説明

磁気記録媒体とその製造方法及びそれを用いた磁気記録読取装置

【課題】
塗布型の磁気記録媒体では、製造コストは低いが高密度記録が難しい。一方、蒸着型の磁気記録媒体では、高密度記録は比較的簡単に達成されるが、製造コストが高いという欠点があった。
塗布法を用いて、極薄で且つ磁性微粒子のサイズレベルにおいて均一厚みで蒸着型に比肩できるか、それ以上の高密度記録が可能な磁気記録層を形成する方法はなかった。
【解決手段】
本発明は、媒体基体表面に選択的に層状に累積され磁性微粒子が磁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して、バインダー樹脂無しに層間で互いの共有結合している信頼性の高い高密度磁気記録媒体を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に関するものである。さらに詳しくは、表面に熱反応性または光反応性、あるいはラジカル反応性またはイオン反応性を付与した磁性金属や磁性金属酸化物よりなる単微粒子膜や単微粒子累積膜が記録層として選択的に形成されている磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記録読取装置に関するものである。
【0002】
本発明において、「磁性微粒子」には、磁性金属微粒子や磁性合金微粒子、磁性金属酸化物微粒子が含まれている。また、本発明の磁気記録媒体には、光磁気記録媒体も含まれている。
【背景技術】
【0003】
従来から、媒体基体表面に磁気記録層としてバインダー中に分散した磁性金属微粒子や磁性金属酸化物微粒子を塗布硬化させた磁気記録媒体や媒体基体表面に磁性金属あるいは磁性金属酸化物を蒸着した磁気記録媒体が市販されている。
【0004】
しかしながら、媒体基体表面に磁性微粒子を1層のみ選択的に並べた粒子サイズレベルで均一厚みの磁性被膜(以下、磁気記録層という。)や磁性微粒子を1層のみ並べた膜を複数層選択的に累積した磁性被膜を磁気記録層とする磁気記録媒体とその製造方法及びそれを用いた磁気記録読取装置は未だ開発、提供されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗布型の磁気記録媒体では、製造コストは低いが高密度記録が難しい。一方、蒸着型の磁気記録媒体では、高密度記録は比較的簡単に達成されるが、製造コストが高いという欠点があった。
また、塗布法を用いて、極薄で、且つ磁性微粒子のサイズレベルで均一厚みで、蒸着型に比肩できる磁気記録層を形成する方法は提案されていなかった。
【0006】
本発明は、磁性微粒子(磁性ナノ粒子を含む)を用いて、蒸着磁性金属膜並みに極薄で、且つ磁性微粒子のサイズレベルで均一厚さ、さらにバインダーを用いずに蒸着型磁気記録媒体並かそれ以上の磁気記録特性を有し、さらに磁気記録媒体とその製造方法及びそれを用いた磁気記録読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として提供される第1の発明は、磁気記録層として媒体基体表面に選択的に1層形成された磁性微粒子の膜が媒体基体表面に選択的に形成された第1の有機膜と磁性微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合している磁気記録媒体である。
【0008】
ここで、媒体基体表面に形成された第1の有機被膜と磁性微粒子表面に形成された第2の有機膜が互いに異なるとを磁性微粒子の密着力を向上する上で都合がよい。
また、共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であると耐久性を向上する上で都合がよい。
さらに、媒体基体表面に選択的に形成された第1の有機被膜と磁性微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていると、磁気記録層の膜厚均一性を向上する上で好都合である。
【0009】
第2の発明は、媒体基体表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第1の反応性の有機膜を形成して選択的に加工するか、あるいは選択的に有機膜を形成する工程と、磁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜が選択的に形成された媒体基体表面に第2の反応性の有機膜で被覆された磁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された磁性微粒子を洗浄除去する工程を含む磁気記録媒体の製造方法である。
【0010】
このとき、媒体基体表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および磁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程において、それぞれ媒体基体および磁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して媒体基体及び磁性微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成すると膜厚均一性を向上できて都合がよい。
【0011】
また、第1の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むと磁性微粒子の密着性を向上できて都合がよい。
さらに、第1の反応性の単分子膜がエポキシ基を含み第2の反応性の単分子膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の単分子膜がイミノ基を含み第2の反応性の単分子膜がエポキシ基を含むと、簡単に共有結合を生成できて都合がよい。
【0012】
第3の発明は、磁気記録層として媒体基体表面に選択的に層状に累積された磁性微粒子が磁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合している磁気記録媒体である。
ここで、磁性微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された磁性微粒子と第2の有機膜が形成された磁性微粒子とが交互に積層されていると、製造工程を単純化できて都合がよいを。
また、第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していると耐剥離性を向上できて都合がよい。
さらに、共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であるとより一層耐剥離性を向上できて都合がよい。
【0013】
