説明

磁気記録再生装置

【課題】サーボデータをユーザデータと共に正確に復調することが可能で、精度の高いサーボ制御を実現することができる磁気記録再生装置を提供する。
【解決手段】再生ヘッド14によって再生されたサーボデータ信号とユーザデータ信号とを分離するためのセパレータ34と、このセパレータ34の後段に配設され、且つ、ユーザデータ信号の振幅AYに対するサーボデータ信号の振幅ASの振幅比AS/AYを大きくするための第1及び第2アンプ36、38と、を含んで構成された磁気記録再生装置10とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリートトラック媒体等の磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高密度記録が可能な磁気記録再生装置として、ディスクリートトラック媒体等の磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の磁気記録再生装置に適用される磁気記録媒体は、例えば、図12に示されるように、サーボデータ部SDとユーザデータ部YDを有して構成されており、サーボデータ部SDには、トラッキング用の位置検出マーク(サーボパターン)と呼ばれる専用パターンが形成される。この専用パターンは、ユーザデータ部YDと同じ材質の磁性層MLを物理的に分離して形成され、一例として、外部磁界により一方向に磁化されることにより、磁気信号が記録される。
【0004】
【特許文献1】特開平6−195907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の磁気記録再生装置では、ユーザデータ部YDの磁化信号は二方向の極性を持つのに対して、サーボデータ部SDの磁化信号は一方向の極性しか持たないため、図13(A)、(B)に示されるように、再生されるサーボデータ信号SSの振幅はユーザデータ信号YSの振幅の半分程度になる。そのため、ユーザデータ信号YSに比べ振幅の小さいサーボデータ信号SSのデータ誤り率が高くなり易く、正確なサーボ制御の妨げになってしまうといった問題点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、サーボデータをユーザデータと共に正確に復調することが可能で、精度の高いサーボ制御を実現することができる磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、鋭意研究の結果、サーボデータをユーザデータと共に正確に復調することが可能で、精度の高いサーボ制御を実現することができる磁気記録再生装置を見出した。
【0008】
即ち、次のような本発明により、上記目的を達成することができる。
【0009】
(1)磁性層で形成された所定の凹凸パターンによりサーボデータが形成されたサーボデータ部と、ユーザデータが記録可能なユーザデータ部を有してなる磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置であって、再生ヘッドによって再生されたサーボデータ信号とユーザデータ信号とを分離するための分離手段と、該分離手段の後段に配設され、且つ、前記ユーザデータ信号の振幅AYに対する前記サーボデータ信号の振幅ASの振幅比AS/AYを大きくするためのゲイン変更手段と、を含んでなることを特徴とする磁気記録再生装置。
【0010】
(2)前記ゲイン変更手段は、前記サーボデータ信号及びユーザデータ信号の振幅を異なる増幅量で増幅するように構成され、且つ、前記サーボデータ信号に対する増幅量は、前記ユーザデータ信号に対する増幅量よりも大きく設定されていることを特徴とする前記(1)記載の磁気記録再生装置。
【0011】
(3)前記ゲイン変更手段は、前記サーボデータ信号及びユーザデータ信号の振幅を異なる減衰量で減衰するように構成され、且つ、前記サーボデータ信号に対する減衰量は、前記ユーザデータ信号に対する減衰量よりも小さく設定されていることを特徴とする前記(1)記載の磁気記録再生装置。
【0012】
(4)前記ゲイン変更手段は、前記サーボデータ信号の振幅のみを増幅するように構成されていることを特徴とする前記(1)記載の磁気記録再生装置。
【0013】
(5)前記ゲイン変更手段は、前記ユーザデータ信号の振幅のみを減衰するように構成されていることを特徴とする前記(1)記載の磁気記録再生装置。
【0014】
(6)前記ゲイン変更手段の増幅量又は減衰量は、調整可能に構成されていることを特徴とする前記(2)乃至(5)のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
【0015】
(7)前記振幅比の平均値は、70%〜100%の範囲に設定されていることを特徴とする前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
【0016】
