説明

移動装置

【課題】可動体の移動距離に応じて長尺化した場合でも自重による撓み量を小さくして、テーブルの背を低く設定可能なカバーを備えたコンパクトな移動装置を提供する。
【解決手段】可動体2を所定方向に案内する複数の直動案内4と、その複数の直動案内の間にあって直動案内に沿って可動体を移動させる駆動部6とが基台10に設けられた移動装置であって、駆動部を覆うカバー16,18が可動体の移動方向に沿って設けられており、カバーは、その側部を可動体の移動方向に沿って複数箇所で基台に固定可能に構成されている。この場合、カバーは、相互に着脱自在に連結可能な複数のカバー構成体16k,18kを備えて構成されており、それぞれのカバー構成体は、その側部を可動体の移動方向に沿って所定間隔で基台に固定可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を直動案内に沿って移動させる移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば液晶や半導体などの各種基板の検査や製造に際し、例えば検査用ツールや製造用器具などを搭載可能な可動体を直動案内に沿って移動させる移動装置が知られている。このような移動装置には、装置内部を外界から隔離するために、例えば特許文献1に示すようなカバーを備えて構成される場合がある。その一例として図4(a)〜(c)には、可動体2を直動案内4に沿って移動させるための駆動部6のみをカバー8で覆った移動装置が示されている。なお、直動案内4は可動体2の移動方向両側にそれぞれ設けられており、駆動部6は、相互の直動案内4の間の領域に介在されている。
【0003】
直動案内4は、可動体2の移動方向に沿って延出したガイドレール4aと、ガイドレール4aに沿って摺動自在に設けられた例えば2つのスライダ4bとを備えている。この場合、ガイドレール4aは、基台10の両側に可動体2の移動方向に沿って突設された固定面10s上に固定されており、スライダ4bは可動体2に連結されている。なお特に参照符号は付さないが、ガイドレール4aの両外側には、可動体2の移動方向に沿って延出した図示しない転動体が転動する転動溝が形成されており、一方、スライダ4bの両内側にも図示しない転動体が転動する転動溝が形成されている。そして、スライダ4b内を循環する複数の転動体が、対向するガイドレール4aの転動溝とスライダ4bの転動溝との間を転動可能となっている。これにより、スライダ4bは、ガイドレール4aから外れたり或いは脱落すること無く当該ガイドレール4aに沿って摺動する。
【0004】
また、駆動部6は、可動体2の移動方向に沿って延出したボールねじ6aと、ボールねじ6aに螺合し且つボールねじ6aを回転させることで当該ボールねじ6aに沿って移動可能なナット6b(図1(b))とを備えている。ボールねじ6aは、その両端が図示しない支持部で回転自在に支持されており、支持部は基台10に固定(突設)されている。また、ボールねじ6aの一端側は、図示しないモータの回転軸に接続されており、モータを回転させることでボールねじ6aを所望の回転速度で回転させることができる。また、ナット6bには、フランジ6fが一体成形されており、当該フランジ6fには、ブラケット12が取り付けられている。ブラケット12は、駆動部6を覆っているカバー8や直動案内4のスライダ4bに接触しないように延出し、その延出端部が可動体2の裏面に連結されている。
【0005】
このような構成において、モータを回転させると、その回転運動は、モータの回転軸からボールねじ6aに伝達され、当該ボールねじ6aを回転させる。このとき、ボールねじ6aの回転によりナット6bが当該ボールねじ6aに沿って移動するが、その際の移動力はフランジ6fからブラケット12を介して可動体2に伝達される。この場合、可動体2に固定された各スライダ4bが各ガイドレール4aに沿って摺動することにより、当該可動体2を所定方向に移動させることができる。
【0006】
また、この例の移動装置に用いられたカバー8は、駆動部6のボールねじ6aに沿って延出した長尺の薄板状カバー体8aと、薄板状カバー体8aの両側から下方に延出した壁部8bとを備えて構成されており、両壁部8bの間には、ナット6b及びフランジ6fが通過可能な空間領域が構成されている。このようなカバー8は、薄板状カバー体8aを可動体2と駆動部6との間に介在した状態で、その長手方向両端のねじ穴8cから基台10(或いは、ボールねじ6aの支持部)に対して固定用ねじ(図示しない)を締結することで位置決め固定されている。この状態において、駆動部6(ボールねじ6a、ナット6b)は、その上側が薄板状カバー体8aで覆われると共に、その両側が壁部8bにより覆われ、可動体2を移動させる際、ナット6b及びフランジ6fは、薄板状カバー体8aと両壁部8bとで構成された空間領域を通過する。