第4の発明は、少なくとも媒体基体表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第1の反応性の有機膜を形成して選択的に加工するか、あるいは選択的に有機膜を形成する工程と、第1の磁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて第1の磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された媒体基体表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁性微粒子を洗浄除去して第1の磁気記録層を形成する工程と、第2の磁性微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて第2の磁性微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁気記録媒体が形成された媒体基体表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の磁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の磁性微粒子を洗浄除去して選択的に第2の磁気記録層を形成する工程とを含む磁気記録媒体の製造方法である。
【0014】
このとき、第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであると、工程を単純化できて都合がよい。
また、第2の磁気記録層を形成する工程の後、同様に第1の磁気記録層を形成する工程と第2の磁気記録媒体を形成する工程を繰り返し行うと、記録層の膜厚を制御する上で好都合である。
さらに、第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ媒体基体あるいは磁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して媒体基体や磁性微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成すると膜厚の均一性を講中する上で好都合である。
さらにまた、第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1および3の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むと、被膜密着力を向上する上で好都合である。
【0015】
また、シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いると、製造時間を短縮する上で都合がよい。
また、シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いると、製造時間をさらに短縮する上で都合がよい。
さらにまた、磁性微粒子を接触させて反応させる工程を磁場中で行うと、磁気方向を揃える上で都合がよい。
【0016】
第5の発明は、磁気記録層として媒体基体表面に選択的に1層形成された磁性微粒子の膜が媒体基体表面に形成された第1の有機膜と磁性微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合していることを特徴とする磁気記録媒体を用いた磁気記録読取装置である。
【0017】
第6の発明は、磁気記録層として媒体基体表面に選択的に層状に累積され磁性微粒子が磁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合していることを特徴とする磁気記録媒体を用いた磁気記録読取装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、湿式法を用いて、磁気記録特性が蒸着型磁気記録媒体並みかそれ以上の高性能な磁気記録媒体及びその製造方法を低コストで提供できる格別の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、少なくとも媒体基体表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第1の反応性の有機膜を形成して選択的に加工するか、あるいは選択的に有機膜を形成する工程と、第1の磁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて第1の磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された媒体基体表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁性微粒子を洗浄除去して第1の磁気記録層を選択的に形成する工程と、第2の磁性微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて第2の磁性微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁気記録媒体が形成された媒体基体表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の磁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の磁性微粒子を洗浄除去して第2の磁気記録層を選択的に形成する工程とにより、媒体基体表面に選択的に層状に累積され磁性微粒子が磁性微粒子表面に形成された有機被膜を介してバインダー樹脂無しで層間で互いに共有結合している磁気記録媒体を提供するものである。
【0020】
したがって、本発明によれば、湿式法を用いて、磁気記録特性が蒸着型磁気記録媒体並みかそれ以上の高性能な磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記録読取装置を簡便で且つ低コストで製造できる作用がある。
【0021】
以下、本願発明の詳細を実施例を用いて説明するが、本願発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0022】
また、本発明の磁気記録媒体における磁気記録層の磁性微粒子には、鉄、クロム、ニッケルやそれらの合金等よりなる磁性金属微粒子やフェライトやマグネタイト、酸化クロム、鉄白金(FePt)系合金等よりなる磁性金属酸化物微粒子があるが、まず、代表例としてマグネタイト微粒子を取り上げて説明する。
【実施例1】
【0023】
まず、円板状のアルミニウム合金製の媒体基体1を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、下記式(化1)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、または有機酸である酢酸を1重量%となるようそれぞれ秤量し、マグネタイト溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0024】
【化1】

【0025】
次に、この吸着液に、媒体基体1を漬浸して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、媒体基体1表面には水酸基2が多数含まれているの(図1(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒、または有機酸である酢酸の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記式(化2)に示したような結合を形成し、媒体基体1表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜3が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0026】
