説明

移動通信システム、伝送路制御サーバ及び通信方法

【課題】異常発生時にも通信サービスの提供を継続し得る移動通信システムを提供する。
【解決手段】移動通信システムは、各基地局から、稼働状況情報を含む基地局情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集する手段と、各基地局に関する無線接続可能な他の基地局に関する設定情報を取得する取得手段と、上記基地局情報に基づいて、複数の基地局の中から、基地局制御装置と個別に通信不可能な孤立基地局及び基地局制御装置と個別に通信可能なライブ基地局を特定し、上記設定情報に基づいて、基地局間の無線接続により実現される、当該孤立基地局から当該ライブ基地局までの緊急伝送路を決定し、当該緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を衛星通信を用いて複数の基地局へ送信する手段とを含む伝送路制御サーバと、伝送路制御サーバから衛星通信を介して受信された緊急伝送路情報で示される他の基地局と無線接続を確立する手段とを含む複数の基地局とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムの通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自然災害時の被災者の安否情報提供システム(下記特許文献1参照)、複数の気象情報を収集するシステム(下記特許文献2参照)のような情報伝達システムが存在する。このような情報伝達システムでは、固定電話回線網や携帯電話通信網等の公衆通信網を介して情報伝達が行われる。
【0003】
しかしながら、情報伝達を公衆通信網を利用して行う情報伝達システムでは、無線基地局の故障や通信線の断線等のような公衆通信網に異常が生じた場合、情報伝達が正常に実行できなくなるという問題点があった。公衆網の異常は、例えば、災害発生時に生じる。
【0004】
このような問題点に対応し、下記特許文献3では、公共設備に設置された無線通信装置間で直接的に無線通信を行うことで、災害発生時の通信伝送路を確保するシステムが提案されている。このシステムによれば、公衆通信網を介さずに情報を伝達することが出来るため、公衆網が損壊した場合でも情報伝達が可能である。また、下記特許文献4では、複数の可搬型無線アクセスポイントで簡易携帯網を構成し、衛星携帯電話を経由してその簡易携帯網を他の回線網に接続することにより、既存の通信インフラが機能していない災害地域内であってもIP携帯電話同士の通話を可能とするシステムが提案されている。下記特許文献5では、災害時に公衆電話回線網が被害を受けた場合等に対応するべく、通信衛星を介してセンタ局と複数の可搬型地球局とが相互に通信を行う衛星通信システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−342859号公報
【特許文献2】特開2005−100130号公報
【特許文献3】特開2010−81005号公報
【特許文献4】特開2008−263282号公報
【特許文献5】特開平08−316897号公報
【特許文献6】特開平11−285047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような従来手法は、既存の公衆網とは別の新たな通信網(例えば、簡易携帯網等)を用いることにより、既存の公衆網を介さない伝送経路で、異常時の情報伝達を可能とする。この手法を実現するためには、異常時のバックアップのための通信網を新たに設ける必要があるため、コストがかかる。例え、災害が発生した場合であっても、公衆網の機能が全て停止してしまう可能性は低いため、公衆網が完全に利用不能になるわけではない。
【0007】
本発明の目的は、上述のような問題点に鑑み、簡易な構成により、異常発生時にも通信サービスの提供を継続し得る移動通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各態様では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0009】
第1の態様は、少なくとも1つの他の基地局と無線接続可能な複数の基地局と、当該複数の基地局の各々と個別に接続され当該複数の基地局を通信交換局に接続する基地局制御装置と、当該複数の基地局と衛星通信を介して通信可能な伝送路制御サーバと、を含む移動通信システムに関する。第1の態様では、上記伝送路制御サーバは、各基地局から、各基地局の稼働状況情報を含む基地局情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集する稼働情報収集手段と、各基地局に関する無線接続可能な他の基地局に関する設定情報を取得する設定情報取得手段と、上記稼働情報収集手段により収集された基地局情報に基づいて、複数の基地局の中から、基地局制御装置と個別に通信不可能な孤立基地局及び基地局制御装置と個別に通信可能なライブ基地局を特定し、上記設定情報取得手段により取得された設定情報に基づいて、基地局間の無線接続により実現される、当該孤立基地局から当該ライブ基地局までの緊急伝送路を決定し、当該緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を衛星通信を用いて複数の基地局へ送信する伝送路決定手段と、を備える。また、複数の基地局はそれぞれ、自基地局の稼働状況を検出する稼働状況検出手段と、この稼働状況検出手段により検出された稼働状況の情報を含む基地局情報を衛星通信を用いて伝送路制御サーバへ送信する稼働状況送信手段と、伝送路制御サーバから衛星通信を介して受信された上記緊急伝送路情報で示される少なくとも1つの他の基地局と無線接続を確立する基地局間伝送手段と、を備える。また、複数の基地局の少なくとも1つの孤立基地局は、上記基地局間伝送手段により確立された無線接続を用いて、自基地局の無線エリア内の移動端末に関するトラフィックをライブ基地局へ無線送信する基地局処理手段と、を備える。
【0010】
第2の態様は、少なくとも1つの他の基地局と無線接続可能な複数の基地局の各々と衛星通信を介して通信可能な伝送路制御サーバに関する。第2の態様に係る伝送路制御サーバは、各基地局から、各基地局の稼働状況情報を含む基地局情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集する稼働情報収集手段と、各基地局に関する無線接続可能な他の基地局に関する設定情報を取得する設定情報取得手段と、上記稼働情報収集手段により収集された基地局情報に基づいて、複数の基地局の中から、各基地局を通信交換局にそれぞれ接続させる基地局制御装置と個別に通信不可能な孤立基地局及び当該基地局制御装置と個別に通信可能なライブ基地局を特定し、上記設定情報取得手段により取得された設定情報に基づいて、基地局間の無線接続により実現される、当該孤立基地局から当該ライブ基地局までの緊急伝送路を決定し、当該緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を衛星通信を用いて前記複数の基地局へ送信する伝送路決定手段と、を備える。
