説明

移動局測位システム

【課題】3次元空間を移動する移動局の位置の算出を4つ未満の基地局により実行可能な移動局測位システムを提供する。
【解決手段】前記移動局の床面からの高さhについての情報である高さ情報を検出する高さ検出部と、受信時刻検出部により検出された各基地局12における電波の受信時刻に関する情報である受信時刻情報と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局10の高さ情報と、前記各基地局12の位置についての情報である位置情報とに基づいて前記移動局10の位置の算出を行なう測位部50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局から送信される電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻情報と該複数の基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムに関するものであり、特に、移動局が3次元空間を移動する場合に移動局の高さを検出することにより、検出された高さを用いて移動局の位置の算出を行なう技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局から送信される電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻情報と該複数の基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムにおいては、例えば、前記受信時刻情報と移動局が電波を送信した送信時刻に関する送信時刻情報とに基づいて電波の伝搬時間を算出し、算出された伝搬時間に基づいて各基地局と移動局との距離を算出する。そして、算出された各基地局と移動局との距離と、予め既知とされている各基地局の位置とに基づいて移動局の位置を算出する。
【0003】
図16は、かかる移動局の位置の測位を説明する図であって、移動局10よって発信された電波が第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、および第4基地局12Dによって受信される。そして、移動局10における電波の送信時刻と、第1基地局12A乃至第4基地局12Dのそれぞれにおける電波の受信時刻とに基づいて電波の伝搬時間がそれぞれ算出される。さらに、算出された伝搬時間にもとづいて、すなわち伝搬時間に電波の速度c(=2.997×10(m/s))を乗ずることにより移動局10および第1基地局12A乃至第4基地局12Dの間の距離L1乃至L4が算出される。
【0004】
図16に示す空間には同図に示すように直交座標系が定義されており、空間内の位置を座標により特定することができるようにされている。ここで、第1基地局12A乃至第4基地局12Dの位置は予め既知とされており、その座標は第1基地局12Aの位置が(X1,Y1,Z1),第2基地局12Bの位置が(X2,Y2,Z2),第3基地局12Cの位置が(X3,Y3,Z3),第4基地局12Dの位置が(X4,Y4,Z4)である。すると、位置を算出しようとする移動局10の座標を(x,y,z)とすると、これらの関係は、
(x−X1)+(y−Y1)+(z−Z1)=L1
(x−X2)+(y−Y2)+(z−Z2)=L2
(x−X3)+(y−Y3)+(z−Z3)=L3
(x−X4)+(y−Y4)+(z−Z4)=L4 …(1)
の4式によって表される。
【0005】
このように移動局の位置を算出する場合においては、移動局が3次元空間を移動する場合には、少なくとも4つの基地局によって移動局からの電波が受信され、それら少なくとも4つの基地局のそれぞれと移動局との距離が算出される必要がある。すなわち、上記(1)式の形式で表される式が3式以下であると、その解を一意に得ることができない。
【0006】
特許文献1および特許文献2には、GPS(Global Positioning System)を利用した位置測位システムなどにおいて、4つの衛星から電波を受信できなくなった場合に、4つ未満の衛星から送信された電波より得られる情報に、高度情報を補うことによって位置を計算することのできる車両用測位装置などが開示されている。このうち、特許文献1に開示の技術は、前記高度情報は気圧センサによって計測された気圧に基づいて得られるものとされており、また、特許文献2に開示の技術は、予め道路に設置された高度情報を表す磁気マーカを車両に搭載された磁気センサにとて読み取ることによって得られるものとされている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−273510号公報
【特許文献2】特開2005−91184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これら特許文献1および2の技術によれば、高さを検出するためには気圧センサあるいは磁気センサという、電波の送受信とは無関係のハードウェアを新たに備える必要がある。また、移動局の位置の算出において、数十センチ、あるいは数センチの精度で位置の算出を行なうことが必要とされる場合には、それらの差を検出することが困難である。また、移動局が静止している、あるいは極めて遅い速度で移動する場合には、所定の間隔で設置された磁気マーカの配列を移動しつつ読み取ることは困難である。
【0009】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、3次元空間を移動する移動局から送信される電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻情報と該複数の基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、移動局の高さを検出し、検出した移動局の高さについての情報を用いることにより、前記基地局の数が4つ未満である場合においても移動局の位置を算出可能な移動局測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)3次元空間を移動する移動局から送信される電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻についての情報と該複数の基地局の位置についての情報とに基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)前記移動局は、電波を送信する送信部を備え、(c)前記基地局は、前記移動局から送信された電波を受信する受信部と、(d)該受信部により電波を受信した時刻を検出する受信時刻検出部と、を備え、(e)前記移動局の床面からの高さについての情報である高さ情報を検出する高さ検出部と、(f)前記受信時刻検出部により検出された各基地局における電波の受信時刻に関する情報である受信時刻情報と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置についての情報である位置情報とに基づいて前記移動局の位置の算出を行なう測位部とを有すること、を特徴とする。
【0011】
また、請求項2にかかる発明は、(a)前記受信時刻検出部は、前記移動局が送信する電波のうち、前記移動局から直接前記基地局に到達する直接波の前記基地局における受信時刻と、前記移動局から所定の反射面において反射された後に前記基地局に到達する反射波の前記基地局における受信時刻とを検出し、(b)前記高さ検出部は、前記各基地局の少なくとも1つにおける前記受信時刻検出部によって検出された前記直接波の受信時刻に関する直接波受信時刻情報、前記反射波の受信時刻に関する反射波受信時刻情報、および前記基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さを検出することを特徴とする。
【0012】
好適には、請求項3にかかる発明は、前記高さ検出部は、移動局と基地局との距離に関する距離関連値に基づいて移動局との距離が最も小さいとされる基地局における、前記受信時刻検出部によって検出された前記直接波の受信時刻に関する直接波受信時刻情報、前記反射波の受信時刻に関する反射波受信時刻情報、および前記基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さを検出することを特徴とする。
【0013】
好適には、請求項4にかかる発明は、前記高さ検出部は、複数の前記基地局のそれぞれにおける前記直接波受信時刻情報、前記反射波受信時刻情報、および前記基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さをそれぞれ検出し、該検出された移動局の高さを平均することにより前記移動局の高さを算出することを特徴とする。
【0014】
また好適には、請求項5にかかる発明は、前記高さ検出部は、移動局と基地局との距離に関する距離関連値に応じた重みを前記複数の基地局のそれぞれについて算出し、前記複数の基地局のそれぞれについて検出された前記移動局の高さを該重みを用いて重み付け平均を行なうことにより前記移動局の高さを算出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項6にかかる発明は、(a)前記送信部は第1の偏波特性を有する電波を送信し、(b)前記移動局は、前記第1の偏波特性を有する電波を受信可能な第1受信部と、(c)該第1の偏波特性とは異なる偏波特性である第2の偏波特性を有する電波を受信可能な第2受信部と、を備え、(d)前記高さ検出部は、前記送信部が送信し、所定の反射面で反射し前記第2受信部において受信される電波について、前記送信部における送信時刻と該第2受信部における受信時刻とに基づいて送信から受信までに要した往復伝搬時間を算出し、算出された前記往復伝搬時間に基づいて前記移動局の高さを検出することを特徴とする。
【0016】
また、請求項7にかかる発明は、前記測位部は、前記受信時刻検出部により検出された受信時刻に関する情報である受信時刻情報と前記移動局における電波の送信時刻についての情報である送信時刻情報とに基づいて算出される前記移動局から前記各基地局への電波の伝搬時間と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置についての情報である位置情報とに基づいて前記移動局の位置の算出を行なうことを特徴とする
【0017】
また、請求項8にかかる発明は、前記測位部によって前記移動局の位置の候補が複数算出される場合において、前記移動局の存在し得る領域に関する情報、または前記移動局の移動履歴に関する情報の少なくともいずれか1つに基づいて前記移動局の位置として前記移動局の位置の候補のいずれかを選択する移動局位置選択部を有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項9にかかる発明は、前記測位部は、前記受信時刻検出部により検出された各基地局における電波の受信時刻に基づいて算出される基地局の対に対応する電波の到来時間差と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置情報とに基づいて移動局の位置の算出を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1にかかる移動局測位システムによれば、前記高さ検出部により、前記移動局の床面からの高さについての情報である高さ情報が検出され、前記測位部により、前記測位部により、前記受信時刻検出部により検出された各基地局における電波の受信時刻に関する情報である受信時刻情報と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置についての情報である位置情報とに基づいて前記移動局の位置の算出が行なわれるので、3次元空間を移動する移動局の位置の算出を4つ未満の基地局によって行なうことができる。
【0020】
また、請求項2にかかる移動局測位システムによれば、前記受信時刻検出部により、前記移動局が送信する電波のうち、前記移動局から直接前記基地局に到達する直接波の前記基地局における受信時刻と、前記移動局から所定の反射面において反射された後に前記基地局に到達する反射波の前記基地局における受信時刻とが検出され、前記高さ検出部により、前記受信時刻検出部によって検出された前記基地局の少なくとも1つにおける前記直接波の受信時刻に関する直接波受信時刻情報、前記反射波の受信時刻に関する反射波受信時刻情報、および前記各基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さが検出されるので、測位のために必要となる電波以外の他の手段を用いることなく移動局の高さを検出することができ、移動局の構成を簡素化することができる。
