説明

磁気記録媒体

【課題】湿度に対して安定な記録保持、読み出しが行える磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】引張弾性率が6GPa以上、吸水膨張係数が0.025以下である高分子フィルムを基材として用いたことを特徴とする磁気記録媒体。好ましい態様は高分子フィルムが、主鎖にベンゾオキサゾール構造を有することを特徴とする芳香族ポリアミド、又は芳香族ポリイミドフィルムであることを特徴とする上記の磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に特に好適に使用できる芳香族ポリアミドおよび/又は芳香族ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリアミドや芳香族ポリイミドは、その高い耐熱性、電気絶縁性から工業材料として有用な高分子体である。特に、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)に代表されるようなパラ配向性芳香核からなる芳香族ポリアミドは、その剛直性から上記特性に加え、強度、弾性率に優れた成形体を与えるのでその利用価値は高く、磁気記録媒体への応用が検討されている。
【0003】
従来、磁気記録媒体としては、ポリエステルフィルムに酸化物塗布型磁性層やメタル塗布型磁性層、金属薄膜型磁性層を設けてなる磁気記録媒体が知られている(例えば特許文献1、2など)。一般に、電磁変換特性を高くとるためには、磁気記録媒体の平滑性が重要であるが、あまりに平滑すぎるとヘッドとの摩擦により走行不良となり、また、磁性層が損傷を受けるため、適度に粗れていることが必要である。つまり、かかる用途では表面性を改良することが、特に重要である。例えば、芳香族ポリアミドを用いた磁気記録媒体用フィルムとして、無機粒子を添加することにより表面性を改良した例として、特許文献3〜6などがある。
【特許文献1】特開昭61−26933号公報
【特許文献2】特開昭60−66319号公報
【特許文献3】特開昭60−127523号公報
【特許文献4】特開昭60−201914号公報
【特許文献5】特開昭62−119024号公報
【特許文献6】特開昭63−268640号公報
【0004】
一方、磁気記録媒体は近年ますます高容量化、高性能化が進み、Co−Ni等強磁性金属薄膜を用いた磁気記録媒体のニーズが高まっている。しかしながら、蒸着層は極めて薄いので、基材フィルムの表面形状がダイレクトに反映されることなる。従って、良好な電磁変換特性を得るためには、より一層表面形状の設計が重要となる。
【0005】
さらに昨今では磁気テープは主にサーバーやメインフレーム等、大容量の情報を扱う電算機のバックアップ用途に用いられることが多くなり、大容量かつ記録保持の確実性の両立が求められてきている。記録容量を確保するために基材の薄肉化が求められており、薄くしても十分な機械的強度、寸法安定性が必要となってきている。かかる用途向けの基材においてはポリエステルフィルムでは限界に来ており、高強度、高弾性率の芳香族ポリアミドフィルムが主に使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリアミドフィルムは高い弾性率と機械的強度を有しており、概ね厚さが10μm程度以下になっても十分に磁気テープの基材としての役割を担ってきた。しかしながら厚さが概ね5μm程度以下になると、特に吸湿による寸法変化が大きくなり、記録再生時のテンションによりテープ面の平坦性が損なわれ、また長さ方向の寸法安定性が損なわれるためにジッターが増加し、エラーレートが増加するという課題が指摘されてきた。本発明では、厚さ5μm未満の領域において大容量記録かつ高信頼な記録再生が可能で、特に吸湿に伴う記録再生特性の安定した磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成からなる。
1.引張弾性率が6GPa以上、吸水膨張係数が0.025以下である高分子フィルムの片面、ないし両面に記録層を有することを特徴とする磁気記録媒体。
2.前記高分子フィルムが、芳香族ポリアミド、又は芳香族ポリイミドフィルムであることを特徴とする前記1に記載の磁気記録媒体。
3.前記高分子フィルムが、主鎖にベンゾオキサゾール構造を有することを特徴とする芳香族ポリアミド、又は芳香族ポリイミドフィルムであることを特徴とする前記1に記載の磁気記録媒体。
4.前記高分子フィルムがベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類との重縮合によって得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする前記1に記載の磁気記録媒体。
5.磁性層が塗布型である請求項1〜4に記載の磁気記録媒体。
6.磁性層が金属薄膜型磁性層である請求項1〜5に記載の磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の磁気記録媒体は、機械特性、表面性に優れ、かつ吸水膨張係数が低く、高密度でかつ環境湿度に対し安定した記録再生が可能な磁気記録媒体であり、磁気カード、磁気テープ、磁気ディスクなど磁気記録媒体、特にコンピュータ用メモリーなどの高密度磁気記録媒体用途、とくに高信頼性が要求されるバックアップ用記録媒体として特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における磁気記録媒体の基材となる高分子フィルムは、引張弾性率が6GPa以上、吸水膨張係数が0.025以下であることが必須である。
ここに引張弾性率は、フィルムの引張強度測定の際の加重と伸びの関係から、所謂ヤングの法則により求められる弾性率を云う。
また吸水膨張係数は高分子フィルムの吸湿度の絶対値に対する高分子フィルムの伸びから求められる係数であり、
