説明

神経変性疾患または血液疾患の治療のための[1,10]−フェナントロリン誘導体

本発明は、神経変性または血液の疾患または状態の治療またはプロフィラキス(profilaxis)に有用である、式(I)の[1,10]−フェナントロリン誘導体の新規ファミリー、とりわけ治療の神経変性または血液の疾患または状態を治療するための、医薬としてのそれらの使用、および該化合物を含んでなる医薬組成物に関する。


【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、神経変性または血液の疾患または状態、特にアルツハイマー病(AD)の治療および/または予防のためのいくつかの[1,10]−フェナントロリン誘導体の使用に関する。加えて、新規[1,10]−フェナントロリン誘導体、かかる化合物を製造するための方法およびそれらを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0002】
発明の背景
ADとパーキンソン病(PD)は、最もよく見られる進行性神経変性疾患であり、世界中で何百万人もの人々が罹患している。かなりの割合の患者が両疾患からの共通の臨床的および病理学的症状を抱えているため、これは共通の病理学的機構が存在することを示しているように思われる。
【0003】
酸化的ストレスは、アテローム性動脈硬化症、パーキンソン病およびADを含む多くの疾患に関与することが分かっており、老化にも重要であり得る。
【0004】
活性酸素種(ROS)、例えば酸素ラジカルスーパーオキシド(O-)または過酸化水素(H)、は正常な代謝プロセス中に生成され、いくつかの有用な機能を果たしている(Reactive oxygen species and the central nervous system, Halliwell B., J. Neurochem.; 1992, 59 859: 1609-1623)。細胞には、これらのような酸化物質のレベルを制御するためにいくつかの機構、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンまたはビタミンE、が与えられている。正常な生理学的条件においては、ROSとこれらの抗酸化機構との間に平衡が存在する。ROS過剰産生と抗酸化防御効率損失により、細胞の酸化的ストレスをもたらし、そのために細胞において病理学的状態が生じ、組織損傷を引き起こす可能性がある。この事象は、代謝活性率が高いことを理由としてニューロンにおいてより劇的に起こるように思われ、そのようなことから、一連の変性のプロセス、疾患および症候群、例えば、AD、PD、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および統合失調症(Glutathione, oxidative stress and neurodegeneration, Schulz et al., Eur. J. Biochem.; 2000, 267, 4904-4911)に関連しているように思われる。また、他の疾患または病理学的状態も酸化的ストレスに関連していた(例えばハンチントン病(Oxidative damage in Huntington's disease, Segovia J. and Perez-Severiano F, Methods Mol. Biol.; 2004; 207: 321-334)、脳損傷、例えば卒中および虚血、(Oxidative Stress in the Context of Acute Cerebrovascular Stroke, El Kossi et al., Stroke; 2000; 31: 1889-1892)、糖尿病(Oxidative stress as a therapeutic target in diabetes: revisiting the controversy, Wiernsperger NF, Diabetes Metab.; 2003; 29, 579-85)、多発性硬化症(The role of oxidative stress in the pathogenesis of multiple sclerosis: the need for effective antioxidant therapy, Gilgun-Sherki Y. et al., J. Neurol.; 2004; 251 (3): 261-8)、癲癇(Oxidative injury in epilepsy: potential for antioxidant therapy?, Costello D. J. and Delanty N., Expert. Rev. Neurother.; 2004; 4(3): 541-553)、アテローム性動脈硬化症(The oxidative stress hypothesis of atherogenesis, luliano L., Lipids; 2001; 36 suppl: S41-44)、フリートライヒ運動失調(Oxidative stress mitochondrial dysfuntion and cellular stress response in Friedreich's ataxia, Calabrese et al., J. Neurol. Sci.; 2005)ならびに心不全(Oxygen, oxidative stress, hypoxia and heart failure, Giordano F. J., J. Clinic. Invest.; 2005; 115 (3): 500-508))。抗酸化機構を増強する治療は、上述の疾患のいくつかの進行を遅らせ得る。
【0005】
もう一つのタイプの細胞ストレスは小胞体(ER)ストレスである。ERは細胞内オルガネラであり、この細胞内オルガネラは槽と微小管によって形成された大規模なネットワークであり、総ての真核細胞において核膜から細胞表面にかけて広がっている。ERはいくつかの生命機能を果たす:粗面ERはタンパク質合成とタンパク質の正確な折りたたみの翻訳後変化(postranslational changes)の場所であり、ERは、タンパク質を細胞内の適切な目的地へと送達するための一般的な輸送経路であり、Ca2+貯蔵庫でもある。ERの機能障害は、ER内に折りたたまれていないタンパク質の蓄積をもたらし、一般にERストレスと呼ばれている状態状態を引き起こす。これらの障害は生化学的不均衡によるだけでなくERのCa2+ホメオスタシス障害によっても起こり得る。ERストレスが、ADを有する患者に起こる神経変性プロセスに関与している酵素であるグリコーゲンシンターゼキナーゼ3βという酵素を活性化するということを証明している研究もある(Glycogen synthase kinase 3β (GSK3β) mediates 6-hydroxydopamine-induced neuronal death, Chen et al., FASEB J. 2004; 18(10): 1162-4)。
【0006】
カテコールアミン作動性神経毒の6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)は、パーキンソン病に罹患している患者において内因的に生成される。6−OHDAは2通りの働きをする:6−OHDAはフリーラジカルを容易に生成し、6−OHDAはミトコンドリア呼吸鎖複合体IおよびIVの強力な阻害剤でもある。6−ヒドロキシドパミン(6−OHDA)モデルは、ヒトにおけるDA変性特にPDを特徴づける幅広い神経化学的および行動的欠陥をもたらすために用いられる(例えばGlinka Y et al, "Mechanism of 6-hydroxydopamine neurotoxicity", J Neural Transm Suppl. 1997; 50: 55-66; Willis GL et al, "The implementation of acute versus chronic animal models for treatment discovery in Parkinson's disease" Rev Neurosci. 2004; 15 (1): 75-87)。
【0007】
神経変性疾患の共通の徴候は、誤って折りたたまれたタンパク質の蓄積と沈着であり、そしてこれらがいくつかのシグナル伝達経路に影響を及ぼし、そしてこれらが最後には神経細胞死につながる。ERストレスが、いくつかの神経変性疾患例えば、PD、AD、ALS、および感染性海綿状脳症(TSE)に関連していると考える著者もいる(ER stress and neurodegenerative diseases, Lindholm et al., Cell Death and Differentiation; 2006; 13: 385-392)。
【0008】
上記のことを考慮して、神経変性疾患を治療するための新規医薬化合物の開発のための興味深いアプローチは、細胞の酸化的ストレスを阻害する化合物を設計することであり得る。
【0009】
アミロイドβ(Aβ)は、AD患者の脳内のアミロイド斑の主成分であるペプチドである。レヴィー小体認知症の一部の変異型や、筋肉疾患である封入体筋炎においても同じような斑が現われる。また、Aβは、脳アミロイド血管症においては凝集体を形成し脳血管を覆っている。
【0010】
Aβは、β−およびγ−セクレターゼによるアミロイドタンパク前駆体(APP)の一連の切断後に生成する。この切断が起こる場所によってAβ42またはAβ40のいずれかが生成する。APPは膜貫通糖タンパク質である。APPにおけるの常染色体優性突然変異は、恐らくタンパク質分解プロセッシングの変化の結果として遺伝性早期ADを引き起こす。総Aβレベルの増加は、家族性ADおよび孤発性ADの両方の原因に関係している[The American Journal of Pathology; Lue, L; 155 (3):853-662 (1999)]。
【0011】
研究者の大部分に受け入れられている「アミロイド仮説」によれば、アミロイド斑はADの病理学に関与する。タウタンパク質の細胞内沈着もADにおいて見られ、同様に関係している可能性がある。成熟した原繊維よりもむしろ、アミロイド経路において生成するオリゴマーが細胞傷害性種である可能性がある。
【0012】
よって、アミロイドーシスが関与している疾患例えばAD、PD、ハンチントン病、TSE、プリオン病、クロイツフェルト・ヤコブ病および牛海綿状脳症の治療を見つけるための現在の戦略は、アミロイドβ分泌阻害剤の開発である。
【0013】
もう一方で、ある種の血液疾患、例えばサラセミア、貧血、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、糖尿病、ダイヤモンド・ブラックファン貧血、鎌形赤血球症、定期的な赤血球輸血を必要とする血液障害、鉄誘発性心機能障害、および鉄誘発性心不全を治療するために鉄キレート剤が用いられている。
【0014】
金属例えば鉄は、金属によって1個の電子が受容または供与され得る酸化還元サイクルが可能である。この作用は、反応性ラジカルを生成する反応を触媒し、活性酸素種を生成し得る。最も重要な反応は、還元鉄と過酸化水素からヒドロキシルラジカルが生成するフェントン反応およびハーバー・ワイス反応であろう。ヒドロキシルラジカルは、その後、アミノ酸(例えばフェニルアラニンからのメタ−チロシンおよびオルト−チロシンの形成)、炭水化物の修飾を誘導し、脂質過酸化を開始し、核酸塩基を酸化し得る。活性酸素種を生成する多数の酵素はこれらのような金属の1つを含む。かかる金属が生物系内に(タンパク質または他の保護的金属錯体としてではなく)非錯体形態で存在すると、酸化的ストレスのレベルが大幅に増加し得る。そのため、本発明による状態の治療のためのキレート配位子は、Fe(III)よりもむしろFe(II)を選ぶことが望ましい。
【0015】
鉄キレート剤であるデフェロキサミンとデフェリプロンは、それぞれ、1970年代と1980年代後半以降ヒトに用いられてきたが、最近、デフェラシロクスという新規薬物もヒトに用いられている。デフェロキサミンは、サラセミアメジャー、鎌形赤血球症および他の血液障害において有効であることが証明されているが、これらの血液障害に対して、皮下投与することしかできない[Blood; Neufeld, E. L., 107(9): 3436-3441 (2006)]。輸血による慢性鉄過剰に向けてUSで認可されているデフェラシロクスは、成功率が中等度〜高いことが分かっている[Hematology; Cohen, A.R., 42-47 (2006)]。デフェリプロンとデフェロキサミンの併用療法も用いられている。
【0016】
しかしながら、これらの薬物の使用には副作用が伴い;デフェリプロンは胃腸症状、糜爛性関節炎、好中球減少症、一部の例では無顆粒球症の原因となることが多く;デフェリプロン療法には週1回の全血球計算と点滴用補助供給品が必要であるために綿密なモニタリングが必要とされ;デフェロキサミンは胃腸症状および関節痛を与え、デフェラシロクスは高価である。よって、低コストおよび減少した副作用で生産および使用される、これらの血液疾患に使用するためのさらなる治療用鉄キレート剤がなお必要である。
【0017】
フェナントロリン誘導体が良好な鉄キレート化特性を示すことは周知である。特許PL76345においていくつかのフェナントロリン誘導体が示されている。上記血液疾患の治療の可能性を高めるために、鉄金属のキレート化において改善された特性を示し得る新規フェナントロリン誘導体を見つけることを強く推奨する。
【発明の概要】
【0018】
本発明者らは、以下に詳述するように式(I)によって定義される、酸化的ストレスから、特に過酸化水素−細胞死および6−ヒドロキシドパミン−細胞死から保護する特性、Aβ毒性に対して神経保護効果を有する特性、Aβ分泌を阻害する特性を含む新規化合物ファミリー、すなわち[1,10]−フェナントロリン誘導体を見つけた。驚くべきことに、本発明者らは、本発明の化合物が脳血液関門を通過することができることを見出した。このようなことから、本発明の化合物は、神経変性疾患または状態の治療または予防に有用であり得る。加えて、これらの化合物には、特異的鉄(II)キレート剤として作用する性質があるため、血液疾患を治療するためにも用いることができた。
【0019】
よって、第一の態様によれば、本発明は、神経変性または血液の疾患または状態の治療または予防のための医薬の製造における、式(I):
【化1】

