神経イベント処理
神経イベント処理であって、神経応答信号を受信する過程と、少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解する過程と、位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために、前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、神経イベントを示すピークを判断するために、前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、前記分解過程は、1未満の帯域因数を備えたウェーブレットを用いて実行される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理を実行するための神経イベント処理及びシステムに関する。処理は、患者の聴覚又は前庭系によって生成される応答を示すデータを抽出するのに有利に使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
システムは、患者の聴覚系の活動を示す患者に対する聴覚誘発応答(AER)又は脳幹聴覚誘発応答(BAER)を得るために開発されてきた。AERは、刺激、通常は音に応答して患者上に設置された電極から得られる電子頭脳波形又は神経応答である。応答のレイテンシと電極の設置とに依存して、種々のAERを得ることができる。最短のレイテンシを備えたそれらは、内耳と聴覚神経とによって生成され、蝸電図法応答と呼ばれる。次の応答は、聴性脳幹内の活動に反応し、聴性脳幹応答(ABR)と呼ばれる。さらなる詳細は、Hall, James W, III; Handbook of Auditory Evoked Responses; Allyn and Bacon; Needham Heights, Massachusetts, 1992で提供される。
【0003】
現在、蝸電図法(“ECOG”又は“ECochG”)システムは、蝸牛と前庭器との診断を実行するのに用いられている。前庭系の場合において、最近、耳のこの特別な部分に対する分析は、前庭電図法(electrovestibulography)(EVestG)と呼ばれ、ECOGの特定のサブクラスである。システムは、患者の蝸牛に対して出来るだけ実用的に記録電極を設置することを含む患者神経応答を生成するのに用いられる。音響トランスジューサ、例えばイヤホンは、聴覚刺激を提供して応答を誘発するのに用いられる。しかし、EVestGに対して、患者は、前庭器から特定の応答を誘発するために異なる方向に傾斜される。また、EVestGに対して聴覚刺激を使用する必要が無い。神経応答を示すECOG信号は、Sp/Ap比率を判断するのに用いられ、多数の状態、特にメニエール病の診断に使用されることができる。第1波は通常、図1に示されるように、応答信号のN1と呼ばれ、累加電位(Sp)、活動電位(Ap)及び第2累加電位(Sp2)を判断するために検査される。応答は、数μVオーダーだけであり、判断及び分離するのを困難にするかなり望ましくない雑音と共に受信される。
【0004】
例えば通常、ECOG信号は、聴覚刺激に応答して患者から多数のサンプルを得て、そして診断のために平均Sp/Ap比率を得ることによって評価される。しかし、患者がメニエール病及び通常のECOGを有し、代わりに患者がさらに異常なECOGを有するがメニエール病を有さない時、この処理は、かなり感度が低く明確ではない。従って、代わりの処理(“フランツ(Franz)処理”)は、メニエール病が前庭系の病状である時、蝸牛応答よりはむしろ前庭応答を直接分析することを求める国際特許公報WO 02/47547に記載されているように、Burkhard Franz教授によって開発されてきた。フランツ処理は、前方、後方、対側、又は同側に自分の頭部を傾斜するよう求められた患者から得られる応答を記録するためにECOGシステムを使用する。処理は、主に23Hzだけでなく11.5Hz及び46Hzで三半規管又は耳石器から到来するであろう応答で周期信号を識別することを求める。この分析は、対象周波数、例えば反復間隔において1/23Hzで、多数の間隔にわたってECOG応答を平均することによってなされる。
【0005】
しかし、フランツ処理には多数の問題がある。第1に、処理は、全ての患者に対して、特に抑制頭部傾斜、とりわけ無意識的な頭部傾斜に対して信用できると考えられていない。また、処理は、聴覚学者がかなり訓練しなければ簡単に採用することができない。また、さらに重要なのは、対象周波数である11.5、23及び46Hzは、周囲雑音に対するバックグラウンド信号が一度除去されると、確実に発見されうる特性信号を有していないことが見出されたことである。これは、ECOG応答のこれらの周波数成分が主にバックグラウンド雑音及び/又は筋肉(前運動及び/又は運動)活動によって誘発され、SCC及び耳石器からの任意の応答がこれらの周波数において検出又は分離するのがかなり困難であることを示す。類似の問題は、ABR等の他のAERを判断及び分析する点で存在する。従って、上記に対処すること、又は少なくとも役立つ代替を提供することが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によると、神経応答信号を受信する過程と、少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解する過程と、位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために、前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、神経イベントを示すピークを判断するために、前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備する神経イベント処理が提供される。
【0007】
また、本発明は、ECOGシステムによって生成される神経応答信号を受信する過程と、前記信号のスペクトルにおいて低周波数を有する中央周波数を示す少なくとも1つのウェーブレットで前記信号を分解する過程と、前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、Sp及びApデータを判断するために前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、前記ウェーブレットは、小さい帯域因数を有する神経イベント処理を提供する。
【0008】
また、本発明は、ABRシステムによって生成される聴性脳幹応答(ABR)信号を受信する過程と、前記信号のスペクトルにおいて低周波数を有する中央周波数を示す少なくとも1つのウェーブレットで前記信号を分解する過程と、前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、Sp及びApデータを判断するために前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、前記ウェーブレットは、小さい帯域因数を有する神経イベント処理を提供する。
【0009】
また、本発明は、処理を実行するためのシステムを提供する。
【0010】
また、本発明は、処理を実行するのに用いるコンピュータプログラムコードを有するコンピュータ読取可能な媒体を提供する。
【0011】
また、本発明は、神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、処理のためにサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解するための、前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別するための、及び神経イベントを示すピークを判断するために前記最大値及び最小値を処理するための分析モジュールとを具備する神経応答システムを提供する。
【0012】
また、本発明は、神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、処理のためのサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、TAPマーカーを生成して人が疾患を有するか否かを判断するために、前記信号を処理するための分析モジュールとを具備する神経応答システムを提供する。
【0013】
また、本発明は、神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、処理のためのサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、70から300Hz範囲でピークに対する時間及び周波数データのプロットを生成して人の聴覚系の成分の活動をディスプレイ及び任意の疾患をマークするために、前記信号を処理するための分析モジュールとを具備する神経応答システムを提供する。
【0014】
また、本発明は、TAPマーカーを生成して前記人が疾患を有するか否かを示すために、人から得られる応答信号を処理する過程を含む神経応答処理を提供する。
【0015】
また、本発明は、70から300Hz範囲におけるピークに対する時間及び周波数データのプロットを生成して人の聴覚系の成分の活動をディスプレイ及び任意の疾患をマークするために、人の信号から得られる応答信号を処理する過程を含む神経応答処理を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2に示されるように、ECOGシステム2は、単独の刺激、例えば無意識の頭部傾斜を受ける患者から、図5から10に示されるように、Sp/Apプロットを得るのに使用される。Sp/Apプロットは、刺激に反応して生成されるECOG信号から生成される。ECOG信号は、ECOGシステム2のコンピュータシステム20の増幅回路22へ電気的に接続される電極10、12及び14から得られる。第1電極10(例えばBio−Logic System Corpによって生成されるECochG電極 http://www.blsc.com/pdfs/HearCatalog.pdf)は、患者4の耳の鼓膜上に設置される。第2電極12は、基準ポイントとして、患者の耳たぶ上に設置され、第3電極14は、患者の額と増幅器の共通ポイントとへ接続される。また、シールド接続16は、試験室の周囲に通常設置される電気的隔離シールド18に対して作られる。シールド18は、増幅器22のシールドへ接続される。聴覚ECOG信号を得るために、連続的な聴覚信号は、耳に加えられ、交互極性音響クリックを含む。しかし、前庭ECOG信号(即ちEVestG信号)のために、患者4は、図2に示されるように、患者の頭部を意識的又は無意識的に傾斜できるようなリクライニング安楽椅子等の椅子6上に位置する。傾斜椅子は、Neuro Kinetics Inc(http://www.neuro-kinetics.com)によって特別に生産され、患者を傾斜させ、筋行為によって比較的乱れないこの刺激に対する応答を生成することができる。無意識的な頭部傾斜は、任意に患者が頚筋活動することなく頭部傾斜を促すために椅子6を操作する助手によって得られる。典型的なシーケンスは、中立位置で20秒、傾斜で20秒、そして再度の傾斜時に20秒である。頭部傾斜は、患者自身によって達成されうる意識的な最大頭部傾斜と約同じ角度でなされる。傾斜は、後、前、同側及び対側である。比較的効率性及び位置特定がないが、しかし、ECOGシステム2はまた、任意の特定の刺激がなく生成される複合聴覚及び前庭系からの応答から導出されるSp/Apプロットを生成することができる。これは、聴覚及び前庭系の記録された自発的バックグラウンド活動に基づく。意識的な頭部傾斜で刺激された応答を得るために、患者は、頭部を中立位置で20秒間、頭部を前方傾斜で20秒間、中立位置に戻して20秒間、再度後方で20秒間、中立位置で20秒間、電極10に対して同側で20秒間、中立位置で20秒間、電極10に対して対側で20秒間、そして中立位置で20秒間のまま、椅子に直立して座るよう求められる。
【0017】
電極10から14上で生成される神経応答は、ECOGシステム2によって連続的に記録される。各傾斜の神経応答信号は、多数の周波数成分を有する時間領域電圧信号である。対象となる主な成分は、22500Hzまでであり、故にシステム2によって使用されるサンプリング比率は、44.1kHzに選択される。この比率で、Spピーク(信号対雑音比率(S/N)に依存する)は、少しのサンプル幅だけである。信号は、(1)バックグラウンド周囲雑音を主に含むバックグラウンド領域、(2)三半規管と耳石器との応答を含む傾斜の開始のための開始領域(傾斜開始後の約0〜5秒)、(3)三半規管(衰える)と耳石器との応答を含む傾斜の残りのための過渡領域(傾斜開始後の約5〜10秒)、及び(4)耳石器の応答を基本的に含む安定状態領域(傾斜開始後の約10〜20秒)という時間内で明確な領域によって特徴付けられる。無意識的な傾斜のための記録された応答信号の一例は、図3に示され、信号の成分は、以下のテーブルに記載される。
【0018】
【表1】
【0019】
ECOGシステム2のコンピュータシステム20は、増幅器22と増幅器22の出力を扱うための通信モジュール24とを含み、キャプチャモジュール26によって提供されるAdobe Audition(http://www.pacific.adobe.com/products/audition/main.html)等のコンピュータプログラムを用いて、ウェーブファイルとして電圧信号超過時間としての応答を記憶する。増幅器22は、CED1902孤立前置増幅器とCED Power1401アナログデジタル変換器(ADC)とを含む。CED1902及びCED1401ADCの両方は、Cambridge Electronic Design Limited(http://www.ced.co.uk)によって生産される。CED1401ADCは、優れた低周波(数Hz未満)応答を有する。また、コンピュータシステム20は、ソフトウェアモジュールを有し、分析モジュール28とディスプレイモジュール30とを含む。分析モジュール28は、他のソフトウェアモジュールと同時に、図4及び13に示されるように、神経イベント抽出処理を実行することに関与するコンピュータプログラムコード(例えば、MATRAB(登録商標)コード(http://www.mathworks.com))を含む。また、分析モジュール28は、以下に説明するように、応答信号サンプルをフィルタにかけるのに用いられる多数の異なるフィルタを実行する。グラフィックスディスプレイモジュール30は、操作者に入力制御を提供して神経イベント抽出処理を制御できるように、及び図5から10に示されたSp/Apプロット等の神経イベントデータのディスプレイを生成するために、ECOGシステム2の操作者用のユーザーインタフェース32を生成する。コンピュータシステム20のソフトウェアモジュール24から30のコンピュータプログラムコードは、Microsoft Windows(登録商標)又はLinux等のオペレーティングシステム34上で動作され、使用されるハードウェアは、増幅器22とIBM Corporation(http://www.ibm.com)によって生産されるような標準的パーソナルコンピュータ20とを含むことができる。ECOG記録システムは、Bio−Logic Systems Corp(http://www.blsc.com/hearing/)によって生産される。神経イベント抽出処理は、モジュール24から34のソフトウェアの制御下で実行されることができる一方、当業者であれば、処理の段階がASIC及びFPGA等の専用ハードウェア回路によって実行されうること、さらにInternet等のコンピュータ通信ネットワークにわたって配信される要素又はモジュールによって実行されうることが分かる。