【0021】
また、請求項3にかかる移動局測位システムによれば、前記高さ検出部は、移動局と基地局との距離に関する距離関連値が最も小さいとされる基地局における、前記受信時刻検出部によって検出された前記直接波の受信時刻に関する直接波受信時刻情報、前記反射波の受信時刻に関する反射波受信時刻情報、および前記基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さを検出するので、精度よく移動局の高さを検出することができ、移動局の測位の精度が向上する。
【0022】
また、請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記高さ検出部は、複数の前記基地局のそれぞれにおける前記直接波受信時刻情報、前記反射波受信時刻情報、および前記基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さをそれぞれ検出し、該検出された移動局の高さを平均することにより前記移動局の高さを算出するので、各基地局ごとに検出された移動局の高さの誤差を低減することができ、精度よく移動局の高さを検出することができるとともに、移動局の測位の精度が向上する。
【0023】
また、請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記高さ検出部は、移動局と基地局との距離に関する距離関連値に応じた重みを前記複数の基地局のそれぞれについて算出し、前記複数の基地局のそれぞれについて検出された前記移動局の高さを該重みを用いて重み付け平均を行なうことにより前記移動局の高さを算出するので、各基地局の検出精度が高い基地局により検出された移動局の高さほど高い重みを付されて平均されるので、より精度よく移動局の高さを検出することができるとともに、移動局の測位の精度が向上する。
【0024】
また、請求項6にかかる移動局測位システムによれば、前記送信部により第1の偏波特性を有する電波が送信され、前記移動局は、前記第1の偏波特性を有する電波を受信可能な第1受信部と、該第1の偏波特性とは異なる偏波特性である第2の偏波特性を有する電波を受信可能な第2受信部と、を備え、前記高さ検出部により、前記送信部が送信し、所定の反射面で反射し前記第2受信部において受信される電波について、前記送信部における送信時刻と該第2受信部における受信時刻とに基づいて送信から受信までに要した往復伝搬時間が算出され、算出された前記往復伝搬時間に基づいて前記移動局の高さが検出されるので、測位のために必要となる電波以外の他の手段を用いることなく移動局の高さを検出することができ、移動局の構成を簡素化することができる。
【0025】
また、請求項7にかかる移動局測位システムによれば、前記測位部により、前記受信時刻検出部により検出された受信時刻に関する情報である受信時刻情報と前記移動局における電波の送信時刻についての情報である送信時刻情報とに基づいて算出される前記移動局から前記各基地局への電波の伝搬時間と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置についての情報である位置情報とに基づいて前記移動局の位置の算出が行なわれるので、前記前記移動局と前記各基地局の間の電波の伝搬時間に基づいて移動局の位置の算出を行なうことができる。
【0026】
また、請求項8にかかる移動局測位システムによれば、移動局位置選択部により、前記測位部によって前記移動局の位置の候補が複数算出される場合において、前記移動局の存在し得る領域に関する情報、または前記移動局の移動履歴に関する情報の少なくともいずれか1つに基づいて前記移動局の位置として前記移動局の位置の候補のいずれかが選択されるので、前記測位部によって移動局の位置の候補が複数算出された場合であっても、移動局の位置が選択される。これにより、3次元空間を移動する移動局の位置の算出を3つ未満の基地局によって行なうことができる。
【0027】
また、請求項9にかかる移動局測位システムによれば、前記測位部は、前記受信時刻検出部により検出された各基地局における電波の受信時刻に基づいて算出される基地局の対に対応する電波の到来時間差と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置情報とに基づいて移動局の位置の算出を行なうので、前記移動局に時計を有さなくても移動局の位置の算出を正確に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は本発明の移動局測位システム8の一例を説明する図である。図1に示すように、3次元空間を移動可能な移動局10と、既知の位置に固定され、前記移動局10から送信された電波を受信する複数の基地局12と、これら複数の基地局12と例えば通信ケーブル18で接続されることにより情報通信可能とされたサーバ14とを含んで構成される。このサーバ14は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えた所謂コンピュータで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことにより、必要な演算処理を行なうようになっている。図1においては、例として第1基地局12A、第2基地局12B、および第3基地局12Cの3つの基地局12が表されている。なお、これらの各基地局を区別しない場合、基地局12と記載する。
【0030】
図2は、移動局10の制御機能と構成の一例を説明する図である。移動局10はアンテナ22、無線部24、時計28、等を有する。また、移動局10は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータ(マイコン)25を含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことにより、時計同期部26、制御部31などの制御作動を実行するようになっている。
【0031】
無線部24は、電波の送受信を行なうものであって、送信部および受信部に対応する。無線部24は、電波の送信時においては所定の周波数の搬送波を生成するとともに、後述する拡散符号などの送信信号をASK変調、FSK変調などの処理やデジタル変調の処理を行ない、処理された電波を所定の出力まで増幅しアンテナ22を用いて送信する。また、無線部24は電波の受信時においては、アンテナ22によって受信された電波から所定の周波数成分のみを取り出し、信号処理に適した増幅を行なうとともに、発信の際に行なわれた変調の方式に対応する復調処理を行なうことにより受信した電波に含まれる信号成分を取り出す。無線部24における電波の送信状態と受信状態とは必要に応じて後述する制御部31により切換可能とされている。すなわち、無線部24は、例えば、搬送波を生成する発振器、変調処理を行なう変調器、あるいはデジタル変調器、増幅を行なう増幅器、受信波から所定の周波数成分を取り出すフィルタ、復調を行なう復調器、送信状態と受信状態を切り換える送受信切換器などの、デジタル無線通信のために広く用いられる機構を含んで構成される。
【0032】
アンテナ22は、前記無線部24が電波の送受信に用いるものであって、無線部24が送受信する電波の周波数等の特性に応じた形式のものが用いられる。なお、移動局10から各基地局12への電波の送信時において、移動局10からの距離が同一であれば移動局10に対する基地局12の方向に関わらず同一の強度で移動局10から送信される電波の強度が得られるように、アンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0033】
時計28は、時刻に関する情報を供給するものであって、移動局10の作動時に参照される。具体的には例えば、無線部24が拡散符号などの符号を含む電波を送信する場合においては、その電波には時計28を参照することにより得られる時刻情報が送信時刻に関する情報(送信時刻情報)として含まれる。
【0034】
ここで、移動局10から送信される電波には、受信の際に受信時刻の検出を精度よく行なうための符号を含むことができる。この符号は、移動局10からの電波を受信した基地局12において後述する受信時刻検出部36により電波の受信時刻の検出に用いられるものであって、好適には自己相関関数に高いピークを持ち、すなわち位相差がゼロである場合において自己相関が大きな値となる一方、位相差がゼロでない場合には自己相関が十分に小さく、かつ、異なる符号間における相関が全ての位相差において十分小さい、すなわち相互相関が小さいことという条件を満たす符号である拡散符号が用いられる。具体的には例えば、M系列符号や、GPSにおいても使用されているGold系列符号などの疑似雑音符号(pseudo−noise code;PN符号)が用いられる。この符号は、後述する移動局10の制御部31によって生成されても良いし、予め図示しない記憶装置などに記憶させておき、送信する際などに取得してもよい。
【0035】
図2において、マイコン25を図示する破線で表わされたブロックの内部は、マイコン25によって実行される制御機能の概要を示す機能ブロック図とされている。この図2に示す様に、マイコン25においては、受信時刻検出部27、時計同期部26、制御部31などが実行される。
【0036】
受信時刻検出部27は、周知のマッチドフィルタや遅延素子などを含んで構成され、無線部24において例えば受信される電波(受信波)の受信時刻を、その受信波に含まれる符号に基づいて検出する。具体的には例えば、移動局10が基地局12から送信される電波を受信し、その受信時刻を検出する場合において、予め基地局12が送信する拡散符号と同一のレプリカ符号を移動局10の図示しないRAMなどの記憶手段が記憶しておき、そのレプリカ符号と、受信された基地局12からの電波から取り出された拡散符号(受信符号)とをマッチドフィルタに入力することにより、両者の相関値を得ることができる。この相関値の算出を、例えば前記受信符号を遅延素子によって所定の単位ずつ遅延(シフト)するごとに行ない、算出される相関値がピークを生じた際の遅延量に基づいて、電波の受信時刻を算出する。具体的には例えば、基地局12による拡散符号の送信時刻に、前記相関値がピークを生じた際、すなわち、前記受信符号およびレプリカ符号が同期した際の遅延量に対応する時間を加算することによって移動局10における電波の受信時刻とすることができる。
【0037】
時計同期部26は、移動局10の時計28の時刻と、基地局12が有する時計40の時刻とを同期させる処理である時計合わせ処理を行なう。この時計同期部26は、時計合わせ処理の対象とされるいずれか1つの基地局(以下、「時計同期基準基地局」という。)12の時計同期部42と協調して作動するものであって、具体的な作動は後述する。
【0038】
制御部31は、移動局10の作動を制御するものであって、例えば、無線部24の送信状態と受信状態を切り換えたり、あるいは、無線により移動局10の作動に関する指令(コマンド)が送信される場合においては、無線部24によって受信された受信波に含まれるコマンドを抽出し、そのコマンドを実行すべく移動局の作動を決定する。具体的には例えば送信する拡散符号の生成や、生成された送信符号の無線による送信を適切なタイミングで実行するよう指示する。
【0039】
図3は、基地局12の制御機能と構成の一例を説明する図である。基地局12はアンテナ32、無線部34、有線通信インタフェース38、時計40等を有する。また、基地局12は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータ(マイコン)35を含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことにより、受信時刻検出部36、時刻同期部42、制御部41などの制御作動を実行するようになっている。
【0040】
基地局12の無線部34、アンテナ32、および時計40は、前述の移動局10の無線部24、アンテナ22、および時計28とそれぞれ同様の作動を行なうものであるので、説明を省略する。なお、無線部34においては、移動局10から送信される電波が受信され、復調および復号されるので、受信波に含まれる信号成分が取り出され、移動局10から送信される電波に含まれる拡散符号などの符号や、移動局10における電波の送信時刻に関する情報が取り出される。