(8)前記分離手段の前段には、分離前の前記サーボデータ信号及びユーザデータ信号を増幅するための増幅手段が配設されていることを特徴とする前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の磁気記録再生装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る磁気記録再生装置によれば、サーボデータをユーザデータと共に正確に復調することが可能で、精度の高いサーボ制御を実現することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る磁気記録再生装置は、磁性層で形成された所定の凹凸パターンによりサーボデータが形成されたサーボデータ部と、ユーザデータが記録可能なユーザデータ部を有してなる磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置であって、再生ヘッドによって再生されたサーボデータ信号とユーザデータ信号とを分離するための分離手段と、該分離手段の後段に配設され、且つ、前記ユーザデータ信号の振幅AYに対する前記サーボデータ信号の振幅ASの振幅比AS/AYを大きくするためのゲイン変更手段と、を含んで構成されていることによって、サーボデータをユーザデータと共に正確に復調することが可能で、精度の高いサーボ制御を実現可能としたものである。
【0019】
以下、図面を用いて、本発明に係る実施例1〜5について詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
まず最初に、図1を用いて、本発明の実施例1に係る磁気記録再生装置について説明する。
【0021】
図1に示されるように、本実施例1に係る磁気記録再生装置10は、ディスク形状からなるディスクリートトラック媒体12と、このディスクリートトラック媒体12上に記録された磁化情報を再生するための再生ヘッド14と、この再生ヘッド14を駆動するためのサーボ制御部16と、再生ヘッド14によって再生された磁化情報を復調するための信号処理部18と、サーボ制御部16及び信号処理部18を制御するためのCPU20と、を含んで構成されている。
【0022】
ディスクリートトラック媒体12上には、サーボデータ部SDとユーザデータ部YDが周方向に交互に並んで形成されている。
【0023】
サーボデータ部SDには、磁性層(磁性材料)で形成された所定の凹凸パターンによりサーボデータが形成されている。このサーボデータ部SDには、トラック番号やセクタ番号などのアドレスデータや、ディスクリートトラック媒体12上のトラックと再生ヘッド14との相対位置を検出するためのバースト符号などが記録される。
【0024】
一方、ユーザデータ部YDには、磁性層で形成された所定の凹凸パターンの凸部により略同心円状の記録トラックが複数形成されており、これら各記録トラックは凹凸パターンの凹部により略同心円状に形成された複数の溝によって磁気的に分離されている。このユーザデータ部YDには、磁化情報としてユーザデータが記録される。
【0025】
サーボ制御部16は、再生ヘッド14を駆動可能なVCM(Voice Coil Motor)22及びヘッド位置制御回路部24によって構成されている。
【0026】
信号処理部18は、再生ヘッド14によって再生されたサーボデータ信号SSとユーザデータ信号YS(以下、サーボデータ信号SSとユーザデータ信号YSを併せて「再生信号」と称する場合がある。)が入力されるヘッドアンプ26と、このヘッドアンプ26によってゲイン調整された再生信号のノイズを除去するためのLPF(Low Pass Filter)28と、再生信号の復調等を行うためのリードライトチャネル30と、このリードライトチャネル30から出力されたユーザデータ信号YSのエラー訂正を行うためのエラー訂正回路部32と、によって構成されている。
【0027】
この信号処理部18のヘッドアンプ26は、図2に拡大して示されるように、再生ヘッド14によって再生されたサーボデータ信号SSとユーザデータ信号YSとを分離するためのセパレータ(分離手段)34と、このセパレータ34の後段に配設された2つの第1及び第2アンプ(ゲイン変更手段)36、38と、によって構成されている。
【0028】
セパレータ34によって分離されたサーボデータ信号SSは第1アンプ36に入力される一方、ユーザデータ信号YSは第2アンプ38に入力され、サーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSの振幅は異なる増幅量で増幅可能に構成されている。なお、本実施例1に係る第1アンプ36の増幅量AMP1は、第2アンプ38の増幅量AMP2よりも大きくなるように設定されている(AMP1>AMP2)。
【0029】
