説明

神経幹細胞の増殖および神経発生のための黄体化ホルモン(LH)、および絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の使用

本発明は、フェロモン、黄体化ホルモン(LH)および/またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を用いることによって、神経幹細胞の数または神経発生を増加する方法を提供する。この方法は、インサイチュでより多くの神経幹細胞を得るためにインビボで実施され得、次いで、神経細胞の損失または機能不全を補償するために、より多くのニューロンまたはグリア細胞を産生し得る。この方法はまた、培養物において多数の神経幹細胞を産生するためにインビトロで実施され得る。この培養された神経幹細胞は、例えば、神経変性疾患または神経変性状態に罹患するか、あるいは神経変性疾患または神経変性状態を有すると疑われる患者または動物の移植処置のために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、35米国特許法第119条(e)に基づいて、2004年2月13日に出願された米国仮特許出願第60/544,915号の利益を主張する。この先行出願の全開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、神経幹細胞の数および神経発生を増加させる方法、ならびにそれらの有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(参考文献)
【数1】

【0004】
【数2】

【0005】
【数3】

【0006】
【数4】

【0007】
【数5】

【0008】
本出願において上記または他の部分に引用される刊行物、特許および特許出願の全ては、個々の刊行物、特許出願または特許の各々の開示が、あたかもその全体において参考として援用されることが具体的にかつ別個に示されるのと同じ程度まで、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0009】
(発明の背景)
近年、神経変性疾患は、これらの障害に関して最も危険である高齢者集団の増加に起因して、重大な懸念となっている。神経変性疾患としては、中枢神経系(CNS)の特定部位における神経細胞の変性に関連付けられている疾患が挙げられ、この疾患は、意図された機能を実行するこれらの細胞の能力を不能にする。これらの疾患としては、アルツハイマー病、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症、およびパーキンソン病が挙げられる。さらに、おそらく(罹患した人の数に対する)CNS機能不全の最も多くの部分は、神経細胞の欠損によってではなく、存在する神経細胞の異常な機能によって特徴付けられている。これは、ニューロンの不適切な発火、または神経伝達物質の異常な合成、放出、およびプロセシングに起因し得る。これらの機能不全は、うつ病および癲癇のような十分に研究され特徴付けられた障害、または神経症および精神病のようなより理解されていない障害の結果であり得る。さらに、脳損傷は、しばしば、神経細胞の欠損、罹患した脳領域の不適切な機能、およびその結果の行動異常を生じる。
【0010】
従って、神経変性疾患または神経変性状態を処置するために、変性したニューロンまたは欠損したニューロンを補償するように脳に神経細胞を供給することが望ましい。この目標のための1つのアプローチは、患者の脳に神経細胞を移植することである。このアプローチは、好ましくは、対移植片宿主拒絶(host−versus−graft rejection)もしくは対宿主移植片拒絶(graft−versus−host rejection)が最小になり得るように同じ個体または非常に関連する個体に由来する、多量の神経細胞の供給源を必要とする。1人の人物から多量のニューロンまたはグリア細胞を取り出し、別の人物に移植することは現実的ではないので、多量の神経細胞を培養する方法が、このアプローチの成功には必須である。
【0011】
別のアプローチは、欠損または変性した細胞を補償するために、インサイチュで神経細胞の産生を誘導することである。このアプローチは、脳(特に成体の脳)において神経細胞を産生することが可能であるか否か、およびその方法についての広い知識を必要とする。
【0012】
多能性神経幹細胞の単離およびインビトロ培養についての技術(例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3を参照のこと)の開発は、両方のアプローチの見込みを非常に増大させた。胎児の脳は、インビトロにて多能性神経幹細胞を単離し、そして培養するために用いられ得ることが発見された。さらに、対照的に、成体の脳細胞は、脳細胞を複製または再生できないと長い間考えられてきたが、神経幹細胞は、成体の哺乳動物の脳からも単離され得ることが発見された。胎児または成体の脳のいずれかに由来するこれらの幹細胞は、自己複製し得る。子孫細胞は、再び増殖し得るか、または神経の細胞系統の任意の細胞(ニューロン、星状細胞および希突起膠細胞が挙げられる)に分化し得る。それゆえ、これらの知見は、移植に用いられ得る神経細胞の供給源を提供するだけでなく、成体脳における多能性神経幹細胞の存在およびインサイチュにおいてこれらの幹細胞からニューロンまたはグリア細胞を産生する可能性もまた、実証する。
【特許文献1】米国特許第5,750,376号明細書
【特許文献2】米国特許第5,980,885号明細書
【特許文献3】米国特許第5,851,832号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、以下の2つの目的のために、神経幹細胞を効率的に産生する方法を開発することが望ましい:より多くの幹細胞、したがって移植治療において使用され得る神経細胞を得ること、ならびにインサイチュでより多くの幹細胞を産生するために使用され得る方法を同定すること。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、フェロモン、黄体化ホルモン(LH)またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を使用することによって神経幹細胞の数を増加させる方法を提供する。この方法は、インサイチュでより多くの神経幹細胞を得るためにインビボで実施され得、これは、次いで、より多くのニューロンまたはグリア細胞を産生し、欠損した神経細胞または機能不全の神経細胞を補償し得る。この方法はまた、培養物中で多くの神経幹細胞を産生するために、インビトロで実施され得る。この培養された幹細胞は、例えば、神経変性疾患または神経変性状態に罹患しているか、あるいは神経変性疾患または神経変性状態を有すると疑われる患者または動物の移植処置のために使用され得る。
【0015】
従って、本発明の1つの局面は、神経幹細胞の数を増加させる方法を提供し、この方法は、神経幹細胞の数の増加を生じる条件下で少なくとも1つの神経幹細胞に対して有効量のフェロモン、LHまたはhCGを提供する工程を包含する。この神経幹細胞は、哺乳動物の脳に、特に哺乳動物の脳の脳室下帯(subventricular zone)に配置され得る。あるいは、この神経幹細胞は、哺乳動物の海馬に配置され得る。あらゆる年齢の哺乳動物がこの方法に供され得るが、この哺乳動物が胚ではないことが好ましい。より好ましくは、この哺乳動物は、成体である。
【0016】
哺乳動物は、神経変性疾患または神経変性状態に罹患しているか、あるいは神経変性疾患または神経変性状態を有すると疑われ得る。この疾患または状態は、外科手術によって引き起こされる発作または損傷のような脊髄損傷または脳損傷であり得る。この疾患または状態は、神経幹細胞の数が非常に減少することに関連する、加齢であり得る。この疾患または状態はまた、神経変性疾患、特にアルツハイマー病、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症、またはパーキンソン病であり得る。
【0017】
あるいは、神経幹細胞は、インビトロで培養物内に存在し得る。インビトロで実施される場合、LHまたはhCGが、フェロモンの代わりに使用されることが、好ましい。
【0018】
フェロモンは、哺乳動物における神経幹細胞の数を増加させ得る任意のフェロモンであり得る。物質が、神経幹細胞の数を増加させ得るか否かを決定するためのアッセイは、当該分野において確立されており、本明細書中に記載される(例えば、実施例1および実施例3を参照のこと)。このフェロモンは、好ましくは、2−sec−ブチル−4,5−ジヒドロチアゾール(SBT)、2,3−デヒドロ−エキソ−ブレビコミン(brevicomin)(DHB)、αファルネセン(farnesene)およびβファルネセン、6−ヒドロキシ−6−メチル−3−ヘプタノン、2−ヘプタノン、トランス−5−ヘプテン−2−オン、トランス−4−ヘプテン−2−オン、n−ペンチルアセテート、シス−2−ペンテン−1−イル−アセテート、2,5−ジメチルピラジン、ドデシルプロピオネート、および(Z)−7−ドデカン−1−イルアセテートからなる群より選択される。
【0019】
フェロモン、LHまたはhCGが、インビボまたはインビトロで使用されるか否かに関わらず、他の因子が組み合わせて適用され得る(例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、プロラクチン、プロラクチン放出ペプチド(PRP)エリスロポエチン、サイクリックAMP、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、セロトニン、骨形態形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、トランスホーミング増殖因子α(TGFα)、トランスホーミング増殖因子β(TGFβ)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、エストロゲン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インスリン様成長因子、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ソニックヘッジホッグ(SHH)、および/または血小板由来増殖因子(PDGF))。LHまたはhCGは、ネイティブLHまたはネイティブhCGの活性を有する任意のLHアナログまたはhCGアナログあるいはLH改変体またはhCG改変体であり得る。
【0020】
本発明の別の局面は、哺乳動物における神経変性疾患または神経変性状態を処置または改善する方法を提供し、この方法は、哺乳動物の脳に有効量のフェロモン、LHまたはhCGを提供する工程を包含する。この疾患または状態は、脳外科手術/脊髄外科手術によって引き起こされる発作または損傷のようなCNS損傷であり得る。この疾患または状態は、神経幹細胞の数の大きな減少と関連する加齢であり得る。この疾患または状態はまた、神経変性疾患、特にアルツハイマー病、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症、またはパーキンソン病であり得る。
【0021】
哺乳動物は、必要に応じて、神経幹細胞および/または神経幹細胞子孫の移植を受容し得る。この移植は、哺乳動物がフェロモン、LHまたはhCGを受容する前、受容した後、または受容するのと同時に、行われ得る。好ましくは、哺乳動物は、フェロモン、LHまたはhCGの前に、あるいはフェロモン、LHまたはhCGと同時に移植を受容する。
【0022】
哺乳動物は、必要に応じて、少なくとも1つのさらなる因子、例えば、エリスロポエチン、サイクリックAMP、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、セロトニン、骨形態形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、トランスホーミング増殖因子α(TGFα)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、エストロゲン、成長ホルモン、インスリン様成長因子1、および/または毛様体神経栄養因子(CNTF)を受容し得る。
【0023】
