説明

移動機及びセル移行制御方法

【課題】 過去にセル移行したセルが検出できない場合等であっても効率的なセル移行を可能にする。
【解決手段】 移動機10は、セルに在圏して移動体通信を行う移動機であって、セル移行先の候補となる周辺セルを検出して周辺セルにおける電波の受信状態を測定する周辺セル測定部11と、受信状態に基づいてセル移行先を決定してセル移行するセル移行部12と、受信状態に応じた周辺セル毎の優先度を示す情報と共に在圏セルに対応付けて周辺セルを示す情報を記憶する記憶部13と、セル移行を行う際に、在圏セルに対応付けて周辺セルを示す情報が記憶されているか否かを判断して、記憶されている場合に上記の優先度で周辺セルにおける電波の受信状態を測定するように制御する測定制御部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルに在圏して移動体通信を行う移動機、及び当該移動機によるセル移行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LTE(Long Term Evolution)等の移動体通信網において、移動機が、在圏するセルを切り替えるセル移行を行う際には、自機周辺のセルを検出するセルサーチを行い検出されたセルの中から移行先のセルを選択する。LTEでは、セルサーチを移動機から行うため、移動機周辺のセルを順番にサーチすると、実際にセル移行するセルを捕捉するまでに時間がかかってしまっていた。また、その結果、電力をより消費することで連続待ち受け時間に悪影響がある。
【0003】
セル移行(ハンドオーバ)を効率的に行うため、特許文献1に記載された技術が提案されている。特許文献1において提案されている技術では、移動機においてハンドオーバ履歴の情報を記憶しておき、過去にハンドオーバしたことがあるセルについてのみ監視を行うこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−289226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているようにセル移行の履歴を参照してセルサーチを行うこととすると、過去にセル移行先となったセルが検出できない場合、あるいは過去にセル移行先となったセルにおいて十分な電波の受信強度が無い場合には従来と同様に移動機周辺のセルを順番にサーチする必要があり、その結果効率的なセル移行を行うことができない。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、過去にセル移行したセルが検出できない場合等であっても効率的なセル移行を可能にする移動機及びセル移行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る移動機は、セルに在圏して移動体通信を行う移動機であって、セル移行先の候補となるセルを検出して、検出したセルにおける電波の受信状態を測定する周辺セル測定手段と、周辺セル測定手段によって測定された電波の受信状態に基づいて、検出したセルからセル移行先を決定して、決定したセル移行先のセルにセル移行するセル移行手段と、周辺セル測定手段によって測定された電波の受信状態に応じた検出したセル毎の優先度を示す情報と共に、在圏セルに対応付けて検出したセルを示す情報を記憶する記憶手段と、セル移行を行う際に、記憶手段によって在圏セルに対応付けて検出したセルを示す情報が記憶されているか否かを判断して、記憶されている場合に、周辺セル測定手段に対して、記憶手段によって記憶された優先度でセル移行先の候補となるセルにおける電波の受信状態を測定するように制御する測定制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る移動機では、過去に測定されたセル移行先の候補となるセルにおける電波の受信状態に応じた優先度でセル移行のための電波の受信状態の測定が行われる。従って、過去に実際にセル移行したセル以外のセルでも、実際にセル移行が可能である可能性が高いセルにおける電波の受信状態の測定が行われる。従って、本発明に係る移動機によれば、過去にセル移行したセルが検出できない場合等であっても効率的なセル移行を行うことができる。
【0009】
