磁石装置および磁気共鳴撮像装置
【課題】部品点数および製作工数の増加が少なく、樹脂割れに起因する常電導転移を防止することができ、かつ、外部磁場の遮蔽効果を有する磁石装置を提供する。
【解決手段】同軸状に配置された複数のコイルに所定の電流を流し、その複数のコイルの内径側の所定の空間に均一磁場を発生する磁気共鳴撮像装置の磁石装置において、そのコイルの少なくとも1つについては、前記均一磁場を発生するための電流を流す第1の線材21と、その第1の線材21と絶縁された第2の線材22とを、同じコイルボビン8(または11)に巻回して構成する。そして、第2の線材22のコイルを直列に接続し、外部磁場によってその第2の線材22のコイルに生じる誘導電流を同じ方向に流すことが可能な閉ループ回路を構成するようにした。また、線径が小さい第2の線材22を第1の線材の隙間に巻回するようにした。
【解決手段】同軸状に配置された複数のコイルに所定の電流を流し、その複数のコイルの内径側の所定の空間に均一磁場を発生する磁気共鳴撮像装置の磁石装置において、そのコイルの少なくとも1つについては、前記均一磁場を発生するための電流を流す第1の線材21と、その第1の線材21と絶縁された第2の線材22とを、同じコイルボビン8(または11)に巻回して構成する。そして、第2の線材22のコイルを直列に接続し、外部磁場によってその第2の線材22のコイルに生じる誘導電流を同じ方向に流すことが可能な閉ループ回路を構成するようにした。また、線径が小さい第2の線材22を第1の線材の隙間に巻回するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像装置の均一磁場発生に好適な磁石装置およびその磁石装置を用いた磁気共鳴撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像装置(Magnetic Resonance Imaging)は、均一な静磁場空間に搬入された被検体(検査体)に対して高周波パルスを照射し、そのときに生じる核磁気共鳴現象を利用して、被検体の物理的・化学的性質を表す画像を取得する装置であり、主として、医療分野に用いられている。その磁気共鳴撮像装置は、通常、被検体が搬入された撮像領域に均一な静磁場を発生するための磁石装置と、その撮像領域に向けて高周波パルスを照射するためのRF(Radio Frequency)コイルと、撮像領域からの応答を受信するための受信コイルと、撮像領域に共鳴現象の位置情報を与える傾斜磁場を印加するための傾斜磁場コイルと、を備えて構成される。
【0003】
ところで、このような磁気共鳴撮像装置の近傍に、その磁石装置とは異なる他の磁場発生源が出現すると、その磁場発生源が発生する磁場は、外部磁場として磁気共鳴撮像装置の磁石装置が発生する均一磁場空間に侵入し、その磁場強度や磁場均一性を乱す。従って、磁気共鳴撮像装置の磁石装置の性能を向上させるためには、外部磁場の影響を抑制しなければならない。
【0004】
一般に、磁気共鳴撮像装置に用いられる磁石装置のうち、特に、磁場発生源に超電導コイルを用いた超電導電磁石の場合には、超電導コイルの磁束保存の性質により、外部磁場は、均一磁場空間に侵入できないとされている。しかしながら、近年の磁気共鳴撮像装置用の超電導磁石装置では、均一磁場と逆向きの磁場を発生する超電導コイル(シールドコイル)を設けることによって、漏洩磁場を抑制する自己シールド構造が採用されている。このような構成の磁石装置の場合、外部磁場は、超電導コイルと結合せず、均一磁場空間に容易に侵入する。
【0005】
そこで、このような自己シールド構造が採用された磁気共鳴撮像装置において、均一磁場空間への外部磁場の侵入を防ぐために、すでに、様々な解決方法が示されている。
【0006】
特許文献1および特許文献2には、均一磁場と同方向の磁場を発生するコイルと、均一磁場と逆方向の磁場を発生するコイルとの間をブリッジ線によって短絡し、外部磁場と超電導コイルとの結合を確保する方法が開示され、さらに、そのブリッジ線をコイル巻線の途中から引き出して短絡したときの外部磁場抑制性能を最適化する方法が開示されている。しかしながら、特に、超電導コイルの場合には、そのコイルの途中からブリッジ線を引き出すのが磁石製作上容易ではないという問題がある。
【0007】
そこで、ブリッジ線の引き出しを不要にする方法として、特許文献3には、均一磁場発生源としての超電導コイル系(以下、主コイル系という)とは別のコイル系(以下、副コイル系という)をソレノイド状のコイルとして磁石装置に内蔵することによって、外部磁場を抑制する方法が開示されている。また、特許文献4には、円筒状の副コイル系を主コイル系と同心状に配置し、永久電流スイッチを主コイル系と共有させた構成にすることによって、外部磁場を抑制する方法が開示されている。しかしながら、このようにソレノイド状の副コイル系を内蔵した場合には、磁石装置の軸長が長くなってしまうため、装置が大型化し易いという問題がある。
【0008】
そこで、さらに、その問題解決のために、特許文献5には、主コイル系の近傍に少数ターンの副コイル系を配置し、その副コイル系のコイルを直列に接続して、外部磁場による誘導電流がすべて同じ向きの磁場を発生するようにし、その磁場によって外部磁場を遮蔽する例が示されている。また、特許文献6には、コイル径の異なる複数の副コイルを内蔵する例が示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3ないし特許文献6に開示されている磁石装置の構成は、いずれも、主コイル系のコイルボビンとは異なるコイルボビンを必要とする。従って、これらの従来技術においては、余分に必要となるコイルボビンに係る製作工数や部品点数が増加し、その結果、磁石装置全体のコストが増大するという問題がある。
【0010】
さらに、従来の超電導コイルを用いた超電導電磁石には、以上に示した問題とは異なる観点での問題が存在する。
【0011】
超電導電磁石の超電導コイルは、自らに通電されることによって発生する強大な電磁力を受け、そのコイルを構成する線材が変位する。その線材の変位に際して摩擦熱が生じるため、その摩擦熱によって線材の温度が上昇し、超電導状態が破れて常電導となることがある。常電導部が発生すると、コイルの電流がその抵抗によってジュール熱を発生しながら急激に減衰し、そのコイルは、超電導コイルとしての用をなさなくなる。
【0012】
そこで、この常電導転移の原因となる線材の変位を防ぐために、コイル全体を樹脂に含浸させ、その樹脂を硬化させて線材を固定する対策が採られることがある。しかし、硬化した樹脂は、強大な電磁力による応力が集中した場合には、割れることがあり、その樹脂割れによって生じる熱エネルギーが前記同様の超電導コイルにおける常電導転移を引き起こすことがある。そこで、その樹脂割れを防ぐために、超電導コイル巻線の隙間に繊維状の詰め物を入れるなどの対策が施されることもある。
【特許文献1】特開平7−5235号公報
【特許文献2】特許第3447090号公報
【特許文献3】米国特許4931735号明細書
【特許文献4】特開2001−196219号公報
【特許文献5】米国特許5329266号明細書
【特許文献6】特許第3043494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1または特許文献2に開示された超電導電磁石においては、その製作が容易でないという問題があり、特許文献3ないし特許文献6に開示された超電導電磁石においては、製作工数および部品点数の増加のために、製作コストが増大するという問題がある。また、樹脂割れを防止するために超電導コイル巻線の隙間に繊維状の詰め物を入れる対策も、部品点数の増大や工数増大を招くという問題を含んでいる。
