説明

磁気記録再生装置

【課題】位置偏差情報を高精度に求める。
【解決手段】磁気記録再生装置において、バーストゲートの分割ゲート区間ごとに、バースト再生信号から、プリアンブル領域の再生信号処理の同期クロックによるサンプル値と複数の係数とに基づいて、プリアンブル再生信号に対するバースト再生信号の位相差を、複数の位相差に相当する位相差情報として求める位相検出部410と、分割ゲートごとの位相差情報に基づいて、磁気ヘッド中心のトラック中心位置からの分割ゲート区間ごとの偏差情報を求め、この偏差情報に基づいてバーストゲート区間における、磁気ヘッドのトラック中心位置からの位置偏差情報を求める位置検出部1821と、分割ゲート毎の偏差情報と分割ゲートの立ち上がり遅延時間に基づいて磁気ヘッドの磁気記録媒体径方向の移動速度を検出する速度検出部1822と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ヘッドを目標位置に位置決めするための情報が記録されたサーボ領域を具備した磁気記録媒体を再生する磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブ装置(HDD)において、磁気ヘッドを指定されたトラックに位置決めする際、磁気ヘッドを指定トラック上にシークさせた後に、磁気ヘッドのトラックの中心位置からの相対距離を求めて、磁気ヘッドをトラックに位置決め制御する必要がある。
【0003】
このような位置決め制御を行うため、磁気記録媒体のサーボ領域の中のバースト領域に記録された磁性部のサーボデータを再生して磁気ヘッドの位置決め制御を行っている。バースト領域は、磁気記録媒体径方向に配置位相の異なる4種類のバースト記録パターンで記録された磁性部からなるバーストA、B,C、Dに分割されており、各バーストA、B,C、Dを磁気ヘッドが横断する際の再生信号の振幅値に基づいて磁気ヘッドのトラックの中心位置からの相対距離を示す位置偏差情報を求め、磁気ヘッドをトラック中心位置に位置決めする位置決め制御を行っている。
【0004】
ところで、近年、磁気記録媒体として、サーボ領域に記録するサーボデータを磁性部として磁気記録媒体製造時に埋め込み形成するいわゆるパターンドメディアが注目を浴びている。
【0005】
このパターンドメディアでは、各バーストA、B,C、Dの磁性部の形状安定性を全面において確保することが困難であり、磁性部からの再生信号に対するノイズが増加して正確な位置偏差情報を得ることができず、磁気ヘッドの位置決め制御に支障をきたすことが問題となっている。
【0006】
また、パターンドメディアの製造時に全面転写形成を安定して行うためには、サーボ領域の磁性部の凹凸比の変化ができるだけ小さいことが好ましいが、サーボ領域の中で、プリアンブル領域やアドレス領域では凹凸比が50%、バースト領域では25%となり、全面転写形成によるディスクの製造が困難となっている。
【0007】
このような問題があることから、サーボデータの再生信号を処理する際に、サーボデータの再生信号の位相差を検出する技術が採用されている(例えば、特許文献1、2参照)。特に、磁気ヘッドのトラック中心位置からの相対距離である位置偏差情報を検出する処理において、バースト領域からの再生信号の位相差を検出して検出された位相差から位置偏差情報を求める技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開平7−169032号公報
【特許文献2】特開平6−68623号公報
【特許文献3】特開平6−231552号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の位相差検出を利用した再生信号処理では、位置偏差情報の精度を向上させることはできるものの、少なくとも二種類のバースト記録パターンからの再生信号の位相を検出することが必要となる。このため、このような従来の方式では、バースト領域には少なくとも2種類の異なるパターンで磁性部を記録する必要があり、従って磁気記録媒体のフォーマット効率が悪化するという問題がある。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、磁気ヘッドのトラック中心位置からのオフトラック位置に対する位置偏差情報を高精度に求めるとともに、フォーマット効率を向上させることができる磁気記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、磁気記録媒体に対する磁気ヘッドの位置検出を行うためのサーボデータを表すサーボ領域と、前記サーボ領域とトラック方向に並べて配置され、前記磁気ヘッドによってユーザデータの書き込み可能なデータ領域とを有し、前記サーボ領域が前記サーボデータのうちクロック同期をとるためのデータを表すプリアンブル記録パターンが複数の磁性部によって形成されたプリアンブル領域と、前記サーボデータのうちトラック中心位置に対する磁気ヘッドの相対位置を求めるためのデータを表し、前記プリアンブル記録パターンに対して予め定められた傾斜角度で傾斜した配置パターンである一種類のバースト記録パターンが複数の磁性部によって形成されたバースト領域と有する磁気記録媒体を再生する磁気記録再生装置であって、
前記バースト領域に対する再生処理区間であるバーストゲートを分割した分割ゲート区間ごとに、前記バースト領域から再生されたバースト再生信号から、前記プリアンブル領域の再生信号処理で定められた同期クロックでサンプリングされた各点におけるサンプル値と予め定められた複数の係数とに基づいて、前記プリアンブル領域の再生信号に対する前記バースト再生信号の位相差を、複数の位相差に相当する位相差情報として求める位相検出手段と、前記位相検出手段によって求めた前記分割ゲートごとの前記位相差情報に基づいて、前記磁気ヘッド中心の前記トラック中心位置からの前記分割ゲート区間ごとの偏差情報を求め、前記分割ゲート区間ごとの前記偏差情報に基づいて、前記バーストゲート区間における、前記磁気ヘッドのトラック中心位置からの相対距離を示す位置偏差情報を求める位置検出手段と、前記位置検出手段によって求めた前記分割ゲート毎の前記偏差情報と前記分割ゲートの立ち上がり遅延時間に基づいて、前記磁気ヘッドの前記磁気記録媒体の径方向の移動速度を検出する速度検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の磁気記録媒体によれば、磁気記録媒体のバースト領域が傾斜した一種類のバースト記録パターンである場合においても、高精度な位置偏差情報の検出が可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる磁気記録再生装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態にかかる磁気記録媒体の概略構造を示す模式図である。図1では、磁気記録媒体を上面からみた図を示している。図1に示すように、磁気記録媒体には、複数のトラック120が同心円上に設けられている。各トラックは、略放射状に形成された複数のサーボ領域110により、複数のデータ領域100に分断されている。
【0015】
データ領域100は、磁気記録媒体再生装置の磁気ヘッドによってユーザデータを書き込み可能な領域である。サーボ領域110は、磁気記録媒体再生装置の磁気ヘッドを磁気記録媒体上の位置検出を行うためのサーボデータが事前に記録された領域である。
【0016】
ここで、磁気記録媒体のトラック方向とは、1トラックにおいてセクタのアドレスが増加するセクタの配列方向であり、本実施の形態にかかる磁気記録媒体では図1に示す矢印A方向である。
【0017】
各データ領域には、トラック方向の順に物理セクタ0〜Nとして、アドレスが割り付けられている。尚、図1では、説明の都合上N=7の8セクタ構成で示しているが、実際にはN>100以上で構成される。
【0018】
また、磁気記録媒体の径方向は、磁気記録媒体の周縁から半径に沿って中心に向う方向をいい、本実施の形態にかかる磁気記録媒体では、トラックの幅方向に相当し、図1に示す矢印B方向である。
【0019】
また、本実施の形態の磁気記録媒体では、サーボ領域のトラックの幅とデータ領域のトラック幅が同一として形成されている。なお、これに限らず、サーボ領域110のトラックの幅をデータ領域100のトラックの幅の2/3になるように構成してもよい。
【0020】
図2は、実施の形態1にかかる磁気記録媒体のサーボ領域110を中心とした構造を示す模式図である。図2に示すように、本実施の形態にかかる磁気記録媒体は、各サーボ領域110のトラック方向にデータ領域100が並列配置された構造となっている。なお、図2において破線はトラックの中心線を示している。
【0021】
データ領域100は、磁気ヘッドによってユーザデータの書き込み可能な磁性帯101を有する複数のトラックが設けられ、隣接するトラック間にはユーザデータの書き込み不能な非磁性帯102が設けられている。すなわち、本実施の形態にかかる磁気記録媒体は、磁性帯101が非磁性帯102によって物理的に分離されたディスクリートトラック型の記録媒体となっている。
【0022】
サーボ領域110は、磁気記録媒体製造時においてスタンパによる全面転写により磁性部201,302と非磁性部202,302が形成されており、非磁性部202,302は非磁性体を充填した構造となっている。磁気記録再生装置の磁気ヘッドによりサー日領域110のサーボデータを再生する場合、磁性部201,302は2進値「1」、各非磁性部202,302は2進値「0」として再生される。
【0023】
サーボ領域110は、図2に示すように、プリアンブル領域111とアドレス領域112とバースト領域113とから構成されている。なお、磁性部201,302は、磁気記録媒体製造時におけるスタンパによる全面転写により形成させる他、事前にサーボトラックライタ(STW)により記録形成したものであってもよい。
【0024】
なお、本実施の形態にかかる磁気記録媒体において、非磁性帯102および非磁性部202,302は非磁性体を充填した構成しているが、非磁性体を充填する代わりに非磁性部202,302を空隙とした構造としてもよい。
【0025】
プリアンブル領域111は、サーボデータのうちクロック同期を行うためのデータが記録された領域であり、かかるデータのコード(「1」、「0」)に対応して磁性部201および非磁性部202が形成されている。プリアンブル領域111は、アドレス領域112およびバースト領域113よりも先に磁気ヘッドによって読み出され、磁気記録媒体の回転偏芯等により生ずる時間ズレに対してデータの再生信号のクロックを同期させるPLL(Phase Lock Loop)処理や再生信号の振幅を適正に維持するAGC(Auto Gain Controll)処理を行うために使用される。
【0026】
プリアンブル領域111では、磁気記録再生装置の磁気ヘッドがどのトラック位置にあってもデータから同様の再生信号が得られるように、複数の磁性部201をトラック方向に垂直なトラック幅方向(図1における矢印B方向、図2における垂直方向)に延在する直線状で形成し、複数の磁性部201は、磁性部201と同一幅の非磁性部を介在させてトラック方向に配置したプリアンブル記録パターンで記録されている。
【0027】
アドレス領域112は、サーボ領域110の開始を示すサーボマークというコードや、セクタ情報、シリンダ情報等をマンチェスタ符号化方式により表したデータが記録された領域であり、かかるデータのコード(「1」、「0」)に対応して磁性部201および非磁性部202が形成されている。ここで、シリンダ情報は、サーボ領域100単位でトラックごとに値が変化するように記録されている。
【0028】
バースト領域113は、トラック中心位置に対する磁気ヘッドの相対位置である位置偏差情報を求めるためのデータが記録された領域であり、かかるデータのコード(「1」、「0」)に対応して磁性部301および非磁性部302が形成されている。図3−1は、実施の形態1にかかる磁気記録媒体のバースト領域を拡大した模式図である。
【0029】
本実施の形態の磁気記録媒体のバースト領域113には、複数の磁性部301が、プリアンブル領域111のプリアンブル記録パターンに対して予め定められた傾斜角度で傾斜した配置パターンである単一のバースト記録パターンで形成されている。すなわち、バースト領域113の複数の磁性部301は、プリアンブル領域111のプリアンブル記録パターンで配置された各磁性部201が延在する磁気記録媒体の径方向(図2の垂直方向)に対して予め定められた傾斜角度で傾斜して直線状に配置されており、磁性部301と同一幅の非磁性部302を介在させてトラック方向に配列したバースト記録パターンで形成されている。また、本実施の形態のバースト領域113は、バーストA,バーストB、バーストC、バーストDのように径方向に配置位相が異なる4種類のバースト記録パターンで磁性部が記録された従来の磁気記録媒体のバースト領域のようにと異なり、傾斜した単一のバースト記録パターンで複数の磁性部301が形成されている。なお、磁性部301は、磁気記録媒体の製造の結果、全体として傾斜した直線状で形成されていればよく、微細な段階形状を含む直線形状であってもよい。
【0030】
バースト領域113の磁性部301のバースト記録パターンは、プリアンブル領域111の磁性部201の方向に対して傾斜して形成されているため、磁気ヘッドが径方向に移動することにより磁性部301からの再生信号の立ち上がり位相タイミングがずれていく。この磁性部301の傾斜角度は、図3−1に示すように、アドレス領域112のシリンダ情報の2トラック変化ごとにバースト再生信号の位相が一周期となる角度として定められている。
【0031】
なお、本実施の形態にかかる磁気記録媒体のバースト領域113では、データの再生信号の位相が一周期となる磁性部301の傾斜角度としては、アドレス領域112のシリンダ情報の2トラックに限定されるものではなく、2トラック以上4トラック以下の範囲であれば、傾斜角度が小さくならず十分な再生信号の振幅値を得ることができる。図3−2は、磁性部301の傾斜角度を4トラック変化ごとにバースト再生信号の位相が一周期となる角度として定めたバースト記録パターンで磁性部301を記録したバースト領域113の構造を示す模式図である。
【0032】
また、バースト記録パターンの磁性部301のトラック方向の一周期は、プリアンブル領域やアドレス領域の磁性部201の周期と同一となっている。このため、磁気ヘッドがプリアンブル領域111からバースト領域113へ移動した場合に、プリアンブル領域111からの再生信号からのサンプリングタイミングとして定められたクロック同期と同一のタイミングで、バースト領域113の再生信号のサンプリングを行って位相検出を実現することができる。
【0033】
次に、本実施の形態にかかる磁気記録媒体を再生する磁気記録再生装置のバースト領域再生回路について説明する。図4は、実施の形態1にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路の構成を示すブロック図である。
【0034】
本実施のバースト領域再生回路400は、図4に示すように、CTF401と、A−Dコンバータ402と、位相検出部410とを主に備えている。
【0035】
CTF(Continuous Time Filter)401は、入力されたバースト領域113から再生されたアナログの再生信号からLPF(Low Pass Filter)等によりフィルタ処理を行うものである。
【0036】
A−D(Analog-Digital)コンバータ402は、プリアンブル領域111の再生信号処理においてPLL(Phase Lock Loop)回路(図示せず)が出力する再生信号の同期クロックと同一のクロックのタイミングで、CTF401により出力されたアナログ信号をデジタルのバースト再生信号に変換し、サンプル値を位相検出部410のメモリ411に格納する。なお、本実施の形態では、一周期のバースト再生信号のアナログ信号から4点をサンプリングし、4点のサンプル値をメモリ411に格納するものとする。
【0037】
位相検出部410は、A−Dコンバータ402によってサンプリングされたバースト再生信号の4点サンプル値からバースト再生信号の同期クロックに対する位相差の位相差余弦値Cと位相差正弦値Sを求め、位相差余弦値Cを積算したBstABと位相差正弦値Sを積算したBstCDを出力タイミングを切り替えてを出力する。
【0038】
位相検出部410は、図4に示すように、メモリ411と二つの内積算出部412a,412bと二つの積分器413a,413bとを備えた構成となっている。
【0039】
メモリ411は、A−Dコンバータ402によってサンプリングした一周期4点のサンプル値を保存するものである。
【0040】
図5−1は、位相H0=0のバースト再生信号とサンプル点を示す説明図であり、図5−2は、位相H0のバースト再生信号とサンプル点を示す説明図である。ここで、図5−1および図5−2では、偶数のトラック番号のトラックのバースト領域からのバースト再生信号波形を示している。なお、奇数のトラック番号のトラックのバースト領域からのバースト再生信号は、図5−1および図5−2の波形をそれぞれ位相を180度反転した波形となる。
【0041】
A−Dコンバータ402によってバースト再生信号からのサンプリングされた4点のサンプル値は(1)によって近似することができる。
【0042】
【数1】

