説明

磁気軸受式チューブラー型撚線機

【課題】チューブの動バランスの調整の簡易化と低振動化を図り、極細線ケーブルに適用可能な、高速・低騒音・低消費電力・高稼働率のチューブラー型撚線機を提供する。
【解決手段】長手方向の回転軸の廻りに回転駆動されるチューブ10と、素線ボビン20と、素線ボビンをチューブの長手方向に配列し、チューブの回転に伴って回転しないようにチューブの回転軸に軸承されるクレードル30と、素線ボビンから引き出されてチューブの外周部を介してチューブの一端側に導かれた素線を集合する集合ダイス60と、チューブの回転によって撚り合わされた撚線を引き取る引取装置70とを備え、チューブの回転軸を軸承する軸受として磁気軸受70を用い、チューブの回転軸を回転駆動する駆動装置として回転軸を非接触で駆動するビルトインモータ80を用い、チューブの同一回転軸上にビルトインモータと磁気軸受を配備することによって簡易な動バランスの調整を行うだけで運転中のチューブの振動を大幅に低減させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チューブを高速回転させることによって素線の撚り合わせを行うチューブラー型撚線機に関し、特に軸受部に磁気軸受を使用したチューブラー型撚線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチューブラー型撚線機は、例えば特許文献1に示されるように、長手方向がほぼ水平に載置され、長手方向の回転軸の廻りに回転駆動されるチューブと、チューブ内に装着され、撚り合わされる素線が巻かれた複数の素線ボビンと、チューブ内に素線ボビンを長手方向に配列して装着する素線ボビン装着機構であって、チューブの回転に伴って素線ボビンが供廻りしないように軸受を介してチューブの回転軸に軸承される複数のクレードルと、各クレードルに装着された各ボビンから引き出された素線を集合する集合ダイスと、チューブを回転させることによって集合ダイスの撚点において撚り合わされた撚線を引き取る引取装置とを備える。
【0003】
チューブを回転させるため、チューブの長手方向の両側の回転軸は軸受により軸承され、チューブの回転軸はベルトを介して駆動モータにより駆動される。
【0004】
ここで、チューブの回転軸を支持する軸受は、当初は接触式の転がり軸受が用いられていたが、接触式の転がり軸受では許容回転があるため、チューブ回転数は常用で5000rpm(最大5500rpm)程度が限界であり、このときチューブの回転軸は変位30μm程度の機械振動が発生し、振動に起因する素線の断線が多発していた。
このため、出願人は、振動に起因する素線の断線を低減し、高速回転化による生産性の向上を図るため、重量の大きい集合ダイス側の軸受に非接触式の静圧式空気軸受を使用し、チューブ回転数6500rpm(最大8000rpm)で、チューブの回転軸の機械振動値が変位10μm以下のチューブラー型撚線機を実用化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−200087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のように、従来のチューブラー型撚線機において、チューブの軸承に静圧式空気軸受を使用することによりチューブの振動は低減されたものの、現状においても、チューブの振動によって素線ボビンに巻かれている線材の巻き崩れや微妙な張力変動を起こすため、素線の断線の問題は根絶しておらず、更なるケーブルの極細線化に当っては課題となっている。
【0007】
また、従来のチューブラー型撚線機では、運転中のチューブの振動を低減するために、装置の組立時にチューブの動バランスを厳密に調整する必要があったが、チューブ内にはクレードルという可動体を含むため、チューブの動バランスを厳密に調整することは極めて難しく、これまで動バランスの調整に多大な工数を要するなど、装置の組立コストを大きくする要因となっていた。
【0008】
また、静圧式空気軸受は、エアーを連続放出する必要があることから大きな騒音を発生し、コンプレッサを常時稼動する必要があるため、消費電力も大きいという問題がある。
【0009】
更には、静圧式空気軸受は、オペレータの操作ミスなどにより動バランスが崩れた場合に、ロータと軸受が接触して焼き付けを起こす可能性があり、安全性や生産性の観点から改善することが望ましい。
【0010】
本願発明は、上記のような従来のチューブラー型撚線機の問題点を解決するためになされたものであり、チューブの動バランスの調整の簡易化を図るとともに、高速回転中のチューブの振動を低減することによって、素線の断線を防止し、極細線ケーブルへの適応を可能とし、高速・低騒音・低消費電力・高稼働率のチューブラー型撚線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明にかかるチューブラー型撚線機は、長手方向がほぼ水平に載置され、前記長手方向の回転軸の廻りに回転駆動される筒状のチューブと、前記チューブ内に装着され、撚り合わされる素線が巻き取られた複数の素線ボビンと、前記複数の素線ボビンの各々を、巻き取られた素線を引き出し可能に、前記チューブ内の長手方向に配列して装着する素線ボビン装着機構であって、前記チューブの回転に伴って前記素線ボビン装着機構が回転しないように前記チューブの回転軸に軸承される軸受をそれぞれ有する複数のクレードルと、前記各クレードルに装着された各素線ボビンから引き出され、前記チューブの外周部を介して前記チューブの長手方向の一端側に導かれた各素線を集合する集合ダイスと、前記チューブの回転によって前記集合ダイスに集合された各素線が撚り合わされて形成された撚線を引き取る引取装置とを備えたチューブラー型撚線機であって、前記チューブの回転軸の両端側において回転軸の径方向を軸承するラジアル軸受として、前記チューブの回転軸の径方向の周囲に配備された複数のラジアル電磁石と、前記チューブの回転軸の少なくとも2つの径方向の変位量を検出するラジアル変位センサを有し、前記ラジアル変位センサにより検出されたチューブの回転軸の径方向の変位量に基づいて前記複数のラジアル電磁石を励磁し、前記チューブの回転軸の径方向の位置を所定の回転中心に位置決めするラジアル磁気軸受を用い、前記チューブの回転軸を回転駆動する駆動装置として、前記チューブの回転軸を非接触で回転駆動するビルトインモータを用い、前記チューブの同一回転軸に対して、非接触で回転駆動するビルトインモータと非接触で軸承するラジアル磁気軸受を配備したものである。
【0012】
この発明によれば、チューブの回転軸の両端側においてチューブの回転軸の径方向を軸承するラジアル軸受として、チューブの回転軸の径方向の周囲に配備された複数のラジアル電磁石と、チューブの回転軸の少なくとも2つの径方向の変位量を検出するラジアル変位センサを有し、ラジアル変位センサにより検出されたチューブの回転軸の径方向の変位量に基づいて複数のラジアル電磁石を励磁し、チューブの回転軸の径方向の位置を所定の回転中心に位置決めするラジアル磁気軸受を用いたので、チューブの動バランスが厳密に調整されなくても、運転中のチューブの回転軸の径方向の位置が所定の回転中心に常に精度よく位置決めされ、チューブの振動が飛躍的に低減される。
また、この発明によれば、チューブの回転軸を回転駆動する駆動装置として、チューブの回転軸を非接触で回転駆動するビルトインモータを用い、チューブの同一回転軸に対して、非接触で回転駆動するビルトインモータと非接触で軸承するラジアル磁気軸受を配備するようにしたので、ラジアル磁気軸受により所定の回転中心に位置決めされたチューブの回転軸に対して、従来のベルトドライブのように径方向に変位させる力が発生せず、より安定にチューブの回転軸の振動が低減される。