【0020】
神経イベント抽出処理は、患者から誘発応答を正確に発見することを試みるために、Sp/Apプロットの周知の時間及び周波数特性を使用する。基本的に、プロットの大まかな形と対象となるポイント間の予想レイテンシとだけが周知である。ポイント間のレイテンシは、対象周波数範囲に対応する。故に、Sp/Apプロットは、Sp/Apプロット、特にSp、Ap、Spの開始、Apのオフセット、及びSp2ポイントの開始上のポイントにおける対象周波数範囲にわたって大きな位相変化を示すことが周知である。神経イベント抽出処理は、誘発応答の特徴的な部分を構成すると考えられる適切な時間フレームで、及び適切なレイテンシで発生する神経イベントを判断するのに用いることができる代表的なデータストリームを生成するよう動作する。また、同一の原理は、以下に説明されるように、他のAERに適用されることができる。
【0021】
図4に示されるように、神経イベント抽出処理は、頭部傾斜に応答して増幅器22によって出力される電圧応答信号を記録する過程を含む(段階302)。必要に応じ、50又は60Hzメインのパワーノッチフィルターは、電力周波数調波を除去するために増幅器段階における記録に適用される。また、増幅器22からの応答信号は、段階350において(例えば図11に示されるように)改善されたSp/Apピークプロットを抽出処理で生成できるようにするために高域フィルタにかけることができる(例えば、1極バターワースフィルタにつき120Hz)。かなり低周波のデータが保持される場合、即ち10Hz未満の場合、これは、神経イベントの前に“dc”大きさをプロットして閾値変動を判断するのに使用されることができる(段階350)。これらの閾値変動は、図12に示され、開始領域(最大変動であるため図12の下部)、過渡領域(次に最大の変動)、及び安定状態領域(最低変動であり、上部)に関連する。このかなり低周波であるデータ、特に大きさの変動の検査は、以下に説明するように、中枢神経系障害の診断を支援するのに用いることができ、特に前庭系へのさらなる皮質影響を図示するのに用いることができる。変動の欠如又は増大は、障害を示す傾向にある。
【0022】
記録された応答信号は、以下の数1で提供されるウェーブレットの定義に従い複素モルレー(Morlet)ウェーブレットを用いて大きさ及び位相の両方で分解され(段階304)、ここでtは時間、Fbは帯域因数(bandwidth factor)、そしてFcは各スケールの中央周波数を示す。他のウェーブレットも使用されうるが、モルレーは、その優れた時間周波数局在特性に使用される。神経応答信号x(t)は、各ウェーブレットで畳み込まれる。
【0023】
【数1】
【0024】
前庭系を直接測定するために、7つのスケールが選択されて12000Hz、6000Hz、3000Hz、1500Hz、1200Hz、900Hz及び600Hzの中央周波数でウェーブレットを示す。各種周波数は、以下に説明されるように、対象周波数範囲にわたり、適切な帯域因数に整合されうる。ウェーブレットは、正常前庭Sp/Ap応答信号の対象スペクトルにわたり、波形のピークが時間内に首尾よく発見されるように重要な比較的高い周波数成分を含む。重要なことには、帯域因数は、1未満に設定され、1500から600Hzを示すスケールに対して0.1、その他全周波数に対して0.4である。そのように低い帯域因数を用いることで、周波数帯域の広がりを犠牲にして、比較的低周波数で比較的良好な時間局在を許容し、応答信号によって示される神経イベントを発見及び判断するのに特に有利である。大きさ及び位相データは、ウェーブレットの係数を示す各スケールに対して生成される。
【0025】
各スケールの位相データは、MATLABの“unwrap”及び“diff”関数を用いて解包及び微分される(306)。任意のDCオフセットが除去され、結果は、−1から+1までの範囲でそれを設置するために各スケールに対して正常化される。故に、これは、応答信号に対する位相変化の大きさの比率を提供する、正常化されたゼロ平均データ(zero average data)を生成する。
【0026】
位相変化データの第1導関数(実際には導関数の導関数)は、各スケール(308)に対して得られ、位相変化(320)の極大/小比率を判断するために正常化される。任意の疑似ピークを除去するために、かなり小さな最大/最小値は、第1導関数(322)の平均絶対値の1%の閾値で除去される。第1導関数(308)からの全ての正勾配は、1に設定され、負勾配は、−1に設定され、そして位相変化データの第2導関数は、−2及び+2段階値を生成するために得られる(310)。その時、各スケールは、判断された最大及び最小値(320)に対する変曲ポイントを示す−2及び+2の結果値を探すよう処理される。これらの特定の軌跡のために、1の値が全スケールに対して記憶される。また、低い周波数スケール、即ち600Hzに対して、正及び負ピークの両方に対する実時間は、以下に説明されるように、駆動応答(driven response)を孤立させる分析のために記憶される。
【0027】
また、時間領域(312)における原応答信号は、ウェーブレット分析から抽出された位相ピークで比較分析するための最大位相変化のポイントになりうるポイントを検出するよう処理される。第1に、原信号の平均及び最大値が判断される。その時、信号は、ゼロ平均を有するように適合される。この信号を用いて、処理は、Apポイントが最もありそうでない領域を特定するために(軸を超える正の偏差)、及び雑音の結果として後の導関数において最大値を除去するために、信号が最大値の平均マイナス0.1を超える全てのポイントを発見及び記憶する。原応答の勾配は、原応答の導関数を取り、そして勾配の絶対平均を判断することによって得られる。得られた結果に対して、絶対平均勾配の10%未満の勾配を示す全データは、0に設定される。その時、導関数は、勾配(316)の極大/極小値を定義するのに用いられるこの勾配閾値データ(314)により得られる。また、同様に、この結果の絶対平均が得られ、些細な最大/最小値を除去するのに用いられる平均の10%の閾値が得られる(段階318)。原応答の全ての正勾配は、1に設定され、負勾配は、−1に設定され、そして第2導関数が得られる(314)。この導関数から、各スケールは、変曲のポイントを示す、−2及び+2の値を発見するために検査される。これらの軌跡の位置は、正及び負のピークのために記憶される。
【0028】
各スケールに対して、第1勾配導関数から判断された正のピーク、即ち最大値がある場合、その時これらの時間(+1又は−1)に対応する任意のピークに対して、最小値になるApポイントを始めに選択的に探すために出現する任意のスケールで、これらは、0に設定される。また、時間領域応答信号(312)の原処理の間にApポイントが発見される領域ではないと以前に思われたポイントに対しても同様になされる。位相データの処理の間に判断されるピークの時間と時間領域信号の処理の間に判断されるそれとは、比較される(段階324)。各ウェーブレットスケール位相最大値の検出に固有のスケール依存位相変動が原因で、ウェーブレットスケール最大値は、時間領域で検出されたそれらと、時間領域で大きさの最大値に対応するよう変動されたそれらと比較される。故に、潜在的Ap軌跡(326)は、検出される。
【0029】
信号のサイズとSpポイントの通常発見する困難さとに起因して、先行する段階がApポイントを判断した可能性が最も高い時、低周波数スケール、600Hzを示すスケール7に対する軌跡時間は、Spポイントを発見することを試みるために検索される。この範囲で+2値(即ち負のピーク)を探す潜在的Apポイントの前に、この検索は、通常0.1から0.9ms(雑音レベルに依存して、例えば0.1の下限値が増やされると0.5である)の範囲で行われる。潜在的Spポイントにおける原応答信号の値が潜在的Apポイント(負の値)の0.9よりも大きい場合、その時Ap軌跡及び潜在的Sp軌跡は、記憶される。SpポイントがApポイントの前0.1から0.9msで発見される場合、その時ApポイントとそのApポイントに近接する時間領域最小値とに対する600Hzスケール軌跡時間は、それらが時間内に同じポイントにあるか否かを判断するためにチェックされる。そうでない場合、その時スケール軌跡は、時間領域軌跡を整合してウェーブレット分解に関連付けられた時間局在特性で任意の限定を考慮するためにリセットされる。確認のために、Spポイントに対する類似の発見手順は、他のスケール上で実行されることができるが、これは、全ての場合で必要とされない。
【0030】
その時全てのスケールは、スケールにわたって最大値を探すために、及びそれらをリンクしてできるだけ狭い時間帯域にわたってチェーンを形成するために処理される(段階330)。これにより、全スケールに関連付けられる疑似Apを除去することができる。また、分析モジュール28は、この段階を実行するためにMATLAB(登録商標)の“Chain maximum-eliminate“false”maxima”ルーチンを使用することができる。
【0031】
以下に説明するように、Sp/Apプロットは、先に判断された極大値に集中する時間領域信号を処理すること(又は取得された時間領域信号を平均すること)によって形成される。Sp/Apプロット形成処理に続き、さらに最大/最小値は、Sp/Apを計算するのに必要な基準(即ち図1に示されるように、誘発応答前の平均レベル)を確立するために判断される。
【0032】
+2の値が発見されない場合、最初に+2の値で次に−2の値を使用し、位相データから判断される変曲のポイントに対して、軌跡は、先に判断されたSpに割当てられる範囲で検索される(通常、Ap前0.5から0.9)。除去処理(330)の後に残る各Apに対して、Sp時間が発見され、Spを記録するために平均化される。
【0033】
基準(ベースライン)は、基準に始めに割当てられる時間範囲で、Spポイント−0.2から−0.6ms(平均Sp/Apの形に基づく)で開始し、+2ポイント変曲値で再び開始し、そして位相データの−2ポイント変曲値(必要に応じ)から開始することによって発見される(340)。各Spプラスオフセットに対して、潜在的基準時間が発見され、初期基準時間を記録するために平均化される。基準時間が基準検査を満足しない場合、その時処理は、新たな基準時間評価から開始して反復される。この処理は、基準検査が満足されるまで反復され、Ap及びSp間にわたる所定時間内に基準があるか否かである。判断された時間における平均大きさが使用される。代替として、基準は、Sp/Apプロットの第1の300サンプルの手段であるとして判断されることができる。
【0034】
Sp2は、位相データの変曲のポイントに対して始めに+2値を使用、+2値がない時に−2を使用し、そして割当てられた範囲(Apの後に始めに1.3ms)で軌跡を検索することによって発見される(330)。各Apプラスオフセットに対して、Sp2時間が判断され、そしてSp2時間を記録するために平均化される。判断された時間における平均大きさが使用される。
【0035】
約3サンプル幅のスパイクである行為は、そこに近接するスケール判断された軌跡に基づき時間領域における極小値の選択によってApの先端で生成される。スパイクに対応するサンプル(5サンプルまでにしうる)は、除去されるべきであり、これは、除去されたサンプル位置へ値を挿入するためにスパイクの各サイド上でポイントの値を使用することによってなされる(342)。15ポイント移動平均フィルタ等のフィルタは、応答を平滑化するために除去の後に適用されることができる。
【0036】
判断されたSp、Sp2及びAp神経イベントに基づき、Sp/Ap及びSp2/Ap比率が計算され、前庭応答(350)のプロットでディスプレイされる。プロットは、神経イベント抽出処理によって判断される最大及び最小値の時間/軌跡を用いてディスプレイモジュール30によって生成される。
【0037】
つまり、神経イベント抽出処理は、Sp/Apプロットに関連付けられた神経イベントの周波数特性の範囲にわたって最大/最小位相変化が発生するポイントを判断するために、変動帯域因数で複素時間周波数アプローチを使用する。最大/最小位相変化は、Ap、Sp、Sp2及び基準ポイントを確立するのに用いられる。これらのポイントを判断できるので、バックグラウンド雑音によって生成されるそれら等のSp/Apプロットに関連しない他の位相変化イベントの削除が可能である。また、最大/最小位相変化ポイントは、ウェーブレット分析によって提供される周波数領域表示の使用に固有の時間局在エラーを低減するために時間領域においてイベントに関連付けられる。
【0038】
図5は、意識的な後方頭部傾斜(患者の目が開いている)への安定状態応答(頭部傾斜開始後の14.4秒)の1秒領域の分析に続きECOGシステム2によって生成されるディスプレイの一例を示す。Sp/Ap比率は、分析モジュールによって22.6%であると判断される。横軸スケールは、1msであり、誘発応答信号の44.1サンプルに等しい。図9は、Sp/Ap比率が28%であると判断される安定状態応答(頭部傾斜開始後の10秒)の10秒領域の分析に続いて生成される類似のディスプレイを示す。
【0039】
また、図6、7及び8は、ECOGシステム2を用いて生成されるSp/Apプロットを示す。プロットは、傾斜椅子上の無意識的な移動に関する。図6は、開始領域に対するプロットであり、図7は、過渡領域に対するプロットであり、そして図8は、安定状態領域に対するプロットである。
【0040】
全てのプロットは、分析モジュール28の神経イベント抽出処理によって判断されうる基準、Ap及びSp(及び音刺激応答と共にだけ通常見られ、また刺激的傾斜応答の開始期間又は成分に関するSp2)ポイントマークを有する。また、図10は、開始領域(暗い)、安定状態領域(明るい)、及び過渡領域(中間)に対して生成されるSp/Apプロットを示す。この図において、Sp及びApは、安定状態応答に関して判断されただけとして示される。
【0041】
説明されたように、システム2は、メニエール病の検出に用いることができるだけでなく、パーキンソン病及び以下に説明されるようにうつ病の診断にも用いることができる前庭からの応答の正確な分析を実行することができる。また、他の神経イベントは、他の聴神経核によって生成されるそれら等のように、探され、判断されることができる。システム2は、他のAERを得るよう構成されることができ、また分析モジュール28は、ABR等のような、得られたAERを正確に処理するのに用いることができる。
【0042】
聴性脳幹応答(ABR)に関するレイテンシの考慮は、各メイン核からの波形のようなSp/Apの分離、そして生成を可能にする。また、台形体の内側核、上オリーブ複合体の外側上オリーブ核及び内側上オリーブ核のような副核からの応答は、分離可能である。また、応答は、視覚伝導路及びその核、実際には最も誘発された応答の伝導路から得ることができる。
【0043】
