説明

神経変性疾患の治療に有用な標的配列及びそれらの同定方法

本発明は、変異ハンチンチンタンパク質を阻害でき、細胞死、特にポリグルタミン誘導性タンパク質凝集に関連する細胞死を阻害若しくは低減できる作用物質を同定するための方法及びアッセイに関し、該阻害は、神経変性疾患、及びより一般的にはハンチントン病の予防、寛解及び/又は治療に有用である。特に、本発明は、ハンチントン病の予防及び/又は治療における使用のための作用物質を同定するための方法及びアッセイを提供する。本発明は、ポリペプチド及び核酸TARGET、並びにこれらのTARGETに基づくsiRNA配列を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ハンチントン病(HD)病理学をもたらす過程に関与するタンパク質の発現又は活性を変調し得る作用物質を同定する方法に関する。これらの過程の阻害は、ハンチントン病及び神経変性を伴う他の疾患の予防及び/又は治療に有用である。特に、本発明は、HDの予防及び/又は治療における使用のための作用物質の同定方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
ハンチントン病(HD)は、常染色体優性遺伝的神経変性疾患であり、線条体及び皮質における神経病理学によって特徴づけられる。HDは、舞踏病様運動及び認知症と関連している進行性の選択的(局所的)神経細胞死を引き起こす。HDのための治療は存在せず、この疾患は通常、臨床徴候の発症から10年以内で早死に至る。HDの再検討のため、出願人は、以下を引用する(Batesの文献, 2005; Tobin及びSignerの文献, 2000; Vonsattelらの文献, 1985; Zoghbi及びOrrの文献, 2000)。
【0003】
HD患者の脳の神経病理学的分析は、神経変性過程に関係する脳の領域を明らかに証明する(Vonsattelらの文献、1985)。線条体(尾状核)及び皮質は最も深刻に影響を受け、これは、該疾患過程の間に観察される運動及び認識の欠損を説明する。
【0004】
HDは、「ハンチンチン」又はHDと呼ばれ、染色体4p16.3に位置する遺伝子に存在するCAGトリプレットリピートの長さの増大と関連している。ハンチントン病共同研究グループ(ハンチントン病共同研究グループ、1993)は、IT15(重要な転写産物15)と命名され、後にハンチンチンと呼ばれた「新規な」遺伝子を発見した。該遺伝子は標的領域からクローン化したトラップエキソンを使用して単離され、HD染色体に拡散しかつ不安定である多形トリヌクレオチドリピートを含んだ。正常範囲より長い(CAG)nリピートは、調査した全75の疾患ファミリーからのHD染色体において観測された。該ファミリーは、様々な民族背景に由来し、様々な4p16.3ハプロタイプを示した。(CAG)nリピートは、広く発現される約348kDの予測されたタンパク質のコード配列の範囲内に位置するが、任意の既知の遺伝子とは無関係であるようである。従って、HD突然変異が、脆弱X症候群、ケネディ症候群及び筋緊張性ジストロフィーを含むいくつかの障害において以前に観察されたものと類似する不安定なDNAセグメントを含むことがわかった。HDの表現型が完全に優位であるという事実は、該障害が、mRNA生成物又は該疾患対立遺伝子のタンパク質生成物がいくつかの新しい特性を有するか又は不適当に発現される機能獲得突然変異から生じることを示唆する。
【0005】
DiFigliaら(DiFigliaらの文献、1997)は、HDにおける神経変性の機構の理解に寄与した。彼らは、変異ハンチンチンのアミノ末端断片がHDにおいて影響を受けるHD皮質及び線条体の神経核内封入体(NII)及びジストロフィ神経突起(DN)に局在すること、及び、ポリグルタミン長がこれらの構造におけるハンチンチン蓄積の程度に影響することを実証した細胞内タンパク質分解による処理のためにタンパク質をラベルすることに関与していると考えられるユビキチンもNII及びDNで発見されており、これは、異常なハンチンチンがタンパク質分解の標的とされるが、除去には抵抗性であることを示唆した(DiFigliaらの文献、1997)。変異ハンチンチンの凝集は、HDにおける病原性機構の一部であり得る。
【0006】
Saudouら(Saudouらの文献、1998)は、変異ハンチンチンが、ハンチントン病に示される神経変性の特徴を再現する細胞モデルの使用により神経変性を誘導することによる機構を調査した。培養線条体ニューロンにトランスフェクトした場合、変異ハンチンチンはアポトーシス機構により神経変性を誘導した。抗アポトーシス化合物又は神経栄養因子は、ニューロンを変異ハンチンチンに対して保護した。変異ハンチンチンの核局在を妨害することは、核内封入体を形成し、神経変性を誘導するその能力を抑制した。しかしながら、封入体の存在は、ハンチンチンにより誘導された死と相関しなかった。封入体の形成を抑制する状態に対する変異ハンチンチントランスフェクト線条体ニューロンの曝露は、変異ハンチンチンにより誘導された死の増加をもたらした。これらの知見は、変異ハンチンチンが神経変性を誘導するために核中で作用することを示唆した。要するに、核内封入体は、ハンチンチン誘導性細胞死に対して保護する細胞機構を反映し得る。
【0007】
HDにおいて観察される線条体及び皮質におけるニューロンの細胞死のレベルを低下させる方法は、HD患者に臨床的な利益を与える見込みがある。
【0008】
注目に値する閾値が存在し、HD遺伝子における35リピート以上のポリグルタミンストレッチはHDを引き起こすのに対し、35未満のポリグルタミンリピートのストレッチは疾患を引き起こさない。疾患の閾値とインビトロで凝集するハンチンチンタンパク質の傾向との間の強い相関は、凝集体が病因に関連することを示唆する(Daviesらの文献, 1997; Scherzingerらの文献, 1999)。
【0009】
タンパク質凝集は、タンパク質の異常な形態、球状中間体、プロト原線維、線維及び顕微鏡封入体を含む、一連の中間段階を付随する(Ross及びPoirierの文献, 2004)。一般的には、1以上のこれらの分子種がHDにおいて毒性を付与すると考えられている。
【0010】
変異体HDタンパク質の有毒な中間体の発現濃度を低下させる方法は、HD患者に臨床的な利益を与える見込みがあり得る。
【0011】
(報告された開発)
神経及び幹細胞移植、例えば、成体脳に対する特定の委任(committed)神経芽細胞(胎児性ニューロン)の移植は、神経変性疾患の潜在的治療である。動物実験に励まされ、ハンチントン病の治療のためのヒト胎児性線条体組織移植の臨床試験が、南フロリダ大学ではじめて行われた。この連続試験において、1人の患者が、移植の18ヵ月後に手術とは無関係な原因により死亡した。
【0012】
細胞死を媒介する機構の活性化が神経学的疾患に関与し得るという事実は、アポトーシス及びカスパーゼを魅力的な治療標的とさせる。HDについてのアポトーシス阻害剤(ミノサイクリン)の臨床試験が進行中である。
【0013】
様々な成長因子が細胞増殖及び神経発生を誘導することが示されており、これはHDにおける細胞損失を中和し得る(Strandらの文献、2007)。
【0014】
ポリグルタミン誘導性タンパク質凝集の阻害は、HDなどのポリグルタミン病に対する治療オプションを提供できる。Tanakaらの文献 (Tanakaらの文献, 2004)は、インビトロスクリーニング研究で、様々な二糖類がポリグルタミン媒介性タンパク質凝集を阻害できることを示した。彼らはまた、様々な二糖類がポリグルタミン凝集を減らし、HDの細胞モデルにおいて生存を増加させることを発見した。これらの二糖類で最も有効なトレハロースの経口投与は、大脳及び肝臓のポリグルタミン凝集を減少させ、運動機能不全を改善し、HDのトランスジェニックマウスモデルの寿命を延長させた。Tanakaらの文献 (Tanakaらの文献, 2004)は、これらの有益な影響が、伸長したポリグルタミンに結合し、部分的に開いたポリグルタミン含有タンパク質を安定させるトレハロースの結果であることを示唆した。毒性及び高い可溶性の欠如は、経口投与の有効性と相まって、トレハロースをポリグルタミン病の治療のための治療薬又はリード化合物として有望なものにした。Tanakaらの文献 (Tanakaらの文献, 2004)により同定された糖-ポリグルタミン相互作用はそれゆえ、ポリグルタミン病に対する可能的な新しい治療戦略を提供した。
【0015】
Ravikumarらの文献(Ravikumarらの文献、2004)は、オートファジーを誘導してHDを治療する可能性についての原理の証明を提供するデータを提示した。彼らは、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)が、細胞モデル、トランスジェニックマウス及びヒト脳においてポリグルタミン凝集体に隔離されることを示した。このような隔離は、mTORのキナーゼ活性を損ない、変異ハンチンチン断片の主要なクリアランス経路であるオートファジーを誘導する。これは、ポリグルタミン毒性に対し保護する。
【0016】
細胞死がタンパク質凝集と関連する疾患を含む、ハンチントン病、及び神経細胞死と関連する又はそれにより増悪する他の疾患の症状の寛解、予防及び治療のための化合物並びに作用物質についての必要性が、当該技術分野においてなおも存在する。
【発明の概要】
【0017】
(本発明の要旨)
本発明は、本願明細書中に開示されるTARGETSの発現及び/又は活性を阻害する作用物質が、神経細胞において変異(伸長)ハンチンチンタンパク質の発現に対する神経細胞の生存を変調し得るという発見に基づく。従って、本発明は、HD病因に関与する経路に関与しているTARGETS、TARGETSの発現及び/又は活性を変調し得る作用物質のスクリーニング方法、並びにHDなどの神経変性疾患の予防及び/又は治療におけるこれらの作用物質の使用を提供する。本発明は、神経変性疾患における神経細胞死に関与しているか又は関連しているTARGETSを提供する。
【0018】
本発明は、神経細胞において変異ハンチンチンタンパク質の発現又は活性を変調し得る化合物を同定する方法であって、化合物と配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド(以下、「TARGETS」)及びそれらの断片とを、前記ポリペプチドが前記化合物に結合し得る条件下で接触させること、並びに、ハンチンチンの発現又は活性に関連した化合物-ポリペプチド特性を測定することを含む、前記方法に関する。特定の実施態様において、測定される化合物-ポリペプチド特性は、ハンチンチンタンパク質の発現レベルである。特定の実施態様において、測定される特性は、細胞死である。より全般的には、本方法は、細胞死、及び特に神経細胞死を変調させる化合物を同定することに関する。
【0019】
本方法の態様には、TARGETのポリペプチド又は配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90に記載されるアミノ酸配列を含むそれらの断片を使用する化合物のインビトロアッセイ、並びに、TARGETの阻害後に、例えばTARGETの発現レベル、TARGETの酵素活性及び/又はハンチンチンタンパク質レベルを含む有効性の指標を観測することによる細胞アッセイを含む。
【0020】
本発明は、以下にも関する:
(1)アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含む発現阻害作用物質であって、前記ポリヌクレオチドが、TARGETポリペプチドをコードする天然存在型ポリヌクレオチド配列に相補的であるか又は該配列から操作された核酸配列を含み、前記ポリヌクレオチド配列が配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45からなる群から選択される配列を含む、前記発現阻害作用物質、及び、
(2)ハンチントン病などの神経変性疾患の治療又は予防に有用な前記作用物質を含む医薬組成物。
【0021】
本発明の別の態様は、神経変性に関連した状態の治療又は予防又は軽減の方法であって、該状態に苦しむ又はその疑いのある対象に、有効なTARGET-発現阻害量の発現阻害作用物質又は有効なTARGET活性阻害量の活性阻害作用物質を含む医薬組成物を投与することによる、前記方法である。
【0022】
別の本発明の態様は、神経変性を伴う疾患の治療に有用な治療法、医薬組成物及び当該組成物の製造における、本願明細書中に開示されるTARGETを阻害する作用物質の使用に関する。特に、本方法は、神経細胞死によって特徴づけられる疾患、及び特にハンチンチンタンパク質の異常な凝集によって特徴づけられる疾患の治療におけるTARGETを阻害する作用物質の使用に関する。本作用物質は、神経変性状態、具体的にはタンパク質凝集、特にハンチンチン凝集を減らすか又は制御することが望まれる状態の寛解又は治療に有用である。適切な神経変性状態には、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症及び脊髄小脳失調症を含むが、これらに限定されるものではない。特に、該疾患は、ハンチントン病である。他の目的及び利点は、以下に図示する図面と併せて得られる次なる記載を考慮することにより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】Ad-siRNAハンチンチン細胞死アッセイにおけるプレートの例。
【0024】
【図2】ハンチンチン細胞死アッセイにおける11584のAd-siRNAの一次スクリーニングデータ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(詳細な説明)
下記の用語は、それとともに以下で提示される意味を有することを意図し、本発明の説明及び意図される範囲を理解することに有用である。
【0026】
用語「作用物質」は、任意の分子を意味し、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、化合物及び小分子を含む。特に、用語作用物質は、試験化合物又は薬剤候補化合物などの化合物を含む。
【0027】
用語「アゴニスト」は、最も広い意味で、リガンドが結合する受容体を刺激するリガンドをいう。
【0028】
本願明細書中で使用するように、用語「アンタゴニスト」は、受容体に結合すると同時に生物学的応答そのものを引き起こさないが、アゴニスト媒介性応答を遮断若しくは弱め、又はアゴニスト結合を阻止若しくは減少させ、それによりアゴニスト媒介性応答を阻止若しくは減少させる化合物を記載するのに使用される。
【0029】
用語「アッセイ」は、化合物を含む作用物質の特定の特性を測定するために使用される全ての方法を意味する。「スクリーニングアッセイ」は、化合物のコレクションからそれらの活性に基づいて化合物を特徴づけ又は選択するために使用される方法を意味する。
【0030】
用語「結合親和性」は、2以上の化合物が非共有結合関係で互いにどれくらい強く会合するかについてを記載する特性である。結合親和性は、質的に(例えば「強い」、「弱い」、「高い」又は「低い」)、又は量的に(KDを測定することなど)特徴づけることができる。
【0031】
用語「担体」は、医薬組成物の製剤において、医薬組成物に媒質、体積及び/又は使用可能な形態を与えるために使用される非毒性の材料を意味する。担体は、賦形剤、安定剤又は水性pH緩衝液などのそのような材料の1以上を含むことができる。生理的に許容し得る担体の例には、リン酸、クエン酸及び他の有機酸を含む水性若しくは固体緩衝成分;アスコルビン酸を含む酸化防止剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート薬;マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;及び/又は、TWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(登録商標)などの非イオン性界面活性剤;を含む。
【0032】
用語「複合体」は、2つの以上化合物が互いに結合し、接触し又は会合する場合に作られる実体を意味する。
【0033】
用語「化合物」は、本発明のアッセイに関連して記載される「試験化合物」又は「薬剤候補化合物」の文脈で、本願明細書中において使用される。そのようなものとして、これらの化合物は、有機又は無機化合物を含み、合成又は天然の供給源に由来する。化合物には、ポリヌクレオチド(例えばsiRNA又はcDNA)、脂質又はホルモン類似体などの無機又は有機化合物を含む。他の生体高分子的有機試験化合物には、約2〜約40アミノ酸を含むペプチド、及び約40〜約500アミノ酸を含むより大きなポリペプチドを含み、ポリペプチドリガンド、酵素、受容体、チャネル、抗体又は抗体抱合体を含む。
【0034】
用語「状態」又は「疾患」は、症状(すなわち、疾病)の顕在化、又は異常な臨床指標(例えば、生化学的指標)の現れを意味する。あるいは、用語「疾患」とは、そのような症状又は異常な臨床指標を発症する遺伝子的若しくは環境的リスク又はその傾向をいう。
【0035】
用語「接触」又は「接触させること」は、インビトロ系又はインビボ系にかかわらず、少なくとも2つの部分を合わせることを意味する。
【0036】
用語「ポリペプチドの誘導体」とは、ポリペプチドの隣接アミノ酸残基のストレッチを含み、かつ、タンパク質の生物学的活性を保持するそれらのペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び酵素に関し、例えば、該ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列と比較してアミノ酸突然変異を有するポリペプチドに関する。誘導体は、ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列と比較して、追加的な天然存在型、変更型、グリコシル化、アシル化、若しくは非天然存在型アミノ酸残基をさらに含むことができる。また、誘導体は、ポリペプチドの天然存在型形態のアミノ酸配列と比較して、1以上の非アミノ酸置換基又は異種アミノ酸置換基を含むこともでき、例えば共有結合的若しくは非共有結合的に該アミノ酸配列に結合したレポーター分子又は他のリガンドを含み得る。
【0037】
用語「ポリヌクレオチドの誘導体」は、ポリヌクレオチドの核酸残基のストレッチを含むDNA分子、RNA分子及びオリゴヌクレオチドに関し、例えば、天然存在型形態のポリヌクレオチドの核酸配列と比較して、核酸突然変異を有し得るポリヌクレオチドに関する。誘導体は、PNA、ポリシロキサン及び2'-O-(2-メトキシ)エチル-ホスホロチオエート、非天然存在型核酸残基などの修飾骨格、又は1以上のメチル-、チオ-、サルフェート、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-及びメタノカルバヌクレオシドなどの核酸置換基又はその検出を容易にするためのレポーター分子をさらに含み得る。
【0038】
