説明

移動中継伝送システム

【課題】 中継局の局数にかかわらず2波の電波だけで中継できるようにした移動中継伝送システムを提供すること。
【解決手段】 移動局Mから複数の中継局Ra、Rbを経由して放送センタCに中継する際、移動局MにGPS装置2を設けて当該移動局Mの位置を検出し、中継局Raを経由する電波伝播経路の長さと中継局Rbを経由する電波伝播経路の長さの違いによる電波伝播時間遅延を補正し、中継局Raから放送センタCに送信されるマイクロ波と中継局Rbから放送センタCに送信されるマイクロ波を同一の周波数にしたときの位相ずれが抑えられるようにした。このとき、更に中継局の受信状態の評価結果を別回線で伝送し、電波品質が比較的良好な前記中継局のみ基地局に再送信するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン中継用の伝送システムに係り、特に移動中の被写体を対象としたテレビジョン中継のための移動中継伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばマラソンなど、屋外で広い範囲に渡って行われる競技の実況放送に際しては、自動車などの移動手段に送信装置を搭載して移動局とし、移動する走者をテレビジョンカメラで追尾しながら撮像する方法が用いられるが、このとき、状況によっては、移動局からそのまま映像信号を放送センタに無線伝送するのが困難な場合があり、このような場合、図4に示すような移動中継伝送システムが用いられる。
【0003】
ここで、この図4に示した移動中継伝送システムにおいては、自動車Aに送信装置11を搭載して移動局Mとすると共に、マラソン走路Wに対して見通し関係にある丘陵や高層ビルなどの比較的高い場所を中継点Xとして選定し、ここに受信装置13と送信装置14を設置して中継局Rとし、移動局MのテレビジョンカメラTVで撮像したマラソン走者の映像を移動局Mの送信装置11から送信し、これを中継局Rの受信装置13で受信した上で再び送信装置14から基地局となる放送センタCに送信し、受信装置16で受信するようになっている。
【0004】
そして、この図4のシステムの場合、移動局Mと中継局Rの間の伝送には、例えば800Mヘルツ波によるOFDM方式を用い、中継局Rと放送センタCの間では、マイクロ波によるアナログ伝送方式が用いられるのが通例である。ここで、このOFDM方式(直交周波数分割多重変調方式)とは、多数のディジタル変調波を加え合わせたマルチキャリア変調方式の一種で、これによれば信号のレベル変動に強く、移動中でも安定した伝送が得られるので、移動中継に従来から広く採用されているものである。
【0005】
ところで、例えば上記したマラソン競技など、移動距離が長い場合には、移動局Mの移動範囲が広くなるので、中継局Rとの位置関係によっては移動局Mと中継局Rの間の伝送が困難になってしまうことがある。特に近年は、テレビジョン方式も従来のSDTV(標準テレビジョン方式)からHD(例えばハイビジョン方式)に移行しているが、このとき伝送方式についても、SDTV方式の場合なら最低受信電界が−90dbm程度でも良い8MbpsのDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying:4相差動位相偏移変調方式)で済んでいたが、HD方式では、最低受信電界が−85dbm程度しかない16QAM方式(16Quadrature Amplitude Modulation:16値直交振幅変調方式)が必要になり、このため中継が更に困難になってしまう事例も多くなる。
【0006】
そこで、このような場合には、図5に示すように、中継点Xに加えて中継点Yを選定し、夫々に中継局Ra、Rbを設置したシステムが従来から適用されている。そして、この図5のシステムの場合、移動局Mから複数の中継局Ra、Rbに対する信号の伝送には1波の800Mヘルツ波が共通に用いられるが、複数の中継局Ra、Rbから放送センタCに対しては、それぞれ異なった周波数のマイクロ波aとマイクロ波bが個別に用いられている。なお、このときの中継局の局数はXとYの2局にに限らず、3以上にしなければならない場合もある。
【0007】
