説明

磁気記録装置

【課題】
近接場光を照射して磁気記録媒体を加熱する場合に生じる温度の勾配に対応し、かつ磁気信号の熱安定性を確保する。
【解決手段】
近接場光を用いて磁気記録媒体を局所加熱しながら外部磁界を印加することによって情報を記録する熱アシスト磁気記録装置において、磁気記録媒体の磁気記録層は、磁気記録媒体の表面側に位置する第1の強磁性体層250と、磁気記録媒体の基板側に位置する第2の強磁性体層240を積層して構成し、第1の強磁性体層は第2の強磁性体層よりも異方性磁界が高く、かつ第2の強磁性体層は第1の強磁性体層よりもキュリー点が高くなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を用いて磁気記録媒体を局所加熱しながら外部磁界を印加することによって磁気情報を記録する熱アシスト磁気記録方式に適合した磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録装置の大容量化、即ち磁気記録媒体の高記録密度化は、磁気記録媒体の磁気記録層を構成する強磁性結晶粒子の微細化を追求することにより達成されてきている。しかしながら、強磁性結晶粒子が微細化されると、その強磁性結晶粒子のもつ磁気異方性エネルギー(強磁性結晶粒子の単位体積当たりの磁気異方性エネルギー(磁気異方性定数)と強磁性結晶粒子の体積との積)が原子の熱振動エネルギー(ボルツマン定数と絶対温度との積)に対して相対的に小さくなり、記録磁化を安定に保持することができなくなる。これは、磁化の熱揺らぎと呼ばれる現象であり、記録密度の物理限界を決める主要因である。
【0003】
磁化の熱揺らぎを抑制するには、磁気記録層が本質的に高い磁気異方性定数をもつ材料からなることが不可欠である。磁気記録層の材料には、主としてCo−Cr系合金のものが長らく用いられてきた(特許文献1)。しかしながら、Co−Cr系合金のもつ磁気異方性定数では、1Tbit/inchを超える記録密度には対応できないといわれている。従って、磁気記録媒体の高記録密度化の要求に対応するためには、Co−Cr系合金より高い磁気異方性定数をもつ材料を用いることが必要である。
【0004】
この問題を解決するために、遷移金属元素(Fe、Co、Ni、等)と貴金属元素(Pt、Pd、等)とからなる合金であって、元素組成の異なる原子層が交互に規則配列した構造を有する規則合金が新たな磁気記録層材料として提案されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。このような合金は、非常に高い磁気異方性定数をもつため、高記録密度の磁気記録媒体の磁気記録層の材料として適している。
【0005】
一方、磁気記録層の磁化を反転させるために必要な磁界(反転磁界)の大きさは磁気異方性定数を飽和磁化で除算して求められる異方性磁界の大きさに強く支配されるので、上記のような非常に高い磁気異方性定数をもつ材料を磁気記録層に用いた場合、従来の磁気ヘッドが発生し得る最大磁界では記録が不可能となる問題が生じてしまう。
【0006】
この問題を解決するために、近年、磁気記録層に光を照射して磁気記録層を局所的に加熱し、磁気記録層の加熱した部分のみの反転磁界を低下させた状態で外部磁界を印加して磁気信号を記録する技術である熱アシスト磁気記録方式が注目されている。これは、加熱に光を用いることから光アシスト磁気記録、あるいは、磁気と光との融合技術であることからハイブリッド記録等とも呼ばれる。以下、本明細書においては、熱アシスト磁気記録ということにする。
【0007】
熱アシスト磁気記録方式では、磁気記録層の常温における反転磁界が大きくても、磁気記録層は記録時には局所的に加熱され、局所的に反転磁界が小さくなるため、磁気ヘッドが発生可能な磁界で磁気信号の記録が可能となる。従って、熱アシスト磁気記録方式を用いれば、磁気記録層に磁気異方性定数の高い材料を用いることができ、磁気記録媒体のさらなる高記録密度化の要求に対応することができる。中でも、非伝播光である近接場光を用いて磁気記録層を加熱する方式は、加熱領域の面積を磁気ヘッドによる磁界印加領域の面積より小さくでき、一層の高記録密度化が可能であるため、熱アシスト磁気記録方式として特に好ましい(特許文献5)。
【0008】
熱アシスト磁気記録方式を用いて磁気記録媒体に磁気信号を記録する場合、磁気記録層は局所的にキュリー点(強磁性体が自発磁化を失い、強磁性的挙動を示さなくなる温度)付近の温度まで昇温されることが必要である。従って、熱アシスト磁気記録方式においては、磁気記録層のキュリー点は極めて重要な物性値であり、適切なキュリー点をもつ材料を磁気記録層に用いる必要がある。
【0009】
磁気信号の記録時に、磁気記録層をキュリー点付近の温度まで昇温する理由は、熱アシスト磁気記録方式に用いられる磁気記録層が極めて高い磁気異方性定数をもち、温度が10℃程度降下するだけで異方性磁界は数kOeも増大してしまうため、キュリー点付近まで加熱されないとその反転磁界が磁気ヘッドの発生可能な磁界強度まで十分低下しないことにある。つまり、磁気信号の記録時には、磁気記録層において磁気信号を記録しようとする局所領域が確実にキュリー点付近の温度まで昇温されなければならない。
