説明

磁電変換素子およびその製造方法

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は磁電変換素子に関し、特に素子の薄型化を計ると同時にリードの強度を向上させた磁電変換素子およびその製造方法に関するものである。
[従来の技術]
磁電変換素子としては、一般に言うイオン注入法により感磁部を形成したホール素子、エピタキシャル成長法により感磁部を形成したホール素子、蒸着法により感磁部を形成したホール素子、電気抵抗が磁界によって変化する磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗素子,磁気トランジスタ等のように一般に磁気信号を入力し、電気信号の出力を取り出す素子が知られている。
近年、磁電変換素子、なかでもホール素子等はビデオカセットレコーダ,カセットテープレコーダ,コンパクトディスクプレーヤ等に用いられるブラシレスモータに広く使用されており、その高感度とともに素子の小型化,薄型化が要求されている。
従来は素子の薄型化を計るために、第6図に示すような構成の素子に対してホール素子基板の裏面を研磨することによる薄型化、リードの薄型化,ワイヤボンディンググループの高さの最適化等の努力がなされている。
第6図に示した素子は、リード401上に接着剤5を介して基板1が接合されている。基板1上にはホール素子感磁部2が形成されており、さらにホール素子感磁部2上には電極3が形成されている。電極3に接続されたボンディングワイヤ6はリード401,402に接続されている。このような素子全体はモールド用のエポキシ樹脂7によって封止されている。
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、従来の方法では、例えば、ホール素子用の基板1として、GaAs等のように脆い材料を用いた場合、基板1の裏面を研摩すると、基板の脆さのために割れ等により歩留まりが著しく悪くなる。さらに、リードを薄くするとリードの強度が低下し、信頼性上問題があり、素子の薄型化を計ることが困難であった。
そこで、本発明の目的は上述した問題点を解消し、歩留まりが良く、信頼性が高く、薄型化しかつ小型化した磁電変換素子を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
このような目的を達成するために、本発明による磁電変換素子は、GaAs基板上に感磁部が形成され、感磁部の電極がボンディングワイヤによってリードに接続されている磁電変換素子において、前記リードのアイランド部に前記基板の外形より大きな穴が設けられ、該穴に前記基板が挿入され、前記アイランド部の裏面と前記基板の底面が同一平面上にあるように、前記アイランド部と前記基板とが前記穴の内側面と前記基板の側面との間を埋めて充填された接着剤によってのみ固定され、前記基板、前記感磁部、前記アイランド部および前記ボンディングワイヤが樹脂によって封止され、前記基板の底面が前記封止用樹脂と直接に接していることを特徴とする。
さらに、本発明による磁電変換素子の製造方法は、GaAs基板上に感磁部が形成され、感磁部の電極がボンディングワイヤによってリードに接続されている磁電変換素子において、前記リードのアイランド部に前記基板の外形より大きな穴が設ける工程、前記リードの裏面に接着テープを貼り付ける工程、該穴に前記基板を挿入し接着剤によって前記穴の内側面と前記基板の側面とを固定する工程、および前記接着テープを剥離する工程を有することを特徴とする。
[作用]
本発明によれば、感磁部が形成されている基板がリードのアイランド部に設けられた穴に挿入され、アイランド部の裏面と基板の底面が同一平面上にあるように、穴の内側面と基板の側面とが接着剤によって固定され、基板の底面が封止用樹脂と直接に接しているので、素子の薄型化および小型化を計ることができる。
[実施例]
以下、図面を参照して本発明の実施例をより詳細に説明する。
以下の実施例においては、ホール素子を例として説明する。
第1図は、本発明のホール素子の構成を模式的に示す平面図である。
第1図においてリード401に接着剤を介して基板1が接合されている。基板1上にはホール素子感磁部2が形成され、さらにホール素子感磁部2上には電極3が形成されている。電極3からはボンディングワイヤ6が延びてリード410,411,412および413に接続している。さらに素子はボンディングワイヤ6も含めてエポキシ樹脂7により封止されている。
ただし、本発明においては、ホール素子が搭載されているリードのアイランド部は貫通孔が設けられており、その断面は後述する第5図に示すようになる。貫通孔の形状は、ホール素子基板の形にあった矩形の穴が良く用いられる。
直径50mm,厚さ300μmのノンドープGaAs半絶縁性の基板に、Si+を150keVの加速電圧で、注入量5×1012cm-2の条件のもとで、イオン注入を行なった後、アニーリングを行い、引き続いてメサエッチングによりホール素子感磁部2を形成し、更に続いて、入出力用のオーミック電極3をAu/Ni/Au−Geの構成で形成することにより、ホール素子を作製した。
その後、ダイシングを行い直径50mmの基板を切断して0.4mm角の多数の素子を作製した。
