説明

移動式クレーンのウインチ取付構造

【課題】長孔によるピン結合部のピン等の破損防止効果を確保しつつ、長孔内でのピンの衝突に起因する音の発生を防止する。
【解決手段】旋回フレームの側板本体31aと垂直突出部との間に斜めに配置したウインチプレート56のピン孔43aを長孔にする。ウインチプレートに、側板本体の上縁面31dの上方を横切りかつ側板本体の上縁面に対面する側に長孔の長手方向に傾斜する傾斜面61aを有する押圧部材61を取り付ける。側板本体の上縁面上に、押圧部材の傾斜面に対応した傾斜面63a及びネジ孔63bを有する可動部材63を摺動可能に配置する共に、可動部材から所定距離離れた位置に貫通孔64aを有する固定部材64を固定し、固定部材の貫通孔内を貫通したボルト65のネジ部65aを可動部材のネジ孔にねじ込んで可動部材の傾斜面と押圧部材の傾斜面を接触させると両傾斜面と直交する方向の押圧力がピン結合部の締付力として作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーンなどの移動式クレーンのウインチ取付構造に関し、特に、上部旋回体の旋回フレームの側板本体と垂直突出部との間に斜めに配置したウインチプレートを介してウインチを取り付けるものに係わる。
【背景技術】
【0002】
一般に、クローラクレーンなどの移動式クレーンにおいては、例えば特許文献1に開示され、また図10にも示すように、下部走行体a上に上部旋回体bが旋回可能に搭載され、この上部旋回体bの旋回フレームcの前端にブーム(図示せず)の基端が起伏可能に支持されているとともに、旋回フレームcの中間部から後部に吊り上げ設備としてのガントリd及び複数(図では4つ)のウインチe,f,g,hなどが取り付けられている。
【0003】
上記旋回フレームcは、左右の側板c1(図では右側の側板のみ示す)と、この両側板c1の下縁同士を連結する底板c2とを備えており、各側板c1は、上縁が略同一の高さで前後方向に略水平に延びる側板本体c3と、この側板本体c3の中間部上縁から上方に突出する第1垂直突出部c4と、側板本体c3の後端部上縁から上方に突出する第2垂直突出部c5とを有してなる。そして、上記ガントリdの取付構造として、ガントリdのコンプレッションメンバd1の一端がこの第1垂直突出部c4の先端にピンiにより結合されているとともに、ガントリdのテンションメンバd2の一端が第2垂直突出部c5の先端にピンjにより結合されている。
【0004】
また、上記複数のウインチe〜hのうち、旋回フレームcの側板c1の第1垂直突出部c4の近傍に配置されるウインチe,fの取付構造として、この各ウインチe,fが、旋回フレームcの左右の側板c1間に跨がって配置されているとともに、各側板c1に対しそれぞれ側板本体c3と第1垂直突出部c4との間に斜めに配置したウインチプレートk,lを介して2箇所でピン結合により取り付けられている。この2箇所のピン結合部m1,m2又はn1,n2のうち、一方のピン結合部m1,n1は側板c1の第1垂直突出部c4に、他方のピン結合部m2,n2は一方のピン結合部m1,n1とウインチe,fの中心線を挟んで反対側における側板本体c3の上縁部にそれぞれ設けられている。
【0005】
ところが、このような構造の場合、ガントリdの頂部にブーム起伏用ロープの張力が作用するとガントリdのコンプレッションメンバd1から圧縮力が旋回フレームcの側板c1の第1垂直突出部c4に作用し、この第1垂直突出部c4が基端側を中心として前側に傾くような弾性変形を生じる。これに伴い、ウインチeはその2箇所のピン結合部m1,m2を結ぶ直線方向に圧縮されることなり、ピン結合部m1,m2のピンやウインチプレートkのピン孔が破損する虞がある。また、ウインチfはその2箇所のピン結合部n1,n2を結ぶ直線方向に引っ張られることになり、同じくピン結合部n1,n2のピンやウインチプレートlのピン孔が破損する虞がある。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、上記各ウインチe,fの取付構造において、側板本体側のピン結合部m2,n2のウインチプレートk,lに設けるピン孔又は側板本体の上縁部に設けるピン孔を、2箇所のピン結合部m1,m2又はn1,n2を結ぶ直線方向に長い長孔にすることが考えられる。しかし、この場合、荷を吊った際に長孔内でピンが当たり、音が発生する虞があることから、これに対する対応策を併せて講じる必要がある。
