁気信号や、トラック分離要素22を介して再生対象の第2トラック要素26Bと隣り合う第1トラック要素26Aに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されないように磁気ヘッド14のオフセット量を設定する。尚、「第1トラック要素26Aに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されない」の意義は上記の「第2トラック要素26Bに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されない」と同様である。
【0083】
この場合、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が少なくとも第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離要素22側の端部の上に存在するように磁気ヘッド14の位置を制御することが好ましい。又、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が再生対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部よりも再生対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる側に位置するか、図15に示されるように再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致していることが好ましい。又、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が再生対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合う第1トラック要素26Aの上に存在しないように再生ヘッド14Bの位置を制御することが好ましい。これにより、再生対象の第2トラック要素26Bの両側の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の影響が抑制され、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号が高品質に再生される。
【0084】
次に、制御装置16は、更なる磁気信号の再生が必要かどうか判断する(S206:再生継続/終了判定工程)。更なる磁気信号の再生が必要と判断した場合、上記の再生すべき第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの選択(S202)、及び選択された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の再生(S204)を繰り返す。一方、更なる磁気信号の再生は必要ではないと判断した場合、磁気信号の記録を終了する。
【0085】
磁気記録媒体12の記録層20は、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bがトラック分離要素22よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さいトラック分離微細溝24で分離されているので、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bがトラック分離要素22で分離される場合よりも、幅方向のトラックの設置密度が高い。
【0086】
又、第1トラック要素記録工程(S102)において第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bに記録されても第2トラック要素記録工程(S106)を実行することにより、第2トラック要素26Bの磁気信号は第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号に書き換えられる。
【0087】
又、第2トラック要素記録工程(S106)において記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することにより、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が第1トラック要素26Aに記録されることを防止又は実質的の問題がないレベルに抑制できる。
【0088】
従って、トラックの幅方向の設置密度を高くして面記録密度を向上できると共に良好な記録再生特性が得られる。
【0089】
又、第1トラック要素記録工程(S102)において第2トラック要素26Bに第1トラック要素26Aと同じ磁気信号が記録されても、第2トラック要素記録工程(S106)において、第2トラック要素26Bの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号に書き換えることができるので、磁気的書込み幅MWwが、第1トラック要素26Aの幅Twとその一方側のトラック分離要素22の幅Lwと他方側のトラック分離微細溝24の幅Swとの合計値よりも大きい記録ヘッド14Aを用いることができる。幅が小さい記録ヘッドを製造することは幅が小さい再生ヘッドを製造することよりも困難であるが、磁気的書込み幅MWwが大きい記録ヘッド14Aを用いることができるので、磁気ヘッド14の製造が容易である。
【0090】
又、トラック分離微細溝24はトラック分離要素22よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいが、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの間の誤った磁気信号の記録の抑制に寄与する。
【0091】
更に、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bの幅方向Dwの一方側のトラック分離要素22が充分な幅及び厚さ方向の寸法を有しているので、他方側のトラック分離微細溝24がトラック分離要素22よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さくても、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bへの磁気信号の確実な記録や第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の確実な再生が可能である。
【0092】
即ち、磁気記録再生装置10は、記録対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに対しそれぞれに記録されるべき磁気信号を確実に記録し、又、再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を確実に再生することができ、良好な記録再生特性が得られる。
【0093】
尚、上記の例では最初に第1トラック要素記録工程(S102)を実行し、後で実行される第2トラック要素記録工程(S106)においてオフセット記録を実行しているが、最初に第2トラック要素記録工程を実行し、後で実行される第1トラック要素記録工程においてオフセット記録を実行するようにしてもよい。
【0094】
次に、磁気記録媒体12の製造方法の一例について図16に示されるフローチャートに沿って説明する。
【0095】
まず、図17に示されるような被加工体50の出発体を用意する(S302)。被加工体50の出発体は基板18の上に、軟磁性層32、配向層34、(第1トラック要素26A、第2トラック要素26B等が形成される前の連続膜の)記録層20、第1マスク層52、第2マスク層54をこの順でスパッタリング法等により成膜することにより得られる。
【0096】
第1マスク層52は、厚さが2〜50nmである。第1マスク層52の材料としては、DLCのようなC(炭素)が主成分である材料を用いることができる。第2マスク層54は、厚さが2〜30nmである。第2マスク層54の材料としては、Ni、Ta等を用いることができる。
【0097】
次に、図18に示されるように、被加工体50の第2マスク層54の上にスピンコート法等により樹脂材料を塗布し、更に図示しないスタンパを用いてインプリント法により樹脂材料に第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bのパターンに相当する凹凸パターンを転写し、凹凸パターンの樹脂層56を形成する(S304)。インプリント法としては、紫外線等による光インプリント、熱インプリント等を用いることができる。光インプリントの場合、樹脂層56の材料としては紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。又、熱インプリントの場合、樹脂層56の材料としては熱可塑性樹脂等を用いることができる。樹脂層56の厚さ(凸部の厚さ)は、例えば、10〜300nmである。尚、凹部底部の樹脂層56はアッシング等により除去する。又、樹脂材料として感光性レジスト又は電子線レジストを用い、光リソグラフィ又は電子線リソグラフィの手法で第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bのパターンに相当する凹凸パターンの樹脂層56を形成してもよい。
【0098】
次に、Arガス等の希ガスを用いたIBE(Ion Beam Etching)又はRIE(Reactive Ion Etching)により、凹部底部の第2マスク層54を除去し、更に、O2ガスを用いたIBE又はRIEにより、凹部底部の第1マスク層52を除去し、更にArガス等の希ガスを用いたIBE又はRIEにより、凹部底部の記録層20を除去する(S306)。これにより、図19に示されるようにデータ領域DAに第1トラック要素26A、第2トラック要素26B、トラック分離要素22に対応する溝、トラック分離微細溝24が形成される。トラック分離微細溝24の幅はトラック分離要素22に対応する溝の幅よりも小さく微細であっても、トラック分離微細溝24の深さはトラック分離要素22に対応する溝の深さよりも浅いのでトラック分離微細溝24の形成は容易である。具体的には、記録層20をエッチングする工程において、幅が著しく小さい溝は他の溝よりも厚さ方向にエッチングされにくいので、トラック分離要素22に対応する溝とトラック分離要素22に対応する溝よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝24とをエッチングで容易に形成できる。特に、被加工体50に対しイオンを斜めから照射することでこの傾向を高めることができ、照射角度を調整することでトラック分離微細溝24の深さを制御することができる。記録層20の上面に残存する第1マスク層52はO2ガス又は、N2ガス、NH3ガスやH2ガスのような窒素又は水素を含むガスを用いたIBE又はRIEにより除去する。尚、本出願において「IBE」という用語は、例えばイオンミリング等の、イオン化したガスを被加工体に照射して加工対象物を除去する加工方法の総称という意義で用いることとする。又、本出願では、希ガスのように加工対象物と化学的に反応しないガスを用いる場合でも、RIE装置を用いてエッチングを行う場合には「RIE」という用語を用いることとする。
【0099】
次に、スパッタリング法又はバイアススパッタリング法により、凹凸パターンの記録層20を有する被加工体50の上にトラック分離要素22及び充填要素24Aの材料を成膜し、記録層20の溝にトラック分離要素22、充填要素24Aを形成する(S308)。
【0100】
次に、Arガス等の希ガスを用いたIBE又はRIEにより、トラック分離要素22及び充填要素24Aの材料における余剰の部分を除去し、被加工体50の表面を平坦化する(S310)。尚、余剰の部分とは、トラック分離要素22及び充填要素24Aの材料における記録層20の上面のレベルよりも上側(基板18と反対側)に存在する部分という意義で用いることとする。
【0101】
次に、CVD法により第1トラック要素26A、第2トラック要素26B、トラック分離要素22及び充填要素24Aの上に保護層を形成する(S312)。更に、ディッピング法により保護層の上に潤滑層を塗布する(S314)。これにより、前記図2〜4に示される磁気記録媒体12が完成する。
【0102】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本第2実施形態は前記第1実施形態と異なり、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwが以下の範囲である。
Tw≦MWw<Tw+Sw+Lw
【0103】
又、本第2実施形態は、制御装置16による磁気信号の記録方法が異なる。他の構成については前記第1実施形態と同様であるので、同様の構成については図1〜19と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0104】
本第2実施形態に係る制御装置16による磁気信号の記録方法について説明する。初めに図20に示されるように前記第1実施形態と同様に、磁気ヘッド14が第1トラック要素26Aに記録磁界を印加して第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録を行う(S102)。この工程では、例えば、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心と記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心とが一致するように磁気ヘッド14の位置を制御する。これにより、第1トラック要素26Aに所望の磁気信号が記録される。又、記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bの少なくとも一部にも、第1トラック要素26Aと同じ磁気信号が記録される。尚、第1トラック要素26Aに確実に磁気信号を記録できれば記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心と記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心とは一致していなくてもよい。
【0105】
次に、制御装置16は、更なる磁気信号の記録が必要かどうか判断する(S104)。更なる磁気信号の記録は必要ではないと判断した場合、磁気信号の記録を終了する。
【0106】
一方、更なる磁気信号の記録が必要と判断した場合は、図21に示されるように、第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する(S106)。この工程では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御する。オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されないような値に設定する。更に、オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aだけでなく記録対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bにも記録されないような値に設定する。又、第1実施形態と同様に、図21に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致しているまたはその近傍に位置していることが好ましい。従って、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwは、MWw<Tw+Lwであることが好ましい。
【0107】
このように記録対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bには、記録対象の第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が記録されないので、隣の他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに既に磁気信号が記録されていたとしても不適切な磁化反転の問題は生じない。従って、1つの単位データ領域UDAに幅方向Dwに連続して配置されている複数の第1トラック要素26A及び複数の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録順序は、必ずしもこれら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向Dwに並ぶ順序と一致している必要はない。即ち、任意の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録が可能であり、磁気信号の記録の自由度が大きい。
【0108】
尚、前記第1実施形態と同様に本第2実施形態でも、最初に第2トラック要素記録工程を実行し、後で実行される第1トラック要素記録工程においてオフセット記録を実行するようにしてもよい。
【0109】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本第3実施形態に係る磁気記録再生装置10は、第2実施形態に対し、第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録方法が異なる。これ以外は前記第2実施形態と同様であるので、同様の構成については図1〜21と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0110】
本第3実施形態に係る制御装置16による第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録方法について説明する。本第3実施形態では、図22に示されるように、第2トラック要素記録工程(S106)よりも先に実行される第1トラック要素記録工程(S102)においても、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心Ct1に対して記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御する。オフセット量は、第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす)第2トラック要素26Bに記録されないような値に設定する。更に、オフセット量は、第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bだけでなく記録対象の第1トラック要素26Aとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の第2トラック要素26Bにも記録されないような値に設定する。又、図22に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致している、又はその近傍に位置していることが好ましい。従って、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwは、MWw<Tw+Lwであることが好ましい。これにより第1トラック要素26Aの幅方向全体に記録がされるとともに第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす)第2トラック要素26Bに記録されることを確実に防止できる。
【0111】
又、第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する場合も同様に(前記第2実施形態の図21とも同様に)、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御する(S106)。オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されないような値に設定する。更に、オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aだけでなく記録対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bにも記録されないような値に設定する。
【0112】
本第3実施形態でも前記第2実施形態と同様に、1つの単位データ領域UDAに幅方向Dwに連続して配置されている複数の第1トラック要素26A及び複数の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録順序は、必ずしもこれら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向に並ぶ順序と一致している必要はない。即ち、任意の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録が可能であり、磁気信号の記録の自由度が大きい。