純水に浸漬した時の飽和吸水率をW質量%、同じく飽和吸水伸度をL%とした際に以下の式により得られるものである。
吸水膨張係数=L/W (1)
本発明の高分子フィルムはかかる条件を満たせば、その化学構造は不問であるが、芳香族ポリアミドフィルム、芳香族ポリイミドフィルム、から選択される少なくとも一種のフィルムを用いることが好ましい。
【0010】
以下、本発明のおいて好ましく用いられる芳香族ポリアミドフィルムについて説明する。本発明の芳香族ポリアミドは芳香族ジアミン類と芳香族ジカルボン酸類の重縮合反応によって得られる物である。
【0011】
芳香族ポリアミドを得る方法は例えば、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などが挙げられるが、低温溶液重合法、例えばジ酸クロリドとジアミンから得る場合には、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶媒中で合成される。ポリマー溶液は、単量体として酸クロリドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶媒中、触媒の存在下で行なわれる。
【0012】
これらのポリマー溶液は、そのまま成形体を得るための原液として使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから、上記の有機溶媒や、硫酸等の無機溶媒に再溶解して原液を調製してもよい。
【0013】
この重合時において、高純度の原料を用い、水等の不純物の除去された溶媒を用いることはもちろんであるが、特に工業的なスケールでの実施には、重合時に溶液に適当なせん断応力を与え、効率的に混ぜることが極めて重要である。芳香族ポリアミドの生成反応は反応初期において非常な発熱を伴う。この反応熱によって溶媒分子との反応や活性末端の失活がおこり、オリゴマー分子が生成する。従って、重合初期から終了にかけて、溶液の粘度上昇に合わせ混合速度を低下させてゆくように制御することが好ましい。上記手段はまた、ポリマーの分子量分布もシャープに制御でき、機械特性および吸湿率に好ましい影響を与える。
【0014】
本発明に用いる芳香族ポリアミドを得るための原液には、溶解助剤として無機塩、例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硝酸リチウムなどを本発明の目的を損なわない範囲で添加しても良い。また、重合原液をそのまま用いても構わないが、一旦水等で再沈後、溶媒に溶解し用いても構わない。原液中のポリマー濃度は、好ましくは2〜40質量%、更に好ましくは5〜35質量%である。かかる範囲を下回れば、吐出を大きく取る必要があり経済的に不利であり、越えれば、吐出量あるいは溶液粘度の関係で、薄もののフィルムを得ようとするときの困難性が高い。
【0015】
次に芳香族ポリアミドのフィルム化について説明する。上記のように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によりフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、乾式法、湿式法などがあるが、本発明においては乾湿式法あるいは湿式法を適用することが適当である。ここでは乾湿式法を例にとって説明する。
【0016】
乾湿式法で製膜する場合は、該原液を口金からドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ、薄膜が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができる。この時、乾燥後のフィルムとしての溶媒残留量は、多い方が好ましく、45質量%以上とすることが好ましい。また表面にはスキン層、あるいは緻密層(極端に溶媒含量が少ない層)が形成されないよう穏やかに加熱することが必要である。この時、赤外線あるいは電磁加熱などの内部加熱方式が採用できる。また、流延媒体を予熱し、流延後流延媒体側から加熱する等の手段は、本発明を得る上で有効である。この乾式工程を終えたフィルムは、支持体から剥離されて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムとなる。この工程において湿式工程、延伸、熱処理工程は重要な役割を持つ。
【0017】
湿式工程では、通常水等の貧溶媒を脱溶媒とするが、貧溶媒のみで本発明のフィルム表面を得られないときは、貧溶媒と良溶媒との混合媒を用いる。湿式工程においては、脱溶媒の進行に伴い、フィルム近傍は溶媒リッチな状況におかれるが、本発明の表面を得るためには、できるだけフィルムと凝固媒との相対速度を高めること、すなわち凝固浴中の凝固媒は流速を持ってフィルムに接するようにすることが極めて有効である。また、浴温度は任意に選びうるが、低い方が好ましい。しかし、あまりに低いと生産性に影響が出るため、例えば、ポリマー原液がNMP等の非プロトン系極性溶媒系であるときは、40℃程度を目安に設定すると、より容易に目的を達することができる。
【0018】
延伸は、湿式工程中あるいは加熱時に行えて、延伸倍率として面倍率で1.1〜8.0(面倍率とは、延伸後のフィルム面積を延伸前のフィルムの面積で除した値で定義する。)の範囲が通常用いられるが、延伸前の段階で電子線等の物理的手段や架橋反応などの化学的手段により、架橋構造、硬化構造を持った構成を表面に形成せしめておくと、より容易に本発明の基材フィルム表面を得ることができる。
【0019】
また、熱処理としては150〜500℃が通常用いられるが、本発明においては、ポリマーのガラス転移点温度(Tg)〜Tg+50℃の温度で数秒から数分間、定長あるいは若干リラックスさせて熱処理を行っても良い。さらに、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷する事は、寸法変動を抑えることに有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却する事が有効である。