用語「内在性」は、哺乳動物が天然に産生する物質を意味するものとする。用語「酵素」、「プロテアーゼ」、「キナーゼ」又はGタンパク質共役受容体(「GPCR」)に関連しての内在性とは、哺乳動物(例えば、限定ではなく、ヒト)により天然に産生されるものを意味するものとする。対照的に、この文脈における用語非内在性とは、哺乳類(例えば、限定ではないが、ヒト)によって天然に産生されないものを意味するものとする。両方の用語は、インビトロ及びインビボの系の両方を記載するのに利用できる。例えば、限定されるものではないが、スクリーニングアプローチにおいて、内在性又は非内在性のTARGETは、インビトロスクリーニング系に関し得る。さらなる例として、かつ限定としてではなく、哺乳動物のゲノムが非内在性TARGETを含むように操作された場合、インビボ系の手段による候補化合物のスクリーニングは実行可能である。
【0039】
用語「発現可能な核酸」は、タンパク性分子をコードする核酸、RNA分子又はDNA分子を意味する。
【0040】
用語「発現」は、内在性発現及び非内在性発現の両方を含み、形質導入による過剰発現を含む。
【0041】
用語「発現阻害作用物質」は、細胞内で通常発現する特定のポリペプチド又はタンパク質の転写、翻訳及び/又は発現に選択的に干渉するように設計されたポリヌクレオチドを意味する。より具体的には、「発現阻害作用物質」は、特定のポリペプチド又はタンパク質をコードするポリリボヌクレオチド配列内の連続的なヌクレオチドのうち少なくとも約15〜30、特に少なくとも17に同一又は相補的なヌクレオチド配列を含むDNA又はRNA分子を含む。例示的な発現阻害分子には、リボザイム、二本鎖siRNA分子、自己相補一本鎖siRNA分子、遺伝的アンチセンス構築物、及び修飾された安定化骨格を有する合成RNAアンチセンス分子を含む。
【0042】
用語「ポリヌクレオチドの断片」とは、完全な配列に類似するが必ずしも同一ではない活性を実質的に示す連続的な核酸残基のストレッチを含むオリゴヌクレオチドに関する。特定の態様において、「断片」は、前記完全な配列の核酸配列のうち少なくとも5核酸残基(好ましくは、少なくとも10核酸残基、少なくとも15核酸残基、少なくとも20核酸残基、少なくとも25核酸残基、少なくとも40核酸残基、少なくとも50核酸残基、少なくとも60核酸残基、少なくとも70核酸残基、少なくとも80核酸残基、少なくとも90核酸残基、少なくとも100核酸残基、少なくとも125核酸残基、少なくとも150核酸残基、少なくとも175核酸残基、少なくとも200核酸残基、又は少なくとも250核酸残基)の核酸配列を含むオリゴヌクレオチドをいうことができる。
【0043】
用語「ポリペプチドの断片」は、連続するアミノ酸残基のストレッチを含み、かつ完全な配列と類似するが必ずしも同一ではない機能的又は発現活性を実質的に示す、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、モノマー、サブユニット及び酵素に関する。特定の態様において、「断片」は、前記完全な配列のアミノ酸配列のうち少なくとも5アミノ酸残基(好ましくは、少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも25アミノ酸残基、少なくとも40アミノ酸残基、少なくとも50アミノ酸残基、少なくとも60のアミノ残基、少なくとも70アミノ酸残基、少なくとも80アミノ酸残基、少なくとも90アミノ酸残基、少なくとも100アミノ酸残基、少なくとも125アミノ酸残基、少なくとも150アミノ酸残基、少なくとも175アミノ酸残基、少なくとも200アミノ酸残基、又は少なくとも250アミノ酸残基)のアミノ酸配列を含む、ペプチド又はポリペプチドをいうことができる。
【0044】
用語「ハイブリダイゼーション」は、核酸の鎖が塩基対を介して相補鎖と結合する全ての方法を意味する。用語「ハイブリダイゼーション複合体」とは、相補的塩基間の水素結合の形成により2つの核酸配列間に形成される複合体をいう。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液において形成でき(例えば、COt又はROt解析)、又は、溶液に存在する1の核酸配列と固相支持体(例えば、紙、膜、フィルタ、チップ、ピン若しくはガラススライド、又は細胞若しくはそれらの核酸が固定された任意の他の適切な基体)に固定される別の核酸配列との間で形成できる。用語「ストリンジェント条件」とは、ポリヌクレオチドと特許請求の範囲に記載のポリヌクレオチドとの間のハイブリダイゼーションを許容する条件をいう。ストリンジェント条件は、塩濃度、有機溶媒、例えばホルムアミドの濃度、温度、及び当該技術分野で周知の他の条件によって規定できる。特に、塩の濃度を低下させること、ホルムアミドの濃度を増加させること、又はハイブリダイゼーション温度を上げることは、ストリンジェンシーを増加させ得る。用語「標準ハイブリダイゼーション条件」とは、ハイブリダイゼーション及び洗浄の両方について5×SSC及び65℃に実質的に等しい塩及び温度条件をいう。しかしながら、当業者は、そのような「標準ハイブリダイゼーション条件」が、緩衝液中のナトリウム及びマグネシウムの濃度、ヌクレオチド配列長及び濃度、ミスマッチ割合、ホルムアミド割合などを含む具体的な条件に依存していることを理解するであろう。また、「標準ハイブリダイゼーション条件」の決定において重要なのは、ハイブリダイズしている2つの配列がRNA-RNA、DNA-DNA又はRNA-DNAのいずれであるかである。そのような標準ハイブリダイゼーション条件は、周知の公式に従って当業者において容易に決定され、該ハイブリダイゼーションは、典型的には予測又は決定されたTmより10〜20℃低く、必要に応じて、より高いストリンジェンシーの洗浄を伴う。
【0045】
用語「応答」との関連における用語「阻害」又は「阻害すること」は、応答が、ある化合物の存在下において、該化合物の非存在下とは対照的に、減少するか又は妨げられることを意味する。
【0046】
用語「阻害」とは、プロセスの減少、下方制御、又はプロセスについての刺激の除去をいい、これはタンパク質若しくはポリペプチドの発現の不在又は最小化をもたらす。
【0047】
用語「誘導」とは、プロセスの誘導、上方制御又は刺激をいい、これはタンパク質若しくはポリペプチドの発現をもたらす。
【0048】
用語「リガンド」は、内在性の天然存在型受容体に特異的な内在性の天然存在型分子を意味する。
【0049】
用語「医薬として許容し得る塩」とは、本願明細書中に開示されるTARGETSの発現又は活性を阻害する化合物のうち、非毒性の無機及び有機酸付加塩並びに塩基付加塩をいう。これらの塩は、本発明に有用な化合物の最終的な単離及び精製の間、インサイチュウで調製できる。
【0050】
用語「ポリペプチド」は、タンパク質(TARGETSなど)、タンパク性分子、タンパク質の断片、重合性タンパク質のモノマー若しくは部分、ペプチド、オリゴペプチド及び酵素(キナーゼ、プロテアーゼ、GPCRのもの、その他など)に関する。
【0051】
用語「ポリヌクレオチド」は、一本鎖又は二本鎖形態の、及びセンス又はアンチセンス方向のポリ核酸、ストリンジェント条件下において特定のポリ核酸にハイブリダイズする相補的ポリ核酸、並びに、その塩基対のうち少なくとも約60パーセントで相同であり、より具体的にはその塩基対の70パーセント、最も具体的には90パーセント、及び特別な実施態様においてはその塩基対の100パーセントが共通であるポリヌクレオチドを意味する。ポリヌクレオチドには、ポリリボ核酸、ポリデオキシリボ核酸及びその合成類似体を含む。また、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'-O-(2-メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸も含む。ポリヌクレオチドは、約10〜約5000塩基、具体的には約100〜約4000塩基、より具体的には約250〜約2500塩基の範囲の長さで変化する配列により記載される。1つのポリヌクレオチドの実施態様には、約10〜約30塩基長を含む。ポリヌクレオチドの特別な実施態様は、約17〜約22ヌクレオチドのポリリボヌクレオチドであり、より一般的には小分子干渉RNA(siRNAs)として記載される(siRNA−二本鎖siRNA分子又は自己相補的一本鎖siRNA分子(shRNA))。別の具体的実施態様は、ペプチド核酸(PNA)、ポリシロキサン、及び2'-O-(2-メトキシ)エチルホスホロチオエートなどの修飾骨格を有する核酸、又は非天然存在型核酸残基、若しくはメチル-、チオ-、サルフェート、ベンゾイル-、フェニル-、アミノ-、プロピル-、クロロ-及びメタノカルバヌクレオシドなどの1以上の核酸置換基、若しくはその検出を容易にするレポーター分子を含む核酸である。本願明細書においてポリヌクレオチドは、特定の標的DNA配列とは別の鎖と「実質的に」相補的であるように選択される。これは、該ポリヌクレオチドが、それらそれぞれの鎖とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならないことを意味する。従って、該ポリヌクレオチド配列は、該標的配列の正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片は、前記ポリヌクレオチドの5'端に付着するとともに、該ポリヌクレオチド配列の残りは該鎖に相補的であることができる。あるいは、非相補的塩基又はより長い配列がポリヌクレオチドに散在できるが、但し、該ポリヌクレオチド配列は、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするか、又は伸長産物の合成用テンプレートを形成する鎖の配列と十分な相補性を有することを条件とする。
【0052】
用語「予防すること(preventing)」又は「予防(prevention)」とは、病原性作用物質に曝され得る、又は疾患の発病に先立って疾患傾向であり得る対象において、疾患又は障害を発症するか又は発現する危険の低減(すなわち、疾患の臨床症状のうち少なくとも1を発現させない)をいう。
【0053】
用語「予防(prophylaxis)」は「予防(prevention)」に関連し、疾患を治療し又は治癒させるというよりむしろ予防する(prevent)目的での測定又は手順をいう。予防的測定の非限定的な例には、ワクチンの投与;例えば、不動化による血栓症の危険のある入院患者に対する低分子量ヘパリンの投与;及び、マラリアが風土性である、又はマラリアになる危険が高い地理的領域への訪問に先立つ、クロロキンなどの抗マラリア剤の投与;を含み得る。
【0054】
用語「溶媒和物」は、本発明に有用な化合物と1以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合には、水素結合を含む。特定の場合において、溶媒和物は、例えば1以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に取り込まれる場合に、単離できる。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を含む。代表的な溶媒和物には、水和物、エタノラート及びメタノラートを含む。
【0055】
用語「対象」には、ヒト及び他の哺乳動物を含む。
【0056】
用語「TARGET」又は「TARGETS」は、本願明細書に記載されているアッセイに従って同定され、ハンチントン病表現型の変調に関与していることが決定されたタンパク質を意味する。
【0057】
「治療上有効量」又は「有効量」は、医師又は他の臨床従事者により探索されている対象の生物学的若しくは医学的応答を誘発する化合物又は作用物質の量を意味する。
【0058】
用語「治療する」は、障害、疾患又は状態の発現を予防し、又は病理を変化させることにより、そのような障害若しくは状態の1以上の症状を含む障害、疾患又は状態を改善させる意図を持って実施される介入を意味する。従って、「治療する」とは、治療的処置及び予防的(prophylactic)若しくは予防的(preventative)測定をいう。治療することを必要とするものには、既に該障害であるもの、並びに、該障害が予防されるべきものを含む。本願明細書に使用される関連用語「治療」とは、先に用語「治療する」で定義したように、障害、症状、疾患又は状態を治療する行為をいう。
【0059】
任意の疾患若しくは障害の用語「治療する」又は「治療」とは、一実施態様において、疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患を抑えること、又はその臨床症状のうちの少なくとも1つの徴候、範囲又は重篤性を低減すること)をいう。別の実施態様において、「治療する」又は「治療」とは、少なくとも1つの物理的パラメータを改善することをいい、これは対象によっては識別可能でなくてもよい。さらに別の実施態様において、「治療する」又は「治療」とは、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、又はその両方のいずれかで、疾患又は障害を変調することをいう。さらなる態様において、「治療する」又は「治療」は、疾患の進行を減速させることに関する。
【0060】
また、用語「ベクター」は、プラスミド、並びに組換えウイルスなどのウイルスベクター、又は組換えウイルスをコード化している核酸に関する。
【0061】
用語「脊椎動物細胞」は、魚、鳥、爬虫類、両生類、有袋類、及び哺乳動物種を含む、バーテラ(vertera)構造を有する動物由来の細胞を意味する。好ましい細胞は、哺乳動物種由来のものであり、もっとも好ましい細胞は、ヒト細胞である。哺乳動物細胞には、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、マウス及びラットなどのブタマウス(porcine murine)、並びにウサギを含む。
【0062】
用語「TARGET」又は「TARGETS」は、本願明細書に記載されているアッセイに従って同定され、マスト細胞活性化の変調に関与していることが決定されたタンパク質を意味する。用語TARGET又はTARGETSには、選択的種形態、アイソフォーム及びバリアント、例えばスプライスバリアント、対立遺伝子バリアント、フレームエキソンの選択物、及び表1に示されるものなどの公知の若しくは認識されたそのアイソフォーム又はバリアントを含む選択的若しくは中途の終止又は開始部位を含み、かつ意図する。
【0063】
用語「神経変性状態」又は「神経変性疾患」とは、ニューロンの劣化によって引き起こされる障害をいう。失われるニューロンの正確な位置及び型は、状態間で変化し得る。それは、これらの細胞を異常に機能させ、最終的に該細胞を死に至らしめる当該細胞における変化である。神経変性疾患には、ハンチントン病及び他のポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症 、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症及び血管性認知症を含むが、これらに限定されるものではない。
【0064】
用語「ポリグルタミン病」とは、遺伝子内のCAGトリプレットリピート伸長によって引き起こされる優性遺伝的神経変性状態のファミリーをいう。CAGはアミノ酸グルタミンをコードし、その影響を受けたタンパク質はこのアミノ酸トラクト(tract)が増大する。このファミリーには、(限定されるものではないが)ハンチントン病、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、脊髄小脳失調症1(SCA1)、脊髄小脳失調症2(SCA2)、脊髄小脳失調症3(SCA3)、脊髄小脳失調症7(SCA7)及び脊髄小脳失調症17(SCA17)を含む。
【0065】
(TARGETS)
出願人による発明は、神経変性、神経細胞死の治療、予防及び軽減に関し、当該疾患には、例えばハンチントン病、並びに他のポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症 、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症及び血管性認知症を含む。出願人の発明は、さらに及び特に、細胞死の阻害に関する。出願人の発明は、細胞生存及び細胞死に対するTARGETの関係に部分的に基づく。TARGETは、特に、神経変性及びHDに関連する。
【0066】
本発明は、細胞死を変調する薬剤候補化合物をアッセイする方法を提供し、該方法には、該化合物を、その存在若しくは発現が細胞死を生じる若しくは媒介するハンチンチンの変異形態若しくは他の凝集ポリペプチドなどの細胞死媒介ポリペプチドを発現する細胞と接触させること、及び、該化合物の存在下若しくは不在下における細胞死の相対量若しくは程度を測定することを含む。このような方法はまた、細胞死を変調することに作用する標的タンパク質を同定するために使用でき、あるいは、該方法は、標的タンパク質の発現若しくは活性を変調する化合物を同定するために使用できる。例示的な当該方法は、当業者により設計され、測定されることができる。具体的な当該例示的方法は本願明細書中に提供される。
【0067】
本発明は、以下に実施例で記載する選別の結果として同定されるTARGETポリペプチド及びそれらのコード核酸が、神経細胞死における因子であるという発明者の発見に基づく。TARGETポリペプチド及び/又はそれらのコードポリヌクレオチドの活性若しくは発現の減少は、神経細胞死の減少若しくは阻害の原因であり、相関し、又は関連する。あるいは、TARGETポリペプチド及び/又はそれらのコードポリヌクレオチドの活性若しくは発現の減少は、神経細胞死の強化若しくは増加の原因であり、相関し、又は関連する。
【0068】
本発明の具体的実施態様において、TARGETポリペプチドには、表1に収載される配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0069】
【表1】






【0070】
本発明の特定の実施態様には、配列番号46、81及び82として同定される輸送体TARGETを含む。本発明の特定の実施態様には、配列番号90として同定されるTARGETを含む。さらなる本発明の特定の実施態様には、配列番号47、51、55、59、62、64、67、75、76、77、80、85及び87として同定される酵素TARGETを含む。さらなる本発明の特定の実施態様には、配列番号53として同定されるプロテアーゼTARGETを含む。さらなる本発明の特定の実施態様には、配列番号52、54、56、71、78、79、86、88及び89として同定されるキナーゼTARGETを含む。さらなる本発明の特定の実施態様には、配列番号60として同定されるGPCRのTARGETを含む。さらなる本発明の特定の実施態様には、配列番号63及び66により同定されるイオンチャネルTARGETを含む。さらなる本発明の特定の実施態様には、配列番号58として同定される分泌型TARGETを含む。さらなる本発明の特定の実施態様には、配列番号49、57、65及び69により同定されるホスファターゼTARGETを含む。
【0071】
