神経インタフェースをホスト神経系と接続するためのバイオハイブリッド型インプラント
【課題】電子回路を人体の活性細胞(例えば、ニューロン)とインタフェース接続するのに適したデバイスを提供する。
【解決手段】細胞を記録及び/又は刺激するのに適したバイオハイブリッド型インプラントは、ニューロンを電子回路と接続するための神経インタフェース(13)を備えた基板(502)を収容した、少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1)と、隔離されたチャンバ(1)の少なくとも1つと接続するための第1インタフェース(11)および、ホスト神経系(7)または他の隔離されたチャンバ(B)と接続するための第2インタフェース(9)を有する、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル(10)とを備える。
【解決手段】細胞を記録及び/又は刺激するのに適したバイオハイブリッド型インプラントは、ニューロンを電子回路と接続するための神経インタフェース(13)を備えた基板(502)を収容した、少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1)と、隔離されたチャンバ(1)の少なくとも1つと接続するための第1インタフェース(11)および、ホスト神経系(7)または他の隔離されたチャンバ(B)と接続するための第2インタフェース(9)を有する、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル(10)とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋込み可能な(ニューロン)デバイス、神経機能代替(neuro-prosthetics)、認知プロテーゼ(cognitive prostheses)の分野に関する。さらに本開示は、電子回路を人体の活性細胞(例えば、ニューロン)とインタフェース接続するのに適したデバイスに関する。詳細には、生体適合性のある埋込み可能なデバイス、その製造方法、ならびにこうしたデバイスの使用方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスと人体のニューロンとのインタフェース接続は、神経機能代替の分野において重要である。末梢神経と接続するための既存のインタフェースは、監視すべき神経系または生体細胞と接触する電極を使用する。これらの電極の例は、カフ(cuff)電極、またはシーブ(sieve)電極、または貫通性ニューロン内(intraneural)電極であるが、中枢神経系と接続するためのインタフェースは、例えば、脳深部刺激用の円柱電極や、例えば、ユタ(Utah)プローブ状システムまたはミシガン(Michigan)プローブ状システムなどのマルチ電極アレイである。しかしながら、これらのプローブ状システムは、更に進歩した神経機能代替インタフェースを実現し、例えば、半導体デバイスを神経回路網と接続する場合、ある問題に遭遇する。この場合、主要な問題は下記のとおりである。
【0003】
1.良好な信号対ノイズおよびインタフェース比(SNIR)で神経信号を記録する能力。電極は、目標ニューロンと密接なコンタクトをとる必要がある。
2.電極内への埋込み時の外科手術に起因した、目標ニューロンおよび神経突起(neurite)への損傷。
3.脳に対するプローブのマイクロ運動に起因した長期的な機械的損傷。
4.神経炎症(異物反応)によって生ずる神経組織の長期的な変性。
5.腐食に起因した電極の寿命減少。
6.インプラントの電力消費の低下。これは、非特異的な(大きな)目標物の電気刺激によって悪化する。そして、低いSNR記録回路。複雑なデータ収集回路および信号を解明するための信号処理をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題を解決するために、生体組織と電子回路との間でより効率的で信頼性のあるインタフェースのニーズが存在する。
【0005】
(発明の要旨)
本開示の実施形態の目的は、電子システムとニューロンとの間のインタフェースが形成可能である、組織、例えば、脳または心臓、ニューロコンピュータインタフェースを提供することである。これにより下記のことが可能になる。
【0006】
・求心性(afferent)神経(例えば、痛み知覚用の感覚神経)とのコネクションが形成可能であり、及び/又は、
・遠心性(efferent)神経(例えば、義手を制御するための運動神経)とのコネクションが形成可能であり、及び/又は、
・脳内または脊髄内の神経核とのコネクションが形成可能であり、及び/又は、
・脳深部刺激療(例えば、パーキンソン病用の長期インプラント)が実施可能であり、及び/又は、
・神経プローブセンサアレイ(例えば、てんかん性発作を検出するため)が形成可能であり、及び/又は、双方向の脳インタフェース(いわゆる「閉ループ」神経制御系のための基礎を提供するため)が形成可能である。
【0007】
本開始の目的は、例えば、カフ電極、シーブ電極、ユタプローブ状システムまたはミシガンプローブ状システムなどの既存のインタフェースに関連した問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
既存のインタフェースシステムに関連した問題は、ホストニューロンを自然成長した神経突起とインタフェース接続することにより、本開示のバイオハイブリッド型インプラントによって解決される。自然成長した神経突起は、可撓性のガイドチャネルから/を経由して、チップ及び/又はMEAを含む神経トランスデューサアレイ(NTA: Neuronal Transducer Array)に向かって閉システム内に案内される。この閉システムは、一般に、バイオハイブリッド型インプラントとも称され、付着した体外(in-vitro)培養細胞および支持媒体の局所的な流体循環を含んでもよい。神経突起は、ホスト本体からバイオハイブリッド型インプラントへ可撓性ガイドチャネルを通じて案内され、神経トランスデューサアレイ(NTA)とのインタフェース接続によって、記録及び/又は刺激される。代替として、体外培養ニューロンを刺激して、ガイドチャネルを通じて案内された神経突起を成長させ、ホスト本体の中に成長して、ホストニューロンと接触することができる。
【0009】
本開示のバイオハイブリッド型インプラントは、電子システム(本願では、一般に神経トランスデューサアレイ(NTA)と称している)が、関心のある生体組織の外(例えば、脳の外部)、あるいは、重要でない組織エリア内(例えば、皮膚の下)に位置している点で、既存のインタフェースシステムとさらに相違する。
【0010】
体外培養した神経突起を関心のある組織の中に成長させることによって、あるいは、ホスト神経突起をその組織の外で成長させることによって、神経トランスデューサアレイ(NTA)との現実のコネクションが、隔離され管理された環境において、関心のある組織の外で可能になり、汚染のリスクを著しく低減できる。これにより閉システムは、ホスト免疫系を、培養したニューロンから効率的に分離でき、インタフェースでの炎症のリスクを低減でき、電極腐食のリスクを低減できる。
【0011】
本開示に係る少なくとも幾つかの実施形態の利点は、特に、インタフェースが機能化され、及び/又は最適化されたマイクロトポロジーを有する場合、体外培養した(解離)ニューロンが平面的なインタフェースに対して良好に付着することである。
【0012】
本開示に係る少なくとも幾つかの実施形態の更なる利点は、閉システムのおかげで、体外培養したニューロンは、ガイドチャネルによってホストニューロンから分離(隔離)可能であることである。これにより、体外培養したニューロンが、幹(stem)細胞、初代細胞培養、生命体の遺伝子組み換え胚からの体外遺伝子導入細胞など、から由来する広範囲の細胞から選択可能になる。閉システムおよび集積流体システムのおかげで、細胞は、培地または他の生化学化合物からなる自己のサポートを有することができる。これにより培養プロセスは、管理された条件で実施でき、結果を最適化できる。
【0013】
本開示に係る少なくとも幾つかの実施形態の更なる利点は、神経トランスデューサアレイ(NTA)を含む基板が、欧州特許公開第1967581号に記載されているように、マイクロネイル(micro-nail)電極をさらに備える場合、多数のニューロンについて、より効率的なニューロンセンサ結合(coupling)を用いてアドレス指定が可能であることである。マイクロネイル電極は、その場(in-situ)CMOS回路と、特別なマイクロ生化学構造、例えば、堆積した薬品のパターン(化学パターニング)、パターン化した表面マイクロ構造、バイオセンサ、マイクロ流体デバイス、光学センサ、MEMS状デバイスなどをさらに備えてもよい。
【0014】
本開示に係る実施形態の利点は、本開示のバイオハイブリッド型埋込み可能なシステムは、直接アドレス指定が可能であり、これにより、電力効率が良い単一セルの刺激のおかげで多数のニューロンを刺激することが可能になることである。さらに、直接アドレス可能性は、読み出される記録信号について著しく増加した信号対ノイズ比(SNR)をもたらし、これにより低電力収集回路および複雑でない信号処理アルゴリズムを使用することが可能になる。
【0015】
さらに本開示に係る実施形態の利点は、本開示のバイオハイブリッド型埋込み可能なシステムは、多数の細胞についてアドレス指定が可能であり、著しく増加した読み出し密度をもたらすことである。
【0016】
さらに本開示に係る実施形態の利点は、追加の支持細胞が、本発明のバイオハイブリッド型埋込み可能なシステムのNTAに付着できることである。異なる細胞の使用は、異なる/特定のニューロンについてアドレス指定が可能であり、及び/又は、バイオハイブリッド型インプラントによってコンタクトが取れるという利点を有する。
【0017】
さらに本開示に係る実施形態の利点は、ガイドチャネルは、要求に応じて伸び縮み可能な弾性材料で製作可能であり、これにより該システムを人体の上/中に、例えば、皮下に埋め込む可能性のある方法について大きな柔軟性を付与できる。
【0018】
その特性およびガイドチャネルを製造する方法についての更なる詳細は、論文(IEEE TRANSACTIONS ON NEURAL SYSTEMS AND REHABILITATION ENGINEERING, VOL. 17, NO. 5, OCTOBER 2009, Long Micro-Channel Electrode Arrays: A Novel Type of Regenerative Peripheral Nerve Interface, Stephanie P. Lacour)において見られる。
【0019】
上記目的は、本発明に係るデバイス(インプラント)およびデバイスの製造方法によって達成される。
【0020】
第1態様によれば、本開示は、細胞を記録及び/又は刺激するのに適したバイオハイブリッド型インプラントに関するものであり、該インプラントは、神経トランスデューサアレイ(NTA)を有する基板を収容する、隔離された閉システムを含む第1ブロックと、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネルを含む第2ブロックと、ホスト神経系(ニューロン)を含み、ガイドチャネルを介して第1ブロックとのコンタクトを取る第3ブロックとを備えている。
【0021】
インプラントのNTAは、電子回路、チップ、マルチ電極アレイ(MEA: multi-electrode array)、バイオセンサ、光学センサ/刺激装置のうち少なくとも1つを備えてもよい。
【0022】
インプラントの第1ブロックにある基板は、シリコン、ガラス、SOI及び/又はポリマー材料で製作してもよい。
【0023】
インプラントの第1ブロックにある基板は、体外培養ニューロン細胞を含んでもよく、必要に応じて、支持細胞、例えば、シュワン(Schwann)細胞、乏突起膠細胞(oligodendrocytes)または他のグリア細胞をさらに含んでもよい。本開示に係る実施形態の利点は、培地中でのグリア細胞の添加は、ニューロンのためのその支持機能のため、長期安定性を改善できる。
【0024】
インプラントの第1ブロックにある基板は、少なくとも1つのガイドチャネルとのインタフェース接続のための電子デバイスと、細胞の生存能力のためのマイクロ流体デバイスとをさらに備えてもよい。本開示に係る実施形態の利点は、マイクロ流体チャネルなどのマイクロ流体装置の追加により、支持媒体・成長因子を配給し、グリア細胞などの支持細胞を配給し、ホスト本体のための透析システムを提供することが可能になることである。
【0025】
インプラントの第1ブロックにある基板は、基板の面に対して略垂直なマイクロネイル電極をさらに備えてもよく、必要に応じて、その場(in-situ)CMOS回路、特別なマイクロ構造またはバイオ構造、例えば、堆積した薬品のパターン、パターン化した表面マイクロ構造、バイオセンサ、マイクロ流体デバイス、光学センサ、MEMS状デバイスなどをさらに備えてもよい。本開示に係る実施形態の利点は、第1ブロックの基板への追加のマイクロ針構造に起因して、多数のニューロンについて、より効率的なニューロンセンサ結合(coupling)を用いてアドレス指定が可能であることである。本開示に係る実施形態の利点は、追加のマイクロ針構造により、(体外)細胞をマイクロ針構造に付着させ、細胞を案内することが可能になり、換言すると、細胞は、マイクロ針構造によって規定された所定の方向に成長するようになることである。
【0026】