このとき受信装置13aと送信装置14a、それにマイクロ波aは中継局Raの機器とマイクロ波であることを表わし、受信装置13bと送信装置14b、それにマイクロ波bは中継局Rbの機器であることを表わしている。そして、放送センタCでは、これらマイクロ波aとマイクロ波bのそれぞれに対応した受信装置15a、15bを備え、これらの出力を切換装置16で選択し、いずれか一方の出力を状況に応じて本線に送り出すようにしている。
【0008】
ここで、このような中継伝送システムに関連する従来技術としては、例えば特許文献1の開示を挙げることができる。また、各中継局の受信機が受信状態判定手段を有し、中継局の受信状態を別回線で基地局に伝送するようにした従来技術としては、特許文献2の開示を挙げることができる。
【特許文献1】特開平10−276343号公報
【特許文献2】特開2005−51755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術は、電波資源に限りがある点に配慮がされているとはいえず、電波資源の有効利用に問題があった。すなわち、電波として使用が可能な周波数チャンネルには限りがあり、従って公共物として規制され、使用可能な周波数については認可が必要で、このため中継に使用する周波数チャンネル数は少ない方が良いに決まっているが、このとき従来技術では、中継局の局数分のマイクロ波チャンネルが基地局に対する伝送に使用されてしまうので、電波資源の有効利用に問題が生じてしまうのである。
【0010】
本発明の目的は、中継局の局数にかかわらず移動車から中継局の電波と中継局から放送センタの電波と2波の電波だけで中継できるようにした移動中継伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、移動局からの中継に複数の中継局を用いた移動中継伝送システムにおいて、前記移動局に位置検出手段を設け、前記複数の中継局を経由する各電波伝播経路での電波伝播時間の相違が、前記位置検出手段の検出結果に応じて補正されるようにして達成される。
【0012】
このとき、前記中継局は、中継すべき信号の品質が低下したとき、中継動作を停止させるようにしてもよい。
【0013】
また、上記伝送システムにおいて、前記各中継局の受信機に受信状態判定手段を有し、前記中継局の受信状態の比較可能な評価結果を別回線で前記中継局間で互いに伝送し前記各中継局受信の電波品質を比較する手段を各中継局に有するか、前記各中継局の受信状態を前記基地局に伝送し前記各中継局受信の電波品質を比較する手段を前記基地局に有し、電波品質が比較的良好な前記中継局のみ基地局に再送信してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、伝送経路の違いによる位相ずれが補正できるので、複数の中継点から基地局に対する伝送に同じ周波数のキャリアが使用できるようになり、電波資源の有効利用に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による移動中継伝送システムについて、図示の実施の形態により詳細に説明する。ここで図1は、本発明に係る移動中継伝送システムの一実施の形態を示すブロック構成図で、図において、1は送信装置で、自動車Aに搭載され、これにより移動局Mとしての機能が得られるようにしてある点では、図4と図5に示した従来技術の場合と同じであるか、ここでは更にGPS装置2が自動車Aに搭載され、これにより自動車Aの位置が検出され、それが送信装置1に供給されるようになっている点で、従来技術とは異なっている。
【0016】
次に、この図1の実施形態でも、中継点がXとYの2箇所に設定されていて、それぞれに中継局Raと中継局Rbが設置され、各々には受信装置3a、3bと送信装置4a、4bが備えられ、これにより中継局としての機能が得られるようになっている点でも、図4と図5に示した従来技術の場合と同じであるか、ここでも更に演算部5a、5bと遅延部6a、6bが備えられている点で従来技術とは異なっている。
【0017】
このとき、中継局Raと中継局Rbの各々における送信装置4a、4bは、それらにより送信されるマイクロ波として、同じ周波数のマイクロ波、例えば図4の従来技術の場合と同じマイクロ波aが用いられるようにしてあり、従って、この実施形態では、中継局が中継局Raと中継局Rbの2局あるにもかかわらず、送信センタCには1台の受信装置7しか設置されておらず、この点でも図5に示した従来技術とは異なっている。
【0018】