フェロモン、LH/hCGおよび/またはさらなる因子は、当該分野で確立された任意の方法によって提供され得る。例えば、それらは、脈管内的に、髄腔内的に、静脈内的に、筋肉内的に、皮下的に、腹腔内的に、局所的に、経口的に、経直腸的に、膣的に、鼻腔的に、吸入によって、または脳内に投与され得る。この投与は、好ましくは、全身投与(特に、皮下投与)によって行われる。フェロモン、LH/hCGまたはさらなる因子はまた、哺乳動物における内因性フェロモン、LH/hCGまたはさらなる因子の量を増加し得る有効量の因子を哺乳動物に投与することによって提供され得る。例えば、動物におけるLHのレベルは、GnRHを使用することによって増加され得る。
【0024】
フェロモン、LH/hCGまたはさらなる因子が、脳に直接送達されない場合、血液脳関門浸透剤が、脳への進入を容易にするために必要に応じて含まれ得る。血液脳関門浸透剤は、当該分野で公知であり、これらとしては、例として、米国特許第5,686,416号;同第5,506,206号および同第5,268,164号に記載されるブラジキニンおよびブラジキニンアゴニスト(例えば、NH−アルギニン−プロリン−ヒドロキシプロキシプロリン−グリシン−チエニルアラニン−セリン−プロリン−4−Me−チロシンψ(−CHNH)−アルギニン−COOH)が挙げられる。あるいは、送達されるべき分子は、米国特許第6,329,508号;同第6,015,555号;同第5,833,988号または同第5,527,527号に記載されるようなトランスフェリンレセプター抗体に結合体化され得る。この分子はまた、その分子と、脳毛細管内皮細胞レセプター(例えば、トランスフェリンレセプター)と反応性のリガンドとを含む融合タンパク質として送達され得る(例えば、米国特許第5,977,307号を参照のこと)。
【0025】
本発明の別の局面は、神経幹細胞からのニューロン形成を向上させる方法を提供し、この方法は、上記神経幹細胞からの向上したニューロン形成を生じる条件下で少なくとも1つの神経幹細胞にフェロモン、LHまたはhCGを提供する工程を包含する。さらに、哺乳動物の嗅球における新しいニューロン形成を増加させる方法が提供され、この方法は、哺乳動物に有効量のフェロモン、LHまたはhCGを提供する工程を包含する。フェロモン、LHまたはhCG、および少なくとも1つのさらなる因子を含む組成物および薬学的組成物もまた、提供される。
【0026】
本発明に従って調製される細胞性組成物もまた、提供される。特に、LH/hCGに曝露された神経幹細胞培養物が、提供される。これらの培養物は、より高いレベルの神経幹細胞および/またはニューロンを有し、例えば、移植のために使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、フェロモン、黄体化ホルモン(LH)またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を使用することによって神経幹細胞の数または神経発生を増加させる方法を提供する。この方法は、インサイチュでより多くの神経幹細胞を得るためにインビボで実施され得、次いで、欠損した神経細胞または機能不全の神経細胞を補償するためにより多くのニューロンまたはグリア細胞を産生し得る。この方法はまた、培養物における多くの神経幹細胞を産生するためにインビトロで実施され得る。この培養された幹細胞は、例えば、神経変性疾患または神経変性状態に罹患しているか、あるいは神経変性疾患または神経変性状態を有すると疑われる患者または動物の移植処置のために、使用され得る。
【0028】
本発明をさらに詳細に記載する前に、本出願において使用される用語は、他に示されない限り、以下のように定義される。
【0029】
(定義)
「神経幹細胞」とは、神経細胞系統における幹細胞である。幹細胞は、自己複製し得る細胞である。言い換えると、幹細胞の分裂から生じた娘細胞は、幹細胞を含む。神経幹細胞は、神経細胞系統における全ての細胞型(ニューロン、星状細胞および希突起膠細胞(星状細胞および希突起膠細胞はまとめて、グリアまたはグリア細胞と呼ばれる)を含む)に最終的に分化し得る。従って、本明細書中で言及される神経幹細胞は、多能性の神経幹細胞である。
【0030】
「ニューロスフィア(neurosphere)」または「スフィア(sphere)」は、クローン性増殖の結果として単一の神経幹細胞に由来する細胞の一群である。「一次ニューロスフィア」とは、神経幹細胞を含む一次培養脳組織のプレーティングによって生成されるニューロスフィアをいう。ニューロスフィアを形成する神経幹細胞の培養方法は、例えば、米国特許第5,750,376号に記載されている。「二次ニューロスフィア」とは、一次ニューロスフィアを解離し、そして個々の解離した細胞がニューロスフィアを再び形成することを可能にすることによって生じるニューロスフィアをいう。
【0031】
ネイティブ因子と「実質的な配列の類似性」を共有するポリペプチドは、ネイティブ因子とアミノ酸レベルで、少なくとも約30%同一である。このポリペプチドは、ネイティブ因子とアミノ酸レベルで、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、そして最も好ましくは少なくとも約80%同一である。
【0032】
語句、ネイティブ因子とアナログまたは改変体の「パーセント同一性」または「%同一性」とは、2つの配列がアラインメントした場合に、アナログまたは改変体にもまた見出される、ネイティブ因子のアミノ酸配列の割合をいう。パーセント同一性は、当該分野において確立された任意の方法またはアルゴリズム(例えば、LALIGNまたはBLAST)によって決定され得る。
【0033】
ポリペプチドは、ネイティブ因子に対するレセプターに結合され得るか、またはネイティブ因子に対して惹起されたポリクローナル抗体によって認識され得る場合に、ネイティブ因子の「生物学的活性」を有する。好ましくは、このポリペプチドは、レセプター結合アッセイにおいて、ネイティブ因子に対するレセプターに特異的に結合し得る。
【0034】
ネイティブ因子の「機能的アゴニスト」は、ネイティブ因子のレセプターに結合し、そしてネイティブ因子のレセプターを活性化する化合物であるが、ネイティブ因子と実質的な配列類似性を共有することは必須ではない。
【0035】
「LH」は、(1)ネイティブな哺乳動物のLH、好ましくはネイティブなヒトのLHと実質的な配列類似性を共有するポリペプチドを含み;そして(2)ネイティブな哺乳動物のLHの生物学的活性を有する、タンパク質である。このネイティブな哺乳動物のLHは、下垂体の前葉によって分泌されるゴナドトロピンである。LHは、非共有結合αサブユニットおよび非共有結合βサブユニットからなるヘテロ二量体である。αサブユニットは、LH、FSHおよびhCGの間で共通であり、そしてβサブユニットは、各ホルモンに特異的である。本発明に有用なLHは、ネイティブな哺乳動物のLHと実質的な配列類似性を共有するβサブユニットとともに、ネイティブなαサブユニットを有し得る。あるいは、このLHは、ネイティブな哺乳動物のLHと実質的な配列類似性を共有するαサブユニットとともに、ネイティブなβサブユニットを有し得る。このLHはまた、ネイティブな対応するサブユニットと実質的な配列類似性を共有するαサブユニットおよびβサブユニットの両方を有し得る。従って、用語「LH」は、ネイティブなLHサブユニットの欠失変異体、挿入変異体、または置換変異体を含むLHアナログを包含する。さらに、用語「LH」は、他の種に由来するLHおよびその天然に存在する改変体を包含する。さらに、「LH」はまた、ネイティブな哺乳動物のLHレセプターの機能的アゴニストであり得る。
【0036】
「hCG」は、(1)ネイティブなhCGと実質的な配列類似性を共有するポリペプチドを含み;そして(2)ネイティブなhCGの生物学的活性を有する、タンパク質である。このネイティブなhCGは、非共有結合αサブユニットおよび非共有結合βサブユニットからなるヘテロ二量体である。αサブユニットは、LH、FSHおよびhCGの間で共通であり、そしてβサブユニットは、各ホルモンに特異的である。しかし、hCGおよびLHのβサブユニットは、85%の配列類似性を共有する。本発明に有用なhCGは、ネイティブなhCGと実質的な配列類似性を共有するβサブユニットとともに、ネイティブなαサブユニットを有し得る。あるいは、このhCGは、ネイティブなhCGと実質的な配列類似性を共有するαサブユニットとともに、ネイティブなβサブユニットを有し得る。このhCGはまた、ネイティブな対応するサブユニットと実質的な配列類似性を共有するαサブユニットおよびβサブユニットの両方を有し得る。従って、用語「hCG」は、ネイティブなhCGサブユニットの欠失変異体、挿入変異体、または置換変異体を含むhCGアナログを包含する。さらに、用語「hCG」は、他の種に由来するhCG対応物およびその天然に存在する改変体を包含する。さらに、「hCG」はまた、ネイティブな哺乳動物のhCG/LHレセプターの機能的アゴニストであり得る。
【0037】
「プロラクチン」は、(1)ネイティブな哺乳動物プロラクチン、好ましくはネイティブなヒトプロラクチンと実質的な配列類似性を共有し;そして(2)ネイティブな哺乳動物のプロラクチンの生物学的活性を有する、ポリペプチドである。このネイティブなヒトプロラクチンは、脳下垂体で主に合成される199アミノ酸のポリペプチドである。従って、用語「プロラクチン」は、ネイティブプロラクチンの欠失変異体、挿入変異体または置換変異体であるプロラクチンアナログを包含する。さらに、用語「プロラクチン」は、他の種に由来するプロラクチンおよびその天然に存在する改変体を包含する。
【0038】
なおさらに、「プロラクチン」はまた、ネイティブな哺乳動物のプロラクチンレセプターの機能的アゴニストであり得る。例えば、機能的アゴニストは、プロラクチンレセプターについての米国特許第6,333,031号に開示された活性性アミノ酸配列;プロラクチンレセプターに対するアゴニスト活性を有する金属錯体レセプターリガンド(米国特許第6,413,952号);G120RhGH(これは、ヒト成長ホルモンのアナログであるが、プロラクチンアゴニストとして作用する)(Modeら、1996);または米国特許第5,506,107号および同第5,837,460号に記載されるようなプロラクチンレセプターに対するリガンドであり得る。
【0039】
「EGF」とは、ネイティブなEGFまたは任意のEGFアナログもしくは改変体を意味し、このアナログまたは改変体は、ネイティブなEGFと実質的なアミノ酸類配列似性を共有し、そして少なくとも1つ、ネイティブなEGFの有する生物学的活性(例えば、EGFレセプターへの結合)を共有する。特に、EGFとして挙げられるのは、任意の種のネイティブEGF、TGFα、または組換え改変EGFである。特定の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2つのC末端アミノ酸の欠失および51位での1つの中性アミノ酸置換を有する組換え改変EGF(特に、EGF51 gln51;米国特許出願公開番号20020098178A1)、16位のHis残基が中性アミノ酸または酸性アミノ酸で置換されている、EGFムテイン(EGF−X)(米国特許第6,191,106号)、ネイティブなEGFのアミノ末端残基を欠く、EGFの52アミノ酸欠失変異体(EGF−D)、N末端残基ならびに2つのC末端残基(Arg−Leu)が欠失された、EGF欠失変異体(EGF−B)、21位のMet残基が酸化されているEGF−D(EGF−C)、21位のMet残基が酸化されているEGF−B(EGF−A)、ヘパリン−結合EGF様成長因子(HB−EGF)、βセルリン、アンフィレグリン(amphiregulin)、ニューレグリン(neuregulin)、または上記のいずれかを含む融合タンパク質。他の有用なEGFのアナログまたは改変体は、米国特許出願公開番号20020098178A1、ならびに米国特許第6,191,106号および同第5,547,935号に記載されている。
【0040】
さらに、「EGF」はまた、ネイティブな哺乳動物のEGFレセプターの機能的アゴニストであり得る。例えば、機能的アゴニストは、EGFレセプターの活性性アミノ酸配列(米国特許第6,333,031号に開示される)、またはEGFレセプターに対してアゴニスト活性を有する抗体(Fernandez−Pol、1985および米国特許第5,723,115号)であり得る。
【0041】