インプラントのガイドチャネルは、生体適合性があり、好ましくは可撓性の材料、必要に応じて、ホスト組織と機械的な適合性を有し、強い機械的歪みの領域を通過する際、軸索を保護することが可能な伸縮性の材料で製作される。本開示に係る実施形態の利点は、ガイドチャネル(伸縮性の材料で製作)が、要求材料に依存して短縮化してもよい。本開示の少なくとも幾つかの実施形態の更なる利点は、弾性材料で製作されたガイドチャネルが、伸び縮み可能であり、人体、例えば、皮下へのシステムの埋め込みに対して大きな柔軟性を付与することである。
【0027】
インプラントの少なくとも1つのガイドチャネルは、酸化物、シリコン、ポリマー(例えば、ポリイミド、PDMSなど)及び/又は薄い金属で製作してもよい。
【0028】
インプラントの少なくとも1つのガイドチャネルは、酸化物、シリコン、ポリマー(例えば、ポリイミド、PDMSなど)及び/又は薄い金属で製作された追加の可撓性チューブによって束ねられたり、包囲されてよい。
【0029】
インプラントのガイドチャネルは、その長手方向表面に沿って電極及び/又は開口をさらに備えてもよい。本開示に係る実施形態の利点は、ガイドチャネルでの開口は、神経突起を成長させて、末梢神経または脊髄神経とのシナプス結合を得るために使用できることである。開口は、好ましくは、(i)培地はチャネルの外側に漏出せず、及び/又は、(ii)これらは、開口を通る選択的な軸索成長(outgrowth)を達成できる(ある直径範囲は、あるタイプの軸索成長を阻止し、他のものの通過を許容することを意味する。)ように製作される。開口の直径は、10μm〜50μmの範囲でもよい。本開示に係る実施形態の更なる利点は、電極が少なくとも1つのガイドチューブの内面に設置でき、電極は、例えば、神経突起がガイドチャネルの中にどの距離まで成長したかを検出するために使用できることである(検出成長(progress))。本開示に係る実施形態の更なる利点は、電極が少なくとも1つのガイドチャネルの外面に設置でき、電極は、例えば、脳深部刺激のための使用できることである。
【0030】
好ましい実施形態によれば、本開示のインプラントは、ホストの神経系を制御及び/又は観察するために使用でき、それはインプラントの体外培養ニューロンとホスト神経系とのコンタクトを取ることによって達成できる。第1の代替例では、体外ニューロン細胞は、ホストのニューロン活動を記録するために用いられる(観察)。第2の代替例では、インプラントの体外ニューロン細胞は、ある集団のニューロンを選択的に刺激することによって、ホストのニューロン活動を制御するために用いられる(制御)。第3の代替例では、インプラントの体外ニューロン細胞は、最初にホストのニューロン活動を刺激し(例えば、電位を誘発させることによって)、次にホストのニューロン活動を観察することによって、ホストのニューロン活動を制御し、そして記録するために用いられる。第4の代替例では、インプラントの体外ニューロン細胞は、最初にホストのニューロン活動を観察し、次にホストのニューロン活動を刺激し(例えば、電位を誘発させることによって)、閉じた制御ループでこれらのステップ(必要に応じて)を繰り返すことによって、ホストのニューロン活動を記録し、そしてホストの神経系を制御するために用いられる。
【0031】
第2態様によれば、本開示は、バイオハイブリッド型インプラントの製造方法に関するものであり、該方法は、次のステップを少なくとも含む。
・支持基板を入手するステップ。
・基板上に、神経トランスデューサアレイ(NTA)を設けるステップ。
・基板およびNTAの周りにパッケージを設けて、外部環境から隔離された閉じたチャンバを得るステップ。
・閉じたチャンバの中に通ずる少なくとも1つの可撓性ガイドチャネルを設けて、NTAとのコンタクトを取るステップ。
・少なくとも1つのガイドチャネルの内面への神経突起の成長を促進する手段を設けるステップ。
【0032】
本開示に係る少なくとも幾つかの実施形態の利点は、バイオハイブリッド型インプラントの種々のコンポーネントを製造するために、従来の処理ステップが使用できることである。
【0033】
本開示のインプラントの製造方法は、電子回路、チップ、マルチ電極アレイ(MEA)、バイオセンサ、光学センサ、光学刺激装置のうち少なくとも1つを設けるステップをさらに含んでもよく、該方法は、少なくとも1つのガイドチャネルとのインタフェース接続のための追加の電子回路、および細胞の生存能力のためのマイクロ流体デバイスを設けるステップをさらに含んでもよい。
【0034】
本開示のインプラントの製造方法は、体外培養ニューロン細胞、及び/又は、基板に付着した支持細胞を設けるステップをさらに含んでもよい。
【0035】
本開示の特定および好ましい態様が、添付の独立請求項および従属請求項に記述されている。従属請求項からの特徴は、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わせてもよく、適切であって、請求項に明示的に記述されたものだけでない。
【0036】
本開示の上記および他の態様は、以下に説明する実施形態を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に従って、ホストの遠心性ニューロンを神経インタフェースと接続するためのバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示す。
【図2】本発明の実施形態に従って、体外培養ニューロンを求心性(例えば、感覚性)ニューロンと接続するためのバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示す。
【図3】本発明の実施形態に従って、体外培養ニューロンを有髄(myelated)軸索と接続するためのバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示す。
【図4】本発明の実施形態に従って、体外培養ニューロンをホスト中枢神経系と接続するためのバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示す。
【図5】本発明の実施形態に従って、共に接続された2つのバイオハイブリッド型システムの概略図を示すもので、2つの異なる細胞培養、または、組織スライス、例えば、脳スライスを持つ細胞培養の相互接続性を評価するための体外試験の構成を形成する。
【図6】本発明の実施形態に従って、バイオハイブリッド型インプラントのための背側(dorsal)接続方法の概略図を示す。
【図7】本発明の実施形態に従って、バイオハイブリッド型インプラントのための垂直軸索接続方法の概略図を示す。
【図8】本発明の実施形態に従って、バイオハイブリッド型インプラントのための側方軸索接続方法の概略図を示す。
【図9】本発明の実施形態に従って、皮下のバイオハイブリッド型インプラントの実装の概略図を示す。
【図10】図1に関して説明したように、バイオハイブリッド型インプラントおよびその使用と対応した第1単方向システムを示す。
【図11】図2に関して説明したように、バイオハイブリッド型インプラントおよびその使用と対応した第2単方向システムを示す。
【図12】図10に示すような第1単方向システムおよび図11に示すような第2単方向システムの両方と、両方の単方向システムを電気接続するための中央信号解明および決定部とを備えたバイオハイブリッド型インプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のため、誇張してスケールどおり描いていないことがある。請求項中のいずれの符号も、範囲を限定するものとして解釈すべきでない。異なる図面において、同じ参照符号は、同じまたは類似の要素を参照する。
【0039】
ここで用いたように、他に言及していない限り、ニューロンまたは神経細胞は、電気的および化学的な信号伝達によって情報を処理し伝送する、電気的に興奮可能な細胞である。この状況において、用語「神経突起(neurites)」は、ニューロンの細胞体からの任意の突起に関係する。この突起は、軸索(axon)または樹状突起(dendrite)になり得る。樹状突起は、細胞体から生ずるフィラメントであり、しばしば数百マイクロメータに渡って延びており、複数回分岐している。樹状突起は、信号を受信し、これらを細胞から細胞体および軸索へ伝達する役割を担う。
【0040】
軸索は、細胞体から生ずる特殊な細胞フィラメントであり、ある距離に渡って、人間では1m、他の種ではそれ以上遠くまで延びている。軸索は、ニューロンの一部であり、ニューロンから他のニューロンまたはニューロン受容体、例えば、筋肉などの神経インパルスのターゲットへの細胞メッセージの通過を担う。ニューロンの細胞体は、しばしば複数の樹状突起を生じさせるが、1つより多い軸索を生じさせず、軸索は、終端する前に複数回分岐することがある。用語「神経突起」は、未熟または発達中のニューロン、特に、培養下の細胞に言及する場合にしばしば用いられる。分化が完了する前は、軸索を樹状突起と区別することが困難であるためである。
【0041】
遠心性ニューロンは、運動ニューロンまたは効果器(effector)ニューロンとして知られ、神経インパルスを中枢神経系から、筋肉や腺などの効果器へ運搬する。反対の活動または方向または流れが求心性である。求心性ニューロンは、感覚ニューロンまたは受容体ニューロンとして知られ、神経インパルスを受容体または感覚器官から中枢神経系へ向けて運搬する。
【0042】
シナプスは、ニューロンが電気的または化学的な信号を他の細胞(神経やその他)に伝達できるようにする接合部である。シナプスにおいて、信号伝達ニューロン(シナプス前ニューロン)のプラズマ細胞膜は、目標(シナプス後)細胞の細胞膜と密接同格(close apposition)になっている。シナプス前箇所およびシナプス後箇所の両方は、2つの細胞膜を共にリンクして、信号伝達プロセスを実行する幅広アレイの分子機構を収容している。
【0043】
ここで用いたように、他に言及していない限り、用語「神経トランスデューサアレイ」または「NTA」は、ニューロンを電子回路と接続するためのいずれか適切な神経インタフェースに関連している。NTAは、例えば、いずれか適切な電子回路、例えば、いずれか適切なチップを含んでもよい。NTAは、いずれか適切なマルチ電極アレイ(MEA: multi-electrode array)を備えてもよい。NTAは、バイオセンサ、化学的刺激装置、光学センサ/刺激装置、マイクロネイルなどのパターン化構造のうち1つ又はそれ以上をさらに備えてもよい。
【0044】
マルチ電極アレイ(MEA)またはマイクロ電極アレイは、複数のプレートまたはシャンク(shank)を含み、それを通じて神経信号が取得または配給され、基本的にはニューロンを電子回路と接続する神経インタフェースとして機能する。MEAについて2つの一般クラスがあり、体内使用のための埋込み可能なMEAと、体外使用のための埋込み不可のMEAとがある。
【0045】
本開示は、その幾つかの実施形態の詳細な説明によって説明している。本開示の他の実施形態が、本発明の技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成できることは明らかであり、本開示は、添付の請求項の意味によってのみ限定される。
【0046】
説明の手段として、本開示の実施形態はこれに限定されず、本開示の少なくともいくつかの実施形態の特徴および利点のより詳細な説明が図面に関して説明しており、これは実施形態を説明するために用いられ、本発明のための限定であることは意図していない。
【0047】
本開示の第1態様によれば、「バイオハイブリッド型インプラント」が開示されている。第1態様に係るこうしたバイオハイブリッド型インプラントは、一方ではニューロン、例えば、生体ホストニューロン(例えば、自然成長した神経突起によって)と、他方では電子回路との間のインタフェースを実現するのに適したデバイスである。本開示の実施形態に係る「バイオハイブリッド型インプラント」は、ホストニューロン活動を刺激及び/又は記録するために使用できる。「バイオハイブリッド型インプラント」は、好ましくは、任意に添加した体外培養細胞および支持媒体の局所流体循環との神経インタフェースを含む閉システムである。ホストニューロンと電子回路との間にあるインタフェース自体は、好ましくは、神経突起を、可撓性のガイドチャネルを通じてホスト本体へ及び/又はホスト本体から案内することによって達成される。本開示の実施形態のバイオハイブリッド型インプラントの目的は、生体ニューロン細胞からの信号を刺激及び/又は記録することでもよい。
【0048】
本開示の第1態様に係るバイオハイブリッド型インプラントは、ニューロンを電子回路と接続するための神経インタフェース、本発明の状況ではいわゆる神経トランスデューサアレイを備えた基板を含む隔離された閉システムと、隔離された閉システムと接続するための第1インタフェース、およびホスト神経系と接続するための第2インタフェースを有する少なくとも1つの可撓性ガイドチャネルとを備える。
【0049】
第1態様の実施形態によれば、本開示は、ホスト遠心性ニューロン(運動ニューロンまたは効果器ニューロンとして知られる)を、神経トランスデューサアレイを含む隔離されたシステムに向けて案内し、接続するためのバイオハイブリッド型インプラントに関連する。隔離されたシステムは、好ましくは体外培養ニューロンをさらに含む。
【0050】
図1は、本開示の第1態様の第1実施形態に係るこうしたバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示すもので、遠心性(例えば、運動)神経7と接続している。このバイオハイブリッド型システムでは、3つの主要ブロックが見える。第1ブロックは、神経トランスデューサアレイ13、例えば、MEAを収容した隔離チャンバ1を備える。図示した実施形態では、隔離チャンバ1は、インタフェース用の電子デバイスと、細胞の生存能力を提供するためのマイクロ流体装置とをさらに備える。