【0010】
熱アシスト磁気記録方式で用いられる磁気記録媒体については、複数の種類の強磁性体からなる層を積層させて磁気記録層を形成することが提案されている。例えば、特許文献6には、Fe−Pt合金を主成分とするグラニュラ構造の強磁性層の上部にFe−Pt合金あるいはCo−Cr−Pt−B合金からなる強磁性層を形成した積層型の磁気記録層が開示されている。この構成においては、上部の強磁性層の異方性磁界が下部の強磁性層のそれより小さくなるようにそれぞれの材料が選ばれ、異方性磁界の小さい上部の強磁性層が反転磁界を低減させることにより、記録性能の向上に寄与する。
【0011】
また、特許文献7には、2乃至3種類の強磁性層(主として希土類−遷移金属アモルファス合金)を積層させた磁気記録層が様々提案されている。これらは、高い熱安定性や急峻な磁化転移を実現するために、層間の磁気的交換結合を導入したり遮断したりを温度によって切り替えるための構成である。例えば、その一つの態様では、三種類の強磁性層を積層させた磁気記録層であって、それらの内で中央に位置する強磁性層のキュリー点が最も低いという構成が提案されている。この構成においては、中心に位置する強磁性層のキュリー点以下の温度では、その上下の強磁性層間に交換結合が導入されるために磁化の熱安定性に優れている。また、中心に位置する強磁性層のキュリー点以上の温度では、その上下の強磁性層間の交換結合が遮断され、温度上昇に対して急激に磁化の熱安定性を失うため、記録が容易になるとともに、急峻な磁化転移を実現できる。
【0012】
このように、熱アシスト磁気記録方式で用いられる磁気記録媒体に関しては、それぞれ異方性磁界やキュリー点の制御された強磁性層を積層させて磁気記録層を形成することにより、その性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭60−214417号公報
【特許文献2】特開2002−216330号公報
【特許文献3】特開2004−213869号公報
【特許文献4】特開2010−34182号公報
【特許文献5】特表2005−515578号公報
【特許文献6】特開2009−158053号公報
【特許文献7】特開2002−358616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
近接場光は非伝播光であり、その強度が距離に対して指数関数的に著しく低下するため、近接場光を照射して磁気記録媒体を加熱する場合、近接場光により直接昇温されるのは磁気記録媒体のほぼ表面近傍のみとなる。このとき、近接場光により直接昇温された場所の周囲は、近接場光により直接昇温された場所からの伝熱によってのみ昇温され、必然的に近接場光により直接昇温された場所からの距離が大きくなるほど温度は低くなる。ここで、磁気記録層はある厚みをもっているので、近接場光を照射して加熱する場合には、表面(近接場光が照射される側)に近いほど温度が高く,表面から遠いほど温度が低いという温度の勾配が磁気記録層の厚み方向にわたって生じてしまう。特許文献6や特許文献7に記載の従来の技術では、近接場光を照射して磁気記録媒体を加熱する場合に初めて問題となるこの温度勾配については考慮されていない。
【0015】
ここで、磁気記録層の表面に近い側の温度がそのキュリー点付近の温度に達するように近接場光の強度を調整すると、磁気記録層の表面から遠い側は、キュリー点付近の温度には達しない。従って、磁気記録層の反転磁界の低減が不十分となるため、磁気信号の記録は行えない。
【0016】
一方、磁気記録層の表面から遠い側の温度がそのキュリー点付近の温度に達するように近接場光の強度を調整すると、磁気記録層の表面に近い側は、キュリー点より高い温度に達する。すると、磁気信号を記録しようとする磁気記録層の局所領域に隣接する領域が伝熱により加熱され、キュリー点付近の温度に達してしまうため、隣接領域の磁気信号が上書き(いわゆる書き滲み)されたり、隣接領域の磁気信号の熱揺らぎ現象が助長されて磁気信号が消失したりすることが起こる。更に、磁気記録層が著しく高い温度に達すると、磁気記録層の微細構造が不可逆的に変化する等の損傷が生じてしまう。
【0017】
また、磁気記録層の厚み方向に生じる温度の勾配の影響が問題にならないように磁気記録層の厚みそのものを単純に小さくすることは、磁気記録層の磁気異方性エネルギーを減じ、磁気信号の熱安定性を損なうことと同義であるため、磁気記録媒体の高記録密度化を妨げる要因となり、好ましくない。
【0018】
本発明は、近接場光を照射して磁気記録媒体を加熱する場合に生じる温度の勾配に対応し、かつ、磁気信号の熱安定性も確保することのできる熱アシスト磁気記録方式の磁気記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る磁気記録装置は、好ましくは、近接場光を用いて磁気記録媒体を局所加熱しながら外部磁界を印加することによって情報を記録する熱アシスト磁気記録装置であって、該磁気記録媒体の磁気記録層は、該磁気記録媒体の表面側に位置する第1の強磁性体層と、該磁気記録媒体の基板側に位置する第2の強磁性体層を積層して構成し、