【0011】
第3の態様は、少なくとも1つの他の基地局と無線接続可能な複数の基地局の各々と衛星通信を介して通信可能なコンピュータにより実行される通信方法に関する。第3の態様に係る通信方法では、当該コンピュータが、各基地局から、各基地局の稼働状況情報を含む基地局情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集するステップと、各基地局に関する無線接続可能な他の基地局に関する設定情報を取得するステップと、当該収集された基地局情報に基づいて、複数の基地局の中から、各基地局を通信交換局にそれぞれ接続させる基地局制御装置と個別に通信不可能な孤立基地局及び当該基地局制御装置と個別に通信可能なライブ基地局を特定するステップと、当該取得された設定情報に基づいて、基地局間の無線接続により実現される、孤立基地局からライブ基地局までの緊急伝送路を決定するステップと、上記緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を衛星通信を用いて複数の基地局へ送信するステップと、を実行する。
【0012】
なお、本発明の別態様としては、上記第2の態様の構成をコンピュータに実現させるプログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記各態様によれば、簡易な構成により、異常発生時にも通信サービスの提供を継続し得る移動通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】移動通信システムの構成例を概念的に示す図。
【図2】伝送路制御サーバの構成例を概念的に示すブロック図。
【図3】第1実施形態における基地局の構成例を概念的に示すブロック図。
【図4】第1実施形態における伝送路制御サーバ及び基地局の動作例を示すシーケンス図。
【図5】緊急伝送路の決定処理の例を示すフローチャート。
【図6】第2実施形態における伝送路制御サーバの構成例を概念的に示すブロック図。
【図7】第2実施形態における基地局の構成例を概念的に示すブロック図。
【図8】第2実施形態における伝送路制御サーバ及び基地局の動作例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態についてそれぞれ説明する。なお、以下に挙げる各実施形態はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
【0016】
[第1実施形態]
〔システム構成〕
図1は、移動通信システムの構成例を概念的に示す図である。本実施形態における移動通信システム1は、複数の基地局10、伝送路制御サーバ20、基地局制御装置30等を有する。
【0017】
複数の基地局10は、図1では、10(#1)、10(#2)、10(#3)及び10(#4)として示されている。以降、これらは、特に区別する必要がある場合を除き、基地局10と表記される。基地局10は、BS(Base Station)、CS(Cell Station)、BTS(Base Transceiver Station)、ノードB等とも呼ばれる。基地局10は、無線通信エリア内に存在するユーザ移動端末5と無線通信を行い、ユーザ移動端末5を移動通信システム1に接続させる。また、基地局10は、少なくとも1つの他の基地局と無線接続可能に構成される。
【0018】
ユーザ移動端末5は、携帯電話、携帯PC(Personal Computer)等のような一般的なユーザ端末である。以降、ユーザ移動端末5は、ユーザ端末5と表記する。ユーザ端末5は、いずれか1つの基地局10と無線リンクを確立することにより、移動通信システム1により提供される所定の通信(通話)サービスを受ける。本実施形態は、ユーザ移動端末5の構成及び移動通信システム1から提供されるサービスを限定しない。
【0019】
基地局制御装置30は、複数の基地局10の各々と個別に接続され、当該複数の基地局10をそれぞれ通信交換局(図1に示すMPE(Multimedia Processing Equipment)3又はMSC(Mobile Switching Center)4等)に接続する。基地局制御装置30は、BSC(Base Station Controller)、RNC(Radio Network Controller)等と呼ばれる。以降、基地局制御装置30は、図1に示されるように、BSC30と表記する場合がある。
【0020】
BSC30は、基地局10からユーザ端末5に関するトラフィックを受け、そのトラフィックの対象となる通信交換局へそのトラフィックを中継する。例えば、当該トラフィックが従来の通話呼信号であれば、BSC30は、PSTN(Public Switched Telephone Networks)8の交換局であるMSC4に当該呼信号を送る。一方、当該トラフィックがIP(Internet Protocol)電話、IP通信等の通信呼信号であれば、BSC30は、IPコアネットワーク7の交換局であるMPE3に当該呼信号を送る。なお、BSC30における、基地局10から送られるトラフィックに対する処理内容は、周知な技術であればよく、本実施形態はそれを限定しない。
【0021】
BSC30は、通信交換局から送られたトラフィックを受信すると、そのトラフィックの宛先となるユーザ端末5が無線接続される基地局10へそのトラフィックを送る。このような通常時(正常時)のBSC30における、通信交換局から送られるトラフィックに対する処理内容は、周知な技術であればよく、本実施形態はそれを限定しない。
【0022】
BSC30は、通信不可能状態の基地局10が存在する場合には、その通信不可能状態の基地局10へ送るべきトラフィックを伝送路制御サーバ20からの指示に対応する基地局10(中継付きライブ基地局)へ送る。なお、本実施形態は、MPE3、MSC4等のような通信交換局の処理を限定しないため、ここではそれらの説明を省略する。
【0023】
伝送路制御サーバ20は、BSC30や基地局10を管理するためのネットワーク(例えば、図1に示す公衆網9)を介して、BSC30等に通信可能に接続される。以降、伝送路制御サーバ20は、単に制御サーバ20とも表記される。制御サーバ20は、通信衛星2を介した衛星通信により、複数の基地局10と無線通信することができる。
【0024】
〔装置構成〕
以下、第1実施形態における伝送路制御サーバ20及び基地局10の各構成例についてそれぞれ説明する。図2は、伝送路制御サーバ20の構成例を概念的に示すブロック図である。
【0025】
制御サーバ20は、図2に示すように、衛星通信部201、稼働情報収集部202、設定情報取得部203、災害検出部204、伝送路決定部207等を有する。ハードウェア構成として、制御サーバ20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等)、入出力インタフェース等を有する。