ABRに対して、システム2は、図13に示されるように、分析モジュール28がABR処理を実行するように適合され、電極10及び12は、ECOG応答の代わりに、ABR応答を得るために再配置される。特に、患者4は、休息したままで、電極10及び12は、表面電極として使用され、一方が各乳様突起に設置され、追加の電極14は、額上で使用される。患者の足は、再びシールド18に接続される。コンピュータシステム20によって生成される刺激は、音響クリック(100us)又は電子音(5ms)、例えば約300〜1000回反復される80dB SPL(音圧レベル)である。各刺激は、200ms離間している。第1の10msポスト刺激が記録される。図13に示されるようにABR処理は、以下を除いて、図4を参照して上記された神経イベント処理と主に同じである。
【0044】
(1)処理(302)の第1段階は、受信された各応答信号の200msから対象となる10msを記録することによって分離を実行する。その時、記録された10ms時間領域信号は、500Hz〜4kHz帯域通過6極バターワースフィルタを用いてフィルタにかけられる。
(2)段階304で使用されるウェーブレットスケールは、0.05のかなり狭い帯域因数が、最小の周波数スケールである600Hzに対して使用されることを除いて、同じ帯域因数を有する。
(3)追加の処理(802)は、対象の各副核に対応するApポイントマークを判断するために段階330の後に実行される。これは、例えばABRのピークIIIに対して3.2msから4.4msである、対象の核及び副核に対するSp/Apプロットを構成するために時間領域データと比較してApのレイテンシに基づいてなされる。
【0045】
図14は、描写されたABRのピークIIからVに神経イベントが対応し、25ABR刺激記録からシステム2によって検出された神経イベントを示すプロットで生成されたディスプレイである。各検出された神経イベントに対するデータは、イベントに関連付けられた時間において、対象の核に対するSp/Apプロットを生成するよう平均化されうる。図15は、異なる核及び副核に対する異なるABR成分のタイミング、即ちレイテンシを示し、聴覚神経(AN)、背側蝸牛核(DCN)、腹側蝸牛核(VCN)、台形体の内側核(MNTB)、外側上オリーブ核(LSO)、内側上オリーブ核(MSO)、外側毛帯(LL)、下丘の中心核(ICC)、下丘の中心周囲核(ICP)、下丘の外核(ICX)及び内側膝状体(MGB)を含む。核及び副核からの応答は、図14に示されるように異なるイベントに分離可能である。クリックの代わりにトーンを使用することで、対象となる核において薄膜からの応答が誘発されうる。クリックを用いて検出された神経イベントは、核の全体の音局在(tonotopic)領域からの応答である。しかし、トーンだけを用いることによって、核の1つの薄膜又は層が活性化され、通常の応答から任意に逸脱した核の中での局在性を許容する。
【0046】
ECOGシステム2のもう一つの用途は、網様体を介して前庭核へ前庭応答で観察され基底核出力によって変更されるであろう基底核と他の接続された構造とにおける変化をもたらす、70〜300Hz内部イベント間隔(時間周波数表示)と神経Sp/Ap応答特性(Ap幅、Spピーク高さ等)とにおける変化を正確に検出することによって、基底核における細胞の退化(例えばパーキンソン病の黒質)を検出することである。特に、これは、パーキンソン病の早期検出だけでなく、セラピー及び薬を扱う効果を定量的に測定するのに有益である。図16は、パーキンソン患者に対してシステム2によって生成される2つのSp/Apプロットを示し、1つは、患者が投薬されない場合であり(上部)、もう1つは、患者がレボドパ投薬された場合である(下部、分り易くするため意図的にオフセット)。投薬の効果は、Sp/Apプロットにおいて、Ap幅、即ちTAP大きさ、Sp大きさ変化、及び一般的変化によって示される。TAPは、図16に示されるように、Apの上昇アームに対してSpピークが水平になる以前の最小ピーク(“ノッチ”)からの時間大きさである。代わりに、異なるTAP大きさは、先の定義で使用されたSpノッチ垂直レベルで水平なApの内部幅にすることができる。
【0047】
他の用途は、網様体を介して前庭核へ前庭応答で観察され基底核出力によって変更されるであろう基底核と他の接続された構造とにおける変化をもたらす、70〜300Hz内部イベント間隔(時間周波数表示)での変化と神経Sp/Ap応答特性(Ap幅、Spピーク高さ等を含む)での変化とを再び正確に検出することによって、抑うつ状態での変化に一致した基底核(例えば低下状態の葉状体)における細胞の活動の減少又は増加を検出することである。特に、これは、うつ病(特に知的障害及び限定的な意思疎通障害)の検出だけでなく、うつ病を扱うセラピー及び薬の効果を定量的に測定するのに役立つ。図17は、うつ病患者に対してシステム2によって生成される2つのSp/Apプロットを示す。1つのプロットは、患者が投薬される前であり(下部及び明るい)、2つ目のプロットは、患者がSSRI(選択的セロトニン取込阻害薬)で投薬されてから3時間後である(上部及び暗い)。また、投薬の効果は、Ap幅、即ちTAP測定マーカーによって特定される。
【0048】
図18は、投薬の有り及び無し(下部及び上部)でメニエール患者に対してシステムによって生成されるSp/Apプロットを示し、また、これは、Sp/Apプロット間のはっきりとした違いとAp幅大きさ、TAPとを示す。使用された投薬は、AVILTM(43.5mg)である。図19は、左側(上部)上であるが右側(下部)上ではない症状とメニエール患者とを比較するSp/Apプロットを示す。
【0049】
システム2の分析モジュール28は中枢神経系(CNS)疾患等の疾患を患者が有するか否か、特に患者がうつ病、メニエール病、又はパーキンソン病であるか否かを判断するために、又はそれらの病気を有する患者間を比較するために、一連のマーカーを生成することができる。マーカーは、図25に示されるように、(i)Sp/Apポイントマーク、(ii)Apの時間及び持続時間である、TAP大きさ(それに加えて、使用されるTAP期間定義に依存するSpピーク)、及び(iii)スケールの平均ウェーブレット係数の低周波エネルギーに対する高周波エネルギーの比率であるHF/LF比率を含む。HF/LF比率は、図25に示されるように、50から500Hz及び2から28Hzの各範囲に関する周波数に対して平均ウェーブレット係数をプロットした、高周波及び低周波領域の応答信号比率である。図20から24は、異なる患者に関して得られた各種TAP大きさを示し、彼らがどのように区別されうるかを説明する。図26は、HF/LF比率がどのように区別マーカーとして使用されうるかを示す。他のマーカーは、基底核成分の変更による応答信号及びSp/Apプロットの変化を判断するために、70〜300Hz範囲に関するスケールの分析によって提供される。変化は、この範囲に対する時間対周波数に関するピークの存在若しくは不存在変化、又は分布変化でもよい。この範囲内のピーク、特に範囲70〜90Hz、110〜150Hz及び200〜300Hzの近傍は、基底核成分の活動を示すことができる。それらのマーカーが使用される場合、追加のスケールは、70から300Hz範囲に対する神経イベント処理によって使用される。
【0050】
診断を助けるために、神経イベント処理によって抽出される大きさ、位相、周波数、及び時間データは、患者から得られる応答に関して、3次元又は4次元(カラー)プロットを生成するのに用いることができる。
【0051】
多くの変更は、添付の図面を参照して本明細書中で説明されるように本発明の範囲から逸脱することなく当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、ECOGシステムからの生成されたECOG応答信号の第1波に関するSp、Ap及びSp2ポイントを示し、累加電位Sp、Sp2及び行為電位Apを定義する図である。
【図2】図2は、患者に接続されたECOGシステムの好ましい実施形態の概略図である。
【図3】図3は、システムによって記録される応答信号である。
【図4】図4は、ECOGシステムによって実行される神経イベント処理のフロー図である。
【図5】図5は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図6】図6は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図7】図7は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図8】図8は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図9】図9は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図10】図10は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図11】図11は、ECOGシステムによって高域フィルタを用いて生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図12】図12は、刺激応答のDCオフセットを含むことによってECOGシステムによって生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図13】図13は、患者に接続されたABRシステムの好ましい実施形態によって事項される神経イベント処理のフロー図である。
【図14】図14は、検出されたABR神経イベントのABRシステムによって生成されるディスプレイである。
【図15】図15は、各種ABR成分の図である。
【図16】図16は、ECOGシステムによって生成されるパーキンソン患者に対するSp/Apプロットのディスプレイである。
【図17】図17は、システムによってうつ病患者に対して生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図18】図18は、システムによってメニエール患者に対して生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図19】図19は、システムによってメニエール患者に対して生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図20】図20は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図21】図21は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図22】図22は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図23】図23は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図24】図24は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図25】図25は、システムによって生成される平均ウェーブレット係数対周波数の図である。
【図26】図26は、システムによって多数の異なる患者に対して生成されるHF/LF比率データマーカーのディスプレイである。
【符号の説明】
【0053】
4 患者
6 椅子
10、12、14 電極
20 コンピュータシステム
32 ユーザーインタフェース
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理を実行するための神経イベント処理及びシステムに関する。処理は、患者の聴覚又は前庭系によって生成される応答を示すデータを抽出するのに有利に使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
システムは、患者の聴覚系の活動を示す患者に対する聴覚誘発応答(AER)又は脳幹聴覚誘発応答(BAER)を得るために開発されてきた。AERは、刺激、通常は音に応答して患者上に設置された電極から得られる電子頭脳波形又は神経応答である。応答のレイテンシと電極の設置とに依存して、種々のAERを得ることができる。最短のレイテンシを備えたそれらは、内耳と聴覚神経とによって生成され、蝸電図法応答と呼ばれる。次の応答は、聴性脳幹内の活動に反応し、聴性脳幹応答(ABR)と呼ばれる。さらなる詳細は、Hall, James W, III; Handbook of Auditory Evoked Responses; Allyn and Bacon; Needham Heights, Massachusetts, 1992で提供される。
【0003】
現在、蝸電図法(“ECOG”又は“ECochG”)システムは、蝸牛と前庭器との診断を実行するのに用いられている。前庭系の場合において、最近、耳のこの特別な部分に対する分析は、前庭電図法(electrovestibulography)(EVestG)と呼ばれ、ECOGの特定のサブクラスである。システムは、患者の蝸牛に対して出来るだけ実用的に記録電極を設置することを含む患者神経応答を生成するのに用いられる。音響トランスジューサ、例えばイヤホンは、聴覚刺激を提供して応答を誘発するのに用いられる。しかし、EVestGに対して、患者は、前庭器から特定の応答を誘発するために異なる方向に傾斜される。また、EVestGに対して聴覚刺激を使用する必要が無い。神経応答を示すECOG信号は、Sp/Ap比率を判断するのに用いられ、多数の状態、特にメニエール病の診断に使用されることができる。第1波は通常、図1に示されるように、応答信号のN1と呼ばれ、累加電位(Sp)、活動電位(Ap)及び第2累加電位(Sp2)を判断するために検査される。応答は、数μVオーダーだけであり、判断及び分離するのを困難にするかなり望ましくない雑音と共に受信される。
【0004】
例えば通常、ECOG信号は、聴覚刺激に応答して患者から多数のサンプルを得て、そして診断のために平均Sp/Ap比率を得ることによって評価される。しかし、患者がメニエール病及び通常のECOGを有し、代わりに患者がさらに異常なECOGを有するがメニエール病を有さない時、この処理は、かなり感度が低く明確ではない。従って、代わりの処理(“フランツ(Franz)処理”)は、メニエール病が前庭系の病状である時、蝸牛応答よりはむしろ前庭応答を直接分析することを求める国際特許公報WO 02/47547に記載されているように、Burkhard Franz教授によって開発されてきた。フランツ処理は、前方、後方、対側、又は同側に自分の頭部を傾斜するよう求められた患者から得られる応答を記録するためにECOGシステムを使用する。処理は、主に23Hzだけでなく11.5Hz及び46Hzで三半規管又は耳石器から到来するであろう応答で周期信号を識別することを求める。この分析は、対象周波数、例えば反復間隔において1/23Hzで、多数の間隔にわたってECOG応答を平均することによってなされる。
【0005】