記憶手段は、在圏セルに対応付けて検出したセルを示す情報を当該在圏セルに在圏した時刻と共に記憶し、記憶した時刻から所定の時間が経過していた場合には当該在圏セルに対応付けて記憶したセルを示す情報を削除することが望ましい。この構成によれば、参照する可能性が低い情報を削除して移動機において記憶しておく情報の量の増加を防止することができる。
【0010】
周辺セル測定手段は、セル移行先の候補となるセルの検出処理の一つとして、セルにおける信号が出力されるタイミングを示すタイミング情報を検出して、記憶手段は、検出したセルに対応付けて、周辺セル測定手段によって検出されたタイミング情報を記憶し、測定制御手段は、記憶手段によって記憶されたタイミング情報を利用してセルにおける電波の受信状態を測定するように制御する、ことが望ましい。この構成によれば、受信状態の測定までの時間を低減することができ、更に効率的なセル移行を行うことができる。
【0011】
ところで、本発明は、上記のように移動機の発明として記述できる他に、以下のように当該移動機によるセル移行制御方法の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0012】
即ち、本発明に係るセル移行制御方法は、セルに在圏して移動体通信を行う移動機によるセル移行制御方法であって、セル移行先の候補となるセルを検出して、検出したセルにおける電波の受信状態を測定する周辺セル測定ステップと、周辺セル測定ステップにおいて測定された電波の受信状態に基づいて、検出したセルからセル移行先を決定して、決定したセル移行先のセルにセル移行するセル移行ステップと、周辺セル測定ステップにおいて測定された電波の受信状態に応じた検出したセル毎の優先度を示す情報と共に、在圏セルに対応付けて検出したセルを示す情報を記憶する記憶ステップと、セル移行を行う際に、記憶ステップにおいて在圏セルに対応付けて検出したセルを示す情報が記憶されているか否かを判断して、記憶されている場合に、記憶ステップにおいて記憶された優先度でセル移行先の候補となるセルにおける電波の受信状態を測定するように制御する測定制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、過去に測定されたセル移行先の候補となるセルにおける電波の受信状態に応じた優先度でセル移行のための電波の受信状態の測定が行われるため、過去に実際にセル移行したセル以外のセルでも実際にセル移行が可能である可能性が高いセルにおける電波の受信状態の測定が行われる。従って、本発明によれば、過去にセル移行したセルが検出できない場合等であっても効率的なセル移行を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る移動機の機能構成を示す図である。
【図2】移動機とセルとの関係を模式的に示す図である。
【図3】移動機におけるセルの検出について示す図である。
【図4】移動機において測定される各周辺セルの電波の受信強度を示す表である。
【図5】移動機において記憶される在圏セル毎の周辺セルの優先度を示す表である。
【図6】本発明の実施形態に係る移動機のハードウェア構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る移動機で実行される処理(セル移行制御方法)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面と共に本発明に係る移動機及びセル移行制御方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に本実施形態に係る移動機10を示す。移動機10は、セル方式による移動体通信を行うことができる装置であり、具体的には、携帯電話機等に相当する。図2に示すように、移動機10は、移動体通信網を構成する複数のセル21の何れかに在圏して、移動体通信網に含まれる基地局20との間で無線通信を行うことで移動体通信を行う。1つのセル21は、1つの基地局20によってカバーされる通信エリアである。移動機10は、移動に伴い在圏するセルを順次移行しながら通信を行う。移動機10に移動体通信機能を提供する移動体通信網は、具体的には例えば、LTEであり、本実施形態ではLTEを例として説明する。移動体通信網は、LTE以外でも、例えばWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)によるものであってもよい。
