説明

移動端末装置及び同装置における受信制御方法

【課題】あるチャネル(第2チャネル)の受信処理に必要な情報を別のチャネル(第1チャネル)で伝送する、HSDPA伝送方式などにおいて、当該第1チャネルが正常に受信できない場合でも、前記第2チャネルを受信できるようにする。
【解決手段】第1チャネルの受信処理を行なうとともに第2チャネルの受信処理に関連した情報を取得する第1チャネル受信処理手段2と、前記情報を用いて前記第2チャネルの受信処理を行なう第2チャネル受信処理手段3と、前記情報を保持する保持手段6と、第2チャネル受信処理手段3が、保持手段6に保持された前記情報を用いて、新たに受信する第2チャネルの受信処理を実施すべく、各チャネル受信処理手段2,3及び保持手段6を制御する受信制御手段12とをそなえて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末装置及び同装置における受信制御方法に関し、例えば、移動通信システムにおける伝送方式の一つであるHSDPA(Hi-Speed Downlink Packet Access)伝送方式を採用したシステムに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)で、第3世代移動通信システムの1つの方式であるW−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式の標準化が行なわれている。そして、標準化のテーマの1つとして下りリンクで最大約14Mbpsの伝送速度を提供するHSDPAが規定されている。
HSDPAでは、適応符号化変調方式を採用しており、例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調方式と16値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式とを基地局、移動端末装置(以下、移動局ともいう)間の無線環境に応じて適応的に切り換えることを特徴としている。
【0003】
また、HSDPAは、H−ARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)方式を採用している。H−ARQは、移動局が基地局からの受信データについて誤りを検出した場合に、移動局からの要求により基地局からデータの再送が行なわれ、移動局は、既に受信済みのデータと、再送された受信データとの双方を用いて誤り訂正復号化を行なうことで特徴付けられる。このようにH−ARQでは、誤りがあっても既に受信したデータを有効に利用することで、誤り訂正復号の利得を高め、再送回数を抑えている。
【0004】
HSDPAに用いられる主な無線チャネルには、HS−SCCH(High Speed-Shared Control Channel)、HS−DSCH(High Speed-Downlink Shared Channel)、HS−DPCCH(High Speed-Dedicated Physical Control Channel)がある。
HS−SCCH、HS−DSCHは、双方とも下り方向(即ち、基地局から移動局への方向)の共通チャネルであり、HS−SCCHは、HS−DSCHにて送信するデータに関する各種パラメータ(L1情報)を送信する制御チャネルである。各種パラメータとしては、例えば、どの変調方式を用いてHS−DSCHによりデータを送信するかを示す変調タイプ情報や、拡散符号の割当て数(コード多重数)、HS−DSCHのプロセス番号、送信データが再送分であるかどうかを示すための再送/新規インジケータ、送信データに対して行なうレートマッチングのパターン等の情報が挙げられる。
【0005】
また、HS−SCCHでは、複数の拡散符号(例えば4つ)を利用して複数の移動局に対して同時に制御信号を送信可能であり、移動局では、UE−ID(User Equipment - IDentity)により、上記複数のHS−SCCHのうち、自局宛のHS−SCCHを判定することができるようになっている。
一方、HS−DPCCHは、移動局から基地局への方向である上り方向の個別の制御チャネルであり、HS−DSCHを介して受信したデータの受信可、否に応じてそれぞれACK信号、NACK信号を移動局が基地局に対して送信する場合に用いられる。なお、移動局がデータの受信に失敗した場合、例えば、受信したデータがCRC(Cyclic Redundancy Check)エラーである場合等は、NACK信号が移動局から送信されるので、基地局は再送制御を実行することとなる。
【0006】
その他、HS−DPCCHは、基地局からの受信信号の受信品質(例えばSIR:Signal to Interference Ratio)を測定した移動局が、その結果をCQI(Channel Quality Indicator)として基地局に送信するためにも用いられる。基地局は、受信したCQIにより、下り方向の無線環境の良否を判断し、良好であれば、より高速にデータを送信可能な変調方式に切り換え、逆に良好でなければ、より低速にデータを送信する変調方式に切り換える(即ち、適応変調を行なう)。
【0007】
HSDPAにおいて、データ量の少ないHS−DSCHデータは、データ量の多いデータに比べて、レートマッチング前後の比率が小さくなり、伝送特性が良くなる傾向にある。
即ち、ここでいう、「レートマッチング前後の比率」とは、例えば図9に模式的に示すように、送信側(基地局)におけるレートマッチング処理に関し、レートマッチング前後の比率=情報ビット長÷レートマッチング後のビット長、という関係式で表されるものであり、この「レートマッチング前後の比率」の値が小さいほど、少ない情報を大きなビット長の送信データに冗長して送信するために1ビット当たりの送信電力比率が高くなり、伝送特性が良くなるのである。
【0008】
これに対し、HS−SCCHにおけるデータは、送信する際の情報ビット数が一定であるため、SIRが小さい通信環境では、上述のCQIに基づいた送信制御を行なったとしても、伝送効率はほぼ改善されずに悪いままである。
このため、下記特許文献1には、HS−SCCHの受信状態が劣化した場合に、HS−SCCHの送信パワーを上げることが開示されている。
【0009】
また、下記特許文献2には、移動局から送信されてくるCQIにオフセットを加えて調整することにより、HS−DSCHのBLERを一定にするような、移動局側における送信制御が開示されている。
さらに、下記特許文献3には、移動局から基地局に対する制御情報を効率よく送信することが開示されている。
【0010】
また、下記非特許文献1には、上記従来技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−312530号公報
【特許文献2】特開2005−318470号公報
【特許文献3】特開2002−369258号公報
【非特許文献1】3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Physical layer procedures (FDD) (Release 7) (3GPP TS 25.214 V7.0.0 (2006-03))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
HSDPA受信においては、HS−SCCH受信を行ない、その中のパラメータを抽出した上でHS−DSCH受信を行なうが、伝播環境及びHS−SCCH/HS−DSCHの符号化方式の相違などにより、HS−SCCHは受信できないが、HS−DSCHが受信できる環境が想定され、HS−DSCHの取りこぼしが生じるという課題がある。
以下、課題およびその周辺技術について説明する。
【0012】
〔1〕 HSDPAにおけるチャネル構成及びそのタイミング関係
図4は、HSDPAにおけるチャネル構成及びそのタイミング関係を示す図である。なお、W−CDMAは、符号分割多重方式を採用するため、各チャネルは符号により分離されている。また、図示しないが、移動局においてチャネル推定、セルサーチ、同一セル内における他の下り物理チャネルのタイミング基準として利用されるチャネルであり、いわゆるパイロット信号を送信するためのチャネルであるCPICH(Common Pilot Channel)、や、報知情報を送信するためのチャネルであるP−CCPCH(Primary Common Control Channel)も設けられている。
【0013】
図4に示すように、各チャネルは、15個のスロットにより1フレーム(10ms)を構成している。
ここで、HS−DSCHのフレームの先頭は、HS−SCCHに対して2スロット遅延しているが、移動局がHS−SCCHを介して変調方式情報を受信してから、受信した変調方式に対応する復調方式でHS−DSCHの復調を行なうことを可能にするためである。また、HS−SCCH、HS−DSCHは、3スロットで1サブフレームを構成している。
【0014】
HS−DPCCHは、上り方向のチャネルであり、その第1スロットは、HS−DSCHの受信から約7.5スロット経過後に、HS−DSCHの受信結果を示すACK/NACK信号を移動局から基地局に送信するために用いられる。また、第2、第3スロットは、適応変調制御のためのCQI情報を定期的に基地局にフィードバック送信するために用いられる。ここで、送信するCQI情報は、CQI送信の4スロット前から1スロット前までの期間に測定した受信環境(例えば、SIR測定結果)に基づいて生成される。