【0007】
一方、特許文献2には、ピン結合部のピンとピン孔との隙間をなくして強固に固定するために、ウインチプレートの下面と旋回フレームの上面との間にくさびを押し込むことが記載されている。しかし、この方式は、ウインチプレートの下面と旋回フレームの上面とが対面し合うことが前提となるが、上記各ウインチe,fの取付構造では、ウインチプレートk,lの端面と旋回フレームcの側板本体c3の上縁面とは対面し合わずに隣接するようになっているため、特許文献2記載の方式をそのまま採り入れることはできない。
【0008】
また、本発明者らは、本発明に先立って、上記の対応策として、例えば図11に示すように、旋回フレームの側板本体c3の上縁部を挟むウインチプレートkの二股部k1に、側板本体c3の上縁面の上方を所定の距離離れて横切る水平部材pを取り付け、この水平部材pに設けたネジ孔qにねじ込んだ締結ボルトrの先端で側板本体c3の上縁面を押し付けることを考案した。しかし、この方式では、締結ボルトrからの締め付け力がピン結合部m2のピンm21をウインチプレートkの二股部k1に設けた長孔からなるピン孔m22の長手方向一端に押し付けるように作用するため、長孔によるピンm21などの破損防止効果が十分に得られなくなるという不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−314106号公報
【特許文献2】特開2002−3165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、上述の如く旋回フレームcの側板本体c3と垂直突出部c4との間に斜めに配置したウインチプレートk,lを介してウインチe,fを取り付ける場合、ピン結合部のピン孔を長孔にするとともに、その長孔の長手方向と略直交する方向に締め付け力が作用するように構成することにより、長孔によるピン結合部のピンなどの破損防止効果を十分に確保しつつ、長孔内でのピンの衝突に起因する音の発生を防止し得る移動式クレーンのウインチ取付構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、移動式クレーンとして、下部走行体上に上部旋回体が旋回可能に搭載され、この上部旋回体の旋回フレームの前端にブームの基端が起伏可能に支持されているとともに、旋回フレームの中間部から後部にガントリ及びウインチが取り付けられており、上記旋回フレームは、左右の側板と、この両側板の下縁同士を連結する底板とを備え、各側板は、上縁が略同一の高さで前後方向に略水平に延びる側板本体と、この側板本体の中間部上縁から上方に突出し、先端に上記ガントリのコンプレッションメンバの一端が取り付けられる垂直突出部とを有しており、上記ウインチは、旋回フレームの左右の側板間に跨がって配置されているとともに、各側板に対しそれぞれウインチプレートを介して2箇所でピン結合により取り付けられ、この2箇所のピン結合部のうち、一方のピン結合部は側板の垂直突出部に、他方のピン結合部は一方のピン結合部とウインチの中心(軸心)を挟んで反対側における側板本体の上縁部にそれぞれ設けられていることを前提とする。そして、この移動式クレーンのウインチ取付構造として、上記他方のピン結合部のウインチプレートに設けたピン孔又は側板本体の上縁部に設けたピン孔を、上記2箇所のピン結合部を結ぶ直線方向に長い長孔にする。また、上記ウインチプレートに、側板本体の上縁面の上方を所定の隙間を隔てた状態で横切りかつ側板本体の上縁面に対面する側に上記長孔の長手方向に傾斜する傾斜面を有する押圧部材を取り付ける一方、上記側板本体の上縁面上に、上記押圧部材の傾斜面に対応した傾斜面及びネジ孔を有する可動部材を上記隙間付近で摺動可能に配置するとともに、この可動部材から所定距離離れた位置に貫通孔を有する固定部材を固定し、この固定部材の貫通孔内を貫通したボルトのネジ部を上記可動部材のネジ孔にねじ込んで可動部材の傾斜面と押圧部材の傾斜面とを接触させることでこの両傾斜面と直交する方向の押圧力が上記他方のピン結合部に対し締め付け力として作用するように構成する。