【0041】
有線通信インタフェース38は、LANケーブルなどの通信ケーブル18を介して基地局12とサーバ14との情報通信を行なう。具体的には、基地局12の受信時刻検出部36によって検出される電波の受信時刻としての同期時刻や、移動局10から送信される電波に含まれる送信時刻についての情報が基地局12からサーバ14に送信されるほか、サーバ14からは、基地局12は移動局10の作動に関する指令などが送信される。
【0042】
基地局12から送信される電波にも、前述の移動局10から送信される電波と同様に、受信の際に受信時刻の検出を精度よく行なうための符号を含むことができる。この符号は、基地局12からの電波を受信した他の基地局12の受信時刻検出部36や移動局10の受信時刻検出部27により電波の受信時刻の検出に用いられるものであって、拡散符号が用いられる。この符号は、後述する基地局12の制御部41によってその都度生成されても良いし、予め図示しない記憶装置などに記憶され、取得されてもよい。
【0043】
図3において、マイコン35を図示する破線で表わされたブロックの内部は、マイコン35によって実行される制御機能の概要を示す機能ブロック図とされている。この図3に示す様に、マイコン35においては、受信時刻検出部36、時計同期部42、制御部41などが実行される。
【0044】
受信時刻検出部36は、周知のマッチドフィルタや遅延素子などを含んで構成され、無線部34において受信される移動局10からの電波(受信波)の受信時刻を、その受信波に含まれる符号に基づいて検出する。具体的にはまず、予め移動局10が送信する拡散符号と同一のレプリカ符号を各基地局12の図示しないRAMなどの記憶手段が記憶しておき、そのレプリカ符号と、受信された移動局10からの電波から取り出された拡散符号(受信符号)とをマッチドフィルタに入力することにより、両者の相関値を得ることができる。この相関値の算出を、例えば前記受信符号を遅延素子によって所定の単位ずつ遅延(シフト)させるごとに行ない、算出される相関値がピークを生じた際の遅延量に基づいて、電波の受信時刻を算出する。具体的には例えば、移動局10による拡散符号の送信時刻に、前記相関値がピークを生じた際の遅延量に対応する時間を加算することによって基地局12における電波の受信時刻とすることができる。
【0045】
時計同期部42は、各基地局12のそれぞれが有する時計40の時刻を同期させるとともに、基地局12の時計40の時刻と前記移動局10の時計28の時刻とを同期させる処理である時計合わせ処理を行なう。このうち、基地局12の時計40の時刻と前記移動局10の時計28の時刻との同期は、移動局10の時計同期部26と協調して作動するものであって、例えば次の様に行なわれる。まず、移動局10がその位置が予め既知とされた所定の時刻同期位置に位置させられる。移動局10の時計28との時計合わせ処理の対象とされる複数の基地局12のうちいずれか1つの基地局(以下、「時計同期基準基地局」という。)12Tが選択される。移動局10から前記時計同期基準基地局12Tに対し電波を発信し、その時計同期基準基地局12Tに電波を受信させ、例えば前記受信時刻検出部36等によりその受信時刻を検出させる。そして、時計同期基準基地局12Tにおける電波の受信時刻と移動局10における電波の発信時刻とに基づいて前記移動局10から時計同期基準基地局12Tへの電波の伝搬時間を算出する。続いて、同様に時計同期基準基地局12Tから移動局10に対し電波を発信し、移動局10にその電波を受信させ、移動局10の受信時刻検出部27により受信時刻を検出させ、時計同期基準基地局12Tから移動局10への電波の伝搬時間を算出する。このようにして得られた移動局10から時計同期基準基地局12Tへの電波の伝搬時間および時計同期基準基地局12Tから移動局10への電波の伝搬時間を比較することによって移動局10の時計28と時計同期基準基地局12Tの時計40との時刻のずれを算出し、算出された時刻のずれに基づいて移動局10の時計28あるいは時計同期基準基地局12T他の時計40の時刻を補正することによって、移動局10の時計28と、時計同期基準基地局12Tが有する時計40の時刻とを同期させる。より具体的には、移動局10の時計28の時刻が、時計同期基準基地局12Tの時計40の時刻よりもtd(秒)だけ進んでいる場合において、移動局10と時計同期基準基地局12Tとの間の電波の伝搬時間の真値をt0(秒)とすると、移動局10から時計同期基準基地局12Tへの電波の伝搬時間はt1=t0−tdとして算出され、時計同期基準基地局12Tから移動局10への電波の伝搬時間はt2=t0+tdとして算出される。したがって、これらより移動局10の時計28と時計同期基準基地局12Tの時計40との時刻のずれtdは、td=(t2−t1)/2として算出される。このように算出された時刻のずれtdだけ移動局10の時計28を遅らせることにより、移動局10の時計28の時刻と時計同期基準基地局12の時計40の時刻とは同期される。なお、前記移動局10と他の基地局12との間の電波の伝搬時間の真値t0は、既知とされた前記時計同期位置にある移動局10と時計同期基準基地局12との距離、および電波の速度c(=2.997×10(m/s))に基づいて算出される。また、案出された時刻のずれtdだけ時計同期基準基地局12の時計40を進めることによっても、移動局10の時計28の時刻と時計同期基準基地局12の時計40の時刻とは同期される。
【0046】
一方、時計同期部42は、前記複数の基地局12がそれぞれ有する時計40の時刻の同期も行なう。このとき、各基地局12の時計同期部42は協調して作動するものであって、具体的には例えば、次の様な作動を行なう。前記複数の基地局12のうち、時刻の同期の基準となる時計40を有する任意の基地局12を時計同期基準基地局12Tとして選択し、選択された時計同期基準基地局12Tから他の基地局12に対し時計同期のための電波を送信し、その送信時刻を記録する。他の基地局12は時計同期基準基地局12Tから送信された電波を受信し、その受信時刻検出部36などにより受信時刻を検出する。このようにして得られた前記他の基地局12のそれぞれにおける受信時刻と時計同期基準基地局12Tにおける送信時刻とに基づいて、時計同期基準基地局12Tから他の基地局12のそれぞれへの電波の伝搬時間の実際値を算出する。一方、前述の通り、各基地局12の位置は予め既知とされているので、各基地局12間の距離も予め得ることができる。したがって、前記時計同期基準基地局12Tと他の基地局12のそれぞれとの距離に基づいて、前記時計同期基準基地局12Tと他の基地局12のそれぞれの間の電波の伝搬時間の理論値を算出することができる。そして、前記他の基地局12のそれぞれについて、算出された電波の伝搬時間の実際値および理論値を比較し、その実際値が理論値となる様に各基地局12の時計40の時刻を補正する。具体的には例えば、ある基地局12において、時計同期基準基地局12Tからの電波の伝搬時間の実際値がt5、理論値がt6であった場合には、Δt=t5−t6だけ前記ある基地局12の時計40の時刻を遅らせることにより、前記ある基地局12の時計40の時刻と、前記時計同期基準基地局12Tの時計40の時刻とを同期させる。これを前記他の基地局12の全てについて実行することにより、全ての基地局12の時計40の時刻は、前記時計同期基準基地局12Tの時計40の時刻と同期させれる。また、このとき、移動局10の時計28との時刻の同期に用いられる時計同期基準基地局12Tと各基地局12の時計40の時刻の同期に用いられる時計同期基準基地局12Tとが同一の基地局が用いられれば、移動局10の時計28の時刻および全ての基地局12の時計40の時刻を同期することができる。
【0047】
なお、このとき、移動局10と基地局12との間、および各基地局12の間で送受信される電波には、受信時刻を正確に検出することができるよう、拡散符号を含む電波が好適に用いられる。
【0048】
制御部41は、基地局12の作動を制御するものであって、例えば、無線部34の送信状態と受信状態を切り換えたり、有線通信インタフェース38における情報の送受信を制御したり、あるいは、移動局10の作動に関するための指令(コマンド)を生成し無線により送信する。具体的には例えば送信する電波に含められる拡散符号などの符号の生成や、生成された送信符号の無線による送信を適切なタイミングで実行するよう指示する。
【0049】
図4は、サーバ14の有する機能の概要を説明するブロック図である。サーバ14は、前述のようにCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、図4に示す高さ検出部46、測距部48、測位部50、移動局位置候補選択部52などにおける制御作動を実行するようになっている。また、サーバ14はケーブル18を介して他の機器と情報通信を行なうための有線通信インタフェース44などを有している。
【0050】
有線通信インタフェース44は、サーバ14と基地局12とのLANケーブルなどの通信ケーブル18を通した情報通信を行なうためのインタフェースである。この有線通信インタフェース44は、例えばサーバ14から基地局12に対し、基地局12の制御作動に関する指令を行なったり、あるいは移動局10の制御作動に関する指令を基地局12を介して行なわせる。また、有線通信インタフェース44は、基地局12から送信される情報、例えば基地局12における電波の受信時刻に関する情報や、移動局10からの電波に含まれる移動局10における電波の送信時刻に関する情報などが受信される。なお、サーバ14の有線通信インタフェース44が移動局10の制御作動に関する指令を基地局12を介して行なわせるのは、サーバ14は無線通信に関する機能、すなわち受信部や送信部を有していない一方、移動局10は有線通信に関する機能、すなわち有線通信インタフェースを有しておらず、サーバ14と移動局10とが直接通信を行なうことができないためであり、このため、サーバ14と移動局10とはいずれかの基地局12を介して通信を行なうことができる。
【0051】
測距部48は、移動局10における電波の送信時刻と基地局12におけるその電波の受信時刻とに基づいて、移動局10および基地局12の距離を算出する。具体的には、前記電波の受信時刻と電波の送信時刻との差によって算出される電波の伝搬時間に、電波の速度c(=2.997×10(m/s))を乗ずることによって移動局10および基地局12の距離が算出される。このとき、移動局10における電波の送信時刻に関する情報は、例えば、移動局10の無線部24が電波を送信する際に、送信する信号に時計28を参照することにより得られる時刻情報を拡散符号とともに送信し、これを受信した基地局12からサーバ14に伝達されることにより得られる。また、基地局12における電波の受信時刻は、受信時刻検出部36によって検出される受信時刻が用いられる。なお、予め前述のように、基地局12の時計同期部42および移動局10の時計同期部26とが協調して、基地局12の時計40の時刻と移動局10の時計28の時刻とを同期させる処理を実行することにより、基地局12の時計50の時刻に基づいて算出される受信時刻と、移動局10の時計28の時刻に基づいて算出される送信時刻により、移動局10から送信され基地局12によって受信され電波の伝搬時間を正確に算出することができる。
【0052】
高さ検出部46は、前記基地局12の受信時刻検出部36において検出される移動局10から送信される電波の受信時間のうち、直接波の受信時刻と反射波の受信時刻、および既知である基地局12の高さに基づいて移動局10の高さ、すなわち反射波の反射面である床面からの距離を算出する。
【0053】
図5は、この高さ検出部46による移動局10の高さの検出を説明する図である。図5においては、任意のxz平面(y=a(一定))において、基地局12が既知の位置(x,z)=(0,H)、移動局10が未知の位置(x,z)=(d,h)にそれぞれ存在している。すなわち、基地局12の高さはH、移動局10の高さはhであり、移動局10と基地局12との距離の水平成分はdである。また、図5に示すように、移動局10から基地局12を見る仰角、すなわち水平面と移動局および基地局とを結ぶ直線とのなす角度をθ(rad)とする。
【0054】