該第1の強磁性体層は該第2の強磁性体層よりも異方性磁界が高く、かつ該第2の強磁性体層は該第1の強磁性体層よりもキュリー点が高くなるように構成したことを特徴とする磁気記録装置である。
【0020】
好ましい例の磁気記録装置において、前記第1の強磁性体層は、Co、Ni、及びPtからなる合金を含む。
また、好ましい例の磁気記録装置において、前記Co、Ni、及びPtからなる合金はL1型規則合金相を含む。
また、好ましい例の磁気記録装置において、前記第1の強磁性体層のキュリー点は200℃以上400℃以下である。
また、好ましい例の磁気記録装置において、前記第2の強磁性体層は、少なくともCoとCrとPtとを含む六方最密構造の合金を含む。
【0021】
また、好ましい例の磁気記録装置において、前記第2の強磁性体層は、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む厚さ2nm以下の層とPt及びPdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む厚さ2nm以下の層とを交互に積層させた人工格子構造を有する。
また、好ましい例の磁気記録装置において、前記第2の強磁性体層は、強磁性体結晶粒子と非磁性体からなる結晶粒界とで構成される微細構造を持つ。
また、好ましい例の磁気記録装置において、前記磁気記録層において情報の記録される単位領域がダウントラック方向とクロストラック方向の何れか一方あるいは両方の方向に対して磁気的に相互に分離されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、近接場光で磁気記録媒体を加熱することによって生じる厚み方向の温度勾配に対応することができ、磁気記録層の厚み方向全般にわたって効果的に反転磁界を低減させ、かつ磁気信号の熱安定性も確保することができる。これにより、より高い記録密度に対応した磁気記録装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例における磁気記録装置の構成を示す図。
【図2】本発明の一実施例による磁気記録媒体の積層構造を示す断面図。
【図3】実施例1における、磁気記録媒体の上部磁気記録層ならびに下部磁気記録層の温度と異方性磁界との関係を示す図。
【図4】実施例1における、磁気記録媒体の近接場光照射による加熱後の磁気記録媒体内部の厚み方向の温度分布の一例を示す図。
【図5】実施例1における、磁気記録媒体の近接場光照射による加熱前後での異方性磁界の変化を示す図。
【図6】実施例3における、磁気記録装置のレーザの出力と再生信号強度との関係を示す図。
【図7】比較例1における、磁気記録媒体の近接場光照射による加熱前後での異方性磁界の変化を示す図。
【図8】比較例2における、磁気記録媒体の上部磁気記録層ならびに下部磁気記録層の、温度と異方性磁界との関係を示す図。
【図9】比較例2における、磁気記録媒体の近接場光照射による加熱前後での異方性磁界の変化を示す図。
【図10】比較例2における、磁気記録装置のレーザの出力と再生信号強度との関係を示す図。
【図11】実施例5における、磁気記録装置の上部磁気記録層のキュリー点と信号雑音比との関係を示す図。
【図12】比較例3における、磁気記録媒体の上部磁気記録層ならびに下部磁気記録層の、温度と異方性磁界との関係を示す図。
【図13】比較例3における、磁気記録媒体の近接場光照射による加熱前後での異方性磁界の変化を示す図。
【図14】比較例3における、磁気記録装置のレーザの出力と再生信号強度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は磁気記録装置の構成を示す。(a)はその平面図、(b)は(a)のA−Aの断面図である。
磁気記録装置100は、その筐体内に、ディスク状の磁気記録媒体110と、磁気記録媒体110を回転させるスピンドルモータ115と、磁気信号の記録及び再生を行う磁気ヘッド120と、磁気ヘッド120を保持するサスペンション130と、サスペンション130を磁気記録媒体110の半径方向に駆動制御するアクチュエータ140と、論理回路やメモリ及びマイクロプロセッサ等を搭載したプリント基板から構成される制御部150を有する。制御部150は、スピンドルモータ115の回転制御やアクチュエータ140のアクセス位置決め制御などを行う。
【0025】
磁気ヘッド120には、記録磁界を発生するための磁極やコイル、磁気信号を再生するための磁気抵抗効果素子の他に、レーザダイオード、光導波路、ミラー、近接場光素子等(図示せず)が配置されており、記録時には磁気記録媒体110の磁気記録層を近接場光により局所的に加熱する。
