説明

移染防止剤

【課題】 洗濯用洗剤や布帛柔軟剤の組成物に添加されて染料の移染を抑制する移染防止剤であって、アニオン性界面活性剤の存在下でも優れた移染防止効果を示す移染防止剤を提供する。
【解決手段】 移染防止剤をポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体を含有してなるものとする。重合度が100〜4000であり、ケン化度が70〜100mol%であるポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した、K値が12〜150である重合体を10重量%以上含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯用洗剤や布帛柔軟剤に使用される移染防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
着色した布帛と白い布帛とを一緒に洗濯するときに、洗濯条件によって若干の染料が着色した布帛から滲み出すことがある。滲み出しの程度は、染料の構造、布帛の種類及び撹拌工程のpH、温度と機械的効率によって影響されるが、洗濯液中に滲み出した染料は元の布帛や他の布帛に再沈着する傾向があり、布帛の外観を損なう。
【0003】
この滲出染料の再沈着を抑制する一つの方法として、滲み出した染料を錯化合物にすることのできる移染防止剤(DTI化合物)を導入し、錯化合物にしたものを洗い流す方法がある。
【0004】
ポリビニルピロリドン(PVP)は、そのような染料錯化能を有し、着色布帛を洗濯する際に染料再沈着を抑制するために使用されている。しかしながら、PVPのDTIとしての性能は、洗濯工程にアニオン性界面活性剤が存在すると阻害される。
【0005】
洗濯用洗浄剤組成物においてDTIとして用いられてきたその他のポリマーとしては、ポリビニルピリジン−N−オキシド(PVPNO)、ポリビニルイミダゾール(PVI)及びポリビニルピリジンとポリビニルイミダゾールとのコポリマー(PVP−PVI)等があるが、いずれもアニオン性界面活性剤の存在下で充分な移染抑制効果を有するものではなかった。
【特許文献1】国際公開第95/03390号パンフレット
【特許文献2】国際公開第94/11473号パンフレット
【特許文献3】国際公開第94/10281号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、洗濯用洗剤や布帛柔軟剤等の組成物に添加されて染料の移染を抑制する移染防止剤であって、アニオン性界面活性剤の存在下でも優れた移染抑制効果を示す移染防止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体(以下、単にグラフト重合体ともいう)が目的とする移染防止剤を得る上で極めて有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の移染防止剤は、上記の課題を解決するために、ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体を含有してなるものとする。
【0009】
上記において、重合度が100〜4000であり、ケン化度が70〜100mol%であるポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した、K値が12〜150である重合体を10重量%以上含有することが好ましい。
【0010】
ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体としては、ポリビニルアルコール溶液にビニルピロリドンを配合し、開始剤として過酸化水素又は有機過酸化物を用いて重合して得られたものを用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移染防止剤によれば、アニオン性界面活性剤の存在下でも洗濯工程において優れた移染防止効果が得られる。よってこれを添加することにより移染防止効果の高い洗濯用洗剤や布帛柔軟剤の組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いるグラフト重合体の原料となるポリビニルアルコール(以下、PVAと表記する場合もある)は、重合度が100〜4000であることが好ましく、100〜3000であることがより好ましい。重合度が100未満であると移染防止効果が低下し、4000を超えると水に溶解する場合に時間がかかる。
【0013】
ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100mol%であることが好ましく、70〜99mol%であることがより好ましい。ケン化度が70mol%未満では移染防止効果が低下し、99mol%を超えると冷水に溶け難い。
【0014】
さらにグラフト重合体のK値が12未満では移染防止効果が低下し、150を超えると水に溶け難く使いづらい。
【0015】
グラフト重合体におけるビニルピロリドンの量はポリビニルアルコールに対して5〜900重量%であることが好ましい。5重量%未満であると充分な移染防止効果が得られず、900重量%を超えると冷水に溶けにくくなる傾向がある。
【0016】
上記グラフト重合体は、ポリビニルアルコール溶液にビニルピロリドンを配合し、適当な開始剤を用いて重合する製造方法により得ることができる。
【0017】
開始剤としてはラジカル重合に通常用いられる過酸化水素又は有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物の例としては、tert−ブチルハイドロパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。反応方法及び反応条件は一般的なラジカル重合の例に従って選択すればよい。
【0018】
本発明の移染防止剤を使用する洗浄剤組成物等の各種組成物には、アニオン性界面活性剤を、移染防止剤の影響を受けることなく使用することができる。
【0019】
アニオン性界面活性剤の好ましい例として、アルキルアルコキシル化スルフェート界面活性剤、一般式RO(A)SOMで表される水溶性塩又は酸が挙げられる。ここでRは、C10−C24のアルキル成分、好ましくはC12−C20のアルキル又はヒドロキシアルキル、更に好ましくはC12−C18のアルキル又はヒドロキシアルキルを有する、非置換C10−C24アルキル又はヒドロキシアルキル基であり、Aはエトキシ又はプロポキシ単位であり、mは0より大きく、好ましくは約0.5〜6、より好ましくは約0.5〜3であり、MはH又は例えば金属カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム等)、アンモニウム又は置換−アンモニウムカチオンである。アルキルエトキシル化スルフェートも、アルキルプロポキシル化スルフェートと同様に含まれる。置換−アンモニウムカチオンの具体的な例は、メチル、ジメチル、トリメチルアンモニウムカチオン、及び4級アンモニウムカチオン、例えばテトラメチルアンモニウム及びジメチルピペリジニウムカチオン、及びエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、それらの混合物のようなアルキルアミンに由来するもの等である。代表的な例としては、C12−C18アルキルポリエトキシレート(1.0)スルフェート(C12−C18E(1.O)M)、C12−C18アルキルポリエトキシレート(2.25)スルフェート(C12−C18E(2.25)M)、C12−C18アルキルポリエトキシレート(3.0)スルフェート(C12−C18E(3.0)M)、及びC12−C18アルキルポリエトキシレート(4.0)スルフェート(C12−C18E(4.0)M)が挙げられ、ここでMはナトリウム又はカリウムである。
【0020】
アニオン系界面活性剤としてはスルホン酸アルキルエステル界面活性剤も好ましく、C−C20のカルボン酸(即ち、脂肪酸)の線状エステルを含み、ガス状SOでスルホン化したものである。好適な出発材料としては、牛脂、椰子油等から導かれた天然脂肪物質が挙げられる(“ザ・ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・オイル・ケミスツ・ソサイエティ”、52巻(1975)、323−329頁)。
【0021】
好ましいスルホン酸アルキルエステル界面活性剤で、特に洗濯用洗浄剤に適したものとしては、次の構造式のスルホン酸アルキルエステル界面活性剤が挙げられる。
【化1】

【0022】
ここで、RはC−C20のヒドロカルビル、好ましくはアルキル、またはその組み合わせ、RはC−Cのヒドロカルビル、好ましくはアルキル、又はその組み合わせであり、Mはスルホン酸アルキルエステルと水溶性塩を形成するカチオンである。好適な塩形成カチオンは、ナトリウム、カリウム、リチウムのような金属、及びモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンのような置換若しくは非置換アンモニウムカチオンを含む。好ましくは、RはC10−C16のアルキル、Rはメチル、エチル、又はイソプロピルである。特に好ましいのはRがC10−C16のアルキルであるスルホン酸メチルエステルである。