【0043】
メモリ411には、一周期ごとにの4点のサンプル値をベクトル化して、(2)式のように出力する。ここで、(2)式のy(0)、y(1)、y(2)、y(3)は、(1)式から算出すると、(3)〜(6)式のようになる。
【0044】
【数2】

【0045】
【数3】

【0046】
図5−1に示す位相H0=0の場合におけるメモリ411からの出力Yは、(3)〜(6)式においてH0=0として計算することにより、(7)式で示される。
【0047】
【数4】

【0048】
ここで、≒としているのは、実際のサンプル値はノイズの影響により理想的な値と誤差が生じるからである。
【0049】
内積算出部412aは、一周期につき4点のサンプル値Yをメモリ411から読み出して、サンプル値Yと余弦値検出用係数[1,1,−1,−1]との内積を算出し位相差余弦値Cを出力する。内積算出部412bは、4点のサンプル値Yをメモリ411から読み出して、サンプル値Yと正弦値検出用係数[1,−1,−1,1]との内積を算出し位相差正弦値Sを出力する。
【0050】
ここで、余弦値検出用係数[1,1,−1,−1]は、位相差0の正弦波値であり、正弦値検出用係数[1,−1,−1,1]は、位相差0の余弦波値である。
【0051】
内積算出部412aにより算出される位相差余弦値C、内積算出部412bにより算出される位相差正弦値Sは、(2)〜(6)式で示されるサンプル値Yと、余弦値検出用係数[1,1,−1,−1]、正弦値検出用係数[1,−1,−1,1]との内積をそれぞれ計算すると、(8)、(9)式で示される。
【0052】
【数5】

