説明

移動体通信端末及びアプリケーションプログラム

【課題】 利用者が登録して利用することが可能なプラットフォームに依存しないアプリケーションプログラムで、位置、向き、姿勢、動きを検知するための検知手段によって得られる検知結果データを利用することを可能とする。
【解決手段】 アプリケーションプログラムを携帯電話機にダウンロードして、これを実行する場合、まず、そのアプリケーション実行環境を起動し、その環境下においてアプリケーションプログラムを動作させる。起動したアプリケーションプログラムは、加速度データの取得要求を送り、これを電話機プラットフォームが受け付けると、携帯電話機に設けられた加速度センサによって検知した加速度データをアプリケーションプログラムに受け渡す。これにより、アプリケーションプログラムでは、加速度データを利用した処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケーションプログラムを実行可能な携帯電話機等の移動体通信端末及びそのアプリケーションプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の移動体通信端末としては、プラットフォームに依存しないオブジェクト指向のプログラミング言語で記述されたアプリケーションプログラムを実行可能な携帯電話機が知られている。例えば、JAVA(サンマイクロシステムズ社の登録商標。以下同様。)仮想マシン機能を実装し、JAVAで記述されたアプリケーションプログラムを実行できるようにした携帯電話機が知られている(特許文献1参照)。このような携帯電話機では、所定のサーバからダウンロードするなどして取得した様々なアプリケーションプログラムを利用することが可能である。また、BREW(クアルコム社の登録商標。以下同様。)のアプリケーション実行環境上で動作するアプリケーションプログラムなどについても、同様である。
【0003】
また、特許文献2には、加速度又は角速度を検知するセンサ(検知手段)を備えた携帯電話機が開示されている。この携帯電話機は、センサによって検知した加速度又は角速度に関するデータを表示手段に表示することができる。
また、特許文献3には、加速度を検知するセンサ(検知手段)を備えた携帯電話機が開示されている。この携帯電話機は、センサによって検知した加速度を用いて、その移動軌跡を求め、その移動軌跡を入力文字として認識することができる。
また、特許文献4には、方位を検知する地磁気センサ(検知手段)を備えた携帯電話機が開示されている。この携帯電話機は、複数の方位に数値が関連付けられていて、携帯電話機本体を特定の方位に向けることで、数値入力を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献2、3及び4に記載された携帯電話機は、そのセンサの検知結果に基づいて、携帯電話機の位置、向き、姿勢あるいは動きを検知することができる。このような各種センサは、これらの特許文献には具体的な記載はないが、電話機プラットフォームによって制御されるものである。また、各種センサによって検知された加速度等のデータの保存場所についても、これらの特許文献には具体的な記載はないが、その保存場所は、通常、その電話機プラットフォームが管理するプラットフォーム用記憶領域(第1の記憶手段)である。そのため、従来の携帯電話機において、上記プラットフォーム用記憶領域に記憶された加速度等のデータ(検知結果データ)を利用するプログラムは、その記憶領域を管理する電話機プラットフォーム上で直接動作するものでなければならない。したがって、上記特許文献2、3及び4には明記されていないが、これらの特許文献に開示の携帯電話機において、その検知結果データを用いて行う各種処理は、電話機プラットフォーム上で直接動作するプログラムによって実現される。このようなプログラムは、電話機プラットフォームに依存するものであるため、通常は、予め携帯電話機に登録して、利用者に提供される。そのため、検知結果データを用いるプログラムが新たに開発されても、利用者は、そのプログラムを自分の携帯電話機に登録することができず、これを利用することはできなかった。
【0005】
一方、上述したJAVAで記述されたアプリケーションプログラムは、これを実行するためのアプリケーション実行環境(JAVA仮想マシン等)上で動作するため、電話機プラットフォームに依存しない。よって、上述したように、所定のサーバからダウンロードするなどして自分の携帯電話機に登録して利用することが可能である。しかし、このようなアプリケーションプログラムは、上記アプリケーション実行環境上で管理されるアプリケーション用記憶領域(第2の記憶手段)に記憶されたデータしか利用することができない。すなわち、電話機プラットフォームが管理するプラットフォーム用記憶領域に記憶されたデータは、直接利用することはできない。しかも、従来の携帯電話機には、各種センサによって検知した加速度等の検知結果データを、プラットフォーム用記憶領域からアプリケーション用記憶領域へ移行するための手段がない。したがって、JAVAで記述されたアプリケーションプログラムのようにプラットフォームに依存しないアプリケーションプログラムにおいて、検知結果データを用いた処理を行うことができなかった。これは、BREWのアプリケーション実行環境上で動作するアプリケーションプログラムなどについても、同様である。
【0006】
なお、以上の説明は、携帯電話機を例に挙げて行ったが、他の移動体通信端末においても、同様である。
【0007】
本発明は、上述した背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、利用者が登録して利用することが可能なプラットフォームに依存しないアプリケーションプログラムで、位置、向き、姿勢、動きを検知するための検知手段によって得られる検知結果データを利用することが可能な移動体通信端末及びアプリケーションプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、データを記憶する第1の記憶手段及び第2の記憶手段と、該第2の記憶手段に記憶されたデータを用いて、アプリケーションプログラムを実行するアプリケーションプログラム実行手段とを備えた移動体通信端末において、当該移動体通信端末の位置、向き、姿勢及び動きのうちの少なくとも1つを検知するための検知手段と、該検知手段による検知結果に基づいて得られる検知結果データを、上記第1の記憶手段に記憶する記憶処理を行う記憶処理手段と、上記アプリケーションプログラム実行手段からのデータ移行命令に応じ、該第1の記憶手段に記憶された検知結果データを上記第2の記憶手段に移行するデータ移行手段とを有し、上記アプリケーションプログラム実行手段は、該第2の記憶手段に記憶された検知結果データを用いて、上記アプリケーションプログラムを実行することを特徴とするものである。