そこで、まず移動局Mの機器について、図2により説明すると、この図2において、まず、送信装置1は、図示のように、16QAM−OFDM方式の変調部MODと周波数800MHzの高周波送信部TXを備え、テレビジョンカメラTVから供給される映像信号VにGPS装置2から供給される位置情報Pを多重化し、8Mbpsの16QAM−OFDM方式で変調された周波数800MHzの高周波信号800M(V、P)による電波800M1をアンテナから送信する働きをする。
【0019】
このとき、GPS装置2は、自動車Aの位置、つまり移動局Mの位置を検出し、位置情報Pを出力する働きをする。なお、このときのGPS装置2による位置の検出は、複数基のGPS衛星からのGPS信号を受信することにより与えられるが、このことは、いまや周知のことであると言えるので、ここでの説明は割愛する。
【0020】
次に、中継局Raと中継局Rbにおける機器について、図3により説明すると、この図3の(a)において、まず受信装置3a、3bは、周波数800MHzの信号を対象とした高周波フロント部HF(800M)と16QAM−OFDM方式の復調部DEM(16QAM−OFDM)を備え、8Mbpsの16QAM−OFDM方式で変調された周波数800MHzの高周波信号800M(V、P)をアンテナから入力し、16QAM−OFDM復調して映像TS信号Va、Vbと位置情報Pa、Pbのそれぞれにデコードする働きをする。
【0021】
このとき送信装置4a、4bは、図3(b)、(c)に示すように、補正映像信号Va、Vbを入力する遅延部6a、6bとデジタル変調部MOD(16QAM−OFDM)とマイクロ波aの周波数のキャリアで動作する高周波送信部TX(マイクロ波)を備え、それぞれ放送センタC方向に指向されているパラボラアンテナに供給する働きをし、この結果、各中継局Ra、Rbで必要とする中継機能が得られることになる。このとき遅延部6a、6bは、図3(b)に示されているように、デジタル変調部MODの前に設けても、同図3(c)に示されているように、デジタル変調部MODの後に設けてもよい。
【0022】
しかも、このとき、高周波送信部TX(マイクロ波)では、図示されていないが、移動局Mから受信されている800M1のキャリアに位相ロックしたマイクロ波のキャリヤを用い、これを補正映像信号Va’、Vb’で16QAM−OFDM変調してパラボラアンテナに供給するように構成してある。
【0023】
次に、演算部5a、5bは、位置情報Pa、Pbを入力し、内部に持っている地図データ上での移動局Mの位置に基づいて移動局Mから各中継局Ra、Rbまでの直線距離Lma、Lmbを割り出す。そして、これに、各中継局Ra、Rbから放送センタCまでの直線距離Lac、Lbcを加算して夫々距離Lmac、Lmbcとする。つまり、
Lmac=Lma+Lac
Lmbc=Lmb+Lbc
となるようにしてある。
【0024】
そうすると、このときの距離Lmacは、中継局Raを経由した場合の移動局Mから放送センタCに至るまでの電波の伝播距離であり、他方、距離Lmbcは、中継局Rbを経由した場合の移動局Mから放送センタCに至るまでの電波の伝播距離となる。このとき各中継局Ra、Rbから放送センタCまでの直線距離Lac、Lbcは、何れも中継点Xと中継点Yを設定したとき、地図などから既知の値として直ちに求められることは言うまでもない。
【0025】
そこで、演算部5a、5bは、これら距離Lmac、Lmbcを各々電波伝播時間に換算して遅延時間データDTa、DTbとし、これらを遅延部6a、6bに供給する。そこで、これら遅延部5a、5bは、後で詳述するように、入力された遅延時間データDTa、DTbに応じて映像信号Va、Vbのそれぞれに遅延量を与え、補正映像信号Va’、Vb’がそれぞれ送信装置4a、4bに供給されるようにするのである。
【0026】
ここで、図1に戻り、このとき放送センタCに設置してある受信装置7では、一方の中継局Raから伝送されてくるマイクロ波aと他方の中継局Rbから伝送されてくるマイクロ波aが一緒になって同時に受信されることになるが、このとき、双方の変調信号の位相とキャリヤの位相が或る程度以下の誤差で一致しているという位相合わせ条件が満たされていれば、一方の中継局Raから伝送されてくるマイクロ波aと他方の中継局Rbから伝送されてくるマイクロ波aが重畳して受信された場合でも支障無く映像信号Vを得ることができる。
【0027】