【0053】
積分器413aは内積算出部412aで求めた位相差余弦値Cを逐次積算し、積分器413bは内積算出部412bで求めた位相差正弦値Sを逐次積算して、各値のノイズを抑制して、位相差情報として出力するものである。これにより、直交検波に必要なオフトラック位相差に相当する位相差正弦値と位相差余弦値の2種類の位相差情報が得られることになる。
【0054】
位置検出部420は、位相差余弦値Cと位相差正弦値Sとトラック番号を入力して、磁気ヘッドのトラック中心からの相対距離を示す位置偏差情報を求めるものである。
【0055】
次に、以上のように構成された本実施の形態にかかるバースト領域再生回路400によるバースト領域再生処理について説明する。図6は、実施の形態1のバースト領域再生回路によるバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【0056】
磁気ヘッドが目標のトラックに移動してサーボ領域110のプリアンブル領域111、アドレス領域112を通過した後、バースト領域113に達すると、バースト信号再生処理を行う期間であるバーストゲートが立ち上がる。そして、磁気ヘッドからバースト領域113のバースト再生信号を読み取り、読み取ったアナログ再生信号をCTF401に送出する。CTF401では、アナログ再生信号にフィルタ処理を行い、A−Dコンバータ402に入力する。A−Dコンバータ402では、プリアンブル領域の再生信号処理において決定された同期クロックに従ったサンプルタイミングで再生信号をサンプリングし、一周期4点のサンプル値Yを位相検出部410のメモリ411に保存される。
【0057】
位相検出部410の内積算出部412aと内積算出部412bは、メモリ411から4点のサンプル値Yを取得する(ステップS601)。
【0058】
そして、内積算出部412aでは、取得したサンプル値Yと余弦値検出用係数[1,1,−1,−1]の内積を計算して位相差余弦値Cを求める(ステップS602)。この位相差余弦値Cは(8)式で示され、積分器413aに出力される。積分器413aでは、入力された位相差余弦値Cを逐次積算していく(ステップS603)。
【0059】
一方、内積算出部412bでは、取得したサンプル値Yと正弦値検出用係数[1,−1,−1,1]の内積を計算して位相差正弦値Sを求める(ステップS604)。この位相差正弦値Sは(9)式で示され、積分器413bに出力される。積分器413bでは、入力された位相差正弦値Sを逐次積算していく(ステップS605)。
【0060】
そして、上記ステップS601からS605までの処理を、バーストゲートの区間に含まれるM周期分繰り返し行う。ここで、M周期としては、バースト領域112の磁性部301すべての周期分(図2の例では21周期)について行ってもよいが、バースト領域113の開始位置では再生信号に歪みが生じてしまい、これを回避するために、バースト領域113における再生処理開始後2周期分経過した後時点で、バーストゲートを立ち上げて、バースト領域113の終了位置の1周期手前でバーストゲートを立ち下げることが好ましい。このため、図2の磁気記録媒体の例では、M=21周期分の間、バーストゲートが立ち上がっており、ステップS601からS605までの処理が繰り返されることになる。
【0061】
そして、積分器413aによりM周期分の位相差余弦値Cの積算が終了したら、位相差余弦値Cの積算値BstABを位置検出部420に出力する(ステップS606)。一方、積分器413bによりM周期分の位相差正弦値Sの積算が終了したら、位相差正弦値Sの積算値BstCDを位置検出部420に出力する(ステップS607)。
【0062】
図7−1は、位相差余弦値Cの積算値BstABと位相差正弦値Sの積算値BstCD(BstABとBstCDをバースト値という)の磁気ヘッド中心のトラック中心からのオフトラック位置による変化の状態を示すグラフである。
【0063】
図7−1において、702がバースト値BstABであり、701がバースト値BstCDである。バースト再生信号の波形は、実際には波形歪みが生じてしまい、(1)式で示される理想的な正弦波とはならない。このため、図7−1に示すように、バースト値BstABおよびBstCDもオフトラック位置に対して正弦波変動とならないが、トラック中心近傍では、BstCDがオフトラック位置に対してほぼ直線的に変化し、0.5トラックずれた位置(オフトラック位置=0.5,−0.5の位置)では、BstABがほぼ直線的に変化していることがわかる。このため、バースト値BstABおよびBstCDとからオフトラック位置に対応する位置偏差情報を高精度に求めることが可能である。
【0064】
このため、位置検出部420では、入力されたBstABとBstCDに図7−1のグラフに基づき事前に求めた重み係数を乗じた重み付け平均を求める。この際、上述したように、偶数トラックからの再生信号と奇数トラックからの再生信号とで、バースト再生信号の波形の位相が180度反転するため、トラック番号CYLを入力し、トラック番号が奇数か偶数かに応じてBstABとBstCDの位相の反転を行って重み付け平均を求めることにより平滑化処理を行い、位置偏差情報PESを求める。
【0065】
なお、位置検出部420では、このほか、例えば、BstABとBstCDの逆正接arctan(BstAB/BstCD)を求める等の手法で位置偏差情報BESを求めるように構成してもよい。
【0066】
図7−2は、各トラックアドレスに対する位置偏差情報PESを示すグラフである。実線703が位置偏差情報であり、波線704が奇数トラック周りと偶数トラック周りの偏差を示している。
【0067】
このように実施の形態1にかかる磁気記録媒体では、バースト領域113には複数の磁性部301がプリアンブル領域111の磁性部201のプリアンブル記録パターンに対して所定角度だけ傾斜した単一のバースト記録パターンで記録されているので、バースト領域が複数の異なるバースト記録パターンで構成される従来の磁気記録媒体に比べて、磁気記録媒体のフォーマット効率を向上させることができる。また、複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して予め定められた角度だけ傾斜した単一のバースト記録パターンで記録されているので、バースト領域113を磁気ヘッドが走査した場合にバースト再生信号の位相に変化が生じ、この位相の変化を検出することにより、磁気ヘッドのトラック中心位置からの位置偏差情報を高精度に求めることができる。
【0068】
また、実施の形態1にかかる磁気記録再生装置では、バースト再生信号のサンプル値からプリアンブル再生信号に対するバースト再生信号の位相差情報を求めて磁気ヘッドの位置偏差情報を求めているので、本実施の形態にかかる磁気記録媒体のように、バースト領域113が傾斜した単一のバースト記録パターンである場合でも、高精度な位置偏差情報の検出が可能になる。
【0069】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる磁気記録再生装置は、バースト領域再生回路において、バーストゲートを複数のゲートに分割してバースト領域113からの再生信号の処理を行うものである。
【0070】
本実施の形態の磁気記録媒体は、実施の形態1と同様に、バースト領域113の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンとして形成されている。本実施の形態では、サーボ領域110のトラック幅がデータ領域のトラック幅の2/3幅となるように形成されている。ただし、実施の形態1の磁気記録媒体を本実施の形態の磁気記録再生装置に使用してもよい。
【0071】
図8は、実施の形態2にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路800の構成を示すブロック図である。本実施のバースト領域再生回路800は、図8に示すように、CTF401と、A−Dコンバータ402と、位相検出部810とを主に備えている。CTF401、A−Dコンバータ402は、実施の形態1のバースト領域再生回路400のCTF401、A−Dコンバータ402と同様の機能を備えている。
【0072】
位相検出部810は、バーストゲートを4つのゲートに分割して、分割された各ゲートごとに、A−Dコンバータ402によってメモリ411に保存されたバースト再生信号の4点サンプル値からバースト値を位相差情報として求め、位置検出部420に出力する。
【0073】
位相検出部810は、図8に示すように、メモリ411と内積算出部812と積分器813とを備えた構成となっている。
【0074】
メモリ411は、実施の形態1と同様に、A−Dコンバータ402によってサンプリングした一周期4点のサンプル値を保存するものである。
【0075】
内積算出部812は、分割されたゲートごとに係数を切り替えて、ゲート単位で4点サンプル値と係数との内積を求める。本実施の形態では、実施の形態1と異なり、バーストゲートを等分に4分割して、ゲートA、ゲートB、ゲートC、ゲートDの区間を考え、これらの各ゲート区間ごとに4点サンプル値Yに乗算する内積係数を異ならせて切り替えている。
【0076】
従来の磁気記録媒体のバースト領域は、バーストA,バーストB、バーストC、バーストDに分割されたバースト記録パターンで形成されているため、各バースト部の各再生信号は図5−1に示すような位相差H0=0の再生信号として得られ、各バースト部での振幅値G0が変化することになる。このことは、一周期分の4点サンプル値に対する内積係数として[1,1,−1,−1]を採用することによって、その内積値Cは(8)式となり、振幅に比例した振幅相当値が得られる。ただし、実際にはノイズを抑制するため、複数周期分の内積値を積分して平均振幅として、バーストA,バーストB、バーストC、バーストDの各バースト値を求めている。
【0077】
しかしながら、本実施の形態では、磁気記録媒体のバースト領域113が図3−1に示すように、傾斜した単一のバースト記録パターンとして形成されているため、再生信号から得られる振幅が常に一定となる。このため、本実施の形態のバースト領域再生回路800では、バーストゲートを等分に4分割して、ゲートA、ゲートB、ゲートC、ゲートDの区間を考え、これらの各ゲート区間ごとに4点サンプル値Yに乗算する内積係数を異ならせて切り替え、異なる振幅値が得られるように構成している。
【0078】
図9は、バーストゲートの分割ゲートごとに内積係数を切り替えた状態を示す説明図である。図9に示すように、ゲートAでは内積係数[1,−1,−1,1]を、ゲートBでは内積係数[−1,1,1,−1]を、ゲートCでは内積係数[1,1,−1,−1]を、ゲートDでは内積係数[ー1,−1,1,1]を切り替えて、4点サンプル値Yとの内積を求めている。
【0079】
積分器813は、内積算出部812で求めた内積値をゲート毎に逐次積算して、ノイズを抑制し、積算値をバースト値(位相差情報)として位置検出部420に出力する。
【0080】
このように、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成されている場合でも、分割されたゲート毎に対応したバースト値が得られるため、位置検出部420は、従来のバーストA、バーストB、バーストC、バーストDの4つに分割されたバースト領域からの再生信号から位置偏差情報を求める従来の位置検出部420と機能および構成で、4種類のバースト記録パターンで形成されたバースト領域を有する磁気記録媒体と同様の処理で位置検出部420による磁気ヘッドの位置検出を行うことができるようになっている。
【0081】
次にこのように構成された本実施の形態のバースト領域再生回路800によるバースト領域再生処理について説明する。図10は、実施の形態2にかかるバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【0082】
磁気ヘッドが目標のトラックに移動してサーボ領域110のプリアンブル領域111、アドレス領域112を通過した後、バースト領域113に達すると、バースト信号再生処理を行う期間であるバーストゲートがゲートA、ゲートB、ゲートC、ゲートDに等分割される。そして、実施の形態1と同様に、磁気ヘッドからバースト領域113のバースト再生信号を読み取り、読み取ったアナログ再生信号をCTF401に送出する。CTF401では、アナログ再生信号にフィルタ処理を行い、A−Dコンバータ402に入力する。A−Dコンバータ402では、プリアンブル領域の再生信号処理において決定された同期クロックに従ったサンプルタイミングで再生信号をサンプリングし、一周期4点のサンプル値Yを位相検出部810のメモリ411に保存される。
【0083】
位相検出部810では、ゲートA区間が開始すると(ステップS1001:Yes)、内積算出部812は、メモリ411から4点のサンプル値Yを取得する(ステップS1002)。そして、内積算出部812は、取得したサンプル値YとゲートA区間に対応した内積係数[1,1,−1,−1]とを乗算して内積値を求め、積分器813で逐次積算する(ステップS1003)。そして、かかるステップS1002およびS1003の処理をゲートA区間が終了するまで繰り返す(ステップS1004:No)。これにより、積分器813ではゲートA区間中に算出された内積値が積算される。
【0084】
ゲートA区間が終了したら(ステップS1004:Yes)、積分器813で積算された値をバースト値Bst(位相差情報)として位置検出部420に送出する(ステップS1005)。
【0085】
次に、ゲートB区間が開始すると(ステップS1006:Yes)、内積算出部812は、メモリ411から4点のサンプル値Yを取得し(ステップS1007)、内積算出部812によって、取得したサンプル値YとゲートB区間に対応した内積係数[−1,1,1,−1]とを乗算して内積値を求め、積分器813で逐次積算する(ステップS1008)。そして、かかるステップS1007およびS1008の処理をゲートB区間が終了するまで繰り返す(ステップS1009:No)。これにより、積分器813ではゲートB区間中に算出された内積値が積算される。
【0086】
ゲートB区間が終了したら(ステップS1009:Yes)、積分器813で積算された値をバースト値Bst(位相差情報)として位置検出部420に送出する(ステップS1010)。
【0087】
同様に、ゲートC区間が開始すると(ステップS1011:Yes)、内積算出部812は、メモリ411から4点のサンプル値Yを取得し(ステップS1012)、内積算出部812によって、取得したサンプル値YとゲートC区間に対応した内積係数[1,1,−1,−1]とを乗算して内積値を求め、積分器813で逐次積算する(ステップS1013)。そして、かかるステップS1012およびS1013の処理をゲートC区間が終了するまで繰り返す(ステップS1014:No)。
【0088】
そして、ゲートC区間が終了したら(ステップS1014:Yes)、積分器813で積算された値をバースト値Bst(位相差情報)として位置検出部420に送出する(ステップS1015)。
【0089】
同様に、ゲートD区間が開始すると(ステップS1016:Yes)、内積算出部812は、メモリ411から4点のサンプル値Yを取得し(ステップS1017)、内積算出部812によって、取得したサンプル値YとゲートD区間に対応した内積係数[−1,−1,1,1]とを乗算して内積値を求め、積分器813で逐次積算する(ステップS1018)。そして、かかるステップS1017およびS1018の処理をゲートD区間が終了するまで繰り返す(ステップS1019:No)。
【0090】
そして、ゲートD区間が終了したら(ステップS1019:Yes)、積分器813で積算された値をバースト値Bst(位相差情報)として位置検出部420に送出する(ステップS1020)。
【0091】
このような処理により、分割されたゲートごとに異なる振幅G0を有するバースト値が位置検出部420に入力され、位置検出部420は従来の位置検出処理を変更せずに本実施の形態にかかる磁気記録媒体における磁気ヘッドの位置検出を行うことが可能となる。
【0092】
図11は、オフトラック位置と各ゲート区間におけるバースト値Bstの変化の状態を示すグラフである。1101がゲートA区間のバースト値Bst、1102がゲートB区間のバースト値Bstであり、1103がゲートC区間のバースト値Bst、1104がゲートD区間のバースト値Bstを示している。
【0093】
従来の磁気記録媒体による各バーストA,B,C,Dにおける振幅値と異なり、平均零の正負をもつバースト値となっているが、従来の磁気記録媒体による各バーストA,B,C,Dの場合とほぼ同様の傾向の4種類のバースト値を算出することができることがわかる。
【0094】
このように実施の形態2にかかる磁気記録再生装置では、バーストゲートを等分に4分割して、ゲートA、ゲートB、ゲートC、ゲートDの区間を考え、これらの各ゲート区間ごとに4点サンプル値Yに乗算する内積係数を異ならせて切り替えているので、位置検出部420は従来の位置検出処理を変更せずに、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成された本実施の形態にかかる磁気記録媒体における磁気ヘッドの位置検出を行うことが可能となる。
【0095】
(実施の形態3)
実施の形態2にかかる磁気記録再生装置では、バーストゲートを4区間に等分割して、内積算出部によって、分割された各ゲートごとに内積係数を切り替えて4種類の異なるバースト値を算出していたが、この実施の形態3にかかる磁気記録再生装置では、FIRフィルタによって入力値に対する重み付け係数を切り替えて異なるバースト値を位相差情報として算出するものである。
【0096】
本実施の形態の磁気記録媒体は、実施の形態2と同様に、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成され、サーボ領域のトラック幅がデータ領域のトラック幅の2/3となるように形成されている。ただし、実施の形態1の磁気記録媒体を本実施の形態の磁気記録再生装置に使用してもよい。
【0097】
図12は、実施の形態3にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路1200の構成を示すブロック図である。本実施のバースト領域再生回路1200は、図12に示すように、CTF401と、A−Dコンバータ402と、位相検出部1210とを主に備えている。CTF401、A−Dコンバータ402は、実施の形態1のバースト領域再生回路400のCTF401、A−Dコンバータ402と同様の機能を備えている。
【0098】
位相検出部1210は、図12に示すように、FIRフィルタ1212と、ループゲイン1214と、積分器1213とを備えた構成となっている。
【0099】
FIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter)1212は、インパルスを入力したときの出力信号が有限時間に収束するフィルタであり、A−Dコンバータ402でデジタル信号に変換されたバースト再生信号のサンプル値を等化する。本実施の形態では、FIRフィルタ1212は4タップのフィルタで構成されており、入力信号に対し、(10)式により出力値を算出するようになっている。
【0100】
【数6】