【0051】
第2ブロックは、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10を備え、必要に応じて、追加の可撓性チューブ(図1では不図示)の中に束ねられる。第3ブロックは、ホスト神経系(ニューロン)、特に図示した実施形態では、遠心性神経7を備え、ガイドチャネル10を介して神経インタフェース13とのコンタクトを得ている。
【0052】
遠心性神経7において関心のあるニューロンは、例えば、ホストの脊髄5の前角に位置する運動ニューロン6でもよく、例えば、本開示の実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントの形態でニューロンプロテーゼを、切断後に、例えば、義肢を制御するために、中断した神経7と接続することでもよい。
【0053】
運動ニューロン6の軸索8は、再生のために刺激することができ、これらは可撓性ガイドチャネル10を通じて案内される。神経7と接続するためのガイドチャネル10のインタフェース9は、軸索成長(outgrowth)および案内を促進する手段を備えるべきであり、生体適合性のある材料で製作すべきである。ガイドチャネル10は、神経インタフェース13の表面において神経突起12の成長およびその案内を確保しているインタフェース11を用いて隔離チャンバ1と接続され、その結果、成長した神経突起12は、隔離チャンバ1内に存在する体外培養ニューロンとのコネクションを確立できる。これらのコネクションを得る方法は、化学的ガイドによって、界面化学、位相幾何学キュー(cues)、電気的相互作用などのパターニングによって制御できる。
【0054】
隔離チャンバ1は、流体システム、例えば、マイクロ流体システムの入口2および出口3をさらに含み、体外培地に酸素、成長因子および、必要ならば他の(バイオ)化学補助剤を供給する。こうしてチャンバ1は、潅流チャンバとして機能できる。それは、体外細胞は強い液体流(剪断応力)によって損傷しないように構築できる。よって、特に、体外培養細胞の上の直接フローが防止されることになる。チャンバ1の内外での潅流が、任意の適切な手段、例えば、皮膚の下に搭載でき、チャンバ1内の(マイクロ)流体システムと接続されたマイクロポンプ(不図示)によって制御できる。(マイクロ)流体システムは、神経突起12の成長を神経トランスデューサアレイ13に向けて引き寄せる生化学分子、例えば、ネトリン(Netrins)、エフリンB(Ephrin B)、成長促進物質、例えば、NGF,BDNF,GDNFなどを収容できる。
【0055】
図1は、外部システム(例えば、集積コンピュータ、または有線もしくは無線のデータインタフェース)に送信され、チップ上のセンサおよび回路によって取得される細胞信号14の情報の流れをさらに示している。本開示の実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントにおいて実装可能な適切なマイクロ流体システムが、論文(Thomas Stieglitz in "Integration of Microfluidic Capabilities into Micromachined Neural Implants", International Journal of Micro-nano Scale Transport, Vol. 1 (2), 2010)に記載されている。
【0056】
第1態様の上記第1実施形態は、図10に示すような単方向システムをもたらす。黒矢印は信号方向を示し、生体信号が記録され読み出される。ここで、神経線維7、より具体的には、例えば、その運動ニューロン6の軸索8は、バイオハイブリッド型インプラントのガイドチャネル10に導かれ、これを通って成長する。これらの軸索は、隔離チャンバ1内の神経インタフェース13に付着した体外培養細胞と接続する。神経インタフェース13は、軸索と、隔離チャンバ1内に存在する、例えば、チップなどの電気回路の入力/出力ポートとの間の電気的コネクションを提供する。
【0057】
この単方向システムは、さらに「単方向システムA」と称している。
【0058】
第1態様の第2実施形態によれば、本開示は、体外培養ニューロンをガイドチャネルを通ってホスト神経系に向けて案内するためのバイオハイブリッド型インプラントに関するものであり、これにより、例えば、感覚神経または受容体神経としても知られる求心性神経とのコンタクトが取られる。
【0059】
本実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントの概略図を図2に示す。バイオハイブリッド型インプラントは、神経トランスデューサアレイ13、例えば、MEAを収容した隔離チャンバ1を備える。図示した実施形態では、隔離チャンバ1は、体外培養ニューロン4と、体外培養ニューロンの生存能力を提供するためのマイクロ流体装置と、体外培養ニューロンとのインタフェース接続のための電子デバイスとをさらに備える。隔離チャンバ1は、流体システム、例えば、マイクロ流体システムの入口2および出口3をさらに含み、体外培地に酸素、成長因子および、必要ならば他の(バイオ)化学補助剤を供給する。こうしてチャンバ1は、図1を参照して説明したように、潅流チャンバとして機能できる。
【0060】
体外培養ニューロン4の軸索103は、再生のために刺激することができ、これらは、必要に応じて追加の可撓性チューブ(図2では不図示)の中に束ねられ、隔離チャンバ1と接続された少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10を通じて案内される。チャンバ1と接続するためのガイドチャネル10のインタフェース1は、神経突起成長および案内を促進する手段を備えるべきであり、生体適合性のある材料で製作すべきである。ガイドチャネル10には、神経突起、例えば、軸索103の成長(outgrowth)および求心性神経への案内を確保しているインタフェース9が設けられ、その結果、体外培養ニューロン4から成長した軸索103は、ホスト神経系の求心性神経とのコネクションを確立できる。
【0061】
本例において、例えば、後根神経節104からのニューロン105が、培養ニューロン4からNTA13上に成長した軸索103とのシナプスを形成し、これらは、(再生した)求心性神経に沿って到来する信号を検出する。これらは、例えば、運動反射を起動するために、感覚信号を軸索106を通じて脊髄内の他のニューロンへ送る。該システムは、図1に示したように、最初に記載した実施形態とは、信号方向が異なる点を除き、チップの主要な機能が細胞の刺激(活動電位の生成)になるという意味で同一である。外部システム(例えば、集積コンピュータ、または有線もしくは無線のデータインタフェース)から到来する情報の流れ114を図2に示しており、情報(例えば、パターン、波形)を供給して、細胞を刺激する。
【0062】
第1態様の上記第2実施形態は、図11に示すような単方向システムをもたらす。黒矢印は信号方向を示し、電気信号が伝達され、生物線維を刺激する。ここで、電気信号が隔離チャンバ1内に存在する電気回路、例えば、チップの入力/出力ポートを介して供給される。これらの信号は、神経インタフェース13および隔離チャンバ1内の神経インタフェース13に付着した体外培養細胞を経由して伝達する。これらの体外培養細胞は、軸索103を発生するように刺激され、ガイドチャネル103に向かってこれを通るように導かれ、神経線維とのコネクションを確立する。電子回路から生ずる電気信号が、神経線維を刺激するために使用できる。
【0063】
この単方向システムは、さらに「単方向システムA’」と称している。この単方向システムA’は、単方向システムAよりも実装がより困難であることに留意する。
【0064】
本発明の実施形態において、図12でも示すように、単方向システムAおよび単方向システムA’の両方は、単一の体内−体内(in vivo to in vivo)システムで使用できる。これは、例えば、事故時の切断などで神経が中断した場合、実装できる。原理上は、両方の神経端が、必要に応じて本発明の実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラント上で、一緒に成長できる。しかしながら、そうした場合、神経束に適合する神経線維が互いにつながるすることを確保できないという問題が起こる。
【0065】
この問題を解決するために、本発明の実施形態に従って、一方の神経端が本発明の実施形態に係る第1バイオハイブリッド型インプラントと接続でき、単方向システムAを形成するとともに、他方の神経端が本発明の実施形態に係る第2バイオハイブリッド型インプラントと接続でき、単方向システムA’を形成する。両方の単方向システムAおよび単方向システムA’について測定が実施でき、両方の単方向システムにおける神経インタフェース13においてどの場所が、神経においてどの繊維に対応しているかを認識できる。いったんこの評価を行うと、両方の神経インタフェース13間の中央電気コネクションが確立できる。この中央電気コネクションは、生体ホストの外付けにしたり、生体ホストへの埋め込みが可能である。この中央電気コネクションは、従来の電子回路またはマイクロ電子回路をベースとして構築可能であり、従って、ここでは詳細に考察していない。
【0066】
第1態様の第3実施形態によれば、本開示は、図3に示すようなバイオハイブリッド型インプラントに関するものであり、体外培養細胞から由来する軸索103が少なくとも1つのガイドチャネル10を通じて案内され、末梢神経系(PNS)または中枢神経系(CNS)において有髄(myelated)軸索203のランヴィエ絞輪202とのシナプス接続を確立している。ここで、少なくとも1つのガイドチャネル10には、その長手方向表面に沿って開口103を設けてもよく、開口103は、体外培養細胞4から由来する軸索103を、少なくとも1つのガイドチャネル10から離すように配置される。
【0067】
第1態様の第4実施形態によれば、本開示は、中枢神経系(CNS)、例えば、図4に示すように、大脳皮質の一部とのインタフェース接続に適したバイオハイブリッド型インプラントに関する。これは、本開示の実施形態に係るインプラントが双方向インタフェースを有し得ることを示す。これは、体外培養細胞4の神経突起302を、少なくとも1つのガイドチャネル10を通って、関心のある組織エリア、例えば、脳部位または心臓領域でのニューロンに向けて案内することによって取得される。これらのニューロンは、関心のあるこのエリアにおける細胞とのシナプスを形成でき、培養した細胞、分化因子、化学的キュー(cues)などの要因に依存して、興奮性または抑制性として機能する。
【0068】
双方向インタフェースは、CNSから体外培養ニューロン4に向けて到来する軸索304,305を案内することによっても得られる。信号のインタフェース接続は、電極と軸索とのインタフェース接続によって、またはシナプス接続によって間接的に、ホストから由来する神経突起を直接読み取ることによって達成できる。後者の場合、種々の軸索が信号を多数の細胞体へ接続(発射)するであろう。後者の場合および、複雑なインタフェース接続を必要とする他の場合、解析、神経回路網との相互作用、および可能性のある双方向学習インタフェースを必要とするであろう。コンピュータシステムは、神経インタフェースの挙動および柔軟性を学習する必要があり、逆も同様に、ニューロンは、シナプス接続の強さに影響を与える種々の刺激を印加することによって、特定パターンに応答するように訓練できる。
【0069】
他に、より発展した方法も可能であろう。双方向の情報流れ314は、外部システム(例えば、集積コンピュータ、または有線もしくは無線のデータインタフェース)へ出て行き、または外部システムから到来し、細胞へまたは細胞からの情報、例えば、パターン、波形、記録した信号を伴う。この情報は、トランスデューサおよびチップ上に集積した回路から取得し、及び/又はそこに送信される。
【0070】
第1態様の第5実施形態によれば、本開示は、本開示の実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントの概念をより一般的な方法で適用する方法に関する。好ましくは、少なくとも2つの隔離された閉チャンバA,Bが用意され、ニューロンを電子回路へ接続するための神経インタフェース13、例えば、MEAを収容している。図示した実施形態では、隔離チャンバA,Bは、インタフェース用の電子デバイス、例えば、チップと、細胞の生存能力を提供するためのマイクロ流体装置とをさらに備える。チャンバA,Bは、体外培養ニューロン401,402を収容する。図示した実施形態では、これらの体外培養ニューロン401,402は、少なくとも1つのガイドチャネル10を用いて互いに接続され、これにより両方の隔離チャンバA,Bのニューロンを、上述の実施形態で説明したのと同様な方法で接続している。こうして2つの異なる細胞培養、または細胞培養の組合せが、例えば、脳スライスまたは心臓スライスなどの組織スライスの形態で使用できる。この一般システムは、体外試験を実施するため、例えば、ニューロン生理機能への医薬品の効果を試験するための試験モジュールとして適している。両方の隔離された閉チャンバA,Bは、流体システムのための入口および出口をさらに収容してもよく(図5では不図示)、培地に酸素、成長因子および、必要ならば他の(バイオ)化学補助剤を供給する。
【0071】
上述した実施形態によれば、MEAなどの神経インタフェース13と、必要ならば、チップなどの電子回路とを備え、好ましくは体外培養ニューロン4,401をさらに収容した、少なくとも1つの隔離された閉チャンバ1,Aを、ホスト神経系(具体的には、そのニューロン)または、体外培養ニューロン402を含む他の隔離チャンバBと接続するために、可撓性ガイドチャネル10が使用される。