スピンドルモータ115により磁気記録媒体110が高速で回転すると、磁気記録媒体110の回転によって生じる空気流により、磁気ヘッド120は磁気記録媒体110から数nm乃至数十nmの高さで浮上する。アクチュエータ140により磁気ヘッド120が磁気記録媒体110の半径方向に移動し、磁気記録媒体110に対して磁気信号の記録及び再生が行われる。
【0026】
図2は磁気記録媒体の断面構造を示す。
本発明者らは、発明の課題を達成するために種々の実験を行った。そして、特徴的な2種類の強磁性体からなる磁気記録層を積層させて磁気記録媒体を構成し、かつそれらの磁気記録層の異方性磁界とキュリー点の何れともを適切に制御することが重要であることを見出すに至った。
【0027】
磁気記録媒体110において、基板200上には、密着層210、中間層220、配向制御層230、下部磁気記録層240、上部磁気記録層250が順に堆積される。上部磁気記録層250の上面は保護層260で被覆され、保護層260の上面には潤滑層270が塗布される。なお、本発明は、この形態に限定されるものではなく、更に別の材料からなる層を磁気記録媒体110の任意の層間位置に追加して堆積させて用いることもできる。
基板200の材料は例えばガラスである。なお、剛性が高い非磁性材料であれば、基板の材料として、例えばAl、Al、MgO、Si等を用いてもよい。密着層210の材料は、例えばTa、Tiやこれらの元素を含む合金等であり、中間層220及び配向制御層230の材料は、例えばCr、Ni、Pt、Ruやこれらの元素を含む合金等である。保護層260の材料は、例えばダイヤモンドライクカーボン、窒化炭素、窒化ケイ素等である。潤滑層270の材料は、例えばパーフルオロポリエーテル、フッ素化アルコール、フッ素化カルボン酸等である。
【0028】
下部磁気記録層240と上部磁気記録層250は、異方性磁界は上部磁気記録層250の方が大きく、キュリー点は下部磁気記録層240の方が高くなるようにそれぞれの材料が選ばれる。上部磁気記録層250は、異方性磁界が大きく、反転磁界も大きいため、磁気信号の記録時には、キュリー点付近の温度まで昇温され、反転磁界を十分に低下させた状態で記録が行われる。即ち、上部磁気記録層250は熱アシスト磁気記録方式による記録が行われ、その厚みは、近接場光を照射して加熱する場合に厚み方向に生じる温度の勾配の影響が問題にならない程度まで小さくする。
【0029】
下部磁気記録層240は、異方性磁界が小さく、反転磁界も小さいため、磁気信号の記録時には、キュリー点付近の温度まで昇温されなくとも記録を行うことができる。むしろ、下部磁気記録層240のキュリー点が上部磁気記録層250のキュリー点より低いと、多少の昇温でも磁気信号の書き滲みや熱揺らぎが引き起こされるので、下部磁気記録層240のキュリー点は上部磁気記録層250のキュリー点より高いことが重要である。
【0030】
下部磁気記録層240と上部磁気記録層250の総厚みが交換結合長(強磁性体内で磁気モーメント間に相互作用が生じる臨界距離であり、一般にはおよそ20nm)以下であれば、下部磁気記録層240と上部磁気記録層250の磁気モーメントは磁化反転の際には一体として振舞う。従って、上部磁気記録層250の厚みを小さくしても、それによって損なわれる磁気信号の熱安定性は、下部磁気記録層240の厚みで補うことができる。
【0031】
下部磁気記録層240の材料は、CoとCrとPtとを含む六方最密構造の合金であることが好ましい。この合金は、表面エネルギーが最安定となる原子最稠密面を配向させることによって、磁化容易軸を磁気記録媒体の面直方向に容易に配向させられることから好ましい。また、この合金は、現行の磁気記録装置製品の磁気記録層と類似した材料であり、従来の製造プロセスをそのまま利用できることからも好ましい。
【0032】
また、下部磁気記録層240の材料は、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む層とPt及びPdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む層とを交互に複数積層させた人工格子構造の合金であることが同様に好ましい。この合金では、各層の厚みを2nm以下とすることによって、磁化容易軸を磁気記録媒体の面直方向に容易に配向させられることから好ましい。
前記の六方最密構造の合金ならびに人工格子構造の合金は、安定相であり、酸化物等の非磁性体からなる粒界偏析材料を導入することによって、強磁性結晶粒子が非磁性体のマトリックス中に分散したグラニュラ構造を実現できることからも下部磁気記録層240の材料として好ましい。このグラニュラ構造化により、強磁性結晶粒子が相互に分離され、磁気的に干渉しなくなるため、より高い記録密度に対応することができる。
【0033】
上部磁気記録層250の材料は、Co、Ni、及びPtからなる合金であることが好ましい。これは、Co、Ni、及びPtの合金組成を調整することによって、高い異方性磁界を保持したまま、キュリー点を所望の通りに容易に制御できることから好ましい。