【化2】

【0027】
なお、ここで、アミノ基を含む吸着剤を使用する場合には、スズ系の触媒では沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いた方がよかった。また、アミノ基はイミノ基を含んでいるが、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等がある。さらに、ケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
その後、塩素系溶媒であるクロロホルムを用いて洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えばエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で電極が被われた媒体基体が作製できた。(図1(b))
【0028】
なお、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し媒体基体表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄の反応性のポリマー膜が形成された媒体基体が得られた。
【0029】
次に、エキシマレーザーを用いて、同心円状に前記基材表面の不要部を選択的に照射し、前記反応性の単分子膜をアブレーションで除去する(図1(c))か、あるいはエポキシ基を開環させて失活させた。(図1(d))すなわち、ガラス基板表面がエポキシ基を持った同心円状で且つ線状の被膜5、5’で選択的にパターン状に被われた基材6’を製作できた。
【0030】
他の方法として、前記被膜表面にカチオン系の重合開始剤、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のイルガキュア250をメチルエチルケトン(MEK)で希釈して塗布し、遠紫外線で選択的に露光しても、選択的にエポキシ基を開環重合させてパターン状に失活できた。また、あらかじめ水溶性のレジストパターン、例えばノボラック系のポジ型レジストを塗布し、露光現像後、開口部にイミノ基を含む単分子膜を形成し、さらに全面露光した後でレジストを除去すれば、イミノ基を含む単分子膜を選択的に形成できた。
【実施例2】
【0031】
実施例1と同様に、まず、磁性微粒子である大きさが100nm程度のマグネタイト微粒子11を用意し、よく乾燥した。次に、化学吸着剤として機能部位に反応性の官能基、例えば、エポキシ基あるいはイミノ基と他端にアルコキシシリル基を含む薬剤、例えば、前記式(化1)あるいは下記式(化3)に示す薬剤を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチル錫ジアセチルアセトナートを1重量%となるようそれぞれ秤量し、マグネタイト溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサンとジメチルホルムアミド(50:50)混合溶媒に1重量%程度の濃度(好ましくい化学吸着剤の濃度は、0.5〜3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0032】
【化3】

【0033】
この吸着液に無水のマグネタイト微粒子11を混入撹拌して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、無水のマグネタイト微粒子表面には水酸基12が多数含まれているの(図2(a))で、前記化学吸着剤の−Si(OCH)基と前記水酸基がシラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、前記式(化2)あるいは下記式(化4)に示したような結合を形成し、絶縁性微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む化学吸着単分子膜13あるいはアミノ基を含む化学吸着膜14が約1ナノメートル程度の膜厚で形成された(図2(b)、2(c))。なお、ここで、アミノ基はイミノ基を含んでいる。また、アミノ基以外にイミノ基を含む物質には、ピロール誘導体やイミダゾール誘導体等がある。さらに、アルコキシシランを含むケチミン誘導体を用いれば、被膜形成後、加水分解により容易にアミノ基を導入できた。
【0034】
【化4】

【0035】
その後、塩素系溶媒であるクロロホルムを添加して撹拌洗浄すると、表面に反応性の官能基、例えば、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子15、あるいは、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子16をそれぞれ作製できた。
【0036】
なお、この被膜はナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、粒子径を損なうことはなかった。
一方、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し粒子表面に残った化学吸着剤が表面で空気中の水分と反応して、表面に前記化学吸着剤よりなる極薄の反応性ポリマー膜が形成されたマグネタイト微粒子が得られた。
【実施例3】
【0037】
次に、前記エポキシ基を有する化学吸着単分子膜21で選択的に被われたアルミニウム合金製媒体基体22表面に、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子23をアルコールに分散させて塗布し、100℃程度に加熱すると、媒体基体表面のエポキシ基と接触しているマグネタイト微粒子表面のアミノ基が下記式(化5)に示したような反応で付加して絶縁性微粒子と媒体基体は二つの単分子膜を介して選択的に結合する。なお、このとき、超音波を当てながらアルコールを蒸発させると、被膜の膜厚均一性を向上できた。
【0038】
【化5】

そこで、再びアルコールで基材表面を洗浄し、余分で未反応のアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子を洗浄除去すると、媒体基体表面でエポキシ基を有する化学吸着単分子膜に共有結合したアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子23を選択的に1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みのパターン状のマグネタイト微粒子膜24が形成できた。(図3(a))
【0039】
なお、このとき、磁場中で超音波を当てながらアルコールを蒸発させると、被膜の均一性を向上できた。
また、ここで、マグネタイト微粒子のパターン状の単層絶縁性微粒子膜の厚みは、100nm程度であった。
【0040】