この移動体通信端末においては、検知手段によって得られる検知結果データが記憶される第1の記憶手段と、アプリケーションプログラム実行手段が利用可能なデータが記憶される第2の記憶手段とを備えている。このような第2の記憶手段を有することで、アプリケーションプログラム実行手段は、プラットフォームに依存しないアプリケーションプログラムを実行することが可能となる。このようなアプリケーションプログラムは、プラットフォームに依存するアプリケーションプログラムとは異なり、利用者が登録して利用することが可能である。そして、このアプリケーションプログラム実行手段からのデータ移行命令があると、その命令に応じて、第1の記憶手段に記憶された検知結果データが第2の記憶手段に移行される。よって、アプリケーションプログラム実行手段は、検知手段によって得られる検知結果データを用いた処理を行うアプリケーションプログラムを実行することが可能となる。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の移動体通信端末において、上記検知手段は、所定方向に延びる仮想軸のまわりの基準角に対する角度を検知するための角度検知手段を含むことを特徴とするものである。
この移動体通信端末においては、当該移動体通信端末の姿勢を特定することができる。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の移動体通信端末において、上記検知手段は、当該移動体通信端末に働く所定方向の加速度を検知するための加速度検知手段を含むことを特徴とするものである。
この移動体通信端末においては、当該移動体通信端末の位置や動きを特定することが可能となる。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3の移動体通信端末において、上記アプリケーションプログラム実行手段は、上記アプリケーションプログラムの記述に従って上記データ移行命令を発生させる命令セットを実装していることを特徴とするものである。
アプリケーションプログラム実行手段がアプリケーションプログラムの実行中に検知結果データを利用するためには、第1の記憶手段内の検知結果データを第2の記憶手段へ移行させるべく、データ移行命令を発する必要がある。本移動体通信端末においては、このデータ移行命令を発生させるための命令セットが、アプリケーションプログラム実行手段に予め実装されている。よって、アプリケーションプログラム中に、その命令セットを用いる旨の記述を入れておくだけで、そのアプリケーションプログラムを実行するアプリケーションプログラム実行手段に、検知結果データを利用させることができる。
【0012】
また、請求項5の発明に係るアプリケーションプログラムは、請求項4の移動体通信端末が有するアプリケーションプログラム実行手段により実行されることにより、上記命令セットを用いて該アプリケーションプログラム実行手段に上記データ移行命令を発生させるように、該移動体通信端末のコンピュータを機能させることを特徴とするものである。
このアプリケーションプログラムは、アプリケーションプログラム実行手段に予め実装されている命令セットを用いて、検知手段によって得られる検知結果データを利用した処理を行うことができる。なお、本アプリケーションプログラムの受け渡しは、デジタル情報としてプログラムを記録したFD、CD−ROM等の記録媒体を用いて行なってもいいし、移動体通信ネットワーク等の通信回線を用いて行ってもよい。
【0013】
また、請求項6の発明は、データを記憶する記憶手段に記憶されたデータを用いて、アプリケーションプログラムを実行するアプリケーションプログラム実行手段とを備えた移動体通信端末において、上記アプリケーションプログラムの記述に従って上記アプリケーションプログラム実行手段が生成する検知命令に応じて、当該移動体通信端末の位置、向き、姿勢及び動きのうちの少なくとも1つを検知するための検知手段として、3軸の磁気センサ及び2軸の加速度センサを用い、該検知手段による検知結果に基づいて得られる検知結果データを、上記記憶手段に記憶する記憶処理手段を有し、該アプリケーションプログラム実行手段は、該記憶手段に記憶された検知結果データを用いて、上記アプリケーションプログラムを実行することを特徴とするものである。
この移動体通信端末において、アプリケーションプログラムが利用する検知結果データは、3軸の磁気センサ及び2軸の加速度センサの検知結果に基づいて得られるものである。3軸の磁気センサを用いれば、これにより地磁気を検知することで、簡単な構成で、各軸まわりの基準角に対する角度を特定することができ、当該移動体通信端末の姿勢を特定することができる。また、3軸の磁気センサを用いて地磁気を検知すれば、当該移動体通信端末の向き、すなわち、当該移動体通信端末上の特定方向が向いている方位を特定することができる。更に、本移動体通信端末は、2軸の加速度センサによって加速度も検知できるので、当該移動体通信端末の位置や動きも特定することが可能となる。例えば、2軸の加速度センサによって得られる加速度を時間で積分すれば、当該移動体通信端末の速度(動き)を特定することができる。また、例えば、上記3軸の磁気センサの検知結果と組み合わせることで、2軸の加速度センサによって得られる加速度から、検知開始地点に対する現在位置を特定することが可能となる。このように、本移動体通信端末によれば、簡単な構成で、当該移動体通信端末の位置、向き、姿勢及び動きのすべてを特定することが可能となる。なお、本移動体通信端末のアプリケーションプログラム実行手段が実行するアプリケーションプログラムは、プラットフォームに依存しないアプリケーションプログラムだけでなく、プラットフォームに依存するアプリケーションプログラムも含まれる。
【0014】
なお、上記「移動体通信端末」としては、PDC(Personal Digital Cellular)方式、GSM(Global System for Mobile Communication)方式、TIA(Telecommunications Industry Association)方式等の携帯電話機、IMT(International Mobile Telecommunications)−2000で標準化された携帯電話機、PHS(Personal Handyphone Service)、自動車電話機等の電話機のうち、プラットフォームに依存しないアプリケーションプログラムを実行可能なものが挙げられる。また、この「移動体通信端末」としては、上記電話機のほか、電話機能を有しないPDA(Personal Digital Assistance)等の移動型の移動体通信端末も挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至5の発明によれば、位置、姿勢、動きを検知するための検知手段によって得られる検知結果データを、利用者が登録して利用することが可能なプラットフォームに依存しないアプリケーションプログラムで利用することが可能となるという優れた効果がある。
特に、請求項2の発明によれば、当該移動体通信端末の姿勢を利用した様々なアプリケーションプログラムを実行することが可能となるという優れた効果がある。