(式中、Rは、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
は、−CH=N−ORまたは−CHOから選択され;
およびRは、C−Cアルキル、場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン(好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個のハロゲン原子で)、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−C15アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択され、
およびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択され、
は、水素およびC−Cアルキルから選択される)
の化合物;あるいはそれらの任意の塩または溶媒和物または立体異性体または互変異性体の使用に向けられる。
【0020】
従って、本発明の態様は、神経変性または血液の疾患または状態の治療または予防のための上記に定義した式(I)の化合物である。
【0021】
式(I)の化合物は、β−アミロイド分泌を変調する必要がある生物学的アッセイに用いてよい。よって、もう一つの態様では、本発明は、上記に定義した式(I)の化合物、あるいはそれらの任意の塩または溶媒和物の、生物学的アッセイでの試薬としての、好ましくは、薬物動態アッセイ、血液脳関門通過アッセイ、キレートアッセイ、過酸化水素による細胞死からの保護、6−OHDAによる細胞死からの保護、Aβ毒性からの神経保護およびβ−アミロイド分泌の阻害についてのアッセイ(essays)での反応性物質としての使用に関する。
【0022】
本発明のさらなる態様は、疾患または状態を治療または予防する方法であって、かかる治療を必要とする患者に治療上有効な量の、上記に定義した少なくとも1種の式(I)化合物、それらの塩、溶媒和物、立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの医薬組成物を投与することを含む方法に関する。
【0023】
さらなる態様によれば、本発明は、式(I):
【化2】

(式中、Rは、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
は、−CH=N−ORまたは−CHOから選択され;
およびRは、C−Cアルキル、場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−C15アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択され、
およびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択され、
は、水素およびC−Cアルキルから選択される)
の化合物;あるいはそれらの任意の塩または溶媒和物または立体異性体または互変異性体(ただし、RがClである場合には、Rは−CHOではない)に向けられる。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、上記に定義した少なくとも1種の式(I)化合物、それらの塩または溶媒和物または立体異性体または互変異性体と、少なくとも1種の薬学上許容される担体とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0025】
さらなる態様によれば、本発明は、医薬として用いるための、上記に定義した式(I)の化合物、それらの塩、溶媒和物または立体異性体または互変異性体に向けられる。
【0026】
さらなる態様によれば、本発明は、式Iの化合物、それらの塩または溶媒和物または立体異性体または互変異性体の合成のための方法に向けられる。
【発明の具体的説明】
【0027】
式(I)の化合物の上記の定義では、次の用語は以下に示す意味を有する:
「C−Cアルキル」とは、炭素原子と水素原子からなる、不飽和を含まない、1〜6個、好ましくは1〜3個の炭素原子を有する線状または分枝状炭化水素鎖ラジカルを指し、この線状または分枝状炭化水素鎖ラジカルは、残りの分子と一重結合によって結合している。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチルなどがある。
【0028】
「C−Cアルコキシ」とは、式−ORラジカル(式中、Rは、上記に定義した「C−Cアルキル」ラジカルである)、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどを指す。
【0029】
「ハロゲン」とは、ブロモ、クロロ、ヨードまたはフルオロを指す。
【0030】
「アリール」とは、6〜15個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、例えばフェニルまたはナフチルを指す。
【0031】
「ヘテロアリール」とは、少なくとも1つの環が芳香族である安定な3〜15員環系を指し、この環系は、炭素原子と、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される、1〜5個、好ましくは1〜3個のヘテロ原子からなり、好ましくは1個以上のヘテロ原子を有する4〜8員環、より好ましくは1個以上、好ましくは1〜3個のヘテロ原子を有する5〜6員環である。本発明の目的では、前記ヘテロアリールは、単環、二環または三環構造であってよく、縮合環系を含んでよく;かつ前記ヘテロアリールラジカル中の前記窒素、炭素または硫黄原子は、場合によって酸化されていてよく;前記窒素原子は、場合によって四級化されていてよく;かかるヘテロアリールの例としては、、限定されるものではないが、チアゾール、チアジアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン、イソチアゾールまたはイミダゾールが挙げられる。
【0032】
式(I)の化合物の使用
一つの実施態様によれば、本発明は、式(I)(式中、
は、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
は、−CH=N−ORまたは−CHOから選択され;
およびRは、独立に、場合によってC−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−Cアルキルであり、
およびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択され、
は、水素およびC−Cアルキルから選択される)
の化合物の使用に向けられる。
【0033】
本発明の枠内において、表現「神経変性疾患または状態」とは、神経変性が起こるいかなる疾患または状態をも意味する。かかる疾患または状態としては、限定されるものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、ハンチントン病、脳損傷、例えば卒中および虚血、多発性硬化症、癲癇、フリートライヒ運動失調、海綿状脳症、アミロイドーシス、血管認知症、タウオファティイズ (tauophaties)、進行性核上麻痺、前頭側頭葉変性症、亜急性硬化性全脳炎性パーキンソン症候群、脳炎後パーキンソン症候群、拳闘家脳炎(pugilistic encephalitis)、グアム島パーキンソン症候群−認知症複合、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、エイズ関連認知症、多発性硬化症、気分障害例えば鬱病、統合失調症および双極性障害、脳卒中後の機能回復促進ならびに脳損傷、とりわけ外傷性脳損傷から選択されるいかなる疾患または状態をも挙げられる。本発明の好ましい態様では、前記神経変性疾患または状態はアルツハイマー病である。
【0034】
本発明の枠内において、表現「血液疾患または状態」とは、血液および造血組織の障害が起こるいかなる疾患または状態をも意味する。好ましい実施態様では、前記血液疾患または状態は、サラセミア、貧血、再生不良性貧血、ダイヤモンド・ブラックファン貧血、鎌形赤血球症、定期的な赤血球輸血を必要とする血液障害、骨髄異形成症候群、鉄誘発性心機能障害、鉄誘発性心不全および糖尿病から、より好ましくはサラセミア、貧血、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群および糖尿病から選択される。
【0035】
特定の態様では、本発明において用いる式(I)の化合物は、次の化合物:
4−メトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−クロロ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−クロロ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−アミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−メトキシ−エチルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
2−[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−N,N−ジメチル−アセトアミド;
4−(2,2,2−トリフルオロ−エチルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−酢酸メチルエステル;
4−(チアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−酢酸;
4−(5−メチル−チアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(5−メチル−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−([1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
あるいはそれらの塩、溶媒和物または立体異性体または互変異性体から選択される。
【0036】
本発明において用いる化合物は、併用療法を提供するために、少なくとも他の薬物とともに用いてよい。この少なくとも他の薬物は、同じの組成物の一部としてよく、または同時にまたは異なる時間に投与するための独立した組成物として提供してもよい。
【0037】
さらなる態様によれば、本発明は、神経変性または血液の疾患または状態を治療または予防する方法であって、かかる治療を必要とする患者に治療上有効な量の、上記に定義した少なくとも1種の式(I)化合物、それらの塩もしくは溶媒和物、立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの医薬組成物を投与することを含む方法に向けられる。
【0038】
本明細書における用語「治療」または「治療するために」とは、前記疾患または前記疾患に関連する1以上の症状を予防、改善または除去するための本発明による化合物または処方物の投与を意味する。「治療」は、前記疾患の生理学的後遺症を予防、改善または除去することも包含する。
【0039】
本発明における用語「改善する」とは、治療を受けた患者の状況における主観的(患者の感覚)または客観的(測定パラメーター)に見たいかなる改善をも意味することと考えられる。
【0040】
式Iの化合物
本発明の実施態様は、式(I)
(式中、
は、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
は、−CH=N−ORまたは−CHOから選択され;
およびRは、独立に、場合によってC−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−Cアルキルであり、
およびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択され、
は、水素およびC−Cアルキルから選択される)
の化合物、あるいはそれらの任意の塩または溶媒和物または立体異性体(ただし、RがClまたはOCHである場合には、Rは−CHOまたは−CH=N−OHではない)
に向けられる。
【0041】
好ましい化合物は、Rが−CH=N−OR(式中、Rは、水素およびC−Cアルキルから選択される)であるものである。より好ましくは、Rは水素である。
【0042】
他の好ましい化合物は、Rが−S−R(式中、Rは、場合によってC−Cアルキルおよび/またはNRで置換されている、C−Cアルキルであり、RおよびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択される)であるものである。さらに好ましい化合物は、Rが、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルから選択されるものである。
【0043】
もう一つの好ましい実施態様では、Rは、−O−R(式中、Rは、場合によってC−Cアルキルおよび/またはNRで置換されている、C−Cアルキルであり、RおよびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択される)である。好ましくは、Rは、メチルおよびエチルから選択される。さらに好ましくは、Rは、−NRまたはメトキシで置換されているエチルであり、RおよびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択される。この好ましい実施態様においては、前記アミン−NRは、第1級または第3級アミンであり、より好ましくはジエチルアミンである。
【0044】
さらに好ましい実施態様では、前記オキシム基−CH=NORの二重結合は、以下に示すようにE配座を示す:
【化3】

