説明

磁気記録媒体

【課題】 優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供すること。また、磁性層/非磁性層の界面変動が少ない磁気記録媒体を提供すること。さらに、磁性層の角型比の優れた磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】 支持体上に、非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性層、及び、強磁性粉末を結合剤中にを分散した少なくとも一層の磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体であって、該非磁性層の結合剤がポリウレタン樹脂を含み且つ該磁性層の結合剤がセルロース誘導体を含むことを特徴とする磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に強磁性粉末と結合剤とを分散させてなる少なくとも一層以上の磁性層を設けた磁気記録媒体に関する。本発明の磁気記録媒体には磁気テープや磁気ディスク等が含まれ、優れた電磁変換特性及び耐久性を有する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用などのテープ状磁気記録媒体及びフレキシブルディスクなどのディスク状磁気記録媒体として、γ−酸化鉄、Co含有酸化鉄、酸化クロム、強磁性金属粉末などの強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層を支持体上に設けた磁気記録媒体が用いられている。
【0003】
強磁性粉末を結合剤中(本明細書において、「バインダー」ともいう。)に分散させた塗布液を支持体に塗布して得られる磁性層は、強磁性粉末の充填度が高く破断伸びが小さく脆いため、機械的な力を加えることにより簡単に破壊され、支持体から剥離することがある。そこで、支持体上に非磁性粉末を結合剤中に分散させた非磁性層を設けて、電磁変換特性や耐久性を向上させることが試みられている。
【0004】
特許文献1又は2にあるように、強磁性粉末とポリウレタンバインダー或いは塩化ビニル系バインダーをよく分散した磁性塗布液、及び、非磁性粉末とポリウレタンバインダー或いは塩化ビニル系バインダーを良く分散した非磁性塗布液を用いて磁気記録媒体を製造しても、高い電磁変換特性の要求レベルを満たすことができなかった。
磁気記録媒体の断面を透過型電子顕微鏡により研究し、特に磁性層/非磁性層界面を詳細に観察すると、その界面の変動が大きいことがわかった。
【0005】
特許文献3は、環状エステル変性セルロース誘導体を磁性層の結合剤として使用することが開示されているが、この特許文献は約4μmという厚い磁性層厚みを有する磁気記録媒体を開示するのみであり、このような厚い磁性層に変性セルロースを結合剤として用いた場合、塗布液粘度が高く充分な平滑性を得ることは困難である。
【0006】
【特許文献1】特開平11−259850号公報
【特許文献2】特開2001−176052号公報
【特許文献3】特開2001−209923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする第1の課題は、優れた電磁変換特性を有する磁気記録媒体を提供することである。本発明が解決しようとする第2の課題は、磁性層/非磁性層の界面変動が少ない磁気記録媒体を提供することである。同じく第3の課題は、磁性層の角型比の優れた磁気記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の手段(1)により達成された。好ましい実施態様である(2)〜(5)と共に以下に列記する。
(1)支持体上に、非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性層、及び、強磁性粉末を結合剤中に分散した少なくとも一層の磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体であって、該非磁性層の結合剤がポリウレタン樹脂を含み且つ該磁性層の結合剤がセルロース誘導体を含むことを特徴とする磁気記録媒体、
(2)該ポリウレタン樹脂とセルロース誘導体とが相溶しない(1)に記載の磁気記録媒体、
(3)該セルロース誘導体がアシルセルロース及び/又はアシルセルロース誘導体である(1)又は(2)に記載の磁気記録媒体、
(4)該セルロース誘導体がアセチルセルロース及び/又はアセチルセルロース誘導体である(1)〜(3)いずれか1つに記載の磁気記録媒体、
(5)磁性層の乾燥厚みが10〜200nmである(1)〜(4)いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、非磁性層の結合剤がポリウレタン樹脂を含み、磁性層の結合剤がセルロース誘導体を含む。この結果、非磁性層の結合剤と磁性層の結合剤が相溶しないか、又は相溶性がきわめて低いため、非磁性層と磁性層をWET on WETで塗布しても、WET on DRYで塗布しても非磁性層/磁性層間の界面がシャープで変動が少ない。このため磁性層の厚み変動が少なくなり、優れた電磁変換特性が得られる。
特に磁性層の厚みが薄い場合(乾燥厚み10〜200nm)、磁性層の結合剤が非磁性層に相溶、拡散しにくいため、磁性層塗布直後に未乾燥の状態で磁場配向させる時、磁性体の運動性が高い。その結果、配向度(角型比)が高くなり電磁変換特性に優れた媒体が得られる。
さらに、磁性層のガラス転移温度(Tg)が高く、高速摺動摩擦時の磁性層表面の弾性率低下が少なく、摩擦係数が低い。その結果、走行耐久性に優れた磁気記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の磁気記録媒体は、支持体上に、非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性層、及び、強磁性粉末を結合剤中にを分散した少なくとも一層の磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体であって、該非磁性層の結合剤がポリウレタン樹脂を含み、且つ該磁性層の結合剤がセルロース誘導体を含むことを特徴とする。以下、本発明を更に詳しく説明する。
I.結合剤
本発明の磁気記録媒体は、非磁性層の結合剤がポリウレタン樹脂を含み、かつ磁性層の結合剤がセルロース誘導体を含む。以下、それぞれについて説明する。
【0011】
(セルロース誘導体)
本発明で使用するセルロース誘導体とは、セルロースの水酸基をエステル化、エーテル化したものであり、セルロースエステル、セルロースエーテルが例示できる。さらにこれらを塩としたものも使用することができる。
セルロース誘導体として、前記のセルロースエステルやセルロースエーテル等の水酸基に、さらに他の側鎖基を導入して変性した誘導体(セルロースエステル誘導体、セルロースエーテル誘導体)を使用することもできる。詳細は後述する。
セルロースエステルとしては、硫酸セルロース、アシルセルロース等が例示できる。
セルロースエーテルとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、等が好ましい。
また、これらの塩としては、カルボキシアルキルセルロースナトリウム塩等が例示できる。
【0012】
本発明で使用するセルロース誘導体として、アシルセルロース及び/又はアシルセルロース誘導体を好ましく用いることができる。アシルセルロースとしては、ジアセチルセルロース(DAC)、トリアセチルセルロース(TAC)などのアセチルセルロース、ジプロピルセルロース、トリプロピルセルロースなどのプロピルセルロースが例示できる。1つの分子内に異なるアシル基を有する混合エステル化合物も例示できる。具体的には、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが例示できる。なお、アシルセルロース誘導体とは、アシルセルロースの残存する水酸基にさらに後述するように他の側鎖基を導入して変性した誘導体である。