図1に戻って、CPU20は、信号処理部18のリードライトチャネル30及びエラー訂正回路32にそれぞれ接続されており、これらリードライトチャネル30及びエラー訂正回路32の制御を行うと共に、サーボデータ部SDに記録されたアドレス情報やバースト符号の振幅情報等を取得可能に構成されている。又、CPU20は、サーボ制御部16のヘッド位置検出回路部24にも接続されており、信号処理部18から取得したアドレス情報やバースト符号の振幅情報等に基づいて、再生ヘッド14の位置決め制御が可能である。なお、CPU20は、再生ヘッド14の位置決め制御の他、ディスクリートトラック媒体12の回転制御等を行うようになっている。
【0030】
次に、本実施例1に係る磁気記録再生装置10の作用について説明する。
【0031】
CPU20によってディスクリートトラック媒体12の回転制御や再生ヘッド14の位置決め制御等がなされることで、図3(A)に示されるようなサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSが再生ヘッド14から連続的に再生される。
【0032】
この再生ヘッド14によって再生されたサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSはヘッドアンプ26のセパレータ34に入力され、このセパレータ34によってサーボデータ信号SSとユーザデータ信号YSとに分離される。なお、サーボデータ信号SSとユーザデータ信号YSの分離方法は種々考えられるが、本実施例1に係るセパレータ34では、サーボデータ信号SSとユーザデータ信号YSとの間に生成される特定パターン(サーボマークのダイビットパルス)Pを検出すると共に、この特定パターンPが検出されたタイミングで再生信号の出力先を切り換えることによってサーボデータ信号SSとユーザデータ信号YSとの分離を行っている。
【0033】
このようにして分離されたサーボデータ信号SSは第1アンプ36によって、又、ユーザデータ信号YSは第2アンプ38によって、それぞれ振幅が増幅される。なお、本実施例1では、サーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSを分離した後に、それぞれの振幅を別々に増幅可能であるため、ユーザデータ信号YSの振幅がエラー訂正回路32の動作範囲に入るように最適設定することが可能となっている。
【0034】
上述の通り、本実施例1に係る第1アンプ36の増幅量(サーボデータ信号SSに対する増幅量)AMP1は、第2アンプ38の増幅量(ユーザデータ信号YSに対する増幅量)AMP2よりも大きく設定されている。従って、第1、第2アンプ36、38から出力されるサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSは、図3(B)に示されるような波形となり、ユーザデータ信号YSの振幅AY1(=A1)に対するサーボデータ信号SSの振幅AS1(=A1)の振幅比AS1/AY1(=A1/A1=1)は、図3(A)に示される、分離前のユーザデータ信号YSの振幅A0に対するサーボデータ信号SSの振幅A0/2の振幅比1/2(=(A0/2)/A0)よりも大きくなる。
【0035】
このようにして振幅が増幅されたサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSは、LPF28によってノイズの除去がなされた後、それぞれリードライトチャネル30で復調される。そして、サーボデータ信号SSはCPU20に出力される一方で、ユーザデータ信号YSはエラー訂正回路32に出力され、エラーの訂正がなされた後、再生データとして出力される。
【0036】
なお、本発明の発明者は、本実施例1の磁気記録再生装置10及び従来の磁気記録再生装置を用いて、サーボデータのトラックアドレス読み取りエラー個数と、ユーザデータのビットエラーレートのデータを実験により採取した。なお、本実験では、リードライトチャネル30に入力されたサーボデータ信号SSよりトラックアドレスを読み取ると共に、再生ヘッド14として読み込み幅120nmのGMR再生ヘッドを用い、サーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSを再生した。又、データの採取は以下に示す条件下で行った。
【0037】
直流磁界15kOeを有する電磁石の磁極間にディスクリートトラック媒体12のディスク面が略平行になるように設置した上で、サーボデータ部SDにおける垂直磁気記録層を一括して着磁させてサーボデータ信号の記録を行った。又、ユーザデータ信号の記録は、記録時のディスクリートトラック媒体12の回転数を4200rpmとし、ヘッド浮上高さ11nm、書き込み幅200nmの垂直磁気記録ヘッドで記録を行った。更に、垂直磁気記録層の磁気特性は、飽和磁化が350emu/cc、残留飽和磁化が340emu/ccとし、垂直磁気記録層の厚さ15nm、サーボデータ部SDの記録密度130kFRPI、ユーザデータ部YDの記録密度200kFCI、トラックピッチ200nm、トラック幅110nmとした。
【0038】
実験の結果、従来の磁気記録再生装置では、トラックアドレス読み取りエラーの個数は15、ビットエラーレートは2.6×10−6であったのに対して、本実施例1の磁気記録再生装置10のトラックアドレス読み取りエラーの個数は0、ビットエラーレートは1.0×10−7以下であった。
