説明

磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末

【課題】次世代の高記録密度媒体として要求される平均長軸長80nm以下の超微粒子からなる強磁性鉄合金粉末において,耐酸化性と保磁力を同時に向上させる。
【解決手段】鉄を主成分とし且つ平均長軸長(X)が20nm以上で80nm以下の針状の粒子からなる磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末であって,酸素含有量が17wt%以上で,保磁力(Hc)が0.0036X3−1.1X2+110X−1390(Oe)以上(Xは平均長軸長:単位nmを表す)である磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末である。この強磁性鉄合金粉末は,鉄を主成分とし且つ平均長軸長が20nm以上で80nm以下の針状の粒子からなるメタル粉を実質上酸素が存在しない条件下純水と反応させて粒子表面に金属酸化膜を形成し,必要に応じて弱酸化性ガスと湿式または乾式で反応させることによって得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,磁気テープや磁気ディスク等の磁気記録媒体の磁性層を構成するのに好適な強磁性鉄合金粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の磁気記録媒体では,記録容量の向上に加えて信頼性・耐久性を一層向上させることが望まれている。
【0003】
記録容量に関しては,次世代磁気記録媒体としてさらに高記録密度を達成するために,使用する信号の短波長化が強力に進められている。それに対応するため,より微粒子で高特性な強磁性粉末が必要となってきている。針状粒子の大きさは,短波長側の信号を記録する領域の長さよりも極めて小さくなければ,明瞭な磁化遷移状態を作り出すことができず,実質的に記録不可能となる。よって,針状の強磁性鉄合金粉末としては,その長軸径が充分に小さいことが要求され,具体的には,80nm以下の超微粒子が望まれている。さらに,高密度化に対応した磁気記録媒体に用いられる強磁性鉄合金粉末としては,高密度な媒体中での磁性の保持および出力の確保のため,より高い保磁力(Hc)が必要とされる。
【0004】
またシステム技術の進歩によって,ヘッドは従来のインダクティブヘッドから高感度なMR,GMRヘッドに変わりつつある。それに伴い,強磁性鉄合金粉末の特性として,従来ヘッドに対応した高い飽和磁化量(σs)をもつ強磁性鉄合金粉末では,高感度なMR,GMRヘッドを飽和させてしまうということが起こる。このため,従来とは異なり,低いσsのものが必要となってきている。システムによって異なるので一概には言えないが,例えば130emu/g以下の低いσsを有するものが必要となってきている。
【0005】
このようなことから,磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末についての機能的な面からは,80nm以下の超微粒子化,高保磁力化,低σs化を同時に備えることが要求されるようになってきた。
【0006】
他方,信頼性に関しては,高容量化が進めば進むほど保存データの損傷が回避されねばならない。したがって,データ保存用テープ等では一層高い信頼性が要求され,その為にはテープの保存安定性の向上が望まれている。すなわち強磁性鉄合金粉末自体が周囲の環境に影響されず安定に存在し得るような高い耐候性つまり耐酸化性が重要となってきている。
【0007】
要するところ,高密度磁気記録媒体に対応した強磁性鉄合金粉末としては,微粒子化,高Hc化,低σs,耐候性(耐酸化性)を同時に満足したものでなければならない。しかし,現状ではこれらの要求を同時に且つ十分に満たす強磁性鉄合金粉末は,世の中に存在していない。
【0008】
だが,強磁性鉄合金粉末において,微粒子化を進めた場合には,高Hc化と耐酸化性を同時に満足することは実は極めて困難である。耐酸化性を付与するにはメタル粒子表面を均一で緻密な酸化膜で覆うことが必要になるが,超微粒子ではそのような酸化膜を形成すること自体が困難を伴い,例えば弱酸化性ガス(水蒸気や酸素ガスを不活性ガス中に混入させた弱酸化性ガス)を用いて粒子表面を酸化させる方法(例えば特開平4−230004号公報)では100nmを超えるような通常の粒子では効果があっても,長軸長が80nm以下のような超微粒子においては,内部のメタルコア部分の形状がくずれて保磁力が低下してしまうからである。