【0012】
この構成では、ウインチを各側板に取り付けるためのウインチプレートの2箇所のピン結合部のうち、一方のピン結合部を側板の垂直突出部に、他方のピン結合部を一方のピン結合部とウインチの中心を挟んで反対側における側板本体の上縁部にそれぞれ設けて、ウインチプレートを側板の垂直突出部と側板本体の上縁部との間に斜めに取り付けるに当たり、他方のピン結合部つまり側板本体の上縁部側のピン結合部において、そのウインチプレートに設けたピン孔又は側板本体の上縁部に設けたピン孔を、2箇所のピン結合部を結ぶ直線方向に長い長孔にしているため、ガントリの頂部にブーム起伏用ロープの張力が作用してガントリのコンプレッションメンバから圧縮力が旋回フレームの側板の垂直突出部に作用し、この垂直突出部が基端側を中心として前側に傾くような弾性変形を生じるときには上記ピン結合部のピンが長孔のピン孔内を移動することになり、ピンやピン孔が破損することはない。この際、側板本体の上縁面上に固定した固定部材の貫通孔内を貫通したボルトのネジ部を、側板本体の上縁面上に摺動可能に配置した可動部材のネジ孔にねじ込んで可動部材の傾斜面とウインチプレートに取り付けた押圧部材の傾斜面とを接触させることでこの両傾斜面と直交する方向の押圧力が締め付け力として作用しているが,この押圧力の方向は、長孔のピン孔の長手方向と直交する方向であるため、この押圧力により上記ピンの長孔のピン孔内での移動が阻止されることはない。
【0013】
一方、ウインチで荷を吊り上げた際にはその反力としての外力がウインチプレートの各ピン結合部に作用するが、外力の方向は、ウインチの円周接線方向であり、上記押圧力の方向と一致する。このため、外力により上記ピン結合部のピンが長孔のピン孔内を移動して衝突音を発生することはない。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の移動式クレーンのウインチ取付構造において、上記ウインチプレートを、ウインチに固定された環状の第1プレートと、この第1プレートの各ピン結合部に対応する部位にそれぞれ基端が第1プレートを2つ1組で挟むように固定された2組計4つの第2プレートとにより構成し、各ピン結合部では、2つの第2プレート間に側板の垂直突出部又は側板本体の上縁部を挟んだ状態でこれらの部材に設けたピン孔にピンを挿入して結合するようにし、また、上記押圧部材を、このピン結合部の2つの第2プレート間に跨がった状態で設ける構成にする。
【0015】
この構成では、ウインチプレートの各ピン結合部において、ウインチプレートの2つの第2プレート間に側板の垂直突出部又は側板本体の上縁部を挟んだ状態でこれらの部材に設けたピン孔にピンを挿入して結合されているため、各ピン結合部の強度を高めることができる。また、押圧部材がこのピン結合部の2つの第2プレート間に跨がった状態で設けられているため、押圧部材の剛性をも高めことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように,本発明における移動式クレーンのウインチ取付構造によれば、ガントリの頂部にブーム起伏用ロープの張力が作用してガントリのコンプレッションメンバから圧縮力が旋回フレームの側板の垂直突出部に作用し、この垂直突出部が基端側を中心として前側に傾くような弾性変形を生じるときにはピン結合部のピンが長孔のピン孔内を移動するため、ピン結合部のピンやピン孔などの破損を防止することができる。しかも、ウインチで荷を吊り上げた際にはピン結合部の長孔のピン孔の長手方向と直交する方向の押圧力が締め付け力として作用しているため、ピン結合部のピンが長孔のピン孔内を移動して衝突音が発生するのを防止することができる。