【0072】
第1の特定の選択肢によれば、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、図6に示すように、背側(dorsal)接続方法に従って装着してもよく、ガイドチャネル10は、バイオハイブリッド型インプラントの隔離された閉チャンバ1の基板502に対して垂直に導入され、これによりNTA13の表面の大部分を網羅している。ガイドチャネル10は、軸索12,103の成長および案内を促進する人工のマイクロ細管(tubuli)またはマイクロ繊維505をさらに収容できる。図は、チップの活性エリアまたはトランスデューサのマトリクスをさらに示している。
【0073】
第2の特定の選択肢によれば、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、図7に示すように、逆さまで装着してもよく、例えば、隔離された閉チャンバ1の基板502に孔603を形成し、神経突起12をNTA13の表面を通って下向きに案内することによって実現してもよい。
【0074】
さらに他の特定の(第3の)選択肢によれば、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、図8に示すように、NTA13の側面に横方向に装着してもよい。この場合、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、平坦なガイドチャネル(チューブ状でない)であり、チップ702などの電子システムとの集積化に関して利点となる。しかしながら、本開示の実施形態(不図示)によれば、マルチ層(サンドイッチ状)または螺旋状に折れ曲がったフラットケーブルの手法など、他の可能性も可能である。NTAの表面は、神経突起12を神経突起へ案内するための手段705、例えば、位相幾何学キュー(cues)、界面化学のパターニングなどをさらに収容できる。
【0075】
第1態様の第6実施形態によれば、本開示は、図9に示すように、CNSとのインタフェース接続のための皮下インプラントとしての使用に適した、バイオハイブリッド型インプラントに関する。これにより、少なくとも1つの隔離された閉チャンバ1が、好ましくは皮膚801の真下に埋め込まれる。隔離チャンバ1は、ニューロンを電子回路、例えば、チップと接続するための神経インタフェース13と、該電子回路と、必要な全ての電源と、データリンクと、神経インタフェース13と電子回路と接続する補助回路とを備えた基板を収容している。必要に応じて、皮下インプラントは、ポンプ、フィルタ、および可能ならば薬品貯蔵室を収容したマイクロ流体システム810をさらに含む。
【0076】
少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、好ましくは、皮下に埋め込まれ、ガイドチャネル10から到来するマイクロ細管505が、神経突起12を広げ、案内する。それは、組織、例えば、皮質の中でさらに広がって、コネクションを得る。図9は、皮下のバイオハイブリッド型インプラントの実装を例示する。神経トランスデューサアレイ13および(必要に応じて)体外培養ニューロンを収容した、バイオハイブリッド型インプラントの隔離チャンバ1は、患者の皮膚801の下方で、頭蓋骨802および硬膜803の上方に実装される。多くのマイクロ寸法のガイドチャネル505を収容するガイドチャネル10は、頭蓋骨802および硬膜803を通過するように実装され、関心のある組織領域、図示した例では関心のある脳領域、例えば、神経突起12を3次元体積の脳組織809と接続する皮質領域(804)とのコンタクトを取る。
【0077】
さらに、本実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントは、マイクロポンプおよびフィルタを収容したマイクロ流体透析システム810を備え、細胞培養のための培地および、CSFを抽出する側脳室から脳脊髄液(CSF)を抽出するための可撓性チューブ811を供給する。廃CSFの腹膜腔への排出のための出口チューブ813が設けらる。デバイスのマイクロ流体システムに接続されたチューブ813は、廃CSFの排出として用いられる。チューブの他端は、側部へ延出できる。
【0078】
第2態様において、本開示は、一方では、ニューロン、例えば、生体ホストニューロン(例えば、自然成長した神経突起)と、他方では、電子回路、例えば、チップとの間のインタフェースを実現するためのバイオハイブリッド型インプラントの製造方法に関する。インプラントは、任意の付着した体外培養細胞および、支持媒体の局所的な流体循環を備えた、少なくとも1つの隔離された閉チャンバ1を備える。インタフェース自体は、好ましくは、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10によって、神経突起をホスト本体(生体ホストまたは体外培養ホスト)へ、及び/又は、ホスト本体から案内することによって製作される。
【0079】
該方法は、ホストのニューロン信号を刺激及び/又は記録するために使用されるバイオハイブリッド型インプラントを製作するのに特に適している。本開示の実施形態に係る方法は、第1ステップにおいて、例えば、シリコン、シリコーン及び/又はポリマーなどの生体適合性の材料で製作された基板502を入手し、そして、基板502の中/上に、神経インタフェース13を設けることを含む。神経インタフェース13は、MEAでもよい。神経インタフェース13は、電子回路、例えば、チップと電気的に接続してもよい。そして、神経インタフェース13および基板502は、生体適合性のパッケージの中に梱包して、外部環境から隔離された閉チャンバ1を実現する。生体適合性のパッケージは、生体適合性の材料、例えば、ポリマーPDMS、パリレン(parylene)(登録商標)で製作される。
【0080】
本開示の実施形態に係る方法は、閉じたチャンバの中に通じており、第1表面(11)を有する少なくとも1つのガイドチャネル10を設けて、神経インタフェース13と接続するステップをさらに含む。少なくとも1つのガイドチャネルが1つより多くのガイドチャネル10を有する場合、複数のガイドチャネル10は、少なくとも1つの可撓性チューブの中に一緒に束ねてもよい。本開示の実施形態に係る方法が、例えば、栄養素を輸送するために用いられ、及び/又は少なくとも1つの栄養素貯蔵室となる、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを設けることを含んでもよい。それは、マイクロ流体チャネルと接続され、少量の流体をチャンバへおよびチャンバから配送するマイクロポンピングシステムを備えてもよい。
【0081】
図面、本開示および添付の請求項の研究から、請求項の発明を実施する際に、開示した実施形態に対する他の変形が当業者によって理解され実施できる。請求項において、用語「備える、含む(comprising)」は、他の要素またはステップを除外しておらず、不定冠詞"a"または"an"は、複数のものを除外していない。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが、有利になるように使用できないことを示していない。請求項中のいずれの符号も、範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0082】
上記説明は、本発明のある実施形態を詳説している。しかしながら、上記説明が文章中にどの程度詳しく現れているかに関係なく、本開示は多くの方法で実施可能であり、開示した実施形態に限定されないことは理解されよう。本開示のある特徴または態様を記載する場合、特定の用語の使用は、該用語が関連した本開示の特徴または態様の何れか特定の特性を含むように限定されるものとして、該用語がここで再定義されることを意味すると解すべきでないことに留意すべきである。
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋込み可能な(ニューロン)デバイス、神経機能代替(neuro-prosthetics)、認知プロテーゼ(cognitive prostheses)の分野に関する。さらに本開示は、電子回路を人体の活性細胞(例えば、ニューロン)とインタフェース接続するのに適したデバイスに関する。詳細には、生体適合性のある埋込み可能なデバイス、その製造方法、ならびにこうしたデバイスの使用方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスと人体のニューロンとのインタフェース接続は、神経機能代替の分野において重要である。末梢神経と接続するための既存のインタフェースは、監視すべき神経系または生体細胞と接触する電極を使用する。これらの電極の例は、カフ(cuff)電極、またはシーブ(sieve)電極、または貫通性ニューロン内(intraneural)電極であるが、中枢神経系と接続するためのインタフェースは、例えば、脳深部刺激用の円柱電極や、例えば、ユタ(Utah)プローブ状システムまたはミシガン(Michigan)プローブ状システムなどのマルチ電極アレイである。しかしながら、これらのプローブ状システムは、更に進歩した神経機能代替インタフェースを実現し、例えば、半導体デバイスを神経回路網と接続する場合、ある問題に遭遇する。この場合、主要な問題は下記のとおりである。
【0003】
1.良好な信号対ノイズおよびインタフェース比(SNIR)で神経信号を記録する能力。電極は、目標ニューロンと密接なコンタクトをとる必要がある。
2.電極内への埋込み時の外科手術に起因した、目標ニューロンおよび神経突起(neurite)への損傷。
3.脳に対するプローブのマイクロ運動に起因した長期的な機械的損傷。
4.神経炎症(異物反応)によって生ずる神経組織の長期的な変性。
5.腐食に起因した電極の寿命減少。
6.インプラントの電力消費の低下。これは、非特異的な(大きな)目標物の電気刺激によって悪化する。そして、低いSNR記録回路。複雑なデータ収集回路および信号を解明するための信号処理をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題を解決するために、生体組織と電子回路との間でより効率的で信頼性のあるインタフェースのニーズが存在する。
【0005】
(発明の要旨)
本開示の実施形態の目的は、電子システムとニューロンとの間のインタフェースが形成可能である、組織、例えば、脳または心臓、ニューロコンピュータインタフェースを提供することである。これにより下記のことが可能になる。
【0006】
・求心性(afferent)神経(例えば、痛み知覚用の感覚神経)とのコネクションが形成可能であり、及び/又は、
・遠心性(efferent)神経(例えば、義手を制御するための運動神経)とのコネクションが形成可能であり、及び/又は、
・脳内または脊髄内の神経核とのコネクションが形成可能であり、及び/又は、
・脳深部刺激療(例えば、パーキンソン病用の長期インプラント)が実施可能であり、及び/又は、
・神経プローブセンサアレイ(例えば、てんかん性発作を検出するため)が形成可能であり、及び/又は、双方向の脳インタフェース(いわゆる「閉ループ」神経制御系のための基礎を提供するため)が形成可能である。
【0007】
本開始の目的は、例えば、カフ電極、シーブ電極、ユタプローブ状システムまたはミシガンプローブ状システムなどの既存のインタフェースに関連した問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
既存のインタフェースシステムに関連した問題は、ホストニューロンを自然成長した神経突起とインタフェース接続することにより、本開示のバイオハイブリッド型インプラントによって解決される。自然成長した神経突起は、可撓性のガイドチャネルから/を経由して、チップ及び/又はMEAを含む神経トランスデューサアレイ(NTA: Neuronal Transducer Array)に向かって閉システム内に案内される。この閉システムは、一般に、バイオハイブリッド型インプラントとも称され、付着した体外(in-vitro)培養細胞および支持媒体の局所的な流体循環を含んでもよい。神経突起は、ホスト本体からバイオハイブリッド型インプラントへ可撓性ガイドチャネルを通じて案内され、神経トランスデューサアレイ(NTA)とのインタフェース接続によって、記録及び/又は刺激される。代替として、体外培養ニューロンを刺激して、ガイドチャネルを通じて案内された神経突起を成長させ、ホスト本体の中に成長して、ホストニューロンと接触することができる。
【0009】
本開示のバイオハイブリッド型インプラントは、電子システム(本願では、一般に神経トランスデューサアレイ(NTA)と称している)が、関心のある生体組織の外(例えば、脳の外部)、あるいは、重要でない組織エリア内(例えば、皮膚の下)に位置している点で、既存のインタフェースシステムとさらに相違する。
【0010】
体外培養した神経突起を関心のある組織の中に成長させることによって、あるいは、ホスト神経突起をその組織の外で成長させることによって、神経トランスデューサアレイ(NTA)との現実のコネクションが、隔離され管理された環境において、関心のある組織の外で可能になり、汚染のリスクを著しく低減できる。これにより閉システムは、ホスト免疫系を、培養したニューロンから効率的に分離でき、インタフェースでの炎症のリスクを低減でき、電極腐食のリスクを低減できる。
【0011】
本開示に係る少なくとも幾つかの実施形態の利点は、特に、インタフェースが機能化され、及び/又は最適化されたマイクロトポロジーを有する場合、体外培養した(解離)ニューロンが平面的なインタフェースに対して良好に付着することである。
【0012】