「PACAP」とは、ネイティブなPACAPまたは任意のPACAPのアナログもしくは改変体を意味し、このアナログまたは改変体は、ネイティブなPACAPと実質的なアミノ酸配列類似性を共有し、そして少なくとも1つ、ネイティブなPACAPの有する生物学的活性(例えば、PACAPレセプターへの結合)を共有する。有用なPACAPアナログおよび改変体としては、以下に限定されないが、PACAPの38アミノ酸改変体および27アミノ酸改変体(それぞれ、PACAP38およびPACAP27)、そして例えば、米国特許第5,128,242号;同第5,198,542号;同第5,208,320号;同第5,326,860号;同第5,623,050号;同第5,801,147号;ならびに同第6,242,563号に開示されるアナログおよび改変体が挙げられる。
【0042】
さらに、「PACAP」はまた、ネイティブな哺乳動物のPACAPレセプターの機能的アゴニストであり得る。例えば、機能的アゴニストは、マキサディラン(maxadilan)(PACAP 1型レセプターの特異的アゴニストとして作用するポリペプチド)(Moroら、1997)であり得る。
【0043】
「エリスロポエチン(EPO)」とは、ネイティブなEPOまたは任意のEPOのアナログもしくは改変体を意味し、このアナログまたは改変体は、ネイティブなEPOと実質的なアミノ酸配列類似性を共有し、そして少なくとも1つ、ネイティブなEPOの有する生物学的活性(例えば、EPOレセプターへの結合)を共有する。エリスロポエチンのアナログおよび改変体は、例えば、米国特許第6,048,971号および同第5,614,184号に開示される。
【0044】
なおさらに、「EPO」はまた、ネイティブな哺乳動物のEPOレセプターの機能的アゴニストであり得る。例えば、機能的アゴニストは以下のものであり得る:EMP1(EPO擬態ペプチド1、Johnsonら、2000);Wrightonら、1996および米国特許第5,773,569号に記載されるようなEPOの短いペプチド擬態物のうちの1つ;Kaushansky、2001に開示されるような任意の低分子EPO擬態物;米国特許第5,885,574号、国際公開第96/40231号、国際公開第97/48729号、Fernandez−Pol、1985または米国特許第5,723,115号に記載されるようなEPOレセプターを活性化する抗体;EPOレセプターについて米国特許第6,333,031号に開示されるような活性性アミノ酸配列;EPOレセプターに対してアゴニスト活性を有する金属錯体化レセプターリガンド(米国特許第6,413,952号);または米国特許第5,506,107号および同第5,837,460号に記載されるようなEPOレセプターに対するリガンド。
【0045】
「LH/hCG誘発因子」は、動物に与えられた場合、その動物におけるLHまたはhCGの量を増加し得る物質である。例えば、LH放出ホルモン(LHRH)は、LHの分泌を刺激する。
【0046】
「フェロモン」は、同じ種の別の動物、通常は反対の性に対するシグナルとして役立つ物質である。哺乳動物のフェロモンは、低分子のタンパク質であり得る。好ましくは、フェロモンは、2−sec−ブチル−4,5−ジヒドロチアゾール(SBT)、2,3−デヒドロ−エキソ−ブレビコミン(DHB)、αファルネセンおよびβファルネセン、6−ヒドロキシ−6−メチル−3−ヘプタノン、2−ヘプタノン、トランス−5−ヘプテン−2−オン、トランス−4−ヘプテン−2−オン、n−ペンチルアセテート、シス−2−ペンテン−1−イル−アセテート、2,5−ジメチルピラジン、ドデシルプロピオネート、および(Z)−7−ドデカン−1−イルアセテートからなる群より選択される(例えば、Dulacら、2003を参照のこと)。
【0047】
細胞型の形成の「増強」とは、その細胞型の数が増加することを意味する。従って、ある因子の存在下におけるニューロン数が、その因子の非存在下におけるニューロン数より大きい場合に、その因子は、ニューロン形成を増強するために使用され得る。その因子の非存在下におけるニューロン数は、0以上であり得る。
【0048】
「神経変性疾患または神経変性状態」は、ニューロン欠損またはニューロン機能不全に関連する疾患または医学的状態である。神経変性疾患または神経変性状態の例としては、神経変性疾患、CNS損傷またはCNS機能不全が挙げられる。神経変性疾患としては、例えば、アルツハイマー病、黄斑変性、緑内障、糖尿病性網膜症、末梢神経障害、ハンティングトン病、筋萎縮性側索硬化症、およびパーキンソン病が挙げられる。CNS損傷としては、例えば、発作(例えば、出血性発作、局所性の虚血性発作または全体的な虚血性発作)および外傷性の脳損傷または脊髄損傷(例えば、脳外科手術または脊髄外科手術あるいは物理的な事故により引き起こされる損傷)が挙げられる。CNS機能不全としては、例えば、うつ病、癲癇、神経症および精神病が挙げられる。
【0049】
「治療または改善」とは、疾患または医学的状態の症状の軽減あるいは完全な除去を意味する。
【0050】
「神経変性疾患または神経変性状態を有すると疑われる」哺乳動物とは、神経変性疾患または神経変性状態と正式には診断されないが、神経変性疾患または神経変性状態の症状を示す哺乳動物であり、家族歴または遺伝素因に起因して神経変性疾患または神経変性状態と疑われるか、あるいは、以前に神経変性疾患または神経変性状態を有しており、そして再発の危険にさらされている哺乳動物である。
【0051】
哺乳動物への組成物の「移植」とは、当該分野において確立された任意の方法によって、哺乳動物の身体内へ組成物を導入することをいう。導入される組成物は「移植片」であり、哺乳動物は「レシピエント」である。移植片およびレシピエントは、同系、同種異系、または異種であり得る。好ましくは、移植は、自己移植である。
【0052】
「有効量」は、意図された目的を達成するために十分な治療剤の量である。例えば、神経幹細胞の数を増加させるためのLHまたはhCGの有効量は、インビボでもインビトロのでも、場合に応じて、神経幹細胞の数の増加という結果を生じさせるために十分な量である。神経変性疾患または神経変性状態を処置または改善するためのLHまたはhCGの有効量は、神経変性疾患または神経変性状態の症状を軽減または取り除くのに十分なLH/hCGの量である。所定の治療剤の有効量は、因子(例えば、薬剤の性質、投与経路、治療剤を受ける動物のサイズおよび種、ならびに投与の目的)によって変化する。各個々の症例における有効量は、当該分野において確立された方法に従って、当業者によって経験的に決定され得る。
【0053】
(方法)
神経幹細胞は、成体の哺乳動物の脳の2つの領域に存在する(ReynoldsおよびWeiss、1992)(海馬の歯状回(dendate gyrus)および側脳室の脳室下帯(SVZ)(Luskin 1993;Menezesら、1995;Frisenら、1998;Perettoら、1999;Gage、2000;Rochefortら、2002))。神経幹細胞は、それらの成長および増殖に寄与する2つの有糸分裂の経路を伴う。第1の有糸分裂の経路は、神経幹細胞が、再生および自己複製の手段として対照的に分裂する経路である。第2の有糸分裂は、非対照的であり、それは、娘神経幹細胞および前駆細胞を生じる。最終的に、前駆細胞は、中枢神経系の細胞型の1つとして終末の発生運命をとる。例えば、神経発生の場合については、ニューロンの前駆細胞は、ニューロンを生じる(Weissら、1996;MorrisonおよびShah、1997;Perettoら、1999;Rao、1999)。
【0054】
海馬のニューロンの前駆細胞は、歯状回に存在し、増殖および顆粒細胞層に移動して、顆粒細胞に分化する能力を有する(Nilssonら、1999;Gage 2000;Rochefortら、2002)。SVZにおいて、神経幹細胞および前駆細胞は増殖し、次いで前駆細胞は、吻側移動流(rostral migratory stream)(RMS)として公知の移動経路に従い、そこで、嗅球(OB)に向かい、介在ニューロンになるなる予定になっている(Luskin 1993;Menezesら、1995;Rao、1999;Rochefortら、2002)。
【0055】
新たな臭気で生じた豊かな嗅覚環境は、嗅球において神経発生を増加させ、臭気記憶を改良したことを示した(Rochefortら、2002)。嗅球介在ニューロンは、SVZにおける神経幹細胞に由来するが、豊かな嗅覚環境に対する曝露は、SVZにおける細胞増殖に対して効果がなかった(Rochefortら、2002)。しかしながら、本発明に記載したように、本発明者らは、神経幹細胞増殖および神経発生において、雄の臭気および雌の臭気の反対の性に対する驚くべき効果を観察した。
【0056】
雄の臭気または雌の臭気の影響を測定するために、成体のマウスは、2日間、7日間または14日間、反対の性の臭気に曝露された。コントロール群は、同じ期間、同じ性の臭気に曝露された。次いで、このマウスは、増殖性細胞を標識化するためにBrdUを受け、BrdU陽性細胞の位置は、免疫組織化学研究によって同定された(実施例1)。図1Aに示されるように、雌マウスのSVZにおける増殖性細胞は、2日間、7日間または14日間、雌の臭気に曝露された後、同じレベルのままであった。しかしながら、雄の臭気に曝露された雌の群において、SVZにおける増殖性細胞は、時間とともに変化した:7日後に顕著に増加して、14日後に顕著に減少した。2日の曝露は有意な効果がなかった。Ki67が、増殖性細胞を標識化するために使用された場合、同じパターンが観察され(図1B)、BrdU陽性細胞の変化が、増殖レベルの変化を反映したことを示した。
【0057】
雌の臭気はまた、雄マウスの脳における増殖に影響したが、異なる時間的パターンにおける増殖に影響した。雄が、2日間、雌の臭気に曝露された場合、BrdU陽性細胞(図2A)またはKi67陽性細胞(図2B)の数の突然の増加が生じた。しかしながら、7日または14日の曝露の後、新たに増加した細胞の数は、コントロールレベルに減少した。
【0058】
著しいことには、海馬における神経幹細胞はまた、性に特異的な臭気に応答した。やはり、2日間の雄の臭気に対する曝露は、雌マウスに対して有意な効果がなかったが、7日の曝露は、海馬における増殖の有意な増加を生じた(図3)。14日間の曝露の後、増殖性細胞のレベルは、雌の臭気に曝露された雌と比較した場合、雄の臭気に曝露された雌において有意に低下した。本発明者らの見解によれば、最初の時間は、成長因子(例えば、EGFさらにFGF)以外の任意の刺激が、SVZおよび海馬における神経幹細胞に同様の効果を与えることを示した。通常、この効果は、対照的である。例えば、プロラクチンは、SVZに影響を与えるが、海馬に影響を与えず(Shingoら、2003);エストロゲンは、海馬における増殖を刺激するが、SVZにおける増殖を刺激せず(Tanapatら、1999);豊かな環境および身体的活動は、海馬の神経発生を促進するが、SVZの神経発生を促進しない(Brownら、2003)。
【0059】
神経発生はまた、反対の性の臭気に対する曝露において増強した(実施例2)。従って、上記のマウスにおける神経発生の程度を測定するために、上記の動物からの組織切片は、ダブルコルチン(ニューロンの前駆細胞において発現される細胞質タンパク質)に対して染色された。増殖性細胞の場合のように、雌マウスは、雄の臭気に対する7日の曝露後、有意により多くのダブルコルチン陽性細胞を有し(図4)、一方、雄マウスは、雌の臭気に対する2日の曝露後、有意により多くのダブルコルチン陽性細胞を有した(図5)。
【0060】
反対の性からのフェロモンがまた、神経細胞の生存に影響を与えるか否かを決定するために、TUNELアッセイを実施した。この結果は、雄の臭気に対する7日の曝露後、雌マウスのSVZ(図6A)または嗅球(図6B)において有意な相違が観察され得なかったことを示す。
【0061】
雄性フェロモンは、黄体ホルモン(LH)のレベルを増加させ、プロラクチンのレベルを減少させる一方、雌性フェロモンは、プロラクチンの増加に関連することが公知である(Dulacら、2003)。フェロモンが、反対の性において神経幹細胞増殖および神経発生を増強させる方法を調べるための試みにおいて、動物はLHを注入された。この結果は、LHが、雌マウス(図7Aおよび7B)および雄マウス(図8)の両方のSVZにおいて増殖を有意に増加させることを示す。これらの結果と一致して、LHはまた、培養物における神経幹細胞の自己複製を増加させ得る(実施例3)。
【0062】