【0007】
また、例えば図5(a)〜(c)には、駆動部6及び当該駆動部6の両側に設けられた直動案内4の全体をカバー14で覆った移動装置が示されている。この例の移動装置に用いられたカバー14は、駆動部6及び直動案内4の上側全体を覆う長尺の薄板状カバー体14aと、薄板状カバー体14aの両側から下方に延出した壁部14bとを備えて構成されている。なお、駆動部6及び直動案内4は、上述した移動装置(図4(a),(b))と同様の構成であるため、その説明は省略する。
【0008】
この場合、薄板状カバー体14aには、壁部14bよりも長手方向に突出した突出部14tが設けられており、当該突出部14tの両側にねじ穴14cが形成されている。このようなカバー14は、薄板状カバー体14aを可動体2の上側に位置付けた状態で、各ねじ穴14cから基台10(或いは、図示しないカバー固定用部位)に対して固定用ねじ(図示しない)を締結することで位置決め固定されている。なお、可動体2は、その両側部分が薄板状カバー体14aを越えて且つカバー14の長手方向を横断する方向に延出し、そこから薄板状カバー体14aの上部側に向けて突出している。
【0009】
ところで、上述したような移動装置のカバー8,14は、いずれも可動部2の移動方向に沿って長尺の形状を成しており、その長手方向両端のみが固定用ねじで締結されている。この場合、例えば図4(d)及び図5(d)に示すように、カバー8,14は、その自重により撓んだ状態で固定されることになる。このことは、カバー8,14が長尺になるに従って大きな撓みとなってあらわれる。
【0010】
移動装置には、その高さ方向のコンパクト化が望まれているが、従来では、長尺のカバー8,14の撓み量を考慮して装置の上下に余裕代を確保する必要上、テーブルの背Hを高く設定しなければならなかった。別の言い方をすると、従来の移動装置では、テーブルの背Hを低く設定する(装置の高さ方向のコンパクト化を図る)には限界があった。
【0011】
この場合、テーブルの背Hを低く設定する(装置の高さ方向のコンパクト化を図る)ためには、カバー8,14を短尺化すれば良いが、それでは、長尺の駆動部6や直動案内4を覆うことができなくなってしまう。なお、テーブルの背Hとは、基台10が基準面(図示しない)に固定されていると仮定した場合において、当該基準面から可動体2の上面(特に参照符号は付さない)までの高さ寸法を指す。
【特許文献1】実用新案登録公報第2518611号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、可動体の移動距離に応じて長尺化した場合でも自重による撓み量を小さくして、テーブルの背を低く設定することが可能なカバーを備えたコンパクトな移動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明は、可動体を所定方向に案内する複数の直動案内と、その複数の直動案内の間にあって直動案内に沿って可動体を移動させる駆動部とが基台に設けられた移動装置であって、直動案内又は駆動部、或いは、直動案内及び駆動部の双方を覆うカバーが可動体の移動方向に沿って設けられており、カバーは、その側部を可動体の移動方向に沿って複数箇所で基台に固定可能に構成されている。この場合、カバーは、単体の場合だけで無く、相互に着脱自在に連結可能な複数のカバー構成体を備えて構成されていても良く、それぞれのカバー構成体は、その側部を可動体の移動方向に沿って所定間隔で基台に固定可能に構成されている場合もある。
【0014】
このような発明において、カバー構成体は、少なくとも駆動部の一側を覆う一側カバー部と、駆動部の上側を覆う上側カバー部と、一側カバー部を基台に固定する固定部とを有しており、可動体と駆動部とは、カバー構成体の他側に構成された隙間を通して相互に連結されている。また他の構成として、カバー構成体は、少なくとも駆動部の一側を覆う一側カバー部と、駆動部及び直動案内の上側を同時に覆う上側カバー部と、一側カバー部を基台に固定する固定部とを有しており、可動体と駆動部とは、カバー構成体の他側に構成された隙間を通して相互に連結されている。
【0015】