また、請求項3の発明によれば、当該移動体通信端末の位置や動きを利用した様々なアプリケーションプログラムを実行することが可能となるという優れた効果がある。
また、請求項4及び5の発明によれば、アプリケーションプログラムのプログラミングが容易になるという優れた効果がある。
また、請求項6の発明によれば、移動体通信端末の位置、向き、姿勢及び動きの一部又は全部を利用する多種多様なアプリケーションプログラムを実行することが可能となるので、利用者へ提供できるアプリケーションプログラムの種類を増やすことが可能となるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の動作例1における携帯電話機でアプリケーションプログラムを実行するための処理の流れを示すフローチャート。
【図2】同携帯電話機が利用可能な移動体通信システムの全体構成を説明するための説明図。
【図3】同移動体通信システムを構成するダウンロードサーバのハードウェア構成を示す概略構成図。
【図4】同携帯電話機の外観を示す正面図。
【図5】同携帯電話機のハードウェア構成を示す概略構成図。
【図6】同携帯電話機の主要部を抽出して示したブロック図。
【図7】同携帯電話機におけるソフトウェア構造の説明図。
【図8】同携帯電話機でアプリケーションプログラムを実行する際のシーケンスフロー図。
【図9】動作例2における携帯電話機でアプリケーションプログラムを実行するための処理の流れを示すフローチャート。
【図10】同携帯電話機でアプリケーションプログラムを実行する際のシーケンスフロー図。
【図11】動作例3における携帯電話機でアプリケーションプログラムを実行するための処理の流れを示すフローチャート。
【図12】同携帯電話機でアプリケーションプログラムを実行する際のシーケンスフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図2は、本実施形態に係る移動体通信端末としての携帯電話機が利用可能な移動体通信システムの全体構成を説明するための説明図である。
この移動体通信システムにおいて、ユーザー1が使用する携帯電話機20は、ユーザー1によって登録されたアプリケーションプログラムを実行可能な構成を有している。本実施形態において、このアプリケーションプログラムは、プラットフォームに依存しないオブジェクト指向プログラミングによって開発されたものである。このようなアプリケーションプログラムとしては、JAVAで記述されたアプリケーションプログラム、BREWのアプリケーション実行環境上で動作するアプリケーションプログラムなどが挙げられる。この携帯電話機20は、通信ネットワークとしての携帯電話通信網10に接続可能である。また、この携帯電話通信網10には、プログラム提供用サーバとしてのアプリケーションプログラムダウンロードサーバ(以下、「ダウンロードサーバ」という。)11が接続されている。このダウンロードサーバ11は、携帯電話機20からのダウンロード要求を受け付けると、その要求に係るアプリケーションプログラムを携帯電話機20に対して送信する。
【0018】
ダウンロードサーバ11から提供されるアプリケーションプログラムは、アプリケーションプログラムの開発元2から提供される。具体的には、例えば、アプリケーションプログラム開発元2側のパーソナルコンピュータ等から、専用回線や公衆回線を介してダウンロードサーバ11にアップロードして提供する。なお、開発したアプリケーションプログラムを記録した光ディスクや磁気ディスク等の記録媒体を、アプリケーションプログラム開発元2からダウンロードサーバ11を管理・運営する通信事業者に送り、その記録媒体内のアプリケーションプログラムをダウンロードサーバ11で読み取るようにして、提供してもよい。このようにして提供されたアプリケーションプログラムは、携帯電話機20から携帯電話通信網10を介してダウンロード可能な状態でダウンロードサーバ11に登録される。
【0019】
図3は、上記ダウンロードサーバ11のハードウェア構成を示す概略構成図である。
このダウンロードサーバ11は、システムバス100、CPU101、内部記憶装置、外部記憶装置104、入力装置105及び出力装置106を備えている。上記内部記憶装置は、RAM102やROM103等で構成されている。上記外部記憶装置は、ハードディスクドライブ(HDD)や光ディスクドライブ等で構成されている。上記入力装置105は、外部記憶装置104、マウスやキーボード等で構成されている。上記出力装置106は、ディスプレイやプリンタ等で構成されている。更に、このダウンロードサーバ11は、携帯電話通信網10を介して各ユーザー1の携帯電話機20と通信するための携帯電話用通信装置107を備えている。
上記CPU101やRAM102等の構成要素は、システムバス100を介して、互いにデータやプログラムの命令等のやり取りを行っている。このダウンロードサーバ11を所定の手順に従って動作させるためのプログラムは、ROM103や外部記憶装置104に記憶されており、必要に応じてCPU101やRAM102上の作業エリアに呼び出されて実行される。また、このダウンロードサーバ11には、携帯電話機20に提供するアプリケーションプログラムが外部記憶装置104に記憶されている。ダウンロードサーバ11は、携帯電話機20からのダウンロード要求に応じ、CPU101、RAM102、携帯電話通信網用通信装置107等が協働して、外部記憶装置104に記憶されているアプリケーションプログラムを、携帯電話通信網10を介して携帯電話機20に送信する機能を有している。なお、このダウンロードサーバ11は、専用の制御装置として構成してもいいし、汎用のコンピュータシステムを用いて構成してもよい。また、1台のコンピュータで構成してもいいし、複数の機能をそれぞれ受け持つ複数台のコンピュータをネットワークで結んで構成してもよい。
【0020】
図4は、上記携帯電話機20の外観を示す正面図であり、図5は、その携帯電話機20のハードウェア構成を示す概略構成図である。
この携帯電話機20は、クラムシェル(折り畳み)タイプの携帯電話機であり、システムバス200、CPU201、RAM202やROM203等からなる内部制御装置、入力装置204、出力装置205、携帯電話用通信装置206、加速度センサ207及び地磁気センサ208を備えている。CPU201やRAM202等の構成要素は、システムバス200を介して、互いに各種データや後述のプログラムの命令等のやり取りを行っている。上記入力装置204は、データ入力キー(テンキー、*キー、#キー)21、通話開始キー22、終話キー23、スクロールキー24、多機能キー25、マイク26等から構成されている。上記出力装置205は、液晶ディスプレイ(LCD)27、スピーカ28等から構成されている。上記携帯電話用通信装置206は、携帯電話通信網10を介して他の携帯電話機や上記ダウンロードサーバ11と通信するためのものである。また、RAM202内には、後述する電話機プラットフォームが管理する第1の記憶手段としてのプラットフォーム用記憶領域と、後述するアプリケーション実行環境上で管理される第2の記憶手段としてのアプリケーション用記憶領域とが存在する。