【0013】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、前記チューブの回転軸の軸方向を軸承するアキシャル軸受として、前記チューブの回転軸の一端側に固定され、径方向に円盤状に形成されたアキシャルディスクと、前記アキシャルディスクの径方向周辺部において軸方向の両側に配備された少なくとも一対のアキシャル電磁石と、前記アキシャルディスクの軸方向の変位を検出するアキシャル変位センサを有し、前記アキシャル変位センサにより検出されたチューブの回転軸の軸方向の変位量に基づいて前記アキシャル電磁石を励磁し、前記チューブの回転軸の軸方向の位置を所定位置に位置決めするアキシャル磁気軸受を用いたものであることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、チューブの回転軸の軸方向を軸承するアキシャル軸受として、チューブの回転軸の一端側に固定され、径方向に円盤状に形成されたアキシャルディスクと、アキシャルディスクの径方向周辺部において軸方向の両側に配備された少なくとも一対のアキシャル電磁石と、アキシャルディスクの軸方向の変位を検出するアキシャル変位センサを有し、アキシャル変位センサにより検出されたチューブの回転軸の軸方向の変位量に基づいてアキシャル電磁石を励磁し、チューブの回転軸の軸方向の位置を所定位置に位置決めするアキシャル磁気軸受を用いたので、チューブの動バランスが厳密に調整されなくても、運転中のチューブの回転軸の軸方向の位置が所定位置に常に精度よく位置決めされ、チューブの回転軸の振動が更に低減される。
また、この発明によれば、チューブの回転軸の径方向の軸受とともに軸方向の軸受を磁気軸受化し、チューブの同一回転軸に対して、非接触で回転駆動するビルトインモータと非接触で径方向を軸承するラジアル磁気軸受と非接触で軸方向を軸承するアキシャル磁気軸受を配備するようにしたので、運転中にチューブは完全に筐体と非接触の状態に保持され、筐体に伝達される機械振動が抑制され、騒音が大幅に低減される。
【0015】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、前記クレードルは、前記素線ボビンの装着穴を上方から挿入し、前記素線ボビンを軸廻りに所定のトルクで回転可能に支持する下部ボビン支持部材であって、上方に向かってテーパ加工された下部ボビンガイド部を備えた下部ボビン支持部材と、前記素線ボビンを前記下部ボビン支持部材に挿入した後に、前記素線ボビンの装着穴の上方より挿入して前記下部ボビン支持部材に嵌合させて前記素線ボビンを固定する上部ボビン支持部材であって、下方に向かってテーパ加工された上部ボビンガイド部を備えた上部ボビン支持部材と、前記上部ボビン支持部材を下方に押し下げる付勢手段と、前記付勢手段により前記上部ボビン支持部材を押し下げた後に前記付勢手段を前記下部ボビン支持部材に固定するロック手段とを有するものであることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、クレードルは、素線ボビンの装着穴を上方から挿入し、素線ボビンを軸廻りに所定のトルクで回転可能に支持する下部ボビン支持部材と、素線ボビンを下部ボビン支持軸に挿入した後に、素線ボビンの装着穴の上方より挿入して下部ボビン支持部材に嵌合させて素線ボビンを固定する上部ボビン支持部材とを有し、下部ボビン支持部材には上方に向かってテーパ加工された上部ボビンガイド部を備え、上部ボビン支持部材には下方に向かってテーパ加工された上部ボビンガイド部を備え、上部ボビン支持部材を下方に押し下げる付勢手段と、付勢手段により上部ボビン支持部材を押し下げた後に付勢手段を下部ボビン支持部材に固定するロック手段を有するので、素線ボビンを下部ボビン支持部材に挿入した後に、素線ボビンの上方より上部ボビン支持部材を挿入し、付勢手段により上部ボビン支持部材を押し下げて下部ボビン支持部材にロックすることで、素線ボビンをワンタッチで精度よく心出してクレードルに装着することができる。
【0017】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、前記クレードルは、装着された素線ボビンとともに回転する反射板であって、回転方向に光ビームを反射する部分と反射しない部分とを含む反射板を有し、前記反射板に対して光ビームを照射し、前記反射板からの反射パルスを検出することによって素線ボビンの回転を検出し、前記反射パルスが検出されないときに素線切れが発生したと判断する断線検出センサを前記チューブ周辺の前記各クレードルの前記反射板に対応する位置に備え、前記チューブの外周肉厚部の各クレードルの素線ボビンに対応して設けられた窓を通して前記反射板からの反射パルスを検出するものであって、前記チューブの外周部の外表面を黒色コーティングし、前記断線検出センサは、前記反射板からの反射光を前記チューブの窓以外の部分が遮蔽することによって生ずる疑似反射パルスをマスクするマスク手段を備えたものであることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、クレードルに装着された素線ボビンとともに回転する反射板であって、回転方向に光ビームを反射する部分と反射しない部分を含む反射板に対して光ビームを照射し、反射板からの反射パルスを検出して素線ボビンの回転を検出し、反射パルスが停止したときに素線切れが発生したと判断する断線検出センサをチューブ周辺の各クレードルの反射板に対応する位置に備え、チューブの窓を通して反射板からの反射パルスを検出するので、チューブ内に備えた断線検出センサからチューブ外に断線検出信号を伝達するための複雑な信号伝達手段を設ける必要が無く、簡便に素線切れを検出できる。
また、チューブの外周部の外表面を黒色コーティングし、断線検出センサに、反射板からの反射パルスのうちチューブの窓の通過によって生ずる疑似反射パルスをマスクするマスク手段を備えるので、チューブが回転しているときのチューブの外周部の外表面からの外乱が抑制されるとともに、反射板が断線検出センサからの光ビームを反射する位置で停止した場合においてもチューブの回転によって生ずる疑似反射パルスが抑制され、素線切れを正しく判断することができる。
【0019】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、前記引取装置は、駆動モータにより回転駆動される駆動側キャプスタンと、自由回転する従動側キャプスタンとを有し、前記集合ダイスから引き出された撚線を、前記従動側キャプスタンと前記駆動側キャプスタンの間で複数回周回させて引き取るものであって、
前記従動側キャプスタンは、前記撚線の周回ターン毎にそれぞれ独立の回転ホイールを備え、前記各回転ホイールにはそれぞれ独立の回転軸受を備えたものであることが好ましい。
【0020】
この発明によれば、引取装置の従動側キャプスタンは、撚線の周回ターン毎にそれぞれ独立の軸受を有する独立の回転ホイールを備えるようにしたので、撚線の周回ターンのそれぞれにおいて生ずる回転角度のずれが独立の回転ホイールによって吸収され、撚線の損傷が抑制されるとともに撚線の断線を防止して安定に引き取ることができる。
【0021】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、前記引取装置は、前記駆動側キャプスタンの回転速度を、指定された回転数指令に常時追従させるように前記駆動モータを制御するサーボ手段を有し、前記チューブの回転開始から回転終了までの全期間に亘って、前記チューブの回転速度を回転速度検出手段により常時検出し、前記回転速度検出手段により検出された前記チューブの回転速度と一定の比率となる駆動側キャプスタンの回転数指令を常時演算し、前記演算された駆動側キャプスタンの回転数指令を前記サーボ手段に随時提供する制御手段を備えたものであることが好ましい。