【特許文献1】特開平4−230004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は,前記のような問題を解決し,微粒子化,高Hc化,低σs化,優れた耐候性(耐酸化性)という要求を同時に満足した高密度磁気記録媒体に適応した強磁性鉄合金粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記の課題を解決すべく,種々の試験研究を重ねてきたが,針状のオキシ水酸化鉄を原料として脱水・還元の手法で鉄を主成分とする針状の強磁性鉄合金粉末を製造する場合に,長軸長が80nm以下のような超微粒子化を進めれば進めるほど,還元されたメタル粉の表面は非常に活性となり,その結果,これを水中に浸漬すると,水と反応して微量ではあるが水素を発生するに至る現象が生ずることを見い出した。すなわち,超微粒子のメタル粉は,バルクの液体の水と反応し,H2Oが分解して生成した酸素(O)はメタル表面に酸化物を形成するのに消費され,水素(H)は水素ガスとして系外に放出されるのである。そして,この現象によって生成したメタル表面の酸化物は極めて緻密で均一な酸化膜となり,従来の弱酸化性ガスによる酸化膜の形成に比べると,内部のメタル粒子の形状(針状性)を崩すような現象も殆んど起きないことがわかった。
【0011】
したがって,本発明によると,長軸超が80nm以下のような超微粒子において,酸素含有量が15wt%以上,場合によっては,20wt%,さらには25wt%以上のような多量の酸素を含んでいても(酸素含有量の増加は低σs化につながる),内部のメタル粒子の針状化が十分に保持される結果,保磁力の高い強磁性鉄合金粉末を得ることが可能となった。
【0012】
すなわち本発明によれば,鉄を主成分とし且つ平均長軸長(X)が20nm以上で80nm以下の針状の粒子からなる磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末であって,酸素含有量が15wt%以上で,保磁力(Hc)が0.0036X3−1.1X2+110X−1390(Oe)以上(Xは平均長軸長:単位nmを表す)である磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末を提供する。
【0013】
ここで,保磁力(Hc)が0.0036X3−1.1X2+110X−1390(Oe)以上(Xは平均長軸長:単位nmを表す)であるとは,平均長軸長が80nmより小さいところにおいて,この強磁性鉄合金粉末の保磁力(Hc)の最低限の値は,表示のようなXの3次関数で表されることを意味している。
【0014】
この強磁性鉄合金粉末は,Co/Feの原子百分率が10〜50 at.%となる量のCoを含有し,飽和磁化量(σs)が130emu/g以下,Δσs(温度60℃で相対湿度90%の恒温恒湿下に7日間保持後のσsの変化量(%))が15%以下であることができる。
【0015】
この強磁性鉄合金粉末は,前記のように,鉄を主成分とし且つ平均長軸長が20nm以上で80nm以下の針状の粒子からなるメタル粉を実質上酸素が存在しない条件下で水と反応させて粒子表面に金属酸化膜を形成させる方法によって製造することができる。さらには,鉄を主成分とし且つ平均長軸長が20nm以上で80nm以下の針状の粒子からなるメタル粉を実質上酸素が存在しない条件下で水と反応させて粒子表面に金属酸化膜を形成したあと,弱酸化性ガスと湿式または乾式で反応させて該金属酸化膜をさらに成長させる方法によって製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると,平均長軸長が80nm以下という超微粒子であっても優れた耐酸化性を有しながら且つ高い保磁力を有する強磁性鉄合金粉末が得られるので,次世代の高記録密度媒体として好適な強磁性鉄合金粉末が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
磁気記録媒体の強磁性鉄合金粉末に要求される前述した微粒子化を満たすべく本発明においては平均長軸長が80nm以下の針状粒子を対象とする。しかし平均が20nm未満では微小にすぎるために20nm以上であるのが望ましい。
【0018】
このような平均長軸長20nm以上80nm以下の針状の強磁性鉄合金粉末は,常法により製造された針状の含水酸化鉄(オキシ水酸化鉄,実際にはα−FeOOHが望ましい)を200〜600℃の温度で加熱脱水し,得られる針状酸化鉄粒子を,水素ガスで常法のように300〜700℃で加熱還元することによって製造することができる。この強磁性鉄合金粉末には,諸特性向上のために従来より使用されている公知の添加元素,例えばAl,Si,Co,Yを含む希土類元素,そのほかの鉄以外の元素を粒子内部に含有させるか,粒子表面に存在させてもよい。
【0019】
いずれにしても,最終工程で加熱還元された強磁性鉄合金粉末の粒子は,そのままでは空気に触れると酸化が進行する。特に微粒子化すればするほど粒子の表面活性が強くなって,酸化しやすくなり,強磁性鉄合金粉末として機能しなくなる。そこで,還元された強磁性鉄合金粉末の表面に耐酸化性膜を形成させて酸化安定性を付与するが,この耐酸化性膜としては,粒子を制御下で酸化させることによって酸化皮膜が形成された状態として,酸化安定性を有するようにする。
