説明

移動店舗車

【課題】移動中に振動が発生した場合でも荷室に設置されたサービスを供用するための機器が故障し難いため、被災地や交通不便な地域においても安全に使用することができる移動店舗車を提供する。
【解決手段】本発明に係る移動移動店舗車は、荷室2の内部が接客室17、執務室18及びATM室19に区画され、接客室17と執務室18はカウンター20a,20bと仕切り板21a,21bで仕切られるとともに、執務室18とATM室19は仕切り壁22,23で仕切られ、執務室18とATM室19の間の床面2bに設置される免振装置25には操作部がATM室19内に配置されるようにATM26が搭載され、ATM26と側面パネル2a,2dの間を閉塞する仕切り壁22はATM26とともに揺動自在に免振装置25に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックの荷台を金融機関の店舗として使用する移動店舗車に係り、特に、現金自動預払機(以下、ATMという。)が搭載された移動店舗車に関する。
【背景技術】
【0002】
地震や津波等の大規模な災害によって金融機関の建物が破壊されると、金融機関は業務の継続が困難となる。しかし、緊急時に金融機関のサービスが停止すると、災害が発生した地域に住む利用者は多大な不便を強いられることになる。このような課題を解決するものとして、各種の窓口業務ができるように窓口カウンターや専用端末等が搭載された車両が注目されている。そして、それに関して、近年、様々な研究や開発が行われており、既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、災害等によって銀行の建屋が破壊されてサービスの続行が不可能になった場合でも、サービスを代行できる「銀行業務代行システム」に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、運転席の後方に設けられた有蓋荷台部分にATMや汎用端末機等の銀行業務機器とともに、パラボラアンテナやモデム等の衛星通信用機器が設置された構造となっている。
このような構造によれば、銀行の建屋が無い場所でも臨時店舗として窓口業務を行うことができる。また、衛星通信用機器を使用すれば、離れた場所にある支店や本店に対して各種のデータを送受信することができる。
【0004】
また、特許文献2には、混雑している場合でも顧客が快適に順番を待つことができる「移動バンキングシステム」に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、ATMコーナーと相談窓口コーナーとに区画される店舗用車両に、内部にラウンジスペースが設けられた待合室用車両が付属されるとともに、店舗用車両内の利用状況を検知し、順番待ちの顧客に対して報知する手段を備えた構造となっている。
このような構造によれば、店舗用車両が混雑している場合、顧客は待合室用車両で自分の順番になるまで快適に待機することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−73257号公報
【特許文献2】特許第3472255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
災害が発生した地域や交通不便な地域では路面の状態が良くない場合が多い。これに対し、上述の従来技術である特許文献1に開示された発明は、振動を防ぐ構造となっていなため、車両に搭載された各種の機器が走行中に発生する振動によって故障するおそれがある。また、特許文献2に開示された発明においてもATM等のサービスを供用するための精密な機器に防振対策が施されていないため、移動中に発生する振動によって同様にATM等が故障するおそれがある。すなわち、特許文献1及び特許文献2に開示された発明においては、特に、被災地や交通不便な地域等での使用が困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、移動中に振動が発生した場合でも荷室に設置されたサービスを供用するための精密な機器が故障し難いため、被災地や交通不便な地域においても安全に使用することができる移動店舗車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である移動店舗車は、サービスを供用するための機器が荷室に搭載され、車体の後面又は側面の少なくともいずれか一方に出入口が設けられた移動店舗車において、内部に供給された空気量に応じてばね定数が変わる空気ばねと、この空気ばねに対して空気の供給又は排出を行う給排気手段と、空気ばねを介して互いに結合される鋼製の上フレーム及び下フレームと、この上フレームと下フレームを揺動自在に連結する連結手段と、を備え、サービスを供用するための機器は上フレームの上面に固設され、下フレームは車体に固定されることを特徴とするものである。