【0045】
さらなる実施態様によれば、Rはクロロである。
【0046】
さらなる実施態様によれば、Rは、ヘテロアリール基が場合によってC−Cアルキル、好ましくはC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている−S−ヘテロアリールである。
【0047】
さらなる実施態様によれば、Rは、−(C=O)NRまたは−(C=O)ORで置換されているC−Cアルキル基である。
【0048】
好ましい実施態様によれば、式(I)の化合物は、次の化合物:
4−メトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−アミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−メトキシ−エチルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
2−[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−N,N−ジメチル−アセトアミド;
4−(2,2,2−トリフルオロ−エチルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−酢酸メチルエステル;
4−(チアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−酢酸;
4−(5−メチル−チアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(5−メチル−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−([1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
およびそれらの塩または溶媒和物または立体異性体または互変異性体から選択される。
【0049】
式(I)の化合物は、塩、好ましくは薬学上許容される塩の形態であってよく、または溶媒和物の形態であってもよい。用語「薬学上許容される塩」とは、受容者への投与後に本明細書に記載の化合物を(直接または間接的に)提供することができるいかなる塩をも指す。しかしながら、薬学上許容されない塩も、薬学上許容される塩の製造において有用であり得ることから、本発明の範囲内に入ることは分かるであろう。好ましくは、「薬学上許容される」とは、生理学上許容され、ヒトへ投与したときにときにアレルギー反応または類似する有害反応、例えば胃部不快感、めまいなどを一般に引き起こさない分子実体および組成物を指す。好ましくは、本明細書において、用語「薬学上許容される」とは、連邦または州政府の監督官庁によって認可されているかあるいは米国薬局方または他の一般に認識されている薬局方に動物、より特にはヒトにおける使用について記載されているということを意味する。
【0050】
本発明による「溶媒和物」との用語は、非共有結合によって結合された別の分子(最も多くは極性溶媒)を有する本発明による活性化合物のいかなる形態をも意味すると考えるべきである。溶媒和物の例としては、水和物およびアルコラート、例えばメタノラートが挙げられる。好ましくは、前記溶媒和物は薬学上許容される溶媒和物である。
【0051】
塩および溶媒和物の製造は、当技術分野で公知の方法によって行うことができる。例えば、本明細書において提供する化合物の薬学上許容される塩は、塩基性部分を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成される。一般的に、かかる塩は、例えば、これらの化合物の遊離塩基形態を化学量論的な量の適当な塩基または酸と水中でまたは有機溶媒中でまたはこれら2つの混合物中で反応させることによって製造される。一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性溶媒が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩のような無機酸付加塩、および、例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩のような有機酸付加塩が挙げられる。
【0052】
一つの好ましい薬学上許容される形態は、結晶形態(医薬組成物でのかかる形態を含む)である。塩および溶媒和物の場合には、付加イオンおよび溶媒部分も無毒でなければならない。本発明の化合物は、種々の多形相を示すことがあり、本発明はかかる総ての形態を包含することを意図している。
【0053】
また、本発明の化合物は、1種以上の同位体濃縮原子の存在下でのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、重水素もしくはトリチウムによる水素置換、あるいは13C−もしくは14C−濃縮炭素による炭素置換または15N−濃縮窒素による窒素置換を除いて本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0054】
上記式(I)によって表される本発明の化合物は、キラル中心の存在に応じた鏡像異性体または多重結合の存在に応じた異性体(例えばZ、E)を含み得る。単一種の異性体、鏡像異性体またはジアステレオ異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲内に入る。
【0055】
医薬組成物
さらなる態様によれば、本発明は、上記に定義した少なくとも1種の式(I)化合物、それらの塩または溶媒和物または立体異性体または互変異性体と、少なくとも1種の薬学上許容される担体とを含んでなる医薬組成物に向けられる。
【0056】
用語「担体」とは、有効成分とともに投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。かかる医薬担体は、滅菌液、例えば水および油(石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油などを含む)であり得る。水または水溶液 生理食塩溶液ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、特に注射液に用いる、担体として好ましくは使用される。好適な医薬担体は、E. W. Martinによる"Remington’s Pharmaceutical Sciences", 1995に記載されている。
【0057】
好ましくは、本発明の担体は、連邦または州政府の監督官庁によって認可されているかあるいは米国薬局方または他の一般に認識されている薬局方に動物、より特にはヒトにおける使用について記載されているものである。
【0058】
本発明の医薬組成物の所望の投与剤形を製造するのに必要な担体および補助剤は、いくつかある因子の中で特に、選択した投与剤形によって決まる。前記医薬組成物投与剤形は、当業者に公知の従来の方法に従って製造される。様々な有効成分投与方法、用いる賦形剤およびそれらの生産方法の総説は、”Tratado de Farmacia Galenica”, C. Fauli i Trillo, Luzan 5, S. A. de Ediciones, 1993において見つけることができる。
【0059】
医薬組成物の例としては、経口、局所または非経口投与に用いるいかなる固体(錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤など)または液体(液剤、懸濁剤または乳剤)組成物をも挙げられる。
【0060】
好ましい実施態様では、前記医薬組成物は経口形態である。経口投与に好適な剤形は、錠剤およびカプセル剤であってよく、当技術分野で公知の従来の賦形剤例えば結合剤、例えばシロップ、アラビアガム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカントガム、もしくはポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールもしくはグリシン;錠剤用滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;崩壊剤、例えばデンプン、ポリビニルピロリドン、グリコール酸ナトリウムデンプンもしくは微晶質セルロース;または薬学上許容される湿潤剤例えばラウリル硫酸ナトリウムを含んでよい。
【0061】
固体経口組成物は、ブレンド、充填または錠剤化する従来の方法によって製造してよい。大量の増量剤を使用する組成物全体に活性剤が分布するようにブレンド操作を繰り返し用いてよい。かかる操作は、当技術分野において従来続けられている。錠剤は、例えば湿式または乾式造粒によって製造してよく、所望により、通常の製薬実施において周知の方法に従って、特に腸溶コーティングでコーティングしてよい。
【0062】
また、医薬組成物は、非経口投与に適応させてもよく、例えば適当な単位投与形の滅菌液剤、懸濁剤または凍結乾燥製品である。適切な賦形剤、例えば増量剤、緩衝剤または界面活性剤を用いることができる。
【0063】
上述の処方物は、標準的な方法例えばスペインおよび米国薬局方および同様の参考文書に記載または参照されるものを用いて製造されるであろう。
【0064】
本発明の化合物または組成物は、任意の好適な方法、例えば静脈内注入、経口製剤、ならびに腹膜内および静脈内投与によって投与してよい。患者の利便性と治療する多くの疾患の慢性性から経口投与が好ましい。
【0065】
一般的に、本発明の化合物の有効な投与量は、選択した化合物の相対的効力、治療する障害の重篤度および患者の体重によって決まる。しかしながら、活性化合物は、一般に1日に1回以上例えば1日1回、2回、3回または4回投与され、典型的な総1日用量は0.01〜1000mg/kg/日の範囲である。
【0066】
さらなる態様によれば、本発明は、医薬として用いるための、上記に定義した式(I)の化合物、それらの塩または溶媒和物または立体異性体または互変異性体に向けられる。
【0067】
式Iの化合物の合成方法
本発明の化合物は、当技術分野で公知の反応の組合せによって製造してよい。
【0068】
特定の実施態様では、式(I)の化合物は、
a)式(I)の化合物を形成するために酸化剤を用いて式(II)の化合物のメチル基を酸化すること:
【化4】