【0017】
図1に示すように、移動機10は、周辺セル測定部11と、セル移行部12と、記憶部13と、測定制御部14とを備えて構成される。また、移動機10は、本発明に係る上記の構成要素以外にも、例えば、携帯電話機としての機能も備えている。
【0018】
周辺セル測定部11は、セル移行先の候補となるセルを検出して、検出したセルにおける電波の受信状態を測定する周辺セル測定手段である。LTEでは、在圏セルからの移行先となる周辺セルの検出は、周辺セルにおける電波を検出することによって行われる。周辺セルの検出(セルサーチ)自体は、従来の方法と同様に行われるが、具体的には例えば、以下のように周辺セルを検出する。
【0019】
周辺セルの検出は、各周辺セルにおけるP−SCH(Primary-Synchronization Channel)の検出及びS−SCH(Secondary- Synchronization Channel)の検出を行うことによって行われる。P−SCH及びS−SCHでは、移動機10がセルを検知するための信号が出力されている。
【0020】
図3にセルの検出について説明するための図を示す。図3において横軸は時間の経過を示す。TS−SCHは、P−SCH相関窓完了から次のS−SCH開始するまでの時間である。dはRF(Radio Frequency)での制御遅延である。TP−SCH_Hは、P−SCH相関窓完了から、検出処理完了までの時間である。TS_SCH_Hは、全てのS−SCHを受信完了後からS−SCH検出処理完了までの時間である。
【0021】
P−SCHでは、セル毎に一定の周期で基地局20から無線信号が出力されている。例えば、図3に示すように5msec周期で信号31,32が出力されている。P−SCHには、複数(例えば、3種類)の系列があり、系列ごとに信号が出力されるタイミングが異なっている。各セルには、何れかの系列が割り当てられている。周辺セル測定部11は、図3に示すようにP−SCHの信号の周期に応じた相関窓を設けて検出処理を行うことによって、P−SCHを検出する。周辺セル測定部11は、P−SCHを検出することによって、各セルにおける、キャリア周波数とシンボル同期とローカルIDとを検知することができる。キャリア周波数は、移動体通信で用いる電波の周波数である。シンボル同期は、当該セルにおいて信号が出力されるタイミングを示すタイミング情報であり、これによりS−SCHを検出できるようになる。ローカルIDは、セルを特定する情報であるセルIDを検出するために用いる情報である。周辺セル測定部11は、複数の周辺セルについて同時にP−SCHの検出を行うことができる。P−SCHを検出するのには10msecが必要となる。
【0022】
続いて、周辺セル測定部11は、検出されたP−SCHの情報(シンボル同期)を利用してS−SCHを検出する。S−SCHの検出は、P−SCHのように複数の周辺セルについて同時には行われず、P−SCHによって検出された各周辺セルについて順次行われる。周辺セル測定部11は、S−SCHを検出することによって、当該セルにおける、無線フレームタイミングとセルグループIDとを検知することができる。無線フレームタイミングは、当該セルにおいて無線フレームを受信するためのタイミングを示す情報であり、これにより当該セルにおいて出力されている報知情報を受信することができるようになる。また、セルグループIDはセルIDを検出するために用いる情報である。周辺セル測定部11は、ローカルIDとセルグループIDとからセルIDを検出する。
【0023】
1つのS−SCHを検出するのに、少なくとも10msecは必要である。セルを1回で検出できれば最短で30msec程度で可能だが、30msec程度ではシミュレーションによるとセル検出成功率は約30%程度である。通常は、100msec〜数100msec程度かかると考えられる。この時間が長くなると消費電力が増加する。
【0024】
