説明

移動型X線装置

【課題】
移動型X線装置において、イメージングプレートやフラットパネルディテクター等のX線検出器に対する盗難防止機能を提供する。
【解決手段】
バッテリーによる電動式の移動台車へX線撮影装置を搭載して成り、当該X線撮影装置は、X線発生部と、当該X線発生部から照射され、被験体を透過したX線を潜像として蓄積するX線検出器を備えた移動型X線装置において、前記X線検出器を収納する収納部を備え、前記収納部は、収納した前記X線検出器のロック機構を備える。X線検出器が収納ボックスに収納された事を認識した場合は、自動的に前記ロック機構が前記X線検出器をロックし、IDまたはパスワードの入力により、ロックを解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院内で使用する移動型X線装置に関し、特に、撮像受光部の盗難防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動型X線装置は、バッテリーによる電動式の移動台車へX線撮影装置を搭載して成るものであり、バッテリーからの直流電源によって駆動しているため、病院内のコンセントに接続されるのは充電の時のみとなる。バッテリーの電力が十分残っている場合、病院内の廊下や人目につく場所に置かれる場合もある。そのため、移動型X線装置には、盗難防止としてキースイッチが設けられていることが多い。
【0003】
また、移動型X線装置において、被験体を透過したX線を潜像として蓄積するX線検出器を備えている。X線検出器としては、イメージングプレート(以下、IPプレート)やフラットパネルディテクター(以下、FPD : Flat Panel Detector )が用いられ、取り外し可能に構成されている。特許文献1に示されるように、これらのX線検出器は、移動型X線装置に備え付けられた簡易的な収納部に納められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、移動型X線装置は病院内の廊下や人目につく場所に置かれることもあるため、盗難防止用のキーが装備されているのが一般的である。
【0006】
一方、FPDは近年ワイヤレス化、軽量化が進んでいるため、容易に持ち運びできるようになった。FPDは高価なため、人目に付く場所に停止する移動型X線装置に搭載する場合は、盗難防止機能が必要であるが、ワイヤレスFPDはまだ十分に普及しておらず、盗難防止のための手法は確定されていない。
【0007】
本発明は、この課題を解決し、移動型X線装置において、FPD等のX線検出器に対する盗難防止機能を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の移動型X線装置は、バッテリーによる電動式の移動台車へX線撮影装置を搭載して成り、当該X線撮影装置は、X線発生部と、当該X線発生部から照射され、被験体を透過したX線を潜像として蓄積するX線検出器を備えた移動型X線装置において、前記X線検出器を収納する収納部を備え、前記収納部は、収納した前記X線検出器のロック機構を備えるものである。
【0009】
本発明の移動型X線装置において、前記X線検出器は、イメージングプレートまたはフラットパネルディテクターでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、前記X線検出器が収納ボックスに収納された事を認識する認識手段を有するものでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、前記X線検出器の認識手段として、収納ボックス内に挿入された物の幅を検出する手段、および/または、収納ボックス内に挿入された物の質量を検出する手段を有するものでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、収納ボックス内に挿入された物の幅を検出する手段が、所定の間隔で配置された赤外線センサでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、収納ボックス内に挿入された物の質量を検出する手段が、圧力センサでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、予め登録された閾値を用いてX線検出器を認識するものでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、前記X線検出器が収納ボックスに収納された事を認識した場合は、前記X線検出器をロックする手段を有するものでよい。
【0010】