【0023】
その他の好適なアニオン性界面活性剤は、アルキルスルフェート界面活性剤、式ROSOMで表される水溶性塩又は酸であり、式中Rは好ましくはC10−C24のヒドロカルビル、好ましくはC10−C20のアルキル成分を有するアルキル又はヒドロキシアルキル、更に好ましくはC12−C18のアルキル又はヒドロキシアルキルであり、又MはH又はカチオン、例えば、アルカリ金属カチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム)、又はアンモニウム或いは置換アンモニウム(例えば、メチル、ジメチル、及びトリメチルアンモニウムカチオン及びエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、及びそれらの混合物のようなアルキルアミンより導かれた4級アンモニウムカチオン)である。通常は、C12−C16のアルキル鎖は低い洗濯温度(例えば約50℃未満)に適し、C16−C18のアルキル鎖は高い洗濯温度(例えば約50℃以上)に適する。
【0024】
洗浄目的に有用なその他のアニオン性界面活性剤も洗浄剤組成物に使用することができる。これらは石鹸の塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、及びモノ−、ジ−、及びトリエタノールアミン塩のような置換アンモニウム塩を含む)、C−C20の線状アルキルベンゼンスルホネート、C−C22の第一又は第二アルカンスルホネート、C−C24のオレフィンスルホネート、例えば英国特許明細書第1,082,179号に記載されているようにアルカリ土類金属クエン酸塩の熱分解生成物のスルホン化によって作られたスルホン化ポリカルボン酸、C−C24のアルキルポリグリコールエーテルスルホネート(10モルまでのエチレンオキシドを含む);アルキルグリセロールスルホネート、脂肪アシルグリセロールスルホネート、脂肪オレイルグリセロールスルフェート、アルキルフェノールエチレンオキシドエーテルスルフェート、パラフィンスルホネート、アルキルホスフェート、アシルイソチオネートのようなイソチオネート、N−アシルタウレート、アルキルスクシネート及びスルホスクシネート、スルホスクシネートのモノエステル(特に飽和又は不飽和C12−C18のモノエステル)及びスルホスクシネートのジエステル(特に飽和又は不飽和C−C12のジエステル)、アシルサルコシネート、アルキルポリサッカリドのスルフェート例えばアルキルポリグルコシドのスルフェート(下記の非イオン系の硫酸化されていない化合物)、分岐第一アルキルスルフェート、及びアルキルポリエトキシカルボネート例えば式RO(CHCHO)−CHCOO,(ここでRはC−C22アルキル、kは0〜10の整数であり、Mは可溶性の塩形成カチオンである)を含み得る。ロジン、水素化ロジン及びタル油中に存在するか、又はそれから導かれる樹脂酸及び水素化樹脂酸のような樹脂酸及び水素化樹脂酸も好適である。
【0025】
洗濯用洗浄剤組成物は上記のようなアニオン系界面活性剤を約5〜50wt%、好ましくは約10〜40wt%含んでなる。
【0026】
洗濯用洗浄剤組成物には、また非イオン性、カチオン性、両性、双極性及び半極性界面活性剤をさらに含有させてもよい。
【0027】
非イオン性界面活性剤の好適な例としては、アルキルフェノールのポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブチレンのオキシド縮合物が挙げられ、ポリエチレンオキシドの縮合物と共に使用するのが好ましい。これらの化合物は、約6〜14個の炭素原子、好ましくは約8〜14個の炭素原子を有するアルキル基を含有するアルキルフェノールのアルキレンオキシドとの縮合生成物を、直鎖又は分岐鎖の形で含む。好ましい具体例においては、エチレンオキシドの量はアルキルフェノールのモル当たり、好ましくは約1〜25モル、より好ましくは約3〜15モルである。市販されているこのタイプの非イオン性界面活性剤としては、Triton(商標名)X−45、X−114、X−100及びX−102(全てローム・アンド・ハース社)が挙げられる。これらの界面活性剤は通常アルキルフェノールアルコキシレート(例えば、アルキルフェノールエトキシレート)と言われるものである。
【0028】