本願明細書において使用される選別及びTARGETの妥当性を検証し、特定のTARGETポリペプチド、すなわち配列番号48、50、61、68、70、72、73、74、83及び84のポリペプチドは、酵母ツーハイブリッドスクリーニング又は親和性プルダウンを使用して、ハンチンチン相互作用タンパク質として同定された(Kaltenbach, L.S.らの文献(2007) PLoS Genet 3(5):689-708)。これにより、これらの特定のTARGETポリペプチドの特定の阻害又は細胞死の阻害は、記載しておらず、又は論証していない。
【0072】
一態様において、本発明は、細胞死を阻害する薬剤候補化合物をアッセイする方法であって、該化合物を配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその断片と、前記ポリペプチドが該化合物と結合し得る条件下で接触させること、及び該ポリペプチドと該化合物との間の複合体の形成を検出することを含む、前記方法に関する。該複合体形成を測定する1つの具体的手段は、前記ポリペプチドに対する前記化合物の結合親和性を決定することである。
【0073】
より詳細には、本発明は、細胞死を変調させる作用物質を同定する方法であって、
(a)哺乳動物細胞集団をTARGETポリペプチド又はその断片に結合親和性を呈する1以上の化合物と接触させること、及び
(b)細胞死に関連する化合物-ポリペプチド特性を測定することを含む、前記方法に関する。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、細胞死を阻害する薬剤候補化合物をアッセイする方法であって、該化合物を配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその断片と、前記化合物が該ポリペプチドの活性若しくは発現を変調し得る条件下で接触させること、及び該ポリペプチドの活性若しくは発現を測定することを含む、前記方法に関する。ポリペプチドの活性又は発現を測定する1つの具体的手段は、抗体などのポリペプチド結合性作用物質を使用して前記ポリペプチドの量を測定すること、又は生物学的若しくは生化学的測定で前記ポリペプチドの活性を測定すること、例えばキナーゼポリペプチドの標的のリン酸化の量を測定することである。ポリペプチドの活性又は発現を測定するさらなる手段は、細胞死又は細胞死メディエータの量又は範囲を測定することである。
【0075】
先に言及した化合物-ポリペプチド特性は、TARGETの発現又は活性に関し、当業者により選択される測定可能な現象である。測定可能な特性は、例えば、ポリペプチドTARGETのペプチドドメインに対する結合親和性、又はポリペプチドTARGETの酵素活性、又は細胞死を含む多数の生化学的マーカーの任意の1つのレベルであってよい。
【0076】
当業者の選択に応じて、本アッセイ法は、一連の測定として機能するように設計でき、そのそれぞれは、該薬剤候補化合物が実際に該ポリペプチドに作用し、これにより神経細胞死、特にハンチントン病表現型を変調するかどうかを測定するように設計されている。例えば、ポリペプチド又はその断片に対する化合物の結合親和性を測定するように設計されたアッセイは、必要であり得るが、該試験化合物が、対象に投与される場合、具体的にはハンチントン病表現型を含む神経細胞死を変調するのに有用であり得るかどうかを確定させる1つの例示的アッセイ又は付加的なかつより具体的若しくは特異的なアッセイのうちの1つのアッセイであり得る。
【0077】
適切なコントロールは、偽陽性の読み取りに対する保証として常におくべきである。本発明の具体的実施態様において、スクリーニング方法は、化合物を適切なコントロールに比較する追加的工程を含む。一実施態様において、コントロールは、試験化合物と接触してなかった細胞又はサンプルであり得る。代替的実施態様において、コントロールは、TARGETを発現しない細胞であり得;例えばそのような実施態様の一態様において、試験細胞は天然にTARGETを発現でき、コントロール細胞はTARGETの発現を阻害又は阻止する作用物質(例えばsiRNA)と接触したものであり得る。あるいは、このような実施態様の別の態様において、その天然状態の細胞はTARGETを発現せず、試験細胞はTARGETを発現するように設計されており、その結果この実施態様において、コントロールは形質転換していない天然細胞であり得る。コントロールは、細胞死の公知のメディエータも利用でき、又は代替的に利用できる。例示的なコントロールが本明細書に記載されているが、これは限定として捉えられるべきではなく;使用される実験条件について適切なコントロールを選択することは、当業者の範囲内である。
【0078】
これらの測定をする順序は本発明の実施に重大であると考えられてはおらず、任意の順序で実施できる。例えば、ポリペプチドに対する化合物の結合親和性についての情報が知られていない化合物のセットのスクリーニングアッセイを最初に実施できる。あるいは、ポリペプチドドメインに対し結合親和性を有すると同定された化合物のセット、又はポリペプチドの阻害作用物質であると同定された化合物のクラスを選別できる。しかしながら、薬剤候補化合物の最終的な使用に意味がある本アッセイについては、神経細胞死、特にハンチントン病表現型の変調の測定が好ましい。神経細胞死、若しくは細胞死経路の活性化を測定し、評価し又は決定するための手段は、当業者により選択されることができ、又は決定されることができる。ポリペプチドに結合親和性のコントロール及び測定値、又は本発明のポリペプチドの活性又発現の変調を含む検証研究は、それでもなお、任意の治療的若しくは診断的用途に有用な化合物を同定することに有用である。
【0079】
技術的に認識された方法及びアッセイに基づく類似のアプローチは、神経変性及び/又は神経細胞死により特徴づけられる様々な疾患のいずれかにおけるTARGETS及び化合物に関して適用可能であり得る。アッセイは、TARGETに対し結合親和性を有する試験化合物が、神経変性及び/又は神経細胞死を阻害することを確認するように設計されていてもよい。
【0080】
本アッセイ法は、モノマー、重合タンパク質の部分又はサブユニット、ペプチド、オリゴペプチド及びその酵素的に活性な部分を含む、TARGETタンパク質又はその断片の1以上を使用して、インビトロで実施できる。
【0081】
化合物のポリペプチドTARGETとの結合親和性は、公知技術の方法、例えば、表面プラスモン共鳴バイオセンサ(Biacore(登録商標))を使用すること、標識化合物を用いる飽和結合分析(例えば、スキャッチャード及びリンドモ分析)により、差動UV分光光度計、蛍光分極化アッセイ、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR(登録商標))システム、蛍光共鳴エネルギー転移及び生体発光共鳴エネルギー転移により測定できる。また、化合物の結合親和性は、解離定数(Kd)で、又はIC50若しくはEC50として表現することもできる。IC50は、該ポリペプチドへの別のリガンドの結合を50%阻害するために要求される化合物の濃度を表す。EC50は、TARGET機能を測定する任意のアッセイにおいて最大効果の50%を得るために必要とされる濃度を表す。解離定数(Kd)は、リガンドがどれくらいよくポリペプチドに結合するかの基準であり、ポリペプチド上の結合部位を正確に半分を飽和させるのに必要とされるリガンド濃度に等しい。高親和性結合を有する化合物は、低いKd、IC50及びEC50値、例えば100nM 〜1pMの範囲を有し;中程度〜低い親和性結合は、高いKd、IC50及びEC50値、例えばマイクロモラーの範囲に関する。
【0082】
本アッセイ法は、細胞アッセイにおいて実施することもできる。TARGET又はその断片を発現している宿主細胞は、内在性発現を有する細胞、又は例えば形質導入によってTARGETを発現若しくは過剰発現するよう改変された細胞であり得る。ポリペプチドの内在性発現が、容易に測定し得る基線を決定するのに十分でない場合、TARGETを過剰発現する宿主細胞を使用できる。過剰発現は、TARGET基質最終生成物のレベルが内在性発現によって活性レベルよりも高いという利点を有する。したがって、現在利用可能な技術を使用してこのようなレベルを測定することは、より容易である。あるいは、TARGETの非内在性形態を、細胞において発現若しくは過剰発現させることができ、又はスクリーニングにおいて利用できる。
【0083】
本アッセイ法は、酵素活性を含むがこれに限定されるものではないTARGETポリペプチドの特定の発現又は活性に基づくことができる。従って、配列番号47、48、51、55、59、62、64、67、68、70、72、75、76、77、80、84、85及び87として同定された酵素TARGETについてのアッセイは、酵素活性又は酵素発現に基づくことができる。配列番号53として同定されたプロテアーゼTARGETについてのアッセイは、プロテアーゼ活性又は発現に基づくことができる。配列番号52、54、56、61、71、74、78、79、86、88及び89として同定されたキナーゼTARGETについてのアッセイは、キナーゼ標的のリン酸化を含むがこれに限定されるものではないキナーゼ活性又は発現に基づくことができる。配列番号49、57、65として同定されたホスファターゼTARGETについてのアッセイは、ホスファターゼ標的の脱リン酸化を含むがこれに限定されるものではないホスファターゼ活性又は発現に基づくことができる。配列番号60として同定されたGPCRのTARGETについてのアッセイは、下流のメディエータ若しくは活性化因子を含むGPCR活性又は発現に基づくことができる。配列番号73として同定されたホスホジエステラーゼ(PDE)TARGETについてのアッセイは、PDE活性又は発現に基づくことができる。配列番号58として同定された分泌型TARGET TARGETについてのアッセイは、可溶培地中の活性若しくは発現又は分泌活性を利用できる。配列番号50、63、66及び83により同定されるイオンチャネルTARGETについてのアッセイには、イオンチャネルを開き又は閉じ、それにより膜を介しての又は細胞内での蛍光色素又はトレーサーの濃度を変化させる化合物の能力を測定する、古典的パッチクランプ法、ハイスループット蛍光に基づく若しくはトレーサーに基づくアッセイを含む、当業者に周知の技術を使用できる。測定可能な現象、活性又は特性は、当業者により選択され又は選ばれることができる。当業者は、当該技術分野における知識及び専門知識を使用して、多くのアッセイ様式、システム又は設計のいずれかから選択できる。
【0084】
本発明者は、本明細書において「Ad-siRNA」と記載するshRNAのライブラリの発現を媒介する組換えアデノウイルスをスクリーニングすることによって、特定の標的タンパク質及びそれらをコードする核酸を同定した。このタイプのライブラリは、siRNA分子が組換えアデノウイルスによって細胞に形質導入されたことの選別であり、そのsiRNA分子は、特定の遺伝子の発現、並びに細胞における対応遺伝子産物の発現及び活性を阻害するか又は抑制する。ウイルスベクターの各siRNAは、特定の天然遺伝子に対応する。細胞死を制御するsiRNA又はshRNAを同定することによって、例えば本明細書実施例に説明するように、直接的な相関を、特異的遺伝子発現と、細胞死及び/又は神経変性を制御するための経路との間に描くことができる。ノックダウンライブラリ(本明細書において「TARGET」ポリペプチドとして言及されるそのタンパク質発現生成物)を使用して同定されたTARGET遺伝子は、それから、異常なタンパク質凝集と関連している疾患の治療において使用できる化合物を同定する本発明の方法に使用される。ノックダウン(KD)標的配列、より具体的には本明細書に記載されるAd-siRNA選別において同定された配列は、表2において以下に記載される配列(配列番号91〜135)を含み、表2に収載される配列を含むshRNA化合物は、これらのTARGET遺伝子の発現及び/又は活性を阻害することが本明細書に示されており、本明細書の実施例は、神経変性状態における細胞死を変調する経路におけるTARGETSの役割を確認する。
【0085】
表2
本発明の発現阻害作用物質の実施に有用な例示的KD標的配列
【表2】


【0086】
表1は、同定されたポリペプチドのクラスを含めて、以下に記載される細胞死アッセイで出願人のノックダウンライブラリを使用して同定されたTARGETSを収載する。例えば、TARGETSは、キナーゼ、プロテアーゼ、酵素、イオンチャネル、GPCR、ホスホジエステラーゼ及びホスファターゼを含むポリペプチドクラスに同定された。
【0087】
化合物の存在下又は不在下において実施される、キナーゼによる基質のリン酸化を測定することによる、配列番号52、54、56、61、71、74、78、79、86、88及び89により表されるTARGETなどのキナーゼの活性を測定する特定の方法は、周知技術である。
【0088】
イオンチャネルは膜タンパク質複合体であり、それらの機能は生体膜を介するイオンの拡散を促進することである。膜又はリン脂質二重層は、親水性及び帯電分子に対し、疎水的な低誘電バリアを構築する。イオンチャネルは、膜の疎水的な内部を通る高導電親水性経路を提供する。イオンチャネルの活性は、古典的パッチクランプを使用して測定できる。ハイスループット蛍光に基づく又はトレーサーに基づくアッセイも、イオンチャネル活性を測定するために広く利用できる。これらの蛍光に基づくアッセイは、イオンチャネルを開き又は閉じ、これにより膜を介する特定の蛍光色素の濃度を変化させるそれらの能力に基づき、化合物を選別する。トレーサーに基づくアッセイの場合、細胞内及び外のトレーサーの濃度の変化は、放射能測定又はガス吸収分光測定法により測定される。
【0089】
ポリペプチド(プロテアーゼ)による基質の開裂を測定することによる、化合物により阻害を測定する特定の方法は、周知技術である。配列番号53により表されるTARGETは、プロテアーゼである。古典的に、基質は、蛍光基が、標的プロテアーゼにより切断できる基質であるペプチド配列を介してクエンチャに連結されて使用される。リンカーの開裂は、蛍光基及びクエンチャを分離し、蛍光の増加を引き起こす。
【0090】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、エフェクタータンパク質を活性化させることができ、該細胞においてセカンドメッセンジャーレベルの変化を結果的に生じる。配列番号60により表されるTARGETは、GPCRである。GPCRの活性は、当該セカンドメッセンジャーの活性レベルを測定することにより測定できる。細胞における2つの重要かつ有用なセカンドメッセンジャーは、サイクリックAMP(cAMP)及びCa2+である。活性レベルは、ELISA若しくは放射性技術によって又はCa2+と接触した場合に蛍光若しくは発光シグナルを生成する基質を使用することによって直接的に、あるいはレポーター遺伝子アッセイによって間接的に、当業者に公知の方法で測定できる。1以上のセカンドメッセンジャーの活性レベルは、典型的には、該セカンドメッセンジャーに応答するプロモータによって制御されるレポーター遺伝子で測定できる。そのような目的のために当該技術分野で知られかつ使用されるプロモータは、細胞においてサイクリックAMPレベルに応答性であるサイクリックAMP応答性プロモータ、及び細胞の細胞質Ca2+レベルに感受性のNF-AT応答性プロモータである。レポーター遺伝子は、典型的には、容易に検出可能である遺伝子産物を有する。レポーター遺伝子は、宿主細胞において、安定的に感染できるか又は一過性にトランスフェクトできる。有用なレポーター遺伝子は、アルカリホスファターゼ、強化型緑色蛍光タンパク質、不安定化緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ及びβ-ガラクトシダーゼである。
【0091】
上記のように、ポリペプチドを発現している細胞が天然に該ポリペプチドを発現している細胞でもよいこと、又は該細胞が該ポリペプチドを発現するようにトランスフェクトされていてもよいことは理解すべきである。また、細胞は、ポリペプチドを過剰発現させるために形質導入されることができ、又は該ポリペプチドの非内在性形態を発現するようにトランスフェクションされることができ、これを示差的にアッセイ又は評価できる。1つの具体的実施態様において、本発明の方法は、細胞の集団をポリペプチドのアゴニストと接触させる工程をさらに含む。これは、特定の選ばれた細胞集団におけるポリペプチドの発現がその活性の適切な検出に対して低すぎる方法において有用である。アゴニストを使用することにより、ポリペプチドを誘発でき、化合物が該ポリペプチドを阻害するか否かの適切な読み出しを可能にする。
【0092】
細胞の集団は、異なる手段を介して、例えば培地中で直接インキュベーションすることによって、又は細胞への核酸移送によって、化合物又は化合物の混合物に曝露できる。このような移送は、多種多様な手段によって、例えば裸の単離DNA又はRNAの直接的なトランスフェクションによって、又は組換えベクターなどの送達系によって、達成できる。リポソーム又は他の脂質に基づくベクターなどの他の送達手段を使用することもできる。特に、核酸化合物は、組換えウイルスなどの(組換え)ベクターにより送達される。
【0093】
ハイスループット目的のために、抗体断片ライブラリ、ペプチドファージディスプレイライブラリ、ペプチドライブラリ(例えば、LOPAP(商標)、Sigma Aldrich)、脂質ライブラリ(BioMol)、合成化合物ライブラリ(例えば、LOPAC(商標)、Sigma Aldrich)又は天然化合物ライブラリ(Specs、TimTec)などの化合物のライブラリを使用できる。
【0094】
特定の薬剤候補化合物は、低分子量の化合物である。例えば500ダルトン以下の分子量を有する低分子量の化合物は、生体システムにおいて良好な吸収及び浸透性を有するようであり、従って500ダルトン超の分子量を有する化合物よりもより成功的な薬剤候補である可能性がある(Lipinskiらの文献、(2001))。ペプチドには、薬剤候補化合物の別の特定のクラスを含む。ペプチドは優れた薬剤候補であり得、受胎能ホルモン及び血小板凝集阻害剤などの商業的に価値のある複数のペプチドの例がある。天然化合物は、薬剤候補化合物の別の特定のクラスである。当該化合物は天然源において見出されて抽出され、これらはその後、合成できる。脂質は、薬剤候補化合物の別の特定のクラスである。
【0095】
薬剤候補化合物の別の特定のクラスは、抗体である。本発明は、TARGETに対して指示される抗体を提供する。これらの抗体は、内因的に産生されて細胞内でTARGETに結合でき、又は組織に添加されて細胞外に存在するTARGETポリペプチドに結合できる。これらの抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。本発明には、キメラ抗体、単鎖抗体及びヒト化抗体、並びにFabフラグメント及びFab発現ライブラリの製品並びにFv断片及びFv発現ライブラリの産物を含む。別の実施態様において、化合物は、ナノボディ、すなわち天然存在型シングルドメイン抗体の最も小さな機能的断片でもよい(Cortez-Retamozoらの文献、2004)。
【0096】