【0039】
更に、本発明の発明者は、実験により、ユーザデータ信号YSの振幅AYに対するサーボデータ信号SSの振幅ASの振幅比AS/AYと、トラックアドレス読み取りエラー個数及びビットエラーレートとの関係についてもデータを採取した。
【0040】
その結果、図4に示されるように、ユーザデータ信号YSの振幅AYに対するサーボデータ信号SSの振幅ASの振幅比AS/AYの平均値を70%〜100%の範囲に設定した場合には、トラックアドレス読み取りエラーが0で、ビットエラーレートが1.0×10−7以下になることが分かった。即ち、本実施例1における第1及び第2アンプ36、38の増幅量AMP1、AMP2は、上記振幅比AS/AYの平均値が70%〜100%の範囲となるように設定されていることが好ましい。
【0041】
なお、発明者の更なる実験によれば、上記振幅比AS/AYの平均値が100%を超える場合でも、(サーボデータ信号SSにおいて歪などが発生しない限り)ビットエラーレートは概ね1.0×10−7以下の良好な値を示すことが分かった。従って、上記振幅比AS/AYの平均値の上限は100%である必要はないが、サーボデータ信号SSにおける歪の発生や、信号処理部18における回路設計の複雑化等を考慮すると、上記振幅比AS/AYの平均値の上限は130%程度(振幅比AS/AYの平均値は70%〜130%の範囲)であることが好ましい。
【0042】
本実施例1に係る磁気記録再生装置10によれば、再生ヘッド14によって再生されたサーボデータ信号SSとユーザデータ信号YSとを分離するためのセパレータ(分離手段)34と、このセパレータ34の後段に配設され、且つ、ユーザデータ信号YSの振幅AYに対するサーボデータ信号SSの振幅ASの振幅比AS/AYを大きくするための第1及び第2アンプ(ゲイン変更手段)36、38と、を含んでなるため、サーボデータをユーザデータと共に正確に復調することが可能で、精度の高いサーボ制御を実現することができる。
【0043】
又、上述の通り、第1及び第2アンプ36、38の増幅量AMP1、AMP2を、上記振幅比AS/AYの平均値が70%〜100%の範囲となるように設定すれば、サーボデータをより一層正確に復調することが可能となる。
【0044】
なお、本実施例1においては、ゲイン変更手段である第1及び第2アンプ36、38を、サーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSの振幅を異なる増幅量AMP1、AMP2で増幅するように構成し、且つ、サーボデータ信号SSの増幅量AMP1を、ユーザデータ信号YSの増幅量AMP2よりも大きく設定したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
従って、例えば、ゲイン変更手段を、サーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSの振幅を異なる減衰量で減衰するように構成し、且つ、サーボデータ信号SSの減衰量を、ユーザデータ信号YSの減衰量よりも小さく設定するようにしても、本実施例1に係る磁気記録再生装置10と同様の効果を得ることができる(以下に説明する実施例2及び5についても同様である)。
【実施例2】
【0046】
次に、図5を用いて、本発明の実施例2に係る磁気記録再生装置について説明する。
【0047】
本実施例2に係る磁気記録再生装置(図示略)50は、上記実施例1の磁気記録再生装置10のヘッドアンプ26に代えて、図5に示されるようなヘッドアンプ52を適用したものである。なお、他の構造については実施例1の磁気記録再生装置10と同様であるため、ヘッドアンプ部分のみを図示し、他の構造の説明は省略することにする(以下の実施例についても同様である)。
【0048】
磁気記録再生装置50のヘッドアンプ52は、上述のセパレータ34と、2つの第1及び第2可変ゲインアンプ54、56によって構成されていると共に、セパレータ34の前段には、サーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSを増幅するためのプリアンプ(増幅手段)58が配設されている。
【0049】
本実施例2の磁気記録再生装置50では、再生ヘッド14によって再生されたサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSは、まずプリアンプ58によって増幅された後、セパレータ34によって分離され、図6(B)に示されるような波形となる。次に、分離後のサーボデータ信号SSは第1可変ゲインアンプ54によって、又、分離後のユーザデータ信号YSは第2可変ゲインアンプ56によって、それぞれの振幅が増幅(又は減衰)される。なお、本実施例2に係る第1、第2可変ゲインアンプ54、56の増幅量(又は減衰量)は調整可能とされており、第1可変ゲインアンプ54の増幅量(又は減衰量)は、第2可変ゲインアンプ56の増幅量(又は減衰量)よりも大きく(小さく)なるように設定される。従って、第1、第2可変ゲインアンプ54、56から出力されるサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSは、図6(C)に示されるような波形となり、ユーザデータ信号YSの振幅A2に対するサーボデータ信号SSの振幅A2の振幅比1(=A2/A2)は、図6(A)に示される、分離前のユーザデータ信号YSの振幅A0に対するサーボデータ信号SSの振幅A0/2の振幅比1/2よりも大きくなる。