【0013】
また、本発明では、セルロース誘導体として、アセチルセルロース及び/又はアセチルセルロース誘導体を使用することがより好ましい。アセチルセルロースとしては、DACやTACが例示できる。アセチルセルロース誘導体としては、アセチル基と他のアシル基の混合エステル化合物が例示できる。また、アセチルセルロースや前記混合エステル化合物の残存する水酸基に、後述するように、側鎖基を導入して変性した化合物も含まれる。具体的には、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートなどが例示できる。
【0014】
前述のように、セルロースやセルロース誘導体の水酸基に、側鎖基を導入して変性することも好ましい。例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン、α、α−ジメチル−β−プロピオラクトン、β−エチル−δ−バレロラクトン、α−メチル−εカプロラクトンなどの環状エステル類や、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、フェニルグリシジルエーテルなどエポキシ化合物を反応させて更に長い側鎖基を導入することが可能である。これらの中でも、ε−カプロラクトン及びγ−バレロラクトンが特に好ましい。側鎖基の導入は、溶剤溶解性などを調整するのに有効である。
【0015】
これらのセルロース誘導体の中で特に好ましくはセルロースアセテート(DAC、TAC等)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートであり、最も好ましくはセルロースアセテート、セルロースブチレートである。
また、本発明において、磁性層の結合剤として使用されるセルロース誘導体は、1種単独で使用することもできるが、2以上の異なるセルロース誘導体を混合して使用することもできる。
【0016】
本発明で使用されるセルロース誘導体は非磁性層の結合剤に用いられるポリウレタン樹脂バインダーと相溶性が無いか、又はきわめて低いことが特徴である。このため磁性層と非磁性層の界面変動が少なく、高い電磁変換特性が得られる。従ってセルロース誘導体の中でもニトロセルロースは比較的ポリウレタン樹脂との相溶性が高いので好ましくない。
相溶性は、磁性層と非磁性層の結合剤溶液を混合撹拌後、1時間静置した後の液分離のを観察することによって判断することができる。静置後の溶液が完全に分離している場合は、非相溶であり、分離しているが界面にエマルジョン層が生じている場合は、相溶性がきわめて低いと判断できる。
【0017】
セルロース誘導体はセルロースのヒドロキシル基が全て置換されているよりも適度に残っている方が磁性体表面に対する吸着性があり、分散性に良好である。しかしながらヒドロキシル基が多すぎると溶剤溶解性が低く分散性が低下し、また塗布液粘度が高くなり好ましくない。
アセチルセルロースの場合は、アセチル置換度は1.5〜2.8であることが好ましい。また、このとき酢化度は約40%〜60%である。
セルロースの重合度は50〜300が好ましく、100〜200であることがより好ましい。重合度が上記範囲内であると、良好な耐久性が得られると共に、溶液粘度が好適で、塗膜の平滑性が良好であるので好ましい。
【0018】
磁性層に使用される結合剤は、非磁性層に使用される結合剤と相溶性のないものが好ましいが、磁性体である強磁性粉末の分散性を高めるための分散剤としての機能をもつポリマーを少量併用することも可能である。
このような分散媒としても機能を持つポリマーの使用量は、強磁性粉末100重量部に対して100重量部以下が好ましく、50重量部以下であることがより好ましい。
低分子分散剤はその殆どが磁性体表面に吸着或いは結合することが好ましい。
具体的化合物としては公知のポリマーであって、分散剤としての機能を有するものを使用することができる。
【0019】
(ポリウレタン樹脂)
本発明において非磁性層の結合剤として使用するポリウレタン樹脂としては、例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治 編、1986年 日刊工業新聞社)に詳しく記載されている樹脂を挙げることができるが、通常、長鎖ジオール、短鎖ジオール(鎖延長剤と呼ばれることもある)とジイソシアネート化合物の付加重合によって得られる。
【0020】
長鎖ジオールは分子量500〜5,000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンジオールなどが用いられる。この長鎖ポリオールの種類によりポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルエステルウレタン、ポリカーボネートウレタン、などと呼ばれる。
【0021】
ポリエステルジオールとしてはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、などの脂肪族二塩基酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族二塩基酸とグリコールとの縮重合によって得られる。グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどがあげられる。
またポリエステルジオールにはこのほかε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトンを開環重合したポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオールなども用いることができる。
ポリエステルジオールは耐加水分解性の観点で分岐側鎖をもつもの、芳香族、脂環族の原料から得られるものが好ましい。
【0022】
ポリエーテルジオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールや、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールP、水素化ビスフェノールAなどの芳香族グリコールや脂環族ジオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合したものなどがあげられる。
【0023】
これらの長鎖ジオールは複数の種類のものを併用、混合して用いることもできる。
短鎖ジオールとしては上記ポリエステルジオールのグリコール成分に例示したものと同じ化合物群の中から選ぶことができる。また3官能以上の多価アルコール例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを少量併用すると分岐構造のポリウレタン樹脂が得られ、溶液粘度を低下させたり、ポリウレタンの末端のOH基を増やすことでイソシアネート系硬化剤との硬化性を高めることができる。
【0024】
ジイソシアネート化合物としてはMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、2,4−TDI(トリレンジイソシアネート)、2,6−TDI、1,5−NDI(ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、XDI(キシリレンジイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1、4−ジイソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水素添加キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)などの脂肪族、脂環族ジイソシアネートなどが用いられる。