【0026】
制御サーバ20は、例えば、メモリに記憶されるプログラムがCPUにより実行されることで上記各処理部を実現する。衛星通信部201は、通信衛星2との間でやりとりする電波を送受する衛星アンテナ、当該電波を変調及び復調する送受信器等を含む衛星通信装置、この衛星通信装置と他の処理部との間のインタフェースとして機能する処理部等から構成されるようにしてもよい。なお、本実施形態は、上記各処理部の実現手法を制限しない。
【0027】
衛星通信部201は、他の処理部からの指示により、複数の基地局10との間で、通信衛星2を介した衛星通信を行う。なお、本実施形態は、通信衛星2を介した衛星通信の手法を限定するものではないため、ここではその詳細説明を省略する。
【0028】
稼働情報収集部202は、各基地局10から、各基地局の稼働状況情報を含む基地局情報を当該衛星通信を用いてそれぞれ収集する。当該基地局情報は、所定の周期又は任意のタイミングで各基地局10から送信されてもよいし、伝送路制御サーバ20からの要求に応じて各基地局10から送信されてもよい。例えば、稼働情報収集部202は、災害検出部204により災害の発生が検知された場合に、基地局情報の送信要求を送信する。なお、稼働状況情報の詳細については後述する。
【0029】
災害検出部204は、災害発生情報(災害発生信号)を取得し、稼働情報収集部202へそれを通知する。災害発生情報は、例えば、公衆網9等のネットワークを介して接続される、国土交通省や気象庁等の公共機関のサーバ装置から取得される。災害発生情報は、ユーザインタフェース(図示せず)を介してオペレータから入力されてもよいし、伝送路制御サーバ20が有する検出器により独自に検知されてもよい。
【0030】
設定情報取得部203は、各基地局10に関する無線接続可能な他の基地局に関する設定情報を取得する。例えば、基地局10(#2)が基地局10(#1)及び10(#3)と無線接続可能である場合には、基地局10(#2)の設定情報には、基地局10(#1)及び10(#3)を特定し得る各基地局識別情報がその優先度と共にそれぞれ設定される。当該設定情報は、制御サーバ20のメモリに予め格納されていてもよいし、稼働情報収集部202により収集される基地局情報に含まれていてもよい。取得された設定情報は、伝送路決定部207へ送られる。
【0031】
伝送路決定部207は、稼働情報収集部202により収集された基地局情報の稼働状況情報に基づいて、複数の基地局10の中から、BSC30と通信不可能な孤立基地局、及び、BSC30と通信可能なライブ基地局を特定する。更に、伝送路決定部207は、設定情報取得部203により取得された設定情報に基づいて、基地局10間の無線接続により実現される、当該孤立基地局から当該ライブ基地局までの緊急伝送路を決定する。伝送路決定部207は、当該緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を生成し、この緊急伝送路情報を送信するように衛星通信部201へ指示する。
【0032】
伝送路決定部207は、緊急伝送路を以下のように決定する。伝送路決定部207は、まず、設定情報に孤立基地局を含む複数のライブ基地局の中の、他のライブ基地局の設定情報に含まれない第1孤立基地局を設定情報に含むライブ基地局を選択し、この選択されたライブ基地局と当該第1孤立基地局との間の接続を決定する。次に、伝送路決定部207は、当該第1孤立基地局との接続が決定されたライブ基地局を除いた、他のライブ基地局及び当該第1孤立基地局を候補にして、未決定の孤立基地局と接続する基地局を決定する。なお、緊急伝送路の具体的決定手法については動作例の項において説明する。
【0033】
上記緊急伝送路情報には、少なくとも1つの緊急伝送路を形成するための情報が含まれる。緊急伝送路は、基地局間が無線接続されることにより形成される経路であって、孤立基地局の無線エリア内のユーザ端末5に関するトラフィックを伝送するための経路である。よって、緊急伝送路を形成するための情報は、無線接続される基地局のペアを示す、基地局識別情報のペアを少なくとも1つ含む。
【0034】
よって、緊急伝送路に含まれるライブ基地局は、他の孤立基地局から送られるトラフィックをBSC30に中継することが要求される。このように要求されるライブ基地局を中継付きライブ基地局とも表記する。一方、緊急伝送路に含まれる孤立基地局は、自身の無線エリア内のユーザ端末5に関するトラフィックをBSC30に対してではなく、当該緊急伝送路に含まれるライブ基地局に対して送信することが要求される。
【0035】
更に、緊急伝送路に複数の孤立基地局が含まれる場合には、当該複数の孤立基地局の中の少なくとも1つの孤立基地局は、他の孤立基地局から送られるトラフィックをライブ基地局へ中継すること、及び、自身の無線エリア内のユーザ端末5に関するトラフィックをBSC30に対してではなく、当該緊急伝送路に含まれるライブ基地局に対して送信することが要求される。このような孤立基地局を中継付き孤立基地局とも表記する。
【0036】
図3は、第1実施形態における基地局10の構成例を概念的に示すブロック図である。基地局10は、図3に示すように、衛星通信部101、稼働状況検出部102、稼働状況送信部103、基地局間伝送部106、基地局処理部107等を有する。基地局10を構成するこれら各処理部は、ハードウェア要素、又は、ソフトウェア要素、或いは、それらの組み合わせよりそれぞれ実現される。
【0037】
ハードウェア構成要素とは、例えば、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、ゲートアレイ、論理ゲートの組み合わせ、信号処理回路、アナログ回路等のようなハードウェア回路である。ソフトウェア構成要素とは、1又は複数のメモリ上のデータ(プログラム)が1又は複数のプロセッサ(例えば、CPU、DSP(Digital Signal Processor)等)で実行されることにより実現される、タスク、プロセス、関数のようなソフトウェア部品(断片)である。本実施形態は、上記各処理部の実現手法を限定しない。
【0038】
衛星通信部101は、通信衛星2との間でやりとりする電波を送受する衛星アンテナ、当該電波を変調及び復調する送受信器等を含む衛星通信装置、この衛星通信装置と他の処理部との間のインタフェースとして機能する処理部等から構成されるようにしてもよい。衛星通信部101は、他の処理部からの指示により、制御サーバ20との間で、通信衛星2を介した衛星通信を行う。
【0039】
稼働状況検出部102は、自身(基地局10)の稼働状況を検出し、検出された稼働状況を示す信号を稼働状況送信部103へ送る。なお、稼働状況の具体的検出手法には、周知の技術が利用されればよいため、ここでは説明を省略する。
【0040】