従って、本発明は、フェロモンおよび/またはLHを用いて、インビボまたはインビトロのいずれかにおいて、神経幹細胞の数を増加させる方法を提供する。ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、LHのアナログであり、LHと同じレセプターを共有するので、hCGは、LHと同様の効果を有すると予想される。インビボでの神経幹細胞の数を増加させるために使用される場合、この方法は、脳における神経幹細胞の大きなプールを生じる。この神経幹細胞の大きなプールは、続いて、フェロモン、LH/hCGを含まない幹細胞の集団より多くの神経細胞、特にニューロンまたはグリア細胞を生じ得る。次いで、この神経細胞は、神経系損傷を含む、神経変性疾患および神経変性状態に関連する神経細胞の損失または変性を補償し得る。
【0063】
フェロモンによって誘発されるLH/hCGまたは他の因子はまた、インビトロで神経幹細胞の数を増加させるために使用され得る。生じた神経幹細胞は、インビトロでより多くのニューロンおよび/またはグリア細胞を産生するために使用され得るか、あるいは神経変性疾患または神経変性状態に罹患するヒトまたは動物への移植手順に使用され得る。ニューロンまたはグリア細胞よりむしろ、本発明に従って産生される神経幹細胞が移植されることが、好ましい。一旦神経幹細胞が移植されると、増殖因子および/または分化因子が、幹細胞の数をさらに増加させるため、またはニューロン形成またはグリア細胞形成を選択的に増強させるために、インビボに投与され得る。同様に、さらなる因子が、LHまたはhCGとともにインビトロで使用され得るか、またはフェロモン/LH/hCGと組み合わせてインビボに投与され得る。
【0064】
例示的な分化因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
1.エリスロポエチン(Epo):Epoは、ニューロン細胞系統に関与するNSCを増強し、これは、発作のマウスモデルおよびラットモデルを処置するために使用される得ることが実証された。
2.脳由来神経栄養因子(BDNF):BDNFは、ニューロン系統を促進する公知の生存因子および分化因子である。
3.トランスホーミング増殖因子βおよび骨形態形成タンパク質(BMP):BMPは、ニューロン系統および特定のニューロン表現型の産生を促進する公知の分化因子(例えば、脊髄における知覚介在ニューロン)である。
4.甲状腺ホルモン(T3形態およびT4形態の両方を含むTH):THは、希突起膠細胞の成熟および産生を促進する分化因子として公知である(例えば、Rodriguez−Pena、1999を参照のこと。)
5.甲状腺刺激ホルモン(TSH)および甲状腺放出ホルモン(TRH):TSH/TRHは、下垂体前葉由来のTHの放出を促進し、増加したレベルの循環THをもたらす。この因子は、NSCからの希突起膠細胞発生(oligodendrogliogenesis)を促進するために、フェロモン/LH/hCGと組み合わせて使用され得る。
6.ソニックヘッジホッグ(SHH):SHHは、発生の間に発生するCNSをパターン付けるモルフォゲンであり、異なる濃度において、ニューロンの特定の型(例えば、脊髄における運動ニューロン)および希突起膠細胞の発生を促進する。この因子は、NSCからの神経発生および/または希突起膠細胞発生を促進するために、フェロモン/LH/hCGと組み合わせて使用され得る。
7.血小板由来増殖因子(PDGF):PDGFは、NSCからの希突起膠細胞の産生および分化を促進する。この因子は、NSCからの希突起膠細胞発生を促進するために、フェロモン/LH/hCGと組み合わせて使用され得る。
8.サイクリックAMPならびに脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)およびセロトニンのようなcAMP経路を増強する因子もまた、ニューロン産生を選択的に促進するための良い候補である。
【0065】
神経幹細胞の数を増加させ得る因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
9.卵胞刺激ホルモン(FSH)は、多くの場合、LHと合わせて作用する;LHレセプター発現を誘発することが公知であり、従って、LHシグナル伝達の効果を増強し得る。
10.成長ホルモン(GH)は、NSC増殖を刺激し得る。
11.インスリン増殖因子(IGF)は、GHに応答して多くの組織から放出されるソマトメジアン(somatomedian)であり、GHの増殖促進効果の多くを媒介する。IGF−1は、NSC増殖を刺激する。
12.成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)は、視床下部から分泌され、下垂体前葉からのGH放出を誘発し、増加したレベルの循環GHを生じる。
13.プロラクチン(PRL)は、下垂体前葉から分泌され、NSC増殖を促進することが公知である。PRLおよびフェロモン/LH/hCGは、NSC増殖を最大化するために、組み合わせて使用され得る。
14.プロラクチン放出ペプチド(PRP)は、プロラクチンの放出を誘発し、NSC増殖を最大化するために、フェロモン/LH/hCGと組み合わせて使用され得る。
15.線維芽細胞増殖因子は、公知のNSCについてのマイトジェン因子である。
16.エストロゲンは、海馬におけるNSCの増殖を促進することが公知である。
17.セロトニンは、海馬におけるNSCの増殖を促進することが公知である。
18.上皮細胞増殖因子は、公知のNSCについてのマイトジェン因子である。
19.トランスホーミング増殖因子α(TGFα)は、公知のNSCについてのマイトジェン因子である。
20.性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)は、LHの放出を誘発し、LHの循環レベルを増加し、そしてNSC増殖を増強するために、フェロモン/LH/hCGと組み合わせて使用され得るか、またはフェロモン/LH/hCGの代わりに使用され得る。
21.毛様体神経栄養因子および白血病抑制因子:これらの因子の両方などは、gp130サブユニットを介して信号を送る。このシグナル伝達経路は、NSC自己複製を促進し、これによって脳のNSC集団を増大させることが実証している。これらの因子は、NSC増殖を促進し、そしてCNS内のNSC集団のサイズを増加させるために、フェロモン/LH/hCGと組み合わせて使用され得る。
【0066】
さらに、インビトロまたはインビボでの神経幹細胞からのニューロン形成を増加させる方法が、本発明によって提供される。特に、新たな嗅覚ニューロン産生を増強する方法が、提供される。
【0067】
神経幹細胞またはニューロンの増加は、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%、さらにより好ましくは少なくとも約30%、なおより好ましくは少なくとも約40%、なおさらにより好ましくは少なくとも約50%、およびさらに一層より好ましくは少なくとも約60%である。最も好ましくは、この増加は、少なくとも約80%である。
【0068】
本発明はまた、動物、特に哺乳動物における神経変性疾患または神経変性状態を処置または改善する方法を提供する。これは、例えば、有効量のLHおよび/またはhCGを哺乳動物に投与する工程、あるいは本発明に従って産生された神経幹細胞、神経幹細胞由来の前駆細胞、ニューロンおよび/またはグリア細胞を哺乳動物に移植する工程によって達成され得る。好ましくは、神経幹細胞が移植される。移植に加えて、LH/hCGおよび/またはさらなる因子が、特に移植と同時または移植後に、移植レシピエントにさらに提供され得る。
【0069】
1つの特に興味の深い神経変性状態は、加齢である。本発明者らは、脳室下帯における神経幹細胞の数が、高齢のマウスにおいて顕著に減少したことを見出した。従って、フェロモン/LH/hCGを用いて、神経幹細胞の数を増加することによって、加齢に関する問題を改善することは、特に興味があることである。
【0070】
例えば、脳室下帯における神経幹細胞は、嗅覚ニューロンの供給源であり、嗅覚機能不全は、前脳神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンティングトン病)の特徴である。嗅球へのニューロン移動の途絶は、嗅覚弁別の欠損をもたらし、新たな嗅覚介在ニューロンの倍加は、新たな臭気記憶を増強する(Rochefortら、2002)。従って、フェロモン/LH/hCGは、嗅覚弁別または嗅覚記憶、ならびに嗅覚および嗅覚弁別に関連する生理的機能(例えば、交配、子孫認識および子育て)を増強するために使用され得る。
【0071】
本発明の別の特定の重要な用途は、CNS損傷(例えば、脳卒中)の処置および/または改善である。
【0072】
(組成物)
本発明は、フェロモン、LHまたはhCG、および必要に応じて少なくとも1つのさらなる因子を含む組成物を提供する。このさらなる因子は、神経幹細胞の数を増加させ得、上記のニューロンまたはグリア細胞への神経幹細胞の分化を増強させ得る。このさらなる因子は、好ましくは、卵胞刺激ホルモン(FSH)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、プロラクチン、プロラクチン放出ペプチド(PRP)、エリスロポエチン、サイクリックAMP、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、セロトニン、骨形態形成タンパク質(BMP)、上皮増殖因子(EGF)、トランスホーミング増殖因子α(TGFα)、トランスホーミング増殖因子β(TGFβ)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、エストロゲン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インスリン様増殖因子、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、ソニックヘッジホッグ(SHH)、および/または血小板由来増殖因子(PDGF)からなる群より選択される。最も好ましくは、エリスロポエチン、プロラクチン、EGFおよび/またはPACAPが、添加される。
【0073】
フェロモンは、哺乳動物における神経幹細胞の数を増加させ得る任意のフェロモンであり得る。物質が、神経幹細胞の数を増加させ得るか否かを測定するためのアッセイは、当該分野において確立され、本明細書中に記載されている(例えば、実施例1および3を参照のこと)。このフェロモンは、好ましくは、2−sec−ブチル−4,5−ジヒドロチアゾール(SBT)、2,3−デヒドロ−エキソ−ブレビコミン(DHB)、αファルネセンおよびβファルネセン、6−ヒドロキシ−6−メチル−3−ヘプタノン、2−ヘプタノン、トランス−5−ヘプテン−2−オン、トランス−4−ヘプテン−2−オン、n−ペンチルアセテート、シス−2−ペンテン−1−イル−アセテート、2,5−ジメチルピラジン、ドデシルプロピオネート、および(Z)−7−ドデカン−1−イルアセテートからなる群より選択される(例えば、Dulacら、2003を参照のこと)。
【0074】
本発明に有用なLH/hCGとしては、あらゆるLHアナログまたはhCGアナログあるいは神経幹細胞の数を増加させ得る改変体が挙げられる。LH/hCGのアナログまたは改変体は、ネイティブなヒトLHまたはhCGの少なくとも1つのサブユニットの少なくとも約30%のアミノ酸配列を含むタンパク質を含み、これは、ネイティブなLHまたはhCGの生物学的活性を有する。好ましくは、LHまたはhCGの生物学的活性は、LH/hCGレセプターに結合する能力である。具体的には、LH/hCGとして挙げられるものは、天然に存在するLH/hCG改変体;種々の哺乳動物の種(例えば、ヒト、他の霊長類、ラット、マウス、ヒツジ、ブタ、およびウシが挙げられるが、これらに限定されない)に由来するLH/hCG対応物;および以下の表1に列挙される一般的に使用されるアナログである。GnRHまたはそのアナログは、LH/hCGの代わりに、またはLH/hCGに加えて使用され得る。
【0075】
【表1】