(この際、Rは、−SR、−ORおよびハロゲンから選択され、RおよびRは、C−Cアルキル、場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−C15アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択され;かつRおよびRは、水素およびC−C−アルキルから独立に選択される)
および所望により、
b)ヒドロキシルアミンまたはO−(C−C)アルキルヒドロキシルアミンの存在下で、式(I)の化合物中のアルデヒド基−CHOを、Rが水素およびC−Cアルキルから選択されたオキシム基−CH=N−ORへと変換すること:
【化5】

:を含む方法によって製造することができる。
【0069】
好ましい実施態様によれば、工程a)における酸化は、当業者に周知の酸化剤の存在下で行われる。最も好適な試薬の選択は、当業者の日常的実験事項である。しかしながら、好ましい実施態様によれば、前記酸化反応は、SeOの存在下で行われる。前記工程a)において用いる溶媒は、限定されるものではないが、ジオキサンであり得る。
【0070】
もう一つの好ましい実施態様によれば、工程b)は、アルコール、例えばエタノールと、ナトリウム塩水溶液、例えば水酸化ナトリウムとの混合物中で行うことができる。
【0071】
さらなる態様において、本発明は、式(I)の化合物の製造のための方法であって、
a)式(II)の化合物を形成するために、化合物 式(III)を式−ORまたは−ORの対応するアルコキシドまたはチオラートのナトリウム塩と反応させること:
【化6】

(この際、
Xは、ハロゲンであり;
は、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
およびRは、C−Cアルキル、場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−C15アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される;
ただし、式(II)中のRがハロゲンである場合には、この工程は省略される);
b)式(I)の化合物を形成するために酸化剤を用いて式(II)の化合物のメチル基を酸化すること;
【化7】

(この際、Rは、工程a)において定義したとおりである);
および所望により、
c)ヒドロキシルアミンまたはO−(C−C)アルキルヒドロキシルアミンの存在下で、式(I)の化合物中のアルデヒド基−CHOを、Rが水素およびC−Cアルキルから選択されたオキシム基−CH=N−ORへと変換すること:
【化8】

(この際、Rは、工程a)において定義したとおりである)
:を含む方法に関する。
【0072】
工程a)において定義した対応するアルコキシドまたはチオラートは、対応するアルコールまたはチオールと好適な無機ナトリウム塩との反応によって生じる。好ましい実施態様では、前記ナトリウム塩は、ナトリウムエトキシド、ナトリウム2−プロパンチオラートまたはナトリウム1−プロパンチオラートである。
【0073】
この方法のもう一つの好ましい実施態様では、工程a)は、溶媒としてのアルコールまたはテトラヒドロフラン中で行われる。
【0074】
式(III)の出発化合物は、当業者に公知の方法によって製造することができる。例えば、Proc. R. Soc. N. S. W. 1938, 71, 462-474に記載の方法に従って、触媒としてのヒドロクロリド酸(hydrochloride acid)の存在下で化合物 キノリン−8−イルアミンをアセト酢酸エチルとまず反応させて2−メチル−[1,10]フェナントロリン−4−オールを形成することによって合成してよい。続いて、J. Med. Chem., 2003, 46, 4463-4476に記載の方法に従って、式(III)の化合物を形成するために、例えばPOClの存在下などで、第一の反応により得たフェナントロリンをハロゲン化反応に供する。
【0075】
以下において、本発明を実施例によりさらに例示する。実施例は、特許請求の範囲において定義する本発明の範囲を限定するものと決して解釈してはならない。
【実施例】
【0076】
本実施例では、次の式(I)化合物について言及する:
【表1】




【0077】
化合物の合成
本発明による式(I)化合物を、以下に詳述する一般的な製法に従って製造した。
【0078】
以下において、表1に詳述する構造を有する化合物4〜10の具体的な合成を記載する。
【0079】
化合物4〜10は、共通の中間体から出発して合成し、その製造方法を以下に記載する。
【0080】
中間体 4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリンの合成
1.2−メチル−[1,10]フェナトロリン−4−オール(2-Methyl-[1,10]phenathrolin-4-ol)の製造
合成手順は、Hazlewood, S. J.; Hughes, G. K.; Lions F., J. Proc. R. Soc. N. S. W. 1938, 71, 462-474から適合させた。
【0081】
【化9】

【0082】
100mL丸底フラスコにおいて8−アミノキノリン(15.00g、104.0mmol)およびアセト酢酸エチル(13.50g、104.0mmol)を触媒量の1N HCI(10滴)の存在下で100℃で24時間攪拌した。この反応混合物を室温に到達させ、トルエン(20mL)を加えた。このトルエンは、後ほどロータリーエバポレーターで除去した。トルエン希釈と溶媒除去からなる同じ工程を少なくとも3回繰り返した。得た薄黒い油性の未精製エナミンをジフェニルエーテル(20mL)に溶かし、これをジフェニルエーテル(100mL)が入った250mL丸底フラスコに連結した滴下漏斗へ移した。このフラスコを加熱還流し、エナミン溶液を15分かけてゆっくりと加え、さらに20分間還流を維持した。この反応混合物を室温に冷却し、生成した結晶結晶性物質を濾過し、エチルエーテルで洗浄し、乾燥させた。淡褐色の固体(10.20g、47%収率)を得た。
【0083】
2.4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリンの製造
合成手順は、Harrison R. J.; Cuesta J.; Chessari, G.; Read M. A.; Basra, S. K.; Reszka, A. P.; Morrell, J.; Gowan, S. M.; Incles, C. M.; Tanious, F. A.; Wilson, W. D.; Kelland, L. R.; Neidle, S., J. Med. Chem. 2003, 46, 4463-4476から適合させた。
【0084】
【化10】

【0085】
2−メチル−[1,10]フェナトロリン−4−オール(10.20g、48.5mmol)が入った、還流冷却器を装着した500mL丸底フラスコにオキシ塩化リン(200mL)をゆっくりと加え、混合物を3時間還流した。この反応フラスコを室温に冷却し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。得た固体を塩化メチレン(200mL)および飽和NaHCO(200mL)で処理し、これを分液漏斗へ移した。水層を塩化メチレン(200mL)でさらに抽出し、合わせた有機層をブライン(200mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。得た残渣をエチルエーテル(100mL)で処理し、濾過し、乾燥させ、淡褐色の固体(9.00g)を得た。母液から淡黄色の固体として2回目の収穫0.60gの物質を得、全収量は9.60g(87%収率)であった。
【0086】
実施例1:4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム(化合物4)の製造
1.2−メチル−4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリンの合成
【化11】

【0087】
固体ナトリウムメタンチオラート(3.30g、47.7mmol)をメタノール(50mL)中の4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリン(事前に得た中間体)(2.10g、9.4mmol)溶液が入った100mL丸底フラスコへ加えた。この反応混合物を18時間還流し、後ほど室温に冷却した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣を塩化メチレン(methylene choride)(100mL)および飽和NaHCO(100mL)で処理し、これを分液漏斗へ移した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空濃縮した。この固体残渣をエチルエーテルで処理し、濾過し、乾燥させ、1.90gの淡褐色の固体(84%)を得た。
【0088】
2.4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドの合成
【化12】

【0089】
ジオキサン(100mL)と水(4mL)の混合物中のSeO(2.18g、19.6mmol)溶液を2ツ口250mL丸底フラスコにおいて加熱還流した。高温ジオキサン(100mL)中の2−メチル−4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン(1.89g、7.90mmol)溶液を、滴下漏斗を通じて1時間かけて加え、反応混合物をさらに45分間還流した。この反応混合物を熱しながら濾過し、残渣をより高温のジオキサン(20mL)ですすぎ、濾過した。この濾液を真空濃縮し、得た残渣を高温水に再度溶かし、脱色炭を加えて攪拌し、濾過した。この濾液を室温に到達させ、白色の固体が沈殿するまで飽和NaHCOを用いて塩基性化し、そしてそれを濾過し、冷水で洗浄し、真空乾燥させた。白色の固体(0.80g、41%収率)を得た。
【0090】
3.4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシムの合成
【化13】

【0091】
エタノール(3.2mL)中の4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド(228.0mg、1.1mmol)溶液が入った25mL丸底フラスコに水(5.0mL)中の塩酸ヒドロキシルアミン(707.0mg、10.2mmol)溶液を加え、続いて、沈殿物が生じるまで10%NaOHを加えた。この反応混合物を90°に約30分間加熱し、室温に冷却し、白色の沈殿物を濾過し、冷水で洗浄し、乾燥させた。白色の固体(240.0mg、100%)を得た。
【0092】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz):
11.95 (s, 1H); 9.12 (dd, 1H, J= 1.6, 4.2 Hz); 8.50 (dd, 1H, J= 1.6, 8.1 Hz); 8.33 (s, 1H); 8.06 (AB system, 2H, SAB= 9.1 Hz); 7.92 (s, 1H); 7.78 (dd, 1H, J= 4.2, 8.1 Hz); 2.72 (s, 3H)
【0093】
13C NMR (DMSO-d6, 100MHz):
151.2; 150.3; 149.1; 148.5; 145.1; 144.2; 136.2; 128.4; 127.1; 125.3; 123.5; 121.1, 121.0; 112.5; 13.4
【0094】
実施例2:4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム(化合物5)の合成
1.2−メチル−4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリンの合成
【化14】