また、本発明において、カバー構成体は、駆動部の他側を覆う他側カバー部と、他側カバー部を基台に固定する固定部とを有しており、可動体と駆動部とは、上側カバー部と他側カバー部との間に構成された隙間を通して相互に連結されている。更に、カバー構成体は、少なくとも直動案内の一側を覆う案内カバー部と、案内カバー部を基台に固定する案内固定部とを有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カバーの側部を可動体の移動方向に沿って所定間隔で基台に固定可能に構成したことにより、可動体の移動距離に応じて長尺化した場合でも自重による撓み量を小さくして、テーブルの背を低く設定することが可能なカバーを備えたコンパクトな移動装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る移動装置について、図1(a)〜(e)を参照して説明する。本実施の形態はカバーの改良であり、他の構成(例えば、直動案内4、駆動部6、基台10)は、上述した従来の移動装置(図4(a),(b))と同一の構成である。このため、同一の構成には図面上で同一符号を付して、その説明は省略する。
【0018】
図1(a)に示すように、本実施の形態の移動装置に適用したカバー16は、駆動部6全体を覆うように可動体2の移動方向に沿って設けられており、当該カバー16の側部が可動体2の移動方向に沿って所定間隔で基台10に対して固定可能に構成されている。具体的に説明すると、カバー16は、相互に着脱自在に連結可能な複数のカバー構成体16kを備えて構成されており、それぞれのカバー構成体16kは、その側部を可動体2の移動方向に沿って所定間隔で基台10に固定可能に構成されている。
【0019】
各カバー構成体16kは、駆動部6の一側を覆う一側カバー部16aと、駆動部6の上側を覆う上側カバー部16bと、一側カバー部16aを基台10に固定する固定部16cとを有しており、可動体2と駆動部6とは、カバー構成体16kの他側に構成された隙間を通して相互に連結されている。この場合、各カバー構成体16kにおいて、一側カバー部16aは、固定部16cから駆動部6の一側に沿って立ち上げられており、上側カバー部16bは、一側カバー部16aの頂部から駆動部6の他側方向に折り返されている。
【0020】
このような構成において、まず、駆動部6の長さ(例えば、ボールねじ6aの全長)に応じて、当該駆動部6の全体を覆うことが可能な数のカバー構成体16kを用意する。続いて、一側カバー部16a及び上側カバー部16bにより駆動部6の一側及び上側を覆うように、複数のカバー構成体16kを駆動部6(ボールねじ6a)に沿って互いに連結させて並べる。そして、各カバー構成体16kの固定部16cを基台10に固定する。
【0021】
ここで、固定部16cを基台10に固定する方法としては、例えばねじ止め、接着、溶接、嵌合など各種の方法を適用することができるが、ここでは一例として、ねじPで固定部16cを基台10に固定(締結)する方法を想定する。なお図面上、各カバー構成体16k(固定部16c)は、その両端の2箇所をねじPで固定(締結)しているが、3箇所或いはそれ以上の箇所を固定(締結)しても良い。
【0022】
また、複数のカバー構成体16k相互の連結部分は、端部同士を突き当てるようにすれば良い。或いは、例えば図1(b)に示すように一方にクランク状に折り返された係合部Lを構成し、連結するようにしても良い。これにより、当該連結部分において、外部からの異物(例えば、水、塵埃など)の浸入や、内部からの発塵(例えば、ボールねじ6aに塗布された潤滑剤など)の漏洩を防止することができる。
【0023】
このように複数のカバー構成体16kを基台10に固定した状態において、各カバー構成体16kの他側(駆動部6の他側)には隙間が構成される。この場合、ブラケット12の一端12aを当該隙間に通して延出させて可動体2に接続することにより、可動体2と駆動部6とを相互に連結させることができる。なお、ブラケット12の一端12aと可動体2との連結方法としては、例えばねじ止め、接着、溶接、嵌合など各種の方法を適用することができる。
【0024】
以上、本実施の形態の移動装置によれば、カバー16の側部のみを可動体2の移動方向に沿って所定間隔で基台10に固定可能に構成したことにより、可動体2の移動距離に応じて駆動部6(ボールねじ6a)が長尺化した場合でも、カバー16の自重による撓み量を小さくすることができる。即ち、従来では長尺のカバーの長手方向両端のみを固定する構成であったため、カバーの自重による撓み量が大きくなり、その大きな撓み量を考慮して装置の上下に余裕代を確保する必要上、テーブルの背Hを低く設定する(装置の高さ方向のコンパクト化を図る)には限界があった。しかしながら、本実施の形態では、カバー16の側部を基台10に固定する構成としたことにより、カバー16の自重による撓み量を小さくすることができ、その結果、テーブルの背Hを低く設定することが可能となり、装置の高さ方向のコンパクト化を図ることができる。