第一及び第二脂肪族アルコールの約1〜25モルのエチレンオキシドとの縮合生成物も使用に適する。脂肪族アルコールのアルキル鎖は、直鎖でも分岐していても、第一でも第二でもよく、また通常約8〜22個の炭素原子を含む。好ましいのは、約8〜20個の炭素原子、更に好ましくは約10〜18個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルコールと、アルコールのモル当たり約2〜10モルのエチレンオキシドとの縮合生成物である。市販されているこのタイプの非イオン性界面活性剤の例としては、Tergitol(商標名)15−S−9(C11−15の線状アルコールと9モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、Tergitol(商標名)24−L−6 NMW(C12−C14第一アルコールと6モルのエチレンオキシドとの狭い分子量分布での縮合生成物)(共にユニオン・カーバイド・コーポレーションによって市販されている)、シェル・ケミカル・カンパニーによって市販されている、Neodol(商標名)45−9(C14−C15の線状アルコールと9モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、Neodol(商標名)23−6.5(C12−C13の線状アルコールと6.5モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、Neodol(商標名)45−7(C14−C15の線状アルコールと7モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、Neodol(商標名)45−4(C−C15の線状アルコールと4モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、及びザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニーによって市販されている、Kyro(商標名)EOB(C11−C15のアルコールと9モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)が挙げられる。
【0029】
また米国特許第4,565,647号(1986年1月21日発行)に開示されたアルキルポリサッカリドも使用できる。それは約6〜30個の炭素原子を含む疎水基と、約1.3〜10個、好ましくは約1.3〜3個、最も好ましくは約1.3〜2.7個のサッカリド単位を含む親水性基を有するポリサッカリド、例えばポリグリコシドを有する。5〜6個の炭素原子を含む還元性サッカリドも使用可能であり、例えば、グルコース、ガラクトース及びガラクトシル成分をグルコシル成分と置換することができる(任意に疎水性基が2−、3−、4−、等の位置に付いてそれによりグルコシド又はガラクトシドと反対するグルコース又はガラクトースを与える)。中間サッカリド結合は、例えば、付加サッカリド単位の一つの位置と先行するサッカリド単位上の2−、3−、4−、及び/又は6−位の間にある。
【0030】
場合によっては、疎水性成分とポリサッカリド成分とを結合するポリアルキレンオキシド鎖が存在することがあり得る。好ましいアルキレンオキシドはエチレンオキシドである。代表的な疎水性基はアルキル基を含み、約8〜18個、好ましくは約10〜16個の炭素原子を含み、飽和でも不飽和でもよく、分岐又は非分岐でもよい。好ましくは、アルキル基は直鎖飽和アルキル基である。アルキル基は約3個までのヒドロキシ基を含むことができ、及び/又はポリアルキレンオキシド鎖は約10個まで、好ましくは5個未満のアルキレンオキシド成分を含むことができる。アルキルポリサッカリドは、オクチル、ノニルデシル、ウンデシルドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、及びオクタデシル、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサグルコシド、ガラクトシド、ラクトシド、グルコース、フルクトシド、フルクトース、及び/又はガラクトースである。適宜、椰子油アルキル、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタグルコシド、及び牛脂アルキルテトラ−、ペンタ−、ヘキサグルコシドを含む。
【0031】
好ましいアルキルポリグリコシドは、次式で表される: RO(C2nO)(グリコシル) 。ここで、Rはアルキル、アルキルフェニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルフェニル、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれ、そのうちアルキル基は約10〜18個、好ましくは約12〜14個の炭素原子を含み、nは2又は3、好ましくは2であり、tは0〜約10、好ましくは0であり、xは約1.3〜10、好ましくは約1.3〜3、最も好ましくは約1.3〜2.7である。グリコシルは好ましくはグルコースより導かれる。これらの化合物を得るには、最初にアルコール又はアルキルポリエトキシアルコールを形成し、次いでグルコース又はグルコース源と反応させ、グルコシドを形成する(1−位に付着する)。追加のグリコシル単位は次いでそれらの1−位と先行グリコシル単位の2−、3−、4−及び/又は6−位、好ましくは大部分が2−位との間に付着することができる。