【0025】
ポリウレタン樹脂中の長鎖ジオール/短鎖ジオール/ジイソシアネートの好ましい組成は(80〜15重量%)/(5〜40重量%)/(15〜50重量%)である。
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は1meq/g〜5meq/gが好ましく、1.5〜4.5であることがより好ましい。上記範囲内であると、十分な力学強度が得られると共に、溶液粘度が良好で分散性が高いので好ましい。
ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は30℃〜200℃が好ましく、50℃〜160℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると、良好な耐久性が得られると共に、カレンダー成形性も良好で、電磁変換特性に優れるので好ましい。
ポリウレタン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で求めた重量平均分子量は、10,000〜200,000であることが好ましく、20,000〜100,000であることがより好ましく、40,000〜80,000であることが更に好ましい。
【0026】
ポリウレタン樹脂に吸着官能基(極性基)を導入することも好ましい。導入する方法としては官能基を長鎖ジオールのモノマーの一部に用いる方法、短鎖ジオールの一部に用いる方法やポリウレタンを重合した後、高分子反応で極性基を導入する方法などがある。
【0027】
(その他結合剤)
本発明において、磁性層は結合剤としてセルロース誘導体を含有し、非磁性層は結合剤としてポリウレタン樹脂を含有するが、他の結合剤と併用して用いることもできる。
具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などから単独あるいは複数の樹脂を混合して用いることができる。
【0028】
本発明において、結合剤を架橋、硬化させ塗膜の力学強度や耐熱性高めるために硬化剤を用いることができる。好ましい硬化剤としてポリイソシアネート化合物がある。ポリイソシアネート化合物は3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。具体的にはトリメチロールプロパン(TMP)にTDI(トリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにIPDI(イソホロンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにXDI(キシリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、などアダクト型ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
さらに、TDIの縮合イソシアヌレート型3量体、TDIの縮合イソシアヌレート5量体、TDIの縮合イソシアヌレート7量体、及びこれらの混合物、HDIのイソシアヌレート型縮合物、IPDIのイソシアヌレート型縮合物、さらに、クルードMDIなどがあげられる。これらの中で好ましいのはTMPにTDIを3モル付加した化合物、TDIのイソシアヌレート型3量体などである。
【0029】
イソシアネート系硬化剤以外に電子線あるいは紫外線などの放射線硬化型の硬化剤を用いても良い。この場合放射線硬化官能基としてアクリロイル基又はメタクリロイル基を分子内に2個以上、好ましくは3個以上有する硬化剤を用いることができる。例えばTMP(トリメチロールプロパン)のトリアクリレート、ペンタエリスリトールのテトラアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマーなどがある。この場合、硬化剤のほかに結合剤にも(メタ)アクリロイル基を導入するのが好ましい。紫外線硬化の場合はこのほかに光増感剤が併用される。
硬化剤は結合剤100重量部に対して0〜80重量部添加するのが好ましい。上記範囲内であると、分散性が良好であるので好ましい。
【0030】
II.磁性層
本発明の磁気記録媒体は、支持体上に、強磁性粉末を結合剤中に分散した少なくとも1つの磁性層を有する。磁性層の結合剤として上述の通り、セルロース誘導体を使用し、さらに他の結合剤を併用することもできる。
本発明の磁性層に使用される強磁性粉末としては、強磁性金属粉末あるいは強磁性六方晶フェライト粉末が挙げられる。
(強磁性金属粉末)
本発明に使用される強磁性金属粉末としては、Feを主成分とするもの(合金も含む)であれば、特に限定されないが、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性金属粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つがα−Fe以外に含まれるものが好ましく、特に、Co、Al、Yが含まれるのが好ましい。さらに具体的には、CoがFeに対して10〜40原子%、Alが2〜20原子%、Yが1〜15原子%含まれるのが好ましい。
【0031】
これらの強磁性金属粉末にはあとで述べる分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物又は酸化物を含むものなどであってもよい。
【0032】
強磁性金属粉末の含水率は0.01〜2%とするのが好ましい。結合剤の種類によって強磁性金属粉末の含水率は最適化するのが好ましい。
結晶子サイズは8〜20nm、好ましくは9〜18nm、特に好ましくは10〜16nmである。
結晶子サイズは、X線回折装置(理学電機製 RINT2000シリーズ)を使用し、線源CuKα1、管電圧50kV、管電流300mAの条件で回折ピークの半値幅からScherrer法により求めた平均値を用いた。
【0033】
強磁性金属粉末の長軸長は10〜80nmが好ましく、25〜75nmがより好ましく、35〜70nmが特に好ましい。
本発明の磁性層に使用される強磁性金属粉末のBET法による比表面積(BET比表面積、以下、省略記号として「SBET」とも標記する。)は30m2/g以上80m2/g未満が好ましく、38〜48m2/gがさらに好ましい。これにより、良好な表面性と低いノイズの両立が可能となる。
該長軸長は、透過型電子顕微鏡写真を撮影し、その写真から強磁性金属粉末の短軸長と長軸長とを直接読みとる方法と、画像解析装置カールツァイス社製IBASSIで透過型電子顕微鏡写真トレースして読みとる方法を併用して求められる。
【0034】
強磁性金属粉末のpHは用いる結合剤との組み合せにより最適化することが好ましい。その範囲は4〜12であるが、好ましくは7〜10である。
強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理を施してもかまわない。その量は強磁性金属粉末に対し0.1〜10%であることが好ましく、表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が100mg/m2以下になり好ましい。強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合があるが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与える事は少ない。また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ないほうが好ましく、その値は20容量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5容量%以下である。
【0035】