【0025】
また、本実施の形態によれば、複数のカバー構成体16kを用意して並べるだけで、必要なだけ駆動部6の長尺化(例えば、ボールねじ6aの全長の長尺化)に対応することができる。これにより、移動装置に対するカバー16の組込及び固定作業が容易となり、その結果、移動装置の製造コストを大幅に削減することが可能となる。
更に、従来では、駆動部6の保守点検に際し、カバー全体を取り外さなければならなかったが、本実施の形態では、複数のカバー構成体16kを部分的に取り外すことができるため、保守点検作業を容易に且つ効率的に行うことが可能となる。
【0026】
また、従来では、駆動部6全体を覆うように比較的長尺の一体物のカバーの長手方向両端を固定しているため、当該固定のための空間を装置の長手方向両側に確保する必要があった。しかし、本実施の形態では、カバー16の側部のみを基台10に固定する構成としたことにより、従来のような無駄な空間を確保する必要が無いため、移動装置の高さ方向のコンパクト化と共に、長手方向のコンパクト化も同時に図ることが可能となる。
【0027】
なお、上述した実施の形態では、移動装置を水平面上に位置付けた場合を想定しているが、例えば図1(c)に示すように、水平面M1に対して垂直に立ち上げられた垂直壁M2に移動装置を固定する場合には、カバー16(カバー構成体16k)の一側カバー部16aが水平面M1側に位置付けられるように固定するようにしても良い。
ここで、水平面M1に例えば液晶や半導体などの各種基板がセットされ、可動体2に例えば検査用ツールや製造用器具などが搭載される場合を想定すると、検査時や製造時に各種基板上に駆動部6内部からの発塵(例えば、ボールねじ6aに塗布された潤滑剤など)が落下する場合がある。この場合には、一側カバー部16aを水平面M1側に位置付けることにより、当該水平面M1への発塵(潤滑剤)の落下を一側カバー部16aで防止することができる。なお、駆動部6内部への異物(例えば、水、塵埃など)が浸入を重要視する装置構成であれば、当該移動装置の天地を逆転し、一側カバー部16aを上側(水平面M1とは反対側)に位置付ければ良い。
なお、本明細書及び請求の範囲でいう「上側カバー部」「一側カバー部」等の表現は、基台10のガイドレール4aの固定面10cを基準とする。以下、移動装置を垂直壁M2に固定するいずれの場合も同様である。
【0028】
また、上述した移動装置の他の構成例として、例えば図1(d)に示すように、断面L字状のカバー18を駆動部6の他側を覆うように増設しても良い。この構成例において、カバー18は、駆動部6の他側を覆う他側カバー部18aと、他側カバー部18aを基台10に固定する固定部18cとを有する複数のカバー構成体18kを備えている。なお、カバー構成体18kは、上述したカバー構成体16kと同様に、相互に着脱自在に連結可能に構成されている。また、各カバー構成体16kは、その側部(固定部18c)を可動体2の移動方向に沿って所定間隔で基台10に固定可能に構成されている。
【0029】
この場合、上側カバー部16bと他側カバー部18aとの間に隙間が構成されており、ブラケット12の一端12aを当該隙間に通して延出させて可動体2に接続することにより、可動体2と駆動部6とを相互に連結させることができる。なお、ブラケット12の一端12aと可動体2との連結方法としては、例えばねじ止め、接着、溶接、嵌合など各種の方法を適用することができる。また、固定部18cを基台10に固定する方法は、上述したカバー16の固定部16cと同様の方法を適用することができる。
【0030】
このような構成によれば、2つのカバー16,18を用いたことにより、駆動部6の両側及び上側を同時に覆うことができるため、当該駆動部6への異物(例えば、水、塵埃など)の浸入や、駆動部6内部からの発塵(例えば、ボールねじ6aに塗布された潤滑剤など)の漏洩をより確実に防止することができる。この場合、水平面M1に対して垂直に立ち上げられた垂直壁M2に移動装置を固定する構成では、例えば図1(e)に示すようにカバー18を上側に位置付けても、或いは天地を逆転してカバー18を水平面M1側に位置付けても駆動部6内部からの発塵(例えば、ボールねじ6aに塗布された潤滑剤など)の落下を防止することが可能となる。なお、他の効果は、上述した実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0031】
