説明

移動入浴車

【課題】 地震や台風の被災地のように、ガス、電気、水道等のライフラインが破壊された地域においても、速やかに多くの人の入浴に供し得る移動入浴車を提供する。
【解決手段】 自動車1又はトレーラ台車の車体2に、浴槽3と洗い場4を備えた浴室5、脱衣場6、給水タンク7、給水タンク7に貯留した水を加熱して前記浴室5の浴槽3に給湯するボイラ8、浴室5からの排水を貯留する排水タンク9、排水の浄化殺菌装置10、浄化殺菌処理された排水を給水タンク7に還流させる循環用のポンプ11、ボイラ用の燃料タンク12、前記ボイラ8やポンプ11並びに浴室5や脱衣場6に設けられた照明器具に給電することが可能な発電機13から構成された入浴設備Aを搭載して移動入浴車を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動入浴車に関し、詳しくは、例えば、地震や台風などの被災地、海水浴場、キャンプ地等での入浴が可能となる移動入浴車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車中に積載された浴槽等の入浴用機器を訪問先の住宅に運び込んで入浴者を入浴させる介護用の移動入浴車は、特許文献1、2等によって知られている。この移動入浴車は、訪問先の住宅を浴室や脱衣場として必要とし、しかも、温湯送給ポンプや排水吸引ポンプの電源として訪問先の住宅のコンセントを使用するので、海水浴場やキャンプ地のように住宅や電源コンセントの無い場所、地震や台風の被災地のように、ガス、電気、水道等のライフラインが破壊された地域での使用には適していない。
【0003】
この点、特許文献3によって提案されている野外入浴シャワー車は、自動車又はトレーラ台車の車体に、揚水ポンプ、貯水タンク、ボイラ(湯沸し器)、燃料タンク、発電機、複数のハンドシャワーが装備されたシャワースタンド、野外浴槽等を搭載して成るもので、入浴やシャワーが必要とされる場所に車を乗り入れ、車外に降ろしたシャワースタンドや野外浴槽を車の近くに設置し、これらを給湯・給水ホースにより車内のボイラ(湯沸し器)に接続して、多数の人が野外で入浴及びシャワーを行えるように構成されている。
【0004】
従って、海水浴場やキャンプ地は勿論、地震や台風の被災地のように、ガス、電気、水道等のライフラインが破壊された地域での使用が可能である。しかしながら、この野外入浴シャワー車では、車の近くにシャワースタンドや野外浴槽を設置して、給湯・給水ホースで接続し、シャワーや入浴に供するものであるから、快適な入浴及びシャワーを可能とするためには、シャワースタンドや野外浴槽の周囲に目隠しとなる仮設の囲壁の他、脱衣場となる床や屋根を設ける必要がであり、これらの仮設資材の運搬、組立及び解体撤去の作業が必要不可欠である。
【0005】
しかも、上記の野外入浴シャワー車では、貯水タンクの容量に自ずと限界があるから、多くの被災地がそうであるように、現地で新たな水補給が行えないような条件下においては、多数の人が入浴及びシャワーを行うことはできない。
【0006】
【特許文献1】特開2002−355285号公報
【特許文献2】特開2002−87146号公報
【特許文献3】特開2001−10401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に留意して成されたものであって、その目的とするところは、海水浴場やキャンプ地は勿論、地震や台風の被災地のように、ガス、電気、水道等のライフラインが破壊された地域においても、速やかに入浴に供し得る移動入浴車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明が講じた技術的手段は、次の通りである。即ち、請求項1に記載の発明による移動入浴車は、自動車又はトレーラ台車の車体に、浴室、脱衣場、給水タンク、給水タンクに貯留した水を加熱して前記浴室の浴槽に給湯するボイラ、浴室からの排水を貯留する排水タンク、ボイラ用の燃料タンク、発電機等から構成された入浴設備を搭載して成るものである。
【0009】
尚、自動車又はトレーラ台車の車体に入浴設備を搭載するにあたっては、請求項2に記載の発明のように、コンテナボックスの内部に、浴室、脱衣場、給水タンク、給水タンクに貯留した水を加熱して前記浴室の浴槽に給湯するボイラ、浴室からの排水を貯留する排水タンク、ボイラ用の燃料タンク、発電機等から構成された入浴設備を設け、当該コンテナボックスを車体に搭載してもよい。
【0010】
請求項3に記載の発明による移動入浴車は、請求項1又は2に記載の移動入浴車であって、入浴設備に、排水の浄化殺菌装置、浄化殺菌処理された排水を給水タンクに還流させる循環用のポンプが装備されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、移動入浴車を目的地に乗り入れ、車内の給水タンクに貯留した水を加熱して浴槽に給湯することにより、入浴が可能となる。入浴者は、車内の脱衣場に入り、浴室へと進んで入浴することになる。入浴時に使用した水は排水タンクへ回収されることになる。また、浴室や脱衣場の照明、ボイラの制御、使用済みの水の回収等に必要な電源として、搭載された発電機を使用することができるので、近くに商用電源のコンセントが無くても入浴設備の運転が可能である。
【0012】