【0022】
この発明によれば、引取装置は、駆動側キャプスタンの回転速度を、指定された回転数指令に常時追従させるサーボ手段を有し、チューブの回転開始から回転終了までの全期間に亘って、チューブの回転速度検出手段により検出されたチューブの回転速度と一定の比率となる駆動側キャプスタンの回転数指令を常時演算し、サーボ手段に随時提供する制御手段を備えるので、チューブの回転速度に対して常に一定の比率で撚線が引き取られ、チューブの回転を起動する加速期間やチューブの回転を停止する減速期間においても一定の撚線ピッチを確保することができ、撚線の生産効率を更に向上させることができる。
【0023】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、前記各クレードルの各素線ボビンから引き出され、前記チューブの外周部を介して前記集合ダイスまで導かれる各素線は、前記各クレードルの素線引出部から前記集合ダイスの近傍に至るまで、素線をガイドする素線ガイドパイプ内を通過させるようにしたものであって、前記チューブの外周肉厚部には、前記素線ガイドパイプを挿通させる挿通穴を有し、前記素線ガイドパイプのうち前記チューブの外周部を長手方向に素線を導く素線ガイドパイプは、前記挿通穴に対して着脱自在および/または回転可能に装着されたものであることが好ましい。
【0024】
この発明によれば、各クレードルの各素線ボビンから引き出されてチューブの外周部を介して集合ダイスまで導かれる各素線は、各クレードルの素線引出部から集合ダイスの近傍に至るまで素線ガイドパイプ内を通過させるようにしたので、チューブを高速回転させたときの遠心力による素線の径方向への張り出しが防止されるとともに張力の上昇が抑制される。これにより、素線への外的または内的なダメージが低減され、断線の発生が抑制されるとともに、チューブをより高速に回転させることができ、更に稼働率を向上させることができる。
また、この発明によれば、素線ガイドパイプのうちチューブの外周部を長手方向に素線を導く部分は、チューブの外周肉厚部に設けられた挿通穴に装着されるので、チューブの外周部分に突起物が形成されず、素線ガイドパイプによる風切り音が発生せず、騒音が抑制される。
また、この発明によれば、チューブの外周肉厚部に設けられた挿通穴に装着される素線ガイドパイプは、着脱自在および/または回転可能に装着されるので、素線を繰り返し通過させた場合でもチューブの挿通穴に直接損傷を与えることがなく、素線ガイドパイプに損傷を生じた場合でも素線ガイドパイプを交換または回転することによって簡便に対応することができ、メンテナンスコストが低減される。
【0025】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、前記チューブを総削りにより外周表面に突起を有しないように形成したものであることが好ましい。
【0026】
この発明によれば、チューブを総削りにより外周表面に突起を有しないように形成したので、チューブを高速回転させたときのチューブの外周部における空気抵抗が更に抑制され、騒音がより低減される。
【0027】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、開閉機構を有し、前記チューブを収容する本体カバーを備え、前記本体カバーは、前記チューブの下部外周面に対して断面が前記チューブと略同心円となる半割れの下部チューブカバーを備え、前記開閉機構は、前記チューブの上部外周面に対して断面が前記チューブと略同心円となる半割れの上部チューブカバーを備え、前記開閉機構を閉止したときに、前記下部チューブカバーと前記上部チューブカバーとが密接し、前記下部チューブカバーと前記上部チューブカバーとにより形成される断面が前記チューブと略同心円の円筒状カバーによって前記チューブの外周面が覆われるようにしたものであることが好ましい。
【0028】
この発明によれば、チューブを収容する本体カバーは、開閉機構を閉止したときに、チューブに対して略同心円となる円筒状のカバーによってチューブが覆われるので、チューブと本体カバーの間の外周方向の間隙が略一定となり、チューブを高速回転させたときの風切り音が抑制され、騒音がより低減される。
【0029】
また、この発明にかかるチューブラー型撚線機は、前記ラジアル磁気軸受は、制御異常が発生した際に前記チューブの回転軸の径方向を軸承するタッチダウン軸受を備え、前記タッチダウン軸受は、前記チューブの回転軸の径方向の周囲に小径の複数の転がり軸受を配備したものであることが好ましい。
【0030】
この発明によれば、ラジアル磁気軸受は、制御異常が発生した際にチューブの回転軸の荷重を支持するタッチダウン軸受として、チューブの回転軸の径方向の周囲に小径の複数の転がり軸受を配備したものを用いたので、ラジアル磁気軸受に制御異常が発生した場合でも、重量物であるチューブの荷重を支持して磁気軸受やチューブの回転軸の損傷を安全かつ確実に回避することができる。
また、万一タッチダウン軸受が損傷した場合でも、損傷した小径の転がり軸受部分のみを交換すれば足り、補修時間や補修コストを大幅に低減できる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本願発明によれば、チューブの動バランスの調整が簡単化されるとともに、高速回転するチューブの機械振動が低減され、振動に起因する断線の発生が防止され、極細線ケーブルに適用可能な、高速・低騒音・低消費電力・高稼働率のチューブラー型撚線機を提供できる。
【0032】
本願発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機の断面図解 図である。
【図2】本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機の磁気軸受 とビルトインモータ部分の断面図解図である。
【図3】本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機のタッチダウ ン軸受の断面図解図である。
【図4】本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機のクレードル 部の断面図解図である。
【図5】本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機の引取装置の 断面図解図である。
【図6】本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機の本体カバー の断面図解図である。
【図7】本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機の制御システ ムの概略構成図である。
【図8】本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機の制御装置の 制御タイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に、本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー撚線機の断面図解図を示す。