移動局10から送信された電波は、直接基地局12に到達する直接波D、および床面などで反射した後に基地局に到達する反射波となって基地局12に到達する。なお、説明を簡単にするため、基地局12において受信される反射波は床面で反射する反射波Rのみであるとする。図6に示すように、基地局12の受信時刻検出部36において、受信波に含まれる符号とそのレプリカ符号との相関値は、時刻Tdおよび時刻Trにおいて、2回のピークを有する。これは、それぞれ直接波Dの受信時刻Tdおよび反射波Rの受信時刻Trに相当する。従って測距部48は基地局12における受信時刻TdおよびTrのそれぞれと、移動局10における電波の送信時刻Ttとから算出される電波の伝搬時間に,電波の速度cを乗ずることによって直接波Dの伝搬距離および反射波Rの伝搬距離をそれぞれ、Ld=(Td−Tt)×c、Lr=(Tr−Tt)×cのように算出する。このとき、図5におけるh、d、θについては、算出された値Ld、Lr、および既知のHを用いて、次式(2)のように表される。
d=Ld×cosθ
h=H−Ld×sinθ
+(H+h)=Lr ・・・(2)
高さ検出部46は、これらを解いて、
h=(Lr−Ld)/(4×H)
のように、移動局10の高さhを算出する。
【0055】
なお、前述の図5においては、反射波Rとして床面で反射する反射波のみを考慮するようにしたが、これは、例えば基地局12を天井面付近に設置することによって、基地局12に天井面によって反射した反射波が到達しないようにすることで実施し得る。また、床面および天井面などで複数回反射して基地局12に到達する反射波も生じ得るが、基地局12に到達した反射波のうち1回の反射によって基地局12に到達する反射波が最もその伝搬距離が短いため、最も速く基地局12に到達した反射波がその1回の反射によって基地局に到達した反射波であるとして、前記基地局12の受信時刻検出部36によって検出される反射波の受信時刻のうち、最初に検出されたものが用いられる。
【0056】
なお、高さ検出部46は、いずれか1の基地局12における直接波と反射波の受信時刻に基づいて算出しても良いし、任意の複数の基地局12における直接波と反射波の受信時刻に基づいて算出した値を平均することにより算出してもよい。このようにすれば、いずれかの基地局12における直接波と反射波の受信時刻に基づいて算出される移動局10の高さの値が、マルチパス等の影響により大きく異なる場合であっても、他のマルチパスの影響を受けない基地局における直接波と反射波の受信時刻に基づいて算出される移動局10の高さとの平均とすることによりマルチパスの影響を低減することができる。
【0057】
一般に、移動局10との距離が近い基地局においては直接波と反射波の受信時刻の差が大きくなることから、高さ検出部46がいずれか1の基地局12における直接波と反射波の受信時刻に基づいて移動局10の高さを算出する場合には、移動局10と各基地局12との距離を表す指標である距離関連値に基づいて、移動局10との距離が最も近いとされる基地局12を選択することにより、移動局10の高さの検出精度を向上させることができる。また高さ検出部46が複数の基地局12における直接波と反射波の受信時刻に基づいて算出した値を平均することにより移動局10の高さを算出する場合において、その平均を移動局10とそれぞれの基地局12との距離に応じた重みつき平均とすることにより、移動局10の高さの検出精度を向上させることができる。ここで、前記距離関連値は、例えば直接波の伝搬時間に基づいて算出されてもよいし、移動局10から送信される電波の各基地局12における受信強度であってもよい。また、移動局10の測位が例えば所定間隔で繰り返し行なわれる場合には、前回の測位実行時の移動局10の位置と各基地局12との距離とされてもよい。すなわち、実際の距離と1対1で変換可能な指標であればよい。
【0058】
測位部50は、予め既知である各基地局12の位置に関する情報と、測距部48において算出された各基地局12と移動局10との距離に関する情報と、高さ検出部46によって検出される移動局10の高さに関する情報とに基づいて、移動局10の位置を算出する。具体的には例えば、第1基地局12Aの位置を表す座標が(X1,Y1)、第2基地局12Bの座標が(X2,Y2)、第3基地局12Cの座標が(X3,Y3)であり、前記測距部48によって第1基地局12Aと移動局10との距離がL1、第2基地局12Bと移動局10との距離がL2、第3基地局12Cと移動局10との距離がL3であり、前記高さ検出部46によって検出される移動局の高さがhである場合において、移動局10の位置を表す座標を(x,y)とすると(図1参照)、これらの関係は次式(3)で表される。
(x−X1)+(y−Y1)+(h−Z1)=L1
(x−X2)+(y−Y2)+(h−Z2)=L2
(x−X3)+(y−Y3)+(h−Z3)=L3 …(3)
測位部50はこの式(3)を満たす(x,y)を算出し、移動局10の位置とする。なお、前記測距部48によって測定される第1基地局12Aと移動局10との距離L1、第2基地局12Bと移動局10との距離L2、第3基地局12Cと移動局10との距離L3は、移動局10による電波の送信時刻をtt、第1基地局12Aにおける移動局10からの電波の受信時刻をtr1、第2基地局12Bにおける移動局10からの電波の受信時刻をtr2、第3基地局12Cにおける移動局10からの電波の受信時刻をtr3とすると、電波の速度cを用いてそれぞれ、
L1=c×(tr1−tt),
L2=c×(tr2−tt),
L3=c×(tr3−tt)
のように算出される。
【0059】
前述の式(1)においては、移動局10の位置の算出を行なう為には4つの基地局12のそれぞれと移動局10との距離、および各基地局12の位置についての情報が必要であった、すなわち移動局10の測位のためには4つの基地局12が必要であった。一方、前記式(3)においては、それよりも少ない3つの基地局12のそれぞれと移動局10との距離、および各基地局12の位置についての情報と、高さ検出部46によって算出される移動局10の高さについての情報とに基づいて移動局10の測位を行なうことができる。また、高さ検出部46は基地局12が既に測距のために必要とする受信時刻検出部36によって検出される受信時刻に基づいて移動局10の高さを算出するので、高さ検出部46は基地局12の既存のハードウェアによって実現することができる。
【0060】
ところで、前記測位部50においては、3つの基地局12において移動局10から送信された電波の受信時刻が検出され、測距部48においてそれら3つの基地局12のそれぞれと移動局10との距離が算出されたことに基づいて、3本の式からなる前述の式(3)を解くことにより移動局10の位置を算出した。しかしながら、例えば基地局12のいずれかが故障していたり、あるいは障害物などにより移動局10からの直接波が到達しない位置に存在している場合には、移動局10から送信された電波が2つの基地局でしか受信されない場合が生じ得る(図7参照)。かかる場合には、前記測位部50において移動局10の位置を算出するための式は2本となり、その解が複数存在することとなる。具体的には例えば、図7に示すように、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの2つの基地局によって移動局10からの電波が受信された場合には、
(x−X1)+(y−Y1)+(h−Z1)=L1
(x−X2)+(y−Y2)+(h−Z2)=L2 …(4)
の2式が得られ、測位部50によりこの2式を解くことによって、2つの解が得られる。
【0061】
かかる場合において移動局位置候補選択部52は、測位部50によって算出される式(4)の複数の解を移動局10の位置候補とし、移動局10の存在し得る領域に関する情報、または前記移動局10の移動履歴に関する情報の少なくともいずれか1つに基づいて前記移動局10の位置として前記移動局10の位置の候補のいずれかを選択する。
【0062】
まず、移動局位置候補選択部52による移動局10の存在し得る領域に関する情報に基づく移動局10の位置の候補の選択について説明する。移動局位置候補選択部52は、移動局10が存在しうる領域に関する情報と、前記測位部50によって算出される移動局の位置10の候補とを比較する。すなわち、移動局10が壁などでしきられた室内などの限定された領域内のみを移動可能とされている場合においては、その移動局10が移動可能である領域についての情報(領域情報)を、例えば図示しないメモリなどの記憶手段などに予め記憶しておき、移動局位置候補選択部52は、この記憶手段などから読み出された領域情報と、前記測位部50によって算出される移動局10の位置の候補とを比較する。そして、移動局10の位置の候補のうち、前記領域情報に基づいて、移動局10の移動可能な領域の内側にあるか否かを判断する。そして、移動局位置候補選択部52は、移動局10の移動可能な領域の内側にないと判断された前記移動局10の位置の候補については、移動局10の位置の候補から除外する。
【0063】
図8は、移動局位置候補選択部52による移動局10の存在し得る領域に関する情報に基づく移動局10の位置候補選択作動を説明する図であり、移動局10が移動可能な空間のxy平面を示している。測位部50により、移動局10からの電波を受信した第1基地局12Aおよび第2基地局12Bのそれぞれに対応する2本の式からなる前記式(4)を解くことにより、その解としてSAおよびSBの2つの移動局10の位置の候補が得られている。一方、図示しない記憶手段などに予め記憶された領域情報、すなわち、例えば壁などにより制限された移動局10の移動可能な領域が、図8において斜線の付された領域5であるとする。このとき、この領域5の位置に関する情報が領域情報として予め記憶されており、移動局位置候補選択部52は、前記移動局10の位置の候補SAおよびSBの位置についての情報と、予め記憶された前記領域情報すなわち存在可能領域5の位置についての情報とを比較し、候補SAは移動局10の移動可能な領域の内側にあると判断し、一方、候補SBは移動局10の移動可能な領域の内側にはないと判断する。この判断に基づき、移動局位置候補選択部52は、候補SBは移動局10の位置の候補から除外する。この結果、移動局10の位置の候補は候補SAのみとなり、移動局位置候補選択部52は移動局10の位置は候補SAの位置であると選択する。
【0064】
続いて、移動局位置候補選択部52による移動局10の移動履歴に関する情報に基づく移動局10の位置の候補の選択について説明する。本実施例の移動局測位システムにより移動局10の測位が例えば所定の間隔で繰り返し行なわれる場合において、移動局位置候補選択部52は、過去に測位部50により移動局10の位置であるとされた位置、あるいは、移動局移動局位置候補選択部52により移動局10の位置であるとして選択された位置およびその測位の行なわれた時刻についての情報(移動履歴情報)を所定の回数分だけ図示しないメモリなどの記憶手段に記憶する。
【0065】
また、移動局位置候補選択部52は、記憶手段などにおいて記憶された前記移動履歴情報に基づいて、現在の移動局10の位置を予測する。そして、予測された現在の移動局10の予測位置と測位部50によって算出された複数の移動局位置候補とを照合する。そして、移動局位置候補選択部52は、この照合の結果、前記移動局10の予測位置に最も近い位置にある移動局の位置の候補を現在の移動局10の位置であるとして選択する。
【0066】
図9は、移動局位置候補選択部52による移動履歴に関する情報に基づく移動局10の位置候補選択作動を説明する図である。図9において、前記測位部50によって算出された移動局位置の2つの候補は候補SAおよび候補SBである。一方、点qt−1、点qt−2、点qt−3、点qt−4はそれぞれ、繰り返し行なわれる移動局10の測位での、現在より1回乃至4回前に行なわれた移動局10の測位による移動局10の位置を表している。移動局位置候補選択部52は、前記点qt−1、点qt−2、点qt−3、点qt−4の位置に基づいて、現在の移動局10の予測位置q(x,y)を予測する。そして、予測された移動局10の予測位置qと候補SAの距離de1、および移動局10の予測位置qと候補SBとの距離de2をそれぞれ算出する。移動局位置候補選択部52は算出された距離de1および距離de2を比較し、この距離がより小さい移動局位置候補を実際の移動局10の位置であるとして選択する。すなわち、図9の例であれば、de1>de2であるので、より小さい距離であるde2に対応する移動局位置である候補SBを実際の移動局10の位置であるとして選択する。
【0067】