本開示に係る少なくとも幾つかの実施形態の更なる利点は、閉システムのおかげで、体外培養したニューロンは、ガイドチャネルによってホストニューロンから分離(隔離)可能であることである。これにより、体外培養したニューロンが、幹(stem)細胞、初代細胞培養、生命体の遺伝子組み換え胚からの体外遺伝子導入細胞など、から由来する広範囲の細胞から選択可能になる。閉システムおよび集積流体システムのおかげで、細胞は、培地または他の生化学化合物からなる自己のサポートを有することができる。これにより培養プロセスは、管理された条件で実施でき、結果を最適化できる。
【0013】
本開示に係る少なくとも幾つかの実施形態の更なる利点は、神経トランスデューサアレイ(NTA)を含む基板が、欧州特許公開第1967581号に記載されているように、マイクロネイル(micro-nail)電極をさらに備える場合、多数のニューロンについて、より効率的なニューロンセンサ結合(coupling)を用いてアドレス指定が可能であることである。マイクロネイル電極は、その場(in-situ)CMOS回路と、特別なマイクロ生化学構造、例えば、堆積した薬品のパターン(化学パターニング)、パターン化した表面マイクロ構造、バイオセンサ、マイクロ流体デバイス、光学センサ、MEMS状デバイスなどをさらに備えてもよい。
【0014】
本開示に係る実施形態の利点は、本開示のバイオハイブリッド型埋込み可能なシステムは、直接アドレス指定が可能であり、これにより、電力効率が良い単一セルの刺激のおかげで多数のニューロンを刺激することが可能になることである。さらに、直接アドレス可能性は、読み出される記録信号について著しく増加した信号対ノイズ比(SNR)をもたらし、これにより低電力収集回路および複雑でない信号処理アルゴリズムを使用することが可能になる。
【0015】
さらに本開示に係る実施形態の利点は、本開示のバイオハイブリッド型埋込み可能なシステムは、多数の細胞についてアドレス指定が可能であり、著しく増加した読み出し密度をもたらすことである。
【0016】
さらに本開示に係る実施形態の利点は、追加の支持細胞が、本発明のバイオハイブリッド型埋込み可能なシステムのNTAに付着できることである。異なる細胞の使用は、異なる/特定のニューロンについてアドレス指定が可能であり、及び/又は、バイオハイブリッド型インプラントによってコンタクトが取れるという利点を有する。
【0017】
さらに本開示に係る実施形態の利点は、ガイドチャネルは、要求に応じて伸び縮み可能な弾性材料で製作可能であり、これにより該システムを人体の上/中に、例えば、皮下に埋め込む可能性のある方法について大きな柔軟性を付与できる。
【0018】
その特性およびガイドチャネルを製造する方法についての更なる詳細は、論文(IEEE TRANSACTIONS ON NEURAL SYSTEMS AND REHABILITATION ENGINEERING, VOL. 17, NO. 5, OCTOBER 2009, Long Micro-Channel Electrode Arrays: A Novel Type of Regenerative Peripheral Nerve Interface, Stephanie P. Lacour)において見られる。
【0019】
上記目的は、本発明に係るデバイス(インプラント)およびデバイスの製造方法によって達成される。
【0020】
第1態様によれば、本開示は、細胞を記録及び/又は刺激するのに適したバイオハイブリッド型インプラントに関するものであり、該インプラントは、神経トランスデューサアレイ(NTA)を有する基板を収容する、隔離された閉システムを含む第1ブロックと、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネルを含む第2ブロックと、ホスト神経系(ニューロン)を含み、ガイドチャネルを介して第1ブロックとのコンタクトを取る第3ブロックとを備えている。
【0021】
インプラントのNTAは、電子回路、チップ、マルチ電極アレイ(MEA: multi-electrode array)、バイオセンサ、光学センサ/刺激装置のうち少なくとも1つを備えてもよい。
【0022】
インプラントの第1ブロックにある基板は、シリコン、ガラス、SOI及び/又はポリマー材料で製作してもよい。
【0023】
インプラントの第1ブロックにある基板は、体外培養ニューロン細胞を含んでもよく、必要に応じて、支持細胞、例えば、シュワン(Schwann)細胞、乏突起膠細胞(oligodendrocytes)または他のグリア細胞をさらに含んでもよい。本開示に係る実施形態の利点は、培地中でのグリア細胞の添加は、ニューロンのためのその支持機能のため、長期安定性を改善できる。
【0024】
インプラントの第1ブロックにある基板は、少なくとも1つのガイドチャネルとのインタフェース接続のための電子デバイスと、細胞の生存能力のためのマイクロ流体デバイスとをさらに備えてもよい。本開示に係る実施形態の利点は、マイクロ流体チャネルなどのマイクロ流体装置の追加により、支持媒体・成長因子を配給し、グリア細胞などの支持細胞を配給し、ホスト本体のための透析システムを提供することが可能になることである。
【0025】
インプラントの第1ブロックにある基板は、基板の面に対して略垂直なマイクロネイル電極をさらに備えてもよく、必要に応じて、その場(in-situ)CMOS回路、特別なマイクロ構造またはバイオ構造、例えば、堆積した薬品のパターン、パターン化した表面マイクロ構造、バイオセンサ、マイクロ流体デバイス、光学センサ、MEMS状デバイスなどをさらに備えてもよい。本開示に係る実施形態の利点は、第1ブロックの基板への追加のマイクロ針構造に起因して、多数のニューロンについて、より効率的なニューロンセンサ結合(coupling)を用いてアドレス指定が可能であることである。本開示に係る実施形態の利点は、追加のマイクロ針構造により、(体外)細胞をマイクロ針構造に付着させ、細胞を案内することが可能になり、換言すると、細胞は、マイクロ針構造によって規定された所定の方向に成長するようになることである。
【0026】
インプラントのガイドチャネルは、生体適合性があり、好ましくは可撓性の材料、必要に応じて、ホスト組織と機械的な適合性を有し、強い機械的歪みの領域を通過する際、軸索を保護することが可能な伸縮性の材料で製作される。本開示に係る実施形態の利点は、ガイドチャネル(伸縮性の材料で製作)が、要求材料に依存して短縮化してもよい。本開示の少なくとも幾つかの実施形態の更なる利点は、弾性材料で製作されたガイドチャネルが、伸び縮み可能であり、人体、例えば、皮下へのシステムの埋め込みに対して大きな柔軟性を付与することである。
【0027】
インプラントの少なくとも1つのガイドチャネルは、酸化物、シリコン、ポリマー(例えば、ポリイミド、PDMSなど)及び/又は薄い金属で製作してもよい。
【0028】
インプラントの少なくとも1つのガイドチャネルは、酸化物、シリコン、ポリマー(例えば、ポリイミド、PDMSなど)及び/又は薄い金属で製作された追加の可撓性チューブによって束ねられたり、包囲されてよい。
【0029】
インプラントのガイドチャネルは、その長手方向表面に沿って電極及び/又は開口をさらに備えてもよい。本開示に係る実施形態の利点は、ガイドチャネルでの開口は、神経突起を成長させて、末梢神経または脊髄神経とのシナプス結合を得るために使用できることである。開口は、好ましくは、(i)培地はチャネルの外側に漏出せず、及び/又は、(ii)これらは、開口を通る選択的な軸索成長(outgrowth)を達成できる(ある直径範囲は、あるタイプの軸索成長を阻止し、他のものの通過を許容することを意味する。)ように製作される。開口の直径は、10μm〜50μmの範囲でもよい。本開示に係る実施形態の更なる利点は、電極が少なくとも1つのガイドチューブの内面に設置でき、電極は、例えば、神経突起がガイドチャネルの中にどの距離まで成長したかを検出するために使用できることである(検出成長(progress))。本開示に係る実施形態の更なる利点は、電極が少なくとも1つのガイドチャネルの外面に設置でき、電極は、例えば、脳深部刺激のための使用できることである。
【0030】
好ましい実施形態によれば、本開示のインプラントは、ホストの神経系を制御及び/又は観察するために使用でき、それはインプラントの体外培養ニューロンとホスト神経系とのコンタクトを取ることによって達成できる。第1の代替例では、体外ニューロン細胞は、ホストのニューロン活動を記録するために用いられる(観察)。第2の代替例では、インプラントの体外ニューロン細胞は、ある集団のニューロンを選択的に刺激することによって、ホストのニューロン活動を制御するために用いられる(制御)。第3の代替例では、インプラントの体外ニューロン細胞は、最初にホストのニューロン活動を刺激し(例えば、電位を誘発させることによって)、次にホストのニューロン活動を観察することによって、ホストのニューロン活動を制御し、そして記録するために用いられる。第4の代替例では、インプラントの体外ニューロン細胞は、最初にホストのニューロン活動を観察し、次にホストのニューロン活動を刺激し(例えば、電位を誘発させることによって)、閉じた制御ループでこれらのステップ(必要に応じて)を繰り返すことによって、ホストのニューロン活動を記録し、そしてホストの神経系を制御するために用いられる。
【0031】
第2態様によれば、本開示は、バイオハイブリッド型インプラントの製造方法に関するものであり、該方法は、次のステップを少なくとも含む。
・支持基板を入手するステップ。
・基板上に、神経トランスデューサアレイ(NTA)を設けるステップ。
・基板およびNTAの周りにパッケージを設けて、外部環境から隔離された閉じたチャンバを得るステップ。
・閉じたチャンバの中に通ずる少なくとも1つの可撓性ガイドチャネルを設けて、NTAとのコンタクトを取るステップ。
・少なくとも1つのガイドチャネルの内面への神経突起の成長を促進する手段を設けるステップ。
【0032】
本開示に係る少なくとも幾つかの実施形態の利点は、バイオハイブリッド型インプラントの種々のコンポーネントを製造するために、従来の処理ステップが使用できることである。
【0033】
本開示のインプラントの製造方法は、電子回路、チップ、マルチ電極アレイ(MEA)、バイオセンサ、光学センサ、光学刺激装置のうち少なくとも1つを設けるステップをさらに含んでもよく、該方法は、少なくとも1つのガイドチャネルとのインタフェース接続のための追加の電子回路、および細胞の生存能力のためのマイクロ流体デバイスを設けるステップをさらに含んでもよい。
【0034】
本開示のインプラントの製造方法は、体外培養ニューロン細胞、及び/又は、基板に付着した支持細胞を設けるステップをさらに含んでもよい。
【0035】
本開示の特定および好ましい態様が、添付の独立請求項および従属請求項に記述されている。従属請求項からの特徴は、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と組み合わせてもよく、適切であって、請求項に明示的に記述されたものだけでない。
【0036】
本開示の上記および他の態様は、以下に説明する実施形態を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に従って、ホストの遠心性ニューロンを神経インタフェースと接続するためのバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示す。
【図2】本発明の実施形態に従って、体外培養ニューロンを求心性(例えば、感覚性)ニューロンと接続するためのバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示す。
【図3】本発明の実施形態に従って、体外培養ニューロンを有髄(myelated)軸索と接続するためのバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示す。
【図4】本発明の実施形態に従って、体外培養ニューロンをホスト中枢神経系と接続するためのバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示す。
【図5】本発明の実施形態に従って、共に接続された2つのバイオハイブリッド型システムの概略図を示すもので、2つの異なる細胞培養、または、組織スライス、例えば、脳スライスを持つ細胞培養の相互接続性を評価するための体外試験の構成を形成する。
【図6】本発明の実施形態に従って、バイオハイブリッド型インプラントのための背側(dorsal)接続方法の概略図を示す。
【図7】本発明の実施形態に従って、バイオハイブリッド型インプラントのための垂直軸索接続方法の概略図を示す。
【図8】本発明の実施形態に従って、バイオハイブリッド型インプラントのための側方軸索接続方法の概略図を示す。
【図9】本発明の実施形態に従って、皮下のバイオハイブリッド型インプラントの実装の概略図を示す。
【図10】図1に関して説明したように、バイオハイブリッド型インプラントおよびその使用と対応した第1単方向システムを示す。
【図11】図2に関して説明したように、バイオハイブリッド型インプラントおよびその使用と対応した第2単方向システムを示す。
【図12】図10に示すような第1単方向システムおよび図11に示すような第2単方向システムの両方と、両方の単方向システムを電気接続するための中央信号解明および決定部とを備えたバイオハイブリッド型インプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは、説明目的のため、誇張してスケールどおり描いていないことがある。請求項中のいずれの符号も、範囲を限定するものとして解釈すべきでない。異なる図面において、同じ参照符号は、同じまたは類似の要素を参照する。