本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー撚線機100は、長手方向がほぼ水平に載置され、長手方向の回転軸の廻りに回転駆動される筒状のチューブ10と、チューブ10内に装着され、撚り合わされる素線が巻き取られた複数の素線ボビン20と、複数の素線ボビン20の各々を、巻き取られた素線を引き出し可能に、チューブ10内の長手方向に配列して装着する素線ボビン装着機構であって、チューブ10の回転に伴って素線ボビン装着機構が回転しないようにチューブ10の回転軸に軸承される軸受をそれぞれ有する複数のクレードル30と、各クレードル30に装着された各素線ボビン20から引き出されてチューブ10の外周部を介してチューブ10の長手方向の一端側に導かれた各素線を集合する集合ダイス50と、チューブ10の回転によって集合ダイス50に集合された各素線が撚り合わされて形成される撚線を引き取る引取装置60と、チューブ10の回転を非常停止させるブレーキ90を、本体架台1上に備える。
【0035】
なお、本実施形態では、チューブ10内には6個のクレードル30を備えており、それぞれに対して素線ボビン20を装着できるほか、後部チューブロータ軸12bの左端側において素線ボビンを装着可能な固定の素線ボビン装着機構を2個備えることができ、最大で8本の素線を用いて撚線を生産することができる。
【0036】
ここで、チューブ10の回転軸の両端側においてチューブの回転軸の径方向を軸承するラジアル軸受として、前部チューブロータ軸12aには前部ラジアル磁気軸受70aを備え、後部チューブロータ軸12bには後部ラジアル磁気軸受70bを備える。
チューブ10の回転軸の一端側においてチューブの回転軸の軸方向を軸承するアキシャル軸受として、後部チューブロータ軸12bに後部アキシャル磁気軸受70cを備える。
また、チューブ10の回転軸を回転駆動する駆動装置として、後部チューブロータ軸12bにはベルトを介さずに後部チューブロータ軸12bを非接触で直接回転駆動するビルトインモータ80を備える。
【0037】
図2に、本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー撚線機100の磁気軸受70a,70b,70cとビルトインモータ80の部分の断面図解図を示す。
前部ラジアル磁気軸受70aは、本体架台1に固定され、前部チューブロータ軸12aの径方向の外周を囲うように設置される前部ラジアルステータ72aと、前部ラジアルステータ72aの内側において前部チューブロータ軸12aの外周面に対して所定のギャップを持って等間隔に配備された32個のラジアル電磁石73aと、前部ラジアルステータ72aに固定され、前部チューブロータ軸12aの径方向の対向する位置において前部チューブロータ軸12aの外周面との距離の変位を計測する一対の変位センサを前部チューブロータ軸12aの径方向の直行する2方向に設けた前部ラジアル変位センサ74aと、前部ラジアルステータ72aに固定され、前部ラジアル磁気軸受の制御に異常が発生した場合に前部ラジアル電磁石73aを保護するように、前部ラジアル電磁石73aの内径面より内側に接触面を有する前部ラジアルタッチダウン軸受76aとを備える。
【0038】
同様に、後部ラジアル磁気軸受70bは、本体架台1に固定され、後部チューブロータ軸12bの径方向の外周を囲うように設置される後部ラジアルステータ72bと、後部ラジアルステータ72bの内側において後部チューブロータ軸12bの外周面に対して所定のギャップを持って等間隔に配備された6個のラジアル電磁石73bと、後部ラジアルステータ72bに固定され、後部チューブロータ軸12bの径方向の対向する位置において後部チューブロータ軸12bの外周面との距離の変位を計測する一対の変位センサを後部チューブロータ軸12bの径方向の直行する2方向に設けられた後部ラジアル変位センサ74bと、後部ラジアルステータ72bに固定され、後部ラジアル磁気軸受の制御に異常が発生した場合に後部ラジアル電磁石73bを保護するように、後部ラジアル電磁石73bの内径面よりも内側に接触面を有する後部ラジアルタッチダウン軸受76bとを備える。
【0039】
アキシャル磁気軸受70cは、後部チューブロータ軸12bに固定され、後部チューブロータ軸12bとともに回転するアキシャルディスク71cと、本体架台1に固定された後述のステータハウジング82に固定され、アキシャルディスク71cの軸方向の両側に設置されるアキシャルステータ72cと、アキシャルステータ72cに固定され、アキシャルディスク71cの軸方向の両側の表面に対して所定のギャップを持って配備されたアキシャル電磁石73cと、アキシャルステータ72cに固定され、アキシャルディスク71cの軸方向の両側の対向する位置においてアキシャルディスク71cの表面との距離の変位を計測する一対のアキシャル変位センサ74cと、アキシャルディスク71cの回転を検出する回転検出センサ75cと、アキシャル磁気軸受の制御に異常が発生した場合にアキシャル電磁石73cを保護するように、アキシャル電磁石73cの外表面よりも内側に接触面を有するとアキシャルタッチダウン軸受76cとを備える。
【0040】
ビルトインモータ80は、本体架台1に固定され、後部チューブロータ軸12bの径方向の外周を囲うように設置されるステータハウジング82と、ステータハウジング82の内側において後部チューブロータ軸12bの外周面に対して非接触となるように設置され、後部チューブロータ軸12bに回転駆動を与える回転磁界を発生させる主軸ユニット84とを備え、ステータハウジング82の外周には駆動時に発生する熱を放散させるための放熱フィンを備える。
ブレーキ90は、後部チューブロータ軸12bに固定され、後部チューブロータ軸12bとともに回転するブレーキディスク92と、本体架台1に固定され、空圧によりブレーキディスク92をブレーキパッドで挟み込んで制動する空圧キャリパ94とを備える。
【0041】
図3に、本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機100のタッチダウン軸受の断面図解図を示す。
図3は、前部ラジアル磁気軸受70aの前部ラジアルタッチダウン軸受76aの断面図解図を示すものであるが、後部ラジアル磁気軸受70bの後部ラジアルタッチダウン軸受76bについても同様である。
図3において、(a)は前部ラジアル磁気軸受70a全体の断面図解図であり、(b)は(a)を右方向から見た断面図解図である。
前部ラジアル磁気軸受70aは、前部ラジアルステータ72aを収容するハウジングに対して、前部ラジアル変位センサ74aを収容する前部センサハウジング77aと、前部ラジアルタッチダウン軸受76aを収容する前部ラジアルタッチダウンハウジング78aが固定されている。
【0042】
ここで、前部ラジアルタッチダウン軸受76aは、図3(b)に示すように、前部ラジアルタッチダウンハウジング78aに対して、周方向に小径の転がり軸受79aを多数配列した構造としている。これは、チューブロータ軸が高速で回転しているときに制御異常が発生すると、チューブロータ軸がタッチダウン軸受に高速で衝突して非常に大きな衝撃を与えるためであり、本実施形態のように小径の転がり軸受をロータ軸の外周方向に多数配備することで耐荷重性が改善され、大きな衝撃に対してタッチダウン軸受の損傷を防止することができる。また、万一タッチダウン軸受の一部分に損傷が発生した場合でも、損傷を受けた転がり軸受のみを交換することで補修することができ、磁気軸受ユニット全体を取り外してタッチダウン軸受を交換する場合と比較して、磁気軸受ユニットの再据付に伴う制御系の再調整作業が不要となるので、補修時間を大幅に短縮することができる。
【0043】
図4に、本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機100のクレードル部の断面図解図を示す。
クレードル30は、素線ボビン20を装着する筐体となるクレードル筐体31を備え、クレードル筐体31は、チューブ10の回転によって筐体が回転しないように、前方回転軸32はチューブ10に固定された前方軸受33により軸承され、後方回転軸34はチューブ10に固定された後方軸受35により軸承される。