稼働状況送信部103は、稼働状況検出部102からの信号に基づいて、自身の稼働状況を示す稼働状況情報を生成し、衛星通信部101にその稼働状況情報を含む基地局情報を送信するように指示する。稼働状況情報には、自身の基地局10に関する、基地局識別情報、稼働状況を示すデータが含まれる。稼働状況を示すデータには、自基地局の現状の稼働状況を特定する情報として、ライブ基地局、孤立基地局、異常基地局等を特定し得る情報が含まれる。
【0041】
稼働状況送信部103は、稼働状況検出部102からの信号に基づいて、自身の稼働状況を特定する。例えば、基地局10とBSC30との間のリンク(以降、接続回線とも表記する)の異常が検出されている場合には、稼働状況送信部103は、自基地局を孤立基地局に決定する。また、他の基地局10と無線接続するための処理部である基地局間伝送部106の異常、当該接続回線の異常等が検出されている場合には、稼働状況送信部103は、自基地局を異常基地局に決定する。異常基地局とは、緊急伝送路の形成による救済が及ばない基地局を意味する。なお、稼働状況を示すデータに、異常箇所、異常内容等を含む詳細な異常データを含ませるようにしてもよい。
【0042】
稼働状況検出部102及び稼働状況送信部103は、任意のタイミング又は周期的に動作してもよいし、制御サーバ20から衛星通信を介して送られる基地局情報の送信要求が衛星通信部101で受信されたことを契機に動作するようにしてもよい。
【0043】
基地局間伝送部106は、衛星通信部101で受信される、制御サーバ20からの緊急伝送路情報に含まれる緊急伝送路を実現するために、必要に応じて、少なくとも1つの他の基地局と無線接続を確立する。無線接続を確立する対象となる他の基地局は、自基地局10のための設定情報に含まれる他の基地局を候補にする。
【0044】
基地局間伝送部106は、例えば、送信アンテナ、受信アンテナ、無線処理部等を含む基地局間伝送装置、この基地局間伝送装置と他の処理部との間のインタフェースとして機能する処理部等から構成される。この場合、送信アンテナは、上記設定情報に設定された他の基地局方向への指向性を持つ信号を送出し、受信アンテナは、上記設定情報に設定された他の基地局からの信号を受信する。
【0045】
複数の基地局10は、ユーザ端末5と無線通信するための通信エリア等に応じて、所定位置にそれぞれ配置される。つまり、各基地局10は、相互に無線接続する目的で配置されているわけではないため、例え、基地局間伝送部106の送受信アンテナを用いたとしても、地理的な条件(距離等)等から、無線通信可能な範囲には限界がある。そこで、本実施形態では、予め、設定情報に、各基地局10に関する無線接続可能な他の基地局に関する情報が設定される。この設定情報では、各他の基地局に関しそれぞれ優先順位が付加されている。優先順位は、各基地局の無線条件や伝送容量の負荷分散等に基づいて設定される。例えば、無線接続可能な他の基地局のうち無線条件が良好な基地局から順に高い優先度が付与される。
【0046】
基地局処理部107は、制御サーバ20からの緊急伝送路情報及び稼働状況送信部103により上述のように生成された自基地局の稼働状況データに基づいて、自基地局の要求タイプを、ライブ基地局、孤立基地局、中継付きライブ基地局、中継付き孤立基地局、異常基地局等のいずれか1つに特定する。
【0047】
例えば、自基地局の稼働状況がライブ基地局であり、緊急伝送路に自基地局の基地局識別情報が含まれている場合には、基地局処理部107は、自基地局を中継付きライブ基地局に決定する。また、自基地局の稼働状況がライブ基地局であり、緊急伝送路に自基地局の基地局識別情報が含まれていない場合には、基地局処理部107は、自基地局を通常のライブ基地局に決定する。
【0048】
自基地局の稼働状況が孤立基地局であり、緊急伝送路において、自基地局の基地局識別情報とペアに設定されている他の基地局識別情報が複数存在する場合、基地局処理部107は、自基地局を中継付き孤立基地局に決定する。また、自基地局の稼働状況が孤立基地局であり、緊急伝送路において、自基地局の基地局識別情報とペアに設定されている他の基地局識別情報が1つ存在する場合、基地局処理部107は、自基地局を通常の孤立基地局に決定する。また、自基地局の稼働状況が異常基地局であれば、基地局処理部107は、自基地局を異常基地局に決定する。
【0049】
基地局処理部107は、特定された自基地局の要求タイプに応じて以下のように処理を切り替える。
【0050】
基地局処理部107は、自基地局が通常のライブ基地局である場合には、基地局に関する周知の処理(以降、周知の基地局処理と表記する)を実行する。当該周知の基地局処理とは、自身の無線エリア内に存在するユーザ端末5から送信された無線信号を受信し、この無線信号に対応するトラフィックを生成し、このトラフィックを当該接続回線に乗せてBSC30へ送信する処理、BSC30からトラフィックを受信し、このトラフィックに対応する無線信号を生成し、この無線信号を自身の無線エリア内に存在するユーザ端末5へ送信する処理等を含む。ここで、トラフィックとは、音声、データ等のようなユーザプレーン信号と、制御プレーン信号とを含む。
【0051】
基地局処理部107は、自基地局が中継付きライブ基地局である場合には、上記周知の基地局処理に加えて、基地局間伝送部106により確立された無線接続を介して他の基地局から送られてきたトラフィックを当該接続回線に乗せてBSC30へ送信し、かつ、BSC30から送られてきた他の基地局のためのトラフィックを当該無線接続を介して他の基地局へ転送する処理を実行する。よって、中継付きライブ基地局の基地局処理部107は、当該接続回線に、自身の無線エリア内に存在するユーザ端末5に関するトラフィック及び他の基地局からのトラフィックを乗せる。
【0052】
基地局処理部107は、自基地局が通常の孤立基地局である場合には、上記周知の基地局処理が以下のように変更された処理を実行する。具体的には、基地局処理部107は、自身の無線エリア内に存在するユーザ端末5から送信された無線信号に対応するトラフィックを、接続回線に乗せてBSC30へ送信することなく、無線接続を介して他の基地局へ送信する。また、基地局処理部107は、他の基地局から無線接続を介して転送されてきたトラフィックを受信し、このトラフィックに対応する無線信号を自身の無線エリア内に存在するユーザ端末5へ送信する。
【0053】
基地局処理部107は、自基地局が中継付き孤立基地局である場合には、自基地局が孤立基地局である場合の上記処理に加えて、以下の処理を実行する。即ち、基地局処理部107は、第1の無線接続を介して第1の基地局から送られてきたトラフィックを第2の無線接続を介して第2の基地局へ送信し、かつ、第2の基地局から第2の無線接続を介して送られてきた第1の基地局のためのトラフィックを第1の無線接続を介して第1の基地局へ送信する。
【0054】
〔動作例〕
図4は、第1実施形態における伝送路制御サーバ20及び基地局10の動作例を示すシーケンス図である。
【0055】