【0021】
上記加速度センサ207は、LCD27の画像表示面に対して平行な面内で互いに直交する2方向(図4中、X軸方向及びY軸方向)に向かう加速度α,αを検出するための2軸のセンサである。この加速度センサ207は、携帯電話機20の内部に設けられた図示しない回路基板上に実装されており、上記加速度α,αを検出できる公知のものを用いることができる。
また、上記地磁気センサ208は、上記X軸及び上記Y軸並びにこれらの軸に直交するZ軸からなる3次元座標上における地磁気の方向を検知する3軸のセンサである。そして、本実施形態では、この地磁気センサ208の検知結果を利用して、X軸、Y軸及びZ軸のまわりの角度θ,θ,θを検出する。具体的には、地磁気の方向が、基準となる地磁気の方向(基準方向)に対して変化したときの変化量を、X軸、Y軸及びZ軸のまわりの角度θ,θ,θを用いて検出する。これにより、地磁気の方向が基準方向にあるときの姿勢から携帯電話機がその姿勢を変化させたとき、その変化後の姿勢を各角度θ,θ,θによって特定することができる。なお、以下の説明では、X軸まわりの角度θをピッチ角といい、Y軸まわりの角度θをロール角といい、Z軸まわりの角度θをヨー角という。また、上記地磁気センサ208を用いることで、例えば上記Y軸が北方位に対してどの向きに向いているかを検知することもできる。この場合、例えば、上記Y軸と北方位とのなす角(以下、「方位角」という。)θによって携帯電話機が向いている方角を特定する。この地磁気センサ208も、携帯電話機20の内部に設けられた図示しない回路基板上に実装されている。
なお、これらのセンサ207,208は、携帯電話機20の本体とは別体の装置として構成してもよい。この場合、例えば、これらのセンサ207,208を備えた外部装置を、携帯電話機20の本体に設けられる外部端子に接続し、その外部装置と携帯電話機20の本体とが一体となるように構成する。
【0022】
図6は、上記携帯電話機20の主要部を抽出して示したブロック図であり、図7は、その携帯電話機20におけるソフトウェア構造の説明図である。
この携帯電話機20は、電話通信部211、データ通信部212、操作部213、アプリケーションプログラム実行管理部214、主制御部215、出力部216、検知手段としてのセンサ検知部217等を備えている。後述する動作例1及び動作例2においては、アプリケーションプログラム実行管理部214がアプリケーションプログラム実行手段として機能し、後述する動作例3においては、主制御部215がアプリケーションプログラム実行手段として機能する。
【0023】
上記電話通信部211は、他の携帯電話機や固定電話機と電話通信を行うために、携帯電話通信網10の基地局と無線通信を行うものであり、上述のハードウェア構成上の携帯電話用通信装置206等に対応する。
【0024】
上記データ通信部212は、上記電話通信部211と同様に、上述のハードウェア構成上の携帯電話用通信装置206等に対応する。このデータ通信部212は、携帯電話機通信網10を介して他の携帯電話機とメールのやり取りを行ったり、携帯電話機通信網10からゲートウェイサーバを介して、インターネット等の外部の通信ネットワークに接続し、インターネット上での電子メールのやり取りやWebページの閲覧等を行ったりするためのものである。また、このデータ通信部212は、携帯電話機通信網10を介して、ダウンロードサーバ11が提供するアプリケーションプログラムをダウンロードするためにも用いられる。
【0025】
上記操作部213は、ユーザー1が操作可能な上述のテンキー21、通話開始キー22、終話キー23等で構成されている。この操作部213を操作することにより、ユーザーは、携帯電話機20に対してURL等のデータを入力したり、電話着信の際に通話の開始及び終了を行ったり、アプリケーションプログラムの選択、起動及び停止を行ったりすることができる。また、ユーザーは操作部213を操作することにより、上記ダウンロードサーバ11からアプリケーションプログラムをダウンロードすることもできる。
【0026】
上記アプリケーションプログラム実行管理部214は、上述のシステムバス200、CPU201やRAM202の一部等で構成されている。このアプリケーションプログラム実行管理部214は、図7のソフトウェア構造上において中央の「アプリケーション実行環境」に対応しており、オブジェクト指向プログラミングで開発されたアプリケーションプログラムに利用されるクラスライブラリ、実行環境管理ライブラリ、アプリケーション管理等のソフトウェアを提供し、アプリケーションプログラムの実行環境を管理する。このアプリケーション実行環境は、実行するアプリケーションプログラムに応じて適宜選定される。例えば、実行するアプリケーションプログラムがJAVAで記述されたものである場合には、JAVAのアプリケーション実行環境を選定する。また、実行するアプリケーションプログラムがBREWの実行環境上で動作するC言語で記述されたものである場合には、BREWのアプリケーション実行環境を選定する。なお、実行するアプリケーションプログラムがJAVAで記述されたものである場合には、BREWのアプリケーション実行環境上に更にJAVAのアプリケーション実行環境を構築することで、これを実行することができる。
【0027】
ここで、アプリケーションプログラムは、クラスライブラリAPI(アプリケーションインターフェース)を介して上記アプリケーション実行環境内にある関数等のクラスライブラリを呼び出して使用できるようになっている。この関数等のクラスライブラリの呼び出しの履歴は、アプリケーションプログラムの仮想的な実行環境(仮想マシン:VM)が終了するまで、RAM202内におけるアプリケーション用記憶領域に記憶される。また、アプリケーション実行環境は、アプリケーションプログラムの実行に際して用いる各種データも、そのアプリケーション用記憶領域に記憶する。そして、この各種データを用いるときには、このアプリケーション用記憶領域から読み出したり、書き込んだりする。また、アプリケーション実行環境内の実行環境管理ライブラリは、電話機プラットフォームAPIを介して後述の電話機プラットフォーム内の電話機プラットフォームライブラリを呼び出して使用できるようになっている。
【0028】
後述の動作例1,2において説明するように、加速度センサ207及び地磁気センサ208等で構成される後述のセンサ検知部217で検知した検知結果データ(加速度α,α及びピッチ角θ、ロール角θ、ヨー角θ)は、アプリケーションプログラムで利用される。従来のアプリケーション実行環境においては、アプリケーションプログラムが上記検知結果データを利用する手段がなかったため、本実施形態では、クラスライブラリに新しいクラス(Orientationクラス)を追加している。このOrientationクラスには、加速度α,αのデータを取得するためのメソッドや、ピッチ角θ、ロール角θ、ヨー角θを取得するためのメソッドが個別に用意されており、いくつかの命令セットを定義可能である。よって、本実施形態によれば、アプリケーションプログラムは、これらのメソッドを使用して上記検知結果データを取得し、これを利用することができる。