このような構造の移動店舗車においては、走行中に車体や下フレームが振動した場合に、内部に空気を供給されて膨張した空気ばねが上フレーム及びその上面に固設されたサービスを供用するための機器に振動が伝搬しないように阻止するという作用を有する。また、空気ばねの内部から空気を排出すると、上記作用は発揮されなくなり、上フレームは下フレーム及び車体に対して揺動不能となる。これにより、サービスを供用するための機器の設置状態が安定する。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の移動店舗車において、連結手段は、上フレームに立設される上側支持部材と、下フレームに立設される下側支持部材と、この下側支持部材と上側支持部材に両端がそれぞれ枢着されるリンク部材と、からなり、リンク部材が上側支持部材及び下側支持部材に対して荷室の奥行き方向及び鉛直方向に平行な平面内でそれぞれ回動可能に設置されることを特徴とするものである。
このような構造の移動店舗車においては、請求項1記載の発明の作用に加えて、加速や減速に伴って上フレームに加わる力のうち、リンク部材に平行な成分はその軸力と相殺され、残りの成分は空気ばねの弾性力によって低減されることにより、下フレームに対する上フレームの揺動が抑制されるという作用を有する。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の移動店舗車において、連結手段は、上側支持部材とリンク部材の連結部が下側支持部材とリンク部材の連結部よりも後方かつ下方に配置されることを特徴とするものである。
このような構造の移動店舗車においては、請求項2記載の発明の作用に加えて、急な減速によりサービスを供用するための機器に対して水平方向の慣性力が加わった場合、上フレームが空気ばねを圧縮するように揺動する一方、空気ばねの弾性力が上フレームの揺動を抑制するという作用を有する。また、上側支持部材と下フレームの間に緩衝部材を設置することによりさらに安全性が高まる
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の移動店舗車において、サービスを供用するための機器としてATMが搭載され、このATMを操作するためのATM室が荷室の前方又は後方のいずれか一方に設けられ、乗員が執務を行う執務室が荷室の中央部に設けられ、この執務室を挟んでカウンターを有する接客室が荷室の前方又は後方にATM室と対称に設けられ、この接客室とATM室へ出入り可能に出入口がそれぞれ設けられ、乗員が出入り可能に接客室又はATM室の少なくともいずれか一方から執務室へ通路が形成されることを特徴とするものである。
このような構造の移動店舗車においては、接客室とATM室が分離されるとともに、それぞれの出入口が別々に設けられているため、窓口業務等のサービスを受ける利用客と、ATMの利用客が混在しないという作用を有する。また、車外から執務室へ直接通じる出入口がないことから、部外者の侵入が防止されるという作用を有する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の移動店舗車においては、路面の凹凸等が原因で走行時に車体が振動した場合でも、その振動の伝搬を抑制してサービスを供用するための機器の故障を防ぐことができる。また、車体全体をエアサスペンション構造にする場合に比べて、軽量化を図るとともに製造コストを安くすることができる。さらに、免振機能の解除が容易なため、現地に到着した後、サービスを供用するための機器の利用を直ちに開始することができる。
【0013】
本発明の請求項2に記載の移動店舗車においては、請求項1記載の発明の効果に加えて、加速や減速等によって発生する慣性力がサービスを供用するための機器に作用した場合でも揺動を抑制してその故障を防ぐことができる。
【0014】
本発明の請求項3に記載の移動店舗車においては、請求項1又は請求項2の発明の効果に加えて、慣性力がサービスを供用するための機器に作用した場合に揺動を抑制して故障を防ぐという効果が特に減速時において一層発揮される。
【0015】