【0014】
以上のような従来技術の問題点に鑑み、本発明の課題は、第1に、部品点数や製作工数の増大を抑えることが可能な、外部磁場の遮蔽効果を有する副コイル系を備えた磁石装置を提供することにあり、また、第2に、そのような磁石装置のコイルに含まれる含浸樹脂の樹脂割れに起因する常電導転移を防止した磁石装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、同軸状に配置された複数のコイルに所定の電流を流し、その複数のコイルの内径側の所定の空間領域に磁場強度が一様となる均一磁場を発生する磁石装置において、前記コイルの少なくとも1つは、前記均一磁場を発生するために所定の電流を流す第1の線材と、前記第1の線材に絶縁された第2の線材とが、同じボビンにそれぞれ巻回されて構成され、前記第2の線材は、前記均一磁場に対して外乱となる外部磁場によってその第2の線材のコイルに生じる誘導電流を流すことが可能な閉ループ回路を構成することを特徴とする磁石装置である。
【0016】
このように構成した第2の線材のコイルを含んだ閉ループ回路には、均一磁場に対して外乱となる外部磁場によってそのコイルに生じる誘導電流が流れ、その誘導電流によって発生する誘導磁場は、外部磁場を打ち消すように作用するので、外部磁場の均一磁場空間への侵入が抑制される。また、そのコイルを構成する第2の線材は、均一磁場を発生するために所定の電流を流す第1の線材と同じボビンに巻回される。従って、外部磁場の侵入を抑制するためのコイルを設けるために、新たなボビンを設ける必要がないので、部品点数や製作工数の増大を最小限に留めることができる。
【0017】
また、本発明の一態様として、前記の磁石装置において、前記第1の線材よりも細い径の前記第2の線材を、前記第1の線材を巻回したときに生じる隙間を埋めるように巻回する。
【0018】
この場合には、そのコイルに樹脂を含浸させて線材を固定したとき、第1の線材の隙間が第2の線材によって埋められているので、含浸される樹脂の領域(体積)を減らすことができる。従って、他に繊維状の詰め物を要することなく、その樹脂割れ、さらには、その樹脂割れに起因する常電導転移を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外部磁場の遮蔽効果を有する副コイル系を備えた磁石装置において、部品点数や製作工数の増大を最小限に留めることができ、また、その磁石装置を構成するコイルに含まれる含浸樹脂の樹脂割れ、および、その樹脂割れに起因する常電導転移を防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置の連結柱を含む部分(A−A矢視部)の磁石装置の縦断面図である。
【0022】
図1に示すように、磁気共鳴撮像装置の磁石装置は、均一磁場空間3に所定の均一磁場を発生するための1対の磁極1,2が連結柱4,5を介して対向するように配置されて、構成される。ここで、磁極1,2および連結柱4,5は、真空容器をなし、その内部には輻射シールド6が設けられ、さらに、その内側に冷媒槽7が格納されている。そして、その冷媒槽7には、液体ヘリウムなどの冷媒とともに、前記均一磁場を発生するための主コイル9と、その均一磁場の漏洩を防ぐためのシールドコイル11とが格納されている。従って、冷媒槽7は、コイル容器を兼ねていることになる。また、主コイル9とシールドコイル11とには、互いに強い反発力が生じるので、そのそれぞれは、主コイルボビン8とシールドコイルボビン10とに固定されるように収納されている。
【0023】
なお、主コイル9およびシールドコイル11を構成する線材の材料としては、通常、ニオブ・チタン(NbTi)、ニオブ・スズ(Nb3Sn)などの超電導物質が用いられている。また、真空容器(磁極1,2、連結柱4,5)、コイル容器(冷媒槽7)、主コイルボビン8、シールドコイルボビン10などの構造支持部材は、通常、非磁性ステンレス鋼などで構成されるが、非磁性で、所定以上の強度を有する材料であれば、どのような材料で構成されてもよい。また、輻射シールド6は、通常、アルミ(Al)などで構成されるが、銅(Cu)など、非磁性で高い熱伝導率を有する材料であれば、どのような材料で構成されてもよい。
【0024】
以上のように構成された磁石装置において、外部磁場13は、例えば、図示するように磁石の上方から下方へ向かって均一磁場空間3へ侵入したり、図示しないが、下方から上方へ向かって均一磁場空間3へ侵入したりして、均一磁場空間3の磁場を変動させる。
【0025】
図2は、図1(b)の磁石装置の縦断面図において、磁極の上部右側部分を拡大した図である。
【0026】
図2に示すように、主コイル9は、均一磁場空間3の主磁場を発生するために配置され、シールドコイル11は、主磁場の外部への漏洩を防ぐために、主磁場と逆向きの磁場を発生するために配置されたコイルである。このとき、主コイル9およびシールドコイル11は、均一磁場空間3に一様な強磁場を発生し、かつ、磁石装置の外部に磁場が漏洩する範囲をなるべく小さくするような位置関係に配置される。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【0028】
図3に示すように、主コイルボビン8には、均一磁場空間3に一様な強磁場を発生するために所定の電流を流す第1の線材21と、均一磁場空間3に侵入する外部磁場13によって発生する誘導電流を流すことが可能な第2の線材22とが巻回されている。このとき、それぞれの線材21,22は、円形断面(丸線)であり、互いに電気的に絶縁されている。また、第2の線材22の線径は、第1の線材21の線径よりも小さい。
【0029】
また、第1の線材21と第2の線材22とは、互いに隣り合わせで沿うようにして同じ主コイルボビン8に巻回(共巻き)されている。その際、第1の線材21は、互いにその断面が、いわゆる、俵積みとなるように巻回される。第1の線材21を俵積みに巻回した場合には、丸線の線材を最も密度高く巻回することができる。一方、第2の線材22は、第1の線材21が俵積みにされた隙間に配置されるように巻回される。従って、第2の線材22の線径は、第1の線材21が俵積みされた隙間に配置可能な線径よりも小さいとする。
【0030】
ちなみに、第1の線材21が俵積みされたときには、その線径をrとしたとき、第2の線材22の線径が、(2/√3−1)r=0.154r よりも小さいときには、第2の線材22は、第1の線材21が俵積みされた隙間に配置可能である。
【0031】
以上のようにして構成された主コイル9には、さらに、樹脂が含浸され、硬化されて、巻回された線材が互いに固定される。
【0032】
このように、本実施形態においては、第2の線材22を第1の線材21の巻線の隙間に配置するので、含浸する樹脂の体積を小さくすることができるとともに、第2の線材22が樹脂の支持体として機能する。そのため、第1の線材21に所定の電流を流し、第1の線材21が大きな電磁力を受けても、樹脂割れが生じる危険性を低く抑えることが可能となる。つまり、第1の線材21における常伝導転移の危険性が低下する。
【0033】
また、本実施形態においては、シールドコイル11についても、図3に示したコイルと同様に、第1の線材21と第2の線材22とを同じシールドコイルボビン10に共巻きしてもよい。
【0034】