しかし、フランツ処理には多数の問題がある。第1に、処理は、全ての患者に対して、特に抑制頭部傾斜、とりわけ無意識的な頭部傾斜に対して信用できると考えられていない。また、処理は、聴覚学者がかなり訓練しなければ簡単に採用することができない。また、さらに重要なのは、対象周波数である11.5、23及び46Hzは、周囲雑音に対するバックグラウンド信号が一度除去されると、確実に発見されうる特性信号を有していないことが見出されたことである。これは、ECOG応答のこれらの周波数成分が主にバックグラウンド雑音及び/又は筋肉(前運動及び/又は運動)活動によって誘発され、SCC及び耳石器からの任意の応答がこれらの周波数において検出又は分離するのがかなり困難であることを示す。類似の問題は、ABR等の他のAERを判断及び分析する点で存在する。従って、上記に対処すること、又は少なくとも役立つ代替を提供することが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によると、神経応答信号を受信する過程と、少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解する過程と、位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために、前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、神経イベントを示すピークを判断するために、前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備する神経イベント処理が提供される。
【0007】
また、本発明は、ECOGシステムによって生成される神経応答信号を受信する過程と、前記信号のスペクトルにおいて低周波数を有する中央周波数を示す少なくとも1つのウェーブレットで前記信号を分解する過程と、前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、Sp及びApデータを判断するために前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、前記ウェーブレットは、小さい帯域因数を有する神経イベント処理を提供する。
【0008】
また、本発明は、ABRシステムによって生成される聴性脳幹応答(ABR)信号を受信する過程と、前記信号のスペクトルにおいて低周波数を有する中央周波数を示す少なくとも1つのウェーブレットで前記信号を分解する過程と、前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、Sp及びApデータを判断するために前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、前記ウェーブレットは、小さい帯域因数を有する神経イベント処理を提供する。
【0009】
また、本発明は、処理を実行するためのシステムを提供する。
【0010】
また、本発明は、処理を実行するのに用いるコンピュータプログラムコードを有するコンピュータ読取可能な媒体を提供する。
【0011】
また、本発明は、神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、処理のためにサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解するための、前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別するための、及び神経イベントを示すピークを判断するために前記最大値及び最小値を処理するための分析モジュールとを具備する神経応答システムを提供する。
【0012】
また、本発明は、神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、処理のためのサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、TAPマーカーを生成して人が疾患を有するか否かを判断するために、前記信号を処理するための分析モジュールとを具備する神経応答システムを提供する。
【0013】
また、本発明は、神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、処理のためのサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、70から300Hz範囲でピークに対する時間及び周波数データのプロットを生成して人の聴覚系の成分の活動をディスプレイ及び任意の疾患をマークするために、前記信号を処理するための分析モジュールとを具備する神経応答システムを提供する。
【0014】
また、本発明は、TAPマーカーを生成して前記人が疾患を有するか否かを示すために、人から得られる応答信号を処理する過程を含む神経応答処理を提供する。
【0015】
また、本発明は、70から300Hz範囲におけるピークに対する時間及び周波数データのプロットを生成して人の聴覚系の成分の活動をディスプレイ及び任意の疾患をマークするために、人の信号から得られる応答信号を処理する過程を含む神経応答処理を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2に示されるように、ECOGシステム2は、単独の刺激、例えば無意識の頭部傾斜を受ける患者から、図5から10に示されるように、Sp/Apプロットを得るのに使用される。Sp/Apプロットは、刺激に反応して生成されるECOG信号から生成される。ECOG信号は、ECOGシステム2のコンピュータシステム20の増幅回路22へ電気的に接続される電極10、12及び14から得られる。第1電極10(例えばBio−Logic System Corpによって生成されるECochG電極 http://www.blsc.com/pdfs/HearCatalog.pdf)は、患者4の耳の鼓膜上に設置される。第2電極12は、基準ポイントとして、患者の耳たぶ上に設置され、第3電極14は、患者の額と増幅器の共通ポイントとへ接続される。また、シールド接続16は、試験室の周囲に通常設置される電気的隔離シールド18に対して作られる。シールド18は、増幅器22のシールドへ接続される。聴覚ECOG信号を得るために、連続的な聴覚信号は、耳に加えられ、交互極性音響クリックを含む。しかし、前庭ECOG信号(即ちEVestG信号)のために、患者4は、図2に示されるように、患者の頭部を意識的又は無意識的に傾斜できるようなリクライニング安楽椅子等の椅子6上に位置する。傾斜椅子は、Neuro Kinetics Inc(http://www.neuro-kinetics.com)によって特別に生産され、患者を傾斜させ、筋行為によって比較的乱れないこの刺激に対する応答を生成することができる。無意識的な頭部傾斜は、任意に患者が頚筋活動することなく頭部傾斜を促すために椅子6を操作する助手によって得られる。典型的なシーケンスは、中立位置で20秒、傾斜で20秒、そして再度の傾斜時に20秒である。頭部傾斜は、患者自身によって達成されうる意識的な最大頭部傾斜と約同じ角度でなされる。傾斜は、後、前、同側及び対側である。比較的効率性及び位置特定がないが、しかし、ECOGシステム2はまた、任意の特定の刺激がなく生成される複合聴覚及び前庭系からの応答から導出されるSp/Apプロットを生成することができる。これは、聴覚及び前庭系の記録された自発的バックグラウンド活動に基づく。意識的な頭部傾斜で刺激された応答を得るために、患者は、頭部を中立位置で20秒間、頭部を前方傾斜で20秒間、中立位置に戻して20秒間、再度後方で20秒間、中立位置で20秒間、電極10に対して同側で20秒間、中立位置で20秒間、電極10に対して対側で20秒間、そして中立位置で20秒間のまま、椅子に直立して座るよう求められる。
【0017】
電極10から14上で生成される神経応答は、ECOGシステム2によって連続的に記録される。各傾斜の神経応答信号は、多数の周波数成分を有する時間領域電圧信号である。対象となる主な成分は、22500Hzまでであり、故にシステム2によって使用されるサンプリング比率は、44.1kHzに選択される。この比率で、Spピーク(信号対雑音比率(S/N)に依存する)は、少しのサンプル幅だけである。信号は、(1)バックグラウンド周囲雑音を主に含むバックグラウンド領域、(2)三半規管と耳石器との応答を含む傾斜の開始のための開始領域(傾斜開始後の約0〜5秒)、(3)三半規管(衰える)と耳石器との応答を含む傾斜の残りのための過渡領域(傾斜開始後の約5〜10秒)、及び(4)耳石器の応答を基本的に含む安定状態領域(傾斜開始後の約10〜20秒)という時間内で明確な領域によって特徴付けられる。無意識的な傾斜のための記録された応答信号の一例は、図3に示され、信号の成分は、以下のテーブルに記載される。
【0018】
【表1】
【0019】
ECOGシステム2のコンピュータシステム20は、増幅器22と増幅器22の出力を扱うための通信モジュール24とを含み、キャプチャモジュール26によって提供されるAdobe Audition(http://www.pacific.adobe.com/products/audition/main.html)等のコンピュータプログラムを用いて、ウェーブファイルとして電圧信号超過時間としての応答を記憶する。増幅器22は、CED1902孤立前置増幅器とCED Power1401アナログデジタル変換器(ADC)とを含む。CED1902及びCED1401ADCの両方は、Cambridge Electronic Design Limited(http://www.ced.co.uk)によって生産される。CED1401ADCは、優れた低周波(数Hz未満)応答を有する。また、コンピュータシステム20は、ソフトウェアモジュールを有し、分析モジュール28とディスプレイモジュール30とを含む。分析モジュール28は、他のソフトウェアモジュールと同時に、図4及び13に示されるように、神経イベント抽出処理を実行することに関与するコンピュータプログラムコード(例えば、MATRAB(登録商標)コード(http://www.mathworks.com))を含む。また、分析モジュール28は、以下に説明するように、応答信号サンプルをフィルタにかけるのに用いられる多数の異なるフィルタを実行する。グラフィックスディスプレイモジュール30は、操作者に入力制御を提供して神経イベント抽出処理を制御できるように、及び図5から10に示されたSp/Apプロット等の神経イベントデータのディスプレイを生成するために、ECOGシステム2の操作者用のユーザーインタフェース32を生成する。コンピュータシステム20のソフトウェアモジュール24から30のコンピュータプログラムコードは、Microsoft Windows(登録商標)又はLinux等のオペレーティングシステム34上で動作され、使用されるハードウェアは、増幅器22とIBM Corporation(http://www.ibm.com)によって生産されるような標準的パーソナルコンピュータ20とを含むことができる。ECOG記録システムは、Bio−Logic Systems Corp(http://www.blsc.com/hearing/)によって生産される。神経イベント抽出処理は、モジュール24から34のソフトウェアの制御下で実行されることができる一方、当業者であれば、処理の段階がASIC及びFPGA等の専用ハードウェア回路によって実行されうること、さらにInternet等のコンピュータ通信ネットワークにわたって配信される要素又はモジュールによって実行されうることが分かる。
【0020】
神経イベント抽出処理は、患者から誘発応答を正確に発見することを試みるために、Sp/Apプロットの周知の時間及び周波数特性を使用する。基本的に、プロットの大まかな形と対象となるポイント間の予想レイテンシとだけが周知である。ポイント間のレイテンシは、対象周波数範囲に対応する。故に、Sp/Apプロットは、Sp/Apプロット、特にSp、Ap、Spの開始、Apのオフセット、及びSp2ポイントの開始上のポイントにおける対象周波数範囲にわたって大きな位相変化を示すことが周知である。神経イベント抽出処理は、誘発応答の特徴的な部分を構成すると考えられる適切な時間フレームで、及び適切なレイテンシで発生する神経イベントを判断するのに用いることができる代表的なデータストリームを生成するよう動作する。また、同一の原理は、以下に説明されるように、他のAERに適用されることができる。
【0021】
図4に示されるように、神経イベント抽出処理は、頭部傾斜に応答して増幅器22によって出力される電圧応答信号を記録する過程を含む(段階302)。必要に応じ、50又は60Hzメインのパワーノッチフィルターは、電力周波数調波を除去するために増幅器段階における記録に適用される。また、増幅器22からの応答信号は、段階350において(例えば図11に示されるように)改善されたSp/Apピークプロットを抽出処理で生成できるようにするために高域フィルタにかけることができる(例えば、1極バターワースフィルタにつき120Hz)。かなり低周波のデータが保持される場合、即ち10Hz未満の場合、これは、神経イベントの前に“dc”大きさをプロットして閾値変動を判断するのに使用されることができる(段階350)。これらの閾値変動は、図12に示され、開始領域(最大変動であるため図12の下部)、過渡領域(次に最大の変動)、及び安定状態領域(最低変動であり、上部)に関連する。このかなり低周波であるデータ、特に大きさの変動の検査は、以下に説明するように、中枢神経系障害の診断を支援するのに用いることができ、特に前庭系へのさらなる皮質影響を図示するのに用いることができる。変動の欠如又は増大は、障害を示す傾向にある。
【0022】
記録された応答信号は、以下の数1で提供されるウェーブレットの定義に従い複素モルレー(Morlet)ウェーブレットを用いて大きさ及び位相の両方で分解され(段階304)、ここでtは時間、Fbは帯域因数(bandwidth factor)、そしてFcは各スケールの中央周波数を示す。他のウェーブレットも使用されうるが、モルレーは、その優れた時間周波数局在特性に使用される。神経応答信号x(t)は、各ウェーブレットで畳み込まれる。
【0023】
【数1】
【0024】
前庭系を直接測定するために、7つのスケールが選択されて12000Hz、6000Hz、3000Hz、1500Hz、1200Hz、900Hz及び600Hzの中央周波数でウェーブレットを示す。各種周波数は、以下に説明されるように、対象周波数範囲にわたり、適切な帯域因数に整合されうる。ウェーブレットは、正常前庭Sp/Ap応答信号の対象スペクトルにわたり、波形のピークが時間内に首尾よく発見されるように重要な比較的高い周波数成分を含む。重要なことには、帯域因数は、1未満に設定され、1500から600Hzを示すスケールに対して0.1、その他全周波数に対して0.4である。そのように低い帯域因数を用いることで、周波数帯域の広がりを犠牲にして、比較的低周波数で比較的良好な時間局在を許容し、応答信号によって示される神経イベントを発見及び判断するのに特に有利である。大きさ及び位相データは、ウェーブレットの係数を示す各スケールに対して生成される。
【0025】
各スケールの位相データは、MATLABの“unwrap”及び“diff”関数を用いて解包及び微分される(306)。任意のDCオフセットが除去され、結果は、−1から+1までの範囲でそれを設置するために各スケールに対して正常化される。故に、これは、応答信号に対する位相変化の大きさの比率を提供する、正常化されたゼロ平均データ(zero average data)を生成する。
【0026】