ある種の実施態様において、ポリクローナル抗体が、本発明の実施において使用できる。当業者は、ポリクローナル抗体を調製する方法を知っている。ポリクローナル抗体は、哺乳動物において、例えば、1以上の免疫剤、及び必要に応じてアジュバントの注入によって産生できる。典型的には、免疫剤又はアジュバントは、哺乳動物において、複数回の皮下又は腹膜内注射によって注入される。抗体は、完全なTARGETタンパク質若しくはポリペプチドに対して、又は断片、抱合体を含む誘導体、又は細胞膜に埋め込まれているTARGETなどのTARGETタンパク質若しくはポリペプチドの他のエピトープ、又はファージディスプレイライブラリーなどの抗体可変領域のライブラリーに対しても産生できる。
【0097】
免疫を受ける哺乳動物において免疫原性であることが公知のタンパク質に免疫剤を抱合することは有用であり得る。そのような免疫原性タンパク質の例には、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、及び大豆トリプシン阻害剤を含むが、これらに限定されるものではない。利用できるアジュバントの例には、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(一リン酸化リピドA、合成トレハロースジコリノマイコレート(dicorynomycolate))を含む。当業者は、過度の実験なく、免疫プロトコルを選択できる。
【0098】
いくつかの実施態様において、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体は、当該技術分野において公知の方法を使用して調製できる。本発明のモノクローナル抗体は、宿主を該抗体に対する免疫応答から回避させるために「ヒト化」できる。「ヒト化抗体」は、相補性決定領域(CDR)及び/又は軽鎖若しくは重鎖可変ドメインフレームワークの他の部分が非ヒト免疫グロブリンに由来するが、該分子の残りの部分は1以上のヒト免疫グロブリンに由来するものである。ヒト化抗体は、ドナー若しくはアクセプタの無修飾軽鎖又はキメラ軽鎖に会合したヒト化重鎖によって特徴づけられる抗体も含み、又はその逆もまた同じである。抗体のヒト化は、当該技術分野において公知の方法により達成できる(例えば、Mark及びPadlan(1994)「第4章.モノクローナル抗体のヒト化」、実験薬学ハンドブック第113巻、Springer-Verlag, New Yorkを参照されたい。)。トランスジェニック動物は、ヒト化抗体を発現させるために使用することができる。
【0099】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む公知技術のさまざまな技術を使用して産生できる(Hoogenboom及びWinterの文献(1991)J. Mol Biol. 227:381-8;Marksらの文献 (1991) 222:581-97)。Coleら及びBoernerらの技術も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる(コールらの文献(1985)モノクローナル抗体及び癌治療「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R. Liss、77ページ;Boernerらの文献(1991). J. Immunol., 147(l):86-95)。
【0100】
単鎖抗体の生産における公知技術は、本発明のTARGETポリペプチド及びタンパク質に対する単鎖抗体を生産するのに適合し得る。抗体は、一価の抗体であり得る。一価の抗体を調製する方法は周知技術である。例えば、1つの方法には、免疫グロブリン軽鎖及び修飾重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、一般に、重鎖架橋結合を予防するために、Fc領域における任意の点で短くされる。あるいは、関連するシステイン残基は、別のアミノ酸残基により置換されるか、又は架橋結合を予防するように削除される。
【0101】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に、及び特に細胞表面タンパク質若しくは受容体若しくは受容体サブユニットに結合特異性を有するモノクローナル抗体、特にヒトの又はヒト化されたモノクローナル抗体である。この場合、結合特性のうちの1つは、TARGETの1つのドメインに対するものであり、他の1つは、同じ又は異なるTARGETの別のドメインに対するものである。
【0102】
二重特異性抗体の生産方法は、公知技術である。伝統的に、二重特異性抗体の組換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の共発現に基づいており、該2つの重鎖は、異なる特異性を有する(Milstein及びCuelloの文献, (1983) Nature 305:537-9)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな取り合わせ(random assortment)のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的混合物を生じ、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を備えている。親和性クロマトグラフィ工程は、通常、正しい分子の精製を達成する。同様の手順は、Trauneekerらの文献(1991)EMBO J. 10:3655-9において開示される。
【0103】
さらなる実施態様において、本発明は、細胞死を変調させる化合物を同定する方法であって:
a)化合物を配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
b)該ポリペプチドに対する該化合物の結合親和性を測定すること;
c)前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の集団を、少なくとも10マイクロモラーの結合親和性を呈する化合物と接触させること;及び、
d)変異ハンチンチンタンパク質の発現を変調させる化合物を同定すること;
を含む、前記方法に関する。
【0104】
本発明はさらに、細胞死を変調させる化合物を同定する方法であって:
a)化合物を配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること:
b)該ポリペプチドの発現又は活性を阻害する該化合物の能力を測定すること;
c)前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の集団を、該ポリペプチドの発現又は活性を著しく阻害する化合物と接触させること;及び、
d)変異ハンチンチンタンパク質の発現を変調させる化合物を同定すること;
e)変異ハンチンチンタンパク質の発現の表現型への影響、特に変異体ハンチンチンによって引き起こされる細胞死を変調させる化合物を同定すること;
を含む、前記方法に関する。
【0105】
本発明の特定の態様において、細胞死を変調させる化合物の能力は、ヨウ化プロピジウム排除又はアネキシン-V染色を使用して死細胞の数を定量化することを含むがこれらに限定されない、当業者に周知の方法により測定できる。
【0106】
別の特定の実施態様によると、本アッセイ法は、TARGETに対する結合親和性を有するとして同定された、及び/又は1以上のTARGETに対するアンタゴニスト活性などの下方制御活性を有するとして既に同定されている薬剤候補化合物を使用する。
【0107】
候補化合物又は作用物質は、ハンチンチン細胞死アッセイにおいて検証又は再選別できる。HD又は他の神経変性疾患を改善し、予防し又は治療する活性を確認する他のアッセイには、神経細胞死アッセイ、アポトーシスについてのアッセイ、及びR6/2(Mangiariniらの文献、1996)及びYAC128(Slowらの文献、2003)などのHD又は神経変性疾患のための動物モデルを含む。
【0108】
さらに、本発明は、ハンチントン病表現型を変調させる方法であって、哺乳動物細胞を、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45からなる群から選択されるヌクレオチド配列のうち少なくとも約15〜30、特に具体的には少なくとも17〜30、最も具体的には少なくとも17〜25の連続するヌクレオチドに相補的なポリリボヌクレオチド配列を含む発現阻害作用物質と接触させることを含む、前記方法に関する。
【0109】
本発明の別の態様は、ハンチントン病表現型を変調させる方法であって、哺乳動物細胞を、TARGETポリペプチドをコードしているポリリボヌクレオチドの該細胞における翻訳を阻害する発現阻害作用物質と接触させることによることを含む、前記方法に関する。特定の実施態様は、作用物質をTARGET mRNAと対合させ、これによりTARGETポリペプチドの発現を下方制御又は遮断するように機能する、少なくとも1つのアンチセンス鎖を含むポリヌクレオチドを含む組成物に関する。阻害作用物質には特に、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)を含み、ここで前記作用物質には、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45からなる群から選択される天然存在型ポリヌクレオチド配列に相補的な、又は該配列から設計される核酸配列を含む。
【0110】
本発明の特別な実施態様は、発現阻害作用物質が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90にコードされるポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45に対応するポリリボヌクレオチドの一部に十分に相同な低分子干渉RNA(siRNA、特にshRNA)からなる群から選択され、当該アンチセンスRNA、ODN、リボザイム、特にsiRNA、特にshRNAが、TARGETポリリボヌクレオチドのTARGETポリペプチドへの翻訳に干渉できる方法に関する。
【0111】
一実施態様において、TARGETは輸送体であり、従って、該リボザイムは配列番号46、81又は82をコードするポリヌクレオチドを切断でき、又は該siRNA若しくはshRNAは配列番号1、36又は37に対応するポリリボヌクレオチドの一部に相同であり、例示的なオリゴヌクレオチド配列には配列番号91、126及び127を含む。さらなる態様において、TARGETは酵素であり、従って、該リボザイムは配列番号47、51、55、59、62、64、67、75、76、77、80、85又は87をコードするポリヌクレオチドを切断でき、又はsiRNA若しくはshRNAは配列番号2、6、10、14、17、19、22、30、31、32、35、40又は42に対応するポリリボヌクレオチドの一部に相同であり、例示的なオリゴヌクレオチド配列には配列番号92、96、100、104、107、109、112、120、121、122、125、130及び132を含む。さらなる態様において、TARGETはプロテアーゼであり、従って、該リボザイムは配列番号53をコードするポリヌクレオチドを切断でき、又はsiRNA若しくはshRNAは配列番号8に対応するポリリボヌクレオチドの一部に相同であり、例示的なオリゴヌクレオチド配列には配列番号98を含む。さらなる態様において、TARGETはキナーゼであり、従って、該リボザイムは配列番号52、54、56、71、78、79、86、88又は89をコードするポリヌクレオチドを切断でき、又はsiRNA若しくはshRNAは配列番号7、9、11、26、33、34、41、43又は44に対応するポリリボヌクレオチドの一部に相同であり、例示的なオリゴヌクレオチド配列には配列番号97、99、101、116、123、124、131、133及び134を含む。さらなる態様において、TARGETはGPCRであり、従って、該リボザイムは配列番号60をコードするポリヌクレオチドを切断でき、又はsiRNA若しくはshRNAは配列番号15に対応するポリリボヌクレオチドの一部に相同であり、例示的なオリゴヌクレオチド配列には配列番号105を含む。さらなる態様において、TARGETはイオンチャネルであり、従って、該リボザイムは配列番号63又は66をコードするポリヌクレオチドを切断でき、又はsiRNA若しくはshRNAは配列番号18又は21に対応するポリリボヌクレオチドの一部に相同であり、例示的なオリゴヌクレオチド配列には配列番号108及び111を含む。さらなる態様において、TARGETは分泌型タンパク質であり、従って、該リボザイムは配列番号58をコードするポリヌクレオチドを切断でき、又はsiRNA若しくはshRNAは配列番号13に対応するポリリボヌクレオチドの一部に相同であり、例示的なオリゴヌクレオチド配列には配列番号103を含む。
【0112】
本発明の別の実施態様は、発現阻害作用物質が、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90に対応するポリリボヌクレオチドを切断するリボザイム、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45に対応するポリリボヌクレオチドの一部に十分に相補的な低分子干渉RNA(siRNA、特にshRNA)を発現する核酸であり、当該アンチセンスRNA、ODN、リボザイム、特にsiRNA、特にshRNAが、TARGETポリリボヌクレオチドのTARGETポリペプチドへの翻訳に干渉できる方法に関する。具体的には、発現阻害作用物質は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド又はsiRNA、特にshRNAであり、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも約17〜約30の連続するヌクレオチドに相補的であるポリリボヌクレオチド配列を含む。より具体的には、発現阻害作用物質は、アンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド又はsiRNA、特にshRNAであり、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも15〜約30、具体的には少なくとも17〜約30、最も具体的には少なくとも17〜約25の連続するヌクレオチドに相補的であるポリリボヌクレオチド配列を含む。特別な実施態様には、配列番号91、92、94、96〜105、107〜112、114、116、120〜127及び130〜135からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列に相補的であるポリリボヌクレオチド配列を含む。
【0113】
アンチセンス核酸を使用する遺伝子発現の下方制御は、翻訳又は転写レベルで達成し得る。本発明のアンチセンス核酸は、特に、TARGETポリペプチド又はその対応するメッセンジャーRNAをコードしている核酸の全部又は一部とハイブリダイズし得る核酸断片である。加えて、その一次転写産物のスプライシングを阻害することによって、TARGETポリペプチドをコードすることができる核酸配列の発現を減少させるアンチセンス核酸を設計できる。TARGETをコードする核酸の発現を下方制御又は妨害し得る限り、任意の長さのアンチセンス配列が本発明の実施に適している。特に、アンチセンス配列は、少なくとも約15〜30、及び特に少なくとも17ヌクレオチドの長さである。アンチセンス核酸、アンチセンスRNAをコードするDNAの調製及び使用、並びにオリゴ及び遺伝的アンチセンスの使用は公知技術である。
【0114】
発現阻害作用物質の一実施態様は、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45を含む核酸に対するアンチセンスである核酸であり、例えば、アンチセンス核酸(例えばDNA)は、インビトロで細胞へと導入でき、又はインビボで配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45を含む核酸の細胞性発現を阻害するための遺伝子療法として対象に投与できる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約15〜約100ヌクレオチド、より具体的には約15〜約30ヌクレオチド、及び最も具体的には約17〜約25ヌクレオチドを含む配列を含み得る。アンチセンス核酸は、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45の配列から選択され、逆の方向で発現される約15〜約30の連続するヌクレオチドから調製できる。
【0115】
当業者は、TARGET及び/又はハンチントン病表現型変調の阻害に有効なアンチセンス核酸及びオリゴヌクレオチドのための選択プロセスを促進及び単純化するためのいくつかの戦略のいずれかを容易に利用できる。mRNA分子におけるオリゴヌクレオチドと相補配列との間の結合エネルギーの予測又は熱力学的指数の計算が利用できる(Chiangらの文献(1991) J. Biol. Chem. 266:18162-18171;Stull らの文献 (1992) Nucl. Acids Res. 20:3501-3508)。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、二次構造を基礎として選択できる(Wickstromらの文献(1991) 癌及びAIDSのアンチセンス核酸療法の展望(Prospects for Antisense Nucleic Acid Therapy of Cancer and AIDS)中, Wickstrom編, Wiley-Liss社, New York, 7-24頁;Limaらの文献(1992) Biochem. 31:12055-12061)。Schmidt及びThompsonの文献(米国特許6416,951)は、機能的アンチセンス作用物質の同定方法であって、RNAをオリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせること、並びに、挿入色素の存在下でハイブリダイズさせること若しくは標識を取り込ませること、及び非標識オリゴヌクレオチドの存在下における色素若しくは標識のシグナルの分光特性を測定することによりハイブリダイゼーションの反応速度をリアルタイムで測定することを含む、前記方法を記載する。加えて、当業者により認識される様々な基準を利用する適切なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列又はアンチセンス標的を予測する様々なコンピュータプログラムのいずれかを利用でき、該基準には例えば、自己相補性の不存在、ヘアピンループの不存在、安定的なホモ二量体及び二量体形成の不存在(kcal/molで予測されたエネルギーにより評価される安定性)を含む。このようなコンピュータプログラムの例は、当業者に容易に利用可能でありかつ知られており、OLIGO 4又はOLIGO 6プログラム(Molecular Biology Insights社, Cascade, CO)並びにOligo Techプログラム(Oligo Therapeutics社, Wilsonville, OR)を含む。加えて、本発明において適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション条件下でオリゴヌクレオチドライブラリ又は核酸分子のライブラリをスクリーニングすること、及び標的RNA又は核酸にハイブリダイズするものについて選択することにより同定できる(例えば米国特許6,500,615を参照)。また、Mishra及びToulmeは、標的を結合するオリゴヌクレオチドの選択的増幅に基づく選択手順を開発した(Mishraらの文献(1994) Life Sciences 317:977-982)。オリゴヌクレオチドは、開裂断片の選択及び特徴づけによって、RNAse Hによる標的RNAの開裂を媒介するそれらの能力により選択することもできる(Hoらの文献(1996) Nucl Acids Res 24:1901-1907;Hoらの文献(1998) Nature Biotechnology 16:59-630)。RNA分子のGGGAモチーフに対するオリゴヌクレオチドの生成及び標的化も記載されている(米国特許6,277,981)。