なお、以下の説明においては、シールドコイル11についても第1の線材21と第2の線材22とが共巻きされているものとして説明を行う。そして、主コイル9およびシールドコイル11に含まれる第1の線材21で構成されたコイルを「主コイル系」と呼び、主コイル9およびシールドコイル11に含まれる第2の線材22で構成されたコイルを「副コイル系」と呼ぶ。
【0035】
図4は、本発明の第1の実施形態において主コイルおよびシールドコイルに含まれる第1の線材で構成された主コイル系のコイルを結線する回路図の例を示した図である。
【0036】
図4に示すように、第1の線材21は、上側の磁極1のシールドコイル11および主コイル9から下側の磁極2の主コイル9およびシールドコイル11を通して、すべて、直列に結線され、均一磁場空間3の主磁場を発生する電流を流すための閉ループ回路を構成している。この閉ループ回路は、それを構成するコイルが超電導コイルである場合、しばしば、永久電流回路と呼ばれる。
【0037】
本実施形態において、その永久電流回路は、通常、その永久電流回路を流れる電流を断続するための第1の永久電流スイッチ23と、その永久電流回路を構成するコイルが常電導転移したときにその永久電流回路を保護するための保護回路と、を含んで構成される。このとき、その保護回路は、例えば図4に示すように、所定の整流機能を有するダイオード24を、第1の永久電流スイッチ23の両端に並列接続することによって構成される。
【0038】
また、本実施形態においては、主コイル9およびシールドコイル11のそれぞれを構成する第1の線材21は、上側の磁極1および下側の磁極2のいずれにおいても、互いに逆向きの電流が流れるように結線される。その場合には、外部磁場13が均一磁場空間3へ侵入するとき、外部磁場13は、主コイル9に鎖交する磁束とシールドコイル11に鎖交する磁束とが互いに打ち消し合うため、主コイル系全体に対してほとんど鎖交しないことになる。すなわち、主コイル9およびシールドコイル11に巻回された第1の線材21については、外部磁場13の侵入に際して、その磁束保存効果がほとんど機能せず、その結果、外部磁場13は均一磁場空間3を乱すことになる。
【0039】
図5は、本発明の第1の実施形態において主コイルおよびシールドコイルに含まれる第2の線材で構成された副コイル系のコイルを結線する回路図の例を示した図である。
【0040】
図5に示すように、第2の線材22は、上側の磁極1のシールドコイル11および主コイル9から下側の磁極2の主コイル9およびシールドコイル11を通して、すべて、直列に結線され、閉ループ回路、つまり、本実施形態では永久電流回路を構成している。その永久電流回路は、さらに、その永久電流回路を流れる電流を断続するための第2の永久電流スイッチ25と、副コイル系のコイルが常電導転移したときにその永久電流回路を保護するための保護回路と、を含んで構成される。このとき、その保護回路は、例えば、図5に示すように、第2の永久電流スイッチ25の両端に保護抵抗26を並列接続することによって構成される。
【0041】
また、本実施形態においては、主コイル9およびシールドコイル11のそれぞれを構成する第2の線材22は、上側の磁極1および下側の磁極2のいずれにおいても、同じ向きの電流が流れるように結線される。その場合には、外部磁場13が均一磁場空間3へ侵入するとき、外部磁場13は、主コイル9に鎖交する磁束とシールドコイル11に鎖交する磁束とが加算される。そのため、主コイル9、シールドコイル11に巻回された第2の線材22は、外部磁場13の侵入に際しては、その磁束保存効果によって誘導される電流により、外部磁場13とは逆向きの磁場を発生する。従って、侵入する外部磁場13は、その逆向きの磁場によって打ち消されるので、均一磁場空間3への侵入が抑制される。
【0042】
一般に、外部磁場13は、第1の線材21で構成された主コイル系によって発生される均一磁場空間3の磁場強度に比べて微小である。従って、外部磁場13の侵入に伴い第2の線材22に誘導される電流は微小である。また、第2の線材22で構成された副コイル系のコイルの結線と、第1の線材21で構成された主コイル系のコイルの結線とは、それぞれ、異なっている。ちなみに、図4と図5とを比較すると、シールドコイル11に対しては、それぞれ電流が逆向きに流れるように結線されるため、第1の線材21と第2の線材22との磁気的な結合は打ち消し合うことになる。従って、例えば、第1の線材21が常電導転移し、その電流が急激に減少したとしても、第2の線材22が構成する永久電流回路に誘導される電流は微小である。
【0043】
以上の理由により、図5に示した第2の線材22が構成する永久電流回路に設置される第2の永久電流スイッチ25や、保護抵抗26は、大電流を想定する必要がなく、第1の線材21が構成する永久電流回路に用いる第1の永久電流スイッチ23などに比較して安価な構成とすることができる。なお、保護回路は、ダイオード24や保護抵抗26に限定する必要はなく、コイル系や永久電流スイッチを保護するバイパス回路であれば何を用いてもよい。
【0044】
以上、第1の実施形態によれば、第1の線材21を巻回した主コイルボビン8およびシールドコイルボビン10に第2の線材22を共巻きにし、また、第2の線材22は、第1の線材21の隙間に巻回する。また、第2の線材による副コイル系のコイルは、そのすべてに、同じ向きの電流が流れるように結線して、永久電流回路を構成する。従って、第2の線材による副コイル系によって、外部磁場13の侵入を抑制することができるようになる。そして、その副コイル系を構成するために新たなボビンを必要とすることもない。さらには、第1の線材21の隙間に、第2の線材22を詰め込んでいるので、新たな詰め物を必要とせずに、コイルに含浸された樹脂の樹脂割れ、つまり、その樹脂割れに起因する常電導転移を防止することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【0046】
本実施形態においては、図6に示すように、第2の線材22を単に第1の線材21と共巻きするにとどまらず、第1の線材21と主コイルボビン8(または、シールドコイルボビン10)との間に生じる大きな隙間にも、可能な範囲内で第2の線材22を巻回する。また、本実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、以下、説明を省略する。
【0047】
本実施形態によれば、第1の実施形態の場合に比べて、含浸される樹脂の体積をさらに減ずることができるので、樹脂割れおよびその樹脂割れに起因する常電導転移の可能性をさらに低減することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【0049】
本実施形態においては、図7に示すように、第2の線材22を第1の線材21と共巻きすることはせずに、第1の線材21と主コイルボビン8(または、シールドコイルボビン10)との間に生じる大きな隙間に可能な範囲内で第2の線材22を巻回する。また、本実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、以下、説明を省略する。
【0050】
本実施形態によれば、第2の線材22で構成される副コイル系によって、外部磁場13の侵入を抑制することができ、また、含浸される樹脂の体積を減ずることができるので、樹脂割れおよびその樹脂割れに起因する常電導転移の可能性を低減することができる。
【0051】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【0052】