前方回転軸32は、素線ボビン20から繰り出された素線を通過させるため、テーパ加工された中空穴を備える。
【0044】
クレードル筐体31は、素線ボビンの装着穴に対して下方から挿入する下部ボビン支持部材37を備え、素線ボビンをクレードル筐体31に対して回転可能に装着するため、軸受36を介してクレードル筐体31に支持されている。下部ボビン支持部材37には、素線ボビンの装着穴径に対応して上方に向かってテーパ加工された下部ボビンガイド部38を備える。
また、素線ボビンの装着穴に対して上方から挿入するものであって、下部ボビン支持部材37と嵌合する嵌合部を有する上部ボビン支持部材39を備え、下部ボビン支持部材と同様に、素線ボビンの装着穴径に対応して下方に向かってテーパ加工された上部ボビンガイド部40を備える。
上部ボビン支持部材39の上部には、素線ボビンの装着後に上部ボビン支持部材39に付勢を与えるバネ材41と、バネ材41を下方に押し下げるセットカラー42と、セットカラー42を下部ボビン支持部材37にロックするロック機構43とを有する。
【0045】
素線ボビン20をクレードル筐体31に装着する手順は、下部ボビン支持部材37に対して素線ボビンを上方から挿入し、次に下部ボビン支持部材37に装着された素線ボビンに対して上部ボビン支持部材39を上方から挿入し、セットカラー42を押し下げ、ロック機構43によりロックさせるだけでよく、素線ボビン20はクレードル30に対してワンタッチで精度よく心出しして装着される。
また、下部ボビン支持部材37の下部ボビンガイド部38と、上部ボビン支持部材39の上部ボビンガイド部40とには、装着穴径の異なる素線ボビンを装着させるためのテーパ加工が施されており、複数種類の素線ボビンに対して、同一の素線ボビン支持機構を用いてワンタッチで精度よく心出しして装着することができる。
【0046】
クレードル筐体71の下面の下部ボビン支持軸37の下端には、装着された素線ボビンとともに回転する反射板48を備えており、反射板48の表面は黒色塗装が施され、回転方向の対角位置に90度の扇状の反射シールが貼られている。このような回転板48に対して、後述の図6に示すようにチューブ10の下方に備えられた断線検出センサ49より光ビームを照射し、反射板からの反射パルスを検出することにより素線切れを検出する。なお、断線検出の詳細については後述する。
【0047】
各クレードル30に装着された素線ボビン20の素線は、各クレードルの前方回転軸32の中空穴を通して引き出され、図1にも示されるように、クレードルの前方回転軸32からチューブの開口部16までの間に配備された素線ガイドパイプ22と、チューブ10の外周肉厚部において開口部16からチューブ10の前方端までに設けられた挿通穴18に装着された素線ガイドパイプ22と、チューブ10の前方端から集合ダイス50付近までの間に配備された素線ガイドパイプ22とを通して、集合ダイス50まで導かれる。
【0048】
なお、チューブ10の外周部の挿通穴部分には、素線ガイドパイプ22を挿通穴18に装着するためのガイドパイプ固定ネジ19を備えており、チューブの挿通穴18に装着された素線ガイドパイプにおいて、素線の通過によって内面の一部に損傷が生じた場合には損傷の影響を受けない方向に素線ガイドパイプを回転させて対応することが可能であり、内面の全体に亘って劣化が生じた場合には素線ガイドパイプを交換することで補修することができる。
【0049】
また、チューブ10の後部チューブロータ軸12bの左端側に備える前述の固定の素線ボビン装着機構は、クレードル30の上述のクレードル筐体31部分を本体架台1に固定したものであって、後部チューブロータ軸12bの左端側において回転軸と直交する水平2方向に分散して2個配備することができる。
この固定の素線ボビン装着機構に装着された素線ボビンから引き出された素線は、後部チューブロータ軸12bの中空穴を通して後部チューブロータ軸12bの右端側に導かれ、後部チューブロータ軸12bの中空穴からチューブの開口部16までの間に配備された素線ガイドパイプ22と、チューブ10の外周肉厚部において開口部16からチューブ10の前方端までに設けられた挿通穴18に装着された素線ガイドパイプ22と、チューブ10の前方端から集合ダイス50付近までの間に配備された素線ガイドパイプ22とを通して、集合ダイス50まで導かれる。
【0050】
チューブ10の外周肉厚部の挿通穴18は、円周方向に所定の間隔で設けられ、それぞれに素線ガイドパイプ22が装着されたときにチューブ10の円周方向の重量バランスが略均等となるように配備されている。
【0051】
図5に、本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機100の引取装置の断面図解図を示す。
引取装置60は、駆動モータ62により回転駆動される駆動側キャプスタン63と、自由回転する従動側キャプスタン64とを有し、集合ダイス50から引き出された撚線を従動側キャプスタン64と駆動側キャプスタン63の間で複数回巻き付けることで引取動作を行う。
【0052】
ここで、従動側キャプスタン64は、撚線の周回ターン毎にそれぞれ独立に回転する回転ホイール65を備え、各回転ホイール65にはそれぞれ独立の回転軸受66を備える。
これにより、従動側キャプスタン64と駆動側キャプスタン63の間で複数回周回する撚線が、各ターンにおける駆動側キャプスタンから受ける引取テンションの差異や、撚線とキャプスタンとの摩擦状態の変化等によって、ターン毎に撚線の引取速度が異なるような場合においても、各ターンの引取速度に応じて対応する回転ホイール65が独立に回転するので、撚線に過度のテンションが発生することを防止でき、撚線の断線や素線の損傷を抑制することができる。
【0053】
従動側キャプスタン64の各回転ホイール65は、ホイールの外周部の一方の山の全周に亘って、隣接するホイールの外周部の手前側の山を覆う鍔を備える。
これにより、撚線を従動側キャプスタン64の各回転ホイール65に架ける際に撚線を各回転ホイールの間の隙間に巻き込むことが防止され、操作性が向上するとともに、引取動作中に撚線が各回転ホイールの間の隙間に挟みこまれることが防止され、稼働率を更に向上させることができる。
【0054】
なお、引取装置60は、撚線の断線を検出するために、従動側キャプスタン64からの反射光により従動側キャプスタン64の回転を検出する回転検出センサ67と、従動側キャプスタン64と駆動側キャプスタン63の間を周回させた撚線との導通を検出する導通検出センサ68とを備え、一方のセンサが非検出状態となったときに撚線が断線したと判断される。
【0055】
図6に、本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機100の本体カバーの断面図解図を示す。図6において、(a)はチューブの軸方向の断面図解図であり、(b)はチューブの径方向の断面図解図である。
本体架台1の上には、チューブ10を囲うように本体カバー2が設けられ、本体カバー2は、チューブにアクセスするための開閉機構3を備える。
ここで、本体カバー2は、図6(b)に示すように、チューブ10の下部外周面に対して断面がチューブ10と略同心円となる半割れの下部チューブカバー4を備え、開閉機構3は、チューブ10の上部外周面に対して断面がチューブ10と略同心円となる半割れの上部チューブカバー5を備え、開閉機構3を閉止したときに、下部チューブカバー4と上部チューブカバー5とが密接し、下部チューブカバー4と上部チューブカバー5とにより形成される断面がチューブ10と略同心円の円筒状のカバーによってチューブ10の外周面の全面が覆われるようにしている。
これにより、高速回転中のチューブの窓等による風切り音が抑制され、運転中の騒音が低減される。
なお、上部チューブカバー4と下部チューブカバー5は、必要に応じて表面に吸音材を配設するようにしもよい。