一方、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたアルミニウム媒体基体表面に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子の被膜を形成した場合には、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子がアルミニウム媒体基体表面に1層のみ並べた状態で共有結合し、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの磁気記録層を形成できた。
なおここで、マグネタイト微粒子が針状あるいは棒状であり溶液を塗布する際、磁場中で塗布して乾燥させると、磁気記録層を構成するマグネタイト微粒子の磁気モーメントの方向が揃った磁気記録媒体を製造できた。
また、ここで、磁気記録層の厚みの制御は、粒径で制御できることは言うまでもない。
【実施例4】
【0041】
さらに、マグネタイト微粒子膜の膜厚を厚くしたい場合、実施例3に引き続き、共有結合したアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子がパターン状に1層のみ並べた状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みのパターン状の単層絶縁性微粒子膜24が形成された媒体基体表面22に、エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子25をアルコールに分散させて塗布し、100℃程度に加熱すると、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子がパターン状に単層形成された部分のアミノ基と接触しているマグネタイト微粒子表面のエポキシ基が前記式(化5)に示したような反応で付加して、媒体基体表面でアミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子は、二つの単分子膜を介して選択的に結合固化した。
【0042】
そこで、再びアルコールで基材表面を洗浄し、余分で未反応のエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子を洗浄除去すると、電極20に共有結合した2層目のマグネタイト微粒子が1層のみ並んだ状態で、且つ粒子サイズレベルで均一厚みの2層構造のパターン状のマグネタイト微粒子膜26が形成できた。(図3(b))
【0043】
以下同様に、アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子27とエポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子28を交互に必要回数積層すると、多層構造のマグネタイト微粒子膜29を選択的に累積でき、任意の厚みの磁気記録媒体を形成できた。
【0044】
なお、本実施例では、マグネタイト微粒子膜が複数層形成された場合を示したが、層数は、任意に決定できる。最薄膜の単層のマグネタイト微粒子膜でも、磁気記録媒体としての機能を確認できた。
また、この磁気記録媒体を用いて磁気記録読取装置を製作すると、蒸着型磁気記録媒体と同程度あるいはそれ以上の記録密度を達成できた。
【0045】
なお、上記実施例1および2では、反応性基を含む化学吸着剤として式(化1)あるいは(化3)に示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)〜(16)に示した物質が利用できた。
【0046】
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OCH)3
(6) (CH2OCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CH)CH(CH2)Si(OC)3
(11) H2N (CH2)Si(OCH)3
(12) H2N (CH2)Si(OCH)3
(13) H2N (CH2)Si(OCH)3
(14) H2N (CH2)Si(OC)3
(15) H2N (CH2)Si(OC)3
(16) H2N (CH2)Si(OC)3
【0047】
ここで、(CHOCH)−基は、下記式(化6)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CH)CH−基は、下記式(化7)で表される官能基を表す。
【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
なお、実施例1および2に置いて、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。さらに具体的には、酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチル錫ビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチル錫マレイン酸エステル塩、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジメチル錫メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビスアセチルアセテート、ジオクチル錫ビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート及びビス(アセチルアセトニル)ジプロピルチタネートを用いることが可能であった。
【0051】
また、膜形成溶液の溶媒としては、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やマグネタイト系溶媒、あるいは、それら混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50〜250℃程度がよい。さらに、吸着剤がアルコキシシラン系の場合で且つ溶媒を蒸発させて有機被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0052】
具体的に使用可能なものは、クロロシラン系非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルマグネタイト、フェニルマグネタイト、アルキル変性マグネタイト、ポリエーテルマグネタイト、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
【0053】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等がある。なお、これらは1種パターン状の単層独で用いても良いし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。さらに、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加しても良い。
【0054】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分〜2/3程度まで短縮できた。
【0055】
さらに、シラノール縮合触媒とケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を混合(1:9〜9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間をさらに数倍早く(30分程度まで)でき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0056】