【0032】
プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成された疎水性塩基とエチレンオキシドとの縮合生成物も、追加的非イオン性界面活性剤として使用することができる。これらの化合物の疎水性部分は約1500〜1800の分子量を有することが好ましい。この疎水性部分へのポリオキシエチレン部分の付加は、全体として分子の水溶性を増大させる傾向があり、生成物の液体的性質はポリオキシエチレン含有量が縮合生成物の全量の約50%になるまで保持され、これはエチレンオキシドの約40モルまでの縮合に相当する。商業的に入手可能なこのタイプの化合物の例としては、BASF社のPluronic(商標名)が挙げられる。
【0033】
また、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応から得られる生成物とエチレンオキシドとの縮合生成物も使用できる。これらの生成物の疎水性成分はエチレンジアミンと過剰のプロピレンオキシドとの反応生成物よりなり、通常約2500〜3000の分子量を有する。この疎水性成分は、縮合生成物がポリオキシエチレン約40〜80重量%を含有する程度までエチレンオキシドと縮合して、約5,000〜11,000の分子量を有する。商業的に入手可能なこのタイプの非イオン性界面活性剤の例としては、BASF社のTetronic(商標名)が挙げられる。
【0034】
非イオン性界面活性剤の好適なものは、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、第1及び第2脂肪族アルコールと約1〜25モルのエチレンオキシドとの縮合生成物、アルキルポリサッカリド、及びそれらの混合物である。最も好適なものは、3個から15個のエトキシ基を有するC−C14のアルキルフェノールエトキシレート及び2個から10個のエトキシ基を有するC−C18のアルコールエトキシレート(好ましくは平均C10)、及びそれらの混合物である。
【0035】
ポリヒドロキシ脂肪酸アミン界面活性剤も好ましく、又、次式のポリヒドロキシ脂肪酸アミド界面活性剤も好ましい。
【化2】

【0036】
ここに、RはH、又はC1−4のヒドロカルビル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル又はそれらの混合物、RはC5−31のヒドロカルビル、又、Zは線状ヒドロカルビル鎖を有しその鎖に直接結合した少なくとも3個のヒドロキシルを持ったポリヒドロキシヒドロカルビルであり、又はそのアルコキシル化した誘導体である。好ましくは、Rはメチル、Rは直鎖C1−15アルキル又はアルケニル鎖、例えば椰子油アルキル又はその混合物、及び還元アミノ化反応におけるマルトース、ラクトースである。
【0037】
非イオン性界面活性剤の含有量は1〜35wt%が好ましい。アニオン性と非イオン性界面活性剤の比は7:3から90:1までであり、好ましくは3:1から60:1である。界面活性剤の全量は用途により異なるが、最大65wt%程度である。洗濯用洗浄剤組成物では5〜40wt%程度が適当である。
【0038】
洗濯用洗浄剤組成物に使用するのに好適なカチオン性洗浄用界面活性剤は1個の長鎖ヒドロカルビル基を有するものである。かかるカチオン性界面活性剤の例は、アルキルジメチルアンモニウムハロゲニドのようなアンモニウム界面活性剤、及び次式を有する界面活性剤を含む: [R(OR][R(OR。ここで、Rはアルキル鎖に約8個から約18個の炭素原子を有するアルキル或いはアルキルベンジル基であり、それぞれのRは、−CHCH−,−CHCH(CH)−,−CHCH(CHOH)−,−CHCHCH−,及びそれらの混合物よりなる群から選ばれ、それぞれのRは、C−Cアルキル、C−Cヒドロキシアルキル、2個のR基が結合して形成されたベンジル環状構造、−CHCHOHCHOHCORCHOHCHOH−、但しRは約1000未満の分子量を有するヘキソース又はヘキソースポリマーのいずれか、又yが0でないときは水素よりなる群から選ばれ、Rは、Rと同じであるか又はアルキル鎖、但しR+Rの炭素数の総数が約18以下であるものとする。それぞれのyは0〜約10であり、y値の和は0〜約15である。xは適合し得るアニオンの何れかである。