位相変化データの第1導関数(実際には導関数の導関数)は、各スケール(308)に対して得られ、位相変化(320)の極大/小比率を判断するために正常化される。任意の疑似ピークを除去するために、かなり小さな最大/最小値は、第1導関数(322)の平均絶対値の1%の閾値で除去される。第1導関数(308)からの全ての正勾配は、1に設定され、負勾配は、−1に設定され、そして位相変化データの第2導関数は、−2及び+2段階値を生成するために得られる(310)。その時、各スケールは、判断された最大及び最小値(320)に対する変曲ポイントを示す−2及び+2の結果値を探すよう処理される。これらの特定の軌跡のために、1の値が全スケールに対して記憶される。また、低い周波数スケール、即ち600Hzに対して、正及び負ピークの両方に対する実時間は、以下に説明されるように、駆動応答(driven response)を孤立させる分析のために記憶される。
【0027】
また、時間領域(312)における原応答信号は、ウェーブレット分析から抽出された位相ピークで比較分析するための最大位相変化のポイントになりうるポイントを検出するよう処理される。第1に、原信号の平均及び最大値が判断される。その時、信号は、ゼロ平均を有するように適合される。この信号を用いて、処理は、Apポイントが最もありそうでない領域を特定するために(軸を超える正の偏差)、及び雑音の結果として後の導関数において最大値を除去するために、信号が最大値の平均マイナス0.1を超える全てのポイントを発見及び記憶する。原応答の勾配は、原応答の導関数を取り、そして勾配の絶対平均を判断することによって得られる。得られた結果に対して、絶対平均勾配の10%未満の勾配を示す全データは、0に設定される。その時、導関数は、勾配(316)の極大/極小値を定義するのに用いられるこの勾配閾値データ(314)により得られる。また、同様に、この結果の絶対平均が得られ、些細な最大/最小値を除去するのに用いられる平均の10%の閾値が得られる(段階318)。原応答の全ての正勾配は、1に設定され、負勾配は、−1に設定され、そして第2導関数が得られる(314)。この導関数から、各スケールは、変曲のポイントを示す、−2及び+2の値を発見するために検査される。これらの軌跡の位置は、正及び負のピークのために記憶される。
【0028】
各スケールに対して、第1勾配導関数から判断された正のピーク、即ち最大値がある場合、その時これらの時間(+1又は−1)に対応する任意のピークに対して、最小値になるApポイントを始めに選択的に探すために出現する任意のスケールで、これらは、0に設定される。また、時間領域応答信号(312)の原処理の間にApポイントが発見される領域ではないと以前に思われたポイントに対しても同様になされる。位相データの処理の間に判断されるピークの時間と時間領域信号の処理の間に判断されるそれとは、比較される(段階324)。各ウェーブレットスケール位相最大値の検出に固有のスケール依存位相変動が原因で、ウェーブレットスケール最大値は、時間領域で検出されたそれらと、時間領域で大きさの最大値に対応するよう変動されたそれらと比較される。故に、潜在的Ap軌跡(326)は、検出される。
【0029】
信号のサイズとSpポイントの通常発見する困難さとに起因して、先行する段階がApポイントを判断した可能性が最も高い時、低周波数スケール、600Hzを示すスケール7に対する軌跡時間は、Spポイントを発見することを試みるために検索される。この範囲で+2値(即ち負のピーク)を探す潜在的Apポイントの前に、この検索は、通常0.1から0.9ms(雑音レベルに依存して、例えば0.1の下限値が増やされると0.5である)の範囲で行われる。潜在的Spポイントにおける原応答信号の値が潜在的Apポイント(負の値)の0.9よりも大きい場合、その時Ap軌跡及び潜在的Sp軌跡は、記憶される。SpポイントがApポイントの前0.1から0.9msで発見される場合、その時ApポイントとそのApポイントに近接する時間領域最小値とに対する600Hzスケール軌跡時間は、それらが時間内に同じポイントにあるか否かを判断するためにチェックされる。そうでない場合、その時スケール軌跡は、時間領域軌跡を整合してウェーブレット分解に関連付けられた時間局在特性で任意の限定を考慮するためにリセットされる。確認のために、Spポイントに対する類似の発見手順は、他のスケール上で実行されることができるが、これは、全ての場合で必要とされない。
【0030】
その時全てのスケールは、スケールにわたって最大値を探すために、及びそれらをリンクしてできるだけ狭い時間帯域にわたってチェーンを形成するために処理される(段階330)。これにより、全スケールに関連付けられる疑似Apを除去することができる。また、分析モジュール28は、この段階を実行するためにMATLAB(登録商標)の“Chain maximum-eliminate“false”maxima”ルーチンを使用することができる。
【0031】
以下に説明するように、Sp/Apプロットは、先に判断された極大値に集中する時間領域信号を処理すること(又は取得された時間領域信号を平均すること)によって形成される。Sp/Apプロット形成処理に続き、さらに最大/最小値は、Sp/Apを計算するのに必要な基準(即ち図1に示されるように、誘発応答前の平均レベル)を確立するために判断される。
【0032】
+2の値が発見されない場合、最初に+2の値で次に−2の値を使用し、位相データから判断される変曲のポイントに対して、軌跡は、先に判断されたSpに割当てられる範囲で検索される(通常、Ap前0.5から0.9)。除去処理(330)の後に残る各Apに対して、Sp時間が発見され、Spを記録するために平均化される。
【0033】
基準(ベースライン)は、基準に始めに割当てられる時間範囲で、Spポイント−0.2から−0.6ms(平均Sp/Apの形に基づく)で開始し、+2ポイント変曲値で再び開始し、そして位相データの−2ポイント変曲値(必要に応じ)から開始することによって発見される(340)。各Spプラスオフセットに対して、潜在的基準時間が発見され、初期基準時間を記録するために平均化される。基準時間が基準検査を満足しない場合、その時処理は、新たな基準時間評価から開始して反復される。この処理は、基準検査が満足されるまで反復され、Ap及びSp間にわたる所定時間内に基準があるか否かである。判断された時間における平均大きさが使用される。代替として、基準は、Sp/Apプロットの第1の300サンプルの手段であるとして判断されることができる。
【0034】
Sp2は、位相データの変曲のポイントに対して始めに+2値を使用、+2値がない時に−2を使用し、そして割当てられた範囲(Apの後に始めに1.3ms)で軌跡を検索することによって発見される(330)。各Apプラスオフセットに対して、Sp2時間が判断され、そしてSp2時間を記録するために平均化される。判断された時間における平均大きさが使用される。
【0035】
約3サンプル幅のスパイクである行為は、そこに近接するスケール判断された軌跡に基づき時間領域における極小値の選択によってApの先端で生成される。スパイクに対応するサンプル(5サンプルまでにしうる)は、除去されるべきであり、これは、除去されたサンプル位置へ値を挿入するためにスパイクの各サイド上でポイントの値を使用することによってなされる(342)。15ポイント移動平均フィルタ等のフィルタは、応答を平滑化するために除去の後に適用されることができる。
【0036】
判断されたSp、Sp2及びAp神経イベントに基づき、Sp/Ap及びSp2/Ap比率が計算され、前庭応答(350)のプロットでディスプレイされる。プロットは、神経イベント抽出処理によって判断される最大及び最小値の時間/軌跡を用いてディスプレイモジュール30によって生成される。
【0037】
つまり、神経イベント抽出処理は、Sp/Apプロットに関連付けられた神経イベントの周波数特性の範囲にわたって最大/最小位相変化が発生するポイントを判断するために、変動帯域因数で複素時間周波数アプローチを使用する。最大/最小位相変化は、Ap、Sp、Sp2及び基準ポイントを確立するのに用いられる。これらのポイントを判断できるので、バックグラウンド雑音によって生成されるそれら等のSp/Apプロットに関連しない他の位相変化イベントの削除が可能である。また、最大/最小位相変化ポイントは、ウェーブレット分析によって提供される周波数領域表示の使用に固有の時間局在エラーを低減するために時間領域においてイベントに関連付けられる。
【0038】
図5は、意識的な後方頭部傾斜(患者の目が開いている)への安定状態応答(頭部傾斜開始後の14.4秒)の1秒領域の分析に続きECOGシステム2によって生成されるディスプレイの一例を示す。Sp/Ap比率は、分析モジュールによって22.6%であると判断される。横軸スケールは、1msであり、誘発応答信号の44.1サンプルに等しい。図9は、Sp/Ap比率が28%であると判断される安定状態応答(頭部傾斜開始後の10秒)の10秒領域の分析に続いて生成される類似のディスプレイを示す。
【0039】
また、図6、7及び8は、ECOGシステム2を用いて生成されるSp/Apプロットを示す。プロットは、傾斜椅子上の無意識的な移動に関する。図6は、開始領域に対するプロットであり、図7は、過渡領域に対するプロットであり、そして図8は、安定状態領域に対するプロットである。
【0040】
全てのプロットは、分析モジュール28の神経イベント抽出処理によって判断されうる基準、Ap及びSp(及び音刺激応答と共にだけ通常見られ、また刺激的傾斜応答の開始期間又は成分に関するSp2)ポイントマークを有する。また、図10は、開始領域(暗い)、安定状態領域(明るい)、及び過渡領域(中間)に対して生成されるSp/Apプロットを示す。この図において、Sp及びApは、安定状態応答に関して判断されただけとして示される。
【0041】
説明されたように、システム2は、メニエール病の検出に用いることができるだけでなく、パーキンソン病及び以下に説明されるようにうつ病の診断にも用いることができる前庭からの応答の正確な分析を実行することができる。また、他の神経イベントは、他の聴神経核によって生成されるそれら等のように、探され、判断されることができる。システム2は、他のAERを得るよう構成されることができ、また分析モジュール28は、ABR等のような、得られたAERを正確に処理するのに用いることができる。
【0042】
聴性脳幹応答(ABR)に関するレイテンシの考慮は、各メイン核からの波形のようなSp/Apの分離、そして生成を可能にする。また、台形体の内側核、上オリーブ複合体の外側上オリーブ核及び内側上オリーブ核のような副核からの応答は、分離可能である。また、応答は、視覚伝導路及びその核、実際には最も誘発された応答の伝導路から得ることができる。
【0043】
ABRに対して、システム2は、図13に示されるように、分析モジュール28がABR処理を実行するように適合され、電極10及び12は、ECOG応答の代わりに、ABR応答を得るために再配置される。特に、患者4は、休息したままで、電極10及び12は、表面電極として使用され、一方が各乳様突起に設置され、追加の電極14は、額上で使用される。患者の足は、再びシールド18に接続される。コンピュータシステム20によって生成される刺激は、音響クリック(100us)又は電子音(5ms)、例えば約300〜1000回反復される80dB SPL(音圧レベル)である。各刺激は、200ms離間している。第1の10msポスト刺激が記録される。図13に示されるようにABR処理は、以下を除いて、図4を参照して上記された神経イベント処理と主に同じである。
【0044】
(1)処理(302)の第1段階は、受信された各応答信号の200msから対象となる10msを記録することによって分離を実行する。その時、記録された10ms時間領域信号は、500Hz〜4kHz帯域通過6極バターワースフィルタを用いてフィルタにかけられる。
(2)段階304で使用されるウェーブレットスケールは、0.05のかなり狭い帯域因数が、最小の周波数スケールである600Hzに対して使用されることを除いて、同じ帯域因数を有する。
(3)追加の処理(802)は、対象の各副核に対応するApポイントマークを判断するために段階330の後に実行される。これは、例えばABRのピークIIIに対して3.2msから4.4msである、対象の核及び副核に対するSp/Apプロットを構成するために時間領域データと比較してApのレイテンシに基づいてなされる。
【0045】
図14は、描写されたABRのピークIIからVに神経イベントが対応し、25ABR刺激記録からシステム2によって検出された神経イベントを示すプロットで生成されたディスプレイである。各検出された神経イベントに対するデータは、イベントに関連付けられた時間において、対象の核に対するSp/Apプロットを生成するよう平均化されうる。図15は、異なる核及び副核に対する異なるABR成分のタイミング、即ちレイテンシを示し、聴覚神経(AN)、背側蝸牛核(DCN)、腹側蝸牛核(VCN)、台形体の内側核(MNTB)、外側上オリーブ核(LSO)、内側上オリーブ核(MSO)、外側毛帯(LL)、下丘の中心核(ICC)、下丘の中心周囲核(ICP)、下丘の外核(ICX)及び内側膝状体(MGB)を含む。核及び副核からの応答は、図14に示されるように異なるイベントに分離可能である。クリックの代わりにトーンを使用することで、対象となる核において薄膜からの応答が誘発されうる。クリックを用いて検出された神経イベントは、核の全体の音局在(tonotopic)領域からの応答である。しかし、トーンだけを用いることによって、核の1つの薄膜又は層が活性化され、通常の応答から任意に逸脱した核の中での局在性を許容する。
【0046】
ECOGシステム2のもう一つの用途は、網様体を介して前庭核へ前庭応答で観察され基底核出力によって変更されるであろう基底核と他の接続された構造とにおける変化をもたらす、70〜300Hz内部イベント間隔(時間周波数表示)と神経Sp/Ap応答特性(Ap幅、Spピーク高さ等)とにおける変化を正確に検出することによって、基底核における細胞の退化(例えばパーキンソン病の黒質)を検出することである。特に、これは、パーキンソン病の早期検出だけでなく、セラピー及び薬を扱う効果を定量的に測定するのに有益である。図16は、パーキンソン患者に対してシステム2によって生成される2つのSp/Apプロットを示し、1つは、患者が投薬されない場合であり(上部)、もう1つは、患者がレボドパ投薬された場合である(下部、分り易くするため意図的にオフセット)。投薬の効果は、Sp/Apプロットにおいて、Ap幅、即ちTAP大きさ、Sp大きさ変化、及び一般的変化によって示される。TAPは、図16に示されるように、Apの上昇アームに対してSpピークが水平になる以前の最小ピーク(“ノッチ”)からの時間大きさである。代わりに、異なるTAP大きさは、先の定義で使用されたSpノッチ垂直レベルで水平なApの内部幅にすることができる。
【0047】
他の用途は、網様体を介して前庭核へ前庭応答で観察され基底核出力によって変更されるであろう基底核と他の接続された構造とにおける変化をもたらす、70〜300Hz内部イベント間隔(時間周波数表示)での変化と神経Sp/Ap応答特性(Ap幅、Spピーク高さ等を含む)での変化とを再び正確に検出することによって、抑うつ状態での変化に一致した基底核(例えば低下状態の葉状体)における細胞の活動の減少又は増加を検出することである。特に、これは、うつ病(特に知的障害及び限定的な意思疎通障害)の検出だけでなく、うつ病を扱うセラピー及び薬の効果を定量的に測定するのに役立つ。図17は、うつ病患者に対してシステム2によって生成される2つのSp/Apプロットを示す。1つのプロットは、患者が投薬される前であり(下部及び明るい)、2つ目のプロットは、患者がSSRI(選択的セロトニン取込阻害薬)で投薬されてから3時間後である(上部及び暗い)。また、投薬の効果は、Ap幅、即ちTAP測定マーカーによって特定される。