また形状については先に示した粒子サイズについての特性を満足すれば針状、粒状、米粒状あるいは板状いずれでもかまわないが、特に針状の強磁性金属粉末を使用することが好ましい。針状強磁性金属粉末の場合、針状比は4〜12が好ましく、更に好ましくは5〜12である。
【0036】
強磁性金属粉末の抗磁力(Hc)は好ましくは159〜239kA/m(2,000〜3,000Oe)であり、更に好ましくは167〜231kA/m(2,100〜2,900Oe)である。飽和磁束密度は好ましくは100〜300mT(1,000〜3,000G)であり、更に好ましくは160〜280mT(1,600〜2,800G)である。飽和磁化(σs)は、好ましくは100〜170A・m2/kg(emu/g)、更に好ましくは100〜160A・m2/kg(emu/g)である。
【0037】
磁性体自体のSFD(switching field distribution)は小さい方が好ましく、0.8以下であることが好ましい。SFDが0.8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また磁化反転がシャープでピークシフトが小さくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hc分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲータイトの粒度分布を良くする、単分散α−Fe23を使用する、粒子間の焼結を防止する等の方法がある。
【0038】
強磁性金属粉末は、公知の製造方法により得られたものを用いることができ、下記の方法を挙げることができる。焼結防止処理を行った含水酸化鉄、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFe又はFe−Co粒子などを得る方法、複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)と水素などの還元性気体で還元する方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて微粉末を得る方法などである。このようにして得られた強磁性金属粉末は公知の徐酸化処理を施す。含水酸化鉄、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元し、酸素含有ガスと不活性ガスの分圧、温度、時間を制御して表面に酸化皮膜を形成する方法が、減磁量が少なく好ましい。
【0039】
(強磁性六方晶フェライト粉末)
強磁性六方晶フェライト粉末の板径は、5〜200nmが好ましい。特にトラック密度を上げるため磁気抵抗ヘッドで再生する場合、低ノイズにする必要があり、板径は40nm以下が好ましい。板径がこの範囲内にあると、熱揺らぎの影響を受けずに安定的な磁化が得られ、ノイズが低いため、高密度記録に好適である。
板状比(板径/板厚)は1〜15が望ましい。好ましくは1〜7である。板状比が小さいと磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、小さすぎると十分な配向性が得られないため、1以上であることが好ましい。また板状比が15以下であれば、粒子間のスタッキングによりノイズを抑えることができる。この粒子サイズ範囲のSBETは10〜200m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符合する。
粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが、粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0である。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
【0040】
磁性体で測定される抗磁力(Hc)は39.8〜398kA/m(500〜5,000Oe)程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。本発明では強磁性六方晶フェライト粉末のHcは143〜238kA/m(1,800〜3,000Oe)程度が好ましく、159〜223kA/m(2,000〜2,800Oe)がより好ましい。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラーを越える場合は、159kA/m(2,000Oe)以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
【0041】
飽和磁化(σs)は40〜80A・m2/kg(emu/g)であることが好ましい。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。飽和磁化(σs)改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
【0042】
強磁性六方晶フェライト粉末を分散する際に強磁性六方晶フェライト粉末の粒子表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。
表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の化合物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。表面処理剤の量は強磁性六方晶フェライト粉末に対して0.1〜10%である。強磁性六方晶フェライト粉末のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で、分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜11程度が選択される。強磁性六方晶フェライト粉末に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが、通常0.01〜2.0%が選ばれる。
【0043】
強磁性六方晶フェライト粉末の製法としては、
(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得るガラス結晶化法、
(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る水熱反応法、
(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉末を得る共沈法等があるが、本発明は製法を選ばない。
また、本発明における磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。
【0044】
III.非磁性層
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体及び磁性層の間に、結合剤と非磁性粉末からなる非磁性層を有する。
非磁性層に使用できる非磁性粉末は無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等が挙げられる。具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタン等が単独あるいは2種類以上の組み合せで使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
【0045】
非磁性粉末の形状は針状、球状、多面体状、板状のいずれでも良い。非磁性粉末の結晶子サイズは0.004〜1μmが好ましく、0.04〜0.1μmが更に好ましい。この範囲内にあると、良好な分散性が得られるとともに、平滑な表面が得られるため好ましい。
これら非磁性粉末の平均粒径は0.005〜2μmが好ましく、0.01〜0.2μmが更に好ましい。必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合せたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもできる。この範囲内にあると、良好な分散性が得られるとともに、平滑な表面が得られるため好ましい。