【0020】
従来より,強磁性鉄合金粉末の表面酸化法として,還元された強磁性鉄合金粉末を不活性ガス中に適量の酸素または水蒸気を含有させた弱酸化性ガスに適切な温度で接触させて徐々に表面を酸化させる方法や,還元された強磁性鉄合金粉末をトルエンなどに浸漬させた後,大気中で乾燥酸化させる方法など様々な方法が知られている。前者の弱酸化性ガスを用いる従来の代表的な方法では,酸化の制御は温度と雰囲気中の酸素濃度によって行われ,酸化を進めれば進めるほど,つまり表面の酸化膜厚を厚くすればするほど強磁性鉄合金粉末の耐酸化性は改善される。しかし,この方法を本発明が対象とするような超微粒子に適用すると,耐酸化性が得られるような程度にまで酸化を進めると内部の金属コア部の針状性が大きくくずれてしまい,形状磁気異方性に依存する強磁性鉄合金粉末の保磁力は大きく減少し且つSFDは悪化を示すようになることが判明した。すなわち,表面で起きる酸化反応が,局所的に不均一に進むからであろうと考えられるが,内部金属コア部の針状性を保持できなくなってしまうのである。平均長軸長が80nm以下の超微粒子では,平均短軸長は10nm程度にまで小さくなるが,このような超微粒子に表面から酸化を進めて例えば4nmの酸化膜厚を形成したとすると,内部の金属コアの短軸長は2nmと非常に細いものとなり,酸化時のわずかな不均一な進行によっても,大きく内部金属コアの針状性が損なわれ,大きく磁気特性の低下を生じるようになる。十分な耐酸化性を得るに必要な酸化膜厚は,平均長軸長100nm以下の超微粒子では,酸素含有量をその膜厚の指標とすると,少なくとも15wt%以上の酸素含有量が必要であるが,酸素含有量が15wt%以上で高い保磁力例えば2000(Oe )以上を発現しようしても,従来の表面酸化法では達成が困難であることを知った。
【0021】
ところが,還元されたままの状態では表面活性が極めて高くて酸化し易いという超微粒子特有の性質は,逆に,この特徴を利用して均一で緻密な酸化膜を形成するのに役立てられることがわかった。すなわち,還元されたままの強磁性鉄合金粉末の超微粒子はH2Oを分解する能力が高いことが判明した。このH2Oを分解する能力を利用して,超微粒子に均一で緻密な酸化膜を形成することができ,この場合には,内部の金属コアの針状性が十分に保たれ,高い保磁力を兼備できるのである。
【0022】
本発明によれば,まず第一工程として,還元されたあとの強磁性鉄合金粉末を不活性ガス例えば窒素ガス雰囲気下で水と反応させる。ついで,第二工程として,不活性ガス例えば窒素ガス雰囲気下で10〜300℃に保ち,水と酸素を加えることで,酸化処理を行う。
【0023】
このようにして得られた強磁性鉄合金粉末は,平均長軸長が20〜80nmの超微粒子であっても,内部の金属コア部の針状性を損ねずに緻密で均一な表面酸化膜を形成しており,このため超微粒子でありながら高い耐酸化性を有しかつ高いHcを有する。このような改善は,還元されたあとの強磁性鉄合金粉末を前記の第一工程だけの処理でも達成できるが,さらに,第一工程と第二工程からなる一連の処理とすることで,酸化膜の緻密化を一層進めることができ,さらに高いHcを示す微粒子の生成が可能となる。
【0024】
さらに説明すると,第一工程の強磁性鉄合金粉末と水(純水を用いることが好ましい)との処理では,処理温度は,10〜90℃の温度で所望の効果が得られるが,好ましくは10〜60℃の低めで行う。この工程は,純水中に強磁性鉄合金粉末を加えるという湿式で行っても,また不活性雰囲気下で気体の純水(水蒸気)と強磁性鉄合金粉末を反応させるという乾式で行ってもよい。湿式の場合には,十分に窒素ガスで抜気し含有酸素を除去した純水を用いるのがよい。強磁性鉄合金粉末と純水との混合物は適当な攪拌を加え,強磁性鉄合金粉末を純水中に良く分散させ反応を均一に進ませるのが好ましい。この反応の終点は,発生する水素の定量によって行うことができる。
【0025】
ここでの反応においては,強磁性鉄合金粉末が純水と混合されると水素を発生し,強磁性鉄合金粉末の粒子表面で金属の酸化反応が進行する。従来の気相反応技術による強磁性鉄合金粉末の粒子表面酸化反応では,酸化の進行と共に発熱を伴い,この発熱がさらに酸化速度を速める結果となり,局部的に酸化が進みすぎる部分と,そうでない部分が発生する。これが,強磁性鉄合金粉末の内部金属コアの針状性が損なわれる原因となっていると考えられる。本発明に従う純水との湿式での反応では,過剰の水に対して強磁性鉄合金粉末が反応することで,酸化による発熱を多量の水の中に逃がすことができることから,局部的な発熱が抑制され,ひいては過剰な酸化速度の抑制効果が奏されるものと考えられ,このことが,粒子内部のコア金属部の高い針状性の保持にとつながっているものと考えられる。
【0026】