【0113】
更に、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bのいずれに磁気信号を記録する場合も、他方に磁気信号が記録されることがないので、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bに独立して磁気信号を記録することができる。即ち、第1トラック要素26Aであるか第2トラック要素26Bであるかによらず任意のトラック要素への磁気信号の記録が可能であり、磁気信号の記録の自由度が更に大きい。
【0114】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本第4実施形態は前記第1〜第3実施形態と異なり、図23に示されるように対をなす第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24が形成されておらず第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが接している。言い換えれば一対の第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが1つの凸部(幅方向Dwに隣り合う2つのトラック分離要素22の間の記録層20)を形成している。又、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの境界は凸部(幅方向Dwに隣り合う2つのトラック分離要素22の間の記録層20)の幅方向Dwの中心である。
【0115】
他の構成については前記第1〜第3実施形態と同様であるので、同様の構成については図1〜22と同一符号を付することとして説明を省略する。尚、例えば、前記第1実施形態に示される製造方法の樹脂層形成工程においてトラック分離微細溝24に相当する凹部がない樹脂層を形成することにより第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24が形成されていない磁気記録媒体を製造することができる。
【0116】
このように第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間のトラック分離微細溝24を省略することにより、幅方向のトラックの設置密度を一層高めることができる。
【0117】
又、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが接しており第1トラック要素記録工程(S102)において第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bに記録されても前記第1〜第2実施形態のように、第2トラック要素記録工程(S106)において記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御することにより、第2トラック要素26Bの磁気信号は第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号に書き換えられる。又、オフセット量を適宜設定することにより、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26A及び記録対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに記録されることを防止又は抑制できる。従って、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bそれぞれに所望の磁気信号を記録できる。
【0118】
例えば、第2トラック要素記録工程(S106)では、図23に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bとこれに隣接する第1トラック要素26Aとの境界から少し(例えば2〜5nm程度)離れていることが好ましい。これにより第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されることを確実に防止できる。
【0119】
尚、図23は記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwが以下の範囲であり、第3実施形態と同じ記録ヘッドの位置制御を行う例を示している。
Tw≦MWw<Tw+Lw
【0120】
この例の場合、前記第3実施形態のように、第1トラック要素26Aであるか第2トラック要素26Bによらず任意のトラック要素への磁気信号の記録が可能であり、磁気信号の記録の自由度が更に大きい。
【0121】
又、この例の場合、第1トラック要素記録工程(S102)でも、図23に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第1トラック要素26Aとこれに隣接する第2トラック要素26Bとの境界から少し(例えば2〜5nm程度)離れていることが好ましい。これにより第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす)第2トラック要素26Bに記録されることを確実に防止できる。
【0122】
又、前記第1〜第3実施形態のように再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心Chrを再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bと対をなす第2トラック要素26B又は第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行することにより第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を高品質に再生できる。
【0123】
尚、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する場合、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第1トラック要素26Aとこれに隣接する第2トラック要素26Bとの境界から少し(例えば2〜5nm程度)離れていることが好ましい。これにより、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の影響が抑制され、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号が高品質に再生される。
【0124】
同様に、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を再生する場合、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第2トラック要素26Bとこれに隣接する第1トラック要素26Aとの境界から少し(例えば2〜5nm程度)離れていることが好ましい。
【0125】
尚、図23では、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwがTw≦MWw<Tw+Lwの範囲であり、第3実施形態と同じ記録ヘッド14Aの位置制御を行う例を示しているが、前記第1実施形態のように記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwがより大きい場合は、前記第1実施形態や前記第2実施形態のように記録ヘッド14Aの位置制御を行えばよい。尚、この場合、最初に第1トラック要素記録工程を実行し、後で実行される第2トラック要素記録工程においてオフセット記録を実行するようにしてもよいし、最初に第2トラック要素記録工程を実行し、後で実行される第1トラック要素記録工程においてオフセット記録を実行するようにしてもよい。
【0126】
又、前記第1実施形態において、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwの範囲として以下の範囲が例示されている。
2*Tw+Sw≦MWw<2*Tw+Sw+2*Lw
【0127】
しかしながら、前記第1実施形態においては磁気的書込み幅MWwがこの範囲よりも大きい記録ヘッドを備える磁気ヘッドを用いてもよい。又、前記第4実施形態でも磁気的書込み幅MWwが2*Tw+2*Lwよりも大きい記録ヘッドを備える磁気ヘッドを用いて前記第1実施形態と同様の磁気ヘッドの制御を行ってもよい。
【0128】
又、前記第1実施形態において、磁気的書込み幅MWwが以下の範囲である記録ヘッドを用いてもよい。
Tw+Sw+Lw≦MWw<2*Tw+Sw
【0129】
又、前記第2〜第4実施形態において、磁気的書込み幅MWwが以下の範囲である記録ヘッドを用いてもよい。
MWw<Tw
【0130】
又、前記第1〜第4実施形態において、再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwの例として以下の範囲が示されている。
Tw≦MRw<Tw+Sw+Lw
【0131】
しかしながら、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を高品質に再生できれば再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwはTwより小さくてもよい。この場合、必ずしもオフセット再生を行う必要はなく、例えば再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心と一致するように再生ヘッドの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を再生するようにしてもよい。
【0132】
又、前記第1〜第4実施形態において、トラック分離要素22の厚さ方向の寸法は第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの厚さ方向の寸法と等しいが、トラック分離要素22の厚さ方向の寸法は第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの厚さ方向の寸法よりも大きくてもよい。又、トラック分離要素22の厚さ方向の寸法は第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの厚さ方向の寸法よりも小さくてもよい。
【0133】
又、前記第1〜第3実施形態において、トラック分離要素22、充填要素24Aが第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの間を充填しているが、磁気ヘッド14の浮上高さが安定すればトラック分離微細溝24は空隙(溝)であってもよい。又、磁気ヘッド14の浮上高さが安定すればトラック分離要素22も空隙(溝)であってもよい。又、前記第4実施形態においてトラック分離要素22が空隙(溝)であってもよい。
【0134】
又、前記第1〜第4実施形態において、記録層20の下に軟磁性層32、配向層34が形成されているが、記録層20の下の層の構成は、磁気記録媒体の種類に応じて適宜変更すればよい。例えば、軟磁性層32と基板18との間に下地層や反強磁性層を形成してもよい。又、軟磁性層32、配向層34の一方又は両方を省略してもよい。又、基板上に記録層を直接形成してもよい。
【0135】
又、前記第1〜第4実施形態において、第1マスク層52、第2マスク層54、樹脂層56を連続膜の記録層20の上に形成し、3段階のドライエッチングで第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bを形成しているが、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bを高精度で形成できれば、マスク層、樹脂層の材料、積層数、厚さ、ドライエッチングの種類等は特に限定されない。
【0136】
又、前記第1〜第4実施形態においてエッチングにより第1トラック要素26A、第2トラック要素26B及びトラック分離要素22に相当する溝を形成し、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの上にトラック分離要素22の材料を成膜して、トラック分離要素22を形成する例を示しているが、連続膜の磁性層における第1トラック要素26A、第2トラック要素26B又はトラック分離要素22に相当する部分にイオン注入処理や反応ガスによる処理を施して飽和磁化量を有する第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bと飽和磁化量が第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bよりも小さい、又は飽和磁化量が実質的に消失したトラック分離要素22とを形成してもよい。
【0137】
又、前記第1〜第4実施形態において、磁気記録媒体12はトラックの形状に相当する円弧形状の第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bを有する垂直記録型であるが、周方向に断続的に形成された記録ビットに相当する形状のトラック要素を有する磁気ディスク、渦巻き形状の記録層(トラック要素)を有する磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、トラック分離要素が厚さ方向の途中まで形成されてトラック分離要素の下の部分が第1トラック要素、第2トラック要素と同じ磁性材料である記録層を有する磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、面内記録型の磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、基板の両面に記録層等が形成された両面記録式の磁気記録媒体にも本発明は適用可能である。又、MO等の光磁気ディスク、磁気と熱を併用する熱アシスト型の磁気ディスク、磁気とマイクロ波を併用するマイクロ波アシスト型の磁気ディスク、更に、磁気テープ等のディスク形状以外の他の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体にも本発明を適用可能である。
【実施例1】
【0138】
上記第4実施形態のように第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝がなく、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが接している磁気記録媒体12を作製し、この磁気記録媒体12を備える磁気記録再生装置10によって磁気信号の記録再生を行った。主な仕様は以下のとおりであった。
【0139】
記録層の厚さ:20nm
第1トラック要素の幅:40nm
第2トラック要素の幅:40nm
トラック分離要素の幅:30nm
トラック分離要素の厚さ方向の寸法:20nm
記録ヘッドの磁気的書込み幅:40nm
再生ヘッドの磁気的読出し幅:40nm
【0140】
まず第1トラック要素記録工程(S102)を実行した。具体的には、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して第1トラック要素26Aと対をなす(記録対象の第1トラック要素26Aと接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して1200kbpiの磁気信号を第1トラック要素26Aに記録した。
【0141】
次に、第2トラック要素記録工程(S106)を実行した。具体的には、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が(上記の第1トラック要素26Aと接する)記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して第2トラック要素26Bと対をなす(記録対象の第2トラック要素26Bと接する)第1トラック要素26Aから離れる方向に5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して600kbpiの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録した。
【0142】
次に第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生した。具体的には、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心と一致するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し、再生信号のSN比を測定した。SN比の測定結果を表1に示す。
【0143】
【表1】
【実施例2】
【0144】
実施例1に対し、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する際、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす(再生対象の第1トラック要素26Aと接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に5nmオフセットするように再生ヘッド14Bの幅方向Dwの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し(S204)、再生信号のSN比を測定した。他の条件は実施例1と同じであった。SN比の測定結果を表1に示す。
【実施例3】
【0145】
上記第3実施形態のように第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24が形成された磁気記録媒体12を作製し、この磁気記録媒体12を備える磁気記録再生装置10によって磁気信号の記録再生を行った。主な仕様は以下のとおりであった。
【0146】
記録層の厚さ:20nm
第1トラック要素の幅:35nm
第2トラック要素の幅:35nm
トラック分離要素の幅:30nm
トラック分離要素の厚さ方向の寸法:20nm
トラック分離微細溝の幅:10nm
トラック分離微細溝の厚さ方向の寸法:5nm
記録ヘッドの磁気的書込み幅:40nm
再生ヘッドの磁気的読出し幅:40nm
【0147】
第1トラック要素記録工程(S102)では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす(記録対象の第1トラック要素26Aと隣接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に2.5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して1200kbpiの磁気信号を第1トラック要素26Aに記録した。尚、平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図22参照)。
【0148】
同様に第2トラック要素記録工程(S106)でも、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす(記録対象の第2トラック要素26Bと隣接する)第1トラック要素26Aから離れる方向に2.5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して600kbpiの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録した。尚、平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図21参照)。
【0149】
又、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する際、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす(再生対象の第1トラック要素26Aと隣接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に2.5nmオフセットするように再生ヘッド14Bの幅方向Dwの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し、再生信号のSN比を測定した。尚、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図14参照)。
【0150】
他の条件は実施例1と同じであった。SN比の測定結果を表1に示す。
【実施例4】
【0151】
実施例3に対し、上記第1実施形態のように磁気的書込み幅MWwが大きい記録ヘッド14Aを有する磁気ヘッド14を備える磁気記録再生装置10によって磁気信号の記録再生を行った。主な仕様は以下のとおりであった。