【0015】
〔2〕 HS−SCCHで送信されるデータの内容及び符号化手順
HS−SCCHで送信されるのは、例えば次の(1)〜(7)に示すデータである。各データは、主に、対応する(2スロット遅れの)HS−DSCHの受信処理に用いられる。
(1)Xccs(Channelization Code Set information)
(2)Xms(Modulation Scheme information)
(3)Xtbs(Transport Block Size information)
(4)Xhap(Hybrid ARQ Process information)
(5)Xrv(Redundancy and constellation Version)
(6)Xnd(New Data indicator)
(7)Xue(User Equipment identity)
ここで、(1)のXccsは、HS−DSCHでデータを送信する際に用いる拡散符号を示すデータ(例えば、マルチコード数とコードオフセットの組み合わせを示すデータ)で、7ビットで構成される。
【0016】
(2)のXmsは、HS−DSCHで用いる変調方式がQPSK、16値QAMのいずれかであることを示すデータで1ビットで構成される。
(3)のXtbsは、HS−DSCHで伝送されるデータのトランスポートブロックサイズ(HS−DSCHの1サブフレームで送信するデータサイズ)を算出するために用いられるデータで、6ビットで構成される。
【0017】
(4)のXhapは、H−ARQのプロセス番号を示すデータで、3ビットで構成される。
基地局は、ACK信号,NACK信号を受信するまでは移動局において先に送信したデータの受信可否の判断ができないが、ACK信号、NACK信号を受信するまで次の新規のデータの送信を待つと伝送効率が低下するため、ACK信号、NACK信号の受信前に次の新規パケットを送信する。
【0018】
しかし、移動局においては、H−ARQを採用するため、再送がなされた場合に、既に受信しているどのデータと合成すべきかを認識する必要がある。そこで、サブフレームで送信するデータの各々にプロセス番号(例えば、0,1,・・・,7の最大8)を定義し、プロセス番号が同一番号を示す場合に、対応するHS−DSCHのデータどうしを合成可能としている。逆にいうと、移動局が、前回のHS−DSCHのデータ受信によりCRCチェックを行ない、NACK信号を基地局に送信し、基地局から再送データを受信するまでに、最短でも6TTI(Transmission Time Interval)(ここで、1TTI=2ms)要するため、6TTI未満の時間では再送データの合成を行なってはならないことになる。
【0019】
(5)のXrvは、HS−DSCHの再送時におけるレートマッチングパターン、コンスタレーション再配置の種別を示すデータで、3ビットで構成される。
(6)のXndは、HS−DSCHの送信ブロックが新規ブロックか再送ブロックかを示すデータで、1ビットで構成される。なお、HS−DSCHの送信ブロックが新規ブロックである場合は、上述のH−ARQ処理は行なわれない。
【0020】
(7)のXueは、移動局の識別情報を示すデータで、16ビットで構成される。
〔3〕 符号化(復号化)処理
図5は、上記データの流れを模式的に示す図である。図5において、100が基地局(BTS:Base Transceiver Station)を示し、200が移動端末装置(MS:Mobile Station)を示している。なお、移動端末装置200を単に移動局200ということがある。
【0021】
この図5に示す基地局100は、その要部に着目すると、例えば、CRC付加部101と、ターボ符号化部102と、1stレートマッチング部103と、バーチャルIR(Virtual Incremental Redundancy)バッファ104と、2ndレートマッチング部105と、物理CH(チャネル)マッピング部106とをそなえて構成される。
このような構成を有する基地局100では、移動局200宛の送信データが、CRC付加部101に入力され、CRCチェック用のCRC符号を付加される。次いで、上記送信データは、ターボ符号化部102に入力されて、誤り訂正符号化処理(ここではターボ符号化処理)が施される。
【0022】
そして、ターボ符号化された送信データは、1stレートマッチング部103により、後段のバーチャルIRバッファ104の所定領域に収まるデータ量となるように、所定のアルゴリズムにより所定ビットを削除するパンクチャ(間引き)処理や、所定ビットを繰り返すことによるレピテッション処理が施されて、データ量の調整が行なわれた上で、バーチャルIRバッファ104にタイミング調整のために一時的に保持される。
【0023】
その後、バーチャルIRバッファ104から送出された送信データは、2ndレートマッチング部105により、後段の物理CHマッピング部106でのマッピング(割り当て)対象の物理チャネルの1サブフレーム内に収容できるデータ量となるように、パンクチャ処理やレピテッション処理などを施されて、データ量の調整が行なわれた上で、物理CHマッピング部106に入力される。
【0024】
そして、物理CHマッピング部106では、2ndレートマッチング部105によりデータ量の調整された送信データを物理チャネルにマッピングし、マッピングされた送信データは、図示しない送信アンテナを通じて移動局200に向けて送信される。
一方、移動局200は、その要部に着目すると、例えば、物理CH(チャネル)分離部107と、2ndレートデマッチング部108と、バーチャルIRバッファ109と、1stレートデマッチング部110と、ターボ復号化部111と、CRCチェック部112とをそなえて構成される。
【0025】
かかる構成を有する移動局200では、基地局100から送信された信号が図示しない受信アンテナを通じて物理CH分離部107へ入力され、物理CH分離部107にて受信物理チャネルが識別、分離(デマッピング)されて、有効データが抽出され、2ndレートデマッチング部108に入力される。
次いで、2ndレートデマッチング部108では、送信側(基地局100)における2ndレートマッチング部105により施されたレートマッチング処理(パンクチャ処理やレピテッション処理によるデータ量調整)とは逆の処理に対応したレートデマッチング処理(データ量調整)を受信データに施す。当該レートデマッチング処理後の受信データは、バーチャルIRバッファ109にタイミング調整のために一時的に保持されたのち、1stレートデマッチング部110に入力される。
【0026】
1stレートデマッチング部110では、上記バーチャルIRバッファ109からの受信データについて、送信側(基地局100)における2ndレートマッチング部105によるレートマッチング処理(パンクチャ処理やレピテッション処理)とは逆の処理に対応するレートデマッチング(データ量調整)を施す。
当該レートデマッチング処理された受信データは、ターボ復号化部111により、ターボ復号(誤り訂正復号)され、次いで、CRCチェック部112により、CRCチェック処理を施され、既述のように、そのCRCチェック結果が正常(OK)であればACK信号が、異常(NG)であればNACK信号がそれぞれ基地局100へ送信されることになる。
【0027】
〔4〕 データ復調/復号処理
図6はHS−SCCH及びHS−DSCHの受信タイミング及び各種処理タイミングを示す図である。なお、説明を簡単にするために、プロセス番号「1」(Process No. 1)のデータについてのみ図示しているが、他のプロセス番号のデータについても同様である。なお、図6では、プロセス番号は「0」〜「5」の繰り返しとしている。
【0028】
まず、例えば、プロセス番号「1」のスロット番号#0〜#2において、移動局200が基地局100から送信されたHS−SCCHを受信し、HS−SCCHの前半部に含まれるXueを抽出して、このHS−SCCHが自局200宛のものであるかどうかをプロセス番号「1」のスロット番号#1において判定する。そして、自局200宛のHS−SCCHであれば、移動局200は、当該受信HS−SCCHの後半部から、変調方式、コード多重数パラメータなどのHS−DSCH復調用のパラメータと、トランスポートブロックサイズ、レートマッチングパラメータなどのHS−DSCH復号用の各種パラメータとを抽出して、次のプロセス番号「2」のスロット番号#0において、前記HS−SCCHの受信から2スロット遅れで受信されるHS−DSCHについての復調及び復号設定を行なう。
【0029】
そして、前記HS−SCCHの受信開始から2スロット遅れて、即ち、プロセス番号「1」のスロット番号#2〜プロセス番号「2」のスロット番号#1において、HS−DSCHが受信されると、移動局200は、次のプロセス番号「3」のスロット番号#0において、前記HS−DSCH復調設定に従って、当該受信HS−DSCHの復調処理を行ない、また、ターボ復号化部111により、前記HS−DSCH復号設定に従って、当該受信HS−DSCHの復号処理を行なうのである。
【0030】
このとき、復号されたHS−DSCHのCRCチェック部112によるCRCチェック結果が正常であれば、移動局200は、基地局100に対してACK信号を送信し、そうでない場合は、基地局100に対してNACK信号を送信し、HS−DSCHの再送要求を行ない、その後、基地局100から送信される再送データとバーチャルIRバッファ109に保持済みのデータとを合成する処理(H−ARQ合成)を行なう。
【0031】