具体的には、移動局位置候補選択部52は、例えば以下のようにして現在の移動局の予測位置q(x,y)を予測する。現在の移動局の予測位置qにおける移動局10の移動速度をv、加速度をaとし、同様に、過去1回前の測位の際の移動局10の位置qt−1における移動局10の移動速度をvt−1、加速度をat−1、過去2回前の測位の際の移動局10の位置qt−2における移動局10の移動速度をvt−2、加速度をat−2、過去3回前の測位の際の移動局10の位置qt−3における移動局10の移動速度をvt−3、加速度をat−3、過去4回前の測位の際の移動局10の位置qt−4における移動局10の移動速度をvt−4、加速度をat−4とする。このとき、現在の加速度は過去2回における測位の際における移動局10の移動加速度の平均であるとすると、その関係は次式(5)で表される。
=(at−1+at−2)/2 …(5)
で表される。このとき、移動局測位システム8による測位が所定の微小時間で反復して行なわれている場合には、ある測位の際における移動局10の移動加速度aは、その測位の際における移動局10の移動速度vと1回前の測位の際における移動局10の移動速度vt−1とを用いて、a=v−vt−1と表され、またある測位の際における移動局10の移動速度vは、その測位の際における移動局10の位置qと1回前の測位の際における移動局10の位置qt−1とを用いて、v=q−qt−1と表されることから、前記式(5)は、
−vt−1=((vt−1−vt−2)+(vt−2−vt−3))/2
(q−qt−1)−(qt−1−qt−2
=(((qt−1−qt−2)+(qt−2−qt−3))
+((qt−2−qt−3)+(qt−3−qt−4)))/2
と順次書き換えられる。これをqについて整理すると、
=(5qt−1−3qt−2−qt−3+qt−4)/2
となる。このようにして、現在の移動局10の予測位置qを算出する。
【0068】
図10は、本発明の移動局測位システム8の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、移動局10の時計同期部26、基地局12の時計同期部42に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1において、移動局10の時計28と各基地局12の時計40の時刻とが同期するための時刻同期ルーチンが実行させられる。なお、このSA1で実行される時刻同期ルーチンは、図10のフローチャートが反復して実行される場合においては、1回目の実行においてのみ実行されるようにしてもよい。そのようにすれば、2回目以降である反復実行時の測位を高速化できる。
【0069】
図11は、この時刻同期ルーチンによる移動局10の時計28の時刻と基地局12の時計40の時刻とを同期する作動を説明するフローチャートであり、図12は、時刻同期ルーチンによる各基地局12の時計40の時刻とを同期する作動を説明するタイムチャートである。これらが順次実行されることにより、移動局10の時計28の時刻と、全ての基地局12の時計40の時刻とが同期させられる。なお、図11および図12の制御作動は、その順で実行することに限られず、まず図12を実行し、その後図11を実行してもよい。
【0070】
図11は、この時刻同期ルーチンによる移動局10の時計28の時刻と基地局12の時計40の時刻とを同期する作動を説明するフローチャートである。図11のフローチャートを実行する前に、複数の基地局のうち、時刻の同期における基準となる基地局である時計同期基準基地局12Tとして、いずれか1の基地局が選択される。そして、選択された時計同期基準基地局12Tと移動局10とを対象としてこの図11の時刻同期ルーチンが実行される。
【0071】
時計同期基準基地局12Tの無線部34など対応するSB1においては、制御部41により電波を送信可能に制御された基地局12の無線部34から所定の拡散符号が移動局10に向けて送信されるとともに、その発信時刻tbtが記憶される。一方、制御部31により電波を受信可能に制御された移動局10の無線部24および受信時刻検出部27などに対応するSB2においては、SB1で時計同期基準基地局12Tから発信された拡散符号が受信され、受信した拡散符号を同期検出処理することにより受信時刻tmrが検出される。
【0072】
続いて制御部31により電波を送信可能に制御された移動局10の無線部24などに対応するSB3においては、所定の拡散符号、その発信時刻tmt、およびSB2において検出された受信時刻tmrが移動局10から時計同期基準基地局12Tに対して発信される。一方、制御部41により電波を受信可能に制御された時計同期基準基地局12Tの無線部34および受信時刻検出部36などに対応するSB4においては、SB3で移動局10から発信された拡散符号が受信され、受信した拡散符号を同期検出処理することにより受信時刻tbrが検出される。検出された受信時刻tbrは、SB3で移動局10から発信されSB4で受信された移動局10における発信時刻tmt、および受信時刻tmrとともに記憶される。
【0073】
続くSB5乃至SB6は時計同期基準基地局12Tの時計同期部42に対応する。まず、SB5においては、往路、すなわち時計同期基準基地局12Tから移動局10への電波の伝搬時間t1および、復路、すなわち移動局10から時計同期基準基地局12Tへの電波の伝搬時間t2とを、t1=tmr−tbt、t2=tbr−tmtのように算出する。そして、SB6においては、SB5において算出された往路の電波伝搬時間t1および復路の電波伝搬時間t2とに基づいて、移動局10の時計78と基地局12の時計40との時刻のずれtdを、td=(t2−t1)/2として算出する。
【0074】
時計同期基準基地局12Tの時計同期部42および制御部41により電波を送信可能に制御された無線部34に対応するSB7においては、SB6において算出された移動局10の時計78と基地局12の時計40との時刻のずれtdだけ移動局10の時計28の時計を遅らせるよう、移動局10に対し指令を送信する。そして、移動局10の制御部31により電波を受信可能に制御された無線部24、時計同期部26などに対応するSB8においては、SB7において時計同期基準基地局12Tにより送信された指令に基づき、時計28の時刻を補正する。このようにして、移動局10の時計28の時刻と基地局12の時計40の時刻とは同期されたものとなる。
【0075】
一方、図12は、時刻同期ルーチンによる各基地局12の時計40の時刻とを同期する作動を説明するタイムチャートである。図12のタイムチャートを実行する前に、複数の基地局のうち、時刻の同期における基準となる基地局である時計同期基準基地局12Tとして、いずれか1の基地局が選択される。好適には図11のフローチャートの実行時における時計同期基準基地局12Tと同一の基地局12が選択されることにより、移動局10の時計28の時刻および全ての基地局12の時計40の時刻が同期させられる。本図12のタイムチャートにおいては、第1基地局12Aが時計同期基準基地局12Tとして選択されている。なお本図12のタイムチャートにおいては、各基地局12の時計同期部42の協調作動を制御すると共に、必要な演算をサーバ14において行なうものとされているが、このような態様に限られず、例えばいずれか1の基地局が有するマイコンの演算機能などを用いてもよい。
【0076】
図12において、縦線で表された第1基地局12A乃至第4基地局12Dと測位サーバ14との間を横方向に結ぶ矢印によって各基地局および測位サーバ間の通信の様子が示されている。なお矢印の向きは通信の方向を示しており、矢印の先が向いている機器が受信側である。また、波線で表された矢印は無線による通信を表している。また、図中下向きに時間軸がとられており、下へ行くほど時間の経過を表している。
【0077】
まず時刻t11において、測位サーバ14から予め選択された時計同期基準基地局12T(本図においては第1基地局12A)に対し、無線通信における空きチャンネルの探索命令がされる。これを受け、第1基地局12Aはチャンネルスキャンを実行し、発見した空きチャンネルについての情報を時刻t12において測位サーバ14に対し送信する。続いて時刻t13において測位サーバ14から時計同期基準基地局12T(本図においては第1基地局12A)に対し、時刻情報を無線により発見された空きチャンネルを用いて送信する命令がされる。更に時刻t14乃至時刻t16において、測位サーバ14から前記時計同期基準基地局12T以外の基地局(本図においては第2基地局12B乃至第4基地局12D)のそれぞれに対し、順次時刻情報を無線により受信する命令がされる。
【0078】
続いて時刻t17において、第1基地局12Aの無線部34から電波が送信される。この電波には、受信した第2基地局12B乃至第4基地局12Dにおいて受信時刻の検出を行なうための拡散符号と、電波の送信時刻を表す送信時刻情報とを含む。そして、この電波が第2基地局12B乃至第4基地局12Dの無線部34によって受信され、受信時刻検出部36により受信時刻が検出される。更に時刻t18乃至時刻t20において、第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれが受信した電波に含まれていた電波の送信時刻に関する情報と、第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれにおいて検出された電波の受信時刻に関する情報とが有線通信部50により測位サーバ14に順次送信される。
【0079】
ここで、各基地局12の位置は既知であることから、前記第1基地局12Aから発信された電波が第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれへ到達するのに要する伝搬時間は予め算出される。従って、第2基地局12B乃至第4基地局12Dのそれぞれについて、受信時刻と送信時刻との時間差から前記それぞれの基地局12についての伝搬時間を引いたものが第2基地局12B乃至第4基地局12Dの時計39のそれぞれの時刻と第1基地局12Aの時計39の時刻との時間ずれとなる。このようにして算出された時間ずれがなくなるように時刻t21乃至時刻t23において第2基地局12B乃至第4基地局12Dの時計39が補正されることにより、各基地局12の時計は時計同期基準基地局12Tである第1基地局12Aの時計40の時刻と同期させられる。
【0080】
図10に戻って、SA2においては、サーバ14から移動局10へ測位のための電波の送信を行なうよう指令が行なわれるとともに、サーバ14から各基地局12に対し移動局10からの電波を受信するよう指令が行なわれる。このとき、サーバ14から移動局10への指令は、いずれか1の基地局12を介して行なわれる。すなわちサーバ14は無線通信に関する機能、すなわち受信部や送信部を有していない一方、移動局10は有線通信に関する機能、すなわち有線通信インタフェースを有しておらず、サーバ14と移動局10とが直接通信を行なうことができないため、サーバ14はいずれかの基地局12に対し、移動局10へ無線により指令を送信するように指令をおこなう。また、サーバから各基地局12への指令は、通信ケーブル18を介して行なわれる。
【0081】
SA3においては、各基地局12において、SA2におけるサーバ14から移動局10への指令を送信する指令を受けたか否かが判断される。そして、サーバ14から移動局10への指令を送信する指令を受けた基地局12においてはこの判断が肯定され、続くSA4が実行される。一方サーバ14からの指令を受けていない基地局12においてはこの判断が否定され、移動局10からの電波の受信の待機が行なわれてSA6が実行される。
【0082】
移動局12の無線部34などに対応するSA4においては、SA2でサーバ14から移動局10への指令を送信する指令を受けた基地局12から移動局10に対して、測位のための電波を送信させる指令が無線により送信される。なお、この指令の送信を行なった基地局12についても、送信の後、移動局10からの電波の受信の待機が行なわれる。
【0083】
移動局10の制御部31、無線部24などに対応するSA5においては、移動局10から測位のための電波が送信される。この測位のための電波には、拡散符号などの所定の符号、および時計28から得られる電波の送信時刻についての情報が含まれる。
【0084】
基地局12の無線部34、受信時刻検出部36などに対応するSA6においては、SA5において移動局10から送信された測位のための電波が各基地局12において受信される。そして、受信された電波に含まれる前記PN符号などの所定の符号に対してそのレプリカ符号との相関値のピーク値を検出することにより、同期時刻が検出され、電波の受信時刻が算出される。そして、算出された電波の受信時刻についての情報と、受信した電波から取り出された電波の送信時刻についての情報とが通信ケーブル18を介して各基地局12からサーバ14に送信される。このとき、受信時刻の算出は、少なくとも2回、すなわち直接波の受信時刻および1回の反射による反射波の受信時刻がそれぞれ算出される。