【0101】
ここで、(10)式は、kにおける出力値Out[k]は、現在および過去の入力値Y[k],Y[k−1],Y[k−2],Y[k−3]の重み付け平均で表されることを意味しており、係数A0,A1,A2,A3がループゲイン1214に保存されており、(10)式を算出する際に参照される。
【0102】
この(10)式からわかるように、FIRフィルタ1212は、4点サンプル値Yと係数[A0,A1,A2,A3]との内積値を算出する処理と等価の処理を行うものであり、本実施の形態のバースト領域再生回路800は、実施の形態2における内積算出部812の代わりに、FIRフィルタ1212を使用している。
【0103】
しかし、本実施の形態では、実施の形態2のように、一周期4点のサンプル値を入力して内積値を求めるのではなく、各点のサンプル値を1点ごとに入力し、入力した1点のサンプル値Y[k]と入力時点から前の3点のサンプル値Y[k−1],Y[k−2],Y[k−3]の4点のサンプル値とループゲイン1214の係数A0,A1,A2,A3との内積を(10)式に従って求めている。そして、一周期毎の同期をとるために、係数A0,A1,A2,A3をサンプル値を入力するたびにループさせ、逐次変更している。より具体的には、あるサンプル値入力時点での係数[A0,A1,A2,A3]を、次のサンプル値入力時点では[A3,A0,A1,A2]に、さらに次のサンプル値入力点では[A2,A3,A0,A1]と変更し、一周期4点のサンプル値入力後に最初の係数[A0,A1,A2,A3]に戻るようにループさせている。このようなFIRフィルタ1212は、プリアンブル領域の再生信号処理におけるAGC処理やPLL処理時に使用されている回路であるため、バースト領域再生処理で流用することにより、内積算出部のような新たな回路を設けることを不要として、バースト領域再生回路の回路規模を小さくすることができるという利点がある。
【0104】
積分器1213は、FIRフィルタ1212で求めた内積値を逐次積算して、ノイズを抑制し、積算値をバースト値Bst(位相差情報)として位置検出部420に出力する。なお、本実施の形態の位相検出部1210では、各点のサンプル値をその都度、FIRフィルタ1212に入力しているので、実施の形態2のように、4点のサンプル値を保存するメモリは設けられていない。
【0105】
次にこのように構成された本実施の形態のバースト領域再生回路800によるバースト領域再生処理について説明する。図13は、実施の形態3にかかるバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【0106】
磁気ヘッドが目標のトラックに移動してサーボ領域110のプリアンブル領域111、アドレス領域112を通過した後、バースト領域113に達すると、実施の形態2と同様に、バースト信号再生処理を行う期間であるバーストゲートがゲートA、ゲートB、ゲートC、ゲートDに等分割される。そして、実施の形態1と同様に、磁気ヘッドからバースト領域113のバースト再生信号を読み取り、読み取ったアナログ再生信号をCTF401に送出する。CTF401では、アナログ再生信号にフィルタ処理を行い、A−Dコンバータ402に入力する。A−Dコンバータ402では、プリアンブル領域の再生信号処理において決定された同期クロックに従ったサンプルタイミングで再生信号をサンプリングする。
【0107】
位相検出部1210では、分割ゲート区間(最初はゲートA区間)が開始すると(ステップS1301:Yes)、FIRフィルタ1212がサンプル値Y[k]を取得する(ステップS1302)。そして、FIRフィルタ1212は、取得したサンプル値Y[k]および以前に取得したサンプル値Y[kー1],Y[kー2],Y[kー3]と係数[A0,A1,A2,A3]とを(10)式のように乗算して、内積値を求め、積分器1213で逐次積算する(ステップS1303)。
【0108】
そして、FIRフィルタ1212は、次のサンプル値Y[k+1]をA−Dコンバータ402から取得する(ステップS1304)。そして、FIRフィルタ1212は、取得したサンプル値Y[k+1]および以前に取得したサンプル値Y[k],Y[kー1],Y[kー2]と、ひとつループさせた係数[A3,A0,A1,A2]とを(11)式のように乗算して、内積値を求め、積分器1213で逐次積算する(ステップS1305)。
【0109】
【数7】

【0110】
次に、FIRフィルタ1212は、次のサンプル値Y[k+2]をA−Dコンバータ402から取得する(ステップS1306)。そして、FIRフィルタ1212は、取得したサンプル値Y[k+2]および以前に取得したサンプル値Y[k+1],Y[k],Y[kー1]と、さらにひとつループさせた係数[A2,A3,A0,A1]とを(12)式のように乗算して、内積値を求め、積分器1213で逐次積算する(ステップS1307)。
【0111】
【数8】

【0112】
次に、FIRフィルタ1212は、次のサンプル値Y[k+3]をA−Dコンバータ402から取得する(ステップS1308)。そして、FIRフィルタ1212は、取得したサンプル値Y[k+3]および以前に取得したサンプル値Y[k+2],Y[k+1],Y[k]と、さらにひとつループさせた係数[A1,A2,A3,A0]とを(13)式のように乗算して、内積値を求め、積分器1213で逐次積算する(ステップS1309)。
【0113】
【数9】

【0114】
このようなステップS1302からS1309までの処理を現在の分割ゲート区間が終了するまで繰り返す(ステップS1310:No)。現在の分割ゲート区間が終了したら(ステップS1310:Yes)、現在の分割ゲート区間で積算されたバースト値Bst(位相差情報)を位置検出部420に送出する(ステップS1311)。以上のようなステップS1301からS1311までの処理がゲートA、ゲートB、ゲートC、ゲートDに対して繰り返し行われる。これにより、実施の形態2と同様に、各ゲート区間ごとに異なるバースト値(位相差情報)が位置検出部420に出力されることになる。
【0115】
このように実施の形態3にかかる磁気記録再生装置では、FIRフィルタによって内積係数を切り替えてバースト値を求めているので、実施の形態2と同様に、位置検出部420は従来の位置検出処理を変更せずに、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成された本実施の形態にかかる磁気記録媒体における磁気ヘッドの位置検出を行うことが可能となる。
【0116】
また、実施の形態3にかかる磁気記録再生装置では、内積算出にプリアンブル領域再生信号処理で使用されるFIRフィルタ1212を流用しているので、内積算出部のような新たな回路を設けることを不要として、バースト領域再生回路の回路規模を小さくすることができる。
【0117】
尚、各ゲートでの係数の初期値は、各ゲートで変更するように構成してもよいが、各ゲートの立ち上がりで、係数を更に1だけループさせるように構成することが好ましい。この場合、ゲート毎のバースト値は、従来の4種類の異なるバーストA,B,C,Dに分割されたバースト記録パターンで形成されたバースト領域を有する磁気記録媒体の再生処理と異なり、バースト値がバーストAに対応したバースト値、バーストCに対応したバースト値、バーストBに対応したバースト値、バーストDに対応したバースト値のように出力順番が異なるが、4種類のバースト値が出力されるため、位置検出部420による位置検出処理を行うことは可能である。
【0118】
(実施の形態4)
実施の形態1の磁気記録再生装置では、位相検出部410によって位相差余弦値Cと位相差正弦値Sを求め、求めた位相差余弦値Cと位相差正弦値Sをそのまま位置検出部420に出力していたが、この実施の形態4にかかる磁気記録再生装置は、位相差余弦値Cと位相差正弦値Sを求めて除算処理を行って位置偏差信号の近似処理を行うものである。
【0119】
本実施の形態の磁気記録媒体は、実施の形態1と同様に、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成され、サーボ領域のトラック幅がデータ領域のトラック幅と同一幅で形成されている。ただし、実施の形態2の磁気記録媒体を本実施の形態の磁気記録再生装置に使用してもよい。
【0120】
図14は、実施の形態4にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路1400の構成を示すブロック図である。本実施のバースト領域再生回路1400は、図14に示すように、CTF401と、A−Dコンバータ402と、位相検出部1410とを主に備えている。CTF401、A−Dコンバータ402は、実施の形態1のバースト領域再生回路400のCTF401、A−Dコンバータ402と同様の機能を備えている。
【0121】
位相検出部1410は、A−Dコンバータ402によってサンプリングされたバースト再生信号の4点サンプル値から位相差余弦値C、(−C)と位相差正弦値Sを求め、これらをそれぞれ積算した値から除算値S/Cおよび(−C/S)を求めて平滑化処理部1415に出力する。
【0122】
位相検出部1410は、図14に示すように、メモリ411と、3つの内積算出部1412a,1412b,1412cと、3つの積分器1413a,1413b,1413cと2つの除算器1414a,1414bとを備えている。ここで、メモリ411は実施の形態1にかかる位相検出部410のメモリ411と同様の機能を有し、A−Dコンバータ402から出力される4点のサンプル値を保存するものである。
【0123】
内積算出部1412aは、一周期につき4点のサンプル値Yをメモリ411から読み出して、(2)〜(6)式で示されるサンプル値Yと余弦値検出用係数[1,1,−1,−1]との内積を算出し、(14)式で示される位相差余弦値Cを出力する。内積算出部1412bは、4点のサンプル値Yをメモリ411から読み出して、サンプル値Yと正弦値検出用係数[1,−1,−1,1]との内積を算出し、(15)式で示される位相差正弦値Sを出力する。内積算出部1412cは、4点のサンプル値Yをメモリ411から読み出して、サンプル値Yと余弦値検出用係数[−1,−1,1,1]との内積を算出し、(16)式で示される位相差余弦値(−C)を出力する。
【0124】
【数10】