【0017】
特に、請求項2に係る発明では、ウインチプレートの2つの第2プレート間に側板の垂直突出部又は側板本体の上縁部を挟んだ状態でこれらの部材に設けたピン孔にピンを挿入して結合されているため、各ピン結合部の強度を高めることができる。また、押圧部材がこのピン結合部の2つの第2プレート間に跨がった状態で設けられているため、押圧部材の剛性をも高めことができる。その結果、押圧部材の傾斜面と可動部材の傾斜面との接触によりこの両傾斜面と直交する方向の押圧力がピン結合部に対し締め付け力として強固に作用することになり、衝突音の発生防止化を確実に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施形態に係るクローラクレーンの側面図である。
【図2】図2は上記クローラクレーンの上部旋回体の旋回フレーム及びその取り付け装備品を示す側面図である。
【図3】図3は上記旋回フレームのウインチ取付部付近の側面図である。
【図4】図4は同じく平面図である。
【図5】図5は主巻ウインチの平面図である。
【図6】図6は同右側面図である。
【図7】図7は同左側面図である。
【図8】図8はウインチ取付構造の分解斜視図である。
【図9】図9はウインチ取付構造の縦断側面図である。
【図10】図10は従来例を示す図2相当図である。
【図11】図11は参考例のウインチ取付構造を示し、(a)は縦断側面図であり、(b)は(a)のX−X線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るウインチ取付構造を装備する移動式クレーンとしてのクローラクレーンの全体構成を示し、1はクローラ式の下部走行体、2はこの下部走行体1上に旋回可能に搭載された上部旋回体であって、この上部旋回体2は、基台としての旋回フレーム3を有し、この旋回フレーム3の前端には作業アタッチメントとしてのブーム4の基端が起伏可能に支持されているとともに、旋回フレーム3の中間部から後部にはガントリ5、各種のウインチ6,7,9及びカウンタウエイト11が取り付けられている。
【0021】
上記ブーム4の先端部にはブームガイライン12の一端が固定され、このブームガイライン12の他端には上部スプレッダ13が設けられている。この上部スプレッダ13と、上記ガントリ5の頂部に取り付けた下部スプレッダ14との間にはブーム起伏ロープ15が巻き掛けられており、このブーム起伏ロープ15の一端はガントリ5に固定され、他端は、上部旋回体2の旋回フレーム3に取り付けたブーム起伏ウインチ9に巻き付けられている。そして、このブーム起伏ウインチ9によりブーム起伏ロープ15を繰り出し又は巻き取ることにより、下部スプレッダ14と上部スプレッダ13との間の距離を短く又は長く変更してブーム4を起伏させるようになっている。
【0022】
また、上記ブーム4の先端部にはブームポイントシーブ21、アイドラシーブ22及び補助シーブ23がそれぞれ回転自在に設けられている。ブームポイントシーブ21からは主フック24が主巻上ロープ25により支持して吊り下げられているとともに、補助シーブ23からは補フック26が補巻上ロープ27により支持して吊り下げられている。主巻上ロープ25の一端は、ブーム4の先端部に固定されている一方、主巻上ロープ25の他端部は、ブームポイントシーブ21からアイドラシーブ22を通して、上部旋回体2の旋回フレーム3に取り付けた主巻ウインチ6に巻き付けられており、この主巻ウインチ6により主フック24が主巻上ロープ25を介して巻き上げ又は巻き下げられるようになっている。また、補巻上ロープ27の一端は、補フック26に結合されている一方、補巻上ロープ27の他端部は、補助シーブ23からアイドラシーブ22を通して、上部旋回体2の旋回フレーム3に取り付けた補巻ウインチ7に巻き付けられており、この補巻ウインチ7により補フック26が補巻上ロープ27を介して巻き上げ又は巻き下げられるようになっている。