【0085】
測距部48に対応するSA7においては、SA6において算出された直接波の各基地局12における受信時刻と、移動局10における電波の送信時刻とから移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間が算出され、これに電波の速度cを乗ずることにより移動局10と各基地局12との距離が算出される。
【0086】
高さ検出部46に対応するSA8においては、SA6において算出された反射波の各基地局12における受信時刻と、移動局10における電波の送信時刻とから移動局10から各基地局12への反射波の伝搬距離Lrが算出され、算出された反射波の伝搬距離LrとSA7において算出された基地局12と移動局10との距離、すなわち直接波の伝搬距離Ldと、予め既知とされている基地局12の高さHについての情報とに基づいて、移動局10の高さhが算出される。なお、移動局10の高さhの算出は、いずれか1つの基地局12に対して、その基地局12についての移動局10からの反射波の伝搬距離Lrと、直接波の伝搬距離Ldと、基地局12の高さHについての情報とに基づいて算出されてもよいし、任意の複数の基地局に対して移動局10の高さhが算出されそれらが平均されてもよい。
【0087】
測位部50に対応するSA9においては、SA7において算出された各基地局12と移動局10との距離と、予め既知である各基地局12の位置についての情報と、SA8において算出された移動局10の高さhについての情報とに基づいて、移動局10の位置が算出される。具体的には、これらの関係を表す式である前記(4)式を解くことにより、移動局10の位置が算出される。
【0088】
続くSA10においては、SA9において移動局の位置として算出された前記式(4)の解が複数個であったか否かが判断される。例えば前記(4)式の本数が2本以下である場合などにおいて前記式(4)の解が複数個であった場合には、これら複数個の解は移動局10の位置の候補であるとして、SA11が実行される。一方、前記式(4)の解が1つであった場合には、その1つの解が移動局10の位置であるとして、本フローチャートは終了される。
【0089】
移動局位置候補選択部52に対応するSA11においては、SA9において移動局10の位置の候補とされた前記式(4)の複数の解のいずれかが、前記移動局の存在し得る領域に関する情報、または前記移動局の移動履歴に関する情報の少なくともいずれか1つに基づいて前記移動局の位置として選択される。
【0090】
前述の実施例の移動局測位システム8によれば、高さ検出部46(SA8)により、移動局10の床面からの高さhについての情報である高さ情報が検出され、測位部50(SA9)により、伝搬時間算出部(測距部48)(SA7)によって算出された移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間と、高さ検出部46によって検出された移動局10の高さ情報と、各基地局12の位置情報とに基づいて移動局10の位置の算出が行なわれるので、3次元空間を移動する移動局10の位置の算出を4つ未満の基地局によって行なうことができる。
【0091】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、受信時刻検出部36(SA6)により、移動局10が送信する電波のうち、移動局10から直接基地局12に到達する直接波の基地局12における受信時刻と、移動局10から所定の反射面において反射された後に基地局12に到達する反射波の基地局12における受信時刻とが検出され、高さ検出部46(SA8)により、受信時刻検出部36によって検出された各基地局12における直接波の受信時刻に関する受信時刻情報、反射波の受信時刻に関する受信時刻情報、および各基地局12の位置情報とに基づいて移動局10の高さが検出されるので、測位のために必要となる電波以外の他の手段を用いることなく移動局10の高さを検出することができ、移動局10の構成を簡素化することができる。
【0092】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、時計ずれ検出部26、42により、移動局10の有する時計28と各基地局12の有する時計40の時刻とのずれが検出され、伝搬時間算出部(測距部48)(SA7)により、受信時刻検出部36(SA6)により検出された受信時刻に関する情報である受信時刻情報と移動局10における電波の送信時刻についての情報である送信時刻情報と、時計ずれ検出部26、42によって検出された移動局10の有する時計28と各基地局12の有する時計40の時刻とのずれとに基づいて移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間が算出されるので、移動局10の有する時計28の時刻と各基地局12の有する時計40の時刻の時刻ずれを考慮して移動局10と各基地局12の間の電波の伝搬時間に基づいて移動局10の位置の算出を正確に行なうことができる。
【0093】
また、前述の実施例の移動局測位システム8によれば、移動局位置選択部52により、測位部50によって移動局10の位置の候補が複数算出される場合において、移動局10の存在し得る領域に関する情報、または移動局10の移動履歴に関する情報の少なくともいずれか1つに基づいて移動局10の位置として前記移動局10の位置の候補のいずれかが選択されるので、測位部50によって移動局10の位置の候補が複数算出された場合であっても、移動局10の位置が選択される。
【0094】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0095】
図13は、本実施例における移動局10の制御機能と構成の一例を説明する図であって、前述の実施例の図2に対応する図である。移動局10は第1アンテナ62、第1無線部64、第2アンテナ66、第2受信部68、時計74等を有する。また、移動局10は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータ(マイコン)75を含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、時計同期部70、受信時刻検出部76、制御部71などの制御作動を実行するようになっている。本図13の移動局10と図2の移動局10とを比較すると、図2の移動局10においては単一の無線部24およびその無線部に接続されたアンテナ22を有していたのに対し、図13の移動局10においては、第1無線部64およびその無線部に接続された第1アンテナ62に加え、第2受信部68およびその無線部に接続された第2アンテナ66を有する点において異なる。また、この第2受信部68において受信された電波の受信時刻を検出する受信時刻検出部76を有する点において異なる。
【0096】
第1無線部64は前述の実施例1における無線部24と同様に、電波の送受信を行なうものであって、送信部および第1受信部に対応する。第1無線部64は、電波の送信時においては所定の周波数の搬送波を生成するとともに、所定の符号などを含む送信信号に基づいてASK(amplitude shift keying)変調、FSK(frequency shift keying)変調などの処理やデジタル変調の処理を行ない、処理された電波を所定の出力まで増幅し第1アンテナ62を用いて送信する。また、第1無線部64は電波の受信時においては、第1アンテナ62によって受信された電波から所定の周波数成分のみを取り出し、信号処理に適した増幅を行なうとともに、発信の際に行なわれた変調の方式に対応する復調処理を行なうことにより受信した電波に含まれる信号成分を取り出す。第1無線部64における電波の送信状態と受信状態とは必要に応じて後述する制御部71により切換可能とされている。すなわち、第1無線部64は、例えば、搬送波を生成する発振器、変調処理を行なう変調器、あるいはデジタル変調器、増幅を行なう増幅器、受信波から所定の周波数成分を取り出すフィルタ、復調を行なう復調器、送信状態と受信状態を切り換える送受信切換器などの、デジタル無線通信のために広く用いられる機構を含んで構成される。なお、第1アンテナ62および第1無線部64による電波の受信は、基地局12からの電波を受信するようにされる。
【0097】
第1アンテナ62は、前記第1無線部64が電波の送受信に用いるものであって、第1無線部64が送受信する電波の周波数等の特性に応じた形式のものが用いられる。なお、移動局10から各基地局12への電波の送信時において、移動局10からの距離が同一であれば移動局10に対する基地局12の方向に関わらず同一の強度で移動局10から送信される電波の強度が得られるように、アンテナ22は指向性のないアンテナが好適に用いられる。
【0098】
また、第2受信部68は、前記第1無線部64によって送信された電波の、例えば床面などの所定の反射面によって反射した反射波を受信するものである。第2受信部68は、後述する第2アンテナ62によって受信された電波から所定の周波数成分のみを取り出し、信号処理に適した増幅を行なうとともに、発信の際に行なわれた変調の方式に対応する復調処理を行なうことにより受信した電波に含まれる信号成分を取り出す。すなわち、第2受信部68は、例えば、受信波の増幅を行なう増幅器、受信波から所定の周波数成分を取り出すフィルタ、復調を行なう復調器などの、デジタル無線通信のために広く用いられる機構を含んで構成される。
【0099】
第2アンテナ66は、前記第2受信部68が電波の受信に用いるものであって、第2受信部68が受信する電波の周波数等の特性に応じた形式のものが用いられる。前述のように、第2受信部68は、前記第1無線部64によって送信された電波の、例えば床面などの所定の反射面によって反射した反射波を受信するものであるので、この第2アンテナ66は、垂直方向に指向性を有するアンテナであって、前記所定の反射面からの電波を受信するようにされてもよい。
【0100】
ここで、第1無線部64が送受信する電波と、第2受信部68が受信する電波は相互に偏波特性の異なる電波であって、反射によってその偏波特性が交互に変化する電波とされる。好適には例えば、第1無線部64が送受信する電波には、電磁波の進行方向に垂直な面内の電界成分のベクトルの軌跡が円を描く円偏波のうち、ある点における電界ベクトルの回転方向が電波の進行方向に向かって右回りとなる右回り偏波、あるいは左回りとなる左回り偏波のいずれか一方が用いられ、第2受信部68が受信する電波はそれらの他方とされる。
【0101】
また、第1アンテナ62および第2アンテナ66は、前述のように、前記第1無線部64および第2受信部68がそれぞれ送受信する電波の特性に適したアンテナが用いられる。すなわち、前述のように例えば第1無線部64が送受信する電波および第2受信部68が受信する電波がそれぞれ偏波特性の異なる円偏波である場合には、第1アンテナ62および第2アンテナ66は円偏波の送受信に適したアンテナ、例えば平面パッチアンテナなどが用いられる。
【0102】
時計74は、時刻に関する情報を供給するものであって、移動局10の作動時に参照される。具体的には例えば、第1無線部64が送信符号を含む電波を送信する場合においては、この時計74を参照することにより得られる時刻情報が、送信時刻に関する情報(送信時刻情報)として送信される電波に含まれる。また、後述する受信時刻検出部76における受信時刻の検出においても時計74の時刻が参照される。
【0103】
なお、前述の実施例と同様に、移動局10から送信される電波には、受信の際に受信時刻の検出を精度よく行なうための符号を含むことができる。この符号は、移動局10からの直接波を受信した基地局12の受信時刻検出部36や反射波を受信した移動局10において後述する受信時刻検出部76により電波の受信時刻の検出に用いられるものであって、好適には拡散符号が用いられる。
【0104】
図13において、マイコン75を図示するブロックの内部は、マイコン75によって実行される制御機能の概要を示す機能ブロック図とされている。この図13に示す様に、マイコン75においては、受信時刻検出部76、時計同期部70、制御部71などが実行される。
【0105】