ここで特に注意しなくてはならないのは,本発明に従う水との反応の前に,還元後の強磁性鉄合金粉末の表面酸化が進んでしまわないようにすることである。本発明による水による反応が行われる前に,酸素による表面酸化が進んでしまうと,その後に水との反応で緻密な酸化膜を作ろうとしても,もはや目的のものは得られず,コアの針状性も損なわれてしまう。すなわち,水による酸化が行われる前に,例えば酸素ガス混合の水蒸気ガスで処理した場合には本発明の効果を得ることはできない。
【0027】
第一工程が湿式の場合においては,湿式での反応が終了したあとは,不活性ガス例えば窒素ガス雰囲気下でろ過(または遠心分離し),水洗する。その後に乾燥を行うが,乾燥温度としては60℃以下がよく,好ましくは40℃以下である。乾燥時間は,吸着水が完全にとれるまでで,おおよそ6時間もあれば十分である。
【0028】
次に,第二工程では,第一工程で得られた乾燥された強磁性鉄合金粉末を10〜300℃の温度で保持しながら,不活性ガス例えば窒素ガス雰囲気下で,水と酸素の導入によって表面酸化処理を行う。第二工程の処理は湿式でも乾式でも可能である。湿式の場合には10〜100℃に保たれた純水中に先の強磁性鉄合金粉末を加え,そこに0.01〜21vol.%の酸素を含有するガスを導入し,粒子表面の酸化処理を行うのが好適である。乾式の場合には,不活性雰囲気例えば窒素ガス雰囲気に水蒸気を10vol.%以上添加した雰囲気,ついで,この状態からさらに酸素ガスを0.01〜21vol.%添加した雰囲気中として,粒子表面の酸化処理を行う。保持温度は,高いほど酸化の進行が進むので,所望の耐酸化性と所望のσs値に応じてその温度を適正な値に設定する。粒子内部の金属部コアの針状性確保の点では湿式では10〜90℃,乾式では60〜200℃の温度で行うのがよい。気相中処理の場合に添加する水蒸気は10vol.%以上が好ましく,低すぎると不均一な酸化が生じやすくなる。また酸素ガスの添加量としては,不活性ガスに対して酸素濃度が0.01〜21vol.%の範囲とするが,この場合も0.01vol.%から徐々に増加させるのがよい。雰囲気変化の順序として,まず窒素雰囲気から,窒素と水蒸気の混合雰囲気に変え,この雰囲気を10分以上経てから,窒素と水蒸気と酸素の混合雰囲気へと変化させる。この順序を,変えると所望の効果が得られない。また,第二工程は湿式と乾式を組合せて行うこともできる。すなわち,第二工程における湿式による酸化処理を,目標とする酸化終点の手前で中断し,その後は乾式による酸化処理に切り換えて酸化終点まで酸化すると,さらに酸化膜の緻密化が促進される。
【0029】
なお,第二工程を行わずに,第一工程だけの処理でも本発明の目的が達成できるが,この場合にはかなり長時間の反応処理が必要である。例えば,先に説明した第一工程において,還元後の強磁性鉄合金粉末を湿式で,10〜90℃の温度で水と反応させる処理を7日以上の長時間にわたって行うのが好ましい。この場合,処理温度を高めに設定した方が,極めて遅い反応が多少とも速くなり,例えば,反応初期の2時間程度は10〜60℃の温度とし,その後の処理を80〜90℃の温度とすることで処理時間の短縮につながる。第一工程だけで得られた強磁性鉄合金粉末は,緻密な酸化膜を有し且つ内部金属コアの針状性も損なわれていないため,高い保磁力を有したものとなっている。
【0030】
以上のようにして,本発明によると,平均長軸長20nm以上80nm以下,好ましくは20nm以上60nm以下,さらに好ましくは20nm以上50nm以下であって,保磁力Hcが平均長軸長X(単位nm)との関係において,Hc=0.0036X3−1.1X2+110X−1390(Oe )以上,好ましくは,
Hc=0.0036X3−1.1X2+110X−1290(Oe)以上,
を示し,且つ酸素含有量が15wt%以上,好ましくは20wt%以上,さらにこのましくは25wt%を超える強磁性鉄合金粉末が得られる。
【0031】
この強磁性鉄合金粉末は,Co/Feの原子百分率が10〜50 at.%となる量のCoを含有することができ,飽和磁化量(σs)が130emu/g以下,好ましくは110emu/g以下,さらに好ましくは90emu/g以下で,Δσs(温度60℃で相対湿度90%の恒温恒湿下に7日間保持後のσsの変化量(%))が15%以下であることができる。また,この強磁性鉄合金粉末は鉄以外の元素としてAlを30 at.%以下,Yを含む希土類元素を30 at.%以下含有することができる。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
オキシ水酸化鉄を出発材料として脱水,焼成し,これを水素雰囲気下で加熱還元して得られた平均長軸長が80nm,Co含有量がCo/Feの原子百分率で20 at.%,Al含有量がAl/(Fe+Co)の原子百分率で10 at.%,Y(イットリウム)含有量がY/(Fe+Co)の原子百分率で8 at.%の強磁性鉄合金粉末(還元されたままのもの)を供試材として以下の処理を実施する。
【0033】