本発明の請求項4に記載の移動店舗車によれば、請求項1乃至請求項3に記載された発明の効果に加えて、金融機関の臨時店舗として利用客に窓口業務等のサービスとATMの利用等のサービスを提供することができるという効果を奏する。そして、各サービスを受ける利用客が混在しないため、接客室やATM室に出入りする利用客の流れが円滑になる。加えて、無駄な待ち時間が発生し難い。さらに、接客室とATM室が完全に分離しているため、例えば、窓口業務を提供していない場合でもATMだけを利用可能な状態とすることができる。すなわち、本発明によれば、利用客は効率よく希望するサービスを受けることができる。さらに、執務室へ部外者が侵入し難いことから、機密情報等の漏洩を防ぐとともに、乗員の安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る移動店舗車の実施例の正面図及び平面図である。
【図2】(a)及び(b)は本実施例の移動店舗車の背面図である。
【図3】(a)は本実施例の移動店舗車に設置される免振装置の平面図であり、(b)及び(c)はそれぞれ図3(a)のA−A線矢視断面及びB−B線矢視断面の拡大図である。
【図4】(a)及び(b)は図3(c)に示すC部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る移動店舗車は、窓口業務に必要な端末、カウンター、ATM等が搭載されており、被災地や交通不便な地域において銀行の臨時店舗として使用されるものである。以下、本実施例の移動店舗車について図1乃至図4を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の説明では、運転席に近い側を荷室の前部といい、運転席から遠い側を荷室の後部というものとする。また、荷室の右側及び左側とは荷室の後部から前部を見た場合の状態を示している。そして、荷室の奥行方向はトラックの進行方向と同一である。
【実施例】
【0018】
図1(a)は後部扉のみを開放して階段を引き出した状態を示しており、図1(b)及び図2(b)は後部扉と側面扉を開放して階段を引き出した状態を示している。また、図2(a)は階段を収納して後部扉と側面扉を閉じた状態を示している。なお、図1(b)では荷室の天井パネルの図示を省略し、図2(b)では後部扉やガススプリングの図示を省略している。
図1及び図2に示すように、本実施例の移動店舗車は、トラック1の荷台に構築された荷室2を店舗として使用するものであり、荷室2の下部の前後4箇所には車体フレーム1bを支持するための電動油圧式アウトリガ1aが設置されている。また、荷室2の後面には後部扉3aが設けられ、後部扉3aの内側には引き違い扉3bが設けられている。なお、後部扉3aは上方向に跳ね上げるようにして開かれる「跳ね上げ扉」であって、荷室2の後部出入口5aの上部に一端を回動自在に取り付けられており、開く方向へ油圧スプリング4によって付勢されている。そして、後部扉3aは図示しない駆動手段で油圧スプリング4を駆動することにより開閉される。また、引き違い扉3bは3枚の扉からなり、荷室2の後部出入口5aはこれらの扉を車幅方向に対して平行に移動させることにより開閉される。
【0019】
荷室2の左側の側面パネル2aには側面扉6a,6bが設けられ、側面扉6aの内側には引き違い扉3cが設けられている。側面扉6aは荷室2の前部出入口5bに取り付けられており、側面扉6bは受電ボックス7を操作するために荷室2の側面パネル2aに設けられた開口部7aに取り付けられている。引き違い扉3cは2枚の扉からなり、荷室2の前部出入口5bはこれらの扉を荷室2の奥行き方向に対して平行に移動させることによって開閉される。また、荷室2の後部出入口5a及び前部出入口5bには階段8a,8bがそれぞれ設置されている。階段8a,8bはアルミニウム製であり、平面視矩形状をなす複数の踏板9の両側に側板10,10が取り付けられるとともに、ステンレス製のパイプ材からなる手摺11a,11bが側板10に対して平行に取り付けられている。
【0020】
階段8a,8bは、荷室2の後部出入口5a及び前部出入口5bの床面2bにそれぞれ上端部を支点として上下方向に回動自在に取り付けられている。また、階段8aは油圧で駆動されて回動し、階段8bはガスダンパ(図示せず)を備えており、手動によって回動可能となっている。さらに、ガスダンパは階段8bの回動により伸縮可能に、かつ、階段8bが倒立姿勢のときに最も収縮するように設置されており、手摺11bは階段8bに対して着脱自在に設置されている。そして、トラック1の走行中、階段8a,8bは邪魔にならないように後部扉3aと引き違い扉3bの間及び側面扉6aと引き違い扉3cの間にそれぞれ倒立姿勢で収納されている。
【0021】
側面扉6aを開放し、踏板9を持って手前に引き出すようにして階段8bを回動させ、側板10の先端部を接地させると、階段8bは使用可能な状態となる。このとき、ガスダンパのガス反力は階段8bの下方向への回動に対する効力として作用するため、階段8bの自重による不用意な回動が防止される。従って、操作者は階段8bの接地作業をゆっくりと安全に行うことができる。また、階段8bを収納する場合には、ガスダンパのガス反力が階段8bを上方向へ回動させるように作用するため、操作者は弱い力で階段8bを容易に上方向へ回動させることができる。