【0152】
記録層の厚さ:20nm
第1トラック要素の幅:35nm
第2トラック要素の幅:35nm
トラック分離要素の幅:30nm
トラック分離要素の厚さ方向の寸法:20nm
トラック分離微細溝の幅:10nm
トラック分離微細溝の厚さ方向の寸法:5nm
記録ヘッドの磁気的書込み幅:90nm
再生ヘッドの磁気的読出し幅:40nm
【0153】
第1トラック要素記録工程(S102)では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第1トラック要素26Aとこれと対をなす(記録対象の第1トラック要素26Aと隣接する)第2トラック要素26Bとの間のトラック分離微細溝24の幅方向Dwの中心に一致するように磁気ヘッド14を制御して1200kbpiの磁気信号を第1トラック要素26Aに記録した(図11参照)。
【0154】
第2トラック要素記録工程(S106)では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす(記録対象の第2トラック要素26Bと隣接する)第1トラック要素26Aから離れる方向に27.5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して600kbpiの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録した。尚、平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図12参照)。
【0155】
又、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する際、実施例3と同様に再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす(再生対象の第1トラック要素26Aと隣接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に2.5nmオフセットするように再生ヘッド14Bの幅方向Dwの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し、再生信号のSN比を測定した。尚、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図14参照)。
【0156】
他の条件は実施例3と同じであった。SN比の測定結果を表1に示す。
【0157】
[比較例]
実施例1に対し、第1トラック要素記録工程(S102)において、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に一致するように磁気ヘッド14を制御して1200kbpiの磁気信号を第1トラック要素26Aに記録した。
【0158】
又、第2トラック要素記録工程(S106)においても、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に一致するように磁気ヘッド14の位置を制御して600kbpiの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録した。
【0159】
第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する際は、実施例1と同様に再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心と一致するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し、再生信号のSN比を測定した。他の条件は実施例1と同じであった。SN比の測定結果を表1に示す。
【0160】
表1に示されるように、第2トラック要素記録工程(S106)において記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行った実施例1〜4は、第2トラック要素記録工程(S106)において記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心と一致するように磁気ヘッド14を制御した比較例よりもSN比が高かった。即ち、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象のトラック要素の幅方向Dwの中心に対して記録対象のトラック要素と対をなすトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することにより良好な記録再生特性が得られることが確認された。
【0161】
又、再生時において再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bから離れる方向にオフセットする方向に再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行した実施例2は、再生時において再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心と一致していた実施例1よりもSN比が高かった。即ち、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象のトラック要素の幅方向Dwの中心に対して再生対象のトラック要素と対をなすトラック要素からオフセットする方向に再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象のトラックに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行することにより更に良好な記録再生特性が得られることが確認された。
【0162】
又、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24が形成された実施例3及び4は、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24がなく、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが接している実施例1及び2よりもSN比が高かった。即ち、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24を形成することにより、更に一層良好な記録再生特性が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、トラック要素及びトラック分離要素を備える記録層を有する磁気記録媒体に利用することができる。
【符号の説明】
【0164】
10…磁気記録再生装置
12…磁気記録媒体
14…磁気ヘッド
16…制御装置
18…基板
20…記録層
22…トラック分離要素
24…トラック分離微細溝
24A…充填要素
26A…第1トラック要素
26B…第2トラック要素
28A、28B、28C、28D…バースト信号要素
32…軟磁性層
34…配向層
50…被加工体
52…第1マスク層
54…第2マスク層
56…樹脂層
Chw…記録ヘッドの幅方向の中心
Chr…再生ヘッドの幅方向の中心
Ct1…第1トラック要素の幅方向の中心
Ct2…第2トラック要素の幅方向の中心
SPA…スペース領域
UDA…単位データ領域
S102…第1トラック要素記録工程
S104、S108…記録継続/終了判定工程
S106…第2トラック要素記録工程
S202…再生対象トラック要素選択工程
S204…トラック要素再生工程
S206…再生継続/終了判定工程
S302…被加工体の出発体用意工程
S304…樹脂層形成工程
S306…トラック要素形成工程
S308…分離要素及び充填要素形成工程
S310…平坦化工程
S312…保護層成膜工程
S314…潤滑層成膜工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック要素及びトラック分離要素を備える磁気記録媒体を有する磁気記録再生装置、これに用いられる磁気記録媒体及びその記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクドライブ等の磁気記録再生装置は、磁気記録媒体の記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、磁気ヘッドの加工の微細化等の改良により著しい磁気記録媒体の面記録密度の向上が図られており、今後も一層の面記録密度の向上が期待されているが、磁気ヘッドの加工限界、磁気ヘッドの記録磁界の広がりに起因する記録対象のトラックに隣り合うトラックへの誤った情報の記録、再生時のクロストークなどの問題が顕在化し、従来の改良手法による磁気記録媒体の面記録密度の向上は限界にきている。
【0003】
これに対し、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、トラック要素及びトラック分離要素をデータ領域に備えるディスクリートトラックメディアやパターンドメディアが提案されている。尚、ディスクリートトラックメディアのトラック要素はトラックの形状で形成されるのに対し、パターンドメディアのトラック要素は記録ビットの形状で形成される。例えばトラック要素の材料である連続膜の磁性層の上に樹脂層を成膜し、樹脂層をインプリントやリソグラフィによりトラックや記録ビットに相当する凹凸パターンに加工し、凹凸パターンの樹脂層に基づいて磁性層をエッチングすることによりトラックや記録ビットの形状のトラック要素を形成することができる。尚、磁性層と樹脂層との間に1層又は2層以上のマスク層を成膜し、樹脂層に基づいてマスク層をエッチングし、マスク層に基づいて磁性層をエッチングすることも提案されている(例えば、特許文献1参照)。又、トラック要素が形成された被加工体の上に非磁性材料等の充填材を成膜してトラック要素の間の溝を充填し、トラック要素の上の余剰の充填材をドライエッチングやCMPで除去して平坦化することによりトラック要素の間にトラック分離要素を形成できる。尚、良好な磁気ヘッドの浮上特性が得られれば、トラック要素の間の溝を充填せずに、トラック分離要素が溝(空隙)である構成としてもよい。又、連続膜の磁性層におけるトラック要素又はトラック分離要素に相当する部分にイオン注入処理や反応ガスによる処理を施して非強磁性体領域のトラック分離要素と強磁性体領域のトラック要素とを形成することも提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0004】
このようにトラック要素の間にトラック分離要素を形成してトラック要素同士を磁気的に分離することにより面記録密度を向上させることが期待されている。
【0005】
しかしながら、面記録密度を向上させるためにはトラック要素の幅やその間のトラック分離要素の幅を小さくする必要があり、要求される面記録密度の向上に伴って幅の小さなトラック分離要素を形成して幅の小さなトラック要素同士を分離することが困難になっていくという問題があった。
【0006】
これに対し、記録層を構成する1つの磁性体の凸部に2列のトラック要素を備えるようにした磁気記録媒体が知られている(例えば、特許文献4参照)。このように1つの磁性体の凸部に2列のトラック要素を備えることによりトラックピッチを狭めて面記録密度の向上を図ることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−97419号公報
【特許文献2】特開2002−288813号公報
【特許文献3】特開2002−359138号公報
【特許文献4】特開2009−20929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置は1つの磁性体の凸部に配置された2列のトラック要素の間の誤った情報の記録や再生時のクロストークを抑制することが困難な場合があった。
【0009】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであって、微細なトラック要素及びトラック分離要素を有し記録密度が高い磁気記録媒体を備え記録再生特性が良好な磁気記録再生装置、これに用いられる磁気記録媒体及びその記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板、トラックに対応するパターンで形成されトラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え基板の上に形成された記録層、及びトラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、トラックの幅方向に隣り合う2つのトラック分離要素の間に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が配置され、第1トラック要素は隣り合う2つのトラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体と、磁気記録媒体に対して磁気信号の記録を行うための記録ヘッド及び磁気記録媒体に記録された磁気信号を再生するための再生ヘッドを備える磁気ヘッドと、磁気ヘッドを制御するための制御装置と、を含み、制御装置は、第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び第1トラック要素と対をなす第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッドの幅方向の中心が記録対象のトラック要素の幅方向の中心に対して記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッドの幅方向の位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッドを制御する磁気記録再生装置により上記目的を達成したものである。
【0011】
又、本発明は、基板、トラックに対応するパターンで形成されトラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え基板の上に形成された記録層、及びトラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、トラックの幅方向に隣り合う2つのトラック分離要素の間に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が配置され、第1トラック要素は隣り合う2つのトラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体における第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び第1トラック要素と対をなす第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッドの幅方向の中心が記録対象のトラック要素の幅方向の中心に対して記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッドの幅方向の位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行する磁気記録媒体への記録方法より上記目的を達成したものである。
【0012】
第1トラック要素及び第2トラック要素の間にはトラック分離要素が形成されないので、トラックの幅方向のトラック要素の設置密度を高めることができる。
【0013】
尚、第1トラック要素と第2トラック要素とが接していたり、或いはこれらの間のスペースの幅が小さく、例えば第2トラック要素記録工程が第1トラック要素記録工程の後に実行される場合、第1トラック要素記録工程において記録対象の第1トラック要素に記録されるべき磁気信号が記録対象ではない第2トラック要素の一部又は全部に記録されても、第2トラック要素記録工程において第2トラック要素の磁気信号は第2トラック要素に記録されるべき磁気信号に書き換えられる。同様に、第1トラック要素記録工程が第2トラック要素記録工程の後に実行される場合、第2トラック要素記録工程において記録対象の第2トラック要素に記録されるべき磁気信号が記録対象ではない第1トラック要素の一部又は全部に記録されても、第1トラック要素記録工程において第1トラック要素の磁気信号は第1トラック要素に記録されるべき磁気信号に書き換えられる。
【0014】
更に、第1トラック要素記録工程及び第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において記録ヘッドの幅方向の中心が記録対象のトラック要素の幅方向の中心に対して記録対象のトラック要素と対をなすトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッドの幅方向の位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することにより、記録対象のトラック要素に記録されるべき磁気信号が記録対象のトラック要素と対をなすトラック要素に記録されることを防止又は実質的に問題がないレベルに抑制できる。
【0015】
従って、トラック要素の幅方向の設置密度を高くして面記録密度を向上できると共に良好な記録再生特性が得られる。
【0016】
又、本発明は、基板と、トラックに対応するパターンで形成されトラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え基板の上に形成された記録層と、トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素と、を含み、トラックの幅方向に隣り合う2つのトラック分離要素の間に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が配置され、第1トラック要素は隣り合う2つのトラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されており、記録層には、対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素の間にトラック分離要素よりもトラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が周方向に沿って形成され対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素がトラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録媒体により上記目的を達成したものである。
【0017】
この磁気記録媒体は、対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素がトラック分離要素よりもトラックの幅方向の幅が小さいトラック分離微細溝で分離されているので、対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素がトラック分離要素で分離される場合よりも、幅方向のトラック要素の設置密度を向上できる。
【0018】
又、トラック分離微細溝はトラック分離要素よりもトラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいが、対をなす第1トラック要素及び第2トラック要素の間の誤った磁気信号の記録の抑制に寄与する。
【0019】
又、トラック分離微細溝の幅はトラック分離要素の幅よりも小さいが、トラック分離微細溝の厚さ方向の寸法はトラック分離要素の厚さ方向の寸法よりも小さいのでトラック分離微細溝の形成は容易である。例えば、連続膜の磁性層をエッチングしてトラック分離要素に相当する溝及びトラック分離微細溝を形成する場合、エッチングの条件によっては幅が著しく小さい溝は他の溝よりも厚さ方向にエッチングされにくいので、これを利用してトラック分離要素に相当する溝とトラック分離要素よりもトラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝とを形成することができる。
【0020】
即ち、次のような本発明により、上記目的を達成することができる。
【0021】