本実施形態においては、図8に示すように、第2の線材22として、第1の線材21と同じ線径の線材を使用し、第1の線材21と第2の線材22とを主コイルボビン8(または、シールドコイルボビン10)に共巻きする。また、本実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、以下、説明を省略する。
【0053】
以上のように構成した主コイル9(または、シールドコイル11)は、発生すべき均一磁場空間3の磁場強度が小さく、また、含浸した樹脂の樹脂割れが生じる恐れが小さい場合に適用される。その場合には、第1の線材21の隙間に第2の線材22を配置して巻回しなくても、その隙間に含浸した樹脂の樹脂割れが生じる恐れが小さい。代わって、第1の線材21と第2の線材22とを同じ線材で構成することができるので、用意すべき部品数が少なくてすむようになり、製作に要するコストを低減させることができる。
【0054】
(第5の実施形態)
図9は、本発明の第5の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置のB−B矢視部における磁石装置の縦断面図である。
【0055】
図9に示すように、磁気共鳴撮像装置の磁石装置は、均一磁場空間3の磁場を発生するために、水平方向の軸に対して同軸円状に巻回された主コイル30およびシールドコイル31によって構成される。これらの主コイル30およびシールドコイル31は、冷媒槽37の内部に格納され、冷媒槽37は、輻射シールド36の内部に、さらには、輻射シールド36は、真空容器35の内部に配置されている。
【0056】
また、磁石装置の他の構成、例えば、主コイル30およびシールドコイル31をそれぞれ、第1の線材と第2の線材とで構成することなどについては、前記第1の実施形態ないし第4の実施形態と同じであるとする。そうした場合、本実施形態と前記第1の実施形態ないし第4の実施形態との相違は、本実施形態の場合には、外部磁場13が水平方向から侵入するのに対し、前記第1の実施形態ないし第4の実施形態の場合には、外部磁場13が上下方向から侵入する程度の差でしかない。
【0057】
従って、本実施形態においても、第2の線材による副コイル系によって、外部磁場13の侵入を抑制することができ、さらに、前記第1の実施形態ないし第4の実施形態と同様の効果を期待することができる。
【0058】
(第6の実施形態)
図10は、本発明の第6の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置のC−C矢視部における磁石装置の縦断面図である。
【0059】
本実施形態は、第5の実施形態を一部変形した実施形態であり、第5の実施形態では、主コイル30およびシールドコイル31は同軸円状に巻回されて構成されるのに対し、本実施形態では、主コイル30およびシールドコイル31は同軸長円状に巻回されて構成される。従って、第6の実施形態の効果は、第5の実施形態の効果とほぼ同じである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置の連結柱を含む部分(A−A矢視部)の磁石装置の縦断面図である。
【図2】図1(b)の磁石装置の縦断面図において、磁極の上部右側部分を拡大した図である。
【図3】本発明の第1の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施形態において主コイルおよびシールドコイルに含まれる第1の線材で構成された主コイル系のコイルを結線する回路図の例を示した図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において主コイルおよびシールドコイルに含まれる第2の線材で構成された副コイル系のコイルを結線する回路図の例を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【図7】本発明の第3の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【図8】本発明の第4の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置のB−B矢視部における磁石装置の縦断面図である。
【図10】本発明の第6の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置のC−C矢視部における磁石装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1,2 磁極
3 均一磁場空間
4,5 連結柱
6,36 輻射シールド
7,37 冷媒槽
8 主コイルボビン
9,30 主コイル
10 シールドコイルボビン
11,31 シールドコイル
13 外部磁場
21 第1の線材
22 第2の線材
23 永久電流スイッチ
24 ダイオード
25 永久電流スイッチ
26 保護抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像装置の均一磁場発生に好適な磁石装置およびその磁石装置を用いた磁気共鳴撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像装置(Magnetic Resonance Imaging)は、均一な静磁場空間に搬入された被検体(検査体)に対して高周波パルスを照射し、そのときに生じる核磁気共鳴現象を利用して、被検体の物理的・化学的性質を表す画像を取得する装置であり、主として、医療分野に用いられている。その磁気共鳴撮像装置は、通常、被検体が搬入された撮像領域に均一な静磁場を発生するための磁石装置と、その撮像領域に向けて高周波パルスを照射するためのRF(Radio Frequency)コイルと、撮像領域からの応答を受信するための受信コイルと、撮像領域に共鳴現象の位置情報を与える傾斜磁場を印加するための傾斜磁場コイルと、を備えて構成される。
【0003】
ところで、このような磁気共鳴撮像装置の近傍に、その磁石装置とは異なる他の磁場発生源が出現すると、その磁場発生源が発生する磁場は、外部磁場として磁気共鳴撮像装置の磁石装置が発生する均一磁場空間に侵入し、その磁場強度や磁場均一性を乱す。従って、磁気共鳴撮像装置の磁石装置の性能を向上させるためには、外部磁場の影響を抑制しなければならない。
【0004】
一般に、磁気共鳴撮像装置に用いられる磁石装置のうち、特に、磁場発生源に超電導コイルを用いた超電導電磁石の場合には、超電導コイルの磁束保存の性質により、外部磁場は、均一磁場空間に侵入できないとされている。しかしながら、近年の磁気共鳴撮像装置用の超電導磁石装置では、均一磁場と逆向きの磁場を発生する超電導コイル(シールドコイル)を設けることによって、漏洩磁場を抑制する自己シールド構造が採用されている。このような構成の磁石装置の場合、外部磁場は、超電導コイルと結合せず、均一磁場空間に容易に侵入する。
【0005】
そこで、このような自己シールド構造が採用された磁気共鳴撮像装置において、均一磁場空間への外部磁場の侵入を防ぐために、すでに、様々な解決方法が示されている。
【0006】
特許文献1および特許文献2には、均一磁場と同方向の磁場を発生するコイルと、均一磁場と逆方向の磁場を発生するコイルとの間をブリッジ線によって短絡し、外部磁場と超電導コイルとの結合を確保する方法が開示され、さらに、そのブリッジ線をコイル巻線の途中から引き出して短絡したときの外部磁場抑制性能を最適化する方法が開示されている。しかしながら、特に、超電導コイルの場合には、そのコイルの途中からブリッジ線を引き出すのが磁石製作上容易ではないという問題がある。
【0007】