【0116】
アンチセンス核酸は、具体的にはオリゴヌクレオチドであり、完全にデオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、又はある程度の両方の組合せからなることができる。アンチセンス核酸は、合成オリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドは、必要に応じて、安定性及び/又は選択性を改善するために化学的に修飾できる。本発明について描かれるいくつかの特定のオリゴヌクレオチドの具体的実施態様には、例えば、修飾骨格、例えばホスホロチオエート、リン酸トリエステル、ホスホン酸メチル、短鎖アルキル若しくはシクロアルキル糖間結合、又は短鎖ヘテロ原子若しくは複素環糖間結合を含むものを含む。オリゴヌクレオチドは細胞内ヌクレアーゼによって分解されやすいので、該修飾には、例えば、リン酸ジエステル結合の遊離酸素を置き換えるための硫黄基の使用を含むことができる。この修飾は、ホスホロチオエート結合と呼ばれている。ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドは、水溶性、ポリアニオン性で、かつ内在性ヌクレアーゼに耐性である。加えて、ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドがそのTARGET部位にハイブリダイズする場合、RNA-DNA二本鎖は内在性酵素リボヌクレアーゼ(RNase)Hを活性化させ、これがハイブリッド分子のmRNA構成要素を切断する。オリゴヌクレオチドは、1以上の置換された糖部分を含むこともできる。特定のオリゴヌクレオチドは、2'位で以下のうちの1つを含む:OH、SH、SCH3、F、OCN、ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリル;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ;置換されたシリル;RNA切断基;レポーター基;介在物質(intercalator);オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基;又は、オリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基及び類似の特性を有する他の置換基。同様の修飾は、オリゴヌクレオチド上の別の部位、特に3'末端ヌクレオチド上の糖の3'位及び5'末端ヌクレオチドの5'位でなすこともできる。
【0117】
加えて、ホスホラミダイト及びポリアミド(ペプチド)結合を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成できる。これらの分子は、ヌクレアーゼ分解に非常に抵抗性であるべきである。さらにまた、化学基を糖部分の2'炭素及びピリミジンの5炭素(C-5)に付加して安定性を強化し、そのTARGET部位へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの結合を促進することができる。修飾は、2'-デオキシ、O-ペントキシ、O-プロポキシ、O-メトキシ、フルオロ、メトキシエトキシホスホロチオエート、修飾塩基、並びに当業者に公知の別の修飾を含むことができる。
【0118】
TARGETSのレベルを低下させる別の種類の発現阻害作用物質は、リボザイムである。リボザイムは、別々の触媒及び基質結合ドメインを有する触媒RNA分子(RNA酵素)である。基質結合配列は、ヌクレオチド相補性、及びおそらくはそのTARGET配列との非水素結合相互作用により結合する。触媒部分は、特定の部位でTARGET RNAを切断する。リボザイムの基質ドメインは、特定のmRNA配列にそれを方向付けるように設計できる。リボザイムは、相補的塩基対を介してTARGET mRNAを認識し、それから結合する。いったん正しいTARGET部位に結合すると、リボザイムは酵素的に作用してTARGET mRNAを切断する。リボザイムによるmRNAの開裂は、対応するポリペプチドの合成を指示するその能力を破壊する。いったんリボザイムがそのTARGET配列を切断すると、リボザイムは放出され、繰り返し他のmRNAに結合して切断することができる。
【0119】
リボザイム形態には、ハンマーヘッドモチーフ、ヘアピンモチーフ、デルタ型肝炎ウイルス、I型イントロン又はRNaseP RNA(RNAガイド配列を伴う)モチーフ又はアカパンカビ属(Neurospora)VS RNAモチーフを含む。ハンマーヘッド又はヘアピン構造を備えているリボザイムは、これらの触媒RNA分子が細胞内で真核生物プロモータから発現されることができるので、容易に調製される(Chenらの文献(1992) Nucleic Acids Res. 20:4581-9)。本発明のリボザイムは、真核生物細胞において適切なDNAベクターから発現できる。必要に応じて、リボザイムの活性は、第2のリボザイムによる、一次転写産物からのその放出により増大できる(Venturaらの文献(1993) Nucleic Acids Res 21:3249-55)。
【0120】
リボザイムは、オリゴデオキシリボヌクレオチドを、転写後にTARGET mRNAにハイブリダイズする配列に隣接するリボザイム触媒ドメイン(20ヌクレオチド)と組み合わせることによって、化学的に合成できる。オリゴデオキシリボヌクレオチドは、プライマーとして基質結合配列を使用することにより増幅される。増幅産物は、真核生物発現ベクターにクローン化される。
【0121】
リボザイムは、DNA、RNA又はウイルスベクターに挿入される転写単位から発現される。リボザイム配列の転写は、真核生物RNAポリメラーゼI(pol(I)、RNAポリメラーゼII(pol II)又はRNAポリメラーゼIII(pol III)のためのプロモータから駆動される。pol II又はpol IIIプロモータからの転写産物は、全ての細胞において高レベルで発現され;所与の細胞種における所与のpol IIプロモータのレベルは、近くの遺伝子制御配列に依存する。原核生物RNAポリメラーゼ酵素が適切な細胞において発現されることを条件として、原核生物RNAポリメラーゼプロモータも使用される(Gao及びHuangの文献 (1993) Nucleic Acids Res. 21:2867-72)。これらのプロモータから発現されるリボザイムが哺乳動物細胞において機能できることが実証された(Kashani-Sabetらの文献(1992) Antisense Res. Dev. 2:3-15)。
【0122】
特定の阻害作用物質は、低分子干渉RNA(siRNA、特に低分子ヘアピンRNA「shRNA」)である。siRNA(特にshRNA)は、サイレンスRNA(silenced RNA)に対する配列に相同的な二本鎖RNA(dsRNA)によって、遺伝子サイレンシングの転写後プロセスを媒介する。本発明によるsiRNAは、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37及び40〜45に記載される配列からなる群から選択される配列の連続する17〜25ヌクレオチド配列に相補的な又は相同な15〜30、具体的には17〜30、最も具体的には17〜25ヌクレオチドのセンス鎖、特に配列番号91、92、94、96〜105、107〜112、114、116、120〜127及び130〜135に記載される配列からなる群から選択される配列、並びに、該センス鎖に相補的な15〜30、具体的には17〜30、最も具体的には17〜25ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含む。最も具体的なsiRNAは、互いに及びTARGETポリヌクレオチド配列に100%相補的であるセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む。特に、該siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖を連結するループ領域をさらに含む。
【0123】
本発明による自己相補一本鎖shRNA分子ポリヌクレオチドには、ループ領域リンカーによって連結されるセンス部分及びアンチセンス部分を含む。特に、ループ領域配列は、4〜30ヌクレオチド長、より具体的には5〜15ヌクレオチド長、及び最も具体的には8又は12ヌクレオチド長である。最も具体的な実施態様において、リンカー配列は
【化1】

である。自己相補一本鎖siRNAはヘアピンループを形成し、通常のdsRNAより安定である。加えて、それらは、ベクターからより容易に産生される。
【0124】
アンチセンスRNAと同様に、siRNAを修飾して核酸分解に対する耐性を確認し、又は活性を強化し、又は細胞分布を強化し、又は細胞取り込みを強化することができ、当該修飾は、修飾されたヌクレオシド結合、修飾された核酸塩基、修飾された糖、及び/又は1以上の部分若しくは抱合体に対するsiRNAの化学結合からなることができる。ヌクレオチド配列は、これらのsiRNA設計規則に従わないヌクレオチド配列に比較してTARGET配列の強化された減少を与えるsiRNA設計規則に従って選択できる(これらの規則に関する議論及びsiRNAの製剤の例については、WO 2004/094636及びUS 2003/0198627が引用により本明細書に組み込まれる。)。
【0125】
本発明は、ハンチントン病表現型を変調できるポリヌクレオチドを発現できるDNA発現ベクター、及び発現阻害作用物質として本明細書に先に記載したものを含む組成物及び前記組成物を使用する方法にも関する。
【0126】
これらの組成物及び方法の特定の態様は、TARGETポリペプチドと選択的に相互作用し得る細胞内結合タンパク質をコードしているポリヌクレオチドの誘導された発現による、TARGETポリペプチドの発現の下方制御又は遮断に関する。細胞内結合タンパク質には、それが発現され、ポリペプチドの機能を中和している細胞において、ポリペプチドと選択的に相互作用又は結合し得る任意のタンパク質を含む。具体的には、細胞内結合タンパク質は、配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90のTARGETポリペプチドのエピトープに結合親和性を有する中和抗体又は中和抗体の断片である。より具体的には、細胞内結合タンパク質は単鎖抗体である。
【0127】
この組成物の特別な実施態様には、アンチセンスRNA、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90をコードするポリリボヌクレオチドを開裂するリボザイム、並びに、siRNAがTARGETポリリボヌクレオチドのTARGETポリペプチドへの翻訳に干渉するように、配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37及び40〜45に対応するポリリボヌクレオチドの一部に十分に相同性である低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択される発現阻害作用物質を含む。
【0128】
発現阻害作用物質を発現するポリヌクレオチド、又は細胞内でTARGETポリペプチドを発現するポリヌクレオチドは、具体的にはベクターに含まれる。ポリ核酸は、該核酸配列の発現を可能にするシグナルに動作可能的に連結され、特に組換えベクター構築物を利用している細胞に導入され、いったんベクターが該細胞に導入されると該構築物は該核酸又はアンチセンス核酸を発現する。様々なウイルスに基づく系が利用可能であり、該系には、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、単純疱疹ウイルス又はセンダイウイルスのベクター系を含む。この全ては、TARGET細胞における発現阻害作用物質のためのポリヌクレオチド配列を導入し、発現させるために使用することができる。
【0129】
特に、本発明の方法で使用するウイルスベクターは、複製欠損体である。当該複製欠損ベクターは、通常、感染細胞におけるウイルスの複製のために必要である少なくとも1つの領域を含む。これらの領域は、(全体又は一部)除去できるか、又は当業者に公知の任意の技術によっても非機能的にすることができる。これらの技術には、(複製についての)不可欠領域への1以上の塩基の完全な除去、置換、部分的削除又は付加を含む。当該技術は、遺伝子操作技術を使用して、又は突然変異誘導性薬剤での処理により、インビトロで(単離されたDNAで)又はインサイチュウで実行できる。特に、複製欠損ウイルスはそのゲノムの配列を保持し、これはカプシド化、すなわちウイルス粒子のために必要である。
【0130】
特定の実施態様において、ウイルス性構成要素は、アデノウイルスに由来する。具体的には、ビヒクルには、アデノウイルスカプシド又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体にパッケージされるアデノウイルスベクターを含む。アデノウイルス生物学は、分子レベルでも比較的周知である。アデノウイルスベクターのための多くのツールが開発されかつ開発され続けており、それゆえアデノウイルスカプシドを本発明のライブラリに組み込むための特定のビヒクルとさせている。アデノウイルスは、多種多様な細胞に感染できる。しかしながら、異なるアデノウイルス血清型は、細胞に対し異なる優先傾向を有する。具体的実施態様において本発明のアデノウイルスカプシドが入ることができるTARGET細胞集団を混合し拡張するために、ビヒクルは、少なくとも2種のアデノウイルス由来のアデノウイルス線維タンパク質を含む。特定のアデノウイルス線維タンパク質配列は、血清型17、45及び51である。これらのキメラベクターの技術又は構築及び発現は、US2003/0180258及びUS2004/0071660において開示され、これらは引用により本明細書に組み込まれる。
【0131】
特定の実施態様において、アデノウイルスに由来する核酸には、アデノウイルス後期タンパク質又はその機能的部分、誘導体若しくは類似体をコードしている核酸を含む。アデノウイルス後期タンパク質、例えばアデノウイルス線維タンパク質を好ましく使用して、特定の細胞にビヒクルをTARGETさせることができ、又は該細胞への該ビヒクルの送達の強化を誘導することができる。特に、アデノウイルスに由来する核酸は、基本的に全てのアデノウイルス後期タンパク質をコードし、完全なアデノウイルスカプシド又はその機能的部分、類似体及び/又は誘導体の形成を可能にする。特に、アデノウイルスに由来する核酸には、アデノウイルスE2A又はその機能的部分、誘導体若しくは類似体をコードしている核酸を含む。特に、アデノウイルスに由来する核酸には、少なくとも1つのE4-領域タンパク質又はその機能的部分、誘導体及び/又は類似体をコードしている核酸を含み、それは、少なくとも部分的には、細胞においてアデノウイルス由来核酸の複製を促進する。この用途の例において使用するアデノウイルスベクターは、本発明の治療方法に有用なベクターの典型である。
【0132】
本発明の特定の実施態様は、レトロウイルスベクター系を使用する。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する組込みウイルス(integrating virus)であり、それらの構造は当該技術分野に公知である。レトロウイルスベクターは、異なる種類のレトロウイルス、例えば、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハービー肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)及びフレンドウイルスから構築できる。レンチウイルスベクター系を、本発明の実施に使用することもできる。レトロウイルス系及びヘルペスウイルス系は、神経細胞のトランスフェクションのための特定のビヒクルであり得る。
【0133】
本発明の他の実施態様において、アデノ随伴ウイルス(「AAV」)が利用される。AAVウイルスは、安定かつ特異的な様式で感染細胞のゲノムに組み込まれる、比較的小さなサイズのDNAウイルスである。該ウイルスは、細胞増殖、形態又は分化に何ら影響を生じさせずに多種多様な細胞に感染することができ、かつヒトの病状に関与していないようである。
【0134】
ベクター構築物において、本発明のポリヌクレオチド作用物質は、1以上の調節領域に連結できる。適切な制御領域又は領域の選択は、当業者のレベルの範囲内で日常的事項である。制御領域は、プロモータを含み、かつエンハンサー、サプレッサーなどを含むことができる。
【0135】