〔5〕 H−ARQ合成処理
図7(a)は再送データを正常に受信できた場合のH−ARQ処理を説明する図であり、図7(b)は再送データを正常に受信できなかった場合のH−ARQ処理を説明する図で、ここでも、プロセス番号は「0」〜「5」の繰り返しとしている。
まず、図7(a)に示すように、移動局200が、基地局100から再送データを正常に受信できた場合について説明する。
【0032】
移動局200で、例えば、プロセス番号「0」(Process No. 0)のHS−DSCHデータを受信すると、上述したように、当該受信データに対して、復調/復号化処理及びCRCチェックが行なわれる。そして、CRCチェック部112により、CRCチェックの結果が異常であると判定された場合、移動局200は、基地局100に対してHS−DPCCHによりNACK信号をHS−DSCHの受信完了から7.5スロット後のタイミング(プロセス番号「3」の1.5スロット目のタイミングに相当)にて送信する。
【0033】
当該NACK信号を受信した基地局100は、例えばレートマッチングパターンを変えた送信データ(プロセス番号「0」の再送データ)をHS−DSCHにより再送し、移動局200では、バーチャルIRバッファ109に保持済みの受信データと当該再送データとを次の周期の同じプロセス番号「0」のタイミングで合成してターボ復号化処理を行なう。なお、プロセス番号「1」(Process No. 1)の受信データについても、図7(a)中に点線で示すごとく同様の方法でH−ARQ合成処理が行なわれる。
【0034】
このように、HSDPAにおける移動局200では、同一プロセス番号の処理タイミング(周期)で受信済みのHS−DSCHデータと再送データとを合成することで、再送データがどの受信済みデータに対応するものかを特別な処理を用いて識別することなく、対応するHS−DSCHのデータどうしを合成することが可能となり、これにより、基地局100は、移動局200からACK信号,NACK信号を受信する前に次の新規パケットを送信することができ、伝送効率の低下を抑制するとともに、正確な合成処理を実現している。
【0035】
〔6〕 データ受信時の課題
ところで、例えば、基地局100と移動局200との間の伝播環境の悪化などにより、NACK信号が基地局100で正常に受信できず、基地局100から再送データ(ここでは、プロセス番号「0」の再送データ)が送信されない場合や、移動局200において前記再送データを受信できない場合もある。
【0036】
例えば図7(b)に示すように、移動局200において、プロセス番号「0」の再送データを受信できなかった場合を想定する。
このような場合、移動局200は、本来再送データを合成処理するはずのプロセス番号「0」のタイミングでは合成処理を行なわず、その後に、再送データを正常に受信できた後の同じプロセス番号「0」のタイミングで合成処理を行なうことになる。なお、所定の閾値を設けておいて、再送データを正常に受信できるまでの時間が前記所定の閾値を超えた場合は、そのデータについては、合成処理をあきらめるようにすることもできる。
【0037】
この図7(b)において、プロセス番号「1」に対応するデータについては、再送データを正常に受信できているので、図7(a)のときと同様に、次の周期のプロセス番号「1」のタイミングで再送データとの合成処理が行なわれる。
次に、図8を用いて、CQIを用いた送信制御について説明する。図8は、CQIと、トランスポートブロックサイズ,コード多重数(1〜5)及び変調方式(QPSK,16−QAM)などのパラメータとが対応付けられたCQIマッピングテーブルを示す図である。
【0038】
基地局100は、前記CQIマッピングテーブルに基づいて、CQIの値に応じた送信パラメータとなるようにHS−DSCHのフォーマットを変更し、データを送信するようになっている。ここで、CQIの値とデータ総量との関係について着目すると、CQIの値が小さいほどデータ総量が少なく、また、CQIの値が大きいほどデータ総量が多いことが分かる。
【0039】
ところで、HS−SCCH,HS−DSCHともに、基地局100がデータを送信する際の送信電力値は常に一定であるが、基地局100と移動局200との位置関係(距離など)により、複数の移動局200において認識される見かけ上の送信電力値はそれぞれ異なる。そこで、移動局200において認識される基地局100からの送信電力値の指標として一般的にSIRが用いられている。例えば、移動局200が基地局100の近傍に存在する場合、SIRは大きくなり、一方、移動局200が基地局100の遠方に存在する場合、SIRは小さくなるという特性がある。
【0040】
このため、通信効率を向上させるべく、移動局200は、SIRが大きい場合は、基地局100に大きいCQI値を送信することにより、基地局100から送信データをできるだけ多く送信させるようにし、また、SIRが小さい場合は、基地局100に小さいCQI値を送信することにより、基地局100からの送信データ総量を小さくしてより確実にデータを送受信できるようにする。
【0041】
即ち、同じ送信電力値(SIR)であれば、CQI値が小さいほど、より誤りが起きにくく(ブロックエラーレート(BLER:BLock Error Rate)が良く)なり、CQI値が大きいほど、より誤りが起きやすく(BLERが悪く)なるのである。
このようなことに鑑み、3GPPの基本仕様として、スタティック(Static)環境(フェージングなしの環境)において、移動局200で測定されたHS−DSCHのBLERが、10%を超えない(つまり、BLER<0.1)トランスポートブロックサイズ、コード多重数、変調方式に対応するCQI値を、基地局100に対して送信することが定義されている。
【0042】
さらに、HS−DSCHの電力値(PHS-DSCH)と、CPICHの電力値(PCPICH)には次式(1)に示すような関係がある。
HS-DSCH=PCPICH+Γ(Γ:上位指定で固定値) ・・・(1)
この式(1)から分かるように、HS−DSCHの電力値と、CPICHの電力値との間には相関関係があり、CPICHのSIRが高い場合は、HS−DSCHの品質が良くBLERも良くなり、逆に、CPICHのSIRが低い場合は、HS−DSCHのBLERも悪くなる。
【0043】
そこで、CQI値による実際の送信パラメータ制御方法としては、例えば、CQIマッピングテーブルの各CQI値と関連付けされている送信パラメータ(トランスポートブロックサイズ、コード多重数、変調方式など)のそれぞれにおいて、予めスタティック環境でBLER=0.1となるようなSIRを調べておき、そのCQI値とSIRとを対応付けたテーブルを保持しておく。
【0044】
そして、移動局200は、SIRを測定し、前記テーブルから、SIR測定結果に対応するCQI値を基地局100に対して送信し、基地局100は、移動局200から受信したCQI値により、CQIマッピングテーブルから得られるトランスポートブロックサイズ以下のサイズであり、且つ、できるだけ大きなサイズのトランスポートブロックサイズの送信データをHS−DSCHにより移動局200へ送信する。
【0045】
上述した従来技術によれば、HS−SCCHを復号して上記各種パラメータを抽出し、そのパラメータを使用して、HS−DSCHの復調、復号を行なっているが、このときHS−SCCHは、畳み込み符号化されたものを復号しており、また、HS−DSCHは、ターボ符号化されたものを復調、復号化している。これは、HS−SCCHにより伝送されるデータのビット長が比較的短く、HS−DSCHにより伝送されるデータのビット長がまちまちであることに由来する。
【0046】
したがって、HS−DSCHにより伝送されるデータについては、ビット長がまちまちであるため、レートマッチング前後の比率にもばらつきがあるので、特性が良い場合と悪い場合がある(既述のように、レートマッチング前後の比率が小さいほど受信特性が良くなる傾向にある)。
これに対して、HS−SCCHにより伝送されるデータについては、データのビット長が一定であるために、レートマッチング前後の比率にばらつきがない。
【0047】
このため、例えば、あるSIRで、HS−SCCHのレートマッチング前後の比率に対してHS−DSCHのレートマッチング前後の比率がよい(小さい)環境下においては、HS−DSCHについては、正常に受信できる(即ち、受信して復号した場合にCRC結果が正常となる)が、HS−SCCHについては、正常に受信できない(即ち、受信して復号した場合にCRC結果が異常となる)可能性がある。つまり、通常は、HS−DSCHよりもHS−SCCHの方が良好な受信特性となるようにチャネル割当等がなされているが、それぞれのチャネルデータの符号化方式やレートマッチング処理などに起因して、これらの受信特性の優劣関係が逆転する現象が生じうるのである。
【0048】
このような場合、前記CRCチェック結果が異常であるHS−SCCHに対応するHS−DSCHが正常に受信し得るものであったとしても、HS−DSCHの受信処理そのものが行なわれないことになるので、伝送効率の劣化を招くという課題がある。
本発明は、上記のような課題に鑑み創案されたもので、あるチャネル(第2チャネル)の受信処理に関連した情報を別のチャネル(第1チャネル)で伝送する、HSDPA伝送方式などにおいて、当該第1チャネルが正常に受信できない場合でも、前記第2チャネルを受信できるようにして、伝送効率の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0049】