第一工程:密閉性の1リットルビーカーに純水500mlを入れ,その純水中に窒素ガスを吹き込んでビーカー内の酸素および液中の溶存酸素をパージする。パージ処理中の純水の温度は30℃に保つ。ついで,引き続きこの温度を保ちながら,そこに,予め用意していた前記の加熱還元された強磁性鉄合金粉末10g程度を,大気とは隔離された状態でビーカー内の純水中に投入し,攪拌を加え120分間その状態を保つ。この120分の攪拌の間は,外部酸素の侵入を抑えるためにビーカー内にわずかな窒素ガスの導入を行う。この処理により,強磁性鉄合金粉末と水とが反応して,微量であるが水素を発生する。
【0034】
この120分間の純水中での処理の後,継続して窒素ガス雰囲気下で,ろ過,水洗を行い,湿った強磁性鉄合金粉末を得る。得られた湿った粉末を60℃において窒素ガス雰囲気下で水分の発生がなくなるまで乾燥を行う。
【0035】
第二工程:次にこの強磁性鉄合金粉末を,管状炉において窒素ガスを20リットル/分で導入しながら120℃に加熱する(この温度は最後まで保持する)。温度が安定したら,その雰囲気にまず水蒸気を添加する。水蒸気は,窒素に対して10vol.%に相当する量を導入し,ついで,この窒素・水蒸気雰囲気に酸素ガスを添加する。酸素導入量は窒素に対して,初期は0.01vol.%から行い,12時間かけて最終的には10vol.%の値となるまで酸素濃度を徐々に上げる。
【0036】
得られた強磁性鉄合金粉末について,次のようにして,各種のバルク特性を評価し,さらにこの粉末で磁性層を形成したテープの磁気特性を評価する。評価結果を表1に示した。
【0037】
粒子サイズ測定:15万倍以上のTEM写真を用いて,100個以上の粒子の長軸長を測定し,その平均値を算出する。
酸素含有量測定:LECO製酸素窒素計を用いて測定。
磁気特性の測定:VSMを用いて,10kOeにて測定。
耐酸化性評価:恒温恒湿器内で60℃,90%RHにおいて一週間保存後,保存前後の飽和磁化量の変化量%を算出。
【0038】
テープ評価としては,強磁性鉄合金粉末100重量部に対し以下の材料を下記組成となるような割合で配合して遠心ボールミルで1時間分散させて磁性塗料を作製し,この磁性塗料をポリエチレンテレフタレートからなるベースフイルム上にアプリケーターを用いて塗布することにより,磁気テープを作製し,その保磁力Hcxを測定し,またそのヒステリシスループからSFD値を算出した。
強磁性鉄合金粉末 100重量部
ポリウレタン樹脂 30重量部
メチルエチルケトン 190重量部
シクロヘキサノン 80重量部
トルエン 110重量部
ステアリン酸 1重量部
アセチルアセトン 1重量部
アルミナ 3重量部
カーボンブラック 2重量部
【0039】
[実施例2〜3]
第二工程における処理温度を170℃(実施例2),200℃(実施例3)とした以外は実施例1を繰り返した。得られた強磁性鉄合金粉末について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に併記した。
【0040】
[実施例4〜10]
出発原料のオキシ水酸化鉄について異なる粒子サイズのものを使用し,強磁性鉄合金粉末の平均長軸長を下記のように変化させたこと,および第二工程における処理温度(酸化温度)を下記の温度にしたこと以外は,実施例1を繰り返した。得られた強磁性鉄合金粉末について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に併記した。
平均長軸長(nm) 第二工程の処理温度(℃)
実施例4 60 120
実施例5 60 170
実施例6 60 200
実施例7 40 120
実施例8 40 170
実施例9 40 200
実施例10 20 120
【0041】
[比較例1〜10]
第一工程を省略し,第二工程の条件も下記のように変更した以外は実施例1を繰り返した。各比較例での強磁性鉄合金粉末の粒子サイズは下記のものである。また第二工程では,還元して得られた強磁性鉄合金粉末を,管状炉において窒素を20リットル/分で導入しながら,各比較例とも下記の処理温度(酸化温度)に加熱し,その温度に安定したら酸素の導入を行う。酸素の導入にあたっては窒素に対して初期は0.01vol.%から行い,12時間かけて最終的には10vol.%の値となるまで酸素濃度を徐々に上げる。得られた強磁性鉄合金粉末について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に併記した。
粒子サイズ(nm) 処理温度(℃)
比較例1 80 120
比較例2 80 170
比較例3 80 200
比較例4 60 120
比較例5 60 170
比較例6 60 200
比較例7 40 120
比較例8 40 170
比較例9 40 200
比較例10 20 120
【0042】
[比較例11]