【0050】
本実施例2に係る磁気記録再生装置50によれば、第1、第2可変ゲインアンプ(ゲイン変更手段)54、56の増幅量(又は減衰量)が調整可能に構成されているため、サーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSの振幅調整を容易に行うことができ、磁気記録媒体の個体差等に応じて振幅の大きさを最適設定することができる。
【0051】
又、セパレータ(分離手段)34の前段には、分離前のサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSを増幅するためのプリアンプ(増幅手段)58が配設されているため、1個のアンプでサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSをまとめて増幅することが可能である。
【0052】
なお、本実施例2においては、セパレータ34の前段にプリアンプ58を配設したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1、第2可変ゲインアンプ54、56によってサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSを十分に増幅(又は減衰)可能な場合には、プリアンプ58を配設しなくてもよい。
【実施例3】
【0053】
次に、図7を用いて、本発明の実施例3に係る磁気記録再生装置について説明する。
【0054】
本実施例3に係る磁気記録再生装置(図示略)60は、図7に示されるような、上記実施例2の磁気記録再生装置50における第2可変ゲインアンプ56を取り除いたヘッドアンプ62を備えている。
【0055】
本実施例3の磁気記録再生装置60では、再生ヘッド14によって再生されたサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSは、プリアンプ58によって増幅された後、セパレータ34で分離される点は上記実施例2の磁気記録再生装置50と同じである。そして、セパレータ34で分離されたサーボデータ信号SSは第1可変ゲインアンプ54によって、その振幅が増幅されるが、ユーザデータ信号YSは振幅が調整されることなくリードライトチャネル30に出力される。従って、ヘッドアンプ62から出力されるサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSは、それぞれ図8(B)、(C)に示されるような波形となり、ユーザデータ信号YSの振幅A3に対するサーボデータ信号SSの振幅A3の振幅比1(=A3/A3)は、図8(A)に示される、分離前のユーザデータ信号YSの振幅A0に対するサーボデータ信号SSの振幅A0/2の振幅比1/2よりも大きくなる。
【0056】
本実施例3の磁気記録再生装置60によれば、第1可変ゲインアンプ(ゲイン変更手段)54が、サーボデータ信号の振幅のみを増幅するように構成されているため、上記実施例1の磁気記録再生装置10と同様の効果を得ることができる上に、上記実施例1及び2の磁気記録再生装置10、50に比べ、回路構成を簡略化することができる。
【実施例4】
【0057】
次に、図9を用いて、本発明の実施例4に係る磁気記録再生装置について説明する。
【0058】
本実施例4に係る磁気記録再生装置(図示略)70は、図9に示されるような、上記実施例2の磁気記録再生装置50における第1可変ゲインアンプ54を取り除いたヘッドアンプ72を備えている。
【0059】
本実施例4の磁気記録再生装置70では、再生ヘッド14によって再生されたサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSは、プリアンプ58によって増幅された後、セパレータ34で分離される点は上記実施例2の磁気記録再生装置50と同じである。そして、セパレータ34で分離されたユーザデータ信号YSは第2可変ゲインアンプ56によって、その振幅が減衰されるが、サーボデータ信号SSは振幅が調整されることなくリードライトチャネル30に出力される。従って、ヘッドアンプ72から出力されるサーボデータ信号SS及びユーザデータ信号YSは、図10(B)及び(C)に示されるような波形となり、ユーザデータ信号YSの振幅A4に対するサーボデータ信号SSの振幅A4の振幅比1(=A4/A4)は、図10(A)に示される、分離前のユーザデータ信号YSの振幅A0に対するサーボデータ信号SSの振幅A0/2の振幅比1/2よりも大きくなる。
