説明

移動式車室内装備

【課題】 他の車内装備との干渉を防いで広範囲に移動可能な移動式車室内装備を提供することを目的とする。
【解決手段】 車両AMの車室VR内に前後方向に移動可能に搭載されるリヤコンソール10は内部に収容部12が設けられるとともに、その上面に収容部12を開閉する蓋体15が形成されている。リヤコンソール10の外周面のうち前方部19には、その上端部に位置するように前方への突出部20が形成されており、リヤコンソール10を前方に移動させた時、突出部20がフロントコンソール5の後端部の上方に被ることにより、フロントコンソール5と干渉することなく、リヤコンソール10の移動量を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される移動式車室内装備に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内に移動可能に設けられた車室内装備に関する従来技術として、その内部に収容部を有し車両の床に敷設されたレールに沿って車両前後方向に移動可能な後部席用のコンソールがあった(例えば、特許文献1参照。)。一般的に移動式の車室内装備は車室内において広範囲に移動できることが望ましいが、上述した従来技術によるものは、車室内の小物を収容できる収容部の上方に回動可能なアームレストを設け、コンソールの車室内での位置に応じてアームレストの回動位置を変化させることにより、アームレストとその他の車内装備との干渉を防ぐことができるものであった。
【0003】
しかしながら、その一方、その収容部については他の装備との干渉を防ぐ手当てがされたものではなかった。例えば、図9(A)に示した後部席RSを、折り畳んだ上で前方に回動させて前部席FSの直後に移動(前方へタンブルアップ)させた場合、リヤコンソールRCが前方にあるフロントコンソールFCとの干渉により前方に移動しきれず、後方部の荷室内に突出するように残存してしまう(図9(B)示)。これを避けるためには、フロントコンソールFCをリヤコンソールRCとともに前方に移動させることが考えられるが、そのためには、車両の床に長く延びたレールを敷設する必要があり、これは床下に格納される機能部品を避けるために、通常車両の床面が凸凹に形成されていることからすれば困難をともない、更に、干渉する車内装備が床に固定されたものであった場合は対処する手段がなかった。また、干渉を避けるために、移動する装備全体を小型にすれば装備自体の要求性能自体を満足できなかった。
【特許文献1】特開平10−100747号公報(第2−4頁、第1図および第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、他の車内装備との干渉を防いで広範囲に移動可能な移動式車室内装備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、外周面によって囲まれ、車両の室内を略水平方向に移動可能な移動式車室内装備において、前記外周面のうち、その移動方向に設けられた進行部位が、車室内の他の装備の上方に被ることが可能な突出部を常時有していることを特徴とする移動式車室内装備とした。
【0006】
請求項2の発明は、前記突出部を前記進行部位の上端部に設けたことを特徴とする請求項1記載の移動式車室内装備とした。
【0007】
請求項3の発明は、前記外周面の内側には収容部が設けられた車載用コンソールであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の移動式車室内装備とした。
【0008】
請求項4の発明は、前記外周面のうち上面に前記収容部を開閉可能な蓋体を備えたことを特徴とする請求項3記載の移動式車室内装備とした。
【発明の効果】
【0009】
<請求項1の発明>
外周面の移動方向に設けられた進行部位が、車室内の他の装備の上方に被っていても機能することが可能な突出部を常時有している構成としたことにより、機能的に不要な部位を削除するなど、装備全体を小型化してその必要機能性を省くことなく、また、移動時に特にその外形を変化させるための特別の手間もなく、他の装備との干渉を避けて広範囲に移動させることができる。
【0010】
<請求項2の発明>
突出部を進行部位の上端部に設けた構成としたことにより、車室内装備の上面を広くすることができ、特にアームレストとして機能させれば最も効果的である。
【0011】
<請求項3の発明>
車室内装備は外周面の内側に収容部が設けられた車載用コンソールとしたことにより、これを広範囲に移動させて前部席および後部席のいずれにおいても収容部に対し収容物の出し入れを行うことができる。
【0012】
<請求項4の発明>
外周面のうち上面に収容部を開閉可能な蓋体を備えた構成としたことにより、収容部に対して収容物の出し入れが行いやすくなるとともに、突出部が他の装備の上方に被っても収容部を常時開閉可能な状態に待避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1乃至図8によって説明する。説明において、図1における左方を前方とする。車両AMの車室VR内に形成されたフロア1の前方を占める低床部1L上には、運転者席2および助手席(図示せず)が前後方向に移動可能に設置されている。また、運転者席2と助手席との間に位置するように、フロントコンソール5がフロア1に移動不能に取り付けられている。フロア1は運転者席2の後方部において一段高くなっており、後方部の高床部1Hには右後部席3および左後部席4が前後方向に移動可能に設置されている(図2示)。後述するように、後部席3、4は折り畳んで前方に回動させて移動させることができる。