【0023】
上記旋回フレーム3は、図2ないし図4に示すように、左右の側板31L,31Rと、この両側板31L,31Rの下縁同士を連結する底板32と、この底板32の上方に所定距離離れて底板32と対向する水平面を構成するように側板31L,31Rなどに固定された複数の水平板33a,33b,33c,33d(図4では4つのみ示す)とを備えてなる。各側板31L,31Rは、上縁が略同一の高さで前後方向に略水平に延びる側板本体31aと、この側板本体31の中間部上縁から上方に突出する第1垂直突出部31bと、側板本体31の後端部上縁から上方に突出する第2垂直突出部31cとを有している。
【0024】
一方、上記ガントリ5は、左右一対ずつのコンプレッションメンバ35とテンションメンバ36(図2では共に右側のみ示す)とを備えてなる。各コンプレッションメンバ35の一端(下端)は、上記旋回フレーム3の対応する側板31L又は31Rの第1垂直突出部31bの先端に連結ピン37を介して回動可能に連結されているとともに、各テンションメンバ36の一端(下端)は、同じく対応する側板31L又は31Rの第2垂直突出部31cの先端に連結ピン38を介して回動可能に連結されている。また、各テンションメンバ36は、上部側部材36aと下部側部材36bとを2つの連結ピン39,40で折り畳み可能に連結してなり、ガントリ5の収納状態では各テンションメンバ36の両部材36a,36bを折り畳んだ上で各コンプレッションメンバ35を後方に倒して収納するようになっている。
【0025】
上記旋回フレーム3の左右の側板31L,31R間には、図2に示すように前側より順に主巻ウインチ6,補巻ウインチ7,サードウインチ8及びブーム起伏ウインチ9がそれぞれウインチの中心線(ドラム回転軸ともいう)を横幅方向に向けた横置きに配置されている。主巻ウインチ6は、各側板31L,31Rに対しそれぞれウインチプレート41L(図5参照)又は41Rを介して2箇所でピン結合により取り付けられ、この2箇所のピン結合部42,43のうち、一方のピン結合部42は各側板31L,31Rの第1垂直突出部31bに、他方のピン結合部43は一方のピン結合部42と主巻ウインチ6の中心(軸心)を挟んで反対側における側板本体31aの上縁部にそれぞれ設けられている。補巻ウインチ7は、主巻ウインチ6の場合と同じく、各側板31L,31Rに対しそれぞれウインチプレート44R(右側のみ示す)を介して2箇所でピン結合により取り付けられ、この2箇所のピン結合部45,46のうち、一方のピン結合部45は各側板31L,31Rの第1垂直突出部31bに、他方のピン結合部46は一方のピン結合部45と補巻ウインチ7の中心を挟んで反対側における側板本体31aの上縁部にそれぞれ設けられている。サードウインチ8は、主巻ウインチ6及び補巻ウインチ7の場合と同じく各側板31L,31Rに対しそれぞれウインチプレート47R(右側のみ示す)を介して2箇所でピン結合により取り付けられているが、この2箇所のピン結合部48,49は、共に側板本体31aの上縁部に設けられている。更に、ブーム起伏ウインチ9は、図示していないが、ウインチフレームなどを介して旋回フレーム3の水平板上に取り付けられている。
【0026】
そして、本発明のウインチ取付構造は、上記主巻ウインチ6及び補巻ウインチ7の各取付構造に適用し得るものであるが、以下の説明では、主巻ウインチ6の取付構造に適用した場合について述べる。
【0027】
すなわち、上記主巻ウインチ6は、図5ないし図7に示すように、巻き取りドラム51