【0095】
固体ナトリウム1−プロパンチオラート(2.35g、24.0mmol)をメタノール(50mL)中の4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリン(1.10g、4.8mmol)溶液が入った100mL丸底フラスコへ加えた。この反応混合物を18時間還流し、室温に到達させた。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣を塩化メチレン(methylene choride)(100mL)および飽和NaHCO(100mL)で処理し、これを分液漏斗へ移した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空濃縮した。この固体残渣をエチルエーテルで処理し、濾過し、乾燥させ、0.98gの暗橙色の固体(76%)を得た。
【0096】
2.4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドの合成
【化15】

【0097】
ジオキサン(50mL)と水(2mL)の混合物中のSeO(0.98g、8.8mmol)溶液を2ツ口250mL丸底フラスコにおいて加熱還流した。高温ジオキサン(50mL)中の2−メチル−4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン(0.95g、3.5mmol)溶液を、滴下漏斗を通じて30分かけて加え、反応混合物をさらに1時間還流した。この反応混合物を熱しながら濾過し、残渣をより高温のジオキサン(20mL)ですすぎ、濾過した。この濾液を合わせ、真空蒸発させ、残渣を塩化メチレン(100mL)および10%KCO水溶液(100mL)で処理した。水層を塩化メチレン(3×100mL)で数回抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(中性Al、MeOH/DCM、1:50〜1:15)により精製し、褐色の固体(0.27g、27%)として純粋な生成物を得た。
【0098】
3.4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシムの合成
【化16】

【0099】
化合物5を得るための最終工程は、化合物4の合成に記載した同じ方法により行う。
【0100】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz):
11.96 (s, 1H); 9.11 (dd, 1H, J= 1.6, 4.0 Hz); 8.49 (dd, 1H, J= 1.6, 8.0 Hz); 8.33 (s, 1H); 8.10 (d, 1H, J= 9.2 Hz); 8.03 (d, 1H, J= 9.2 Hz); 7.96 (s, 1H); 7.78 (dd, 1H, J= 4.0, 8.0 Hz); 3.23 (t, 2H, J=7.2 Hz); 1.79 (m, 2H); 1.08 (t, 3H, J= 7.2 Hz)
【0101】
13C NMR (DMSO-d6, 100MHz):
151.09; 150.29; 149.14; 147.45; 145.17; 144.54; 136.20; 128.42; 127.09; 125.59; 123.50; 121.25; 113.31; 32.19; 21.00; 13.28
【0102】
実施例3:4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム(化合物6)の製造
1.2−メチル−4−エトキシ−[1,10]フェナントロリンの合成
【化17】

【0103】
固体ナトリウムエトキシド(2.97g、48.0mmol)をエタノール(50mL)中の4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリン(1.10g、4.8mmol)溶液が入った100mL丸底フラスコへ加えた。この反応混合物を18時間還流した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣を塩化メチレン(methylene choride)(100mL)および飽和NaHCO(100mL)で処理し、これを分液漏斗へ移した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空濃縮した。この固体残渣をエチルエーテルで処理し、濾過し、乾燥させ、0.89gの褐色の固体(78%)を得た。
【0104】
2.4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドの合成
【化18】

【0105】
ジオキサン(50mL)と水(2mL)の混合物中のSeO(1.01g、9.1mmol)溶液を2ツ口250mL丸底フラスコにおいて加熱還流した。高温ジオキサン(50mL)中の2−メチル−4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン(0.87g、3.6mmol)溶液を、滴下漏斗を通じて30分かけて加え、反応混合物を1時間還流した。この反応混合物を熱しながら濾過し、残渣をより高温のジオキサン(20mL)ですすぎ、濾過した。この濾液を合わせ、真空濃縮し、残渣を塩化メチレン(100mL)および10%KCO水溶液(100mL)で処理した。水層を塩化メチレン(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、MeOH/DCM、1:30〜1:15)により精製し、淡褐色の固体(0.15g、16%)として純粋な生成物を得た。
【0106】
3.4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシムの合成
【化19】

【0107】
化合物6を得るための最終工程は、化合物4の合成に記載した同じ方法により行う。
【0108】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz):
11.85 (s, 1H); 9.10 (dd, 1H, J= 1.6, 4.0 Hz); 8.48 (dd, 1H, J= 1.6, 8.0 Hz); 8.32 (s, 1H); 8.17 (d, 1H, J= 9.2 Hz); 7.96 (d, 1H, J= 9.2 Hz); 7.76 (dd, 1H, J= 4.0, 8.0 Hz); 7.57 (s, 1H); 4.39 (q, 2H, J= 6.8 Hz); 1.52 (t, 3H, J= 6.8 Hz)
【0109】
13C NMR (DMSO-d6, 100MHz):
160.85; 153.28; 149.96; 149.61; 146.06; 144.96; 136.15; 128.61; 126.05; 123.27; 120.27; 119.57; 99.11; 64.34; 14.22
【0110】
実施例4:4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム(化合物7)の製造
1.2−メチル−4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリンの合成
【化20】

【0111】
固体ナトリウム2−プロパンチオラート(2.35g、24.0mmol)をメタノール(50mL)中の4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリン(1.10g、4.8mmol)溶液が入った100mL丸底フラスコへ加えた。この反応混合物を18時間還流した。溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、残渣を塩化メチレン(methylene choride)(100mL)および飽和NaHCO(100mL)で処理し、これを分液漏斗へ移した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空濃縮した。この残渣をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、MeOH/DCM、1:80)により精製し、黄色の油(1.03g、80%)として純粋な生成物を得た。
【0112】
2.4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドの合成
【化21】

【0113】
ジオキサン(50mL)と水(2mL)の混合物中のSeO(1.06g、9.6mmol)溶液を2ツ口250mL丸底フラスコにおいて加熱還流した。高温ジオキサン(50mL)中の2−メチル−4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン(1.03g、3.8mmol)溶液を、滴下漏斗を通じて30分かけて加え、反応混合物を1時間還流した。この反応混合物を熱しながら濾過し、残渣をより高温のジオキサン(20mL)ですすぎ、濾過した。この濾液を合わせ、真空濃縮し、残渣を塩化メチレン(100mL)および10%KCO水溶液(100mL)で処理した。水層を塩化メチレン(3×100mL)で数回抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(中性Al、MeOH/DCM、1:50〜1:15)により精製し、淡黄色の固体(0.44g、41%)として純粋な生成物を得た。
【0114】
3.4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシムの合成
化合物7を得るための最終工程は、化合物4の合成に記載した同じ方法により行う。
【化22】

【0115】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz):
11.98 (s, 1H); 9.12 (dd, 1H, J= 1.6, 4.0 Hz); 8.51 (dd, 1H, J= 1.6, 8.0 Hz); 8.35 (s, 1H); 8.12 (d, 1H, J= 9.2 Hz); 8.04 (d, 1H, J= 9.2 Hz); 8.03 (s, 1H); 7.79 (dd, 1H, J= 4.0, 8.0 Hz, 1H); 3.89 (m, 1H); 1.46(d, 6H, J= 6.4 Hz)
【0116】
13C NMR (DMSO-d6, 100MHz):
151.12; 150.28; 149.13; 146.52; 145.18; 144.81; 136.19; 128.43; 127.11; 125.97; 123.52; 121.44; 114.84; 35.40; 22.27
【0117】
実施例5:4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム(化合物8)の製造
1.4−(2−メトキシ−エトキシ)−2−メチル−[1,10]フェナントロリンの合成
【化23】

【0118】
THF(30mL)中の水素化ナトリウム(鉱油中60%、1.75g、43.7mmol)懸濁液に無水THF(10mL)中の2−メトキシエタノール(3.30g、43.7mmol)溶液をゆっくりと加えた。この混合物を室温で20分間攪拌し、無水THF(20mL)中の4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリン(2.00g、8.8mmol)溶液を加えた。この反応混合物を18時間還流し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。この残渣を塩化メチレン(methylene choride)(100mL)および飽和NaHCO(100mL)で処理し、これを分液漏斗へ移した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空濃縮した。この残渣をヘキサンで洗浄し、フラッシュクロマトグラフィー(SiO、MeOH/DCM、1:30)により精製し、淡黄色の固体(1.17g、50%)として純粋な生成物を得た。
【0119】
2.4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドの合成
【化24】

【0120】
ジオキサン(50mL)と水(2mL)の混合物中のSeO(1.19g、10.8mmol)溶液を2ツ口250mL丸底フラスコにおいて加熱還流した。高温ジオキサン(30mL)中の4−(2−メトキシ−エトキシ)−2−メチル−[1,10]フェナントロリン(1.16g、4.3mmol)溶液を、滴下漏斗を通じて10分かけて加え、反応混合物を30分間還流した。溶媒を真空蒸発させ、残渣を塩化メチレン(200mL)および飽和NaHCO(200mL)で処理した。水層を塩化メチレン(3×100mL)で数回抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、蒸発させた。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、MeOH/DCM、1:40〜1:20)により精製し、浅色の固体(0.65g、53%)として純粋な生成物を得た。
【0121】
3.4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシムの合成
【化25】