上記の目的を達成するため、本発明では、下記の移動端末装置及び同装置における受信制御方法を用いることを特徴としている。即ち、
(1)本発明の移動端末装置は、基地局装置からの第1チャネルの受信処理を行なうとともに前記基地局装置からの第2チャネルの受信処理に関連した情報を取得する第1チャネル受信処理手段と、第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて前記第2チャネルの受信処理を行なう第2チャネル受信処理手段と、前記第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を保持する保持手段と、前記第2チャネル受信処理手段が、前記保持手段に保持された前記受信処理に関連した情報を用いて、新たに受信する第2チャネルの受信処理を実施すべく、前記の各チャネル受信処理手段及び保持手段を制御する受信制御手段とをそなえたことを特徴としている。
【0050】
(2)ここで、前記受信制御手段は、前記第1チャネル受信処理手段による過去の受信処理結果により定まるタイミングに基づいて、前記第2チャネル受信処理手段による前記受信処理が実施されるように前記制御を行なうようにしてもよい。
(3)さらに、前記保持手段は、前記基地局装置との間の受信品質に応じて変化する前記受信処理に関連した情報と対応付けられた受信品質情報であって、前記基地局装置へ送信した受信品質情報を前記受信処理に関連した情報として保持する受信品質情報保持部として構成されるとともに、前記受信制御手段は、前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報とを対応付けたテーブルと、前記保持手段に保持された前記受信品質情報に対応する前記受信処理に関連した情報を前記テーブルから取得して前記第2チャネル受信処理手段での前記受信処理に用いるべき情報として出力する制御部とをそなえて構成されてもよい。
【0051】
(4)また、前記受信制御手段は、前記基地局装置との間の受信品質を測定する受信品質測定部と、受信品質測定部による測定結果が所定の閾値以下か否かを判定する受信品質判定部とをそなえ、前記制御部は、前記受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値以下であると判定された場合に、前記受信処理に関連した情報を前記第2チャネル受信処理手段へ出力するようにしてもよい。
【0052】
(5)さらに、前記受信制御手段は、前記受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値以下であると判定された場合に、前記第1チャネル受信処理手段による受信処理を停止する第1チャネル受信処理停止制御部をそなえて構成されてもよい。
(6)また、前記受信制御手段は、前記受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値を超えていると判定された場合に、前記第2チャネル受信処理手段が、前記第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて、新規の第2チャネルの受信処理を実施すべく、前記の各チャネル受信処理手段及び保持手段を制御するようにしてもよい。
【0053】
(7)さらに、受信制御手段は、前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報との対応付けについて前記基地局装置との間で予めネゴシエーションするネゴシエーション制御部をそなえて構成されてもよい。
(8)また、本発明の移動端末装置における受信制御方法は、基地局装置からの第1チャネルの受信処理を行なうとともに前記基地局装置からの第2チャネルの受信処理に関連した情報を取得する第1チャネル受信処理過程と、第1チャネル受信処理過程により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて前記第2チャネルの受信処理を行なう第2チャネル受信処理過程と、前記第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を保持する保持過程と、前記第2チャネル受信処理過程において、前記保持過程で保持された前記受信処理に関連した情報を用いて、新たに受信する第2チャネルの受信処理が実施されるように、前記の各チャネル受信処理過程及び保持過程を制御する受信制御過程とを有することを特徴としている。
【0054】
(9)ここで、受信制御過程において、前記第1チャネル受信処理過程による過去の受信処理結果により定まるタイミングに基づいて、前記第2チャネル受信処理過程による前記受信処理が実施されるように前記制御を行なうようにしてもよい。
(10)さらに、保持過程において、前記基地局装置との間の受信品質に応じて変化する前記受信処理に関連した情報と対応付けられた受信品質情報であって、前記基地局装置へ送信した受信品質情報を前記受信処理に関連した情報として保持しておき、前記受信制御過程において、保持過程で保持した前記受信品質情報に対応する前記受信処理に関連した情報を、前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報とを対応付けたテーブルから取得して前記第2チャネル受信処理過程での前記受信処理に用いるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0055】
上記本発明によれば、少なくとも次のいずれかの効果ないし利点が得られる。
(1)移動端末装置は、第1チャネルから抽出した第2チャネルの受信処理に関連した情報(以下、単に「パラメータ」ともいう)を保持し、保持されたパラメータを用いて第2チャネルの受信処理を行なうので、第1チャネルの受信に失敗した場合でも、過去に第1チャネルにより受信、抽出したパラメータに基づいて、新たに(今回)受信する第2チャネルの受信処理を実施することができる。したがって、第2チャネルの取りこぼしを防止して、第2チャネルによるデータ受信効率を改善することができ、ひいては、システム全体の伝送効率の劣化を抑制することが可能となる。
【0056】
(2)また、前記移動端末装置は、過去の第1チャネルの受信処理結果により定まるタイミングに基づいて、第2チャネルの受信処理を行なうので、第1チャネルを受信できない場合であっても、特別なタイミング同定処理などを要求することなく、本来の正常なタイミングで第2チャネルの受信処理を実施することができる。
(3)さらに、前記移動端末装置は、基地局へ送信した受信品質情報と前記パラメータとが対応付けられたテーブルを用いるようにし、前記受信品質情報のみを前記保持手段(受信品質情報保持部)で保持すれば足りるようにすることで、より少ないメモリ容量で第2チャネルの受信処理に必要なパラメータを管理することができる。
【0057】
(4)また、当該移動端末装置は、基地局装置との間の受信品質を測定し、この測定結果と所定の閾値とを比較して、測定結果が前記閾値以下である場合に、前記保持済みのパラメータを用いて第2チャネルの受信処理を行ない、それ以外の場合は、通常の第2チャネルの受信処理を行なうようにする(つまり、過去のパラメータに基づく受信処理と通常の受信処理との選択的な受信処理を実施する)こともでき、この場合は、移動端末装置と基地局装置との間の通信状況に応じた適切な受信処理を適用することが可能となり、さらなる受信特性(伝送効率)の改善が期待できる。
【0058】
(5)さらに、前記移動端末装置は、前記測定結果が前記閾値以下である場合に、第1チャネルの受信処理を停止することもでき、この場合は、第1チャネル受信処理手段への電力供給を停止して、消費電力を抑制することができる。
(6)また、前記移動端末装置は、前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報との対応付けについて基地局装置との間で予めネゴシエーションしておくこともでき、基地局装置が前記受信品質情報に対してそれ以下の受信品質情報に対応する前記受信処理に関連した情報で第1チャネルの送信を行なう場合でも、これを回避して、より確実に、第2チャネルの取りこぼしを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
〔A〕一実施形態の説明
図1は、本発明の一実施形態に係る移動端末装置(以下、移動局という)の要部の構成を示すブロック図である。この図1において、移動局1は、図示しない基地局装置(BTS)と無線により通信(ダウンリンクについてはHSDPAによる通信)を行なうもので、例えば、HS−SCCH受信部2と、HS−DSCH受信部3と、CQIメモリ6と、受信制御部7と、HS−DPCCH送信部14と、HS−SCCHパラメータ受け渡しスイッチ15とをそなえて構成される。
【0060】
ここで、HS−SCCH受信部(第1チャネル受信処理手段)2は、基地局装置(以下、単に「基地局」という)から送信される制御チャネルであるHS−SCCH(第1チャネル)の受信処理(復調、復号など)を行なうもので、具体的には、HS−SCCHの受信信号を復調、復号してその復号結果から、データチャネルであるHS−DSCH(第2チャネル)の受信処理(復調及び復号処理など)に必要な情報(プロセス番号、再送/新規インジケータ、トランスポートブロックサイズ、コード多重数、変調方式、レートマッチングパラメータなどの各種パラメータ)を抽出(取得)できるようになっている。
【0061】