そこで、ブリッジ線の引き出しを不要にする方法として、特許文献3には、均一磁場発生源としての超電導コイル系(以下、主コイル系という)とは別のコイル系(以下、副コイル系という)をソレノイド状のコイルとして磁石装置に内蔵することによって、外部磁場を抑制する方法が開示されている。また、特許文献4には、円筒状の副コイル系を主コイル系と同心状に配置し、永久電流スイッチを主コイル系と共有させた構成にすることによって、外部磁場を抑制する方法が開示されている。しかしながら、このようにソレノイド状の副コイル系を内蔵した場合には、磁石装置の軸長が長くなってしまうため、装置が大型化し易いという問題がある。
【0008】
そこで、さらに、その問題解決のために、特許文献5には、主コイル系の近傍に少数ターンの副コイル系を配置し、その副コイル系のコイルを直列に接続して、外部磁場による誘導電流がすべて同じ向きの磁場を発生するようにし、その磁場によって外部磁場を遮蔽する例が示されている。また、特許文献6には、コイル径の異なる複数の副コイルを内蔵する例が示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3ないし特許文献6に開示されている磁石装置の構成は、いずれも、主コイル系のコイルボビンとは異なるコイルボビンを必要とする。従って、これらの従来技術においては、余分に必要となるコイルボビンに係る製作工数や部品点数が増加し、その結果、磁石装置全体のコストが増大するという問題がある。
【0010】
さらに、従来の超電導コイルを用いた超電導電磁石には、以上に示した問題とは異なる観点での問題が存在する。
【0011】
超電導電磁石の超電導コイルは、自らに通電されることによって発生する強大な電磁力を受け、そのコイルを構成する線材が変位する。その線材の変位に際して摩擦熱が生じるため、その摩擦熱によって線材の温度が上昇し、超電導状態が破れて常電導となることがある。常電導部が発生すると、コイルの電流がその抵抗によってジュール熱を発生しながら急激に減衰し、そのコイルは、超電導コイルとしての用をなさなくなる。
【0012】
そこで、この常電導転移の原因となる線材の変位を防ぐために、コイル全体を樹脂に含浸させ、その樹脂を硬化させて線材を固定する対策が採られることがある。しかし、硬化した樹脂は、強大な電磁力による応力が集中した場合には、割れることがあり、その樹脂割れによって生じる熱エネルギーが前記同様の超電導コイルにおける常電導転移を引き起こすことがある。そこで、その樹脂割れを防ぐために、超電導コイル巻線の隙間に繊維状の詰め物を入れるなどの対策が施されることもある。
【特許文献1】特開平7−5235号公報
【特許文献2】特許第3447090号公報
【特許文献3】米国特許4931735号明細書
【特許文献4】特開2001−196219号公報
【特許文献5】米国特許5329266号明細書
【特許文献6】特許第3043494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1または特許文献2に開示された超電導電磁石においては、その製作が容易でないという問題があり、特許文献3ないし特許文献6に開示された超電導電磁石においては、製作工数および部品点数の増加のために、製作コストが増大するという問題がある。また、樹脂割れを防止するために超電導コイル巻線の隙間に繊維状の詰め物を入れる対策も、部品点数の増大や工数増大を招くという問題を含んでいる。
【0014】
以上のような従来技術の問題点に鑑み、本発明の課題は、第1に、部品点数や製作工数の増大を抑えることが可能な、外部磁場の遮蔽効果を有する副コイル系を備えた磁石装置を提供することにあり、また、第2に、そのような磁石装置のコイルに含まれる含浸樹脂の樹脂割れに起因する常電導転移を防止した磁石装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、同軸状に配置された複数のコイルに所定の電流を流し、その複数のコイルの内径側の所定の空間領域に磁場強度が一様となる均一磁場を発生する磁石装置において、前記コイルの少なくとも1つは、前記均一磁場を発生するために所定の電流を流す第1の線材と、前記第1の線材に絶縁された第2の線材とが、同じボビンにそれぞれ巻回されて構成され、前記第2の線材は、前記均一磁場に対して外乱となる外部磁場によってその第2の線材のコイルに生じる誘導電流を流すことが可能な閉ループ回路を構成することを特徴とする磁石装置である。
【0016】
このように構成した第2の線材のコイルを含んだ閉ループ回路には、均一磁場に対して外乱となる外部磁場によってそのコイルに生じる誘導電流が流れ、その誘導電流によって発生する誘導磁場は、外部磁場を打ち消すように作用するので、外部磁場の均一磁場空間への侵入が抑制される。また、そのコイルを構成する第2の線材は、均一磁場を発生するために所定の電流を流す第1の線材と同じボビンに巻回される。従って、外部磁場の侵入を抑制するためのコイルを設けるために、新たなボビンを設ける必要がないので、部品点数や製作工数の増大を最小限に留めることができる。
【0017】
また、本発明の一態様として、前記の磁石装置において、前記第1の線材よりも細い径の前記第2の線材を、前記第1の線材を巻回したときに生じる隙間を埋めるように巻回する。
【0018】
この場合には、そのコイルに樹脂を含浸させて線材を固定したとき、第1の線材の隙間が第2の線材によって埋められているので、含浸される樹脂の領域(体積)を減らすことができる。従って、他に繊維状の詰め物を要することなく、その樹脂割れ、さらには、その樹脂割れに起因する常電導転移を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外部磁場の遮蔽効果を有する副コイル系を備えた磁石装置において、部品点数や製作工数の増大を最小限に留めることができ、また、その磁石装置を構成するコイルに含まれる含浸樹脂の樹脂割れ、および、その樹脂割れに起因する常電導転移を防止することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置の連結柱を含む部分(A−A矢視部)の磁石装置の縦断面図である。
【0022】
図1に示すように、磁気共鳴撮像装置の磁石装置は、均一磁場空間3に所定の均一磁場を発生するための1対の磁極1,2が連結柱4,5を介して対向するように配置されて、構成される。ここで、磁極1,2および連結柱4,5は、真空容器をなし、その内部には輻射シールド6が設けられ、さらに、その内側に冷媒槽7が格納されている。そして、その冷媒槽7には、液体ヘリウムなどの冷媒とともに、前記均一磁場を発生するための主コイル9と、その均一磁場の漏洩を防ぐためのシールドコイル11とが格納されている。従って、冷媒槽7は、コイル容器を兼ねていることになる。また、主コイル9とシールドコイル11とには、互いに強い反発力が生じるので、そのそれぞれは、主コイルボビン8とシールドコイルボビン10とに固定されるように収納されている。
【0023】
なお、主コイル9およびシールドコイル11を構成する線材の材料としては、通常、ニオブ・チタン(NbTi)、ニオブ・スズ(Nb3Sn)などの超電導物質が用いられている。また、真空容器(磁極1,2、連結柱4,5)、コイル容器(冷媒槽7)、主コイルボビン8、シールドコイルボビン10などの構造支持部材は、通常、非磁性ステンレス鋼などで構成されるが、非磁性で、所定以上の強度を有する材料であれば、どのような材料で構成されてもよい。また、輻射シールド6は、通常、アルミ(Al)などで構成されるが、銅(Cu)など、非磁性で高い熱伝導率を有する材料であれば、どのような材料で構成されてもよい。