次に、第3図のように、ホール素子が挿入されるアイランド部が穴加工されたリード430を作製するために、第2図に示した厚さ0.5mm、縦30mm、横150mmの銅板8を用意し、型を用いてアイランド部の中心に穴があくように打ち抜くことでアイランド部の大きさl3=1.2mm角であり、アイランド部の中心に大きさl4=0.6mm角があいた。厚さd2=200μmのリード430を作製した。
次に、ダイシングにより得られた個別の素子ペレットを、作製したリード430のアイランド部にダイボンディングするために、第4図に示すようにリード430の裏面に、厚さ50μmのポリテトラフルオロエチレンからなる接着テープ9を貼りつけ、接着剤5を介して、素子ペレットがアイランド部に形成された穴にはいるようにダイボンディングを行った。
次に接着テープ9を剥離した後、電極3をボンデイングワイヤ6を介してリード430,431と接続した。続いてトランスファーモールド法によりエポキシ樹脂7で封止を行ない、第5図に示すような全体の厚さが0.65mmのホール素子を作製した。
このようにして、薄型化して小型化した素子を作製することができた。
以上では、本発明の磁電変換素子の一例として、ホール素子を例にとって説明してきたが、磁気抵抗効果を利用した磁電変換素子についても本発明はすべて有効に適用できる。さらにまた、これらの効果と他の効果を併用した磁電変換素子も勿論本発明の範囲内にある。
[発明の効果]
以上説明したように、本発明によれば、リードのアイランド部に穴が設けられ、感磁部が形成された基板がその穴に挿入接着されるので、素子の薄型化および小型化を計ることができる。
また、本発明によれば、素子の薄型化のためにアイランド部においては磁電変換素子が装着される部分以外の厚さを薄くする必要がないので、リードの強度を十分取ることが可能であり、信頼性を向上させることができる。
さらに、また、リードから電極面までの高さが低くなることから、ボンディングワイヤが短くて済み、ワイヤボンディング時のワイヤループの調整が容易となり、ワイヤボンディングの歩留まりが大幅に向上するとともに従来不可能であった量産化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の磁電変換素子の一実施例を示す平面図、
第2図は本発明の実施例におけるリードの作製に用いられる銅板の斜視図、
第3図は本発明のホール素子の作製に用いられるリードを示し、図(A)は平面図、図(B)はc−d線に沿った断面図、
第4図は第3図に示したリードを用いてホール素子を作製する一行程を示す素子の断面図、
第5図は本発明の磁電変換素子の実施例を示す側面図、
第6図は従来の磁電変換素子の一例を示す側面図である。
1……基板、2……ホール素子感磁部、3……電極、5……接着剤、6……ボンディングワイヤ、7……エポキシ樹脂、8……銅板、9……接着テープ、401,402410,411,412,413,420,421,422,423,430,431……リード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】GaAs基板上に感磁部が形成され、感磁部の電極がボンディングワイヤによってリードに接続されている磁電変換素子において、前記リードのアイランド部に前記基板の外形より大きな穴が設けられ、該穴に前記基板が挿入され、前記アイランド部の裏面と前記基板の底面が同一平面上にあるように、前記アイランド部と前記基板とが前記穴の内側面と前記基板の側面との間を埋めて充填された接着剤によってのみ固定され、前記基板、前記感磁部、前記アイランド部および前記ボンディングワイヤが樹脂によって封止され、前記基板の底面が前記封止用樹脂と直接に接していることを特徴とする磁電変換素子。
【請求項2】GaAs基板上に感磁部が形成され、感磁部の電極がボンディングワイヤによってリードに接続されている磁電変換素子の製造方法において、前記リードのアイランド部に前記基板の外形より大きな穴を設ける工程、前記リードの裏面に接着テープを貼り付ける工程、該穴に前記基板を挿入し接着剤によって前記穴の内側面と前記基板の側面とを固定する工程、および前記接着テープを剥離する工程を有することを特徴とする磁電変換素子の製造方法。

【第1図】
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【第4図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第5図】
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【第6図】
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【特許番号】第2849100号
【登録日】平成10年(1998)11月6日
【発行日】平成11年(1999)1月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−323678
【出願日】昭和63年(1988)12月23日
【公開番号】特開平2−170584
【公開日】平成2年(1990)7月2日
【審査請求日】平成7年(1995)12月19日
【出願人】(999999999)旭化成工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭61−256776(JP,A)
【文献】特開 昭58−53852(JP,A)
【文献】特開 平1−184836(JP,A)
【文献】実開 昭57−121154(JP,U)
【文献】特公 昭52−20316(JP,B2)