受信時刻検出部76は、前述の実施例1における移動局10の受信時刻検出部27と同様の作動を行なうものであって、前記第1アンテナ62および第1無線部64、あるいは第2アンテナ66および第2受信部68によって受信された電波の受信時刻を検出する。このとき、前述のように第2受信部68が受信するのは、前記第1無線部64が送信し、例えば床面などの所定の反射面において反射した反射波であるので、そのレプリカ符号は送信した符号そのものやその複製としてマイコン35の内部に記憶することによって得ることができる。
【0106】
この様にすれば、第1無線部64および第1アンテナ62から送信された電波は、前記所定の反射面で反射した後、その偏波特性が変化するので、第1無線部64および第1アンテナ62から送信された電波の反射波を第2アンテナ66および第2受信部68によって受信することができる。
【0107】
時計同期部26は、移動局10の時計28の時刻と、基地局12が有する時計40の時刻とを同期させる処理である時計合わせ処理を行なう。この時計同期部26は、時計合わせ処理の対象とされるいずれか1つの基地局(以下、「時計同期基準基地局」という。)12の時計同期部42と協調して作動するものであって、具体的な作動は後述する。
【0108】
制御部71は、移動局10の作動を制御するものであって、例えば、第1無線部64の送信状態と受信状態を切り換えたり、あるいは、無線により移動局10の作動に関する指令(コマンド)が送信される場合においては、第1無線部64によって受信された受信波に含まれるコマンドを抽出し、そのコマンドを実行すべく移動局の作動を決定する。具体的には例えば送信する拡散符号の生成や、生成された送信符号の無線による送信を適切なタイミングで実行するよう指示する。
【0109】
一方、本実施例においては、前述の実施例と同様に、例えば図4に示す構成の基地局12が用いられる。このうち、アンテナ32、無線部34は、前述の移動局10の第1アンテナ62および第1無線部64が送受信する電波と同一の特性の電波を送受信するようにされている。すなわち、移動局10の第1アンテナ62および第1無線部64が送受信する電波が右回り偏波である場合には、基地局12のアンテナ32および無線部34が送受信する電波も右回り偏波であるようにされている。
【0110】
このようにすれば、移動局10の第1無線部64および第1アンテナ62は基地局12のアンテナ32および無線部34との間で直接波により好適に電波の送受信をおこなうことができる。
【0111】
なお、基地局12の機能を説明する図4において、他のブロック、例えば受信時刻検出部36、有線通信インタフェース38、時計40、時計ずれ検出部42などの制御作動については、前述の実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0112】
また、本実施例においては、前述の実施例と同様に、例えば図4に示す構成のサーバ14が用いられる。このうち、有線通信インタフェース44、測距部48、測位部50、移動局位置候補選択部52の制御作動については前述の実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0113】
高さ検出部46は、移動局10における第1無線部64による電波の送信時刻と受信時刻検出部76により検出された第2受信部68による電波の受信時刻とに基づいて、移動局10の高さ、すなわち反射波の反射面である床面からの距離を算出する。すなわち、受信時刻検出部76によって検出される電波の受信時刻と第1無線部64による電波の送信時刻との差は、移動局と反射面との電波の往復伝搬時間に相当することから、これを2で割ることによって得られる移動局から反射面までの電波の伝搬時間に電波の速度cを乗ずることによって、移動局10から反射面までの距離を算出する。
【0114】
図14は、この高さ検出部46による移動局10の高さの検出を説明する図である。図14においては、任意のxz平面(y=a(一定))において、基地局12および移動局10がそれぞれ存在している。移動局10の高さはhとする。
【0115】
移動局10の第1無線部64から送信された電波は、直接基地局12に到達し基地局12の無線部34により受信される。また、床面などの所定の反射面で反射した後に移動局10の第2受信部68によって受信される。このとき、移動局10の第1無線部64から送信された電波が例えば右回り偏波である場合は、直接基地局12に右回り偏波として到達し、前記第1無線部64と同一の特性を有する電波を送受信可能にされた基地局12の無線部34により受信される。また、移動局10の第1無線部64から送信された右回り偏波は、床面などで反射することにより左回り偏波となって、前記第1無線部64と異なる特性を有する電波を受信可能とされた移動局10の第2アンテナ66および第2受信部68によって受信される。
【0116】
ここで、移動局10の第1無線部64により電波が送信された送信時刻をtt、移動局10の第2受信部68により反射波が受信された受信時刻をtr、基地局12の無線部34において移動局10からの電波(直接波)が受信された時刻をTdとする。前述のように、高さ検出部64は、第2受信部68による反射波の受信時刻trと第1無線部64による電波の送信時刻ttとの差(tr−tt)を移動局10と反射面との電波の往復伝搬時間として算出する。これを2で割った(tr−tt)/2を移動局10から反射面までの電波の伝搬時間とし、これに電波の速度cを乗ずることによって、移動局10の高さhをh=c×(tr−tt)/2のように算出する。
【0117】
また、測距部48は、前述の実施例と同様に、移動局10と基地局12との距離Ldを、移動局10の第1無線部64により電波が送信された送信時刻をtt、および基地局12の無線部34において移動局10からの電波(直接波)が受信された時刻Tdを用いて、同様にLd=c×(Td−tt)とする。
【0118】
図15は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず、移動局10の時計同期部26、基地局12の時計同期部42に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SB1において、移動局10の時計28と各基地局12の時計40の時刻とが同期するための時刻同期ルーチンが実行させられる。なお、このSB1で実行される時刻同期ルーチンは、図15のフローチャートが反復して実行される場合においては、反復の1回目においてのみ実行されるようにしてもよい。そのようにすれば、反復の2回目以降の測位を高速化できる。なお、この時刻同期ルーチンは例えば図11、図12に示すものが前述の実施例1と同様に用いられるので、説明を省略する。続くSC2乃至SC4は、図10に示した前述の実施例1のフローチャートにおけるSA2乃至SA4に、また、SC12乃至SC14はSA9乃至SA11にそれぞれ対応し、同様の制御作動が行なわれるステップであるので、説明を省略する。
【0119】
移動局10の制御部71によって電波を送信可能に制御された第1無線部64などに対応するSC5においては、移動局10から測位のための電波が送信される。この測位のための電波には、例えばPN符号などの所定の符号が含まれる。また、電波の送信時刻ttについての情報が時計28を参照することなどにより取得され、図示しない記憶手段などにより記憶される。
【0120】
各基地局12の無線部34、受信時刻検出部36などに対応するSC6においては、SC5において移動局10から送信された測位のための電波が各基地局12において受信される。そして、受信された電波に含まれる前記PN符号などの所定の符号に対してそのレプリカ符号との相関値のピーク値を検出することにより、同期時刻が検出され、電波の受信時刻Tdとされる。
【0121】
移動局10の第2受信部68、受信時刻検出部76などに対応するSC7においては、SC5において送信された電波が床面などの所定の反射面で反射された電波である反射波が移動局10の第2アンテナ66および第2受信部68において受信され、受信された電波に含まれる前記PN符号などの所定の符号に対してそのレプリカ符号との相関値のピーク値が検出されことにより、同期時刻が検出され、電波の受信時刻trとされる。なお、SC6およびSC7は、それぞれSC5による電波の送信後に実行されればよく、SC6、SC7の順に実行される必要はない。
【0122】
移動局10の第1無線部64などに対応するSC8においては、SC5における電波の送信時刻ttに関する情報、およびSC7における反射波の受信時刻trに関する情報が基地局12へ無線により送信される。さらに、基地局12の有線通信インタフェース38などに対応するSC9においては、SC8において移動局10から送信され基地局12において受信された、SC5における電波の送信時刻ttに関する情報、およびSC7における反射波の受信時刻trに関する情報に加え、SC6において受信された基地局12における電波の受信時刻Tdに関する情報をサーバ14に通信ケーブル18を介して送信する。なお、SC8において移動局10から送信される送信時刻ttに関する情報および受信時刻trに関する情報は、少なくとも任意の1の基地局12おいて受信されればよく、また、SC9の作動は、この受信が行なわれた基地局12において行なわれればよい。
【0123】
測距部48に対応するSC10においては、SC6において算出された直接波の基地局12における受信時刻Tdと、移動局10における電波の送信時刻ttとから移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間(Td−tt)が算出され、これに電波の速度cを乗ずることにより移動局10と各基地局12との距離が算出される。
【0124】
高さ検出部46に対応するSC11においては、SC7において算出された反射波の受信時刻trと、SC5における電波の送信時刻ttとに基づいて、移動局10の高さhが算出される。移動局10の高さhは、前述のように、例えば移動局10から所定の反射面への電波の伝搬時間(tr−tt)/2に電波の速度cを乗ずることによって行なわれる。
【0125】
前述の実施例2の移動局測位システム8によれば、移動局10の第1無線部64(送信部)により第1の偏波特性を有する電波(例えば右回り偏波)が送信され、移動局10は、前記第1の偏波特性を有する電波を受信可能な第1無線部64(第1受信部)と、該第1の偏波特性とは異なる偏波特性である第2の偏波特性を有する電波(例えば左回り偏波)を受信可能な第2受信部68と、を備え、前記高さ検出部46(SC10)により、第1無線部64(送信部)が送信し、所定の反射面で反射し第2受信部68において受信される電波について、第1無線部64(送信部)における送信時刻ttと第2受信部68における受信時刻trとに基づいて送信から受信までに要した往復伝搬時間が算出され、算出された往復伝搬時間に基づいて移動局10の高さhが検出されるので、測位のために必要となる電波以外の他の手段を用いることなく移動局10の高さhを検出することができ、移動局10の構成を簡素化することができる。
【実施例3】
【0126】
前述の実施例においては、測位部50は測距部48によって算出された第1基地局12Aと移動局10との距離L1、第2基地局12Bと移動局10との距離L2、第3基地局12Cと移動局10との距離L3にもとづいて前記式(3)を解くことにより、移動局10の位置を算出した。ところで、前記式(3)の各式の両辺の平方根をとり、第2式と第1式との両辺の差、および第3式と第1式の両辺の差をそれぞれ取った式は次式(6)の様になる。
【数1】

ここで、前述のように、前記測距部48によって測定される第1基地局12Aと移動局10との距離L1、第2基地局12Bと移動局10との距離L2、第3基地局12Cと移動局10との距離L3は、移動局10による電波の送信時刻をtt、第1基地局12Aにおける移動局10からの電波の受信時刻をtr1、第2基地局12Bにおける移動局10からの電波の受信時刻をtr2、第3基地局12Cにおける移動局10からの電波の受信時刻をtr3とすると、電波の速度cを用いてそれぞれ、
L1=c×(tr1−tt),
L2=c×(tr2−tt),
L3=c×(tr3−tt)
のように算出されることから、これを前記式(6)に適用すると、前記式(6)は次式(7)のようになる。
【数2】