(1)基板、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層、及び前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体と、前記磁気記録媒体に対して磁気信号の記録を行うための記録ヘッド及び前記磁気記録媒体に記録された磁気信号を再生するための再生ヘッドを備える磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドを制御するための制御装置と、を含み、前記制御装置は、前記第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び前記第1トラック要素と対をなす前記第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、前記記録ヘッドの前記幅方向の中心が記録対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記記録ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【0022】
(2) (1)において、前記磁気記録媒体は、複数の対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離要素のみを挟んで前記幅方向に連続して配置されている単位データ領域を1つ以上備え、前記制御装置は、1つの前記単位データ領域に前記幅方向に連続して配置されている複数の前記第1トラック要素及び複数の前記第2トラック要素への磁気信号の記録順序が、これら第1トラック要素及び第2トラック要素が前記幅方向に並ぶ順序と一致し、これら第1トラック要素及び第2トラック要素のうちの前記単位データ領域の前記幅方向のいずれか一方の端に配置されたトラック要素に最初に磁気信号が記録されるように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【0023】
(3) (1)又は(2)において、前記制御装置は、前記第1トラック要素記録工程及び前記第2トラック要素記録工程の両方の工程において前記オフセット記録を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【0024】
(4) (1)乃至(3)のいずれかにおいて、前記制御装置は、前記第1トラック要素に記録された磁気信号を再生する第1トラック要素再生工程及び前記第2トラック要素に記録された磁気信号を再生する第2トラック要素再生工程の両方の工程において、前記再生ヘッドの前記幅方向の中心が再生対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記再生対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記再生ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記再生対象のトラック要素に記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【0025】
(5) (1)乃至(4)のいずれかにおいて、前記記録層には、前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の間に前記トラック分離要素よりも前記トラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が前記周方向に沿って形成され前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0026】
(6) (5)において、前記記録層における前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の部分の上面がほぼ平坦であることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0027】
(7)基板、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層、及び前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体における前記第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び前記第1トラック要素と対をなす前記第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッドの前記幅方向の中心が記録対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記記録ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することを特徴とする磁気記録媒体への記録方法。
【0028】
(8)基板と、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層と、前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素と、を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されており、前記記録層には、前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の間に前記トラック分離要素よりも前記トラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が前記周方向に沿って形成され前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【0029】
(9) (8)において、前記記録層における前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の部分の上面がほぼ平坦であることを特徴とする磁気記録媒体。
【0030】
尚、本出願において「トラックの幅方向に隣り合う2つのトラック分離要素の間に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が配置された記録層」とは一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とこれに隣り合う他の一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とがトラック分離要素によって完全に分離された記録層の他、データ領域ではトラック分離要素によって分離された一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とこれに隣り合う他の一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とがデータ領域とサーボ領域との境界付近等では連続している記録層、又、例えば螺旋状の渦巻き形状の記録層のように基板の上の一部に一対の第1トラック要素及び第2トラック要素が連続して形成される記録層、トラック分離要素が記録層の厚さ方向の途中の位置まで形成されてトラック分離要素の底部において一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とこれに隣り合う他の一対の第1トラック要素及び第2トラック要素とが連続した記録層も含む意義で用いることとする。
【0031】
又、本出願において「トラック分離要素の幅」、「トラック分離微細溝の幅」とは、記録層の上面のレベルにおける幅という意味で用いることとする。
【0032】
又、本出願において「記録層の上面」とは、記録層における基板と反対側の面であって、磁気ヘッドに対向する側の面という意義で用いることとする。
【0033】
又、本出願において「トラック分離要素の厚さ方向の寸法」、「トラック分離微細溝の厚さ方向の寸法」とは、記録層の上面のレベルからの厚さ方向の寸法という意味で用いることとする。
【0034】
又、本出願において「磁気記録媒体」という用語は、情報の記録、読み取りに磁気のみを用いるハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ等に限定されず、磁気と光を併用するMO(Magneto Optical)等の光磁気記録媒体、磁気と熱を併用する熱アシスト型の記録媒体、磁気とマイクロ波を併用するマイクロ波アシスト型の記録媒体も含む意義で用いることとする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、微細なトラック要素及びトラック分離要素を有し記録密度が高い磁気記録媒体を備え記録再生特性が良好な磁気記録再生装置、これに用いられる磁気記録媒体及びその記録方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置の要部の構成を模式的に示すブロック図
【図2】同磁気記録再生装置の磁気記録媒体の構造を模式的に示す平面図
【図3】図2におけるIII部を拡大して示すグラフを含む平面図
【図4】同磁気記録媒体のトラック要素及びその周辺の構造を示す径方向及び厚さ方向に平行な断面図
【図5】同磁気記録媒体の単位データ領域及びスペース領域を模式的に示す平面図
【図6】同磁気記録再生装置の記録ヘッドの磁気的書込み幅の測定方法を示す平面図
【図7】同磁気的書込み幅の測定における再生ヘッドの被記録部位の幅方向の位置と再生信号の出力との関係を示すグラフ
【図8】同磁気記録再生装置の再生ヘッドの磁気的読出し幅の測定方法を示す平面図
【図9】同磁気的読出し幅の測定における再生ヘッドのマイクロトラックの幅方向の位置と再生信号の出力との関係を示すグラフ
【図10】同第1実施形態における磁気信号の記録方法の概要を示すフローチャート
【図11】同記録方法における第1トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図12】同記録方法における第2トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図13】同第1実施形態における磁気信号の再生方法の概要を示すフローチャート
【図14】同再生方法における第1トラック要素再生工程を模式的に示す平面図
【図15】同再生方法における第2トラック要素再生工程を模式的に示す平面図
【図16】同磁気記録媒体の製造方法の一例の概要を示すフローチャート
【図17】同製造工程における被加工体の出発体の構造を模式的に示す径方向及び厚さ方向に平行な断面図
【図18】凹凸パターンの樹脂層が形成された同被加工体の形状を模式的に示す径方向及び厚さ方向に平行な断面図
【図19】トラック要素が形成された同被加工体の形状を模式的に示す径方向及び厚さ方向に平行な断面図
【図20】本発明の第2実施形態に係る磁気記録再生装置の第1トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図21】同第2実施形態における第2トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図22】本発明の第3実施形態における第1トラック要素記録工程を模式的に示す平面図
【図23】本発明の第4実施形態に係る磁気記録再生装置の磁気記録媒体の構造を模式的に示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る磁気記録再生装置10は、磁気記録媒体12と、磁気ヘッド14と、磁気ヘッド14等を制御するための制御装置16と、を備えている。
【0039】
図2に示されるように磁気記録媒体12は、周方向に適宜な間隔で放射状に設定される複数のサーボ領域SAと、これらサーボ領域の間に設定されるデータ領域DAと、に区分けされ、図3に示されるようにサーボ領域SAに所定のサーボパターンのサーボ信号が記録されて使用される。尚、サーボ信号のパターンは機能に応じて例えばプリアンブルパターン、サーボアドレスマークパターン、アドレスパターン、バーストパターン等で構成される。
【0040】
磁気記録媒体12は垂直記録型であり、図3及び4に示されるように、基板18と、トラックに対応するパターンで形成されトラックの幅方向Dw(磁気記録媒体12の径方向)に交互に並んで配置された第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bを備え基板18の上に形成された記録層20と、トラック分離要素22と、を含み、トラックの幅方向Dwに隣りあう2つのトラック分離要素22の間に一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが配置されている。第1トラック要素26Aは隣りあう2つのトラック分離要素22の一方のトラック分離要素22に接して配置され第2トラック要素26Bは他方のトラック分離要素22に接して配置されている。
【0041】
又、記録層20には、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの間にトラック分離要素22よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝24がトラックの周方向Dcに沿って形成され、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bがトラック分離微細溝24で分離されている。尚、トラック分離微細溝24は充填要素24Aで充填されている。
【0042】
又、磁気記録媒体12は、図5に示されるように複数の対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bがトラック分離要素22のみを挟んで幅方向Dwに連続して配置されている複数の単位データ領域UDAを備えている。単位データ領域UDAと隣り合う他の単位データ領域UDAとの間には、スペース領域SPAが設けられている。尚、スペース領域SPAは、単位データ領域UDA内の径方向の端に配置されている第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに磁気信号記録をする際に、スペース領域SPAを介して幅方向Dwに隣接する他の単位データ領域UDA内の第1トラック要素26A及び/又は第2トラック要素26Bには磁気信号の記録がされないようにする役割を果たす。従って、スペース領域SPAのトラックの幅方向Dwの幅は、トラック分離要素22のトラックの幅方向Dwの幅よりも大きい。
【0043】
基板18は、中心孔を有する略円板形状である。基板18の材料としてはガラス、Al、Al2O3等を用いることができる。
【0044】
記録層20は、厚さが5〜30nmである。記録層20の材料(第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの材料)は、例えばCoCrPt合金等のCoPt系合金、FePt系合金、これらの積層体、CoCrPt等の強磁性粒子の間にSiO2、TiO2等の酸化物系材料を存在させた材料等である。
【0045】
トラック分離要素22の幅は例えば20〜50nmである。トラック分離要素22は記録層20の下面(基板18側の面)まで形成されている。トラック分離要素22の材料は、例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、ZrO2、フェライト等の酸化物、AlN等の窒化物、SiC等の炭化物、Si、C(炭素)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、Cu、Cr、Tiのような非磁性の金属、樹脂材料等である。又、トラック分離要素22の材料は、記録層20の材料にイオン注入処理や反応ガスによる処理が施されて磁気特性が変質した材料(例えば、飽和磁化量を第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの材料よりも小さくした材料、又は飽和磁化量が実質的に消失した材料)でもよい。
【0046】
トラック分離微細溝24は記録層20の厚さ方向の途中の位置まで形成されている。トラック分離微細溝24の幅は例えば3〜20nmである。トラック分離微細溝24の幅は、第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの幅の半分以下であることが好ましい。尚、トラック分離要素22の幅、トラック分離微細溝24の幅、第1トラック要素26Aの幅、第2トラック要素26Bの幅は、いずれも、記録層20の上面における幅である。トラック分離微細溝24の厚さ方向の寸法は例えば3〜10nmである。トラック分離微細溝24の厚さ方向の寸法は、第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの厚さ方向の寸法の半分以下であることが好ましい。尚、トラック分離微細溝24を充填する充填要素24Aの材料は、トラック分離要素22の材料と同じである。又、記録層20におけるトラック分離微細溝24の下の部分の材料は、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの材料と同じである。
【0047】
第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bは、図3に示されるように、データ領域DAに形成されている。第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bは、実際にはトラックの形状に相当する円弧形状であり、多数の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向Dwに交互に並んで同心状に形成されている。第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bの上面の径方向の幅Twは10〜100nmである。記録層20における第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの部分の上面はほぼ平坦であることが好ましい。
【0048】
尚、スペース領域SPAの部分は、単位データ領域UDAと同様に第1トラック要素26A、第2トラック要素26B、トラック分離微細溝24及びトラック分離要素22が形成された構成でもよい。又、スペース領域SPAの部分は、トラック分離要素22や充填要素24Aと同じ材料だけで形成されていてもよい。又、スペース領域SPAの部分は、記録層20と同じ材料だけで形成されていてもよい。
【0049】
又、記録層20は、サーボ領域SAにおいて、上記のサーボパターンに相当するサーボ要素を備えている。サーボ要素は、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bと同じ強磁性材料で形成されている。尚、サーボ要素の周囲には、トラック分離要素22、充填要素24Aの材料と同じ材料の分離要素が備えられている。図3は、サーボパターンにおける磁気ヘッドの位置決めのために使用されるバーストパターンを模式的に示しており、各バースト信号要素28A、28B、28C、28Dはサーボ要素の一部である。尚、好ましくは各バースト信号要素28A、28B、28C、28Dは周方向Dcに並んで複数設置される。又、図3におけるグラフは、磁気ヘッド14の磁気記録媒体12における幅方向Dwの位置とバースト信号要素の出力電圧等との関係を模式的に示す。Va、Vb、Vc、Vdは、それぞれバースト信号要素28A、28B、28C、28Dから得られる出力電圧に相当する。
【0050】
尚、第1トラック要素26A、第2トラック要素26B、トラック分離要素22、充填要素24Aの上には実際には、保護層、潤滑層がこの順で形成されるが、これらの層は本第1実施形態の理解のために必要とは思われないためここでは図示及び説明を省略する。
【0051】
又、基板18と記録層20との間には、軟磁性層32、配向層34が形成されているが、これらの層も本第1実施形態の理解のために必要とは思われないためここでは説明を省略する。
【0052】
磁気ヘッド14は、磁気記録媒体12に対して磁気信号の記録を行うための記録ヘッド14A及び磁気記録媒体12に記録された磁気信号を再生するための再生ヘッド14B(図14参照)を備えている。図3に示されるように、本第1実施形態では、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwは以下の範囲である。
2*Tw+Sw≦MWw<2*Tw+Sw+2*Lw
ここでLwはトラック分離要素22の幅であり、Swはトラック分離微細溝24の幅である。
【0053】
記録ヘッド14Aは磁気記録媒体12の表面に対して垂直な方向の記録磁界を第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bに印加するように構成されている。尚、記録ヘッド14Aは実際には主磁極、リターン磁極、電磁コイル等により構成されるが本願では便宜上主磁極のみを模式的に図示している。
【0054】