上部磁気記録層250の材料であるCo、Ni、及びPtからなる合金は、L1型規則合金であることが特に好ましい。これは、L1型規則合金を形成することによって非常に高い異方性磁界を容易に得られることから特に好ましい。L1型規則合金は、前記の六方最密構造の合金ならびに人工格子構造の合金と結晶構造や磁化容易軸となる結晶方位が類似しており、前記の六方最密構造の合金ならびに人工格子構造の合金からなる下部磁気記録層240上に堆積するだけで、連続的な結晶成長が実現され、磁化容易軸の配向を簡単に制御できることからも特に好ましい。
【0034】
また、Co、Ni、及びPtからなるL1型規則合金は、準安定相であるために、粒界偏析材料を導入して直接グラニュラ構造を形成することは困難であるが、グラニュラ構造をもつ下部磁気記録層240上に堆積すれば、結晶構造が類似していることから結晶成長の連続性が保持され、強磁性結晶粒子が相互に分離した構造を形成することが可能となる。
【0035】
上部磁気記録層250のキュリー点は、200℃以上400℃以下であることが好ましい。上部磁気記録層250のキュリー点が400℃以上であると、キュリー点付近の温度への昇温により磁気記録媒体が損傷を受けたり、さらには磁気記録装置の磁気ヘッドに搭載できる加熱手段ではキュリー点付近の温度への昇温がそもそも不可能になったりする。また、上部磁気記録層250のキュリー点が200℃以下であると、常温付近でも温度変化に伴って異方性磁界や反転磁界が顕著に変化してしまうため、磁気信号の書き滲みや熱揺らぎの問題が顕著に現れてしまう。従って、上部磁気記録層250のキュリー点は、200℃以上400℃以下であることが好ましい。
【0036】
下部磁気記録層240と上部磁気記録層250の形態としては、情報の記録される単位領域がダウントラック方向に磁気的に分離されたディスクリートトラック型の形態であったり、ダウントラック方向とクロストラック方向の両方の方向に磁気的に分離されたビットパターン型の形態であったりすることも好ましい。これは、情報の記録される単位領域が相互に磁気的に分離されているため、単位領域間の磁気的な干渉がなく、粒界偏析材料の導入等によるグラニュラ構造化を行わなくても、より高い記録密度に対応することができることから好ましい。ここでいう磁気的分離は、空隙や非磁性体等によって情報の記録される単位領域同士を相互に隔絶することでも実現できるし、磁気記録層の面内方向に組成変調をもたせる等して、情報の記録される単位領域とそれ以外の領域とで磁気的性質を異なるものとすることでも実現できる。
以下、幾つかの実施例について詳細に説明する。
【0037】
[実施例1]
ホウケイ酸ガラスからなる基板上に密着層としてNi−Ta層を30nm、中間層としてNi−W層を7nm、配向制御層としてRu層を15nm、下部磁気記録層としてCo−Cr−Pt−SiO合金層を8nm、上部磁気記録層としてCo−Ni−Pt合金層を7nm、保護層として窒化炭素層を4nm、をこの順にスパッタリング法により堆積して磁気記録媒体を作製した。ここで、下部磁気記録層の組成は(Co−17at%Cr−18at%Pt)−25vol%SiOであった。下部磁気記録層の常温での異方性磁界は20kOeであり、キュリー点は650℃であった。上部磁気記録層の組成はCo−37at%Ni−48at%Ptであった。上部磁気記録層の常温での異方性磁界は53kOeであり、キュリー点は290℃であった。
【0038】
X線回折装置及び透過型電子顕微鏡を用いて下部磁気記録層240の微細構造を調べたところ、Co−Cr−Pt合金を主成分とする六方最密構造をもつ強磁性結晶粒子がSiOを主成分とするマトリックス中に分散したグラニュラ構造となっていた。また、この下部磁気記録層の強磁性結晶粒子の磁化容易軸は磁気記録媒体の面直方向に配向していた。同様にして、上部磁気記録層250の微細構造を調べたところ、L1型規則合金相を含むものであった。また、L1型規則合金相の磁化容易軸も磁気記録媒体の面直方向に配向していた。更に、磁気記録媒体断面の透過型電子顕微鏡観察を詳細に行ったところ、上部磁気記録層の結晶粒子は、下部磁気記録層の強磁性結晶粒子上に一対一対応するように連続的に成長しており、下部磁気記録層のSiOを主成分とするマトリックスの直上に当たる上部磁気記録層の部分は空隙となっていた。即ち、上部磁気記録層は、L1型規則合金相を含む結晶粒子が空隙によって分断されたグラニュラ構造となっていることがわかった。
【0039】
[実施例2]
実施例1における磁気記録媒体の各磁気記録層の異方性磁界の温度依存性を調べた結果を、図3に示す。常温での異方性磁界は上部磁気記録層の方が大きいが、キュリー点は下部磁気記録層の方が高いため、上部磁気記録層の方が低い温度で強磁性的挙動を失い、異方性磁界がゼロとなる。また、図4には、最高到達温度が上部磁気記録層のキュリー点を僅かに超えるようにある近接場光照射による加熱条件を仮定して、三次元モデル計算に基づき求めた磁気記録媒体内部の温度分布を図示した。なお、磁気記録層の最表面の温度が最高到達温度では必ずしもないが、これは表面からの放熱の影響によるものである。
【0040】