制御サーバ20において、災害検出部204が災害発生情報を取得する(S41)と、稼働情報収集部202が、基地局情報を収集するために、基地局情報の送信要求を通信衛星2を介した衛星通信を用いて各基地局10宛てに送信する(S42)。その要求には、災害発生情報が含まれていてもよい。
【0056】
各基地局10では、当該衛星通信により基地局情報の送信要求が受信されると、稼働状況検出部102が、自基地局10の稼働状況を検出する(S43)。稼働状況送信部103は、稼働状況検出部102からの検出信号に基づいて、稼働状況情報を生成する(S44)。この稼働状況情報には、自基地局10に関する、基地局識別情報、及び、稼働状況データが含まれている。稼働状況データによれば、各基地局10がライブ基地局、孤立基地局又は異常基地局であることを特定することができる。このような稼働状況情報は、基地局10自身で保持されると共に、基地局情報として、衛星通信部101を介して、衛星通信により制御サーバ20へ送信される(S45)。
【0057】
制御サーバ20では、衛星通信部201を介して、稼働情報収集部202が各基地局10からの基地局情報をそれぞれ取得する(S46)。収集された基地局情報は、伝送路決定部207に参照可能となるように制御サーバ20で保持される。このとき、設定情報取得部203は、各基地局10に関する設定情報をそれぞれ取得している。この設定情報には、各基地局10に関する無線接続可能な他の基地局の基地局識別情報が格納されている。
【0058】
伝送路決定部207は、稼働情報収集部202により収集された基地局情報の稼働状況情報、及び、設定情報取得部203により取得された設定情報に基づいて、緊急伝送路を決定する(S47)。伝送路決定部207は、決定された緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を生成し(S48)、この緊急伝送路情報を衛星通信部201を介して衛星通信により各基地局10へ送信する(S49)。緊急伝送路情報には、少なくとも1つの緊急伝送路を形成するための情報として、基地局識別情報の少なくとも1つのペアが格納される。
【0059】
各基地局10では、基地局間伝送部106が、衛星通信部101を介して受信された緊急伝送路情報に基づいて、必要に応じて、少なくとも1つの他の基地局と無線接続を確立する(S50)。具体的には、基地局間伝送部106は、緊急伝送路情報に、自基地局の基地局識別情報を含む緊急伝送路が含まれている場合に、無線接続をすべき相手となる他の基地局10を特定し、この特定された他の基地局10との間で無線接続を確立する。
【0060】
続いて、基地局処理部107は、制御サーバ20からの緊急伝送路情報及び稼働状況送信部103により自基地局10の稼働状況データ(S44)に基づいて、自基地局10の要求タイプを、ライブ基地局、孤立基地局、中継付きライブ基地局、中継付き孤立基地局、異常基地局等のいずれか1つに特定する(S51)。以降、基地局処理部107は、特定された自基地局10の要求タイプに応じてトラフィックの送受信処理を行う。
【0061】
このとき、基地局処理部107は、当該無線接続により正常に基地局間通信ができていることを確認すると(S52)、その旨を制御サーバ20へ衛星通信を用いて送信する(S53)。
【0062】
図5は、緊急伝送路の決定処理の例を示すフローチャートである。
伝送路決定部207は、稼働情報収集部202により収集された基地局情報の稼働状況情報に基づいて、各基地局10を孤立基地局又はライブ基地局にそれぞれ分類する(S61)。
【0063】
伝送路決定部207は、このような分類情報と、設定情報取得部203により取得された各基地局10の設定情報とに基づいて、設定情報に孤立基地局を持つ基地局を比較対象として抽出する(S62)。これにより、無線接続可能な他の基地局の少なくとも1つが孤立基地局である全ての基地局が抽出される。
【0064】
伝送路決定部207は、比較対象として抽出された基地局が存在するか否か、言い換えれば、比較対象の基地局の中に、設定情報に孤立基地局を持つ基地局が存在するか否かを判定する(S63)。もし、比較対象の基地局の中に、設定情報に孤立基地局を持つ基地局が存在しない場合には(S63;NO)、処理が終了される。
【0065】
伝送路決定部207は、比較対象の基地局の中に、設定情報に孤立基地局を持つ基地局が存在する場合には(S63;YES)、更に、比較対象の基地局の中に、他の比較対象基地局の設定情報に含まれない孤立基地局を設定情報に持つ基地局が存在するか否かを判定する(S64)。言い換えれば、比較対象の基地局の中に、同じ孤立基地局を設定情報に含む複数の基地局が存在するか否かが判定される。
【0066】
伝送路決定部207は、他の比較対象基地局の設定情報に含まれない孤立基地局を設定情報に持つ基地局が存在する場合(S64;YES)、その基地局とその孤立基地局との間の接続を決定する(S65)。一方、伝送路決定部207は、他の比較対象基地局の設定情報に含まれない孤立基地局を設定情報に持つ基地局が存在しない場合(S64;NO)、他の比較対象基地局と同じ孤立基地局を設定情報に持つ複数の比較対象基地局のうち、優先度が最も高い比較対象基地局とその孤立基地局との間の接続を決定する(S66)。
【0067】
伝送路決定部207は、上述のように接続が決定されると、決定された比較対象基地局を比較対象から除外し、決定された孤立基地局をライブ基地局として比較対象に加えた後(S67)、再度、処理(S63)以降を実行する。
【0068】
〔第1実施形態における作用及び効果〕
このように第1実施形態では、制御サーバ20において災害発生情報が取得されると、制御サーバ20により、各基地局10から稼働状況情報がそれぞれ収集される。そして、各基地局10の稼働状況、及び、各基地局10の無線接続可能な他の基地局に関する情報に応じて、基地局間の無線接続により実現される孤立基地局からライブ基地局までの緊急伝送路が決定される。
【0069】
この緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報が衛星通信により制御サーバ20から各基地局10へ送信され、基地局10間で無線接続が確立されることにより、制御サーバ20で決定された緊急伝送路が実現される。これにより、災害等によりBSC30と個別に通信することができなくなった孤立基地局は、自無線エリア内のユーザ端末5に関するトラフィックを、自基地局10とBSC30との間の接続回線ではなく、当該緊急伝送路を用いてBSC30との間で送受することができるようになる。
【0070】
従って、第1実施形態によれば、基地局間の無線接続を用いた緊急伝送路を実現することにより、例え、災害等により、BSC30と通信できず孤立した基地局10(孤立基地局)が生じた場合であっても、その孤立基地局の無線エリア内に存在するユーザ端末5への通信サービスの提供を継続させることができる。当該緊急伝送路は、各基地局10の基地局間伝送部106により実現されるため、第1実施形態によれば、新たなノードを用いて形成される新たな通信網を設けることなく、簡易な構成により、上述のような効果を得ることができる。