本出願において「記録ヘッドの磁気的書込み幅MWw」とは、以下のような手法で測定される値という意義で用いることとする。まず、磁気記録媒体12のサーボ領域における記録層20が径方向に連続して形成されている部分に、図6に示されるように記録ヘッド14Aで記録磁界を印加して磁気記録媒体の周方向に沿ってトラック状の被記録部位104を磁気的に形成する。又、磁気記録媒体12の記録層20と同じ材料で構成され厚さが記録層20と等しく一定である連続膜の記録層を有し、且つ、記録層以外の構成が磁気記録媒体12と等しい測定用の磁気記録媒体を用意し、同様に記録ヘッド14Aで記録磁界を印加してトラック状の被記録部位104を磁気的に形成してもよい。尚、いずれの場合も被記録部位104の周囲は交流消去状態としておく。次に、この被記録部位104から充分離れた位置から被記録部位104の幅方向に沿って再生ヘッド106を被記録部位104に接近させ、更に、被記録部位104の上を通過させて、被記録部位104から充分離れた反対側の位置まで再生ヘッド106を移動させる。この際、被記録部位104に対する再生ヘッド106の幅方向の位置と再生ヘッド106の再生出力との関係は図7に示されるように、被記録部位104の幅方向の中心位置に対して対称的な形状となる。図7において、再生出力の値が再生出力の最大値の半分となる、被記録部位104の両側における再生ヘッド106の幅方向の2点の位置の間隔(半値幅)を「記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWw」と定義する。尚、磁気的書込み幅MWwの測定で用いる再生ヘッド106は、測定しようとする磁気的書込み幅MWwよりも磁気的読出し幅MRwが小さいものを用いる。この条件を満たしていれば、再生ヘッド106は、記録ヘッド14Aと共に磁気ヘッド14に備えられる再生ヘッド14Bでも測定用の他の再生ヘッドでもよい。
【0055】
再生ヘッド14Bは、GMR素子、TMR素子等のMR素子を備えている。図14に示されるように、本第1実施形態では、再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwは以下の範囲である。
Tw≦MRw<Tw+Sw+Lw
【0056】
再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwは以下の範囲であることが好ましい。
MRw<Tw+Lw
【0057】
本出願において「再生ヘッドの磁気的読出し幅MRw」とは、以下のような手法で測定される値という意義で用いることとする。まず、上記の磁気的書込み幅MWwの測定と同様に、磁気記録媒体12のサーボ領域における記録層20が径方向に連続して形成されている部分、又は測定用の磁気記録媒体に記録ヘッド14Aで磁界を印加して幅がWのトラックを周方向に沿って磁気的に形成し、更にこのトラックの幅方向の両端部を交流消去することで、測定しようとする磁気的読出し幅MRwよりも幅が小さい図8に示されるようなマイクロトラック108を(磁気的に)形成する。例えば記録ヘッド14Aで形成したトラックの幅方向の両端の約W/3の部分を交流消去し、幅がW/3であるマイクロトラック108を(磁気的に)形成する。このようにして、測定しようとする磁気的読出し幅MRwよりも幅が充分に小さいマイクロトラック108を(磁気的に)形成する。次に、このマイクロトラック108から充分離れた位置からマイクロトラック108の幅方向に沿って再生ヘッド14Bをマイクロトラック108に接近させ、更に、マイクロトラック108の上を通過させて、マイクロトラック108から充分離れた反対側の位置まで再生ヘッド14Bを移動させる。この際、マイクロトラック108に対する再生ヘッド106の幅方向の位置と再生ヘッド14Bの再生出力との関係は図9のようになる。再生出力の値が再生出力の最大値の半分の値となる、マイクロトラック108の両側における、再生ヘッド14Bの幅方向の2点の位置の間隔(半値幅)を「再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRw」と定義する。
【0058】
又、図1に示されるように磁気ヘッド14は、スイングアーム36と、スイングアーム36の先端近傍に取付けられたスライダ38と、を備えている。スイングアーム36は、一定の範囲で回転可能であるように基端において軸支されている。スライダ38は、スイングアーム36により磁気記録媒体12の表面の方向に付勢されている。一方、磁気記録媒体12が回転することで磁気記録媒体12の表面とスライダ38における磁気記録媒体12の表面に対向する浮上面(Air Bearing Surface)との間に空気流が発生する。この空気の圧力によりスライダ38は、スイングアーム36の付勢力に抗して自身と磁気記録媒体12の表面との間にギャップを有して磁気記録媒体12の表面に対して浮上するように構成されている。記録ヘッド14A及び再生ヘッド14Bはスライダ38にスイングアーム36の長手方向(磁気記録媒体12の周方向Dc)に並んで設置されている。又、記録ヘッド14A及び再生ヘッド14Bは、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心と再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心とがほぼ一致するようにスライダ38に設置されている。
【0059】
制御装置16はICチップ等である。制御装置16のプログラムは、例えばファームウェアであり、ROMやフラッシュメモリに保存されている。
【0060】
又、図1に示されるように、磁気記録再生装置10は、磁気ヘッド14のスイングアーム36を駆動するためのボイスコイルモータ40を備えている。磁気ヘッド14のスライダ38はボイスコイルモータ40により磁気記録媒体12の径方向に沿う円弧軌道の任意の点に位置決め可能とされている。更に、磁気記録再生装置10は、磁気記録媒体12を回転させるためのスピンドルモータ42と、モータドライバ44と、プリアンプ46と、リードライトチャネル48と、を備えている。
【0061】
次に、制御装置16による磁気記録再生装置10の制御について説明する。
【0062】
まず磁気信号の記録時における制御について図10のフローチャートに沿って説明する。
【0063】
初めに図11に示されるように、第1トラック要素26Aに磁気信号を記録する(S102:第1トラック要素記録工程)。この工程では、記録対象の第1トラック要素26Aが平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの両端の間に確実に存在するように磁気ヘッド14の位置を制御する。又、記録対象の第1トラック要素26Aとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bには記録対象の第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が記録されないように磁気ヘッド14の位置を制御する。例えば、バースト信号要素28A、28Bの出力信号に基づいて、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心とトラック分離微細溝24の幅方向Dwの中心とが一致するように磁気ヘッド14の位置を制御する。尚、この場合、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwは、第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心Ct1に対して第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bの方向にオフセットする。これにより、第1トラック要素26Aに所望の磁気信号が記録される。又、記録対象の第1トラック要素と対をなす第2トラック要素26Bにも、第1トラック要素26Aと同じ磁気信号が記録される。尚、実際には磁気信号は記録ヘッド14Aの(磁気記録媒体10に対する相対的な走行方向の)後側に形成され、記録ヘッド14Aは記録済みの磁気信号の前側に位置するが、図11では便宜上、磁気信号のパターンの真上に記録ヘッド14Aを図示している。後述する図12及び図20〜23でも同様である。
【0064】
次に、制御装置16は、更なる磁気信号の記録が必要かどうか判断する(S104:記録継続/終了判定工程)。更なる磁気信号の記録は必要ではないと判断した場合、磁気信号の記録を終了する。
【0065】
一方、更なる磁気信号の記録が必要と判断した場合は、図12及び図4に示されるように、第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する(S106:第2トラック要素記録工程)。この工程では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御する。オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されないような値に設定する。例えば、バースト信号要素28C、28Dの出力信号に基づいて、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwとトラック分離要素22の幅方向Dwの中心とが所定量オフセットするように磁気ヘッド14の位置を制御する。又、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwによっては記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwとトラック分離要素22の幅方向Dwの中心とが一致するように磁気ヘッド14の位置を制御してもよい。
【0066】
尚、本出願において「第2トラック要素に記録されるべき磁気信号が第1トラック要素に記録されない」とは、第2トラック要素に記録されるべき磁気信号の記録磁界により第1トラック要素が全く磁化されない場合、及び第2トラック要素に記録されるべき磁気信号の記録磁界により第1トラック要素の一部が磁化されても、再生時において意味を成す信号とは認識されない場合を含む意義で用いることとする。「第1トラック要素に記録されるべき磁気信号が第2トラック要素に記録されない」についても同様である。
【0067】
これにより、第2トラック要素26Bの磁気信号は、第1トラック要素記録工程(S102)で記録された磁気信号(第1トラック要素26Aと同じ磁気信号)から第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号に書き換えられる。尚、この工程では、図12に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致しているまたはその近傍に位置していることが好ましい。これにより第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bの幅方向全体に記録されると共に、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されることを確実に防止できる。
【0068】
次に、制御装置16は、更なる磁気信号の記録が必要かどうか判断する(S108:記録継続/終了判定工程)。更なる磁気信号の記録は必要ではないと判断した場合、磁気信号の記録を終了する。
【0069】
一方、更なる磁気信号の記録が必要と判断した場合、記録済みの一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの隣の他の一対の1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに対し、上記の第1トラック要素記録工程(S102)、第2トラック要素記録工程(S106)を実行する。
【0070】
第2トラック要素記録工程(S106)では、記録対象の第2トラック要素26Bを含む一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの隣の他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの両方又は第1トラック要素26Aの少なくとも一部(本第1実施形態では第1トラック要素26Aのみ)にも、記録対象の第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が記録されるが、隣の他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに対して上記の第1トラック要素記録工程(S102)、第2トラック要素記録工程(S106)を実行することにより、これら隣の他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bにも所望の磁気信号が順次記録される。
【0071】
制御装置16は、1つの単位データ領域UDAに幅方向Dwに連続して配置されている複数の第1トラック要素26A及び複数の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録順序が、これら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向Dwに並ぶ順序と一致し、単位データ領域UDAの幅方向Dwのいずれか一方の端に配置されたトラック要素(第1トラック要素26A又は第2トラック要素26B)に最初に磁気信号が記録されるように磁気ヘッド14を制御する。これにより、各第1トラック要素26A及び各第2トラック要素26Bに所望の磁気信号を記録することができる。
【0072】
尚、2つ以上の単位データ領域UDAに対して磁気信号の記録を行う場合、例えば、第1の単位データ領域UDAの一部の第1トラック要素26A及び/又は第2トラック要素26Bに磁気信号を記録した後、第2の単位データ領域UDAの一部又は全部の第1トラック要素26A及び/又は第2トラック要素26Bに磁気信号を記録し、次に第1の単位データ領域UDAの残りの第1トラック要素26A及び/又は第2トラック要素26Bに磁気信号を記録するようにしてもよい。このような場合も、各単位データ領域UDAに幅方向Dwに連続して配置されている複数の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録順序が、これら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向Dwに並ぶ順序と一致し、単位データ領域UDAの幅方向Dwのいずれか一方の端に配置された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに最初に磁気信号が記録されるように磁気ヘッド14を制御することで、各第1トラック要素26A及び各第2トラック要素26Bに所望の磁気信号を記録することができる。
【0073】
尚、上記の例では磁気記録媒体12は複数の単位データ領域UDAを備えているが、磁気記録媒体12は単位データ領域UDAを1つだけ備えていてもよい。この場合、1つの単位データ領域UDAの一部又は全部の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに、これら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向に並ぶ順序で磁気信号を連続して記録すればよい。
【0074】
又、必ずしも各単位データ領域UDA内の総ての第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する必要はなく、必要な磁気信号の記録を完了したと判断したら(S104、S108)、その単位データ領域UDAに対する磁気信号の記録は終了してもよい。この場合、最後に磁気信号が記録された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの隣の第2トラック要素26B又は第1トラック要素26Aにも最後に磁気信号が記録された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が記録されるが、この磁気信号は意味の無い磁気信号として扱えばよい。
【0075】
次に磁気信号の再生時における制御について図13のフローチャートに沿って説明する。
【0076】
まず再生すべき磁気信号が記録された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bを選択する(S202:再生対象トラック要素選択工程)。
【0077】
次に、選択された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を再生する(S204:トラック要素再生工程)。
【0078】
第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する場合、図14に示されるように、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心Chrを再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心Ct1に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bから離れる方向にオフセットするように再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行する。
【0079】
この際、再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bに記録された磁気信号や、トラック分離要素22を介して再生対象の第1トラック要素26Aと隣り合う第2トラック要素26Bに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されないようにオフセット量を設定する。尚、本出願において「第2トラック要素26Bに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されない」とは、第2トラック要素に記録されている磁気信号による磁界が再生ヘッド14Bで全く検知されない場合、及び第2トラック要素に記録されている磁気信号による磁界が再生ヘッド14Bで検知されても、意味を成す信号とは認識されない場合を含む意義で用いることとする。
【0080】
この場合、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が少なくとも再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離要素22側の端部の上に存在するように磁気ヘッド14の位置を制御することが好ましい。又、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部よりも再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bから離れる側に位置するか、図14に示されるように再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致していることが好ましい。又、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が再生対象の第1トラック要素26Aとトラック分離要素22を介して隣り合う第2トラック要素26Bの上に存在しないように磁気ヘッド14の位置を制御することが好ましい。これにより、再生対象の第1トラック要素26Aの両側の第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の影響が抑制され、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号が高品質に再生される。
【0081】
一方、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を再生する場合、図15に示されるように、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心Chrが再生対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して再生対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象の第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行する。
【0082】
この際、再生対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aに記録された磁気信号や、トラック分離要素22を介して再生対象の第2トラック要素26Bと隣り合う第1トラック要素26Aに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されないように磁気ヘッド14のオフセット量を設定する。尚、「第1トラック要素26Aに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されない」の意義は上記の「第2トラック要素26Bに記録された磁気信号が再生ヘッド14Bで再生されない」と同様である。