【0022】
荷室2の天井パネル2cには換気扇12が取り付けられ、荷室2の前面の上部には空調機用室外機13が設置されており、荷室2の後面の上部にはカメラ14が取り付けられている。また、荷室2の側面パネル2dには引き違い窓15が設けられ、荷室2の天井パネル2cの側面パネル2a側にはオーニング装置16が取り付けられている。オーニング装置16の内部にはオーニング16aが手動によって引き出し可能な状態で収納されている。なお、オーニング16aの使用時には、図2(b)に示すようにオーニング装置16から引き出されたオーニング16aの先端部が支持具16bによって側面パネル2aに固定される。
【0023】
荷室2の内部は利用客が前部出入口5bから出入り可能に設けられる接客室17と、接客室17の後方に設けられて乗員が執務を行う執務室18と、利用客が後部出入口5aから出入り可能に設けられるATM室19に区画されている。接客室17と執務室18の間には双方の区画で利用可能にカウンター20a,20bが設置されている。そして、接客室17と執務室18は、カウンター20a,20bの上方に配置され車幅方向に対して平行に側面パネル2d,2aからそれぞれ延設される透明な仕切り板21a,21bによって仕切られ、執務室18とATM室19は車幅方向に対して平行に設置される仕切り壁22,23によって仕切られている。
【0024】
仕切り板21a,21bの上端は天井パネル2cに接しておらず、仕切り板21aの上方には、接客室17と執務室18の双方で利用可能に空調機24aが荷室2内の側面パネル2dの上部に設置されている。また、仕切り板21aとカウンター20aの間には、接客室17にいる利用客と執務室18にいる乗員との間で書類等のやりとりをするための隙間が設けられている。さらに、カウンター20b及び仕切り板21bは回動自在に一端がそれぞれカウンター20aと側面パネル2aに枢着されており、仕切り板21bを回動し、カウンター20bを跳ね上げることにより、接客室17から執務室18への出入りが可能となっている。
【0025】
執務室18とATM室19の間の床面2bには免振装置25が設置されており、免振装置25には操作部がATM室19内に配置されるようにATM26が搭載されるとともに、ATM26と側面パネル2a,2dの間を閉塞するように仕切り壁22が立設されている。そして、仕切り壁22に対して平行に、かつ、天井パネル2cと仕切り壁22の間を閉塞するように仕切り壁23が天井パネル2cから延設されている。すなわち、執務室18とATM室19の間は、利用客がATM室19から執務室18へ出入りできないように仕切り壁22,23及びATM26によって閉塞されている。また、仕切り壁23の上端及び両側はそれぞれ天井パネル2c及び側面パネル2a,2dに接合されているが、仕切り壁22の上端及び両側は天井パネル2c、仕切り壁23及び側面パネル2a,2dのいずれにも接合されていない。すなわち、仕切り壁22はATM26とともに揺動自在に免振装置25に固定されている。
【0026】
接客室17には床面2bに長椅子27が設置され、天井パネル2cに収納部28aが設置されている。執務室18には床面2bに乗員用椅子29が設置され、側面パネル2aに配電設備30が設置されるとともに、仕切り壁23の上部には収納部28b及び収納棚28cが設置されている。また、カウンター20aの上にはコンピュータ用キーボード31aとディスプレイ31bが設置され、免振装置25の上には現金収納庫32及び複写機33が設置されている。さらに、ATM室19には側面パネル2dの上部に空調機24bが設置され、免振装置25の上にはカウンター20cが設置されている。
【0027】
このような構造の移動店舗車によれば、ATM26が設置されたATM室19と、カウンター20a,20bが設置された接客室17と執務室18を備えているため、銀行などの金融機関の臨時店舗として利用客に窓口業務等のサービスやATM26の利用等のサービスを提供することができる。そして、接客室17とATM室19が別々に設けられ、各部屋へ前部出入口5bと後部出入口5aからそれぞれ独立に出入りする構造となっているため、接客室17のカウンター20aで窓口業務等のサービスを受ける利用客と、ATM26の操作をしようとする利用客が混在するおそれがない。従って、接客室17やATM室19に出入りする利用客の流れが円滑となるとともに、無駄な待ち時間が発生し難い。
【0028】