【0071】
また、制御サーバ20と各基地局10との間の通信には、衛星通信が利用されるため、公衆網9等に異常が生じた場合であっても、その通信を継続することができる。更に、各基地局10から収集された稼働状況情報に基づいて当該緊急伝送路が決定されるため、他のノードと通信することができないような異常基地局が存在する場合であっても、そのような異常基地局を除いた中で最適な緊急伝送路を決定することができる。
【0072】
また、上述の緊急伝送路決定手法では、当該緊急伝送路が、ライブ基地局がいずれか1つの孤立基地局と無線接続され、孤立基地局が最大2つの他の基地局と無線接続されるように、決定される。よって、第1実施形態によれば、緊急伝送路を利用する場合であっても、1つのライブ基地局にトラフィックが集中する事態を防ぐことができるため、安定してサービス提供の継続をすることができる。
【0073】
[第2実施形態]
以下、制御サーバ20が、各基地局10の基地局間伝送部106が有する送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を制御する形態を第2実施形態として説明する。以降、第2実施形態における移動通信システム1について第1実施形態と異なる内容を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様の内容については適宜省略する。
【0074】
図6は、第2実施形態における伝送路制御サーバ20の構成例を概念的に示すブロック図である。第2実施形態における制御サーバ20は、第1実施形態の構成に加えて、アンテナ情報生成部208及び基地局情報データベース(DB)209を更に有する。これら処理部についても、メモリに記憶されるプログラムがCPUにより実行されることで実現される。
【0075】
基地局情報DB209は、各基地局10のアンテナ情報をそれぞれ格納する。アンテナ情報には、各基地局10の基地局間伝送部106が持つ送信アンテナ及び受信アンテナの位置情報(緯度、経度、高さ等)が含まれる。以降、各基地局10の基地局間伝送部106が持つ送信アンテナ及び受信アンテナを、各基地局10の送信アンテナ及び受信アンテナと表記する場合もある。
【0076】
アンテナ情報生成部208は、伝送路決定部207により緊急伝送路が決定されると、その緊急伝送路を形成する基地局10のペアに関し、基地局間伝送部106の送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向をそれぞれ決定する。これにより、当該基地局10のペアが相互に高感度で無線接続されるように、一方の基地局10の送信アンテナの指向性主軸の方向と、他方の基地局10の受信アンテナの指向性主軸の方向とが決定される。具体的には、一方の基地局10の送信アンテナの指向性主軸の方向が、他方の基地局10の受信アンテナの指向性主軸の方向と一致させられる。
【0077】
アンテナ情報生成部208は、この決定にあたり、当該基地局ペアに関する送信アンテナ及び受信アンテナの位置情報を基地局情報DB209から取得し、この位置情報を用いる。アンテナ情報生成部208は、決定された送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を示すアンテナ制御情報を生成し、このアンテナ制御情報を自身で保持すると共に衛星通信部201へ送る。
【0078】
また、アンテナ情報生成部208は、稼働情報収集部202により収集された受信感度情報に基づいて、上述のように決定され保持されるアンテナ制御情報で示されるアンテナの指向性主軸の方向を補正する。アンテナ情報生成部208は、補正されたアンテナの指向性主軸の方向を示すアンテナ制御情報を生成し、このアンテナ制御情報を自身で保持すると共に衛星通信部201へ送る。
【0079】
これにより、当該アンテナ制御情報は、衛星通信部201により、伝送路決定部207から送られる緊急伝送路情報と共に通信衛星2を介して各基地局10へ送信される。
【0080】
稼働情報収集部202は、第1実施形態の内容に加えて、各基地局10から受信感度情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集する処理を行う。この受信感動情報は、各基地局10の受信アンテナでの受信感度を示す。受信感度には、受信レベル、信号対雑音比(SNR)等が利用される。当該受信感度情報の収集は、緊急伝送路通信の稼働の通知を受けた以降、所定周期又は任意のタイミングで実行される。
【0081】
図7は、第2実施形態における基地局10の構成例を概念的に示すブロック図である。図7に示すように、第2実施形態における基地局10では、第1実施形態の構成に加えて、基地局間伝送部106が、可動部111、アンテナ制御部112、受信感度検出部113等を有する。これら処理部についても、ハードウェア要素、又は、ソフトウェア要素、或いは、それらの組み合わせによりそれぞれ実現される。
【0082】
可動部111は、アンテナ制御部112からの信号に応じて、基地局間伝送部106の送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を変える。例えば、可動部111は、各アンテナを支持する可動軸と、可動軸に動力を与える電動アクチュエータ等から構成される。なお、本実施形態は、可動部111の具体的実現形態を限定しない。
【0083】
アンテナ制御部112は、制御サーバ20から衛星通信部101を介して緊急伝送路情報と共に受信されるアンテナ制御情報に基づいて、可動部111に、送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を変えさせる。アンテナ制御部112の制御により、基地局間伝送部106の送信アンテナ及び受信アンテナの指向性軸の方向は、アンテナ制御情報で示される方向に向けられる。
【0084】
受信感度検出部113は、所定の周期又は任意のタイミングで、基地局間伝送部106の受信アンテナにおける他の基地局からの信号の受信感度を検出する。この受信感度の検出手法については周知な技術が利用されればよいため、ここでは説明を省略する。受信感度検出部113は、検出された受信感度を示す受信感度情報を生成し、衛星通信部101を介して衛星通信により、制御サーバ20へ送信する。
【0085】
〔動作例〕
図8は、第2実施形態における伝送路制御サーバ20及び基地局10の動作例を示すシーケンス図である。図8では、第1実施形態と同じ内容については図4と同じ符号が付されている。以降、第2実施形態の動作例について第1実施形態と異なる内容を中心に説明する。
【0086】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に処理(S41)から処理(S48)までが実行される。
【0087】