【0046】
非磁性粉末のSBETは好ましくは1〜100m2/g、より好ましくは5〜70m2/gであり、更に好ましくは10〜65m2/gである。比表面積が上記の範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。
DBP吸油量は好ましくは5〜100ml/100g、より好ましくは10〜80ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gである。
比重は好ましくは1〜12、より好ましくは3〜6である。
タップ密度は0.05〜2g/ml、好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなるので好ましい。
【0047】
非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜10が特に好ましい。pHが上記範囲内であると、高温高湿下においても摩擦係数が少なく、また、脂肪酸の遊離量が適切で摩擦係数が少ないので好ましい。
非磁性粉末の含水率は好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%、更に好ましくは0.3〜1.5重量%である。含水量が0.1〜5重量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。
強熱減量は20重量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
【0048】
また、非磁性粉末が無機粉末である場合にはモース硬度は4以上、10以下のものが好ましい。モース硬度が4より小さいと耐久性が確保できなくなる傾向がある。
非磁性粉末のステアリン酸吸着量は好ましくは1〜20μmol/m2、更に好ましくは2〜15μmol/m2である。
非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は20〜60μJ/cm2(200〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは3〜9の間にあることが好ましい。
【0049】
これらの非磁性粉末の表面にはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、 SiO2、TiO2、ZrO2、であるが、更に好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合せて使用しても良いし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いても良いし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、又はその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
【0050】
本発明において非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100,ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX 石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A,TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100,MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−100F、MT−500HD。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
【0051】
非磁性層には、非磁性粉末と共にカーボンブラックを混合することで表面電気抵抗(Rs)を下げることができ、光透過率を小さくすることができるとともに所望のマイクロビッカース硬度を得る事ができる。
非磁性層のマイクロビッカース硬度は通常、25〜60kg/mm2、好ましくはヘッドあたりを調整するために、30〜50kg/mm2である。マイクロビッカース硬度は薄膜硬度計(日本電気製 HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。
光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0052】
本発明において、非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は100〜500m2/gが好ましく、150〜400m2/gがより好ましい。カーボンブラックのDBP吸油量は20〜400ml/100gが好ましく、30〜200ml/100gがより好ましい。カーボンブラックの粒子径は好ましくは5〜80nm、より好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製、BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製、#3050B、3150B、3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B,#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製、CONDUCTEX SC、RAVEN 8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製、ケッチェンブラックECなどがあげられる。
【0053】
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50重量%を越えない範囲、非磁性層総質量の40%を越えない範囲で使用できる。これらのカーボンブラックは単独、又は組み合せで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編を参考にすることができる。
尚、上述した非磁性層で使用するカーボンブラックを、磁性層に添加することも好ましい。
【0054】
また非磁性層には有機質粉末を目的に応じて、添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。
【0055】
IV.その他添加剤等
本発明の磁気記録媒体において磁性層又は非磁性層には分散効果、潤滑効果、帯電防止効果、可塑効果などを付与するための添加剤を含有しても良い。
これら添加剤としては以下の例を挙げることができる。
二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸基、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸およびそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、(イソ)ノニルホスホン酸、(イソ)デシルホスホン酸、(イソ)ウンデシルホスホン酸、(イソ)ドデシルホスホン酸、(イソ)ヘキサデシルホスホン酸、(イソ)オクタデシルホスホン酸、(イソ)エイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸およびそのアルカリ金属塩。
【0056】