【0060】
本実施例4の磁気記録再生装置70によれば、第2可変ゲインアンプ(ゲイン変更手段)56が、ユーザデータ信号YSの振幅のみを減衰するように構成されているため、上記実施例1の磁気記録再生装置10と同様の効果を得ることができる上に、上記実施例1及び2の磁気記録再生装置10、50に比べ、回路構成を簡略化することができる。
【0061】
なお、本実施例4及び上記実施例3においては、増幅量又は減衰量の調整が可能な第1、第2可変ゲインアンプ54、56を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、増幅量又は減衰量が固定されたゲインアンプを適用してもよい。
【実施例5】
【0062】
次に、図11を用いて、本発明の実施例5に係る磁気記録再生装置について説明する。
【0063】
図11に示されるように、本実施例5に係る磁気記録再生装置(一部のみ図示)80は、上記実施例3の磁気記録再生装置60における第1可変ゲインアンプ54の増幅量(又は減衰量)をCPU20によって制御するようにしたものである。
【0064】
磁気記録再生装置80は、第1可変ゲインアンプ54から出力されるサーボデータ信号SSの最大振幅を検出可能な振幅検出器82を備えて構成されており、この振幅検出器82はCPU20に接続されている。
【0065】
この磁気記録再生装置80では、第1可変ゲインアンプ54で検出されたサーボデータ信号SSの最大振幅と、予め設定されたサーボデータ信号SSの基準振幅値をCPU20において比較し、サーボデータ信号SSの最大振幅と基準振幅値の差に基づく増幅量(又は減衰量)を第1可変ゲインアンプ54に設定可能となっている。
【0066】
本実施例5に係る磁気記録再生装置80によれば、第1可変ゲインアンプ54の増幅量(又は減衰量)を手動で設定する必要が無い上に、経時変化に伴って再生信号の振幅が変化した場合等においても再生信号を常に最良な状態に設定することができる。
【0067】
なお、上記実施例2〜4の磁気記録再生装置50、60、70における第1、第2可変ゲインアンプ54、56の増幅量(又は減衰量)も、本実施例5と同様にCPUによって制御するように構成してもよい。
【0068】
又、本発明に係る磁気記録再生装置は、上記実施例1〜5に係る磁気記録再生装置10、50、60、70、80で示した構造等に限定されるものではない。
【0069】
従って、例えば、ディスクリートトラック媒体12はディスク形状のものに限定されず、他の形状を有するものであってもよい。
【0070】
更に、分離手段とゲイン変更手段は必ずしもヘッドアンプ内に一体的に設ける必要は無く、分離手段とゲイン変更手段を別々に設けてもよい。
【0071】
更に又、ユーザデータ信号YSの振幅AY1に対するサーボデータ信号SSの振幅AS1の振幅比AS1/AY1は必ずしも1にする必要はない。即ち、本発明に係る「ゲイン変更手段」は、ユーザデータ信号YSの振幅AYに対するサーボデータ信号SSの振幅ASの振幅比AS/AYを大きくするものであればよい。
【0072】
又、本発明に係る磁気記録媒体は、上記実施例1〜5に係るディスクリートトラック媒体12のように、磁性層で形成された所定の凹凸パターンの凸部により略同心円状の記録トラックが複数形成され、各記録トラックは凹凸パターンの凹部により略同心円状に形成された複数の溝によって磁気的に分離されたユーザデータ部YDを有する磁気記録媒体に限定されるものではない。即ち、本発明に係る磁気記録媒体は、例えば、磁性層をメッシュ状又はドット状に区切って(各記録トラックをその周方向においても磁気的に複数に分離させて)形成した凸部(磁性体部)を島状(アイランド状)に孤立させたユーザデータ部を有する、いわゆるパターンド媒体であってもよく、又、凹凸パターンが形成されていない連続磁性層によってユーザデータ部が形成された磁気記録媒体であってもよい。
【0073】
更に、サーボデータ部に形成される所定の凹凸パターンは、磁性層で形成されたものであればよく、例えば、磁性層が物理的に分離して形成されているものの他、凹凸形状の基板上に磁性層が連続して形成されているものや、物理的に分離した凸状の磁性層の間(凹部)に磁性層が残留し、連続磁性層が形成されているものなどが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る磁気記録再生装置は、ディスクリートトラック媒体等の磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施例1に係る磁気記録再生装置のブロック図
【図2】同磁気記録再生装置におけるヘッドアンプのブロック図
【図3】同磁気記録再生装置における分離前の再生信号を模式的に示す図(A)及び分離後の再生信号を模式的に示す図(B)
【図4】本発明の実施例1及び従来例に係る磁気記録再生装置におけるユーザデータ信号の振幅AYに対するサーボデータ信号の振幅ASの振幅比AS/AYと、トラックアドレス読み取りエラー個数及びビットエラーレートとの関係を示す図