続いて、周辺セル測定部11は、検出されたP−SCH及びS−SCHの情報を利用して、セルの報知情報(報知信号、パイロット信号)を受信する。報知情報は、移動機10がセルに在圏するために必要な情報が含まれている。周辺セル測定部11は、報知情報からセルの電波の受信状態を測定する。具体的には、周辺セル測定部11は、報知情報の受信強度(受信レベル)を測定する。受信強度としては、受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)が用いられる。なお、受信状態として必ずしも受信電力が用いられる必要はなく、それ以外の受信状態を示す情報が用いられてもよい。
【0025】
周辺セル測定部11は、測定した周辺セルの電波の受信状態を示す情報をセルIDと共にセル移行部12に出力する。また、周辺セル測定部11は、測定した周辺セルの電波の受信状態を示す情報並びにP−SCH及びS−SCHを検出することによって得られた情報をセルIDと共に記憶部13に出力する。
【0026】
本発明は、周辺セルの受信状態の測定を周辺セルの優先度に応じて行うものである。周辺セル測定部11は、後述するように測定制御部14からの制御を受けると、当該制御によって示される周辺セルの順番でセルの電波の受信状態を検出する。また、後述するように過去のP−SCHの検出の結果を利用して、P−SCHの検出を省略することもできる。同様にS−SCHの検出を省略することもできる。
【0027】
周辺セル測定部11が周辺セルを検出し、周辺セルの電波の受信状態を測定するタイミングは、例えば、在圏セルにおける電波の受信状態が予め設定した閾値を下回ったとき(即ち、セル移行が必要となったとき)とする。あるいは、在圏セルにおける電波の受信状態にかかわらず、周辺セルの検出、及び周辺セルの電波の受信状態の測定を行うこととしてもよい。
【0028】
セル移行部12は、周辺セル測定部11によって測定された周辺セル電波の受信状態に基づいて、周辺セル測定部11によって検出されたセルからセル移行先を決定して、決定したセル移行先のセルにセル移行するセル移行手段である。セル移行先の決定(セル移行を行うか否かの決定)は、従来の方法と同様に行われ、例えば。在圏セルの電波の受信状態と測定された周辺セルの電波の受信状態とを比較して、周辺セルの電波の受信状態が、在圏セルの電波の受信状態を予め設定した閾値以上上回った(例えば、周辺セルの受信電力が、在圏セルの受信電力を閾値以上上回った)と判断されると当該周辺セルへのセル移行が行われる。また、セル移行の処理自体も従来の方法と同様に行われる。セル移行部12によってセル移行が行われると、セル移行先のセルに在圏して移動体通信(待ち受け状態も含む)が行われる。
【0029】
記憶部13は、周辺セル測定部11によって測定された電波の受信状態に応じたセル毎の優先度を示す情報と共に、在圏セルに対応付けて検出したセルを示す情報を周辺セル情報として自機10が備えるメモリ等の記憶装置に記憶する記憶手段である。記憶部13によって記憶された情報は、測定制御部14によって参照され、周辺セルにおける電波の受信状態の測定に利用される。
【0030】
上述したように、周辺セル測定部11から記憶部13には、検出された周辺セルのセルIDと、当該周辺セルにおける電波の受信状態を示す情報とが入力される。これを在圏セル毎にまとめると、例えば、記憶部13には図4の表に示す情報が入力される。図4の表の第1行はセルのセルIDを示しており、第2行は当該セルの受信電力を示しており、第3行は当該セルの状態を示している。セルの受信電力は、数値が大きい方が受信電力が大きい。セルの状態は、「Serving」が在圏セルであることをしめしており、「Neighbor」が周辺セルであることを示している。なお、在圏セルの情報は、移動機10において把握されている情報が記憶部13に入力されている。
【0031】
記憶部13は、周辺セル測定部11から情報が入力されると(1つの周辺セルに関する情報が入力されると)、当該在圏セルでの各周辺セルの優先度を決定する。例えば、受信電力が大きい周辺セルほど高い優先度とする。図4に示す情報では、セルIDが「1」の在圏セルに対して優先度が高い順は、セルID「3」、「4」、「2」、「5」、「6」となる。記憶部13は、決定したこの優先度の情報を、図5に示す表に格納することによって記憶する。図5において、縦は在圏セル、横は周辺セルをそれぞれ示しており、表に格納される数値が優先度を示している。数値が小さいほうが、優先度が高い。
【0032】