HS−DSCH受信部3は、基地局からのHS−DSCHの受信信号について、前記HS−SCCH受信部2により抽出された前記パラメータを用いて、HS−DSCHの受信処理を行なうものであり、このために、HS−DSCH復調部4と、HS−DSCH復号部5とをそなえて構成される。
HS−DSCH復調部4は、例えば、変調方式、コード多重数に関するパラメータを用いてHS−DSCHの受信信号について復調処理を行なうものであり、HS−DSCH復号部5は、例えば、プロセス番号、再送/新規インジケータ、トランスポートブロックサイズ、レートマッチング受信処理に関連したパラメータを用いてHS−DSCHの受信信号について復号処理を行なうものである。
【0062】
HS−DPCCH送信部14は、前記HS−DSCH受信部3によるHS−DSCHの受信信号の受信処理結果(例えば、CRCチェック結果)が正常(OK)であればACK信号を、異常(NG)であればNACK信号をHS−DPCCHにより基地局に対して送信するとともに、後述するSIR測定部8によるHS−SCCHの受信SIRの測定結果に応じたCQIをHS−DPCCHにより基地局に対して送信することができるものである。
【0063】
CQIメモリ(保持手段;受信品質情報保持部)6は、上記HS−DPCCH送信部14により基地局へ送信(フィードバック)されたCQI値(CQI報告値)を受信品質情報として保持するものであり、受信制御部7の構成要素であるCQIテーブル11は、例えば図8に示すように、所定範囲のCQI値と、当該CQI値に対する前記各種パラメータ(例えば、トランスポートブロックサイズ,コード多重数,変調方式に関する情報)とを対応付けたデータをマッピングテーブルとして予め保持しておくもので、これらについてはRAM等の所要の記憶装置(CQIメモリ6、CQIテーブル11に専用であってもよいし、移動局1全体で共用でもよい)を用いて実現することができる。
【0064】
つまり、本例では、CQIテーブル11を用意することで、CQIメモリ6にCQI報告値に応じて変化する(つまりは、基地局との間の受信品質(SIR)に応じて変化する)前記各種パラメータそのものを保持するのではなく、CQIテーブル11にて予め当該パラメータとの対応付けがなされている情報(CQI報告値)を保持するだけで、CQIメモリ6に必要な容量を最小限に抑制しつつ、前記各種パラメータを保持していることと等価な構成を実現しているのである。もっとも、CQI値の代わりに前記各種パラメータそのものをCQIメモリ6に保持してもよい(この場合、CQIテーブル11は不用になる)が、メモリ容量削減の観点からは本例のようにCQI値のみを保持するようにした方が好ましい。
【0065】
HS−SCCHパラメータ受け渡しスイッチ15は、前記HS−SCCH受信部2によるHS−SCCHの受信信号の受信処理(復調及び復号処理)結果から得られる前記パラメータと、CQI報告値に基づいて前記CQIテーブル11に保持される前記パラメータとを、HS−DSCHの受信処理(復調及び復号処理など)に必要な前記パラメータとして前記HS−DSCH受信部3に選択的に受け渡すもので、後述するように、SIR測定部8,SIR比較部9,制御部12による、移動局1と基地局との間の受信品質(SIR値)と所定の閾値との比較判定処理結果に基づいて選択的受け渡しが制御されるようになっている。
【0066】
具体的に、本例では、移動局1と基地局との間のSIR値が前記所定の閾値よりも大きい場合には、HS−SCCH受信部2から得られるパラメータをHS―DSCH受信部3に受け渡し、そうでない場合には、CQIメモリ6に保持されるCQI値に対応する過去のHS−SCCHの復号結果(パラメータ)をHS−DSCH受信部3に受け渡すようになっている。
【0067】
受信制御部7は、少なくともHS−SCCH及びHS−DSCHの受信処理を制御するもので、本例では、前記のCQIテーブル11のほか、図1中に示すように、例えば、SIR測定部8と、SIR比較部9と、HS−SCCH受信停止部10と、制御部12と、ネゴシエーション制御部13とをさらにそなえて構成される。
ここで、SIR測定部(受信品質測定部)8は、移動局1と基地局との間の受信品質を測定するもので、例えば、HS−SCCH受信部2により受信されたHS−SCCHの受信信号のSIRを前記受信品質情報として測定するようになっている。なお、SIR測定部8は、当然、HS−DSCHの受信信号のSIRを前記受信品質情報として測定することもできる。
【0068】
SIR比較部9は、前記SIR測定部8によるSIR測定結果が所定の閾値以下かどうかを比較、判定するもので、本例では、前記SIR測定結果が前記閾値以下であれば、HS−SCCH受信停止部10によってHS−SCCH受信部2によるHS−SCCHの受信処理が停止されるようになっている。
HS−SCCH受信停止部10は、前記SIR比較部9による比較の結果、前記SIR測定結果が前記閾値以下である場合、HS−DSCH受信部3では、CQIメモリ6に保持されたCQI値に対応する過去のHS−SCCHの復号結果(パラメータ)に基づく受信処理を実施する(新たに受信する(今回の)受信HS−SCCHの復号結果は不要である)ため、HS−SCCH受信部2の受信処理は停止させる制御を行ない、逆に、前記SIR測定結果が前記所定の閾値よりも大きい場合は、通常通り、HS−SCCH受信部2による本来の受信処理(新たに受信する(今回の)受信HS−SCCHの復号結果(パラメータ)を用いた受信処理)を実施させる制御を行なうものである。なお、HS−SCCH受信部2の受信処理を停止させる場合には、HS−SCCH受信部2への供給電流を断つこともできるので、消費電力を抑制することができる。
【0069】
制御部12は、前記HS−DSCH受信部3による受信処理結果(CRCチェックのOK/NG)をHS−DPCCH送信部14へACK/NACK信号の生成、送信のために提供するなどの、HSDPA方式における標準機能を具備するほか、少なくとも前記のHS−SCCH受信部2,HS−DSCH受信部3,CQIメモリ6及びHS−DPCCH送信部14を制御することにより、HS−SCCH及びHS−DSCHの受信処理(動作モード)を制御、即ち、新たに受信した(今回の)HS−SCCHから取得したパラメータを用いた通常のHS−DSCHの受信処理(これを「通常モード」という)と、CQIメモリ6に保持されたCQI値に対応する過去のパラメータを用いたHS−DSCHの受信処理(これを「過去パラメータ動作モード」という)とを選択制御するもので、そのために、例えば下記の機能を具備している。
【0070】
(1)SIR比較部9により前記SIR測定結果前記閾値以下であると判定された場合に、HS−DSCH受信部3による受信処理を前記過去パラメータ動作モードに設定し、そうでない場合に、HS−DSCH受信部3による受信処理を通常モードに設定するモード設定機能
(2)過去パラメータ動作モード時において、CQIメモリ6に保持されたCQI値に対応するパラメータをCQIテーブル11から表引き(検索)して取得するパラメータ表引き機能
(3)通常モード時において、新たに受信したHS−SCCHから取得されたパラメータを、過去パラメータ動作モード時において、CQIテーブル11から取得した過去のパラメータを、それぞれHS−DSCHの受信処理のためにHS−DSCH受信部3へ提供するパラメータ転送機能
(4)過去パラメータ動作モード時において、HS−SCCH受信停止部10によって、HS−SCCHの受信処理を停止させるHS−SCCH受信処理停止制御機能
(5)前記HS−SCCH受信部2にて過去に受信(復調、復号)に成功した受信処理結果(プロセス番号)から、HS−DSCH受信部3によるHS−DSCHの受信処理タイミング(前述した周期的なプロセス番号)を検出して、HS−DSCH受信部3に与える(通知する)プロセス番号通知機能
なお、上記(4)のHS−SCCH受信処理停止制御機能は、過去パラメータ動作モード時において、HS−SCCH受信処理部2への電力供給を停止して、消費電力を抑制することを目的として装備されるものであって、必須要件ではない(オプションマターである)。
【0071】
ネゴシエーション制御部13は、基地局へのCQI報告値に対して当該基地局からHS−SCCHにより移動局1へ送信すべき前記受信処理に関連した取り決め(ネゴシエーション)を基地局との間で行なうためのものである。なお、当該ネゴシエーション制御部13は、基地局がCQI報告値に対してそれ以下のCQI値に対応するパラメータでHS−SCCHの送信を行なう場合がある(つまり、CQI報告値に対してCQIテーブル11でのパラメータとの対応関係が一致しない場合がある)ため、これを回避して、より確実に、HS−DSCHの取りこぼしを防止できるようにすることを目的として装備されるものであって、必須要件ではない(オプションマターである)。
【0072】
以下、上述のごとく構成された本実施形態の移動局の動作(受信制御方法)について、図2及び図3を用いて説明する。なお、図2はHS−SCCH及びHS−DSCHの受信処理のタイミングについて示したタイミングチャートであり、図3は本受信制御方法の処理フローについて示したフローチャートである。以下ここでは、説明の簡単化のために、プロセス番号「1」の受信データについてのみ説明するが、他のプロセス番号の受信データについても同様の受信制御が行なわれる。
【0073】
まず、受信制御部7は、プロセス番号「1」の受信データの受信処理を開始する前に、HS−SCCH受信部2がHS−SCCHの受信処理を行なうように設定されているかどうか(つまり、動作モードが通常モードか過去パラメータ動作モードか)を判定する(図3のステップS1)。