【0014】
右後部席3および左後部席4の間には、リヤコンソール10が略水平方向前後に移動可能に配置されている。図3および図4に示されたように、リヤコンソール10は、合成樹脂材料にて形成され内部に収容部12を有するハウジング11を備えている。ハウジング11の収容部12を取り囲む外周面の上面には、収容部に連通する開口部13が設けられている。開口部13の後端部には回動軸14が設けられ、開口部13を開閉するためにこれに蓋体15が取り付けられており、蓋体15は上下方向に回動可能とされている。ハウジング11の底面16には、後述する移動機構30に連結される複数の取付部17が設けられており、その上方には下壁18が固定されることにより収容部12と遮断されている。
【0015】
ハウジング11の外周面は、その移動方向である前方部19(本発明の進行部位に該当する)において、前方に突き出た突出部20を有している。突出部20はハウジング11に一体成形されているため、リヤコンソール10の外周面に常時形成されている。突出部20は前方部19の上端部に形成され、その内部には前後方向に移動することにより出し入れ可能なカップホルダー21が格納されている。また、突出部20の後方部には仕切り壁22が立設されることにより、収容部12と遮断されている。ハウジング11の外周面は上述した突出部20が形成されたことにより、その下方部には必然的に窪み部23が形成されている。
【0016】
リヤコンソール10は蓋体15を開閉して収容部12に対して収容物の出し入れを行うとともに、普段は突出部20内に格納しているカップホルダー21を前方に引き出し、その上に飲料用の容器を載置する。また、蓋体15を閉じた状態では、その上面はおよそ平坦に形成されているため、後部席3、4の着座者のアームレストとしても使用できる。
【0017】
図5乃至図7に示すように、移動機構30は高床部1Hの下面に取り付けられている。高床部1Hには矩形状の取付口1H1が開口し、これを塞ぐように取付ブラケット31が固定されている。取付ブラケット31の下面には、左右一対の移動レール32が互いに平行に固定されており、これにはそれぞれ嵌合体33が移動可能に係合している。各々の嵌合対33の下面には、プレートの一部をL字状に曲げることにより形成されたナットホルダー34を介して移動ナット35が連結されている。移動ナット35内には図示しない雌ネジ体が回転不能に収容されている。ナットホルダー34の上面には複数の取付ピン36が立設されており、取付ブラケット31に設けられた一対のスリット31aに挿通された後、上述したハウジング11の取付部17の内孔に嵌合し、取付部17の上端部から突出した取付ピン36の雄ネジに雌ネジ部材37が締め付けられることにより固定され、移動機構30とリヤコンソール10とを連結している。
【0018】
取付ブラケット31の前後部には縦フランジ31b、31cが一体に形成され、これらの間には回転シャフト38が回転可能に取り付けられている。回転シャフト38には雄ネジ部38aが形成されており、上述した移動ナット35内に収容された雌ネジ体に噛合している。回転シャフト38の両端部には一対のリミットスイッチ39a、39bが取り付けられている。また、回転シャフト38の後端側には、従動ギヤ40が回転シャフト38と一体回転可能に固定されている。縦フランジ31cには回転シャフト38の下方に位置するように、両方向に回転可能な電動モータ41が固定されており、その出力軸41aには駆動ギヤ42が固着されている。駆動ギヤ42と従動ギヤ40にはギヤベルト43が張架されており、電動モータ41の駆動力が回転シャフト38に伝達されるようになっている。電動モータ41は上述したリミットスイッチ39a、39bとともに、移動機構30の図示しないコントローラに電気的に接続されている。また、コントローラには車室VR内に設けられた図示しないコンソール移動スイッチも電気的に接続されている。更に、電動モータ41は図示しない車両バッテリーとも電気的に接続されている。
【0019】
次に、図5乃至図8に基づいて、リヤコンソール10の移動方法について説明する。図1に示した後部席3、4のシートバックをシートクッションに重なるように前倒しにした上で、図8に示したようにシートクッションを前方に回動させてフロア1上に起こした状態(タンブルアップ状態)とする。前方へと移動した後部席3、4にあわせてリヤコンソール10を前方へと移動させるため、コンソール移動スイッチの前進ボタンを操作すると、移動スイッチからの操作信号を受けたコントローラが移動スイッチが操作されている間だけ電動モータ41を正転させる。電動モータ41の駆動力は回転シャフト38へと伝えられ、回転シャフト38の雄ネジ部38aと噛合している移動ナット35は回転不能であるため、回転シャフト38の正転により回転シャフト38上を前方(図5の左方)へと移動する。移動ナット35の移動により、ナットホルダー34および取付ピン36を介して移動ナット35と連結したリヤコンソール10も車室VR内を略水平方向に前進する。移動ナット35の前進が継続し、移動ナット35がリミットスイッチ39aへと当接すると、リミットスイッチ39aが発信した停止信号を受けたコントローラは電動モータ41の回転を停止させる。
【0020】
図8に示すように、リヤコンソール10の前進により前方部19に形成された突出部20は、フロントコンソール5の後端部に対し、その上方に所定の間隔を保持しながら被る(換言すれば、窪み部23内にフロントコンソール5の後端部が進入する)ことができるため、リヤコンソール10はフロントコンソール5と干渉することなく、前方への移動量を大きくして広範囲に移動することができる。これにより、リヤコンソール10の後端部が後部席3、4よりも後方に残存することはないため、広大な荷室スペースを確保できる。