【0029】
上記主制御部215は、上記電話通信部211、データ通信部212、操作部213、センサ検知部217を制御するものであり、上述のシステムバス200、CPU201やRAM202等で構成されている。この主制御部215は、アプリケーションプログラム実行管理部214との間で制御命令や各種データのやりとりを行い、これらと協働して制御を行う。また、主制御部215は、図7のソフトウェア構造上において最下部の「電話機プラットフォーム」に対応しており、上記電話通信部211等を制御するための制御用プログラムやユーザインターフェースを実行したり、電話機プラットフォームライブラリを提供したりする。この電話機プラットフォームは、上記アプリケーション実行環境内の実行環境管理ライブラリに対してイベントを送ることにより、アプリケーションプログラムにおいて各種処理を実行したり、アプリケーション管理APIを介して上記アプリケーション実行環境内のアプリケーション管理のソフトウェアを呼び出して使用したりできるようになっている。また、アプリケーション実行環境が電話機プラットフォームAPIを介して電話機プラットフォームライブラリを呼び出して使用したとき、電話機プラットフォームは、その電話機プラットフォームライブラリに応じた処理を実行する。例えば、電話機プラットフォームは、電話機プラットフォームライブラリを利用したアプリケーション実行環境からの指示に基づき、RAM202内における電話機プラットフォームが管理するプラットフォーム用記憶領域に記憶されたデータを読み出して、これをアプリケーション用記憶領域に移行することができる。
【0030】
上記出力部216は、上述の液晶ディスプレイ27、スピーカ28等からなる出力装置205等で構成されている。この出力部216は、上記データ通信部212で受信したWebページ画面を液晶ディスプレイ27に表示する。また、この出力部216の液晶ディスプレイ27は、上記電話通信部211やデータ通信部212で情報を着信した旨をユーザーに報知するときに用いられる。具体的には、その情報を着信すると、主制御部215により、出力部216の液晶ディスプレイ27に着信報知画像を表示したり、スピーカ28から着信音を出力させたりする。更に、この出力部216は、アプリケーション実行環境上で実行されるアプリケーションプログラムの実行中に、そのプログラム実行に関連したメニュー画面等の表示や音楽の出力にも用いられる。
【0031】
上記センサ検知部217は、上述の加速度センサ207及び地磁気センサ208等で構成されている。このセンサ検知部217は、上記主制御部215の制御の下で動作し、その検出結果は主制御部215が取得する。その検出結果が示す加速度α,α並びにピッチ角θ、ロール角θ及びヨー角θのデータは、上述したようにRAM202のプラットフォーム用記憶領域に記憶される。
例えばユーザー1によって携帯電話機20が変位すると、X軸方向及びY軸方向に働く加速度がセンサ検知部217を構成する加速度センサ207によって検知される。その検知信号が主制御部215に入力されると、主制御部215は、その検出信号からX軸方向の加速度α及びY軸方向の加速度αを算出する。算出した加速度α,αのデータは、記憶処理手段として機能する主制御部215によって、RAM202内のプラットフォーム用記憶領域に記憶される。
また、携帯電話機20の姿勢が変わると、その姿勢の変化後におけるピッチ角θ、ロール角θ及びヨー角θがセンサ検知部217を構成する地磁気センサ207によって検知される。その検知信号が主制御部215に入力されると、主制御部215は、その検出信号から姿勢変化後のそれぞれの角度θ,θ,θを算出する。算出した各角度θ,θ,θのデータは、加速度α,αの場合と同様に、主制御部215によってRAM202内のプラットフォーム用記憶領域に記憶される。
また、携帯電話機20の向きが変わると、その向きの変化後における方位角θがセンサ検知部217を構成する地磁気センサ208によって検知される。その検知信号が主制御部215に入力されると、主制御部215は、その検出信号から姿勢変化後の方位角θを算出する。算出した方位角θのデータも、同様に、主制御部215によってRAM202内のプラットフォーム用記憶領域に記憶される。
【0032】
なお、プラットフォーム記憶領域へ記憶する加速度α,αや各角度θ,θ,θのデータを、主制御部215がセンサ検知部217から取得する方法としては、次のようなものが挙げられる。例えば、主制御部215からセンサ検知部217へリクエストを送り、これに応じてセンサ検知部217が出力したデータを主制御部215が受信する取得方法である。また、例えば、リクエストがなくてもセンサ検知部217が連続的に出力するデータを、主制御部215が適宜受信する取得方法を採用してもよい。また、アプリケーションプログラムがアプリケーションプログラム実行管理部214を介して出力したリクエストに応じて主制御部215がセンサ検知部217へリクエストを送り、これに応じてセンサ検知部217が出力したデータを主制御部215が受信する取得方法を採用することもできる。
【0033】
携帯電話機20を所定の手順に従って動作させる電話機プラットフォームを構築するための制御用プログラムは、RAM202やROM203に記憶されている。また、基本OS(オペレーティングシステム)のプログラムや、上記アプリケーション実行環境を構築するためのプログラム及びアプリケーションプログラムも、RAM202やROM203に記憶されている。そして、これらのプログラムは、必要に応じてCPU201やRAM202中の作業エリアに呼び出されて実行される。
【0034】
〔動作例1〕
次に、上記加速度α,αを用いたアプリケーションプログラムを実行するための処理動作(以下、「動作例1」という。)について説明する。本動作例1のアプリケーションプログラムは、上記携帯電話機20を、ノートパソコン等の携帯型パーソナルコンピュータやPDA等のポインティングデバイスであるマウスとして動作させるためのものである。もちろん、据え置き型のパーソナルコンピュータなどのポインティングデバイスとしても同様に動作させることができる。
【0035】
図1は、本動作例1におけるアプリケーションプログラムを実行するための処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ユーザー1は、マウス用のアプリケーションプログラムを上記ダウンロードサーバ11からダウンロードして取得し、これを登録する(S1)。具体的には、ユーザー1は、操作部213のキーを操作して、ダウンロードサーバ11にアクセスする。これにより、ダウンロード可能なアプリケーションプログラムを選択するためのダウンロード選択画面が液晶ディスプレイ27上に表示される。そして、そのダウンロード選択画面において、実行対象となるマウス用のアプリケーションプログラムをスクロールキー24を用いて選択し、多機能キー25を押下すると、主制御部215がデータ通信部212を制御して、そのアプリケーションプログラムをダウンロードサーバ11からダウンロードする。このようにしてダウンロードされたアプリケーションプログラムは、主制御部215により、RAM202に記憶される。