その結果、例えば、HS−SCCH受信部2がHS−SCCHの受信処理を行なうように設定されている(通常モード)と判定したとすると(図3のステップS1のyesルート)、図2のプロセス番号「1」のスロット番号#0〜#2において、HS―SCCH受信部2が、基地局から送信されたHS−SCCHを受信し(図3のステップS2)、HS−SCCHの前半部に含まれるXueを抽出して、このHS−SCCHが自局1宛のものであるかどうかをプロセス番号「1」のスロット番号#1において判定する(図3のステップS3,S4)。
【0074】
そして、自局1宛のHS−SCCHであれば(図3のステップS4のyesルート)、HS−SCCH受信部2は、当該受信HS−SCCHの後半部から、変調方式、コード多重数パラメータなどのHS−DSCH復調用のパラメータと、トランスポートブロックサイズ、レートマッチングパラメータなどのHS−DSCH復号用の各種パラメータとを抽出して(図3のステップS5,S6)、図2に示す次のプロセス番号「2」のスロット番号#0において、前記HS−SCCHの受信から2スロット遅れで受信されるHS−DSCHについての復調及び復号設定を行なう。なお、このとき抽出されたパラメータは、CQIメモリ6に保持される。一方、自局1宛のHS−SCCHでない場合は(図3のステップS4のnoルート)、HS−SCCH受信部2は、当該HS−SCCHの後半部及び対応するHS−DSCHの受信処理は行なわない(図3のステップS2〜S4)。
【0075】
その後、前記HS−SCCHの受信開始から2スロット遅れて、即ち、図2に示すプロセス番号「1」のスロット番号#2〜プロセス番号「2」のスロット番号#1において、HS−DSCH受信部3によりHS−DSCHが受信されると(図3のステップS8)、本通常モードでは、HS−SCCHパラメータ受け渡しスイッチ15がHS−SCCH受信部2により新たに受信したHS−SCCHから抽出したパラメータをHS−DSCH受信部3に受け渡すように受信制御部7(制御部12)によって制御され、HS−DSCH受信部3は、次のプロセス番号「3」のスロット番号#0において、前記パラメータに従って、当該受信HS−DSCHの復調処理を行ない、また、プロセス番号「3」のスロット番号#0〜プロセス番号「4」のスロット番号#0において、当該受信HS−DSCHの復号処理を行なう(図3のステップS9)。
【0076】
このように、本例の通常モードでは、HS−SCCH受信部2が新たに受信したHS−SCCHから抽出したパラメータが、HS−SCCHパラメータ受け渡しスイッチ15のパラメータ転送機能によりHS−DSCH受信部3に渡されて、対応するHS−DSCHの受信処理を行なう。
その後、SIR測定部8が、例えば、前記HS−SCCH受信部2により受信されたHS−SCCHの受信信号のSIRを、移動局1と基地局との間の受信品質として測定し(図3のステップS10)、さらに、SIR比較部9が、前記SIR測定部8によるSIR測定結果が所定の閾値以下かどうかを比較、判定する(図3のステップS11)。
【0077】
SIR測定結果が前記所定の閾値よりも大きいと判定した場合は(図3のステップS11のnoルート)、受信制御部7(制御部12)は、HS−SCCH受信停止部10の動作モードを通常モードに設定し、それまで通り、HS−SCCH及びHS−DSCH受信処理を行なうようにする(図3のステップS13)。即ち、HS−SCCH受信部2による本来の受信処理(新たに受信する受信HS−SCCHの復号結果(パラメータ)を用いた受信処理)を実施させる制御を行なう。
【0078】
一方、SIR測定結果が前記所定の閾値以下であると判定した場合は(図3のステップS11のyesルート)、受信制御部7(制御部12)は、動作モードを過去パラメータ動作モードに設定し、さらに、HS−SCCH受信処理停止制御機能によって、HS−SCCH受信部2のHS−SCCH受信処理を停止制御する(図3のステップS12)。
このとき、受信制御部7(制御部12)は、HS−SCCHパラメータ受け渡しスイッチ15を制御して、CQIメモリ6に保持されたCQI値に対応する過去のHS−SCCHの復号結果(パラメータ)をHS−DSCH受信部3に渡し、HS−DSCH受信部3では、その過去のHS−SCCHの復号結果(パラメータ)に基づくHS−DSCHの受信処理を実施する。なお、本処理フローの説明においては、SIR測定結果が、前記所定の閾値以下であり、HS−SCCH受信停止部10により、HS−SCCH受信部2のHS−SCCH受信処理が停止された例を前提に以下説明を続けることとする。
【0079】
ここで、HS−DSCH受信部3により復号されたHS−DSCHのCRCチェック部(図示省略)によるCRCチェック結果が正常であれば、HS−DPCCH送信部14が基地局に対してACK信号を送信し、そうでない場合は、基地局に対してNACK信号を送信してHS−DSCHの再送要求を行なう(図3のステップS14)。また、HS−DPCCH送信部14は、新たに受信する(今回の)HS−DSCHの受信処理に基づき、CQI値をCQIメモリ6に保持させる(図3のステップS15)。
【0080】
その後、受信制御部7は、次の受信データの受信処理を開始する前に、HS−SCCH受信部2がHS−SCCHの受信処理を行なうように設定されているかどうか(つまり、通常モードであるかどうか)を再度判定する(図3のステップS1)が、このとき、前回のHS−SCCH受信処理(図2のプロセス番号「1」のスロット番号#0〜#2参照)における、自局1と基地局との間のSIR測定結果が前記所定の閾値以下であったため、既に、動作モードが過去パラメータ動作モードに設定されている(図3のステップS1のnoルート)。
【0081】
即ち、今回も基地局からHS−SCCHのデータが送信されてくるが、HS−SCCH受信部2によるHS−SCCHの受信処理は行なわれない(図2のプロセス番号「1」のスロット番号#0’〜#2’の点線枠部分)。
このように、動作モードが過去パラメータ動作モードである場合、HS−DSCHの復調及び復号処理に必要なパラメータについては、制御部12が、CQIメモリ6に保持された前回のCQI値に対応するパラメータをCQIテーブル11から表引きして取得する(パラメータ表引き機能)。
【0082】
取得した過去のパラメータは、HS−SCCH受け渡しスイッチ15を通じて、それぞれHS−DSCHの受信処理のためにHS−DSCH受信部3へ提供される(図3のステップS7)。
このように、本例の過去パラメータ動作モードでは、前記CQIテーブル11から取得した過去のパラメータが、HS−DSCH受信部3に渡されて、対応するHS−DSCHの受信処理を行なう。
【0083】
その後、制御部12が、前記HS−SCCH受信部2にて過去に受信(復調、復号)に成功した受信処理結果(プロセス番号)から、HS−DSCHの受信処理タイミングを検出して、HS−DSCH受信部3に通知する(プロセス番号通知機能)。
これにより、HS−DSCH受信部3は、HS−SCCH受信部2で通常のHS−SCCH受信処理が行なわれない(動作モードが過去パラメータ動作モードである)場合においても、HS−DSCHのデータの受信タイミングを正確に把握して、正確なHS−DSCH受信処理を行なうことができる。
【0084】
即ち、上記のプロセス番号通知機能は、少なくともHS−SCCH受信処理結果からHS−DSCHの受信タイミングを得ることができない場合に、HS−DSCHの受信信号を受信してから、HS−DPCCHのデータを送信し、再びHS−DSCHの受信信号を受信するまでの間隔、例えば6プロセス周期(プロセス番号「0」〜「5」の繰り返し)での間隔を検出することで容易に各プロセスのタイミング推定をすることができる。
【0085】
なお、上記パラメータの内、例えば再送/新規インジケータについては、同様に6プロセス毎に自局1がACK信号を送信していたか、NACK信号を送信していたかを検出することで容易に判別することができる。即ち、前回(6プロセス前)のHS−DSCH受信処理結果においてCRCチェックが正常で、ACK信号を送信していた場合には、新たに受信する(今回の)HS−DSCH受信信号を新規分とみなし、逆に、前回(6プロセス前)の受信処理結果においてCRCチェックが異常で、NACK信号を送信していた場合には、新たに受信する(今回の)HS−DSCH受信信号を再送分とみなすことができる。
【0086】
さらに、上記パラメータの内、例えばレートマッチングパラメータについても、前記再送/新規インジケータに基づき、新規データの受信であれば組織ビット優先で、再送データの受信であれば組織ビット非優先となるのが一般的であることから容易に推定することが可能となる。
また、例えば、ある時点で、前記SIR比較部9により、前記SIR測定結果が前記所定の閾値を超えたと判定された場合には、モード設定機能により動作モードが通常モードへと移行されて、HS−SCCH受信部2によるHS−SCCH受信処理が再開される。
【0087】
さらに、図3には図示しないが、ネゴシエーション制御部13により、基地局へのCQI報告値に対して当該基地局からHS−SCCHにより移動局1へ送信すべき前記パラメータ(トランスポートブロックサイズ、変調方式、コード多重数など)に関する取り決め(ネゴシエーション)を予め基地局との間で行なうこともできる。