本発明の発現ベクターにおいて使用できるプロモータは、構成的プロモータ及び制御(誘導可能)プロモータの両方を含む。プロモータは、宿主に応じて原核生物性又は真核生物性であり得る。原核生物(バクテリオファージを含む)プロモータのうち本発明の実施に有用なのは、lac、lacZ、T3、T7、ラムダPr、Pl及びtrpプロモータである。真核生物(ウイルスを含む)プロモータのうち本発明の実施に有用なのは、遍在プロモータ(例えば、HPRT、ビメンチン、アクチン、チューブリン)、中間径フィラメントプロモータ(例えば、デスミン、神経フィラメント、ケラチン、GFAP)、治療的遺伝子プロモータ(例えば、MDR型、CFTR、第VIII因子)、組織特異的プロモータ(例えば、平滑筋細胞のアクチンプロモータ、又は内皮細胞において活性なFlt及びFlkプロモータ)であり、動物の転写制御領域を含み、該プロモータは組織特異性を呈し、かつトランスジェニック動物において利用されている:膵臓腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swiftらの文献(1984) Cell 38:639-46;Ornitzらの文献(1986) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonaldの文献, (1987) Hepatology 7:425-515);膵臓ベータ細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahanの文献、(1985)Nature 315: 115-22)、リンパ系細胞において活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlらの文献(1984) Cell 38:647-58;Adamesらの文献(1985) Nature 318:533-8;Alexanderらの文献(1987) Mol. Cell. Biol. 7:1436-44)、睾丸、乳房、リンパ系及びマスト細胞において活性なマウス乳癌ウイルス制御領域、(Lederらの文献(1986) Cell 45:485-95)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkertらの文献(1987) Genes and Devel. 1:268-76)、肝臓において活性なα‐フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufらの文献(1985) Mol. Cell. Biol., 5:1639-48;Hammerらの文献(1987) Science 235:53-8)、肝臓において活性なアルファ1-アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelseyらの文献(1987) Genes and Devel., 1: 161-71)、骨髄細胞において活性なβグロビン遺伝子制御領域(Mogramらの文献(1985) Nature 315:338-40;Kolliasらの文献(1986) Cell 46:89-94)、脳におけるオリゴデンドロサイトにおいて活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadらの文献(1987) Cell 48:703-12)、骨格筋において活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Saniの文献, (1985) Nature 314.283-6)、及び、視床下部において活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域(Masonらの文献(1986) Science 234:1372-8)。
【0136】
本発明の実施において使用できる他のプロモータには、分裂細胞において優先して活性化されるプロモータ、刺激(例えば、ステロイドホルモン受容体、レチノイン酸受容体)に応答するプロモータ、テトラサイクリン制御性転写モジュレータ、サイトメガロウイルス最初期プロモータ、レトロウイルスLTRプロモータ、メタロチオネインプロモータ、SV-40プロモータ、E1aプロモータ、及びMLPプロモータを含む。
【0137】
さらなるベクター系には、患者へのポリヌクレオチド作用物質の導入を促進する非ウイルス系を含み、例えば、所望の配列をコードしているDNAベクターをリポフェクションによりインビボで導入できる。リポソーム媒介型トランスフェクションによって遭遇する問題点を制限するように設計された合成カチオン脂質を使用して、マーカーをコードしている遺伝子のインビボトランスフェクションのためのリポソームを調製できる(Felgnerらの文献(1987) Proc. Natl. Acad Sci. USA 84:7413-7);Mackeyらの文献 (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8027-31;Ulmerらの文献(1993) Science 259:1745-8を参照されたい。)。カチオン脂質の使用は、負に帯電する核酸の封入を促進でき、負に帯電する細胞膜との融合も促進できる(Felgner及びRingoldの文献, (1989) Nature 337:387-8)。核酸の移送のために特に有用な脂質化合物及び組成物は、国際出願公開公報WO 95/18863及びWO 96/17823において、並びに米国特許第5,459,127号において記載されている。インビボにおいて外因性遺伝子を特定の器官に導入するリポフェクションの使用は、特定の実際的利点があり、特定の細胞型にトランスフェクションを指示することは、細胞異質性を有する組織、例えば、膵臓、肝臓、腎臓及び脳において特に有利である。脂質は、標的化の目的で他の分子に化学的に連結できる。標的化されたペプチド、例えば、ホルモン又は神経伝達物質、及びタンパク質、例えば抗体、又は非ペプチド分子は、化学的にリポソームに連結できる。他の分子、例えば、カチオン性オリゴペプチド(例えば、国際出願公開WO 95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えば、国際出願公開WO 96/25508)又はカチオン性ポリマー(例えば、国際出願公開WO 95/21931)は、インビボにおいて、核酸のトランスフェクションを促進することに有用である。
【0138】
インビボでDNAベクターを裸のDNAプラスミドとして導入することも可能である(米国特許番号5,693,622;5,589,466;及び5,580,859を参照されたい。)。治療目的のための裸のDNAベクターは、当該技術分野において公知の方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用、又はDNAベクター輸送体の使用により所望の宿主細胞に導入できる(例えば、Wilsonらの文献(1992) J. Biol. Chem. 267:963- 7;Wu及びWuの文献, (1988) J. Biol. Chem. 263:14621-4;1990年3月15日に出願されたHartmutらのカナダ国特許出願番号2,012,311;Williamsらの文献(1991). Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-30を参照されたい。)。受容体媒介型DNA送達アプローチも使用できる(Curielらの文献(1992) Hum. Gene Ther. 3:147-54;Wu及びWuの文献, (1987) J. Biol. Chem. 262:4429-32)。
【0139】
生体適合性組成物は、固体、液体、ゲル又は他の形態であってよい組成物であり、該組成物において本発明の化合物、ポリヌクレオチド、ベクター又は抗体は、活性型形態、例えば生物活性に影響を及ぼし得る形態で維持される。例えば、本発明の化合物は、TARGETにおけるインバースアゴニスト又はアンタゴニスト活性を有することができ;核酸は、複製し、メッセージを翻訳し、又はTARGETの相補mRNAにハイブリダイズすることができ;ベクターは、前述のようにTARGET細胞にトランスフェクトして、アンチセンス、抗体、リボザイム又はsiRNAを発現することが可能であり;抗体は、TARGETポリペプチドドメインを結合し得る。
【0140】
特定の生体適合性組成物は、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液又はHEPES緩衝液を使用して緩衝化され、塩イオンを含む水溶液である。通常、塩イオンの濃度は、生理的レベルに近い。生体適合性溶液は、安定剤及び防腐剤を含み得る。より具体的な実施態様において、生物学的適合性組成物は、医薬として許容し得る組成物である。当該組成物は、局所、経口、非経口、鼻腔内、皮下、及び眼内経路による投与用に製剤できる。非経口投与は、静注、筋内注射、動脈内注射又は注入技術を含むことを意味する。組成物は、要望に応じ、標準的で周知の無毒の生理的に許容し得る担体、アジュバント及びビヒクルを含む用量単位製剤で非経口的に投与できる。
【0141】
本組成物発明の具体的実施態様は、ハンチントン病表現型の変調を阻害する医薬組成物であって、前述の発現阻害作用物質の治療上有効量を、医薬として許容し得る担体との混合物で含む、前記医薬組成物である。別の具体的実施態様は、骨再吸収が関与する状態若しくはその状態への易罹患性の治療又は予防のための医薬組成物であって、有効な細胞死阻害量のTARGETアンタゴニスト若しくはインバースアゴニスト、その医薬として許容し得る塩、水和物、溶媒和物又はプロドラッグを、医薬として許容し得る担体との混合物で含む、前記医薬組成物である。
【0142】
経口投与のための医薬組成物は、経口投与に適している投与量で、周知の医薬として許容し得る担体を使用して製剤できる。そのような担体は、医薬組成物が、患者による摂取のために、錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤されることを可能にする。経口使用のための医薬組成物は、活性化合物を固体の賦形剤と混合すること、結果として生じる混合物を任意に顆粒化すること、及び必要に応じて、適切な助剤を加えた後に顆粒混合物を加工して錠剤又は糖衣錠コアを得ることにより製造できる。適切な賦形剤は、炭水化物又はタンパク質充填剤であり、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ又は他の植物からのデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴム及びトラガカントゴムなどのゴム;及び、ゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質;などである。所望であれば、崩壊剤又は可溶化剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩を添加してもよい。糖衣錠コアは濃縮砂糖溶液などの適切なコーティングと併せて使うことができ、これはアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含むこともできる。染料又は色素は、製品識別のために、又は活性化合物の量(すなわち、投与量)を特徴づけるために、錠剤又は糖衣剤コーティングに添加できる。
【0143】
経口的に使用できる医薬製剤は、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン、及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティングからなる軟らかい密封カプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、ラクトース若しくはデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、及び任意に安定剤と混合した活性成分を含み得る。軟カプセルにおいて、活性化合物は、安定剤を伴い又は伴わずに、脂肪油、液体又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁できる。
【0144】
特定の無菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容し得る溶媒又は希釈剤中の溶液又は懸濁液であり得る。医薬として許容し得る担体の例は、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、等張性生理食塩水(例えば、リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム、ナトリウム、カリウム;塩化カルシウム又は塩化マグネシウム、又は当該塩類の混合物)、リンガー溶液、デキストロース、水、滅菌水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組み合わせであり、1,3-ブタンジオール及び無菌の不揮発性油が溶媒として又は懸濁媒体として都合に合わせて利用される。合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油を利用できる。オレイン酸などの脂肪酸も、注射可能薬物の製造における使用を見出す。
【0145】
本発明の化合物又は組成物は、重合担体、生体分解性又は生体模倣のマトリクス又はスキャフォールド(scaffold)での投与用に組合せることができ又はその中に埋め込むことができる。担体、マトリクス又はスキャフォールドは、組成物が組み込まれかつ発現することを可能にし、細胞の添加によって又は細胞の存在下で適合性である任意の材料であり得る。特に、担体マトリクス又はスキャフォールドは優性的に非免疫原性で、かつ生体分解性である。生体分解性物質の例には、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ヒアルロン酸、腸線縫合糸材料、ゼラチン、セルロース、ニトロセルロース、コラーゲン、アルブミン、フィブリン、アルギン酸塩、綿、又は他の天然存在型生体分解性材料を含むが、これらに限定されない。投与又は移植の前に、例えば、酸化エチレンで処理することによって、又はγ照射又は電子線での照射によって、マトリクス又はスキャフォールド材料を殺菌することが好ましい場合がある。加えて、多くの他の材料を使用して、スキャフォールド又はフレームワーク構造を形成することができ、以下を含むが、これに限定されるものではない:ナイロン(ポリアミド)、ダクロン(ポリエステル)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリビニル化合物(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリカーボネート(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)、サーマノックス(thermanox)(TPX)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)及びポリ乳酸-グリコール酸(PLGA)などのヒドロキシ酸のポリマー、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリホスファゼン、及び様々なポリヒドロキシアルカノエート、並びにこれらの組み合わせ。適切なマトリクスには、重合メッシュ又はスポンジ及び重合ヒドロゲルを含む。具体的実施態様において、マトリクスは、1年未満、より具体的には6ヵ月未満、最も具体的には2〜10週の期間に渡って生体分解性である。ポリマー組成物、並びに製造方法は、分解速度を決定するために使用することができる。例えば、増加量のポリ乳酸とポリグリコール酸とを混合することは、分解時間を減少させる。使用できるポリグリコール酸のメッシュは、例えば外科用品供給会社(例えば、Ethicon、N.J.)から、商業的に得ることができる。一般に、これらのポリマーは、水、緩衝塩溶液又は水性アルコール溶液などの水溶液に少なくとも部分的に溶解性であり、帯電側鎖又はその一価のイオン塩を有する。
【0146】
組成物媒体はヒドロゲルでもあり得、これは、薬剤吸収スポンジとして作用し得る親水性ポリアクリル酸ポリマーなどの任意の生物学的適合性若しくは非細胞傷害性ホモポリマー又はヘテロポリマーから調製される。前記の特定のもの、特に、エチレン及び/又は酸化プロピレンから得られるものなどは市販されている。ヒドロゲルは、例えば外科的介入の間、治療される組織の表面上に直接的に堆積できる。
【0147】
本発明の医薬組成物の実施態様には、本発明の作用物質をコードする複製欠損組換えウイルスベクター、及びポロクサマーなどのトランスフェクションエンハンサーを含む。ポロクサマーの例はPoloxamer 407であり、これは市販されており(BASF、Parsippany、N.J.)、無毒性の生体適合性ポリオールである。組換えウイルスを含浸したポロクサマーは、例えば外科的介入の間、治療される組織の表面に直接的に堆積することができる。ポロクサマーは、基本的に、ヒドロゲル同じ効果を有すると同時に、より低い粘性を有する。
【0148】
活性作用物質は、例えば、界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン微小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンにより調製されるマイクロカプセルに取り込むこともできる。当該技術は、レミントンの薬学(1980)第16版、Osol、A編に開示されている。
【0149】
徐放製剤を調製できる。徐放製剤の適切な例には、抗体を含んでいる固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、該マトリクスは、成形物品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタミン酸塩の共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解可能な乳酸-グリコール酸共重合体(例えばLUPRON DEPOT(商標))(乳酸-グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能な微小球体)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーが100日超の間、分子の放出を可能にする一方、特定のヒドロゲルはより短時間の間タンパク質を放出する。カプセル化された抗体が長期間該本体のままの場合、それらは37℃で水分に曝される結果として変性又は凝集する可能性があり、生物活性の損失及び免疫原性の変化の可能性を生じる。関与する機構に応じて、安定化のための合理的な戦略が考案できる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド交換を介する分子間S-S結合形成であることを発見される場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾することにより、酸性溶液から凍結乾燥することにより、含水量を制御することにより、適切な添加物を使用することにより、及び特定のポリマーマトリクス組成物を開発することにより成し遂げることが可能である。
【0150】
先に定義したように、治療的に有効な用量は、タンパク質、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はその抗体、アゴニスト若しくはアンタゴニストのその量を意味し、該症状又は状態を改善する。当該化合物の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な医薬的手順、例えばED50(集団の50%に治療的に有効な用量)及びLD50(集団の50%に致命的な用量)により測定できる。治療効果に対する毒性の用量比は治療指数であり、これは比率LD50/ED50として表現できる。大きな治療指数を示す医薬組成物は特異的である。細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータが、ヒト使用のための投与量の範囲を策定する際に使用される。当該化合物の用量は、具体的には、ほとんど又は全く毒性を含まないED50を含む循環濃度の範囲の中にある。投与量は、利用される剤形、患者の感受性及び投与経路により、この範囲の中で変化する。