また、上述したカバー16,18において、各カバー構成体16k,18kの長さ、一側カバー部16a及び他側カバー部18aの高さ、上側カバー部16bの幅については特に説明しなかったが、これらは駆動部6の例えば大きさや形状に応じて任意に設定されるため、ここでは特に数値限定はしない。更に、各カバー構成体16k,18kの長さは、全て同一寸法に設定しても良いし、移動装置の長さや駆動部6の長尺の程度に応じて異なる長さのカバー構成体16k,18kを構成しても良い。
【0032】
また、上述した実施の形態では、駆動部6を覆うためのカバー16,18を想定して説明したが、これに限定されることは無く、移動装置の他の構成(例えば、直動案内4)全体を覆うカバーを増設しても良い。なお、かかるカバーも側部のみを基台10に固定するように構成されている。
【0033】
第1の変形例として、例えば図2(a)には、カバー16を有する移動装置が示されており、当該移動装置に設けられたカバー20は、直動案内4を覆う案内カバー部20aと、案内カバー部20aを基台10に固定する案内固定部(側部)20bとを有する複数のカバー構成体20kを備えている。なお、この構成例のカバー構成体20kも上述したカバー構成体16k,18kと同様に、相互に着脱自在に連結可能に構成されており、直動案内4の長さに応じて所定数のカバー構成体20kを互いに連結することで、直動案内4の全体を覆うことができる。
【0034】
この場合、案内カバー部20aは、基台10の側面から直動案内4を越えて延出し、その上部が可動体2側に折り返されているが、折り返さずに可動体2の両側に並列させても良い。なお、図面上、カバー構成体20kは、2つの直動案内4を両側から覆うように2つ配置されているが、いずれか一方のみで構成しても良い。また、案内固定部20bを基台10に固定する方法は、上述したカバー16,18の固定部16c,18cと同様の方法を適用することができる。
【0035】
このような構成によれば、カバー20により直動案内4を外部から隔離することができるため、直動案内4の内部(例えば、ガイドレール4aとスライダ4bとの間)への異物(例えば、水、塵埃など)の浸入を防止することができる。この結果、長期に亘って可動体2の移動安定性及び移動円滑性を一定に維持し続けることが可能となる。
また、カバー20を設けたことで、駆動部6は、カバー16やカバー20で二重に覆われた構成となり、駆動部6内部への異物の浸入や、駆動部6から外部への発塵の漏洩をより確実に防止することが可能となる。
【0036】
第2の変形例として、例えば図2(b)に示すように、カバー16,18を有する移動装置に更にカバー20を増設しても良い。なお、カバー20の構成は、上述した第1の変形例(図2(a))と同様であるため、その説明は省略する。
このような構成によれば、駆動部6の両側をそれぞれ2つのカバー16,20及び18,20で二重に覆うことができるため、例えば図1(e)に示すように移動装置を垂直壁M2に固定した場合でも、駆動部6及び直動案内4内部へ異物が浸入したり、駆動部6から水平面M1に発塵(潤滑剤)が落下することは無い。かかる効果は、移動装置の転地を逆転して固定しても同様である。なお、他の効果は、上述した第1の変形例と同様であるため、その説明は省略する。
【0037】
第3の変形例として、例えば図2(c)に示すように、カバー18をカバー16と同一形状に構成し、これらカバー16,18を駆動部6を挟んで両側に対向配置しても良い。この場合、カバー16の上側カバー部16bに対向して、カバー18に上側カバー部18bを増設する。そして、双方の上側カバー部16b,18bの間の隙間を通してブラケット12の一端12aを延出させて可動体2に接続することにより、可動体2と駆動部6とを相互に連結させることができる。なお、ブラケット12の一端12aと可動体2との連結方法としては、例えばねじ止め、接着、溶接、嵌合など各種の方法を適用することができる。
【0038】
第4の変形例として、例えば図2(d)に示すように、上述した第3の変形例の移動装置に更にカバー20を増設しても良い。なお、カバー20の構成は、上述した第1の変形例(図2(a))と同様であるため、その説明は省略する。
【0039】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る移動装置について、図3(a)〜(c)を参照して説明する。なお、本実施の形態はカバー16(カバー構成体16k)の改良であり、他の構成は上述した第1の実施の形態(図1)と同一の構成である。このため、同一の構成には図面上で同一符号を付して、その説明は省略する。
【0040】