本発明の移動型X線装置において、前記X線検出器のロック機構に、前記X線検出器の無理な取り出しを警告する警告手段を有するものでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、前記X線検出器のロック機構を動作させるための手動スイッチを有するものでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、X線検出器のロック機構を動作させるための前記手動スイッチは、キースイッチでよい。
【0011】
本発明の移動型X線装置において、前記認識手段が、X線検出器が収納ボックスに収納された事を認識した場合は、自動的に前記ロック機構が前記X線検出器をロックし、IDまたはパスワードの入力により、ロックを解除するものでよい。
【0012】
本発明の移動型X線装置において、装置電源がOFF状態になると、自動的に前記ロック機構が前記X線検出器をロックするように構成したものでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、装置電源がON状態になり、IDまたはパスワードの入力により、ロックを解除するものでよい。
また、本発明の移動型X線装置において、更に、ロックスイッチを設け、ロックスイッチによりロックされた状態で、装置電源がOFF状態になると、ロック状態を継続するようにしたものでよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、FPD等のX線検出器に対する盗難防止機能を備え、より防犯性が高い移動型X線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例の移動型X線装置の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施例1の収納ボックスの構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例2の収納ボックスの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
先ず、本発明が適用される移動型X線装置の一例を説明する。図1は、移動型X線装置100の概略を示すもので、台車106と、本体部107と、X線発生部103を有する。また、本体部107に対して着脱可能なIPプレートまたはFPDを有する。
【0017】
台車106は、X線撮影装置を搭載し移動可能とするもので、バッテリー108により電源が供給され図示しない駆動モータにより自走する。
【0018】
X線発生部103は、台車106に取り付けられる支柱101に、アーム102を介して取り付けられている。支柱101の回転、およびアーム102の昇降・屈曲によりX線発生部103を所望の位置に移動させることができる。
【0019】
本体部107には、各部の制御機構を収納している。つまり、制御部109や画像読取装置110を収納すると共に、上部に設けたハンドル105の操作により前進・後退などの制御を可能とする。また、上面の操作パネル104により、撮影時のX線条件の設定などを行うことができる。符号111は、キースイッチを表す。
【0020】
画像読取装置110は、IPプレートまたはFPDから、蓄積された潜像を画像データとして読み出す画像読取手段、読み出した画像データを記憶する情報格納手段、画像読取終了後に残留する潜像を消去する消去手段を備えるものである。なお、本体部107に画像読取装置110を設けているが、移動型X線装置100とは別に設けた画像読取装置で、画像読取などを行うようにしても良い。
【0021】
移動型X線装置100には、本体部107の側面にFPDまたはIPプレートを収納するための収納部112が搭載されている。収納部112は、例えば有底上部が開口した薄型のケースである。収納部112は、FPDまたはIPプレートが収納された時、以下に説明するように、FPDまたはIPプレートを固定する。
【0022】
図2は、本発明の実施例1の収納ボックス112の構造を説明する図であり、図2(a)は、収納ボックス112の幅の広い面から見た正面図、図2(b)は、収納ボックス112の幅の狭い面から見た側面図である。
【0023】
図2において、収納ボックス112の下部には、複数の赤外線センサ201、および圧力センサ203が設けられている。赤外線センサ201は特定の距離を置いて設置されているため、収納ボックス112に投入された物の幅を判定することができる。両側の赤外線センサ201が検知しない場合は、投入された物がX線検出器(FPDまたはIPプレート)でないと判定する。
赤外線センサ201でX線検出器(FPDまたはIPプレート)の幅を満たす物が入れられたと判断した後、圧力センサ203によって重さを計測し、データを本体部107の制御部109に送信する。FPDまたはIPプレートの重さはほぼ決まっているため、予め登録された閾値内の重さであることが制御部109によって判断されると、X線検出器(FPDまたはIPプレート)であると認識する。
【0024】