【0024】
以上のように構成された磁石装置において、外部磁場13は、例えば、図示するように磁石の上方から下方へ向かって均一磁場空間3へ侵入したり、図示しないが、下方から上方へ向かって均一磁場空間3へ侵入したりして、均一磁場空間3の磁場を変動させる。
【0025】
図2は、図1(b)の磁石装置の縦断面図において、磁極の上部右側部分を拡大した図である。
【0026】
図2に示すように、主コイル9は、均一磁場空間3の主磁場を発生するために配置され、シールドコイル11は、主磁場の外部への漏洩を防ぐために、主磁場と逆向きの磁場を発生するために配置されたコイルである。このとき、主コイル9およびシールドコイル11は、均一磁場空間3に一様な強磁場を発生し、かつ、磁石装置の外部に磁場が漏洩する範囲をなるべく小さくするような位置関係に配置される。
【0027】
図3は、本発明の第1の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【0028】
図3に示すように、主コイルボビン8には、均一磁場空間3に一様な強磁場を発生するために所定の電流を流す第1の線材21と、均一磁場空間3に侵入する外部磁場13によって発生する誘導電流を流すことが可能な第2の線材22とが巻回されている。このとき、それぞれの線材21,22は、円形断面(丸線)であり、互いに電気的に絶縁されている。また、第2の線材22の線径は、第1の線材21の線径よりも小さい。
【0029】
また、第1の線材21と第2の線材22とは、互いに隣り合わせで沿うようにして同じ主コイルボビン8に巻回(共巻き)されている。その際、第1の線材21は、互いにその断面が、いわゆる、俵積みとなるように巻回される。第1の線材21を俵積みに巻回した場合には、丸線の線材を最も密度高く巻回することができる。一方、第2の線材22は、第1の線材21が俵積みにされた隙間に配置されるように巻回される。従って、第2の線材22の線径は、第1の線材21が俵積みされた隙間に配置可能な線径よりも小さいとする。
【0030】
ちなみに、第1の線材21が俵積みされたときには、その線径をrとしたとき、第2の線材22の線径が、(2/√3−1)r=0.154r よりも小さいときには、第2の線材22は、第1の線材21が俵積みされた隙間に配置可能である。
【0031】
以上のようにして構成された主コイル9には、さらに、樹脂が含浸され、硬化されて、巻回された線材が互いに固定される。
【0032】
このように、本実施形態においては、第2の線材22を第1の線材21の巻線の隙間に配置するので、含浸する樹脂の体積を小さくすることができるとともに、第2の線材22が樹脂の支持体として機能する。そのため、第1の線材21に所定の電流を流し、第1の線材21が大きな電磁力を受けても、樹脂割れが生じる危険性を低く抑えることが可能となる。つまり、第1の線材21における常伝導転移の危険性が低下する。
【0033】
また、本実施形態においては、シールドコイル11についても、図3に示したコイルと同様に、第1の線材21と第2の線材22とを同じシールドコイルボビン10に共巻きしてもよい。
【0034】
なお、以下の説明においては、シールドコイル11についても第1の線材21と第2の線材22とが共巻きされているものとして説明を行う。そして、主コイル9およびシールドコイル11に含まれる第1の線材21で構成されたコイルを「主コイル系」と呼び、主コイル9およびシールドコイル11に含まれる第2の線材22で構成されたコイルを「副コイル系」と呼ぶ。
【0035】
図4は、本発明の第1の実施形態において主コイルおよびシールドコイルに含まれる第1の線材で構成された主コイル系のコイルを結線する回路図の例を示した図である。
【0036】
図4に示すように、第1の線材21は、上側の磁極1のシールドコイル11および主コイル9から下側の磁極2の主コイル9およびシールドコイル11を通して、すべて、直列に結線され、均一磁場空間3の主磁場を発生する電流を流すための閉ループ回路を構成している。この閉ループ回路は、それを構成するコイルが超電導コイルである場合、しばしば、永久電流回路と呼ばれる。
【0037】
本実施形態において、その永久電流回路は、通常、その永久電流回路を流れる電流を断続するための第1の永久電流スイッチ23と、その永久電流回路を構成するコイルが常電導転移したときにその永久電流回路を保護するための保護回路と、を含んで構成される。このとき、その保護回路は、例えば図4に示すように、所定の整流機能を有するダイオード24を、第1の永久電流スイッチ23の両端に並列接続することによって構成される。
【0038】
また、本実施形態においては、主コイル9およびシールドコイル11のそれぞれを構成する第1の線材21は、上側の磁極1および下側の磁極2のいずれにおいても、互いに逆向きの電流が流れるように結線される。その場合には、外部磁場13が均一磁場空間3へ侵入するとき、外部磁場13は、主コイル9に鎖交する磁束とシールドコイル11に鎖交する磁束とが互いに打ち消し合うため、主コイル系全体に対してほとんど鎖交しないことになる。すなわち、主コイル9およびシールドコイル11に巻回された第1の線材21については、外部磁場13の侵入に際して、その磁束保存効果がほとんど機能せず、その結果、外部磁場13は均一磁場空間3を乱すことになる。
【0039】
図5は、本発明の第1の実施形態において主コイルおよびシールドコイルに含まれる第2の線材で構成された副コイル系のコイルを結線する回路図の例を示した図である。
【0040】
図5に示すように、第2の線材22は、上側の磁極1のシールドコイル11および主コイル9から下側の磁極2の主コイル9およびシールドコイル11を通して、すべて、直列に結線され、閉ループ回路、つまり、本実施形態では永久電流回路を構成している。その永久電流回路は、さらに、その永久電流回路を流れる電流を断続するための第2の永久電流スイッチ25と、副コイル系のコイルが常電導転移したときにその永久電流回路を保護するための保護回路と、を含んで構成される。このとき、その保護回路は、例えば、図5に示すように、第2の永久電流スイッチ25の両端に保護抵抗26を並列接続することによって構成される。
【0041】
また、本実施形態においては、主コイル9およびシールドコイル11のそれぞれを構成する第2の線材22は、上側の磁極1および下側の磁極2のいずれにおいても、同じ向きの電流が流れるように結線される。その場合には、外部磁場13が均一磁場空間3へ侵入するとき、外部磁場13は、主コイル9に鎖交する磁束とシールドコイル11に鎖交する磁束とが加算される。そのため、主コイル9、シールドコイル11に巻回された第2の線材22は、外部磁場13の侵入に際しては、その磁束保存効果によって誘導される電流により、外部磁場13とは逆向きの磁場を発生する。従って、侵入する外部磁場13は、その逆向きの磁場によって打ち消されるので、均一磁場空間3への侵入が抑制される。
【0042】
一般に、外部磁場13は、第1の線材21で構成された主コイル系によって発生される均一磁場空間3の磁場強度に比べて微小である。従って、外部磁場13の侵入に伴い第2の線材22に誘導される電流は微小である。また、第2の線材22で構成された副コイル系のコイルの結線と、第1の線材21で構成された主コイル系のコイルの結線とは、それぞれ、異なっている。ちなみに、図4と図5とを比較すると、シールドコイル11に対しては、それぞれ電流が逆向きに流れるように結線されるため、第1の線材21と第2の線材22との磁気的な結合は打ち消し合うことになる。従って、例えば、第1の線材21が常電導転移し、その電流が急激に減少したとしても、第2の線材22が構成する永久電流回路に誘導される電流は微小である。