【0125】
ここで、余弦値検出用係数[1,1,−1,−1]は、位相差0の正弦波値であり、正弦値検出用係数[1,−1,−1,1]は、位相差0の余弦波値であり、余弦値検出用係数[−1,−1,1,1]は、位相差180度の正弦波値である。
【0126】
積分器1413aは内積算出部1412aで求めた位相差余弦値Cを逐次積算し、積分器1413bは内積算出部1412bで求めた位相差正弦値Sを逐次積算し、積分器1413cは内積算出部1412cで求めた位相差余弦値(−C)を逐次積算して、それぞれノイズを抑制するものである。
【0127】
除算器1414aは、積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sを積分器1413aから出力される積算された位相差余弦値Cで除算して除算値Ph−A(=S/C)を求め、平滑化処理部1415に出力するものである。除算器1414bは、積分器1413cから出力される積算された位相差余弦値(−C)を積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sで除算して除算値Ph−B(=(−C/S))を求め、平滑化処理部1415に出力するものである。
【0128】
再生信号の位相は、厳密には、位相差余弦値Cと位相差正弦値Sの逆正接であるarctan(C/S)として検出されるが、位相0となる位置の近傍においては、arctan(C/S)の値は、S/Cの除算値に近似できる。このため、本実施の形態では、位相検出部1410の除算器1414aによって除算値ph−A=S/Cを位相差情報として求め、トラック中心からの位相差を検出している。
【0129】
また、90度位相がずれた位置では位相差余弦値C=0となり、除算値S/Cを求めることができず、かかる位置の近傍では、位相差の信頼性が低くなる。このため、本実施の形態の位相検出部1410では除算器1414bによって除算値Ph−B=(−C/S)を90度オフセットした位相差情報として求めている。
【0130】
平滑化処理部1415は、位相検出部1410から位相差情報Ph−AおよびPh−Bを入力し、この2つの値の重み付け平均をとって平滑化し、位置偏差情報を求めるものである。
【0131】
次に、以上のように構成された本実施の形態のバースト領域再生回路1400によるバースト領域再生処理について説明する。図15は、実施の形態4にかかるバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【0132】
磁気ヘッドが目標のトラックに移動してサーボ領域110のプリアンブル領域111、アドレス領域112を通過した後、バースト領域113に達すると、実施の形態1と同様に、バーストゲートが立ち上がり、磁気ヘッドからバースト領域113のバースト再生信号を読み取り、読み取ったアナログ再生信号をCTF401に送出する。そして、CTF401でアナログ再生信号にフィルタ処理を行い、A−Dコンバータ402により、プリアンブル領域の再生信号処理において決定された同期クロックに従ったサンプルタイミングで再生信号をサンプリングし、一周期4点のサンプル値Yを位相検出部410のメモリ411に保存される。
【0133】
位相検出部1410の内積算出部1412a、内積算出部1412bおよび内積算出部1412cは、メモリ411から4点のサンプル値Yを取得する(ステップS1501)。
【0134】
そして、内積算出部1412aでは、取得したサンプル値Yと余弦値検出用係数[1,1,−1,−1]の内積を計算して位相差余弦値Cを求める(ステップS1502)。この位相差余弦値Cは(14)式で示され、積分器1413aに出力される。積分器1413aでは、入力された位相差余弦値Cを逐次積算していく(ステップS1503)。
【0135】
また、内積算出部1412bでは、取得したサンプル値Yと正弦値検出用係数[1,−1,−1,1]の内積を計算して位相差正弦値Sを求める(ステップS1504)。この位相差正弦値Sは(15)式で示され、積分器1413bに出力される。積分器1413bでは、入力された位相差正弦値Sを逐次積算していく(ステップS1505)。
【0136】
さらに、内積算出部1412cでは、取得したサンプル値Yと余弦値検出用係数[−1,−1,1,1]の内積を計算して位相差余弦値(−C)を求める(ステップS1506)。この位相差余弦値(−C)は(16)式で示され、積分器1413cに出力される。積分器1413cでは、入力された位相差余弦値(−C)を逐次積算していく(ステップS1507)。そして、このようなステップS1501からS1507までの処理をM周期分繰り返し行う。ここで、M周期については実施の形態1と同様に、バースト領域112の磁性部301すべての周期分(図2の例では21周期)について行っても、バースト領域113における再生処理開始後2周期分経過した後時点で、バーストゲートを立ち上げて、バースト領域113の終了位置の1周期手前でバーストゲートを立ち下げることにより18周期分としてもよい。
【0137】
上記処理をM周期分繰り返したら、除算器1414aによって、積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sを積分器1413aから出力される積算された位相差余弦値Cで除算して位相差情報Ph−A(=S/C)を求め、平滑化処理部1415に出力する(ステップS1508)。
【0138】
次に、除算器1414bによって、積分器1413cから出力される積算された位相差余弦値(−C)を積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sで除算して位相差情報Ph−B(=(−C)/S)を求め、平滑化処理部1415に出力する(ステップS1509)。
【0139】
平滑化処理部1415では、位相差情報Ph−A(=S/C)およびPh−B(=(−C/S))を入力して、重み付き平均a*(S/C)+b*(−C/S)(a,b:重み係数)を計算することにより、平滑化を行い位置偏差情報PESを求める(ステップS1510)。
【0140】
このように実施の形態4にかかる磁気記録再生装置では、位相差余弦値Cと位相差正弦値Sを求めて除算処理を行って、arctan(C/S)をPh−A(=S/C)およびPh−B(=(−C/S))で近似して位置偏差信号を求めているので、トラック中心からの位置によらず確実に位相差を求めることができ、磁気ヘッドの位置検出をより高精度に行うことができる。
【0141】
(実施の形態4の変形例)
実施の形態4では、位相0となる位置および90度位相がずれた位置の近傍におけるarctan(C/S)をそれぞれPh−A(=S/C)、Ph−B(=(−C/S))で近似していたが、さらに、内積算出部と除算器をそれぞれ4個設けて、90度ごとにすれた位相となる位置において近似した4つの位相差情報を求めるように構成してもよい。
【0142】
図16は、実施の形態4の変形例としてのバースト領域再生回路1600の構成を示すブロック図である。この変形例では、位相検出部1610が、図14に示すように、メモリ411と、4つの内積算出部1412a,1412b,1412c,1612dと、4つの積分器1413a,1413b,1413c,1613dと、4つの除算器1414a,1414b,1614c,1614dとを備えている。ここで、メモリ411は実施の形態1にかかる位相検出部410のメモリ411と同様の機能を有し、A−Dコンバータ402から出力される4点のサンプル値を保存するものである。
【0143】
内積算出部1412a、1412b、1412cは、実施の形態4と同様に、一周期につき4点のサンプル値Yをメモリ411から読み出して、(2)〜(6)式で示されるサンプル値Yと、余弦値検出用係数[1,1,−1,−1]、正弦値検出用係数[1,−1,−1,1]、余弦値検出用係数[−1,−1,1,1]との内積をそれぞれ算出し、それぞれ(14)、(15)、(16)式で示される位相差余弦値C、位相正弦値S、位相差余弦値(−C)を出力するものである。
【0144】
内積算出部1612dは、この変形例で追加されたものであり、4点のサンプル値Yをメモリ411から読み出して、サンプル値Yと正弦値検出用係数[−1,1,1,−1]との内積を算出し、(17)式で示される位相差正弦値(−S)を出力するものである。ここで、正弦値検出用係数[−1,1,1,−1]は、位相差180度の余弦波値である。
【0145】
【数11】