同様に、本発明に有用な任意のさらなる組成物または因子としては、ネイティブな化合物または因子と実質的な類似性およびネイティブな化合物または因子の有する少なくとも1つの生物学的活性を共有するアナログおよび改変体が挙げられる。例えば、EGFは、本発明のLH/hCGと併せて使用され得る。ネイティブなEGFに加えて、EGFアナログまたは改変体もまた、使用され得、それは、ネイティブなEGFと実質的なアミノ酸配列類似性、およびネイティブなEGFの有する少なくとも1つの生物学的活性(例えば、EFGレセプターへの結合)を共有する。特に、EGFとしては、あらゆる種のネイティブなEGF、TGFα、または組換え改変されたEGFが挙げられる。具体的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2つのC末端アミノ酸の欠失および51位において中性アミノ酸の置換を有する組換え改変されたEGF(特にEGF51gln51;米国特許出願公開第20020098178A1号)、16位のHis残基が中性アミノ酸または酸性アミノ酸で置換されているEGFムテイン(EGF−X16)(米国特許第6,191,106号)、ネイティブなEGFのアミノ末端残基を欠く、EGFの52−アミノ酸欠失変異体(EGF−D)、N末端残基および2つのC末端残基(Arg−Leu)が欠失されているEGF欠失変異体(EGF−B)、21位のMet残基が酸化されているEGF−D(EGF−C)、21位のMet残基が酸化されているEGF−B(EGF−A)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB−EGF)、βセルリン、アンフィレグリン、ニューレグリン、または上記のうちのいずれかを含む融合タンパク質。他の有用なEGFのアナログまたは改変体は、米国特許出願公開第20020098178A1号、および米国特許第6,191,106号および同第5,547,935号に記載される。
【0076】
別の例として、PACAPもまた、LH/hCGと併せて使用され得る。有用なPACAPのアナログおよび改変体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:PACAPの38アミノ酸改変体および27アミノ酸改変体(それぞれ、PACAP38およびPACAP27)、ならびに例えば、米国特許第5,128,242号;同第5,198,542号;同第5,208,320号;同第5,326,860号;同第5,623,050号;同第5,801,147号および同第6,242,563号に開示されるアナログおよび改変体。
【0077】
エリスロポエチンのアナログおよび改変体は、例えば、米国特許第6,048,971号および同第5,614,184号に開示される。
【0078】
さらに、本発明において有用なLH/hCGまたはさらなる因子の機能的アゴニストが、本発明において企図される。これらの機能的アゴニストは、そのネイティブな因子のレセプターに結合し、そして、そのネイティブな因子のレセプターを活性化するが、これらの機能的アゴニストは、そのネイティブな因子と実質的な配列類似性を共有する必要はない。例えば、マキサディランは、PACAP 1型レセプターの特異的アゴニストとして機能するポリペプチドである(Moroら、1997)。
【0079】
EPOの機能的アゴニストは、広く研究されている。EMP1(EPO擬態ペプチド1)は、Johnsonら、2000に記載されるEPO擬態物のうちの1つである。EPOの短いペプチド擬態物は、例えば、Wrightonら、1996および米国特許第5,773,569号に記載される。低分子EPO擬態物は、例えば、Kaushansky、2001に開示される。EPOレセプターを活性化する抗体は、例えば、米国特許第5,885,574号;WO96/40231およびWO97/48729に記載される。
【0080】
EGFレセプターに対してアゴニスト活性を有する抗体は、例えば、Fernandez−Pol、1985および米国特許第5,723,115号に記載される。さらに、EPOレセプター、EGFレセプター、プロラクチンレセプターおよび多くの他の細胞表面レセプターについての活性性アミノ酸配列もまた、米国特許第6,333,031号に開示される;プロラクチンレセプターおよびEPOレセプターに対してアゴニスト活性を有する金属錯体レセプターリガンドは、米国特許第6,413,952号に見出され得る。レセプター(例えば、EPOレセプターおよびプロラクチンレセプター)に対するリガンドを同定および調製する他の方法は、例えば、米国特許第5,506,107号および同第5,837,460号に記載される。
【0081】
特定のさらなる因子の一般的に使用されるアナログはまた、以下の表2に見出され得る:
【0082】
【表2−1】

【0083】
【表2−2】

【0084】
各アナログ、改変体または機能的アゴニストの有効量が、ネイティブな因子または化合物についての有効量と異なり得、そして各々の場合における有効量は、本明細書中の開示に従って当業者により決定され得ることに留意すべきである。好ましくは、ネイティブな因子、またはそのネイティブな因子と実質的な配列類似性を共有するアナログおよび改変体が、本発明において使用される。
【0085】
薬学的組成物もまた提供され、この薬学的組成物は、LH/hCG、上記のようなさらなる因子、ならびに薬学的に受容可能な賦形剤および/またはキャリアを含む。
【0086】
薬学的組成物は、以下のような当該分野で公知の任意の経路を介して送達され得る:非経口、髄腔内、脈管内、静脈内、筋肉内、経皮、皮内、皮下、鼻腔内、局所的、経口、直腸、経膣、肺または腹腔内。例えば、筋肉内注射が、脳にhCGの機能を及ぼす、hCGを送達する効果的な経路であることが、実施例6に示される。好ましくは、この組成物は、注射または注入によって中枢神経系に送達される。より好ましくは、この組成物は、脳室、特に、側脳室に送達される。あるいは、この組成物は、好ましくは全身性経路(例えば、皮下投与)によって送達される。例えば、プロラクチン、成長ホルモン、IGF−1、PACAPおよびEPOが、皮下投与により有効に送達されて、脳室下帯における神経幹細胞の数を調節し得ることを発見した。
【0087】
この組成物が、脳に直接送達されない場合、およびこの組成物中の分子が、血液脳関門を容易に横切らない場合、血液脳関門浸透剤が、脳への進入を容易にするために必要に応じて含まれ得る。血液脳関門浸透剤は、当該分野で公知であり、これらとしては、例として、米国特許第5,686,416号;同第5,506,206号および同第5,268,164号に記載されるブラジキニンおよびブラジキニンアゴニスト(例えば、NH−アルギニン−プロリン−ヒドロキシプロキシプロリン−グリシン−チエニルアラニン−セリン−プロリン−4−Me−チロシンψ(CHNH)−アルギニン−COOH)が挙げられる。あるいは、この分子は、米国特許第6,329,508号;同第6,015,555号;同第5,833,988号または同第5,527,527号に記載されるようなトランスフェリンレセプター抗体に結合体化され得る。この分子はまた、その分子および脳毛細管内皮細胞レセプター(例えば、トランスフェリンレセプター)と反応性のリガンドを含む融合タンパク質として送達され得る(例えば、米国特許第5,977,307号を参照のこと)。
【0088】
薬学的組成物は、所望の治療剤と、意図された投与経路に適した適切なビヒクルとを混合することにより調製され得る。本発明の薬学的組成物の作製において、治療剤は、通常、賦形剤と混合されるか、賦形剤により希釈されるか、またはカプセル、小袋、紙または他の容器の形態であり得るようなキャリアの内部に封入される。薬学的に受容可能な賦形剤が、希釈剤として働く場合、これは、固体、半固体、または液体の物質であり得、これらは、治療剤のためのビヒクル、キャリアまたは媒体として作用する。従って、この組成物は、錠剤、丸剤、粉末、ロゼンジ、小袋、カシェ剤、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、液剤、シロップ、エアロゾル(固体としてまたは液体媒体中において)、軟膏(例えば、10重量%までの治療剤を含有する)、軟質および硬質のゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射溶液、ならびに無菌パッケージ化された粉末の形態であり得る。
【0089】
適切な賦形剤のいくつかの例としては、人工脳脊髄液、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギナート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、滅菌水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。処方物は、さらに以下を含み得る:タルク、ステアリン酸マグネシウム、および鉱油のような滑沢剤;湿潤剤;乳化剤および懸濁剤;ヒドロキシ安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピルのような防腐剤;甘味料;ならびに香味料。本発明の組成物は、当該分野で公知の手順を使用することにより、患者への投与後に、治療剤の迅速な放出、持続的放出、または遅延した放出を提供するように処方され得る。
【0090】
錠剤のような固形組成物を調製するために、治療剤は、薬学的賦形剤と混合されて、本発明の化合物の均一な混合物を含む固体の予備処方された組成物を形成する。これらの予備処方された組成物を均一という場合、これは、その組成物が、同等に有効な単位投薬形態(例えば、錠剤、丸剤およびカプセル)に容易に小分けされ得るように、その組成物全体にわたって一様に治療剤が分散されていることを意味する。
【0091】
本発明の錠剤または丸剤は、コーティングされ得るか、または他の方法で、長期作用の利点を提供する投薬形態を提供するように調合され得る。例えば、錠剤または丸剤は、内部投薬成分および外部投薬成分を含み得、後者は、前者を包み込む形態をとる。この2つの成分は、腸溶性の層により隔てられ得、この腸溶性の層は、胃における崩壊に抵抗するために役立ち、そして内部成分がインタクトなままで十二指腸に通過するかまたは放出が遅れることを可能にする。種々の材料が、このような腸溶性の層またはコーティングのために使用され得、このような材料としては、多数の高分子酸、および、高分子酸と、シェラック、セチルアルコール、および酢酸セルロースのような物質との混合物が挙げられる。
【0092】
本発明の新規な組成物が経口投与または注射による投与のために組み込まれ得る液体形態としては、水溶液、適切に香味付けされたシロップ、水性懸濁液または油性懸濁液、および食用油(例えば、トウモロコシ油、綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油)を用いた香味付けされたエマルジョン、ならびにエリキシルおよび同様の薬学的ビヒクルが挙げられる。
【0093】
吸入またはガス注入のための組成物としては、薬学的に受容可能な水性溶媒もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに粉末が挙げられる。液体または固体の組成物は、本明細書中に記載されるような適切な薬学的に受容可能な賦形剤を含み得る。この組成物は、局所作用または全身作用のために経口呼吸経路または経鼻により投与される。好ましくは、薬学的に受容可能な溶媒中にある組成物は、不活性ガスの使用により噴霧され得る。噴霧される溶液は、噴霧デバイスから直接吸入され得るか、または噴霧デバイスは、フェースマスクテント(face mask tent)もしくは間欠的陽圧呼吸機に取り付けられ得る。溶液、懸濁液または粉末の組成物は、適切な様式で処方物を送達するデバイスから、好ましくは経口的または経鼻的に投与され得る。
【0094】
本発明の方法において使用される別の処方物は、経皮送達デバイス(「パッチ」)を使用する。このような経皮パッチは、制御された量で本発明の治療剤の連続的または断続的な注入を提供するために使用され得る。薬学的因子の送達のための経皮パッチの構築および使用は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,023,252号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。このようなパッチは、薬学的因子の連続的送達、拍動性送達、または要求に応じた送達のために構築され得る。
【0095】
本発明における使用のための他の適切な処方物が、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに見出され得る。
【0096】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、そしていかなる様式においても、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0097】