【0056】
チューブ内の各クレードルに装着された素線ボビンの素線切れを検出する断線検出センサ49は、図6(a)に示すように、下部チューブカバー5の下部の本体架台1上においてチューブ内の各クレードルの反射板48に対応する位置に配備され、下部チューブカバー5には、各クレードルの反射板48に対応する位置に光ビームを通過させる穴が設けられている。
また、後部ロータ軸12bの左端の固定の素線ボビン装着機構に装着された素線ボビンの素線切れを検出する断線検出センサ49は、図6(b)に示すように、固定の素線ボビン装着機構の下面の反射板48の直下に設けられている。
【0057】
反射板48は、前述のように、表面が黒色塗装され、素線ボビンの回転によって断線検出センサ48により反射パルスが検出されるように回転方向の対角位置に90度の扇状の反射シールが貼られている。これにより、運転中に素線ボビンが回転していると断線検出センサ48において常時反射パルスが検出されるので、断線検出センサ48において一定時間以上にわたって反射パルスが検出されなくなったときに素線切れが発生したと判断する。
ここで、チューブ10内の各クレードルの反射板48からの反射パルスの検出は、チューブ10の円周方向の3箇所に設けられた窓14を通して行うことになるので、断線検出センサ49の光ビームのチューブ10の外周部の外表面での反射が外乱とならないように、チューブ10の外周部の外表面には塗装による黒色コーティングが施されている。
従って、反射板が光ビームを反射しない位置で停止した場合は、断線検出センサ49において、チューブの窓部分においても窓以外の部分においても反射光が検出されないので、反射板48による反射パルスが生成されず、正しく素線切れを判断することができる。
一方、反射板が光ビームを反射する位置で停止した場合は、断線検出センサ49において、チューブの窓部分では反射光を検出するが、窓以外の部分では反射光が検出されないので、チューブの回転による疑似反射パルスが生成される。
このようなチューブの回転による疑似反射パルスによって素線ボビンが回転していると誤判定することを防止するため、断線センサ49には、チューブの回転による窓の通過周期に対応する短時間パルスをマスクするオフディレイタイマが設定されている。これにより、反射板が光ビームを反射しない位置で停止した場合における疑似反射パルスの発生が抑制され、正しく素線切れを検出することができる。
【0058】
図7に、本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機100の制御システムの概略構成図を示す。
磁気軸受式チューブラー型撚線機の制御システム200は、前部ラジアル磁気軸受70aと後部ラジアル磁気軸受70bとアキシャル磁気軸受70c(図示省略)に接続され、各磁気軸受70a,70b,70cを制御してチューブ10のロータ軸を浮上させる磁気軸受コントローラ210と、ビルトインモータ80に接続され、主軸ユニット84を駆動して後部ロータ軸12bの周りに回転磁界を発生させるインバータ220と、引取装置60の駆動モータ62に接続され、駆動側キャプスタン63の回転速度を制御するサーボコントローラ230と、磁気軸受コントローラ210とインバータ220とサーボコントローラ230に接続され、それぞれに対して所定の指令を与えるプログラマブルコントローラ240とを備え、プログラマブルコントローラ240は、装置の動作状態の表示や設定変更を行うタッチパネル250と、装置の運転を始動する運転釦・装置の運転を停止する停止押釦・装置を非常停止させる非常停止釦等を備える操作盤260に接続されている。
【0059】
磁気軸受コントローラ210は、プログラマブルコントローラ240から浮上指令を受け、前部ラジアル磁気軸受70aと後部ラジアル磁気軸受70bとアキシャル磁気軸受70cの制御を行う。
前部ラジアル磁気軸受70aの制御は、一対の前部ラジアル変位センサ74aの信号の差分をとり、それが目標値となるように対応する前部ラジアル電磁石73aに対して励磁電流を与えるフィードバック制御をすべての前部ラジアル変位センサ74aと前部ラジアル電磁石73aに対して行う。
同様に、後部ラジアル磁気軸受70bの制御は、一対の後部ラジアル変位センサ74bの信号の差分をとり、それが目標値となるように対応する後部ラジアル電磁石73bに対して励磁電流を与えるフィードバック制御をすべての前部ラジアル変位センサ74bと前部ラジアル電磁石73bに対して行う。
また、アキシャル磁気軸受70cの制御は、一対のアキシャル変位センサ74cの信号の差分をとり、それが目標値となるように対応するアキシャル電磁石73cに対して励磁電流を与えるフィードバック制御をすべての前部ラジアル変位センサ74cと前部ラジアル電磁石73cに対して行う。
なお、アキシャル磁気軸受70cには回転検出センサ75cを備えており、上記各磁気軸受の制御において、回転検出センサ75cの信号に基づいて、各磁気軸受の変位センサの差分信号から回転に同期した変位成分を除去する処理が行われ、チューブ10のロータ軸の静バランスや動バランスの不釣合いに基づく振動が自動的に抑制される。
以上のような磁気軸受コントローラ210の制御により、クレードルという可動体を内部に有するチューブラー型撚線機において、装置の組立時にチューブの動バランスを厳密に調整する必要がなくなり、簡易な動バランスの調整を行うだけで高速回転時のチューブの振動を低減化させることができる。
【0060】
インバータ220は、プログラマブルコントローラ240から回転指令を受け、ビルトインモータ80の主軸ユニット84に対して設定された回転数の回転磁界を発生させることによって後部チューブロータ軸12bを回転駆動する。
なお、後部チューブロータ軸12bの左端にはエンコーダ86を備えており、エンコーダ86による回転パルスがプログラマブルコントローラ240に取り込まれ、チューブの回転速度が常時モニタされている。
【0061】
サーボコントローラ230は、プログラマブルエンコーダ240から引取装置の回転数指令を受け、エンコーダを備えた引取駆動モータ62に対して指定された回転数で回転するように駆動制御を行う。
【0062】
図8に、本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機100のプログラマブルコントローラ240の制御タイミングチャートを示す。
プログラマブルコントローラ240は、操作盤260において運転押釦が押されると、最初に磁気軸受コントローラ210に対する浮上指令をONとし、すべての磁気軸受の浮上完了が確認されたら(図示省略)、インバータ220に対する本体回転指令をONとする。これにより本体チューブの回転速度は増加し、加速期間が経過すると設定回転数に到達して定常運転期間に入る。
そして、操作盤260において停止押釦が押されると、インバータ220に対する本体回転指令をOFFとする。これにより本体チューブの回転速度は減少し、減速期間が経過すると本体回転速度がゼロとなり、本体チューブの回転が停止していることが確認されたら(図示省略)、磁気軸受コントローラに対する浮上指令をOFFとする。
本体チューブの回転中は、エンコーダ86より得られる回転パルスから本体チューブの回転速度を常時検出し、検出された本体回転速度と設定された撚線の撚ピッチとから引取装置に指定する回転数指令を常時演算し、サーボコントローラ230に対して引取装置回転数指令を随時提供する。
【0063】
本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機100では、本体チューブの定格回転数は6000rpmであり、撚ピッチが0.1mmのとき、定格回転数における引取装置の回転数指令は3rpm、素線ボビンの回転数は3.8rpmであり、撚ピッチが5mmのとき、定格回転数における引取装置の回転数指令は150rpm、素線ボビンの回転数は190rpmである。