【0043】
以上の理由により、図5に示した第2の線材22が構成する永久電流回路に設置される第2の永久電流スイッチ25や、保護抵抗26は、大電流を想定する必要がなく、第1の線材21が構成する永久電流回路に用いる第1の永久電流スイッチ23などに比較して安価な構成とすることができる。なお、保護回路は、ダイオード24や保護抵抗26に限定する必要はなく、コイル系や永久電流スイッチを保護するバイパス回路であれば何を用いてもよい。
【0044】
以上、第1の実施形態によれば、第1の線材21を巻回した主コイルボビン8およびシールドコイルボビン10に第2の線材22を共巻きにし、また、第2の線材22は、第1の線材21の隙間に巻回する。また、第2の線材による副コイル系のコイルは、そのすべてに、同じ向きの電流が流れるように結線して、永久電流回路を構成する。従って、第2の線材による副コイル系によって、外部磁場13の侵入を抑制することができるようになる。そして、その副コイル系を構成するために新たなボビンを必要とすることもない。さらには、第1の線材21の隙間に、第2の線材22を詰め込んでいるので、新たな詰め物を必要とせずに、コイルに含浸された樹脂の樹脂割れ、つまり、その樹脂割れに起因する常電導転移を防止することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【0046】
本実施形態においては、図6に示すように、第2の線材22を単に第1の線材21と共巻きするにとどまらず、第1の線材21と主コイルボビン8(または、シールドコイルボビン10)との間に生じる大きな隙間にも、可能な範囲内で第2の線材22を巻回する。また、本実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、以下、説明を省略する。
【0047】
本実施形態によれば、第1の実施形態の場合に比べて、含浸される樹脂の体積をさらに減ずることができるので、樹脂割れおよびその樹脂割れに起因する常電導転移の可能性をさらに低減することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【0049】
本実施形態においては、図7に示すように、第2の線材22を第1の線材21と共巻きすることはせずに、第1の線材21と主コイルボビン8(または、シールドコイルボビン10)との間に生じる大きな隙間に可能な範囲内で第2の線材22を巻回する。また、本実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、以下、説明を省略する。
【0050】
本実施形態によれば、第2の線材22で構成される副コイル系によって、外部磁場13の侵入を抑制することができ、また、含浸される樹脂の体積を減ずることができるので、樹脂割れおよびその樹脂割れに起因する常電導転移の可能性を低減することができる。
【0051】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【0052】
本実施形態においては、図8に示すように、第2の線材22として、第1の線材21と同じ線径の線材を使用し、第1の線材21と第2の線材22とを主コイルボビン8(または、シールドコイルボビン10)に共巻きする。また、本実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同じであるので、以下、説明を省略する。
【0053】
以上のように構成した主コイル9(または、シールドコイル11)は、発生すべき均一磁場空間3の磁場強度が小さく、また、含浸した樹脂の樹脂割れが生じる恐れが小さい場合に適用される。その場合には、第1の線材21の隙間に第2の線材22を配置して巻回しなくても、その隙間に含浸した樹脂の樹脂割れが生じる恐れが小さい。代わって、第1の線材21と第2の線材22とを同じ線材で構成することができるので、用意すべき部品数が少なくてすむようになり、製作に要するコストを低減させることができる。
【0054】
(第5の実施形態)
図9は、本発明の第5の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置のB−B矢視部における磁石装置の縦断面図である。
【0055】
図9に示すように、磁気共鳴撮像装置の磁石装置は、均一磁場空間3の磁場を発生するために、水平方向の軸に対して同軸円状に巻回された主コイル30およびシールドコイル31によって構成される。これらの主コイル30およびシールドコイル31は、冷媒槽37の内部に格納され、冷媒槽37は、輻射シールド36の内部に、さらには、輻射シールド36は、真空容器35の内部に配置されている。
【0056】
また、磁石装置の他の構成、例えば、主コイル30およびシールドコイル31をそれぞれ、第1の線材と第2の線材とで構成することなどについては、前記第1の実施形態ないし第4の実施形態と同じであるとする。そうした場合、本実施形態と前記第1の実施形態ないし第4の実施形態との相違は、本実施形態の場合には、外部磁場13が水平方向から侵入するのに対し、前記第1の実施形態ないし第4の実施形態の場合には、外部磁場13が上下方向から侵入する程度の差でしかない。
【0057】
従って、本実施形態においても、第2の線材による副コイル系によって、外部磁場13の侵入を抑制することができ、さらに、前記第1の実施形態ないし第4の実施形態と同様の効果を期待することができる。
【0058】
(第6の実施形態)
図10は、本発明の第6の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置のC−C矢視部における磁石装置の縦断面図である。
【0059】
本実施形態は、第5の実施形態を一部変形した実施形態であり、第5の実施形態では、主コイル30およびシールドコイル31は同軸円状に巻回されて構成されるのに対し、本実施形態では、主コイル30およびシールドコイル31は同軸長円状に巻回されて構成される。従って、第6の実施形態の効果は、第5の実施形態の効果とほぼ同じである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置の連結柱を含む部分(A−A矢視部)の磁石装置の縦断面図である。
【図2】図1(b)の磁石装置の縦断面図において、磁極の上部右側部分を拡大した図である。
【図3】本発明の第1の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施形態において主コイルおよびシールドコイルに含まれる第1の線材で構成された主コイル系のコイルを結線する回路図の例を示した図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において主コイルおよびシールドコイルに含まれる第2の線材で構成された副コイル系のコイルを結線する回路図の例を示した図である。
【図6】本発明の第2の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【図7】本発明の第3の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【図8】本発明の第4の実施形態においてコイルボビンに収納されたコイルの断面の例を示した図である。
【図9】本発明の第5の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置のB−B矢視部における磁石装置の縦断面図である。