実施例4と同じ還元され強磁性鉄合金粉末対して,特開平4−230004号公報の実施例1に記載された条件で該粉末の表面酸化を行った。得られた強磁性鉄合金粉末について実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に併記した。
【0043】
【表1】

【0044】
表1の結果から次のことがわかる。
(1) 比較例のように,気相で表面酸化を進行させ,その酸化温度を高めて酸素含有量を増加させると,耐酸化性の指標であるΔσsの改善は進むが,Hc等の磁気特性の低下が著しくなる。この現象は,微粒子であればあるほど著しく,酸素含有量増加に伴う磁気特性の低下は微粒子の場合には顕著になる。また,水蒸気を用いた比較例11でも,酸素が混合された水蒸気であるので,反応性の高い酸素が優先的に酸化に供されるために,水蒸気と強磁性鉄合金粉末との反応による効果が現れず,保磁力は低い値となっている。
(2) これに対して,本発明に従う実施例では 表面酸化を進行させて耐酸化性Δσsを改善しても,Hcの低下はほとんど生じていない。この作用効果は微粒子において十分に発揮されている。
【0045】
[実施例11〜12]
実施例11〜12は,実施例4〜5において液相中で行う第一工程の処理を,水蒸気ガスと窒素ガスを用いた気相中での処理に変えたものである。その後の第二工程の処理は実施例4〜5と同様に行った。
【0046】
気相中での第一工程の処理条件として,雰囲気はいずれも窒素と水蒸気の混合ガスであり,水蒸気濃度は10vol.%となるように調整し,実施例11では120℃で30分間,実施例12では170℃で30分間の処理を行った。ついで,実施例4〜5と同様の第二工程を行い,得られた強磁性鉄合金粉末について実施例1と同様の評価を行ない,その結果を表2に示した。表2の結果から,本例のものは実施例4〜5にくらべるとHcの改善効果は低いが,比較例4〜5よりも,その改善が進んでいることがわかる。
【0047】
[実施例13〜14]
実施例13は,実施例4における第二工程の酸化処理を液相中の湿式に変えたものである。すなわち,実施例4における第一工程の処理後に,その純水中に強磁性鉄合金粉末が分散されたままで,その液中に酸素を導入して酸化することを第二工程としたものである。第二工程の液相中酸化の処理条件としては,液温を30℃に保ち,酸素濃度が0.01vol.%から最終的に21vol.%となるように段階的に24時間かけて増加させた。この酸化処理の後,ろ過,水洗を行い,湿った強磁性鉄合金粉末を得た。この湿った粉末を60℃において窒素ガス雰囲気下で水分の発生がなくなるまで乾燥を行った。
実施例14は,第一工程および第二工程の液温を60℃とした以外は実施例13と同様の処理を行ったものである。
【0048】
これらの例で得られた強磁性鉄合金粉末について,実施例1と同様の評価を行ない,その結果を表2に示したが,本例のものは,いずれも実施例4のものに比べるとHcが高く,また比較例4〜5のものよりも一層改善が進んでいることがわかる。これは,液中で酸素を供給することで,緻密で均一な表面酸化膜が形成された結果であると考えられる。
【0049】
[実施例15〜16]
実施例15と16は,実施例4における第二工程の酸化処理を液相中と気相中で行った物である。すなわち,実施例13の第二工程(液相中に酸素を導入して酸化する工程)において,その酸化反応を途中で止め,いったんろ過,水洗,乾燥を経た後,実施例4の第二工程と同じように,気相中で酸化を行ったものである。そのさい,実施例15では,液相中の酸化処理では液温を30℃に保ち,酸素濃度が0.01vol.%から最終的に21vol.%となるように段階的に12時間かけて増加させた。気相中の酸化処理では120℃で実施例4の第二工程と同じ条件で酸化処理した。実施例16では,気相中での酸化処理温度を170℃に変更した以外は,実施例15と同じ条件で処理したものである。
【0050】
これらの例で得られた強磁性鉄合金粉末について,実施例1と同様の評価を行ない,その結果を表2に示したが,実施例4〜5および実施例13〜14のものよりHcがさらに高く,耐酸化性も優れたものとなり,一層改善が進んでいることがわかる。これは,最後に気相中で高い温度で酸化処理を行うことにより,表面の酸化膜の緻密化がより一層進み,内部金属コアの針状性が向上したためと考えられる。
【0051】
[実施例17〜18]
実施例17は第一工程の処理温度を80℃とした以外は実施例4を繰り返したものであり,実施例18は第一工程の処理時間を30分とした以外は実施例4を繰り返したものである。
【0052】
これらの例で得られた強磁性鉄合金粉末について,実施例1と同様の評価を行ない,その結果を表2に示したが,実施例4との比較において,第一工程の処理温度が高くなると表面酸化の均一化が阻害されて磁気特性の低下を生じる傾向にあり,処理時間が短かすぎると,処理が不完全なままなので,これも磁気特性の低下を生じる傾向を示すことがわかる。したがって第一工程の処理としては,低温で長時間処理し,ゆっくりと反応を進ませることが好ましいことがわかる。