【図5】本発明の実施例2に係る磁気記録再生装置におけるヘッドアンプのブロック図
【図6】同磁気記録再生装置における分離前の再生信号を模式的に示す図(A)、分離後ゲイン調整前の再生信号を模式的に示す図(B)、ゲイン調整後の再生信号を模式的に示す図(C)
【図7】本発明の実施例3に係る磁気記録再生装置におけるヘッドアンプのブロック図
【図8】同磁気記録再生装置における分離前の再生信号を模式的に示す図(A)、分離後ゲイン調整前の再生信号を模式的に示す図(B)、ゲイン調整後の再生信号を模式的に示す図(C)
【図9】本発明の実施例4に係る磁気記録再生装置におけるヘッドアンプのブロック図
【図10】同磁気記録再生装置における分離前の再生信号を模式的に示す図(A)、分離後ゲイン調整前の再生信号を模式的に示す図(B)、ゲイン調整後の再生信号を模式的に示す図(C)
【図11】本発明の実施例5に係る磁気記録再生装置のブロック図
【図12】本発明及び従来の(サーボパターンが凹凸パターンで形成された)磁気記録媒体の磁化パターンを模式的に示すトラック周方向に沿った断面図
【図13】同磁気記録再生装置のサーボデータ信号の波形を模式的に示す図(A)及びユーザデータ信号の波形を模式的に示す図(B)
【符号の説明】
【0076】
AS…サーボデータ信号の振幅
AY…ユーザデータ信号の振幅
SD…サーボデータ部
YD…ユーザデータ部
SS…サーボデータ信号
YS…ユーザデータ信号
ML…磁性層
1、12…ディスクリートトラック媒体
10、50、60、70、80…磁気記録再生装置
14…再生ヘッド
16…サーボ制御部
18…信号処理部
20…CPU
22…VCM
24…ヘッド位置制御回路部
26、52、62、72…ヘッドアンプ
28…LPF
30…リードライトチャネル
32…エラー訂正回路部
34…セパレータ
36…第1アンプ
38…第2アンプ
54…第1可変ゲインアンプ
56…第2可変ゲインアンプ
58…プリアンプ
82…振幅検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層で形成された所定の凹凸パターンによりサーボデータが形成されたサーボデータ部と、ユーザデータが記録可能なユーザデータ部を有してなる磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置であって、再生ヘッドによって再生されたサーボデータ信号とユーザデータ信号とを分離するための分離手段と、該分離手段の後段に配設され、且つ、前記ユーザデータ信号の振幅AYに対する前記サーボデータ信号の振幅ASの振幅比AS/AYを大きくするためのゲイン変更手段と、を含んでなることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ゲイン変更手段は、前記サーボデータ信号及びユーザデータ信号の振幅を異なる増幅量で増幅するように構成され、且つ、前記サーボデータ信号に対する増幅量は、前記ユーザデータ信号に対する増幅量よりも大きく設定されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記ゲイン変更手段は、前記サーボデータ信号及びユーザデータ信号の振幅を異なる減衰量で減衰するように構成され、且つ、前記サーボデータ信号に対する減衰量は、前記ユーザデータ信号に対する減衰量よりも小さく設定されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記ゲイン変更手段は、前記サーボデータ信号の振幅のみを増幅するように構成されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記ゲイン変更手段は、前記ユーザデータ信号の振幅のみを減衰するように構成されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかにおいて、
前記ゲイン変更手段の増幅量又は減衰量は、調整可能に構成されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記振幅比の平均値は、70%〜100%の範囲に設定されていることを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記分離手段の前段には、分離前の前記サーボデータ信号及びユーザデータ信号を増幅するための増幅手段が配設されていることを特徴とする磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−65918(P2006−65918A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244809(P2004−244809)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】