【0064】
プログラマブルコントローラ240には、各断線検出センサ49からの信号が入力されており、運転中にいずれかの断線検出センサ49において断線が検出されると、直ちに本体回転指令をOFFとし、空圧キャリパ94のソレノイドバルブ96に対して本体非常停止指令を送信して、本体チューブの回転を緊急停止する。
また、図面では省略されているが、引取装置60の回転検出センサ67と導通検出センサ68により撚線の断線が検出された場合においても、同様に本体チューブの回転を緊急停止する。
【0065】
以上のような本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機を実際に稼動させた結果、1時間程度の簡単なチューブの動バランスの調整を実施しただけで、運転中のチューブの回転軸の振動はいずれの方向についても2μm以下となり、従来の空気軸受式のチューブラー型撚線機に比して、動バランスの調整に要していた多大な工数が約1時間に短縮されるとともに、高速回転時のチューブの振動が約5分の1以下に低減されることが確認された。
また、従来の空気軸受式チューブラー型撚線機の消費電力が3.7KWであったのに対し、上記本願発明の一実施形態の磁気軸受式チューブラー型撚線機の消費電力は270Wとなり、消費電力が10分の1に低減されることが確認された。
【0066】
上記実施形態では、チューブロータ軸の軸方向を軸承するアキシャル磁気軸受についても磁気軸受を使用するものとして説明したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、アキシャル軸受はチューブの回転軸の振動に与える影響が少ないので、通常の機械式のアキシャル軸受を用いてもよい。
【0067】
上記実施形態では、いずれの磁気軸受も、ロータ軸の変位を検出する変位センサとして、対向する一対の変位センサを備え、一対の変位センサの差分信号に基づいて対応する電磁石の励磁電流を制御するものとして説明したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、単一の変位センサの信号を目標位置に対する基準値と比較することによって対応する電磁石の励磁電流を制御するようにしてもよい。
【0068】
上記実施形態では、アキシャル磁気軸受に回転パルスを検出する回転検出センサを備え、この信号に基づいて各磁気軸受の変位センサの差分信号から回転に同期した変位成分を除去する処理を行うものとして説明したが、本体チューブの回転数を計測するエンコーダの信号を共用するようにしてもよい。
【0069】
上記実施形態では、チューブの下方に設けた断線検出センサにより、チューブの窓を通して素線ボビンとともに回転する反射板からの反射パルスを検出するため、チューブの外周部の外表面を黒色コーティングし、断線検出センサは、反射板からの反射をチューブの窓以外の部分が遮蔽することによって生ずる疑似反射パルスをマスクするため、チューブの回転による窓の通過周期に対応する短時間パルスをマスクするオフディレイタイマを設定するものとして説明したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、例えば、チューブの回転角度信号に基づいてチューブの窓以外の信号成分をマスクするマスク信号を生成し、生成されたマスク信号により断線検出センサからの信号をマスクようにしてもよい。この場合には、チューブの外周面の窓以外の部分からの反射による外乱の影響は受けなくなるので、チューブの外周部の外表面のク黒色コーティングを省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上述べたように、本願発明によれば、チューブの回転軸を軸承する軸受として磁気軸受を用い、チューブの回転軸を回転駆動する駆動装置としてチューブの回転軸を非接触で駆動するビルトインモータを用い、チューブの同一回転軸上にビルトインモータと磁気軸受を配備するようにしたので、簡易な動バランスの調整を行うだけで運転中のチューブの振動が大幅に低減され、振動に起因する断線を防止して極細線ケーブルへの適用を可能とするとともに、高速・低騒音・低消費電力・高稼働率のチューブラー型撚線機を提供することができる。
【0071】
本願発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を奏する限り、各実施形態で述べた構成要素を適宜入れ替えたり、新たな構成要素を追加したり、一部の構成要素を削除したりしてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0072】
100 本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機
1 本体架台
2 本体カバー
3 開閉機構
4 下部チューブカバー
5 上部チューブカバー
10 チューブ
12a 前部チューブロータ軸
12b 後部チューブロータ軸
14 窓
16 開口部
18 挿通穴
19 素線ガイドパイプ固定ネジ
20 素線ボビン
22 素線ガイドパイプ
30 クレードル
31 クレードル筐体
32 前方回転軸
33 前方軸受
34 後方回転軸
35 後方軸受
36 ボビン支持軸受
37 下部ボビン支持部材
38 下部ボビンガイド部
39 上部ボビン支持部材
40 上部ボビンガイド部
41 バネ
42 セットカラー
43 ロック機構
44 ボビン支持軸歯車
45 トルク調整器歯車
46 トルク調整器
47 トルク調節ネジ
48 反射板
49 断線検出センサ
50 集合ダイス
60 引取装置
62 引取駆動モータ(エンコーダ付)
63 駆動側キャプスタン
64 従動側キャプスタン
65 回転ホイール
66 回転軸受
67 回転検出センサ
68 導通検出センサ
70a 前部ラジアル磁気軸受
72a 前部ラジアルステータ
72a 前部ラジアル電磁石
74a 前部ラジアル変位センサ
76a 前部ラジアルタッチダウン軸受
77a センサハウジング
78a タッチダウン軸受ハウジング
79a 小径転がり軸受
70b 後部ラジアル磁気軸受
72b 後部ラジアルステータ
73b 後部ラジアル電磁石
74b 後部ラジアル変位センサ
76b 後部ラジアルタッチダウン軸受
70c アキシャル磁気軸受
71c アキシャルディスク
72c アキシャルステータ
73c アキシャル電磁石
74c アキシャル変位センサ
75c 回転検出センサ
76c アキシャルタッチダウン軸受
80 ビルトインモータ
82 ステータハウジング
84 主軸ユニット
86 エンコーダ
90 ブレーキ
92 ブレーキディスク
94 空圧キャリパ
96 ソレノイドバルブ
200 本願発明の一実施形態にかかる磁気軸受式チューブラー型撚線機の制御システム
210 磁気軸受コントローラ
220 ビルトインモータインバータ
230 引取装置サーボコントローラ
240 プログラマブルコントローラ
250 タッチパネル
260 操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向がほぼ水平に載置され、前記長手方向の回転軸の廻りに回転駆動される筒状のチューブと、
前記チューブ内に装着され、撚り合わされる素線が巻き取られた複数の素線ボビンと、
前記複数の素線ボビンの各々を、巻き取られた素線を引き出し可能に、前記チューブ内の長手方向に配列して固定する素線ボビン固定機構であって、前記チューブの回転に伴って前記素線ボビン固定機構が回転しないように前記チューブの回転軸に軸承される軸受をそれぞれ有する複数のクレードルと、