【0122】
化合物8を得るための最終工程は、化合物4の合成に記載した同じ方法により行う。
【0123】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz):
11.94 (s, 1H); 9.06 (dd, 1H, J= 1.6, 4.0 Hz); 8.46 (dd, 1H, J= 1.2, 8.0 Hz); 8.35 (s, 1H); 8.13 (d, 1H, J= 8.8 Hz); 7.95 (d, 1H, J= 8.8 Hz); 7.75 (dd, 1H, J= 4.4, 8.0 Hz); 7.57 (s, 1H); 4.43 (t, 2H, J= 4.4 Hz); 3.83 (t, 2H, J= 4.4 Hz); 3.36 (s, 3H)
【0124】
13C NMR (DMSO-d6, 100MHz):
161.3; 153.5; 150.3; 150.0; 146.1; 145.0; 136.6; 128.9; 126.4; 123.7; 120.5; 119.9; 99.7; 70.2; 68.4; 58.6
【0125】
実施例6:4−(2−アミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム(化合物9)の製造
1.[2−(2−メチル−[1,10]フェナントロリン−4−イルオキシ)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
【化26】

【0126】
THF(15mL)中の水素化ナトリウム(鉱油中60%、0.87g、21.8mmol)懸濁液に無水THF(5mL)中のN−Boc−2−ヒドロキシエチルアミン(1.75g、21.8mmol)溶液をゆっくりと加えた。この混合物を室温で20分間攪拌し、無水THF(20mL)中の4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリン(1.00g、4.4mmol)溶液をゆっくりと加えた。この反応混合物を18時間還流し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。この残渣を塩化メチレン(methylene choride)(100mL)および飽和NaHCO(100mL)で処理し、これを分液漏斗へ移した。有機層をブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空濃縮した。この残渣をヘキサンで洗浄し、フラッシュクロマトグラフィー(SiO、MeOH/DCM、1:40)により精製し、浅色の固体(0.72g、46%)として純粋な生成物を得た。
【0127】
2.[2−(2−ホルミル−[1,10]フェナントロリン−4−イルオキシ)−エチル]カルバミン酸tert−ブチルエステルの合成
【化27】

【0128】
ジオキサン(25mL)と水(2mL)の混合物中のSeO(0.56g、5.1mmol)溶液を2ツ口100mL丸底フラスコにおいて加熱還流した。高温ジオキサン(20mL)中の[2−(2−メチル−[1,10]フェナントロリン−4−イルオキシ)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.72g、2.0mmol)溶液を、滴下漏斗を通じて15分かけて加え、反応混合物を45分間還流した。溶媒を真空蒸発させ、残渣を塩化メチレン(100mL)および飽和NaHCO(100mL)で処理した。水層を塩化メチレン(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。黄色の固体(0.52g、69%)として粗生成物を得た。この粗生成物は十分に純粋であり、追加の精製を行わずに後続の合成工程に用いることができる。
【0129】
3.4−(2−アミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシムの合成
【化28】

【0130】
[2−(2−ホルミル−[1,10]フェナントロリン−4−イルオキシ)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.52g、1.4mmol)溶液をトリフルオロ酢酸(5mL)と塩化メチレン(10mL)の混合物中に入れて室温で1時間攪拌した。溶媒を除去し、残渣を乾燥させ、エタノール(5mL)に再度溶かした。水(7mL)中の塩酸ヒドロキシルアミン(0.88g、12.7mmol)溶液を加え、続いて、白色の沈殿物が生じるまで10%NaOHを加えた。この混合物を1時間加熱還流し、室温に冷却し、白色の沈殿物を濾過し、冷水で洗浄し、乾燥させた。浅色の固体(37.0mg、9%)として標題の化合物を単離した。
【0131】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz):
12.13 (s, 1H); 9.09 (dd, 1H, J= 1.2 Hz, J= 4.0 Hz); 8.50 (dd, 1H, J= 1.2 Hz, J= 8.0 Hz); 8.40 (m, 2H); 7.97 (d, 1H, J= 8.8 Hz); 7.81 (dd, 1H, J= 4.0 Hz, J= 8.0 Hz); 7.26 (s, 1H); 3.73 (d, 2H, J= 9.2 Hz); 3.52 (d, 2H, J= 9.2 Hz)
【0132】
13C NMR (DMSO-d6, 100MHz):
152.72, 150.00, 146.82, 136.29, 128.51, 124.69, 124.00, 120.02, 116.91, 104.21, 96.79, 58.68, 45.62
【0133】
実施例7:4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム(化合物10)の製造
1.ジエチル−[2−(2−メチル−[1,10]フェナントロリン−4−イルオキシ)−エチル]アミンの合成
【化29】

【0134】
無水THF(90mL)中の水素化ナトリウム(鉱油中60%、5.25g、131.1mmol)懸濁液に無水THF(60mL)中のN,N−ジエチル−2−ヒドロキシエチルアミン(15.30g、131.1mmol)溶液をゆっくりと加えた。この混合物を室温で20分間攪拌し、無水THF(90mL)中の4−クロロ−2−メチル−[1,10]フェナントロリン(6.00g、26.2mmol)溶液をゆっくりと加えた。この反応混合物を18時間還流した後、室温に冷却し、1N HClでクエンチし、蒸発させた。この残渣を1N NaOH(150mL)に再度溶かし、塩化メチレン(methylene choride)(3×200mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空濃縮した。この残渣をヘキサンで洗浄し、フラッシュクロマトグラフィー(SiO、MeOH/DCM、1:40)により精製し、橙色の油(5.1g、63%)として純粋な生成物を得た。
【0135】
2.4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドの合成
【化30】

【0136】
ジオキサン(38mL)と水(3mL)の混合物中のSeO(0.83g、7.5mmol)溶液を2ツ口100mL丸底フラスコにおいて加熱還流した。高温ジオキサン(20mL)中のジエチル−[2−(2−メチル−[1,10]フェナントロリン−4−イルオキシ)−エチル]アミン(0.93g、3.0mmol)溶液を、滴下漏斗を通じて15分かけて加え、反応混合物を45分間還流した。溶媒を真空蒸発させ、残渣を塩化メチレン(100mL)および飽和NaHCO(100mL)で処理した。水層を塩化メチレン(3×100mL)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。この粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(SiO、MeOH/DCM、1:40)により精製し、褐色の固体(0.19g、19%)として純物質を得た。
【0137】
3.4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシムの合成
【化31】

【0138】
化合物10を得るための最終工程は、化合物4の合成に記載した同じ方法により行う。
【0139】
1H NMR (DMSO-d6, 400MHz):
11.85 (s, 1H); 9.09 (dd, 1H, J= 2.0, 4.4 Hz); 8.46 (dd, 1H, J= 1.0, 8.0 Hz); 8.31 (s, 1H); 8.13 (d, 1H, J= 8.8 Hz); 7.96 (d, 1H, J= 8.8 Hz); 7.92 (s, 1H); 7.75 (dd, 1H, J= 4.4, 8.0 Hz); 4.36 (t, 2H, J= 5.6 Hz); 2.96 (t, 2H, J= 5.6 Hz); 2.60 (q, 4H, 7.2 Hz); 1.01 (t, 6H, d= 7.2 Hz)
【0140】
13C NMR (DMSO-d6, 100MHz):
161.0; 153.3; 150.0; 149.6; 146.1; 145.0; 136.2; 128.6; 126.1; 123.3; 120.3; 119.5; 99.3; 67.5; 50.8; 47.1; 12.0
【0141】
生物学
実施例8
毒性
SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞において、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性放出の定量により、アッセイ化合物についての細胞生存に対する潜在的影響をアッセイする。SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞を96ウェル培養プレートに10細胞/ウェルで播種する。その後、この培地を取り出し、細胞を異なる濃度の化合物とともに24時間インキュベートする。化合物は、化合物が毒性を有する最小濃度を見つけるために、新しい培養培地で、1μMから出発する漸増濃度で、最大で1mMまで試験する。24時間後に、培地を除去し、ウェルの底に付着した細胞を、50μlのKrebs−Hepes;Triton X−100 1%を加えることにより室温で5分間溶解する。LDH放出定量には、Roche社製細胞傷害性検出キット(カタログ番号11 644 793 001)を使用する。LDH活性は、492nmと参照波長620nmにおけるその吸光度により測定する。
【0142】
表1では、各化合物について、毒性を試験した最大濃度を第2列目に示している。第3列目には、この最大濃度において化合物が毒性を有していたか否かを示している。化合物3を除いて、総ての化合物は、活性が認められた濃度において、大半のケースでは1000倍濃度においてさえも毒性を生じなかった。よって、これらの化合物は毒性がないと考えてよい。
【0143】
【表2】

【0144】
実施例9
過酸化水素による細胞死からの保護
このアッセイの目的は、細胞に極めて有害であり、蓄積することによって細胞内標的例えばDNA、タンパク質、および脂質の酸化が起こり、突然変異誘発および細胞死へとつながる、過酸化水素による酸化的ストレスにヒト神経芽腫細胞を暴露して、式(I)の化合物の神経保護効果を判定することである。
【0145】
SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞を96ウェル培養プレートに10細胞/ウェルの密度で播種する。H 100μMでの24時間の処理の1時間前に異なる濃度の化合物に細胞を暴露する。5mM N−アセチルシステイン(NAC)(既知抗酸化剤)を陽性対照として用い、Hでの処理の1時間前にプレインキュベートした。24時間後に、培地を除去し、ウェルの底に付着した細胞を、50μlのKrebs−Hepes中Triton X−100 1%を加えることにより室温で5分間溶解する。LDH放出定量には、Roche社製細胞傷害性検出キット(カタログ番号11 644 793 001)を使用した。
【0146】
からの保護を判定する化合物1−10の最小濃度を表2に示している。
【0147】
【表3】