燐酸フェニル、燐酸ベンジル、燐酸フェネチル、燐酸α−メチルベンジル、燐酸1−メチル−1−フェネチル、燐酸ジフェニルメチル、燐酸ビフェニル、燐酸ベンジルフェニル、燐酸α−クミル、燐酸トルイル、燐酸キシリル、燐酸エチルフェニル、燐酸クメニル、燐酸プロピルフェニル、燐酸ブチルフェニル、燐酸ヘプチルフェニル、燐酸オクチルフェニル、燐酸ノニルフェニル等の芳香族燐酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、燐酸オクチル、燐酸2−エチルヘキシル、燐酸イソオクチル、燐酸(イソ)ノニル、燐酸(イソ)デシル、燐酸(イソ)ウンデシル、燐酸(イソ)ドデシル、燐酸(イソ)ヘキサデシル、燐酸(イソ)オクタデシル、燐酸(イソ)エイコシル等の燐酸アルキルエステルおよびそのアルカリ金属塩。
【0057】
アルキルスルホン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸、酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸およびこれらの金属塩、又は、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していても良い一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良い1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していても良いアルコキシアルコール又はアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステル又は多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基およびF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基をもつものでも良い。
【0058】
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウム又はスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸又はリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。これらの潤滑剤、帯電防止剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0059】
これらの具体例としては日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3,ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製、デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等があげられる。
【0060】
本発明で使用されるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は非磁性層、磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着もしくは結合する性質を有しており、磁性層においては主に強磁性粉末の表面に、非磁性層においては主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着もしくは結合し、一度吸着した分散媒、特に有機燐化合物は金属あるいは金属化合物等の表面から脱着しがたいと推察される。従って、強磁性粉末表面あるいは非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、強磁性粉末あるいは非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。
【0061】
本発明で用いられる添加剤のすべて又はその一部は、磁性層あるいは非磁性層用塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
【0062】
本発明において、磁性層及び非磁性層で用いられる有機溶剤は、公知のものが使用できる。有機溶剤は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
【0063】
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には磁性層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
【0064】
V.支持体
本発明の磁気記録媒体は、以上の材料により調製した塗布液を支持体(本明細書において、非磁性支持体上ともいう。)に塗布して非磁性層及び磁性層を形成する。
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては二軸延伸を行ったポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド、ポリベンズオキシダゾール等の公知のものが使用できる。好ましくはポリエチレンナフタレート、芳香族ポリアミドである。これらの非磁性支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行っても良い。
【0065】
また、本発明に用いることのできる非磁性支持体は中心線平均表面粗さがカットオフ値0.25mmにおいて0.1〜20nm、好ましくは1〜10nmの範囲という優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。また、これらの非磁性支持体は中心線平均表面粗さが小さいだけでなく1μm以上の粗大突起がないことが好ましい。
得られた支持体の算術平均粗さは(Ra)の値[JIS B0660−1998、ISO 4287−1997]で0.1μm以下であることが、得られた磁気記録媒体のノイズが小さくなるので好ましい。
本発明の磁気記録媒体における非磁性支持体の好ましい厚みとしては3〜80μmである。
【0066】
VI.バックコート層
本発明で用いる非磁性支持体の磁性塗料が塗布されていない面にバックコート層(バッキング層)が設けられていてもよい。バックコート層は、非磁性支持体の磁性層が設けられていない面に、研磨材、帯電防止剤などの粒状成分と結合剤とを有機溶剤に分散したバックコート層形成塗料を塗布して設けられた層である。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができ、また結合剤としてはニトロセルロース、フェノキシ樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独又はこれらを混合して使用することができる。本発明においては、非磁性支持体の非磁性塗料およびバックコート層形成塗料の塗布面に接着剤層が設けられていてもよい。
【0067】
VII.下塗り層
本発明の磁気記録媒体においては、下塗り層を設けても良い。下塗り層を設けることによって支持体と非磁性層との接着力を向上させることができる。下塗り層としては、溶剤へ可溶性のポリエステル樹脂が使用される。下塗り層は厚さとして0.5μm以下のものが用いられる。
【0068】
VIII.平滑化層
本発明の磁気記録媒体には、平滑化層を設けてもよい。平滑化層とは、非磁性支持体表面の突起を埋めるための層であり、非磁性支持体と非磁性層の間に設けられる。
平滑化層は、放射線硬化型化合物を放射線照射により硬化させて形成することができる。放射線硬化型化合物とは、紫外線又は電子線などの放射線を照射すると重合又は架橋を開始し、高分子化して硬化する性質を有する化合物をいう。
【0069】
IX.製造方法
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性粉末(強磁性六方晶フェライト粉末又は強磁性金属粉末)、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初から又は途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。