図3(a)に示すように、本実施の形態のカバー16(カバー構成体16k)において、上側カバー部16bは、直動案内4と駆動部6を同時に覆うことができるように構成されている。この構成を実現するために、上側カバー部16bの両側には、各直動案内4方向に所定量だけ突出した突出部16dが設けられており、各直動案内4は、その上側が上側カバー部16bの突出部16dで同時に覆われる。この場合、可動体2の移動中に突出部16dと接触しないように、可動体2には、逃げ部2gを構成することが好ましい。なお、逃げ部2gの大きさは、突出部16dの突出量に応じて適宜変更することができる。
【0041】
以上、本実施の形態によれば、上側カバー部16bの両側に突出部16dを設けることにより、直動案内4と駆動部6を同時に覆うことができる。この場合、直動案内4を覆うためのカバーを別途必要としないため、装置全体の部品点数を削減することができ、その結果、移動装置の製造コストを低減することが可能となる。なお、他の効果は、上述した第1の実施の形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0042】
上述した実施の形態では、移動装置を水平面上に位置付けた場合を想定しているが、例えば図3(b)に示すように、水平面M1に対して垂直に立ち上げられた垂直壁M2に移動装置を固定する場合には、カバー16(カバー構成体16k)の一側カバー部16aが水平面M1側に位置付けられるように固定するようにしても良い。このような配置によれば、駆動部6内部からの発塵(例えば、ボールねじ6aに塗布された潤滑剤など)が水平面M1に落下するのを防止することができる。この場合、駆動部6内部への異物(例えば、水、塵埃など)が浸入を重要視する装置構成であれば、当該移動装置の天地を逆転し、一側カバー部16aを上側(水平面M1とは反対側)に位置付ければ良い。
【0043】
なお、本実施の形態の他の構成例としては、例えば図3(c)に示すように、駆動部6の他側を覆うカバー18(カバー構成体18k)を更に配置しても良い。この場合、カバー18(カバー構成体18k)の構成や効果については、上述した第1の実施の形態(図1(d))と同様であるため、その説明は省略する。また、本実施の形態の移動装置(図3(a),(c))に例えば第1の変形例で説明したようなカバー20(図2(a))を設けて、各直動案内4を覆うように構成しても良い。
また、図3(c)のカバーの構成、或いは、図3(a),(c)のカバーの構成に第1の変形例で説明したようなカバー20を付加した構成のものを垂直壁M2に固定するようにしても良く、それらの天地を逆転した構成も適宜選択可能である。
【0044】
なお、上述した第1及び第2の実施の形態では、カバー16,18,20を複数のカバー構成体16k,18k,20kから成るようにしたが、それぞれ1つの(単体の)カバー16,18,20として構成しても、側部を可動体2の移動方向に沿って複数箇所で基台10に固定することにより、撓みを抑制することができるため、そのようにしても良い。
また、上述した第1及び第2の実施の形態では、ボールねじ6aとナット6bとの組み合わせから成る駆動部6を想定したが、これに限定されることは無く、可動体2を直動案内4に沿って移動させることができれば、任意の駆動機構(例えば、ベルト駆動、リニアモータ、エアシリンダなど)を駆動部6として適用することが可能である。
【0045】
その一例としてベルト駆動の駆動部6では、直動案内4に沿って走行するベルトを基台10に配置し、当該ベルトと可動体2とを所定の連結部材で連結する。これにより、ベルトを走行させると、これに従って連結部材と共に可動体2を直動案内4に沿って移動させることができる。
【0046】
また、リニアモータの駆動部6では、例えば可動体2の下面に例えば3相のコイルを装着する。そして、基台10の表面(コイルに対向する面)をステータとして構成し、ここに複数の永久磁石を可動体2の移動方向に沿って所定間隔で配列する。この場合、複数の永久磁石は、隣り合う永久磁石の磁極(N極とS極)が交互に並ぶように配列する。これにより、コントローラから3相のコイルに順次電流を流して、各コイルの磁極をS極またはN極に変えると、その際の磁極と永久磁石の磁束とが反応することにより、フレミングの左手の法則に従って可動体2を直動案内4に沿って移動させることができる。
また、上記各実施の形態では、直動案内として転動体を介在して成る転がり案内を用いたが、これに限らず、例えば静圧軸受を用いた直動案内など他のものも使用可能である。
【0047】