【0020】
本発明におけるポリイミドフィルムは、特に限定されるものではないが、下記の芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸(無水物)類との組み合わせが好ましい例としてあげられる。
A.ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
B.ジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類とピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
C.フェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類とビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類との組み合わせ。
D.上記のABCの一種以上の組み合わせ。
本発明で好ましく使用できるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類として、下記の化合物が例示できる。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:5,4−d’〕ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ〔1,2−d:4,5−d’〕ビスオキサゾール。
【0026】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0027】
本発明におけるジアミノジフェニルエーテル骨格を有する芳香族ジアミン類としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるフェニレンジアミン骨格を有する芳香族ジアミン類としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明におけるポリイミドフィルムには前記に限定されない下記の芳香族ジアミンを使用してもよい。
【0028】
例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0029】
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0030】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0031】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0032】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0033】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0034】
本発明におけるポリイミドフィルムに置ける好ましく使用できる芳香族テトラカルボン酸類として、ピロメリット酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちピロメリット酸およびその無水物又はハロゲン化物、ビフェニルテトラカルボン酸骨格を有する芳香族テトラカルボン酸類すなわちビフェニルテトラカルボン酸およびその無水物又はハロゲン化物が挙げられる。
前記に限定されないで下記の芳香族テトラカルボン酸を使用してもよい。
【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

これらのテトラカルボン酸は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0039】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられるが、なかでもN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましく適用される。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。溶媒の使用量は、原料となるモノマーを溶解するのに十分な量であればよく、具体的な使用量としては、モノマーを溶解した溶液に占めるモノマーの質量が、通常5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%となるような量が挙げられる。
【0040】
ポリアミド酸を得るための重合反応(以下、単に「重合反応」ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割しても構わない。また、温度を上下させても構わない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが3.0dl/g以上が好ましく、4.0dl/g以上がさらに好ましく、なおさらに5.0dl/g以上が好ましい。
【0041】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合を制御することを行ってもよい。末端封止剤としては、無水マレイン酸等といった炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。無水マレイン酸を使用する場合の使用量は、芳香族ジアミン類1モル当たり好ましくは0.001〜1.0モルである。
重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミド酸の溶液を製造するのに有効である。
さらに、以下述べるポリアミド酸の溶液を支持体上に流延・塗布するに際して予め減圧などの処理によって該溶液中の気泡や溶存気体を除去しておくことも、本発明のポリイミドフィルムを得るために有効な処理である。
【0042】