また、記憶部13は、上記の情報を当該在圏セルに在圏した時刻と共に記憶する。具体的には、図5の表の一番右の列に、在圏セルに対応付けて(最新の)在圏時刻を記憶する。記憶部13は、予め設定した周期(例えば、毎日0:00)に、記憶した時刻から予め設定した所定の時間(例えば、1週間)が経過していた場合には当該在圏セルに対応付けて記憶した周辺セルを示す情報をその優先度と共に削除する。本来であれば、在圏した記録は全て記憶しておくことが望ましいが、移動機10内部で記憶できる情報量が限られている。従って、例えば、1週間以上在圏していないセルの情報については、使用される頻度が低いと考えられ、上記のように削除する。
【0033】
また、記憶部13は、検出した周辺セルに対応付けて、周辺セル測定部11によってP−SCH及びS−SCHを検出することによって得られたタイミング情報(シンボル同期、あるいは無線フレーム同期の情報)を記憶する。この情報は、過去に検出された周辺セルにおける電波の受信状態を再度測定する際に利用される。
【0034】
測定制御部14は、セル移行(のための処理)を行う際に電波の受信状態の測定を制御する測定制御手段である。セル移行の処理は、周辺セル測定部11による周辺セルの検出から始まるので、例えば、測定制御部14は周辺セル測定部11からセル移行のための処理の開始の通知を受けて処理を開始する。
【0035】
測定制御部14は、まず、記憶部13によって在圏セルに対応付けて、過去に検出された周辺セルを示す情報が周辺セル情報として記憶されているか否かを判断する。具体的には、測定制御部14は、図5の表の在圏セルの情報に対応付けて、周辺セルの優先度の情報が記憶されているか否かを判断する。なお、移動機10の在圏セルについては、移動機10によって把握されており測定制御部14に通知される。例えば、セルIDが「1」のセルに在圏していた場合には、セルIDが「1」のセルに対応付けて、周辺セルの優先度の情報が記憶されているか否かを判断する。
【0036】
測定制御部14は、在圏セルに対する周辺セルの優先度の情報が図5の表に記憶されていると判断した場合には、周辺セル測定部11に対して、記憶部13によって記憶された優先度で周辺セルにおける電波の受信状態を測定するように制御する。具体的には、測定制御部14は、在圏セルに対する周辺セルの優先度の情報を取得して周辺セル測定部11に通知する。
【0037】
周辺セル測定部11は、通知された優先度が高い順番で周辺セルの受信状態を測定する。例えば、在圏セルに対する周辺セルの優先度の情報が図5の表に示すもので在圏セルがセルID「1」のセルであった場合には、周辺セル測定部11は、セルID「3」、「4」、「2」、「5」、「6」の順で周辺セルの受信状態を測定する。
【0038】
周辺セル測定部11によってP−SCH及びS−SCHを検出することによって得られたタイミング情報を記憶部13が記憶する態様である場合には、測定制御部14は当該タイミング情報を取得して周辺セル測定部11に出力して、当該タイミング情報を利用して周辺セルにおける電波の受信状態を測定するように制御する。P−SCHを検出することによって得られるシンボル同期の情報を記憶する態様では、周辺セル測定部11は周辺セルのP−SCHの検出を省略して、周辺セルのS−SCHの検出から行うことができる。あるいは、S−SCHを検出することによって得られる無線フレーム同期の情報を記憶する態様では、周辺セル測定部11は周辺セルのP−SCH及びS−SCHの検出を省略して、周辺セルの報知情報の受信(即ち、受信状態の測定)から行うことができる。
【0039】
測定制御部14は、在圏セルに対する周辺セルの優先度の情報が図5の表に記憶されてないと判断した場合には、周辺セル測定部11に対して周辺セルの測定の順番の制御は行わない。その場合は、周辺セル測定部11によって、従来技術と同様の周辺セルの検出及び受信状態の測定が行われる。その場合は、上述したように検出された周辺セル及び受信状態が、記憶部13によって記憶される。以上が、移動機10の機能構成である。
【0040】
図6に移動機10のハードウェア構成を示す。図6に示すように、移動機10は、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM103(Read Only Memory)、操作部104、無線通信部105、ディスプレイ106、アンテナ107等のハードウェアにより構成されている。これらの構成要素が動作することにより、上述した移動機10の各機能が発揮される。以上が、移動機10の構成である。