【0146】
積分器1413a、1413b、1413cは、実施の形態4と同様に、内積算出部1412a,1412b、1412cで求めた位相差余弦値C、位相差正弦値S、位相差余弦値(−C)をそれぞれ逐次積算し、ノイズを抑制するものである。積分器1613dは、内積算出部1612dで求めた位相差正弦値(−S)を逐次積算し、ノイズを抑制するものである。
【0147】
除算器1414aは、実施の形態4と同様に、積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sを積分器1413aから出力される積算された位相差余弦値Cで除算して除算値Ph−A(=S/C)を求め、平滑化処理部1615に出力するものである。
【0148】
除算器1414bは、実施の形態4と同様に、積分器1413cから出力される積算された位相差余弦値(−C)を積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sで除算して除算値Ph−B(=(−C/S))を求め、平滑化処理部1615に出力するものである。
【0149】
除算器1614cは、積分器1613dから出力される積算された位相差正弦値(−S)を積分器1413aから出力される積算された位相差余弦値Cで除算して除算値Ph−C(=(−S/C))を求め、平滑化処理部1615に出力するものである。
【0150】
除算器1614dは、積分器1413aから出力される積算された位相差余弦値Cを積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sで除算して除算値Ph−D(=C/S)を求め、平滑化処理部1615に出力するものである。
【0151】
これらの位相差情報Ph−A=S/C、Ph−B=(−C/S),Ph−C=(−S/C)、Ph−D=C/Sは、位相0、90度位相ずれ、180度位相ずれ、270度位相ずれの各オフトラック位置の近傍において、arctan(C/S)を近似したものである。
【0152】
このように構成された変形例のバースト領域再生回路1600によるバースト領域再生処理について説明する。図17は、実施の形態4の変形例のバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【0153】
位相検出部1410の内積算出部1412a、内積算出部1412bおよび内積算出部1412c、1612dによってメモリ411から4点のサンプル値Yを取得するが(ステップS1701)、内積算出部1412a,1412b、1412cによる内積算出処理および積分器1413a,1413b、1413cによる積算処理(ステップS1702〜S1707)については実施の形態4の処理(S1502〜S1507)と同様に行われる。
【0154】
次に、内積算出部1612dでは、取得したサンプル値Yと正弦値検出用係数[−1,−1,1,1]の内積を計算して位相差正弦値(−S)を求める(ステップS1708)。この位相差正弦値(−S)は(17)式で示され、積分器1613dに出力される。積分器1614dでは、入力された位相差正弦値(−S)を逐次積算していく(ステップS1709)。
【0155】
そして、以上のステップS1701からS1709までの処理をM周期分繰り返し行う。上記処理をM周期分繰り返したら、除算器1414aによって、積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sを積分器1413aから出力される積算された位相差余弦値Cで除算して位相差情報Ph−A(=S/C)を求め、平滑化処理部1615に出力する(ステップS1710)。
【0156】
次に、除算器1414bによって、積分器1413cから出力される積算された位相差余弦値(−C)を積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sで除算して位相差情報Ph−B(=(−C/S))を求め、平滑化処理部1615に出力する(ステップS1711)。
【0157】
また、除算器1614cによって、積分器1613dから出力される積算された位相差正弦値(−S)を積分器1413aから出力される積算された位相差余弦値Cで除算して除算値Ph−C(=(−S/C))を求め、平滑化処理部1615に出力する(ステップS1712)。
【0158】
さらに、除算器1614dによって、積分器1413aから出力される積算された位相差余弦値Cを積分器1413bから出力される積算された位相差正弦値Sで除算して除算値Ph−D(=C/S)を求め、平滑化処理部1615に出力する(ステップS1713)。
【0159】
平滑化処理部1615では、位相差情報Ph−A(=S/C)、Ph−B(=(−C/S))、Ph−C(=(−S/C))およびPh−D(=C/S)を入力して、重み付き平均a*(S/C)+b*(−C/S)+c*(−S/C)+d*(C/S)(a,b、c、d:重み係数)を計算することにより、平滑化を行い位置偏差情報PESを求める(ステップS1714)。
【0160】
このように実施の形態4の変形例の磁気記録再生装置では、90度ごとにずれた位相となる位置において近似した4つの位相差情報を求めて、位置偏差信号を求めているので、トラック中心からの位置によらずより確実に位相差を求めることができ、磁気ヘッドの位置検出をより高精度に行うことができる。
【0161】
(実施の形態5)
実施の形態1〜4にかかる磁気記録再生装置は、バースト領域113の再生信号から磁気ヘッドの位置検出を行うものであったが、この実施の形態5にかかる磁気記録再生装置は、バースト領域113の再生信号から、さらに磁気ヘッドの記録媒体径方向の移動速度を検出するものである。
【0162】
本実施の形態の磁気記録媒体は、実施の形態1と同様に、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成され、サーボ領域のトラック幅がデータ領域のトラック幅と同一幅で形成されている。ただし、実施の形態2の磁気記録媒体を本実施の形態の磁気記録再生装置に使用してもよい。
【0163】
図18は、実施の形態5にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路と位置・速度検出部1820の構成を示すブロック図である。バースト領域再生回路400については、実施の形態1と同様の構成の回路である。本実施の形態では、バーストゲートを2分割して、分割したゲート1,ゲート2区間ごとに、位相差余弦値C1,C2と位相差制限値S1,S2を求めている。
【0164】
速度・位置検出部1820は、磁気ヘッドのトラック上での位置検出と記録媒体の径方向速度を検出するものである。速度・位置検出部1820は、図18に示すように、位置検出部1821と速度検出部1822とを備えている。
【0165】
位置検出部1821は、分割されたゲート区間毎に位相差余弦値と位相差正弦値とトラック番号を入力して、ゲート区間ごとの位置偏差情報PES1,PES2を求めるものである。すなわち、ゲート1区間で算出された位相差余弦値C1と位相差正弦値S1とから位置偏差情報PES1が求められ、ゲート2区間で算出された位相差余弦値C2と位相差正弦値S2とから位置偏差情報PES2が求められる。ここで、位相差余弦値および位相差正弦値から位置偏差情報の求め方は実施の形態1の位置検出部420と同様に行われる。
【0166】
速度検出部1822は、ゲート区間ごとの位置偏差情報PES1,PES2から磁気ヘッドの径方向移動速度を算出するものである。
【0167】
図19は、バーストゲートを分割した状態を示す説明図である。本実施の形態では、バーストゲートを等分割しているが、必ずしも等分割する必要はない。ここで、図19のように、分割された後半のゲート区間の立ち上がり遅延時間をT_BSTとすると、磁気ヘッドの位置偏差情報PESおよび径方向移動速度vは、前半のゲート1区間で求めた位置偏差情報PES1と後半のゲート2区間で求めた位置偏差情報PES2を用いて、次の(18)および(19)式で表される。
【0168】
【数12】

【0169】
ここで、(18)式で、PES1とPES2を加算して2で除算しているのは、ゲート区間は長いほど高精度な位置検出が可能であるが、本実施の形態ではバーストゲートを2分割して短くしたために、PES1とPES2のそれぞれにノイズによる影響が現れて位置検出精度が悪くなるので、これを抑制するためである。
【0170】
また、(19)式では、バースト領域における磁気ヘッドの径方向移動は、加速度の変化は無視できるため、径方向移動速度の算出においてPES1とPES2の差分を立ち上がり遅延時間T_BSTで除算している。
【0171】
次に以上のように構成された本実施の形態にかかる磁気記録再生装置1800による磁気ヘッドの位置・速度検出処理について説明する。図20は、実施の形態5にかかる磁気記録再生装置1800による磁気ヘッドの位置・速度検出処理の手順を示すフローチャートである。
【0172】
磁気ヘッドが目標のトラックに移動してサーボ領域110のプリアンブル領域111、アドレス領域112を通過した後、バースト領域113に達すると、バーストゲートを2分割した前半のゲート1が立ち上がり、このゲート1区間において、位相検出部410によって、実施の形態1と同様に位相差余弦値C1と位相差正弦値S1が求められ、位置検出部1821により、実施の形態1と同様に位置偏差情報PES1が算出される(ステップS2001)。
【0173】
次に、分割された後半のゲート2がゲート1よりT_BST遅れて立ち上がると、ゲート2区間において、位相検出部410によって、実施の形態1と同様に位相差余弦値C2と位相差正弦値S2が求められ、位置検出部1821により、実施の形態1と同様に位置偏差情報PES2が算出される(ステップS2002)。
【0174】
次に、位置検出部1821によって、ゲート1区間で求めたPES1とゲート2区間で求めたPES2とから、(18)式によって位置偏差情報PESを算出する(ステップS2003)。次いで、速度検出部1822によって、PES1,PES2及び立ち上がり遅延時間T_BSTから、(19)式によって磁気ヘッドの径方向移動速度vが算出される(ステップS2004)。
【0175】
このように実施の形態5にかかる磁気記録再生装置1800では、バーストゲートを2分割して前半と後半のそれぞれのゲート区間から位置偏差情報PES1、PES2を求め、このPES1,PES2から位置偏差情報PESと磁気ヘッドの径方向移動速度を求めているので、より高精度に磁気ヘッドの位置検出を行うことができる。また、本実施の形態では、バースト領域を用いた径方向移動速度の検出が行うことができるので、磁気ヘッドがトラック間を移動するシーク動作中においてセクタ間の位置の差分に基づいて移動速度を求める場合に比べてより高精度に移動速度を求めることができ、シーク性能を大幅に向上させることができる。
【0176】
(実施の形態6)
実施の形態5にかかる磁気記録再生装置1800では、バーストゲートを分割して、分割した各ゲートにおいて求めた位置偏差情報PES1,PES2から磁気ヘッドの位置偏差情報PESと磁気ヘッドの径方向移動速度vを算出していたが、この実施の形態6にかかる磁気記録再生装置は、さらに、ゲート区間の切替えを行って、磁気ヘッドの位置偏差情報PESと磁気ヘッドの径方向移動速度vを算出するものである。
【0177】
本実施の形態の磁気記録媒体は、実施の形態1と同様に、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成され、サーボ領域のトラック幅がデータ領域のトラック幅と同一幅で形成されている。ただし、実施の形態2の磁気記録媒体を本実施の形態の磁気記録再生装置に使用してもよい。
【0178】
図21は、実施の形態6にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路と位置・速度検出部2120の構成を示すブロック図である。バースト領域再生回路400については、実施の形態1と同様の構成の回路である。
【0179】
速度・位置検出部2120は、バーストゲートの分割ゲートの切替えを行って、磁気ヘッドのトラック上での位置検出と記録媒体の径方向速度を検出するものである。速度・位置検出部2120は、図21に示すように、位置検出部1821と、速度検出部1822と、ゲート切替部2121を備えている。なお、位置検出部1821、速度検出部1822は、実施の形態5の位置検出部1821、速度検出部1822と同様の機能を有している。
【0180】
ゲート切替部2121は、磁気ヘッドのトラック上における位置決め制御中は、バーストゲートを分割をせずに、磁気ヘッドがトラック間を移動するシーク中は、バーストゲートを2分割するように切り替える。これは、バーストゲートが長い程、位置検出精度が高くなるが、磁気ヘッドの位置決め制御中においては、位置検出の精度を最大にするためである一方、磁気ヘッドがシーク中は位置検出よりも速度検出を優先すべきであるため、バーストゲートを分割して速度検出を可能としている。
【0181】
また、ゲート切替部2121は、磁気ヘッドがシーク中には、目標速度に応じて実施の形態5における立ち上がり遅延時間T_BSTを変更し、分割ゲート区間の長さを調整している。
【0182】
近年の磁気記録媒体の狭トラックピッチ化により、磁気ヘッドの最大シーク速度時には、バースト領域通過時の径方向移動量が1トラックを越える場合がある。このため、実施の形態5のようにバーストゲートを2つに分割して速度検出する場合には、磁気ヘッドの移動速度を誤検出する可能性があるため、磁気ヘッドの位置をセクタ間で差分をとり、この差分値とセクタ間の移動時間から磁気ヘッドの移動速度の検出を行わなければならず、速度検出の精度が低下する。このため、本実施の形態では、磁気ヘッドのシーク時においては、立ち上がり遅延時間がT_BSTを、目標速度に応じて短縮することにより、分割されたゲート毎の位置偏差情報PESの変動量をおさえ、移動速度の誤検出を防止するようにしている。
【0183】
図22は、バーストゲートと分割したゲート2の立ち上がり遅延時間の状態を示す説明図である。本実施の形態では、位置・速度検出部2120のゲート切替部2121によって、磁気ヘッドの位置決め制御時には、バーストゲートを分割せず、磁気ヘッドがシーク時には、バーストゲートをゲート1とゲート2に分割し、ゲート2の立ち上がり遅延時間T_BSTを磁気ヘッドの目標速度に応じて変化させている。具体的には、磁気ヘッドの目標速度が速い程、立ち上がり遅延時間T_BSTを短縮するように制御する。立ち上がり遅延時間T_BSTを変化させた後の磁気ヘッドの移動速度検出の処理は、実施の形態5における速度検出の処理と同様に行われる。
【0184】
ここで、磁気ヘッドのシーク中において検出する速度は、上述の分割ゲートを使用して求めた速度と、セクタ間の位置差分により求めた速度との重み付き平均により算出する。この場合、重み係数は、磁気ヘッドのシーク中の目標速度が大きい程、セクタ間の位置差分により検出された速度を優先する値とし、低速シーク時やセトリング状態の場合には、分割ゲートを使用して求めた速度を優先する値とする。
【0185】
このように実施の形態6にかかる磁気記録再生装置では、磁気ヘッドのトラック上における位置決め制御中は、バーストゲートを分割をせず、磁気ヘッドがトラック間を移動するシーク中は、バーストゲートを2分割するように切り替え、磁気ヘッドの目標速度に応じてゲート2の立ち上がり遅延時間T_BSTを調整しているので、磁気ヘッドが位置決め処理中において高精度な磁気ヘッドの位置検出を行えるとともに、磁気ヘッドがトラック間を高速でシーク中には高精度な速度検出を行うことが可能となる。
【0186】
なお、本実施の形態では、磁気ヘッドがシーク中は、バーストゲートを2分割した状態のまま、磁気ヘッドの目標速度に応じて立ち上がり遅延時間T_BSTを調整しているが、この他、ゲート切替部2121によって磁気ヘッドの目標速度に応じてバーストゲートの分割数を調整するように構成してもよい。図23は、磁気ヘッドの目標速度に応じてバーストゲートの分割数を増加させた例を示す説明図である。具体的には、ゲート切替部2121によって、磁気ヘッドの目標速度が早い程、分割数を増大させるように調整すればよい。
【0187】
(実施の形態7)
実施の形態5にかかる磁気記録再生装置1800では、バースト領域113の再生信号から求めた位相差に基づく各分割ゲートの位置偏差情報PES1,PES2と立ち上がり遅延時間T_BSTから磁気ヘッドの径方向移動速度を検出していたが、この手法では、速度検出に誤りを生じる場合がある。
【0188】
このため、この実施の形態7にかかる磁気記録再生装置では、さらに、バースト領域113の再生信号の振幅値の変換を考慮して磁気ヘッドの径方向移動速度を検出している。
【0189】
本実施の形態の磁気記録媒体は、実施の形態1と同様に、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成され、サーボ領域のトラック幅がデータ領域のトラック幅と同一幅で形成されている。ただし、実施の形態2の磁気記録媒体を本実施の形態の磁気記録再生装置に使用してもよい。
【0190】
また、本実施の形態にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路および位置・速度検出部の構成は、実施の形態5と同様である。
【0191】
(8)式で示される位相差余弦値Cと(9)式で示される位相差正弦値Sには、共に振幅G0が含まれている。このため、位相差余弦値Cと位相差正弦値Sから(20)式に示すように振幅値のみを含む情報を得ることができる。
【0192】
【数13】