を油圧モータ52で回転駆動するものであり、この主巻ウインチ6の巻き取りドラム51を挟む両側にはウインチプレート41L,41Rが取り付けられている。この各ウインチプレート41L,41Rはそれぞれ、主巻ウインチ6の非回転部に固定された環状の第1プレート53,54と、この第1プレート53,54の各ピン結合部42,43に対応する部位にそれぞれ基端が第1プレート53,54を2つ1組で挟むように固定された2組計4つの第2プレート55,55,56,56又は57,57,58,58とからなり、第1プレート53,54の各ピン結合部42,43に対応する部位には、第2プレート55〜58と重なり合う面積を大きくするための突出部53a,53b,54a,54bが形成されている。各ピン結合部42,43では、2つの第2プレート55,55、56,56、57,57又は58,58間に側板31L,31Rの第1垂直突出部31b又は側板本体31aの上縁部を挟んだ状態でこれらの3部材に設けたピン孔42a,42a,42b又は43a,43a,43bにピン42c,43cを挿入して結合するようになっている。
【0028】
上記主巻ウインチ6の各側板31L,31Rに対する2箇所のピン結合部42,43のうち、第1垂直突出部31b側のピン結合部42では、第2プレート55,57に設けたピン孔42a及び第1垂直突出部31bに設けたピン孔42bは、図3、図6及び図7に示す如く共に円形孔である。一方、側板本体31aの上縁部側のピン結合部43では、側板本体31aの上縁部に設けたピン孔43bは、図3に示す如く円形孔であるが、第2プレート56,58に設けたピン孔43aは、図6及び図7に示す如く2箇所のピン結合部42,43(図6及び図8では第2プレート55〜58のピン孔42a,43a)の中心同士を結ぶ直線Lの方向に長い長孔である。
【0029】
また、上記側板本体31aの上縁部側のピン結合部43では、図8及び図9に拡大詳示するように、各ウインチプレート41L,41Rの2つの第2プレート56,56又は58,58間に、それぞれ側板本体31aの上縁面31dの上方を所定の隙間を隔てた状態で横切りかつ側板本体31aの上縁面31dと対面する側に上記長孔のピン孔43aの長手方向つまり上記直線Lの方向に傾斜する傾斜面61aを有する押圧部材61が跨がった状態でかつ一対のスペーサ62,62を介在して取り付けられている。一方、上記側板本体31aの上縁面31d上には、上記押圧部材61の傾斜面61aに対応した傾斜面63a及びネジ孔63bを有する可動部材63が上記隙間付近で摺動可能に配置されているとともに、この可動部材63から所定距離離れた位置に貫通孔64aを有する固定部材64が固定されている。そして、この固定部材64の貫通孔64a内を貫通したボルト65のネジ部65aをロックナット66及び上記可動部材63のネジ孔63bにねじ込み、ボルト65の頭部65bを固定部材64に当接した状態のままボルト65を締め付けて可動部材63を固定部材64側に引き寄せることにより、可動部材63の傾斜面63aと押圧部材61の傾斜面61aとを接触させ、この両傾斜面63a,61aと直交する方向の押圧力が上記ピン結合部43に対し締め付け力として作用するように構成されている。
【0030】
従って、上記実施形態においては、主巻ウインチ6を旋回フレーム3の各側板31L,31Rに取り付けるためのウインチプレート41L,41Rの2箇所のピン結合部42,43のうち、一方のピン結合部42を側板31L,31Rの第1垂直突出部31bに、他方のピン結合部43を一方のピン結合部42と主巻ウインチ6の中心を挟んで反対側における側板本体31aの上縁部にそれぞれ設けて、ウインチプレート41L,41Rを側板31L,31Rの第1垂直突出部31bと側板本体31aの上縁部との間に斜めに取り付けるに当たり、他方のピン結合部43つまり側板本体31aの上縁部側のピン結合部43において、そのウインチプレート41L,41Rの第2プレート56,58に設けたピン孔43aを、2箇所のピン結合部42,43を結ぶ直線Lの方向に長い長孔にしているため、ガントリ5の頂部にブーム起伏ロープ15の張力が作用してガントリ5のコンプレッションメンバ35から圧縮力が旋回フレーム3の各側板31L,31Rの第1垂直突出部31bに作用し、この第1垂直突出部31bが基端側を中心として前側に傾くような弾性変形を生じるときには上記ピン結合部43のピン43cが長孔のピン孔43a内を移動する。