図3と図4に示す結果から、近接場光照射による加熱前後での異方性磁界の変化を磁気記録層最表面からの距離に対して図示すると、図5のようになる。加熱前(常温)では、上部磁気記録層の異方性磁界が著しく大きいが、加熱後には、上下の磁気記録層の厚み方向全般にわたって異方性磁界を効果的に低下させることができる。
【0041】
[実施例3]
実施例1における磁気記録媒体を磁気記録装置に搭載し、その記録再生特性試験を行うことにより磁気記録装置の性能を評価した。この磁気記録装置に搭載されている磁気ヘッドは、磁気ヘッドの基板と平行に平面発光のレーザダイオードと光導波路が配置されており、磁気ヘッドの先端にレーザを導いた後、ミラーでレーザの伝播方向を変換し、再度光導波路を用いてレーザを磁気記録媒体方向に導く機構になっている。後者の光導波路の先端には近接場光素子が配置されており、スポット径の微小化された近接場光が磁気記録媒体に照射される。ここで、レーザとして波長780nmのものを用い、光導波路のコア材料には酸化タンタルを用いた。なお、光導波路のコア材料は屈折率が高く、レーザの波長に対して透過率が高い材料であれば、他の材料を用いても構わない。近接場光素子としては、C型アパチャと呼ばれる微小開口部の一部に突起を有するものを用いたが、スポット径の小さく強度の大きい近接場光を発生できるものであれば、他の形態の素子を用いても構わない。
【0042】
この磁気記録装置において、レーザの出力を変化させながら記録再生特性試験を行い、レーザ出力と再生信号強度との関係を調べた結果を図6に示す。レーザの出力が低い場合には、磁気信号が全く再生できず、記録が行えなかった。これは、常温付近の温度では上部磁気記録層の異方性磁界が著しく大きいことから当然の結果である。レーザの出力を増大させると、ある出力以上で急激に磁気信号の再生強度が増大し、良好な信号雑音比が得られるようになった。このとき、図5の実線のように、磁気記録層の異方性磁界はその厚み方向全般にわたって効果的に低下させられていると考えられる。一方、更にレーザの出力を増大させると、磁気信号の再生強度は再び低下した。これは、磁気記録層が必要以上に昇温されたために、書き滲みが生じたり、磁気信号の熱揺らぎが助長されたりすることによるものである。レーザの出力を増大させ続けると、最終的には、磁気記録層に損傷が生じ、磁気的性質が温度に対して可逆的に変化しなくなったために、記録が行えなくなった。
【0043】
[実施例4]
下部磁気記録層240として、厚み0.4nmのCo−20vol%B層と厚み0.6nmのPd−20vol%B層とを交互に各8層積層させた人工格子構造の合金を用いた。これ以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。ここで、下部磁気記録層の常温での異方性磁界は22kOeであり、キュリー点は480℃であった。この下部磁気記録層の微細構造を実施例1と同様の方法で調べたところ、CoとPdとの人工格子構造をもつ強磁性結晶粒子がBを主成分とするマトリックス中に分散したグラニュラ構造となっていた。また、この下部磁気記録層の強磁性結晶粒子の磁化容易軸は磁気記録媒体の面直方向に配向していた。上部磁気記録層の結晶粒子は、下部磁気記録層の強磁性結晶粒子上に一対一対応するように連続的に成長しており、下部磁気記録層のBを主成分とするマトリックスの直上に当たる上部磁気記録層の部分は空隙となっていた。
【0044】
この磁気記録媒体を磁気記録装置に搭載し、実施例3と同様の方法で磁気記録装置の性能を評価した。その結果、図6と類似した結果が得られた。このことは、上部磁気記録層が下部磁気記録層よりも異方性磁界が高く、下部磁気記録層が上部磁気記録層よりもキュリー点が高くなるような積層構造の磁気記録層をもつ磁気記録媒体を用いれば、磁気記録層の材料に必ずしも限定されず、近接場光で磁気記録媒体を加熱することによって生じる厚み方向の温度勾配に対応した熱アシスト磁気記録装置を提供できることを意味している。
【0045】
[比較例1]
下部磁気記録層240として厚み8nmのCo−Ni−Pt合金層を用い、上部磁気記録層250として厚み7nmのCo−Cr−Pt−SiO合金層を用いた。これ以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。即ち、これは、実施例1の磁気記録媒体の上部磁気記録層と下部磁気記録層とを入れ替えたものであり、下部磁気記録層が上部磁気記録層よりも異方性磁界が高く、上部磁気記録層が下部磁気記録層よりもキュリー点が高くなるような積層構造である。この磁気記録媒体において、図4と同様の温度分布を仮定し、近接場光照射による加熱前後での異方性磁界の変化を磁気記録層最表面からの距離に対して図示すると、図7のようになる。この場合、加熱後においても、下部磁気記録層の異方性磁界が十分に低減できていないことが明らかである。
【0046】