制御サーバ20において、伝送路決定部207が緊急伝送路情報を生成すると(S48)、アンテナ情報生成部208が、その緊急伝送路を形成する基地局10の各ペアに関し、基地局間伝送部106の送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向をそれぞれ決定する。アンテナ情報生成部208は、決定された送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を示すアンテナ制御情報を各基地局10に関しそれぞれ生成する(S81)。生成されたアンテナ制御情報は、緊急伝送路情報と共に、衛星通信部201を介して各基地局10へ送信される(S82)。
【0088】
各基地局10では、基地局間伝送部106が、当該緊急伝送路及び当該アンテナ制御情報を受信すると、アンテナ制御部112が、アンテナ制御情報に基づいて、可動部111に、送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を変えさせる(S83)。これにより、各基地局10の送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向は、無線接続される他の基地局10からの信号の受信感度が高まる方向に向けられる。結果、緊急伝送路情報で示される基地局間で無線接続が確立され(S50)、当該緊急伝送路が実現される。
【0089】
以降、第1実施形態と同様に、処理(S51)から処理(S53)までが実行される。
【0090】
緊急伝送路通信の稼働を制御サーバ20へ通知した後、各基地局10では、任意のタイミングで、受信感度検出部113が、基地局間伝送部106の受信アンテナにおける他の基地局からの信号の受信感度を検出し、検出された受信感度を示す受信感度情報を生成する(S84)。受信感度検出部113は、生成された受信感度情報を衛星通信部101を介して制御サーバ20へ送信する(S85)。
【0091】
制御サーバ20では、稼働情報収集部202が各基地局10から衛星通信により送信された受信感度情報を受信すると、アンテナ情報生成部208は、受信された受信感度情報に基づいて、受信感度が高まると推定される方向に、既に保持されるアンテナ制御情報で示されるアンテナの指向性主軸の方向を補正する。アンテナ情報生成部208は、補正されたアンテナの指向性主軸の方向を示すアンテナ制御情報を各基地局10に関しそれぞれ生成する(S86)。アンテナ情報生成部208は、生成されたアンテナ制御情報を衛星通信部201を介して各基地局10へ送信する(S87)。
【0092】
各基地局10では、基地局間伝送部106がこのアンテナ制御情報を受信し、アンテナ制御部112が、このアンテナ制御情報に基づいて、可動部111に、送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を変えさせる(S88)。
【0093】
〔第2実施形態における作用及び効果〕
上述したように、第2実施形態では、制御サーバ20により、緊急伝送路が決められると共に、その緊急伝送路を実現する基地局間無線接続のための送信アンテナ及び受信アンテナの指向性軸方向が決められ、基地局10の可動部111及びアンテナ制御部112により、当該指向性軸方向がその決められた方向に調整される。また、緊急伝送路が実現され運用されている間、各基地局10では当該無線接続における受信感度が監視され、この受信感度が制御サーバ20に送られることにより、制御サーバ20により当該受信感度に応じた当該指向性軸方向の調整が行われる。
【0094】
従って、第2実施形態によれば、基地局間無線接続のための送信アンテナ及び受信アンテナの指向性軸方向が高い受信感度となるように調整されるため、緊急伝送路における受信品質を高めることができる。結果、第2実施形態によれば、異常発生時における緊急伝送路を用いた通信形態であっても、通信サービスの提供を高品質な状態で継続させることができる。
[変形例]
上述の各実施形態では、図4及び図8に示すように、災害発生情報が伝送路制御サーバ20で取得されたことを契機に、緊急伝送路が決定及び実現される例を示したが、これらの処理は、基地局10で稼働状況として異常が検出されたことを契機に実行されるようにしてもよい。この場合には、図4及び図8のシーケンスにおける処理(S41)の代わりに、伝送路制御サーバ20が異常が発生した基地局10からの基地局情報を受信する処理を実行すればよい。その後は、他の基地局10を対象に、処理(S42)から処理(S45)が実行されればよい。
【0095】
なお、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数のステップ(処理)が順番に記載されているが、本実施形態で実行される処理ステップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。本実施形態では、図示される処理ステップの順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。また、上述の各実施形態及び各変形例は、内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 移動通信システム
2 通信衛星
5 ユーザ移動端末(ユーザ端末)
10 基地局
20 伝送路制御サーバ(制御サーバ)
30 基地局制御装置(BSC)
101、201 衛星通信部
102 稼働状況検出部
103 稼働状況送信部
106 基地局間伝送部
107 基地局処理部
111 可動部
112 アンテナ制御部
113 受信感度検出部
202 稼働情報収集部
203 設定情報取得部
204 災害検出部
207 伝送路決定部
208 アンテナ情報生成部
209 基地局情報データベース(DB)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの他の基地局と無線接続可能な複数の基地局と、当該複数の基地局の各々と個別に接続され当該複数の基地局を通信交換局に接続する基地局制御装置と、当該複数の基地局と衛星通信を介して通信可能な伝送路制御サーバと、を含む移動通信システムにおいて、
前記伝送路制御サーバは、
前記各基地局から、各基地局の稼働状況情報を含む基地局情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集する稼働情報収集手段と、
前記各基地局に関する無線接続可能な他の基地局に関する設定情報を取得する設定情報取得手段と、
前記稼働情報収集手段により収集された基地局情報に基づいて、前記複数の基地局の中から、前記基地局制御装置と個別に通信不可能な孤立基地局及び前記基地局制御装置と個別に通信可能なライブ基地局を特定し、前記設定情報取得手段により取得された設定情報に基づいて、基地局間の無線接続により実現される、当該孤立基地局から当該ライブ基地局までの緊急伝送路を決定し、当該緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を衛星通信を用いて前記複数の基地局へ送信する伝送路決定手段と、
を備え、
前記複数の基地局はそれぞれ、