このように位相合わせ条件を満足させることにより、同一周波数の電波(マイクロ波a)による複数チャネル伝送を可能にする技法のことをSFN(Single Frequendy Network:単一周波数伝送網)伝送と呼ぶが、ここで上記した「或る程度以下の誤差」について説明すると、まず、電波は、1kmの伝播距離で約3μ秒の遅延を生じる。一方、OFDM方式では、例えば2kモードでも12μ秒のガードインターバルしかないため、3μ秒〜6μ秒の遅延時間差に抑える必要があり、従って、これが上記した「或る程度以下の誤差」を規定するものとなる。なお、移動局Mの場合、その移動に伴うドップラー効果の影響が考えられるが、これについては、3×108 m/sの電波伝播速度に対して、中継時にはせいぜい10m/s程度の動きしかない移動局Mの場合、無視できる。
【0028】
そこで、次に、上記した位相合わせ条件が、この実施形態ではどのようにして保証されているのかについて説明すると、まず、この位相合わせ条件を満たすためには、その前提として、双方のキャリアの周波数が一致している必要があるが、このことは、この実施形態の場合、上記したように、中継局Ra、Rbの双方において、各送信装置3a、3bの高周波送信部TX(マイクロ波)が移動局Mから受信されている800M1のキャリアに位相ロックしたマイクロ波のキャリヤを用いるようにしてあるとにより保証されている。つまり、この場合、同一のキャリア源で動作していることになるからである。
【0029】
このとき、ルビジウム原子発振器の実用化が進んでいる近年の状況からすれば、移動局Mの送信装置1でも、そのキャリア源として、このルビジウム原子発振器を使用することができ、この場合、高精度の周波数安定度のもとで高い信頼性の保持が可能になるが、更に必要ならGPS衛星やガリレオ衛星の電波、或いは地上デジタル放送の電波を利用するようにしてもよい。
【0030】
次に、位相合わせ条件について、更に説明すると、このような中継システムの場合、図示のように、移動局Mから放送センタCまでの電波の伝播経路が中継局Raを経由する経路と中継局Rbを経由する経路の2系統になっているので、一方の中継局Raから伝送されてくるマイクロ波aと他方の中継局Rbから伝送されてくるマイクロ波aとで伝播経路の長さが異なっていることが位相合わせの問題になる。しかも、このとき、移動局Mは、その名称の通り移動するので、夫々の伝播経路で長さが変化することになり、更に問題になる。
【0031】
そこで、この実施形態では、自動車AにGPS装置2を取付けて移動局Mの位置を表わす位置情報Pを検出し、これにより、上記したように、中継局Raを経由した場合の移動局Mから放送センタCに至るまでの電波の伝播距離Lmacと中継局Rbを経由した場合の移動局Mから放送センタCに至るまでの電波の伝播距離Lmbcを求め、これらから電波の伝播時間をそれぞれ算出し、これらを各々の伝播時間に対応した遅延データDa、Dbに換算して遅延部6a、6bに供給し、これにより補正映像信号Va’、Vb’がそれぞれ送信装置3a、3bに供給されるようにしてある。
【0032】
このとき、これら補正映像信号Va’、Vb’については、中継局Raを経由した場合の移動局Mから放送センタCに至るまでの電波の伝播時間と中継局Rbを経由した場合の移動局Mから放送センタCに至るまでの電波の伝播時間とが見掛け上、同じになるように、それぞれ遅延時間データDTa、DTbにより、各々の遅延部5a、5bにより遅延させられており、従って、放送センタCに受信されたマイクロ波aについては、何れも同じ時間だけ遅れた信号となり、従って、位相合わせ条件が満足されることになる。
【0033】
具体的に説明すると、まず、各遅延部6a、6bを、遅延時間データDTa、DTbが入力されていない状態のとき、各々の遅延時間が予め設定してある最大遅延時間DTmax になるように設定する。そして遅延時間データDTa、DTbが入力されたら、最大遅延時間DTmax から遅延時間データDTa、DTbを減算した遅延時間DTx(=DTmax−DTa)、DTy(=DTmax−DTb)にそれぞれ遅延時間が設定されるようにする。このときの最大遅延時間DTmax については、移動局Mの移動範囲内で中継局Ra、Rbから一番遠くなる場所に移動局Mが移動したときの伝播距離Lmacと伝播距離Lmbcの中で大きい方の伝播距離における電波伝播時間に設定する。
【0034】