【0039】
洗浄剤組成物には通常一種以上の洗浄力ビルダーを含有させる。組成物中の洗浄力ビルダーの全量は5〜80wt%、好ましくは10〜60wt%の範囲内とする。
【0040】
使用し得る無機ビルダーの例としては炭酸ナトリウム、必要に応じ英国特許第1437950号(ユニレバー)に記載されているように、炭酸カルシウム用結晶種と組み合わせたもの、結晶質及び非晶質アルミノシリケート、例えば、英国特許第1473201号(ヘンケル)に開示されたようなゼオライト、英国特許第1473202号(ヘンケル)に開示されたような非晶質アルミノシリケート及び英国特許第1470250号(プロクター・アンド・ギャンブル)に開示されたような結晶質/非晶質混合アルミノシリケート、及びEP164514B(ヘキスト)に開示されたような層状シリケートが挙げられる。無機燐酸塩ビルダー、例えば、ナトリウムのオルト燐酸塩、ピロ燐酸塩及びトリポリ燐酸塩も使用可能である。
【0041】
洗浄剤組成物にはアルカリ金属、好ましくはナトリウム、アルミノシリケートビルダーを含有させてもよい。ナトリウムアルミノシリケートは通常10〜70wt%(無水ベース)、好ましくは25〜50wt%の量で加える。
【0042】
アルカリ金属アルミノシリケートは結晶質でも非晶質でもそれらの混合物でもよく、次の一般式で表される: 0.8−1.5 NaO・ Al・ 0.8−6 SiO。これらの材料は若干の結合水を含有しており、少なくとも50mgCaO/gのカルシウムイオン交換能をもつ必要がある。好ましいナトリウムアルミノシリケートは上記式中で1.5−3.5SiO単位を含有する。非晶質と結晶質材料共に文献に詳細に記述されているように、珪酸ソーダとアルミン酸ソーダとの反応によって容易に作ることができる。
【0043】
好適な結晶質ナトリウムアルミノシリケートのイオン交換洗浄力ビルダーは、例えば、英国特許第1429143号(プロクター・アンド・ギャンブル)に記載されている。このタイプのナトリウムアルミノシリケートで好ましいものは周知の商業的に入手し得るゼオライトA、X、又はそれらの混合物である。
【0044】
ゼオライトは現在洗濯用粉末洗剤に広く使用されている商業的に入手可能なゼオライト4Aを使用することができる。しかしながら、EP384070A(ユニレバー)に記載のマキシマム・アルミニウム・ゼオライトP(ゼオライトMAP)が好ましい。ゼオライトMAPは、シリコン対アルミナムの比が1.33以下、好ましくは0.90〜1.33の範囲内にあり、より好ましくは0.90〜1.20の範囲内にあるものとする。
【0045】
より好ましいのは1.07以下、さらに好ましくは約1.00以下のシリコン対アルミナムの比を有するゼオライトMAPである。ゼオライトMAPのカルシウム結合能は通常無水材料のg当たり少なくとも150mgCaOである。
【0046】
有機ビルダーとしては、ポリカルボン酸ポリマー、例えば、ポリリル酸、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、及びアクリリックホスフィネート、又は単量体ポリカルボン酸、例えば、シトレート、グルコネート、オキシジスクシネート、グリセロールモノ−、ジ−、及びトリスクシネート、カルボキシメチロキシスクシネート、カルボキシメチロキシマロネート、ジピコリネート、ヒドロキシエチルイミノジアセテート、アルキル−及びアルケニルマロネート及びスクシネート、又はスルホン化脂肪酸塩が使用可能である。
【0047】
特に好ましい有機ビルダーはシトレートであり、5〜30wt%、好ましくは10〜25wt%の量で適宜使用され、又はアクリルポリマー、より具体的にはアクリル酸/マレイン酸コポリマーであり、0.5〜15wt%、好ましくは1〜10wt%の量で適宜使用される。
【0048】
ビルダーは、無機、有機共、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩の形で存在するのが好ましい。
【0049】
洗浄剤組成物の形態は、液体、ペースト又は顆粒状のいずれでもよい。かかる組成物は、必須及び任意の成分を適当な順序で必要な濃度に組み合わせて常法により調製することができる。
【0050】
顆粒組成物は、通常、例えば、ベースの顆粒成分(例えば、界面活性剤、ビルダー、水、等)を組み合わせてスラリーとして、得られたスラリーを低レベルの残留湿分(5−12%)にスプレードライして製造する。残りの乾燥成分は、ロータリー混合ドラム中でスプレードライした顆粒と顆粒状粉末の形で混合することができ、また液体成分(例えば、酵母、バインダー及び香料)は得られた顆粒上にスプレーして洗浄剤組成物の完成品とすることができる。