【0083】
この場合、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が少なくとも第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離要素22側の端部の上に存在するように磁気ヘッド14の位置を制御することが好ましい。又、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が再生対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部よりも再生対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる側に位置するか、図15に示されるように再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致していることが好ましい。又、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分が再生対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合う第1トラック要素26Aの上に存在しないように再生ヘッド14Bの位置を制御することが好ましい。これにより、再生対象の第2トラック要素26Bの両側の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の影響が抑制され、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号が高品質に再生される。
【0084】
次に、制御装置16は、更なる磁気信号の再生が必要かどうか判断する(S206:再生継続/終了判定工程)。更なる磁気信号の再生が必要と判断した場合、上記の再生すべき第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの選択(S202)、及び選択された第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の再生(S204)を繰り返す。一方、更なる磁気信号の再生は必要ではないと判断した場合、磁気信号の記録を終了する。
【0085】
磁気記録媒体12の記録層20は、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bがトラック分離要素22よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さいトラック分離微細溝24で分離されているので、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bがトラック分離要素22で分離される場合よりも、幅方向のトラックの設置密度が高い。
【0086】
又、第1トラック要素記録工程(S102)において第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bに記録されても第2トラック要素記録工程(S106)を実行することにより、第2トラック要素26Bの磁気信号は第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号に書き換えられる。
【0087】
又、第2トラック要素記録工程(S106)において記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することにより、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が第1トラック要素26Aに記録されることを防止又は実質的の問題がないレベルに抑制できる。
【0088】
従って、トラックの幅方向の設置密度を高くして面記録密度を向上できると共に良好な記録再生特性が得られる。
【0089】
又、第1トラック要素記録工程(S102)において第2トラック要素26Bに第1トラック要素26Aと同じ磁気信号が記録されても、第2トラック要素記録工程(S106)において、第2トラック要素26Bの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号に書き換えることができるので、磁気的書込み幅MWwが、第1トラック要素26Aの幅Twとその一方側のトラック分離要素22の幅Lwと他方側のトラック分離微細溝24の幅Swとの合計値よりも大きい記録ヘッド14Aを用いることができる。幅が小さい記録ヘッドを製造することは幅が小さい再生ヘッドを製造することよりも困難であるが、磁気的書込み幅MWwが大きい記録ヘッド14Aを用いることができるので、磁気ヘッド14の製造が容易である。
【0090】
又、トラック分離微細溝24はトラック分離要素22よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいが、対をなす第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの間の誤った磁気信号の記録の抑制に寄与する。
【0091】
更に、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bの幅方向Dwの一方側のトラック分離要素22が充分な幅及び厚さ方向の寸法を有しているので、他方側のトラック分離微細溝24がトラック分離要素22よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さくても、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bへの磁気信号の確実な記録や第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の確実な再生が可能である。
【0092】
即ち、磁気記録再生装置10は、記録対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに対しそれぞれに記録されるべき磁気信号を確実に記録し、又、再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を確実に再生することができ、良好な記録再生特性が得られる。
【0093】
尚、上記の例では最初に第1トラック要素記録工程(S102)を実行し、後で実行される第2トラック要素記録工程(S106)においてオフセット記録を実行しているが、最初に第2トラック要素記録工程を実行し、後で実行される第1トラック要素記録工程においてオフセット記録を実行するようにしてもよい。
【0094】
次に、磁気記録媒体12の製造方法の一例について図16に示されるフローチャートに沿って説明する。
【0095】
まず、図17に示されるような被加工体50の出発体を用意する(S302)。被加工体50の出発体は基板18の上に、軟磁性層32、配向層34、(第1トラック要素26A、第2トラック要素26B等が形成される前の連続膜の)記録層20、第1マスク層52、第2マスク層54をこの順でスパッタリング法等により成膜することにより得られる。
【0096】
第1マスク層52は、厚さが2〜50nmである。第1マスク層52の材料としては、DLCのようなC(炭素)が主成分である材料を用いることができる。第2マスク層54は、厚さが2〜30nmである。第2マスク層54の材料としては、Ni、Ta等を用いることができる。
【0097】
次に、図18に示されるように、被加工体50の第2マスク層54の上にスピンコート法等により樹脂材料を塗布し、更に図示しないスタンパを用いてインプリント法により樹脂材料に第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bのパターンに相当する凹凸パターンを転写し、凹凸パターンの樹脂層56を形成する(S304)。インプリント法としては、紫外線等による光インプリント、熱インプリント等を用いることができる。光インプリントの場合、樹脂層56の材料としては紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。又、熱インプリントの場合、樹脂層56の材料としては熱可塑性樹脂等を用いることができる。樹脂層56の厚さ(凸部の厚さ)は、例えば、10〜300nmである。尚、凹部底部の樹脂層56はアッシング等により除去する。又、樹脂材料として感光性レジスト又は電子線レジストを用い、光リソグラフィ又は電子線リソグラフィの手法で第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bのパターンに相当する凹凸パターンの樹脂層56を形成してもよい。
【0098】
次に、Arガス等の希ガスを用いたIBE(Ion Beam Etching)又はRIE(Reactive Ion Etching)により、凹部底部の第2マスク層54を除去し、更に、O2ガスを用いたIBE又はRIEにより、凹部底部の第1マスク層52を除去し、更にArガス等の希ガスを用いたIBE又はRIEにより、凹部底部の記録層20を除去する(S306)。これにより、図19に示されるようにデータ領域DAに第1トラック要素26A、第2トラック要素26B、トラック分離要素22に対応する溝、トラック分離微細溝24が形成される。トラック分離微細溝24の幅はトラック分離要素22に対応する溝の幅よりも小さく微細であっても、トラック分離微細溝24の深さはトラック分離要素22に対応する溝の深さよりも浅いのでトラック分離微細溝24の形成は容易である。具体的には、記録層20をエッチングする工程において、幅が著しく小さい溝は他の溝よりも厚さ方向にエッチングされにくいので、トラック分離要素22に対応する溝とトラック分離要素22に対応する溝よりもトラックの幅方向Dwの幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝24とをエッチングで容易に形成できる。特に、被加工体50に対しイオンを斜めから照射することでこの傾向を高めることができ、照射角度を調整することでトラック分離微細溝24の深さを制御することができる。記録層20の上面に残存する第1マスク層52はO2ガス又は、N2ガス、NH3ガスやH2ガスのような窒素又は水素を含むガスを用いたIBE又はRIEにより除去する。尚、本出願において「IBE」という用語は、例えばイオンミリング等の、イオン化したガスを被加工体に照射して加工対象物を除去する加工方法の総称という意義で用いることとする。又、本出願では、希ガスのように加工対象物と化学的に反応しないガスを用いる場合でも、RIE装置を用いてエッチングを行う場合には「RIE」という用語を用いることとする。
【0099】
次に、スパッタリング法又はバイアススパッタリング法により、凹凸パターンの記録層20を有する被加工体50の上にトラック分離要素22及び充填要素24Aの材料を成膜し、記録層20の溝にトラック分離要素22、充填要素24Aを形成する(S308)。
【0100】
次に、Arガス等の希ガスを用いたIBE又はRIEにより、トラック分離要素22及び充填要素24Aの材料における余剰の部分を除去し、被加工体50の表面を平坦化する(S310)。尚、余剰の部分とは、トラック分離要素22及び充填要素24Aの材料における記録層20の上面のレベルよりも上側(基板18と反対側)に存在する部分という意義で用いることとする。
【0101】
次に、CVD法により第1トラック要素26A、第2トラック要素26B、トラック分離要素22及び充填要素24Aの上に保護層を形成する(S312)。更に、ディッピング法により保護層の上に潤滑層を塗布する(S314)。これにより、前記図2〜4に示される磁気記録媒体12が完成する。
【0102】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本第2実施形態は前記第1実施形態と異なり、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwが以下の範囲である。
Tw≦MWw<Tw+Sw+Lw
【0103】
又、本第2実施形態は、制御装置16による磁気信号の記録方法が異なる。他の構成については前記第1実施形態と同様であるので、同様の構成については図1〜19と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0104】
本第2実施形態に係る制御装置16による磁気信号の記録方法について説明する。初めに図20に示されるように前記第1実施形態と同様に、磁気ヘッド14が第1トラック要素26Aに記録磁界を印加して第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録を行う(S102)。この工程では、例えば、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心と記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心とが一致するように磁気ヘッド14の位置を制御する。これにより、第1トラック要素26Aに所望の磁気信号が記録される。又、記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bの少なくとも一部にも、第1トラック要素26Aと同じ磁気信号が記録される。尚、第1トラック要素26Aに確実に磁気信号を記録できれば記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心と記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心とは一致していなくてもよい。
【0105】
次に、制御装置16は、更なる磁気信号の記録が必要かどうか判断する(S104)。更なる磁気信号の記録は必要ではないと判断した場合、磁気信号の記録を終了する。
【0106】
一方、更なる磁気信号の記録が必要と判断した場合は、図21に示されるように、第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する(S106)。この工程では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御する。オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されないような値に設定する。更に、オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aだけでなく記録対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bにも記録されないような値に設定する。又、第1実施形態と同様に、図21に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致しているまたはその近傍に位置していることが好ましい。従って、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwは、MWw<Tw+Lwであることが好ましい。
【0107】
このように記録対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bには、記録対象の第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が記録されないので、隣の他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに既に磁気信号が記録されていたとしても不適切な磁化反転の問題は生じない。従って、1つの単位データ領域UDAに幅方向Dwに連続して配置されている複数の第1トラック要素26A及び複数の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録順序は、必ずしもこれら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向Dwに並ぶ順序と一致している必要はない。即ち、任意の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録が可能であり、磁気信号の記録の自由度が大きい。
【0108】
尚、前記第1実施形態と同様に本第2実施形態でも、最初に第2トラック要素記録工程を実行し、後で実行される第1トラック要素記録工程においてオフセット記録を実行するようにしてもよい。
【0109】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本第3実施形態に係る磁気記録再生装置10は、第2実施形態に対し、第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録方法が異なる。これ以外は前記第2実施形態と同様であるので、同様の構成については図1〜21と同一符号を付することとして説明を省略する。
【0110】
本第3実施形態に係る制御装置16による第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録方法について説明する。本第3実施形態では、図22に示されるように、第2トラック要素記録工程(S106)よりも先に実行される第1トラック要素記録工程(S102)においても、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心Ct1に対して記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御する。オフセット量は、第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす)第2トラック要素26Bに記録されないような値に設定する。更に、オフセット量は、第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bだけでなく記録対象の第1トラック要素26Aとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の第2トラック要素26Bにも記録されないような値に設定する。又、図22に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致している、又はその近傍に位置していることが好ましい。従って、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwは、MWw<Tw+Lwであることが好ましい。これにより第1トラック要素26Aの幅方向全体に記録がされるとともに第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす)第2トラック要素26Bに記録されることを確実に防止できる。
【0111】
又、第2トラック要素26Bに磁気信号を記録する場合も同様に(前記第2実施形態の図21とも同様に)、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御する(S106)。オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されないような値に設定する。更に、オフセット量は、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aだけでなく記録対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bにも記録されないような値に設定する。
【0112】
本第3実施形態でも前記第2実施形態と同様に、1つの単位データ領域UDAに幅方向Dwに連続して配置されている複数の第1トラック要素26A及び複数の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録順序は、必ずしもこれら第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bが幅方向に並ぶ順序と一致している必要はない。即ち、任意の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録が可能であり、磁気信号の記録の自由度が大きい。
【0113】
更に、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bのいずれに磁気信号を記録する場合も、他方に磁気信号が記録されることがないので、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bに独立して磁気信号を記録することができる。即ち、第1トラック要素26Aであるか第2トラック要素26Bであるかによらず任意のトラック要素への磁気信号の記録が可能であり、磁気信号の記録の自由度が更に大きい。