さらに、接客室17での窓口業務等のサービスを終了した後でも、前部出入口5bを閉じて後部出入口5aのみを開けることにより、利用客はATM26を利用できる。すなわち、本発明によれば、利用客は希望するサービスを効率よく受けることができる。また、車外から執務室18へ直接通じる出入口が設けられていないため、執務室18へ部外者が侵入し難い。従って、機密情報等の漏洩を防ぐとともに、乗員の安全を確保することができる。
【0029】
次に、免振装置25の構造について図3及び図4を用いて説明する。
図3(a)は免振装置25の平面図であり、図3(b)及び図3(c)はそれぞれ図3(a)のA−A線矢視断面及びB−B線矢視断面の拡大図である。なお、紙面において上方に向かう方向がトラック1の進行方向となる。図4(a)及び図4(b)は図3(c)に示すC部の拡大図である。なお、図4(a)は空気ばねが膨張した状態を示し、図4(b)はトラック1の急な減速等に伴って免振装置25に横方向の慣性力が加わり、上フレームが下フレームに対して揺動した状態を示している。
図3及び図4に示すように、免振装置25は鋼製の上フレーム34及び下フレーム35が空気ばね36a,36b及び連結手段37を介して一体的に結合された構造となっている。
【0030】
上フレーム34及び下フレーム35は、断面コ字状をなす桁材38や角パイプ39からなる枠体と、この枠体の片面に接合される天板40及び底板41によってそれぞれ構成されている。また、天板40の周囲にはパッキン42が取り付けられている。そして、空気ばね36a,36bは天板40及び底板41の四隅に配置され、連結手段37は空気ばね36bの近傍に配置されている。なお、免振装置25は、下フレーム35がトラック1の車体フレーム1bに固定され、空気ばね36a,36aが空気ばね36b,36bの前方に配置されるとともに、連結手段37,37がトラック1の進行方向に対して平行となるように、荷室2内に設置されている。
【0031】
空気ばね36a,36bはベローズ形空気ばねであり、ゴム等の弾性部材からなる中空弾性部43と、この中空弾性部43の上下に設置される金属製の台座44a,44bを備え、車体フレーム1bに設置された給排気手段(図示せず)から空気注入バルブ(図示せず)を介して圧縮空気を中空弾性部43内へ供給し、あるいは中空弾性部43内から圧縮空気を排出することによって、ばね定数が設定される構造となっている。また、台座44a,44bは上フレーム34及び下フレーム35の桁材38にボルト45を用いて固定されている。
【0032】
連結手段37は上フレーム34の天板40及び下フレーム35の底板41にそれぞれ立設される上側支持部材46及び下側支持部材47と、両端に設けられた連結部48a,48bが上側支持部材46及び下側支持部材47にそれぞれ枢着されるリンク部材48を備えている。また、前述したように上側支持部材46及び下側支持部材47とリンク部材48はトラック1の進行方向(荷室2の奥行き方向)に対して平行に設置されており、リンク部材48は上側支持部材46及び下側支持部材47に対し、トラック1の進行方向(荷室2の奥行き方向)及び鉛直方向に平行な平面内でそれぞれ回動可能となっている。さらに、連結部48aが連結部48bの後方になるように、上側支持部材46は下側支持部材47の後方に設置されている。そして、連結手段37は、トラック1の走行時、空気ばね36bに圧縮空気が供給されて中空弾性部43が膨張し、上フレーム34が下フレーム35に対して最も上昇した状態において、連結部48aが連結部48bよりも下方に配置されるように形成されている。
【0033】
図4(a)の状態でトラック1が急に減速すると、ATM26に対してトラック1の進行方向に作用する慣性力によって上フレーム34は矢印Xで示す方向の力を受けるため、リンク部材48の連結部48aには力Pが加わる。そして、力Pのうち、リンク部材48に平行な成分はリンク部材48の軸力(圧縮力)と相殺され、リンク部材48に垂直な成分は連結部48bを中心としてリンク部材48を矢印Dの向きに回動させるモーメントとして作用する。この場合、空気ばね36bは上フレーム34によって圧縮されることになるため、空気ばね36bの弾性力は上記モーメントを低減するように作用する。これにより、上フレーム34及びATM26の揺動が抑制される。
【0034】
図4(a)の状態でトラック1が急に加速すると、ATM26に対してトラック1の進行方向と逆向きに作用する慣性力によって上フレーム34は矢印Xと逆向きの力を受けるため、リンク部材48の連結部48aには力Pとは逆向きの力が加わる。そして、この力のうち、リンク部材48に平行な成分はリンク部材48の軸力(引張力)と相殺され、リンク部材48に垂直な成分は連結部48bを中心としてリンク部材48を矢印Dと逆向きに回動させるモーメントとして作用する。しかし、このモーメントはリンク部材48が水平状態になるまでしか作用しないため、上フレーム34が大きく揺動するおそれはない。すなわち、トラック1が急に加速した場合でも連結手段37によって上フレーム34及びATM26の揺動が抑制される。