X線検出器(IPプレートまたはFPD)が収納ボックス112に収納されたと認識された場合、自動的にX線検出器(FPDまたはIPプレート)がロック機構によりロックされる。ロックは、収納ボックス112の下部に設置されている押さえ204によって押さえつけられる構造になっている。押さえ204は、ソレノイド202が押さえ204に接続されている板金等を吸着し、X線検出器(FPDまたはIPプレート)を、予め設置されているもう一方の押さえ204と挟み込み、押さえつける構造になっている。ロックされている状態のとき、操作パネル104に番号(IDまたはパスワード)が入力されるとロック解除信号が出され、ソレノイド202の吸着が解除され、押さえ204はバネ205によって収納ボックス112の側面に寄せられる。
【0025】
なお、ロック機構によりX線検出器を自動的にロックする構成に代えて、または加えて、操作パネルに設置されたロックスイッチによりX線検出器のロック或いは解除を選択できるように構成しても良い。
【0026】
キースイッチ111により装置電源をOFF状態にしたとき、操作パネル104に備え付けられているロックスイッチは機能しなくなる。このとき、収納ボックス112に収納されているFPDおよびIPプレートを無理に抜くと、警告音を発する。
【0027】
ここで、赤外線センサ201、圧力センサ203、警告音ブザー206は、直接バッテリー部108の一部から電力を取る回路基板207によって制御される。回路基板207は、装置電源投入中は制御部109と通信を行っているが、装置電源が切られ、制御部109と通信ができていない状態、かつ、圧力センサの値が大幅に変化した場合、または、赤外線センサが変化した場合、自動で警告ブザー206を鳴らす仕組みになっている。
【実施例2】
【0028】
図3は、本発明の実施例2の収納ボックス112の構造を説明する図であり、図3(a)は、収納ボックス112の幅の広い面から見た正面図、図3(b)は、収納ボックス112を上から見た平面図である。
【0029】
図3の実施例の場合、収納ボックス112にX線検出器(FPDまたはIPプレート)が収納され、装置電源が切られたとき、自動でロックする機構になっている。
【0030】
FPDおよびIPプレートを押さえる部分301,302は、板金等で図のように接続されている。これらの押さえ301,302は、ソレノイド305の吸着によって、「押さえつける」「押さえつけない」の切替えが行われる。
【0031】
ソレノイド305は、装置電源投入中は吸着され、押さえ301,302は収納ボックス112の側面に収まっている。装置電源が切られたとき、ソレノイド305の吸着は解除され、バネ303,304によって押さえ301,302はそれぞれ抑えるために移動する。
【0032】
抑える部分は、図3の通り上側面2箇所、下前後面1箇所の計3点となるが、図3の通り、側面の押さえ301と下面の押さえ302は繋がっている。側面の押さえ301はソレノイド305の動きに合っているが、下面の押さえ302は、動作方向が違うため、押さえ302の下部にはバネ306が取り付けられ、常に押す状態としている。そして、ソレノイド305によって押さえに取り付けられた接続部分が吸着されると楔状の部分307が外側に動き、下面の押さえ302を押さえていた面が下がる。そのため、下面のロックが外れた状態となる。固定する場合は、この逆の動きになるため、側面の押さえ301の動きと合う動きとなる。
【0033】
装置電源解除中は、前記押さえ301,302によって固定されるが、装置電源が投入された後は、X線条件入力用の操作パネル104上で番号(IDまたは任意のパスワード)を入力することで、ロックが解除される。
【0034】
ロックスイッチを設けても良い。ロックスイッチは、収納ボックス112にX線検出器(IPプレートまたはFPD)が収納されたとき、装置電源投入中でも、スイッチを押すことで手動ロックができる。この場合も、ロック解除にはX線条件入力用パネル104上で番号(IDまたは任意のパスワード)を入力することが必要となる。
【0035】
ここで、図2および図3で示す手法を、組み合わせても良い。ロックスイッチによりロックされた状態で、装置電源がOFF状態になると、ロック状態が継続される。
【0036】
実施例1および実施例2の移動型X線装置の使用方法を説明する。使用者は移動型X線装置100のハンドル105を操作し、モータ駆動または手動により被験者のいるベッドサイドに移動する。移動後、アーム102を用いてX線発生部103を撮影位置に移動させ、移動型X線装置100本体に備えられたX線条件入力用の操作パネル104にX線撮影条件を入力する。
【0037】
使用者は、FPDまたはIPプレートを被験者の撮影個所に設置し、X線撮影を行う。X線撮影終了後、画像確認ができる装置(移動型X線装置に搭載した画像読取装置110や、移動型X線装置とは別の、Computed radiography装置を搭載した回診車、Flat Panel Detector装置を搭載した回診車のようなデジタル画像を読み込み、表示できる装置など)によって画像がモニタに表示され、その場で画像に問題が無いか確認する。