下記の実施例において、以下の略語は、以下の意味を有する。定義されていない略語は、その一般に受け入れられている意味を有する。
TUNEL=末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性dUTPニック末端標識
℃=摂氏温度
hr=時間
min=分間
μM=マイクロモル濃度
mM=ミリモル濃度
M=モル濃度ミリリットル
μl=マイクロリットル
mg=ミリグラム
μg=マイクログラム
FBS=胎仔ウシ血清
PBS=リン酸緩衝化生理食塩水
DMEM=ダルベッコ改変イーグル培地
MEM=改変イーグル培地
EGF=上皮増殖因子
NSC=神経幹細胞
SVZ=脳室下帯
PACAP=脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド
cAMP=サイクリックAMP
BMP=骨形態形成タンパク質
CSF=脳脊髄液。
【0098】
(材料および方法)
(雄の臭気に曝露された雌マウス)
マウス(CD1、10週齢)を、2週間の時間経過にわたって、反対の性または同じ性の臭気に対して連続的に曝露した。社会的相互作用の構成要素は、この研究の一部ではなかった。その代わりに、マウスを、反対の性の臭気に対して曝露しただけであった。このことは、そうしない場合に生じる混同を制御するために必要であった。例えば、雄を雌と一緒に置いた場合、その動物に交配する機会を与える。プレーリーハタネズミに対するFowlerの研究(2002)は、妊娠中の雌ハタネズミにおける神経発生の増加を示し、さらにより顕著なことには、Shingoらの研究(2003)は、妊娠および交配の両方が、単独で、神経発生の増加を生じ得ることを示した。従って、神経性の影響が見られたとしても、臭気曝露単独によって媒介されたという結論を下すことはできない。
【0099】
これによって、2週間連続の曝露プロトコルが、この研究を行うために確立され、時間経過の期間は、異なる環境条件におけるニューロンの細胞増殖の変化しやすい性質を明らかにするために選択された。以前の行動研究が1日間から2週間で変動するニューロンの前駆細胞の増加を示した(KempermannおよびGage、1999;Fowlerら、2002)ので、このことは、ニューロンの前駆細胞増殖の急増が、見落とされないことを確実にした。
【0100】
簡単に言えば、雄マウスを、2日間、きれいなケージに置いた。次いで、この雄マウスを、雄の臭気化したケージから取り除き、雌マウスを所望の長さの期間、収容した。
【0101】
全部で18匹の雌(CD−1、10週齢)マウスを、雄(CD−1、10週齢)マウスまたは雌マウスの臭気に対する連続的な曝露を経験させるために、第1に選択した。18匹のうち3匹を、雄の臭気に対して2日間曝露するために、ランダムに割り当てた。別の3匹を、7日間の雄の臭気曝露条件に加えるために選択し、別の3匹を14日間の雄の臭気曝露条件に加えるために選択した。同様に、さらなる3匹を、2日間の雌の臭気を経験させるためにランダムに割り当てた。別の3匹を、7日間の雌の臭気曝露条件に加えるために選択し、残りの3匹を、14日間の雌の臭気曝露条件に置いた。
【0102】
従って、最初の工程において、9匹の雄マウスを、2日間、きれいなケージの中に置いた。この雄が2日間、このケージを臭気化した後、その雄を新しいきれいなケージに移動させた。次いで、雌を、反対の性の臭気を経験させるために、2日間、雄に臭気化されたケージに移動させた。2日間の曝露に割り当てられた雌に関して、時間経過は完了した;しかし、7日間および14日間の曝露に割り当てられた雌はこの手順を繰返し、実質的に、この時間経過を完全に満たすために、同じ雄によって臭気化された新たに臭気化されたケージに移動された。
【0103】
この時間経過にわたって反対の性の臭気に雌を曝露することが、神経発生に対する効果を有し得るか否かを比較するために、上記で選択した残りの9匹の雌マウスをまた、上記に要点を述べたようなものと同じ概要の下で、連続的な性の臭気(しかし同じ性の臭気)に経験させた。
【0104】
群の時間経過の最終日に、BrdU注射をマウスに与えて、SVZにおける増殖性細胞を標識した。さらに、免疫組織化学分析を行った。以下に概要を述べる。
【0105】
(免疫組織化学)
処置後のSVZにおける前駆細胞の数を調べるために、ブロモデオキシウリジン(BrdU)注射を使用して、それらの細胞を標識した。動物は、2時間ごとに10時間、BrdU注射(120mg/kg、腹腔内、リン酸緩衝液中の0.007%NaOHに溶解した)を受けた。BrdUの各注射は、S期における増殖性細胞を標識のみし、一連のBrdU注射をする目的は、全取り込みの間のBrdUの持続的な利用可能性を保証するためである(Morsheadおよびvan der Kooy、1992)。
【0106】
この動物を麻酔薬の過剰投与によって屠殺し、PBS中、pH7.2の4%パラホルムアルデヒドで心臓灌流した。脳を、4℃にて一晩、同じパラホルムアルデヒド溶液で後固定し、PBS中の20%スクロース中で24時間凍結保護した。次いで、この脳を、14μmに凍結切片化する前に、Tissue Tek O.C.T化合物(Sakura Fineteck、Torrance、CA)に包埋した。
【0107】
染色するために使用した抗体は、ラット抗BrdUおよびモルモット抗DCXであった。
【0108】
この切片を、室温にて30秒間アセトンで後固定した後、PBSで洗浄した。BrdU染色のために、この組織を、60℃にて22分間1M HClで処理して、細胞のDNAを変性させた。次いで、切片を、10%NGSを含む0.3%PBS−Tにおいて希釈した一次抗体(ラット抗BrdU、1:50)中で室温にて24時間インキュベートし、PBSで洗浄し、次いで、ビオチン(1:200)に結合体化されたヤギ抗ラット二次抗体とともに、室温にて1時間インキュベートした。ddHOでリンスした後、染色をCY3−Streptavodinで可視化して、Zeiss Axiophot蛍光顕微鏡で観察するために、切片をFluorosaveとともにマウントした。
【0109】
DCX染色のために、切片を、10%NGSを含む0.3%PBS−Tにおいて希釈した一次抗体(ヤギ抗−DCX、1:500)中で室温にて24時間インキュベートし、PBSで洗浄し、次いで、ロバ抗ヤギビオチン二次抗体とともに、室温にて1時間インキュベートした。リンスした後、増幅手順をPBSでスライドガラスを洗浄し、そしてそれらをCY3−StreptavodinおよびHoechstとともに、室温にて1時間インキュベートすることによって行った。ddHOでリンスした後、切片をFluorosaveとともにマウントして、Zeiss Axiophotで観察した。
【0110】
(免疫組織化学結果の定量化)
SVZにおけるBrdU:側脳室の吻側の先端部からその脳室の最も尾側の面まで冠状断(14μm)の連続した10枚のうちの1枚を集めた(合計10個の切片)。次いで、BrdU陽性細胞を、規定される上衣−上衣下層を中で数えた。
【0111】
SVZの背の端におけるDCX:側脳室の吻側の先端部からその脳室の980μm尾側までの冠状断(14μm)の連続した10枚のうちの1枚を(合計10個の切片)実施した。次いで、DCX陽性細胞を、背の端で数えた。
【0112】
(雌マウスの臭気に曝露された雄マウス)
反対の性の臭気が、雄マウスの何らかの効果を有するか否かを見るために、同じ方法論を、雌マウスの臭気に対して雄マウスを連続的に曝露するために用いた。同一の時間経過(2日間、7日間および14日間の雌マウスに対する臭気曝露)、ならびに比較のために2日間、7日間および14日間の雄マウスに対する臭気曝露を用いた。免疫組織化学および定量化の構成物質はまた、雌について計画したものと同一であった。
【0113】
(神経幹細胞培養および増殖因子)
胎児および成体の前脳からのスフィアの発生および分化を、少しの改変を用いて以前に記載したように行った(ReynoldsおよびWeiss、1992;Reynoldsら、1992)。簡単に言えば、線条体−淡蒼球複合体を、E14におけるマウスの胚から取り除き、0.6%グルコース、ペニシリン(50U/ml)、およびストレプトマイシン(50U/ml;両方、Life Technologies、Gaithersburg、MDから提供された)を含むPBSの中に回収し、次いで、DMEM−F−12(1:1)、グルコース(0.6%)、グルタミン(2mM)、重炭酸ナトリウム(3mM)、HEPES緩衝液(5mM)、インスリン(25μg/ml)、トランスフェリン(100μg/ml)、プロゲステロン(20nM)、プトレシン(60μM)、および塩化セレン(30nM)(Life Technologiesから提供されるグルタミンを除いて、全てSigma、St.Louis、MOから提供された)からなる標準的な培地の中に移した。成体の神経幹細胞培養のために、成体の脳からの側脳室上衣下の内側および外側部分を、両方の半球から切り出し、一緒にプールし、続いて、1mm断片に切断し、1.33mg/mlトリプシン、0.67mg/mlヒアルロニダーゼ、および0.2mg/mlキヌレン酸(全てSigmaから提供された)を含む標準的な培地の中に移した。37℃にて30分後、この組織を、0.7mg/mlトリプシンインヒビター(Roche Diagnostics、Laval、Quebec、Canada)を含む標準的な培地に移した。組織片をマイクロピペットで機械的に解離した。細胞を標準的な培地(EGF(20ng/mlヒト組換え体;Peprotech、Rocky Hill、NJも含んだ)の中に種々の密度で接種した。細胞を7日間インビトロ(DIV)で培養し、浮遊性の細胞集団(スフィア)を形成させた。培養実験のための全てのマウスを、頚椎脱臼によって屠殺した。
【0114】
(浸透圧ポンプの移植および増殖因子注入)
16匹の8週齢CD−1マウス(Charles−River、Laval、Quebec、Canada)を、ペントバルビタールナトリウム(120mg/kg、腹腔内)で麻酔し、浸透圧ポンプ(Alzet 1007D;Alza、Palo Alto、CA)を移植した。カニューレを右側脳室に配置した(ブレグマに対して前後+0.2mm、外側+0.8mmおよびラムダとブレグマとの間の同じ高さにした頭蓋骨の硬膜より下の背腹方向2.5mm)。LH(下垂体由来のヒトLH33μg/ml;National hormone and peptide program、University of California Los Angeles、CA、USA)を、1mg/mlマウス血清アルブミン(Sigma)を含む0.9%生理食塩水に溶解した。各動物に、0.5μl/時間の流速でビヒクル単独またはLHのいずれかを6日間注入し、400ng/日のLHの送達を得た。
【0115】
(TUNELアッセイ)
TUNEL標識化を、凍結組織に対する使用のための製造業者の指示書に従って、ROCHE In Situ Cell Death Kit(カタログ番号684795)を用いて行った。
【0116】
(実施例1)
(反対の性の臭気は増殖を刺激する)
雄の臭気または雌の臭気の影響を測定するために、成体のマウスを、2日間、7日間または14日間、反対の性の臭気に曝露した。コントロール群を、同じ期間、同じ性の臭気に曝露した。次いで、このマウスにBrdUを与えて、増殖性細胞を標識し、BrdU陽性細胞の位置を免疫組織化学研究によって同定した。雌マウスまたは雄マウスをまた、7日間(雌)または2日間(雄)、並行する実験においてコントロールの臭気化されていないケージに曝露した。これらの動物は、同じ性の臭気に曝露された動物とは異ならない(データは示していない)。
【0117】
図1Aに示すように、雌マウスのSVZにおける増殖性細胞は、2日間、7日間または14日間、雌の臭気に曝露された後、同じレベルのままであった。しかし、雄の臭気に曝露された雌の群において、SVZにおける増殖性細胞は、時間とともに変化した:7日後に顕著に増加し、14日後に顕著に減少した。2日間の曝露は、顕著な効果を示さなかった。Ki67を、増殖性細胞を標識するために使用した場合、同じパターンを観察した(図1B)。このことは、BrdU陽性細胞の変化が、BrdUの優先的な取り込みよりむしろ、増殖レベルの変化を反映したことを示した。
【0118】