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラム又はベルト状回転体などが挙げられる。また、適度な剛性と高い平滑性を有する高分子フィルムを利用する方法も好ましい態様である。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にしたり、あるいは梨地状に加工することができる。また支持体の差によって乾燥における風量や温度は適宜選択採用すればよく、支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0043】
イミド化・熱処理として、閉環(イミド化)触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができる。
熱閉環法の熱処理温度は、150〜500℃が好ましく、熱処理温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間熱処理するところの初期段階熱処理と後段階熱処理とを有する2段階熱処理工程が挙げられる。
【0044】
閉環触媒をポリアミド酸溶液に加えるタイミングは特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどといった脂肪族第3級アミンや、イソキノリン、ピリジン、ベータピコリンなどといった複素環式第3級アミンなどが挙げられ、中でも、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種のアミンが好ましい。ポリアミド酸1モルに対する閉環触媒の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.5〜8モルである。
脱水剤をポリアミド酸溶液に加えるタイミングも特に限定はなく、ポリアミド酸を得るための重合反応を行う前に予め加えておいてもよい。脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などといった脂肪族カルボン酸無水物や、無水安息香酸などといった芳香族カルボン酸無水物などが挙げられ、中でも、無水酢酸、無水安息香酸あるいはそれらの混合物が好ましい。また、ポリアミド酸1モルに対する脱水剤の使用量は特に限定はないが、好ましくは0.1〜4モルである。脱水剤を用いる場合には、アセチルアセトンなどといったゲル化遅延剤を併用してもよい。
【0045】
熱閉環反応であっても、化学閉環法であっても、支持体に形成されたポリイミドフィルムの前駆体(グリーンフィルムともいう)を完全にイミド化する前に支持体から剥離してもよいし、イミド化後に剥離してもよい。
ポリイミドフィルムの厚さは特に限定されないが、プリント配線基板用ベース基板などに用いることを考慮すると、5〜150μm、好ましくは10〜100μmである。この厚さはポリアミド酸溶液を支持体に塗布する際の塗布量や、ポリアミド酸溶液の濃度によって容易に制御し得る。
【0046】
本発明における高分子フィルムには、滑剤をポリイミド中に添加含有せしめるなどしてフィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの滑り性を改善することが好ましい。
滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
【0047】
本発明の高分子フィルムは優れた機械特性を有しているので、特に薄もののフィルムとしたときに、他素材には見られない優れた効果を発揮する。好ましい厚さは0.5〜15μm、より好ましくは0.7〜8μm、さらに好ましくは1.0〜5μm、なお好ましくは1.2〜3.2μmである。特に磁気記録媒体用には厚さが5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3.2μm以下であることが好ましい。下限は、フィルムの引張弾性率と走行系の設計等にかかり、0.5μm程度である。
【0048】
本発明のフィルムの吸湿率は、2.5質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下であることが好ましい。
2.5質量%を越えると、例えば蒸着法などで磁性層を形成しようとするとき、加熱時にフィルム中で気泡を発生して蒸着特性を害する可能性がある。この吸湿率は、その分子構造中に置換基を導入したり、熱処理等により結晶性を高めたりする方法などで達成できる。また、本発明の芳香族ポリアミドの場合、その末端をアニリン、フタル酸無水物、ベンゾイルクロリド等で処理すると、更に吸湿率の低減がはかれるので好ましい。
【0049】
また、ヘッドの走査方法としては、リニア方式やヘリカルスキャン方式などがあるが、本願発明は耐久性に優れているので摺動の強いヘリカルスキャン方式での記録に向き、該方式は記録に使用される有効フィルム面積が広く高容量化に向く。
【0050】
本発明のフィルムは、もちろん単層フィルムでも、積層フィルムであっても良い。積層フィルムとする時は、最外層の一層が本発明で規定する表面を有している。磁気記録媒体とするときには、磁性層を設ける面を構成する層が、本発明で規定される表面性を有していることが好ましい。かかる構成とすることで、電磁変換特性、磁性層の耐久性、走行性に優れたものとできる。これら積層の方法としては、周知の方法たとえば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法などがある。また、各層を構成する成分は、同じ種類であっても異なるものであっても良い。例えば2層の場合には、重合した芳香族ポリアミドあるいは芳香族ポリイミドやポリアミック酸溶液を二分し、それぞれ必要に応じ、同じあるいは異なった粒子を添加した後、積層する。さらに3層以上の場合も同様である。粒子の種類、含有量等は本発明のフィルムに望ましく用いられるものを使用することが望ましい。
【0051】