【0036】
ダウンロードしたアプリケーションプログラムを実行する場合、ユーザー1は、まず、携帯電話機20の外部端子と、ノートパソコン等のUSB(Universal Serial Bus)端子とを接続する。本実施形態の接続方式は、USB端子を利用した有線接続であるが、その他の有線接続又は無線接続を用いた方式であってもよい。また、本携帯電話機20をノートパソコン等に接続する場合に用いる携帯電話機20側の通信手段としては、その外部端子に限らず、ノートパソコン等との間でデータ通信が可能なあらゆる通信手段を利用することが可能である。携帯電話機20とノートパソコン等とを接続したら、ユーザー1は、操作部213のキーを操作して、実行するアプリケーションプログラムを選択するためのアプリケーション選択画面を液晶ディスプレイ27上に表示させる。そして、そのアプリケーション選択画面において、実行対象であるマウス用のアプリケーションプログラムをスクロールキー24を用いて選択し、多機能キー25を押下する。すると、図7に示した電話機プラットフォームすなわち図6に示した主制御部215に、アプリケーションプログラムの実行指示が入力される(S2)。これにより、主制御部215は、図7に示したアプリケーション実行環境すなわち図6に示したアプリケーションプログラム実行管理部214を起動させる(S3)。そして、アプリケーションプログラム実行管理部214は、アプリケーションプログラム実行手段として機能し、マウス用のアプリケーションプログラムを読み出してこれを起動する(S4)。
【0037】
マウス用のアプリケーションプログラムが起動した後、そのアプリケーションプログラムは、センサ検知部217によって検知される加速度α,αのデータをほぼリアルタイムで取得する。そして、アプリケーションプログラムは、取得したデータに基づいて携帯電話機20の移動量及び移動方向を求める。この移動量及び移動方向は、所定の短い時間間隔で、連続的に携帯電話機20の外部端子を介してノートパソコン等に出力される。
具体的に説明すると、図8に示すように、アプリケーション実行環境において、起動したアプリケーションプログラムは、アプリケーションプログラム実行管理部214に対して、加速度データの取得要求を送る。本動作例1では、加速度α,αのデータを取得するメソッドとしてgetXGravity()及びgetYGravity()の命令セットが定義されているので、これらの命令セットを利用する要求を送る。これを受けたアプリケーションプログラム実行管理部214は、電話機プラットフォームの主制御部215に対してデータ移行命令である加速度データの取得要求を送る(S5)。これを受けた主制御部215は、RAM202内のプラットフォーム用記憶領域に記憶した加速度α,αのデータを、アプリケーションプログラム実行管理部214に送り、このデータはアプリケーションプログラムに渡される(S6)。そして、加速度α,αのデータを取得したアプリケーションプログラムは、そのデータを、RAM202内のアプリケーション用記憶領域に記憶する。そして、その加速度α,αのデータから携帯電話機20の移動量及び移動方向を算出し、その移動量及び移動方向の情報を外部端子からノートパソコン等に出力する処理を実行する(S7)。本動作例1において、主制御部215は、アプリケーションプログラム実行管理部214から加速度データの取得要求を受け取ると、その後、プラットフォーム記憶領域内の加速度α,αが更新されるたびに、更新後のデータをアプリケーションプログラム実行管理部214に送る。よって、マウス用のアプリケーションプログラムは、ほぼリアルタイムで、加速度α,αのデータを取得し、ノートパソコン等に移動量及び移動方向の情報を出力することができる。
【0038】
以上、本動作例1によれば、電話機プラットフォームに依存しない利用者が登録して利用することが可能なアプリケーションプログラムにより、電話機プラットフォームが制御するセンサ検知部217によって得られる加速度α,αのデータを用いた処理を行うことができる。具体的には、携帯電話機20を、携帯型パーソナルコンピュータ等のポインティングデバイスとして利用することができる。一般に、携帯型パーソナルコンピュータ等は小型化のため、備え付けのポインティングデバイスの操作性は、ディスクトップ型パーソナルコンピュータには劣るものである。そのため、ユーザーの中には、携帯型パーソナルコンピュータ等とは別個に、いわゆる外付けマウスを携帯する者も多い。本動作例1においては、一般のユーザーであればほぼ常時携帯している携帯電話機20を、外付けマウスとして利用することができる。よって、従来のように、外付けマウスをわざわざ持ち歩かなくても、ディスクトップ型パーソナルコンピュータと同様の操作性を得ることができる。
【0039】
なお、本動作例1では、加速度α,αのデータを用いたアプリケーションプログラムとして、マウス用のアプリケーションプログラムを例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。
他のアプリケーションプログラムとしては、例えば、携帯電話機20を万歩計(登録商標)として動作させるものが挙げられる。この場合、そのアプリケーションプログラムは、例えば、上記と同様にほぼリアルタイムで加速度データを連続的に取得し、ある一定の閾値を越える加速度が検知された回数をカウントするような内容とする。また、上述した加速度α,αのデータを用いれば、その加速度変化から、歩いている時、走っている時、電車に乗っている時などのユーザー1の動きを推測することが可能である。これらの推測をもとに、ユーザー1の1日の行動履歴を記録するようなアプリケーションプログラムを提供することも可能である。このとき、上記地磁気センサ208によって検知される方位角θのデータも利用すれば、ユーザー1が移動した方角も把握することができ、より詳細な行動履歴を記録することが可能となる。この行動履歴の保存先は、携帯電話機20内に限らず、データ通信部212から通信ネットワーク上の所定のサーバに保存するようにしてもよい。
また、他のアプリケーションプログラムとしては、例えば、携帯電話機20に衝撃を与えることでアラームを止めることができるような目覚まし時計として、携帯電話機20を動作させるものも挙げられる。この場合、そのアプリケーションプログラムは、例えば、アラームが鳴っている間に一定以上の加速度が発生したら、アラームを止めるような内容とする。これによれば、ユーザーは、アラームを止める時に、従来のようにボタン操作を行う必要がなくなるので、ユーザーの利便性向上を図ることができる。