【0193】
本実施の形態で使用する磁気記録媒体は、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成されているため、同一トラック上で、トラック中心からの相対距離が変化しても、バースト領域から得られる再生信号のクロックの位相が変化するのみで、振幅は通常一定である。
【0194】
しかし、磁気ヘッドがトラック間を移動してシーク速度が増大した場合には、バースト領域の再生信号の振幅が変化する。かかる振幅の変化は、磁性部301の傾斜角度に依存するが、図2に示すような傾斜した磁性部301のバースト記録パターンにおいては、図2上方の記録媒体中心に向かう方向に磁気ヘッドが移動している場合は信号振幅が減少し、逆に図2下方の記録媒体中心から記録媒体外方に向かってヘッド移動する場合は、信号振幅が増大する傾向がある。
【0195】
このため、本実施の形態にかかる磁気記録再生装置では、位置・速度検出部1820の速度検出部1822で、(19)式による速度検出を優先して行い、速度が誤検出された場合に、位相検出部410から入力された位相差余弦値Cと位相差正弦値Sを用いて(20)式で振幅G0を含む振幅情報Gを算出して、磁気ヘッドの移動速度を求めている。
【0196】
ここで、磁気ヘッドが高速でシーク動作を行っている場合には、振幅値G0が変化するとともに、周波数変動も生じている。このため、磁気ヘッドが記録媒体中心から外方に向かってヘッド移動する場合は振幅値G0が単調増加するが、両者は非線形な関係にあるため、予め振幅情報Gと磁気ヘッドの移動速度の計測して移動速度と振幅情報Gの関係を示す速度・振幅換算関数を求めておき、振幅情報Gと速度・振幅換算関数とから、磁気ヘッドの移動速度を検出している。
【0197】
このように実施の形態7にかかる磁気記録再生装置では、位相差から求められる分割ゲート毎の位置偏差情報PES1,PES2と立ち上がり遅延時間T_BSTから磁気ヘッドの移動速度の検出をする他、かかる速度検出に誤りがある場合にバースト領域113の再生信号の振幅値の変化から磁気ヘッドの径方向移動速度を検出しているので、磁気ヘッドの移動速度をより高精度に行うことができる。
【0198】
(実施の形態8)
実施の形態8にかかる磁気記録再生装置は、磁気ヘッドの高速シーク時に発生するバースト領域の再生信号の周波数変動から磁気ヘッドの移動速度を求めるものである。
【0199】
本実施の形態の磁気記録媒体は、実施の形態1と同様に、バースト領域113の複数の磁性部301がプリアンブル記録パターンに対して傾斜した単一のバースト記録パターンで形成され、サーボ領域のトラック幅がデータ領域のトラック幅と同一幅で形成されている。ただし、実施の形態2の磁気記録媒体を本実施の形態の磁気記録再生装置に使用してもよい。
【0200】
磁気ヘッドが高速でシーク動作をしている際に生じる周波数変動は、厳密には直交検波の誤差として現れ、位相検出と振幅検出に影響を与え、検出結果に非線形歪みが生じる原因となる。本実施の形態の磁気記録媒体において、磁気ヘッドが記録媒体中心に向って移動するシーク動作の場合には周波数が低下し、記録媒体中心から外方に向かって移動するシーク動作の場合には周波数が上昇する。かかる周波数変動と、磁気ヘッドの径方向移動速度は線形関係にあるため、本実施の形態にかかる磁気記録再生装置では、周波数変動を検出することにより、磁気ヘッドの移動速度を検出し、高速シーク動作時においても、磁気ヘッドの径方向移動速度を高精度に検出している。
【0201】
図24は、実施の形態8にかかる磁気記録再生装置の構成を示すブロック図である。図24は、本実施の形態の磁気記録再生装置において磁気ヘッドの移動速度検出に使用する回路のみ示してある。なお、磁気ヘッドの速度検出処理時には、バースト領域113の再生信号による位置偏差情報の検出はできないが、アドレス領域112から求めた位置情報を使用すればよいので、磁気ヘッドが高速でシーク動作をしている場合には問題とならない。
【0202】
実施の形態8にかかる磁気記録再生装置において速度検出に用いられる構成としては、図24に示すように、A−D(Analog-Digital)コンバータ2301とPLL(Phase Lock Loop)回路2310とSFG(Servo Frequency Generator)回路2302と速度検出回路2320となっている。ここで、A−Dコンバータ2301とPLL回路2310とSFG回路2302は、いずれもプリアンブル領域の再生信号処理に使用される回路を共用している。
【0203】
A−Dコンバータ2301は、PLL回路2310が出力する同期クロックに従ったサンプルタイミングで、ヘッドアンプIC(HIC)からCTF(図示せず)を介して入力されるバースト領域113の再生信号であるバースト再生信号をデジタル信号に変換する。
【0204】
SFG回路2302は、サーボ基準クロックを生成するものである。PLL回路2310は、SFG回路2302により生成されるサーボ基準クロックを位相調整して、A−Dコンバータ2301で検出されたバースト再生信号に対してN倍周期かつ位相が一致する再生クロックを生成して、A−Dコンバータ2301におけるサンプルタイミングを調整するものである。
【0205】
すなわち、バースト領域113の再生信号処理では、実施の形態1で説明したとおり、バースト再生信号のサンプリングタイミングは、プリアンブル領域111の再生信号処理において決定されたタイミングと同期しており、磁気ヘッド中心がトラック中心と一致する場合には、再生信号の位相が0となり、図5−1に示すようなタイミングでサンプリングされる。
【0206】
本実施の形態では、磁気ヘッドの移動速度検出時に、PLL回路2301によって、バースト再生信号と同期するように、周波数・位相調整を行った再生クロックを生成して、図5−1に示すサンプリングタイミングを図5−2に示すタイミングに調整するようにフィードバック制御を行う同期処理を行っている。
【0207】
PLL回路2310は、図24に示すように、P/D(Phase Detector:位相比較器)2312と、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発信器)2311とを備えている。
【0208】
P/D2312は、SFG回路2302で生成したサーボ基準クロック(実際には事前に基準クロックをN分周したクロック)とA−Dコンバータ2301でサンプリングされたサンプル値Yのデータ列とのタイミング誤差(TE)を検出するものである。
【0209】
VCO2311は、バースト再生信号のサンプル値Yのデータ列が、図5ー2で示されたタイミングでサンプリングされるように、P/D2312で検出されたタイミング誤差(TE)で発信周波数を調整する。このタイミング誤差(TE)は、当初は位相誤差と周波数誤差が混在しているが、このタイミング誤差(TE)によってVCO2311の発信周波数が調整され、A−Dコンバータ2301から出力されるサンプル値Yのデータ列が図5−2に示すタイミングでサンプリングされるまでPLL回路2310によるフィードバック制御が行われる。
【0210】
このようなPLL回路2310による制御によって、バースト再生信号のサンプリングタイミングが定まって同期処理が完了し、タイミング誤差(TE)はサーボ基準クロックをN分周したものに対する周波数補正量のみの一定値となり、速度検出回路2320に出力される。
【0211】
速度検出回路2320は、プリアンブル領域111の再生信号処理後の初期タイミング誤差(TE0)を保持している。この初期タイミング誤差(TE0)は、磁気ヘッドの移動速度検出処理の際に、バースト領域に磁気ヘッドが移動してバーストゲートが立ち上がった時点においてPLL回路2310からタイミング誤差(TE)を入力して保持されたものであり、プリアンブル再生信号の同期処理完了直後のタイミング誤差である。
【0212】
速度検出回路2320では、PLL回路2310から入力されたタイミング誤差(TE)、すなわちバースト再生信号同期完了後のタイミング誤差(TE)と初期タイミング誤差(TE0)との比較処理を行い、その比較結果である差分値がプリアンブル領域とバースト領域の周波数誤差に比例した周波数変動量となり、かかる周波数変動量に基づいて磁気ヘッドの移動速度VELが出力される。
【0213】
磁気ヘッドの移動速度検出処理の際には、バースト領域113に磁気ヘッドが移動してバーストゲートが立ち上がった時点において、タイミング誤差(TE)がPLL回路2310から速度検出回路2320に入力され、かかるタイミング誤差(TE)が初期タイミング誤差として速度検出回路2320に保持される。
【0214】
バーストゲート区間においては、PLL回路2310によるバースト再生信号の同期引き込み処理が実行されている。そして、バーストゲートが立ち下がりバースト再生信号のサンプリングタイミングが決定されると、その時点におけるタイミング誤差(TE)がPLL回路2310から速度検出回路2320に入力され、速度検出回路2320において、入力されたタイミング誤差と初期タイミング誤差との差分値としての周波数変動量が算出され、この周波数変動量に対応した磁気ヘッドの移動速度VELが出力される。
【0215】
このように実施の形態8にかかる磁気記録再生装置では、プリアンブル領域とバースト領域との周波数変動を検出して、磁気ヘッドの移動速度を求めているので、磁気ヘッドが高速でシーク動作をしている場合においても、磁気ヘッドの径方向移動速度を高精度に検出することができる。
【0216】
なお、周波数検出の手法としては、本実施の形態で行われる処理に限定されるものではなく、公知の手法を使用することができる。また、バンドパスフィルタを使用して、周波数変動を振幅変動として換算し、換算された振幅に基づいて磁気ヘッドの移動速度を検出するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】実施の形態1にかかる磁気記録媒体の概略構造を示す模式図である。
【図2】実施の形態1にかかる磁気記録媒体のサーボ領域を中心とした構造を示す模式図である。
【図3−1】実施の形態1にかかる磁気記録媒体のバースト領域を拡大した模式図であり、シリンダ情報の2トラック変化ごとにバースト再生信号の位相が一周期となる角度で磁性部を傾斜させた態様のバースト領域の拡大図である。
【図3−2】実施の形態1にかかる磁気記録媒体の他の態様のバースト領域を拡大した模式図であり、シリンダ情報の4トラック変化ごとにバースト再生信号の位相が一周期となる角度で磁性部を傾斜させた態様のバースト領域の拡大図である。
【図4】実施の形態1にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路の構成を示すブロック図である。
【図5−1】位相H0=0のバースト再生信号とサンプル点を示す説明図であり、図5−2は、位相H0のバースト再生信号とサンプル点を示す説明図である。
【図5−2】位相H0のバースト再生信号とサンプル点を示す説明図である。
【図6】実施の形態1のバースト領域再生回路によるバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【図7−1】位相差余弦値Cの積算値BstABと位相差正弦値Sの積算値BstCDの磁気ヘッド中心のトラック中心からのオフトラック位置による変化の状態を示すグラフである。