具体的には、ネゴシエーション制御部13が、移動局1と基地局との間で上記HSDPAによる通信が始まる前に、例えば個別制御チャンネル(DCC:Dedicated Control Channel)を使用して、基地局が、移動局1から送信されるCQIに対応するパラメータを一意に決定してHS−DSCHのデータを送信する(CQIテーブル固定ネゴシエーションを行なう)ようにする。
【0088】
これにより、基地局がCQI報告値に対してそれ以下のCQI値に対応するパラメータでHS−SCCHの送信を行なうことを回避することができる(CQIテーブル11との整合性を確保することができる)ので、より確実に、HS−DSCHの取りこぼしを防止できる。
以上、本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0089】
例えば、上記実施形態では、パラメータ表引き機能により、CQIメモリ6に保持されるCQI値とCQIテーブル11とによりパラメータを表引きして、HS−DSCH受信部3にパラメータを提供しているが、過去に受信したHS−SCCHの受信信号から抽出されたパラメータそのものをCQIメモリ6に保持しておき、それを用いてHS−DSCHの受信処理を行なうこともできる。
【0090】
また、前記ネゴシエーションを行なわない場合において、例えば、基地局から移動局1に送信するデータ量が、CQIテーブル11に対応するトランスポートブロックサイズよりも小さい場合、同一セル内のユーザ数の変動などの通信環境の変化によりトランスポートブロックサイズ、変調方式、コード多重数などのパラメータが、CQIテーブル11に対応していないパラメータとなる可能性があるが、その場合でも、CQIテーブル11に対応するトランスポートブロックサイズ、変調方式、コード多重数が確率的に最も高いフォーマットの組み合わせとなるから、大きな問題にはならない。
【0091】
さらに、上記実施形態では、SIR測定結果が所定の閾値を超えたと判定された場合に、モード設定機能により動作モードを通常モードへと切り換えて、HS−SCCH受信部2によるHS−SCCH受信処理を有効にするように制御していたが、HS−SCCH受信処理を初めて実施する場合に動作モードを通常モードへと切り換えるようにすることもできる。また、SIR測定結果には関係なく、定期的に通常モードへと切り換えて(定期的にHS−SCCH受信部2がHS−SCCH受信処理を実施するようにして)、CQIメモリ6やCQIテーブル11の保持内容を定期的に更新することもできる。このようにすれば、CQIメモリ6やCQIテーブル11の保持内容を通信状況の変化に応じて信頼性の高いものにすることができる。
【0092】
また、上記実施形態では、SIR測定結果に基づいて動作モードを切り換えて制御していたが、HS−DSCHのレートマッチング前後の比率に基づいて、動作モードの切り換えを制御することもできる。
即ち、例えば、HS−DSCHのレートマッチング前後の比率が低く、HS−SCCHに比べてHS−DSCHの方が受信に成功する確率が高い状況下でのみ動作モードを過去パラメータ動作モードに切り換えて制御し、逆に、HS−DSCHのレートマッチング前後の比率が高く、HS−SCCHの受信が失敗する確率とHS−DSCHの受信が失敗する確率とが同程度であるような場合には、いずれの動作モードに設定してもよいが、通常モードに設定した場合は、上述したようにCQIメモリ6やCQIテーブル11の保持内容を定期的に更新でき、また、過去パラメータ動作モードに設定した場合は、HS−SCCH受信部2でのHS−SCCH受信処理を停止するので、全体の消費電力をを抑制することができる。
【0093】
ただし、HS−SCCHについては、レートマッチング前後の比率はほぼ一定であるので、単純に基地局と移動局1との間のSIRが低い場合は、HS−SCCHの受信に失敗する確率が大きく、そうでない場合は、HS−SCCHの受信に成功する可能性が大きい。しかしながら、HS−DSCHについては、基地局と移動局1との間のSIRが低く、CQI値が小さい場合、HS−DSCHのレートマッチング前後の比率も低くなり、HS−DSCHの受信に成功する可能性が大きくなるが、逆に、SIRが高く、CQI値が大きい場合には、HS−DSCHのレートマッチング前後の比率も高くなり、HS−DSCHの受信に失敗する可能性が大きくなる。
【0094】
したがって、相対的にSIRが低くCQI値が小さくなるような通信環境においては、積極的にHS−SCCHの受信処理を停止する(動作モードを過去パラメータ動作モードへと切り換える)ことにより、通信システムの伝送効率を向上させることができる。
〔B〕付記
(付記1)
基地局装置からの第1チャネルの受信処理を行なうとともに該基地局装置からの第2チャネルの受信処理に関連した情報を取得する第1チャネル受信処理手段と、
該第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて前記第2チャネルの受信処理を行なう第2チャネル受信処理手段と、
該第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を保持する保持手段と、
該第2チャネル受信処理手段が、該保持手段に保持された前記受信処理に関連した情報を用いて、新たに受信する第2チャネルの受信処理を実施すべく、前記の各チャネル受信処理手段及び保持手段を制御する受信制御手段とをそなえたことを特徴とする、移動端末装置。
【0095】
(付記2)
該受信制御手段が、
該第1チャネル受信処理手段による過去の受信処理結果により定まるタイミングに基づいて、該第2チャネル受信処理手段による前記受信処理が実施されるように前記制御を行なうことを特徴とする、付記1記載の移動端末装置。
【0096】
(付記3)
該保持手段が、
該基地局装置との間の受信品質に応じて変化する前記受信処理に関連した情報と対応付けられた受信品質情報であって、該基地局装置へ送信した受信品質情報を前記受信処理に関連した情報として保持する受信品質情報保持部として構成されるとともに、
該受信制御手段が、
前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報とを対応付けたテーブルと、
該保持手段に保持された前記受信品質情報に対応する前記受信処理に関連した情報を該テーブルから取得して該第2チャネル受信処理手段での前記受信処理に用いるべき情報として出力する制御部とをそなえて構成されたことを特徴とする、付記1又は2に記載の移動端末装置。
【0097】
(付記4)
該受信制御手段が、
該基地局装置との間の受信品質を測定する受信品質測定部と、
該受信品質測定部による測定結果が所定の閾値以下か否かを判定する受信品質判定部とをそなえ、
該制御部が、
該受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値以下であると判定された場合に、前記受信処理に関連した情報を該第2チャネル受信処理手段へ出力することを特徴とする、付記3記載の移動端末装置。
【0098】
(付記5)
該受信制御手段が、
該受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値以下であると判定されると、該第1チャネル受信処理手段による受信処理を停止する第1チャネル受信処理停止制御部をそなえたことを特徴とする、付記4記載の移動端末装置。
【0099】
(付記6)
該受信制御手段が、
該受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値を超えていると判定された場合に、該第2チャネル受信処理手段が、該第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて、新規の第2チャネルの受信処理を実施すべく、前記の各チャネル受信処理手段及び保持手段を制御することを特徴とする、付記4又は5に記載の移動端末装置。
【0100】
(付記7)
該受信制御手段が、
前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報との対応付けについて該基地局装置との間で予めネゴシエーションするネゴシエーション制御部をそなえたことを特徴とする、付記3又は4に記載の移動端末装置。
【0101】
(付記8)
基地局装置からの第1チャネルの受信処理を行なうとともに該基地局装置からの第2チャネルの受信処理に関連した情報を取得する第1チャネル受信処理過程と、
該第1チャネル受信処理過程により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて前記第2チャネルの受信処理を行なう第2チャネル受信処理過程と、
該第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を保持する保持過程と、
該第2チャネル受信処理過程において、該保持過程で保持された前記受信処理に関連した情報を用いて、新たに受信する第2チャネルの受信処理が実施されるように、前記の各チャネル受信処理過程及び保持過程を制御する受信制御過程とを有することを特徴とする、移動端末装置における受信制御方法。
【0102】
(付記9)
該受信制御過程において、
該第1チャネル受信処理過程による過去の受信処理結果により定まるタイミングに基づいて、該第2チャネル受信処理過程による前記受信処理が実施されるように前記制御を行なうことを特徴とする、付記8記載の移動端末装置における受信制御方法。
【0103】
(付記10)
該保持過程において、