上記の実験に使用される雄マウスおよび雌マウスは、同腹子または以前に一緒に出荷されたマウスから得た。従って、これらのマウスは、実験を行う前に、互いの臭気に曝露されていた。この影響が、同腹子または目的の臭気に予め曝露されていた動物に特異的である可能性を除外するために、以前に同じ場所に存在しなかった、同腹子由来のマウスを使用して、実験を繰り返した。マウスが同腹子であろうと同腹子でなかろうと、同様の効果を観察した(図1C)。このことは、雄の臭気の効果が、特定の同腹子または予め曝露された臭気に制限されないことを示した。
【0119】
雌の臭気もまた、雄マウスの脳における増殖に影響を与えたが、この影響は異なる時間的パターンであった。雄を2日間、雌の臭気に曝露した場合、BrdU陽性細胞(図2A)またはKi67陽性細胞(図2B)の数が突然増加した。しかし、7日間または14日間の曝露の後、新たに増殖した細胞の数が、コントロールレベルまで減少した。雌マウスと同様に、異なる同腹子を使用した場合、雌の臭気の効果が、観察され得た(図2C)。
【0120】
著しいことに、海馬における神経幹細胞はまた、性に特異的な臭気に応答した。再び、2日間の雄の臭気に対する曝露は、雌マウスに対して顕著な効果を示さなかったが、7日間の曝露は、海馬における増殖の顕著な増加を生じた(図3)。14日間の曝露の後、増殖性細胞のレベルは、雌の臭気に曝露された雌と比較した場合、雄の臭気に曝露された雌において顕著に低下した。本発明者らの見解によれば、成長因子(例えば、EGFさらにFGF)以外の任意の刺激物が、SVZおよび海馬における神経幹細胞に同様の効果を与えることを示すのは、これが、初めてである。
【0121】
さらなるコントロールとして、雌マウスを7日間、去勢した雄マウスの臭気に曝露した。この結果は、これらの雌において、偽の雄の臭気に曝露された雌と比較した場合、SVZまたは海馬のいずれかにおけるBrdU標識された細胞の数が、増加しなかったことを示す。偽の雄の臭気は、偽の去勢手術を受けた雄マウスによって臭気化された、臭気化されたケージである。これらの偽の去勢された雄の臭気に曝露された雌は、性フェロモン誘発神経発生を示したが、去勢された雄の臭気に曝露された雌は、神経発生の増加を示さなかった。同様に、2日間、副腎摘出された雌の臭気に曝露された雄マウスもまた、偽の雌の臭気に曝露された雄と比較した場合、SVZまたは海馬においてBrdU標識された細胞の数の増加を示さなかった。去勢および副腎摘出が、フェロモンレベルを減少させることは、公知である(Maら、1998;Kiyokawaら、2004;Zhang Jら(2001))。従って、これらの結果は、フェロモンが、反対の性のSVZおよび海馬の両方において神経幹細胞増殖を誘発するという観察をさらに支持する。
【0122】
(実施例2)
(反対の性の臭気は神経発生を刺激するが、細胞生存を刺激しない)
神経発生はまた、反対の性の臭気への曝露に対して増強した。従って、実施例1からの組織切片を、ダブルコルチン(ニューロンの前駆細胞において発現される細胞質タンパク質)に対して染色し、上記のマウスにおける神経発生の程度を測定した。増殖性細胞の場合のように、雌マウスは、雄の臭気に対する7日間の曝露後、有意により多くのダブルコルチン陽性細胞を有した(図4)が、雄マウスは、雌の臭気に対する2日間の曝露後、有意により多くのダブルコルチン陽性細胞を有した(図5)。
【0123】
反対の性からのフェロモンがまた、神経細胞の生存に影響を与えるか否かを測定するために、TUNELアッセイを行った。この結果は、雄の臭気に対する7日間の曝露後、雌マウスのSVZ(図6A)または嗅球(図6B)において有意な差が観察され得なかったことを示す。
【0124】
(実施例3)
(インビボおよびインビトロでのLHの効果)
雄のフェロモンは、黄体化ホルモン(LH)のレベルを増加させ、プロラクチンのレベルを減少させるが、一方、雌のフェロモンは、プロラクチンの増加に関連することが、公知である(Dulacら、2003)。フェロモンが、反対の性において神経幹細胞増殖および神経発生を増強する方法を調べるための試みにおいて、材料および方法に記載したように、動物にLHを注入した。実際に、LHは、雌マウス(図7Aおよび7B)および雄マウス(図8)の両方のSVZにおいて増殖を有意に増加させる。
【0125】
LHが、神経幹細胞の増殖を刺激することを確認するために、材料および方法に記載したように神経幹細胞培養物を確立した。一次スフィアを解離し、限定した密度でEGFまたはEGFとさらにLH(30nM)の存在下においてプレートして、二次スフィアを形成させた。二次スフィアの数を数えた。その結果を以下に示す:
【0126】
【表3】

【0127】
【表4】

【0128】
従って、LHはまた、培養物において神経幹細胞の自己複製を増加させ得、これは、雄マウスから単離された神経幹細胞より、雌マウスから単離された神経幹細胞に対してより効果的である。
【0129】
(実施例4)
(インビボおよびインビトロでのhCGの効果)
HCGは、LHと同じ活性を有する。材料および方法に記載したプロトコルに従って、組換えhCG(絨毛性ゴナドトロピンα;Ovidrel(登録商標)/Ovitrelle(登録商標)1)またはビヒクル単独をマウスに注入した場合、hCGが、雄マウスおよび雌マウスの両方のSVZにおいて増殖を顕著に増加させることが発見される。海馬における増殖性細胞もまた、両方の性において顕著に増加する。
【0130】
神経発生をまた、ニューロンマーカー、ダブルコルチンまたはNeuNを用いて評価する。SVZまたは嗅球におけるダブルコルチンまたはNeuN陽性細胞の数は、hCGを注入されたマウスにおいて顕著により高い。
【0131】
hCGが神経幹細胞の増殖を刺激することを確認するために、神経幹細胞培養物が、材料および方法に記載されたように確立される。一次スフィアを解離し、限定した密度でEGFまたはEGFとさらに絨毛性ゴナドトロピンαの存在下においてプレートして、二次抗体を形成させる。次いで、二次抗体の数を数え、その結果は、神経幹細胞が、雄の動物由来であろうとまたは雌の動物由来であろうと、hCGが二次スフィアの数を顕著に増加させることを示す。
【0132】
(実施例5)
(さらなる因子の効果)
さらなる因子であるプロラクチンは、実施例3または4に記載した実験に含まれる。従って、マウスに以下を注入する:
(1)LHとプロラクチンとの組み合わせまたはhCGとプロラクチンとの組み合わせ;
(2)LHまたはhCG;あるいは
(3)ビヒクル単独(コントロール)。
【0133】
この結果は、LHまたはhCGは、コントロール群と比較して、SVZにおける増殖を増加させるが、プロラクチンの添加は、LHまたはhCGの効果をさらに増強させることを示す。同様に、プロラクチンが神経幹細胞培養においてLHまたはhCGとともに添加される場合、自己複製(一次スフィア由来の二次スフィアの数)は増強する。
【0134】
同様に、Epo(NeoRecormon)をLHまたはhCGとともに含めて、神経発生に対するこの効果を測定した。この結果は、LHまたはhCG単独によって達成されるレベルよりもEpoがダブルコルチン陽性細胞の数を増強させることを示す。
【0135】
上記の実施例は特定の因子を用いるが、表1に列挙した化合物を含む、LH/hCGのあらゆるアナログまたは改変体が、LHまたはhCGとして使用され得ることは、留意されるべきである。同様に、表2に列挙した因子を含む、神経発生を増強させ得るあらゆるさらなる因子およびそれらのアナログ/改変体は、NeoRecormonの代わりに実施例5に使用され得る。グリア細胞形成は、本明細書中に記載される方法および当該分野で利用可能な知識を使用して実施され得る。
【0136】
(実施例6)
(hCGの筋肉内送達)
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)および黄体化ホルモン(LH)は、ヒトの使用のために市販されている薬物であり、それぞれPregnylおよびProfasiとして市場で売買されている。これらの薬物の各々についての最大安全量は、筋肉内注射によって1日あたり10,000USPユニットである。これは、30gのマウスに対する約5.0USPユニットの用量に相当する。この用量が、マウスにおける前脳の神経発生を誘発するのに十分であるか否かを試験するために、本発明者らは、以下の実験を行った。
【0137】
6〜8週齢の雌CD−1マウスに、0.05ml容積(生理食塩水で希釈した)中の5.0USP単位の組換えhCG(Sigmaカタログ番号C 6322)の単回の筋肉内注射を与えた。コントロールマウスに生理食塩水単独の単回注射を与えた。次いで、このマウスに、hCG注射後2時間を初めとして、2時間ごとに1回、BrdU(120mg/kg)の6回の注射を与えた。このマウスを、最後のBrdU注射の30分後に屠殺し、4%パラホルムアルデドで心臓灌流し、この組織を凍結切片化のために処理した。脳を、各7枚のスライドガラスの2つのセットの上(各スライドガラスの上に12切片)に14ミクロンで連続的に切り出した。BrdU陽性細胞の数を、コントロール動物およびhCG注射された動物の各々について1枚のスライドガラス上で前脳のSVZにおいて数えた。以下のデータは、それぞれ、コントロールマウス(生理食塩水のみ)およびhCG注射されたマウスにおける切片あたりのBrdU+細胞の平均数である。
【0138】
生理食塩水:163±6(n=4)
hCG:206±13(n=4;P<0.02;対応のない t−検定)
従って、単一の低い用量のhCG注射は、前脳のSVZの増殖を26%まで増加させた。
【0139】
(実施例7)
(LHレセプターノックアウトマウス実験)
LHレセプターが、SVZおよび海馬における神経幹細胞に対するLHの効果を直接媒介するか否かを調べるために、本発明者らは、免疫組織化学分析を用いて、両方の領域におけるLHレセプターのレベルを測定した。この結果は、LHレセプターが、雄マウスおよび雌マウスのSVZおよび海馬の両方において見出され得るが、雄は、雌と比較して、より低いレベルのLHレセプターを有することを示す。従って、LHはおそらく、SVZおよび海馬においてそのレセプターに直接的に結合して、本明細書中に記載される生物学的機能を誘発する。
【0140】
LHの役割をさらに調べるために、LHレセプター(LHR)ノックアウト(KO)マウスを、実施例1に記載したような臭気曝露実験において使用した。このマウスは、以前に、Zhang,F.P.ら、2001およびHuhtaniemiら、2002に記載されている。8〜10週齢の成体LHR野生型(WT)およびKOマウスを、2日間または7日間、反対の性の臭気に曝露した。曝露の2日目(雌の臭気に曝露された雄)および7日目(雄の臭気に曝露された雌)に、この動物に、2時間ごとに1回、BrdU(120mg/kg)の6回の注射を与えた。次いで、最後の注射の約30分後に、このマウスを屠殺し、4%パラホルムアルデヒドで心臓灌流し、この組織を凍結切片化のために処理した。マウスの前脳を、各スライドガラスの上に10枚の切片で、7枚のスライドガラスの上に14ミクロンで連続的に凍結切片化した。次いで、各動物からの単一のスライドガラスをBrdUに対して免疫染色し、SVZにおけるBrdU陽性細胞の総数を定量化した。臭気化されていないケージに曝露されたマウスを、ベースラインコントロールとして使用した。
【0141】
この結果を図9および図10に示す。予想したように、雄の臭気は、雌の野生型マウス(+/+)のSVZおよび海馬の両方において増殖の増加を生じた(図9Aおよび9B)。しかし、LHRノックアウトマウス(−/−)において、増殖の増加は、雄の臭気に対する曝露後、海馬において観察されなかった(図9B)。これらの結果は、LHレセプターシグナル伝達が、雌のマウスの海馬において雄のフェロモンの効果のために重要であることを示す。興味深いことに、LHレセプターの欠失は、雄のフェロモンに応答するSVZにおいて増殖に影響を与えなかった(図9A)。同様に、雄のマウスにおいて、LHレセプターノックアウトは、SVZまたは海馬のいずれにおいても雌性フェロモン誘発増殖に対して影響を示さなかった(図10)。従って、LHは、雌および雄の両方のSVZおよび海馬において神経幹細胞増殖を誘発するのに十分であるが、SVZおよび雄の海馬において、やはりフェロモンの作用を媒介し得る因子(単数または複数)が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1A】図1Aは、2日、7日または14日の曝露後の雌マウスのSVZにおける神経幹細胞の増殖に対する雄の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。F−M、雄の臭気に曝露された雌マウス;F−F、雌の臭気に曝露された雌マウス。生のデータは、各パネルの一番上に示される。図1Aは、SVZにおけるBrdU陽性細胞の数に対する効果を示す。