【図10】本発明の第6の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の磁石装置の概略構成の例を示した図であり、(a)は、磁気共鳴撮像装置の外観の斜視図、(b)は、(a)に示した磁気共鳴撮像装置のC−C矢視部における磁石装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1,2 磁極
3 均一磁場空間
4,5 連結柱
6,36 輻射シールド
7,37 冷媒槽
8 主コイルボビン
9,30 主コイル
10 シールドコイルボビン
11,31 シールドコイル
13 外部磁場
21 第1の線材
22 第2の線材
23 永久電流スイッチ
24 ダイオード
25 永久電流スイッチ
26 保護抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸状に配置された複数のコイルに所定の電流を流し、その複数のコイルの内径側の所定の空間領域に磁場強度が一様となる均一磁場を発生する磁石装置において、
前記コイルの少なくとも1つは、前記均一磁場を発生するための所定の電流を流す第1の線材と、前記第1の線材に絶縁された第2の線材とが、同じボビンにそれぞれ巻回されて構成され、
前記第2の線材は、前記均一磁場に対して外乱となる外部磁場によってその第2の線材のコイルに生じる誘導電流を流すことが可能な閉ループ回路を構成すること
を特徴とする磁石装置。
【請求項2】
前記第2の線材は、前記第1の線材に沿って、かつ、隣り合うように配置されて巻回されること
を特徴とする請求項1に記載の磁石装置。
【請求項3】
前記第2の線材は、前記第1の線材が巻回されたときに生じる隙間を埋めるように配置されて巻回されること
を特徴とする請求項1に記載の磁石装置。
【請求項4】
前記第1の線材は、その断面が俵積みになるように巻回され、
前記第2の線材は、前記俵積みになるように巻回された前記第1の線材の隙間を埋めるように配置されて巻回されること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の磁石装置。
【請求項5】
前記第2の線材の径は、前記第1の線材の径よりも小さいこと
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁石装置。
【請求項6】
前記第2の線材の径は、前記第1の線材の径と同じであること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁石装置。
【請求項7】
前記第1の線材と第2の線材とが同じボビンに巻回されて構成されたコイルが複数存在し、そのそれぞれのコイルの第2の線材は、そのそれぞれのコイルに同じ方向の電流が流れるように直列に接続されて、前記閉ループ回路を構成すること
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の磁石装置。
【請求項8】
前記閉ループ回路は、その閉ループ回路を流れる電流を断続する永久電流スイッチを備えていること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の磁石装置。
【請求項9】
同軸状に配置された複数のコイルに所定の電流を流すことによって、その複数のコイルの内径側の所定の空間領域に磁場強度が一様な均一磁場を発生する磁石装置を用いて構成された磁気共鳴撮像装置において、
前記コイルの少なくとも1つは、前記均一磁場を発生するための所定の電流を流す第1の線材と、前記第1の線材に絶縁された第2の線材とが、同じボビンにそれぞれ巻回されて構成され、
前記第2の線材は、前記均一磁場に対して外乱となる外部磁場によってその第2の線材のコイルに生じる誘導電流を流すことが可能な閉ループ回路を構成すること
を特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項1】
同軸状に配置された複数のコイルに所定の電流を流し、その複数のコイルの内径側の所定の空間領域に磁場強度が一様となる均一磁場を発生する磁石装置において、
前記コイルの少なくとも1つは、前記均一磁場を発生するための所定の電流を流す第1の線材と、前記第1の線材に絶縁された第2の線材とが、同じボビンにそれぞれ巻回されて構成され、
前記第2の線材は、前記均一磁場に対して外乱となる外部磁場によってその第2の線材のコイルに生じる誘導電流を流すことが可能な閉ループ回路を構成すること
を特徴とする磁石装置。
【請求項2】
前記第2の線材は、前記第1の線材に沿って、かつ、隣り合うように配置されて巻回されること
を特徴とする請求項1に記載の磁石装置。
【請求項3】
前記第2の線材は、前記第1の線材が巻回されたときに生じる隙間を埋めるように配置されて巻回されること
を特徴とする請求項1に記載の磁石装置。
【請求項4】
前記第1の線材は、その断面が俵積みになるように巻回され、
前記第2の線材は、前記俵積みになるように巻回された前記第1の線材の隙間を埋めるように配置されて巻回されること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の磁石装置。
【請求項5】
前記第2の線材の径は、前記第1の線材の径よりも小さいこと
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の磁石装置。
【請求項6】
前記第2の線材の径は、前記第1の線材の径と同じであること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁石装置。
【請求項7】
前記第1の線材と第2の線材とが同じボビンに巻回されて構成されたコイルが複数存在し、そのそれぞれのコイルの第2の線材は、そのそれぞれのコイルに同じ方向の電流が流れるように直列に接続されて、前記閉ループ回路を構成すること
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の磁石装置。
【請求項8】
前記閉ループ回路は、その閉ループ回路を流れる電流を断続する永久電流スイッチを備えていること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の磁石装置。
【請求項9】
同軸状に配置された複数のコイルに所定の電流を流すことによって、その複数のコイルの内径側の所定の空間領域に磁場強度が一様な均一磁場を発生する磁石装置を用いて構成された磁気共鳴撮像装置において、
前記コイルの少なくとも1つは、前記均一磁場を発生するための所定の電流を流す第1の線材と、前記第1の線材に絶縁された第2の線材とが、同じボビンにそれぞれ巻回されて構成され、
前記第2の線材は、前記均一磁場に対して外乱となる外部磁場によってその第2の線材のコイルに生じる誘導電流を流すことが可能な閉ループ回路を構成すること
を特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−319317(P2007−319317A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151396(P2006−151396)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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