【0148】
6−OHDAによる細胞死からの保護
この実験の目的は、式(I)の化合物についての、6−OHDAによってもたらされる毒性からの保護効果を判定することである。この毒素は、パーキンソン病において起こるような、ドーパミンニューロンを破壊する細胞死を引き起こす("MPTP and 6-hydroxydopamine-induced neurodegeneration as models for Parkinson's disease: neuroprotective strategies"; Grunblatt E, et al.; J Neurol. 2000 Apr; 247 Suppl 2:1195-102)。
【0149】
この実験の2〜3日前に、SH−SY5Yヒト神経芽腫細胞を96ウェル培養プレートに10細胞/ウェルの密度で播種する。6−OHDAでの処理に細胞を暴露し、最後に、LDH定量により細胞死を測定する。陽性対照として我々はNACを用いた。
【0150】
このアッセイは2つの異なる実験条件で行う:
【0151】
実施例10
A)6−OHDA 75μMでの16時間の処理の前にNACおよび式(I)の化合物を2時間プレインキュベートする。このアッセイは10%胎児ウシ血清を含む培地で行う。
【0152】
6−OHDAによる細胞死からの神経保護の結果を表3に示している。各化合物についての、神経保護効果を示す式(I)の化合物の最小濃度
【0153】
【表4】

【0154】
実施例11
B)6−OHDA 50μMでの24時間の処理の前にNACおよび式(I)の化合物を1時間プレインキュベートする。このアッセイはウシ胎児血清を含まない培地で行う。
【0155】
6−OHDAによる細胞死からの神経保護の結果を表4に示している。各化合物についての、神経保護効果を示す式(I)の化合物の最小濃度
【0156】
【表5】

【0157】
実施例12
Aβ毒性からの神経保護
化合物の潜在的神経保護を評価するために、96ウェルプレートで培養したSH−SY5Y細胞を化合物で異なる濃度において1時間前処理した後、200μM Aβ25−35(Neosystem)に24時間暴露し、大きな酸化的ストレスおよび細胞死を誘発した。その後、化合物についてのこの毒性からの保護能力を、比色LDHアッセイを用いて細胞内LDHを測定することにより評価する。
【0158】
Aβの神経毒活性がアミノ酸25−35内に存在することは広く認められている(例えばYankner BA et al., (1990) Neurotrophic and neurotoxic effects of amyloid β protein: reversal by tachykinin neuropeptides; Science 250: 279-282参照)。
【0159】
表5では、試験化合物がAβ2535毒性からの神経保護を示した最小濃度を示している。
【0160】
【表6】

【0161】
実施例13
Aβ(1−40)分泌の阻害
Aβ分泌を定量するために、ELISAに基づく方法を用いた。このアッセイは、「サンドイッチ錯体」を形成する2つの異なるエピトープにおける選択的モノクローナル抗Aβ−抗体により抗原を検出することにあり、そしてそれはサンプル中のペプチド量に正比例する基質または色素原、TMB、の有色生成物への変換を触媒するペルオキシダーゼとコンジュゲートした二次抗体の結合による比色分析手段により検出される。Aβ産生は、ELISAにより比色分析用の市販のキット:イムノアッセイキットヒトβアミロイド1−40(Biosource)を用いて分析されている。
【0162】
細胞上清からAβ(1−40)を定量した。実験にはAPPトランスフェクト細胞系統を使用した:CHO7W(ヒトAPP751 wt cDNAで安定にトランスフェクトしたもの)。2%ウシ胎児血清、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、1%L−グルタミンおよび200μg/ml G418を補給したDMEMからなる培養培地で細胞を増殖させた。細胞を96ウェル培養マイクロプレートに5000細胞/ウェルで播種し、播種の24時間後に異なる化合物での異なる濃度においての処理を行う。
【0163】
総てのAβ分泌研究においてAβ分泌減少陽性対照としてBACE阻害剤であるOM99−2(H−5108、Bachem)を用いた。この化合物で3μM濃度において細胞を処理し、24時間の時点で培養培地を集めた。この濃度においてOM99−2は20〜60%間のAβ放出阻害率を示す。
【0164】
表6では、各試験化合物について、化合物がβ−アミロイド阻害を阻害する(inhibits beta-amyloid inhibition)最小濃度を示している。
【0165】
【表7】

【0166】
実施例14
スクリーニング 薬物動態研究
この研究の目的は、経口および静脈内投与後の経口バイオアベイラビリティと血漿および脳薬物動態パラメーターを評価し、その結果、式(I)の化合物が血液脳関門(BBB)を通過することができるかどうかを判定することである。血漿および脳中の式(I)化合物レベルを測定するために、マウス(C57BL6/J、8週齢の雄)に異なる化合物の1種類の静脈内投与(1mg/kg)と2種類の経口投与(20mg/kgおよび200mg/kg)により投薬した。各化合物を適当な賦形剤に溶かした。経口投与の場合には、化合物を、シリンジに連結する経口胃管栄養法により投与した。静脈内投与の動物では、試験品目を、30G注射針を取り付けたシリンジを用いて1回の注射により投与した。
【0167】
各選択抽出時間(すなわち投与の30分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後および24時間後)に2匹の動物を(国内SOPによってかつ動物の取り扱いと福祉のガイドラインに従って)犠牲にし、各動物から、脳および血液サンプルの両方を得た。血漿は血液サンプルの遠心分離により抽出した。各サンプル時間はサンプルを得た2匹の雄マウスに相当する。
【0168】
血漿および脳サンプルの分析方法には、タンパク質沈殿または固相抽出その後のLC−MS/MSを用いた分析による生物学的マトリックスからの検体の単離が含まれた。これらの化合物の定量限界はほぼ2−10ng/mL程度であった。薬物動態パラメーターの計算にはソフトウェアWinnonlin professionalバージョン5.2を使用した。
【0169】
結果
次の表において、略語は以下に示す意味を有する:
AUC=曲線下面積
1/2=半減期
max=薬物投与から最大血漿中濃度に達するまでの時間;吸収速度が消失速度に等しい時点
max=薬物の最大血漿中濃度
V. Adm.およびVol. Adm.=投与容量
【0170】
1.1−2mg/kg 静脈内経路群
【表8】

【0171】
【表9】

【0172】
2.20mg/kg 経口経路群
【表10】

【0173】
【表11】

【0174】
3.200mg/kg 経口経路群
【表12】

【0175】
【表13】

【0176】
結論
上記表(7−12)に示した結果に関して、試験した式(I)化合物は総て、脳内で検出されるため、血液脳関門を通過することができる。経口バイオアベイラビリティは、低用量では7〜10%の範囲であり、高濃度では著しく増加する。
【0177】
実施例15
一部の式(I)の化合物についてのFe(II)とのキレート化能力の評価
キレート配位子である化合物4、化合物7、化合物8および化合物10の存在下で行ったアッセイにより、各配位子と鉄の混合物の場合に得られるスペクトルがそれぞれの個別スペクトルの合計とは異なるため、これらの配位子はFe(II)を錯化することができるということが示された(図2、図3、図4および図5参照)。
【0178】
実施例16
a)一部の式(I)の化合物についてのFe(III)とのキレート化能力の評価
Fe(III)の存在下で行ったアッセイにより、Fe(III)の存在下で配位子の吸光度スペクトルにおける変化が認められないため、式(I)の化合物はいずれもこの金属を錯化することができないということが示された;化合物4、7、8および10について図1に示されるとおりである。スペクトルが重なり合っているため、1本の線しか認められない(図1参照)。
【0179】
b)一部の式(I)の化合物についてのCu(II)とのキレート化能力の評価
キレート配位子である化合物4、化合物7および化合物8の存在下で行ったアッセイにより、各配位子と銅の混合物の場合に得られるスペクトルはそれぞれの個別スペクトルの合計と一致するため、これらの配位子はいずれもCu(II)を錯化することができないということが示された(図6および図7参照)。
【0180】
c)一部の式(I)の化合物についてのZn(II)とのキレート化能力の評価
化合物4、7、8および10は総て、Zn(II)とある程度錯化したが、生成定数が相対的に低く、解離度が相対的に高いため、これらの錯体があまり安定していないことが分かる(図8、図9、図10および図11参照)。
【0181】
結果の概要
金属イオンとクェラトンス(quelatns)との錯体形成では、生成定数が高く、解離度が低いほど、錯体が安定している。そのため、式(I)の化合物は、残りの試験金属イオンと比較してFe(II)に対して高い親和性を有するということが認められ得る。
【0182】
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】Fe(III)の不在下および存在下での化合物4、7、8および10の吸光度スペクトルである。PBS 10mM、pH7.4.配位子およびFe(III)の濃度、200μM.
【図2】錯体 Fe(II)−化合物4の吸光度スペクトルである。Fe(II)および化合物4の濃度、200μM、PBS 10mM、pH8.
【図3】錯体 Fe(II)−化合物7の吸光度スペクトルである。Fe(II)および化合物7の濃度、400μM、PBS 10mM、pH8.
【図4】錯体 Fe(II)−化合物8の吸光度スペクトルである。Fe(II)および化合物8の濃度、200μM、PBS 10mM、pH7.4.
【図5】錯体 Fe(II)−化合物10の吸光度スペクトルである。Fe(II)および化合物10の濃度、100μM、PBS 10mM、pH7.4.
【図6】Cu(II)と各クエレーティング配位子(the quelating ligands)(化合物4、化合物7、化合物8)との混合物の吸光度スペクトルを示す図である。Cu(II)および全化合物の濃度 200μM、PBS 10mM、pH7.4.
【図7】錯体 Cu(II)−化合物10の吸光度スペクトルである。濃度 200μM、PBS 10mM、pH7.4.
【図8】錯体 Zn(II)−化合物4の吸光度スペクトルを示す図である。濃度 200μM、PBS 10mM、pH7.4.
【図9】錯体 Zn(II)−化合物7の吸光度スペクトルを示す図である。濃度 180μM、PBS 10mM、pH7.4.
【図10】錯体 Zn(II)−化合物8の吸光度スペクトルを示す図である。濃度 100μM、PBS 10mM、pH7.4.
【図11】錯体 Zn(II)−化合物10の吸光度スペクトルを示す図である。濃度 20μM、PBS 10mM、pH7.4.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性または血液の疾患または状態の治療または予防のための医薬の製造における、式(I):
【化1】