【0151】
任意の化合物について、治療的有効量は、細胞培養アッセイにおいて、又は動物モデル、通常ではマウス、ウサギ、イヌ若しくはブタのいずれかで最初に推定できる。また、動物モデルを使用して、望ましい濃度範囲及び投与経路を達成できる。それから、当該情報を使用して、ヒトでの投与について有用な用量及び経路を決定することができる。正確な投与量は、治療される患者からみて、個々の医師によって選ばれる。投与量及び投与は、十分なレベルの活性成分を提供するか又は所望の効果を維持するように調節される。考慮できる更なる因子には、患者の疾患状態の重篤性、年齢、体重及び性別;食事、治療の所望の継続、投与方法、時間及び投与頻度、薬剤の組合せ、反応感受性及び療法への許容度/応答を含む。長時間作用する医薬組成物は、具体的製剤の半減期及びクリアランス速度に応じて、3〜4日毎に、毎週又は2週に1回投与できる。
【0152】
本発明による医薬組成物は、様々な方法によって、対象に投与できる。該医薬組成物は、標的とされた組織に直接的に添加でき、カチオン脂質と複合体を形成でき、リポソーム内に梱包でき、又は、公知技術の他の方法によって標的細胞に送達できる。所望の組織に対する局所的な投与は、直接注入、経皮吸収、カテーテル、注入ポンプ又はステントによってなし得る。DNA、DNA/ビヒクル複合体、又は組換えウイルス粒子は、治療部位に、局所的に投与される。送達の代替的経路には、静注、筋内注射、皮下注入、エアロゾル吸入、経口送達(錠剤又はピル形態)、局所送達、全身送達、眼送達、腹膜内送達及び/又はクモ膜下腔内送達を含むが、これに限定されるものではない。リボザイム送達及び投与の例は、Sullivanらの文献WO 94/02595に提供されている。
【0153】
本発明による抗体は、大量瞬時投与のみとして送達でき、長期注入でき、又は大量瞬時投与及び長期注入として両方投与できる。当業者は、タンパク質についてよりも、ポリヌクレオチドについて異なる製剤を利用できる。同様に、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの送達は、具体的な細胞、条件、位置などに特異的である。
【0154】
先に記載したように、組換えウイルスを使用して、本発明に有用なポリヌクレオチド作用物質をコードしているDNAを導入することができる。本発明による組換えウイルスは、通常、約104〜約1014pfuの用量の形態で製剤化され、投与される。AAV及びアデノウイルスの場合、約106〜約1011pfuの用量が特に使用される。用語pfu(「プラーク形成単位」)は、ビリオンの懸濁液の感染力に対応し、適切な細胞培養に感染すること、及びプラーク形成数を測定することにより決定される。ウイルス溶液のpfu力価を測定する技術は、従来技術で十分に文書化されている。
【0155】
対象患者に対する本発明の発現阻害作用物質の投与は、自己投与及び別の人による投与の両方を含む。患者は、既存の疾患若しくは医学的状態についての治療を必要としてもよいか、又は骨代謝の障害に影響を受ける疾患及び医学的状態のためのリスクを予防若しくは低下させる予防治療を望んでもよい。本発明の発現阻害作用物質は、対象患者に、経口的に、経皮的に、吸入、注入を介して、経鼻的に、直腸的に、又は徐放製剤を介して送達できる。
【0156】
本明細書に記載されている本発明の実施に有用なポリペプチド及びポリヌクレオチドは、溶液において遊離し、固相支持体に固定され、細胞表面に支持され、又は細胞内に位置することができる。本方法を実行するために、TARGETポリペプチド又は化合物のいずれかを固定して、非複合体化形態のポリペプチドからの複合体の分離を促進すること、並びに本アッセイの自動化に適応させることは、実現可能である。TARGETポリペプチドの化合物との相互作用(例えば、結合)は、反応物を含むのに適しているいかなる容器においても達成できる。当該容器の例には、マイクロタイタプレート、試験管及びマイクロ遠心管を含む。一実施態様において、ポリペプチドがマトリクスに結合することを可能にするドメインを付加された融合タンパク質を提供できる。例えば、TARGETポリペプチドは、「His」タグ化され、その後Ni-NTAマイクロタイタプレート上へ吸着されることができ、又は、TARGETポリペプチドを有するProtA融合体をIgGに吸着させ、これをそれから(例えば、35S標識された)細胞可溶化液及び候補化合物と混合し、該混合物を複合体形成に適した条件下(例えば、塩及びpHにつき生理的条件)でインキュベートできる。インキュベーション後、プレートを洗浄して全ての結合していない標識を除去し、マトリクスを固定する。放射能の量は、直接的に測定でき、又は複合体解離後の上清で測定できる。あるいは、複合体はマトリクスから解離でき、SDS-PAGEによって分離され、標準電気泳動的な技術を使用してTARGETタンパク質に結合するタンパク質のレベルがゲルから定量化される。
【0157】
マトリクス上のタンパク質を固定する他の技術は、化合物を同定する方法にも使用できる。例えば、TARGET又は化合物は、ビオチン及びストレプトアビジンの結合を利用して固定できる。ビオチン化されたTARGETタンパク質分子は、周知技術を使用してビオチン-NHS(N-ヒドロキシ-スクシンイミド)から調製でき(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals, Rockford, Ill.)、ストレプトアビジンコートした96ウエルプレート(Pierce Chemical)のウエルに固定できる。あるいは、TARGETSに反応性であるが、TARGETの化合物への結合には干渉しない抗体をプレートのウエルに誘導体化し、TARGETを抗体抱合体によってウエルに捕捉することができる。上述のように、標識化された候補化合物の調製物を、TARGETSを表すプレートのウエルでインキュベートし、該ウエルに捕捉された複合体の量を数量化できる。
【0158】
本発明は、以下の図面及び実施例において更に実証される。
【実施例】
【0159】
緒言において記載したように、変異ハンチンチンの発現及び伸長したハンチンチンタンパク質の異常な高次構造によって引き起こされる細胞死は、HD及び同様の神経変性疾患において観察される神経変性を予防し又は停止させる薬剤の開発のためのエントリポイントとして有用な表現型である。以下のアッセイは、配列されたアデノウイルスshRNA(小さなヘアピンRNA)、又はアデノウイルスcDNA発現ライブラリ(WO99/64582に記載されている生産及び使用)と組み合わせて使用される場合、化合物又は合成ライブラリは、神経細胞死及び/又は神経変性疾患におけるニューロンの残存を変調する因子の発見に有用である。
【0160】
実施例1には、変異ハンチンチン誘導性細胞死の制御因子又は変調因子の同定ためのハイスループットスクリーニング方法の設計及び準備を記載し、かつ本明細書において「細胞死アッセイ」という。
【0161】
実施例2には、細胞死アッセイにおける11584の「Ad-siRNA」のスクリーニング及びその結果を記載する。
【0162】
実施例3には、独立に再増殖させた材料を使用する一次ヒットの再選別を記載する。
【0163】
実施例4には、TARGETSの遺伝子発現解析を記載する
【0164】
実施例5には、さらにヒットを検証するために使用できる、さらなる「オンターゲット解析」を記載する。
【0165】
実施例6には、該ヒットのさらなる確認のために使用できる細胞に基づくアッセイを記載する。
【0166】
(実施例1)変異ハンチンチン誘導性細胞死の制御因子の同定のためのハイスループットスクリーニング方法の設計及び準備
SilenceSelect(登録商標)コレクションのスクリーニングのために開発された細胞死アッセイは、以下の示差的特徴を有する:
1)本アッセイ法は、神経的表現型に分化したSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞(Biedlerらの文献、1973)で実行するが、任意の他の供給源の初代神経細胞若しくは細胞株について使用できる。
2)本アッセイは、機能的な遺伝的目的のために配列されたアデノウイルスコレクションを用いての使用のために最適化されている。
3)本アッセイは、化合物又は合成コレクションを選別するための使用に適合させることもできる。
4)本アッセイは、ハイスループットモードで実行できる。
5)本アッセイは、機能的な遺伝的目的のために他のRNA又はDNAコレクション、例えば限定されるものではないが、ドミナントネガティブ(DN)、cDNA又はRNAiコレクションを選別するために適合化することもできる。
【0167】
細胞死アッセイのプロトコルは、後述する。このプロトコルは、様々な読み出し及び様々なプロトコルの試験の結果である:
【0168】
伸長したポリグルタミンリピートを含んでいるハンチンチンを発現しているレチノイン酸で分化されたSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞は、ヒト起源並びにこれらの細胞の神経様表現型及び遺伝子型により、好ましい細胞モデルである。ヒトのモデルシステムで同定される標的は、異なる種からモデルにおいて同定される標的と比較して、臨床評価の間、より低い摩擦を有すると一般的にみなされる。SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞(ATCC # CRL-2266)は、組織培養等級のプラスチックにおいて、10% FCS を含み、100単位/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン及び10mM Hepes緩衝液を補充した高グルコースのダルベッコ改変イーグル培地で培養した。ハイスループットスクリーニングのために、細胞は、透明96ウエルプレート中1ウエルにつき5,000細胞で37℃、5%CO2の加湿チャンバにおいて培養した。
【0169】
伸長したポリグルタミンリピートを含んでいるハンチンチン構造物の発現は、伸長したハンチンチンにより誘導される毒性を測定するのが好ましい方法である。SH-SY5Y細胞において伸長したハンチンチンを効率的に発現させるために、ポリグルタミンリピートを含むヒトハンチンチン断片のcDNAを合成し、アデノウイルスアダプタプラスミドにクローン化した。dE1/dE2A(アデノウイルス遺伝子E1及びE2Aについて削除された)アデノウイルスは、WO99/64582に記載されるように、PerC6.E2Aパッケージ細胞におけるヘルパープラスミドpWEAd5AflII-rITR.dE2Aのコトランスフェクションによって、これらのアダプタプラスミドから生じる。
【0170】
細胞を終夜培養し、10μMのオールトランスレチノイン酸(tRA)を含む培地で交換した。培地交換の4時間後、該細胞は、出願人らの登録商標であるSilenceSelect(登録商標)ライブラリの2μlを用いて形質導入した。72時間後、該細胞は、10μMの tRA、及び伸長したハンチンチンを緑色蛍光タンパク質タグ(HD-Q121-N171-GFP)と共に含んでいるアデノウイルス構造物を細胞当たり1000ウイルス粒子(VPU)で含む培地で交換した。
【0171】
ハンチンチンノックイン形質導入(HD-Q121-N171-GFP)の4日後に、細胞死及び核染色を、それぞれ終濃度2μg/mLのヨウ化プロピジウム及び20μg/mLヘキスト-33342に適用した。ヨウ化プロピジウムは、生細胞から除外される膜不透過型のDNA染色剤であり、一般的には細胞集団における死細胞を同定するために使用される(Macklis及びMadisonの文献, 1990)。細胞膜は細胞死の過程でその完全性を失い、それによりヨウ化プロピジウムのような染色剤が透過できるようになる。ヘキスト-33342は、生細胞及び死細胞の両方における核の識別のために一般的に使用される膜透過性DNA染色剤である。染色剤は30分間室温でインキュベートし、高内容映像器(GE-Healthcare; InCell-1000)上10倍の倍率を使用して測定した。取得は、ヘキスト-33342(波長360励起−460発光で500ms)について、GFPタグ化伸長ハンチンチン(波長475励起−535発光で200ms)について、及びヨウ化プロピジウム(波長535励起−620発光で200ms)について、実施した。
【0172】
画像分析は、Developerソフトウェアを使用し(GE-Healthcare; version 1.6 build 725)、特にGFP-シグナル及びヨウ化プロピジウムに基づく、伸長ハンチンチン形質導入細胞の細胞死を測定して実施した。細胞の総数は、全ての核をヘキスト-33342染色することに基づき測定した。分割は、カーネルサイズ9及び感度50を使用する強度での局所的差異を測定する対象識別子により実施した。伸長ハンチンチン形質導入細胞の数は、伸長ハンチンチンにタグ化されたGFP-シグナルに基づき評価した。分割は、カーネルサイズ31及び感度50での対象識別子により達成された。ヨウ化プロピジウムに透過性である細胞の数は、カーネルサイズ19及び感度1を有する対象識別子により評価される。核凝集は、カーネルサイズ3及び感度1の対象識別子を使用するヘキスト-33342染色に基づいた。伸長ハンチンチン形質導入細胞の数は、確定した核と伸長ハンチンチン形質導入細胞のGFP-識別子との間の重複に基づき測定された。ヨウ化プロピジウム陽性細胞の数は、ヨウ化プロピジウム識別子と確定した核との間の重複に基づき決定した。凝集核を有する細胞の数は、確定した核と核凝集識別子との間の重複に基づいて確立した。細胞死の割合は、ヨウ化プロピジウムの数、及び特に伸長ハンチンチン確定細胞について核凝集している細胞の数に基づき、連続的に算出した。
【0173】
伸長ハンチンチン確定細胞から、平均GFP-強度を識別子の範囲内で測定した。大きな封入体の数は、最小3000の閾値を有する強度識別子を使用するGFP-シグナルに基づいた。封入体形成細胞の数は、ハンチンチン形質導入細胞での封入体識別子の重複により定義した。
【0174】
(実施例2)細胞死アッセイにおける11584の「Ad-siRNA」のスクリーニング
その開発が実施例1に記載されている細胞死アッセイは、レチノイン酸で分化させた神経芽細胞腫細胞におけるshRNAの発現を媒介している11584の異なる組換えアデノウイルスの配列されたコレクションに対して選別することができる。これらのshRNAは、RNA干渉(RNAi)として公知の機構によって、相同配列を含む遺伝子の発現レベルの減少を引き起こし、該cDNAの発現はそれぞれの遺伝子の過剰発現を引き起こす。配列されたコレクションに含まれる11584のAd-siRNAは、5119の異なる転写産物を標的とする。平均して、全ての転写産物は、2〜3の独立したAd-siRNAによって標的とされる。
【0175】
全てのAd-siRNAプレートは、SilenceSelect(登録商標)アデノウイルスコレクションと同じ条件下で産生されるコントロールウイルスを含む。該ウイルスには、3セットのネガティブコントロールウイルス(N1 (Ad5-empty_KD))、N2 (Ad5-Luc_v13_KD)、N3 (Ad5-mmSrc_v2_KD))を、ポジティブコントロールウイルス(P1 (Ad5-HD_v5_KD)、P2 (Ad5-HSPCB_v15_KD)、P3 (Ad5-FRAP1_v2_KD)、P4 (Ad5-HDAC6_v1_KD)及びP5 (Ad5-TP53_v2_KD))と共に含む。ウイルスプレートの全ウエルは、150μLのウイルス粗溶解物を含む。上記のスクリーニングプロトコルで試験されるプレートの性能の代表例は、図1に示される。この図において、プレート上の組換えアデノウイルスごとにアッセイを実施することで検出される算出細胞死比率(GFP陽性死細胞数をGFP陽性細胞数で割る)を示す。細胞死レベルの値がカットオフ値を超える場合(サンプルを超える1.5倍の標準偏差として定義される)、Ad-siRNAウイルスはヒットとして記録される(-1.5より小さな値で細胞死を抑制するか、又は1.5より大きな値で細胞死を増加させる)。
【0176】
完全なSilenceSelect(登録商標)コレクション(130の96ウエルプレートに含まれる、5119の転写産物を標的とする11584のAd-siRNA)を、上記のプロトコルに従う細胞死アッセイで選別した。全てのウイルスを、生物学的二重測定で使用した。該選別の閾値設定は、プレート当たり全てのデータ点の平均で、プレート当たり全てのデータ点よりもプラス又はマイナス1.5倍の標準偏差で設定した。サンプルウイルスの平均から-1.5倍の標準偏差の閾値を下回って得点化された、合計550のAd-siRNAヒットを単離した。サンプルウイルスの平均から1.5倍の標準偏差の閾値を上回って得点化された、合計680のAd-siRNAヒットを単離した。
【0177】
図2に、細胞死アッセイにおけるSilenceSelect(登録商標)コレクションのスクリーニングで得られた全てのデータ点を示す。
【0178】
(実施例3)独立的再増殖材料を使用する一次ヒットの再選別
細胞死アッセイにおいて同定されたAd-siRNAの結果を確認するために、以下のアプローチをとることができる:Ad-siRNAヒットは、96ウエルプレート様式のPerC6.E2A細胞(Crucell, Leiden, The Netherlands)を使用して再増殖させ、その後に上記細胞死アッセイで再試験する。同定されたAd-siRNAヒットの粗溶解物サンプルをSilenceSelect(登録商標)コレクションから選択し、ネガティブコントロール(N1〜N3)及びポジティブコントロール(P1〜P5)と共に96ウエルプレートに再配置する。粗溶解物Ad-siRNAサンプルを含むバイアルをバーコード(Screenmates(商標)、Matrix technologies)でラベルし、該再配置されたプレートの品質チェックを実施する。再配置されたヒットウイルスを増殖させるために、40.000個のPerC6.E2A細胞を10% FBS含有200μL DMEM中96ウエルプレートの各ウエルにまき、10%CO2(PERC6培地)での加湿インキュベータ中39℃で終夜インキュベートする。その後、上記の96ウエルプレートに再配置されたヒットAd-siRNAからの2μlの粗溶解物を、96ウエルピペッターを使用してPerC6.E2A細胞に添加する。該プレートはそれから、5〜10日間、10%CO2の加湿インキュベータにおいて34℃でインキュベートできる。この期間の後、再増殖プレートを-80℃で凍結するが、但し、完全なCPE(細胞変性効果)が見られ得ることを条件とする。増殖されたAd-siRNAは、細胞死アッセイで再選別される。
【0179】
細胞死リプレッサ再選別のためのデータ分析は、以下の通りに実施される。プレートごとに、平均及び標準偏差がネガティブコントロールについて算出され、これを使用して、該サンプルと全てのネガティブの標準偏差に関する全てのネガティブの平均との間の差を示す「カットオフ値」を設定できる。細胞死リプレッサ再選別の閾値設定は、ネガティブコントロールの平均からネガティブコントロールの-4倍の標準偏差で設定した。このカットオフで、485のAd-siRNAは、細胞死アッセイにおいてポジティブである。