この磁気記録媒体を磁気記録装置に搭載し、実施例3と同様の方法で磁気記録装置の性能を評価したところ、全てのレーザ出力において、磁気信号は全く再生できなかった。レーザ出力の小さい場合には、図7のように下部磁気記録層の異方性磁界が十分に低減できず、記録が行えないことが磁気信号を再生できない原因である。また、下部磁気記録層の全体に亘って異方性磁界が十分に低減できるようにレーザ出力を大きくした場合には、上部磁気記録層の温度が著しく高くなりすぎ、損傷が生じてしまうために、やはり記録は行えず、磁気信号は再生できない。
【0047】
[比較例2]
上部磁気記録層250の組成をCo−31at%Ni−48at%Ptとした以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。この上部磁気記録層の常温での異方性磁界は60kOeであり、キュリー点は450℃であった。この磁気記録媒体の各磁気記録層の異方性磁界の温度依存性を調べた結果を、図8に示す。この磁気記録媒体においては、上部磁気記録層が下部磁気記録層よりも異方性磁界が高く、下部磁気記録層が上部磁気記録層よりもキュリー点が高くなるような積層構造である点は実施例1と共通であるが、上部磁気記録層のキュリー点が実施例1と比較して高い。この磁気記録媒体において、図4と同様の温度分布を仮定し、近接場光照射による加熱前後での異方性磁界の変化を磁気記録層最表面からの距離に対して図示すると、図9のようになる。この場合、加熱後においても、上部磁気記録層の異方性磁界が十分に低減できていないことが明らかである。
【0048】
この磁気記録媒体を磁気記録装置に搭載し、実施例3と同様の方法で磁気記録装置の性能を評価した結果を図10に示す。レーザの出力が低い場合には、磁気信号が全く再生できず、記録が行えなかった。レーザの出力を増大させていくと、ある出力以上で磁気信号の再生強度は増大したが、良好な信号雑音比を得るに至るまでの再生強度は得られなかった。これは、上部磁気記録層のキュリー点が比較的高いために、上部磁気記録層の異方性磁界を十分に低下させる温度では、既に磁気記録層に損傷が生じ始めてしまうことが原因である。
【0049】
[実施例5]
上部磁気記録層250のCo−Ni−Pt組成を様々に変化させた以外は、実施例1と同様の方法で複数の磁気記録媒体を作製した。これらの磁気記録媒体の上部磁気記録層は、組成の違いに起因してそれぞれ異なるキュリー点をもつが、何れもL1型規則合金相を含み、常温において50kOe以上の高い異方性磁界をもつものである。これらの磁気記録媒体を磁気記録装置に搭載し、実施例3と同様の方法で磁気記録装置の性能を評価した。
【0050】
図11には、これらの磁気記録媒体の上部磁気記録層のキュリー点と最適のレーザ出力で記録を行った際の信号雑音比との関係を示す。これより、上部磁気記録層のキュリー点は、下部磁気記録層のキュリー点より低いだけでなく、200℃以上400℃以下の適切な温度でなければ、良好な信号雑音比は得られないことがわかった。上部磁気記録層のキュリー点が高すぎる場合に信号雑音比が劣化する理由は、比較例2で述べた通りである。上部磁気記録層のキュリー点が低すぎる場合には、常温付近でも温度変化に伴って異方性磁界や反転磁界が顕著に変化してしまい、磁気信号の書き滲みや熱揺らぎが顕著に現れてしまうことが信号雑音比の劣化する原因である。
【0051】
[比較例3]
下部磁気記録層240として、厚み0.15nmのCo−20vol%B層と厚み0.65nmのPd−20vol%B層とを交互に各10層積層させた人工格子構造の合金を用いた。これ以外は実施例1と同様の方法で磁気記録媒体を作製した。ここで、下部磁気記録層の常温での異方性磁界は15kOeであり、キュリー点は200℃であった。この磁気記録媒体の各磁気記録層の異方性磁界の温度依存性を調べた結果を図12に示す。
この磁気記録媒体においては、上部磁気記録層のキュリー点は適切な温度であるが、下部磁気記録層のキュリー点は上部記録層のキュリー点より更に低い。この磁気記録媒体において、図4と同様の温度分布を仮定し、近接場光照射による加熱前後での異方性磁界の変化を磁気記録層最表面からの距離に対して図示すると図13のようになる。加熱後には、上下の磁気記録層の厚み方向全般にわたって異方性磁界を低下させられているが、上部磁気記録層の異方性磁界を十分に低下させるように近接場光を照射すると、下部磁気記録層の一部もキュリー点以上の温度に達してしまう点が実施例1と異なる。
【0052】
この磁気記録媒体を磁気記録装置に搭載し、実施例3と同様の方法で磁気記録装置の性能を評価した結果を図14に示す。レーザの出力が低い場合には、磁気信号が全く再生できず、記録が行えなかった。レーザの出力を増大させていくと、ある出力以上で磁気信号の再生強度は増大したが、良好な信号雑音比を得るに至るまでの再生強度は得られなかった。上述の通り、上部磁気記録層250の異方性磁界を十分に低下させるように近接場光を照射すると、下部磁気記録層の一部もキュリー点以上の温度に達する。ここで、下部磁気記録層は、異方性磁界が小さく、元々反転磁界も小さい上に、図12に示したように温度に対する異方性磁界の変化率も小さい。従って、近接場光の照射によって下部磁気記録層の異方性磁界が大きく低下してしまうと、近接場光が取り去られて常温まで降温する過程において、反転磁界の低下させられた状態が持続し、磁気信号の書き滲みや熱揺らぎが容易に引き起こされる。これがこの磁気記録装置において良好な性能の得られなかった原因と考えられる。