この式(7)においては、移動局10における電波の送信時刻ttが含まれないことから、移動局10は時計28を有する必要がなく、そのため、移動局10の時計28の時刻を基地局12の時計40の時刻と同期させるための時計同期部26を有する必要もない。さらに、サーバ14においては、測位部50は各基地局12の位置(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、(X3,Y3,Z3)、高さ検出部46によって検出された移動局10の高さh、および、各基地局12の受信時刻検出部36によって検出された移動局10から送信された電波の受信時刻tr1、tr2、tr3に基づいて、移動局10の位置(x,y,h)を算出するので、各基地局12と移動局10との距離を算出する測距部48を有する必要がない。なお、前記式(7)を解いて得られる解が複数である場合、すなわち、移動局10の位置の候補が複数算出された場合には、前述の移動局位置候補選択部52により前記移動局10の位置の候補のいずれかを選択することにより移動局10の位置を得ることができる。
【0127】
このようにすれば、前記測位部50(SC11)は、移動局10と各基地局12との間の電波の伝搬時間のそれぞれの差と、前記高さ検出部46(SA8、SC10)によって検出された移動局10の高さhと、各基地局12の位置情報とに基づいて移動局10の位置の算出を行なうので、移動局10は時計28(74)、およびその時計の時刻と各基地局12の有する時計40の時刻とを同期させる時計同期部26(70)を有する必要がないので、構成を簡易なものとすることができる。また、サーバ14は移動局10と各基地局12との距離をそれぞれ算出する測距部48を有する必要がないので、演算を高速化することができる。
【0128】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0129】
たとえば前述の実施例においては、時計ずれ検出部26、42が設けられ、移動局10の時計28の時刻および基地局12の時計40の時刻のずれが検出され電波の伝搬時間を算出する際にそのずれが補正されたが、例えば移動局10の時計28よび基地局12の時計40においてそれぞれ生ずる時計誤差が、測位部50において行なわれる移動局10の位置の算出において許容される誤差であるような場合には、この補正は必ずしも必要ではない。すなわち、時計ずれ検出部26、42がなくても一定の効果が得られる。
【0130】
また、前述の実施例においては、所定の反射面を床面としたが、これに限られず、例えば所定の反射面を天井面とすることも可能である。具体的に言えば、前述の実施例1においては、基地局12を天井面付近に設けることで床面で反射する反射波と直接波とを受信可能にしたが、基地局12を床面付近に設けることで、基地局12は移動局10からの直接波と天井面で反射する反射波とを受信するようにすることもできる。また、前述の実施例2においては、移動局10の第2アンテナ66は床面からの反射波を受信したが、例えば第2アンテナ66の指向性を変更することにより天井面からの反射波を受信することもできる。この様にすれば、床面に凹凸がある一方、天井面に障害物が少ないような場合などにおいて基地局12は好適に反射波を受信しうる。
【0131】
また、前述の実施例においては、移動局測位システム8はサーバ14を含んで構成されたが、例えば前述の実施例においてサーバ14において行なわれた演算がいずれかの基地局12が有するコンピュータによって行なわれることもできる。かかる場合においては、移動局測位システム8はサーバ14を必要としない。
【0132】
また、前述の実施例においては、サーバ14と基地局12とは通信ケーブル18で接続され、その通信ケーブル18を介してサーバ14と基地局12との情報通信が行なわれたが、このような態様に限られない。すなわち、サーバ14が有線通信インタフェース44に代えて無線部を有し、基地局12の無線部34との間で無線により情報通信を行なってもよい。この場合、前述の実施例のように、サーバ14と移動局10とは基地局12を介した情報通信を行なわず、サーバ14は移動局10の無線部24との間で情報通信を行なってもよい。また、この場合、前記サーバ14の有線通信インタフェース44や基地局12のの有線通信インタフェース38は必ずしも必要ではない。
【0133】
また、前述の実施例1においては、移動局測位システム8は移動局位置候補選択部52を有し、測位部50により移動局10の位置が複数算出された場合にそのいずれかを移動局10の位置として選択した。しかしながら、測位部50により算出される移動局10の位置が1つである場合、例えば3つ以上の基地局12により移動局10からの電波が受信され、3本の式からなる前記式(4)が導出される場合にのみ移動局10の測位を行なうような場合には移動局位置候補選択部52を有する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の移動局測位システムの概要を説明する図である。
【図2】移動局測位システムを構成する移動局の構成と機能の一例を説明するブロック図である。
【図3】移動局測位システムを構成する基地局の構成と機能の一例を説明するブロック図である。
【図4】移動局測位システムを構成するサーバの構成と機能の一例を説明するブロック図である。
【図5】高さ検出部による移動局の高さの検出作動を説明する図である。
【図6】高さ検出部による移動局の高さの検出作動と受信時刻検出部により検出される相関値の変化を説明する図である。
【図7】移動局位置候補選択部による選択作動を説明する図である。
【図8】移動局位置候補選択部による選択作動を説明する図である。
【図9】移動局位置候補選択部による選択作動を説明する図である。
【図10】移動局測位システムによる制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図11】移動局の時計の時刻と基地局の時計の時刻を同期する時刻同期ルーチンを説明するフローチャートである。
【図12】複数の基地局の時計の時刻を同期する時刻同期ルーチンを説明するタイムチャートである。
【図13】本発明の別の実施例における移動局測位システムを構成する移動局の構成と機能の一例を説明するブロック図である。
【図14】本発明の別の実施例における移動局位置候補選択部による選択作動を説明する図である。
【図15】本発明の別の実施例における移動局測位システムによる制御作動の一例を説明するフローチャートである。
【図16】従来における移動局位置測位システムの構成の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0135】
10:移動局
12:基地局
8:移動局測位システム
24:(移動局の)無線部(送信部)
26、42、70:時計同期部
34:(基地局の)無線部(受信部)
36:受信時刻検出部
48:測距部(伝搬時間算出部)
46:高さ検出部
50:測位部
64:(移動局の)第1無線部(第1受信部)
68:(移動局の)第2受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元空間を移動する移動局から送信される電波を複数の基地局が受信し、該複数の基地局がそれぞれ受信した電波の受信時刻についての情報と該複数の基地局の位置についての情報とに基づいて前記移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
前記移動局は、電波を送信する送信部を備え、
前記基地局は、前記移動局から送信された電波を受信する受信部と、該受信部により電波を受信した時刻を検出する受信時刻検出部と、を備え、
前記移動局の床面からの高さについての情報である高さ情報を検出する高さ検出部と、
前記受信時刻検出部により検出された各基地局における電波の受信時刻に関する情報である受信時刻情報と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置についての情報である位置情報とに基づいて前記移動局の位置の算出を行なう測位部とを有すること、
を特徴とする移動局測位システム。
【請求項2】
前記受信時刻検出部は、前記移動局が送信する電波のうち、前記移動局から直接前記基地局に到達する直接波の前記基地局における受信時刻と、前記移動局から所定の反射面において反射された後に前記基地局に到達する反射波の前記基地局における受信時刻とを検出し、
前記高さ検出部は、前記基地局の少なくとも1つにおける前記受信時刻検出部によって検出された前記直接波の受信時刻に関する直接波受信時刻情報、前記反射波の受信時刻に関する反射波受信時刻情報、および前記基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さを検出すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項3】
前記高さ検出部は、前記複数の基地局のうち、移動局と基地局との距離に関する距離関連値に基づいて移動局との距離が最も小さいとされる基地局における、前記受信時刻検出部によって検出された前記直接波の受信時刻に関する直接波受信時刻情報、前記反射波の受信時刻に関する反射波受信時刻情報、および前記基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さを検出すること
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項4】
前記高さ検出部は、前記複数の基地局のそれぞれにおける前記直接波受信時刻情報、前記反射波受信時刻情報、および前記基地局の位置情報とに基づいて前記移動局の高さをそれぞれ検出し、該検出された移動局の高さを平均することにより前記移動局の高さを算出すること
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。
【請求項5】
前記高さ検出部は、移動局と基地局との距離に関する距離関連値に応じた重みを前記複数の基地局のそれぞれについて算出し、前記複数の基地局のそれぞれについて検出された前記移動局の高さを該重みを用いて重み付き平均を行なうことにより前記移動局の高さを算出すること
を特徴とする請求項4に記載の移動局測位システム。
【請求項6】
前記送信部は第1の偏波特性を有する電波を送信し、
前記移動局は、前記第1の偏波特性を有する電波を受信可能な第1受信部と、該第1の偏波特性とは異なる偏波特性である第2の偏波特性を有する電波を受信可能な第2受信部と、を備え、
前記高さ検出部は、前記送信部が送信し、所定の反射面で反射し前記第2受信部において受信される電波について、前記送信部における送信時刻と該第2受信部における受信時刻とに基づいて送信から受信までに要した往復伝搬時間を算出し、算出された前記往復伝搬時間に基づいて前記移動局の高さを検出すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。
【請求項7】
前記測位部は、前記受信時刻検出部により検出された受信時刻に関する情報である受信時刻情報と前記移動局における電波の送信時刻についての情報である送信時刻情報とに基づいて算出される前記移動局から前記各基地局への電波の伝搬時間と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置についての情報である位置情報とに基づいて前記移動局の位置の算出を行なうこと
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位システム。
【請求項8】
前記測位部によって前記移動局の位置の候補が複数算出される場合において、前記移動局の存在し得る領域に関する情報、または前記移動局の移動履歴に関する情報の少なくともいずれか1つに基づいて前記移動局の位置として前記移動局の位置の候補のいずれかを選択する移動局位置選択部を有すること
を特徴とする請求項7に記載の移動局測位システム。
【請求項9】
前記測位部は、前記受信時刻検出部により検出された各基地局における電波の受信時刻に基づいて算出される基地局の対に対応する電波の到来時間差と、前記高さ検出部によって検出された前記移動局の高さ情報と、前記各基地局の位置情報とに基づいて移動局の位置の算出を行なうこと
を特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の移動局測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−216474(P2009−216474A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58845(P2008−58845)
【出願日】平成20年3月8日(2008.3.8)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】