この結果、中継局Raから放送センタCに受信されたマイクロ波aと中継局Rbから放送センタCに受信されたマイクロ波aについては、何れも同じ遅延時間、すなわち最大遅延時間DTmax に等しい遅延時間を持つようにされ、従って、遅延が伴うものの位相は揃った信号になるので、位相合わせ条件が満足させられることになる。
【0035】
従って、この実施形態によれば、SFN伝送によるチャネル数の抑制を得ることができるようになり、この結果、電波資源の有効利用に寄与することができる移動中継伝送システムを提供することができる。
【0036】
ところで、このようにSFN伝送を適用した場合、例えば受信レベルが低く、品質が良くない信号をSFN伝送の仲間に入れたとすると、他の信号に悪影響を与えてしまう虞がある。そこで、図1の実施形態において、各中継局Ra、Rbに、そこで中継すべき信号の品質が低下したとき、例えば送信装置4a、4bによるマイクロ波の送信を止め、中継動作を停止させるようにしてもよい。
【0037】
この場合、図6の実施形態のように、各中継局の受信機(受信装置)は受信状態判定手段を有し、各中継局の受信状態の比較可能な評価結果を別回線で中継局間で互いに伝送し、各中継局受信の電波品質を比較する手段を各中継局に有し、電波品質が比較的良好な中継局のみ基地局に再送信し、電波品質が比較的良好でない中継局の電波を停止してもよく、図7の実施形態のように、各中継局の受信機は受信状態判定手段を有し、中継局の受信状態を重畳または別回線で基地局に伝送し、基地局に中継局受信の電波品質を比較する手段を有し、電波品質が比較的良好な中継局を基地局で選択し、基地局から別回線で中継局に再送信または電波停止の指示を伝送してもよい。
【0038】
具体的に説明すると、図6は、上記したマイクロ波の送信を止めるようにした場合の本発明の一実施形態で、図において、10a、10bは判定部で、その他の構成は、ここでは省略して描かれているが、図1の実施形態と同じである。従って、この実施形態の場合、図1の実施形態において、各中継局Ra、Rbに各々判定部10a、10bが付加されたものとして構成されていることになる。そして、これらの判定部10a、10bは、図示のように、各中継局Ra、Rbに設置されていて、夫々の受信装置3a、3bから受信情報A、Bを取り込むと共に、別中継回線La、Lbを介して相互に結ばれ、他の中継局の受信情報A、Bも取り込めるようになっている。
【0039】
このとき、上記したように、移動局Mと中継局Ra、Rbの間の伝送にはOFDM方式が用いられている。従って、受信情報A、Bは、受信装置3a、3bから簡単に取り出すことができる。この場合、中継局Ra、Rbの間に設けられている別中継回線La、Lbとしては、例えばRZ−SSB(Return Zero Single Side Band)無線機やワイヤレスインカムなどの放送局に認可されている狭帯域無線による伝送回線を用いても良く、無線LANや電話回線を用いても良いが、何れの場合も、中継局Raの判定部10aは、中継局Rbの受信装置3bから別中継回線Lbを介して受信情報Bを取り込むことができ、中継局Rbの判定部10bは、中継局Raの受信装置3aから別回線Laを介して受信情報Aを取り込むことができるようになっている。
【0040】
そこで、各判定部10a、10bは、夫々受信情報A、Bの双方を入力し、自中継局における受信品質と他中継局の受信品質とを比較評価し、その評価結果に応じて動作停止指令Sを発生し、各送信装置4a、4bに供給する。具体的に説明すると、中継局Raの判定部10aでは、受信装置3aによる受信品質が、受信装置3bによる受信品質より悪かった場合、動作停止指令Sを送信装置4aに供給し、中継局Rbの判定部10bでは、受信装置3bによる受信品質が、受信装置3aによる受信品質より悪かった場合、動作停止指令Sを送信装置4bに供給するのである。
【0041】
従って、この図6の実施形態によれば、中継に必要な電波の伝送を確保しながら、不要な電波の伝播を抑えることができるので、この点でも電波資源の有効利用に寄与することができる。
【0042】
なお、この図6の実施形態では、上記の構成に加えて、放送センタCに遅延アダ(遅延プロファイルアダプタ)17a、17bを設け、受信情報A、Bがモニタできるようにしてあり、従って、この実施形態によれば、放送センタCにおいて中継電波の伝播状況を監視することができる。
【0043】