【図7−2】各トラックアドレスに対する位置偏差情報PESを示すグラフである。
【図8】実施の形態2にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路800の構成を示すブロック図である。
【図9】バーストゲートの分割ゲートごとに内積係数を切り替えた状態を示す説明図である。
【図10】実施の形態2にかかるバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】オフトラック位置と各ゲート区間におけるバースト値Bstの変化の状態を示すグラフである。
【図12】実施の形態3にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路1200の構成を示すブロック図である。
【図13】実施の形態3にかかるバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】実施の形態4にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路1400の構成を示すブロック図である。
【図15】実施の形態4にかかるバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】実施の形態4の変形例としてのバースト領域再生回路1600の構成を示すブロック図である。
【図17】実施の形態4の変形例のバースト領域再生処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】実施の形態5にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路と位置・速度検出部1820の構成を示すブロック図である。
【図19】バーストゲートを分割した状態を示す説明図である。
【図20】実施の形態5にかかる磁気記録再生装置1800による磁気ヘッドの位置・速度検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】実施の形態6にかかる磁気記録再生装置のバースト領域再生回路と位置・速度検出部2120の構成を示すブロック図である。
【図22】バーストゲートと分割したゲート2の立ち上がり遅延時間の状態を示す説明図である。
【図23】磁気ヘッドの目標速度に応じてバーストゲートの分割数を増加させた例を示す説明図である。
【図24】実施の形態8にかかる磁気記録再生装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0218】
100 データ領域
101 磁性帯
102 非磁性帯
110 サーボ領域
111 プリアンブル領域
113 バースト領域
301 トラック
302 セクタ
400,800,1200,1400 バースト領域再生回路
410,810,1210,1410 位相検出部
411 メモリ
420,1821 位置検出部
1212 FIRフィルタ
1213 積分器
1214 ループゲイン
412a,412b,1412a,810,1412b,1412c,1612d 内積算出部
413a,413b,813,1213,1413a,1413b,1413c,1613d 積分器
1414a,1414b,1614c,1614d 除算器
1415,1615 平滑化処理部
1820 速度・位置検出部
1822,2120 速度検出部
2301 A−Dコンバータ
2302 SFG回路
2310 PLL回路
2311 VCO
2312 P/D
2320 速度検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に対する磁気ヘッドの位置検出を行うためのサーボデータを表すサーボ領域と、前記サーボ領域とトラック方向に並べて配置され、前記磁気ヘッドによってユーザデータの書き込み可能なデータ領域とを有し、前記サーボ領域が前記サーボデータのうちクロック同期をとるためのデータを表すプリアンブル記録パターンが複数の磁性部によって形成されたプリアンブル領域と、前記サーボデータのうちトラック中心位置に対する磁気ヘッドの相対位置を求めるためのデータを表し、前記プリアンブル記録パターンに対して予め定められた傾斜角度で傾斜した配置パターンである一種類のバースト記録パターンが複数の磁性部によって形成されたバースト領域と有する磁気記録媒体を再生する磁気記録再生装置であって、
前記バースト領域に対する再生処理区間であるバーストゲートを分割した分割ゲート区間ごとに、前記バースト領域から再生されたバースト再生信号から、前記プリアンブル領域の再生信号処理で定められた同期クロックでサンプリングされた各点におけるサンプル値と予め定められた複数の係数とに基づいて、前記プリアンブル領域の再生信号に対する前記バースト再生信号の位相差を、複数の位相差に相当する位相差情報として求める位相検出手段と、
前記位相検出手段によって求めた前記分割ゲートごとの前記位相差情報に基づいて、前記磁気ヘッド中心の前記トラック中心位置からの前記分割ゲート区間ごとの偏差情報を求め、前記分割ゲート区間ごとの前記偏差情報に基づいて、前記バーストゲート区間における、前記磁気ヘッドのトラック中心位置からの相対距離を示す位置偏差情報を求める位置検出手段と、
前記位置検出手段によって求めた前記分割ゲート毎の前記偏差情報と前記分割ゲートの立ち上がり遅延時間に基づいて、前記磁気ヘッドの前記磁気記録媒体の径方向の移動速度を検出する速度検出手段と、
を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記分割ゲートの立ち上がり遅延時間または前記バーストゲートの分割数を、前記磁気ヘッドの前記径方向移動速度に基づいて制御するゲート切り替え手段、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記速度検出手段は、さらに、前記位相検出手段によって求めた前記位相差情報に基づいて前記バースト再生信号の振幅値を求め、前記振幅値に基づいて前記径方向移動速度を検出することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記バースト再生信号のプリアンブル領域の再生信号に対する周波数変動を検出し、検出された周波数変動に基づいて前記磁気ヘッドの前記磁気記録媒体の径方向移動速度を検出する第2の速度検出手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
前記位相検出手段は、前記バースト再生信号から、前記プリアンブル領域の再生信号処理で定められた同期クロックでサンプリングされた各点におけるサンプル値と予め定められた複数の係数とに基づいて、前記プリアンブル領域の再生信号に対する前記バースト再生信号の位相差を、複数の位相差に相当する位相差情報として求め、
前記位置検出手段は、前記位相検出手段によって求めた前記位相差情報に基づいて、前記位置偏差情報を求めることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項6】
前記位相検出手段は、
前記各点におけるサンプル値と、前記係数として位相差0の正弦波値とを乗じた第1の内積値を算出する第1の内積手段と、
前記各点におけるサンプル値と前記係数として位相差0の余弦波値とを乗じた第2の内積値を算出する第2の内積算出手段と、
前記内積算出手段によって求めた前記第1の内積値を積算して前記位相差情報として出力する第1の積分器と、
前記内積算出手段によって算出された前記第2の内積値を積算して前記位相差情報として出力する第2の積分器と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の磁気記録再生装置。
【請求項7】
前記位相検出手段は、
前記バースト領域に対する再生処理区間であるバーストゲート区間を複数の区間に分割した分割ゲート区間毎に、異なる値の係数と前記各点のサンプル値とを乗じた内積値を算出する内積算出手段と、
前記分割ゲート区間ごとに、前記内積算出手段によって算出された前記内積値を積算して前記位相差情報として出力する積分器と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の磁気記録再生装置。
【請求項8】
前記位相検出手段は、
前記各点のサンプル値を入力し、入力された複数の前記サンプル値ごとに異なる複数の係数を乗じて加算した出力値を出力するフィルタ回路と、
バースト領域に対する再生処理区間であるバーストゲート区間を複数の区間に分割した分割ゲート区間ごとに、前記フィルタ回路から出力された前記出力値を積算して前記位相差情報として出力する積分器と、を備え、
前記フィルタ回路は、前記各点のサンプル値を入力するごとに、前記複数の係数を順次巡回して前記サンプル値に乗じて前記出力値を算出し、算出された前記出力値を出力することを特徴とする請求項5に記載の磁気記録再生装置。
【請求項9】
前記位相検出手段は、
前記異なる値の係数ごとに、前記各点におけるサンプル値と前記係数を乗じて複数の内積値を算出する内積算出手段と、
バースト領域に対する再生処理区間であるバーストゲート区間の間、前記内積算出手段によって求めた前記複数の内積値をそれぞれ積算する積算手段と、
前記積分器によって積算された各内積値を互いに除算して求めた複数の除算値を前記位相差情報として出力する除算手段と、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の磁気記録再生装置。
【請求項10】
前記内積算出手段は、前記各点におけるサンプル値と、前記係数として正弦波値とを乗じた第1の内積値を算出する第1の内積算出手段と、前記各点におけるサンプル値と前記係数として余弦波値とを乗じた第2の内積値を算出する第2の内積算出手段と、前記各点におけるサンプル値と前記係数として位相差180度の正弦波値とを乗じた第3の内積値を算出する第3の内積手段と、を備え、
前記積算手段は、前記第1の内積算出手段によって求めた前記第1の内積値を積算する第1の積分器と、前記第2の内積算出手段によって算出された前記第2の内積値を積算する第2の積分器と、前記第3の内積手段によって算出された前記第3の積算値を積算する第3の積分器とを備え、
前記除算手段は、前記第2の積分器によって積算された前記第2の内積値を前記第1の積分器によって積算された前記第1の内積値で除算した第1の除算値を求め前記位相情報として出力する第1の除算器と、前記第3の積分器によって積算された前記第3の内積値を前記第2の積分器によって積算された前記第2の内積値で除算した第2の除算値を求め前記位相差情報として出力する第2の除算器とを備えたことを特徴とする請求項9に記載の磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2007−200554(P2007−200554A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127580(P2007−127580)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2005−5552(P2005−5552)の分割
【原出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】