【0039】
ここで用いたように、他に言及していない限り、ニューロンまたは神経細胞は、電気的および化学的な信号伝達によって情報を処理し伝送する、電気的に興奮可能な細胞である。この状況において、用語「神経突起(neurites)」は、ニューロンの細胞体からの任意の突起に関係する。この突起は、軸索(axon)または樹状突起(dendrite)になり得る。樹状突起は、細胞体から生ずるフィラメントであり、しばしば数百マイクロメータに渡って延びており、複数回分岐している。樹状突起は、信号を受信し、これらを細胞から細胞体および軸索へ伝達する役割を担う。
【0040】
軸索は、細胞体から生ずる特殊な細胞フィラメントであり、ある距離に渡って、人間では1m、他の種ではそれ以上遠くまで延びている。軸索は、ニューロンの一部であり、ニューロンから他のニューロンまたはニューロン受容体、例えば、筋肉などの神経インパルスのターゲットへの細胞メッセージの通過を担う。ニューロンの細胞体は、しばしば複数の樹状突起を生じさせるが、1つより多い軸索を生じさせず、軸索は、終端する前に複数回分岐することがある。用語「神経突起」は、未熟または発達中のニューロン、特に、培養下の細胞に言及する場合にしばしば用いられる。分化が完了する前は、軸索を樹状突起と区別することが困難であるためである。
【0041】
遠心性ニューロンは、運動ニューロンまたは効果器(effector)ニューロンとして知られ、神経インパルスを中枢神経系から、筋肉や腺などの効果器へ運搬する。反対の活動または方向または流れが求心性である。求心性ニューロンは、感覚ニューロンまたは受容体ニューロンとして知られ、神経インパルスを受容体または感覚器官から中枢神経系へ向けて運搬する。
【0042】
シナプスは、ニューロンが電気的または化学的な信号を他の細胞(神経やその他)に伝達できるようにする接合部である。シナプスにおいて、信号伝達ニューロン(シナプス前ニューロン)のプラズマ細胞膜は、目標(シナプス後)細胞の細胞膜と密接同格(close apposition)になっている。シナプス前箇所およびシナプス後箇所の両方は、2つの細胞膜を共にリンクして、信号伝達プロセスを実行する幅広アレイの分子機構を収容している。
【0043】
ここで用いたように、他に言及していない限り、用語「神経トランスデューサアレイ」または「NTA」は、ニューロンを電子回路と接続するためのいずれか適切な神経インタフェースに関連している。NTAは、例えば、いずれか適切な電子回路、例えば、いずれか適切なチップを含んでもよい。NTAは、いずれか適切なマルチ電極アレイ(MEA: multi-electrode array)を備えてもよい。NTAは、バイオセンサ、化学的刺激装置、光学センサ/刺激装置、マイクロネイルなどのパターン化構造のうち1つ又はそれ以上をさらに備えてもよい。
【0044】
マルチ電極アレイ(MEA)またはマイクロ電極アレイは、複数のプレートまたはシャンク(shank)を含み、それを通じて神経信号が取得または配給され、基本的にはニューロンを電子回路と接続する神経インタフェースとして機能する。MEAについて2つの一般クラスがあり、体内使用のための埋込み可能なMEAと、体外使用のための埋込み不可のMEAとがある。
【0045】
本開示は、その幾つかの実施形態の詳細な説明によって説明している。本開示の他の実施形態が、本発明の技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って構成できることは明らかであり、本開示は、添付の請求項の意味によってのみ限定される。
【0046】
説明の手段として、本開示の実施形態はこれに限定されず、本開示の少なくともいくつかの実施形態の特徴および利点のより詳細な説明が図面に関して説明しており、これは実施形態を説明するために用いられ、本発明のための限定であることは意図していない。
【0047】
本開示の第1態様によれば、「バイオハイブリッド型インプラント」が開示されている。第1態様に係るこうしたバイオハイブリッド型インプラントは、一方ではニューロン、例えば、生体ホストニューロン(例えば、自然成長した神経突起によって)と、他方では電子回路との間のインタフェースを実現するのに適したデバイスである。本開示の実施形態に係る「バイオハイブリッド型インプラント」は、ホストニューロン活動を刺激及び/又は記録するために使用できる。「バイオハイブリッド型インプラント」は、好ましくは、任意に添加した体外培養細胞および支持媒体の局所流体循環との神経インタフェースを含む閉システムである。ホストニューロンと電子回路との間にあるインタフェース自体は、好ましくは、神経突起を、可撓性のガイドチャネルを通じてホスト本体へ及び/又はホスト本体から案内することによって達成される。本開示の実施形態のバイオハイブリッド型インプラントの目的は、生体ニューロン細胞からの信号を刺激及び/又は記録することでもよい。
【0048】
本開示の第1態様に係るバイオハイブリッド型インプラントは、ニューロンを電子回路と接続するための神経インタフェース、本発明の状況ではいわゆる神経トランスデューサアレイを備えた基板を含む隔離された閉システムと、隔離された閉システムと接続するための第1インタフェース、およびホスト神経系と接続するための第2インタフェースを有する少なくとも1つの可撓性ガイドチャネルとを備える。
【0049】
第1態様の実施形態によれば、本開示は、ホスト遠心性ニューロン(運動ニューロンまたは効果器ニューロンとして知られる)を、神経トランスデューサアレイを含む隔離されたシステムに向けて案内し、接続するためのバイオハイブリッド型インプラントに関連する。隔離されたシステムは、好ましくは体外培養ニューロンをさらに含む。
【0050】
図1は、本開示の第1態様の第1実施形態に係るこうしたバイオハイブリッド型インプラントの概略図を示すもので、遠心性(例えば、運動)神経7と接続している。このバイオハイブリッド型システムでは、3つの主要ブロックが見える。第1ブロックは、神経トランスデューサアレイ13、例えば、MEAを収容した隔離チャンバ1を備える。図示した実施形態では、隔離チャンバ1は、インタフェース用の電子デバイスと、細胞の生存能力を提供するためのマイクロ流体装置とをさらに備える。
【0051】
第2ブロックは、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10を備え、必要に応じて、追加の可撓性チューブ(図1では不図示)の中に束ねられる。第3ブロックは、ホスト神経系(ニューロン)、特に図示した実施形態では、遠心性神経7を備え、ガイドチャネル10を介して神経インタフェース13とのコンタクトを得ている。
【0052】
遠心性神経7において関心のあるニューロンは、例えば、ホストの脊髄5の前角に位置する運動ニューロン6でもよく、例えば、本開示の実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントの形態でニューロンプロテーゼを、切断後に、例えば、義肢を制御するために、中断した神経7と接続することでもよい。
【0053】
運動ニューロン6の軸索8は、再生のために刺激することができ、これらは可撓性ガイドチャネル10を通じて案内される。神経7と接続するためのガイドチャネル10のインタフェース9は、軸索成長(outgrowth)および案内を促進する手段を備えるべきであり、生体適合性のある材料で製作すべきである。ガイドチャネル10は、神経インタフェース13の表面において神経突起12の成長およびその案内を確保しているインタフェース11を用いて隔離チャンバ1と接続され、その結果、成長した神経突起12は、隔離チャンバ1内に存在する体外培養ニューロンとのコネクションを確立できる。これらのコネクションを得る方法は、化学的ガイドによって、界面化学、位相幾何学キュー(cues)、電気的相互作用などのパターニングによって制御できる。
【0054】
隔離チャンバ1は、流体システム、例えば、マイクロ流体システムの入口2および出口3をさらに含み、体外培地に酸素、成長因子および、必要ならば他の(バイオ)化学補助剤を供給する。こうしてチャンバ1は、潅流チャンバとして機能できる。それは、体外細胞は強い液体流(剪断応力)によって損傷しないように構築できる。よって、特に、体外培養細胞の上の直接フローが防止されることになる。チャンバ1の内外での潅流が、任意の適切な手段、例えば、皮膚の下に搭載でき、チャンバ1内の(マイクロ)流体システムと接続されたマイクロポンプ(不図示)によって制御できる。(マイクロ)流体システムは、神経突起12の成長を神経トランスデューサアレイ13に向けて引き寄せる生化学分子、例えば、ネトリン(Netrins)、エフリンB(Ephrin B)、成長促進物質、例えば、NGF,BDNF,GDNFなどを収容できる。
【0055】
図1は、外部システム(例えば、集積コンピュータ、または有線もしくは無線のデータインタフェース)に送信され、チップ上のセンサおよび回路によって取得される細胞信号14の情報の流れをさらに示している。本開示の実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントにおいて実装可能な適切なマイクロ流体システムが、論文(Thomas Stieglitz in "Integration of Microfluidic Capabilities into Micromachined Neural Implants", International Journal of Micro-nano Scale Transport, Vol. 1 (2), 2010)に記載されている。
【0056】
第1態様の上記第1実施形態は、図10に示すような単方向システムをもたらす。黒矢印は信号方向を示し、生体信号が記録され読み出される。ここで、神経線維7、より具体的には、例えば、その運動ニューロン6の軸索8は、バイオハイブリッド型インプラントのガイドチャネル10に導かれ、これを通って成長する。これらの軸索は、隔離チャンバ1内の神経インタフェース13に付着した体外培養細胞と接続する。神経インタフェース13は、軸索と、隔離チャンバ1内に存在する、例えば、チップなどの電気回路の入力/出力ポートとの間の電気的コネクションを提供する。
【0057】
この単方向システムは、さらに「単方向システムA」と称している。
【0058】
第1態様の第2実施形態によれば、本開示は、体外培養ニューロンをガイドチャネルを通ってホスト神経系に向けて案内するためのバイオハイブリッド型インプラントに関するものであり、これにより、例えば、感覚神経または受容体神経としても知られる求心性神経とのコンタクトが取られる。
【0059】
本実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントの概略図を図2に示す。バイオハイブリッド型インプラントは、神経トランスデューサアレイ13、例えば、MEAを収容した隔離チャンバ1を備える。図示した実施形態では、隔離チャンバ1は、体外培養ニューロン4と、体外培養ニューロンの生存能力を提供するためのマイクロ流体装置と、体外培養ニューロンとのインタフェース接続のための電子デバイスとをさらに備える。隔離チャンバ1は、流体システム、例えば、マイクロ流体システムの入口2および出口3をさらに含み、体外培地に酸素、成長因子および、必要ならば他の(バイオ)化学補助剤を供給する。こうしてチャンバ1は、図1を参照して説明したように、潅流チャンバとして機能できる。
【0060】
体外培養ニューロン4の軸索103は、再生のために刺激することができ、これらは、必要に応じて追加の可撓性チューブ(図2では不図示)の中に束ねられ、隔離チャンバ1と接続された少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10を通じて案内される。チャンバ1と接続するためのガイドチャネル10のインタフェース1は、神経突起成長および案内を促進する手段を備えるべきであり、生体適合性のある材料で製作すべきである。ガイドチャネル10には、神経突起、例えば、軸索103の成長(outgrowth)および求心性神経への案内を確保しているインタフェース9が設けられ、その結果、体外培養ニューロン4から成長した軸索103は、ホスト神経系の求心性神経とのコネクションを確立できる。
【0061】
本例において、例えば、後根神経節104からのニューロン105が、培養ニューロン4からNTA13上に成長した軸索103とのシナプスを形成し、これらは、(再生した)求心性神経に沿って到来する信号を検出する。これらは、例えば、運動反射を起動するために、感覚信号を軸索106を通じて脊髄内の他のニューロンへ送る。該システムは、図1に示したように、最初に記載した実施形態とは、信号方向が異なる点を除き、チップの主要な機能が細胞の刺激(活動電位の生成)になるという意味で同一である。外部システム(例えば、集積コンピュータ、または有線もしくは無線のデータインタフェース)から到来する情報の流れ114を図2に示しており、情報(例えば、パターン、波形)を供給して、細胞を刺激する。
【0062】
第1態様の上記第2実施形態は、図11に示すような単方向システムをもたらす。黒矢印は信号方向を示し、電気信号が伝達され、生物線維を刺激する。ここで、電気信号が隔離チャンバ1内に存在する電気回路、例えば、チップの入力/出力ポートを介して供給される。これらの信号は、神経インタフェース13および隔離チャンバ1内の神経インタフェース13に付着した体外培養細胞を経由して伝達する。これらの体外培養細胞は、軸索103を発生するように刺激され、ガイドチャネル103に向かってこれを通るように導かれ、神経線維とのコネクションを確立する。電子回路から生ずる電気信号が、神経線維を刺激するために使用できる。