【0114】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本第4実施形態は前記第1〜第3実施形態と異なり、図23に示されるように対をなす第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24が形成されておらず第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが接している。言い換えれば一対の第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが1つの凸部(幅方向Dwに隣り合う2つのトラック分離要素22の間の記録層20)を形成している。又、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの境界は凸部(幅方向Dwに隣り合う2つのトラック分離要素22の間の記録層20)の幅方向Dwの中心である。
【0115】
他の構成については前記第1〜第3実施形態と同様であるので、同様の構成については図1〜22と同一符号を付することとして説明を省略する。尚、例えば、前記第1実施形態に示される製造方法の樹脂層形成工程においてトラック分離微細溝24に相当する凹部がない樹脂層を形成することにより第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24が形成されていない磁気記録媒体を製造することができる。
【0116】
このように第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間のトラック分離微細溝24を省略することにより、幅方向のトラックの設置密度を一層高めることができる。
【0117】
又、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが接しており第1トラック要素記録工程(S102)において第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が第2トラック要素26Bに記録されても前記第1〜第2実施形態のように、第2トラック要素記録工程(S106)において記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心Chwが記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心Ct2に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御することにより、第2トラック要素26Bの磁気信号は第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号に書き換えられる。又、オフセット量を適宜設定することにより、第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26A及び記録対象の第2トラック要素26Bとトラック分離要素22を介して隣り合って配置されている他の一対の第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに記録されることを防止又は抑制できる。従って、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bそれぞれに所望の磁気信号を記録できる。
【0118】
例えば、第2トラック要素記録工程(S106)では、図23に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bとこれに隣接する第1トラック要素26Aとの境界から少し(例えば2〜5nm程度)離れていることが好ましい。これにより第2トラック要素26Bに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす)第1トラック要素26Aに記録されることを確実に防止できる。
【0119】
尚、図23は記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwが以下の範囲であり、第3実施形態と同じ記録ヘッドの位置制御を行う例を示している。
Tw≦MWw<Tw+Lw
【0120】
この例の場合、前記第3実施形態のように、第1トラック要素26Aであるか第2トラック要素26Bによらず任意のトラック要素への磁気信号の記録が可能であり、磁気信号の記録の自由度が更に大きい。
【0121】
又、この例の場合、第1トラック要素記録工程(S102)でも、図23に示されるように平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第1トラック要素26Aとこれに隣接する第2トラック要素26Bとの境界から少し(例えば2〜5nm程度)離れていることが好ましい。これにより第1トラック要素26Aに記録されるべき磁気信号が(記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす)第2トラック要素26Bに記録されることを確実に防止できる。
【0122】
又、前記第1〜第3実施形態のように再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心Chrを再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bと対をなす第2トラック要素26B又は第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行することにより第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を高品質に再生できる。
【0123】
尚、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する場合、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第1トラック要素26Aとこれに隣接する第2トラック要素26Bとの境界から少し(例えば2〜5nm程度)離れていることが好ましい。これにより、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号の影響が抑制され、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号が高品質に再生される。
【0124】
同様に、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を再生する場合、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第2トラック要素26Bとこれに隣接する第1トラック要素26Aとの境界から少し(例えば2〜5nm程度)離れていることが好ましい。
【0125】
尚、図23では、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwがTw≦MWw<Tw+Lwの範囲であり、第3実施形態と同じ記録ヘッド14Aの位置制御を行う例を示しているが、前記第1実施形態のように記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwがより大きい場合は、前記第1実施形態や前記第2実施形態のように記録ヘッド14Aの位置制御を行えばよい。尚、この場合、最初に第1トラック要素記録工程を実行し、後で実行される第2トラック要素記録工程においてオフセット記録を実行するようにしてもよいし、最初に第2トラック要素記録工程を実行し、後で実行される第1トラック要素記録工程においてオフセット記録を実行するようにしてもよい。
【0126】
又、前記第1実施形態において、記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwの範囲として以下の範囲が例示されている。
2*Tw+Sw≦MWw<2*Tw+Sw+2*Lw
【0127】
しかしながら、前記第1実施形態においては磁気的書込み幅MWwがこの範囲よりも大きい記録ヘッドを備える磁気ヘッドを用いてもよい。又、前記第4実施形態でも磁気的書込み幅MWwが2*Tw+2*Lwよりも大きい記録ヘッドを備える磁気ヘッドを用いて前記第1実施形態と同様の磁気ヘッドの制御を行ってもよい。
【0128】
又、前記第1実施形態において、磁気的書込み幅MWwが以下の範囲である記録ヘッドを用いてもよい。
Tw+Sw+Lw≦MWw<2*Tw+Sw
【0129】
又、前記第2〜第4実施形態において、磁気的書込み幅MWwが以下の範囲である記録ヘッドを用いてもよい。
MWw<Tw
【0130】
又、前記第1〜第4実施形態において、再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwの例として以下の範囲が示されている。
Tw≦MRw<Tw+Sw+Lw
【0131】
しかしながら、第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を高品質に再生できれば再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwはTwより小さくてもよい。この場合、必ずしもオフセット再生を行う必要はなく、例えば再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心と一致するように再生ヘッドの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26A又は第2トラック要素26Bに記録された磁気信号を再生するようにしてもよい。
【0132】
又、前記第1〜第4実施形態において、トラック分離要素22の厚さ方向の寸法は第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの厚さ方向の寸法と等しいが、トラック分離要素22の厚さ方向の寸法は第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの厚さ方向の寸法よりも大きくてもよい。又、トラック分離要素22の厚さ方向の寸法は第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの厚さ方向の寸法よりも小さくてもよい。
【0133】
又、前記第1〜第3実施形態において、トラック分離要素22、充填要素24Aが第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの間を充填しているが、磁気ヘッド14の浮上高さが安定すればトラック分離微細溝24は空隙(溝)であってもよい。又、磁気ヘッド14の浮上高さが安定すればトラック分離要素22も空隙(溝)であってもよい。又、前記第4実施形態においてトラック分離要素22が空隙(溝)であってもよい。
【0134】
又、前記第1〜第4実施形態において、記録層20の下に軟磁性層32、配向層34が形成されているが、記録層20の下の層の構成は、磁気記録媒体の種類に応じて適宜変更すればよい。例えば、軟磁性層32と基板18との間に下地層や反強磁性層を形成してもよい。又、軟磁性層32、配向層34の一方又は両方を省略してもよい。又、基板上に記録層を直接形成してもよい。
【0135】
又、前記第1〜第4実施形態において、第1マスク層52、第2マスク層54、樹脂層56を連続膜の記録層20の上に形成し、3段階のドライエッチングで第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bを形成しているが、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bを高精度で形成できれば、マスク層、樹脂層の材料、積層数、厚さ、ドライエッチングの種類等は特に限定されない。
【0136】
又、前記第1〜第4実施形態においてエッチングにより第1トラック要素26A、第2トラック要素26B及びトラック分離要素22に相当する溝を形成し、第1トラック要素26A及び第2トラック要素26Bの上にトラック分離要素22の材料を成膜して、トラック分離要素22を形成する例を示しているが、連続膜の磁性層における第1トラック要素26A、第2トラック要素26B又はトラック分離要素22に相当する部分にイオン注入処理や反応ガスによる処理を施して飽和磁化量を有する第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bと飽和磁化量が第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bよりも小さい、又は飽和磁化量が実質的に消失したトラック分離要素22とを形成してもよい。
【0137】
又、前記第1〜第4実施形態において、磁気記録媒体12はトラックの形状に相当する円弧形状の第1トラック要素26A、第2トラック要素26Bを有する垂直記録型であるが、周方向に断続的に形成された記録ビットに相当する形状のトラック要素を有する磁気ディスク、渦巻き形状の記録層(トラック要素)を有する磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、トラック分離要素が厚さ方向の途中まで形成されてトラック分離要素の下の部分が第1トラック要素、第2トラック要素と同じ磁性材料である記録層を有する磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、面内記録型の磁気ディスクにも本発明は当然適用可能である。又、基板の両面に記録層等が形成された両面記録式の磁気記録媒体にも本発明は適用可能である。又、MO等の光磁気ディスク、磁気と熱を併用する熱アシスト型の磁気ディスク、磁気とマイクロ波を併用するマイクロ波アシスト型の磁気ディスク、更に、磁気テープ等のディスク形状以外の他の凹凸パターンの記録層を有する磁気記録媒体にも本発明を適用可能である。
【実施例1】
【0138】
上記第4実施形態のように第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝がなく、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが接している磁気記録媒体12を作製し、この磁気記録媒体12を備える磁気記録再生装置10によって磁気信号の記録再生を行った。主な仕様は以下のとおりであった。
【0139】
記録層の厚さ:20nm
第1トラック要素の幅:40nm
第2トラック要素の幅:40nm
トラック分離要素の幅:30nm
トラック分離要素の厚さ方向の寸法:20nm
記録ヘッドの磁気的書込み幅:40nm
再生ヘッドの磁気的読出し幅:40nm
【0140】
まず第1トラック要素記録工程(S102)を実行した。具体的には、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して第1トラック要素26Aと対をなす(記録対象の第1トラック要素26Aと接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して1200kbpiの磁気信号を第1トラック要素26Aに記録した。
【0141】
次に、第2トラック要素記録工程(S106)を実行した。具体的には、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が(上記の第1トラック要素26Aと接する)記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して第2トラック要素26Bと対をなす(記録対象の第2トラック要素26Bと接する)第1トラック要素26Aから離れる方向に5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して600kbpiの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録した。
【0142】
次に第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生した。具体的には、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心と一致するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し、再生信号のSN比を測定した。SN比の測定結果を表1に示す。
【0143】
【表1】
【実施例2】
【0144】
実施例1に対し、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する際、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす(再生対象の第1トラック要素26Aと接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に5nmオフセットするように再生ヘッド14Bの幅方向Dwの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し(S204)、再生信号のSN比を測定した。他の条件は実施例1と同じであった。SN比の測定結果を表1に示す。
【実施例3】
【0145】
上記第3実施形態のように第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24が形成された磁気記録媒体12を作製し、この磁気記録媒体12を備える磁気記録再生装置10によって磁気信号の記録再生を行った。主な仕様は以下のとおりであった。
【0146】
記録層の厚さ:20nm
第1トラック要素の幅:35nm
第2トラック要素の幅:35nm
トラック分離要素の幅:30nm
トラック分離要素の厚さ方向の寸法:20nm
トラック分離微細溝の幅:10nm
トラック分離微細溝の厚さ方向の寸法:5nm
記録ヘッドの磁気的書込み幅:40nm
再生ヘッドの磁気的読出し幅:40nm
【0147】
第1トラック要素記録工程(S102)では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して記録対象の第1トラック要素26Aと対をなす(記録対象の第1トラック要素26Aと隣接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に2.5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第1トラック要素26Aへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して1200kbpiの磁気信号を第1トラック要素26Aに記録した。尚、平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図22参照)。
【0148】
同様に第2トラック要素記録工程(S106)でも、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす(記録対象の第2トラック要素26Bと隣接する)第1トラック要素26Aから離れる方向に2.5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して600kbpiの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録した。尚、平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図21参照)。
【0149】
又、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する際、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす(再生対象の第1トラック要素26Aと隣接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に2.5nmオフセットするように再生ヘッド14Bの幅方向Dwの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し、再生信号のSN比を測定した。尚、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図14参照)。
【0150】
他の条件は実施例1と同じであった。SN比の測定結果を表1に示す。
【実施例4】
【0151】
実施例3に対し、上記第1実施形態のように磁気的書込み幅MWwが大きい記録ヘッド14Aを有する磁気ヘッド14を備える磁気記録再生装置10によって磁気信号の記録再生を行った。主な仕様は以下のとおりであった。