【0048】
図18は、投薬の有り及び無し(下部及び上部)でメニエール患者に対してシステムによって生成されるSp/Apプロットを示し、また、これは、Sp/Apプロット間のはっきりとした違いとAp幅大きさ、TAPとを示す。使用された投薬は、AVILTM(43.5mg)である。図19は、左側(上部)上であるが右側(下部)上ではない症状とメニエール患者とを比較するSp/Apプロットを示す。
【0049】
システム2の分析モジュール28は中枢神経系(CNS)疾患等の疾患を患者が有するか否か、特に患者がうつ病、メニエール病、又はパーキンソン病であるか否かを判断するために、又はそれらの病気を有する患者間を比較するために、一連のマーカーを生成することができる。マーカーは、図25に示されるように、(i)Sp/Apポイントマーク、(ii)Apの時間及び持続時間である、TAP大きさ(それに加えて、使用されるTAP期間定義に依存するSpピーク)、及び(iii)スケールの平均ウェーブレット係数の低周波エネルギーに対する高周波エネルギーの比率であるHF/LF比率を含む。HF/LF比率は、図25に示されるように、50から500Hz及び2から28Hzの各範囲に関する周波数に対して平均ウェーブレット係数をプロットした、高周波及び低周波領域の応答信号比率である。図20から24は、異なる患者に関して得られた各種TAP大きさを示し、彼らがどのように区別されうるかを説明する。図26は、HF/LF比率がどのように区別マーカーとして使用されうるかを示す。他のマーカーは、基底核成分の変更による応答信号及びSp/Apプロットの変化を判断するために、70〜300Hz範囲に関するスケールの分析によって提供される。変化は、この範囲に対する時間対周波数に関するピークの存在若しくは不存在変化、又は分布変化でもよい。この範囲内のピーク、特に範囲70〜90Hz、110〜150Hz及び200〜300Hzの近傍は、基底核成分の活動を示すことができる。それらのマーカーが使用される場合、追加のスケールは、70から300Hz範囲に対する神経イベント処理によって使用される。
【0050】
診断を助けるために、神経イベント処理によって抽出される大きさ、位相、周波数、及び時間データは、患者から得られる応答に関して、3次元又は4次元(カラー)プロットを生成するのに用いることができる。
【0051】
多くの変更は、添付の図面を参照して本明細書中で説明されるように本発明の範囲から逸脱することなく当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、ECOGシステムからの生成されたECOG応答信号の第1波に関するSp、Ap及びSp2ポイントを示し、累加電位Sp、Sp2及び行為電位Apを定義する図である。
【図2】図2は、患者に接続されたECOGシステムの好ましい実施形態の概略図である。
【図3】図3は、システムによって記録される応答信号である。
【図4】図4は、ECOGシステムによって実行される神経イベント処理のフロー図である。
【図5】図5は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図6】図6は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図7】図7は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図8】図8は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図9】図9は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図10】図10は、神経イベント処理によって生成されるSp/Apプロットである。
【図11】図11は、ECOGシステムによって高域フィルタを用いて生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図12】図12は、刺激応答のDCオフセットを含むことによってECOGシステムによって生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図13】図13は、患者に接続されたABRシステムの好ましい実施形態によって事項される神経イベント処理のフロー図である。
【図14】図14は、検出されたABR神経イベントのABRシステムによって生成されるディスプレイである。
【図15】図15は、各種ABR成分の図である。
【図16】図16は、ECOGシステムによって生成されるパーキンソン患者に対するSp/Apプロットのディスプレイである。
【図17】図17は、システムによってうつ病患者に対して生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図18】図18は、システムによってメニエール患者に対して生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図19】図19は、システムによってメニエール患者に対して生成されるSp/Apプロットのディスプレイである。
【図20】図20は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図21】図21は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図22】図22は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図23】図23は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図24】図24は、多数の患者に対してシステムによって生成されるTAP測定マーカーのディスプレイである。
【図25】図25は、システムによって生成される平均ウェーブレット係数対周波数の図である。
【図26】図26は、システムによって多数の異なる患者に対して生成されるHF/LF比率データマーカーのディスプレイである。
【符号の説明】
【0053】
4 患者
6 椅子
10、12、14 電極
20 コンピュータシステム
32 ユーザーインタフェース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経イベント処理であって、
神経応答信号を受信する過程と、
少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解する過程と、
位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために、前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、
神経イベントを示すピークを判断するために、前記最大値及び最小値を処理する過程と
を具備することを特徴とする処理。
【請求項2】
前記分解過程は、1未満の帯域因数を備えたウェーブレットを用いて実行されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項3】
前記ウェーブレットは、前記信号の周波数スペクトルにわたって中心周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項4】
前記区別過程は、前記分解過程によって生成された前記位相データの多数の導関数を生成する過程を含み、前記位相データの前記最大値及び最小値は、前記ウェーブレットのスケールの位相の変化の比率を示すことを特徴とする請求項3に記載の神経イベント処理。
【請求項5】
前記区別過程は、前記信号の前記最大値及び最小値を生成するために前記応答信号の多数の導関数を生成する過程を含み、前記処理過程は、前記最大値及び最小値のための時間データに基づき前記位相データと前記信号との前記最大値及び最小値を相互に関連付ける過程を含むことを特徴とする請求項4に記載の神経イベント処理。
【請求項6】
前記処理過程は、前記最大値及び最小値へ閾値データを適用することによって疑似ピークを除去する過程を含むことを特徴とする請求項5に記載の神経イベント処理。
【請求項7】
前記相互に関連付ける過程は、疑似ピークを除去するために、前記スケールにわたって、及び時間帯域にわたって前記最大値をリンクする過程を含むことを特徴とする請求項6に記載の神経イベント処理。
【請求項8】
前記処理過程は、前記ピークを判断するために、前記最大値及び最小値に前記ピークに対する所定のレイテンシ範囲を適用する過程を含むことを特徴とする請求項7に記載の神経イベント処理。
【請求項9】
前記受信過程は、前記分解過程、区別過程、及び処理過程に対する前記応答信号をフィルタにかける過程及びサンプリングする過程を含むことを特徴とする請求項8に記載の神経イベント処理。
【請求項10】
前記帯域因数は、0.05〜0.4の間であることを特徴とする請求項2に記載の神経イベント処理。
【請求項11】
前記帯域因数は、低周波スケールに対して0.1、及び他のスケールに対して0.4であることを特徴とする請求項10に記載の神経イベント処理。
【請求項12】
前記帯域因数は、最小周波スケールに対して0.05であることを特徴とする請求項10に記載の神経イベント処理。
【請求項13】
少なくとも1つの行為を除去するために前記応答信号をフィルタにかける過程を含むことを特徴とする請求項9に記載の神経イベント処理。
【請求項14】
前記神経イベントは、前記ピークに対応するSp及びApマーカーによって示されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項15】
前記位相データと前記信号との前記最大値及び最小値は、Sp/Apプロットを生成するために比較されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項16】
前記神経応答信号は、人の頭部傾斜に応答してECOGシステムによって生成されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項17】
前記神経応答は、人の聴覚刺激に応答してABRシステムによって生成されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項18】
前記最大値及び最小値は、前記人が中枢神経系疾患を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16又は17に記載の神経イベント処理。
【請求項19】
前記最大値及び最小値は、中枢神経系疾患のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16又は17に記載の神経イベント処理。
【請求項20】
前記最大値及び最小値は、前記人がメニエール病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項21】
前記最大値及び最小値は、メニエール病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項22】
前記最大値及び最小値は、前記人がパーキンソン病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項23】
前記最大値及び最小値は、パーキンソン病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項24】
前記最大値及び最小値は、前記人がうつ病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項25】
前記最大値及び最小値は、うつ病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項26】
前記最大値及び最小値は、人の前庭系から直接得られる応答を示すことを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項27】
前記最大値及び最小値は、前庭系の成分を示すことを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項28】
前記最大値及び最小値は、人の耳の聴神経核及び副核から直接得られる応答を示すことを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項29】
神経イベント処理であって、
ECOGシステムによって生成される神経応答信号を受信する過程と、
前記信号のスペクトルにおいて低周波数を有する中央周波数を示す少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解する過程と、
前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、
Sp及びApデータを判断するために前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、
前記ウェーブレットは、小さい帯域因数を有することを特徴とする処理。
【請求項30】
神経イベント処理であって、
ABRシステムによって生成される聴性脳幹応答(ABR)信号を受信し、
前記信号のスペクトルにおいて低周波数を有する中央周波数を示す少なくとも1つのウェーブレットで前記信号を分解する過程と、
前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、
神経イベントを示すピークを判断するために前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、
前記ウェーブレットは、小さい帯域因数を有することを特徴とする処理。
【請求項31】
前記神経イベントは、聴神経核及び副核を示すことを特徴とする請求項27に記載の神経イベント処理。
【請求項32】
前記帯域因数は、最小周波スケールに対して0.05であることを特徴とする請求項30に記載の神経イベント応答処理。
【請求項33】
先行する請求項のうち何れか1項に記載の処理を実行するための要素を有するシステム。
【請求項34】
請求項1から32のうち何れか1項に記載の処理を実行するのに用いるコンピュータプログラムコードを有するコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項35】
神経応答システムであって、
神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、
処理のためにサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、
少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解するための、前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別するための、及び神経イベントを示すピークを判断するために前記最大値及び最小値を処理するための分析モジュールと
を具備することを特徴とするシステム。
【請求項36】
前記応答信号を誘発する刺激を提供するために人を傾斜するための傾斜椅子を含む請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項37】