【図1B】図1Bは、2日、7日または14日の曝露後の雌マウスのSVZにおける神経幹細胞の増殖に対する雄の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。F−M、雄の臭気に曝露された雌マウス;F−F、雌の臭気に曝露された雌マウス。生のデータは、各パネルの一番上に示される。図1Bは、SVZにおけるKi67陽性細胞の数に対する効果を示す。
【図1C】図1Cは、2日、7日または14日の曝露後の雌マウスのSVZにおける神経幹細胞の増殖に対する雄の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。F−M、雄の臭気に曝露された雌マウス;F−F、雌の臭気に曝露された雌マウス。生のデータは、各パネルの一番上に示される。図1Cは、同腹子と非同腹子との比較を示す。
【図2A】図2Aは、2日、7日または14日の曝露後の雄マウスのSVZにおける神経幹細胞の増殖に対する雌の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。M−F、雌の臭気に曝露された雄マウス;M−M、雄の臭気に曝露された雄マウス。生のデータは、各パネルの一番上に示される。図2Aは、SVZにおけるBrdU陽性細胞の数に対する効果を示す。
【図2B】図2Bは、2日、7日または14日の曝露後の雄マウスのSVZにおける神経幹細胞の増殖に対する雌の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。M−F、雌の臭気に曝露された雄マウス;M−M、雄の臭気に曝露された雄マウス。生のデータは、各パネルの一番上に示される。図2Bは、SVZにおけるKi67陽性細胞の数に対する効果を示す。
【図2C】図2Cは、2日、7日または14日の曝露後の雄マウスのSVZにおける神経幹細胞の増殖に対する雌の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。M−F、雌の臭気に曝露された雄マウス;M−M、雄の臭気に曝露された雄マウス。生のデータは、各パネルの一番上に示される。図2Cは、同腹子と非同腹子との比較を示す。
【図3】図3は、2日、7日または14日の曝露後の雌マウスの海馬における神経幹細胞の増殖に対する雄の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。F−M、雄の臭気に曝露された雌マウス;F−F、雌の臭気に曝露された雌マウス。生のデータは、各パネルの一番上に示される。
【図4】図4は、2日、7日または14日の曝露後の雌マウスにおける神経発生に対する雄の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。F−M、雄の臭気に曝露された雌マウス;F−F、雌の臭気に曝露された雌マウス。DCX、ダブルコルチン。生のデータは、各パネルの一番上に示される。
【図5】図5は、2日、7日または14日の曝露後の雄マウスにおける神経発生に対する雌の臭気の効果を示す。2D、7Dおよび14Dは、それぞれ、2日、7日および14日の曝露を示す。M−F、雌の臭気に曝露された雄マウス;M−M、雄の臭気に曝露された雄マウス。DCX、ダブルコルチン。生のデータは、各パネルの一番上に示される。
【図6】図6は、TUNEL(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性dUTPニック末端標識)アッセイを示す。雌マウスは、7日間、雄の臭気に曝露された(F−M)か、または雌の臭気に曝露され(F−F)、プログラム細胞細胞死を受けた細胞の数は、TUNELアッセイによって測定された。(A)および(B)は、それぞれ、SVZおよび嗅球におけるアポトーシスの細胞数を示す。
【図7A】図7Aは、雌マウスのSVZにおけるBrdU陽性細胞の数に対するLHの効果を示す。図7Aは、LHの注入2日後のLHの効果を示す。VEH、ビヒクル。
【図7B】図7Bは、雌マウスのSVZにおけるBrdU陽性細胞の数に対するLHの効果を示す。図7Bは、LHの注入6日後のLHの効果を示す。VEH、ビヒクル。
【図8】図8は、LHの注入2日後の雄マウスのSVZにおけるBrdU陽性細胞の数に対するLHの効果を示す。VEH、ビヒクル。
【図9】図9は、雌マウスにおけるフェロモン誘発神経幹細胞増殖におけるLHレセプターの効果を示す。(A)および(B)は、それぞれ、SVZ(A)および海馬(B)におけるLHレセプターノックアウトの効果を示す。(−/−):LHレセプターノックアウト。(+/+):野生型。ベースライン:臭気化されていないケージに曝露されたマウス。雌−雌:雌の臭気に曝露された雌マウス。雌−雄:雄の臭気に曝露された雌マウス。P<0.05;LSD事後検定(posthoc test)。
【図10】図10は、雄マウスにおけるフェロモン誘発神経幹細胞増殖におけるLHレセプターの効果を示す。(A)および(B)は、それぞれ、SVZ(A)および海馬(B)におけるLHレセプターノックアウトの効果を示す。(−/−):LHレセプターノックアウト。(+/+):野生型。ベースライン:臭気化されていないケージに曝露されたマウス。雄−雌:雌の臭気に曝露された雄マウス。雄−雌:雌の臭気に曝露された雄マウス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において神経幹細胞を増加させる方法であって、該方法は、有効量の黄体化ホルモン(LH)またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記哺乳動物が、成体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記神経幹細胞が、脳室下帯に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記神経幹細胞が、海馬に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記LHまたはhCGが、全身に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記LHまたはhCGが、前記哺乳動物の脳に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
さらなる因子が前記哺乳動物に投与される請求項1に記載の方法であって、該さらなる因子は、FSH、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、プロラクチン、プロラクチン放出ペプチド(PRP)、サイクリックAMP、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、上皮増殖因子(EGF)、トランスホーミング増殖因子α(TGFα)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、エストロゲン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インスリン様成長因子、白血病抑制因子、および/または毛様体神経栄養因子(CNTF)からなる群より選択される、方法。
【請求項8】
前記哺乳動物が、神経変性疾患に罹患する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記神経幹細胞が、前記哺乳動物に移植される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物において神経発生を増強する方法であって、該方法は、有効量の黄体化ホルモン(LH)またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記哺乳動物が、成体である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記神経発生が、脳室下帯において生じる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記神経発生が、海馬において生じる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記LHまたはhCGが、全身に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記LHまたはhCGが、前記哺乳動物の脳に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
さらなる因子が、前記哺乳動物に投与される、請求項10に記載の方法であって、該さらなる因子は、FSH、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、プロラクチン、プロラクチン放出ペプチド(PRP)、サイクリックAMP、脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、セロトニン、上皮増殖因子(EGF)、トランスホーミング増殖因子α(TGFα)、トランスホーミング増殖因子β(TGFβ)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、エストロゲン、成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、インスリン様成長因子、白血病抑制因子、毛様体神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、および/またはソニックヘッジホッグ(SHH)からなる群より選択される、方法。
【請求項17】
前記哺乳動物が、神経変性疾患に罹患する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
インビトロでの神経幹細胞の数を増加させる方法であって、該方法は、少なくとも1つの神経幹細胞と、有効量の黄体化ホルモン(LH)またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項19】
前記神経幹細胞が、成体の哺乳動物に由来する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記神経幹細胞が、哺乳動物の脳室下帯に由来する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記神経幹細胞が、哺乳動物の海馬に由来する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
インビトロでの神経発生を増強する方法であって、該方法は、少なくとも1つの神経幹細胞と、有効量の黄体化ホルモン(LH)またはヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)とを接触させる工程を包含する、方法。
【請求項23】
前記神経幹細胞が、成体の哺乳動物に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記神経幹細胞が、哺乳動物の脳室下帯に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記神経幹細胞が、哺乳動物の海馬に由来する、請求項22に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−522153(P2007−522153A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552438(P2006−552438)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000184
【国際公開番号】WO2005/077404
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506274785)ステム セル セラピューティクス コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】