従って、給水設備や排水設備、電源の無い海水浴場やキャンプ地、地震や台風の被災地のように、ガス、電気、水道等のライフラインが破壊された地域において、浴室や脱衣場の仮設工事を行うことなく速やかに入浴に供し得るのである。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、上記の効果に加えて、自動車又はトレーラ台車の車体に対する構造改変が不要となり、コンテナボックス内に装備される入浴設備の設計が車種毎に変化しない等の効果がある。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、使用済みの水を浄化殺菌処理して、再利用することになるので、少ない水で多くの人の入浴が可能となる。従って、地震や台風などの被災地における救援対策の一環として非常に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1、図2は、本発明に係る移動入浴車の一例を示し、図3は移動入浴車に装備された入浴設備Aの構成を示す。この移動入浴車は、自動車1の車体2に、浴槽3と洗い場4を備えた浴室5、脱衣場6、給水タンク7、給水タンク7に貯留した水を加熱して前記浴室5の浴槽3に給湯するボイラ(瞬間湯沸し器)8、浴室5からの排水を貯留する排水タンク9、排水の浄化殺菌装置10、浄化殺菌処理された排水を給水タンク7に還流させる循環用のポンプ11、ボイラ用の燃料タンク12、前記ボイラ8やポンプ11並びに浴室5や脱衣場6に設けられた照明器具(図示せず)に給電することが可能な発電機13から構成された入浴設備Aを搭載して構成したものである。
【0016】
図3に示す14は浴槽3に臨ませた給湯カラン、15は必要に応じて設けられるシャワーヘッドである。浴室5と脱衣場6の全体は、図1に示すように、パネル材によって周囲側面及び天井面を覆われており、車輌後部(脱衣場6の後部側面又は左右何れかの側面)には開閉可能な出入り口16が設けられている。図1に示す17は、浴室5と脱衣場6を区画する扉付きの間仕切り、18は明り取り窓である。
【0017】
前記入浴設備Aは、図3に示すように、給水タンク7に貯留した水をボイラ8で加熱して、浴槽(給湯カラン14、シャワーヘッド15)3に給湯するように構成され、浴室5からの排水(浴槽3の底部から排出された使用済みの水、浴槽3のオーバーフロー口3aから排出された水、洗い場4から排出された水)を、前記排水タンク9に貯留するように構成されている。前記浄化殺菌装置10と前記ポンプ11は、排水タンク9と給水タンク7とを接続するパイプの途中に介装されており、排水タンク9に貯留した排水を浄化殺菌処理して給水タンク7に還流させ、再利用するように構成されている。
【0018】
上記の構成によれば、移動入浴車を目的地に乗り入れ、車内の給水タンク7に貯留した水を加熱して浴槽3に給湯することにより、入浴が可能となる。入浴者は、車輌後部の出入り口から車内の脱衣場4に入り、浴室5へと進んで入浴することになる。入浴時に使用した水は排水タンク9へ回収され、浄化殺菌装置10によって浄化殺菌処理された後、給水タンク7に戻され、再利用されることになる。
【0019】
また、浴室5や脱衣場6の照明、ボイラ8の制御、使用済みの水の回収等に必要な電源として、搭載された発電機13を使用することができるので、近くに商用電源のコンセントが無くても入浴設備Aの運転が可能である。
【0020】
従って、給水設備や排水設備、電源の無い海水浴場やキャンプ地、地震や台風の被災地のように、ガス、電気、水道等のライフラインが破壊された地域において、浴室や脱衣場の仮設工事を行うことなく速やかに入浴に供し得るのである。
【0021】
しかも、使用済みの水を浄化殺菌処理して、再利用することになるので、少ない水で多くの人の入浴が可能となる。従って、地震や台風などの被災地における救援対策の一環として非常に有効である。
【0022】
尚、図示の実施形態では、自動車1の車体2に入浴設備Aを搭載して自走方式の移動入浴車を構成したが、トレーラ台車の車体に入浴設備Aを搭載して、トレーラ方式の移動入浴車を構成することも可能である。これら何れの場合も、自動車又はトレーラ台車の車体に入浴設備Aを搭載するにあたっては、コンテナボックスの内部に、前記入浴設備A備を設け、当該コンテナボックスを車体に搭載してもよい。このようにすれば、専用の移動入浴車に構成しなくても済むので、自動車又はトレーラ台車の車体に対する構造改変が不要となり、コンテナボックス内に装備される入浴設備の設計が車種毎に変化しない等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る移動入浴車を例示する側面図である。
【図2】上記移動入浴車の平面図である。
【図3】上記移動入浴車に装備される入浴設備の構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1 自動車
2 車体
3 浴槽
3a オーバーフロー口
4 洗い場
5 浴室
6 脱衣場
7 給水タンク
8 ボイラ
9 排水タンク
10 浄化殺菌装置
11 ポンプ
12 燃料タンク
13 発電機
14 給湯カラン
15 シャワーヘッド
16 出入り口
17 扉付きの間仕切り
18 明り取り窓
A 入浴設備


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車又はトレーラ台車の車体に、浴室、脱衣場、給水タンク、給水タンクに貯留した水を加熱して前記浴室の浴槽に給湯するボイラ、浴室からの排水を貯留する排水タンク、ボイラ用の燃料タンク、発電機等から構成された入浴設備を搭載して成る移動入浴車。
【請求項2】
コンテナボックスの内部に、浴室、脱衣場、給水タンク、給水タンクに貯留した水を加熱して前記浴室の浴槽に給湯するボイラ、浴室からの排水を貯留する排水タンク、ボイラ用の燃料タンク、発電機等から構成された入浴設備を設け、当該コンテナボックスを車体に搭載して成る請求項1に記載の移動入浴車。
【請求項3】
入浴設備に、排水の浄化殺菌装置、浄化殺菌処理された排水を給水タンクに還流させる循環用のポンプが装備されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動入浴車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−101156(P2007−101156A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295121(P2005−295121)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000191353)新明工業株式会社 (75)
【Fターム(参考)】