前記電極は、人の鼓膜に近接して設置されるECOG電極を含むことを特徴とする請求項36に記載の神経応答システム。
【請求項38】
前記分解過程は、1未満の帯域因数を備えたウェーブレットを用いて実行されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項39】
前記ウェーブレットは、前記信号の周波数スペクトルにわたって中央周波数を有することを特徴とする請求項38に記載の神経応答。
【請求項40】
前記区別過程は、前記分解過程によって生成される前記位相データの多数の導関数を生成する過程を含み、前記位相データの前記最大値及び最小値は、前記ウェーブレットのスケール位相の変化の比率を示すことを特徴とする請求項39に記載の神経応答システム。
【請求項41】
前記区別過程は、前記信号の前記最大値及び最小値を生成するために前記応答信号の多数の導関数を生成する過程を含み、前記処理過程は、前記最大値及び最小値に対する時間データに基づき前記位相データと前記信号との前記最大値及び最小値を相互に関連付ける過程を含むことを特徴とする請求項40に記載の神経応答システム。
【請求項42】
前記処理過程は、前記最大値及び最小値に閾値データを適用することによって疑似ピークを除去する過程を含むことを特徴とする請求項41に記載の神経応答システム。
【請求項43】
前記相互に関連付ける過程は、疑似ピークを除去するために前記スケールにわたって、及び時間帯域にわたって前記最大値をリンクする過程を含むことを特徴とする請求項41に記載の神経応答システム。
【請求項44】
前記処理過程は、前記ピークを判断するために、前記最大値及び最小値に前記ピークに対する所定のレイテンシ範囲を適用する過程を含むことを特徴とする請求項43に記載の神経応答システム。
【請求項45】
前記受信過程は、前記分解過程、区別過程、及び処理過程に対する前記応答信号をフィルタにかける過程及びサンプリングする過程を含むことを特徴とする請求項44に記載の神経応答システム。
【請求項46】
前記帯域因数は、0.05と0.4との間であることを特徴とする請求項38に記載の神経応答システム。
【請求項47】
前記帯域因数は、低周波スケールに対して0.1であり、他のスケールに対して0.4であることを特徴とする請求項46に記載の神経応答システム。
【請求項48】
前記帯域因数は、低周波スケールに対して0.05であることを特徴とする請求項46に記載の神経応答システム。
【請求項49】
前記分析モジュールは、少なくとも1つの行為を除去するために前記応答信号をフィルタにかけることを特徴とする請求項45に記載の神経応答システム。
【請求項50】
前記神経イベントは、前記ピークに対応するSp及びApマーカーによって示されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答。
【請求項51】
前記位相データと前記信号との前記最大値及び最小値は、Sp/Apプロットを生成するために比較されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項52】
前記神経応答信号は、人の頭部傾斜に応答して生成されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項53】
前記神経応答は、人の聴覚刺激に応答して生成されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項54】
前記最大値及び最小値は、前記人が中枢神経系疾患を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52又は53に記載の神経応答システム。
【請求項55】
前記最大値及び最小値は、中枢神経系疾患のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52又は53に記載の神経応答システム。
【請求項56】
前記最大値及び最小値は、前記人がメニエール病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項57】
前記最大値及び最小値は、メニエール病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項58】
前記最大値及び最小値は、前記人がパーキンソン病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項59】
前記最大値及び最小値は、パーキンソン病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答。
【請求項60】
前記最大値及び最小値は、前記人がうつ病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項61】
前記最大値及び最小値は、うつ病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項62】
前記最大値及び最小値は、人の前庭系から直接得られる応答を示すことを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項63】
前記最大値及び最小値は、前庭系の成分を示すことを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項64】
前記最大値及び最小値は、人の耳の聴神経核及び副核から直接得られる応答を示すことを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項65】
神経応答システムであって、
神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、
処理のためにサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、
人が疾患を有するか否かを示すTAPマーカーを生成するために前記信号を処理するための分析モジュールと
を具備することを特徴とするシステム。
【請求項66】
前記疾患は、メニエール病、パーキンソン病及びうつ病のうち1つを含むことを特徴とする請求項65に記載の神経応答システム。
【請求項67】
前記マーカーは、前記疾患のための投薬に対する前記人による応答を示すことを特徴とする請求項65に記載の神経応答システム。
【請求項68】
前記TAPマーカーは、前記処理によって生成されるSp/Apプロットデータに基づき生成されることを特徴とする請求項66に記載の神経応答システム。
【請求項69】
神経応答システムであって、
神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、
処理のためのサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、
70から300Hz範囲でピークに対する時間及び周波数データのプロットを生成して人の聴覚系の成分の活動をディスプレイ及び任意の疾患をマークするために、前記信号を処理するための分析モジュールと
を具備することを特徴とするシステム。
【請求項70】
前記分析モジュールは、前記疾患に対する少なくとも1つの診断マーカーを生成し、前記少なくとも1つのマーカーは、70〜90Hz、110〜150Hz及び200〜300Hzの周波数範囲内で前記データのピークにおける変化を示すことを特徴とする請求項69に記載の神経応答システム。
【請求項71】
前記変化は、前記ピークの存在又は不存在と、前記データの時間対周波数表示のための分布変化とを含むことを特徴とする請求項70に記載の神経応答システム。
【請求項72】
前記成分は、基底核成分であることを特徴とする請求項69に記載の神経応答システム。
【請求項73】
前記疾患は、パーキンソン病及びうつ病のうち1つであることを特徴とする請求項69に記載の神経応答システム。
【請求項74】
TAPマーカーを生成して前記人が疾患を有するか否かを示すために、人から得られる応答信号を処理する過程を含むことを特徴とする神経応答処理。
【請求項75】
前記疾患は、メニエール病、パーキンソン病及びうつ病のうち1つを含むことを特徴とする請求項74に記載の神経応答処理。
【請求項76】
前記マーカーは、前記疾患のための投薬に対する前記人による応答を含むことを特徴とする請求項74に記載の神経応答処理。
【請求項77】
前記TAPマーカーは、前記処理過程によって生成されるSp/Apプロットデータに基づき生成されることを特徴とする請求項75に記載の神経応答処理。
【請求項78】
70から300Hz範囲におけるピークに対する時間及び周波数データのプロットを生成して人の聴覚系の成分の活動をディスプレイ及び任意の疾患をマークするために、人の信号から得られる応答信号を処理する過程を含むことを特徴とする神経応答処理。
【請求項79】
前記分析モジュールは、前記疾患に対する少なくとも1つの診断マーカーを生成し、前記少なくとも1つのマーカーは、70〜90Hz、110〜150Hz及び200〜300Hz周波数領域内で前記データのピークにおける変化を示すことを特徴とする請求項78に記載の神経応答処理。
【請求項80】
前記変化は、前記ピークの存在又は不存在と、前記データの時間対周波数表示のための分布変化とを含むことを特徴とする請求項79に記載の神経応答処理。
【請求項81】
前記成分は、基底核成分であることを特徴とする請求項78に記載の神経応答処理。
【請求項82】
前記疾患は、パーキンソン病及びうつ病のうち1つであることを特徴とする請求項78に記載の神経応答処理。
【請求項83】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるような神経イベント処理。
【請求項84】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるようなシステム。
【請求項85】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるようなコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項86】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるような神経応答システム。
【請求項87】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるような神経応答処理。
【請求項1】
神経イベント処理であって、
神経応答信号を受信する過程と、
少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解する過程と、
位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために、前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、
神経イベントを示すピークを判断するために、前記最大値及び最小値を処理する過程と
を具備することを特徴とする処理。
【請求項2】
前記分解過程は、1未満の帯域因数を備えたウェーブレットを用いて実行されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項3】
前記ウェーブレットは、前記信号の周波数スペクトルにわたって中心周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項4】
前記区別過程は、前記分解過程によって生成された前記位相データの多数の導関数を生成する過程を含み、前記位相データの前記最大値及び最小値は、前記ウェーブレットのスケールの位相の変化の比率を示すことを特徴とする請求項3に記載の神経イベント処理。
【請求項5】
前記区別過程は、前記信号の前記最大値及び最小値を生成するために前記応答信号の多数の導関数を生成する過程を含み、前記処理過程は、前記最大値及び最小値のための時間データに基づき前記位相データと前記信号との前記最大値及び最小値を相互に関連付ける過程を含むことを特徴とする請求項4に記載の神経イベント処理。
【請求項6】
前記処理過程は、前記最大値及び最小値へ閾値データを適用することによって疑似ピークを除去する過程を含むことを特徴とする請求項5に記載の神経イベント処理。
【請求項7】
前記相互に関連付ける過程は、疑似ピークを除去するために、前記スケールにわたって、及び時間帯域にわたって前記最大値をリンクする過程を含むことを特徴とする請求項6に記載の神経イベント処理。
【請求項8】
前記処理過程は、前記ピークを判断するために、前記最大値及び最小値に前記ピークに対する所定のレイテンシ範囲を適用する過程を含むことを特徴とする請求項7に記載の神経イベント処理。
【請求項9】
前記受信過程は、前記分解過程、区別過程、及び処理過程に対する前記応答信号をフィルタにかける過程及びサンプリングする過程を含むことを特徴とする請求項8に記載の神経イベント処理。
【請求項10】
前記帯域因数は、0.05〜0.4の間であることを特徴とする請求項2に記載の神経イベント処理。
【請求項11】
前記帯域因数は、低周波スケールに対して0.1、及び他のスケールに対して0.4であることを特徴とする請求項10に記載の神経イベント処理。
【請求項12】
前記帯域因数は、最小周波スケールに対して0.05であることを特徴とする請求項10に記載の神経イベント処理。
【請求項13】
少なくとも1つの行為を除去するために前記応答信号をフィルタにかける過程を含むことを特徴とする請求項9に記載の神経イベント処理。
【請求項14】
前記神経イベントは、前記ピークに対応するSp及びApマーカーによって示されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項15】
前記位相データと前記信号との前記最大値及び最小値は、Sp/Apプロットを生成するために比較されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項16】
前記神経応答信号は、人の頭部傾斜に応答してECOGシステムによって生成されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項17】
前記神経応答は、人の聴覚刺激に応答してABRシステムによって生成されることを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項18】
前記最大値及び最小値は、前記人が中枢神経系疾患を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16又は17に記載の神経イベント処理。
【請求項19】
前記最大値及び最小値は、中枢神経系疾患のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16又は17に記載の神経イベント処理。
【請求項20】
前記最大値及び最小値は、前記人がメニエール病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項21】
前記最大値及び最小値は、メニエール病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項22】
前記最大値及び最小値は、前記人がパーキンソン病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項23】