自基地局の稼働状況を検出する稼働状況検出手段と、
前記稼働状況検出手段により検出された稼働状況の情報を含む基地局情報を衛星通信を用いて前記伝送路制御サーバへ送信する稼働状況送信手段と、
前記伝送路制御サーバから衛星通信を介して受信された前記緊急伝送路情報で示される少なくとも1つの他の基地局と無線接続を確立する基地局間伝送手段と、
を備え、
前記複数の基地局の少なくとも1つの孤立基地局は、
前記基地局間伝送手段により確立された無線接続を用いて、自基地局の無線エリア内の移動端末に関するトラフィックをライブ基地局へ無線送信する基地局処理手段と、
を備えることを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記伝送路決定手段は、まず、前記設定情報に孤立基地局を含む複数のライブ基地局の中の、他のライブ基地局の前記設定情報に含まれない第1孤立基地局を前記設定情報に含むライブ基地局と、当該第1孤立基地局との間の接続を決定し、次に、当該第1孤立基地局との接続が決定されたライブ基地局を除いた、他のライブ基地局及び当該第1孤立基地局を候補にして、未決定の孤立基地局と接続する基地局を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記基地局処理手段は、自基地局が孤立基地局であり、かつ、前記基地局間伝送手段により確立された第1の無線接続を介して他の基地局からのトラフィックが受信された場合には、自基地局の無線エリア内の移動端末に関するトラフィック及び前記他の基地局からのトラフィックを前記基地局間伝送手段により確立された第2の無線接続を介して更に異なる他の基地局へ送信し、自基地局がライブ基地局であり、かつ、前記基地局間伝送手段により確立された無線接続を介して他の基地局からのトラフィックが受信された場合には、自基地局の無線エリア内の移動端末に関するトラフィック及び前記他の基地局からのトラフィックを前記基地局制御装置へ送信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動通信システム。
【請求項4】
前記基地局間伝送手段は、
前記少なくとも1つの他の基地局と無線接続を確立するための送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を変える可動手段と、
前記伝送路制御サーバから衛星通信を介して前記緊急伝送路情報と共に受信されるアンテナ制御情報に基づいて、前記可動手段に、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの指向性主軸の方向を変えさせるアンテナ制御手段と、
を含み、
前記伝送路制御サーバは、
前記伝送路決定手段により決定された緊急伝送路を形成する基地局ペアに関する送信アンテナ及び受信アンテナの位置情報を取得し、取得された位置情報に基づいて、当該基地局ペアに関する送信アンテナ及び受信アンテナの指向性主軸の方向を決定し、決定された方向を示す前記アンテナ制御情報を生成するアンテナ情報生成手段、
を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記基地局間伝送手段は、
前記受信アンテナにおける前記少なくとも1つの他の基地局からの信号の受信感度を検出する受信感度検出手段、
を更に含み、
前記伝送路制御サーバの前記稼働情報収集手段は、前記各基地局から、前記受信感度情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集し、
前記伝送路制御サーバの前記アンテナ情報生成手段は、前記稼働情報収集手段により収集された受信感度情報に基づいて、各基地局における前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの指向性主軸の方向を補正し、補正された方向を示す前記アンテナ制御情報を生成し、
前記アンテナ制御手段は、前記受信感度検出手段により検出された受信感度情報を衛星通信を用いて前記伝送路制御サーバへ送信し、当該受信感度情報の送信に応じて前記伝送路制御サーバから衛星通信を介して受信されたアンテナ制御情報に基づいて、前記可動手段に、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナの指向性主軸の方向を変えさせる、
ことを特徴とする請求項4に記載の移動通信システム。
【請求項6】
少なくとも1つの他の基地局と無線接続可能な複数の基地局の各々と衛星通信を介して通信可能な伝送路制御サーバにおいて、
前記各基地局から、各基地局の稼働状況情報を含む基地局情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集する稼働情報収集手段と、
前記各基地局に関する無線接続可能な他の基地局に関する設定情報を取得する設定情報取得手段と、
前記稼働情報収集手段により収集された基地局情報に基づいて、前記複数の基地局の中から、各基地局を通信交換局にそれぞれ接続させる基地局制御装置と個別に通信不可能な孤立基地局及び当該基地局制御装置と個別に通信可能なライブ基地局を特定し、前記設定情報取得手段により取得された設定情報に基づいて、基地局間の無線接続により実現される、当該孤立基地局から当該ライブ基地局までの緊急伝送路を決定し、当該緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を衛星通信を用いて前記複数の基地局へ送信する伝送路決定手段と、
を備えることを特徴とする伝送路制御サーバ。
【請求項7】
少なくとも1つの他の基地局と無線接続可能な複数の基地局の各々と衛星通信を介して通信可能なコンピュータにより実行される通信方法において、
前記コンピュータが、
前記各基地局から、各基地局の稼働状況情報を含む基地局情報を衛星通信を用いてそれぞれ収集するステップと、
前記各基地局に関する無線接続可能な他の基地局に関する設定情報を取得するステップと、
前記収集された基地局情報に基づいて、前記複数の基地局の中から、各基地局を通信交換局にそれぞれ接続させる基地局制御装置と個別に通信不可能な孤立基地局及び当該基地局制御装置と個別に通信可能なライブ基地局を特定するステップと、
前記取得された設定情報に基づいて、基地局間の無線接続により実現される、前記孤立基地局から前記ライブ基地局までの緊急伝送路を決定するステップと、
前記緊急伝送路を形成するための緊急伝送路情報を衛星通信を用いて前記複数の基地局へ送信するステップと、
を実行することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−160933(P2012−160933A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19606(P2011−19606)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】