【0053】
[実施例19〜20]
実施例19は,第二工程の水蒸気の添加濃度を3%とした以外は実施例4を繰り返したものである。また,実施例20は,第二工程の酸素濃度を1vol.%の一定にして酸化した以外は実施例4を繰り返したものである。
【0054】
これらの例で得られた強磁性鉄合金粉末について,実施例1と同様の評価を行ない,その結果を表2に示したが,実施例4との比較において,第二工程の水蒸気濃度が低すぎると,その表面酸化の均一性が悪くなり,磁気特性の低下を招くことがわかる。また第二工程の酸素濃度は一定とするよりも段階的に増加させることの方が好ましいことがわかる。
【0055】
[実施例21]
実施例21は,実施例4における湿式での第一工程の処理で,時間を延長し且つ温度も延長させて処理し,第二工程を行うことなく,この第一工程だけの処理で処理を終えたものである。すなわち,実施例4の第一工程において,最初の30℃の水との反応を2時間行った後,90℃に昇温し,この90℃で7日間保持した。この処理の後,ろ過,水洗を行い,湿った粉末を60℃において窒素雰囲気下で,水分の発生がなくなるまで乾燥を行った。得られた粉末について,実施例1と同様の評価を行ない,その結果を表2に示したが,本例のものは水によって緩やかな酸化反応を進めた結果,比較例4〜5のものよりも高いHcを示すことがわかる。
【0056】
[比較例12]
還元して得られた強磁性鉄合金粉末に対し,実施例11の第一工程を行うことなく,実施例11の第二工程に相当する条件(表2に示す)で酸素と水蒸気の混合ガスによって直接酸化させた。得られた粉末について,実施例1と同様の評価を行ない,その結果を表2に示した。
【0057】
[比較例13]
還元して得られた強磁性鉄合金粉末に対し,表2に示したように,まず酸素ガスによって酸化させた後,さらに水蒸気を加えた酸素と水蒸気の混合ガスによって酸化させた以外は,比較例12を繰り返した。得られた粉末について,実施例1と同様の評価を行ない,その結果を表2に示した。
【0058】
これらの比較例12〜13のものでは,酸素含有量は同等であっても(酸化の程度は同等でも)実施例4のものに比べてHcが低くなっている。すなわち,比較例12〜13のように,還元後の表面が非常に活性状態にある強磁性鉄合金粉末に対して酸素のように反応性の高い酸化剤で酸化するよりも,実施例11のように反応性の低い水蒸気で表面を酸化させた場合には,緻密で均一な表面酸化膜の形成が行われので,内部金属コアの針状性も保持される結果,高い保磁力を有した強磁性鉄合金粉末が得られるものと考えられる。
【0059】
【表2】

【0060】
図1は,前述の実施例および比較例の強磁性鉄合金粉末について,その平均長軸長と保磁力との関係を整理して示したものである。図1から,本発明に従う実施例の強磁性鉄合金粉末は,80nm以下の超微粒子領域において,比較例のものよりも高い保磁力を有することがわかる。なお図1の曲線は,
Hc=0.0036X3−1.1X2+110X−1390(Oe) の式で表されるものに対応している。
【0061】
図2は,同じく前述の実施例および比較例の強磁性鉄合金粉末について,その平均長軸長とΔσsとの関係を整理して示したものである。図2から,本発明に従う実施例の強磁性鉄合金粉末は,80nm以下の超微粒子領域において,比較例のものと同等のΔσsを保持しており,酸化膜の厚い比較例のものと同等の耐酸化性を有することがわかる。
図3は,同じく前述の実施例および比較例の強磁性鉄合金粉末のうち,平均長軸長が60nm微粒子のものについて,その酸素含有量とHcとの関係を整理して示したものである。図3から,本発明に従う実施例の強磁性鉄合金粉末は,比較例のものに比べて同一酸素量では高いHcを示すことがわかる。すなわち,同じ酸素量でも酸化皮膜が緻密で均一であることからコア金属の針状性が保たれているので,実施例のものは比較例のものよりHcが高くなっているものと考えてよい。
【0062】
[実施例22]
実施例4で得られた強磁性鉄合金粉末を,磁性層と非磁性層との重層構造を有する磁気テープの作製試験に供し,電磁変換測定と保存安定性評価を行った。磁性塗料の作成においては,強磁性鉄合金粉末100重量部に対し以下の材料を下記組成となるような割合で配合した。また,非磁性塗料の作成においては,非磁性粉末80重量部に対し以下の材料を下記組成となるような割合で配合した。いずれの配合物もニーダーおよびサンドグラインダーを用いて,混練,分散を行った。得られた磁性層形成用塗布液および比磁性層(下層)形成用塗布液を,アラミド支持体からなるベースフイルム上にそれぞれ,下層厚が2.0μm,磁性層厚が0.20μmの目標厚みとなるように塗布し,磁性層が湿潤状態にあるうちに,磁場をかけて配向させ,乾燥,カレンダーを行い,重層構造の磁気テープを作製した。
【0063】
〔磁性塗料の組成〕
強磁性鉄合金粉末 100重量部
カーボンブラック 5重量部
アルミナ 3重量部