【0041】
引き続いて、図7のフローチャートを用いて、本実施形態に係る移動機10で実行される処理(セル移行制御方法)を説明する。本処理は、移動機10がセル移行を行う際に行われる。更に具体的には、移動機10がセルに在圏している際にセル移行のための周辺セルを検出して、周辺セルの電波の受信状態を検出する際に行われる。
【0042】
移動機10では、記憶部13によって記憶された周辺セル情報が、測定制御部14によって参照されて、移動機10が在圏している在圏セルに対応する周辺セル情報が記憶されているか否かが判断される(S01、測定制御ステップ)。初めてそのセルに在圏した場合、あるいは、記憶部13によって記憶された周辺セル情報が削除されている場合には、在圏セルに対応する周辺セル情報は記憶されていない。移動機10が在圏している在圏セルに対応する周辺セル情報が記憶されていないと判断された場合には、次のように従来と同様に周辺セルの検出、及び受信状態の測定が行われる。なお、この処理は、必ずしも測定制御部14の制御で行われる必要はない。
【0043】
移動機10では、周辺セル測定部11によって、周辺セルのP−SCHが検出される(S02、周辺セル測定ステップ)。P−SCHの検出により、各周辺セルにおける、キャリア周波数とシンボル同期とローカルIDとが検知され、S−SCHの検出が可能になる。
【0044】
続いて、周辺セル測定部11によって、P−SCHが検出された周辺セルのS−SCHが検出される(S03、周辺セル測定ステップ)。S−SCHの検出は、P−SCHが検出された周辺セルのうち一つが選択されて、選択された周辺セルに対して行われる。S−SCHの検出により、無線フレームタイミングとセルグループIDとが検知されて、報知情報の受信が可能となる。また、周辺セル測定部11によって、P−SCH及びS−SCHの検出によって得られた情報から周辺セルを特定するセルIDが検出される。
【0045】
続いて、周辺セル測定部11によって、S−SCHが検出された周辺セルにおける電波の受信状態の測定が行われる(S04、周辺セル測定ステップ)。周辺セルの受信状態の測定は、当該周辺セルにおける報知情報を受信して、その受信電力を測定することによって行われる。測定された受信状態を示す情報は、当該周辺セルのセルIDと共に記憶部13及びセル移行部12に出力される。
【0046】
続いて、記憶部13によって、周辺セル測定部11から入力された情報に基づいて、電波の受信状態に応じた周辺セル毎の優先度を示す情報が当該周辺セルのセルIDと共に周辺セル情報として記憶される(S05、記憶ステップ)。具体的には、上述したように図4に示すような周辺セルの電波の受信状態を示す情報から、図5に示す各周辺セルの優先度が決定されて記憶される。また、このタイミングで、図5の表の最も右の欄に示される直近の在圏時刻の情報が、在圏セルのセルIDに対応付けられて記憶される。また、各周辺セルについて、P−SCHの検出によって得られたタイミング情報も記憶される。なお、上述したフローでは、1つの周辺セルしか受信状態を示す情報が得られていないが、後述するようにセル移行が実際に行われるまで周辺セルの受信状態を示す情報が引き続き取得されるため、図4に示すような複数の周辺セルの受信状態を示す情報が得られる。
【0047】
その一方で、セル移行部12によって、周辺セル測定部11から入力された周辺セルにおける電波の受信状態を示す情報に基づいて、当該周辺セルにセル移行を行うか否かが判断される(S06、セル移行ステップ)。この判断は、従来のセル移行時の方法と同様に行われる。セル移行を行うと判断された場合には、セル移行部12によって、当該周辺セルにセル移行する処理が行われる(S07、セル移行ステップ)。即ち、在圏するセルが、当該周辺セルに変更される。
【0048】
S06において、セル移行を行わないと判断された場合には、セル移行部12から周辺セル測定部11にその旨が通知され、周辺セル測定部11によって、再度、周辺セルのS−SCHの検出処理が行われる(S03、周辺セル測定ステップ)。ここで、S−SCHを検出する処理は、S02においてP−SCHが検出された周辺セルのうち先にS−SCHを検出した周辺セルとは異なる周辺セルに対して行われる。S−SCHの検出に続いて、上記のS04〜S07の処理が上記と同様に行われる。