次に、図7の実施形態の場合、1台の判定部10cを用い、それが放送センタCに設置され、これに別中継回線La、Lbを介して夫々受信情報A、Bの双方が入力されるようになっている。そして、この判定部10cは、夫々受信情報A、Bの双方を入力し、一方の中継局における受信品質と他方の中継局の受信品質とを比較評価し、その評価結果に応じて動作停止指令Sを発生し、更に別の別中継回線Lca、Lcbを介して夫々の中継局A、Bに伝送し、各送信装置4a、4bに供給する。具体的に説明すると、受信装置3aによる受信品質が、受信装置3bによる受信品質より悪かった場合、動作停止指令Sを送信装置4aに供給し、受信装置3bによる受信品質が、受信装置3aによる受信品質より悪かった場合、動作停止指令Sを送信装置4bに供給するのである。
【0044】
従って、この図7の実施形態によっても、図6の実施形態と同じく、中継に必要な電波の伝送を確保しながら、不要な電波の伝播を抑えることができるので、電波資源の有効利用に寄与することができる。
【0045】
また、この図7の実施形態においても、放送センタCに遅延アダ(遅延プロファイルアダプタ)17a、17bを設け、放送センタCにおいて受信情報A、Bがモニタできるようにしてあり、従って、この実施形態でも中継電波の伝播状況が監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る移動中継伝送システムの第1の実施の形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る移動中継伝送システムの第1の実施の形態における移動局を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る移動中継伝送システムの第1の実施の形態における中継局を示すブロック図である。
【図4】従来技術による移動中継伝送システムの一例を示す説明図である。
【図5】従来技術による移動中継伝送システムの他の一例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る移動中継伝送システムの第2の実施の形態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る移動中継伝送システムの第3の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1:送信装置(移動局の送信装置)
2:GPS装置
3a、3b:受信装置(中継局の受信装置)
4a、4b:送信装置(中継局の送信装置)
5a、5b:演算部
6a、6b:遅延部
7:受信装置(放送センタの受信装置)
A:自動車
W:マラソン走路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局からの中継に複数の中継局を用いた移動中継伝送システムにおいて、
前記移動局に位置検出手段を設け、
前記複数の中継局を経由する各電波伝播経路における電波伝播時間の相違が、前記位置検出手段の検出結果に応じて補正されるように構成したことを特徴とする移動中継伝送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動中継伝送システムにおいて、
前記中継局は、中継すべき信号の品質が低下したとき、中継動作を停止することを特徴とする移動中継伝送システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動中継伝送システムにおいて、
前記各中継局の受信装置に受信状態判定手段を有し、
前記中継局の受信状態の比較可能な評価結果を別回線で前記中継局間で互いに伝送し前記各中継局受信の電波品質を比較する手段を各中継局に有するか、
前記各中継局の受信状態を前記基地局に伝送し前記各中継局受信の電波品質を比較する手段を前記基地局に有し、
電波品質が比較的良好な前記中継局のみ基地局に再送信することを特徴とする移動中継伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−236244(P2008−236244A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71398(P2007−71398)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】