【0040】
〔動作例2〕
次に、上記ピッチ角θ、ロール角θ及びヨー角θを用いたアプリケーションプログラムを実行するための処理動作(以下、「動作例2」という。)について説明する。本動作例2のアプリケーションプログラムは、ゲームであるフライトシミュレータである。
【0041】
図9は、本動作例2におけるアプリケーションプログラムを実行するための処理の流れを示すフローチャートである。
ユーザー1は、上記動作例1と同様にして、フライトシミュレータ用プログラム(アプリケーションプログラム)を上記ダウンロードサーバ11からダウンロードして取得し、これを起動する(S11〜S14)。このプログラムが起動すると、出力部216が、飛行機の操縦席からの視界を擬似的に表したゲーム画面をLCD27に表示する。また、このプログラムは、センサ検知部217によって検知されるピッチ角θ、ロール角θ及びヨー角θのデータをほぼリアルタイムで取得する。そして、そのプログラムは、取得したデータに応じてLCD27に表示されるゲーム画面の内容を更新する。例えば、ユーザー1が携帯電話機20のアンテナ側を鉛直方向下方に傾けると、これによりピッチ角θが変化し、ゲーム上の飛行機の機首が鉛直方向下方に向いたゲーム画面に更新される。また、例えば、ユーザー1が携帯電話機20を左側に傾けると、これによりロール角θが変化し、ゲーム上の飛行機が左側に傾いたゲーム画面に更新される。
【0042】
具体的に説明すると、図10に示すように、アプリケーション実行環境において、起動したアプリケーションプログラムは、アプリケーションプログラム実行管理部214に対して、角度データの取得要求を送る。本動作例2では、ピッチ角θ、ロール角θ、ヨー角θのデータを取得するメソッドとしてgetPitch()、getRoll()、getCompassBearing()等の命令セットが定義されているので、これらの命令セットを利用する要求を送る。これを受けたアプリケーションプログラム実行管理部214は、電話機プラットフォームの主制御部215に対してデータ移行命令である角度データの取得要求を送る(S15)。これを受けた主制御部215は、RAM202内のプラットフォーム用記憶領域に記憶したピッチ角θ、ロール角θ及びヨー角θのデータを、アプリケーションプログラム実行管理部214に送り、これらのデータはアプリケーションプログラムに渡される(S16)。そして、ピッチ角θ、ロール角θ及びヨー角θのデータを取得したアプリケーションプログラムは、そのデータを、RAM202内のアプリケーション用記憶領域に記憶する。そして、ピッチ角θ、ロール角θ及びヨー角θに基づいてゲーム画面を更新し、その更新後のゲーム画面を携帯電話機20のLCD27に表示する処理を実行する(S17)。なお、本動作例2においても、上記動作例1と同様に、主制御部215は、アプリケーションプログラム実行管理部214から角度データの取得要求を受け取った後は、プラットフォーム記憶領域内の角度θ,θ,θのデータが更新されるたびに、更新後のデータをアプリケーションプログラム実行管理部214に送る。よって、ユーザー1は、携帯電話機20のLCD27を見ながら携帯電話機20の本体を傾けることで、ゲーム上の飛行機を操縦するというゲームを楽しむことができる。
【0043】
以上、本動作例2によれば、電話機プラットフォームに依存しない利用者が登録して利用することが可能なアプリケーションプログラムにより、電話機プラットフォームが制御するセンサ検知部217によって得られる角度θ,θ,θのデータを用いた処理を行うことができる。具体的には、携帯電話機20の本体を傾ける操作を行うことで、フライトシミュレータ上の飛行機を操縦するというゲームを提供することができる。フライトシミュレータ上の飛行機の操縦は、携帯電話機20の操作部213を操作することでも可能ではあるが、本動作例2の方が操縦の臨場感を高めることができる。
【0044】
なお、本動作例2では、ピッチ角θ、ロール角θ及びヨー角θのデータを用いたアプリケーションプログラムとして、フライトシミュレータ用のプログラムを例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。
他のアプリケーションプログラムとしては、例えば、LCD27に表示されるゲーム画面上においてボールを穴に落とすというゲームが挙げられる。この場合、そのアプリケーションプログラムは、例えば、携帯電話機20を傾けることで、ゲーム画面上のボールがその傾きの方向に移動するような内容とする。
【0045】
〔動作例3〕
次に、上記動作例1と同様に、上記加速度α,αを用いたマウス用のアプリケーションプログラムを実行するための処理動作(以下、「動作例3」という。)について説明する。
本動作例3で実行されるアプリケーションプログラムは、電話機プラットフォームに依存するものである点で、上記動作例1のようにアプリケーション実行環境上で実行される電話機プラットフォームに依存しないアプリケーションプログラムとは異なるものである。なお、電話機プラットフォームに依存するアプリケーションプログラムとは、電話機プラットフォーム上で直接動作するもの、すなわち、アプリケーションプログラム実行手段として機能する主制御部215により実行されるものである。本動作例3における基本的な動作は、上記動作例1と同様であるので、以下、主に異なる点について説明する。
【0046】
図11は、本動作例3におけるアプリケーションプログラムを実行するための処理の流れを示すフローチャートである。
本動作例3の実行対象であるマウス用のアプリケーションプログラムは、出荷段階で予めROM203に記憶されている。よって、上記動作例1のように、実行前に、アプリケーションプログラムを上記ダウンロードサーバ11からダウンロードして取得し、これを登録する処理を必要としない。アプリケーションプログラムを実行する場合、ユーザー1は、まず、上記動作例1と同様に、携帯電話機20をノートパソコン等に接続した後、操作部213のキーを操作して、実行するアプリケーションプログラムを選択する。すると、図7に示した電話機プラットフォームすなわち図6に示した主制御部215に、アプリケーションプログラムの実行指示が入力される(S21)。これにより、主制御部215は、マウス用のアプリケーションプログラムを読み出してこれを起動する(S22)。このとき、本動作例3では、アプリケーション実行環境を起動させる必要がない。
【0047】
マウス用のアプリケーションプログラムが起動した後、そのアプリケーションプログラムは、センサ検知部217によって検知される加速度α,αのデータをほぼリアルタイムで取得する。そして、アプリケーションプログラムは、取得したデータに基づいて携帯電話機20の移動量及び移動方向を求める。この移動量及び移動方向は、所定の短い時間間隔で、連続的に携帯電話機20の外部端子を介してノートパソコン等に出力される。