【0051】
顆粒状組成物は、従来の顆粒状洗剤よりも比較的に高い密度、即ち、550〜950g/lとしていわゆるコンパクトな製品となし得る。そのような場合、洗浄剤組成物において、従来の顆粒状洗剤に比べて無機増量剤の塩の量を減量させる。代表的な増量剤の塩はスルフェート及びクロリドのアルカリ土類金属塩、典型的には硫酸ソーダであり、コンパクトな洗剤では増量剤の塩の量を10%以下とする。
【0052】
液体洗浄剤組成物は、上記必須又は任意の成分を、必要な濃度となるように所望の順序で混合して調製することができる。液体組成物も、従来より少ない量の水を含有するコンパクトな製品とすることができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断らない限り「重量部」および「重量%」をそれぞれ意味する。
【0054】
[実施例1〜4、比較例1,2]
アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)及び非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン(7EO)アルキル(C12〜C14)エーテル)の混合物を含有する洗浄剤1g/Lと、10ppmの染料(ダイレクトレッド80、ダイレクトブルーNo.1)と、下記粉末状重合物10ppmを含有する洗濯用洗浄剤組成物水溶液1リットルを調製した。
【0055】
3枚の白い綿布切れ#400(ブリーチされ、かつディサイズされたもの)を上記試験液に30℃で浸漬し、10分間、ターグオートメータ(Terg−o−tometer)(インストルメント マーケティング サービス社)で攪拌した。次いでこの布を取り出し、過剰の溶液を絞り出し、きれいな水中で3分間洗浄し、絞って乾燥させた。
【0056】
上記試料につき、比色計を用いてリフレクタンク測定を行った。測定値をΔEとして示した。ΔEは、乾燥した布中の白色インデックス、赤色インデックス及び青色インデックスの度合いの複合(composite)であり、染料沈着の度合いを直接示すものと考えられる。試験の結果を以下の表1に示す。
【0057】
粉末状重合物1:ポリビニルアルコール(PVA)(重合度200、ケン化度98−99mol%)にビニルピロリドン(VP)(対PVA 5.26wt%)をグラフト重合した、K値23、固形分97.1%のパウダー。
粉末状重合物2:PVA(重合度2400、ケン化度98−99mol%)にVP(対PVA 42.9wt%)をグラフト重合した、K値31、固形分98.5%のパウダー。
粉末状重合物3:PVA(重合度500、ケン化度72.5−74.5mol%)にVP(対PVA 150wt%)をグラフト重合した、K値40、固形分96.3%のパウダー。
粉末状重合物4:PVA(重合度3500、ケン化度87−89mol%)にVP(対PVA 900wt%)をグラフト重合した、K値94、固形分99.0%のパウダー。
粉末状重合物5:ポリビニルアルコール(重合度3500、ケン化度87−89mol%)のパウダー。
粉末状重合度6:ポリビニルピロリドン K−30 のパウダー。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の移染防止剤は洗濯用洗浄剤組成物や繊維柔軟剤組成物における添加剤として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体を含有してなる移染防止剤。
【請求項2】
重合度が100〜4000であり、ケン化度が70〜100mol%であるポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した、K値が12〜150である重合体を10重量%以上含有することを特徴とする、請求項1に記載の移染防止剤。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールにビニルピロリドンがグラフト重合した重合体が、ポリビニルアルコール溶液にビニルピロリドンを配合し、開始剤として過酸化水素又は有機過酸化物を用いて重合して得られたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の移染防止剤。

【公開番号】特開2007−84631(P2007−84631A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272948(P2005−272948)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】