また、本発明のフィルムは、表面粗さがRaで0.1〜100nm、より好ましくは0.2〜50nm、Rzで2〜500nm、より好ましくは3〜400nmであるように好ましく設計される。また、片面のみ磁性層を有する磁気記録媒体においては、その裏面は走行性の確保から適度にあれていることが好ましく、Raとして0.5〜50nm程度とすることが好ましい。なお、各パラメータの定義は、例えば奈良治郎著「表面粗さ測定法」(総合技術センター、1983)に示されているものである。
【0052】
本発明のフィルムの300℃、10分間での熱収縮率は、1%以下が好ましく、より好ましくは0.5%以下であると、温度変化によるテープの寸法変化が小さく、良好な電磁変換特性を保てるので望ましい。
【0053】
本発明のフィルムの引張破断伸度は、10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上であると、テープが適度な柔軟性を持つので好ましい。
【0054】
本発明のフィルム中の分子量1000以下のオリゴマーの含有量は、1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満であることが好ましい。ここで言うオリゴマーは、本発明の芳香族ポリアミドあるいは芳香族ポリイミドの構造単位を部分的にでも含有するものであり、例えば溶媒との反応物等も含む。このオリゴマーの含有量が1質量%を越えると、フィルムの機械的、熱的特性を損ねたり、あるいは使用時の滲み出し等で、ローラなどに巻き付いたりすることがある。
【0055】
また、本発明のフィルム中のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンは、好ましくは3000ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは30ppm以下であれば、ヘッドや磁性層の腐蝕等の影響を及ぼさない優れた磁気記録媒体とできる。ここで言う金属イオンは、イオン化された金属成分であって、外部粒子等の、溶液から濾別あるいは遠心分離可能な固形体を構成する金属成分は除かれる。
【0056】
これは例えば、溶媒を含めた原料の純度を高くすることはもちろんであるが、フィルム化の際、製膜用溶媒および無機塩を抽出する工程において、表面に緻密な層が形成されないようすることが好ましく、先述のように乾燥時にスキン層等が形成されないような配慮などが必要である。また、湿式浴としても複数の浴を用い、温度勾配あるいは濃度勾配を設けるなどして好ましく調整できる。
【0057】
本発明のフィルムは、磁気記録媒体用途に好適に用いることができる。記録方式としては任意であり、水平磁気記録、垂直磁気記録、光磁気記録など公知の記録方式をとることができる。さらに本発明の磁気記録媒体はテープ状、回転円盤状、回転ドラム状など種々の形態で用いることができる。
【0058】
磁性層を形成する方法は、強磁性粉末を各種バインダーを用いて磁性塗料とし、基材フィルム上に塗布する湿式法や、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの乾式法があり、特に限定されるものではないが、本発明は高度に制御された表面性を有しており、密着性に優れているので、塗布型のものに比べ遥かに薄く、性状としては固いため、より密着性に優れた表面が要求される金属薄膜型磁性層において、その効果を顕著に発揮できる。また、下塗り層などの非磁性薄膜層を基材フィルム上に設けたときには、該薄膜に対し密着性や好ましい結晶構造を形成せしめることができ、好ましく採用される。この際、磁性層などとの接着性を更に改善するため、フィルム表面を予め紫外線、放射線、放電処理などを行っても良い。
【0059】
この金属薄膜型の磁性層としては、Co、Fe、Niなどの金属の単体、又は合金やこれら単体、又は合金とCr、Mo、W、V、Nb、Ti、Rh、Ru等との合金およびこれら金属、あるいは合金の酸化物が例示でき、必要に応じ同種、あるいは異種の磁性層を積層することもできる。また、これら磁性層の上には、保護層あるいは潤滑層を好ましく形成することもできる。
【0060】
この後、磁性層と反対側の面に、更に走行性を向上させるために、公知の方法によりバックコート層を設けてもよい。
【実施例】
【0061】
本発明の物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法による。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
2.フィルムの厚さ
マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン(商品名)1254D)を用いて測定した。
3.フィルムの表面粗さの測定
表面粗さ計 ハンディサーフ(商品名)E−35A(株式会社東京精密製)にて測定した。
【0062】
4.フィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ(商品名)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
5.高分子フィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象のフィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、・、・、・、と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。MD方向、TD方向の意味は上記「3.」の測定と同様である。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0063】
6.吸水率
基材フィルム数グラムを真空乾燥器中で100Pa以下、180℃の条件下、恒量になるまで乾燥し、その質量をW1とする。次いで、該フィルムを25℃の純水中に浸積し、吸水による質量変化が恒量となるまで置き、その後測定した質量をW2とする。