具体的に説明すると、図12に示すように、電話機プラットフォームにおいて、起動したアプリケーションプログラムは、主制御部215に対して、加速度データの取得要求を送る(S23)。これを受けた主制御部215は、RAM202内のプラットフォーム用記憶領域に記憶した加速度α,αのデータを、アプリケーションプログラムに受け渡す(S24)。そして、加速度α,αのデータを取得したアプリケーションプログラムは、そのデータから携帯電話機20の移動量及び移動方向を算出し、その移動量及び移動方向の情報をノートパソコン等に出力する処理を実行する(S25)。本動作例3において、主制御部215は、アプリケーションプログラムから加速度データの取得要求を受け取ると、その後、プラットフォーム記憶領域内の加速度α,αが更新されるたびに、更新後のデータをアプリケーションプログラムに送る。よって、マウス用のアプリケーションプログラムは、ほぼリアルタイムで、加速度α,αのデータを取得し、ノートパソコン等に移動量及び移動方向の情報を出力することができる。
【0048】
以上、本動作例3によれば、上記動作例1と同様に、携帯電話機20を、携帯型パーソナルコンピュータ等のポインティングデバイスとして利用することができる。
なお、本動作例3において実行されるアプリケーションプログラムは、主制御部215により実行される電話機プラットフォームに依存するものである。したがって、本動作例3は、アプリケーションプログラム実行管理部214を有しない携帯電話機に対しても適用することができる。
【0049】
その他、加速度α,α、角度θ,θ,θ、方位角θを用いたアプリケーションプログラムとしては、例えば、携帯電話機20の位置、向き、姿勢、動きなどによって、マナーモード設定等の各種設定の変更を行うための入力手段として、携帯電話機20を動作させるものが挙げられる。この場合、そのアプリケーションプログラムは、例えば、携帯電話機20が起立した状態にあるときはマナーモードに設定されたり、携帯電話機20が静止状態にあるときは省電力モードに設定されたりするような内容とする。
【0050】
なお、本実施形態においては、主制御部215は、アプリケーションプログラム実行管理部214を介して又はアプリケーションプログラムから直接に、取得要求を受けた後、プラットフォーム記憶領域内のデータ更新のたびに、更新後のデータを送るように動作するが、アプリケーションプログラムの内容に応じて適宜変更できる。例えば、取得要求を受けたら、プラットフォーム記憶領域内のデータを、1回だけ送るように動作させてもよい。また、上記動作例1及び動作例2においては、アプリケーションプログラムからの指示を待たずに、アプリケーションプログラム実行管理部214が取得要求を出力するようにしてもよい。
また、本発明は、携帯電話機のほか、PHS、自動車電話機等の電話機、携帯型のPDAの場合についても適用でき、同様な効果が得られるものである。
【符号の説明】
【0051】
10 携帯電話通信網
11 ダウンロードサーバ
20 携帯電話機
207 加速度センサ
208 地磁気センサ
212 データ通信部
213 操作部
214 アプリケーションプログラム実行管理部
215 主制御部
216 出力部
217 センサ検知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2000−347867号公報
【特許文献2】特開2001−272413号公報
【特許文献3】特開2002−169645号公報
【特許文献4】特開2003−111142号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶する第1の記憶手段及び第2の記憶手段と、
該第2の記憶手段に記憶されたデータを用いて、アプリケーションプログラムを実行するアプリケーションプログラム実行手段とを備えた移動体通信端末において、
当該移動体通信端末の位置、向き、姿勢及び動きのうちの少なくとも1つを検知するための検知手段と、
該検知手段による検知結果に基づいて得られる検知結果データを、上記第1の記憶手段に記憶する記憶処理を行う記憶処理手段と、
上記アプリケーションプログラム実行手段からのデータ移行命令に応じ、該第1の記憶手段に記憶された検知結果データを上記第2の記憶手段に移行するデータ移行手段とを有し、
上記アプリケーションプログラム実行手段は、該第2の記憶手段に記憶された検知結果データを用いて、上記アプリケーションプログラムを実行することを特徴とする移動体通信端末。
【請求項2】
請求項1の移動体通信端末において、
上記検知手段は、所定方向に延びる仮想軸のまわりの基準角に対する角度を検知するための角度検知手段を含むことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項3】
請求項1又は2の移動体通信端末において、
上記検知手段は、当該移動体通信端末に働く所定方向の加速度を検知するための加速度検知手段を含むことを特徴とする移動体通信端末。
【請求項4】
請求項1、2又は3の移動体通信端末において、
上記アプリケーションプログラム実行手段は、上記アプリケーションプログラムの記述に従って上記データ移行命令を発生させる命令セットを実装していることを特徴とする移動体通信端末。
【請求項5】
請求項4の移動体通信端末が有するアプリケーションプログラム実行手段により実行されることにより、上記命令セットを用いて該アプリケーションプログラム実行手段に上記データ移行命令を発生させるように、該移動体通信端末のコンピュータを機能させることを特徴とするアプリケーションプログラム。
【請求項6】
データを記憶する記憶手段に記憶されたデータを用いて、アプリケーションプログラムを実行するアプリケーションプログラム実行手段とを備えた移動体通信端末において、
上記アプリケーションプログラムの記述に従って上記アプリケーションプログラム実行手段が生成する検知命令に応じて、当該移動体通信端末の位置、向き、姿勢及び動きのうちの少なくとも1つを検知するための検知手段として、3軸の磁気センサ及び2軸の加速度センサを用い、
該検知手段による検知結果に基づいて得られる検知結果データを、上記記憶手段に記憶する記憶処理手段を有し、
該アプリケーションプログラム実行手段は、該記憶手段に記憶された検知結果データを用いて、上記アプリケーションプログラムを実行することを特徴とする移動体通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−207154(P2009−207154A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85549(P2009−85549)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2008−1138(P2008−1138)の分割
【原出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(501440684)ソフトバンクモバイル株式会社 (654)
【Fターム(参考)】