【0038】
回診終了後、使用者は移動型X線装置100を一度、病室の外へ出し、FPDまたはIPプレートを収納ボックス112へ収納する。その後、被験者の様子を確認するため、廊下に移動型X線装置を出して停止し、病室へ戻る。移動型X線装置は、停止後、自動的に収納ボックス内のロック機構が働き、FPDまたはIPプレートは取り出せない状態になる。
【0039】
操作者が戻った後、移動型X線装置に電源が投入され、自動でロックが解除されるため、そのまま回診業務に戻ることができる。
【符号の説明】
【0040】
100 移動型X線装置
101 支柱
102 アーム
103 X線発生部
104 操作パネル
105 ハンドル
106 台車
107 本体部
108 バッテリー
109 制御部
110 画像読取装置
111 キースイッチ
112 収納ボックス
201 赤外センサ
202 ソレノイド
203 圧力センサ
204 押さえ
205 ソレノイド
206 警告ブザー
207 回路基板
301,302 押さえ
303,304 バネ
305 ソレノイド
306 バネ
307 楔状の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーによる電動式の移動台車へX線撮影装置を搭載して成り、当該X線撮影装置は、X線発生部と、当該X線発生部から照射され、被験体を透過したX線を潜像として蓄積するX線検出器を備えた移動型X線装置において、
前記X線検出器を収納する収納部を備え、
前記収納部は、収納した前記X線検出器のロック機構を備えた移動型X線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動型X線装置において、
前記X線検出器は、イメージングプレートまたはフラットパネルディテクターである移動型X線装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動型X線装置において、
前記X線検出器が収納ボックスに収納された事を認識する認識手段を有する移動型X線装置。
【請求項4】
請求項3に記載の移動型X線装置において、
前記X線検出器の認識手段として、収納ボックス内に挿入された物の幅を検出する手段、および/または、収納ボックス内に挿入された物の質量を検出する手段を有する移動型X線装置。
【請求項5】
請求項4に記載の移動型X線装置において、
収納ボックス内に挿入された物の幅を検出する手段が、所定の間隔で配置された赤外線センサである移動型X線装置。
【請求項6】
請求項4に記載の移動型X線装置において、
収納ボックス内に挿入された物の質量を検出する手段が、圧力センサである移動型X線装置。
【請求項7】
請求項4に記載の移動型X線装置において、
予め登録された閾値を用いてX線検出器を認識する移動型X線装置。
【請求項8】
請求項3〜8の何れか一つに記載の移動型X線装置において、
前記X線検出器が収納ボックスに収納された事を認識した場合は、前記X線検出器をロックする手段を有する移動型X線装置。
【請求項9】
請求項1に記載の移動型X線装置において、
前記X線検出器のロック機構に、前記X線検出器の無理な取り出しを警告する警告手段を有する移動型X線装置。
【請求項10】
請求項1に記載の移動型X線装置において、
前記X線検出器のロック機構を動作させるためのロックスイッチを有する移動型X線装置。
【請求項11】
請求項10に記載の移動型X線装置において、
X線検出器のロック機構を動作させるための前記手動スイッチは、キースイッチである移動型X線装置。
【請求項12】
請求項3に記載の移動型X線装置において、
前記認識手段が、X線検出器が収納ボックスに収納された事を認識した場合は、自動的に前記ロック機構が前記X線検出器をロックし、
IDまたはパスワードの入力により、ロックを解除する移動型X線装置。
【請求項13】
請求項1に記載の移動型X線装置において、
装置電源がOFF状態になると、自動的に前記ロック機構が前記X線検出器をロックするように構成した移動型X線装置。
【請求項14】
請求項13に記載の移動型X線装置において、
装置電源がON状態になり、IDまたはパスワードの入力により、ロックを解除する移動型X線装置。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の移動型X線装置において、
更に、ロックスイッチを設け、
ロックスイッチによりロックされた状態で、装置電源がOFF状態になると、ロック状態を継続するようにした移動型X線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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