本発明の磁気記録媒体の製造方法において、磁性層用の塗布液である磁性塗料を製造する際に、強磁性粉末をセルロース誘導体を含む結合剤溶液中に分散した少なくとも1つの磁性塗料を調製する。この磁性塗料の調製において、磁性層結合剤の全部又は一部として、セルロース誘導体及び強磁性粉末を混練する混練工程を採る。混練には、従来から公知のオープンニーダー、連続ニーダー、加圧ニーダー、エクストルーダーなど強い混練力を持つ装置を使用することが好ましい。これらのニーダーを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい。)を混練することが好ましい。強磁性粉末と結合剤の混練比率は、強磁性粉末100重量部に対して、結合剤10〜500重量部とすることが好ましい。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。
混練工程に引き続いて分散工程を実施する。混練工程により得られた強磁性粉末と結合剤の混合物に塗布溶媒を加えて、サンドミル等を用いて強磁性粉末を結合剤溶液中に完全に分散させる。また、磁性層用塗布液又は非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機はサンドミル等の公知のものを使用することができる。
【0070】
本発明において非磁性層及び磁性塗料を非磁性支持体上に塗布する方法としては、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に非磁性層用塗布液を所定の膜厚となるように塗布する。ここで複数の磁性層用塗布液を逐次あるいは同時に重層塗布してもよく、非磁性層用塗布液と磁性層用塗布液とを逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。上記磁性層用塗布液もしくは非磁性層用塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。
これらについては例えば株式会社総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。本発明の磁気記録媒体に適用する場合、塗布する装置、方法の例として以下のものを提案できる。
【0071】
(1)磁性層用塗布液の塗布で一般的に適用されるグラビア、ロール、ブレード、エクストルージョン等の塗布装置により、まず非磁性層を塗布し、非磁性層が未乾燥の状態のうちに、特公平1−46186号公報、特開昭60−238179号公報、特開平2−265672号公報等に開示されているような支持体加圧型エクストルージョン塗布装置により、磁性層層を塗布する。
(2)特開昭63−88080号公報、特開平2−17971号公報、特開平2−265672号公報に開示されているような塗布液通液スリットを2個有する一つの塗布ヘッドにより磁性層及び非磁性層をほぼ同時に塗布する。
(3)特開平2−174965号公報に開示されているようなバックアップロール付きのエクストルージョン塗布装置により、磁性層及び非磁性層をほぼ同時に塗布する。
【0072】
本発明の磁気記録媒体の磁性層の乾燥後の厚み(乾燥厚み)は用いるヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、0.01〜0.2μmであることが好ましい。0.01〜0.10μmであることがより好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.08μmであり、特に好ましくは0.03〜0.08μmである。磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
【0073】
本発明において、非磁性層の厚さは、0.2〜3.0μmが好ましく、0.3〜2.5μmであることがより好ましく、0.4〜2.0μmであることがさらに好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT(100G)以下又は抗磁力が7.96kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
【0074】
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。強磁性六方晶フェライトの場合は一般的に面内および垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用い円周配向してもよい。
【0075】
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できる様にすることが好ましく、塗布速度は20〜1,000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい、また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
【0076】
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
カレンダー処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。
本発明の磁気記録媒体は、表面の中心線平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて0.1〜4nm、好ましくは1〜3nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダー処理を施すことにより行われる。
【0077】
カレンダー処理条件としては、カレンダーロールの温度を60〜100℃、好ましくは70〜100℃、さらに好ましくは80〜100℃の範囲である。カレンダーロールの圧力は100〜500kg/cm、好ましくは200〜450kg/cm、さらに好ましくは300〜400kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われる。得られた磁気記録媒体は、裁断機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例中の「部」は、断らない限り「重量部」の意味である。
【0079】
〔実施例1〕
(上層磁性層用塗料)
強磁性金属粉末(組成:Fe 100atm%に対して、Co 20atm%,Al 9%、Y 6atm%、Hc 175kA/m(2,200 Oe)、結晶子サイズ11nm、BET比表面積70m2/g、長軸長45nm、σs 111A・m2(emu/g))100部 をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで
ラウリルリン酸 2部
メチルエチルケトン(MEK) 20部
シクロヘキサノン 20部
を加え60分間混練し、次いで
ジアセチルセルロースA 100部
(重合度140、酢化度55%、置換度2.4、シクロヘキサノン20%溶液)
研磨剤(Al23、粒子サイズ0.1μm) 2部
カーボンブラック(粒子サイズ40nm) 2部
MEK/トルエン=1/1 100部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ポリイソシアネート 10部
(日本ポリウレタン製 コロネート3041、30%MEK溶液)
2−エチルヘキシルステアレート 1部
イソヘキサデシルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
ミリスチン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、上層用磁性塗料を調製した。
【0080】
(下層非磁性層用塗料)
針状α−酸化鉄 80部