例えば、シラノール触媒であるジブチル錫オキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0057】
さらに、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチル錫ビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を30分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0058】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0059】
さらにまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物の内の1つとシラノール縮合触媒を混合して用いると、さらに活性が高くなることが確認された。
【0060】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8−トリアザ−1,8−ノナジエン、3,11−ジメチル−4,7,10−トリアザ−3,10−トリデカジエン、2,10−ジメチル−3,6,9−トリアザ−2,9−ウンデカジエン、2,4,12,14−テトラメチル−5,8,11−トリアザ−4,11−ペンタデカジエン、2,4,15,17−テトラメチル−5,8,11,14−テトラアザ−4,14−オクタデカジエン、2,4,20,22−テトラメチル−5,12,19−トリアザ−4,19−トリエイコサジエン等がある。
【0061】
また、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、ラク酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
上記実施例1〜4では、マグネタイト微粒子を用いて磁気記録層を形成した例を示したが、本発明は、鉄白金系の磁気微粒子を除き、表面が酸化される磁気微粒子であればどのような微粒子にも適用可能である。また、媒体基体として、円形の磁気ディスクを例にして説明したが、テープ状の媒体基体でも同様であることはいうまでもない。また、上記実施例1〜4では、マグネタイト微粒子と円形アルミニウム合金製媒体基体を例として説明したが、本発明は、表面に活性水素、すなわち水酸基の水素やアミノ基あるいはイミノ基の水素などを含んだ磁性微粒子や媒体基体で有れば、どのような磁性微粒子や媒体基体にでも適用可能である。
【0063】
具体的には、磁気記録層の磁性微粒子として、鉄、クロム、ニッケルやそれらの合金等よりなる磁性金属微粒子やフェライトやマグネタイト、酸化クロム等よりなる磁性金属酸化物微粒子がある。また、媒体基体には、ガラスやアルミニウムがある。なお、表面に活性水素を含まないアクリル板、ポリカーボネート板等の合成樹脂の場合、表面をコロナ処理して酸化しておけば本発明の方法を適用できた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施例における媒体基体表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前の表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、前記単分子膜がアブレーションにより加工される状態を示す概念図、(d)は、光照射によりエポキシ基が選択的に開環架橋される状態を示す概念図である。
【図2】本発明の第2の実施例におけるマグネタイト微粒子表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は反応前のマグネタイト微粒子表面の図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の図、(c)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の図を示す。
【図3】本発明の第3および第4の実施例における媒体基体表面の反応を分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は単層マグネタイト微粒子膜が選択的に形成された基材表面の図、(b)は、複数層のおよびマグネタイト微粒子膜が選択的に積層形成された断面概念図を示す。
【符号の説明】
【0065】
1 ガラス基板
2 水酸基
3 エポキシ基を含む単分子膜
エポキシ基を含む単分子膜で被われたガラス基板
5、5’ エポキシ基を持ったパターン状の被膜
’ エポキシ基を持ったパターン状の被膜で選択的に被われた基板
11 マグネタイト微粒子
12 水酸基
13 エポキシ基を含む単分子膜
14 アミノ基を含む単分子膜
15 エポキシ基を含む単分子膜で被われたマグネタイト微粒子
16 アミノ基を含む単分子膜で被われたマグネタイト微粒子
21 エポキシ基を有する化学吸着単分子膜
22 ガラス基板
23 アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子
24 パターン状の単層マグネタイト微粒子膜
25 エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子
26 2層構造のパターン状のマグネタイト微粒子膜
27 アミノ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子
28 エポキシ基を有する化学吸着単分子膜で被われたマグネタイト微粒子
29 2層構造のパターン状のマグネタイト微粒子膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録層として媒体基体表面に選択的に1層形成された磁性微粒子の膜が媒体基体表面に選択的に形成された第1の有機膜と磁性微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合していることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
媒体基体表面に形成された第1の有機被膜と磁性微粒子表面に形成された第2の有機膜が互いに異なることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
媒体基体表面に選択的に形成された第1の有機被膜と磁性微粒子表面に形成された第2の有機膜が単分子膜で構成されていることを特徴とする請求項1および2記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
媒体基体表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第1の反応性の有機膜を形成して選択的に加工するか、あるいは選択的に有機膜を形成する工程と、磁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜が選択的に形成された媒体基体表面に第2の反応性の有機膜で被覆された磁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された磁性微粒子を洗浄除去する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