【0035】
本実施例の免振装置25においては、トラック1の急な減速に伴ってATM26に作用する慣性力により、リンク部材48が連結部48bを中心として矢印Dの向きに回動した場合でも上側支持部材46が下フレーム35の底板41に接触しないように、空気ばね36bのばね定数と連結手段37の寸法が設定されている。しかし、支持部材36aと底板41の間に緩衝部材を設置することによれば、さらに安全性を高めることができる。
【0036】
なお、連結部48aが連結部48bよりも上方に位置するように連結手段37を形成することもできる。この場合、トラック1が急に減速すると、ATM26に対してトラック1の進行方向に作用する慣性力によって上フレーム34は矢印Xで示す方向の力を受けるため、リンク部材48の連結部48aには力Pが加わる。そして、力Pのうち、リンク部材48に平行な成分はリンク部材48の軸力(圧縮力)と相殺され、リンク部材48に垂直な成分は連結部48bを中心としてリンク部材48を矢印Dの逆向きに回動させるモーメントとして作用する。この場合、空気ばね36bは上フレーム34によって引張され、空気ばね36bの弾性力はこのモーメントを低減するように作用する。その結果、上フレーム34及びATM26の揺動が抑制される。すなわち、連結手段37はこのような構造であってもトラック1が急に減速した際に上フレーム34及びATM26の揺動を抑制するという作用を有する。ただし、上側支持部材46と底板41の間に緩衝部材を設置しても本実施例のように安全性を高めることはできない。
【0037】
また、連結部48aが連結部48bよりも上方に位置するように連結手段37が形成されている場合、トラック1が急に加速すると、ATM26に対してトラック1の進行方向と逆向きに作用する慣性力によって上フレーム34は矢印Xと逆向きの力を受ける。そのため、リンク部材48の連結部48aには力Pとは逆向きの力が加わる。この力のうち、リンク部材48に平行な成分はリンク部材48の軸力(引張力)と相殺され、リンク部材48に垂直な成分は連結部48bを中心としてリンク部材48を矢印Dの向きに回動させるモーメントとして作用する。しかし、このモーメントはリンク部材48が水平状態になるまでしか作用しないため、上フレーム34が大きく揺動するおそれはない。すなわち、トラック1が急に加速した場合には、連結手段37が上記構造であっても本実施例の場合と同様に上フレーム34及びATM26の揺動が抑制される。
【0038】
走行中に運転手が安全運転を心がけていれば、通常、トラック1の急な加速という事態は避けることができる。これに対し、トラック1の急な減速という事態は、例えば、危険を回避するためにやむを得ず、急ブレーキをかけた場合などのように運転手の不可抗力によって発生する可能性がある。従って、連結手段37は、トラック1が急に減速した場合に上フレーム34とATM26の揺動を抑制するとともに、上側支持部材46と底板41の間に緩衝部材を設置することでさらに安全性を高めることができる本実施例に示すような構造が望ましい。
【0039】
以上説明したように、上記構造の移動店舗車においては、空気ばね36a,36bの内部に空気を供給すると、走行中に車体や下フレーム35が振動した場合に、空気ばね36a,36bが上フレーム34及びその上面に固設されたATM26に振動が伝搬しないように阻止するという作用を有する。これにより、路面の凹凸等が原因で走行時に車体が振動した場合でも、その振動の伝搬を抑制してATM26の故障を防ぐことが可能となる。また、免振装置25は荷室2の床面2bの一部に設定されることから、車体全体をエアサスペンション構造にする場合に比べて、上記構造の移動店舗車では軽量化を図るとともに製造コストを安くすることができる。
【0040】
また、空気ばね36a,36bの内部から空気を排出すると、免振装置25による免振機能が容易に解除され、上フレーム34は下フレーム35及び車体に対して揺動不能となってATM26の設置状態が安定する。従って、現地に到着した後、免振装置25による免振機能を速やかに解除して直ちにATM26を利用可能な状態とすることができる。さらに、加速や減速等によって発生する慣性力がATM26に作用した場合でも、その揺動を抑制して故障を防ぐことができる。
【0041】