【0049】
上述した処理により、S07のセル移行前に在圏していたセルに対応する周辺セル情報が記憶されることとなる。次にこのセルに在圏した場合には、S01における判断で、移動機10が在圏している在圏セルに対応する周辺セル情報が記憶されていると判断される。この場合には、続いて、測定制御部14によって、周辺セル情報が取得され、当該周辺セル情報で示される優先度(順序)で周辺セルにおける電波の受信状態を測定するように制御される(S08、測定制御ステップ)。この制御は、周辺セル測定部11に対して、受信状態の測定を行う周辺セルの優先度(順序)を通知することによって行われる。また、この際、記憶部13によって記憶された各周辺セルにおいてP−SCHを検出することによって得られたタイミング情報も取得されて、周辺セル測定部11に出力される。
【0050】
続いて、当該制御を受けた周辺セル測定部11によって、測定制御部14から入力されたP−SCHを検出することによって得られた情報が用いられて、最も優先度の高い(最も順序が早い)周辺セルのS−SCHの検出が行われる(S03、周辺セル測定ステップ)。また、それ以降の処理は、上述した情報と同様に行われる。但し、次に電波の受信状態の測定が行われる場合には、次に順序が早い(次に優先度の高い)周辺セルのS−SCHの検出が行われる。
【0051】
なお、本処理では、周辺セル情報が記憶されている場合には、P−SCHの検出によって得られたタイミング情報を用いて、S−SCHの検出から行うこととしている。しかしながら、S−SCHの検出によって得られるタイミング情報をセルIDに対応付けて記憶しておき、それを利用して周辺セルの受信状態の測定から行うこととしてもよい。あるいは、タイミング情報を記憶せずに、周辺セル情報が記憶されている場合でも、P−SCH検出処理から行うこととしてもよい。その場合では、P−SCHが検出された周辺セルのうち最も優先度の高いセルから受信状態の測定を行う。以上が、本実施形態に係る移動機10で実行される処理(セル移行制御方法)である。
【0052】
上述したように本実施形態では、過去に測定されたセル移行先の候補となる周辺セルにおける電波の受信状態に応じた優先度でセル移行のための電波の受信状態の測定が行われる。これにより、過去に測定された受信状態が望ましい(受信電力が強い)セルほど早く電波の受信状態の測定が行われる。これによって、より早くセル移行が可能なセルを見つけ出すことができ、効率的なセル移行が可能となる。即ち、セルサーチの時間を短縮することができる。これによって、電力の消費を低減でき、連続待ち受け時間を長くすることができる。結果、ユーザの利便性を向上させることができる。例えば、自宅、オフィス等にフェムトセルが設置してある場合、フェムトセルへ在圏するまでの時間を短縮できる。時間にすると数10msec〜数secの時間短縮となる。この時間短縮は、電池持ちへ大きな影響を及ぼす。
【0053】
また、上記のように本実施形態では、過去の電波の受信状態に応じて優先度が決まるので、過去に実際にセル移行したセル以外のセルでも実際にセル移行が可能(在圏可能)である可能性が高いセルにおける電波の受信状態の測定が行われる。従って、本実施形態によれば、過去にセル移行したセルが検出できない場合や過去にセル移行したセルがセル移行に適さないもの等であっても効率的なセル移行を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態のように記憶部13が、セルに在圏後に一定の時間(例えば、1週間)が経過した後に記憶した情報を削除することとすれば、参照する可能性が低い情報を削除して移動機10において記憶しておく情報の量の増加を防止することができる。但し、記憶容量が十分にある場合等には、必ずしも情報を削除する必要がない。
【0055】
また、本実施形態のようにP−SCHやS−SCHを検出することによって得られる、信号を受信するためのタイミング情報(例えば、シンボル同期、無線フレーム同期)を記憶しておき、次の受信状態の測定に用いることとすれば、受信状態の測定までの時間を低減することができ、更に効率的なセル移行を行うことができる。