塩化ビニル樹脂(MR110) 15重量部
ポリウレタン樹脂(UR8200) 15重量部
ステアリン酸 1重量部
アセチルアセトン 1重量部
メチルエチルケトン 190重量部
シクロヘキサノン 80重量部
トルエン 110重量部
【0064】
〔非磁性塗料の組成〕
非磁性粉末α−Fe2O3 85重量部
カーボンブラック 20重量部
アルミナ 3重量部
塩化ビニル樹脂(MR110) 15重量部
ポリウレタン樹脂(UR8200) 15重量部
メチルエチルケトン 190重量部
シクロヘキサノン 80重量部
トルエン 110重量部
【0065】
得られた磁気テープの磁気特性,電磁変換特性(C/N,出力)を測定した。そのうち,C/N比は,記録ヘッドをドラムテスターに取り付けて,デジタル信号を,記録波長0.35μmで記録した。そのさい,MRヘッドを使用し,再生信号を測定し,ノイズは変調ノイズを測定した。評価は,比較例14で得られた強磁性鉄合金粉末を用いた場合の出力,C/Nを0dBとして表示した。また,磁気テープの保存安定性は,60℃,90%RH雰囲気において,1週間保存したときの保存前後の飽和磁化の変化量を%で表示したものをΔBmとして評価した。これらの評価結果を表3に示した。
【0066】
[実施例23〜24]
実施例7および15で得られた強磁性鉄合金粉末を用いた以外は,実施例22を繰り返し,実施例22と同様の評価を行った結果を表3に示した。
【0067】
[比較例14〜15]
比較例4および比較例7で得られた強磁性鉄合金粉末を用いた以外は,実施例22を繰り返し,実施例22と同様の評価を行った結果を表3に示した。
【0068】
【表3】

【0069】
表3の結果から次のことがわかる。
粒子の長軸長サイズが約60nmの微粒子における実施例22,24と,比較例14とを対比すると,実施例22,24のものは,高いHcと低いSFDを示すことより,出力が高く,ノイズも低く抑えられている。その結果,C/Nが,比較例14よりも実施例22では+1.5dB改善し,実施例24では+2.1dB改善している。
粒子の長軸長サイズが約40nmの微粒子においても,比較例15ではC/Nが+0.3dBであるのに対して,実施例23ではC/Nが+2.3dBと大きく改善されている。
さらに磁気テープの保存安定性においては,表面に十分な酸化被膜を形成しているため,テープとしても優れた保存安定性を示すものとなっている。
したがって,本発明に従う強磁性鉄合金粉末によれば,優れた電磁変換特性と保存安定性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に従う強磁性鉄合金粉末の平均長軸長と保磁力との関係を比較例のものと対比して示した図である。
【図2】本発明に従う強磁性鉄合金粉末の平均長軸長とΔσs(耐酸化性の指標)との関係を比較例のものと対比して示した図である。
【図3】本発明に従う強磁性鉄合金粉末のうち平均長軸長が60nmのものについて酸素含有量とHcとの関係を比較例のものと対比して示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を主成分とし且つ平均長軸長(X)が20nm以上で80nm以下の針状の粒子からなる磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末であって、酸素含有量が15wt%以上で33wt%以下であり、前記平均長軸長の範囲内において保磁力(Hc)が0.0036X3−1.1X2+110X−1390(Oe)以上(Xは平均長軸長:単位nmを表す)である磁気記録媒体用の強磁性鉄合金粉末。
【請求項2】
Co/Feの原子百分率が10〜50at.%となる量のCoを含有し、飽和磁化量(σs)が130emu/g以下、Δσs(温度60℃で相対湿度90%の恒温恒湿下に7日間保持後のσsの変化量(%))が15%以下である請求項1に記載の強磁性鉄合金粉末。
【請求項3】
前記強磁性鉄合金粉末がAlを30at.%以下、希土類元素を30at.%以下含有する請求項1または2に記載の強磁性鉄合金粉末。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の強磁性鉄合金粉末で磁性層を構成した磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−173864(P2007−173864A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66090(P2007−66090)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【分割の表示】特願2002−61728(P2002−61728)の分割
【原出願日】平成14年3月7日(2002.3.7)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】