(長軸長100nm、表面処理層:アルミナ、BET比表面積52m2/g、PH9.4)
カーボンブラック(ケッチェンブラックEC:日本EC製) 20部
をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いで
ポリウレタン樹脂a溶液(MEK/トルエン=1/1、30%溶液) 60部
シクロヘキサノン 20部
を加え60分間混練し、次いで
メチルエチルケトン 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ポリイソシアネート 10部
(日本ポリウレタン製 コロネート3041、30%MEK溶液)
2−エチルヘキシルステアレート 1部
イソヘキサデシルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
ミリスチン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層用塗料を調製した。
【0081】
ここで、ポリウレタン樹脂aは以下のようにして得た。即ち、ポリエステルポリオール〔ポリカプロラクトンポリオール(分子量2,600)〕50重量部とDEIS(5−ナトリウムスルホイソフタル酸のエチレンオキサイド付加物)3重量部を還流式冷却器、撹拌機を具備し、予め窒素置換した容器にシクロヘキサノン40%溶液になるよう窒素気流下60℃で溶解した。次いで触媒として、ジブチルスズジラウレート60ppmを加え更に15分間溶解した。更にジフェニルメタンジイソシアネート35重量部を加え90℃にて6時間加熱反応し、固形分濃度が30%になるようシクロヘキサノンを追加希釈しポリウレタン樹脂溶液を得た。
また、GPCで求めた重量平均分子量は65,000であった。
【0082】
得られた下層用塗料を1.2μmに、さらにその直後に磁性塗料を乾燥後の厚さが80nmになるように、厚さ6.0μmのポリエチレンナフタレート支持体の表面に同時重層塗布した。磁性塗料が未乾燥の状態で5,000ガウスのCo磁石と4,000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、乾燥したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90゜C)で行なった後、50℃7日間熱処理し1/2インチ幅にスリットした。
【0083】
〔実施例2〕
実施例1のジアセチルセルロースAをジアセチルセルロースBに代えた以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。
ジアセチルセルロースB(重合度180、酢化度55%、置換度2.4)
【0084】
〔実施例3〕
実施例1のジアセチルセルロースAをセルロースアセテートブチレート(CAB−381−0.1:イーストマンケミカル(株)製)に代えた以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。
【0085】
〔実施例4〕
実施例1のジアセチルセルロースAをジアセチルセルロース誘導体Cに代えて実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。
尚、ジアセチルセルロース誘導体Cは、ジアセチルセルロースA100重量部をεカプロラクトン 30重量部を用いて、グラフ重合により変性した樹脂である。
【0086】
〔実施例5〕
実施例1のポリウレタンaをポリウレタンbに代えた以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。
ポリウレタンbは以下の方法により得た。
ポリエステルポリオール〔ポリ(ネオペンチルグリコールアジペート)(分子量620)〕47部と2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール15部、DEIS(5ナトリウムスルホイソフタル酸のエチレンオキサイド付加物)3部を還流式冷却器、撹拌機を具備し、予め窒素置換した容器にシクロヘキサノン40%溶液になるよう窒素気流下60℃で溶解した。次いで触媒として、ジブチルスズジラウレート60ppmを加え更に15分間溶解した。更にジフェニルメタンジイソシアネート35部を加え90℃にて6時間加熱反応し、固形分濃度が30%になるようシクロヘキサノンを追加希釈しポリウレタン樹脂溶液を得た。
GPCで求めた重量平均分子量は40,500であった。
このポリウレタン溶液とジアセチルセルロースA溶液を混合撹拌したが、静置後溶液は2層に分離し相溶性が無いことがわかった。
【0087】
〔比較例1〕
実施例1のジアセチルセルロースAを塩化ビニル共重合体MR110(日本ゼオン(株)製)に代えた以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。
【0088】
〔比較例2〕
実施例1のジアセチルセルロースAをポリウレタンbに代えた以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。
【0089】
〔測定方法〕
(1)ポリマーの相溶性評価
実施例及び比較例で用いた結合剤溶液を混合撹拌後、1時間静置した後の液分離の有無を調べた。
(2)電磁変換特性
電磁変換特性の測定はドラムテスターを用いて行った。1.5TのMIGヘッドを用い、記録波長0.2μmの信号を書き込み、MRヘッドで再生し、スペクトラムアナライザーで得られた出力と、出力から±0.5MHz離れた位置での電圧をノイズとして測定しC/N値を求めた。テープとヘッドの相対速度は5m/s、比較例1のC/Nを0dBとして相対値で表した。
(3)磁性層/非磁性層間の界面変動(界面変動)
テープの断面TEM写真から100点の磁性層厚みを求め、その標準偏差を平均厚みで除した値を用いた。
尚、界面変動は、0.25より小さいことが好ましく、0.20より小さいことがより好ましい。
【0090】
以下の表に結果を示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1から明らかなように、本発明の磁気記録媒体では、電磁変換特性が向上した。また、磁性層/非磁性層間の界面変動の少ない均質な磁気記録媒体(磁気テープ)が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、
非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性層、及び、
強磁性微粉末を結合剤中に分散した少なくとも一層の磁性層をこの順に設けた磁気記録媒体であって、
該非磁性層の結合剤がポリウレタン樹脂を含み、且つ
該磁性層の結合剤がセルロース誘導体を含むことを特徴とする
磁気記録媒体。
【請求項2】
該ポリウレタン樹脂とセルロース誘導体とが相溶しない請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
該セルロース誘導体がアシルセルロース及び/又はアシルセルロース誘導体である請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
該セルロース誘導体がアセチルセルロース及び/又はアセチルセルロース誘導体である請求項1〜3いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
磁性層の乾燥厚みが10〜200nmである請求項1〜4いずれか1つに記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2006−286150(P2006−286150A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108118(P2005−108118)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】