【0180】
細胞死の活性化因子は、細胞死を誘発するGFP融合ハンチンチン断片を使用する元のセットアップにおいて、及び、ポリグルタミン含有ハンチンチン断片を欠いているGFPタンパク質の存在下での両方で再選別した。これは、特に伸長したポリグルタミンタンパク質の存在下で細胞死を活性化させるAd-siRNAの同定を可能にする。各Ad-siRNAについて、カットオフ値(ネガティブコントロールの平均からネガティブコントロールの標準偏差の倍数)及びポリグルタミン-依存性(ポリグルタミン-GFP対GFP形質導入についての細胞死の誘導の比率)を算出する。細胞死活性化因子再選別についての閾値設定は、Ad-siRNAについて、2を超えるカットオフ、又は2を超えるポリグルタミン依存性のいずれかであった。680の一次Ad-siRNAヒットのうちの97はこのようにして確認した。
【0181】
標的Adの品質管理は、以下の通りに実施した:標的Ad-siRNAは、96ウエルプレートにおいてPER.C6(著作権)細胞(Crucell, Leiden, The Netherlands)の誘導体を使用して増殖させ、その後、該標的Ad-siRNAウイルスによりコードされるsiRNAの塩基配列決定をする。PERC6.E2A細胞を、180μLのPERC6.E2A培地中40,000細胞/ウエルの密度で96ウエルプレートに播種する。細胞をそれから10% CO2加湿インキュベータにおいて39℃で終夜インキュベートする。翌日、細胞を、標的Ad-siRNAを含んでいるSilenceSelect(登録商標)ストックからの1μLの粗細胞抽出液で感染させる。細胞を、細胞変性効果の顕在化まで(細胞の腫脹及び丸まりにより現され、典型的には感染後7日)、34℃、10% CO2で、さらにインキュベートする。上清を回収し、該ウイルス粗溶解物は、無菌のPCRチューブにおいて4μLの溶解緩衝液(1mg/mLのプロテイナーゼK(Roche Molecular Biochemicals、カタログ番号745 723)及び0.45%のTween-20(Roche Molecular Biochemicals、カタログ番号1335465)を補充したMgCl2含有4×Expand High Fidelity緩衝液(Roche Molecular Biochemicals、カタログ番号1332465))を12μLの粗溶解物に添加することにより、プロテイナーゼK処理する。これらのチューブは、55℃で2時間インキュベートした後、95℃で15分の不活化工程に供する。PCR反応のために、1μLの溶解物を、MgCl2、0.5μLのdNTPミックス(各dNTPにつき10 mM)、1μL の「フォワードプライマー」(10 mMストック、配列:
【化2】

(配列番号137))、1μL の「リバースプライマー」(10 mMストック、配列:
【化3】

(配列番号138))、0.2μL のExpand High Fidelity DNAポリメラーゼ(3.5 U/μL, Roche Molecular Biochemicals)及び41.3μL のH2Oを含む5 μLの10×Expand High Fidelity緩衝液からなるPCRマスターミックスに添加する。PCRは、以下の通りにPE Biosystems GeneAmp PCRシステム9700で実施される:PCR混合物(全体で50μL)を95℃で5分間インキュベートし;各サイクルは、95℃で15秒間、55℃で30秒間、68℃で4分間実行し、35サイクル繰り返す。68℃での最終インキュベーションは、7分間実施される。塩基配列解析のために、標的アデノウイルスにより発現されるsiRNA構築物を、pIPspAdapt6-U6プラスミドのSapI部位に隣接しているベクター配列と相補的なプライマを使用するPCRにより増幅する。PCR断片の配列を決定し、予想される配列と比較する。全ての配列が、予想される配列と同一であることがわかる。
【0182】
表3
【0183】
全てのハンチンチン細胞死ヒットの再選別のために得られたデータの要約。各ヒットの活性は、96ウエルプレートの細胞死における平均から、96ウエルプレートの細胞死の標準偏差の倍数で示される。一次選別において、標準偏差及び平均は、ライブラリウイルスで算出した。再選別において、標準偏差及び平均は、ネガティブコントロールウイルスで算出した。
【表3】


【0184】
(実施例4)遺伝子発現解析
HDにおいて影響を受けるヒト脳の領域、特に線条体及び皮質(Vonsattelらの文献、1985)において活発に発現されるものとしてこれらの標的を検証するために、ヒト脳において該ヒットウイルスにより表される転写産物の遺伝子発現は、2つの方法のいずれか1つで測定できる。
【0185】
(4.1)
公的に(Hodgesらの文献、2006)利用できるマイクロアレイデータセットを分析できる(NCBI Gene Expression OmnibusエントリGSE3790)。良質のRNAを有するアレイが使用される(表4)。
表4 解析したマイクロアッセイ
【表4】

【0186】
ハイブリダイゼーションレベルは、p値(該遺伝子が発現される統計的有意性、 有意性についてのカットオフはp=0.05)として報告する。該アレイの50%超に発現される遺伝子は、発現された遺伝子と位置づける。線条体及び皮質にわたる発現の正中p値を表5に表す。さらにまた、フォンサッテル(Vonsattel)等級1又は2を有するHD患者の線条体からの正中p値の-logと、コントロール対象の線条体からの正中p値の-logとの間の比率は、疾患特異的な発現を示すために使用してもよい。
【0187】
(4.2)
このデータセット(Hodgesらの文献, 2006)において解析されない遺伝子について、RNAは、コントロール対象及びHD患者からの新しい冷凍された脳組織から、線条体及び皮質の両方から単離できる。遺伝子発現は、遺伝子発現mRNA発現データ(定量的RT-PCR)のリアルタイムTaqMan解析を使用して解析できる。
【0188】
これらのサンプルからの総RNAはQiagen RNAeasyキットを使用して単離でき、該RNAの品質はAgilent 2100 Bioanalyzer Picoチップを使用して評価される。RNAは、品質(28S及び18SのピークrRNA)に基づき選択する。cDNAをRNAから調製し、適切である場合、cDNAのプールを作成する(表5)。
表5 TaqMan解析において使用するRNAサンプルの臨床状態
いくつかのcDNAサンプルは、2つの又は3つのサンプルからのプールされたcDNAである(フィールド中、複数のエントリにより示される)。
【表5】

[#N/A = 適用不可−CAGリピートなし]
【0189】
各サンプルは、異なるプレートで2回反復で測定する。遺伝子発現は、サイクル閾値(Ct)(Applied Biosystemsマニュアル)で算出する。低いサイクル閾値は高発現を示し、35以上のCtは発現を示さない。フォンサッテル等級1又は2を有するHD患者の線条体、及び、コントロール対象の線条体からの示差的遺伝子発現は、2^(ΔCt)により算出する。1より大きい比率を示している標的は、HD 線条体において過剰発現しており、従って、薬剤標的として増加した値である。
表6:遺伝子発現解析の結果
【表6】


【0190】
(実施例5)KDウイルスを使用する「オンターゲット解析」
ヒットの確証を強化するために、異なる配列を介して同じ標的遺伝子を標的とする完全に独立なsiRNAを使用してその効果を再現することは、有用である。この解析は、「オンターゲット解析」とよばれる。実際には、これは、WO 03/020931に従い、以前に記載された専門アルゴリズムを使用して標的に対して複数の新規なshRNAオリゴヌクレオチドを設計し、それらをアデノウイルスに組み込むことによりなされる。ウイルス産生後、ポジティブ及びネガティブコントロールウイルスと共に、これらのウイルスを96ウエルプレートに配列する。平均して、6つの新規な独立したAd-siRNAのものが、標的セットについて生成される。これらのウイルスプレートの1つの独立な再増殖は、それから、実施例3での再選別のために上記の通りに実施される。この再増殖において生成されるプレートは、記載されているプロトコルに従っての3MOIでの一次スクリーニングアッセイの生物学的複製で試験する(実施例1)。少なくとも1MOIで設定されたカットオフ値を上回る機能効果を媒介するAd-siRNAのものが、「オンターゲット解析」においてスコア化されるヒットとして指名される。これらの実験におけるカットオフ値は、ネガティブコントロールを超える平均+2倍のネガティブコントロールを超える標準偏差として定義する。これらのヒットは「オンターゲット」とみなされ、次なる検証実験に進む。
【0191】
(実施例6)初代細胞に基づくアッセイ確認
ハンチントン病についての増加した臨床関連性を有する細胞モデルは、ハンチントン病において最も深刻に影響を受けるニューロン集団に類似の表現型を有する。HD患者の脳の神経病理学的解析は、神経変性過程に関係する脳の部位を明確に証明する(Vonsattelらの文献、1985)。線条体(尾状核)及び皮質は最も深刻に影響を受け、これは該疾患過程の間に観察される運動及び認識欠損を説明する。ヒト胎児線条体に由来する条件的に不死化された細胞株は、実施例1に記載されているアッセイを反復するために使用する。当該細胞株は、活発な増殖を可能にする条件下で培養できるが、c-mycなどの不死化遺伝子をオフにすると、細胞は線条体ニューロン表現型に最終分化する。実施例1に記載されるアッセイに対する当該ニューロンの応答は、HD患者の線条体ニューロン集団の感受性に、より関連する。ヒト線条体ニューロンアッセイにおけるヒットAd-siRNA活性は、ヒト線条体ニューロンアッセイにおける効果を示すことができないAd-siRNAと比較して、薬剤標的として高い妥当性を有する遺伝子を表す。ヒト線条体神経細胞株の例は、米国特許出願20060067918(Sindenらの文献、ReNeuron社)に記載されているSTROC05細胞株である。
【0192】
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【0193】
上記記載から、本発明の組成物及び方法における様々な修飾及び変更が当業者に生じるであろう。添付の特許請求の範囲の範囲内にある全てのそのような修飾は、特許請求の範囲に含まれることを意図する。
【0194】
本明細書において引用した特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない全ての刊行物は、あたかも個々の刊行物が具体的にかつ個々に示され、あたかも完全に記載されて本明細書に引用されているように、引用により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞死を変調させる化合物を同定するための方法であって:
a) 化合物を、配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
b) 該ポリペプチドに対する該化合物の結合親和性を測定すること;
を含む、前記方法。
【請求項2】
c)前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の集団を、少なくとも10マイクロモラーの結合親和性を呈する化合物と接触させる工程;及び、
d)変異ハンチンチンタンパク質の発現を変調させる化合物を同定する工程;
を追加的に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞死を変調させる化合物を同定するための方法であって:
a)化合物を、配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドと接触させること;
b)該ポリペプチドの発現又は活性を阻害する該化合物の能力を測定すること;
を含む、前記方法。
【請求項4】
c)前記ポリペプチドを発現している哺乳動物細胞の集団を、該ポリペプチドの発現又は活性を顕著に阻害する化合物と接触させる工程;及び、
d)変異ハンチンチンタンパク質の発現を変調させる化合物を同定する工程;
を追加的に含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、インビトロ無細胞調製物にある、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ポリペプチドが細胞に存在する、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記細胞が、前記ポリペプチドを天然に発現する、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
前記細胞が、該標的を発現するように設計されている、請求項6又は7記載の方法。
【請求項10】
前記化合物が、市販のスクリーニングライブラリの化合物、及び配列番号46、47、49、51〜60、62〜67、69、71、75〜82及び85〜90からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合親和性を有する化合物からなる群から選択される、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が、ファージディスプレイライブラリ又は抗体断片ライブラリにおけるペプチドである、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ポリグルタミン誘導性細胞死を変調することに効果的な作用物質であって、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム及び低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択され、前記作用物質が配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45からなる群から選択される核酸配列の約17〜約30の連続するヌクレオチドの天然存在型ポリヌクレオチド配列に相補な又は該配列から設計された核酸配列を含む、前記作用物質。
【請求項13】
哺乳動物細胞中のベクターが前記作用物質を発現する、請求項12記載の作用物質。
【請求項14】
ポリグルタミン細胞死アッセイにおいてポリグルタミン誘導性細胞死を変調することに効果的である、請求項12記載の作用物質。
【請求項15】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、単純疱疹ウイルスベクター又はセンダイウイルスベクターである、請求項13記載の作用物質。
【請求項16】
前記アンチセンスポリヌクレオチド及び前記siRNAがセンス鎖に相補的な17〜25ヌクレオチドのアンチセンス鎖を含み、前記センス鎖が配列番号1、2、4、6〜15、17〜22、24、26、30〜37、40〜45からなる群から選択される核酸配列の17〜25の連続するヌクレオチドから選択される、請求項12記載の作用物質。
【請求項17】
前記siRNAが前記センス鎖をさらに含む、請求項16記載の作用物質。
【請求項18】
前記センス鎖が配列番号91、92、94、96〜105、107〜112、114、116、120〜127及び130〜135からなる群から選択される、請求項17記載の作用物質。
【請求項19】
前記siRNAが前記センス及び前記アンチセンス鎖を連結しているループ領域をさらに含む、請求項18記載の作用物質。
【請求項20】
前記ループ領域が
【化1】

からなる群から選択される核酸配列を含む、請求項19記載の作用物質。
【請求項21】
前記作用物質が、配列番号91、92、94、96〜105、107〜112、114、116、120〜127及び130〜135からなる群から選択される核酸配列に相補的な核酸配列を含むアンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム又はsiRNAである、請求項19記載の作用物質。
【請求項22】
治療上有効量の請求項12記載の作用物質を、医薬として許容し得る担体との混合物で含む、細胞死変調医薬組成物。
【請求項23】
神経変性を伴う疾患を治療及び/又は予防する方法であって、前記対象に請求項22記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
前記疾患がポリグルタミン病である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記疾患がハンチントン病である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記疾患が、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症及び脊髄小脳失調症から選択される、請求項23記載の方法。
【請求項27】
神経変性を伴う疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造における請求項12〜21記載の作用物質の使用。
【請求項28】
前記疾患がポリグルタミン病である、請求項27記載の使用。
【請求項29】
前記疾患がハンチントン病である、請求項27又は28記載の使用。
【請求項30】
前記疾患が、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症及び脊髄小脳失調症から選択される、請求項27記載の使用。
【請求項31】
請求項22記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、神経変性を伴う治療及び/又は予防における使用のための請求項12〜21のいずれか1項記載の作用物質。
【請求項32】
前記疾患がポリグルタミン病である、請求項31記載の作用物質。
【請求項33】
前記疾患がハンチントン病である、請求項32記載の作用物質。
【請求項34】
前記疾患が、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、前頭側頭型認知症及び脊髄小脳失調症から選択される、請求項31記載の作用物質。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−515653(P2011−515653A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544730(P2010−544730)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051184
【国際公開番号】WO2009/098197
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504064364)ガラパゴス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (27)
【氏名又は名称原語表記】Galapagos N.V.
【Fターム(参考)】