吸水率Wは、
W=(W2−W1)/W1×100(単位:%)
として求めた。実際の実験においてはいずれのフィルムも12時間程度以内で恒量に達したため、24時間を規準として吸水率を求めた。
【0064】
7.吸水伸度
基材フィルム10mm×250mmを真空乾燥器中で100Pa以下、180℃の条件下、吸水率が恒量になるまで乾燥し、乾燥器から取り出して5分以内にその寸法を測定し、その寸法をL1とする。次いで、該フィルムを25℃の純水中に浸積し24時間置き、その後測定した寸法をL2とする。吸水伸度Lは、
L=(L2−L1)/L1×100(単位:%)
として求めた。
【0065】
8.磁気記録再生特性
実施例にて作製した磁気記録テープについて、6.5MHzの正弦波を最適記録電流で記録した。ついで、磁気記録テープを、乾燥雰囲気(20℃、30%RH)にて再生出力のS/N比、ジッター幅、エラーレートを求めた。次いで加湿雰囲気(35℃、90%RH)にて同様に再生出力のS/N比、ジッター幅、エラーレートを求めた。
各々の特性の乾燥雰囲気での特性値に対する加湿雰囲気での特性値の比を求め、
特性値の比(乾燥雰囲気/加湿雰囲気)が0.5〜1.2の範囲を◎、1.2〜1.5を○、1.5〜2.5を△、2.5を超える物を×とした。
【0066】
〔参考例1〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P10(株式会社日本触媒製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.11μmであった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて24時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.8dl/gであった。
【0067】
〔参考例2〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後,5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後,コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックス(商品名)DMAC−ST30(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)、ピロメリット酸二無水物217質量部を加え,25℃の反応温度で24時間攪拌すると,褐色で粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。このもののηsp/Cは4.0dl/gであった。
【0068】
〔参考例3〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスター(商品名)KE−P10(株式会社日本触媒製)を7.6質量部、N−メチル−2−ピロリドン390質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を390質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Cが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.7dl/gであった。
【0069】
〔参考例4〕
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスター(商品名)KE−P10(株式会社日本触媒製)を3.7質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数1000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、108質量部のフェニレンジアミンを入れた。次いで、3600質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と292.5質量部のジフェニルテトラカルボン酸二無水物を加えて、25℃にて12時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Dが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は4.5dl/gであった。
【0070】
〔実施例1、2、比較例1、2〕
参考例1で得たポリアミド酸溶液を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA−4100(東洋紡績株式会社製)の無滑剤面上に、コンマコーターを用いてコーティングし(ギャップは、60μm、塗工幅1240mm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、厚さ6.7μm、幅1200mmのそれぞれのグリーンフィルムを得た。ついで得られたグリーンフィルムを3つの熱処理ゾーンを有するピンテンターに通し、一段目150℃×2分、2段目220℃×2分、3段目475℃×4分間の熱処理を行い、厚さ3.2μmのポリイミドフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0071】
(芳香族ポリアミドの調製)
N−メチルピロリドン(以下、NMPという)に各ポリマー原料は、特に断らない限り、それぞれの実施例および比較例と同じ組成となるよう添加し、2時間撹拌して重合を完了した。次いで発生した塩化水素は水酸化リチウムを4分の1ずつ添加して中和を行い、ポリマー濃度10質量%のポリマー溶液を得た。ここで平均粒径150nm、粒径の相対標準偏差0.2の表面疎水処理されたシリカ粒子をNMP中に添加し、48時間超音波分散を行ったあと、1.0μmのフィルターを用いて濾過して得たシリカスラリーを、ポリマー溶液にシリカ濃度がポリマーに対し1質量%となるように添加後、十分攪拌して調製した。