前記各クレードルに固定された各素線ボビンから引き出され、前記チューブの外周部を介して前記チューブの長手方向の一端側に導かれた各素線を集合する集合ダイスと、
前記チューブの回転によって前記集合ダイスに集合された各素線が撚り合わされて形成された撚線を引き取る引取装置とを備えたチューブラー型撚線機であって、
前記チューブの回転軸の両端側において回転軸の径方向を軸承するラジアル軸受として、前記チューブの回転軸の径方向の周囲に配備された複数のラジアル電磁石と、前記チューブの回転軸の少なくとも2つの径方向の変位量を検出するラジアル変位センサを有し、前記ラジアル変位センサにより検出されたチューブの回転軸の径方向の変位量に基づいて前記複数のラジアル電磁石を励磁し、前記チューブの回転軸の径方向の位置を所定の回転中心に位置決めするラジアル磁気軸受を用い、
前記チューブの回転軸を回転駆動する駆動装置として、前記チューブの回転軸を非接触で回転駆動するビルトインモータを用い、
前記チューブの同一回転軸に対して、非接触で回転駆動するビルトインモータと非接触で軸承するラジアル磁気軸受を配備することによって前記チューブの回転中の機械振動を低減させたことを特徴とする、磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項2】
前記チューブの回転軸の軸方向を軸承するアキシャル軸受として、前記チューブの回転軸の一端側に固定され、径方向に円盤状に形成されたアキシャルディスクと、前記アキシャルディスクの径方向周辺部において軸方向の両側に配備された少なくとも一対のアキシャル電磁石と、前記アキシャルディスクの軸方向の変位を検出するアキシャル変位センサを有し、前記アキシャル変位センサにより検出されたチューブの回転軸の軸方向の変位量に基づいて前記アキシャル電磁石を励磁し、前記チューブの回転軸を軸方向の位置を所定位置に位置決めするアキシャル磁気軸受を用いたことを特徴とする、請求項1に記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項3】
前記クレードルは、前記素線ボビンの装着穴を上方から挿入し、前記素線ボビンを軸廻りに所定のトルクで回転可能に支持する下部ボビン支持部材であって、上方に向かってテーパ加工された下部ボビンガイド部を備えた下部ボビン支持部材と、前記素線ボビンを前記下部ボビン支持部材に挿入した後に、前記素線ボビンの装着穴の上方より挿入して前記下部ボビン支持部材に嵌合させて前記素線ボビンを固定する上部ボビン支持部材であって、下方に向かってテーパ加工された上部ボビンガイド部を備えた上部ボビン支持部材と、前記上部ボビン支持部材を下方に押し下げる付勢手段と、前記付勢手段により前記上部ボビン支持部材を押し下げた後に前記付勢手段を前記下部支持部材に固定するロック手段とを有し、前記素線ボビンを前記クレードルにワンタッチで精度よく心出しして装着できるようにしたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項4】
前記クレードルは、装着された素線ボビンとともに回転する反射板であって、回転方向に光ビームを反射する部分と反射しない部分とを含む反射板を有し、
前記反射板に対して光ビームを照射し、前記反射板からの反射パルスを検出することによって素線ボビンの回転を検出し、前記反射パルスが検出されないときに素線切れが発生したと判断する断線検出センサを前記チューブ周辺の前記各クレードルの前記反射板に対応する位置に備え、前記チューブの外周肉厚部の各クレードルの素線ボビンに対応して設けられた窓を通して前記反射板からの反射パルスを検出するものであって、
前記チューブの外周部の外表面を黒色コーティングし、
前記断線検出センサは、前記反射板からの反射光を前記チューブの窓以外の部分が遮蔽することによって生ずる疑似反射パルスをマスクするマスク手段を備えたことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項5】
前記引取装置は、駆動モータにより回転駆動される駆動側キャプスタンと、自由回転する従動側キャプスタンとを有し、前記集合ダイスから引き出された撚線を、前記従動側キャプスタンと前記駆動側キャプスタンの間で複数回周回させて引き取るものであって、
前記従動側キャプスタンは、前記撚線の周回ターン毎にそれぞれ独立の回転ホイールを備え、前記各回転ホイールにはそれぞれ独立の回転軸受を備えたことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項6】
前記引取装置は、前記駆動側キャプスタンの回転速度を、指定された回転数指令に常時追従させるように前記駆動モータを制御するサーボ手段を有し、
前記チューブの回転開始から回転終了までの全期間に亘って、前記チューブの回転速度を回転速度検出手段により常時検出し、前記回転速度検出手段により検出された前記チューブの回転速度と一定の比率となる駆動側キャプスタンの回転数指令を常時演算し、前記演算された駆動側キャプスタンの回転数指令を前記サーボ手段に随時提供する制御手段を備えたことを特徴とする、請求項5に記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項7】
前記各クレードルの各素線ボビンから引き出され、前記チューブの外周部を介して前記集合ダイスまで導かれる各素線は、前記各クレードルの素線引出部から前記集合ダイスの近傍に至るまで、素線をガイドする素線ガイドパイプ内を通過させるようにしたものであって、
前記前記チューブの外周肉厚部には、前記素線ガイドパイプを挿通させる挿通穴を有し、前記素線ガイドパイプのうち前記チューブの外周部を長手方向に素線を導く素線ガイドパイプは、前記挿通穴に対して着脱自在および/または回転可能に装着されたことを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項8】
前記チューブは、総削りにより外周表面に突起を有しないように形成したことを特徴とする、請求項7に記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項9】
開閉機構を有し、前記チューブを収容する本体カバーを備え、
前記本体カバーは、前記チューブの下部外周面に対して断面が前記チューブと略同心円となる半割れの下部チューブカバーを備え、前記開閉機構は、前記チューブの上部外周面に対して断面が前記チューブと略同心円となる半割れの上部チューブカバーを備え、前記開閉機構を閉止したときに、前記下部チューブカバーと前記上部チューブカバーとが密接し、前記下部チューブカバーと前記上部チューブカバーとにより形成される断面が前記チューブと略同心円の円筒状カバーによって前記チューブの外周面が覆われるようにしたことを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。
【請求項10】
前記ラジアル磁気軸受は、制御異常が発生した際に前記チューブの回転軸の径方向を軸承するタッチダウン軸受を備え、
前記タッチダウン軸受は、前記チューブの回転軸の径方向の周囲に小径の複数の転がり軸受を配備したことを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の磁気軸受式チューブラー型撚線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−132122(P2012−132122A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285676(P2010−285676)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(510337746)株式会社HCI (1)
【Fターム(参考)】