【0152】
記録層の厚さ:20nm
第1トラック要素の幅:35nm
第2トラック要素の幅:35nm
トラック分離要素の幅:30nm
トラック分離要素の厚さ方向の寸法:20nm
トラック分離微細溝の幅:10nm
トラック分離微細溝の厚さ方向の寸法:5nm
記録ヘッドの磁気的書込み幅:90nm
再生ヘッドの磁気的読出し幅:40nm
【0153】
第1トラック要素記録工程(S102)では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第1トラック要素26Aとこれと対をなす(記録対象の第1トラック要素26Aと隣接する)第2トラック要素26Bとの間のトラック分離微細溝24の幅方向Dwの中心に一致するように磁気ヘッド14を制御して1200kbpiの磁気信号を第1トラック要素26Aに記録した(図11参照)。
【0154】
第2トラック要素記録工程(S106)では、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす(記録対象の第2トラック要素26Bと隣接する)第1トラック要素26Aから離れる方向に27.5nmオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように磁気ヘッド14を制御して600kbpiの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録した。尚、平面視において記録ヘッド14Aの磁気的書込み幅MWwに相当する部分の幅方向Dwの端部が記録対象の第2トラック要素26Bにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図12参照)。
【0155】
又、第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する際、実施例3と同様に再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす(再生対象の第1トラック要素26Aと隣接する)第2トラック要素26Bから離れる方向に2.5nmオフセットするように再生ヘッド14Bの幅方向Dwの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し、再生信号のSN比を測定した。尚、平面視において再生ヘッド14Bの磁気的読出し幅MRwに相当する部分の幅方向Dwの端部が再生対象の第1トラック要素26Aにおける幅方向Dwのトラック分離微細溝24側の端部と一致するように磁気ヘッド14を制御した(図14参照)。
【0156】
他の条件は実施例3と同じであった。SN比の測定結果を表1に示す。
【0157】
[比較例]
実施例1に対し、第1トラック要素記録工程(S102)において、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に一致するように磁気ヘッド14を制御して1200kbpiの磁気信号を第1トラック要素26Aに記録した。
【0158】
又、第2トラック要素記録工程(S106)においても、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に一致するように磁気ヘッド14の位置を制御して600kbpiの磁気信号を第2トラック要素26Bに記録した。
【0159】
第1トラック要素26Aに記録された磁気信号を再生する際は、実施例1と同様に再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心と一致するように磁気ヘッド14を制御して第1トラック要素26Aに記録された1200kbpiの磁気信号を再生し、再生信号のSN比を測定した。他の条件は実施例1と同じであった。SN比の測定結果を表1に示す。
【0160】
表1に示されるように、第2トラック要素記録工程(S106)において記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心に対して記録対象の第2トラック要素26Bと対をなす第1トラック要素26Aから離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象の第2トラック要素26Bへの磁気信号の記録を行った実施例1〜4は、第2トラック要素記録工程(S106)において記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象の第2トラック要素26Bの幅方向Dwの中心と一致するように磁気ヘッド14を制御した比較例よりもSN比が高かった。即ち、記録ヘッド14Aの幅方向Dwの中心が記録対象のトラック要素の幅方向Dwの中心に対して記録対象のトラック要素と対をなすトラック要素から離れる方向にオフセットするように記録ヘッド14Aの幅方向Dwの位置を制御して記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することにより良好な記録再生特性が得られることが確認された。
【0161】
又、再生時において再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心に対して再生対象の第1トラック要素26Aと対をなす第2トラック要素26Bから離れる方向にオフセットする方向に再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象の第1トラック要素26Aに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行した実施例2は、再生時において再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象の第1トラック要素26Aの幅方向Dwの中心と一致していた実施例1よりもSN比が高かった。即ち、再生ヘッド14Bの幅方向Dwの中心が再生対象のトラック要素の幅方向Dwの中心に対して再生対象のトラック要素と対をなすトラック要素からオフセットする方向に再生ヘッド14Bの位置を制御して再生対象のトラックに記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行することにより更に良好な記録再生特性が得られることが確認された。
【0162】
又、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24が形成された実施例3及び4は、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24がなく、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとが接している実施例1及び2よりもSN比が高かった。即ち、第1トラック要素26Aと第2トラック要素26Bとの間にトラック分離微細溝24を形成することにより、更に一層良好な記録再生特性が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、トラック要素及びトラック分離要素を備える記録層を有する磁気記録媒体に利用することができる。
【符号の説明】
【0164】
10…磁気記録再生装置
12…磁気記録媒体
14…磁気ヘッド
16…制御装置
18…基板
20…記録層
22…トラック分離要素
24…トラック分離微細溝
24A…充填要素
26A…第1トラック要素
26B…第2トラック要素
28A、28B、28C、28D…バースト信号要素
32…軟磁性層
34…配向層
50…被加工体
52…第1マスク層
54…第2マスク層
56…樹脂層
Chw…記録ヘッドの幅方向の中心
Chr…再生ヘッドの幅方向の中心
Ct1…第1トラック要素の幅方向の中心
Ct2…第2トラック要素の幅方向の中心
SPA…スペース領域
UDA…単位データ領域
S102…第1トラック要素記録工程
S104、S108…記録継続/終了判定工程
S106…第2トラック要素記録工程
S202…再生対象トラック要素選択工程
S204…トラック要素再生工程
S206…再生継続/終了判定工程
S302…被加工体の出発体用意工程
S304…樹脂層形成工程
S306…トラック要素形成工程
S308…分離要素及び充填要素形成工程
S310…平坦化工程
S312…保護層成膜工程
S314…潤滑層成膜工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層、及び前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対して磁気信号の記録を行うための記録ヘッド及び前記磁気記録媒体に記録された磁気信号を再生するための再生ヘッドを備える磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを制御するための制御装置と、
を含み、
前記制御装置は、前記第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び前記第1トラック要素と対をなす前記第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、前記記録ヘッドの前記幅方向の中心が記録対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記記録ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記磁気記録媒体は、複数の対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離要素のみを挟んで前記幅方向に連続して配置されている単位データ領域を1つ以上備え、
前記制御装置は、1つの前記単位データ領域に前記幅方向に連続して配置されている複数の前記第1トラック要素及び複数の前記第2トラック要素への磁気信号の記録順序が、これら第1トラック要素及び第2トラック要素が前記幅方向に並ぶ順序と一致し、これら第1トラック要素及び第2トラック要素のうちの前記単位データ領域の前記幅方向のいずれか一方の端に配置されたトラック要素に最初に磁気信号が記録されるように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記制御装置は、前記第1トラック要素記録工程及び前記第2トラック要素記録工程の両方の工程において前記オフセット記録を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記制御装置は、前記第1トラック要素に記録された磁気信号を再生する第1トラック要素再生工程及び前記第2トラック要素に記録された磁気信号を再生する第2トラック要素再生工程の両方の工程において、前記再生ヘッドの前記幅方向の中心が再生対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記再生対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記再生ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記再生対象のトラック要素に記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記記録層には、前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の間に前記トラック分離要素よりも前記トラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が前記周方向に沿って形成され前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記記録層における前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の部分の上面がほぼ平坦であることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項7】
基板、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層、及び前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体における前記第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び前記第1トラック要素と対をなす前記第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッドの前記幅方向の中心が記録対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記記録ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することを特徴とする磁気記録媒体への記録方法。
【請求項8】
基板と、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層と、前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素と、を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されており、
前記記録層には、前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の間に前記トラック分離要素よりも前記トラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が前記周方向に沿って形成され前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】
請求項8において、
前記記録層における前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の部分の上面がほぼ平坦であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項1】
基板、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層、及び前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体と、
前記磁気記録媒体に対して磁気信号の記録を行うための記録ヘッド及び前記磁気記録媒体に記録された磁気信号を再生するための再生ヘッドを備える磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドを制御するための制御装置と、
を含み、
前記制御装置は、前記第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び前記第1トラック要素と対をなす前記第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、前記記録ヘッドの前記幅方向の中心が記録対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記記録ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記磁気記録媒体は、複数の対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離要素のみを挟んで前記幅方向に連続して配置されている単位データ領域を1つ以上備え、
前記制御装置は、1つの前記単位データ領域に前記幅方向に連続して配置されている複数の前記第1トラック要素及び複数の前記第2トラック要素への磁気信号の記録順序が、これら第1トラック要素及び第2トラック要素が前記幅方向に並ぶ順序と一致し、これら第1トラック要素及び第2トラック要素のうちの前記単位データ領域の前記幅方向のいずれか一方の端に配置されたトラック要素に最初に磁気信号が記録されるように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記制御装置は、前記第1トラック要素記録工程及び前記第2トラック要素記録工程の両方の工程において前記オフセット記録を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記制御装置は、前記第1トラック要素に記録された磁気信号を再生する第1トラック要素再生工程及び前記第2トラック要素に記録された磁気信号を再生する第2トラック要素再生工程の両方の工程において、前記再生ヘッドの前記幅方向の中心が再生対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記再生対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記再生ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記再生対象のトラック要素に記録された磁気信号の再生を行うオフセット再生を実行するように前記磁気ヘッドを制御することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記記録層には、前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の間に前記トラック分離要素よりも前記トラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が前記周方向に沿って形成され前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記記録層における前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の部分の上面がほぼ平坦であることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項7】
基板、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層、及び前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されている磁気記録媒体における前記第1トラック要素に磁気信号を記録する第1トラック要素記録工程及び前記第1トラック要素と対をなす前記第2トラック要素に磁気信号を記録する第2トラック要素記録工程の少なくとも後で実行される方の工程において、記録ヘッドの前記幅方向の中心が記録対象のトラック要素の前記幅方向の中心に対して前記記録対象のトラック要素と対をなす他方のトラック要素から離れる方向にオフセットするように前記記録ヘッドの前記幅方向の位置を制御して前記記録対象のトラック要素への磁気信号の記録を行うオフセット記録を実行することを特徴とする磁気記録媒体への記録方法。
【請求項8】
基板と、トラックに対応するパターンで形成され前記トラックの幅方向に交互に並んで配置された第1トラック要素及び第2トラック要素を備え前記基板の上に形成された記録層と、前記トラックの周方向に沿って形成されたトラック分離要素と、を含み、前記トラックの幅方向に隣り合う2つの前記トラック分離要素の間に一対の前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が配置され、前記第1トラック要素は前記隣り合う2つの前記トラック分離要素の一方のトラック分離要素に接して配置され前記第2トラック要素は他方のトラック分離要素に接して配置されており、
前記記録層には、前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の間に前記トラック分離要素よりも前記トラックの幅方向の幅が小さく、且つ、厚さ方向の寸法が小さいトラック分離微細溝が前記周方向に沿って形成され前記対をなす前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素が前記トラック分離微細溝で分離されていることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】
請求項8において、
前記記録層における前記第1トラック要素及び前記第2トラック要素の部分の上面がほぼ平坦であることを特徴とする磁気記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−192353(P2011−192353A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58602(P2010−58602)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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