媒体基体表面を少なくとも第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第1の反応性の有機膜を形成する工程、および磁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程において、それぞれ媒体基体および磁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して媒体基体及び磁性微粒子表面に共有結合した第1及び第2の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項7】
第1の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むことを特徴とする請求項5記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】
第1の反応性の単分子膜がエポキシ基を含み第2の反応性の単分子膜がイミノ基を含むか、第1の反応性の単分子膜がイミノ基を含み第2の反応性の単分子膜がエポキシ基を含むことを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】
磁気記録層として媒体基体表面に選択的に層状に累積された磁性微粒子が磁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合していることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項10】
磁性微粒子表面に形成された有機被膜が2種類有り、第1の有機膜が形成された磁性微粒子と第2の有機膜が形成された磁性微粒子とが交互に積層されていることを特徴とする請求項9記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
第1の有機膜と第2の有機膜が反応して共有結合を形成していることを特徴とする請求項10記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
共有結合が、エポキシ基とイミノ基の反応で形成された−N−C−の結合であることを特徴とする請求項9記載の磁気記録媒体。
【請求項13】
少なくとも媒体基体表面を第1のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に接触させてアルコキシシラン化合物と媒体基体表面を反応させて媒体基体表面に第1の反応性の有機膜を形成して選択的に加工するか、あるいは選択的に有機膜を形成する工程と、第1の磁性微粒子を少なくとも第2のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて第1の磁性微粒子表面に第2の反応性の有機膜を形成する工程と、第1の反応性の有機膜の形成された媒体基体表面に第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁性微粒子を洗浄除去して第1の磁気記録層を形成する工程と、第2の磁性微粒子を少なくとも第3のアルコキシシラン化合物とシラノール縮合触媒と非水系の有機溶媒を混合して作成した化学吸着液中に分散させてアルコキシシラン化合物と磁性微粒子表面を反応させて第2の磁性微粒子表面に第3の反応性の有機膜を形成する工程と、第2の反応性の有機膜で被覆された第1の磁気記録媒体が形成された媒体基体表面に第3の反応性の有機膜で被覆された第2の磁性微粒子を接触させて反応させる工程と、余分な第3の反応性の有機膜で被覆された第2の磁性微粒子を洗浄除去して選択的に第2の磁気記録層を形成する工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項14】
第1の反応性の有機膜と第3の反応性の有機膜が同じものであることを特徴とする請求項13記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項15】
第2の磁気記録層を形成する工程の後、同様に第1の磁気記録層を形成する工程と第2の磁気記録媒体を形成する工程を繰り返し行うことを特徴とする請求項13記載の多層構造の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項16】
第1〜3の反応性の有機膜を形成する工程の後に、それぞれ媒体基体あるいは磁性微粒子表面を有機溶剤で洗浄して媒体基体や磁性微粒子表面に共有結合した第1〜3の反応性の単分子膜を形成することを特徴とする請求項13記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項17】
第1および3の反応性の有機膜がエポキシ基を含み第2の反応性の有機膜がイミノ基を含むか、第1および3の反応性の有機膜がイミノ基を含み第2の反応性の有機膜がエポキシ基を含むことを特徴とする請求項13記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項18】
シラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物を用いることを特徴とする請求項5および13に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項19】
シラノール縮合触媒に助触媒としてケチミン化合物、又は有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物から選ばれる少なくとも1つを混合して用いることを特徴とする請求項5および13に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項20】
磁性微粒子を接触させて反応させる工程を磁場中で行うことを特徴とする請求項5および13に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項21】
磁気記録層として媒体基体表面に選択的に1層形成された磁性微粒子の膜が媒体基体表面に形成された第1の有機膜と磁性微粒子表面に形成された第2の有機膜を介して互いに共有結合していることを特徴とする磁気記録媒体を用いた磁気記録読取装置。
【請求項22】
磁気記録層として媒体基体表面に選択的に層状に累積され磁性微粒子が磁性微粒子表面に形成された有機被膜を介して層間で互いに共有結合していることを特徴とする磁気記録媒体を用いた磁気記録読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−128607(P2007−128607A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320709(P2005−320709)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【Fターム(参考)】