【0063】
この単方向システムは、さらに「単方向システムA’」と称している。この単方向システムA’は、単方向システムAよりも実装がより困難であることに留意する。
【0064】
本発明の実施形態において、図12でも示すように、単方向システムAおよび単方向システムA’の両方は、単一の体内−体内(in vivo to in vivo)システムで使用できる。これは、例えば、事故時の切断などで神経が中断した場合、実装できる。原理上は、両方の神経端が、必要に応じて本発明の実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラント上で、一緒に成長できる。しかしながら、そうした場合、神経束に適合する神経線維が互いにつながるすることを確保できないという問題が起こる。
【0065】
この問題を解決するために、本発明の実施形態に従って、一方の神経端が本発明の実施形態に係る第1バイオハイブリッド型インプラントと接続でき、単方向システムAを形成するとともに、他方の神経端が本発明の実施形態に係る第2バイオハイブリッド型インプラントと接続でき、単方向システムA’を形成する。両方の単方向システムAおよび単方向システムA’について測定が実施でき、両方の単方向システムにおける神経インタフェース13においてどの場所が、神経においてどの繊維に対応しているかを認識できる。いったんこの評価を行うと、両方の神経インタフェース13間の中央電気コネクションが確立できる。この中央電気コネクションは、生体ホストの外付けにしたり、生体ホストへの埋め込みが可能である。この中央電気コネクションは、従来の電子回路またはマイクロ電子回路をベースとして構築可能であり、従って、ここでは詳細に考察していない。
【0066】
第1態様の第3実施形態によれば、本開示は、図3に示すようなバイオハイブリッド型インプラントに関するものであり、体外培養細胞から由来する軸索103が少なくとも1つのガイドチャネル10を通じて案内され、末梢神経系(PNS)または中枢神経系(CNS)において有髄(myelated)軸索203のランヴィエ絞輪202とのシナプス接続を確立している。ここで、少なくとも1つのガイドチャネル10には、その長手方向表面に沿って開口103を設けてもよく、開口103は、体外培養細胞4から由来する軸索103を、少なくとも1つのガイドチャネル10から離すように配置される。
【0067】
第1態様の第4実施形態によれば、本開示は、中枢神経系(CNS)、例えば、図4に示すように、大脳皮質の一部とのインタフェース接続に適したバイオハイブリッド型インプラントに関する。これは、本開示の実施形態に係るインプラントが双方向インタフェースを有し得ることを示す。これは、体外培養細胞4の神経突起302を、少なくとも1つのガイドチャネル10を通って、関心のある組織エリア、例えば、脳部位または心臓領域でのニューロンに向けて案内することによって取得される。これらのニューロンは、関心のあるこのエリアにおける細胞とのシナプスを形成でき、培養した細胞、分化因子、化学的キュー(cues)などの要因に依存して、興奮性または抑制性として機能する。
【0068】
双方向インタフェースは、CNSから体外培養ニューロン4に向けて到来する軸索304,305を案内することによっても得られる。信号のインタフェース接続は、電極と軸索とのインタフェース接続によって、またはシナプス接続によって間接的に、ホストから由来する神経突起を直接読み取ることによって達成できる。後者の場合、種々の軸索が信号を多数の細胞体へ接続(発射)するであろう。後者の場合および、複雑なインタフェース接続を必要とする他の場合、解析、神経回路網との相互作用、および可能性のある双方向学習インタフェースを必要とするであろう。コンピュータシステムは、神経インタフェースの挙動および柔軟性を学習する必要があり、逆も同様に、ニューロンは、シナプス接続の強さに影響を与える種々の刺激を印加することによって、特定パターンに応答するように訓練できる。
【0069】
他に、より発展した方法も可能であろう。双方向の情報流れ314は、外部システム(例えば、集積コンピュータ、または有線もしくは無線のデータインタフェース)へ出て行き、または外部システムから到来し、細胞へまたは細胞からの情報、例えば、パターン、波形、記録した信号を伴う。この情報は、トランスデューサおよびチップ上に集積した回路から取得し、及び/又はそこに送信される。
【0070】
第1態様の第5実施形態によれば、本開示は、本開示の実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントの概念をより一般的な方法で適用する方法に関する。好ましくは、少なくとも2つの隔離された閉チャンバA,Bが用意され、ニューロンを電子回路へ接続するための神経インタフェース13、例えば、MEAを収容している。図示した実施形態では、隔離チャンバA,Bは、インタフェース用の電子デバイス、例えば、チップと、細胞の生存能力を提供するためのマイクロ流体装置とをさらに備える。チャンバA,Bは、体外培養ニューロン401,402を収容する。図示した実施形態では、これらの体外培養ニューロン401,402は、少なくとも1つのガイドチャネル10を用いて互いに接続され、これにより両方の隔離チャンバA,Bのニューロンを、上述の実施形態で説明したのと同様な方法で接続している。こうして2つの異なる細胞培養、または細胞培養の組合せが、例えば、脳スライスまたは心臓スライスなどの組織スライスの形態で使用できる。この一般システムは、体外試験を実施するため、例えば、ニューロン生理機能への医薬品の効果を試験するための試験モジュールとして適している。両方の隔離された閉チャンバA,Bは、流体システムのための入口および出口をさらに収容してもよく(図5では不図示)、培地に酸素、成長因子および、必要ならば他の(バイオ)化学補助剤を供給する。
【0071】
上述した実施形態によれば、MEAなどの神経インタフェース13と、必要ならば、チップなどの電子回路とを備え、好ましくは体外培養ニューロン4,401をさらに収容した、少なくとも1つの隔離された閉チャンバ1,Aを、ホスト神経系(具体的には、そのニューロン)または、体外培養ニューロン402を含む他の隔離チャンバBと接続するために、可撓性ガイドチャネル10が使用される。
【0072】
第1の特定の選択肢によれば、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、図6に示すように、背側(dorsal)接続方法に従って装着してもよく、ガイドチャネル10は、バイオハイブリッド型インプラントの隔離された閉チャンバ1の基板502に対して垂直に導入され、これによりNTA13の表面の大部分を網羅している。ガイドチャネル10は、軸索12,103の成長および案内を促進する人工のマイクロ細管(tubuli)またはマイクロ繊維505をさらに収容できる。図は、チップの活性エリアまたはトランスデューサのマトリクスをさらに示している。
【0073】
第2の特定の選択肢によれば、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、図7に示すように、逆さまで装着してもよく、例えば、隔離された閉チャンバ1の基板502に孔603を形成し、神経突起12をNTA13の表面を通って下向きに案内することによって実現してもよい。
【0074】
さらに他の特定の(第3の)選択肢によれば、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、図8に示すように、NTA13の側面に横方向に装着してもよい。この場合、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、平坦なガイドチャネル(チューブ状でない)であり、チップ702などの電子システムとの集積化に関して利点となる。しかしながら、本開示の実施形態(不図示)によれば、マルチ層(サンドイッチ状)または螺旋状に折れ曲がったフラットケーブルの手法など、他の可能性も可能である。NTAの表面は、神経突起12を神経突起へ案内するための手段705、例えば、位相幾何学キュー(cues)、界面化学のパターニングなどをさらに収容できる。
【0075】
第1態様の第6実施形態によれば、本開示は、図9に示すように、CNSとのインタフェース接続のための皮下インプラントとしての使用に適した、バイオハイブリッド型インプラントに関する。これにより、少なくとも1つの隔離された閉チャンバ1が、好ましくは皮膚801の真下に埋め込まれる。隔離チャンバ1は、ニューロンを電子回路、例えば、チップと接続するための神経インタフェース13と、該電子回路と、必要な全ての電源と、データリンクと、神経インタフェース13と電子回路と接続する補助回路とを備えた基板を収容している。必要に応じて、皮下インプラントは、ポンプ、フィルタ、および可能ならば薬品貯蔵室を収容したマイクロ流体システム810をさらに含む。
【0076】
少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10は、好ましくは、皮下に埋め込まれ、ガイドチャネル10から到来するマイクロ細管505が、神経突起12を広げ、案内する。それは、組織、例えば、皮質の中でさらに広がって、コネクションを得る。図9は、皮下のバイオハイブリッド型インプラントの実装を例示する。神経トランスデューサアレイ13および(必要に応じて)体外培養ニューロンを収容した、バイオハイブリッド型インプラントの隔離チャンバ1は、患者の皮膚801の下方で、頭蓋骨802および硬膜803の上方に実装される。多くのマイクロ寸法のガイドチャネル505を収容するガイドチャネル10は、頭蓋骨802および硬膜803を通過するように実装され、関心のある組織領域、図示した例では関心のある脳領域、例えば、神経突起12を3次元体積の脳組織809と接続する皮質領域(804)とのコンタクトを取る。
【0077】
さらに、本実施形態に係るバイオハイブリッド型インプラントは、マイクロポンプおよびフィルタを収容したマイクロ流体透析システム810を備え、細胞培養のための培地および、CSFを抽出する側脳室から脳脊髄液(CSF)を抽出するための可撓性チューブ811を供給する。廃CSFの腹膜腔への排出のための出口チューブ813が設けらる。デバイスのマイクロ流体システムに接続されたチューブ813は、廃CSFの排出として用いられる。チューブの他端は、側部へ延出できる。
【0078】
第2態様において、本開示は、一方では、ニューロン、例えば、生体ホストニューロン(例えば、自然成長した神経突起)と、他方では、電子回路、例えば、チップとの間のインタフェースを実現するためのバイオハイブリッド型インプラントの製造方法に関する。インプラントは、任意の付着した体外培養細胞および、支持媒体の局所的な流体循環を備えた、少なくとも1つの隔離された閉チャンバ1を備える。インタフェース自体は、好ましくは、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル10によって、神経突起をホスト本体(生体ホストまたは体外培養ホスト)へ、及び/又は、ホスト本体から案内することによって製作される。
【0079】
該方法は、ホストのニューロン信号を刺激及び/又は記録するために使用されるバイオハイブリッド型インプラントを製作するのに特に適している。本開示の実施形態に係る方法は、第1ステップにおいて、例えば、シリコン、シリコーン及び/又はポリマーなどの生体適合性の材料で製作された基板502を入手し、そして、基板502の中/上に、神経インタフェース13を設けることを含む。神経インタフェース13は、MEAでもよい。神経インタフェース13は、電子回路、例えば、チップと電気的に接続してもよい。そして、神経インタフェース13および基板502は、生体適合性のパッケージの中に梱包して、外部環境から隔離された閉チャンバ1を実現する。生体適合性のパッケージは、生体適合性の材料、例えば、ポリマーPDMS、パリレン(parylene)(登録商標)で製作される。
【0080】
本開示の実施形態に係る方法は、閉じたチャンバの中に通じており、第1表面(11)を有する少なくとも1つのガイドチャネル10を設けて、神経インタフェース13と接続するステップをさらに含む。少なくとも1つのガイドチャネルが1つより多くのガイドチャネル10を有する場合、複数のガイドチャネル10は、少なくとも1つの可撓性チューブの中に一緒に束ねてもよい。本開示の実施形態に係る方法が、例えば、栄養素を輸送するために用いられ、及び/又は少なくとも1つの栄養素貯蔵室となる、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを設けることを含んでもよい。それは、マイクロ流体チャネルと接続され、少量の流体をチャンバへおよびチャンバから配送するマイクロポンピングシステムを備えてもよい。
【0081】
図面、本開示および添付の請求項の研究から、請求項の発明を実施する際に、開示した実施形態に対する他の変形が当業者によって理解され実施できる。請求項において、用語「備える、含む(comprising)」は、他の要素またはステップを除外しておらず、不定冠詞"a"または"an"は、複数のものを除外していない。ある手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが、有利になるように使用できないことを示していない。請求項中のいずれの符号も、範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0082】