【0053】
[実施例6]
実施例1記載の磁気記録媒体に電子線ネガレジストであるカリックスアレーンを塗布し、電子線照射により同心円状のパターンを描画し、イオンミリングと反応性イオンエッチングを併用した手法によって、磁気記録層の電子線を描画した部分を除去し、トラック幅50nm、トラックピッチ80nmであるディスクリートトラック型の磁気記録媒体を作製した。磁気記録層の除去された部分にはバイアススパッタリングによりSiOを充填し、磁気記録層最表面を平坦化した上で再度保護層を形成した。
【0054】
この磁気記録媒体を磁気記録装置に搭載し、実施例3と同様の方法で磁気記録装置の性能を評価したところ、実施例3の場合によりも更に良好な性能が得られた。この性能向上は、トラック間の磁気的干渉が低減されたことが低雑音化に寄与したことに加え、伝熱係数の小さい酸化物が充填されたことで、トラック間の磁気信号の書き滲みが抑制されたことによるものである。
【符号の説明】
【0055】
100:磁気記録装置 110:磁気記録媒体 115:スピンドルモータ
120:磁気ヘッド 130:サスペンション 140:アクチュエータ
150:制御部
200:基板 210:密着層 220:中間層
230:配向制御層 240:下部磁気記録層 250:上部磁気記録層
260:保護層 270:潤滑層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接場光を用いて磁気記録媒体を局所加熱しながら外部磁界を印加することによって情報を記録する熱アシスト磁気記録装置であって、
該磁気記録媒体の磁気記録層は、該磁気記録媒体の表面側に位置する第1の強磁性体層と、該磁気記録媒体の基板側に位置する第2の強磁性体層を積層して構成し、
該第1の強磁性体層は該第2の強磁性体層よりも異方性磁界が高く、かつ該第2の強磁性体層は該第1の強磁性体層よりもキュリー点が高くなるように構成したことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気記録装置であって、前記第1の強磁性体層は、Co、Ni、及びPtからなる合金を含むことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の磁気記録装置であって、前記Co、Ni、及びPtからなる合金はL1型規則合金相を含むことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの項に記載の磁気記録装置であって、前記第1の強磁性体層のキュリー点は200℃以上400℃以下であることを特徴とする磁気記録装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかの項に記載の磁気記録装置であって、前記第2の強磁性体層は、少なくともCoとCrとPtとを含む六方最密構造の合金を含むことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれかの項に記載の磁気記録装置であって、前記第2の強磁性体層は、Fe、Co、及びNiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む厚さ2nm以下の層とPt及びPdからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む厚さ2nm以下の層とを交互に積層させた人工格子構造を有することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの項に記載の磁気記録装置であって、前記第2の強磁性体層は、強磁性体結晶粒子と非磁性体からなる結晶粒界とで構成される微細構造を持つことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかの項に記載の磁気記録装置であって、前記磁気記録層において情報の記録される単位領域がダウントラック方向とクロストラック方向の何れか一方あるいは両方の方向に対して磁気的に相互に分離されていることを特徴とする磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−258256(P2011−258256A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129955(P2010−129955)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超高密度ナノビット磁気記録技術の開発(グリーンITプロジェクト)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】