【0072】
〔実施例3〕
槽径1.8mの冷却ジャケット付き反応槽に、脱水したNMPを入れ、次いで、80モル%の2−クロルパラフェニレンジアミン、20モル%の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを溶解させ、溶液を冷却する。ついで、100モル%の2−クロルテレフタル酸ジクロリドを添加し、周速度を4m/秒から2m/秒に変化させながら24時間撹拌後、水酸化リチウムで中和して重合物を得た。次いで、該重合物を水中に導入して、凝固させつつ粉砕し、水洗を繰り返して無機物を除去し、乾燥してポリマー粉体を得た。
【0073】
次いで、実質的に単分散の平均一次粒径80nmのコロイダルシリカの塩化リチウム−NMP分散体に、上述のポリマー粉体を攪拌しながら徐々に添加、溶解させて、ポリマーあたりの粒子の含量が0.6質量%、ポリマー濃度が10質量%となるように調製した。
【0074】
脱泡後このポリマー溶液を3μmカットのフィルターを通し、また、別途調製した支持体層成分溶液は5μmカットのフィルターを通じた後、最終フィルム厚さとしてそれぞれ1.0μm、3.5μmとなるよう積層管にて複合して、鏡面上に磨かれ120℃に予熱されたステンレスベルト上に流延し、ベルト上下面から加熱できる150℃から170℃に温度勾配のついた乾燥機中で、溶媒含量が46%になるまで穏やかに蒸発後、自己支持性を得たフィルムをベルトから剥離して、40℃に保たれ、循環機構のついた、最初NMP/水(30/70)浴、次に複数の水浴中に順次導入して残存溶媒等を抽出した。この時、第2水槽以降において長手方向に1.4倍延伸した。ついで、ピンテンター中で第一ゾーン150℃×2分、第二ゾーン200℃×2分、第三ゾーン300℃×4分間乾燥、熱処理し、この時幅方向に1.1倍延伸し、20℃/秒の速度で常温に冷却して、厚さ3.2μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。得られたフィルム特性を表1に示す。
【0075】
(塗布型磁気記録媒体の評価)
実施例、比較例において得られた高分子フィルムを基材に用いて塗布型磁気記録媒体を作製した。
下記配合組成物を、ガラスビーズを用いてペイントシェーカーで6時間分散させ磁気塗料を得た。
UR−8200 45質量部
MR110 55質量部
コロネートL 40質量部
メタル粉 120質量部
2−ブタノン 700質量部
トルエン 500質量部
なお、UR−8200は、東洋紡績(株)製、東洋紡バイロン(Tg72℃のSO3Na基含有ポリエステルウレタン)である。
MR110は、日本ゼオン(株)製のSO3Na基含有した塩ビ系共重合体)である。
コロネートLは、日本ポリウレタン(株)製、ポリイソシアネート系硬化剤である。
メタル粉は、長軸径:0.7μm、BET:82m2/gである。
【0076】
得られた磁気塗料を、高分子フィルム上に乾燥後塗布厚さが3μmになるよう塗布し、100℃×10分間熱風乾燥機で溶剤を乾燥除去させ、反対面にバックコート層を公知の手段により形成後、これらをスリットして得たパンケーキからカセットに組み込み、磁気記録テープを得た。得られたテープの磁気記録再生特性の評価の結果を表1に示す。
【0077】
(金属薄膜型磁気記録媒体の評価)
基材フィルム面をロールトゥロール方式の連続真空処理装置に仕込み、酸素プラズマ処理した後、CoO膜を蒸着し、磁性層を形成した。次に蒸着層表面にカーボン保護膜、反対面にバックコート層を公知の手段により形成後、これらをスリットして得たパンケーキからカセットに組み込み、磁気テープを得た。得られた磁気記録テープの評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の磁気記録媒体は、機械特性、表面性に優れ、かつ吸水膨張係数が低く、高密度でかつ環境湿度に対し安定した記録再生が可能な磁気記録媒体であり、磁気カード、磁気テープ、磁気ディスクなど磁気記録媒体、特にコンピュータ用メモリーなどの高密度磁気記録媒体用途、高信頼性が要求されるバックアップ用記録媒体として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張弾性率が6GPa以上、吸水膨張係数が0.025以下である高分子フィルムの片面、ないし両面に記録層を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記高分子フィルムが、芳香族ポリアミド、又は芳香族ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記高分子フィルムが、主鎖にベンゾオキサゾール構造を有することを特徴とする芳香族ポリアミド、又は芳香族ポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記高分子フィルムがベンゾオキサゾール骨格を有するジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類との重縮合によって得られるポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
磁気記録媒体の磁性層が塗布型である請求項1〜4に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
磁性層が金属薄膜型磁性層である請求項1〜5に記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2007−179680(P2007−179680A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378317(P2005−378317)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】