(式中、Rは、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
は、−CH=N−ORまたは−CHOから選択され;
およびRは、C−Cアルキル、場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−C15アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択され、
およびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択され、
は、水素およびC−Cアルキルから選択される)
の化合物、あるいはそれらの任意の塩または溶媒和物または立体異性体または互変異性体の使用。
【請求項2】
が、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
が、−CH=N−ORまたは−CHOから選択され;
およびRが、独立に、場合によってC−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−Cアルキルであり、
およびRが、水素およびC−Cアルキルから独立に選択され、
が、水素およびC−Cアルキルから選択される式(I)の化合物の、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、ハンチントン病、脳損傷、例えば卒中および虚血、多発性硬化症、癲癇、フリートライヒ運動失調、海綿状脳症、アミロイドーシス、血管認知症、タウオファティイズ (tauophaties)、進行性核上麻痺、前頭側頭葉変性症、亜急性硬化性全脳炎性パーキンソン症候群、脳炎後パーキンソン症候群、拳闘家脳炎(pugilistic encephalitis)、グアム島パーキンソン症候群−認知症複合、ピック病、大脳皮質基底核変性症、前頭側頭型認知症、エイズ関連認知症、多発性硬化症、気分障害例えば鬱病、統合失調症および双極性障害、脳卒中後の機能回復促進ならびに脳損傷、とりわけ外傷性脳損傷から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記血液疾患が、サラセミア、貧血、再生不良性貧血、ダイヤモンド・ブラックファン貧血、鎌形赤血球症、定期的な赤血球輸血を必要とする血液障害、骨髄異形成症候群、鉄誘発性心機能障害、鉄誘発性心不全および糖尿病から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
前記血液疾患がサラセミア、貧血、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群および糖尿病から選択される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
式(I)の化合物が、次の化合物:
4−メトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−クロロ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−クロロ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−アミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−メトキシ−エチルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
2−[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−N,N−ジメチル−アセトアミド;
4−(2,2,2−トリフルオロ−エチルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−酢酸メチルエステル;
4−(チアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−酢酸;
4−(5−メチル−チアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(5−メチル−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−([1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
あるいはそれらの塩、溶媒和物または立体異性体または互変異性体から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
請求項3〜6に記載の神経変性または血液の疾患または状態を治療または予防する方法であって、かかる治療を必要とする患者に治療上有効な量の、請求項1〜7に記載の少なくとも1種の式(I)化合物、あるいはそれらの塩、溶媒和物、立体異性体もしくは互変異性体、またはそれらの医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項9】
式(I):
【化2】

(式中、
は、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
は、−CH=N−ORまたは−CHOから選択され;
およびRは、C−Cアルキル、場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−C15アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択され、
およびRは、水素およびC−Cアルキルから独立に選択され、
は、水素およびC−Cアルキルから選択され、
ただし、RがClである場合には、Rは−CHOではない)
の化合物、あるいはそれらの任意の塩または溶媒和物または立体異性体。
【請求項10】
が、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
が、−CH=N−ORまたは−CHOから選択され;
およびRは、独立に、場合によってC−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−Cアルキルであり、
およびRが、水素およびC−Cアルキルから独立に選択され、
が、水素およびC−Cアルキルから選択される(ただし、RがClまたはOCHである場合には、Rは−CHOまたは−CH=N−OHではない)、
請求項9に記載の式(I)の化合物、あるいはそれらの任意の塩または溶媒和物または立体異性体。
【請求項11】
が−CH=N−ORである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項12】
が水素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が−S−Rである、請求項9〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
がメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピルから選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が−O−Rである、請求項9に記載の化合物。
【請求項16】
がメチルおよびエチルから選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
が、−NRまたはメトキシで置換されているエチルであり、RおよびRが、水素およびC−Cアルキルから独立に選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記アミンが第1級または第3級アミンである、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記第3級アミンがジエチルアミンである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記オキシム基−CH=NORの二重結合がE配座を示す、請求項11に記載の化合物。
【請求項21】
がクロロである、請求項9、10および20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
が、ヘテロアリール基が場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている−S−ヘテロアリールである、請求項13に記載の化合物。
【請求項23】
前記ヘテロアリール基がC−Cアルキルで置換されている、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
が、−(C=O)NRまたは−(C=O)ORで置換されているC−Cアルキル基である、請求項9に記載の化合物。
【請求項25】
式(I)の化合物が、
4−メトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−アミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(2−メトキシ−エチルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
2−[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−N,N−ジメチル−アセトアミド;
4−(2,2,2−トリフルオロ−エチルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−酢酸メチルエステル;
4−(チアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
[2−(ヒドロキシイミノ−メチル)−[1,10]フェナントロリン−4−イルスルファニル]−酢酸;
4−(5−メチル−チアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−(5−メチル−[1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−([1,3,4]チアジアゾール−2−イルスルファニル)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−メチルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−プロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒドオキシム;
4−エトキシ−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−イソプロピルスルファニル−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−(2−メトキシ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
4−(2−ジエチルアミノ−エトキシ)−[1,10]フェナントロリン−2−カルバルデヒド;
あるいはそれらの塩、溶媒和物、立体異性体または互変異性体から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項26】
医薬として用いるための、請求項9〜25のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、それらの塩または溶媒和物、立体異性体または互変異性体。
【請求項27】
請求項9〜25のいずれか一項に記載の少なくとも1種の式(I)化合物、それらの塩または溶媒和物または互変異性体と、少なくとも1種の薬学上許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項28】
請求項10〜21のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の製造のための方法であって、
a)式(I)の化合物を形成するために酸化剤を用いて式(II)の化合物のメチル基を酸化する工程:
【化3】

(この際、Rは、−SR,−ORおよびハロゲンから選択され、RおよびRは、C−Cアルキル、場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−C15アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択され;かつRおよびRは、水素およびC−C−アルキルから独立に選択される)
および所望により、
b)ヒドロキシルアミンまたはO−(C−C)アルキルヒドロキシルアミンの存在下で、式(I)の化合物中のアルデヒド基−CHOを、Rが水素およびC−Cアルキルから選択されたオキシム基−CH=N−ORへと変換する工程:
【化4】

:を含む、方法。
【請求項29】
前記酸化剤がSeOである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
任意選択の工程b)がエタノールおよび水酸化ナトリウム水溶液の混合物中で行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項10〜21のいずれか一項に記載の式(I)の化合物の製造のための方法であって、
a)式(II)の化合物を形成するために、化合物 式(III)を式−ORまたは−ORの対応するアルコキシドまたはチオラートのナトリウム塩と反応させる工程:
【化5】

(この際、
Xは、ハロゲンであり;
は、−S−R、−O−Rおよびハロゲンから選択され;
およびRは、C−Cアルキル、場合によってC−Cアルキル、C−C15アリール、ハロゲン、−(C=O)NR、−(C=O)OR、C−Cアルコキシおよび/または−NRで置換されている、C−C15アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される;
ただし、式(II)中のRがハロゲンである場合には、この工程は省略される);
b)式(I)の化合物を形成するために酸化剤を用いて式(II)の化合物のメチル基を酸化する工程;
【化6】

(この際、Rは、工程a)において定義したとおりである);
および所望により、
c)ヒドロキシルアミンまたはO−(C−C)アルキルヒドロキシルアミンの存在下で、式(I)の化合物中のアルデヒド基−CHOを、Rが水素およびC−Cアルキルから選択されたオキシム基−CH=N−ORへと変換する工程:
【化7】

を含む、方法。
【請求項32】
工程a)において用いるナトリウムが、ナトリウムエトキシド、ナトリウム2−プロパンチオラートまたはナトリウム1−プロパンチオラートである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程a)が溶媒としてのアルコールまたはテトラヒドロフラン中で行われる、請求項31および32に記載の方法。
【請求項34】
請求項9〜25のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、あるいはそれらの任意の塩または溶媒和物の、生物学的アッセイでの試薬としての、好ましくは、薬物動態アッセイ、血液脳関門通過アッセイ、キレートアッセイ、過酸化水素による細胞死からの保護、6−OHDAによる細胞死からの保護、Aβ毒性からの神経保護およびβ−アミロイド分泌の阻害についてのアッセイでの反応性物質としての、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−529167(P2010−529167A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511627(P2010−511627)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057319
【国際公開番号】WO2008/152068
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(505132389)ノスシラ、ソシエダッド、アノニマ (12)
【氏名又は名称原語表記】NOSCIRA S.A.
【Fターム(参考)】