この際、各側板31L,31Rの側板本体31aの上縁面31d上に固定した固定部材64の貫通孔64a内を貫通したボルト65のネジ部65aを、側板本体31aの上縁面31d上に摺動可能に配置した可動部材63のネジ孔63bにねじ込んで可動部材63の傾斜面63aとウインチプレート41L、41Rの第2プレート56,58に取り付けた押圧部材61の傾斜面61aとを接触させることでこの両傾斜面63a,61aと直交する方向の押圧力が締め付け力として作用しているが,この押圧力の方向は、長孔のピン孔43aの長手方向と直交する方向であるため、この押圧力により上記ピン43cの長孔のピン孔43a内での移動が阻止されることはない。この結果、各ピン結合部42,43でのピン42c,43cやピン孔42a,42b,43a,43bが破損するのを確実に防止することができる。
【0031】
一方、主巻ウインチ6の巻上により主フック24で荷を吊り上げた際には、その反力としての外力がウインチプレート41L,41Rの各ピン結合部42,43に作用するが、外力の方向は、主巻ウインチ6の円周接線方向であり、上記押圧力の方向と一致する。このため、外力により上記ピン結合部43のピン43cが長孔のピン孔43a内を移動して衝突音を発生することはなく、その発生の防止化を図ることができる。
【0032】
その上、上記各ウインチプレート41L,41Rの各ピン結合部42,43では、各ウインチプレート41L,41Rの2つの第2プレート55,55、56,56、57,57又は58,58間にそれぞれ対応する側板31L,31Rの第1垂直突出部31b又は側板本体31aの上縁部を挟んだ状態でこれらの部材に設けたピン孔42a,42b又は43a,43bにピン42c,43cを挿入して結合されているため、各ピン結合部42,43の強度を高めることができる。また、上記押圧部材61がこのピン結合部43の2つの第2プレート56,56又は58,58間に跨がった状態で設けられているため、押圧部材61の剛性をも高めことができる。その結果、押圧部材61の傾斜面61aと可動部材63の傾斜面63aとの接触によりこの両傾斜面61a,63aと直交する方向の押圧力がピン結合部43に対し締め付け力として強固に作用することになり、衝突音の発生防止化を確実に図ることができる。
【0033】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記実施形態では、本発明を、主巻ウインチ6の取付構造に適用した場合について述べたが,本発明は,この主巻ウインチ6の取付構造に限らず、補巻ウインチ7の取付構造にも同様に適用することができるのは勿論である。
【0034】
また、上記実施形態では、主巻ウインチ6を旋回フレーム3の各側板31L,31Rに取り付けるための各ウインチプレート41L,41Rを、主巻ウインチ6に固定された環状の第1プレート53,54と、この第1プレート53,54の各ピン結合部42,43に対応する部位にそれぞれ基端が第1プレート53,54を2つ1組で挟むように固定された2組計4つの第2プレート55,55,56,56又は57,57,58,58とによって構成し,各ピン結合部42,43では、2つの第2プレート55,55、56,56、57,57又は58,58間に側板31L,31Rの第1垂直突出部31b又は側板本体31aの上縁部を挟んだ状態でこれらの部材に設けたピン孔42a,42b又は43a,43bにピン42c,43cを挿入して結合するように構成したが、本発明は、これに限らず、例えば各ウインチプレートを、主巻ウインチ6に固定された主プレートと、この主プレートの各ピン結合部に対応する部位に接合されかつ主プレートと協働して二股部を形成する2つの副プレートとによって構成し,この主プレートと副プレートの二股部で側板31L,31Rの第1垂直突出部31b又は側板本体31aの上縁部を挟んだ状態でこれらの部材に設けたピン孔にピンを挿入して結合するように構成しても良い。
【0035】