本発明の移動店舗車は本実施例に示した構造に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、接客室17を荷室2の後方に設置し、ATM室19を荷室2の前方に設置しても良い。また、接客室17から執務室18へ出入り可能に通路を設ける代わりに、ATM室19から執務室18へ出入り可能に通路を設けることもできる。さらに、連結手段37は空気ばね36bの近傍に限らず、空気ばね36aの近傍に設置されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0042】
請求項1乃至請求項4に記載された発明は、ATM等のサービスを供用するための精密な機器を搭載し、荷室を店舗として利用する形態の移動店舗車全般に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…トラック 1a…電動油圧式アウトリガ 1b…車体フレーム 2…荷室 2a…側面パネル 2b…床面 2c…天井パネル 2d…側面パネル 3a…後部扉 3b,3c…引き違い扉 4…油圧スプリング 5a…後部出入口 5b…前部出入口 6a,6b…側面扉 7…受電ボックス 7a…開口部 8a,8b…階段 9…踏板 10…側板 11a,11b…手摺 12…換気扇 13…空調機用室外機 14…カメラ 15…引き違い窓 16…オーニング装置 16a…オーニング 16b…支持具 17…接客室 18…執務室 19…ATM室 20a〜20c…カウンター 21a,21b…仕切り板 22,23…仕切り壁 24a,24b…空調機 25…免振装置 26…ATM 27…長椅子 28a,28b…収納部 28c…収納棚 29…乗員用椅子 30…配電設備 31a…コンピュータ用キーボード 31b…ディスプレイ 32…現金収納庫 33…複写機 34…上フレーム 35…下フレーム 36a,36b…空気ばね 37…連結手段 38…桁材 39…角パイプ 40…天板 41…底板 42…パッキン 43…中空弾性部 44a,44b…台座 45…ボルト 46…上側支持部材 47…下側支持部材 48…リンク部材 48a,48b…連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスを供用するための機器が荷室に搭載され、車体の後面又は側面の少なくともいずれか一方に出入口が設けられた移動店舗車において、
内部に供給された空気量に応じてばね定数が変わる空気ばねと、
この空気ばねに対して空気の供給又は排出を行う給排気手段と、
前記空気ばねを介して互いに結合される鋼製の上フレーム及び下フレームと、
この上フレームと下フレームを揺動自在に連結する連結手段と、
を備え、
前記サービスを供用するための機器は前記上フレームの上面に固設され、
前記下フレームは前記車体に固定されることを特徴とする移動店舗車。
【請求項2】
前記連結手段は、
前記上フレームに立設される上側支持部材と、
前記下フレームに立設される下側支持部材と、
この下側支持部材と上側支持部材に両端がそれぞれ枢着されるリンク部材と、
からなり、
前記リンク部材が前記上側支持部材及び前記下側支持部材に対して前記荷室の奥行き方向及び鉛直方向に平行な平面内でそれぞれ回動可能に設置されることを特徴とする請求項1に記載の移動店舗車。
【請求項3】
前記連結手段は、
前記上側支持部材と前記リンク部材の連結部が前記下側支持部材と前記リンク部材の連結部よりも後方かつ下方に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動店舗車。
【請求項4】
前記サービスを供用するための機器として現金自動預払機(以下、ATMという)が搭載され、このATMを操作するためのATM室が前記荷室の前方又は後方のいずれか一方に設けられ、
乗員が執務を行う執務室が前記荷室の中央部に設けられ、
この執務室を挟んでカウンターを有する接客室が前記荷室の前方又は後方に前記ATM室と対称に設けられ、
この接客室と前記ATM室へ出入り可能に前記出入口がそれぞれ設けられ、
前記乗員が出入り可能に前記接客室又は前記ATM室の少なくともいずれか一方から前記執務室へ通路が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の移動店舗車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−75565(P2013−75565A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215509(P2011−215509)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(596132411)オオシマ自工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】