また、上述したカバー16,18,20の材質については、移動装置の使用目的や使用環境に応じて、任意の材料(金属材料、絶縁材料、樹脂材料、木材など)を適用することができるため、ここでは特に限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る移動装置に適用したカバーの構成を部分的に切断して示す斜視図、(b)は、複数のカバー構成体相互を連結するための構成例を示す断面図、(c)は、同図(a)のX−X線に沿う断面図であって、移動装置を垂直壁に固定した構成例を示す断面図、(d)は、同図(a)のX−X線に沿う断面図であって、移動装置の他の構成例を示す断面図、(e)は、同図(d)の移動装置を垂直壁に固定した構成例を示す断面図。
【図2】(a)は、本発明の第1の変形例に係る移動装置の構成例を示す断面図、(b)は、本発明の第2の変形例に係る移動装置の構成例を示す断面図、(c)は、本発明の第3の変形例に係る移動装置の構成例を示す断面図、(d)は、本発明の第4の変形例に係る移動装置の構成例を示す断面図。
【図3】(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る移動装置に適用したカバーの構成例を示す断面図、(b)は、同図(a)の移動装置を垂直壁に固定した構成例を示す断面図、(c)は、移動装置の他の構成例を示す断面図。
【図4】(a)は、従来使用例のカバーが適用された移動装置の平面図、(b)は、同図(a)のX−X線に沿う断面図、(c)は、従来使用例のカバーの斜視図、(d)は、従来使用例のカバーが撓んだ状態を示す斜視図。
【図5】(a)は、従来使用例の他のカバーが適用された移動装置の平面図、(b)は、同図(a)のX−X線に沿う断面図、(c)は、従来使用例の他のカバーの斜視図、(d)は、従来使用例のカバーが撓んだ状態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0049】
2 可動体
4 直動案内
6 駆動部
10 基台
16,18 カバー
16k,18k カバー構成体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動体を所定方向に案内する複数の直動案内と、その複数の直動案内の間にあって直動案内に沿って可動体を移動させる駆動部とが基台に設けられた移動装置であって、
直動案内又は駆動部、或いは、直動案内及び駆動部の双方を覆うカバーが可動体の移動方向に沿って設けられており、
カバーは、その側部を可動体の移動方向に沿って複数箇所で基台に固定可能に構成されていることを特徴とする移動装置。
【請求項2】
カバーは、相互に着脱自在に連結可能な複数のカバー構成体を備えて構成されており、それぞれのカバー構成体は、その側部を可動体の移動方向に沿って所定間隔で基台に固定可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項3】
カバー構成体は、少なくとも駆動部の一側を覆う一側カバー部と、駆動部の上側を覆う上側カバー部と、一側カバー部を基台に固定する固定部とを有しており、可動体と駆動部とは、カバー構成体の他側に構成された隙間を通して相互に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の移動装置。
【請求項4】
カバー構成体は、少なくとも駆動部の一側を覆う一側カバー部と、駆動部及び直動案内の上側を同時に覆う上側カバー部と、一側カバー部を基台に固定する固定部とを有しており、可動体と駆動部とは、カバー構成体の他側に構成された隙間を通して相互に連結されていることを特徴とする請求項2に記載の移動装置。
【請求項5】
カバー構成体は、駆動部の他側を覆う他側カバー部と、他側カバー部を基台に固定する固定部とを有しており、可動体と駆動部とは、上側カバー部と他側カバー部との間に構成された隙間を通して相互に連結されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の移動装置。
【請求項6】
カバー構成体は、少なくとも直動案内の一側を覆う案内カバー部と、案内カバー部を基台に固定する案内固定部とを有していることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−283792(P2006−283792A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100910(P2005−100910)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】