さらに、上記実施形態では、主巻ウインチ6を旋回フレーム3の各側板31L,31Rに取り付けるための各ウインチプレート41L,41Rの2箇所のピン結合部42,43のうち、側板本体31の上縁部側のピン結合部43において、ウインチプレート41L,41Rの第2プレート56,58に設けたピン孔43aを、上記2箇所のピン結合部42,43を結ぶ直線Lの方向に長い長孔にしたが、本発明は、場合によっては、側板本体31の上縁部に設けたピン孔43bを、2箇所のピン結合部42,43を結ぶ直線方向に長い長孔にしても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 旋回フレーム
4 ブーム
5 ガントリ
6 主巻ウインチ
31L,31R 側板
31a 側板本体
31b 第1垂直突出部
31d 上縁面
32 底板
35 コンプレッションメンバ
41L,41R ウインチプレート
42,43 ピン結合部
42a,42b,43a,43b ピン孔
42c,43c ピン
53,54 第1プレート
55,56,57,58 第2プレート
61 押圧部材
61a 傾斜面
63 可動部材
63a 傾斜面
63b ネジ孔
64 固定部材
64a 貫通孔
65 ボルト
65a ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体上に上部旋回体が旋回可能に搭載され、この上部旋回体の旋回フレームの前端にブームの基端が起伏可能に支持されているとともに、旋回フレームの中間部から後部にガントリ及びウインチが取り付けられており、上記旋回フレームは、左右の側板と、この両側板の下縁同士を連結する底板とを備え、各側板は、上縁が略同一の高さで前後方向に略水平に延びる側板本体と、この側板本体の中間部上縁から上方に突出し、先端に上記ガントリのコンプレッションメンバの一端が取り付けられる垂直突出部とを有しており、上記ウインチは、旋回フレームの左右の側板間に跨がって配置されているとともに、各側板に対しそれぞれウインチプレートを介して2箇所でピン結合により取り付けられ、この2箇所のピン結合部のうち、一方のピン結合部は側板の垂直突出部に、他方のピン結合部は一方のピン結合部とウインチの中心を挟んで反対側における側板本体の上縁部にそれぞれ設けられた移動式クレーンにおいて、
上記他方のピン結合部のウインチプレートに設けたピン孔又は側板本体の上縁部に設けたピン孔は、上記2箇所のピン結合部を結ぶ直線方向に長い長孔であり、
上記ウインチプレートには、側板本体の上縁面の上方を所定の隙間を隔てた状態で横切りかつ側板本体の上縁面に対面する側に上記長孔の長手方向に傾斜する傾斜面を有する押圧部材が取り付けられている一方、
上記側板本体の上縁面上には、上記押圧部材の傾斜面に対応した傾斜面及びネジ孔を有する可動部材が上記隙間付近で摺動可能に配置されているとともに、この可動部材から所定距離離れた位置に貫通孔を有する固定部材が固定されており、この固定部材の貫通孔内を貫通したボルトのネジ部を上記可動部材のネジ孔にねじ込んで可動部材の傾斜面と押圧部材の傾斜面とを接触させることでこの両傾斜面と直交する方向の押圧力が上記他方のピン結合部に対し締め付け力として作用するように構成されていることを特徴とする移動式クレーンのウインチ取付構造。
【請求項2】
上記ウインチプレートは、ウインチに固定された環状の第1プレートと、この第1プレートの各ピン結合部に対応する部位にそれぞれ基端が第1プレートを2つ1組で挟むように固定された2組計4つの第2プレートとからなり、各ピン結合部では、2つの第2プレート間に側板の垂直突出部又は側板本体の上縁部を挟んだ状態でこれらの部材に設けたピン孔にピンを挿入して結合するようになっており、上記押圧部材は,このピン結合部の2つの第2プレート間に跨がった状態で設けられている請求項1記載の移動式クレーンのウインチ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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