前記最大値及び最小値は、パーキンソン病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項24】
前記最大値及び最小値は、前記人がうつ病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項25】
前記最大値及び最小値は、うつ病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項16に記載の神経イベント処理。
【請求項26】
前記最大値及び最小値は、人の前庭系から直接得られる応答を示すことを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項27】
前記最大値及び最小値は、前庭系の成分を示すことを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項28】
前記最大値及び最小値は、人の耳の聴神経核及び副核から直接得られる応答を示すことを特徴とする請求項1に記載の神経イベント処理。
【請求項29】
神経イベント処理であって、
ECOGシステムによって生成される神経応答信号を受信する過程と、
前記信号のスペクトルにおいて低周波数を有する中央周波数を示す少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解する過程と、
前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、
Sp及びApデータを判断するために前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、
前記ウェーブレットは、小さい帯域因数を有することを特徴とする処理。
【請求項30】
神経イベント処理であって、
ABRシステムによって生成される聴性脳幹応答(ABR)信号を受信し、
前記信号のスペクトルにおいて低周波数を有する中央周波数を示す少なくとも1つのウェーブレットで前記信号を分解する過程と、
前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別する過程と、
神経イベントを示すピークを判断するために前記最大値及び最小値を処理する過程とを具備し、
前記ウェーブレットは、小さい帯域因数を有することを特徴とする処理。
【請求項31】
前記神経イベントは、聴神経核及び副核を示すことを特徴とする請求項27に記載の神経イベント処理。
【請求項32】
前記帯域因数は、最小周波スケールに対して0.05であることを特徴とする請求項30に記載の神経イベント応答処理。
【請求項33】
先行する請求項のうち何れか1項に記載の処理を実行するための要素を有するシステム。
【請求項34】
請求項1から32のうち何れか1項に記載の処理を実行するのに用いるコンピュータプログラムコードを有するコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項35】
神経応答システムであって、
神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、
処理のためにサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、
少なくとも1つのウェーブレットを用いて前記信号を分解するための、前記位相データと前記信号との最大値及び最小値を判断するために前記ウェーブレットの位相データと前記応答信号とを区別するための、及び神経イベントを示すピークを判断するために前記最大値及び最小値を処理するための分析モジュールと
を具備することを特徴とするシステム。
【請求項36】
前記応答信号を誘発する刺激を提供するために人を傾斜するための傾斜椅子を含む請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項37】
前記電極は、人の鼓膜に近接して設置されるECOG電極を含むことを特徴とする請求項36に記載の神経応答システム。
【請求項38】
前記分解過程は、1未満の帯域因数を備えたウェーブレットを用いて実行されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項39】
前記ウェーブレットは、前記信号の周波数スペクトルにわたって中央周波数を有することを特徴とする請求項38に記載の神経応答。
【請求項40】
前記区別過程は、前記分解過程によって生成される前記位相データの多数の導関数を生成する過程を含み、前記位相データの前記最大値及び最小値は、前記ウェーブレットのスケール位相の変化の比率を示すことを特徴とする請求項39に記載の神経応答システム。
【請求項41】
前記区別過程は、前記信号の前記最大値及び最小値を生成するために前記応答信号の多数の導関数を生成する過程を含み、前記処理過程は、前記最大値及び最小値に対する時間データに基づき前記位相データと前記信号との前記最大値及び最小値を相互に関連付ける過程を含むことを特徴とする請求項40に記載の神経応答システム。
【請求項42】
前記処理過程は、前記最大値及び最小値に閾値データを適用することによって疑似ピークを除去する過程を含むことを特徴とする請求項41に記載の神経応答システム。
【請求項43】
前記相互に関連付ける過程は、疑似ピークを除去するために前記スケールにわたって、及び時間帯域にわたって前記最大値をリンクする過程を含むことを特徴とする請求項41に記載の神経応答システム。
【請求項44】
前記処理過程は、前記ピークを判断するために、前記最大値及び最小値に前記ピークに対する所定のレイテンシ範囲を適用する過程を含むことを特徴とする請求項43に記載の神経応答システム。
【請求項45】
前記受信過程は、前記分解過程、区別過程、及び処理過程に対する前記応答信号をフィルタにかける過程及びサンプリングする過程を含むことを特徴とする請求項44に記載の神経応答システム。
【請求項46】
前記帯域因数は、0.05と0.4との間であることを特徴とする請求項38に記載の神経応答システム。
【請求項47】
前記帯域因数は、低周波スケールに対して0.1であり、他のスケールに対して0.4であることを特徴とする請求項46に記載の神経応答システム。
【請求項48】
前記帯域因数は、低周波スケールに対して0.05であることを特徴とする請求項46に記載の神経応答システム。
【請求項49】
前記分析モジュールは、少なくとも1つの行為を除去するために前記応答信号をフィルタにかけることを特徴とする請求項45に記載の神経応答システム。
【請求項50】
前記神経イベントは、前記ピークに対応するSp及びApマーカーによって示されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答。
【請求項51】
前記位相データと前記信号との前記最大値及び最小値は、Sp/Apプロットを生成するために比較されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項52】
前記神経応答信号は、人の頭部傾斜に応答して生成されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項53】
前記神経応答は、人の聴覚刺激に応答して生成されることを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項54】
前記最大値及び最小値は、前記人が中枢神経系疾患を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52又は53に記載の神経応答システム。
【請求項55】
前記最大値及び最小値は、中枢神経系疾患のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52又は53に記載の神経応答システム。
【請求項56】
前記最大値及び最小値は、前記人がメニエール病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項57】
前記最大値及び最小値は、メニエール病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項58】
前記最大値及び最小値は、前記人がパーキンソン病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項59】
前記最大値及び最小値は、パーキンソン病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答。
【請求項60】
前記最大値及び最小値は、前記人がうつ病を有するか否かを示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項61】
前記最大値及び最小値は、うつ病のための投薬に対する前記人による応答を示すデータを生成するのに用いられることを特徴とする請求項52に記載の神経応答システム。
【請求項62】
前記最大値及び最小値は、人の前庭系から直接得られる応答を示すことを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項63】
前記最大値及び最小値は、前庭系の成分を示すことを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項64】
前記最大値及び最小値は、人の耳の聴神経核及び副核から直接得られる応答を示すことを特徴とする請求項35に記載の神経応答システム。
【請求項65】
神経応答システムであって、
神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、
処理のためにサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、
人が疾患を有するか否かを示すTAPマーカーを生成するために前記信号を処理するための分析モジュールと
を具備することを特徴とするシステム。
【請求項66】
前記疾患は、メニエール病、パーキンソン病及びうつ病のうち1つを含むことを特徴とする請求項65に記載の神経応答システム。
【請求項67】
前記マーカーは、前記疾患のための投薬に対する前記人による応答を示すことを特徴とする請求項65に記載の神経応答システム。
【請求項68】
前記TAPマーカーは、前記処理によって生成されるSp/Apプロットデータに基づき生成されることを特徴とする請求項66に記載の神経応答システム。
【請求項69】
神経応答システムであって、
神経応答信号を得るために人に接続するための電極と、
処理のためのサンプル形式の前記信号を受信及び生成するための増幅器と、
70から300Hz範囲でピークに対する時間及び周波数データのプロットを生成して人の聴覚系の成分の活動をディスプレイ及び任意の疾患をマークするために、前記信号を処理するための分析モジュールと
を具備することを特徴とするシステム。
【請求項70】
前記分析モジュールは、前記疾患に対する少なくとも1つの診断マーカーを生成し、前記少なくとも1つのマーカーは、70〜90Hz、110〜150Hz及び200〜300Hzの周波数範囲内で前記データのピークにおける変化を示すことを特徴とする請求項69に記載の神経応答システム。
【請求項71】
前記変化は、前記ピークの存在又は不存在と、前記データの時間対周波数表示のための分布変化とを含むことを特徴とする請求項70に記載の神経応答システム。
【請求項72】
前記成分は、基底核成分であることを特徴とする請求項69に記載の神経応答システム。
【請求項73】
前記疾患は、パーキンソン病及びうつ病のうち1つであることを特徴とする請求項69に記載の神経応答システム。
【請求項74】
TAPマーカーを生成して前記人が疾患を有するか否かを示すために、人から得られる応答信号を処理する過程を含むことを特徴とする神経応答処理。
【請求項75】
前記疾患は、メニエール病、パーキンソン病及びうつ病のうち1つを含むことを特徴とする請求項74に記載の神経応答処理。
【請求項76】
前記マーカーは、前記疾患のための投薬に対する前記人による応答を含むことを特徴とする請求項74に記載の神経応答処理。
【請求項77】
前記TAPマーカーは、前記処理過程によって生成されるSp/Apプロットデータに基づき生成されることを特徴とする請求項75に記載の神経応答処理。
【請求項78】
70から300Hz範囲におけるピークに対する時間及び周波数データのプロットを生成して人の聴覚系の成分の活動をディスプレイ及び任意の疾患をマークするために、人の信号から得られる応答信号を処理する過程を含むことを特徴とする神経応答処理。
【請求項79】
前記分析モジュールは、前記疾患に対する少なくとも1つの診断マーカーを生成し、前記少なくとも1つのマーカーは、70〜90Hz、110〜150Hz及び200〜300Hz周波数領域内で前記データのピークにおける変化を示すことを特徴とする請求項78に記載の神経応答処理。
【請求項80】
前記変化は、前記ピークの存在又は不存在と、前記データの時間対周波数表示のための分布変化とを含むことを特徴とする請求項79に記載の神経応答処理。
【請求項81】
前記成分は、基底核成分であることを特徴とする請求項78に記載の神経応答処理。
【請求項82】
前記疾患は、パーキンソン病及びうつ病のうち1つであることを特徴とする請求項78に記載の神経応答処理。
【請求項83】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるような神経イベント処理。
【請求項84】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるようなシステム。
【請求項85】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるようなコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項86】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるような神経応答システム。
【請求項87】
添付図面を参照して実質的に以上に説明されるような神経応答処理。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2008−511347(P2008−511347A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528527(P2007−528527)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001330
【国際公開番号】WO2006/024102
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(594202523)モナシュ ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001330
【国際公開番号】WO2006/024102
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(594202523)モナシュ ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】
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