【0056】
なお、本実施形態では、LTEを例として、周辺セルの検出をP−SCH及びS−SCHの検出によって行うものとしていた。しかしながら、WCDMAのように報知情報に周辺セルを示す情報が含まれており、報知情報から周辺セルの検出を行う移動体通信網であっても本発明を適用することができる。その場合、報知情報に含まれる情報によって示される周辺セルについて、過去の受信環境に応じて優先付けして受信状態の測定を行うことができる。
【0057】
また、本発明に係るセル移行は、待ち受け中及び通信中何れにも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10…移動機、11…周辺セル測定部、12…セル移行部、13…記憶部、14…測定制御部、101…CPU、102…RAM、103…ROM、104…操作部、105…無線通信部、106…ディスプレイ、107…アンテナ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルに在圏して移動体通信を行う移動機であって、
セル移行先の候補となるセルを検出して、検出したセルにおける電波の受信状態を測定する周辺セル測定手段と、
前記周辺セル測定手段によって測定された前記電波の受信状態に基づいて、前記検出したセルからセル移行先を決定して、決定したセル移行先のセルにセル移行するセル移行手段と、
前記周辺セル測定手段によって測定された電波の受信状態に応じた前記検出したセル毎の優先度を示す情報と共に、在圏セルに対応付けて前記検出したセルを示す情報を記憶する記憶手段と、
セル移行を行う際に、前記記憶手段によって在圏セルに対応付けて前記検出したセルを示す情報が記憶されているか否かを判断して、記憶されている場合に、前記周辺セル測定手段に対して、前記記憶手段によって記憶された優先度でセル移行先の候補となるセルにおける前記電波の受信状態を測定するように制御する測定制御手段と、
を備える移動機。
【請求項2】
前記記憶手段は、在圏セルに対応付けて前記検出したセルを示す情報を当該在圏セルに在圏した時刻と共に記憶し、記憶した時刻から所定の時間が経過していた場合には当該在圏セルに対応付けて記憶したセルを示す情報を削除することを特徴とする請求項1に記載の移動機。
【請求項3】
前記周辺セル測定手段は、前記セル移行先の候補となるセルの検出処理の一つとして、前記セルにおける信号が出力されるタイミングを示すタイミング情報を検出して、
前記記憶手段は、前記検出したセルに対応付けて、前記周辺セル測定手段によって検出された前記タイミング情報を記憶し、
前記測定制御手段は、前記記憶手段によって記憶された前記タイミング情報を利用してセルにおける前記電波の受信状態を測定するように制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動機。
【請求項4】
セルに在圏して移動体通信を行う移動機によるセル移行制御方法であって、
セル移行先の候補となるセルを検出して、検出したセルにおける電波の受信状態を測定する周辺セル測定ステップと、
前記周辺セル測定ステップにおいて測定された前記電波の受信状態に基づいて、前記検出したセルからセル移行先を決定して、決定したセル移行先のセルにセル移行するセル移行ステップと、
前記周辺セル測定ステップにおいて測定された電波の受信状態に応じた前記検出したセル毎の優先度を示す情報と共に、在圏セルに対応付けて前記検出したセルを示す情報を記憶する記憶ステップと、
セル移行を行う際に、前記記憶ステップにおいて在圏セルに対応付けて前記検出したセルを示す情報が記憶されているか否かを判断して、記憶されている場合に、前記記憶ステップにおいて記憶された優先度でセル移行先の候補となるセルにおける前記電波の受信状態を測定するように制御する測定制御ステップと、
を含むセル移行制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−191258(P2012−191258A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50599(P2011−50599)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】