上記説明は、本発明のある実施形態を詳説している。しかしながら、上記説明が文章中にどの程度詳しく現れているかに関係なく、本開示は多くの方法で実施可能であり、開示した実施形態に限定されないことは理解されよう。本開示のある特徴または態様を記載する場合、特定の用語の使用は、該用語が関連した本開示の特徴または態様の何れか特定の特性を含むように限定されるものとして、該用語がここで再定義されることを意味すると解すべきでないことに留意すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を記録及び/又は刺激するのに適したバイオハイブリッド型インプラントであって、
・ニューロンを電子回路と接続するための神経インタフェース(13)を備えた基板(502)を収容した、少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)と、
・隔離されたチャンバ(1,A)の少なくとも1つと接続するための第1インタフェース(11)および、ホスト神経系(7)または他の隔離されたチャンバ(B)と接続するための第2インタフェース(9)を有する、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル(10)とを備えるインプラント。
【請求項2】
少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)は、電子回路、チップ、バイオセンサ、光学センサ、光学刺激装置、化学センサ、または化学刺激装置のうち少なくとも1つを備えるようにした請求項1記載のインプラント。
【請求項3】
閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)内の基板(502)は、シリコン、ガラス、SOI、ポリマーのいずれかで製作されている請求項1記載のインプラント。
【請求項4】
少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)は、体外培養ニューロン細胞(4)を含み、必要に応じて、支持細胞、例えば、シュワン細胞、乏突起膠細胞、及び/又は、グリア細胞をさらに含む請求項1記載のインプラント。
【請求項5】
少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)は、少なくとも1つのガイドチャネル(10)とのインタフェース接続のための電子デバイスをさらに含む請求項1記載のインプラント。
【請求項6】
少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)は、細胞の生存能力のためのマイクロ流体デバイスをさらに備える請求項1記載のインプラント。
【請求項7】
基板(502)は、基板(502)の面に対して略垂直なマイクロネイル電極をさらに備え、必要に応じて、その場CMOS回路、特別なマイクロ構造またはバイオ構造(例えば、堆積した薬品のパターン、パターン化した表面マイクロ構造、バイオセンサ、マイクロ流体デバイス、光学センサ、MEMS状デバイスなど)をさらに備える請求項1記載のインプラント。
【請求項8】
少なくとも1つのガイドチャネル(10)は、生体適合性があり、可撓性があり、必要に応じて、ホスト組織と機械的な適合性を有し、強い機械的性質の領域を通過する際、軸索を保護することが可能な伸縮性の材料で製作される請求項1記載のインプラント。
【請求項9】
少なくとも1つのガイドチャネル(10)は、酸化物、シリコン、シリコーン、ポリマー及び/又は薄い金属のうちの1つ又はそれ以上を含む請求項1記載のインプラント。
【請求項10】
複数のガイドチャネル(10)が存在しており、ガイドチャネル(10)は、追加の可撓性チューブによって束ねられ包囲される請求項1記載のインプラント。
【請求項11】
追加の可撓性チューブは、酸化物、シリコン、シリコーン、ポリマー及び/又は薄い金属のうちの1つ又はそれ以上を含む請求項10記載のインプラント。
【請求項12】
少なくとも1つのガイドチャネル(10)は、長手方向表面を有し、
少なくとも1つのガイドチャネル(10)は、その長手方向表面に沿って電極及び/又は開口(201)をさらに備える請求項1記載のインプラント。
【請求項13】
インプラントの体外培養ニューロンとホスト神経系とのコンタクトを取ることによって、ホストの神経系を制御及び/又は観察するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項14】
ホストのニューロン活動を記録するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項15】
ホストの神経系を刺激することによって、ホストのニューロン活動を制御するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項16】
最初にホストのニューロン活動を刺激し(例えば、電位を誘発させることによって)、次にホストのニューロン活動を観察することによって、ホストのニューロン活動を制御し、そして記録するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項17】
最初にホストのニューロン活動を観察し、次にホストのニューロン活動を刺激し(例えば、電位を誘発させることによって)、閉じたループでこれらのステップ(必要に応じて)を繰り返すことによって、ホストのニューロン活動を記録し、そしてホストの神経系を制御するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項18】
請求項1記載のインプラントを製造する方法であって、
・支持基板(502)を入手するステップと、
・基板(502)上に、ニューロンを電子回路と接続するための神経インタフェース(13)を設けるステップと、
・基板および神経インタフェース(13)の周りにパッケージを設けて、外部環境から隔離された閉じたチャンバ(1)を得るステップと、
・閉じたチャンバ(11)の中に通ずる少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル(10)を設けて、神経インタフェース(13)とのコンタクトを取るステップと、
・少なくとも1つのガイドチャネル(10)の内面への神経突起(12)の成長を促進する手段を設けるステップと、を含む方法。
【請求項19】
隔離されたチャンバ(1)は、電子回路、チップ、バイオセンサ、光学センサ、光学刺激装置、化学センサ、または化学刺激装置のうち少なくとも1つを備え、
少なくとも1つのガイドチャネル(10)とのインタフェース接続のための追加の電子回路を設け、そして、細胞の生存能力のためのマイクロ流体デバイスを設けるステップをさらに含む請求項18記載のインプラントの製造方法。
【請求項20】
体外培養ニューロン細胞、及び/又は、基板に付着した支持細胞を設けるステップをさらに含む請求項18記載のインプラントの製造方法。
【請求項1】
細胞を記録及び/又は刺激するのに適したバイオハイブリッド型インプラントであって、
・ニューロンを電子回路と接続するための神経インタフェース(13)を備えた基板(502)を収容した、少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)と、
・隔離されたチャンバ(1,A)の少なくとも1つと接続するための第1インタフェース(11)および、ホスト神経系(7)または他の隔離されたチャンバ(B)と接続するための第2インタフェース(9)を有する、少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル(10)とを備えるインプラント。
【請求項2】
少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)は、電子回路、チップ、バイオセンサ、光学センサ、光学刺激装置、化学センサ、または化学刺激装置のうち少なくとも1つを備えるようにした請求項1記載のインプラント。
【請求項3】
閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)内の基板(502)は、シリコン、ガラス、SOI、ポリマーのいずれかで製作されている請求項1記載のインプラント。
【請求項4】
少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)は、体外培養ニューロン細胞(4)を含み、必要に応じて、支持細胞、例えば、シュワン細胞、乏突起膠細胞、及び/又は、グリア細胞をさらに含む請求項1記載のインプラント。
【請求項5】
少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)は、少なくとも1つのガイドチャネル(10)とのインタフェース接続のための電子デバイスをさらに含む請求項1記載のインプラント。
【請求項6】
少なくとも1つの閉じた隔離されたチャンバ(1,A,B)は、細胞の生存能力のためのマイクロ流体デバイスをさらに備える請求項1記載のインプラント。
【請求項7】
基板(502)は、基板(502)の面に対して略垂直なマイクロネイル電極をさらに備え、必要に応じて、その場CMOS回路、特別なマイクロ構造またはバイオ構造(例えば、堆積した薬品のパターン、パターン化した表面マイクロ構造、バイオセンサ、マイクロ流体デバイス、光学センサ、MEMS状デバイスなど)をさらに備える請求項1記載のインプラント。
【請求項8】
少なくとも1つのガイドチャネル(10)は、生体適合性があり、可撓性があり、必要に応じて、ホスト組織と機械的な適合性を有し、強い機械的性質の領域を通過する際、軸索を保護することが可能な伸縮性の材料で製作される請求項1記載のインプラント。
【請求項9】
少なくとも1つのガイドチャネル(10)は、酸化物、シリコン、シリコーン、ポリマー及び/又は薄い金属のうちの1つ又はそれ以上を含む請求項1記載のインプラント。
【請求項10】
複数のガイドチャネル(10)が存在しており、ガイドチャネル(10)は、追加の可撓性チューブによって束ねられ包囲される請求項1記載のインプラント。
【請求項11】
追加の可撓性チューブは、酸化物、シリコン、シリコーン、ポリマー及び/又は薄い金属のうちの1つ又はそれ以上を含む請求項10記載のインプラント。
【請求項12】
少なくとも1つのガイドチャネル(10)は、長手方向表面を有し、
少なくとも1つのガイドチャネル(10)は、その長手方向表面に沿って電極及び/又は開口(201)をさらに備える請求項1記載のインプラント。
【請求項13】
インプラントの体外培養ニューロンとホスト神経系とのコンタクトを取ることによって、ホストの神経系を制御及び/又は観察するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項14】
ホストのニューロン活動を記録するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項15】
ホストの神経系を刺激することによって、ホストのニューロン活動を制御するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項16】
最初にホストのニューロン活動を刺激し(例えば、電位を誘発させることによって)、次にホストのニューロン活動を観察することによって、ホストのニューロン活動を制御し、そして記録するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項17】
最初にホストのニューロン活動を観察し、次にホストのニューロン活動を刺激し(例えば、電位を誘発させることによって)、閉じたループでこれらのステップ(必要に応じて)を繰り返すことによって、ホストのニューロン活動を記録し、そしてホストの神経系を制御するための、請求項1記載のバイオハイブリッド型インプラントの使用。
【請求項18】
請求項1記載のインプラントを製造する方法であって、
・支持基板(502)を入手するステップと、
・基板(502)上に、ニューロンを電子回路と接続するための神経インタフェース(13)を設けるステップと、
・基板および神経インタフェース(13)の周りにパッケージを設けて、外部環境から隔離された閉じたチャンバ(1)を得るステップと、
・閉じたチャンバ(11)の中に通ずる少なくとも1つの可撓性ガイドチャネル(10)を設けて、神経インタフェース(13)とのコンタクトを取るステップと、
・少なくとも1つのガイドチャネル(10)の内面への神経突起(12)の成長を促進する手段を設けるステップと、を含む方法。
【請求項19】
隔離されたチャンバ(1)は、電子回路、チップ、バイオセンサ、光学センサ、光学刺激装置、化学センサ、または化学刺激装置のうち少なくとも1つを備え、
少なくとも1つのガイドチャネル(10)とのインタフェース接続のための追加の電子回路を設け、そして、細胞の生存能力のためのマイクロ流体デバイスを設けるステップをさらに含む請求項18記載のインプラントの製造方法。
【請求項20】
体外培養ニューロン細胞、及び/又は、基板に付着した支持細胞を設けるステップをさらに含む請求項18記載のインプラントの製造方法。
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−224371(P2011−224371A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−91784(P2011−91784)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91784(P2011−91784)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】
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