【0021】
再び、リヤコンソール10を後方に移動させる場合、コンソール移動スイッチの後退ボタンを操作すると、コントローラが移動スイッチが操作されている間だけ電動モータ41を逆転させる。電動モータ41の駆動力は回転シャフト38へと伝えられ、移動ナット35は回転シャフト38の逆転により回転シャフト38上を後方(図5の右方)へと移動する。移動ナット35の移動によりリヤコンソール10も車室VR内を後退する。移動ナット35の後退が継続し、移動ナット35がリミットスイッチ39bへと当接すると、コントローラは電動モータ41の回転を停止させる。リヤコンソール10が前進あるいは後退中にコンソール移動スイッチの操作を中断すれば、リヤコンソール10の移動を停止させることができる。
【0022】
本実施形態によれば、ハウジング11の外周面の前方部19が、フロントコンソール5の上方に被ることが可能な突出部20を常時有していることにより、その容積を犠牲にしてリヤコンソール10全体を小型化することなく、また、移動時に特にその外形を変化させることもなく、フロントコンソール5との干渉を避けて広範囲に移動させることができる。また、突出部20を前方部19の上端部に設けたことにより、リヤコンソール10の上面を広くすることができ、アームレストとしても使用可能となる。また、車室内装備をリヤコンソール10にしたことにより、これを広範囲に移動させて運転者席2、助手席および後部席3、4のいずれにおいても収容部12に対し収容物の出し入れを行うことができる。更に、リヤコンソール10の外周面のうち、上面に収容部12を開閉可能な蓋体15を設けたことにより、収容部12に対して収容物の出し入れが行いやすくなるとともに、突出部20がフロントコンソール5の上方に被っても収容部12を開閉できる。
【0023】
<他の実施形態>
本発明は上述の記載および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、以下の記載のもの以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本発明は車室内において、車載用テーブル、ジュニアシート、車載用ピロー等のあらゆる車室内装備を機能させる場合に適用可能である。
(2)本発明の車室内装備は前後方向に移動するものばかりでなく、車両横方向あるいは斜め方向に移動させて機能させる用途にも適用可能である。また、突出部も前方部のみでなく装備のあらゆる部位に形成可能である。
(3)突出部は装備の上端部でなく、高さ方向の中間部位に形成してもよい。
(4)突出部を前方部の上端部に設けるとともに、突出部にカップホルダーを格納せずに内部を収容部と連通させ、上面全体に蓋体を設ければ収容部を広く開放することができる。
(5)車室内装備は電動モータによって移動されるものでなくとも、エアシリンダ、油圧シリンダ、電磁アクチュエータ等によって移動されるものであってもよく、また、手動にて移動されるものであってもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態によるリヤコンソールを搭載した車室内を示す側面図である。
【図2】図1に示したリヤコンソールの車室内への搭載状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示したリヤコンソール単体の斜視図である。
【図4】図1に示したリヤコンソールの断面図である。
【図5】移動機構の側面図である。
【図6】図5に示した移動機構の車両横方向にカットした場合の断面図である。
【図7】図5に示した移動機構の平面図である。
【図8】図1に示したリヤコンソールを前進させた場合の車室内を示す側面図である。
【図9】従来技術によるリヤコンソールを搭載した車室内を示す側面図(A)、リヤコンソールを前進させた場合の車室内を示す側面図(B)である。
【符号の説明】
【0025】
5…フロントコンソール
10…リヤコンソール
11…ハウジング
12…収容部
15…蓋体
19…前方部
20…突出部
AM…車両
VR…車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面によって囲まれ、車両の室内を略水平方向に移動可能な移動式車室内装備において、
前記外周面のうち、その移動方向に設けられた進行部位が、車室内の他の装備の上方に被ることが可能な突出部を常時有していることを特徴とする移動式車室内装備。
【請求項2】
前記突出部を前記進行部位の上端部に設けたことを特徴とする請求項1記載の移動式車室内装備。
【請求項3】
前記外周面の内側には収容部が設けられた車載用コンソールであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の移動式車室内装備。
【請求項4】
前記外周面のうち上面に前記収容部を開閉可能な蓋体を備えたことを特徴とする請求項3記載の移動式車室内装備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−7980(P2006−7980A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188412(P2004−188412)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】