該基地局装置との間の受信品質に応じて変化する前記受信処理に関連した情報と対応付けられた受信品質情報であって、該基地局装置へ送信した受信品質情報を前記受信処理に関連した情報として保持しておき、
該受信制御過程において、
該保持過程で保持した前記受信品質情報に対応する前記受信処理に関連した情報を、前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報とを対応付けたテーブルから取得して該第2チャネル受信処理過程での前記受信処理に用いることを特徴とする、付記8又は9に記載の移動端末装置における受信制御方法。
【0104】
(付記11)
該受信制御過程において、
該基地局装置との間の受信品質を測定し、
その測定結果が所定の閾値以下か否かを判定し、
その測定結果が前記閾値以下であると判定された場合に、前記受信処理に関連した情報を該第2チャネル受信処理過程による前記受信処理に用いることを特徴とする、付記10記載の移動端末装置における受信制御方法。
【0105】
(付記12)
該受信制御過程において、
前記測定結果が前記閾値以下であると判定されると、該第1チャネル受信処理過程による受信処理を停止することを特徴とする、付記11記載の移動端末装置における受信制御方法。
【0106】
(付記13)
該受信制御過程において、
前記測定結果が前記閾値を超えていると判定された場合に、該第2チャネル受信処理過程が、該第1チャネル受信処理過程により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて、新規の第2チャネルの受信処理を実施することを特徴とする、付記11又は12に記載の移動端末装置における受信制御方法。
【0107】
(付記14)
該受信制御過程において、
前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報との対応付けについて該基地局装置との間で予めネゴシエーションすることを特徴とする、付記10又は11に記載の移動端末装置における受信制御方法。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動端末装置(移動局)の要部の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る受信制御方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る受信制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】HSDPAにおけるチャネル構成を示す図である。
【図5】基地局における従来の送信処理及び移動端末装置における受信処理を説明するためのブロック図である。
【図6】従来の受信制御方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】(a)は再送データを正常に受信できた場合のH−ARQ処理を説明する図であり、(b)は再送データを受信できなかった場合のH−ARQ処理を説明する図である。
【図8】CQIマッピングテーブルを示す図である。
【図9】HSDPAにおける送信側及び受信側の動作を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0109】
1 移動局
2 HS−SCCH受信部
3 HS―DSCH受信部
4 HS−DSCH復調部
5 HS−DSCH復号部
6 CQIメモリ
7 受信制御部
8 SIR測定部
9 SIR比較部
10 HS−SCCH受信停止部
11 CQIテーブル
12 制御部
13 ネゴシエーション制御部
14 HS−DPCCH送信部
15 HS−SCCHパラメータ受け渡しスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置からの第1チャネルの受信処理を行なうとともに該基地局装置からの第2チャネルの受信処理に関連した情報を取得する第1チャネル受信処理手段と、
該第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて前記第2チャネルの受信処理を行なう第2チャネル受信処理手段と、
該第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を保持する保持手段と、
該第2チャネル受信処理手段が、該保持手段に保持された前記受信処理に関連した情報を用いて、新たに受信する第2チャネルの受信処理を実施すべく、前記の各チャネル受信処理手段及び保持手段を制御する受信制御手段とをそなえたことを特徴とする、移動端末装置。
【請求項2】
該受信制御手段が、
該第1チャネル受信処理手段による過去の受信処理結果により定まるタイミングに基づいて、該第2チャネル受信処理手段による前記受信処理が実施されるように前記制御を行なうことを特徴とする、請求項1記載の移動端末装置。
【請求項3】
該保持手段が、
該基地局装置との間の受信品質に応じて変化する前記受信処理に関連した情報と対応付けられた受信品質情報であって、該基地局装置へ送信した受信品質情報を前記受信処理に関連した情報として保持する受信品質情報保持部として構成されるとともに、
該受信制御手段が、
前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報とを対応付けたテーブルと、
該保持手段に保持された前記受信品質情報に対応する前記受信処理に関連した情報を該テーブルから取得して該第2チャネル受信処理手段での前記受信処理に用いるべき情報として出力する制御部とをそなえて構成されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の移動端末装置。
【請求項4】
該受信制御手段が、
該基地局装置との間の受信品質を測定する受信品質測定部と、
該受信品質測定部による測定結果が所定の閾値以下か否かを判定する受信品質判定部とをそなえ、
該制御部が、
該受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値以下であると判定された場合に、前記受信処理に関連した情報を該第2チャネル受信処理手段へ出力することを特徴とする、請求項3記載の移動端末装置。
【請求項5】
該受信制御手段が、
該受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値以下であると判定されると、該第1チャネル受信処理手段による受信処理を停止する第1チャネル受信処理停止制御部をそなえたことを特徴とする、請求項4記載の移動端末装置。
【請求項6】
該受信制御手段が、
該受信品質判定部にて前記測定結果が前記閾値を超えていると判定された場合に、該第2チャネル受信処理手段が、該第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて、新規の第2チャネルの受信処理を実施すべく、前記の各チャネル受信処理手段及び保持手段を制御することを特徴とする、請求項4又は5に記載の移動端末装置。
【請求項7】
該受信制御手段が、
前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報との対応付けについて該基地局装置との間で予めネゴシエーションするネゴシエーション制御部をそなえたことを特徴とする、請求項3又は4に記載の移動端末装置。
【請求項8】
基地局装置からの第1チャネルの受信処理を行なうとともに該基地局装置からの第2チャネルの受信処理に関連した情報を取得する第1チャネル受信処理過程と、
該第1チャネル受信処理過程により得られた前記受信処理に関連した情報を用いて前記第2チャネルの受信処理を行なう第2チャネル受信処理過程と、
該第1チャネル受信処理手段により得られた前記受信処理に関連した情報を保持する保持過程と、
該第2チャネル受信処理過程において、該保持過程で保持された前記受信処理に関連した情報を用いて、新たに受信する第2チャネルの受信処理が実施されるように、前記の各チャネル受信処理過程及び保持過程を制御する受信制御過程とを有することを特徴とする、移動端末装置における受信制御方法。
【請求項9】
該受信制御過程において、
該第1チャネル受信処理過程による過去の受信処理結果により定まるタイミングに基づいて、該第2チャネル受信処理過程による前記受信処理が実施されるように前記制御を行なうことを特徴とする、請求項8記載の移動端末装置における受信制御方法。
【請求項10】
該保持過程において、
該基地局装置との間の受信品質に応じて変化する前記受信処理に関連した情報と対応付けられた受信品質情報であって、該基地局装置へ送信した受信品質情報を前記受信処理に関連した情報として保持しておき、
該受信制御過程において、
該保持過程で保持した前記受信品質情報に対応する前記受信処理に関連した情報を、前記受信処理に関連した情報と前記受信品質情報とを対応付けたテーブルから取得して該第2チャネル受信処理過程での前記受信処理に用いることを特徴とする、請求項8又は9に記載の移動端末装置における受信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−11444(P2008−11444A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182416(P2006−182416)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】